※注意
このSSは佐天さんと上条さんが、学園都市で起きたっぽい不思議な話や怪談を追求する——と言う超深夜番組のレポーター&カメラマンをするお話です
基本的にグダグダと会話が続いていくだけで、オチらしいオチもありません
またその場のノリとテンションで書いているので、ギャグなのかシリアスなのかホラーなのかすら不明です
ちなみに七話目まで完結せずに落ちた場合には、途中で番組が打ちきりになったと思って下さい
尚、書き手の都合により、更新は一度に一話程度、頻度は1〜3週間に一回ぐらいとなりますが、どうかご了承下さいませ
それでは最後までお付き合い頂ければ幸いです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367376694
————学園都市七大不思議探訪 番組予告編
佐天「さーてやってきましたっ!学園都市七大不思議探訪!うっいはるー、見てるーーー?愛してるぞーーーーーーーーーーっ!!!」
上条「ちょっと待て!これ学園中に流れんだぞ!?」
佐天「別に大丈夫ですってば!後から幾らでも編集できますよ!ほらなんか上条さんも言いたい事があったら言っといた方が良いですよ?」
佐天「ほらほらっ、『愛してるぞ、美琴!』、プリーーーーーズっ!!」
上条「どうせ切られるんだから意味はないだろっ!?と言うか対象の人選と台詞に作為的なモノが感じられるよねっ!」
佐天「この番組はあなたの身近な都市伝説や学校の怪談、本当にあった怖い話を、ワタクシっメインリポーター佐天涙子とぉ——」
上条「カメラマン兼アシスタント兼雑用パシリの上条です」
佐天「——んがっ、取材して視聴者の皆さんへ送りするっ、突撃リポーター型オンライン番組でーす」
上条「……そうなの?オンラインって何?投票とかすんの?」
佐天「ヒドっ!?どうしてアシスタントさんが内容把握してないんですかっ!怠慢ですよ、ぶーぶーぶーっ」
上条「いや俺学校帰りに佐天さんに捕まって、近くの公園まで連行された挙げ句、問答無用でハンディカム持たせられたんだけど?」
上条「見ろホラ、カメラを横移動させると近所のガキンチョが『何あのおねーちゃんテンション振り切ってない?頭大丈夫?フ○ミ通なの?』って見てんだぞ」
佐天「ま、まぁまぁまぁ、それはいーじゃないですかっ!ちょっと時間がねー、無かったんですから!」
上条「いやまぁ困ってるんだったら助けるけどさ。つーか本当に何すんの?」
佐天「学園内のケーブルテレビの番組なんですよー?知りません、生徒がスポンサー募ってやってるヤツ」
上条「知ってるけどもそっちじゃなくてだな。何で七不思議?何で都市伝説?」
佐天「あーそりゃあたしが好きだからですが何か?」
上条「佐天さんってこーゆーテレビの仕事してんの?」
佐天「いえそうじゃなく、今日の放課後クラスメイトのお見舞いに行ったんですよ」
上条「それ流していい話か、ってあぁ後で編集出来るんだっけ」
佐天「まぁ本人の許可も得てますし。で、その娘が担当していた番組があったんですが、ちょい前に人がバタバタ倒れた事件ありましたよね」
上条「あぁヴェントん時の話な」
佐天「えっ?」
上条「えっ?」
佐天「ベント?誰です?」
上条「あーうん!俺の知り合いがその時期に偶然来てたんだ!」
佐天「はぁ、なーんか隠してるような?まぁそん時の彼女や彼女のスタッフが取材をかましたんですけど。全員倒れちゃいまして」
佐天「番組スタッフが足りない以上、彼女達が受け持つ時間帯にがっつり穴が空いちゃったんですね」
上条「はーそんで佐天さんがフォローしようって?でも素人が手を出していいの?」
佐天「誰だって最初は素人ですってば。編集とかは別番組のスタッフさんがやってくれますし」
上条「それで急遽超低予算で安易な番組でもやっとけ、と」
佐天「あっれー?アレアレアレー?もしかして乗り気じゃない?」
上条「うーん、ほら怪談とか都市伝説とかって、放課後とか夜とか遅い時間が多いよな?一人で行くのは危ないんじゃないかなー、って」
佐天「やっだなぁもうそんな事ですか。二人で行くから大丈夫ですよぉ!」
上条「あーそなの」
佐天「はい、だから次からもお願いしますね」
上条「あぁ任せろ!——って俺?どうして俺なの?」
佐天「いやー恥ずかしながら他に年上の男の人の知り合いって居ないんですよねー」
上条「他のスタッフさん居るだろ」
佐天「暇を持て余してそうなのは、ちょっと」
上条「暇って言われたよ!?」
佐天「本当にご迷惑なら諦めますけど」
上条「んー……んじゃ、暗くなったら俺の側を離れない事。それが守れるんだったら」
佐天「やっべぇ噂には聞いていましたが、超ナチュラルに口説きやがりましたね!」
上条「常識の範囲内のお話だよ!」
佐天「だがあたしには既に初春という恋人がっ!かかってこい!やったンぞコラ!」
上条「……あのな佐天さん、こないだ初春さんが『最近、周囲の目が痛いんです……』って本気でヘコんで——」
佐天「あーっ!あーあーあーあーっ!!!聞こえないなーっ!マジ説教なんて聞きたくないですっ!」
上条「『一般の方が黒子さんを見るような、まるでシビルウォ○のミュータン○扱い——』」
佐天「とまぁカメラマンの泣き落としに成功した所で、番組説明ですねっ!ねっ!」
上条「おい今誰か泣いたか?泣いているのは初春さんの方だからな?カガ○は今泣いているかも知れないけど、初春さんはオールウェイズ泣いてるからね?」
佐天「涙子だけにっ!!!」
上条「何ともかかってないよ!?ニアミスぐらいだよ!」
佐天「あーもうウッサイなぁカメ条さん、番宣なんだから番組の宣伝しないと」
上条「上手くないからな?カメラ担当だからって、上条をカメ条つっても笑いは取れないからな?」
佐天「上条さんだって下に——あぁやだゴメンなさいあたしにはまだハードルが高すぎますっ!」
上条「おい今視線をどこに向けてた!?あとさっきから聞いてるけど、佐天さんのハードルは跳ぶ必要の無いのばっかりだからな?」
佐天「あたしっセクハラなんかにっ負けないっ!」
上条「されてないよね?むしろ俺がされている側だよね?」
佐天「『へっへっへーカメラにゃ映ってないが、俺の下条はこんな大き——』」
上条「誰か止めてっ!?中一の娘がそんな発言したらケーブルテレビ免許差し止めになっちゃうから!?」
佐天「そんな時は叫べば良いんですよ、はいレッツリピートアフターミー」
上条「佐天さんあんま頭良くないよね?割と最初っから思ってたけど」
佐天「『愛してるぞーーーーーっ、美琴ーーーーーっ!!!』」
上条「あーもうヤケだっ!愛してるぞーっ、美琴ーっ!」
佐天「よく言った!それでこそ男だぜっ!よっフラグ一級建築士!」
上条「人をやっつけ仕事みたいに言うなっ!」
佐天「と、まぁノルマが終わった所で、実はっ、なんとっ、重大発表があったりしますっ!」
上条「番宣は?内容一個も紹介していないよね?つーかノルマって何?」
佐天「いーんですよぉそんなもんは。どうせ深夜27時半の番組なんて、誰も興味ありませんって」
上条「それはもう朝っつった方が早いよなオイ!つーか何か、これ朝三時半の番組なの?……あぁでも中一の子が任せられるんだから、そんなもんか?」
佐天「番宣だから今日だけは違いますけどね」
上条「へー今日だけは——“今日”?」
佐天「ではでは改めて重大発表です。後から幾らでも編集出来る、って言いましたけど——これ実は生放送だし無理ですから、残ぁ念んっ!」
上条「はぁ?オイだったら今も全部放送されちまったのか!?」
佐天「あ、ちなみに御坂さんには事前に『あたし出るから見て下さいねっ?』って告知済みです」
上条「なんでした!?というか俺に何させてんの!?」
佐天「大丈夫ですってば。こんなどローカルな番組告知見てる人なんて他に居ませんって」
佐天「むしろお二人の仲を進展させてアリガトウゴザイマス、って感謝してくれてもいいんだぜ?」
上条「駄目なんだよおぉっ!俺の仲間にこーゆーしょーもない番組をチェックすんのが、大好きな奴が居るんだ!」
上条「『学生が必死に作ったのを鼻で笑うのって超楽しいじゃないですか?あ、でもたまーに超感動作があってそれはそれで』って言う後輩系ドSが——」
ちゃーちゃっちゃちゃーちゃちゃっちゃー
佐天「おっとアナキ○さんからのお呼び出しがかかってますねー。あ、どうぞどうぞ?あたしに構わず取ってくださいな?」
上条「やめろよおぉっ!学園内へ俺が携帯に向かって土下座する姿を流したいのかっ!?」
佐天「真実の報道をするのが、この佐天涙子のポリシーでありますっ!」 ピシッ
上条「タチ悪りぃな!?つーか無責任すぎるわっ!誰が喜ぶんだその絵面っ!」
佐天「あ、すいませんー。残念ですがそろそろ中継のお時間が終わるみたいですねー」
上条「フォローはっ!?俺の交友関係のフォローはしないで終わるのっ!?」
佐天「はいアト残り時間10、9、8——」
上条「いや拙いって!このまま終わんのは俺の人生も終わるから!」
佐天「テレビの前のみっんなー、新番組で佐天さんと会おうぜ!約束だぞ!」
佐天「あ、うっいはるーーーーっ!けっこ——」プツンッ
——常盤台女子寮
御坂「……あれ?なに今の?生放送?生放送よねぇっ!?」
御坂「しかも最後、佐天さん結婚って言いかけてなかった……?」
御坂「……」ピッ
御坂「『あ、もしもし初春さん?今ちょっと良いかな、相談が——』」
御坂「『——うん、うん。あぁアーカイブ?有料会員になれば、誰でもダウンロード出来るのね?』」
御坂「『ありがとー助かったわ。今度ケーキでも奢るから——ううんっ!?そうじゃないし!』」
御坂「『ってか見てたの?——あー、呼んでたもんね——あ、あはは……』」
御坂「『いやいやいやいやっ!だから違うってば!』」
御坂「『うー……はい、そこはまぁ、悪かったかなって』」
御坂「『あーうん。んじゃまた。はいー』」
御坂「……」カチャカチャ
御坂(……あれ?)
