姫子「煌って呼ぶけん」煌「はい?」(115)
姫子「そいで、煌は私ば名前で呼びんしゃい」
煌「な、名前でですか?」
姫子「あと、それ!」
煌「そ、それとは……?」
姫子「私と煌は同い年やけん、敬語ば禁止」
煌「は、はぁ……」
※方言は適当です
姫子「嫌なん?」
煌「いえ!そ、そんなことは」
姫子「……煌が初めてやったとよ?」
煌「へ?」
姫子「私、同い年の友達少なか」
煌「鶴田さん……」
姫子「姫子!」
煌「姫子さん……でいい?」
姫子「んー、同い年やし、呼び捨てがよかけど……」
煌「慣れるまではこれで」
姫子「仕方なか」
煌「それで……?」
姫子「私、中学ん時から部長にべったりやったけん」
姫子「知っとるでしょ?私と部長の能力」
煌「うん」
姫子「周りはそいばあまり知らなかったけん……」
姫子「知っとる人は知っとる人で、自分の力で勝ってなかって」
煌「そんなこと」
姫子「こん高校に入学した時も、周りは中学での活躍ば知っとる人が沢山おったけん」
姫子「そいけん、自然に付き合える人も少なくて……」
姫子「ばってん、煌は違った」
姫子「私のことばあまり知らなかったのもあっとやなかろうばってん、知ってからも、さらさら変わらなかで付き合ってくれた」
煌「姫子さんは姫子さんですから」
姫子「私はその言葉に救われたったい」
煌「部長はそのこと知らないんですか?」
姫子「敬語」
煌「は、ごめん。部長はそのこと知らないの?」
姫子「言っとらんばい」
煌「なんで?って聞いてもいい?」
姫子「言えなかよ」
煌「でも……」
姫子「沢山迷惑かけとっけん、これ以上負担かけたくなかよ」
姫子「……そいに、今は煌もおるけん」
煌「……」ドキッ
姫子「あ!」
煌「は、はい!?」
姫子「ばってん、部長には内緒たい?」
煌「へ?」
姫子「部長が、嫉妬すっけん」カァー
煌「姫子さんと部長の関係って……」
姫子「……」カァー
煌「なかなかうまくいかないものですね」
姫子「煌?」
煌「しかし、嬉しいものです!」
姫子「煌、敬語ば……」
煌「うん!私も姫子さんと友達で嬉しい」
――数週間後
哩「花田、ちかーっとよかか?」
煌「はい?でも、姫子さんは……?」
哩「姫子は先生に呼ばれとるよ」
煌「そうですか……何か悩みごとですか?」
哩「あんなぁ、花田」
煌「はい」
哩「……そのなぁ……」
煌「部長が言い淀むなんて珍しいですね」
哩「……姫子が何か隠し事しとるごと思わなか?」
煌「へ?」
哩「様子がおかしか気がすっんだばってん」
煌「え、ええと……直接姫子さんに聞いてみては?」
哩「……姫子に隠し事ばされるん初めてやけん」
煌「え、と……」
哩「聞いてよかのかわからなか」
哩「花田なら姫子と仲よかから知っとるんやなかと」
煌(部長に隠し事、といいますと……まさか……)
煌(いや、でも、姫子さんに内緒と言われていますし)
哩「さすがの花田もわからなかか」
煌「……いえ、その……お役にたてず申し訳ありません」
哩「こっちゃんこそ変なこと聞いて悪かった」
煌(私は一体どうすれば……)
――翌日
姫子「……部長と喧嘩した」
煌「あちゃー……えと、喧嘩の原因は?」
姫子「部長が……
姫子『部長?遅かったですね』
哩『ん、うん……』
姫子『なんかあったとですか?』
哩『なんもなか』
姫子『そげんことなかように見えますけど……』
哩『そげんこと言う姫子はどうね?』
姫子『何の事ですか?』
哩『私に隠し事しとっちゃないの?』
姫子『なんでそうなるとですか?』
哩『なんかおかしか』
姫子『そげんことなかです』
哩『隠し事しとるやろ』
姫子『しとらんですよ』
哩『絶対しとる』
姫子『うぅー……部長!私んことば信じられんのですか?』
哩『そ、そういうわけやなか……!』
姫子『部長のばかー!』
哩『……姫子のばか』
姫子「って言い合いに……」
煌「あぁ……!」
姫子「なんで煌が頭抱えよると?」
煌(昨日私がこっそりと部長に伝えておけば……)
煌(直接聞くことを提案したのは私ですし……)
煌(あぁもう私のせいで……!)
