立
◆◇電車◆◇
男「……」
幼馴染♀「……」
男「……ごめんな」
幼「……なんで謝るの」
男「……」
幼「……ばか」
男「……にしても、よく知ってたな。俺が留学するってこと」
幼「……友くんから聞いた」
男「あー……友か」
幼「なんで私には言ってくれなかったの?」
男「や、最近、あまり仲良く話してなかったしさ。それに……幼ちゃんには言い出しにく
かったんだよ」
幼「……ばか。男くんのばか」
男「はは。昔からそればっかりだよな」
男「でも、どうして、空港まで付き合わせてって?」
幼「……ばか」
男「あはは、またそれかよ」
幼「わ、私から、ずっと、離れないんじゃ、なかったの」
男「……っ」
幼「……ばか」
男「にしても、ホームで急に幼ちゃんが大泣きしたのはびっくりしたな」
幼「……っ、だって……!」
男「ん?」
幼「…………ばか」
男「うん」
男「……そろそろ落ち着いた? 勝手に手を握っちゃったけどさ、幼さ……幼ちゃん……やっぱり手を離した方がいい?」
幼「……や」
男「えっ?」
パッ
幼「……はなしたぁ……」ジワッ
幼「……っ」ポロッ
男「……また泣いて……」
男「……」ぎゅっ
幼「……ばか」
幼「昔もこんなことあった」
……
…………
男『……』
タッタッタッ
幼『うえええんっ! ついてこないでっ』ポロポロ
男『えええええ幼ちゃん待ってよおおおおお』
幼『うわああんっ! いやーっ』ポロポロ
男『幼ちゃんーっ』
ぎゅっ
幼『もうっ』ポロポロ
男『幼ちゃん好きぃー!』
ぎゅっ
幼『それ先生にもゆってたじゃん! はなして! うわあああんっ!』ポロポロ
男『幼ちゃんの方が好きいいいい!!! 好きだからあああ!!!』
ぎゅっ
幼『……ばか』
男『幼ちゃん好きだよー!』
…………
……
男「……ああ、そうだった」
男「親から聞いたけど、幼稚園のとき、ずっと付きまとってたらしいよな、俺」
幼「えっ……『らしい』……って、もしかして覚えてないの?」
男「いやぁ、うっすらとは覚えてるよ」
男「あ、大阪だ」
幼「……ばか」
男「あはは……」
幼「でも、小学生になっても付きまとってた」
男「あはは、うん」
幼「からかわれてたよね」
男「そうだったな、あはは」
……
…………
男『幼ちゃん! 今日も遊ぼー!』
幼『……うん、まあ、別にいいけど』
『おい、お前まぁた女子と遊ぶのかよー!』
『お前ら付き合ってんのかあ!? うへぇ、きんもちわるー!』
幼『……っ』
男『つ、付き合ってないし!』
幼『……』
男『幼ちゃんのこと大好きだけど、そうゆうのはまだだし!!』
幼『……っ!?』
『うへぇ、やっぱ、きんもちわるー! あいつらほっとこーぜ、いこ』
『おう』
男『……さあて、幼ちゃん行こっか!』
幼『いいの? 男子たちほっといて』
男『幼ちゃんがいればいい!』
幼『……ばか』
…………
……
男「あはは、そんなことあったなあ」
幼「うん」
男「ちゃかしてたあいつ、中学になって幼ちゃんに告白したのは絶対に忘れない」
幼「えっ、知ってたの?」
男「うん。幼ちゃん、中学に入ってから告白されまくりだったよな」
幼「や、それを言うなら男くんだって……!」
男「えっ?」
幼「女さんとか、さ」
男「いや……それは違──」
幼「わない! 告白されてた」
男「女に告白されたって……高校のときだし」
幼「……」
男「……西九条」
幼「……ばか」
男「でも、まあ、僕の初恋は中学のときに終わったんだけどな!」
幼「……っ」
男「なーんて……あはは」
幼「……ば……か」
……
…………
『幼ちゃんってモテモテだよね』
『羨ましい』
幼『えっ、そんなことないよ』
『前、告られてたの見たって子がいるけど?』
幼『あー……あはは』
『あ、でも、男くんがいるよね、幼ちゃん』
『あーっ、そっか、幼なじみなんだっけ~』
幼『う、うん』
『格好いいよねー、男くん』
幼『えっ、やっ、ふ、雰囲気だけだよ! 普段は情けないよ!』
『ええっ、そうかなー?』
『私は良いと思うけどなぁ。優しそうだし』
