─帰り道─
佐天「はぁ……無能力者の講習ってあるのはいいんだけど全然為にならないなぁ」
佐天「それに帰りもこんなに遅くなっちゃったし、ただの落ちこぼれの補習だよね」
佐天「むー」
佐天「晩御飯どうしようかなあ……」
【からあげ増量キャンペーン中!】
佐天「うん、今日はお弁当買って帰ろうかな」
佐天「すいませーん」
店員「っしゃせー」
佐天「からあげ弁当下さい!」
店員「からあげ弁当っすn」
キュピーン
店員「きゃらげべんといっちょー!」
店の奥『ウオオオオオオオォォォォォォォォ!!』
佐天「……」
佐天(え、なにこのテンション)
店員「からあげ────────」
店員「増量!」
店の奥『増量!』
店員「増量!」
店の奥『増量!』
店員「増量!」
店の奥『増量!』
佐天「」
佐天「からあげがお店の天井まで積み上げられてる……」
佐天「え……いやちょっとこれは……」
店員「あんぎゃとごじゃりましゅうううううううううおがががいげげげげいよよよよよよん」
佐天「お、落ち着いて下さい」
店員「……」
店員「480円のお会計になります」
佐天「やすっ!」
─帰り─
てくてく
佐天「重い……」
佐天「なんなのこれ増量キャンペーンって言ってたけどちょっとやり過ぎな気がする」
佐天「でもまあ安かったしいいか。初春とかアケミむーちゃんマコちんにもおすそわけしてあげよう」
佐天「そうだ!からあげパーチー開けばいいじゃない!うふふ、あたしってば名案」
佐天「そうと決まれば早速電話を……うん?」
インデックス「……」ジー
佐天「……」
インデックス「……」ジー
佐天「……」
インデックス「……」ダラー
佐天「よだれよだれ!」フキフキ
インデックス「なんかおいしそうな匂いを辿って見れば神秘の山が動いてたんだよ……」
インデックス「だからね?ううん、だからじゃない」
インデックス「人ってね、悲しい生き物だと思うんだよ」
インデックス「奪い合ったり、貶し合ったり憎しみ合ったり」
インデックス「でもね……」
インデックス「愛し合うことだって、できるんだよ?」
佐天「え、急にどうしたのこの子?」
インデックス「私にも崇める主がいるんだよ」
インデックス「その教えにね、隣人を愛せってあるの」
インデックス「そう、だから私は目の前のからあげさんも愛してるかも……!」ダラダラダラダラ
佐天(つまりよこせってことなのかな)
「こらっ!」コツッ
インデックス「いったぁーい、とうまなにするの!」
上条「お前なあ……さっき小萌先生の所で焼肉食ったばっかじゃねーか!」
佐天(とうま?どっかで聞いたような気が)
佐天(つんつん頭……)
上条「だいたいお前はいつもいつもだな……」ガミガミ
佐天(やる気なさそうな表情……)
上条「ったく、人様に迷惑かけるなよ……」ガミガミ
佐天(そして説教くさい男……)
上条「」ガミガミ
佐天「あの」
上条「ん?ああ、さっきは悪かったなウチのが迷惑かけちまって」
インデックス「」ガブッ
上条「いてっ!」
佐天「もしかして、上条さん?」
上条「あれ?どっかで会ったことあったっけ?」
インデックス「」ジー
佐天「ああやっぱり!あたしの友人が上条さんの知り合いだって言ってましたので」
上条「知り合い?って誰なんだろ」
佐天「それはみs……」
佐天「……」
上条「?」
インデックス「」ジー
佐天(黙っておこうかな、なんとなく)
上条「まあいいや。そんなことよりこんな遅くまで女の子が一人で歩いてたら危ないぞ。近くまでインデックスと一緒に送ってこうか?」
佐天「お気遣いありがとうございます。寮も近いので大丈夫ですよ」
インデックス「」ジー
佐天「ああこの子の視線はまだからあげのままだった」
佐天「ええと、インデックス、ちゃん?よかったらからあげ食べる?」
インデックス「いいの!?」
佐天「いいよ」クスクス
