まどか「ほむらって名前゙バーニングッ!!゙って感じでカッコいい」 (212)

ほむら「っ?!」

まどか「どうしたの?もしかして体調悪い?」

ほむら「い、いいえ。大丈夫よ、気にしないで」ファサッ

ほむら(あ、明らかにバーニングの時だけ声の感じが違ったわ。この時間軸のまどかに何が……)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367506354

放課後

ほむら(インキュベーターなんてどうでもいいわ。それよりもこの時間軸のまどかについて調べないと)コソコソ

さやか「あ、CDショップ寄っていい?」

まどか「うん、上条くんのだね」

さやか「まあねー」テレテレ

まどか「さやかちゃんは上条くんにお熱だからねっ」ティヒヒ

さやか「きょ、恭介とは別にそんなんじゃ」テレテレ

ほむら(今のところまどかに妙な様子はない。さっきのは勘違い?)

まどか「〜♪」

ほむら(安定の演歌ね。何聞いてるのかしら)コソコソ

まどか「ん〜、バーニングッ!!」グッ

ほむら「ひぃっ?!」ビクッ

まどか「ん……え、ほむらちゃん?こんな所で会うなんて偶然だね」ニコニコ

ほむら「うん……」(情けない声を出してしまったわ)ビクビク

さやか「おー、転校生じゃん!なになに?私に会いに来たとか!」

ほむら「べ、別にそんなことは」(ど、どうしよう、まださっきのドキドキが……)ビクビク

さやか「くそう、頬赤らめて可愛すぎるぞ転校生っ」ダキッ

まどか「もう、ほむらちゃん困ってるよ」

さやか「なに?!まどか焼きもちか?もう二人とも私の嫁になるのだー!」ダキッ


『……けて』

まどか「え?」


『助けて……まどか……』


さやか「どうしたの、まどか?」

ほむら(これはインキュベーターね)

まどか「行かなきゃ」バッ

さやか「ああ、まどか!転校生も行くよ」ダッ

ほむら「勿論よ」タタッ

まどか「な、なにこれ」ビクビク


さやか「映画のセットかなんか?」


ほむら(魔女の結界ね、仕方ない)

ほむら「二人とも私からはな」
まどか「危ないほむらちゃん!バーニングッ!!」ドンッ

ほむらに襲いかかろうとした使い魔をまどかはいつの間にか持っていたラケットとテニスボールで弾き飛ばした

ほむら(え?ええ?!)ビックリ

まどか「ウオオオオオ!バーニングッ、バーニングッ、バァァァァァァニィングッ!!」

一球一球衝撃が迸る

一般人としては異常な力に、使い魔は為す術なく撃退されていく

ほむら「」ポカーン

一応変身したほむらも口をあんぐり開け呆ける事しかできなかった

さやか「うお!転校生どうしたのさその格好!」

バーニングッ
バーニングッ
キュップイ?!
バーニングッ!!!!

「これはどういう事なのかしら……」

暗がりから一人の少女が現れる

ほむら「あ、あなたは」

マミ「あれ、一般人……よね?一体何が起きてるの?」ボーゼン

ほむら「さあ」ボー

二人の魔法少女はただただ困惑して、ただの少女の成す光景を眺めていた

さやか「また不思議な格好の人が出てきた!」

その後マミさん宅

ほむら「……と、いうわけなのよ」

さやか「なるほど、あのうにょうにょは悪いやつで二人は正義の味方って事ね」

マミ「それよりもあの娘は一体……」ヒソヒソ

ほむら「魔法少女じゃないのは確かだわ」ヒソヒソ

まどか「このケーキ、すっごく美味しいです」ニコニコ

ありがとです
元ネタはテニプリのタカさんです

マミ「そう言えば、暁美さんは魔法少女なのよね」

ほむら「そうよ。でも、敵対する気はないわ。あなたの事は正義の魔法少女だって良く聞いてるわ」(こうなったらこの状況を利用しましょう)

マミ「そ、そんな、当然の事をしてるだけよ」テレテレ

ほむら「いいえ、立派な事だわ。私も見習いたいと思って、出来れば協力したいのだけれど」

マミ「そうなの?!でも……ううん。よろしくね、暁美さん」ニコニコ

ほむら「こちらこそ、巴さん」

QB「やあ、珍しく賑やかだね」ボロッ

マミ「あらきゅうべぇ、何処に行ってたの?何だかボロボロだけど」

QB「ちょっと酷い目にあってね」

まどか「な、なにこれ」キョトン
さやか「ぬいぐるみが喋ってる?!」

QB「君達は僕が見えてるんだね」

ほむら(こいつ白々しく……)ギリッ

QB「……というわけで、僕と契約して魔法少女に」
ほむら「ならない方がいいわ」

さやか「なんでさ、正義の味方はいっぱい居た方がいいじゃん」

ほむら「聞いてなかったの?魔女と戦って命を落とす事もある。必要に差し迫った願いでもなければ、魔法少女になるのはお勧めしないわ」ファサッ

まどか「そっかぁ、それもそうだよね」
さやか「むぅ」

マミ「そうね、やっぱり私も普通の女の子の暮らしを夢見る事が何度もあるわ。一生を左右する事だし、軽々しく決めちゃダメよ」

さやか「はーい」

ほむら「……巴さんの言う事は素直に聞くのね」

さやか「お、何だほむらも焼きもち焼っきーなのか?さやかちゃんモテモテだなあ」

マミ「あらあら」ウフフ

まどか「そうなのほむらちゃん?」

ほむら「ま、まどかまで信じないで!」アセアセ

QB「まあいいさ。何時でも契約したくなった時に僕を呼ぶんだね」サッ

ほむら「行ったわね」

マミ「何時もはもっと素直なんだけど」アワアワ

まどか「気にしないで大丈夫ですよマミさん」

さやか「そうそう!私もっとよく考えてみます!」

マミ「そう?それじゃもう暗くなるし、名残惜しいけど今日は解散しましょ」

「「はーい」」

帰り道

ほむら「二人とも、契約してはダメよ。絶対に」

さやか「ほむらがまたツンモードだ」

まどか「……どうしてほむらちゃんは、契約しちゃダメって言ってるの?」

ほむら「それは……」(伝えた方が良いのかしら。でも、いや後から伝えるよりはその方が……うん)

ほむら「魔法少女には、あのインキュベーターが言ってない秘密があるのよ」

ほむらソウルジェム実証後


まどか「そ、そんなのってないよ……」


さやか「じゃあほむらは、ほむらはゾンビって事?!それに魔法少女が魔女にって」

ほむら「まあそうとも言えるわね。でも身体に関しては気にしてないわ。魂が外にあるってだけよ」


まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「まどかが気にする事じゃないわ」

ほむら「魔女になる事は、巴さんには黙っていて。まだ伝える時ではないの」

まどか「うん、分かったよほむらちゃん」

さやか「ほむら、あんたの言う通り契約については忘れるよ」

ほむら「分かったならいいわ」ファサッ

まどか「でも、助けてほしい事があったら、何時でも言ってね!」

さやか「そうだぞ、ほむらは私の嫁になるのだからな!」ダキッ

ほむら「もう、調子がいいのね。でも助かるわ、巴さんの事もお願いね」

まどさや「もちろん!」

後日

さやか「ほむらもマミさんもパトロールかぁ。やっぱ魔法少女って大変なんだねぇ」

まどか「そうだね。何だかほむらちゃんが遠いなぁ」

さやか「まどかはほむらにお熱ですなぁ」

まどか「そんなんじゃないよ!さやかちゃんだって上条くんに夢中なくせに」

さやか「な、なな何を言いますかまどかは。いつも言うようにき、恭介とは別に」アセアセ

さやか「な、何だか変なのがある」

まどか「なんだろうこれ」

QB「グリーフシードだよ。もう孵化する寸前だ」ヒョイ

まどか「きゅうべえ?!そ、それならほむらちゃんとマミさんを呼んで来ないと!」

さやか「まどかは呼びに行って!私は見張ってるから」

QB「その必要はないよ。マミが暁美ほむらに言われてこっちに来てる」

QB(今回はイレギュラーもあるから向こうに使い魔を送っといたのに。でも、まだ機会はあるさ。それにしても暁美ほむらは……)

マミ「待たせたわね、何もなかった?」

まどか「マミさん!」
さやか「見張ってる内に結界に巻き込まれたけど、大丈夫です!」

マミ「良かったわ。……この魔女は甘いもの好きみたいね」


さやか「ささっとやっちゃって下さい!」

マミ「油断は禁物よ。一瞬の隙が生死を分かつ時もあるわ」

まどか「マミさん……」

マミ「気にしないでいいのよ。今は暁美さんも、あなた逹だって居る。それだけで私は十分救われてるの」

マミ「あれが魔女ね」

まどか「小さくて人形みたい……」

マミ「見た目はね。リボンで結界を張ったから、動かないでね」

さやか「はい!」

マミ「じゃあ、いくわよッ」

大量のマスケット銃がマミを囲う
すり抜けようとする使い魔すら見逃さず、踊る様に敵を殲滅していく

マミ(今回は鹿目さんや美樹さんもいる。不安にはさせられないし、最初から全力で行くわ!)

マミ「これで最後よ……ティロ・フィナーレ!!」

爆炎に包まれる魔女

ホッと一息吐いたマミの耳に鋭い悲鳴が届く

ハッと振り返ると、リボンに噛み付く使い魔の姿があった

マミ(見逃したっ?!)

