モブリット「想いを音色にのせて」(172)

モブリットがピアノを弾ける捏造設定
モブハン風味
内容は単行本までくらいのネタバレはあるかも
ピアノの曲がたまに出てくるので、聴いてもらえたら嬉しい

夕暮れ時、誰もいないひっそりとした部屋
物置のような場所に押し込まれるように佇む黒いグランドピアノ

人差し指で鍵盤を弾くように叩く

立ち上がりの良い音がする
しかし決してキツくはなく、あくまでも優しく、丸い音

あなたはこのような場所には相応しくないピアノ

だが、あなたはここにやってきた

あなたがここにいる意味を知るために…今日はこの曲をあなたと奏でよう

『ショパン 夜想曲第二番 変ホ長調 作品9-2』
右手の甘い旋律…宝石のような装飾音

左手は同じリズムを刻み、右手の旋律を支える

しっとりと、歌い上げる
あの人を想いながら…

一週間前…

私はモブリット・バーナー
調査兵団に所属している
特に目立つ要素を持っていないのが私の個性

中肉中背
顔も普通
立体機動の腕前も、普通
私の回りには化け物じみた方達ばかりなので、余計にそう思う

これでも、第四分隊副長という肩書きがある
これは単なる分隊長のおこぼれの様なものだ
私には過ぎた肩書きだと思っている

そんな私だが、先日から実は気になっている事があった

「内地で貴族が破産したらしいな」
「商会に潰されたんだろ…あいつらは金にはえげつないからな…」

「貴族が持っていた家財道具なんかを憲兵団が押収したんだが、あまり価値がなくて、邪魔なのがうちにくるらしい」

「へえ、またおこぼれか。いらないもんばっかりな」

「まあ、無いよりはましかもしれんがなあ」

兵士達のそんな会話を耳にした
価値がなくて邪魔なものってなんだろうな、とふと考えたが思い付かず、数日後…

確かに邪魔なくらい大きなものが運ばれてきた
置場所に困り、結局娯楽室とは名ばかりの、物置のような部屋に、それは押し込まれた

私が部屋を覗くと、それは乱雑に積み上げられた本や、ガラクタのような物の中に埋もれる様に押し込まれていた

埃を嫌うそれを、このような所に押し込めて…
何だか可哀想に思った

私は時間の許す限り、部屋を片付けた

そして、ガラクタ部屋から物置小屋レベルにまで片付け…
埃のついたそれを、綺麗に磨いた

まだまだ現役の、グランドピアノだった
鍵盤を指で叩いてみた

駄目だ、音がくるっている
調律が必要だ、今すぐに…
ピアノは調律がくるったままにしておくと、すぐに使えなくなってしまう

定期的に調律が必須なのだ
一度狂ったまま癖になると、もう生き返ることは無い

そこで、私は意を決して相談しに行く事にした

「エルヴィン団長、お願いがあるのですが」

「モブリット、君がお願いとは珍しいな。どうした?」
私は思いきって団長に直談判しに行った

この人は冷酷非情と言われているが、作戦を離れると、部下の話をよく聞いてくれる、寛容な方だ

…とは言え、やはり慣れない
この人と話すのは緊張する
割りと近くにいるが、雲の上の様な存在なのだ、私にとっては

「実は、先日運ばれてきたピアノの件で…」
「ああ、黒いやつだな。あれがどうかしたか?」

「実は、調律が狂っていまして…」
「ん?」
「音が、おかしいのです」
「…なるほど」
「調律士を呼んでいただけませんでしょうか。勿論私の私費で賄いますので」
頭を下げてお願いした

「それは構わないが、モブリット、君がピアノに興味があるとは知らなかったな」
「幼い頃から訓練兵になるまで、近所に習いに行っていました…」
実は習いには行っていない
憧れの初恋のお姉さんがピアノを教えていて、よく真似をしてひいていたのだ