幼『そっ、そんなことないよ、アイツなんて!』
『ええっ、とか言っていつも一緒にいるじゃん』
幼『……付きまとわれてるだけだよ! こ、こっちは迷惑してるの』
幼『べたべたくっつかれても、うっとおしいだけだし!』
男『……』
友『おはよう、男! ……扉の前でどうしたんだ?』
ガラガラ
男『……友。おはよう』
幼『……っ』
男『おはよ』ニコ
『お、おはよ~』
『あー、あはは』
『き、聞かれてたかな?』
『どうだろ?』
幼『……っ』
…………
……
幼「……あのときはごめんなさい」
男「ん? 何のこと?」
幼「……とぼけてる。だって男くん、あの日から急に──」
男「……えっと……」
幼「ごめんなさい……」
男「……弁天町」
……
…………
男『……っ!』
タッタッタッ
『おー、男くん足が速いんだねー』
『この体育祭で惚れた人たくさんいるだろね』
幼『そ、そうかな? ……足速くてモテるのは小学生までだし……』
女『わ、わたし、男くん格好いいなって』
『えっ、女さんも!?』
『も、ってことはあんたも!?』
幼『男くん……』
幼『…………ばか』
男『……ふぅ。なんとか陸上部の名誉を守れた』
女『お、お疲れさまっ! 男くん!』
男『あっ、女さん。ありがとう』
女『男くんすごーく格好良かったよ!』
男『あはは、そうかな』
女『うんっ』
幼『……』ジーッ
『──ちゃん、幼ちゃん!』
幼『えっ? あ、ごめん、どうしたの?』
『どうしたのって、次は幼ちゃんの番だよ、ほら、女子200m』
幼『あ、うん、ごめん』
……
…
幼『……っ』
『お疲れ! 幼ちゃん速いね!』
幼『や、そんなことは……。二位だったし』
『ううん、それでも前半はずっと一位で独走してたじゃん』
幼『あ、あはは……』
男『…………』
男『……あのさ』
幼『……あっ…………何……?』
男『ちょっとごめん』
さすっ
『ちょっ、男くん、急に』
『わっ』
幼『……っい、いたっ』
男『…………歩ける?』
幼『……大丈夫。歩くどころか走れるし。次のリレーもいける』
男『だめだ。幼さん、怪我してるだろ。保健室に行こ。肩かすから』
幼『…………うん』
…
……
幼『……』
幼『やっぱり出られない、か』
男『……ごめん』
幼『えっ?』
男『幼ちゃ――幼さんがリレー出たいの知ってるけど……でも、幼さんの身体が心配で……』
男『俺……怪我を無視できなかった……』
幼『……うん……』
男『うらまれても構わない』
幼『……ばか』
男『ごめん……』
幼『もう……ばーかっ』
…………
……
男「幼ちゃん、男女混合リレーのために頑張ってたよな」
幼「……うん」
男「部活は200mなのに、100m用の練習ばっかりしてたのが印象に残ってる」
幼「えっ、見てたの?」
男「そりゃ、まあ、同じ部活だし……」
幼「そっか」
男「どうしてあんなに熱が入ってたんだ?」
幼「…………はぁ」
男「ん?」
幼「……ばか」
男「ええっ!? どうして?」
幼「新今宮」
……
…………
幼『……あのさ』
男『……』
幼『ちょっと、聞いてるの?』
男『えっ、あ、俺?』
男『幼さんに話しかけられるの久しぶりすぎて、自分だと思わなかった』
幼『…………ばか』
男『はは。ごめん』
男『で、どうしたんだ?』
幼『進路希望調査、出して』
男『えっ、あ、今日提出のやつ?』
幼『うん』
男『何で……って、あ、そうか。幼さん、委員長だったもんな。それで先生に頼まれて?』
幼『そう。みんなのはもう回収し終わってるから。はやく』
男『そっか。ちょっとまって……』
男『はい』
ぱさ
幼『…………ん』
……
…
教師『じゃあ、進路希望調査提出してくれ』
ガタッ
幼『あの、先生、既に回収してます』
教師『ん、ああ、ありがとう。さすが委員長だな。手間が省けた』
教師『言われる前にやる、必要そうなことは率先してやる、これは社会人には必要なことだから、お前等覚えとけよ』
…………
……
男「そういえば、幼ちゃん、委員長の仕事しっかりやってたよな」