即座にマスケット銃を召喚し使い魔を撃ち抜いた時、ティロ・フィナーレの爆発による煙が揺らぎ——


まどか「マミさん!」

悪寒

魔女を振り返った時には、小さな人形の身に潜んだ悪魔が敵の命を掻き消さんと這い出ていた


マミ(しくじった。ごめんね、皆。暁美さん、どうか二人を……)

魔女がマミを噛み砕こうとする直前、まどかが吠えた

まどか「一式波動球ッ!!」

一瞬、目まぐるしく移る展開にマミには何が起きたのか理解出来なかった

意識が現実に戻ったのは、目の前の巨体が吹き飛んでいった時

まどか「マミさん、今だあぁぁぁぁあああ!」

まどかの熱に呼応する様に、身体全体に力を込める

マミ「ええ!ティロ……フィナーレ!!」

魔法の弾丸は魔女を穿ち、遂にお菓子の魔女は消えていった

結界の消滅から少し遅れて、ほむらがやってきた

ほむら「あの後急に使い魔が増えて……ハァ、ハァ……巴さんは、何もなかった?」

マミ「ええ、鹿目さんに助けられたわ」

ほむら「まどかに?!」

その言葉に、ほむらは同様を隠せず思わず声が裏返る

さやか「それは私のせいなんだ。マミさん、ごめんなさい。私が悲鳴あげたせいで……」

マミ「良いのよ美樹さん、魔女はもういないわ。鹿目さん、ホントに助かったわ、ありがとう」

まどか「ティヒヒ、気にしないでください、助けるのは当然ですよ!」

マミほむ(魔法少女を助ける一般人てのも……)

マミ「疲れたでしょ?今日は帰りましょ」

ほむら「私は話があるから、巴さんの家に寄るわ」

まどか「じゃあほむらちゃんまた明日学校で」

さやか「また明日ー」

マミ「じゃあ、行きましょ」

ほむら「ええ」(……)

マミさん宅

マミ「ちょっと待っててね。今飲み物出すから」

ほむら「飲み物はいいから座って」

マミ「そう?じゃあ」

少しの躊躇いを見せながら、渋々定位置に座る

マミ「話って?」

ほむら「そう強がらなくたっていいのよ」

見上げて口を開いたマミを、ほむらはそっと抱き締めた
驚き、マミの肩が少し跳ねる

マミ「あ、暁美さん?!」

ほむら「帰ってる途中、手が少しだけど震えてたわ」

マミ「そんなことッ」

本当の事を言われ、否定しようとしたマミを遮り、ほむらはそっと頭を撫でて言う

ほむら「大丈夫。怖い事があった時に、先輩後輩なんて関係ないわ」

マミ「暁美……さん」

ほむら「泣きたい時は、泣くべきよ」

ほむらの言葉は、脆くなっていた壁を砕き、最後の堰を開放させた
声をあげて泣くその姿は、何時もの凛々しさを消し、その下に隠してあった甘えが顔を出していた

マミ「私、私ね、怖かったの」

ほむら「うん」

マミ「私が死んだら、あの子逹もって」

ほむら「うん」

マミ「そしたら、ほむらさんは一人になっちゃうって」

ほむら「うん」

マミ「そしたら、そしたらね、マミね、自分が情けなくって」

ほむら「うん」

マミ「魔女を倒し終わっても、怖かった。でも皆の前では先輩だから、マミね、マミね」

ほむら「うん」

マミ「暁美さん……ほむらさん……うあああぁぁぁ!」

ほむら「うん」

娘をあやすように、頭を撫で、背中をそっと叩く
巴マミの運命が変わったことで余裕が出来たのか、ほむらは慈愛に満ちた微笑みを浮かべていた

マミ「……」スー、スー

ほむら「寝ちゃったのね」ナデナデ

ほむら「確か毛布が」ガタガタ

ほむら(懐かしい。そう言えば、気付いたら良好な関係が気付けてるわ)ファサッ

ほむら(これもまどかのお陰ね。どうにも変だけれど)モウフファサッ

ほむら「勝手に台所使うのもあれだけど……まあいいわよね」ナデ

ほむら「……」トントン

マミ「ん……あら?」ゴシゴシ

マミ(寝ちゃってたのね、マミ……じゃなくて私!)

マミ(ほむらさんに恥ずかしいとこ聞かれちゃったわ)カオマッカ

ほむら「丁度起きたのね。夕飯出来たところよ」ファサッ

マミ「そうなの?ほむ……暁美さん、ありがとう」

ほむら「ほむらでいいわ。泣いてる時は、そう言ってたじゃない」

マミ「ほ、ほむら、さん……何だか恥ずかしいわ」テレ

ほむら「ふふっ。その内慣れるわ……“マミ”」

翌朝

まどか「ほむらちゃーん!それにマミさんも!」

さやか「一緒ってどういう事なのさ!」ガバッ

マミ「おはよう、鹿目さん、美樹さん。ほむらさんとは」

ほむら「昨日はマミの家に泊まったのよ」

さやか「何それ!しかも名前呼びだし、ズルいぞほむらだけ!」

まどか「マミさん!私もまどかって呼んで欲しいです!それにお泊まりも!」

マミ「そ、そうね。じゃあ今度ね、まどかさん、さやかさん」

まどさや「はい!」

ほむら(むぅ)

放課後

さやか「泣いてるマミさんをナデナデだと!?うらやまけしからん!」

ほむら「ふふん」(自分の事マミって言ってたのは私だけの秘密ね)

まどか「ほむらちゃんは私も泣いてたら撫でてくれるかな?」

ほむら「もちろんよ」

まどか「ティヒヒ」

さやか「ま、まどかまで……。こうなったら三人纏めてあたしの嫁になるのだー!」

ほむら「さやか、浮気するの?」ナミダ

さやか「ほむらー!」ダキツキ

ほむら「冗談よ、離れなさい」

まどか「私も混ぜてほしいなって」ダキツキ

ほむら「もうっ」

マミ「あら、何だか楽しそうね」ウフフ

ほむら「マミー」ギュッ

さやか「あ、ほむらまた抜け駆け禁止!」ダキツキ

まどか「じゃあ私も!」ダキッ

マミ「あらあら、皆どうしたの?」ウフフ

さやか「今日は恭介のお見舞いに行くのだー!」

ほむら「旦那のその旦那様って何て呼べばいいのかしらね」

マミ「なになに、さやかさんの恋人?」

まどか「はい!」

さやか「まどか!だから恭介とは別にそんなんじゃないっての!」カオマッカ

ほむら(あれで隠せてると思ってるのよね)

さやか「じゃあ行ってきまーす」タッタッ

まどか「私達はマミさんの家でお泊まりの会議!」フンスー

マミ「そうね、じゃあ行きましょ」ニコニコ

ほむら「……」(マミとはお風呂入ったし、次はまどかね)

まどか「ほむらちゃん?行くよ」

ほむら「ええ」ファサッ

病院

さやか「恭介ー、お見舞いに来たよー!」

上条「さやか……」

さやか「なんだか暗いぞ恭介、どうかした?」

上条「さやかは、僕をいじめてるのかい?」

さやか「え?」

上条「いつもいつも、僕に弾けない音楽なんか聴かせて、もう嫌なんだ!」ドンッ

さやか「そんな、ダメだよ怪我してる腕を」

上条「もう治らない」

さやか「う、ウソ……」

上条「ホントだよ。もう僕の腕は奇跡や魔法でもなきゃ治らないんだ」

さやか「……るよ」

さやか「奇跡も魔法もあるんだよ」ダッ

上条「さやかっ?!」

さやか「勢いで飛び出しちゃったけど……どうしよう……」

QB「やあ」

さやか「あんた……っ」ギリッ

QB「契約、するんだろう?」

さやか「私、私は……」

さやか(恭介か、ゾンビか……何だか凄い二択だなぁ)

同時刻
道端

まどか「あれ?仁美ちゃん、今日はお稽古じゃ?」

仁美「あらまどかさん、お稽古はお休みですわ。それよりも一緒に良いところに行きませんか」

まどか(どうしちゃったんだろう。様子が変だな……)

まどか「分かった、それじゃあ着いてくね」

仁美「それがいいですわ」

廃工場

「オレハコンナコウジョウサエ」
「ウー」「アー」

仁美「さあ、まどかさん。早速行きましょう」

まどか(あ、あのバケツって洗剤?しかも混ぜちゃいけないやつなんじゃ?!)

まどか「ウオオオオオ!バーニングッ!!」

まどかの放った強烈なバーニングサーブはバケツを弾き飛ばし、バケツは窓ガラスを破り外に飛び出していった

仁美「何をしますの?!」

まどか「ひ、仁美ちゃん?」

「ツカマエロ」「アー」
「ニガスナ」

まどか「ひっ」(今日はボール一個しか……に、逃げないと)ダダッ

まどか(ここなら……って物置?!逃げ場がないよ!)

「デテコイー」「コラー」
「マードーカーサンー」

まどか(あれは魔女の結界!?全部魔女のせいだったんだ)

まどか(あう……ほむらちゃん、マミさん、助けて)

まどか「ガッデム!」

堅く目を閉じたまどかに襲いかかろうとした使い魔が、目前で一刀両断され割れる

閉じていた目を開けると、まどかの前には騎士の格好をしたさやかが居た

さやか「さやかちゃん参上!」

まどか「さやかちゃん?!どうして」

さやか「大丈夫。覚悟は決めたんだ。ゾンビみたいな身体でも、私は私!」

さやか「ポジティブじゃないさやかちゃんなんて、らしくないじゃん!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「心配しないで、まどか。それよりもこいつを華麗にやっつけた後、ほむらに何て言えばいいか考えといてよね!」

箱の魔女の映すトラウマは、さっきまでならいざ知らず、今のさやかには幸いとさえ思えた

腕の治った恭介
学校に通って誰かと笑ってる恭介

さやか(私は、意地でもその隣に居てやるんだ!)