御坂「予告番組はアーカイブ対象外ってどういう事よおおぉぉぉぉぉっ!?」
御坂「……」ピッ
御坂「『あ、もしもし?ごめん何度も。今——』」
御坂「『え?録画してたの!?本当に!?——』」
御坂「『あーんじゃ今から取りに行くから!詰め所でしょ?』」
御坂「『いや駄目ヤツには知らせないで!絶対渡す訳がないからっ!』」
御坂「『うん——はい、また後で』」
御坂(……ブルーレイ買お……)
——学園都市七大不思議探訪 番組予告編 −終−
——学園都市七大不思議探訪 第一話 『両想いになれる自販機』
佐天「ンしよーーーーぜっ!!!」
上条 ピッ
佐天「あ、携帯の電源切りましたね?良いんですかー、きっと怒ってますよー?」
上条「誰のせいだよっ!?」
佐天「浮気した方が悪いと思います」
上条「してねぇしっ!そもそも誰とも付き合ってすら居ないからなっ!」
佐天「いやでもたった今、御坂さんに生放送で告白しちゃいましたよね?よっ、この『幻想殺し』っ!」
上条「佐天さんもしてただろ!?公共の電波で求婚しやがってたよな?あと俺の『幻想殺し』に女殺し的なニュアンスは、ない」
佐天「いやー、あたしは別に初春へいつも言ってますし?」
上条「いやそれマジで止めてやれよ。君ん所には白衣って言う、素人さんドン引きさせるプロ問題児が一人——」
佐天「見損ないました上条さん!人の陰口良くないよっ!」 キリッ
上条「あーうん、確かにそれはそうなんだけどさ」
佐天「白衣さんがバ×ア声だとかっ!空気を読まないレ×キャラとかっ!なんて酷い事を言うんですかっ!?」
上条「うん、今スッゴイ酷い事を言っているのは、誰だかちょっと考えてみようか?」
佐天「『超電磁砲のオマケが本編絡んでくんじゃねぇぞ』とか、上×黒SSが人気で、『お姉様お姉様つってるけど、口だけでNTRだろ』とか」
上条「二番目は俺達暇人の妄想だからね?決して公式ではないからね?」
佐天「風紀委員で偉そうにしている割には、学園で事件起こりまくってるじゃねぇか——あたしの友達にそんな、そんな酷い事を言うなんて!」
上条「君はその友達を無くすから、これ以上喋らない方が良いと思うよ?」
佐天「ゴメンナサイは!」
上条「ご、ごめんなさい?」
佐天「はいっ、許してあげます」
上条「まさか今の俺言った事にならねぇだろうな?なぁっ!?」
佐天「と、問題も解決した所で——番組を進めたいと思います。いいでしょうか?」
上条「いや、それよりも番組の内容説明した上が良いんじゃないか?番宣だと俺がドッキリ喰らって羞恥プレイさせられただけだから」
上条「ってかカメラ持ってんの俺だから、その絵を見て大喜びしている佐天さんしか撮れてないからね」
佐天「あー、確かにっ。右手は伊達じゃありませんねっ」
上条「右手の要素皆無だよっ!?」
佐天「ハンディカム握ってるでしょ?」
上条「発言とは関係無いよね?全然」
佐天「でも27時半の穴埋め番組ってのは言いましたし、他に何か説明要りましたっけ?」
上条「どんな企画がありますーとか、こんな内容にしたいですーとか?」
佐天「いえこれと言っては、特に」
上条「なんで引き受けたっ!?だったらどうしてテレビ番組作る羽目になったの!?」
佐天「やー……あはは、まぁノリってあるじゃないですか?」
上条「分からないでもないけどさ。あーっと、番組タイトルなんだっけ?」
佐天「『上条「今日からアイテムの一員になった○条です!」』?」
上条「オイ馬鹿止めろ、そっちとこっちは雰囲気違うんだから!えっと……『学園都市七大不思議探訪』?」
佐天「あーはい、大体合ってましたよね?」
上条「共通点日本語ぐらいしかねぇよ!」
佐天「何かあたし七不思議とか、学校の怪談とか、都市伝説とか好きなんですよ」
佐天「だもんでそれを取材したら面白いかなー、なんて思ったり」
上条「七“大”って入ってんのはなんで?」
佐天「学園内のローカルネットで検索してみたら、ヒット数一万超えてたんですよっ」
上条「あー、人も学校も多いからなぁ」
佐天「なのでその中から適当にピックアップして、視聴者の皆さんへお届けしようかと——」
佐天「……」
上条「……どうしたの?」
佐天「やだ、上条さんと目が合った……」 テレテレ
上条「さっきからずっと合ってるし!そもそもそんなんで照れるんだったら、どうして俺を選んだの!?」
佐天「でもホラあぁっ、視線が合うときは向こうもこっちを見てるって——」
上条「佐天さんさっきも俺言ったけど、あんま頭良くないよね?なんで中一なのに中二病発症してんの?もしかして早生まれ?」
佐天「でまぁ週に一つずつご紹介出来ればいいなー、と。ちなみに本職の子が現場に復帰するまで一ヶ月あります」
上条「だったら七つ紹介する前に終わるんじゃないのか?」
佐天「何本か溜め撮りですし、人気が出れば続くかも?まぁどんなに酷い内容でも4回は続くって事ですね」
上条「どうせやるんだったら最後までしたいけどな。あと自分で酷い言うな」
佐天「尺が余っちゃった部分は、オンラインアーカイブで配信しますし」
上条「ふーん。で、一つめは何時収録するの?」
佐天「え、いや今やってますし」
上条「え、そうなの!?今までのダラダラ放送されんのっ?」
上条「夕方の生放送終わったばかりで、って。あぁこのまま撮りながら行くのか?」
佐天「えぇまぁ大体そんな感じ——なんですが、時間大丈夫ですかね?」
上条「ぶっちゃけカメラ壊して直ぐ帰りたいけど。俺はまだ問題ない」
佐天「いえそっちは別に心配してません。カメラの収録時間、残りどのぐらいですか?」
上条「さっきから失礼な事ばかり言ってるからね?……えっと、300分は大丈夫みたい」 ピッ
佐天「300分、すごいですねー。つまりバッテリーもその間保つって言うんでしょー、へー」
上条「……何か不自然だよな、今の?」
佐天「ちょっと望遠モードにしてもらえます?あっちの道路映してください」
上条 ググッ
佐天「あ、すっげー!○○メートル先のオジサンが、まるで目の前にいるかのように!」
佐天「しかも毛根の一本一本までこぉんなにくっきりと!」
佐天「これなら、ヅ×かどうかも判別出来ますよねっ!」
上条「……ねぇ。なんで口調が急にテレビショッピングになるの?」
佐天「ええっと……」 カサッ(メモを取り出す)
佐天「学園都市メーカー、『TATARA』の新型ビデオカメラ、R3D3はホンットに凄い性能ですよねっ!」 キラッ
上条「あからさまなステマは止めろよ!?」
佐天「え、でもメーカー名と商品名をさりげなく言えって縛りが」
上条「さり気なくないからなっ!欠片ほどもさり気なくはなかった!むしろメーカー側のマイナスになるよ!」
佐天「よし!それじゃ第一の現場へ行きましょうか、TATARAさんっ!」
上条「それメーカーになんの利益ももたらさないからな?むしろウザがられるからな?」
……
佐天「はいっ、そんな訳でやって参りましたぁっ!学園都市七大不思議探訪のお時間ですっ!」
佐天「今日は栄えある第一話目っ、ワタクシ突撃リポーターこと佐天涙子は現場へとやって来た訳でありますっ!」
上条「……」
佐天「時間は……そうですね、夜6時過ぎぐらいでしょうか。通り過ぎる人の顔も、少し見分けにくいくらいです」
佐天「私の気のせいかも知れませんが、辺りには霊気らしきものが少し——」
上条「……なぁ」
佐天「——何ですかっ今っ人が折角空気作ってる所だって言うのにっ」
上条「空気もクソもねぇだろ!ここ、さっき騙し撮りした公園の敷地内だからなっ!」
佐天「あ、上条さん——じゃなかったR3D3さん、具体的な場所はちょっと」
上条「公園の真ん中から隅っこに場所変えただけじゃねぇか!?」
佐天「あ、いえ。だからあるんですよぉ、ここに」
上条「……そうなの?俺毎日ここ通っているけど、怖い話なんて聞いた事ねぇなぁ」
佐天「あ、怖くないですよー?一回目だから軽めの奴?ちょい不思議な話ってのを取り上げます」
佐天「だって最初っからすっごい怖いの、嫌じゃないですか?」
上条「怖いのイヤだったらなんでこの企画にしたっ!?」
佐天「だーかーらっ!徐々に慣らして、怖さのランクを上げていこうって事ですよっ」
