ボクサー「僕が魔王退治ですか……」 (43)

ボクサー「ここはどこだ?」

ボクサー(ロードワーク中、車に轢かれそうな猫を助けようとして、代わりに車に轢かれて死んだはずなんだが……)

ボクサー(見たことの無い場所。これがあの世なのかな?でもなんか死んだ感じがしない)

ボクサー「仕方ない。身体は普通に動かせるようだし歩いてみるか」

————
——


ボクサー「おっ、民家発見。ってことはあの世ではないのかな……」

ボクサー「迷っても仕方ない。すみません。誰かいませんかー」



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「どなたですか?」

ボクサー「えっと……道に迷ったといいますか」

「貴方、魔力を感じないから、ただの人間のようですね」

ボクサー「はい?人間ですけど……」

「危険ではないと判断したので扉を開きます」

ガラッ

ボクサー「……?」

ボクサー(あっ、やっぱりここはあの世みたいだ。だって)

「どうしました?猫は珍しいですか?」

ボクサー「猫が……猫が……喋ったぁぁ!?」

猫「そりゃ喋りますよ、猫ですから。それより早く入ってください。また結界張らないといけないんですから」

ボクサー「えっ……あっ、はい」

————

——家の中——

ボクサー「……」

猫「なんで正座なんですか?楽にどうぞ。あとお茶です」

ボクサー「あっ、ありがとう」

猫「貴方……変な格好してますね」

ボクサー「えっ?普通のトレーニングウェアだけど」

猫「魔力も感じないし、見たとこ武器もない。よく魔物に襲われなかったですね」

ボクサー「……?」

ボクサー(夢か?頬っぺた痛いっ!!夢じゃない!?)