意思の篭った剣は魔女を深々と切り裂き、魔女の形成した結界が崩れていく

さやか(あんたも元は魔法少女だったんだよね。なら、あんたの分も、生きてくよ)

グリーフシードを回収したさやかは、ソウルジェムを浄化しながら天を仰ぎ新たな決意を固めたのだった

マミ「ま、まどかさん?!それにさやかさんの格好はッ」

ほむら「魔法少女になったのね」

遅れてやってきた二人は、さやかの姿に目を丸くする

さやか「う、うん」

まどか「怒らないで、さやかちゃんが来てくれなかったら私……」

ほむら「願いは……上条恭介の腕を治す事ね」

さやか「何でそれを?!」

ほむら「やっぱりそうなのね……あなたって人は」

さやか「ストップストップ!全部分かってて契約したんだよ。だから私は絶対後悔しない。恭介に、ガンガンアタックかけてくんだ!」

ほむら「っ!?……そう、それならいいわ」

今までの時間軸にない強い決意の眼差し
全てを知って、尚契約したさやかの表情は流されて契約していた今までよりも遥かに晴れ晴れとした顔をしていた


マミ「何がなんだかサッパリね」

まどか「後で説明しますね」ティヒヒ

個人的にきりがいいのでここで一旦終了します

初SSなのでお見苦しい所もあったと思いますが、生暖かい目で見てくれると幸いです


ここまでで大体三分の一位です

こここうした方がいいとか、あったら指摘貰えると嬉しいです

というか読んでる人いるのだろうか

感想ありがとですっ

書き忘れてましたが次の更新は今日の23時くらいからです


まどかのタカさん化の理由はおまけエピ的なので考えてます

日常パートで描写がなくなるのは、日常パート書けず、元は“ほむら「遂に母性が宿ったわ」”で書いてたものを使ってるからです

最後までお付き合い頂けると嬉しいですっ

少し遅れましたが書いていきますっ

数日後

さやか「恭介!腕治ったって!」

上条「うん、ほら!今は筋力回復の為のトレーニング中だよ」ニギニギ

さやか「良かった、これでヴァイオリン弾き放題だ!」

上条「……そうだ、さやか、この前はごめん、怒鳴ったりして」

さやか「いーって事ですよ、そんなの忘れて、林檎剥いてきたから」アーン

上条「もう手は治ったんだけどね」

さやか「女の子からアーンされた時は黙って食べる!」

上条「う、うん」アーン

さやか(弱いけど魔女の反応?)

さやか「ぬ、さやかちゃんを呼ぶ声が聞こえたので行ってくる!」

上条「うん、いってらっしゃい」

さやか「学校行く日連絡してね!付き添うから」タタッ

上条「分かった!ってここ病院なんだから走らない方がいいのになぁ」


「コラッ」「ゴメンナサーイ」

上条「やっぱり」クスッ

路地裏

さやか「待て待て〜」

さやか「これで止めだ!」

使い魔目掛けて振り下ろした刃は、突然現れた少女に寸での所で止められる
難を逃れた使い魔はそのまま路地の闇に消えていった

さやか「何すんのさ?!」

「それはこっちの台詞だよ。あれ使い魔だしグリーフシード落とさねぇよ」

燃える様な赤髪の少女
槍を持つは姿は同業者である事が伺える

さやか「そんなの関係ないし、あんた誰よ」

杏子「杏子。魔法少女だ」

さやか「それはまあ見れば分かる。それより退いてよ、あれ倒さなきゃ」

杏子「あれは使い魔だって言ってるだろ。それにここはあたしの縄張りだ。そっちから来ようが狩り場は守ってもらう」

さやか「じゃああんたが使い魔狩るって事?」

杏子「ああ、もうちょっと人を食って貰って魔女になったら狩るさ」

さやか「何言ってんのッ!?」

杏子「やれやれ、あんたマミんとこの素質あるって奴だろ?やっぱ甘ちゃんだったか」

杏子「いいか、魔女は人を食う。あたしらは魔女を食う。簡単な食物連鎖だろ」

さやか「許さない、そんなの絶対!」

杏子「なら来いよ。今の内に見滝原の魔法少女を一人削ってやる」

幾度も混じり合う剣と槍
経験でもリーチでも遥かに劣るさやかには一方的に生傷が増えていく

杏子「どうしたのさ!さっきまでの大口はよぉ!」

さやか「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇ!」

さやか(ここで私が負けたら、マミさんやほむらまで間違ってるみたいじゃないか!だから負けられない!)

大怪我を覚悟しての捨て身の特攻
防御度外視の攻撃は杏子の腕に一太刀浴びせたが、同時にさやかも足を貫かれた

さやか「くっ……でも、届いたぞ!」

杏子「くそっ、やりやがったな!」

杏子は距離をとり腕の傷を治していく

さやか「ハァ……ハァ……私も治さなきゃ」

さやかが治癒魔法を発動させると、杏子のそれよりも明るく発行し、杏子が腕の傷を治し終えると同時にさやかも全身の傷を癒した

それを見た杏子は目を丸くする

杏子「あんた、それ、何を願ったんだよ」

さやか「関係ないでしょ」

杏子「いいから答えろ!」

さやか「……幼なじみの怪我を治した。それが何よ?」

杏子「ッ」

杏子「他人の為に願いを使ったのか」

さやか「それが、どうしたってのよ」

杏子「バカを一人見付けたってだけさ。きっと後悔するぞ」

さやか「そんなの……そんなの勝手に決めるな!」

突如声を荒げたさやかに、杏子は少し肩を震えさせ、槍を取り落としそうになった

さやか「そりゃ、絶対後悔しないなんて言い切れないけど、未来の事なんて分からないんだから、少なくとも私は後ろ向きな気持ちで考えたりしない!したくもない!」

杏子「……」

さやか「ん?あれ?何かいっちゃん最初と話が変わってるような」

杏子「……帰る」

さやか「あっ、ちょ、……行っちゃった」

その後
マミさん宅

マミ「佐倉さんに会ったのね……」

さやか「知ってるんですか?」

マミ「……昔、あなたたちと同じように一緒に居た娘よ。でも、ある時考えが突然変わって決別したの」

まどか「そんなことが……。さやかちゃん今度から気を付けてね?」

さやか「うん、そうだね……」

ほむら「どうかしたの?何時もなら一番にケーキ完食するのに、残してる」

さやか「ううん、別に……今日は帰ります。ごちそうさまでした」サッ

ほむら(普段ならもっと愚痴ってる筈だし、私が着いた時もぼんやりしてた……これはどういう事?)

数日後

さやか「ほら、段差あるから気を付けて」

上条「そんな過保護じゃなくて大丈夫だよ」

さやか「いいから言うこと聞いてなさい!」ビシッ

上条「分かったよ」クスッ

まどか「良かった、さやかちゃん元気出たみたい」

ほむら「そうね」(この後は……)チラッ

仁美「……」ググッ

仁美「さやかさん、放課後お話がありますの」

さやか「ん、何だ仁美、愛の告白かー?」

仁美「かもしれませんわ」サッ

さやか「え、え?えぇーーー!?」

ほむら(やっぱりこうなるのね)

ほむら(恋愛って、よく分からないのよね。1ヶ月じゃまどかの周囲で精一杯だし、どうしたら)アババババ

放課後

仁美「私、上条さんの事をお慕いしてますの」

さやか「そ、それって」

仁美「さやかさんの想像通りです」

さやか「そ、そっかー。恭介も隅におけないなー」アセ

仁美「誤魔化さなくてもいいですわ。さやかさんが上条さんの事を好きなのも、長い献身も知ってます」

さやか「……」

仁美「私、さやかさんの事も、上条さんと同じくらい大事に思ってます」

仁美「だから、丸一日だけ、猶予をあげます。明日の夕刻、私は上条さんに告白します」

さやか「仁美……」

仁美「もしその前に、上条さんとさやかさんが付き合っていたなら、私は引きますわ。いえ、お二人を祝福します。だから、私に遠慮なんてしないで。それではまた」ザッザッ

さやか「そんな、私……どうしたら……」




ほむら(これがシュラバーって奴ね。覗き見したのは初めてだけど心臓に悪いからもう止めよう……)ドキドキ

ほむら(でも困ったわ。私には何て言ったらいいか分からない。これまでのループでは……)

ほむら(全く思い付かない。マミも色恋沙汰は微妙でしょうしまどかは立場上……そうだわ!)

ほむら「さやか」

さやか「ほむら?どうしたのさこんなとこで……」

ほむら「隣町の、この場所に向かいなさい。きっと助けてくれるわ」

さやか「……教会?ま、サンキュ。行ってみるよ」ハァ



ほむら(杏子に任せる。これが間違いなく最善手。丸投げではないわ)ファサッ

ほむら(あ、でも杏子と会ったとき妙に暗かったわね。……逆効果だったかもしれないわ)アセ

廃教会


さやか「なにこれ、ボロボロじゃん」

さやか「帰ろうかな」


杏子「お前、見滝原の……」ガサッ

さやか「あんた……何だってこんなとこに」

杏子「ここはあたしんちだからな。元ではあるが」

さやか「そう。まあいいわ。帰るし」

杏子「待てよ。ここは教会だ。話くらい聞いてやるよ」

さやか「別に話なんて」
杏子「いいから来いっての」グイッ

杏子「で、あんたどうしたってそんな面してんのさ」シャクッ

さやか「ハァ……幼なじみの腕を治したって話したでしょ?」

杏子「ああ」

さやか「その幼なじみに親友が惚れてる。親友はあたしに丸一日くれて、明日の夕方告白するつもり。それだけ」

杏子「何だ男か。だったら先に告っちまえよ」

さやか「そんなの……」

杏子「フラれんのが恐いのか?フラれた後、そいつと親友が付き合うのが恐いのか?」

さやか「」ビクッ

杏子「いや、そうだな。恋愛なんざ分かんないけどよ、あんたは今何もかもにビビってる」

杏子「フラれる事。幼なじみと親友が付き合う事。んでしょーもない事にあんたと幼なじみが付き合う事にまでビビってる」

杏子「何もしないすら選択肢に入ってんだから、そりゃ思考停止しちまうわな」シャクシャク

さやか「……それもあるけど、あんたの事も考えてたの。考えてたとこに二人追加で、それで頭ん中ぐるぐるしてるのよ」

杏子「はぁ?あたしの事?」

さやか「あんた、帰り際泣きそうな顔してた。だから、あんたにも何かあるのかなって」

杏子「泣きそうになんざなってねぇけど、まあいい、身の上話くらいはしてやるよ」


杏子の話は、さやかにはまるで物語の様に聞こえた
奇跡を後悔した少女の物語


さやか「それであんた、あの時……」

杏子「それはもういい」

杏子「それよりも、あんたに言われて、こっちも色々考えたんだ」

杏子「……今、私はあんたが後悔せずにいられるかに興味がある」

杏子「あんたがもし後悔せずにいられたら、今までの生き方を見直してもいい」

さやか「それって」

杏子「私に起きた事は、神を冒涜した事に対する罰と試練だとでも考えるさ」

杏子「あんたの望む、正義の味方にでも、何でもなってやる。だから、立ってあんたが一番したい事の結果を見せてくれよ」

       ヒーロー
「私の最後の“希望”」ボソッ


さやか「あんた……」

杏子「じゃあな。一つやるよ」ホイッ

さやか「っとと、変なやつ。……甘い」シャクッ

さやか(……よし!)