上条「まぁそれだったら分かる、かも?」
佐天「納得頂けた所で——第一話、『両想いになれる自販機』っ!!!」 クワッ
上条「……あっれー……?」
佐天「どうましたか、まさかこの程度の初歩の不思議すら無理なんですかっ?」
上条「あ、ごめんな?ツッコミは後からまとめるから、続けて?」
佐天「では、ですね。ここに設置されています自販機。まぁ椰子の実サイダーとか定番が売ってますよね?」
佐天「実はっ、この自販機をどうにかするとぉっ——」
上条「両想いになれる?」
佐天「!?」
上条「いやいやいやいやっ!?そんな『エスパー?』みたいな顔されてもなっ!あと名前が出オチの都市伝説ってどうよ!?」
佐天「流石TATARIさんっ、自らカメラマン役を志願してきただけの事はありますね」
上条「記憶を捏造するな。あと社名が『祟り』になってるから」
佐天「心霊ものではお約束ですねっ」
上条「ウルサいよっ!つーかステマする会社の名前ぐらい覚えて来なさいっ!」
佐天「で、話を戻しますと、都市伝説——と言うよりもジンクスなんですね」
佐天「四つ葉のクローバーを見つけると幸運になるとか、某企業のロゴマークを触ったら幸せになれるとか」
佐天「あと最近じゃR2D×に触ると叱られるってのもありますね」
上条「うん、そりゃ街中でR2×2居たら撮影中だもんね?そりゃ怒られるし、そもそもカメラの製品名も間違っているよね?」
佐天「最近評判なのは、これっ!『両想いになれる自販機』なんですよっ!」
上条「へー、意外と身近にあるもんだなぁ。見た感じ普通の自販機にしか見えないけど」
佐天「はい、では試して貰いましょーかっ」
上条「だな。やってみないと嘘か本当か分からないもんな」
佐天「……」
上条「……」
佐天「(……はいっ、どうぞ)」
上条「俺かよっ!?って言うか方法も知らないよっ!?」
佐天「ふぁいっ!」 グッ
上条「意味が分からねぇよ!さっきから俺ツッコミと無茶ブリしかされてないよねっ!?」
佐天「ふぁいおーっゆ○かっ!ゆり○ふぁぃおーっ!」
上条「俺の愛する建○先生を汚すな!それだけはヤメロ!」
佐天「ってかもうヒロイン、ティ○ちゃん確定で良いですよね?」
上条「言うなっ!それは俺の好みの問題だああぁっ!?」
佐天「ミヤ○ちゃんぷりちー!」
上条「あーゆータイプに弱いんだよおおおおぉぉっ!?」
佐天「えー……って言うか視聴者の皆さんは、待って居るんですよっ!」
上条「せめて方法を教えろっ!それが分からなきゃどうしようも無いしっ!」
佐天「え?」
上条「……うん、何?どういう事、その『え』って?」
佐天「——はいっ、と言う訳でお別れの時間がやって来てしまいましたっ!」
佐天「お相手はっ、みんな大好き女子中学生の佐天涙子とぉ——」
上条「待て待て待て待てっ!ダメだっ!幾らやっつけ深夜番組でもここで終わるのはマズイ!?あとみんな大好きの使い方か間違ってる!」
佐天「でも好きですよね?」
上条「そんなイリーガルなアンケート取られた事はねぇよ!」
佐天「どうしましょうねー。放送第一回目から不良物件って、フザケてますね?ねっ?」
上条「あぁフザケてるよなっ!この物件をチョイスした奴がな!」
上条「ってうか選んだの佐天さんだよねっ?方法は調べなかったのか?」
佐天「あーーーー、いやネットでね、うん。ちょちょいっと、はい」
佐天「場所までは特定したんですけど、方法は何か曖昧だったんですよねー」
上条「……まぁ学園都市の中からここ見つけたのは凄いけどさ」
佐天「あー、はいはい!あたし良い事考えました」 パチン
上条「スッゲぇ不安だけど、一応聞くよ。何?」
佐天「色々試すってのはどうでしょう?」
佐天「そもそも誰でも両想いになれるんだから、方法は伏せられてて、それを見つけた人だけが……ってのは?」
上条「あー……まぁ、試してみる?」
佐天「はいっ!」
上条「……」
佐天「……プリーズ?」
上条「それも俺っ!?俺がするのっ!?」
佐天「お付き合いされている人居ないんですよね?好都合じゃないですか」
上条「居ないけどさ。佐天さんはどうなんだよ?」
佐天「残念っ!あたしには心に決めた初春がっ」 キリッ
上条「おいそれ卑怯だなぁ!?」
佐天「既に両想いですから?効果はありませんってば」
上条「俺カメラに映ってないってのに、どうして体張らなきゃいけないんだ!」
佐天「そこはそれ適正の問題もありますし。ほらっ、色々試してみて下さいよ」
上条「つってもなぁ、自販機だろ?ジュース買うとか、お金入れるとか、そう言う在り来たりの事な訳ねぇだろうし」
佐天「あっ、あたし分かっちゃったかも!」
上条「え、マジ?信じていいの?」
佐天「えーもうっ!この佐天涙子あなたのご期待を裏切りませんっ!」
上条「うん、今日君の信頼は俺の中で最安値を更新しているんだけど、言ってみ?」
佐天「まず携帯電話を取り出します。あ、アドレスから誰か好きな人を呼び出せるようにしておいて下さいね?」
上条「両想いになりたい人、特に居ないんだけど?」
佐天「だったら御坂さんで良くないですか?事情もご存じですし」
上条「倫理的に問題あるだろ!?つーかよくよく考えるとこのジンクスって、片方の都合無視の酷い話だよなぁ!?」
佐天「じゃ他の人にします?まさかっ御坂さんお嫌いですかっ?」
上条「いや、好きは好きだよ?でもなんつーか、こんな事を試すような事は良くないと思うんだよ」
佐天「でっすよねー。あれ、上条さんのケータイにドア○ついてますよ?」
上条「え、マジ?ド○ラ、どこでつけたんだろ?さっき中○ファンとすれ違った時かな?」
佐天「片手じゃ取りづらいでしょうから、あたし取ってあげますよっ」 パシッ
上条「あーうん、ありがと——」
佐天「ぴっ、と」 ピッ
上条「何してくれてんのっ!?」
佐天「……あー、お話中ですねー。んー残念っ!」
上条「強引にも程があるっ!しかも予告編から特定の意図が見え隠れしてねぇかっ!?」
佐天「気のせいですってばぁ」
上条「いいから返しなさい。ほらっ、口でぶーぶー言わないっ!」 パシッ
上条「……一応聞くんだけど、この後どうするつもりだったの?」
佐天「アドレスから呼び出せるようにして、いいですか?」
上条「うん」
佐天「で、次にお金を入れて——」
上条「『ジュースを買いながら電話で告白する』とか言わないよね?それだったら、一定確率で両想いになれるけども」
佐天「……」
上条「……」
佐天「噂に頼るなっ!自分でコクれっ!他人の力に頼るんじゃないっ!」
上条「番組全否定っ!?」
佐天「なんですかっ!なんなんですかっ!何が佐天さん巨乳説ですかっ!?」
佐天「あたしのおっぱいは未来の旦那様のもんだっ、他の奴には関係無ぇよバカーーーっ!!!」
上条「いや最後のはおかしい!しかもそれは噂話だっ!それと中学生が言うのは不穏当すぎる内容だからっ!?」
上条「落ち着け佐天さんっ!もうちょっと頑張ろ?な?」
佐天「うー……っ」
上条「その、さ。噂の出本とかそう言うの無いの?」
佐天「出本、ですか?」
上条「例えば最初はこれこれこう言う噂があって、段々変わってきたとか」
上条「そう言う原型が分かれば、どうすればってのも分かるかも知れないじゃん?」
佐天「あー、ですね。そうかもしれませんっ。調べてみます——『あ、もしもし、初春ー?』」
上条「……困った時の初春さん頼み……いや、良いんだけどね」
佐天「『あー——いやいや、あたしも愛してるって。言わせんなよ恥ずかしいっ』」
上条「カメラ目線でそれっぽい会話挟むのやめろよっ!?これ以上初春さんの評判を落とすのヤメテあげてっ!」
……
佐天「わっかりました!」
上条「……良かった。番組が辛うじて形になりそう」
佐天「まず、この自販機、何度か故障しているんですよ」
上条「へー……故障ねえ。それって珍しいの?」
佐天「こっち、横映して貰えますか?自販機から見て左側ですね」
上条「凹んでるよな」
佐天「はいっ、過去何回か器物損壊の被害届が出されているそうです」
上条「って言うかこれ——」
上条(御坂がいつも蹴り入れてる自販機だよね?)