お姉さんは、私に才能があると言ってくれたが、ピアノなどやる余裕の無かったうちには、そんな才能は無駄でしかなかった
…でも、ピアノの音色が好きだった

「わかったよ、モブリット。ピアノは君の好きにするといい」
団長は微笑んでうなずいた

「ありがとうございます、エルヴィン団長」

「ただ、一つ条件がある」
「はい、何でしょうか」

「一度ひいてみてくれ、近いうちに」
「…期待できるような腕前ではありませんが、それでよろしければ…」

そうして、次の日に調律士を呼び、ピアノは息をふきかえした

調律を終えたピアノを軽く叩いて驚いた

多彩な音色…
高音部はコロコロと、玉を転がすような可愛らしい音色
全体的によく通り、甘い、丸い音だ

男性女性どちらか、と問われれば、間違いなく女性
だが、迫力も兼揃えていた
少しじゃじゃ馬っけがあるが、愛らしい
まるで…いや、それは言わないでおこう

「これが価値の無いものな訳がない。素晴らしいピアノじゃないか…」
思わず独りごちた

早速試し弾きをしてみた
「…指が言うことをきかない…」
当たり前だ。どれだけ触ってないと思っているんだ

団長の言葉を思い出し、このままでは駄目だと、指ならしから始める事にした…

「モブリット~何処に行ってたの?探したんだよ」
娯楽室と称する物置部屋をそそくさと後にし、食堂に向かう途中で、後ろから羽交い締めにされた

「ハンジ分隊長…!」
この人はいつもこうだ

普通に呼び止めてくれれば良いのに、羽交い締めやらチョップやら膝カックンやら、脇の下こちょこちょやら…
毎回趣向を凝らしてくれる…

いや、迷惑だよ?決して喜んではいない
断じて…

「すみません、少し用事がありまして…」
「何の用事?もしかして逢い引き!?」
「…違いますよ。とりあえず羽交い締めはやめて下さい」
「うん、わかったよ」
そう言うとパッと私への拘束を解いた

この人は、調査兵団でも指折りの実力者で、随一の変わり者…奇人変人として名高い、ハンジ・ゾエ分隊長

私の直接の上官にあたり、私はこの人の副官という立場だ

この人は普段は気さくで大らかで人懐こいが、暴走の気があり、扱が難しい…
特に巨人への探求心が常に暴走気味だった

私の初恋のお姉さんとは正反対と言えるハンジ分隊長
だが何故だか、惹かれる部分があった

「で、私を探していたとは、何がありましたか?」
「え?ああ、姿が見当たらなかったから探してただけだよ。食堂に行こうかなってね」
私の顔を覗いてにこっと笑うハンジさん

実は笑うと結構可愛い…かもしれない
「そうでしたか、すみません。食堂に行きましょう」
「うん、お腹すいたぁ!!」
今度は私の背中に乗っかってきた
「さあ、食堂までレッツゴー!!モブリット号!!」

「ちょっと!ハンジさん重たい!!」
「レディに重たいはないだろ?モブリット号」
「レディは勝手に人の背中に飛び乗りませんよ!!というか、モブリット号ってなんですか!?」

