菫「今日も泊まりにくるか?」淡「もちろん!」(295)

代行ID:NNj107la0


淡「終電・・・なくなっちゃいましたね・・・///」

菫「待って!あきらめるのはまだ早い!
  23:56発の上り普通列車を使って2駅戻ると
  0:07発の下り急行に間に合う
  普段なら間に合わないところだけど
  今日は9753Mって臨時列車が走ってるからダイヤがずれるんだよ
  ほら,この時刻表を見て。
  書いてないけど23:36に貨物列車があるから9753Mをスジに入れると
  後続の673Mが2分遅れるだろ
  それで

代行ありがとうございます。そしてこの本文ww

ぼちぼちやっていくんでお暇ならお付き合いどうぞ

菫「あれ、まだ淡しか来ていないのか」

淡「あ、菫先輩。もー私だけでしたから暇でしたよー」

菫「他の連中が来てない理由は……わかるはずもないか」

淡「はい、まったくもってー」

菫「何してたんだ?」

淡「特になにも」

菫「そうか……。まあもう少ししたらみんな来るか」

淡「そうですねー。あ、そうだ」

菫「どうした?」

淡「菫先輩、質問です! 菫先輩はどこに住んでますか?」

菫「なんだ突然」

淡「ふふん、これはですね、色々な謎をひもとくことによってチーム虎姫のみんなと仲良くなろうという……やつです!」

菫「最後思いつかなかっただろお前」

淡「まあまあ。それで、教えてくださいよ。どこに住んでるんですか?」

菫「わかったわかった。あー、あそこだよ。校門から左に出て歩いた先にコンビニがあるだろ?」

淡「セブンですか?」

菫「そうそう。そこの角を右に曲がって十分くらいしたところにアパートが数件建っているんだが、そこの一つに住んでいるよ」

淡「え」

菫「どうした?」

淡「アパートってアレですか、三つ並んでて、1Kで、ゴミ捨て場が妙に遠いところにある」

菫「なんでそんなに詳しいんだ……」

淡「えー、そうなんだ!」

菫「なんだうるさいな。何がそうなんだなんだ」

淡「すごいすごい!」

菫「なにがすごいんだよ」

淡「いやいや菫先輩わかりませんか?」

菫「わかるか馬鹿」

淡「ふふーん、先輩もまだまだですね」

菫「なにがだよ」

淡「仕方ない教えてあげましょう。なんと、実は私もそのアパートに住んでいるのです!」

菫「え」

淡「いやーこんな偶然ってあるんですね」

菫「本当かそれ?」

淡「やだなあ、嘘ついたって意味ないじゃないですか。もっと考えましょうよ」

菫「その勝ち誇った感じをやめろ」

菫「……しかし驚いたな。まったく気付かなかった」

淡「そうですねー。私が四月に入ってきて、いままで会ったことないですもんね」

菫「朝出会わないのは私が早く家を出てるからだとして、帰りも一切会ったことないもんな」

淡「先輩何号室ですか?」

菫「私か? 私は真ん中の棟の二〇二号室だ」

淡「ふむふむ。私は先頭の一〇四です」

菫「さすがに隣同士ってことはなかったみたいだな」

淡「あ、そうだったらもっとすごかったですね! 近いところにいるのに気付かない二人! みたいな」

菫「なにか例えようとしているみたいだが、それはそのまま表現してるだけだからな」

淡「あ、菫先輩、じゃあ今日菫先輩の家におじゃましてもいいですか?」

菫「は? なぜ」

淡「なぜじゃないですよ。お宅訪問ってやつです」

菫「まあ別に来るのは構わないが、間取りとか多分一緒だろうから真新しさとかないと思うぞ?」

淡「いいんですいいんです別に。あ、これから毎日他のひとたちの所に泊まりに行ってみようかなあ」

菫「まあそういうのは勝手にやってくれ」

淡「じゃあ先輩今日はお宅訪問第一弾としてよろしくお願いしますね!」

菫「ああ、わかったよ」

―――――――
―――――


菫「やはり七時とは言ってもまだ明るいな」

淡「そうですね」

菫「しかし遅くまで待たせて悪かったな」

淡「いえいえ大丈夫ですよ。私くらいになると待つのも余裕ですから」

菫「寝てただけだけどな」

淡「でも一緒に帰るのなんて初めてですね」

菫「そうだな。思えば誰かと帰るのなんて今までなかったかもしれない」

淡「そうなんですか? テルーとかとは?」

菫「家の方向が逆だからな。帰るタイミングが同じでも一緒に帰ることはなかったよ」

淡「ふーん。じゃあ初めての人は私ということですね!」

菫「はいはいそうだな。まあそれに、家に人を呼ぶのも初めてだしな」

淡「へー、けっこう意外」

菫「呼ばれることはあったりしたがな。そう思うと少し不思議だ」

淡「なるほどー。じゃあ菫先輩の初めてを同時に二つももらうということですね!」

菫「……その言い回し気に入ってるのか?」

淡「はい! 一年の間で流行ってます」

菫「よくわからんな……」

淡「あ、でも菫先輩にも私の初めてあげますからね?」

菫「なんだ?」

淡「実は私、人の家に行くの初めてなんです!」

菫「はいはいそれはよかったな」

淡「ちょっと少しは喜んでくださいよー。私の初めてですよ?」

菫「ありがたく受け取っておくよ」

菫「あー、そういえば。夕飯はどうする?」

淡「へ、作ってくれないんですか?」

菫「まあお前ならそう言うと思っていたよ」

菫「はあ……何が食べたい?」

淡「わあ、菫先輩リクエスト聞いてくれるんだ! やっさしー」

淡「えーと、じゃあ……菫先輩が一番腕に自信があるやつがいいです!」

菫「また面倒くさいことを……腕に自信があるものなあ」

淡「なんですか?」

菫「そうだなあ……あー、淡、嫌いなものはあるか?」

淡「特にはありませんよ。なんでも食べます」

菫「そうか、なら大丈夫だな」

淡「お、何作るんです?」

菫「それは作ってからのお楽しみだ」

淡「えー教えてくれてもいいじゃないですか」

菫「まあいいだろう。ほら買い物行くぞ」

―――――――
―――――


淡「おじゃましまーす!」

菫「はいはい」

淡「おー、けっこう片付いてますね」

菫「まあそれなりにはな。じゃあ私は料理始めるから適当にくつろいでてくれ」

淡「はーい」

淡「………」

淡「さーて、何があるかなあ……」

菫「物はあさるなよ」

淡「は、はーい」

淡「……うーん、暇だなあ」

淡「菫先輩、暇つぶせるものありませんか?」

菫「ん、なんだって?」

淡「なにか、暇つぶしのものを」

菫「あー、そこに本棚あるだろ。そこの本読んだりしててもいいぞ」

淡「他には?」

菫「読む気は一切なしか」

菫「あー、じゃあ料理でも手伝ってくれるか?

