春香「プロデューサーさんが痩せたら引き抜きにあった」(103)

春香「遅いなあ……」

P「春香ぁ~」ドスドス

春香「わ、プロデューサーさん、凄い汗!」

P「はー、はー」

P「いやー、すまんすまん、遅くなって」

春香「はい、ハンカチです」

春香「まだ寒いですから、風邪、ひかないようにしてくださいね?」

P「お、いいのか?はっはっは、ありがとう」

―事務所―

小鳥「あっ、プロデューサーさん、健康診断の結果来てますよ?」

P「はーい、どうもっす」

P「どれどれ……」

春香「どれどれ……?」

P「……」

春香「えー、どれがどういう数字なんですか?」

小鳥「赤い数字が基準値越えです」

P「……」

春香「わー、真っ赤っか……」

P「……痩せるか……」

春香「協力しますよ」



そしてPは計10日の有給を取得し、ダイエットに励んだのだった

現場での仕事も重なり、まともに事務所に顔を出すのは実にひと月ぶりであった

伊織「あの馬鹿今日からまた事務所に来るのね」

小鳥「短期間で痩せられるだけ痩せるってあんまり体に良くないんじゃ?」

春香「そう言ったんですけど。決意が固かったので」

伊織「別に大して変わってないでしょ?」

春香「いやー、すっごい痩せたよ?プロデューサーさん」

律子「へえ……それは楽しみね」

P「おはようございまーす」

伊織「小鳥、お客さんよ」

小鳥「はーい、おはようございます……本日はどのようなご用向きでしょうか?
  私が伺ってもよろしいでしょうか?」

P「やだなあ。俺ですよ。随分ご無沙汰してます
 久しぶりだからちょっと緊張しちゃうな」

律子「もしかして……プロデューサー……?」

小鳥「…………マジですか?」

春香「おはようございます!プロデューサーさん」

伊織「べ……別人じゃないの……」

春香「痩せたのは痩せたけど……そんなに変わったかなあ?」

伊織「アンタ、何言ってんのよ?!
  肉の中からもう一人出てきたってレベルで変わってるわよ!」

小鳥「ど……どうやって痩せたんですか?」

P「それはですね……」

朝:春香の家まで自転車で弁当を取りに行く(ついでに朝飯食う)
昼:自宅まで戻る
夜:春香の家まで自転車で晩飯を食いに行く

律子「……春香の家までって……何kmあるのよ……?」

P「朝も明けないうちから自転車こぎ出してなー。最初は大変だったよ」

春香「私が毎日、栄養考えてご飯作って、お弁当も作ったんですよ!」

P「ああ、春香のおかげで痩せられたな!はっはっは!!」

伊織「中身は変わってないわね……」

P「最近体調が良くてなー!朝晩運動してるぞ!!
 さ、この勢いで仕事仕事!」

律子「ま、元気なら何よりです」

春香「じゃあ、私たちはレッスンだね」

伊織「まだ他が来てないわよ?」

P「あ、そうそう、音無さん」

小鳥「はい?」

P「この仕事の件なんですけど……」

小鳥「は、はいっ」

小鳥(何だか別の人が横にいるみたい……)

真「おはようございまーす!!」

P「おはよう!」

真「あ、お、おはようございます……」

真(し、知らない人だ……)

律子「真、そのパターンはもう小鳥さんがやったわ」

亜美「とりゃー、絶・天狼抜刀牙!!」

真美「ぐああああーやられたー!」

P「はっはっは、亜美と真美は元気だなあ!」

P「どれ、俺も混ざるかー、赤カブト役で」

亜美「……あっ……に、兄ちゃん……」モジモジ

真美「う、うるさくしてゴメンね……」モジモジ

P「えっ?」

P「おう、雪歩ー、おはよう」

雪歩「ええ?!……はははははいっ……」

雪歩「おおおおおはようございますっ」

P「おーい、そんなに離れないでくれよ……」

雪歩「ええっ!?そそそそそうですねっ」

雪歩「でででででも!!」

P「……」

響(こ、この人誰?)

美希(プロデューサーなの?)

