八幡「やはり俺の後輩は可愛い彼女である」 (38)

いろは「先輩…こんな所に呼び出してすみません」

八幡「まあ本当は嫌だったんだけどな。お前にあまり会いたくないし」

いろは「とか言いつつ来ちゃう先輩も可愛らしいですよ?」

八幡「というか、お前が生徒会室に来いっていう以上、何か手伝わされるのが目に見えてるからな。どうせ断っても奉仕部を経由されたらそれでしまいだ」

いろは「さっすが先輩!頭の回転が早くて助かりますよ~」

八幡「ハイハイ。それで、どういう用件なんだ。手短に頼むぞ」

いろは「実はですね、私と付き合って欲しいんですよ!」

八幡「…まさか後輩からも罰ゲーム告白を受けるなんてな」

いろは「えっ」

八幡「で、何処に女子の集団は隠れてんだ。それとも録音でもしてるのか。まあどっちにしても用件がそれなら俺は帰るぞ」

いろは「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!そんなんじゃありませんから」

八幡「あのなぁ、お前葉山が好きなんだろ」

いろは「もちのろんですよ!」

八幡「じゃあなんで俺と付き合うんだよ」

いろは「えへへ…実は私、最近ちょっと困ってるんですよ」

八幡「嫌な予感がしてきた」

いろは「まあ簡単に言うとモテ期って奴ですかねぇ。いや、私の場合は年中モテ期なんですけどね、まあとにかく、ちょっと男子からのアプローチが酷くてですね」

八幡「お前のモテる自慢なんか聞いても何の足しにもならないんだがな」

いろは「もー、女の子を急かしちゃダメですよ?まあ結論から言いますと、葉山先輩以外の男から離れたいのでそのキッカケを先輩に頼みたいって事なんですよね」

八幡「断る」

いろは「えー!なんでですか!」

八幡「そんな事ならもっと他の奴に頼めばいいだろ。俺じゃなければいけない理由もないしな」

いろは「そんなぁ、私と先輩の仲じゃないですか。持ちつ持たれつ一心同体運命共同体一蓮托生じゃないですか」

八幡「いつから俺達の関係はそんな重いものに変わったんだよ」

いろは「だって、その辺の男子なんかに頼んで変に勘違いされても困りますし…それにほら、私って結構カースト上位の人じゃないですか。下手な男じゃダメなんですよ」

八幡「だったら尚更俺は適任じゃないな。自慢じゃないが俺はカースト最下位だぞ」

いろは「ホントに自慢になってませんね…まあ確かに先輩のカーストは最下位ですけど」

八幡「自分で言っといてあれだが面と向かって言われると腹が立つな」

いろは「でも敢えて言わせてもらえるなら、先輩はそれなりに評価出来る部分もあるんですよ?」

八幡「例えば?」

いろは「んふふ、それはヒ・ミ・ツです」

八幡「うぜぇ…」

いろは「ちなみにノーと答えるなら奉仕部を経由しますよ。最近先輩、奉仕部に寄り付いていないらしいじゃないですか。それをされると困るんじゃないですか?」

八幡「…端からイエス以外の選択肢はなかったわけだ」

いろは「イエス!その通りですよ!」

八幡「はあ…それで、具体的にはどうすればいいんだ?」

いろは「そうですねえ…とりあえず恋人っぽい振る舞いをする事から始めましょうか」

八幡「悪いが俺に期待するなよ」

いろは「まあ期待していないとはいえ、そう言う事を恥ずかしげもなく言えるところは素直に凄いと思いますよ」

八幡「俺は下手に強がったりカッコつけたりするのが嫌いだからな」

いろは「えーそうですかあ?男はやっぱり見栄はってなんぼだと思いますけど」

八幡「はあ、これだからビッチは困るぜ」

いろは「ビッチじゃないですよ!」

八幡「こんなこと頼む時点で大概だろ」

いろは「…まあとにかく今日の所は話したい事も終わりましたし帰りましょうか」

八幡「そうだな。それじゃさいなら」

いろは「いろはパーンチ!」

八幡「痛えよ!脇腹はやめろ脇腹は」

いろは「せっかく恋人がいるのに1人で帰るつもりですか?」

八幡「プライベートは大事にするタイプなんでね」

いろは「それじゃあプライベートで最優先の私と一緒に帰りましょう」

八幡「断る」

いろは「はいはいダメですよ。彼女の言う事は絶対ですよ?」

八幡「お、おい!わざわざ腕組む必要なんか無いだろ」

いろは「ラブラブな所を見せなかったからこの計画の意味がないじゃないですか。…まさか、その気になっちゃいました?」

八幡「冗談よせ。単純に恥ずかしいだけだ」

いろは「こんな可愛い彼女に腕組みされるなんて、先輩の人生じゃこの先無いかもしれませんよ?堪能していった方がいいですって」

八幡「勝手に俺の未来を予言するな。それに俺の夢は専業主夫だ。経済力さえあれば相手には何も求めん」

いろは「えー…ドン引きですよぉそれは。男は女の子を養ってなんぼですよ?」

八幡「はぁ…これだからアホは困る」

いろは「酷い言い様ですね!」

八幡「いいか、お前は男性と女性は平等だと思うか?」

いろは「そりゃあまあそうですよ。そんな当たり前の事聞かれても」

八幡「そうだ。それは当たり前の事だ。現代社会で男女平等なんてのはな」

いろは「男女平等だから専業主夫があってもいいってことですか?」

八幡「全然違う。ときに現在の日本の出生率を知ってるか?」

いろは「いきなり社会の問題ですかぁ?うーん、2ぐらいですか?」

八幡「ニュースぐらいしっかり見た方がいいぞ。1.41だ」

いろは「それって高いんですか?低いんですか」

八幡「先進国の中じゃ低い方だ。フランスなんかは2あるぞ」

いろは「うーん、それで、それと専業主夫は関係あるんですか?」

八幡「ある。日本で出生率が下がっている原因を知ってるか?」

いろは「えーっ…なんですかね?」

八幡「色々原因はあるが、一つに女性の社会進出がある。女性が社会進出しだすと当然だが女性の地位はその社会に固定される。例えば、会社に勤めている女性はその会社の一員になるだろ」

いろは「はぁ」

八幡「会社で働けば子供を育てるのは困難だ。時間も取られるし、その会社で築いた地位も失う可能性があるし身体的な要因もある。だから女性は子供を産まなくなっているんだ」