淡「菫先輩の手料理食べたいのに私が手伝ったら意味無いじゃないですか」

菫「お前は……! まったくめんどうくさいやつだな」

淡「あ、そうだ。今のうちに着替えてきますね」

菫「ああ、それがいいかもな。ついでに暇潰しの道具も持ってこい」

淡「はーい。そうします。じゃあちょっと行ってきますね」

菫「ああ」

菫「………」

菫「まったく騒がしいやつだ」

菫「……私も着替えるか」

―――――――
―――――


淡「ごちそうさまでした」

菫「口にあったようでよかったよ」

淡「いやー美味しかったですよ菫先輩の肉じゃが」

菫「まあ親に一人暮らしする前にしこたま作らされたからな」

淡「これで嫁入りもばっちりですね」

菫「そうかもな。それで、この後はどうする?」

菫「というより、いつくらいに帰る?」

淡「帰る?」

菫「なんの疑問なんだそれは」

淡「帰るって言うと、私の家にってことですよね?」

菫「それ以外になにがあるんだ……」

淡「えーと、そうなると……。明日の放課後ですかね?」

菫「……は?」

淡「え?」

菫「なんでお前が疑問を持っているんだよ」

淡「だって今日おじゃまするって言ったじゃないですか」

菫「もしかして、元々泊まるつもりだったのか?」

淡「そうですけど?」

菫「そうだったのか……。いや、私はただ家に来て、なにかしらあった後帰ると思っていたから」

淡「あ、そうだったんですね。だからさっきあんな聞き方を」

菫「しかしおじゃまするって言ったらただ来るだけだと思うだろ……」

淡「まあまあ細かいことですよ!」

菫「何がどう細かいんだ」

菫「というかそうか。どうりで荷物がたくさんあると思ったが、泊まりだからそんなにあるのか」

淡「はい、パジャマも枕もちゃんと持ってきました」

淡「私が他人に見せる初めてのパジャマ姿を菫先輩に見せてあげますよ!」

菫「用意周到だな……あーでもうちはベッド一つしかないぞ?」

淡「それがどうかしたんです?」

菫「……いや、なんでもない」

淡「なにしよっかなー。……あ、菫先輩ポケモン持ってます?」

菫「ポケモンか? えーと、たしかリーフグリーンまでなら持ってるぞ」

淡「あれ、DSは持ってないんですか?」

菫「ああ。買うお金もなかったしな」

淡「まあいいでしょう。ちゃんとそれも持ってきましたしね」

菫「用意いいなお前」

淡「ふふふ、これくらい当然です」

淡「それでは菫先輩……バトルしようぜ!!」

菫「お前それ言いたかっただけだろ……」

―――――バトル中


淡「いけっピカチュウ、かみなり!」

菫「さすがに一発くらいは耐えてくれるはず……ああっ、急所で一撃!?」



淡「よーしじゃあ次は、プリン、君に決めたー!」

菫「おお、懐かしいな。こんなのもいたなあ」

淡「ふふーん、かわいいからって油断しちゃだめですよー」

菫「えーと、プリンってなにタイプがきくんだっけ?」

淡「覚えてないんですか? 格闘ですよ格闘。でもピジョットは格闘覚えてないと思いますけど」

菫「ああ……やられた。全滅か……」

淡「私の勝ちですね! ふふ、いいバトルだったよ菫」

菫「そのキャラは一体なんだ」

淡「ポケモントレーナーです!」

菫「ああそう……。そういや、淡のポケモンで何匹か進化させてないのいたよな?」

淡「ゼニガメとかですか?」

菫「そうそう。あれって進化するよな?」

淡「はい」

菫「なんでさせないんだ? 確か進化したら強くなったような気が」

淡「だって進化させたらかわいくなくなっちゃうじゃないですか」

菫「……ああ、そう」

―――――――
―――――


菫「さて、そろそろお風呂に入るか? と言っても私はいつもは湯ははっていないが」

淡「そうなんですか?」

菫「ああ、もう最近はずっとシャワーだな。淡ははっているのか?」

淡「はい。毎日」

菫「そうか。まあじきにはらなくなるさ……」

淡「ふーん?」

菫「それで、どうする? はってほしいなら今からはるが」

淡「でも今からはると時間かかっちゃいません?」

菫「まあそうだな。三十分くらいかかるか」

淡「あ、じゃあこうしましょう」

淡「二人で入っちゃえば水かさもマシマシで時間もかからず一石二鳥ですよ」

菫「一緒にって、あの浴槽がそう大きくないこと知ってるだろう?」

淡「大丈夫ですよ。私ちっちゃくてかわいいですから」

菫「まあたしかにちっちゃいな」

淡「えっへん」

菫「なにがそんなに誇らしいんだ……まあそれならさっさと入ってしまうか」

淡「あ、ちなみにシャンプーは持ってきたのでお気遣いなく」

菫「本当に用意いいなお前」

―――――――
―――――


淡「あー、さっぱりした」

菫「ふう。何か飲むか?」

淡「あ、じゃあ水をお願いします」

菫「わかった」

淡「二人で一緒に入るのも中々楽しいですね」

菫「はい、水だ。私はできればもう少しゆったりしたかったけどな……っと」

淡「菫先輩それなんですか?」

菫「これか? これは化粧水だ」

淡「へーつけてるんですね」

菫「ああ、親がつけろとうるさくてな。もう習慣化してしまったよ」

淡「やっぱり効果あるんです?」

菫「どうなんだろうな。ずっとつけてるから自分ではよくわからないな」

淡「ありますよー。だって菫先輩肌きれいですもん」

淡「まあ私はつけなくてもモッチリモチモチですけどね!」

菫「私はむしろそのテンションの高さの秘訣を知りたいよ」

淡「ふふふん。これはですね」

菫「髪かわかすか?」

淡「聞いといてそれ!?」

菫「ああ、対して興味ないんでな」

菫「ほらまだ暖かい季節とはいっても乾かさないと風邪引くから早く乾かせ」

淡「むー。はーい。じゃあドライヤー借りますねー」

菫「ああ、その棚の上にあるから使ってくれ」

淡「はーい。……スイッチオン!」