後ろから私の両頬をつねるハンジさん
「私のお馬さん!?」
「降りて下さい!!」
「はーい…」
こんなやり取りが、日常茶飯事だった

ピアノの音質に関する話が面白い
確かにピアノによって少し違うなぁ
期待

食堂に行くと、丁度ラッシュの時間帯だったのか、沢山の兵士達が料理に舌鼓を打っていた

「今日は魚だねぇ!!いただきまーす!!」
魚を塩で焼いたものをパクつくハンジさん

本当に美味しそうに食べる…見ているだけでお腹が一杯になりそうだ

とは言え、やはりお腹がすいたので、魚を私のお腹に迎える事にした
「頂きます」
一口食べると、円やかな白身魚の味に、少し効かせた塩が絶妙だった

「美味しいですね」
「うん、美味しいね!幸せだなあ」
本当に幸せそうに食べている
料理には人を幸せに出来る力がある…そう思う

私にも、誰かを幸せに出来る力はあるのだろうか…
今のところ、この魚料理の様な力を私は持ち合わせていない

ハンジさんを幸せな笑顔にする魚料理
私は料理にすら勝てない

食事も済み、ハンジさんと共に団長室へ
近々ある壁外遠征について、細部の打ち合わせだ

既に部屋には打ち合わせ参加者が集まっていた

ミケ分隊長、リヴァイ兵長、エルヴィン団長だ
まさにそうそうたるメンバーだ

強者揃いの曲者揃い
…いや、言葉に出しては言わないよ

調査兵団は変人集団と言われている
その理由の一つに、死亡率の高さがある

新兵が5年で9割近い死亡率なのだ
こんな地獄の様な場所に好んで飛び込むのだから、変人と言われても仕方がない

しかし、この混沌とした世界に変革を求めたい、何かを変えたいと心臓を捧げるこの集団

その志高い変人達を纏めあげるのが、彼ら幹部だ

勿論その中には、ハンジ分隊長も含まれる

幹部たちの会議を後ろで聞く

基本的にはあまりメモはとらない
頭に叩き込む
メモなどとって、奪われたり落としたりすれば大変な事になる

特に今回の作戦は…
一部の幹部にしか知らされない極秘作戦だ

その極秘作戦の会議に参加出来るというのは光栄だが、緊張で背筋が伸びる

今回の作戦は準備も大変だ
細部をまた話し合わなければならないだろう
ハンジ分隊長と

「以上になるが、何か質問はあるか?」
エルヴィン団長が会議を締め括る

「ないない!装置の準備は任せて」
と、ハンジ分隊長
今回は特に重要な役割をまかせられている

「頼んだぞ、ハンジ」
これは、ピアノにうつつを抜かしている暇は無さそうだな…

あなたの本気モブハン読みたいと思ってた
支援

>>11
>>14
ありがとうございます

>>17
ありがとうございます

現在夜の8時、まだ寝るには早い時間
兵舎の一番奥の娯楽室…いや、物置部屋に行った…あくまでもこっそり…

この時間なら、まだピアノを弾いても邪魔にはならないだろう

ピアノの椅子に腰を下ろし、背筋を伸ばす
手を広げ、指のストレッチをする
特に四の指…薬指のストレッチは入念に
この指はなかなか独立して動かないからだ

指慣らしのために、ハノンを流す様にひく
ちなみにハノンは、ピアノの指のトレーニングの為の教本の様なものだ
これを練習前に弾くだけで、指の動きが違ってくる

さて、少し何か弾いてみようか…
エルヴィン団長にも聴かせる約束をしてしまったしな…

私は楽譜は持っていない
だから、頭の中にある楽譜を探す
ふと窓の外を見ると、月明かりが暗闇を照らしていた

…そうだ、今日はこの曲にしよう
『ベートーヴェン ピアノソナタ
第14番 嬰ハ短調 月光 第一楽章』

左手のオクターブ奏は重厚に…
右手は常に三連符だが、月明かりが湖のゆらぎにたゆたうように、軽すぎず、重すぎず…

静かな夜のための曲
あの人の眠りを妨げない様に…ゆったりと奏でる

30分ほどピアノを楽しみ、もう一度ハンジ分隊長の部屋に行った

ノックをしたが、返事は無し
「ハンジ分隊長」
と呼んでも返事は無し
仕方なく、勝手に部屋に入った
…ハンジさんは、相変わらず執務机に突っ伏して寝ていた

さすがに朝までこのままでは、起きた時に体が辛いだろう
ハンジさんの肩をトントンと叩いてみた
「ハンジ分隊長、起きて下さい」
「…う~ん」
まだ起きない

もう一度、肩を叩く
「こんな所で寝たら、風邪をひきますよ、ハンジさん」
「ん…あれ…モブリット…おはよう…?」
やっと起きた

「おはようではありません、まだ夜ですよ」
「あ、あー、寝ちゃってたのか…私。ごめんね、モブリット」
眠たそうに目を擦りながら謝るハンジさん
「いえ、お疲れが溜まっている様でしたね」
「あ、うん。あれ…モブリット、やってくれたの?」
目の前にある書類に目を通しながら言うハンジさん
「一応やっておきましたが、確認をよろしくお願いします」
「ありがとう、モブリット!」
ハンジさんはそう言って破顔一笑した

私はいつの間にか、この人のこの笑顔を見ることが生き甲斐の様になっていた

「モブリットはほんと、良く気が利くなあ」
ハンジさんはフンフンと鼻唄混じりに書類を見ながら言った

「普通ですよ」
「そんな事ないよ~いつも助かってる。モブリットは最高の副官だよ!!」
そう言って、にこやかに笑うハンジさん

「…ありがとうございます」
最高の副官、仕事上のパートナーとしては最大級の誉め言葉だ
だが、何となく寂しい気持ちになるのは何故だろう

最高の副官で充分じゃないか、と思う
たまに自分でも、何を考えているんだと思う時がある

多分この人と一緒にいる時間が長いからだろう、勘違いを、錯覚をしてしまうのだ
副官という立場を一歩踏み出せるのではないか、と

まあ、思うだけで実行には移さない、というか移せない
この人を幸せにする自信も皆無だ

今はただ、この人の笑顔が見られたら、それでいいと思っている

「うん、バッチリだね!!これで後は工兵と相談だ!!」
どうやら見落としも無かったようで、ハンジさんは書類を片手にばんざいをした

「はい、明日にでも工兵と打ち合わせが出来ないか、確認をとってみますね」
「うん、よろしく頼むよ。モブリット」
と言うと、立ち上がっていきなり私の頬に手を伸ばす

「な、何ですか…っ痛」
ハンジさんはいきなり私の頬を手でつまんで、横に引っ張った

「モブリットも疲れてるね。肌に張りがないよ?」
「痛い、離して下さい!!」
「心配してるんだよ?ふふ」
と言いながら顔は笑っている

ハンジさんの行動の意味がわからない事など日常茶飯事
だから、こういう時は…
「ハンジさんは、お肌の曲がり角ですかね…」
ハンジさんの両頬を思いきり引っ張る、目には目をだ

「ちょっと…痛いんだけど!」
「頬っぺた全然伸びませんねぇ…」
「モブリット、レディの顔が!!」
「レディなど何処にいるんですかね?」
「むぅ…」

こうやって、ちょっかいをかけられたら、5回に1回くらいはやり返す様にしていた

ストレスは溜めるべきではないからね
まあ、上官に対する態度ではないのは言うまでもないが…

ベートーベンの月光キター
荘厳で切ないメロディーは進撃の世界観に合ってるな

>>24
確かに、世界観ピッタリですね!