佐天「ちみにこの公園、ホラホラ、あそことあそこっ」
上条「街灯……の、下には目立たないように監視カメラか」
佐天「はい。24時間監視しているんですが、その破壊活動の現場を抑えられていないんですね」
上条「ヘー、ソウナンデスカー」
佐天「何故か自販機が壊された時には、必ず監視カメラのシステムが落ちるんですって」
佐天「怪しくありません?わざわざ自販機凹ますのに監視カメラ切るなんて、労力と対価が見合ってませんよね?」
上条「そ、そうかな?ハッカー系の能力者だったら、イタズラ目的であるかも?」
佐天「しかもネットの書き込みではですね、『常盤台中学の制服を着た娘が、自販機へ蹴りを入れている』と言う目撃証言が寄せられています」
上条(おいバレてんぞ御坂っ!)
佐天「そう言った書き込みへ対し、『だったら何か願掛けでもしてるんじゃね?』的なレスがされまして——」
佐天「それがその内『あぁんじゃ、そんなしょーもない隠蔽行為までして自販機蹴ってんだったら、両想いでもなれんじゃねぇか?』と」
上条「思ったよりもいい加減なオチだよなぁ!?」
佐天「酷い話ですよね。そんなに能力高いんだったら、他の事に使えば良いんですよっ!」
上条「あー……佐天さんの口から常識聞くと、癒されるなぁ」
佐天「でもですね、その人本当に何のためにやってるんでしょう?本当に何かの願掛けかも知れませんよ」
佐天「逆にお願い?が叶った人が居て、他の人達が真似してるって可能性もありますよね?」
上条「いやー、そんなセキュリティに潜り込める人間は居ないだろうし、だったら一人の人がやり続けてるって事になるんじゃ?」
佐天「ですかねぇ」
上条「んで、同じ人がずっとやってるんだったら、少なくとも効果は出ていないって事だよな」
佐天「むー、ちょっと残念ですね。放置して一年ぐらい熟成させれば、きっと綺麗な実をつけていたのに!ですよねっ?」
上条「嘘と風聞を栄養に育った、中身の無いスッカスカな果実だと思うよ?」
佐天「という訳で第一回七大不思議は我々の勝利に終わりましたねっ!いえーいっ!」
上条「そんな内容だっけ!?」
佐天「不思議ハンター佐天涙子っ、また勝利してしまいましたっ」
上条「主旨変わってるよね?噂を潰す予定は皆無だったよね?」
佐天「あぁもう分かりましたよっ!もうっ!上条さんっ、そこ立って下さいっ!」
上条「もう何か嫌な予感しかしねぇんだけど……ここ?」
佐天「あたしの背景、自販機入ってます?おーけー?」
上条「ん、入ってる。大丈夫」
佐天「んじゃ——こほん」
佐天「——好きです!あたしと結婚を前提にお付き合いしてください!」
上条「嫌です」
佐天「……」
上条「……」
佐天「はいっ、と言うわけで『両想いになれる自販機』の噂は嘘でしたー!いやー、残念ですねぇっ!」
上条「力業っ!?強引にも程があるだろっ!?っていうかこれアリなら一分で収録終わったよね!?」
佐天「あなたと一緒に過ごした楽しいお時間もっ、そろそろお別れと相成りますっ!」
上条「終わりかっ!?こんなグダグダな終わり方で良いのっ!?スポンサーに怒られるよっ!?」
佐天「学園都市七大不思議探訪!来週もまたこの時間に佐天さんと会おうぜっ!ボクとキミとの約束だぁっ!」
上条「しかもこの終わり方だと俺、『佐天さん振った酷い奴』って認識されるよなっ!?なぁ佐天さん実は怒ってないかっ!?」
佐天「それじゃあ最後に合言葉っ、さぁテレビの前のみんなもご一緒にっ!」
佐天「うーいはーるんっ、愛してーるーぞーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 ブツンッ
——常盤台女子寮・深夜28時(早朝4時)
御坂「……」
御坂(早起きして見ちゃったけど)
御坂(『好きは好き』……『試すのは良くない』)
御坂「って事は……割と、真剣に……?」
御坂(……きゃーっ!?きゃーきゃーきゃーっ!?……) ポテッ
御坂「……」
御坂「……あれ?」 ムクッ
御坂(『両想いになれる自販機』って、つまり——)
御坂(『両想いに“は”なれる』けど——『告白が成功するとは限らない』って事よね……?)
御坂「……」
御坂(なーんか、地雷踏み抜いた感が……?)
上条(妄想)『俺は美琴を好きだ!そんな思いを誰かに試されたくない!』
御坂「」
御坂 コテッ(幸せすぎて気絶)
——学園都市七大不思議探訪 第一話 『両想いになれる自販機』 −終−
※読んで下さった方には多大な感謝を。駄文長文、失礼致しました
——学園都市七大不思議探訪 第二話 『トイレの時計屋』
——某高校校門前 16時30分
佐天「うっいっはるーーーー!愛っしてっるぞーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
佐天「さーて今週もやって参りました学園都市七大不思議探訪っ!お相手は先週に引き続きっ、ワタクシっ佐天涙子があなたをナビゲートしちゃいます!」
佐天「打ち切り上等っ、スポンサー凸やってみろコラっ!かかってコいや○田イミフと特定日○人っ!そんな感じで今日も無敵にやっていきたいと思います!」
佐天「あーでも、今日はあたしの姿が映ってないのがお分かりでしょうか?代わりに何処かの学校の校門の絵ですよね」
佐天「丁度今、放課後なので続々と生徒が帰宅していますねー。あ、あの人達手繋いでる」
佐天「いいですよねー、あーゆーのを見ると青春っ!て感じがしますね」
佐天 イラッ
佐天「あ、すいませんちょっといいですかー?」
女子生徒「はい?中学生?」
佐天「今どんなパンツ履い——」
上条「ちょおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっと待てやゴラアアアアアアァァァッ!?」
佐天「チッ」
上条「何やってんのっ!?ねぇキミ人の学校の前で何やってんのっ!?ねえぇっ!?」
佐天「おはようございまーす上条さんっ。視聴者の皆さん、この人が学園探訪のカメラマンの人です。今一パッとしませんよねー?」
上条「俺の事はどうでも良いっ!それよっか今何やらかそうとしてやがった!?一発で放送免許剥奪されるような事しようとしてなかったかっ!?」
佐天「いや、あたしは別にいつもしてますもん」
上条「君達のプレイで常識を測るなっ!後初春さんに謝れって!」
佐天「さーせん」
上条「あぁもうハラ立つっ!いーからこっち来いっ!」
佐天「えー、折角高校なんですからオープニング、校門前で撮りましょうよー」
上条「今のやりとりのどこに流せる部分があった!?」
——体育倉庫
佐天「へー、ここが体育倉庫ですかー?ウチの中学とそんなに変わりませんねー」
佐天「で、何です?珍しいモノがあるから、佐天さんにも見せてあげたいって……言ってました、よね?」
佐天「——えっ!?上条さん、右手に持っているの、カメラですか?あぁ、見せたいのってそれですかー。あはは、だったら別にこんな所にまで来なくたって——」
佐天「ちょっ、すいません。目が怖いですよ?えっ?今なんて——」
佐天「『ここの体育倉庫は、誰も来ない』?そんな情報もらっても、誰も嬉しくな——」
佐天「『まずは俺の幻想殺しをペロペロして貰おうか?』いやだなー、あたしそんな冗談言う上条さん嫌いですよぉ。ねっ?」
佐天「近寄らないで下さい!そ、それ以上こっち来たら、あたしっ上条さんと絶交しますからっ!」
佐天「ちょっ!いやっ!?誰かっ、誰か助けてっ!?」
佐天「ダメっ!?あたしが肌を見せるのは将来の旦那様だけなんですからっ!」
佐天「っくぅ!?」
佐天「殴らないでっ!もう殴られるのヤですっ!……あたし、言う事、ききますからっ」
佐天「お願いですっ!殴るのだけは——」
上条「いい加減に小芝居するのやめろよっ!?つーか演技がリアルすぎて引くわっ!」
佐天「え、でもあたしを連れ込んで乱——」
上条「しねーよっ!そもそも普通の学校に使われてない体育倉庫なんて無いよっ!取り壊すもの!」
上条「つーかカメラ横に動かせば、陸上部の人らが『コイツら何やってんだろう?Vシネ?むしろお前死ねば?』って目で、ハードルと棒高飛びマット用意してるんだからなっ!」
佐天「Vシネと死ねばってかかってますけど、面白くないですよ?」
上条「ウルセエよっ!?そもそも今の絵をテレビで流せる訳が無いだろっ!?」
佐天「でもここからが良い所だったんですよ?まずは『お口で満足させたら最後までしないかも?』とか言ってしゃ——」