P「よーう、おはよう」

響「…………あっ、やっぱプロデューサーか…」

響「おはよう、ございます」

美希「……おはよう、なの」

響(うー、何だか、違う人みたいだぞ……ちょっと照れちゃうじゃないか)

美希(何かいけすかない感じになったの……)

P「……」

P「……最近、何か変わったことないか?」

響「と、特にないぞ」モジモジ

美希「べ、別に無いの」

響「それじゃっ」

美希「あっ、響、待ってなの」

P「……」

貴音「そ、そのお姿は一体……?」

千早「プロデューサー……なんですか?」

P「うん」

千早「随分……痩せましたね」

P「おう、すごいだろ、はっはっは。かなり食べる量減らしたからな」

千早「へえ……」

貴音「何と……それでは……らぁめんを御一緒することは最早かなわないのですね……」

P「いや、ラーメンくらい食いに行くけど」

貴音「それを聞いて安心しました」

千早(別にプロデューサーはそこまで大食いだったわけではないと思うのだけれど)

あずさ「……凄い……ダイエットですね……」

春香「そんなに変わったかなあ?」

伊織「変わり過ぎでしょ!」

真「……」

あずさ「後でやり方聞こうかしら……」

春香「あ、私、やり方は大体知ってます!」

あずさ「あら本当?参考にしようかしら……」

真「……」

伊織「……真?」

真「結構、カッコいいかも……」

春香「……」ピク

伊織「は、はぁ?あ、アンタ正気?元はアレなのよ?」

真「そ、そうか……」

あずさ「確かに、ちょっと格好いいかもしれないわね~」

真「そ、そうですよね?」

伊織「はぁ~、あんた達、正常な判断能力を失ってるわよ」

小鳥「プ、プロデューサーさーん、お電話ですー」

P「はーい……こんにちは、Pです」

P「…………本当ですか!ありがとうございます!」

P「はいっ、それではまた、後ほど」

P「……よしっ!」

社長「決まったのかね?」

律子「社長!?」

P「はいっ、東豪寺プロと、合同でカバーCDを出す話がまとまりました」

律子「休んでる間にそんなことしてたんですか?」

P「ただ休んでるのもどうかと思ってな。あちらからオファーがあった件でちょこちょこ
 交渉してたんだよ」

社長「そうそう」

小鳥「わ、私にも内緒で……」

P「いやー、こちらから結構条件を吹っかけちゃったもので、決まるか分からなかったんですよ」

伊織「え?麗華と仕事ができるの?」

P「うん」

春香「へぇー、凄いんですねー」

P「他人事のように言ってるけど、春香も歌うんだぞ?」

春香「ほ、本当ですか?!やった!」

P「あちらが魔王エンジェル3人で、こちらは伊織と春香だ」

―スタジオ―

麗華「ちょっと!これどうなってるのよ!?何回言わせるの!」

スタッフ「ひっ、す、スイマセン!!」


春香「ひゃー……」

伊織「麗華とばしてるわね……」

P「はっはっは。いやー、デカい声だ。アレに負けないように元気に挨拶して行くか!」

春香「はいっ!」

P「おはようございまーす!」

春香「おはようございまーす!」

スタッフ「あっ、おはようございます」

P「よろしくお願いしますよ、はっはっは」

春香「一生懸命頑張ります!」

スタッフ(よかった……765プロの人は優しそうだ……)