「あー頬っぺたいてー!!」
大袈裟に痛がっているであろうハンジさんだったが、やはりいくらハンジさんとはいえ、一応女性の顔にそんな事をするべきではなかったな、と少し反省した

「すみません、大丈夫ですか…?少しやり過ぎました」
「見てよ、少し腫れてない?」
頬を指差して見せるハンジさん

「赤くなってますが、腫れてはいないですね」
私がそう言うと、更に顔を私に近づけてきた

「良く見てよ、モブリット」
…顔が、近い
「何も、なっていませんよ、ハンジさん、あ…」

「ん!?やっぱり腫れてる?」
「いいえ、眼鏡が凄く汚れてますね…汚いですよ…?」
「そういえば、何だか視界が曇ってるなあって…」

私は徐ろにハンジさんの眼鏡を外して、布で拭いた
そして、また眼鏡を元の位置になおす
「あ、ありがと、モブリット。おかげで良く見えるよ」
「眼鏡の手入れくらいご自分でなさって下さいね、ハンジさん」
「うん、いつも忘れちゃうんだよね」
頭をポリポリとかくハンジさん

「私はいつも、眼鏡をお拭きしている気がしますね…」
「うん、ありがと!モブリット」
ハンジさんが笑顔になった

正直な話、笑うと可愛いんだ、この人は…

「さて、私はそろそろ部屋に戻りますね。ハンジさんもお休み下さい」
部屋の扉に向かいかけた私の手を掴むハンジさん

「えー、飲もうよ!!」
「明日も朝から忙しいですから、お酒は今日は我慢してください」

「じゃあ遊ぼう!?」
「子どもじゃあるまいし…何を言ってるんですか?」
「ん、何となく…」

はぁ、たまにこんな時がある
本人が言うに、寂しい病らしい
…そんな病聞いたことがないが

「わかりました。あなたが寝るまでここにいますから。さっさと着替えてお休み下さい」

「いいのぉ!?モブリット!」
喜ぶハンジさん
「いいですよ。但し、さっさとしないと私も寝たいんですから、部屋に帰りますよ」
「わかった!!待ってて!!」

そう言って洗面室に着替えに行った

はあ、ハンジさんはわかっていない
私はどんな気持ちで…
いや、これも副官の仕事だと思って耐えよう

どっちが相手の気持ちに鈍感なのか

驚愕で口を開けたまま塞がらない状態の私に、歩み寄るエルヴィン団長

団長は私の肩にぽんと手を置き、微笑んだ
「モブリット、頼む」

驚いたのは私だけではない
隣にいるハンジさんもぽかんと口を開けたまま塞ぐのを忘れている

勿論、美女の兵士が演奏しているという噂だったのだから、全員が呆気に取られているはずだ…

「モブリット」
エルヴィン団長が再度私に声をかける
「わかりました」
こうなったら腹をくくるしかない

ゆっくり立ち上がり、何時もの様にピアノの椅子に座る

何も言わない訳にはいかないので、少しだけ話をするか…
「美女じゃなくて申し訳ない。このピアノを弾かせて貰っていたのは私です。今日は、一曲演奏させてもらいます」

パチパチと拍手が起こる

「曲は、『リスト 愛の夢 第3番』家族でも、友人でも、恋人でもいいので、その人を強く想いながら聴いてもらえると有難い」
そう言って、背筋を伸ばし、指をフワリと鍵盤に乗せ、目を閉じる

最初の一音を優しく温かく、続く旋律は右へ左へ移行しつつも滑らかに穏やかに、だが甘く切なく…

…貴女は天国で聴いてくれていますか?音色が届いていますか?
そして、私の敬愛するあの人にもこの愛が届きます様に…
言葉には出せなくても、音になら出せるんだ…

弾き終えた後、しばらく目を閉じていた
すると、兵士達から割れんばかりの拍手が起こった

…恥ずかしいな…
と思ったが、立ち上がって敬礼をした

すると…
「モブリット副長!!リクエストしたいのですが…」
と手をあげたのは一人の女性兵士だった
彼女は泣いていた

よく見ると、他にも泣いている兵士がちらほらいた

リクエストか…
エルヴィン団長の方を見ると、頷いたので、聞いてみた
「私が弾ける曲なら構わないよ」
「ショパンの革命を…」

再度椅子に座り、背筋を伸ばす
『ショパン 革命のエチュード』
左手の練習曲と言われる、左手は音階、分散和音などを矢継ぎ早に要求される。
右手は殴り付けるような、まさに革命を起こす戦いの音を出す
速いパッセージに負けじと戦う