上条さん宅


さやか(ヴァイオリンの音。やっぱり恭介はそうじゃなくちゃね)

さやか(意地でも隣に居るって、決めたばかりじゃないか!なのに迷って……)

さやか(暗いけど……もうさやかちゃんは誰にも止められない!)

さやか「恭介ーーー!」


「ウワァッ」ギィーーッ


さやか「あはは、悪いことしちゃったかな?」ポリッ

上条「さ、さやか?一体どうしたんだい?今下行くよ」バタン

さやか(アババババ……ドキドキし過ぎてヤバい。けど!)

さやか「そこでいいから聞いて!」

上条「え、はい」

さやか(深呼吸。結果は……知るか!)


さやか「私、恭介が好き!恭介のヴァイオリンしてるとこも、音も、全部、恭介の全部が好き!以上!」


上条「さ、さやか?」

さやか「返事!」

上条「はい!」

上条(さ、さやかが僕を?!でも、考えてみればそんな気も、いやでも幼なじみだからだと思ってた……僕は、さやかをどう思ってるんだろう)

上条(……)

さやか「……」

上条「さやか!」

さやか「はい!」ビクッ

上条「正直僕はさやかが好きかって考えると、……よく分からない」

さやか「うん」

上条「でも、僕がこの先ヴァイオリンを弾いていって、そこで一番の席に座ってて欲しいのはさやかだ!」

さやか「うん」

上条「だから、ずっと僕の隣に居てくれ!」

さやか「え、そ、それって」カァーッ

さやか(プロポーズみたいじゃん!)

上条「返事!」

さやか「分かった!ずっと居るよ!でも、でも、今日は帰るー!」ダッ

上条「さやか……」

上条「……」

両親「……」ニヤニヤ

上条「……」ハッ

上条「父さん、母さん?!」

父「さやかちゃんの御両親に電話しなきゃなあ」

母「そうね。賭けは母チームの勝利って事ね」

上条「賭け?!」

母「旅行楽しみだわー。あ、その間さやかちゃん泊めてもいいけどそういう事はまだダメよ?」

父「ハッハッハ」

上条「出てってくれ!」

翌朝

上条「さやか……おはよう」カオマッカ

さやか「うん、おはよ」テレテレ

両親「……」ニヤニヤ

上条「行こっか」ギュッ

さやか「う、うん」キュッ

さやか「お母さんがね、良かったねって」

上条「うん」

さやか「お父さんがね、恭介ならいいって」

上条「う、うん」

さやか「幸せにして……ううん。一緒に幸せになろう!」

上条「うん!」

ほむら「あ、あれ、さやかじゃない?!」

ほむら(まさか上手くいくとは。流石杏子ね)

まどか「さやかちゃん……良かったね」ウルウル

仁美「……」ウルッ

ほむら(ああ、仁美……)

まどか「さやかちゃん、上条くんおはよー!」

恭さや「」ビクッ

ほむら「朝から熱いわね。あ、お邪魔だったかしら」

仁美「……おめでとうございます、お二人とも」ニコッ

さやか「仁美……」

仁美「後で、ちゃんと聞かせてください」ボソッ

さやか「うん、お昼に」

お昼休み

さやか「……と言うわけです」

仁美「そうですの……」

さやか「仁美……」

仁美「さやかさんは悪いことなんてしてませんわ。ただ、好きな人が同じだっただけです」

さやか「仁美ぃ……」

仁美「でも、何だかむしゃくしゃするので一回だけ」ニコッ

さやか「え?」

仁美「」ドスッ

さやか「ウッ!」

さやか「ひ、仁美……」

仁美「更にもう一発ッ!」ドゴッ

さやか「コハッ?!」ゲホッゲホッ


さやか「い、今の鳩尾に……入った」ゴホッ

仁美「さ、行きますわよ。早くしないとお昼の時間がなくなっちゃいますわ」スッ

さやか「ありがと。でもご飯入らなそう」スッ

仁美「残ったら私が食べますわ」クスッ

ほむら(ああ、どうなったのかしら)アワアワ

さや美「」ガラッ

ほむら(笑ってる?さやかが苦しそうだけど、まあいっか)

仁美「さあ、食べますわ!」ガツガツ

さやか「うう、やっぱ無理……うぷっ」

まどか「さやかちゃん大丈夫?」

ほむら(何があったの……)

放課後


マミ「そうなの?!そ、それでその先はどうしたの!?」

ほむら「マミ、興奮し過ぎよ」

まどか「まだ詳しくは聞いてないんです」ティヒヒ

マミ「それなら週末に強制収集ね!夜通し語り尽くすわよ!」

ほむら「マミ……」

ほむら(そう言えば、今更ながらインキュベーターを見かけない……何を企んでいるのか、警戒が必要ね)

その夜


まどか「今度の土曜は上条くんとデート?その後でいいからマミさんの家に来てね。お泊まり会なんだって。うん、分かった。またね」

QB「ま、まどか?」

まどか「七十六式波動球!!」ドッゴッズォォオオオン!!!!

QB「キュッp……」ショウメツ

まどか「私は魔法少女にならないから来ないでって言ってるのに。来たら波動球打つって言ってるのに。一式ずつ上げてくって言ってるのに。何で来るのかなって」ガットイジイジ



QB「このままでは不味い。早くあの恐ろしい球に堪えられる強度を得なければ……」ガクブル

土曜日、夕方
マミさん宅


杏子「あ、あたしも参加していいのかよ」カミクルクル

マミ「さやかさんが、絶対呼んでって。ふふ、佐倉さんにお礼したいんだって。佐倉さん、すっかりいい子になって」

杏子「んな?!う、うるせー!」

ほむら「そんな事より杏子……あなたお風呂入ったのは何時?」

杏子「何だ馴れ馴れしい。風呂は…………川もありか?」

ほむら「ハァ、ダメに決まってるじゃない。洗ってあげるから入るわよ」

杏子「な、ちょ、あんたの事全然知らねえぞ!」

ほむら「ほむらよ。私はあなたの事知ってるわ。それに裸の付き合いすれば直ぐ仲良くなるわ」

マミ「それはそうね」テレテレ

ほむら「入れてくるわ」

杏子「ちょ、待て!何でマミは頬赤らめて、いや、自分で脱ぐから!っていつの間にか脱がされてッ?!や、やめろよ!本気でおこッ!や、やっ、あっ、んっ、そんなっ………………」カポーン

ピンポーン

まどさや「お邪魔しまーす」

マミ「あら、さやかさんまで。デートは?」

さやか「恭介、ヴァイオリンの練習もありますから」テレテレ

まどか「それで向かってるとこでニヤニヤしてるさやかちゃんと会ったから荷物持ち手伝ってもらったんです」

さやか「ま、まどか?!」

マミ「ふふ、後で詳しく聞かせてもらうわね」

さやか「マミさんまで!さやかちゃんもしかしてピンチ?」

杏子「」ガラッ

ほむら「出たわ」ツヤツヤ

さやか「あ、ほむら、杏子!……杏子は何でほむらの服掴んでんの?」

杏子「こ、これは別に」テレッ

ほむら「色々よ、色々」

さやか「そか。私もお風呂入る!」

マミ「じゃあちょっと狭いかもしれないけど三人で入りましょっか」

さやか「賛成!」

まどか「」ペタペタ

さやか「マミさんの胸デカっ」

マミ「もう、さやかさんったら」

さやか「拝んだら御利益ありそう」ナムー

マミ「もうっ」

まどか(揉んだら成長するかなって)モミッ

マミ「ま、まどかさん?!」

さやか「あ、私もっ」モミモミ

マミ「もーっ!んんっ」

マミ(ほむらさんもやってたし、これがお風呂でのスキンシップなのね)

ほむら「あっちも賑やかね」

杏子「そ、そうだな」(何であたしは膝の上に乗ってんだ)

ほむら「ちゃんとしたら髪サラサラね。長いし綺麗なんだから気をつかった方がいいわ」クシクシ

杏子「でも家は……」

ほむら「何なら私の家に来る?一人暮らしだし、部屋は空いてるわ」

杏子「そんなん悪いし別に……」

ほむら「三食出るわ」

杏子「行く!!」

ほむら(ちょろい)

「ワーキャー」ガラッ

ほむら「出たみたいよ。さっき言った通り素直によ」ボソッ

杏子「わ、分かってるよ!」ボソッ

ガラッ

さやか「ん?杏子髪ちょーサラサラじゃん!」

マミ「あらあら」

まどか「キレイ……」


杏子「えっと、な」

杏子「き、今日は御誘いありがとう……あたしも嬉しい……よ」モジモジ

杏子(面と向かって言うと恥ずかしい……)