佐天「とは言っても袋とかがないとおすそ分けできないや」
インデックス「とうまとうま、袋ちょーだい!」
上条「ん?いいけど、何に使うんだ?」
インデックス「この天高く積まれたからあげを少しだけ拝借させてもらうんだよ!」
佐天(それにしてもこの子日本語うまいね)
上条「は?」
インデックス「ん?」
上条「天高く積まれたからあげって何を言ってるんだ?」
佐天「え?」
インデックス「んー?」
インデックス「何を言ってるって目の前にあるんだよ?」
上条「だからどこだよ。そんなシュールな光景見たことねーぞ」
佐天「??」
インデックス「だからここに!この……えーと、お名前は?」
佐天「あたしは佐天涙子だよ」
インデックス「るいこが見えなくなるほどの第七学区スカイからあげーがここにあるじゃない!」
上条「いやだからどこにあるんだよって」
佐天「?どういうこと?」
佐天「上条さんには……見えてない?」
インデックス「とうまだいじょうぶ?噛みすぎちゃったのかなあ……」
上条「なんの話をしているのかもわかんねえ……からあげがここにあるのか?」
佐天「はい、さっきお弁当屋さんでからあげ弁当を買ったんですけど」
上条「うーむ。さっき買った弁当か……あ、佐天でいいか?」
佐天「かまいませんよ」
上条「佐天が持ってる袋がからあげ弁当なんだよな?」
佐天「袋はからあげじゃありません!」
上条「意味を汲み取って!」
佐天「上条さんにはこの袋、どう見えてます?」
上条「どうって、袋の中に弁当が入ってるようにしか見えないな」
佐天「インデックスちゃんには?」
インデックス「三階建ての建物並に山盛りに積み上げられたからあげがあるんだよ!」
佐天「だよねー」
インデックス「ねー」
上条「」
上条(どういうことなんだ……俺は今未曾有の窮地に立たされているのか?)
上条(三階建て並の高さのかああげだと……つまり10m以上は優にあるじゃねーか)
上条(これはまさか……)
上条「はっ!?」マサカ
上条「おのれ魔術師!」
インデックス「なんの魔力も感知してないかも」
佐天「魔力?魔術師?」
上条「あ、い、いや気にしないでくれ」
インデックス「からあげ食べたいんだよー」
上条「なあインデックス、本当に魔術じゃないんだな?」
インデックス「うん。魔術で生成されたり帯びているものは絶対に魔力が出ているんだよ。でもこれにはなんの魔力も感じられないんだよ」
上条「魔術じゃない、とすると……」
インデックス「この街の能力者の仕業?」
佐天「ふむふむ」
上条「こんがらがってきた……」
佐天「魔術とかそういうのはなんだかわかりませんけど、さっきのお弁当屋さんでこれ積み上げられたんですよ」
上条「お店で?まあそりゃそうだよな」
佐天「からあげ増量キャンペーン中みたいで、頼んだらこんなになっちゃって」
上条(こんなになっちゃったって実際俺には見えないからわかんねえけどな……)
佐天「」クスクス
上条「ん?どうしたいきなり笑って」
佐天「あたしなんだかワクワクしてきちゃいましたよ」
上条「なぜゆえにじゃ」
佐天「ほら、この街じゃ不思議なことってあまり不思議じゃないじゃないですか」
上条「まあ全て科学で証明してやるって研究者達も躍起になってるからな」
佐天「ところが突然現れた新たな問題!あたしとインデックスちゃんには見えて、上条さんには見えない不思議なからあげ」
上条「かららげってのもどうなんだよ……」
佐天「あたし、探偵っていうのをやってみたかったんです」
上条「た、探偵?」
佐天「突如舞い降りた不思議なかほり!」
佐天「学園都市に走る緊張!」
佐天「忍び寄る悪の気配!」
佐天「しかし、そんな闇の中に一筋の一縷の光が!」
佐天「いつだって真実を暴いてみせちゃう☆からあげ探偵、ここに見参!みたいな?」キャッ
上条「……」
佐天「……しゅ」
上条「ん?」
佐天「……ょしゅ」