姫子「部長が何か悩んどるようやったから心配したのに」
煌(部長も姫子さんのことで悩んでるんですよ!)
姫子「部長、何を悩んでるんやろうか?」
煌「あ、あのー」
姫子「?」
煌「姫子さんが二人きりの時は私を名前で呼ぶことって隠し事になるんじゃ……」
姫子「そいは……」
煌「実は、昨日部長に姫子さんが自分に隠し事をしてる気がすると相談されて……」
姫子「ばってん、部長に言いたくなか」
煌「なんで?」
姫子「……私、部長の事、名前で呼んだことなか」
煌「え?」
姫子「……いつでん部長とか先輩って呼ぶけん、名前で呼んだことなかのよ」
煌「い、意外」
姫子「そいけん、言えなかよ」
煌「いや、でも!このまま隠し事しているって言うのも……」
姫子「……んん」
煌「私から部長に言おうか?」
姫子「駄目!絶対に駄目!!」
煌「んんー……でもこのままじゃ……」
姫子「……部長への気持ちは変わってなかけん、部長はそいば信じてくれっぎよかのに」
煌「まぁ、浮気しているわけじゃないけど」
姫子「私が浮気すっわけなか」
煌「……」
――その日の部活
哩「花田」
煌「は、はい」
姫子(わかっとるよね?)ギロリ
煌(うぅ……)
煌「昨日の話の続きですか?」
哩「そいもあっばってん……」
煌「部長?」
哩「隠し事されてるくらいでこげん不安になるなんて……」
煌「部長は本当に姫子さんのことが好きなんですね」
哩「……あぁ……まぁ……」
煌「……姫子さんの気持ちは変わらず部長に一直線だと思いますけど」
哩「……そう思いたかばってん……なぁ、花田」
煌「はい?」
哩「花田、いつから姫子のことば名前で呼びよる?」
煌「え、えぇと……何週間か前ですね」
哩「そのきっかけば教えてくれなかか?」
煌「はい!?」
哩「……些細なことなんだばってん、姫子は私のこと名前で呼んでくれたことがなか」
哩「いつでん部長とか先輩とか……」
煌「は、はぁ……」
哩「花田は姫子ば名前で呼ぶごとなっとんに、なんで姫子は今も私ば名前で呼んでくれなかやろか?」
煌「部長から言ってみては……?」
哩「今更恥ずかしかやろ」
煌(まったくこの二人は……好きって気持ちはまっすぐなのに素直じゃない)
煌(すばらじゃないですね)
煌「部長はいつから姫子さんを名前で呼ぶようになったんですか?」
哩「覚えてなか」
煌「はぁ……」
哩「美子も仁美も名前で呼ぶやろ?仲良くなっぎ自然に名前で呼ぶけん、きっかけなんてなか」
煌(そういえば姫子さんは友達少ないって言ってましたし、名前で呼ぶのに慣れてないんでしょうか)
哩「姫子ん事も、気付いたら名前で呼んどったばい」
煌「ふーむ……」
哩「隠し事されよって色々考えとったら、そいに気付いたと」
煌「は、はぁ……」
哩「結局、仲よか思っとったんは、私だけやったいうことやろか……」
煌「そんなこと……」
哩「姫子が何考えとるんか全く分からなか」
煌(あなたのことを考えてるんですよ部長)
煌(ま、まぁ私のことを名前で呼ぶとかもありますけど)
哩「……はぁ……」
哩「こげん弱かこと見せて悪かった」
煌「いえ……」
哩「もうちっと一人で考えてみったい……」
煌(部長の背中から哀愁を感じる……)
煌(っていうか考えるってもしかして別れるとか……!?)