さやか「何だこの可愛い生き物はぁー!」ダキッ

杏子「な、やめろよ!」アタフタ

ほむら「そうよさやか。杏子は私のものよ」ギュッ

杏子「マミ、見てないで助けろよ!まどかも!」

マミ「あらあら」ウフフ

まどか「私も混ざりたいなって」ダキッ

杏子「うああぁぁぁぁああ!」ジタバタ

杏子「酷い目にあった」ハァハァ

さやか「今度猫耳買ってくる!」

杏子「やめろよ」

ほむら「それなら家にあるわ」

杏子「やめろ!」

まどか「その時はパパのカメラ持ってくるね」

杏子「マミーッ」ダキッ

マミ「あらあら、皆と直ぐ仲良くなったのね」ナデナデ

夜(21時位)

マミ「さやかさん覚悟しなさい。今日は寝かさないんだから!」

ほむら「張り切りすぎよマミ」

まどか「でもとってもとっても気になるなって」

さやか「べ、別に話す事なんて」テレテレ


杏子「ほむらー、眠い……」グイグイ

ほむら「ん、よしよし」ナデナデ

杏子「んー」ニコニコ

ほむら(何時もツンツンしてるのが甘えてくる。それがこんなに良いものだったなんて……さやか、こんなのを独り占めしてたのね)ポンポン

さやか「そ、それで恭介がずっと一緒に居てくれって」テレテレ

マミ「良いわねー、恋!私もしてみたいわ」

まどか「マミさんは好きな人とか告白されたとかってないんですか?」

マミ「魔法少女の事で忙しかったのもあるけど、何だか私クラスの男の子から避けられてる気がするのよね。話し掛けてもあんまり目を合わせてくれないし」


まどか(胸ばっか見てるのかな、やっぱり)ペタペタ


さやか「マミさんならニコッてするだけでイチコロですよ!」
マミ「そうかしら。なら今度やってみるわね」

杏ほむ「スー……スー……」ダキッ

さやか「それにしてもこの二人なにがあったんだろ。さやかちゃんを差し置いて……ぐぬぬ」

マミ「仲良しでいいじゃない。あ、写真撮っておきましょ」

まどか「賛成!」

パシャッパシャッ

杏子「むう……ほむらぁ」スリスリ

さやか「羨ましい。というかほむらのポジションは本来私な気が」グヌヌ

マミ「さやかさんには上条くんが居るんだからいいじゃない」

まどか「じゃあ、私はマミさんの胸を借りようかな」ポヨン

マミ「いらっしゃい」ダキッ

マミ「さあ、夜はまだまだ長いわよ!」

さやか「ははーっ」オジギ

翌朝

ほむら「ん……朝ね」パチッ

ほむら「昨日は杏子撫でてたら寝ちゃったのね」ナデナデ

杏子「スー……スー……」

ほむら「ワルプルギスの夜が来るまで残り二週間……そう言えばこの子達とあんまりにも上手くいくから、余裕があるわ」

ほむら「人は一人だと弱っていくって事かしら。まあいいわ。今は杏子の寝顔でも見てましょ」ハァハァ

ほむら「……と言うか、あっちもあっちで相当ね」

ほむら「まどか、マミとさやかにサンドイッチされて……スレンダーなのは抱き心地が良いとかって、眼鏡時代によく抱き付かれてたっけ」トオイメ

ほむら「まあそれも今なら理解出来るわ」ギュッ

杏子「んん……」スヤスヤ

ほむら「余計な凹凸ないから全身を楽しめ……止めましょ。変態みたいだわ」フウ


ほむら「寝よう」

マミ「皆起きて!もうお昼過ぎよ!」カンカン

まどか「朝……?」

さやか「うう、後五分だけ……」

ほむら「杏子、お昼だって」ユサユサ

杏子「飯か!?」ガバッ

マミ「お布団片付けたらご飯よ」

杏子「よし!さやかどけっ」バサッ

さやか「うおおっ!何事っ!?いてっ」

まどか「杏子ちゃん乱暴だよお」

杏子「うま、うま」ガツガツ

ほむら「もう、ご飯粒ついてるわ」ヒョイ、パク

杏子「恥ずかしいから取ったの食うなよ!」

ほむら「はいはい。口の周りソースついてるわ」フキフキ

杏子「ん、サンキュ」テレ

さやか「何かあそこにフィールドがある」

マミ「姉妹みたいね」

まどか「じゃあ私はマミさんに……。マミさんアーン」

マミ「ん、ありがと」アーン


さやか「さやかちゃん蚊帳の外……」ショボン

数日後


さやか「よしっ、魔女退治終了!」パシッ

杏子「さやか、お前今日も危なかったぞ。近接なんだからもっと視野を広くだな」

さやか「はいはい。ほむらが最近居ないから私に当たるなよ」

杏子「な?!べ、別にそんなんじゃねーし!」

まどか「それにしてもほむらちゃんどうしたのかな?」

杏子「うーん。夜遅くに帰ってきて、朝早くに出ちまうんだよなぁ」

マミ「あら?それって」

杏子「やべ」アセダラダラ

さやか「同棲なのか!?」

杏子「同棲言うな!あ、あたしが上がり込んでるだけだよ」

まどか「同棲だね」ウンウン

まどか「うーん、そっかあ。まあほむらちゃんだし大丈夫だよね」

さやか「うんうん。ほむらがやられてるとこは想像つかないなあ」

マミ「そうね。それにしても、さやかさん鍛えてとかグリーフシードを蓄えてとか、何か大きな戦いでもあるみたいね」

杏子「……正直得体の知れない奴だけど、良い奴だし、期待には答えるさ」

さやか「それで私に厳しいのか」

まどか「杏子ちゃんはほむらちゃんが大好きなんだね」ニコニコ

杏子「う、うるせぇ!」プイッ

ほむほむサイド

ほむら「見滝原での魔女退治は、三人も居れば余裕。今までは一人だったけど、他の人も居るのだから他の町からグリーフシードを持ってこなきゃならない」


ほむら「平行しての兵器集め。……頼れる人が居ると見滝原を離れられるしこっちも楽になるわね」

ほむら(今まではまどか以外を蔑ろにし過ぎた。このまどかは妙に落ち着いてるし、ちょっと警戒不足だったかもしれないけど……)

ほむら(でも契約してないし、QBも全く見ないし、この時間軸はイージーモードな軸ね)

ほむら(ともかく上手くいってるのだからここでループは最後にしましょう)

ワルプル一週間前


さやか「さやかちゃん参上!」

杏子「おう、入れ入れ」

ほむら「家主は私よ?」

マミ「ホントに同棲してたのね」

ほむら「そうよ」

杏子「」テレ

まどか「ここがほむらちゃんの家かぁ。なんかとってもシンプルだね」

マミ「それで、ほむらさん、話って?」

ほむら「話っていうのは、一つは見滝原に一週間後やってくる最悪の魔女、ワルプルギスの夜について」

杏子「それは、ホントかよ?」

ほむら「事実よ。この一週間、情報収集をしていたの」(ということにしとこう)

ほむら「私がここにやって来たのは、ワルプルギスの夜を倒すため。そうね。かつての仲間達の敵討ちってとこかしら」(ということにしとこう)


さやか「マミさん、ワルプルギスの夜って?」ボソッ

マミ「恐らくは、ただの一度も敗北したことのない最強の魔女よ。魔法少女の間で語り継がれる伝説のようなもの……」

まどか「そんな魔女に……勝てるの?」

ほむら「私はワルプルギスの夜と一人で何度も戦っているわ。勝てはしてないけど、死んでもない。このメンバーなら、絶対勝てる」

杏子「ほむら……」


ほむら「大丈夫、作戦もある。でも、戦うかどうかは、もう一つの、魔法少女の秘密を話してから決めましょう」

マミ「魔法少女の秘密?」

まどさや「……」

ほむら「マミ、杏子。ソウルジェムを渡して」

杏子「?おう」

マミ「はい」

ほむら「インキュベーター?居るんでしょう?」


…………


ほむら「……まあいいわ」

杏子「そう言えば最近見ねぇな」

マミ「どこ行っちゃったのかしら」

まどか「……」

ほむら「続けるわ」

ほむら「ソウルジェムは、私達の魂とリンクしている。ソウルジェムが無くなったり離れたりすると支えがなくなり私達は意識を失ってしまうの」

ほむら(インキュベーターも居ないしということにしとこう)

ほむら「そんなソウルジェムは、魔法の使用や日常生活で濁る。そして重要なのが絶望でも濁る事」

ほむら「希望の少女の魂が絶望に染まる。何が起こるか、予想出来た?」

マミ「まさか、そ、そんなのって……」ブルブル

杏子「絶望の象徴。魔女になる……か?」

ほむら「そうよ」

ほむら「インキュベーターの目的はその時に発生するエネルギーの回収、とか言ってたわね」


ほむら「マミ?大丈夫?」

マミ「そ、そんなのって……」フルフル

ほむら「怖がらなくっていいの。あなたは役目を終えた魔法少女を眠らせてあげた、それだけよ」ダキッ

マミ「でも……そうだとしても私だってっ」

ほむら「魔女になるなら、濁りきる前にソウルジェムを砕けばいい」

マミ「そんな……」

ほむら「……私があなたとずっと居る。砕かなきゃならない事態になんてさせないわ」ナデナデ

マミ「ほむらさん……」

ほむら「一回泣いて、吐き出しなさい。溜め込むのは、あなたの悪い癖よ」ポンポン

マミ「うん、うん。……マミ頑張るから、ちょっとだけ泣くね」ギュウッ

ほむら「杏子もおいで、我慢する必要はないわ」

杏子「ほむらぁ!」ダキッ

ほむら「よしよし」ポンポン

さやか「私は一般人の時に聞いてたし何とも思わないから言うけど、マミさんかわええ。追い込まれると一人称マミって可愛すぎるでしょ」

まどか「ティヒヒ、なんだかほむらちゃん皆のママみたい」

ほむら(まあ一月を何十回もループしてるし、今回余裕もあるし、本来の精神年齢が顔を出したのかしら)

ほむら(よく考えれば二人とも家族を亡くしてる。本能的に孤独を癒してくれる人を求めてたのね)