上条「な、なんだ?」
佐天「助手」
上条「じょじゅ?」
佐天「やって、くれますよね?」
上条「はいいいいいいいい?」
佐天「だってあたしには見えて上条さんには見えない、この違い!」
佐天「助手というポジションには持ってこいの着眼点の違いじゃないですか!」
上条「違うだろ!そういうのは重要参考人っつーものだろ!そもそも着眼点どころの話じゃねえ!」
佐天「あ、インデックスちゃんからあげ美味しい?」
インデックス「美味しいんだよ!」
上条「イーンデーックス!!まだ出所がわからない怪しいもん食ってんじゃねーよ!!」
インデックス「食べた感じ、普通のからあげなんだよ!」
佐天「三階建てが二階建てになった!」
上条「はえーよ」
佐天「という訳で、聞き込みしてみましょうよ!」
上条「誰にだよ」
インデックス「んぐんぐ」
佐天「そうですねえ……まずは」
上条「んー、その前に」
佐天「?」
上条「佐天、俺の右手にそのからあげを乗せてみてくれないか?」
佐天「え……?右手に……ですか?」
上条「なに言ってるんだこいつみたいな変な目で見ないでくれ」
佐天「それじゃ乗せますよ?」
上条「おー」
インデックス「もぐもぐじー」キョウミシンシン
佐天「えい」
ぽい
ぱしゅーん
佐天「!?」
インデックス「!」
上条「お、この感触はやっぱり」
佐天「からあげが……消えた!?」
インデックス「幻想殺しが働いちゃうんだね」
佐天「?どういうことなんですか?」
上条「あー、俺の右手はだな」
《説明中》
佐天「なにそれ羨ましい!」
上条「まあでもこのおかげで能力が絶対に出ない身体だからなあ」
佐天「不思議な力を持ってるだけでいいなじゃいですか!あたしなんて……」
上条「俺なんてこれ以上奨学金上がることなんて絶対ねぇんだよぉぉぉぉぉインデックスは相変わらず食いまくるし神の祝福も消しちまうらしいから不幸が過ぎて出費がかさみまくるし生活大変なんだよおおおおぉぉぉぉぉ今日の昼飯ももやししか食ってねえよぉぉぉぉぉ」
佐天「上条さん……」
上条「」エグッ ヒック
佐天「からあげ、食べます?」
ぱしゅーん
上条「遊ぶな!」
佐天「とりあえず状況を整理してみましょう」
上条「ああ、そうだな」
上条(あれ、なんで俺手伝うことになってんだろ)
佐天「まずはあたしが買ったからあげお弁当」
インデックス「証拠その1だね」
佐天「買った時は普通だったんですけどねー」
上条「どういうことだ?」
佐天「買った時の店員さんです。からあげ弁当を注文するまでは普通の応対だったんですけど、注文した瞬間激変しまして」
上条「激変?」
佐天「はい。増量!増量!とか言ってあんなに積み上げられちゃいました」
上条「そ、そりゃ確かに激変だな……」
佐天「はいそれはもう呂律も回らないくらいに」
上条「おかしなテンション、ね」
上条(このコもたいがいだがな……)」
佐天「なにか言いました?」ジッ
上条「い、いや別に」
上条「つまりはそのお店に聞けばいいんじゃないか?」
佐天「!聞き込みですか!」
上条「なんでそんなにテンション高いの……」
佐天「聞き込みって言ったら探偵の代名詞みたいなものじゃないですか!さあ行きましょう!」グイグイ
上条「おいおい腕を引っ張るな」
インデックス「……」ジー
上条「ん?どうしたインデックス?」
インデックス「……」グイ
上条「お前もかよ……」
─お弁当屋さん─
店員「しゃせー」
上条「あの、すいませんちょっと聞きたいことが」
店員「なんでしょー?」
上条「からあげ増量キャンペーンって聞いたんすけど」
店員「はい、増量キャンペーン行っていますよ。いかがっすか?」
上条(……確かに普通の応対だな)
上条(頼んだら急変、か)
上条「なら一つ下さい」
店員「かしこまりー。からあげ弁当いっちょ!」
店の奥『ほい!』
上条「……」
上条(激変……?)