菫「静かに使え……」

淡「………」ゴー

淡「………」バサバサ

淡「………」ゴー

淡「………」バサバサ

菫「淡」

淡「………」ゴー

菫「おい、淡!」

淡「ほえ? なんですか?」

菫「その途中で髪をバサバサするのをやめろ」

淡「えーでもこうやった方が早く乾きますよ」

菫「周りが濡れるんだよ。いいからやめてくれ」

淡「でもー」

菫「でもじゃない」

淡「うーん、早く乾くのになあ」

菫「そんなに変わらないだろう」

淡「変わりますよ」

菫「ああもういい。なら私が乾かしてやる」

淡「え?」

菫「人が乾かした方が早く乾くだろう」

淡「そうなんですか?」

菫「多分な」

淡「じゃあお願いします」

淡「あ! 淡のドライヤーの初めてあげますね」

菫「はいはいありがとう」

淡「そうだ。お風呂のとき、言うの忘れてた」

淡「菫先輩、私のお風呂の初めて菫先輩に」

菫「乾かすぞ」

淡「あ、またそうやって無視しちゃってー」

菫「………」ゴー

淡「無視だー。ムシムシ虫だー。いけないんだー」

菫「………」ゴー

淡「むー」

菫「………」ゴー

淡「………」

菫「………」ゴー

淡「……ふわぁ」

菫「………」ゴー

淡「………」

菫「……よし、大体乾いたぞ」

淡「あ、ありがとうございまーす」

菫「いえいえ」

淡「水もらいますね」

菫「ああ、いいよ。私も軽く乾かすから、眠かったら先にベッドに入っててくれ」

淡「はーい。あ、菫先輩、誰かをこのベッドで寝させるのって」

菫「初めてだよ」ゴー

淡「むう、ノリ悪いんだから」

菫「………」ゴー

淡「そうだ。枕まっくらー」

菫「なんだ。枕持ってきたのか」ゴー

淡「え?」

菫「枕、持ってきたんだな」ゴー

淡「ああはい。やっぱりマイ枕ですよ」

菫「そうか」ゴー

淡「ふんふふーん」

菫「………」ゴー

淡「うーん」

菫「……ふう」

淡「うーん」

菫「……何を悩んでるんだ?」

淡「どっち側で寝ようかと」

菫「どっちでもいいだろう……」

淡「菫先輩寝相いい方ですか?」

菫「まあ悪くはないと思うが」

淡「じゃあこっち側で寝ます。開放感あるし」

菫「わかった。じゃあそろそろ寝るか」

淡「はーい。なんだかワクワクしますね」

菫「しかし誰かと一緒に寝るなんて初めてだな」

菫「電気消すぞ?」

淡「はい。ふふーん今日は菫先輩の初めてたくさんもらっちゃいましたね!」

菫「そうだな。よっと。ふう、やっぱり二人いると少し狭いな」

淡「わー菫せんぱーい」

菫「わっ、なんだ。いきなりくっついてくるな」

淡「なんだか寝るときって人肌恋しくなりません?」

菫「まあわからなくはないが……」

淡「高校入ってからずっと一人でしたから、こうやって誰かと過ごすのって楽しいです」

淡「一緒にご飯食べたり、お風呂入ったり、寝たり……」

淡「えへ、菫先輩。今日はありがとうございました」

菫「ああ」

淡「ふふ。おやすみなさーい」

菫「……来たかったら、また来ていいぞ」

淡「へ?」

菫「私も、それなりに楽しかったからな」

淡「もちろん、またおじゃまします」

菫「ああ、待ってるよ」

菫「じゃあ、おやすみ」

淡「はい、おやすみなさい」

―――――翌朝


淡「……ううぅ……ふにゃ?……ふわぁぁ」

淡「……朝……」

淡「うーん……まだ眠い……」

菫「おい、淡起きろ、朝だぞ」

淡「ほえ……?」

菫「ご飯ももうそろそろできるし、起きろ」

淡「………」

菫「大丈夫か?」

淡「……菫先輩?」

菫「そうだが」

淡「なんでいるの……?」

菫「なんでって……淡が私の家に泊まりに来たんだろう」

淡「………」

菫「………」

淡「……あっ」

菫「思い出したか?」

淡「はい。……ふわぁ……ねむねむ」

菫「おい、寝るな」

淡「あと少し……」

菫「お前なあ……」

淡「菫先輩」

菫「なんだ?」

淡「こっち」

菫「……わかったよ」

淡「………」ギュー

菫「……五分だけだぞ」

淡「はーい……すぅ、すぅ」

菫「まったく……」

淡「………」

菫「………」ナデナデ

淡「……えへへ……むにゃむにゃ……」

菫「まったく……」ナデナデ

菫「おい、そろそろ起きろ淡。五分たったぞ?」

淡「ふぇ?……ふわぁ……うーん……ふはぁっ」

菫「おはよう」

淡「おはようございます」

菫「ご飯、よそってくるから、着替えてろ」

淡「はーい。着替え着替え……」

淡「よいしょよいしょ。ふんふふんふーん、ボタンとめてー……よいしょ。リボンでっと……よしっ!」

淡「着替えましたよー」

菫「ん。はい、水」

淡「ありがとうございます」

菫「それと……ご飯だ。はい、箸」

淡「え……わぁ、ご飯だ」

菫「さっきから何度も言ってただろう……」

淡「うわぁ、うわぁ」

菫「どうしたんだよ……」

淡「うわぁ朝ごはんだ! やったー!」

菫「何がそんなに嬉しいんだ」

淡「いや、だって朝起きたら朝ごはんがあるんですよ!?」

淡「うわーい! 食べていいんですよね?」

菫「そのために作ったんだ。ちゃんと食べてくれ」

淡「ありがとうございます! わー嬉しい!」

菫「……ふふっ、そんなに嬉しいか」

淡「うん!」

菫「朝ごはんだ。たんと食え」

淡「えっ今日は朝ごはん食べていいの!?」

菫「おかわりもいいぞ」

淡「うめうめ」

―――――――
―――――


淡「ごちそうさまでした」

菫「お粗末さまでした」

淡「わー久しぶりに朝ごはん食べましたよ」

菫「なんだ、朝ごはん食べてなかったのか」

淡「いやー、最初の方はなんとか作ってたんですけどけどね」

菫「まったく、そんなんだと夜までもたないだろ」

淡「一応お弁当は作ってるんですよ? けど朝ごはん食べる時間いつもとれなくて」