まどか「私も撫でてほむらちゃん!」ダキッ

さやか「あ、じゃあ私も!」ダキッ

ほむら「ふふっ、よしよし、皆甘えん坊ね」ギュッ


ほむら(これが……母性。ついに目覚めてしまったのね)

ほむら(……胸には宿らない)ペタペタ

マミ「こんな感じなのね、ほむらさんの膝の上って。杏子さんが羨ましいわ」

さやか「次私!」

まどか「じゃあその次私!」

杏子「べ、別にあたしは」アセ

ほむら「杏子の番は皆が帰ったらね。いつもしてるんだから」ナデナデ

杏子「なっ、言うなよそれ!」

三人帰宅後
ほむら宅


杏子「ほむらー」ダキッ

ほむら「やっぱり杏子が一番甘えん坊ね」ナデナデ

杏子「うるせー」ギュウ

ほむら(可愛い)

ほむら「今日はハンバーグにしましょ」

杏子「ホントか!?」ワーイ

ほむら「可愛い」

まどか宅

まどか「きゅうべえ、よく帰って来れたね」

QB「ついさっきさ。一週間も掛かった。運良く彗星にぶつかって次の個体に移ったのさ」

まどか「それじゃあ、また行こっか」ラケットカマエ

まどか「八十九式波動きゅうべえ!!」

QB「ま、また?!」グニャア

QB「うわあああああ!!」ドビュンッ

QB(前に飛ばされた時は、地球で言う第二宇宙速度で打ち出された)ビューン

QB(今度は……亜光速?!)タイキケントッパ

QB(しかし、前もそうだったけど、身体に弊害はない)

QB(むしろ打ち出された瞬間、ラケットを通じて鹿目まどかとの一体感の様なものを感じた)

QB(あの小さなテニスボールが何故破裂しないのかと疑問に思っていたが、ようやく確信が持てる)

QB(あの力は、まどか、ラケット、そしてボール。全てが一体となって放たれる。つまりまどか自身でもあるボールを破壊したりはしない)

QB(それよりも……また何かと衝突するまで待たなきゃいけないのか……)

QB(コントロールの委譲は何故か出来ないし、どうかしてるよ)キュップイ

切りがいいので今回はここで

次の更新は今回と同じく今日の23時頃を予定しています


ここまでは書き溜めを投下という感じでしたが、次回更新からのワルプル戦は加筆したり吟味したりするので亀レスになりそうです

ここまでお付き合い頂きありがとうございますっ

少し早いですが書いてきます

ちと亀気味になりそうです

ワルプル当日
ビル屋上



ほむら「……来るわ」

——5——

さやか「ホントに来るなんてね」

——4——

杏子「何だ、ほむらを疑ってたのか?」

さやか「そんなんじゃないよ。ただ伝説の魔女なんだし、やっぱ伝説の中に居ろよって感じしない?」

——2——

マミ「ふふ。私達がそれを倒して伝説を終わらせるのよ。……黄昏のカルテットとかどうかしら?」キラキラ

——1——

ほむら「変わらないわね」ファサッ

ワルプル「アハハハハハハハ!!」

マミ「行くわ!」

出現と同時に、魔法のリボンをワルプルギスの夜の周囲に張り巡らせる
蜘蛛の巣の様に走るその上を、さやかと杏子が駆け抜ける

さやか「あんたなんかプルプルシテる夜にしてやる!」

杏子「面白くねえぞそれ!」

二人は時にサーカスの様にリボンを飛び移り、力を蓄えているマミを殺そうと向かう使い魔を阻む
一体一体が通常の魔女にも及ぶ力を秘めている軍勢の中、さやかと杏子は舞うようにして戦っていた

ほむら「さあ、ラストダンスよ」

幾度となく争ってきたワルプルギスの夜と相対する

伝説の魔女と言えども、ほむらは幾度となくそれが倒れる様を見ている
一度は尊敬する二人が、一度はループしてまで救おうとした人と自分自身が、倒したのだ


ほむら(このループでは、まどかとはまだお風呂入ってないのよね。だから、帰ったらお風呂ね)


ワルプルギスの夜「アハハハハハ……」


停止した世界を大急ぎで走る
グリーフシードに余裕があるとしても、魔翌力の消費は極力抑えたい


ほむら「……停止解除」カチッ

動き出した世界で、ワルプルギスの夜と近接二人が相手取れない使い魔を爆炎が包み込む


さやか「うひゃー、ほむら本気過ぎっ」

杏子「見てないで手動かせ!」


ほむらに後押しされた二人は、動きを一段階上げる
ベテランの杏子や力量に差はあるが特訓によって持って生まれたスピードを使いこなせる様になったさやかを、使い魔は捉える事すら出来ずに墜ちていく


ほむら「……やっぱり本体は堅いわね」


笑い続けるワルプルギスの夜は、近代兵器を意にも介さずに破壊を続けていた

依然優勢ではあったが、時間が経つにつれ鈍い疲労が伝わり、特にさやかの粗が目立つ様になっていた


さやか「くっそお!」

杏子「おい!後ろ!」


ギリギリの所で剣を振るさやかの隙をつき、離れた所に居た使い魔が突貫する

別の使い魔を防いでいた杏子が声をあげるも向かえそうにない

ほむら「まったく……」

——カチッ
絶体絶命のピンチに、時間停止したほむらが待ったをかける
さりげなくさやかをお姫様抱っこしたほむらは、向かってくる使い魔にランチャーを撃ち込み離れる

杏子「さやか!」

ほむら「さやかなら無事よ」

さやか「へ?ってお姫様抱っこじゃなくてもいいじゃん!」


時間停止を解除したほむらは、さやかを抱っこしたまま杏子の手を取りその場を離れる


ほむら「準備が出来たみたいよ」


さやか「おお!なんかえげつないなぁ」


ビルの屋上で、ワルプルギスの夜と向かい合うマミの周囲には巨大なマスケット銃が大量に浮かんでいた

幾つものグリーフシードを使い、操れるギリギリまで魔法の銃を召喚したマミの額には汗が滲み出ていたが、表情には穏やかな笑みが浮かんでいる


マミ「作ってる間、ずっと考えてみたけど、やっぱりこれ以上合うのはないのよね」


マミが手を叩くと、リボンがマミに向かっていた使い魔を拘束する
一瞬の足止めでしかないが、それで十分


マミ「ティロ・フィナーレ!!」


最後の射撃に相応しい程の閃光が、見滝原の上空を覆った

避難所


まどか「皆、大丈夫かな」

荒れ狂う暴風雨をガラス越しに感じながら、まどかは祈る様に外を眺める

時折聞こえる微かな爆音から、戦いの激しさが伺える


QB「無理だろうね」

まどか「きゅうべえ!?」

いつの間にか、いつも通りに気配もなく現れたその生き物を、これまでまどかは酷く嫌悪してきた
正々堂々戦っていたあの人の姿を思い出すと、まどかはどうしてもその存在を許せなかった


QB「ワルプルギスの夜は最強の魔女。未だ誰も勝ったことはない」

まどか「それでも、ほむらちゃん達なら、勝つよ」

QB「なら、賭けをしようじゃないか、鹿目まどか」

まどか「賭け?」


普段なら耳を傾ける事もない

全てを秘密にして騙す詐欺師の言う事なんか、聞いてはいけない

だが、今は緊急事態で、誰もまどかの近くには居ない
それだけで、まどかの気持ちは揺らいでいた


QB「彼女達が勝ったなら、彼女達を魔法少女の運命から解放しよう」

まどか「それは、本当なの?」


彼女達の運命の残酷さに怒り、悲しみ、涙を流した夜もある

目の前の生き物はその元凶だったが、それ故にまどかの心は傾いた


QB「本当だよ。だから今から行こうじゃないか。着く頃には決着がついてるよ」


まどか「……分かった。行くよ」

QB「それは良かった。賭けに僕が勝ったら」
まどか「言わないでいいよ。皆は負けないもん」


QB「そうかい。じゃあ行こうか」

見滝原戦場


マミの閃光がワルプルギスの夜を飲み込んだ時、ほむらは嫌な気配を感じ取り避難所の方を振り返った


ほむら(インキュベーターがまどかに接触したに違いない)


長年の経験からか不思議とそれが分かった
だが、勝ちを確信した今、ほむらはインキュベーターを笑っていた


ほむら(今まで何をしていたか知らないけど、今更遅いわ。連れてきたとしても−−)


ホッとした様な穏やかな笑みを浮かべた瞬間、ほむらの思考を遮る様に屋上のマミに向けて炎が迸った

困惑がほむらを支配する

ワルプルギスの夜が、巴マミの全力に耐えられる筈がない

ほむらの考えは正しく、だが誤ってもいた


炎を放ったワルプルギスの夜は逆さまの状態から正位置へと反転し、その真の力を発揮していた


結論を言えば準備し過ぎたのだった

巴マミによる超火力攻撃はワルプルギスの夜を警戒させ、最強の敵と認識した伝説はその真の姿を見せたのだ

ほむら「マミ!!」

辛うじて、直撃は避けたらしいマミが、屋上から落下していく
その左腕は肘から先が黒ずんでもいたが

ほむらは落下直前に、時間停止してマミを受け止める


マミ「ごめん……なさい。倒しきれなかった……」


奥歯を割れんばかりに噛み締め、ワルプルギスの夜を悔しそうに見詰めるマミ

マミの砲撃は、ワルプルギスの夜の一部を完全に消し去っていた

ほむら「後は任せて、ここにいなさい」

マミ「ほむらさん……」

返事を待たずに、ほむらは跳んだ

上空では、使い魔を足場に杏子が強引で危険な空中戦を繰り広げていた

怒りに囚われた杏子は、微かな傷など気にせずに攻め続けている
そのままでは直ぐに力尽きてしまうのは明白だった


ほむら「さやか!マミをお願い!」

さやか「お、おう!」


同様を隠せず動けなかったさやかも、ほむらの言葉にハッとして動き出す

ほむら「杏子!離れて!!」


残っていた設置型の火器を、一斉に使い魔に放つ
その攻撃で、使い魔を全てに消し去る事に成功した


杏子「くっそ、どうする?そろそろグリーフシードもやべえぞ」


ほむら「あの剥き出しの所に、これを仕掛けるわ」

兵器回収時に間違えて持ってきたC-4プラスチック爆弾

そもそも設置するものな上に、空中に居るワルプルギスの夜には意味も無かったが、今度はこれが一番信頼出来そうだった

ほむら「……危険だけど、やるしかないわね」

杏子「私はどうする?」

ほむら「少しの間、注意を引いて。十五秒でいい。それと……」


三つのグリーフシードを取り出す

赤青黄の三色

使う気にもなれず持っていたが、本来の持ち主に返そうとふと思いついたのだった


杏子「これ……」


ほむら「注意を引き終わったら、二人に渡して。さあ、行くわよ!」

杏子「背に腹は変えられない、よな」


覚悟を決めたように、杏子はワルプルギスの夜に向かうほむらを見つめる

杏子「ロッソ・ファンタズマ!」

家族を失ってから、ずっと使えずに居た固有魔法

それでも、再び失いたくない奴が出来た杏子は、使う覚悟を決めた

ほむらを追い越す様に、幻影のほむらが大勢飛んでいく

ほむら(これは……)