佐天(あれ?)
佐天(あたしの時とテンションが違う?)
上条「(なあ佐天。あれくらいなら普通なんじゃないか?)」
佐天「(あれれー?)」
インデックス「(からあげ♪からあげ♪)」
店員「おまちどーさんす」
上条「あ、はいどもっす」
店員「480円のお会計す」
上条「(あれ、結局俺が払うんじゃん!)」
店員「あじゅしたー」
─お店の外─
上条「どういう事だ?別におかしな所は見当たらなかったが」
佐天「おかしいな……あたしの時と全然違います」
インデックス「中身はどうなってるの?」
上条「開けてみる」
ぱかっ
佐天「からあげが7つ」
上条「通常5つみたいだな」
インデックス「普通の増量キャンペーンみたいなんだよ」
インデックス「このからあげはちゃんととうまに見えてるんだね」
上条「ああ。さっき見せてもらった佐天の弁当と一緒だ」
佐天「考えられる線は……」
上条「時間帯か?」
佐天「時間帯、ですか?」
上条「ああ、いつも俺がいくスーパーにもタイムセールというものがあってだな、その時間帯はいつもよりかなり安めに返る時間帯があるんだ。つまりこのお店もそれを採用していると考えると……」
インデックス「ちょっと待って。それだととうまの右手で消えたからあげが説明つかないのかも」
上条「そうなんだよなあ……ん?あれは」
一方通行「あァ……めンどくせェ」
打ち止め「もー、いつまでもそんな事言わないの!ってミサカはミサカはあなたにビシッと言ってみる!」
上条「一方通行、奇遇だな」
一方通行「おォ、三下じゃねェか。なにやってンだ?こンな所で」
上条「いやちょっとな」
一方通行「なンだよ含みのある言い方しやがって」
打ち止め「ヒーローさんっ、こんばんはってミサカはミサカはあいさつしてみる!」
上条「打ち止めもおっす」
佐天(小さい御坂さん?)
打ち止め「っと、そちらのお姉さんは?」
一方通行「ほほォ。三下、テメェは相変わらずだな」
インデックス「らすとおーだーとあくせられーたもお弁当を買いに?」
打ち止め「シスターさんもいた!うん、そうだよ、ヨミカワが今日は仕事で帰りが遅いからお弁当でも買って晩御飯済ませてくれって言ってたってミサカはミサカは思い返してみる!」
佐天「上条さん、こちらは?」
上条「おう、一方通行と打ち止めの二人だ」
佐天(すごい名前)
佐天(それにしても)
打ち止め「」キャッキャ
佐天(御坂さんに似てるなあ。それに、ミサカはミサカはって)
佐天(まあ、今はからあげに集中だね)
打ち止め「それにしても、このからあげ一体どうしたの?」
一方通行「あン?からあげだァ?」
打ち止め「うん、ここにあるじゃん?じゃん?ってミサカはミサカはヨミカワの真似して言ってみたり!」
一方通行「あァ?なに言ってンだそンなのどこにあンだよ」
佐天「え?」
上条「ん?」
インデックス「あれ」
打ち止め「なに言ってるの!このお姉さんが持ってる袋にあるじゃない!ほら一階半建てくらいの高さのからあげが!ってミサカはミサカは若くして耄碌してきちゃったのって心配してみる」
一方通行「なに言ってンだこいつは。あれか、小さいガキにはちっさいおっさンが見えるよォなもンか?」
上条「一方通行にも、見えてない……?」
上条「つーかインデックス、また食っただろ」
インデックス「あんなにたくさんあったんだからいいと思ったんだよ!」
上条「得体のしれないものを食べちゃいけませんって言っただろ!」
佐天「いつの間に食べられたのかな……」
上条「ったく。一方通行、お前にはからあげが見えてないって事だよな?」
一方通行「そォ言ってンだろ……訳わかンねェ」
上条「実はだな……」
《説明中》
一方通行「俺と三下にゃァ見えないからあげだァ?」
打ち止め「からあげ探偵!楽しそうってミサカもミサカも参加してみたい!」
佐天「えへ」
一方通行「それで、お前の右手で消えただと?」
上条「ああ、この通りだ。佐天、頼む」
佐天「はい」
ぱしゅーん
打ち止め「消えた!」
インデックス「ああん、もったいないかも!」