菫「はぁ、だったらこれから朝うちに来い。朝ごはんくらいだったら作ってやるから」

淡「え、いいんですか!?」

菫「ああ。一人分も二人分も変わらないからな」

菫「なにより、これから大事な時期なんだ。しっかり健康でいてもらわないと困るしな」

淡「菫先輩……!」

菫「気にするな。これも部のためだ」

淡「む、そこは私のためじゃないんですか?」

菫「淡のためが部のためになるんだよ。ほら、そろそろ学校行くから準備しろ」

淡「はーい」

菫「用意できたか?」

淡「ばっちりです!」

菫「よし。はい、弁当だ」

淡「へ?」

菫「弁当箱は部活のときにでも返してくれ」

淡「ま、まさかお弁当まであるなんて……!」

菫「ないと困るだろう?」

淡「菫先輩」

菫「なんだ?」

淡「一緒に住みませんか!?」

菫「断る」

淡「なんで!?」

菫「なんでって……当たり前だろう」

菫「一緒に住むメリットがまるで私になさすぎる」

淡「そんなことありませんよ」

菫「大体お前はご飯をたかりたいだけだろう」

菫「それだったら朝食べに来るだけでいいじゃないか」

菫「それに、お弁当はそれまで自分で作ってたんだから自分で作れるだろ」

淡「そんなあ……」

菫「なにがそんな、なんだよ……」

淡「え、でもでも昨日の夜、来てもいいって言ってたじゃないですか」

菫「あれはたまにはって意味だ。毎日なわけないだろ」

菫「それにすぐそこに住んでるんだ。わざわざ泊まらなくてもご飯食べにくるだけでいいじゃないか」

淡「むー……はーい。でもたまには泊めてくださいね?」

菫「まあたまにならかまわないが……というかそんなに泊まりたいのか?」

淡「だってすっごく楽しかったんですもん」

菫「わかったよ。でも毎日はダメだからな?」

淡「わかりましたー」

菫「よしそれじゃあ学校行くか」

―――――翌朝


淡「おはようございます!」

菫「ああ、おはよう」

淡「ふふん、ちゃんと今日は自分のお弁当作ってきましたよ!」

菫「そうか。えらいえらい。もうご飯できてるからあがっていいぞ」

淡「はーい。おじゃましまーす!」

菫「しかし弁当作る暇があるならそのときに朝ごはんも一緒に作れるんじゃないのか?」

淡「いやー、それが中々うまくいかないものでして、作ってると作るのに時間とられてご飯食べる時間なくなっちゃうんです」

菫「そうなのか」

淡「はい」

菫「……なあ」

淡「なんです?」

菫「今日は私の家で食べる時間あるよな?」

淡「はい。現にこうしていますよ?」

菫「じゃあ家で食べる時間もあったんじゃないのか……?」

淡「あ」

菫「……はあ。まあいいさ、私も一人で食べるよりは二人で食べる方が楽しいしな」

淡「そ、そうそう! それですよそれ」

菫「まったく、都合いいやつだな」

淡「え、えーとその」

菫「どうした?」

淡「……やっぱり来ない方がいいんですか?」

菫「……ぷっ、あはははは」

淡「な、なにがおかしいんですか」

菫「あははは、いや、まさか淡がそんな心配するとは思わなくてな」

菫「少し意外だったから思わず笑ってしまったよ。いや、悪い」

淡「むー、私だってそれくらい少しは気にしますよ」

菫「いいよいいよ。むしろ来てくれ」

菫「それで淡が起きて、朝ごはんを食べるというなら私はちゃんと朝ごはんを用意して待ってるよ」

淡「……ありがとうございます」

菫「いやいや笑って悪かったよ」

淡「……悪いと思っているなら今日のお夕飯はハンバーグにしてください」

菫「お夕飯って、今日も食べに来るつもりか?」

淡「いいじゃないですか。一食作るのも二食作るのも同じなんですよね?」

菫「急に生意気さを取り戻したな……」

淡「それに、やっぱり私も、人と一緒に食べてる方が楽しいですから」

淡「何もないなら、菫先輩と一緒に食べたいです」

菫「ふふっ。そうだな」

菫「私も淡と食べてるのは楽しいよ」

菫「いいよ。今日はハンバーグにしよう」

淡「え、いいんですか?」

菫「ああ。ただし、作るの手伝うんだぞ」

淡「え、あ、まあそれくらいは、はい」

菫「じゃあ今日のお夕飯はハンバーグだ」

淡「なんか、ありがとうございます」

菫「いいさ、別に。気にするな」

淡「はい。わかりました!」

菫「変わり身早いな」

菫「それじゃあ朝ごはん食べようか」

淡「はい。いただきます!」

―――――テスト前


淡「菫先輩、今日泊まりに行ってもいいですか?」

菫「何言ってるんだ。テスト前なんだから家でしっかり勉強しろ」

淡「いや、だから勉強を教えてほしいなーと」

菫「教えてほしいって、私だって自分の勉強しなくちゃいけないんだ」

菫「わからないところがあったら、先生に聞けばいいだろう?」

淡「だってー先生に聞く暇なんてないじゃないですか」

淡「休み時間だと時間足りないし、放課後は先生達みんな帰っちゃってるし」

菫「昼休みは」

淡「ゆっくり休まないと!」

菫「………」

淡「ね。だからお願いします。菫先輩」

菫「……はあ。わかったよ。ただし私も自分の勉強してるからな」

淡「やったあ!」

淡「これから一週間よろしくお願いします」

菫「は?」

淡「ごちそうさま! じゃあ私歯みがいてきます」

菫「ちょっと待て」

淡「へ?」

菫「なんて言った?」

淡「へ?」

菫「それじゃない。その前」

淡「歯みがいてきます」

菫「違う、その前!」

淡「ごちそうさま?」

菫「それでもない! その前!」

淡「えーと……よろしくお願いします」

菫「そのもうちょっと前だ! お前私のこと馬鹿にしてるのか!?」

淡「し、してませんよ。だって菫先輩がその前って言ってくるから」

菫「いや……そうは言っていたが、なんとなくで察してくれよ……」

淡「えーとその前に言ったのは……やったあ?」