猫「まぁ、お茶をどうぞ」

ボクサー「そうだね!ちょっとお茶飲んで落ち着こうかな」

グビッ

猫「……」

ボクサー「あの……顔に何か付いてる?」

猫「いえ、用心の為にそれ、魔物が飲むと麻痺するお茶なんですよ」

ボクサー「!!さらっとなに飲ませてんの!?」

猫「人間には害が無いですから安心してください」

ボクサー「そういう問題!?意外に腹黒いね君!」

猫「この世界では図太くなきゃ生きて行けませんから」

ボクサー「……少しは落ち着いたから訊くけど、ここはあの世なのかな?」

猫「あの世とは?」

ボクサー「死んだ魂とかが行く世界とか」

猫「失礼な。私は生きてますよ。元気です」

ボクサー「じゃあここはどこなの……」

猫「ここは、魔王と魔女の二大巨悪が支配する世界です」

ボクサー「……ゲームの世界?」

猫「ゲームとやらが何かは知りませんが。貴方は、違う世界から迷い込んだ方なのですね」

ボクサー「たぶん、そうかな……」

猫「なるほど。だから不思議な格好をしているわけですね」

ボクサー「僕からしたら、猫が普通に喋ってるほうが不思議なんだけど」

猫「貴方の世界の猫は喋れないんですか?可哀想に」

ボクサー「けど猫好きな人も多いから、可愛がられてる存在ではあると思うよ」

猫「可愛がる?」

ボクサー「肉きゅうぷにぷにしたり頭とか喉元撫でたりとか?」

猫「な、なんとハレンチな!!まさか奴隷なのですか……」

ボクサー「えーっと……奴隷とは違うけど」

猫「私は絶対そのようなことはさせませんよ!?」

ボクサー「そんな後退りしないでも嫌なことはしないよ……」

ボクサー「それより、ゲームの魔王とか魔女って、まぁ、かなりの確率で酷い奴だったりするんだけど。ここの魔王とか魔女は?」

猫「悪いやつですよ。人間を奴隷にしたり、魔女はこの世界に呪いをかけたり」

ボクサー「あっ、やっぱり」

猫「今の時期は、人間や他の種族狩りが盛んな時期ですから、家に結界を張ってたわけです」

ボクサー「なるほど。ということは違う世界から来たような人間も?」

猫「珍しいでしょうから真っ先に捕まると思いますよ」

ボクサー「嫌な世界だね……」

ボクサー「死んでないなら、元の世界に戻りたいんだけど……。アパートの家賃あるし、バイトにも、ジムにも行かないといけないから」

猫「私には貴方を戻す手段はありませんよ」

ボクサー「ハッキリ言うね」

猫「ですが、ここから南にある神殿の精霊なら、貴方を元の世界へ戻せるかも知れません」

ボクサー「精霊って綺麗な女神とか!?」

猫「それは知りませんけど。人間には見えるそうなんで行ってみてわ?」

ボクサー「今から行ってもすぐ着く?」

猫「夜になりますね。ちょっと危ないかもなんで、朝から行ったほうが良いですよ」

——翌日・早朝——

ボクサー「泊めてくれてありがとう。じゃあ行ってくるよ」

猫「待ちなさい。私も行きます」

ボクサー「なんで?たしかこの道をひたすら進めば神殿でしょ?迷わないよ」

猫「途中で魔物に遭遇して食べられたら、なんか私のせいみたいで嫌ですから」

ボクサー「食べられる前提ですか……」

猫「とりあえずこれを背負って」

ボクサー「あれ?なんでリュックサック??」

猫「前に、市場で見つけて珍しかったから買いました。これに私を入れて背負って走りなさい」

ボクサー「いいけど。護衛なのに並走しないんだね」

猫「走るのめんどくさいです」

ボクサー「……」

ボクサー「思ったより猫って軽いのな」

猫「失敬な!私は、隣のおデブ猫とは違いますよ!むしろスリムです」

ボクサー「あっごめん」

ボクサー「じゃあ走るから」

猫「どうぞ。私は魔物を警戒してますから」

————

ボクサー「神殿まで何キロくらい?」

猫「私の歩みで1日かかります」

ボクサー「猫の歩幅で1日ならそんなに遠くないかな」

————

スライム「スラーーーイム(待てー食ってやる)」

ボクサー「……」タッタッタッ

スライム「スラー!?(無視!?ちょっ速い!)」

ボクサー「……」タッタッ

スライム「……スラッ(無視しないでよ)」

猫「なんか今、魔物の気配がした気がするんですが」

ボクサー「えっ!?なに襲われちゃうの!?」

猫「今はしないから大丈夫ですよ。それにしても人間は走るの速いですね」