ワルプルギスの夜の放った炎で数人消えていったが、それでも数はまだまだある
ほんの少し時間停止したほむらは、死角から確実に傷に近付いていく

全ての幻影をワルプルギスの夜が薙ぎ払った時、既にほむらは最後の跳躍の途中だった


ほむら(これで、終わらせる!)


盾の中から切札を取り出し、準備を整える

だが、最強の魔女は最後の最後までその力を誇示し、刹那の内にほむらに巨大なビルを叩き付けようとしていた


ほむら(そう甘くはないか……時間停止ッ)カチッ


盾に触れた瞬間、全てが止まる


ほむら(逃げるのに使う筈だったけど、仕方ないわよね)


ワルプルギスの夜の身体にセットした爆弾のスイッチを握り、落下していく


ほむら(……解除)


時間停止の解除と同時に、起爆スイッチを押す

大きな爆発音と悲鳴の様な魔女の笑い声
伝説はその身を地へと墜としていく

爆風に煽られたほむらは既に魔翌力も尽きかけていた為に、ソウルジェムを守り地面に激突した

ワルプル「アハ……アは……アハハハハハハハハ!!」

ワルプルギスの夜の命脈は尽きた

ほむら達は、確かに勝利していたた

だが伝説は消える間際に暴れ、見滝原を焦土へと変えようと残った力を振るう

マミ「伝説の魔女……何て力なの」

杏子「くそ!ほむらは無事なのかよ!」

さやか「魔翌力はあっても、身体が動かない!これじゃあほむらがッ」

遠くから見ていた三人は、ワルプルギスの夜の悪足掻きであると気付いていなかった


ほむら(ああ、ダメかもしれないわね。身体が動かない)


地に墜ち、最後まで破壊の限りを尽くすワルプルギスの夜を眺めながら、考えている事とは裏腹にほむらは達成感を感じていた


ほむら(まどかは契約しない。あれはもう消える。皆生きてる)

望んだ以上の世界
皆抱き締めて、心に触れた世界

ほむら(ここでなら、眠ってもいい)

ビルがほむらを押し潰そうと降ってくる
まどかとのお風呂くらいが心残りだった


ほむら(……おやすみ)