菫「戻りすぎだ! お前わかってて言ってるだろ! この家入れないぞ!?」

淡「わわわ、ごめんなさい。てへっ」

菫「ここまで怒りに震えるのは初めてだ……!」

淡「え、えーと、一週間よろしくお願いしますって言いました」

菫「やっぱりわかってたんじゃないか!」

淡「ま、まあまあちょっとした冗談じゃないですか」

菫「冗談てお前なあ」

淡「さて、解決しましたし、私歯みがいてきますね」

菫「とはならないだろ」

淡「もーなんですか。菫先輩は私を虫歯にしたいの?」

菫「なぜ一週間も泊まる必要がある」

淡「だってテストまで一週間ありますよ?」

菫「だからってその一週間毎日泊まるのか?」

淡「はい」

菫「………」

淡「も、もちろん、勉強のためですよ。一週間やらないとなーって」

菫「………」

淡「な、なんですか?」

菫「本当にただ勉強のためか」

淡「あ、当たり前じゃないですかー」

菫「本当か」

淡「……だって菫先輩最近泊めてくれなかったじゃない」

菫「最近って、ここ一週間の話だろ」

淡「前までけっこう泊めてくれたのに」

菫「それは淡がどうしても泊まりたいって言ってきたから……」

淡「いいじゃないですか。一週間くらい。勉強しないといけないのは事実なんだから」

菫「それは自慢にならないからな?」

菫「……はあ。わかったよ。ダメだって言ってもどうせくるんだし」

淡「お」

菫「ただし、これからは淡もご飯を作れ」

淡「お夕飯とかですか?」

菫「ああ。それくらい当然だろ。それと掃除とかもしてもらうからな」

淡「おお、それで泊まっていいならやっちゃいますよ!」

菫「え」

淡「じゃあ今日は早速私がお夕飯作ってあげます。何がいいの?」

菫「……嫌じゃないのか?」

淡「なにがですか?」

菫「家事」

淡「別に嫌いじゃないですよ。家でもそれなりにしてるし」

菫「じゃあなぜ今まで手伝おうとしなかった」

淡「しなくていいなら楽かなって」

菫「お前ってやつは……!」

淡「こ、これからしますから!」

菫「ああ、もう……」

淡「えと、今日は菫先輩の好きな料理作るから!」

菫「お前それで許すと……」

淡「だ、だめ?」

菫「……はあ」

菫「………」

菫「肉じゃが」

淡「へ?」

菫「肉じゃがが食べたい」

淡「わかりました。丹精こめて作ります!」

菫「私は監督との話があるから遅くなる。だからちゃんと作っておけよ」

菫「何回か料理手伝ってるから調味料の場所とか大丈夫だろ?」

淡「はい、ばっちりです!」

菫「……はあ、じゃあよろしく頼んだぞ」

菫「あ、そうだ。それと……はい、鍵だ」

淡「あ、そうだった。ありがとうございます」

菫「じゃあ、また後でな」

――――― 一週間のダイジェスト


~一日目~


菫「この問題はここでさっき教えた公式を使うんだ」

淡「ははーなるほど」

菫「……本当にわかってるか?」

淡「もっちろん!」

菫「ならいい。これで次の問題から一通りできるだろう」

淡「はい。じゃあ一人でやってみます」

菫「ああ。またわからなくなったら言え」

淡「りょーかいです!」

菫「よしじゃあ私も自分の勉強を」

淡「菫先輩、これって」

菫「やっぱりわかってないんじゃないか!」

~二日目~


菫「……ん……ふわぁ」

菫「………」

菫「……え」

菫「うわ、やばいやばい」

菫「おい淡、起きろ」

淡「……ふぇ?」

菫「寝すぎだ。早く起きないと遅刻するぞ」

淡「もうちょっと寝てましょうよー」

菫「倒そうとするな! いい加減起きろ。遅刻するぞ」

淡「……ん、ふわぁぁ……今何時ですか?」

菫「八時だ」

淡「え」

菫「ほら、早く準備しろ」

淡「は、はい!」

~三日目~


菫「淡、醤油とってくれ」

淡「はい」

菫「しかし、今日の部活は大変だったな……」

淡「そうですか?」

菫「淡は見てるだけだったからそう思うんだよ……」

淡「はあ」

菫「まさか自動卓が壊れるなんて……」

淡「あ、菫先輩お茶」

菫「はいよ。この大事な時期に壊れるなんてついてないよ」

淡「無理に触らなかったら壊れなかったのにねー」

菫「軽い故障だと思うだろ。それにアレは私は悪くない」

淡「でも明日には届くんですよね?」

菫「そうみたいだ。しかも最新物が」

淡「へーすごい」

~四日目~


淡「じゃあそろそろ寝ます?」

菫「ああ、もう少し待ってくれすぐ終わる」

淡「なにやってるんですか?」

菫「試験後のスケジュールの確認だよ」

淡「麻雀部の?」

菫「そうだ。っと、よし大体大丈夫そうだな」

淡「お疲れ様ー」

菫「あ、そうだ」

菫「前々から言おうと思っていたんだが……」

淡「どうしたの?」

菫「淡、寝るときに抱きついてくるのはやめないか?」

淡「えーどうして」

菫「なんというか、恥ずかしい」

淡「今更すぎません?」

菫「今まで言うの忘れてたんだよ」

菫「それに抱きつく必要なんてないだろ」

淡「最初に言ったじゃないですか。寝るときって人恋しくなっちゃうんですよ」

淡「それに、菫先輩だって私のこと抱き枕みたいにしてるじゃないですか」

菫「え」

淡「……気付いてなかったんですか?」

菫「本当か」

淡「はい。私はべつにいいんですけど。なんか安心するし」

菫「………」

淡「ほらほら、もういいじゃないですか。今まで通りってやつですよ」

淡「菫先輩ベッド行って。はい、電気消しますよー」

菫「わ、待て、まだ消すな」

淡「はい、おやすみなさい」

~五日目~


淡「むにゃむにゃ……菫先輩……」

菫(まさか本当に私も抱きしめているとは)

菫(むしろ本当になぜ今まで気が付かなかったんだろうか)

菫「……よしよし」

淡「えへへー……」

菫「まったく……かわいいやつめ」

菫(しかし……意識したら急に腕が痺れてきた……!)