麗華「……あれ?765プロのプロデューサーってあんな人だっけ……?」

ともみ「そういえば……もっと大柄な人だったような」

りん「新しい人でも雇ったんじゃないの?」

伊織「あれは昔からいるウチのプロデューサーよ」

麗華「あ、伊織、久しぶり……で、あの人ってどっか悪いの?」

伊織「逆よ逆。どっか悪くなりそうだったから痩せたのよ」

麗華「……痩せたってレベルじゃ無くない?アレ別人……」

伊織「そうね。アホみたいに痩せたわね。ホラ、昔の写真」

ともみ「……同じ人……?」

りん「嘘……」

麗華「ふーん……」

―収録中―

麗華「チッ、また上手く行かなかった……」

P「そうみたいだね」

麗華「あ、765プロのプロデューサー」

麗華「そうだ、何かアドバイスしてくれない?」

P「ええ?アドバイスねえ……うーん……」

麗華「何でもいいから」

P「この歌、歌詞難しいよね」

麗華「そうそう!」

P「一応ドロドロの恋愛ものなのか……うーん」

麗華「ちょ、ちょっと、そこまで悩まなくていいってば」

P「歌を聞いた感じだと、昼ドラっぽいドロドロ感を出そうとしてるって感じかな?」

麗華「え?う、うん……」

P「何かこう、待つ女の執念というか、内に秘めた感じというか
 そういうのを出してみたらどうだろう」

麗華「敢えて最初は感情出さない、とか?」

P「お、いいねえ」

春香「プロデューサーさーん!どこですかー?」

P「あ、呼んでる」

麗華「どうもありがと。参考になったわ」

P「そう?それは良かった」

麗華「また必要な時に連絡するわ」

P「え?あ、ああ、是非」


春香「はい、今日のお弁当ですっ」

P「ああ、今日も美味そうだなあ」


麗華「……ふーん……」

―後日 事務所―

社長「いやー、例のCD、売れてるね。結構結構」

P「ありがとうございます。今回は魔王エンジェルの名前によるところが大きいですが
 こちらの知名度も増していますね」

春香「おはようございますっ!プロデューサーさん!凄いんですよ
  学校で、みんな買ってくれて、CD!!」

社長「ははは、それは良かったね」

春香「……あ、社長……ごめんなさい、はしゃいじゃって」

社長「いや、結構結構!」

P「ああ、今回春香はよく頑張ったからな」

伊織「ふーん」

P「あ、もちろん伊織もな」

小鳥「社長、お電話です」

社長「はいはい」

社長「はい、765プロの……あ、これは東豪寺プロの社長、お世話になっております」

社長「え?……しかし……は、はぁ……」


小鳥「社長、先方はどんなお話を?」

社長「……引き抜きだよ」

小鳥「ええ!?ど、どの子を引き抜くんですか?」

社長「……アイドルじゃないんだ」

社長「……と、いうわけなんだ」

P「お、俺が引き抜き……どうして……」

社長「この間のCDの時に君を気に入ったらしい」

P「そんな気に入られるようなことはしてないと思うんですが」

社長「まあ、何がきっかけになるかは分からないからね」

P「直接断りましょうか?」

社長「……魔王エンジェルのプロデュースが出来るとしても……?」

P「……」ピクッ

伊織「アイツが引き抜きですって!?」

小鳥「うん……みんなにも知らせておいた方がいいと思って……」

小鳥「魔王エンジェルのプロデュースを任せるって言ってるそうよ」

伊織「麗華……やってくれるわね……」

真「それって……まずいんじゃ……」

響「そ、そうだぞ!今プロデューサーに抜けられたら……」

律子「止めるしかないわね……」

真「うん、プロデューサーを行かせちゃ駄目だ!」

春香「……」

伊織「ちょっと春香!何で黙ってるのよ」

春香「……止めた方がいいのかな……?」

伊織「はぁ?何言ってるの!」

春香「だって、この話……プロデューサーさんにとっては凄いチャンスなんだよ?」

みんな「!!」

春香「プロデューサーさんだって……この業界にいる以上、チャレンジしてみたいと
  思っても、私は責められないよ……」

律子「それはそうだけど……」

伊織「春香、あんたが言ってることは正しいわ。でもね」

伊織「あんた、本当にそれでいいの?」

春香「え……?」

律子「ちょっと伊織……」

伊織「あんた、プロデューサーのことどう思ってるのよ?」

春香「どうっ……仕事熱心で優しい」

伊織「それだけなの?」

律子「伊織、そこから先は」

伊織「わかってるわよ。春香、良く考えてみて」

春香「……」

春香(良く考えてみて……か……)

春香(私にとってプロデューサーさんは……)

春香(いっつも優しいし、私のことを第一に考えてくれるし……)

春香(それだけなのかな……?)