煌「そ、それはすばらくない事態ですよ!」
煌「なんで姫子さんは部長を名前で呼ばないの?」
姫子「ずっと先輩って呼んどったけん、今更恥ずかしかよ」
姫子「そいに先輩は先輩としか呼ばなかでしょ」
姫子「そいけん、名前で呼ぶ機会なんてなか」
煌「……例えば部長がまだ部長じゃなかったときに安河内先輩と江崎先輩と部長が並んでいたら?」
姫子「部長んとこ行って、服でん掴んで先輩って呼ぶ」
煌「な、なるほど……」
姫子「……」
煌「うーむ……」
姫子「……」チラッ
姫子「……煌から見て私と部長どう見えとる?」
煌「え、相思相愛のお似合いのカップル、かな」
姫子「そう見える?」
煌「うん」
姫子「……みんなからもそう見えとるやろか?」
煌「おそらく」
姫子「うーむ……」
姫子「実はな煌、ここだけの話なんやけど……」
煌(……な、なんでしょうか、この嫌な予感といいますか……)
姫子「私と部長は付き合っとらん」
煌「す、すばらーーーーー!??!?」
姫子「すばらくなか!あと声大きか!」
煌「ほ、本当に?」
姫子「本当ばい」
煌「予想外過ぎて飛ぶかと思った」
姫子「どこへよ」
煌「え、でも前にお二人の関係を聞いた時は……」
姫子「……特別な関係は関係たい」
姫子「部長んことば好きな気持ちも本当たい」
姫子「ばってん、部長に好きって言ったことはなか」
姫子「言われたこともなか」
煌(そういえば部長も好きとかの話してた時に言葉を濁していたような)
煌「え、でも、お二人は両想いなのでは……?」
煌(でもでも部長も姫子さんにぞっこんですよね?)
姫子「そう思いたかばってん……」
煌「えぇと……?」
姫子「あん能力ばあっけん、私達は特別な関係たい」
姫子「ばってん、それだけたい」
煌「え……!?」
姫子「みんな付き合っとう思っとっけん、誰にも相談できんかった」
煌「な、なるほど」
煌(友達少なかったようですし、二人が付き合っていないなんて信じがたい話ですしね)
姫子「煌……部長と私が一緒にいる意味って、リザベだけなんやろか?」
煌「はい?」
姫子「あん能力ばあっけん、部長は私のそばにいるんやろか」
煌「姫子さんと部長のあれって、お二人で生んだものじゃないの?」
姫子「先天的なもんやった。そいに気付いたんが中2やった」
煌「不思議なこともあるんだね」
姫子「部長は中学でんここでんエースたい」
姫子「エースの責任ば考えとっけん、一番勝利へ貪欲たい」
姫子「そいけん……勝つために私とおるんやなかって……」
煌「そんなわけない!」
姫子「……聞くのが怖か」
姫子「部長も同じ気持ちだって思っとんばってん、もし勘違いやったら……」
姫子「もし万が一あん能力のためだけやったら……そげん事ば言われたら……」
煌「……だけど私が聞いても意味ないでしょう?」
姫子「……そうやけど……」
煌「……姫子さんが中学の時のこととか話してくれたから私もちょっと昔の話をするね」
姫子「煌の……?」
煌「どうして私は長野からここに来たと思う?」
姫子「新道寺が強いから?」
煌「インターハイ出場を目指すだけなら長野県内にも強豪校はあるよ」
姫子「うーん……」
煌「私は安河内先輩や江崎先輩のように強くもなければ、姫子さんや部長のように何か特別な力があるわけではないから」
煌「本当は中学では麻雀を終わりにするつもりでした」
姫子「え?そんなん初めて聞いた」
煌「初めて言いましたから」
姫子「そいぎ、なんでうちに来たと?」
煌「憧れの選手がいたんです」
姫子「憧れ?」
煌「その人は私と同学年で、2年の時は団体戦で、3年の時は個人戦で活躍してました」
煌「その人はですね、3年の時、寂しそうに見えたんです」
煌「気になっちゃいまして、ネットとかで検索したら、お慕いする先輩のいるところに進学すると知りました」
姫子「それって……」
煌「両親を説得して、学校から推薦を頂いて……」
煌「入学して、麻雀部に入部して、先輩と幸せそうに笑うその人を見つけました」
煌「なんだか安心したような寂しいような気持ちになりました」
煌『長野県の高遠原中学から来ました花田煌です』スバラッ
パチパチパチパチ
姫子『……佐賀県の』
『生立ヶ里中やろう』『知っとるで』『あいが鶴姫ね』
姫子『生立ヶ里中出身の鶴田姫子です』フルフル
煌(……この人だ、この人が鶴田姫子さん)
『確かに2年前のインターミドルでん大活躍やったばってん』
『去年は一昨年程の火力なかったよね』
『結局は白水先輩の力やろ』
姫子『……』
哩『姫子、部長がお前と一戦交えたかってよ』
姫子『先輩』パァー
哩『私も一緒に打つばい』
煌(……こんなに幸せそうに笑えるんじゃないですか)
煌『鶴田さん』
姫子『は、はい?』ビクッ
煌『昨日の先輩たちとの一戦本当にすばらでした!』キラキラ
姫子『そ、そげんことなか』
煌『そんなことありますよ!』
姫子『……花田、さんやったっけ?』
煌『名前を覚えてもらえていたとは……すばらっ!』
姫子『……くすっ』
煌『へ?』
姫子『すばらって口癖なん?』
煌『……変ですかね?』
姫子『すごくよか言葉たい』
煌『すばらっ』
『団体戦のオーダーを発表すっけん』
『先鋒・白水』
哩『はい』
『さすがエースやね』『当然やね』
『次峰・鶴田』
姫子『……はい』
ザワザワザワザワ
『中堅……』
煌(鶴田さん、この新道寺で1年生にして団体戦にオーダーされるとは……すばら!)