~六日目~


淡「おかえりなさい菫先輩」

淡「ふふーん。あなた、ご飯にする? お風呂にする? それとも……あ・わ・い?」

菫「………」

菫「なんだそれ」

淡「新婚ごっこ!」

菫「ドストレートだな」

菫「……ご飯で」

淡「はーい! 今日のお夕飯は……ホイコーローだ!」

菫「クックドゥか」

淡「クックドゥです」

~七日目~


菫「よし、今日はこれくらいにするか」

淡「ふわー、疲れたー」

菫「これで、今日で勉強会も終了だな」

淡「一週間ありがとうございました」

菫「こんだけやったんだ。テストも大丈夫だろ?」

淡「はい。もうどんな問題もバンバン解けますよ!」

菫「そうだよな。そうじゃないと一週間なんのために頑張ったかわからないからな」

淡「じゃあ菫先輩お風呂入りましょう」

菫「そうだな。さっさと入って寝てしまおう」

菫「この前みたく遅刻ギリギリにはなりたくないからな」

淡「じゃあお湯はりますねー」

菫「ああ」

淡「お風呂おっふろー」

―――――インターハイ終了翌日


菫「はあ……」

菫「……ん?」

菫「はいはい、今開けるよ」

淡「こんばんは!」

菫「ああ、こんばんは」

淡「あれ、菫先輩疲れてます?」

菫「当たり前だろう……昨日戻ってきて今日は一日色んな所に報告に行ってきたんだ」

菫「疲れてないわけがないだろう」

淡「ふふーん。そう思いましていい物持ってきたよ!」

菫「……なんだ?」

淡「じゃじゃーん。プリンです!」

菫「……そうかありがとう。ありがたく受け取っておくよ。じゃあ」

淡「ちょちょちょ、閉めないでくださいよ!」

菫「なんだ。これを渡しにきたんじゃないのか」

淡「それだけなわけないじゃないですか!」

菫「……わかってるよ。ほら、あがりな」

淡「わーい。おじゃましまーす」

菫「お茶でも飲むか?」

淡「はい!」

菫「わかった。用意するから座っててくれ」

淡「はーい」

淡「まっくらーまっくらー」

菫「なんだ、泊まるつもりなのか?」コト

淡「ありがとうございます。まあいいじゃないですか」

菫「いいかどうか決めるのは私なはずだけどな」

菫「……まあいいか」

淡「あー、なんだか菫先輩の家久しぶりだなー」

菫「久しぶりって、十日くらいしか経ってないぞ」

淡「うーん、抜群の安心感!」

菫「……ふっ」

淡「ん?」

菫「元気そうでなによりだよ」

淡「私が?」

菫「そう。団体戦の後は本当に心配したからな」

淡「……はい」

菫「それからしたら元の淡に戻ってくれてよかったよ」

淡「まあいつまでも落ち込んでられないからね!」

菫「ふふっ、それでこそ淡だよ」

淡「でも個人戦勝てなかったのは悔しかったなー」

菫「仕方ないさ。むしろあの猛者たちの中でよくやっただろ」

淡「次は負けませんけどね」

菫「ああ、次は打ち負かしてやれ」

淡「もちろん!」

淡「来年は団体戦だって優勝してやるんだから!」

菫「……ああ。淡ならやれるよ。期待してるからな」

淡「………」

淡「団体戦。やっぱり今でも……団体戦、すごく悔しいです」

淡「本当に今でも、いまだに、まだなんかできたんじゃないかって……思います」

菫「淡……だから言っただろ。あれは淡だけの責任じゃないって」

淡「わかってます! みんなから言われたから。淡は悪くないって」

淡「でも、違うんです。やっぱり負けたのは、私が悪いんです」

菫「淡……」

淡「最初から、全力でした」

淡「絶対、負けるわけないって思ってた」

淡「点差とかじゃなくて、私が負けるわけないって思ってたから」

淡「ぶっちゃけると、本当は私、チームのためとかあんまり考えてませんでした」

淡「だって、結局私が勝てばそれでよかったから」

淡「……でも負けて初めてわかったんです。私が負けたから、みんな負けちゃったんだって……!」

淡「あはっ、遅すぎますよね。負けた後に気付くなんて」

淡「先輩達の後をうけるってわかってたつもりなのに、全然わかってなかった」

淡「本当……なんでもっと早く気付いてなかったんだろ」

淡「そうしたら……もっともっと頑張れたと思うのに」

淡「だったら、負けなかったのに……!」

淡「そしたら優勝できたのに!」

菫「淡」ギュ

淡「あ……」

淡「……菫、先輩」

菫「言っただろう? 気にするなって」

菫「淡はなにも悪くないさ。むしろ本当に頑張っていたよ」

菫「オーラスでも逆転しようとしてたのはみんなわかってるさ」

菫「ただ、相手のほうがそれより少しだけ強かっただけだ」

菫「それで負けてしまったんなら、もうそれはしょうがないことさ」

菫「だからな淡、自分を責めるのはよせ」

菫「みんなそんなことは望んでないよ」

淡「でも……」

菫「それと、あんまり負けたって言うな」

菫「私も……悲しい気持ちになってくる」

淡「菫先輩……」

菫「………」

淡「………」

菫「そうか……そうなんだよな……」

淡「え……?」

菫「……うっ……くっ……」

淡「え……菫先輩」

菫「………」グッ

淡「わっ」

菫「顔を、あげるな」

淡「でも……」

菫「いいから……」

淡「………」

菫「……うっ……ううう……」

淡「菫先輩……」

淡「……ううっ……ううううっ……うわああああん」

さるよけ、支援、ありがとうございます

―――――――
―――――


菫「すまなかった。みっともないところを見せてしまったな……」

淡「いえ……」

菫「淡も、落ち着いたか?」

淡「はい。お風呂に入ってスッキリしました」

菫「そうか」

淡「菫先輩……髪、乾かしてくれませんか?」

菫「……ああ」

淡「………」

菫「乾かすぞ」

淡「はい」

うおお、すみません、急に用事がきてちょっと行かなきゃいけないので、
戻ってくるまで保守お願いしていいでしょうか

さるよけしてもらった直後なのに申し訳ないです
12時までには戻ってこれると思うので……

戻ってまいりました。保守本当にありがとうございます
ぼちぼち続けていくので、よろしければお付き合いください

菫「………」ゴー

淡「………」

菫「………」ゴー

淡「菫先輩」

菫「ん?」ゴー

淡「私、次は負けません」

菫「ああ」ゴー

淡「だから、見ててください」

菫「……ああ、見てるよ」ゴー

淡「………」

菫「……乾いたぞ」

淡「ありがとうございます」

菫「よし、じゃあ寝るか」

淡「はい」

菫「電気消すけど、大丈夫か?」

淡「いいですよ」

菫「……よいしょっと」

淡「菫先輩……」ギュ

菫「どうした?」

淡「私、頑張るから」

菫「淡……」

菫「なあ、淡」

淡「はい」

菫「あまり、気負うな。淡は淡のためと、一緒に戦う仲間のために頑張ってくれれば、それでいいさ」

菫「私や、照のことは気にしすぎるな」

菫「ちゃんと見てるから。な?」

淡「……はい」

菫「よし」

淡「……菫先輩」

菫「なんだ?」

淡「ギュって、して」

菫「ああ、いいよ」ギュ

淡「……暖かい」

菫「そうだな」

淡「菫先輩。おやすみなさい」

菫「ああ、おやすみ淡」

―――――九月半ば


菫「遅いな、淡のやつ」

菫(もう八時なのに来ないとは……)

菫(さては寝坊か? でも今までこんなことなかったしな……)