上条「それ以上言うなっ!?公共の場で使っていい内容じゃないよねっ!」
佐天「えー、折角チュ○音勉強してきたのにー」
上条「ねぇ佐天さんこの間も言ったけど、君あんまり頭良くないよね?義務教育ナメない方が良いよ?」
佐天「き、聞きますか?あぁでもやだっあたし恥ずかしいですよぉっ!」
上条「照れるならしなきゃいいだろうがよぉっ!?ねぇ佐天さん、君は俺の事をどういう目で見ているの!?」
佐天「釣った魚に餌を与えず飼い殺すク×ヤロー」 グッ(中指を立てる)
上条「心当たりは全くないけど妙に心が痛いなその言葉っ!心当たりはないんだけどもっ!!!」
佐天「謝って!御坂さんに謝って!」
上条「いやあの、俺はあいつの事助けたし、貸し借り的にはむしろ貸してる方かなー、なんて?」
佐天「お買い物すっぽかしたり、スキルアウトとやり合わせた御坂さんにゴメンしなさいっ!」
上条「ごめんなさい御坂さんっ、いつもありがとうなっ!」
上条(でもスキルアウトじゃなくって猟犬部隊だったっけかな?)
佐天「『愛しているぞーーーーーっ!御坂ーーーーーっ!』」
上条「言わないよ?俺、こないだ各方面からものっそい怒られたんだからね?そもそもご本人様から問答無用で超電磁砲食らったから」
佐天「んー、照れ隠し的な奴じゃないですかねー?好きな子には意地悪したくなるってヤツ?」
上条「死ぬからっ!俺以外の人間にアレやったら即死だからっ!」
上条「って言うか佐天さん何で来たの?学園探訪の撮影ってのは分かるけど、俺聞いてないよね?」
佐天「きちゃった、てへ」
上条「……そろそろ突っ込みすぎて喉枯れそうなんだけど、話して貰っていいかな?」
佐天「『トイレの時計屋』って怪談知ってます?」
上条「花子さんとか赤マントとかだったら知ってるけど、初めて聞いたよ。つーかマットに座ろうぜ?」
佐天「何かセーラー服でマットに腰掛けるって、イメージビデオ風になってません?ちょっとアイドルみたいで恥ずかしいですよっ」
上条「うん、君はもっと別な所を恥ずかしがるべきだし、そこら辺のアイドルより可愛いけどもさ」
佐天「はいっ?」
上条「で?時計屋さんってどんな話?」
佐天「——え?えぇえぇ、えっと、そうですねっ、最初は共働きが良いですっ!」
上条「え?」
佐天「え?」
佐天「いやいやいやっ!あの——何の話でしたっけ?」
上条「『トイレの時計屋』の内容。また調べてないの?」
佐天「あ、いえいえっそれは大丈夫です。あの後初春にものすごく怒られまして」
上条「そりゃあんだけ名前連呼されてりゃなぁ」
佐天「あぁいえ、『下調べもせずに行くとは何事だ』、と」
上条「そっち!?そっちでいいの?怒らなきゃならない所いっぱいあったよな!?」
佐天「諦めてるんじゃないんですかねー、あっはっはっはー」
上条「反省しよう?もうちょっと人生振り返ろうぜ?」
佐天「媚びぬっ!引かぬっ!……あー、後何でしたっけ?」
上条「俺に振るなよっ!?」
佐天「いえすっロリコ×っ、のー?」 ハイタッチ?
上条「知らねぇよ!どっから覚えたその言葉っ!?」 ノーハイタッチ!
佐天「だもんでリサーチは初春から☆三つ頂いてます、はい」
上条「へー、頑張った。偉い偉い」
佐天「えへへっ、どうですかっやれば出来るんですよっ」
上条「んでさっきから気になってる、時計屋の話ってどんなの?俺は知らないけど、実は有名だったり?」
佐天「いや知らなくて当然かと。興味を持って調べなければ分からないと思います」
佐天「『昔々、この学校に寮があった頃のお話です』——って感じですかね」
上条「……続けないの?怪談ぽい出だしだけど」
佐天「やー、あははー、いやほら多分無理なんじゃないかなー、なんて思ったりして」
上条「何で——」
黄泉川「かーみーじょーおー?」
上条「でっすよねー、普通こうなりますよねー?」
佐天「助けて下さいっ!?あたしっ、あたしっ!」
上条「一瞬で裏切りやがったな!?って言うかその設定まだ生きてんの!?」
黄泉川「ちょぉぉっと生徒指導室まで二人とも来るじゃん?」
佐天「え、いやあたしもですか?あたしは被害者的なあれですし?」
上条「嘘を吐くなっ嘘をっ!」
——生徒指導室 19時
佐天「昔々、この学校に寮があった頃のお話です。当時はまだそれが『寄宿舎』と呼ばれていた時代」
黄泉川「明治から大正にかけて、大学や高校はおっきな街や都会にしかなかったじゃん」
黄泉川「だから地方からの学生は親元を離れ、全寮制の学校が殆どだったじゃんよ」
佐天「ある男性寮へ泥棒が入った所から始まります」
佐天「寄宿舎は親元を離れた学生で一杯。仕送りで貰ったお金や時計を持ってるだろう」
佐天「盗みに入るのは絶好の場所だ、と泥棒は考えました」
上条「時計って昔は高級品だったんですか?」
黄泉川「そこそこ安いのもあったじゃんが、大抵親からは『苦しくなったら質屋へ入れなさいね』って言い含まれてるじゃん?」
黄泉川「仕送りだってATMがある訳で無し、振り込んでから引き落とせるまで、郵送されてくるまでは何日もかかるじゃんよ」
佐天「泥棒はお金や時計をたくさん盗みました。けれどもそこは若くて大勢の男の人達が居る寮です」
佐天「泥棒は見つかってしまい、トイレの個室に隠れるしかありませんでした」
佐天「当然、学生達は泥棒を捜します。押し入れ、使っていない部屋、そして——泥棒が隠れているトイレまでやってきました」
佐天「学生の一人はこう言いました——『時計だ!時計の音がするじゃないか!』」
佐天「そうです。泥棒は沢山の時計を盗んだため、その秒針が、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と煩い音を立てていました」
佐天「一つ一つなら小さく、誰も気付かなかった音ですが、沢山盗んでしまったお陰で泥棒の居場所を教えてしまったのです」
佐天「学生達は泥棒を怒鳴りました——『おい、出て来い!』」
佐天「本来であれば警察を呼び、逮捕して貰うのが一番だったのでしょうが、生徒達はまだ若い未熟な学生ばかり、泥棒をなじる声は続きます」
佐天「『殺される!』——そう思った泥棒は出て来ません。生徒達は乱暴に泥棒の籠もっている扉を叩き続けました」
佐天「どんどんどんっ、どんどんどんっ」
佐天「一時間ぐらい経って警官が駆けつけました。警官は異常に興奮している生徒達を宥め、泥棒に大人しく出て来るように呼びかけました」
佐天「しかし泥棒からの返事はありません。トイレには、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と言う秒針の音だけが響きます」
佐天「警官は仕方が無くドアを壊して個室へ入ってみると、そこで見たモノは——個室で首を吊って死んでいる泥棒の姿でした」
佐天「両腕にいっぱいの腕時計を巻き付けたまま、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と言う音をさせながら」
佐天「それ以来——泥棒が死んだトイレではね、聞こえるんですよ。そう、丁度こんな夜には、ね」
佐天「誰も居ない筈の個室から、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ってね——」
上条「……」
上条「えっ?」
佐天「以上が『トイレの時計屋』さんのお話ですね」
佐天「でも時計をつけていない相手には姿が見えないとか、派生する噂話は結構ありますなー」
上条「いやいやいやいやっ!主旨違くないか!?もっとこう、ダラダラっとした企画じゃないのか!?」
佐天「いえ、だから段々と怖くしていくぜって話しましたよね?」
上条「聞いたけどさ。何か予想以上に真面目、つーか怖いって言うか」
佐天「いやーでもマシな方ですよ?何には巻き込まれたら100%死ぬ怪談とかありますし?えっと——『午前4時44分44秒の4つ辻の死神』が有名ですね」
上条「え?それはしないよね?」
佐天「この佐天涙子に逃げの二文字は無いっ!」
上条「逃げてないよっ!?むしろ必要のないトラブルに首突っ込んでいるんだからねっ!」
黄泉川「——いや、まぁ大体の事情は分かったんだけど、それがどうしてウチの高校に繋がるじゃんよ?」
佐天「よっくぞ聞いてくれました!それはですねっ、この高校が建っていた場所には、昔高校が建っていたんですよ」