―次の日―

真「やっぱり、プロデューサーを止めようと思う」

響「そうだな……今抜けられたらやっていけないぞ」

やよい「プロデューサー、いなくなっちゃうんですか……?」

真美「そんな……困るよー」

亜美「最近あんまり絡んでなかったのにお別れなんて寂しすぎるよー」

伊織「そうよね。これは断固阻止しないと」

社長「おはよう。あれ?君たち随分早いね」

小鳥「それがその……プロデューサーさんを引き留めようという話になりまして」

社長「……ふむ、しかし彼は今日、あちらとの面談に直接行ったよ」

みんな「えー!?」

社長「私としても複雑だが……彼にとってもチャンスだからね」

―東豪寺プロ前 面談後―

春香「……」

P「うおっ、春香!?どうしたんだこんな所で」

春香「プロデューサーさん……」

春香「行かないで下さい!!」

P「……」

春香「今までずっと、プロデューサーさんのことを考えてました!」

春香「プロデューサーさんは私にとって、かけがえのない唯一の人なんです!」

春香「プロデューサーさんの笑う声を聞くと元気になるんです!」

春香「プロデューサーさんに相談すると一緒に悩んでくれて
  また頑張ろうって気持ちになるんです!」

春香「まだこの気持ちがどんな気持ちなのか整理できてないんですけど!」

春香「私、自分勝手言います!プロデューサーさん、行かないで下さい!」

P「……ああ、引き抜きの話か……」

P「あれ、断りに来たんだ」

春香「え……?だって魔王エンジェルの……」

P「ああ、プロデュース出来るって話だったけどな」

―事務所―

P「いやな、まず謎のプロデューサーXとしてサイバーなカッコして
 サングラスかけて売り出すって言われて」

P「受ける方向性によっては痩せる前と後の比較画像出して
  面白プロデューサーで売る、みたいな」

美希「うげー、そんなの嫌なの」

伊織「麗華、そんなこと考えてたのね……」

P「それはちょっと……と思ってな」

真「そうですよね、それで正解ですよ!」

千早「良いお話だと思っていたのですが、そういうことでしたか」

響「それにしても良かったぞ」

亜美「安心したところで、兄ちゃん、遊ぼうよー」

真美「そうそう」

P「ああ、遊ぶか!」

やよい「あ、あのっ、私も一緒に」

P「おう、よーし、俺張り切っちゃうぞー!」

春香「……」

社長「どうしたんだい?」

春香「本当に良かったのかなって」

社長「……彼が決めたことだよ」

春香「社長は、知ってたんですよね?」

社長「ああ、サラリーはウチの8倍、
 楽曲のプロデュース自体は彼に一任するという話だったね」

社長「格好は彼の言ってる通りだったらしいけどね。誇張されてはいるが」

春香「……」

社長「君たちの可能性に、彼は賭けた……と、私は思ってるよ」

春香「可能性……」

―その後―

P「いやーはっはっは!!」

小鳥「若干体重が戻りましたね」

P「そうなんですよ。まあ健康的な範囲で」

雪歩「こっちのほうがいいですぅ」

貴音「そうですね……またらぁめんを共に食べに行けます」

美希「痩せてた頃はいけ好かない感じだったし、こっちのほうがいいの」

P「がーん……そんな風に思われていたのか」

あずさ「どんな容姿でもプロデューサーさんはプロデューサーさんですよ」

真「ボクは痩せてた方が……」

春香「プロデューサーさん、お弁当です」

P「いやー、いつも済まないなあ」

春香「いいんですよぅ、私も楽しいですし」

P「やっぱり春香の作った料理が一番だよ」

春香「そんな……プロデューサーさん、ほめ過ぎですよ」

P「そんなことないぞ」

P「俺にとっては、春香はかけがえのない唯一の存在だからな」

春香「え……?」

P「じゃあ、外回り行ってきまーす」

春香(……そうか……今ハッキリ分かった……)

春香(これ、好きっていう感情なんだ)

春香(私、プロデューサーさんのことが好きなんだ……)

―東豪寺プロ―

りん「うーん、アレは無かったんじゃないの?」

ともみ「謎のプロデューサーX?」

りん「そうそう」

麗華「うっさいよ!!」

麗華(いいアイディアだと思ったんだけど……)

りん「でも、結構いい男だったね、あの人」

ともみ「あの大見得はなかなか言えることじゃないと思う」

―P『今は完全に原石ですが、765プロの所属アイドルは全員かなりの才能を秘めてます』―

―P『俺は、それを磨きたい』―

―P『特に、皆さんもご覧になった天海春香、彼女は魔王エンジェルという眩い宝石に匹敵する素材です』―

―P『だから、私はこのお話をお受けするわけにはいきません』―

麗華(アイツなら、私たちのことも受け止めてくれる。そう思ったけど……)

麗華(でも、担当中のアイドルを見捨てるような奴なら声はかけなかった……)

麗華(あーもう、めんどくさいわね!!)


麗華「ウチに喧嘩売るなんて、あの男いい度胸じゃないの!!」

麗華「正々堂々、受けて立ってやるわ!765プロ!」


終わり

春香さんメインヒロインとだけ決めて
いろいろと思いつくままに書いてたら取り留めのない話になってしまいました
読んで下さった皆さん、ありがとうございました

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