短い曲を嵐のように弾き終えた
また沢山の拍手が起こる

女性兵士は潤んだ瞳をこちらに向けていた

それから何曲かリクエストに応え、やっと突然のリサイタルが閉宴となった

兵士達はなかなか解散せず、私にいろいろな質問をぶつけていた

やっとの事で解散させると、エルヴィン団長が私の肩をがしっと掴んだ
「モブリット、いいリサイタルだったよ。素晴らしい」
「団長…心臓が止まるかと思いましたよ…」
「ははは、すまなかったな、モブリット」

リヴァイ兵士長は私の背中をぽんと叩いて、エルヴィン団長と一緒に出ていった

ハンジさんは固まったまま、まだ動かなかった
「ハンジ分隊長?大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫…だよ」
手を差しのべると、まじまじと手を見てくるハンジさん

「…どうされましたか?」
「モブリットの手、大きいよね」
「そうですかね」
「よくあんなに細やかに動くよね…」
と言いながら、私の手を握った

「ハンジさん、黙っていてすみません」
「…それはいいよ。驚いたけどね…ほんとに凄いよ、モブリット」
ハンジさんは私に手をひかれながら部屋に戻った

私の手を握りながら部屋までずっと何かを考えているような、真剣な表情だったハンジさん

部屋の前に着くなり、私の手をぱっと離して
「今日は一人にして」
と言って部屋に入って扉を閉めた

…怒っているのかな
そりゃそうだ、ずっと黙っていたんだもんな
またきちんと謝罪しないと…

それにしても、真剣な表情のハンジさんはいったい何を考えていたのか
私の手を握る力はかなり強かった

はぁ、とため息少しついて、部屋に戻った

部屋に向かう廊下を歩いていると、自分の部屋の前に数人人影が見えた

そのまま近づくと、先程私に『ショパンの革命』をリクエストした女性兵士と、あと二名女性兵士がいた

「モブリット副長!!」
と呼ばれた…どうやら私を待っていたようだ
「やあ」
「あの、副長にお願いが…」
先程の女性兵士が私に真摯な表情で話し掛けた

「副長、私たちにピアノを教えてください!!」
「私は習っていたけれど、経済的に無理になって…」
「私は習いたかったけど習えなくて…」
女性…というかまだ少女の域を出たくらいの若い女性兵士達が必死に懇願する

「うーん、私はきっちり習った訳ではないから、教えると言うのは…」
言葉を濁した

「きっちり習っていないなんて…あんなに弾けるのに」
「見よう見まねの適当だよ」
「適当には見えませんでした!!」
…うーん、困ったな

「エルヴィン団長にも話を通さないと…」
「もうお話ししてきました。貴方さえよければ、との話でした、副長」

…断れなくなったじゃないか、団長…
「わかった、時間の空いたときに見るだけは見るよ…」
「ありがとうございます!!副長!!」
女性兵士達は大喜びして、去って行った

部屋に入って深いため息をつく
…何だか疲れたな

大勢の人前でピアノを弾くという経験は初めてだったし、仕方がないが…
しかし、人前で弾くのは決して嫌ではなかった

寧ろ喜んでくれている兵士達の顔を見るだけで、自分も幸せになっている気分になった

ただ、気になるのはハンジさんとの別れ際だ
何となく引っ掛かった

一人にしてと言われたからには、気になっても部屋には行けないが

はぁ、またため息をついた

それから夕食まではベッドで休み、食堂に向かった

食堂は元通り机が並べられており、ピアノも無くなっていた

…ハンジさんはいないようだった
呼びに行った方がいいかな、と思ったが、今日は行かない方がいいだろう…気になって仕方がないが

食事を終え、食堂を出た時に女性兵士達から声が掛けられた
「副長、今からお時間があるなら…」
早速か…
「構わないよ」

三人の生徒!?を引き連れて物置部屋に向かった


一人ずつピアノを弾かせてみる
みな実力はまちまちだが、やる気はあるようで、たまに思い出したかのようにアドバイスする私の言葉を、全員がメモしていた

お姉さんのレッスンを何度も見ていたためか、案外教える事ができるかもしれなかった

全員のレッスンを終えると、私がピアノに座らされて、一曲弾かされた

今日は『ラヴェル 水の戯れ』
緻密に組み上げられた高速アルペジオの、しかも不協和音で調もわからないような、表現が非常に難しい難曲
難しいのを難しそうに弾かないのがポイントだ
水の跳ねる音、流れる音を意識して紡いでゆく