菫「見に行ってみるか」

ピンポーン

菫「淡ー?」

菫「………」

菫「寝てるのか……?」

菫「私は淡の部屋の鍵持ってないからなあ」

淡「おはよう……ございます……」ガチャ

菫「おはよう……って大丈夫か」

菫「いや、大丈夫じゃないなそれは」

淡「はい……」

菫「とりあえず、上がっていいか?」

淡「はい……」

菫「まさか淡が風邪をひくとはな」

淡「ええ、本当に……」

菫「ああ、寝てていいぞ」

淡「はい……」

菫「朝ごはん、何か食べたか?」

淡「いえ……」

菫「そうか。なら私が今から何か作ってやる」

菫「それと、学校の方にも電話しておくよ」

淡「すみません……」

菫「いいよ、気にするな」

―――――――
―――――


菫「はい、おかゆだ」

淡「……食べさせて」

菫「仕方ないな……ほら」

淡「あむ」

菫「ゆっくり食べろ」

淡「はい……。うう、味気ない」

菫「おかゆなんだから仕方ないだろ。文句言うな」

淡「……はい」

淡「そういえば菫先輩」

菫「なんだ?」

淡「学校はいいんですか? もう八時四十分ですけど……」

菫「ああ。遅刻にしてもらったから大丈夫だ」

淡「え……いいんですか?」

菫「いいんだよ。こんな状態の淡をほっとけないだろう?」

淡「でも菫先輩これまで無遅刻無欠席だったんじゃ」

菫「ほら、いいから続き」

淡「……あむ」

菫「これが最後だ」

淡「あむ」

淡「……ごちそうさまでした」

菫「うん。そういえば薬はあるのか?」

淡「はい、常備薬ならその箱に……」

菫「どれ……ああこれか」

淡「はい」

菫「じゃあ水入れてくるよ」

淡「すみません……」

淡「………」

たびたびすみません。本当にありがとうございます


菫「はい。薬飲んで横になれ」

淡「ありがとうございます」

淡「ん……はぁ」

菫「汗とかかいてないか?」

淡「はい、かいてないです」

菫「よし、じゃあ横になって……今日は安静にしてろ」

淡「はい……」

菫「さてと、私は……」

淡「菫先輩」

菫「ん?」

淡「……寝るまで、手……いいですか?」

菫「ああ、いいよ」

淡「……おやすみなさい」

菫「うん、おやすみ」

淡「………」

菫(今日は学校、行けないな)

―――――夕方


淡「……ん」

淡「………」

淡「あ……」

淡「菫先輩……」

菫「………」

淡「寝てる……」

淡(あ、手ずっと握っててくれたんだ)

淡「えへへ……」

菫「ん……」

菫「ああ、起きたのか淡」

淡「おはようございます、菫先輩」

菫「おはよう」

菫「といっても……もう夕方か」

淡「手、ずっと握っててくれたんですね」

菫「ああ」

淡「ありがとうございます」

菫「多少元気にはなったか?」

淡「はい、朝に比べたらだいぶ」

菫「そうか」

淡「はい」

菫「おなかはすいてないか?」

淡「えーと、まだそんなには」

菫「わかった。まあ夕飯はまたおかゆだけどな」

淡「えー、もうちょっと味のあるのがいい」

菫「それは明日から元気になったら作ってやるよ」

淡「……はい」

淡「そういえば菫先輩、学校行かなかったんですね」

菫「ああ」

菫「……淡が手を離してくれなかったからな」

淡「……すみません」

菫「冗談だよ。私が淡といたかったから、いただけさ」

淡「……はい。ありがとうございます」

菫「汗とか、かいてないか?」

淡「少しだけ……」

菫「じゃあ着替えておくか。替えと……後、タオルはどこにある?」

淡「パジャマは三番目の棚です。タオルは、一番下のとこに」

菫「わかった」

淡「あ……」

菫「どうした?」

淡「いえ、なんでも」

淡(手離れちゃった……)

菫「えーと……これか?」

淡「あ、はいそうです」

菫「起きれるか?」

淡「はい」

菫「じゃあタオル濡らしてくるから上だけ脱いでおいてくれ」

淡「はい」

淡「……んしょ」

淡「脱ぎました」

菫「ああ。じゃあ拭いていくぞ。痛かったら言えよ?」

淡「優しくね」

菫「わかってるよ」

淡「……ん」

菫「けっこう汗かいてるな」

淡「そう、かも」

淡「ん……」

菫「よし、じゃあ着させるから手あげろ」

淡「はい。ん、ぷはぁ」

菫「次は下だな。少しだけ腰上げてくれ」

菫「じゃあ下も拭いていくぞ」

淡「はい」

菫「しかし、けっこう食べてるのに細いよなお前」

淡「その分消費してますから」

菫「なにで?」

淡「麻雀で」

菫「麻雀で?」

淡「はい」

菫「……そうなのか」

菫「あーそういえば下着はどうする。替えるか?」

淡「あー、うん」

菫「わかった。どこにある?」

淡「タオルの隣に」

菫「ああ」

菫「えーと、これでいいか?」

淡「うん、それでいいや」

菫「じゃあ下着も脱がすぞ。腰上げてくれ」

菫「よいしょっと」

菫「えと、ここは自分で拭け」

淡「うん」

菫「じゃあ、はい」

淡「………」フキフキ

淡「ふぅ。はい」

菫「ん。これ下着な。洗濯籠はどこだ?」

淡「風呂場の近くです」

菫「じゃあ入れてくるな」

淡「お願いします」

淡「んしょ、よいしょっと……ふう」ポフッ

淡「………」

菫「淡」

淡「なに?」

菫「水だ。汗かいてたから飲んでおけ。本当はポカリとかがいいんだろうが……」

淡「ありがとうございます」

淡「ごく、ん……ぷはぁ」

菫「もう少しいるか?」

淡「ううん、大丈夫」

菫「そうか」

菫「これからどうする? おなかも空いてないならもう少し寝るか?」

淡「いえ、少しだけ起きてます」

菫「わかった。なら私は栄養のあるものでも買ってこようかな」

淡「あ……」

菫「ん?」

淡「ここに、いて……」

菫「なんだ、本当に今日はいつになく甘えんぼだな」

淡「………」

菫「ふふ、わかった。ずっといるよ」

菫「隣、座るぞ」

淡「ん」

菫「よしよし、かわいいかわいい」

淡「菫先輩」

菫「なんだ?」

淡「……なんでもなーい」

菫「そうかい」

淡「うん」

―――――翌朝


菫「ん……ふわぁ」

菫「淡……?」

淡「あ、おはようございます菫先輩!」

菫「おはよう……」

菫「体調はもういいのか?」

淡「はい、もう元気一発だよ!」

菫「そうみたいだな……」

菫「それで、なにしてるんだ?」

淡「へへーん。朝ごはんを作っています」

菫「おおう、本当か」

淡「はい。昨日は色々お世話になったから、少しでものお礼と思ってね」

菫「……ありがとう」

淡「はい! じゃあ続きしてくるね」

―――――三年教室


菫「おはよう」

照「あ、おはよう」

菫「昨日なんかあったか?」

照「特になにも。連絡とかもなかった」

菫「そうか」

照「………」

照「ねえ、菫」

菫「なんだ?」

照「淡と同棲してるって本当?」

菫「ぶっ」

菫「い、いきなり何を言い出すんだ」

照「先生が言ってた」

菫「先生が!?」

照「うん。朝の会で菫が遅刻するって言ったときに、淡の看病でって言ってて」

照「そのときにもしかしたらこの二人同棲してるのかもねーって言ってた」

照「それからは私にそうなのか聞かれたし。まあよくわからないって答えたけど」

菫「そ、そんなことが……」

照「それからみんなこの話してたよ」

菫「みんなって」

照「クラスの人と部活の人」

菫「クラス……」

菫(気付かなかったが、みんなが私と照の話に集中している……!)