いろは「うーん…」

八幡「だが女性にとって子供を産みたくないという人は少数だと言われてる。特に女性にとって子供という存在は自身の自己自律性を確立するものだと考えられているしな」

いろは「なるほどぉ…」

八幡「つまり、俺はそういう女性を支えて彼女達が働きやすい社会を専業主夫という形で支えたいんだ。わかったか?」

いろは「よくもまあそんなもっともらしくてどうでもいい言い訳が思いつきますねえ。感嘆しましたよ」

八幡「そんなに褒めるなよ」

いろは「褒めてませんよ」

八幡「知ってる。言ってみただけだ」

いろは「せーんぱい!お昼ご飯食べましょう!」

八幡「…」

いろは「無視ですかー?聞こえてますかー?生きてますかー?…はっ!?へんじがない…ただのしかばねのようだ」

八幡「生きとるわ。…何しに来たんだ」

いろは「先輩とご飯食べよう思いまして!」

八幡「断る」

いろは「えっー、彼女の頼みを断るんですか?」

八幡「っ…お前、どんだけ迷惑な事を」

結衣「今のどういうこと…?」

いろは「あっ、由比ヶ浜先輩、こんにちわ~」

結衣「…ヒッキー、答えて。今のはホントなの?」

八幡「…何の話だ?昼飯ならまだ食べてないぞ」

結衣「いろはちゃんと付き合ってるって」

いろは「ホントですよ?」

八幡「…」

結衣「…そう…ヒッキー、ホントに…ヒドイよ…」

八幡「お、おい由比ヶ浜!」

いろは「あれー、なんかまずっちゃいました?」

八幡「…ちょっとこい」

いろは「やだ先輩、大胆ですよぉ」

八幡「…どういうつもりだ」

いろは「何がですか?」

八幡「いくら何でもクラスまで来る必要は無いだろ」

いろは「どうしてですか?皆に見せつけなきゃ意味がないじゃないですか」

八幡「…付き合ってるってこと、葉山にまで見せつける必要があるのか?」

いろは「当然ですよ!私が先輩の彼女だってわかれば…」

八幡「全く理由がわからないんだが…」

いろは「…ほら、人のモノって…とりたくなりませんか…?」

八幡「…つまり、葉山の対抗心を煽って自分に告白させようってか」

いろは「まぁ、そういうことですねぇ。でもソレはあんまり狙ってませんけどね。そんな簡単に事が運ぶとは思ってませんし」

八幡「…本当にそれだけか?」

いろは「…えっ?」

八幡「いや、何でもない。まあこうなってしまったものはしょうがないからな。とにかく由比ヶ浜には本当の事を」

いろは「それはダメですよ、先輩」

八幡「なんでだよ。別にあいつに話したとこで」

いろは「秘密はどこから漏れるかわかりませんからね。この秘密は2人だけのものです。他の人には、関係ありませんよ」

八幡「…」

いろは「せーんぱい!迎えに来ましたよー!…あれ?」

戸部「あれ、いろはちゃんどーしちゃったの?今日サッカー部来るでしょ?」

いろは「あーいやーそのー…比企谷先輩いますか?」

戸部「えっ?あっー…ヒキタニ君?どこだろ…」

いろは「…っ、わかりました、ありがとうございました」

戸部「あっちょいろはちゃーん?どうしたんだろあんな急いで…」

八幡「…相変わらずだな。ココは」

雪乃「…何をしに来たのかしら。ここは貴方みたいな悩みの無い人間の来るところではないわ」

八幡「ヒドイ言い草だな。これでも部員のはずだがな」

雪乃「…部員だからこそ、部員だからこそよ、比企谷君」

八幡「…もう、知ってるのか」

雪乃「ええ。非常に不本意だけれど、クラスの女子に聞かされたわ。とても下卑た顔でね。まるで私がフラレたような口振りだったわ。腹立たしい」

八幡「…そりゃすまんね」

雪乃「なぜ貴方が謝るのかしら」

八幡「…それもそうだな」

雪乃「そうよ、謝るぐらいならどうしてあんなことしたの?あの子が好きだったから?それともただ私達の苦しむ顔が見たかったから?」

八幡「…」

雪乃「沈黙は肯定かしら?…とにかく、貴方には失望したわ」

八幡「…失望?そりゃ俺の台詞だよ、雪ノ下」

雪乃「なんですって?」

八幡「雪ノ下雪乃さんでも、自分のコンプレックスには勝てないらしい」

雪乃「…」

八幡「沈黙は、肯定か?」