「副長やっぱり凄い…」
「才能って怖いですね」
誉められるのがむず痒かった

部屋に戻り、執務机に座る
今日の訓練の報告と、次回にしなければならない事柄をメモしていく

ふと窓に目をやる
月明かりが部屋にさしかかっていた

ハンジさんはきちんと夕食を摂っただろうか
放っておくと、全く寝ずに仕事に没頭するような人だから心配だ

気になって仕事に手がつかない
…頭を振る

もし、私が先に逝ったら、ハンジさんはどうなるだろう
私がいなくても、きっと大丈夫だ、きっと誰かが代わる
私の代わりなど誰にでも勤まるだろうから

戦場で何度も死にかけた
その度にハンジさんに助けられた
ぼーっとするなと何度も言われた

…私はハンジさんの下にいなければ、今生きていないと思う
やっと最近足手まといにはならなくなってはきたが、やはりいつ逝ってもおかしくはない状況に変わりはない

目を閉じると、勇ましい戦乙女の様な戦いぶりを見せるハンジさんの姿が脳裏に浮かぶ

目を開き、自分の手を見る
この手はハンジさんを守ることができるのだろうか…

不意に部屋の扉がノックされる
「モブリット副長」
と呼ばれたので、立ち上がり扉をあけた

兵士が立っていて、敬礼をしていた
「エルヴィン団長がお呼びです。団長の執務室にお越しください」
「…わかった、今すぐに行くよ。ありがとう」
…団長、今度は何だろうか…


団長室に入ると、エルヴィン団長が執務机に向かって書類にペンを走らせているのが見えた
「団長、お呼びでしょうか」
「やあ、モブリット。先程はご苦労だったな。レッスン…もしてやる事にしたのかな?」

「はい、時間に余裕がある時に…」
「そうか、それは彼女らも喜んだだろう。所で、今日呼んだのは、これを見てもらいたくてな」
団長が一枚の紙を私に差し出した

「……え?」
紙に書かれている文字をみてぎょっとした
「モブリット、心当たりはあるか?」
「いえ、強いて言えば今日ピアノを弾いた帰りに少し様子がおかしかったのですが…」

「そうか…とりあえずその書面は受理するつもりはないから、君に預けておくよ」
団長は苦笑して言った

「…はい、わかりました。すみません団長、お手間をとらせまして」
「いや、大丈夫だよ。ハンジをよろしく頼むな、モブリット」
「…はい」


団長室を出て、もう一度書面に目を通す
《配置異動届け―モブリット・バーナー 第四分隊→戦術技工班》

要するに、分隊副長職の解任要求と、技工班への転属…裏方に回れという事だ
ハンジさんのサイン入りのその書面を、とりあえず胸のポケットにしまった

どういう意味だろう
全くわからない、青天の霹靂だ
やはりピアノを弾いていたのを黙っていたから怒ってか…?いや、そんな事でこんな手の込んだ事はしないと思う
ただのいたずらではない

他に何かやらかしたか…?
思い付かない…いつも何かしらやらかしている気がするし…
ピアノ以外はいつも通りだった

という事は、きっとピアノが原因か

こうしていてもらちがあかないので、意を決してハンジさんの部屋に行く事にした

ハンジさんの部屋の扉をノックする
「ハンジ分隊長、いらっしゃいますか?」
反応がない

もう一度ノックをしたが、やはり返事はなかった

扉を開けようとしたが、鍵が掛かっていて開かなかった
…合鍵は持ってはいたが、きっと顔を合わせたくないから鍵をかけたのだろう

はぁ、とため息をついてその場に座り込んだ

今日の別れた際のあのハンジさんの表情、何か思い詰めた様な眼差し、そして胸ポケットに入っている私に突きつけられた絶縁状

頭を抱えるしか為す術がなかった

それからしばらく、何度か扉をノックしたが返事がなかったため、諦めて部屋に戻った

急に変化したハンジさんの態度

確かにハンジさんは喜怒哀楽がはっきりしており、基本的には分かりやすいのだが、たまに突拍子もない事もするので、理由が分からない事も多々ある

ピアノが原因だとは思う
やはり黙っていた事が、余程腹に据えかねたか…?

考えても答えは出ない
ハンジさんの頭の中にしか答えはない

考えすぎて頭が痛くなってきた
…そういえば明日は丁度、技工班との打合せだった

ハンジさんは別行動で、リヴァイ班の所でエレンの実験について話をする

都合がいいのか悪いのか
私としては早く理由が聞きたいのだが…

はぁ…深いため息と共に、こめかみに痛みが走る
しばらくこめかみを指で押さえて目を伏せた

>>85
コメントありがとう!