一方通行「いや見えねェからわかンねェよ」
佐天「それでおかしいなって思って今度は上条さんに注文お願いしてみたら、今度は普通のからあげ弁当が出てきたってことなんですよ」
打ち止め「不思議だねってミサカはミサカは首を傾げてみたり」チョコン
上条「一方通行、今度はお前が注文してみてくれないか?」
一方通行「あァン?人ン家のメニューを勝手に決めてンじゃねェよ」
上条「頼むぞあくせられーたん!」
打ち止め「その呼び方可愛い!」
一方通行「きしょい呼び方してンじゃねェぞミンチになりてェのかああああァァァァ!!??ああああァァァンンン!!??」
─お店─
店員「しゃせー。からあげ弁当増量キャンペーン中すけどいかがしやすかー」
打ち止め「(普通だねってミサカはミサカは耳打ちしてみたり)」
一方通行「からあげ弁当4つ」
店員「かしこまりー、からあげ弁当よんちょ────」
きん
一方通行(!?なにかが反射しやがった!?)
一方通行(どォいうことだ!?解析したこともねェよォなベクトルが勝手に反射しただと!?)
店員「……………………」
一方通行「ど……どォした?店員さン?」
打ち止め「?」
店員「きゃらあぐぇびぇんとー入りましちゃああああああああああああ」
店の奥『ウオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッ!!』
一方通行「!?」
打ち止め「!?」
─外─
佐天「!?」
上条「!?」
インデックス「!?」モグモグ
店員「からあげ──────────」
店員「増量!」
店の奥『増量!』
店員「増量!」
店の奥『増量!』
店員「増量!」
店の奥『増量!』
一方通行「」
打ち止め「」
─お店の外─
佐天「あれです!あれですよ上条さん!」グイグイ
上条「なにやってるんだあれ、弁当箱に乗せてるもんが見えないからおかしな動きをしているようにしか見えねえ」
店員「あじゅしたー」
─お店の外─
一方通行「」
打ち止め「」
上条「ダメだ、精神がやられている……!」
佐天「なにがどうしてこうなった……」
インデックス「不思議なんだよー」
上条「でもまあ少なくとも時間帯の線はなくなったな」
佐天「そうみたいですね」
上条「あれじゃね?不思議なこともあるんだねで解決でいいんじゃね?」
佐天「ダメです!からあげ探偵の助手としての名が泣きますよ!?」
上条「なった覚えねーよ……帰らせてくれよ……宿題がー……」
一方通行「」
打ち止め「」
インデックス「」モグモグ
上条「それで、今どんな状況になってんだ?」
佐天「からあげで一方通行さんの姿が見えません」
上条「さぞかしシュールなんだろうなあ」
インデックス「とうまとうま、これで当分のご飯は困らないかも」
上条「人の勝手に食おうとするな!俺が食えねえならしょうがねえ……ってうん?これ俺が食ってみたらどうなるんだ?」
佐天「食べてみます?」
上条「しかし見えないものを食うってのもなあ……インデックスを見ても一応害はなさそうなんだけど」
佐天「そ……」
上条「そ?」
佐天「そ、それでは僭越ながらわたくしめが」
上条「ん?」
佐天「か、上条さん……あ、あーん」
上条「え、ちょ、ちょっと待って」
佐天「は、早くしてください……お、男の人に食べさせるって、は、初めてなんですから!」
上条「お、俺だって食べさせてもらうのなんて初めてだよ!」
インデックス「むー……」モグモグ
打ち止め「そういえば、重さはどうなってるの?ってミサカはミサカは復活して聞いてみたり」
一方通行「ン?おォ、言われてみりゃ重いな、かなり。能力で問題ねェが」
打ち止め(どうしよう、今ここで演算補助解除してみたいってミサカはミサカはいたずら心に捕われてみたり)
佐天「という恥じらいを持つ乙女の心境は置いておいて、はい」
上条「むぐっ」
佐天「どうですか?」
上条「……」モグモグ
上条「確かに……からあげだ……変な感じがする……」モグモグ
打ち止め「あなたも。はい、あーん」
一方通行「むぐっ」
打ち止め「どう?」