ボクサー「そうなのかな?いつもこのくらいで走ってるけど」

猫「体格差とはこれほどまで違いが出るものですかね」

ボクサー「しかし、この世界は不思議だね。空気が濃いというか身体が軽いというか」

猫「それは、魔力が漂ってるからだと思いますよ。善くも悪くも、潜在能力を高めてくれますから」

ボクサー「おおっ、それは凄い」

——神殿——

ボクサー「というわけで到着しました」

猫「早い……」

ボクサー「いてっ!なんで頭叩くの!?」

猫「気にしないでください。なんとなくですから」

ボクサー「なんとなくって……意外に痛かったし」

猫「それより、魔物の気配もしないですし早く進んでくださいよ」

ボクサー「君、良い性格してるね」

猫「ふふん」

————
——


ボクサー「誰もいない。寂しい神殿だね」

猫「今時、見えもしない精霊に危険冒してまで祈りに来ませんよ」

——神殿・最奥——

ボクサー「ここで終わりか。祭壇もなんかボロボロだね」

猫「信仰心が失われた建造物の成れの果てですね」

ボクサー「あのー精霊さん、いたら姿を見せてくださいー」

猫「シュールな光景ですね」

ボクサー「黙っててよ」

————

ボクサー「……なんも現れないや」

猫「残念でしたね」

ボクサー「帰ろうか」

猫「はい」

「待ってーちょっと待ってー」

ボクサー「なんと!精霊の声か?美人な精霊さんか!?」

精霊「すまんな。待たせて。いやーちょっと腹下っててな」

ボクサー「……」

精霊「どうかしたのかい?僕ちゃん」

猫「精霊現れたんですか?」

ボクサー「うん。現れた……現れたけど……オッサンて!!」

精霊「おい、僕ちゃん。オッサンじゃないぜ。せめてお兄さんと呼びな」

ボクサー「精霊は綺麗なお姉さんって相場が決まってるんでしょ!!」

精霊「そいつは信仰心が高くて綺麗な神殿の場合だ。俺みたいに左遷され……」

ボクサー「あっ、ごめん。やめてオッサンが泣かないで」

————
——


精霊「あー、話はわかった。元の世界に帰りたいんだ?」

ボクサー「死んでないなら帰りたいです」

精霊「んー出来なくもないけど条件がある」

ボクサー「なんですか?」

精霊「力を貸したるから、魔王倒してきて」

ボクサー「僕が魔王退治ですか……」

精霊「うん。俺の力借りて僕ちゃんが魔王倒せば、俺への信仰心も戻ってエリート街道にまた戻れるからさ」

ボクサー「そこはオブラートに包んでほしいな……」

精霊「けっ!綺麗事なんか左遷された時に捨てちまったよ!あっ、また泣きそう」

ボクサー「やめて!!」

精霊「まぁ、だからさ俺の為に働いてよ」

ボクサー「……帰る手段が別にあるなら頼りたくない顔だ」

精霊「さて、なんの力がいい?腐ってもエリート精霊だったから大概のことは出来るが」

ボクサー「うーん……平和的なのはないですか?」

精霊「あるよ!周囲5kmの魔物を重力で圧殺する魔法とか」

ボクサー「平和要素皆無か!!」

精霊「魔物だしいいじゃん?」

ボクサー「殺しはしたくないです」

精霊「えー無理っしょ。アイツらも一部の人間も躊躇いなく殺し合いしてるし」

ボクサー「……」

精霊「それにさー僕ちゃんの世界とここは根本が違うから」

ボクサー「僕の世界を知ってるんですか?」

精霊「うん。精霊だからね。なんかルールばかりで生きにくい世界だよね」

精霊「ここはね。凄いシンプルなんだよ。ルールなんか一個“強い者は何をしてもいい”それだけ」

ボクサー「何をしてもって?」

精霊「殺しも強奪も、いわゆる僕ちゃんの世界で禁止になってたり、処罰されることが全部、強者には問題無しなわけだ」

ボクサー「そんな……」

精霊「最初は甘い考えだった人間も、その半数が魔物に駆逐された頃に考えを改めたけど。時既に遅し」

精霊「今じゃ、魔物が世界の大半を占めてる世界だからさ」

ボクサー「……それでも殺しはしなくていい力が欲しいです」

精霊「僕ちゃん死んじゃうよ?」

ボクサー「変えません」

精霊「やれやれ……なら“強制力”と“創造”を与えるよ」

ボクサー「なんですかそれ?」

精霊「一番、限りなく平和で殺すこともない能力かな」

精霊「そろそろニコチン切れてイライラして来たから手短に話すわ」

ボクサー(やさぐれ街道まっしぐらじゃないか)