男「まさにできる女性って感じだった」
幼「そ、そんなことない」
男「おお、謙遜」
幼「謙遜じゃないし」
男「んー? そうか?」
幼「……ばか」
男「天王寺~」
……
…………
幼『……っ!』
幼『もしかして…………っ』ドキドキ
幼『……はぁ』
『あ、またラブレター?』
『幼さん、モテるねー』
幼『そんなことないよ。卒業間近だし、皆ちょっと浮ついてるだけだと思う』
『いやぁ、それでも幼ちゃんばっかりこう告白されるってのはねぇ~?』
幼『……もうっ』
『あはは』
『でも、全部断ってるらしいね?』
幼『うん……』
『ふーん、どうして? イケメンくんにも告白されたらしいよね。あの人格好いいのにどうして?』
『タイプじゃない、から? それとも、既に好きな人が──』
幼『……っ!』カァッ
『そうなんだー、ふふふっ。だれ?』
幼『お、教えられないよ。秘密っ』
『ええ~っ』
女『あはは──』
男『──なんだってさ』
女『へぇ、そうなんだ!』
幼『……っ』
『あ、女さん男くんおはよー』
『二人仲良いねー? 一緒に学校来たの?』
男『あ、うん。学校行く途中で会って』
女『う、うん』
『ふふ、頑張れー、女さんっ』
女『ええっ!? ちょっ──』
『先、教室行くねー!』
タッタッタッ
女『もうっ』
男『……?』
『ほら、幼ちゃんも行こ!』
幼『う、うん……』
幼『……ばか』
男『…………幼ちゃん……あの手に持ってるのって……手紙……?』
ボソッ
女『……? 男くん?』
男『う、ううん、なんでもない。俺たちも行こうか』
…………
……
男「うーん、やっぱり卒業前はすごくモテてたよな」
幼「……」
ぎゅっ
男「いたたたたっ! ちょ、抓るのやめ!」
幼「……ふん」
男「まあ、でも高校に入っても変わらなかったよな。そのモテっぷり」
男「幼ちゃん可愛いし、何でもできるし、素敵女子だから男子たちの気持ちわかるけど」
幼「……っ」
男「いたたたたっ! ちょっ、だから抓るのやめっ!!」
幼「……ばか」
男「堺市……」
幼「……」
男「にしても、高校も一緒だったのは知らなかったからビックリしたな」
男「うちの中学から入ったのは女と俺だけだと思ってたのに」
幼「私は……男と一緒だって知ってたけど」
男「えっ!? そうだったのか? 教えてくれてもよかったのに」
男「クラス名簿見たとき幼ちゃんの名前があって、こっちは声を出して驚いたっていうのに!」
幼「あはは、ばーか」
……
…………
女『えへへ、同じ高校に入れて嬉しいよ、男くんっ』
男『あはは、俺も。同じ中学からの子っていないからな。知り合いがいたほうがたすかる』
女『うう……そうゆうことじゃないよぅ……』
男『それにしても、あれだな、女さん、その制服すごく似合ってる』
女『っ!? うえっ!? ほ、本当!? 嬉しいな。えへへ』
男『あ、新入生のクラス割だって。見にいこうか』
女『え、う、うんっ!』
幼『……ばか』
男『えっと……俺は1年1組か』
女『っ! 一組こい一組こい一組こい……っ!』
男『あ、女さんも一組か』
女『やったああああああああああ!!!』
男『あはは、喜びすぎ、あはは』
女『神社毎日毎日通ってよかったぁ、あはは……』
男『えっと他のクラスメ――ええええっ!? 幼ちゃんっ!!!???』
女『……ちゃん?』
男『あ、ううん、なんでもない。すまん……ごほんごほん』
幼『ふふっ、ばーか』
…………
……
男「まあ、同じ陸上部だったし、ここに入るのは納得だけど」
幼「……ばか」
男「えっ? 何で? 違った?」
幼「…………ばかっ」
男「あー、あと、友ともこのとき会って仲良くなったんだよな」
幼「あ……友くん……」
男「すげぇ良いやつだよな、アイツ。まあ、ちょっとチャラいけど、はは」
幼「ま、確かに」
男「幼ちゃんも結構友と仲良かったよな」
幼「え、う、うん」
男「三国ヶ丘」
……
…………
友『ふ、ふられたぁ~!』
男『おお、大丈夫か。あまり気にするなよ。女性は星の数ほどいるんだから』