ががががががががががががっっ
一方通行「あががががががががががががッッ!?(口の中でからあげが反射しやがってる!?)」
打ち止め「」
インデックス「」
上条「」
佐天「」
一方通行「(いてェ!これ超いてェ!)」
一方通行「ンべェ」ペッ
一方通行「てンめェ……」ハァハァ
打ち止め「だ、大丈夫?ってミサカはミサカは心配してみたり」
一方通行「いてェじゃねェかこンにゃろ!」グリグリ
打ち止め「痛い痛いってミサカはミサカはタップしてみる!」
上条「どういうことなんだ」
上条「俺の右手で消えるが、俺は食べられる」
上条「ちゃんとからあげの味がした」
一方通行「お、俺は食べらンねェ」
一方通行「口の中でからあげが牙を剥いてきやがった……」
上条「つまり一方通行の能力が敵として判断したってことか?」
一方通行「ああ……いつも弾いてるベクトルみてェなもンだった……」
佐天「一方通行さんってどういう能力なんですか?」
一方通行「ベクトル操作だ」
上条「ちなみに学園都市の第一位だぞ、一方通行は」
佐天「だ、第一位!?」
打ち止め「えへへ、すごいでしょってミサカはミサカは自分のことの様に自慢して胸を張ってみる!えっへん!」
インデックス「えっへん!」モグモグ
佐天「そ、そんな人が今目の前に……びっくりです!」
一方通行「多分今お前以上に俺の方が驚いているわ」
一方通行「俺の能力は敵性と判断しているものは自然に反射設定している。見たこともねェよォなおかしなもンもな。瞬時に解析して反射しちまう癖が身についている」
佐天「つまり?」
一方通行「からあげは……敵だ!」
インデックス「格言みたいになってるかも」
打ち止め「演算補助解除したら食べられるんじゃないの?ってミサカはミサカは推測してみたり」
一方通行「食べるっつー動作自体できなくなるわ!」
佐天「演算補助とかさっきから難しい単語ばっか出てきてわかんない……もっと勉強しておくべきだったかな?」
上条「テストにゃ出んぞ」
一方通行「つゥか三下の右手で消えるンなら何故こォなることを予想しなかったンだ俺は」
打ち止め「ミサカはあーんしちゃダメだった?ってミサカはミサカはしょんぼりして聞いてみる」
一方通行「……」
上条「……」
佐天「……」
インデックス「……」
一方通行「ン……」
打ち止め「ん?」
一方通行「ンなことねェよ、別に……」
上条「デレた!」
一方通行「黙れ」
佐天「話をまとめてみましょう」
上条「おう」
佐天「あたしと一方通行さんが買った時だけ店員さんの様子がおかしくなった」
上条「そして山の様に積まれたらしいからあげか」
インデックス「そのからあげはとうまとあくせられーたには見えなくて、とうまの右手で消えちゃう」
一方通行「買った時に俺の能力が反応し、食った時からあげに食われた」
打ち止め「ミサカ、わかんない……」ションボリ
佐天「……ん?」
上条「佐天どうした?」
佐天「そうだとしたら……あたしに問題が?」
上条「佐天にか?」
佐天「いやいや……そんなことが……」
一方通行「どォした?」
上条「いや佐天がなにかが思いついたようで」
佐天「上条さん」
上条「ん?」
佐天「もう一度、買いに行きませんか?」
上条「え゛」
上条「もう一度って……下手すりゃまたあの大量らしいからあげを積まれることになるんだぞ?」
佐天「あたしの考えが正しければ」
上条「正しければ……?」
佐天「行きましょう!上条さん!」グイ
上条「お、おーい……」ヒッパラレー
打ち止め「いってらっしゃーい」ヒラヒラ
インデックス「帰らなくていいの?」
一方通行「ンな謎残したまま帰れるか。気になって夜も眠れンくなるわ」
─お店─
店員「しゃせー……あれ、お忘れものすか?」
佐天「い、いえ……その……」
佐天(……もう一個買うの恥ずかしいかも)
上条「あー、俺ここのからあげ弁当の大ファンになっちゃってですね。もう一個買いに来たんすよ」
佐天「!」
店員「ふふ、あじゅじゅーす」
佐天(上条さん……あたしの気持ちを汲み取ってくれた……?)