菫(というか私と照以外誰も話していない!)

菫「えーとだな、照」

照「なに?」

菫「まず私と淡だが、同棲はしていない」

照「そうなんだ」

菫「ああ、だから先生の言ってたことはまちがいだ」

照「ふーん。そう」

照「じゃあ付き合っては?」

菫「な」

照「どうなの?」

菫「なんでいきなりそんな質問を」

照「みんなに聞いてって言われたから」

菫「は?」

照「菫と淡が付き合ってるか聞いてって、言われたの」

菫「……みんなって?」

照「具体的には難しい。色んな人から言われたから」

菫「そうか……。いやでもな照。そういうことってバラしたらだめなんじゃないのか?」

照「なんで?」

菫「なんでって……いや、いいや」

照「私も、気になってるから」

菫「なにがだ?」

照「菫と淡が付き合ってるかどうか」

菫「そうなのか?」

照「うん。親友と大切な後輩の動向は、割りと気になる」

菫「そ、そうか」

照「それで、どうなの?」

菫「……まだ付き合ってはないよ」

照「まだ……?」

菫「ああ」

照「ということは、付き合いたいの?」

菫「そうだな」

照「ふーん」

菫「満足か?」

照「うん。頑張ってね、菫」

菫「ありがとう。いずれまた照には話すよ」

照「そうして。できるだけ、早くね」

菫「……わかってるさ」

―――――夕方


淡「ただいまー!」

菫「おかえり」

淡「いやー、今日も部活疲れたー」

菫「最近調子はどうだ?」

淡「ふっふーん、バリバリ絶好調だよ!」

淡「なんたって私はいまや成長して高校1000年生クラスだからね!」

菫「なんだよ1000って……」

淡「あ、今日のお夕飯肉じゃがなんだ」

菫「ああ、風邪もよくなったみたいだしな。せっかくだし作ってやろうと」

淡「ありがとー。菫先輩の肉じゃがすっごく美味しいもん」

菫「しかし昨日とはまるで別人だな」

淡「へ?」

菫「いや、昨日の淡はしおらしくてかわいかったなって思っただけだ」

淡「じゃあ今は?」

菫「……今もかわいいよ」

淡「へ」

淡「わ、わーなになにいきなり!?」

菫「なあ淡……」

淡「……なに?」

菫「………」

淡「………」

菫「いや、なんでもない。その、まずはご飯食べよう。冷めてもよくないからな」

淡「は、はい」

菫「それでは、いただきます」

淡「い、いただきます」

菫「………」

淡「………」

菫「………」

淡「………」

淡「ごちそうさまでした」

菫「ごちそうさま」

淡「……えと、菫先輩」

菫「よし、お風呂に入るか」

淡「え、お風呂……あ、うん。そうだね、お風呂入ろう!」

菫「もうお湯ははってあるからすぐ入れるぞ」

淡「完璧じゃん! さっそくはいろー」

菫「じゃあ、電気消すぞ」

淡「はーい」

菫「よしょっと。ふぅ」

淡「菫先輩ー」

菫「ふふっ。よしよし」

淡「菫先輩……毎日、ありがとうございます」

菫「どうした急に?」

淡「いえ。実は今日、クラスと部活のみんなに聞かれたんです」

淡「菫先輩と同棲してるのかって」

菫「ああ」

淡「違うって言ったんですけど、でも、してもらってることとか考えたら同じかなとか思って」

淡「それで、今まであんまりお礼とか言ってなかったなーって思って、それでです」

淡「………」

淡「ねえ、菫先輩……」

菫「待った」

淡「え……」

菫「……好きだ、淡」

淡「へ……」

淡「わ、ず、ずるい! 私から言おうと思ってたのに!」

菫「さすがにな。これはゆずれないよ」

淡「うー。菫先輩!」

淡「………」

淡「……好き」

菫「……ああ」

淡「ううー、なんだかすっごい恥ずかしい」

菫「そうだな。なんか、熱いな」

淡「はぁ、でもよかった」

菫「なにが……ああ」

淡「両思いじゃなかったら、どうしようって思ってたもん」

菫「私が淡を好きじゃないわけないだろう」

淡「でも、やっぱりわからないじゃないですか」

淡「そういう菫先輩はわかってたの?」

菫「……いや」

淡「やっぱりそうなんじゃん」

菫「でもな」

淡「はい」

菫「たとえ淡が私のことを好きじゃなかったとしても、なんとしても好きにさせようと思っていたからな」

淡「それこそありえないよ。だって……私こそ菫先輩のこと好きじゃないわけないもん」

菫「ふふ、ありがとう」

淡「ううん。こっちこそありがとう、菫先輩」

菫「なんだか……幸せだな」

淡「うん」

菫「淡」

淡「なに?」

菫「好きだよ」

淡「わ、私だって!……好き」

菫「実はな、私も同棲してるのかって聞かれたよ」

淡「そうだったんだ……」

菫「まあ私も違うと答えたが……もうそれもあながち間違いじゃないかもな」

淡「それって……」

菫「だってこれからは毎日泊まるだろ?」

淡「あ、当たり前!」

菫「だったらこれからは同棲と言っても間違いじゃないだろ?」

淡「うん……そうだね」

菫「特に何か生活が変わるとは思えないけどな」

淡「変わるよ」

菫「え?」

淡「だって、これからは私からの愛情が100%増しになるもん」

菫「……ふふっ、そうだな」

淡「あ、信じてないでしょ」

菫「いやいや、信じてるよ。むしろ、今でもちゃんと愛情を感じてるさ」

淡「そう?」

菫「ああ。今こうやって抱きしめてるのだって、今はなんだか感じがずいぶん違うよ」

淡「……うん」

菫「淡」

淡「菫先輩」

菫「………」

淡「………」

菫「……ん」

淡「ん……はぁ」

菫「好きだよ」

淡「はい。私も、好き」

菫「私の、初めてのキスだ」

淡「あ、懐かしいそれ」

菫「よく言ってたな。初めてのなんとかって」

淡「うん。……私もね、初めてだよ」

淡「だから、菫先輩に私の初めてのキス、あげました」

菫「ありがとう」

菫「思えば、淡からは色んな初めてをもらったな」

淡「本当ですよ。こんなにあげたんだから、責任とってくださいね」

菫「ああ、もちろん」

淡「ねえ、菫先輩……もう一回」

菫「うん」

淡「ん……」

菫「ん……ん、ふぁ」

淡「えへへ」

菫「ふふっ、淡」

淡「菫先輩」

菫「好きだ」

淡「好き」

菫「これからもよろしくな」

淡「はい! もちろん!」




カン!

以上です
支援、さるよけ、保守、ありがとうございました。
ではでは、おやすみなさい

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