黄泉川「あー……聞いた事あるじゃんよ。20年ぐらい前に校舎を建て替えた、って話じゃん」
佐天「はいっ!」
上条「……」
黄泉川「……」
佐天「……はい?」
上条「いやいや、続きは?」
佐天「いえ、それで全てですが?」
上条「じゃあ何で来たのっ!?普通噂の原因となるような何かがあるとかっ、そう言う理由じゃないのっ!?」
佐天「——はい、と言う訳で学園都市七不思議探訪第二話、『トイレの時計屋』、皆さん如何でしたでしょうかっ?」
上条「だからっ!勝手に締めに入るんじゃないっ!もうちょっと頑張ろうぜ、なぁ!?」
佐天「今日は特別ゲストとして黄泉川先生をお招きしましたっ。あ、一言お願いします」
黄泉川「あー……よい子は早く帰るじゃん」
佐天「『——で、ないとあなたの隣にぽっかり口を開けている、奇○な物語に巻き込まれてしまうかもしれません』ですかっ!ナイスなコメントありがとうございますっ」
佐天「ちゃっちゃっちゃっちゃっ、ちゃっちゃっららー」
上条「三倍以上盛った上に、タ○さんのパクリはやめろっ!○妙なテーマも歌うんじゃないっ!——っていやいやっ、これで終われるかっ!」
上条「と言うか、なに?何となくウチが古っぽい学校だから、取材に来たの?」
佐天「いやー、大体怪談のルーツなんて早々見つかる訳が無いじゃないですか?」
佐天「そもそも、こう言う噂ってのは特定の学校だけでなく、地域に跨って語られる訳ですし、無作為に選んだ方がいいかなー、と」
佐天「と言いますか、100%出現する怪異なんて居ませんってば」
上条「……言ってる事は分かるんだけども、せめてそれだったらさ、『○○が評判になってる学校』ってのを調べて、取材した方が良いんじゃ?」
佐天「!?」
上条「いやいやいやいやっ、そんな『天才かっ!?』みたいな顔されてもだなっ!」
上条「つーかよく初春さんオーケー出したなぁ。もしかして俺が知らないだけで、あの娘も実はアレだったりするの?」
佐天「『もう何か上条さんが、適当に突っ込んでくれれば良いんじゃないですかー』って」
上条「初春さんにも投げられたって事か!?☆三つの話はどこ行った!?」
佐天「ノリで言いましたっ。反省はしてませんっ」
上条「ものっそい良い笑顔で嘘を吐くなっ!」
黄泉川「あー……お前らそろそろ帰るじゃん?」
上条「先生っ!お願いします、こんなグダグダじゃあ終われませんからっ!」
黄泉川「トイレでも撮って帰ればいいじゃん?」
佐天「開かずのトイレとか、そーゆーのありませんかね?出現率アップすると思いますっ」
上条「いやそんなレアドロップするモンスターみたいに言われてもな」
黄泉川「あるじゃんよ、確か」
上条「あったよオイ!?——って、もしかして特別教室最上階の?」
佐天「よっしそこだっ行きましょう!ごーごーっ!」
黄泉川「待て待てそう言うんじゃないじゃん。場所が悪いから使わないし、使わないんだから掃除するだけ無駄だって鍵掛けてあるじゃん」
佐天「えーっ!?じゃ、じゃあじゃあ鍵だけでも見せてくださいっ。お願いしますっ」
黄泉川「いやー、なんかオチ見えたじゃん?」
上条「(お願いしますっ!汲んで上げて下さいっ、俺も早く帰りたいんです)」
黄泉川「……これが鍵じゃん」
佐天「へーそうなんですかー。あ、黄泉川先生、鍵のストラップにトラッキ○ついてますよ?」
黄泉川「え、トラッ○ー?あっ、さっき阪○ファンと殴り合った時についたじゃんよ」
佐天「あたし取ってあげますよっ——って、カギっ、とったどおおぉぉぉぉっ!」 タッタッタッタッ(遠ざかる足音)
上条「……今の流れ、要るか?挟む意味あるのか?」
黄泉川「まぁ本人が満足するならいいじゃんよ」
上条「満足、しますかねぇ?」
黄泉川「……」
上条「……取り敢えず追い掛けてきます」
黄泉川「あ、正面玄関締めたから、帰る時は一声掛けるじゃんよー?」
上条「うっす」
——特別教室最上階・封鎖されたトイレ 19時30分
佐天「はいっ、と言う訳で来ちゃいましたっ!ここがこの高校の『開かずのトイレ』ですっ!」
佐天「……」
佐天「……いやなんかこう、やっぱ一人で来ると怖いっていうか——」
佐天「いやいやっ入りますっ!それがあたしのお仕事ですからっ!」
佐天「……」
佐天「……よっし!」
佐天「あ、電気——」 パチッ
パチッ、パチパチッ
佐天「電気、着かないんですね。真っ暗、です」
佐天「LEDライトをっ、取り出しまして——あぁすいません、カメラを夜景モードにっと」
佐天「……」
佐天「見えますね。さっすがTATARAのR3D3ビデオカメラはいい性能ですっ!」
佐天「心霊スポットに行く際には、是非お供にっ!」
佐天「……行きませんよね、普通は。すいません今ちょっとツッコミ役が不在でして」
佐天「んじゃまぁ、あたしは行きますっ」 ギギイィッ
佐天「——って何これっ!?湿っぽっ」
佐天「あー……ご覧下さい皆さんっ、天井、壁まで水滴が一杯ですねっ」
佐天「もの凄く、湿度が高いですね。ムシムシとしてて、なんか、ちょっと、いい気分はしませんね」
佐天「外よりも暑い感じですかね?」
佐天「ぬるめのサウナへ入ったみたいな?外よりも気温が高くて、水っぽいと言いますか、湿っぽいと言いますか」
佐天「あー、窓閉まってますし、換気扇も回ってない、か。なるほどー、それじゃジメジメもするってもんですよね、えぇ」
佐天「ってかここ男性用トイレか。あたし初めて入りましたがっ感動はありませんねっ!」
佐天「……」
佐天「個室の方は、これで閉まってたら大当たりなんですが、そう言う話でも……大丈夫、全部開いてますっ、せふせふっ」
佐天「んじゃちょっと、一番手前に入ってみましょうか」 ギギィッ、パタン
佐天「中もまぁ普通の洋式です。汚れが無くってむしろ新品同様です」
佐天「あー、表面にちょっと埃が積もってるかも?指でつー、ほらっ、姑さんが嫁いびりで使うようなアレをすると、ちょっと指先が黒くなります」
『……』
佐天「ほらほら、見えますかー?」
佐天「一応便座上げた方が良いんでしょうね?えーっ、何か気乗りがしませんが、えいやっ!」
佐天「……」
佐天「……目、開けても良いかな?大丈夫?オバケ、居ないよね?」
佐天「——っ!……ってなんだ、いませんいませんっ!居たら怖いですってば!」
佐天「いっやーもう何だ驚かせてくれちゃって何なんですかっもぅっ!あたし実は結構恐がりなんですけどっ!」
佐天「ぬあーっ!何か今頃になって恥ずかしさがヒシヒシとっ!ありません、そーゆー思い出し恥ずかしがり?」
佐天「何かこうっ、あん時あーしときゃ良かっただの、偉そうな口きいたりだのっ、テンション上がって家帰って『うぎゃああぁぁぁっ!?』みたいなの」
佐天「何つーか今も、というか今日も——」
『……ッ……』
佐天「……あれ?なんか聞こえませんか?」
佐天「い、いやいやいやっ、まさかタイミング良く『トイレの時計屋』さんが来るなんては、無いっ。無いですってば」
佐天「……」
佐天「ほら、ねっ!やだなーもうあたしったら、恐がりなもんで聞き間違えちゃ——」
『……チッ……』
佐天「——っ!?え、今」
『……チッ…………ッ』
佐天「秒針の音、じゃないけどっ!え、え、何でっ!?何、何っ!?」
『……チッ………チッ……』
佐天「どうしてっ、さっきまで、聞こえなかったのにっ!?」 バタンッ
佐天「……」
佐天「誰も、居ない、よね?」
『……チッ……』
佐天「隣の、個室、からだよね……?」
ギギギィッ
佐天「誰も居ない、けど」
『……チッ……』
佐天「っ!?最初にあたしの居た個室からっ!?」
『……チッ……チッ……チッ……チッ……』
佐天「いや違うっ!?これ、移動、してる、の……?」
『……チッ、チッ……チッチッチッ……』
佐天「や、やだっ!?こっちに来ないでっ!」
佐天「だめ、やだっ!助けてっ、誰か——」
『……チッチッチッチッチッチッ……』
佐天「助けてよぉっ!?——上条さんっ!!!」
『チチチチチチチチチチチチチチチチッ——』
——特別教室最上階・ 19時40分
上条(夜の学校って結構雰囲気あるなー。昼間煩いもんだから、余計にか)
上条(つーか一人で突っ込むなんて勇気あるよな、佐天さん。廊下のあちこちに非常灯あるからそこそこ明るいけど)
上条(おっ、あそこだったよな。あれが——)
佐天「『——上条さんっ!!!』」
上条「佐天さんっ!?——待ってろ、今行くっ!」
上条(しまった!『アタリ』なのかっ!?)