哩『……』
姫子『……』
『思った通りやね』『やっぱり白水先輩の次にオーダーされとる』『確かに強かばってん、怪しか』
煌『鶴田さん!!』
姫子『は、花田さん……?』
煌『すごいです!さすがです!すばらです!』
姫子『ちょ、花田さん、恥ずかしか……』
煌『おっとこれは失敬。つい興奮してしまいまして』
姫子『……ぷはっ』
煌『すば……?』
姫子『花田さんおもしろか』アハハ
姫子(そげんまっすぐ誉められよったん久しかよ)
煌『私の顔に何かついてますか?』
姫子『そげんことなか』
哩『姫子』
姫子『先輩』
哩『帰るぞ』
姫子『はい』
煌『……あ』
姫子『また明日ね、花田』
煌『はい、お疲れ様です。さようなら』
哩『なんか嬉しそうやね』
姫子『ちょっとよかことあったとですよ』
――新道寺敗退
哩『私が……私が不甲斐なかばっかりに』
姫子(違う……先輩は私の為に無茶しよった)
姫子(そいけん……)
『白水先輩は他校のエース相手ばようやっとったよね?』
『問題は次鋒よ』
『インターミドルん時みたか火力もなかけんね』
『微妙なあがりも多か……』
姫子(私が……本当は私のせいで……)
哩『姫子……すまんかった』
姫子『……うぅ……』
姫子『私がもっと強かったら……』
哩『私が悪か……私が他校のエースに打ち負けっけん……』
姫子『……』
煌『鶴田さん』
姫子『花田……』
煌『お疲れ様です』
姫子『……何で何も言わんと?』
煌『お疲れ様ですって言いましたよ?』
姫子『そうじゃなか……』
煌『……すばらでしたよ』
姫子『どこがよ?私、何もよかとこなか……』
煌『麻雀は運が強いゲームですから、どんなに強い人でも負けることがあります』
姫子『そげん慰めいらんよ』
煌『たはは、私の後輩の信条みたいなものですよ』
姫子『……火力弱かとか中3の時はパッとせんかったとか陰で色々言われとんの花田は知っとるやろ』
姫子『こげんこと信じられんことかもしれんけど……』
姫子『私と先輩は普通じゃなか』
煌『……普通じゃない、ですか?』
姫子『先輩が配牌を一度伏せるやろ』
煌『毎回やっていますよね』
姫子『あん時、先輩が飜数に縛りを掛けよる』
姫子『そしてそいをあがっと、私も同じ局でそん2倍であがれっと』
煌『……』
姫子『ばってん、先輩があがれんかったら、よくて1飜ばってんほとんどあがれん』
姫子『先輩おらんと火力も高くなか』』
姫子『そいけん、陰口も的外れなわけやなか、ほとんど当たっとっけん』
姫子『……わけわからなかよね』
煌『す……』
姫子『す?』
煌『すばらですーーー!!!!』
姫子『へ?』
煌『そんなすごい能力なんてあるんですね』
姫子『え、いや……でも……?』
煌『それ抜きにしても、鶴田さんはすごいですけど』
姫子『そんなこと……』
煌『全部縛りをかけているわけではないのでしょう?』
姫子『そうやけど……』
煌『それに校内ランキングは純粋に鶴田さんの力ですよ』
姫子『……』
煌『校内ランキングで2位なのに、すごくないわけないじゃないですか』
姫子『ばってん全国で勝てなかなら、そんなん意味なかよ』
煌『強くなります』
姫子『花田……?』
煌『私も戦力になれるように、誰かに必要とされるように、強くなりますから』
煌『私はまだまだそんなこと言える立場ではないですけど』
煌『いつかきっと……』
煌(誰かに必要とされる力を)
煌(あわよくば、この人を、鶴田さんを支えられるだけの力を……)
煌「その人は今、私の大切な親友になりました」