上条(早く帰らないと宿題がやばい、まじやばい)
上条「で、どうするんだ?」
佐天「そうですね。上条さん先に一つ注文してみて下さい」
上条「?よくわからんがわかった。すいませんからあげ弁当一つ下さい」
店員「かしこまりー」
佐天(……やっぱり普通の対応だ)
上条「?」
店員「そちらの彼女さんはいかがっすか?」
佐天「か、彼女!?」
上条「じゃないんすよー、友達っす友達」
店員「そーすか」ニヤニヤ
上条「あははー……店員さん、別に普通だぞ?佐天」ボソ
佐天「そ、そうですね……」チカイ
佐天(ええい心乱すな涙子!)
店員「で、いかがいたしやすか?」
佐天(……このタイミングでいいか)
佐天「すいません、あたしも一つ下さい」
店員「へい、かしこまり!からあげ弁当いっちょ──────」
上条「!」
店員「きゃらげべんちょーひゃいりやしたあああああああああああああ!!」」
店の奥『ウオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!』
上条「」
佐天「きたきた!」
店員「からあげ────────────」
店員「増量!」
店の奥『増量!』
店員「増量!」
店の奥『増量!』
佐天(このタイミング!)
ぐい
上条「さ、佐天ど、どうした?いきなり手を握るなんて」
店員「ぞうりょ────あれ?」
店の奥『ぞうさん!あれ?』
佐天「普通に……なった……」
上条「?なにが起きてるんだ?」
おのれさるさん
店員「あれ……ぁたいこんなにからあげ入れたっけ?て、店長ー」
店長「ほいほいどうした?」
店員「しゃせん、ぁたい多分無意識の内にこんなにからあげが……」
店長「ん?ホントだおかしいな、奥で作ってる俺も気付くはずなんだが」
店員「ど、どうしやしょう」
店長「お客さんの前で戻す訳にゃいかんし、このまま出しちまえ」
店員「て、店長……ぁたい、ミスでクビとか……」ウルウル
店長「バカ言うない。店員のミスは店長のミス。お前をクビになんかしてたまるかってんだ」
店員「て、店長……!」
上条「なんだこれ」
─お店の外─
一方通行「どォだった?」
上条「佐天が注文したら激変して、俺の右手を掴んだら治ってた……」
インデックス「それってつまり」
佐天「多分……」
一方通行「なァるほどね」
打ち止め「ザワールド!」
上条「つまり、佐天は……」
インデックス「能力者?」
一方通行「だな」
佐天「……」
佐天「あたしが……能力者……」
打ち止め「ってことになるねってミサカはミサカは暫定的な結論を述べてみる!」
佐天「で、でも!能力なんてなくて!さっきも無能力者の講習を受けてきたばかりで……」
一方通行「……能力なンざいつ発現するもンかわかンねェさ」
上条「……」
一方通行「能力を夢見て日夜努力を続けている者がいる、それとは逆に初めから使えるよォな者もいる」
打ち止め「……」
一方通行「しかしよォ、能力が使えない使えないって思ってる奴にゃ絶対に出やしねェ。自分は能力が使えるんだって思い込まなきゃ、能力なんて使えやしねェ」
インデックス「……」モグモグ
一方通行「お前は、信じることができたンじゃねェか?自分って奴を」
佐天「自分を、信じる……」
一方通行「自分を信じることから自信に繋がるンだ。自分のやってきたことは間違っちゃいないって、自分っつーもンなンだって」
佐天「そんな……あたしなんて」
上条「おっとその言葉は禁句だぞ、佐天」
佐天「……上条さん」
上条「今ここにいる自分を否定したら誰が自分を肯定してくれるんだ?他人か?違うだろ」
上条「自分が自分を信じているから他人が自分を信じてくれる。自分を演じているって訳でもないんだろ?」
佐天「……」