精霊「まず“強制力”だが、これは如何なる場合も、僕ちゃんが強制したことからは絶対に相手は抗えない」

ボクサー「強すぎません?」

精霊「もちろん。制約はある。相手に触れていること。相手が言語を理解できる存在であること」

ボクサー「戦場で魔物に触れて、なおかつ言葉も通じないといけないとか……」

精霊「だから万能、完全無欠ではないな。あーっ、ちょっと一本いい?」

ボクサー「……どうぞ」

精霊「あーうめぇ。俺の枯れたハートに染み渡るニコチン」

猫「まだ話し中?」

ボクサー「なんか精霊のオッサンがタバコ吸ってるから待ってる」

猫「なにそれ……」

ボクサー「僕にもわからないよ。夢がぶっ壊されたのだけは確かだけど……」

————

精霊「わりぃ待たせちまったな。次は“創造”の説明だ」

精霊「簡単に言えば、自分の得意な武器をイメージするだけで造り出すものだな。僕ちゃんの場合はボクシングのリングとか」

ボクサー「リング造ってなんになるんですか?」

精霊「魔物とか敵対する人間と殴り合う」

ボクサー「はい?」

精霊「殴り合って勝ったら、相手の悪意が消え去る仕様にしてるから」

ボクサー「……簡単に言うけど」

精霊「殺し合いは嫌なんだろ?むしろ俺からすれば、殺し合いのが楽に思うけど」

ボクサー「……」

精霊「これ以外で僕ちゃんの特性が活かせるのはないから。まぁ、頑張って」

ボクサー「いきなり撃たれたり、魔法とか使われた場合は?」

精霊「それは、そこの猫ちゃんに力与えてやるから、コンビで頑張りな」

ボクサー「……わかりました」

————

猫「どんよりした表情だけど、戻れる手がかり無かったんですか?」

ボクサー「うーん……。手がかりというかなんかおかしな話になった」

猫「おかしな話?」

ボクサー「魔王倒せってさ」

猫「ああ、魔王倒せば平和になりますねーってアホですか?」

ボクサー「精霊に頼まれたんだよ」

猫「絶対に無理ですよ。途方もない数の人間が殺されたんですよ?貴方一人で何が出来ますか」

ボクサー「えっと……一人ではなくて、君にも手伝ってもらえだってさ」

猫「はいぃ!?」

ボクサー「精霊のオッサンが言うには、君の力も強化したらしいけど」

猫「強化って言われても、私が使える魔法なんて、精々、何かを防御したり小規模の結界くらいですよ」

ボクサー「あれ!?なんか攻撃魔法的なのあるから護衛じゃなかったの?」

猫「そんなことは一言も言ってませんけど」

ボクサー「なんてこった……限りなく攻撃力がないコンビじゃないか」

猫「一緒に行くとは行ってないですけど」

ボクサー「ああ……」

猫「まぁ、危なくなったら逃げますが案内はしてあげますよ」

ボクサー「おお、ありがとう!」

——神殿・入口——

猫「とりあえず、一回家に戻って旅支度をしましょうか」

ボクサー「そうだね。じゃあ、また走るか」

猫「頑張ってください」

————
——


スライム「スラッ!(あっ、また居やがった」

ボクサー「……」タタタッ

スライム「スラッスラッ!?(気づけや!!)」

ボクサー「……」タタッ

猫(後ろからスライムが追って来てるけど、追い付けなさそうだからいいですね)

猫(しかし楽チンだなー適度な揺れが眠くなる)

——村・入口——

ボクサー「なんか焦げ臭くないか?」

猫「確かに……まさか」

ボクサー「おっ、おい?飛び出してどうした」

————

猫「……やっぱり」

ボクサー「おいって!ん?」

魔物「……」

ボクサー「……」

ボクサー(なんでいきなり魔物いるんですか?しかも……)

ボクサー「でけぇ……」

猫「……魔族の狩人ですよ」

ボクサー「いきなりピンチ?」

猫「家が燃やされました!倒してください!!」

ボクサー「ええっ!?」

猫「私が、長い時間かけて苦労して建てた家燃やされたんですよ!?」

ボクサー「家なんか建てればいいじゃん!僕手伝うよ!」

猫「うるさいです!あれくらい倒せないで、何が魔王退治ですか」

ボクサー「あんな3、4メートルあるようなゴツいのは反則でしょ!」

猫「貴方だって私から見たらでっかいですよ!」

魔物「……無視か。よし殺す」ブンッ

ボクサー「あぶね!いきなり斧とかダメですよ!?」

魔物「避けるとは生意気な奴だな」ブンッブンッブンッ

ボクサー「くそっ!わりと速い!」

猫「おおー凄い凄い!貴方避けるの上手いですね」

ボクサー「褒めてないでなんか助けてよ!」

魔物「早く斬られろ」ブンッ

ボクサー「絶対に嫌だ!」

魔物「オラァァ!!」ドスンッ

ボクサー「しめた!地面に刺さらせやがった」ガシッ

猫「んにゃ!?」

ボクサー「逃げるが勝ち!!」

ダダダダダダッ

猫「ちょっと!?なに逃げてるんですか!」

ボクサー「無理無理!あんな斧振り回されて戦えるかよ」

——村の外——

猫「逃げてどうするんですか!?」

ボクサー「怖いに決まってるだろ!?そりゃ、試合で怪我したりしたことはあるけど……」

ボクサー「それはルールがあるリングの上で、相手を倒す為で殺す為じゃなかったんだから」

猫「ここでは、殺されるか奴隷になるかの2択なんですよ」

猫「私達は、逃げれば助かるかもしれませんが、村の皆はどうなるんですか」

猫「貴方を頼った私がどうかしてました。勝手に逃げてください」

タタタッ

ボクサー「……なんだよ」

魔物「逃げられたか。まぁ魔女の所望品は何匹か手に入ったからいいか」

デブ猫「くそっ!魔物の馬鹿野郎!」

老猫「おお……殺されてしまうのか」

魔物「安心しろ。魔女が魔力持ちの猫を儀式用に欲しがってたからな。価値ある死になるさ」

猫「その猫達を放しなさい!」

魔物「なんだ、戻ってきたのか」

猫「放さないと酷いですよ!」

魔物「ほう?やってみな」

猫(……正直どうしよう。無策だった……どうしよう)