上条(魔術師連中が居るって事は——もしかしたらっ『それ以外』も居るかもって事か!)
上条「佐天さんっ!俺だっ!どこだっ!?」
佐天「か、上条さんっ!?ほ、本物ですかっ!?」
上条(個室の中から声?閉じこもってるのか?)
上条「いや、他にいないだろうっ!それより今の悲鳴っ!」
佐天「あ、あたしの事どう思ってますかっ!?」
上条「ちょっと頭が良くない子だと思ってる」
佐天「本物だっ!」 パタンッ
上条「どんな確かめ方だっ!?っておわっ」
佐天 ガシッ、ギュッ
上条(こんなに震えて……何があったんだ?)
佐天「あ、あのっ、あたしっ!ごめんなさいっ、あのっ!」
上条「あーうん大丈夫だ。俺がついているから」
上条「何も言わなくていい。このまま落ち着くまで、こうしているから、な?」 ナデナデ
佐天「……はい」
『……ちっ……』
佐天「上条さん今のっ!?」
上条「何か、聞こえたなぁ。確かに」
佐天「ダメだって!『トイレの時計屋』さんかも!」
佐天「『時計屋』から派生する噂は幾つもあって、中には姿を見たら死んじゃうとかっ!」
佐天「時計を盗まれたら、寿命が減っちゃうんだからっ!」
上条「——大丈夫だ」
佐天「へっ!?いえっそうじゃなく——」
上条「『時計屋』だろうが、何だろうが——」
上条「佐天さんに手を出そうとした奴は、俺がぶん殴る!だから大丈夫だっ」
佐天「そうじゃなくって!ヒトじゃ多分無理——」
上条「やってみなきゃ分からないだろ?逃げる時も必要だとは思うけど、今はそうじゃない」
上条「何が『時計屋』だ。俺がぶん殴ってきた連中に比べれば相手にもならねぇよ」
上条(一方通行に比べたらどうって事はないし)
佐天「そんなっ!?デタラメだよ……」
上条「——後な、佐天さん。俺は佐天さんにも怒ってんだよ」
佐天「え、えぇっ!?あたしなんか、悪い事しました、っけ?」
上条「暗くなったら俺の側離れるなって、最初に約束したよな?」
佐天「あっ……」
上条「だからもう離れるな。そうすりゃ誰が来ようが守ってやれんだから、なっ?」
佐天「……はいっ!」
——特別教室最上階・封鎖されたトイレ 19時50分
『……チッ……チッ……』
上条「——に、しても聞こえるなぁ。何の音だ、これ?」
上条「無害だけど、音の出所が中々掴めない、つーか移動している?間隔も一定してない?」
上条「ここで佐天さん撫でててもしょうがないし、一度外に出よ——佐天さん?」
佐天「……」 ボーッ
上条(震えは止まったけど、何か様子がおかしい?)
上条「おーい佐天さーん?聞いてる?」
佐天「子供がおっきくなったらパートに行きますっ!」
上条「えっ?」
佐天「えっ?」
上条「混乱しているのは分かるけど、何の話?」
佐天「あ、明るい将来設計、的な?」
上条「うん、俺には関係無いよね?」
佐天「ありますってば!……あっれー……?無いです、よねぇ?」
上条「いや、そうじゃなく一旦外に出よ——って冷たっ!?」 ポツッ
佐天「上条さんっ!?」
上条「あぁいや大丈夫、つーか何?水滴?」
上条「……あ、もしかして——ちょっと佐天さん離れて貰えるかな?」
佐天「嫌ですよっ!」
上条「いや、正面からハグされてると、身動き取れないだけども。あーんじゃ、左手掴んでて?」
佐天 ガシイィッ
上条(コアラが木にしがみつくような感じ……あ、『佐天さん巨乳説』って意外と——)
上条(って相手は中一だっ!ちょい前までランドセル背負ってたんだぞ!)
佐天「ど、どうしましたっ?この体勢イヤなんですかっ!?」
上条「……自分に嫌気がした、ってのが正しいけど——まぁ、このまま移動しよう。一回外へ」
佐天「はいっ」 スタスタッ
上条「どう?暑い?寒い?」
佐天「いえ、どちらでも、と言うか中と同じですけど」
上条「んじゃさっきさ、トイレに入った時どうだった?」
佐天「ジメっとしてて、ちょっと暑かったです」
上条「分かった、音の正体」
佐天「ホントですかっ!?」
上条「ん、水滴。天井からの」
佐天「……はぁっ!?いや、そんな訳無いですってば!」
上条「何で?そもそも水道から水漏れした時の『ポチツ』って音に聞こえないか」
上条「台所のシンクとかに当たると高い音が出るけど、タイルとかだとくぐもった音になるしなぁ」
佐天「だってあたしが最初に入ってすぐは、音はしなかったんですよっ!?だったら——」
上条「雲の出来る方法って習った?」
佐天「えっと……冷たい空気と暖かい空気が交わって、って奴ですよね?」
上条「うん。このトイレは閉じられていたから、吹き抜けになってる廊下と違って、温度の変化があんまりなかったみたいなんだよ」
上条「最初に入った時、ムワっとしてなかった?」
佐天「してましたっ!」
上条「そこへ佐天さんがドアを開けたから、外の冷たい空気が入り込んで、水滴がついたのが大きくなったと」
佐天「それでポタポタ落ちてきた、ですか……?」
上条「っていう推測だけどね——ってどうしたの?」
佐天「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
上条「ちょっ!?」
佐天「何ですかっ!何なんですかっこのオチはっ!?」
佐天「怪談はっ!?七不思議はっ!?都市伝説はっ!?」
佐天「『幻想殺し』で壊してどうするんですかっ!?」
上条「俺の責任っ!?悪いの俺かっ!?」
佐天「あーもうっ!『トイレの時計屋』さんのネタバレしちゃったじゃないですかっ!一体どうやってこの責任取ってくるんですかっ!?」
上条「いや、まぁ、ごめんなさい?」
佐天「いーえっ駄目ですっ!罰ゲームを要求しますっ!」
上条「俺関係無いよねっ!?つーかウヤムヤにしなかったんだから、誉めてくれたって良いんじゃないかなっ!?」
佐天「——っという訳で!上条さんはあたしんちまで送り届ける罰ゲームが発生しましたー!はくしゅー」 パチパチ
上条「いや、送れって言われなくたって送るよ?」
佐天「へっ?」
上条「いや八時過ぎに一人で歩かせるのは可哀想だろ?今日怖かったかも——って痛い痛いっ!?」ペチペチペチペチッ
佐天「何なんですかっ!もうっ!もうもうっ!」
上条「あーうん俺が悪かったら!さっさと帰ろうぜ、な?」
佐天「……さっきの事言ったら酷いですからね?」
上条「実は結構恐が——痛い痛い痛いっ!手の甲をちぎるのは地味に痛いからっ!?」
佐天「むー……」
上条「俺、鍵出して。締めるから——よしっと」 ガチャンッ
佐天「あー、何か疲れちゃいましたねー」
上条「先生が一回職員室まで顔出せつってたから。取り敢えずそっちまで行こうぜ」
——廊下
佐天「……あれ?」
上条「どうした?忘れ物?カメラ——は、持ってるしな」
佐天「あ、そろそろバッテリー切れそう。いっか、切っちゃえ」 ピッ
上条「エンディング撮らなくて良いのかよ」
佐天「いっやーテンションがもう上がりませんって。つーか疲れちゃいました」
上条「明日にでも、もう一回撮る?」
佐天「面倒なんで帰りに校門の前でちゃちゃっと撮っちゃいましょう。10分ぐらいはありますし」
上条「他に忘れ物してんの?」
佐天「あー、いえいえそう言うこっちゃないんですけど、ふと気になったんです」
上条「え、なに?実はあそこにはトイレがなかったとか、そういうのはヤメロよっ!」
佐天「ちょっ!止めて下さいよっ!あたしだって苦手ですってば!」
佐天「いえそう言う事でなく。あたし、上条さん呼びましたよね?」
上条「あー、そうだな」
佐天「何であたし上条さん呼んだんですかね?いつもならパパー、ママーとか、ういはるーとかなんですけど」
上条「俺が近くに居たからだろ。つーかその面子に入れる初春さん凄ぇな」
佐天「です、よね?深い意味なんてありませんよね?」
上条「俺に聞かれてもなぁ。疲れた、さっさと帰ろう」
佐天「何かもうあたしテンション上がりませんてば。あー怖がりすぎて疲れたー」
上条「いや、やっぱ怖がってんじゃん」
佐天「こ、怖がってないよっ!普通だもんっ!」
上条「あーはいはい、良かったですねー」
佐天「きーいーてーくーだーさーいーよおっ!」
上条「地味に痛いから手をつねるのは止めろって!?」
——常盤台女子寮・深夜27時57分
佐天(TV)『来週もまたっ、ボクと一緒に冒険しようなっ!』
上条(TV)『覚えよう?君はもうちょっと懲りる事を覚えような?』
佐天(TV)『では皆さんご一緒にっ、勇気の出る合言葉っ』
佐天(TV)『うっいっはるー、愛っしてっるっぞーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』 プツンッ
(TV)【エンディング・テーマ −黄昏時のレイライン−】
御坂「……」
御坂(お、思ったより、怖かったわね!いやっ、怖くないけどっ!)