姫子「その人って……」
煌「私は部長の代わりにはなれないけど、部長が卒業してからの1年間、その寂しさを少しでも埋められたらいいなって」
姫子「……」
煌「なぁんて生意気ですかね?」
姫子「煌、敬語ば禁止」
煌「ごめん」
姫子「でも嬉しか」
煌「えへへ」
姫子「思いだしたと」
姫子「あん頃、部長がいなくて寂しかった」
姫子「部長は新道寺でんエースで活躍しとって、私なんかいなくてもよかんだなって勝手に落ち込んで」
姫子「ばってん、部長と一緒にいたかったけん」
姫子「そいで……」
煌「姫子さんは能力があるからここに来たわけではないのでしょう?」
姫子「うん」
煌「部長もお二人に能力があるから一緒にいるわけではないって私は思うよ」
煌「だけど部長から直接言われないと姫子さんは駄目なんでしょ?」クスッ
姫子「煌は何でもお見通しやね」
煌「友達ですから」
姫子「私頑張ってみっけん」
煌「……すばらですね」
コンコン
哩「誰ぞ?」
姫子「私です」
哩「姫子か……まぁ入れ」
姫子「あの……私、部長に隠し事しとりました」
哩「そうか」
姫子「ずっと部長に聞きたかことがあっとです」
哩「なんぞ?」
姫子「部長にとって私って何ですか?」
哩「え?」
姫子「こん能力があっせいで部長は無理してるんじゃなかですか?」
哩「そんなことなか」
姫子「部長は普通に打っても強いのに、私のせいですよね?」
哩「何言っとーと?」
姫子「……」
哩「無理なんかしとらんし、姫子んこと負担って思ったことはなか」
姫子「……部長は、こん能力あっけん一緒におるとですか?」
哩「そんなことなか」
姫子「私は、部長と一緒にいたかから、そいけん一緒に……」
哩「……姫子は、なんで私の事、先輩とか部長とか呼ぶん?」
姫子「え?」
哩「姫子との付き合い長かのに、名前で呼んでくれたことがなかから」
哩「私は姫子って呼ぶのに、こいじゃ仲がよかって思っとるんは私だけみたか」
姫子「きっかけがなかですよ」
哩「呼びたくなかのか?」
姫子「そげんことなかです」
哩「姫子」
姫子「はい」
哩「私もまたお前と一緒にいられて嬉しかよ」
姫子「え……」
哩「能力とか関係なか」
哩「私が姫子と一緒にいたいけん、一緒にいたい」
姫子「……嘘たい」
哩「……知っとった」
姫子「何をですか?」
哩「姫子が陰で色々言われよること」
姫子「え……」
哩「知っとったのに、私は何もできんかった」
哩「私と一緒におるけん、色々言われたんやろ」
姫子「……」
哩「姫子は私には何も言わんかったばってん」
哩「姫子が辛か思いしとること知っとったのに」
哩「私が周りに何か言ったとこで、姫子への風当たりが強くなっだけ、歯痒かよ」
哩「こん能力は私達ば繋ぐ絆だばってん、こんせいで姫子は辛か思いしとる」
哩「やったら、一緒にいなか方がよかって……」
哩「そいけん姫子に新道寺に来いなんて言えんかった」
姫子「そげんこと……」
哩「姫子がおらんと出来なかって思われたら、姫子に余計な心配ばかける思ったけん」
哩「ばってん、姫子が一緒におらん1年は、考えてた以上に寂しかよ」
姫子「ぶちょう……」
哩「うちに来いって言ったわけではなかのに、姫子が新道寺に来てくれて嬉しかよ」
姫子「……」
哩「私ば追いかけてきてくれたかなって自惚れたったい」
姫子「……」
姫子「部長、私の隠し事は……」
哩「ちょっと待った」
哩「私もお前に隠し事しよった」
哩「いつでん姫子からやったね」
姫子「せんぱ……」