上条「どんなことであれ、歳はいくつかはわからんが、一番長く自分と向き合っていたのだ誰だ?紛れも無い自分自身、だろ?」
佐天「……」
上条「誰よりも強くいろなんて誰も言ってない。誰よりも上にいろなんて誰も言っていない。ただ自分というものを信じていられれば、それだけで誇りを持てるだろ?」
佐天「……」
上条「俺だって自分は不幸だって思うが、幸せだって感じない時は一度もない。俺が俺でいたことに後悔はしていないんだ」
佐天「……」
インデックス「……」モグモグ
上条「とまあ出てきた能力はからあげに関することらしいが。それを磨いていけばきっと自分も想像できない可能性が広がる」
上条「レベルが上がるのって、そういうことなんだと俺は思うんだ」
佐天「……はい」
上条「だから佐天、自分に自信を持て!せっかく可愛い顔してんだから、暗い顔してちゃ勿体ないぞ?」
佐天「か、かわっ……!」
一方通行「」フム
打ち止め「」ニヤニヤ
インデックス「」イライラ モグモグ
佐天「そう……ですね」
上条「ああ。下を向いてちゃ足と地面しか見えねえ。上を向いて生きていった方が、色んなもんが見えて楽しいだろ?」
佐天「はい!」
上条「いい顔になったじゃねーか」
佐天「ありがとうございます!」
上条「よっしゃ!それで」
一方通行「それで?」
上条「このからあげどうすんだ?」
打ち止め「皆で一緒に食べようよ!」
インデックス「!それいいかも!楽しそうなんだよ!」モグモグ
上条「食べるったって俺にゃ見えねーよ!」
一方通行「俺は食えねェよ!」
インデックス「ふふ……」ニジリニジリ モグモグ
打ち止め「むふー」ズイ
上条「やめろ来るなさすがに山盛りっつー量は俺にも無理だ」
一方通行「やめろからあげ怖いからあげ怖い」
佐天「よし皆!上条さんと一方通行さんに突撃だーっ!」
インデックス「おー!」
打ち止め「あいあいさーっ!」
そして。
後日の能力判定にて佐天の能力が認められ、めでたく佐天は能力者となった。
今まで一度も発見されたことのないタイプの能力に研究者達は驚き、また新たな可能性の模索としてより一層研究が弾むこととなり。
学園都市はその後、より発展の一歩を踏むことになる。
─第七学区、公園─
佐天「かーみじょーさーん!」
上条「げ、出たなからあげ探偵!」
佐天「もー、助手をしてくれるっていったじゃないですかー」
上条「そ、そんなこと一言も言った覚えはないわ!」
佐天「それよりも、ウチの柵川中学で出たんですよ!あれが!」
上条「あれ?あれってなんだ?」
佐天「学校で出ると言ったらあれしかないじゃないですか!お・ば・け!」
上条「前に連れて行かれた廃校の時は結局違ったじゃねーか!」
佐天「ちっちっ、今度は目撃証言もしっかりしているので、信憑性が高いんですよ!早速行きましょう!今夜辺り!」
上条「だーめだ、今日はタイムセールがあるから行けないの」
佐天「昨日のうちに違うスーパーで済ませておきました!インデックスちゃんにお願いしてもう食材は上条さんちに届いてるはずですよ!」
上条「は、はあ?なんでだよ!」
佐天「仕事を考慮して助手の生活を手助けするのも探偵の努めです!さあさあ行きますよー!」グイグイ
上条「ちょっと待てよおおおおおおおおおおおおお」ヒッパラレズサー
少しずつ知名度が上がり、今では佐天と上条がそれぞれ通う学校ではない学生からも依頼が飛び込んでくるようになり。
それを解決すべく、今日も学園都市に若い男女の探偵コンビの声が木霊するのであった。
今日も明日もまた、からあげ探偵は動きを見せる。
おしまい。
報われて欲しいけど報われた藤岡は藤岡じゃない
誤爆した
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