魔物「どうした?早く攻撃してこいよ」

デブ猫「あいつ……攻撃魔法なんか使えないよな」

魔物「なんだ。口だけなのか?」

猫「い、今すごい魔法を練ってるんですよ!!」

猫(あんのメタボ猫めぇぇ!そういうことは口にチャックしてなさいよ」

魔物「……やれやれ」ブンッ

猫「にゃ!!」

魔物「的が小さいとめんどくさいな」ブンッブンッ

猫「にゃにゃにゃ!!」

猫(やられてしまいます……)

ボクサー「まてーい!」

猫「貴方逃げたんじゃ……」

ボクサー「あんな言われて逃げるかよ。こっちだって男に生まれてんだから」

魔物「おっ、臆病者が現れたな」

ボクサー「……うっさい」

魔物「なら聞かなくてよくしてやるよ」ブンッ

ボクサー「……」ダッ

魔物「わざわざ突っ込んでくるとわな」

ボクサー「……よし、触れられた」

魔物「?」

ボクサー「リングに上がりやがれ」

魔物「なんだ?いきなり四角い足場が現れた?」

精霊「はーい!レフェリーを務める精霊だよん」

ボクサー(……シリアスだったのに)

魔物「なんだこれは」

精霊「HEY!デカブツ魔物君。これはボクシングのリングだ。3分間で僕ちゃんをぶっ倒せれば魔物君の勝ち」

精霊「3分間僕ちゃんが立ってられるか、勝てば魔物君の悪意は消滅するぜ!」

魔物「ふざけたことを!……斧がないな」

精霊「ボックス!!」

カーン!

ボクサー「始まるタイミングは選ばせて!?」

精霊「レフェリーは絶対!ニコチン切れるだろうが」

ボクサー「……ちくしょう!」

魔物「ボクシングってのがわからんが殴り殺せばいいんだろ」ブンッブンッ

精霊「おーっと魔物ちゃんの剛腕が火を噴くぜー!」

ボクサー「うっせ!あぶね!」

ボクサー(けど、大振り!脇腹いける!)

ボクサー(そこっ!!)」

シュッ ゴッ!

魔物「がっ……こいつ……」

ボクサー(もう一発いけるか!いや)

魔物「死ねぇぇ!!)ボッ

ボクサー(危なかった……この体格差でまともに当たればヤバい)

精霊「1分30秒経過ーー!ニコチンが尽きるのが先か、どちらが勝つのか!」

猫「頑張って!負けないで!!」

デブ猫「人間頑張れー!」

老猫「出来れば今のうちに網を……」

————

ボクサー(このリーチと体格差で避けれるのは、この世界で身体能力が格段に上がってるからか)

魔物「なんで狭い空間なのに当たらんのだ……ハァハァ……」

ボクサー(息があがってる。鍛える必要なんか無かったんだろうな)

ボクサー(だけど、こっちは真面目にずっとやってきたんだよ)

ボクサー(ここだっ!!)

ドンッ!

魔物「ごげ……」ドサッ


精霊「ダウン!僕ちゃんコーナーへ!カウント1……5……10!ゴング!!勝者僕ちゃん!」

カンカンカーン!

————
——


デブ猫「助かったぜ!人間ありがとうな」

老猫「助けて頂きまことにありがとうございました」

ボクサー「いえ、助けられて良かったです」

猫「……」

ボクサー「ところで君はなぜにそんな離れてるの?」

猫「えっと……その……」

ボクサー「別に気にしてないよ。さっきは確かに情けなかったから」

猫「……助けてくれてありがとう」

ボクサー「いえいえ。じゃあ僕は行くよ」スタスタ

猫「ちょっと!私も行きますよ」

ボクサー「良かった。正直見捨てられたかと」

猫「けど、背負ってくださいね」

ボクサー「はいはい、仕方ないなー」

——その後——

改心魔物「いやー心が清々しい。ということで、壊した家の修理と、この村の守りをするぜ」

デブ猫「……ほんとに大丈夫?」

改心魔物「大丈夫だ。この村を襲う魔物がいたらぶっ飛ばすから」

デブ猫「そういうことじゃ……」

老猫「改心したとはいえ……」

老猫(こんな厳つい顔が村に居座るのは複雑じゃなぁ)

デブ猫(老猫が考えてることが痛いくらいによくわかる)

改心魔物「あー清々しいな。こんな良い気持ちは初めてだ」

書き溜めおしまい。

読んでくれたら嬉しいです。

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