友『くぅ~っ! でもあの星は掴みたかった~!! くそっ……!』
男『……うーん……。傷は深そうだな。ちなみに相手は誰?』
友『……幼さん……』
男『ええっ、幼ちゃん!?』
友『あ、ああ…………ってか何でお前、ちゃん付けなの!?』
男『いやぁ。その……昔からの名残で……』
男『失敗した……』
友『……あー、そうか、同じ中学らしいしな。幼なじみってやつか?』
男『んー……幼なじみ、未満かな?』
友『未満……?』
男『幼さんと俺はそこまで仲良く話すわけじゃないし』
友『まあ、確かにあまり話してるところ見たことはない──』
チラッ
幼『……!』
友『目があった……もしかして、俺のこと……いや、それはないか。じゃあ、男のこと……見てた……?』ボソッ
男『……友? どうしたんだ?』
友『い、いや……なんでも』
友『なるほど、そーゆーわけか……』
男『……?』
…………
……
男「そういえば、友にも告白されたんだって?」
幼「えっ、そ、それも知ってたの?」
男「うん、友に教えて貰った」
幼「そうなんだ」
男「今はあんなに仲良いのにな」
幼「え、別に今もそんなに仲良いわけじゃないし。相談に乗ってもらってただけだよ。……それに友くんはそういうのじゃない」
男「ばっさり切るなあ、あはははは」
幼「……そういえば、男くん、高校に入ってからだよね」
男「ん?」
幼「女さんと付き合い始めたのって」
男「……鳳」
……
…………
女『好きです。付き合ってください!』
男『……っ』
女『中学のころからずっとあこがれてて……その、好きでした!』
女『最初はカッコいいなってだけだったんだけど、一緒に帰ったり、話してるうちに男くんの優しさとかいろいろ知っていくうちに……その……大好きになりました!』
男『お、女さん……』
女『……付き合ってくださいっ!』ガクガク
男『ありがとう。……でも、えっと』
女『……っ』ジワァ
男『あ、や、泣かないで! えっと、その、ちょっと考える時間が欲しいんだ!! いきなりでちょっとまだ頭回らなくて!! ごめん!』
女『う、うん……』
ゴシゴシ
女『でも言えて本当に良かった』ニコッ
…………
……
男「――って告白されたんだ」
幼「ふぅん。そうなんだ。……まあ、見てたから……知ってるんだけど……」ボソ
男「ん?」
幼「何でもない。……ばか」
男「……こんなこと言っていいのかわからんけど……」
幼「何?」
男「その……あのときから幼ちゃん凄く冷たかったよな」
幼「和泉府中……」
男「うん……」
……
…………
『今日の部活はこれで終わりにする。というわけで、一年生の今日担当の人は整備用具片付けといて』
男『はい! わかりました!』
すたすた
男『……よいしょっと』
幼『……』
男『おつかれ』
幼『……』
男『あはは、無視、か』
幼『……』
男『最近、よく友と話してるんだって?』
男『……友、いいなぁ』
幼『……っ』
ぐっ
男『ちょ、あっ、幼さん危な――』
幼『っ!?』
男『……よかった。無事だった』
幼『……っ!』
男『幼……さん……?』
幼『……はなして』
男『あ……ごめん……』
幼『…………』
すたすた
男『……はは、嫌われてるみたいだな』
…………
……
男「俺、幼ちゃんに嫌われてるからな」
幼「べ、別に嫌ってなんか……」
男「……」
幼「あのとき――」
男「あ、そういえば、ちょうどあの頃だったかな」
男「女と付き合うようになったのって」
幼「……東岸和田」
……
…………
男『女さん』
女『ごめんね、また急に呼び出して』
男『ううん』
女『えっとね……あのね……』
男『……』
女『男くん……ごめん、待てないよっ……』ポロ
男『……っ』
女『好き……男くんっ……大好きだよ……』ポロポロ
すたすた
男『……っ!』
ぎゅーっ
ちゅっ
女『――えへへ、私の初めて、男くんにあげちゃった』
男『お、女さん……』
女『私……もう、男くんのこと忘れるね……』ポロポロ
女『最初が男くんでよかった……じゃあ――』
男『女さん、待って! 俺は――』
女『――』