哩「そいけん私から言わしてくれ」
姫子「……」
哩「……」
姫子「……」
哩「……」
姫子「……」
哩「……(は、恥ずかしか)」
姫子「……(ぶ、ぶちょー?)」
哩「……(照れてる場合やなかやろ!)」
姫子「……(緊張で吐きそうなんですけど)」
哩「……」
姫子「……」
哩「姫子んこと、好いとうよ」
哩「……大好きたい、愛しとうよ」
姫子「……」
哩(一言口に出しよったら、止まらなくなっ……)
姫子(夢みたか……)
哩「お、お前の隠し事は何ぞ?」
姫子「……ずっと先輩のこと好きやったとです」
姫子「……好きです、ま、哩先輩」
姫子「っていうことになったったい」
煌「すばらですね!」
姫子「えへへ」
煌「……そのままキスとかしたの?」
姫子「な、なな何言っとーと!?」
煌「へ?」
姫子「そんなん恥ずかしくてできなかよ」
煌(そ、そりゃ名前で呼ぶのすら恥ずかしがってたわけですもんね……)
姫子「だばってん、今日は手ば繋いで登校したと」
煌「それはすばら!」
姫子「煌のおかげたい」
煌「私は何も」
姫子「煌が応援しよったけん、勇気出せたんよ」
姫子「煌が友達でよかった」
煌「私も……」
煌「私も姫子と友達になれてよかった」
姫子「えへへ、呼び捨て初めてやね」
煌「そりゃ私と姫子の仲だからね」
姫子「そうやね」
煌「すばらっ!」
煌(失恋してしまいました)
煌(うわぁショック~)
煌(なんってことはないですね!)
煌(嬉しいことです)
煌(好きな人が私に笑いかけてくれてる)
煌(……恋人にはなれないけど)
煌(好きな人がこんなに幸せに笑ってる)
煌(私と友達になれてよかったと笑ってる)
煌(こんなすばらなことはない……!)
煌「そういえば、結局二人きりの時は私のことを名前呼びする件のことは……?」
姫子「忘れとった」
煌「え?」
姫子「やっぱり部長は嫉妬しそうやけん、内緒のままでよか?」
哩「花田、色々相談乗ってくれてありがとう」
煌「いえ、私は何も……」
哩「……」
煌「あの、おこがましいお願いなんですけど」
哩「ん?」
煌「姫子を幸せにしてくださいね」
哩「わかっとる」
煌「姫子を泣かせたら、この花田煌が許しませんよ」
哩「……お前……」
煌「お二人が幸せそうなのは大変すばらなことです」
哩「……」
煌「……もうすぐ部長の最後の夏ですね」
哩「あ、あぁ」
煌「勝ちましょうね」
哩「……決まっとろーが」
煌「そして安心して卒業してください」
哩「急に何ぞ?」
煌「部長が卒業したら私が姫子を支えますから」
哩「花田……そいは私への宣戦布告か?」
煌「部長が姫子のことをなおざりにしたらそうなりますけど」
哩「せんよ」
煌「知ってます。だから友達としてです」
哩「……煌になら任せられるね」
煌「へ?い、今なんと?」
哩「私が姫子んそばにいられんもん時、姫子ば支えてやってくれ」
煌「はい!」
哩「そいから」
煌「?」
哩「こいからは花田んこと、煌って呼ぶけん」
煌「へ、へえ!?」
哩「言ったやろ?仲良くなっぎ名前で呼ぶって」
煌「は、はぁ……」
哩「いや、でも……後輩で名前で呼ぶんは姫子だけやけん」
煌(なんかデジャブを感じるのですが……)
哩「姫子が嫉妬すっけん、姫子には内緒たいね」
おわり
くぅ~w支援どうもでした
麻雀やってるときはあんなんだけど本当は純情的な感じだと萌えるよねっていう
すばら先輩はまじすばら
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