結局それから二度ほどハンジさんの部屋に行ったが、反応はなかった

明日使う書類だけはしっかり纏めておき、ベッドに入ったが全く眠れなかった

眠れる時に寝るのが兵士たるものの努めなのに、情けない

とりあえず目を閉じて無心になる事にしたが、やはり浮かんでくるのはハンジさんの事だった


そうこうしている間に朝になっていた
殆ど寝ていない
うとうとと眠りにつきかけても、直ぐに目が覚めた

兵服に袖を通し、顔を洗う
目の下にはっきりとわかる疲労の色が見えたが、どうしようもなかった

もう一度、朝食前にハンジさんの部屋に行ったが、隣の部屋の兵士が、朝早くに出ていったと教えてくれて、顔を合わすことは出来なかった

仕方がない、そのまま朝食をかき込んで、技工班との打ち合わせや、機材の確認に行った

「モブリット副長、お疲れのようですね」
技工班のメンバーにも指摘されるほどの顔だった

「大丈夫だよ。しかし良く出来ているな。これなら見た目は荷馬車にしか見えない」
今度の壁外に使う機材は、かなりいい出来だった

「後は強度を考えて、仕上げていきます」
「ああ、よろしく頼む」

後は強度を保つための材料の選定など、必要事項を細かく打ち合わせた

全てハンジさんの耳に入れる事なので、念のためメモをして後程書類に上げる予定だ

ハンジさんは大丈夫だろうか…
やはりここに来ても浮かんでくるのはハンジさんの事だった

もし異動届けが受理されたら、私はこの技工班で働くんだな…

技工班のメンバーは気のいい頭のいい人ばかりなのだが、いささか気が滅入った

技工班のメンバーに別れを告げたのは、夕方過ぎだった

部屋に帰り、すぐに書類を纏める作業に取り掛かる
分かりやすく箇条書きにして、目を通しやすい様に書いていく

今ごろになって眠気が襲ってきたが、これを終わらせない事には寝るに寝られない

今日中にハンジ分隊長に渡して、目を通してもらった方がいいだろう

今日一日分の事なので、沢山書かなければならない
一心不乱にペンを走らせる
その間だけは異動届けの事は忘れていられた

やっと書類が終わったのは、すでに夕食の時間を疾うに過ぎた頃だった

しばらくその状態で待っていると、廊下をかつかつと歩む音が聞こえた

目を開けると、ハンジさんがこちらに向かって来ていた

「モブリット…?」
ハンジさんは歩み寄りながら小さな声で言った

「遅くまでご苦労様です、ハンジ分隊長」
私が静かにそう言うと、部屋の鍵を開けながら
「もしかして待ってたの…?」
と、首をかしげた

「今日中にお渡ししたい書類がありましたので」
「そんなの鍵開けて、机に置いててくれたら良かったんだよ」
ハンジさんは、私の顔を見ることなくそう言った

「あと、お聞きしたい事がありましたので」
「…入って」
チラッとだけ私を見て言った


部屋は私が一日入らなかっただけなのに、服が散らかっていて、書類も机に散乱していた

「ハンジ分隊長、とりあえず書類に目を通して下さい」
「ああ」
執務机に向かったハンジさんに書類を手渡し、私は部屋を整理する

服を畳み、ジャケットはハンガーにかけ、洗濯するものはかごへ入れる

早速ハンジ分隊長の部屋に行ったが、やはりノックしても反応がない

さすがに心配になってきた
中に居るんだろうか?
勿論鍵も掛かっている
…鍵を開けて入ろうか、と一瞬思ったが、思い直した

今日は旧調査兵団本部に行ったはずだから、きっと帰りも遅いはずだ

しばらくここで待ってみよう
部屋の扉に背を預けて、目を閉じて待つ事にした

しばらくその状態で待っていると、廊下をかつかつと歩む音が聞こえた

目を開けると、ハンジさんがこちらに向かって来ていた

「モブリット…?」
ハンジさんは歩み寄りながら小さな声で言った

「遅くまでご苦労様です、ハンジ分隊長」
私が静かにそう言うと、部屋の鍵を開けながら
「もしかして待ってたの…?」
と、首をかしげた

「今日中にお渡ししたい書類がありましたので」
「そんなの鍵開けて、机に置いててくれたら良かったんだよ」
ハンジさんは、私の顔を見ることなくそう言った

「あと、お聞きしたい事がありましたので」
「…入って」
チラッとだけ私を見て言った


部屋は私が一日入らなかっただけなのに、服が散らかっていて、書類も机に散乱していた

「ハンジ分隊長、とりあえず書類に目を通して下さい」
「ああ」
執務机に向かったハンジさんに書類を手渡し、私は部屋を整理する

服を畳み、ジャケットはハンガーにかけ、洗濯するものはかごへ入れる

>>105順番間違えてしまったので、無かったことにして下さい…すみません

後はベッドも敷き布団のカバーがぐちゃぐちゃなので綺麗になおし、枕と布団も真っ直ぐにセットする

後は机に散乱している書類だ
執務机に歩み寄り、ハンジさんの邪魔にならないように気を付けながら整理していく

ついでに書類にも目を通していく
大量の実験案や、機材の事が書かれていた
もしかして昨日全部書いたのかな…?
だとしたら徹夜かもしれない
それくらいの量だった