幼『……っ』
タッタッタッタッ
幼『……っ』ポロポロ
幼『ばかぁ……ばか……ばかぁあ……』ポロポロ
幼『私の……ばか……』ポロポロ
幼『ばかぁ……っ!!』ポロポロ
…………
……
幼「……素敵だね」
男「そ、そうかぁ?」
幼「……その顔……むかつく」
男「あはは、ごめんごめん」
幼「……」
ぐりっ
男「いっ、いたたたたっ」
幼「……ばか」
男「熊取~」
……
…………
女『――でねっ』
男『あはは、うん』
男『あ、着いたな』
女『ふふ、映画楽しみだなあ』
男『この前、このシリーズの前の作品を女と一緒に見て、俺もめちゃくちゃ興味あったんだ』
女『えへへ、でしょでしょ? やっぱり、男くんなら好きになってくれると思ってたよ~!』
男『じゃあ、いこっか』
女『あ、ちょっと待って!』
男『ん?』
ぎゅっ
女『えへへ』
男『あ……』
女『手、繋いで、良いよね?』
男『……もちろん!』
女『えへへ』
…………
……
男「とかあったなあ」
幼「ふーん……」
男「…………幼ちゃん?」
幼「あ、ううん、なんでもない」
男「そう?」
幼「うん」
男「……」
幼「でも、転校しちゃったんだよね……」
男「……」
幼「……」
男「……熊取~」
幼「残念。進んでるんだよ。日根野、だよ」
……
…………
女『男くん……っ』
男『どうしたんだ? こんなとこに呼び出して』
女『……っ』
男『……あはは、告白のときを思い出すな』
女『……男くん』
男『……女?』
女『あ、あのね、男くん……私、転校することになったんだ……』
男『えっ……? ホント、なのか』
女『うん。だからね…………私たち、わかれよ?』
男『っ!!? え、ちょっと待ってくれよ! ……い、いやだ!』
女『……ご、ごめんね、私……もいやだよ……いっしょに……いたいよ……うぐっ……ふぇ……』ポロポロ
男『遠距離じゃだめなのか……?』
女『……すごく遠いから……私たち……会えないよ……?』ポロポロ
男『そ、それでも!』
女『……ううん』
女『それに、男くんモテるし……私がそばにいなくなったら、きっと他の女子たちのところに行っちゃう』ポロポロ
女『……それなら、いっそのこと、これでバイバイしたいなって……』ポロポロ
男『……女は俺のこと好きなのか?』
女『好きだよ……っ! ずっと好きだよ……っ!!』
男『じゃあ――』
…………
……
幼「……」
男「……」
幼「……」
ぎゅっ
男「……」
男「俺は……女が……好きなんだ……」
幼「……ばか」
男「俺は女が好きなんだ」
幼「……ばか……っ」ポロポロ
……
…………
友『で、アイツ、行くんだってよ、女さんを追って』
幼『……っ』
友『ホントにこれでいいのか?』
幼『……う』
友『好きだったんだろ?』
幼『好きだった……?』
幼『…………ううん、違うよ』
友『えっ……?』
幼『私は男くんのことが好きなの』
幼『過去形じゃない』
友『……あはは、そうかよ』
友『じゃあさ、なおさら行った方がいいんじゃないか?』
幼『……』
友『前に進むためにもさ、ずっと現在のままにするのか、過去のことにさせるのか、はっきりさせてこいよ』
幼『……っ』
…………
……
男「……」
幼「……あ、あのね、男くんっ」
男「……っ」
幼「私、ずっとずっと言いたいことがあったの!!」ポロ
幼「小さいころから、私……私……っ!!」ポロポロ
男「……」
幼「私、男くんのことが」
男「――幼ちゃん、手、放すね」
ぱさっ
幼「えっ……?」ポロポロ
男「行ってきます――――幼さん」ニコッ
幼「……っ!!」
幼「男くんっ……男くん……うぐっ……うえ……っ」ポロポロポロ
男「今までいろいろあったね」
男「幼さん、ありがとう」
男「俺は幼さんのことが好きだったよ」
幼「……っ」ポロポロ
幼「わ……私……も……」ポロポロ
幼「私も、男くんのことが好きだったよっ」ニコッ
関空快速は割とはやい。
おしまい
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