雪乃「…っ、意趣返しのつもりかしら?貴方の的外れな意見にあっけにとられていただけよ」

八幡「そんなにあの人を超えたいのか?」

雪乃「…貴方にはわからないわ。私を、私達を否定した貴方には」

八幡「そうだ。俺は否定した。お前をだ雪ノ下。結果お前は俺に負けた。俺に負けたのにあの人が超えられると思うのか」

雪乃「私が貴方に負けた?何を馬鹿なことを…」

八幡「どっちでもいいさ。どっちでもな。お前はもう俺の知ってる雪ノ下雪乃じゃない。負け犬だよ、お前は」

雪乃「ここまで…ここまで私を惨めにさせたのは誰よ…比企谷君」

八幡「なら俺に勝ってみせろよ。そうじゃなきゃ姉にとって変わるなんて、一生無理だ」

雪乃「…絶対に…絶対に見返してあげるわ…あの人も、あの子も、貴方も…」

八幡「ああ、じゃあな。雪ノ下」

八幡「聞いてたのか」

いろは「…利用しているつもりが、利用されていたってわけですか」

八幡「…だとしたら、俺を憎むか」

いろは「…ホント、先輩にはかないませんね。そんなに敵を作るのが好きなんですか?」

八幡「趣味でな。それしか出来なくなっちまった」

いろは「…偽恋人はどうするんですか」

八幡「まあ体裁的にはある程度続けたいんだがな、俺としては」

いろは「ふふっ…ならおしまいですね」

八幡「随分意地の悪い話だな」

いろは「はい。お返しですよ。これでおあいこです」

八幡「俺は別に悪いことしたつもりは無いけどな」

いろは「しましたよぉ、可愛い後輩の純情を弄びました」

八幡「ビッチのくせによく言うぜ」

いろは「そうですよ、ビッチですよお。彼氏と別れたのにもう好きな人、見つけちゃいました」

八幡「はっ?」

いろは「先輩、大好きです」

いろは「今日は早めの到着ですね、先輩」

八幡「遅れたらブーブー言うだろお前。この前も一日中文句言ってたしな」

いろは「そりゃそうですよ。女の子待たせるなんてありえませんよ」

八幡「時代は変わったんだよ。もっと流れに乗れよ」

いろは「いくら変わったからといって人を待たせるのはどうかと思いますよ?」

八幡「…」

いろは「沈黙は肯定ですか?」

八幡「はひ…」

いろは「それで、今日はどこに行くつもりですか?」

八幡「映画でも見に行くか」

いろは「えっーまたですか?前も見たじゃないですか。どうせなら先輩んちで見ましょうよ」

八幡「俺んちはシアターじゃないぞ」

いろは「知ってますよ。そうだったら逆に引きますよ。映画借りて先輩の家で見ましょうってことですよ」

八幡「お前はそれでいいのかよ」

いろは「貧乏な先輩に何度も奢られると流石に引け目を感じちゃうんで」

八幡「ありがてえありがてえ

いろは「もっとちゃんと感謝して欲しいですよ全く」

八幡「これ以上どうしろと」

いろは「そうですねぇ…態度で示すとか、ですかねえ」

八幡「マジかよ。こんな冷えたコンクリートに頭こすりつけたら病弱な俺はたちまち死んでしまうのですが」

いろは「ヘタレはすぐ土下座しようとするから困りますねえ…これですよこれ」

八幡「なんだ、結局金か…」

いろは「ちがいますよ!手です手!」

八幡「ふう…寒いから手を繋ぐのは嫌なんだけどな」

いろは「嫌とか言わない!可愛い彼女と手を繋げるなんて先輩の人生でもうこの先ないかもしれませんよ!」

八幡「それはお前が嫁になるからか?」

いろは「…ドン引きです」

八幡「すいません調子乗りました」

いろは「いやーさすが先輩チョイスの映画ですね。クッソつまらんでした」

八幡「俺は悪くない。悪いのは配給会社と面白そうな雰囲気を醸し出してるジャケットだ」

いろは「不愉快です。DVD叩き折って返しましょう」

八幡「やめて下さい僕名義で借りてるんですよ」

いろは「はぁ…すること無くなっちゃいましたね」

八幡「帰るか?」

いろは「彼女をすぐに帰らそうとしないで下さいよ」

八幡「俺はプライベートを大事にするタイプだからな」

いろは「そのプライベートにちゃんと私も入れてくださいよ」

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