ハンジさんの顔を見ると、目元にくっきり疲労の色が出ていた

やはり昨夜は部屋にいたんだな
…少し寂しい気持ちになった
私は多分、避けられていたんだろう

目を伏せて、肩で息をした

執務机も片付いたので、邪魔にならないように後ろに控えた

ハンジさんは熱心に書類に見入って、時折ペンを走らせた

ハンジさんの背中
思えばいつもこの人の背中を追いかけていた
時に頼もしく、時に悩ましく、時に危なっかしく、例えどんな時でもこの背中についていった

もうこの背中を追うことは許されないのだろうか
いくら書類が受理されなくとも、ハンジさんが拒絶すれば、もう背中を追うことは出来ない

「よし、全部見たよ。完璧だ」
ハンジさんは書類を机に置いて、そう言った

「良かったです」
「…ところで、聞きたいことって、何?」
ハンジさんが椅子から立ち上がり、私の方を見た
その表情はひどく神妙だった

「ハンジさん、この異動届けの件ですが…」
エルヴィン団長から預かった異動届けを見せる

「ああ、私が書いてエルヴィンに出したよ。やっぱり受理されてなかったんだね」
ハンジさんが目をそらした

「理由をお聞かせください、ハンジさん」
「…理由なんてないよ。そうした方がいいと思ったから。私が」
ハンジさんは私の目を一向に見ようとはしない

「そうした方がいいと思った理由を、教えていただけませんか、ハンジさん」
私はずっとハンジさんを見据えている

「…何でもいいだろ?」
「ハンジさん、教えて下さい」
「嫌だ」
ついには顔を背けた
私は盛大にため息をついた

「わかりました、では私は技工班に参ります。ただし」
ハンジさんに歩みより、その疲れた顔に触れる
「きちんと寝てください。昨日は徹夜でしたよね?食事もろくにとっていませんよね?ちゃんと三食食べて下さい。それだけ約束して下さい」

「…」
ハンジさんは無言でじっと私を見た
「では、この異動届けをエルヴィン団長に提出して参ります。ハンジさん、長い間お世話になりました」
敬礼をして、踵を返した

踵を返した私の手を握るハンジさん
「だってさ、指、怪我しちゃうじゃないか…」
「……はい?」
「大事な指が、使えなくなったら大変だろ…?」

私が振り返ると、今にも泣き出しそうな、見たことの無い表情のハンジさんがそこにいた

「指の事だったんですか…なんだ…」
ほっとし過ぎて倒れそうになった

「モブリットのピアノはきっと王都のピアニストにも負けてないよ。ブランクがあるのに、素敵な演奏でさ…真面目にピアノに向かえば、立派な演奏家になれるよ」
私の手を握って、熱く語るハンジさん

「だから、指を怪我する可能性の低い裏方に回そうとしたんですか…」
「…うん、悩んだ末の結論だったんだ。お試しにモブリット抜きの生活にチャレンジしたんだけど…」
そこでハンジさんはうつ向いた

「寝ないわ食べないわ、部屋はぐちゃぐちゃ…になったわけですね、ハンジさん」
「…ああ、そうなってしまった」
そう言って項垂れるハンジさんが妙に愛おしく思えた

とりあえず、ハンジさんをベッドに腰掛けさせて、私はベッドサイドの椅子に腰を下ろした

「ハンジさん、まずはですね、私はピアニストになるつもりはありません。ピアノは好きですし、これからも弾けたら弾きたいですが…」
「うん」
ハンジさんは私の手を握ったまま頷いた

「まずは、調査兵団として巨人の問題を解決したいのです。それが最優先です」
「そっか」
ハンジさんは私の手を自分の手のひらに乗せて、指を触った

「その後、人類に平和が訪れて、戦わなくてよくなったら、その時はピアノを頑張るかもしれませんね」
「うん」

「ですから、今は指の心配はしないで下さい。ハンジさん、私はできる限りあなたのお側にいたいと思っていますから」
ハンジさんの手を、そっと握った

「一緒に戦わせて下さいね」
「…ああ、よろしく、モブリット」
泣き笑いの様な表情のハンジさんに、微笑みかける
「私の事、真剣に悩んで下さってありがとうございます、ハンジさん」
ハンジさんの頭をそっと撫でた

「モブリット、隣に座って」
と言われたので、ハンジさんの隣に浅く腰かけた

私の右手のひらを自分の手のひらに重ねるハンジさん
「モブリット手、大きいよね?」
「そうですね、あなたよりは…」

「よく知ってるはずの手なんだけど、こんなに大きいな手だって最近気が付いたよ…私はモブリットの事をまだよく知らないのかもね」

そう言いながら、もう片方の手を私の手に乗せて包み込む
温かい何かがハンジさんから私に流れている気がした

「私もハンジさんの事は未だによく分かりませんよ」
「そうかな?私なんか分かりやすいよ?」
首をかしげるハンジさん

「分かりにくいですね」
きっぱり言い切った
「分かれよ!?」
ハンジさんはぷりっと膨れた

「今回なんて、本当に分からなくて焦りましたよ…」
「そっか…ごめんね、モブリット」
申し訳なさそうなハンジさんが、とても愛らしかった

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