「七十三式波動球!!」


強大な力が、ビルを弾き飛ばす

あまりに理解不能な光景に、ほむらの思考が停止する

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「ま、まど、か?」

杏子の幻覚でも見ているのだろうか
一瞬そう思ったが、抱き締められてそれが現実だと確信する

ほむら「何で、何で来たのよ!?」

怒鳴りながら、涙が止まらない

まどか「大丈夫。後は、私に任せて」

ほむらとまどかを、特大の業火が襲う

ほむらは魔女化してでもまどかを助けようと盾に手を伸ばすが、まどかに止められる


まどか「大丈夫だよ」


炎に向けて、ラケットを構えるまどか

まどか「百式波動球!!」

それは、視認する事すらままならない力
ほんの少し炎と拮抗したが、まどかの放った力が掻き消していく

まどか「これが、最後のボール!」

まどかはボールを高く放る

まどか「百八式波動球!!」

天が割れんばかりの衝撃
余りの力にほむらは時間が圧縮された様な錯覚に陥った

先程のマミの放ったそれを遥かに勝る絶大な威力

ワルプル「アハハハハハハハハ!!」

迎え撃つワルプルギスの夜
自身の力を一点に集め、最後の敵を葬ろうと炎の矢を射出する

ほぼ同時に、衝突した二つの力が弾ける

しかし、ワルプルギスの夜は自身の生命全てを集約させ、もう一本炎の矢を作っていた

ワルプル「ッ!!」

最早笑う事すら無くなったワルプルギスの夜の最後の力


まどか「心配しないでいいよ」


ギュッと目を閉じたほむらの側を離れ、まどかが駆けていく

その様子を遠くから見ていたさやか達は、現れたまどかに驚いていた

マミ「まどかさんまでッ?!」

杏子「ほむらっ!」

さやか「まさか、まどかはアレを!?」

杏子「何だよあれって?」

さやか「あれは、まどか自身も大きなダメージを負う諸刃の剣。まどかは既に三発も波動球を打っているのに、あれを使ったら一生立てなくなるか、死んでしまうッ!」

さやかの心配を他所に、ほむらは崩壊した街を駆け抜ける


まどか「ほむらちゃん達が、頑張ったんだ」

まどか「もう、あなたが暴れていい時間は終わったんだ」


まどか「だから、私の全てを懸ける!」


12歳の時に出場した大会の決勝
その時と良く似た高翌揚感がまどかを占め、まどかの身体が、淡い光に包まれていく




−−天衣無縫の極み−−




至高の力を顕現させたまどかは、跳ね返ってきたボールに向かって走っていく

導かれる様に、走るまどかが最も強く打てる位置にボールがくる


その身が砕けようとも、まどかには構わなかった



まどか「燃、え、尽きるぜぇぇぇえええ!!バァァァァァァニィングッ!!!!」




「百八式波動球・オーバーヒート!!」

その瞬間、世界が終わったかの様な衝撃が見滝原を包み込む

腕が砕けながらも放たれたそれは、先程の数十倍もの威力でワルプルギスの夜に向かう


炎の矢などないかの様に消し去った波動は、ワルプルギスの夜を貫き、宇宙へと流れていく

割れるように砕けたワルプルギスの夜は、今度こそ本当に消えていった



気づけば、分厚い雲が割れ朝日が差し込んできていた


ほむら「まどかああぁぁぁぁああ!」

まどか「ほむ、ら、ちゃん」

ほむら「まどか……」

腕が砕け、全身の骨にヒビの入ったまどかは力無く横たわっていて、それでも笑っていた

ほむら「どうして……」

まどか「ほむらちゃん達を助けたかったの」

辛うじて上がる左腕で、ほむらの涙を拭う
その腕をほむらは震えながら支えた

そんな二人の元に、インキュベーターが現れる

QB「まさか、こんな結末になるとはね」

ほむら「インキュベーター!」


ほむらは声を聞いた瞬間、反射的に銃を取り出し構えた


ほむら「契約しにきたのね」


怒りを隠さずに吼える

だが、インキュベーターは首を横に振った

QB「違うよ。僕の仕事は終わったんだ」


ほむら「?」

QB「まどかの放った最後の力。それを僕の他の全個体を使って吸収した」

QB「結果宇宙誕生時の総エネルギー量と同等のエネルギーを得られた」

QB「それに、まどかは今の力を使ってその因果をほぼ消費してしまった。直にまどかの魔法少女の素質は無くなるだろう」

QB「……もう、僕の地球での長い時間は終わったのさ」

まどか「きゅう……べえ」

QB「賭けは君の勝ちさ。僕が消えれば、全ての魔法少女は魔法少女でなくなる。解放されるんだ」

QB「僕を[ピーーー]なら、今がチャンスだよ、暁美ほむら。君は僕への殺気を隠そうとしなかったからね」

QB「今なら他の個体は無い。僕の魂は行き場をなくし死ぬだろう」

ほむら「そ、それは……出来ないわ」

ほむら「もう、目的は達成されたもの」

QB「そうか。最後にまどか。君の傷を治して僕は去ろう。そうされるだけの働きをしてくれたからね」

まどか「きゅうべえ……」

>>167

各自保管お願いします
何かすみません……

QB「まどか、手を」

まどか「ん……」

掌を合わせる

掌から、優しい光が伝わりまどかの傷が癒えていく


QB「……ここを離れるのが名残惜しい気もする」

QB「まどかと一体になったあの時から、不思議とふわふわした気分なんだ」

QB「……そうか」

QB「この掌の中にある、温かなものが……」


「心か」

きゅうべえの消滅後、そこにはまどかのソウルジェムがあった

だが、魔法少女としての機能は失われている


ほむら「きゅうべえの最後の贈り物……ね」


ソウルジェムを透かして、空を見る
気付けばやってきていた、さやかも、マミも、杏子も同じようにしていた

まどか「キレイ」

ソウルジェムを透かして見た空は、その魂と同じくキラキラと輝き、虹が架かっていた

-fin-

本編はこれにて完結です

後は後日談や、おまけエピになります


書き溜めてあったのですが、これでいいのかと悩んでいて亀レスになってしまったのと、最後ミスしてしまい申し訳ないです

初SSで、語彙がないとか、日常パートのぐだりっぷり等課題が見えたので次回からはその当たりに気をつけたいと思います


最後にここまでお付き合い頂きありがとうございました

忘れてました
半ば寝落ちしかけながら書いてたので後日談は明日のお昼過ぎくらいに投下します
ご指摘ありがとうございますっ

では書いていきます

書き溜めしてないので少しゆっくりです


それは、まだまどかが幼い時の事だった


お出掛け中に両親とはぐれ、迷子になったまどかは、泣きべそかきながらさ迷っていた


そんなまどかの耳に、歓声の様なものが聞こえてくる

大きな建物

テレビでしか見た事の無かった立派なスタジアムに、まどかの心は大層惹かれたのだった

フラりと中に入ったまどかが、階段を登った先に広がるテニスコート

そこでは丁度第4試合が始まった所だった


大柄な男の人が二人、ネット越しに構えている

まどかにはそれが何なのかは分からなかったが、ワクワクする気持ちが溢れだしていた


始まった試合は、一方的だった

青と白のウェアを着た大きな男の人がボールに負けて弾き飛ばされる

それでも、ボロボロになっても立ち上がり、試合を続ける男の姿はとてもカッコよかった


幼まど「頑張れ!」


次第に、まどかの握った拳が強くなっていく

どんなに劣勢でも立ち向かう姿はまどかのよく見る朝の少女アニメの主人公と同じに見えた

試合は、唐突に変化する

対戦相手はそれまでの力強い球を捨て、平凡な球を打っていた

男の方だけが、目に見えてボロボロになっていく


幼まど「ふ、ふんだ!そんな事してる方が負けちゃうんだよ!」


幼いまどかは、その光景に泣きそうになった

驚愕と悲嘆、そして僅かな闘志

最初男を笑っていた人間は黙り、チームメイトは勝ちを信じてると男を見つめる

会場を支配する空気は、男を真の戦士であると認めていた

それは、対戦相手も


敬意を払うよう、腕を隆起させた相手は、最初の様に渾身の力で球を打った

観客席まで吹き飛ばされる姿に、まどかは小さな悲鳴をあげた


それから、何度吹き飛ばされようとも男は立ち上がり、コートに戻っていく

試合も終盤

腕を上げるのも大きな意思を必要とする中、男は無情にも吹き飛ばされる

スローモーションの様に映る中、まどかの目には男の闘志が尽きていった様に見えた


しかし、それはその瞬間だけだった

人相の悪い男に受け止められた男は、明るく笑うと拍手に答えながら、コートに戻る


幼まど「頑張れ!頑張れー!」

応援していたまどかは、チラリと男がこちらを見たような気がした

ただ拍手に向かっただけだったが、まどかには、それはまどかの声援が届いたのだと思った


その後の事は、まどかの思い出の中に大切にとって置いてある

最後の一球、意識を繋ぎ止めているのも辛そうな男の放った球は、まさに魂を乗せた球だった

相手の人は、球を返そうとした時驚愕に包まれていた


再び無効化しようとした男は、それを出来ずにラケットを取り落とした



対戦相手は、取り落としたラケットを拾えなかった

まどかは訳が分からずに居たが、帽子のおじさんが相手を制止する


歓声と共に、男を讃えるチームメイトが周囲を囲う


男は勝った

まどかは最初それがわからなかったが、男の表情を見て勝ったのだと知った

「私の言った通りだ!お兄ちゃんの勝ちだ!」


帰っていく観客を追い抜き、走って会場を出ていくまどか

無性に走り回りたい気持ちだったのだ


「まどかー!」

「ママ!パパ!」

「もう、まどか、迷子になったら」
「お兄ちゃんがね、勝ったんだよ!」

小躍りするまどかを見て何だと顔を見合わせた二人は、中学生全国テニス大会という立て看板を見て漸く把握する


「どっちが勝ったの?」

幼まど「青と白の人!」


青春学園中等部
父と母は、幼いまどかの為に、調べてあげようと決めた

幼まど「私もあれやりたい!」

「ああ、今度買ってあげよう」

幼まど「やったぁ!」


この時から、まどかのテニスが始まった

対戦相手がラケットを持てなくなったら勝ちという、間違えた認識をしながら



まどか、邂逅編
-fin-

ひとまず終了

次は夕方頃に


最初のおまけエピはまどかの過去編です
予定ではまどかの過去編はもう一本あり、次にやります


saga?ですね
ありがとうございます

初めて書いてて分からない事多いのでありがたいです

>>188
■ SS速報VIPに初めて来た方へ
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364178825/)


>>189

ありがとうございます!

今度から気を付けます

まどか過去編書いてきます


まどかがラケットを持った日

空振りばかりしていた姿を見て両親は笑っていたが、一月後には殆どミスもなくサーブを打つようになったまどかを見て、二人はまどかがもう少し大きくなったら何処かのスクールに入れる事を決めた

それまで運動はあまり向いてないと思っていたが、意外な才能を発見したと思ったのだ

しかし、その次の年に起きた事が、二人の考えを一変させる

元々、予兆はあったのだ

家での壁打ちの音が、普通のテニスの音では無かった

しかし両親は気のせいだと誤魔化していた


しかし、その日まどかが初めての波動球を打った時、考えを改めた

家の壁を破壊したまどかを、テニススクール等に通わせたらどうなるか

話し合った二人は家の周りの土地を買い取り、まどかの為にテニスコート半分の場所を用意し、絶対破壊されない様にと厚さ30センチもの鉄の壁を置いた

それから何年か経ち、まどかは12歳になった

日課の壁打ちは、同時に10球打つことで力をセーブしていたが、それでも時折壁が凹んだ


ある日壁打ちでは満足出来なくなったまどかが、インターネットでテニスの試合を探し始める

中々出たいと思うのが見当たらないでいたが、不意にまどかの目を強く惹き付けるものが現れた


【全国女子テニヌ大会(無差別級)】


年齢に制限は無く、誰でも参加可能
しかも飛び入りOKとまである

日時は次の土日

無意識の内に参加申請したまどかは、逸る気持ちを抑えてラケットを持った


まどか「テニスって字、間違ってたけどいいよね」



まどかの申請した大会は、テニスの裏の大会だった

表舞台であるプロの試合は、死人が出る可能性もあるため、皆力をセーブしているのである


これは本気を試してみたい為の大会

その参加資格はこのサイトを見るか招待される事


才能の無いものは、サイトを見ることすら出来ない

大会当日

まどかは大勢の大人達に紛れて会場入りした

地下にある秘密の会場は、核シェルターを上回る強度があるという


選手達は、幼いまどかを見て微笑んだ

時折、才能のある子が大会を見て出場してくる事がある

そんな子ども達に大人達は喜び、全力を尽くし先駆者としての力を見せるのだ

今日も才能ある子どもの発見を大いに喜んでいた

そう、この時は……

元々、女子はパワータイプは全く居らず、出場者は皆テクニックタイプだったからかも知れない



鹿目まどかは、その初戦を対戦相手の棄権という形で手に入れた



彗星の如く現れた少女を、選手達は只の子どもではなく叩き潰すべきライバルとして認識した

多くの選手が、鹿目まどかに自身の最強の技を使い、敗れ散っていく


まどかは、決勝までの全ての試合を対戦相手の棄権で勝利を収めた


決勝戦

まどかの対戦相手は、日本女子テニス界至高のプレイヤーにして女子最強のテニヌプレイヤー、竜崎桜之

彼女は数年振りに死闘の予感を感じ取っていた

そして、実際にそれは死闘となった

一進一退の攻防


まどかにとっては初めての長いラリー


まどかの力に圧倒されながら、竜崎は経験の差で追い縋る

時には運でポイントを拾う


竜崎が追い掛ける姿を、会場の誰も見たことが無かった

タイブレーク突入

両方共、肉体の限界を超えて打ち合う

548-547

まどかのリードで、竜崎のサーブ


竜崎「はあああぁぁぁぁ!」


竜崎の放ったサーブは、地面に接すると跳ねずにそのまま走る
しかもそれは蛇の様に蛇行していたが、まどかはパワーで強引に返した


長いラリー

限界のその先へ進んだ竜崎は、信じられないものを見る


打ち合っている鹿目まどかは、楽しそうに笑っていた


初めて体感するテニスを、まどかは心底楽しんでいた


「テニスって、とってもとっても楽しいなって」


そう呟いた瞬間、まどかは覚醒した




誰もが目を疑った


それは、女子テニヌ界では誰も果たした事の無い偉業


テニヌの歴史に置いて最強の力


天衣無縫の極み


まるでそれまでの疲れなど無かったかの様に、まどかはラリーを続ける


竜崎は、驚いてもいたがこの試合に自分が居た事、立ち会えた事、その全てに感謝し全力を尽くしていた



「グレイトォーッ!!」


返ってきた竜崎の最強の技をラケットの先でギリギリ捉え、まどかは叫ぶ


それは、あの男の人と同じ言葉
後から思い返すと、状況さえも似ている気がした


「これが最期の波動球だぁーーっ!!」



「こ、この力はッ!?」

竜崎は球を返す事が出来ず、ラケットは弾かれて遥か後方の壁に突き刺さった

『ゲームセット、鹿目まどか!ゲームカウント、セブンゲームストゥシックス(7−6)!!』


この試合は、女子だけに止まらず男子テニヌ界においても究極の試合の一つとされ、その映像は永久に保存されている

鹿目まどかの出現は、テニヌ界を大きく揺るがしたが、その後まどかが大会に出ることは無かった

奇跡の少女と言われたまどかはテニヌ界の大物に出場する様何度も説得されたが、まどかはこう言って断った


「私は、もう満足しました」


あれ以上にテニスを楽しめる事は無い
まどかはそう本能的に悟っていた

ただ、その後まどかは一度だけ試合を行っている


竜崎桜之の祖母である竜崎スミレの紹介で、まどかがずっと尊敬してきたあの男と1試合だけしたのだ

結果はまどかの胸に大事にしまってある


ただ、まどかはその試合の後その男に多大な影響を受け、見え隠れしていた熱いハートが、ラケットを持つと完全に表に出るようになったのだった


まどか、覚醒編
-fin-

まどか過去編完結です

残りの後日談は、今日の23時からやりたいと思います

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