御坂(つーか佐天さんのリアクション凄かったわねー。台本とかあるのかな?)
御坂(中盤から佐天さん視点でカメラ回ってたから、なーんか、こう、あいつに守って貰ってるみたいな……)
御坂(ぎ、疑似デート感覚、みたいな……?)
御坂「……」
御坂(ぎいにゃああぁぁぁぁぁぁっ!?アーカイブっ!アーカイブ永久保存しないとっ!?) ポテッ
御坂「……」
御坂(でもさ、寄宿舎って事はよ) ムクッ
御坂(明治から昭和ぐらいのお話なんだから、当然水洗トイレじゃないわよね?)
御坂(って事は当時『ちっ、ちっ、ちっ』って聞こえたのは、水滴が原因じゃない訳で)
御坂(『トイレの時計屋』の音の正体も別にある、と?)
御坂(……そもそも佐天さん、最初に鍵開けたっけ……?)
御坂(なーんか気持ち悪いモヤモヤが残るん——)
上条(妄想)『俺の側離れるなって約束したよな?』
御坂「」
上条(妄想)『もう二度と離れるなよ?そうすりゃ誰が来ようが一生お前を守ってやれんだから!』
御坂 コテッ(幸せすぎて気絶)
——特別教室最上階・封鎖されたトイレ 27時59分55秒
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
『ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん』
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
——学園都市七大不思議探訪 第二話 『トイレの時計屋』 −終−
——学園都市七大不思議探訪 第三話 『一人多い』
——某駅前の喫茶店 18時30分
フレンダ「おっはろーっ!いっやー今日は大変だったわよ、つーか新型の爆導テープが不良品でさぁ」
上条「お疲れー、どったの?」
フレンダ「いやー、それが電気流してもBomb!しない訳よ。その代わり足で踏んだら爆発したから、右足持って行かれるかと」
絹旗「まぁ爆発オチとしては超インパクトが足りないですかね。もっと派手に行かないと」
滝壺「がんばれー、だいばくしょー」
フレンダ「人の不幸がお笑い品評会にっ!?」
麦野「いいから座りなさいな」
フレンダ「いいもんっ。あっ、てっんいっんさーん、季節のスイーツ全員分くださーい!」
麦野「あ、こらまた勝手に」
フレンダ「えー、たまにはみんなで同じの食べる訳。ねー?」
滝壺「ねー……」
上条「お前ら仲良いな。もう結婚しちまえよ」
フレンダ「するもんっ。ねー?」
滝壺「一生はウザい……」
フレンダ「裏切られたっ!?」
麦野「レーガンの取り巻きみたいに、百合百合しくするのは止めなさいな」
絹旗「いえ、あそこ咲いているのは超一本分という噂ですけど」
麦野「だとしてもその咲いてる一本が、巨大なラフレシアなもんだから、周囲から『あれ?なんか臭うわよね?』ってドン引きされてるんでしょうよ」
フレンダ「レーガンが第五位?と仲が悪くって、それで孤立してるって話も聞くけど、裏にはそう言う特殊な事情があった訳かっ」
滝壺「じょしこうでは、よくある事……」
上条「いやー御坂は良い娘だと思うぞ?喧嘩っ早い所も大抵は人のために怒ってるしな」
フレンダ「そんなにミサカミサカ言うんだったら、ミサカさんちの子になればいいじゃないっ!」
上条「しねぇよ!?小学生みたいな煽りは止めろっ」
絹旗「レベル5でお嬢様、中々の優良物件だとは思いますけど。超倍率高そうですしね」
上条「でもまだ中二だろ?女友達と遊んでた方が楽しいって感じじゃないのか」
フレンダ「あー分かる分かる。『気を遣わなくて楽っ』とか思う訳」
絹旗「そうすると、えっと……レ×子さん?も、格好良い同性に超憧れているだけかもしれませんね」
上条「いやー白衣のアレは、なぁ?うん、まぁ」
フレンダ「結局くっついたら笑う訳よ」
絹旗「あー、ありそうですね。何処かの誰かに超片思いしつつ、告白するタイミングを逃してズルズル来ちゃって」
滝壺「気がついたらへんたいしか残ってなくて……」
上条「性格がサバサバしてっから、ンな事はないと思うけど。さっさと告白するんじゃないか?」
絹旗「ないない、超あり得ません。ああいうタイプ程、こと色恋沙汰に関しては超奥手だと思います」
フレンダ「あたしもそう思う訳。だって少しだけど『レーガン×ズ説』が上がってる訳でしょ?」
フレンダ「普通はちょっと距離を取ったり、そんな態度を取らないように注意するじゃない」
絹旗「でも超出来ないって事は、人と人の距離感が上手く取れないんですよね」
上条「いやいや。流れている噂自体、多分悪意とか面白半分だと思うぜ?」
上条「白衣の性癖がどうであれ、二人は親友なんだからその見方も穿ちすぎだと思うけどな」
絹旗「でも実際超どうなんでしょうね?それが異性——じゃなかった、同性へ対する超憧れだとしても、逆に周囲からは『えー』って見られますし」
フレンダ「本当に好きな相手だったら、相手が世間からハブられないように配慮する、って訳?」
絹旗「まぁ早々に超カミングアウトして、周囲から公認されるのも手でしょうがね」
上条「でも結局さ、御坂が現状を良いっつってんだから、関係無い外野が口を出す事じゃないだろ?」
フレンダ「あー、やっぱレーガンルート狙いか!そんなのあの発育途中の胸が好きかっ!」
上条「真面目な話だろっ!?ってか人ンちの話じゃねぇ、えっと——」
絹旗「『俺の絹旗がこんなに超可愛いわけがない』?」
上条「そうそうっ!嫌な妹だと思ってたんだけど、実は内心慕われててさ——って誰だよっ!?知らないし名字も違うからなっ!」
フレンダ「てかあのお兄ちゃんただの変態よね?あたしだったら桐○に腹パンして終わってるし」
滝壺「あくまでもふれんだのいけんであり、わたしたちはいっさい関知しておりません……!」
フレンダ「予防線を張られた!?」
絹旗「主人公が他の女の子とくっつけない理由として、超重度のシスコンなので、まぁ方向性としては正しいと思いますけど」
上条「いやそうじゃなくってだな。馴染んでる場合じゃなく——」
絹旗「『六畳間のフレンダ!?』?」
上条「あの作品を汚すんじゃねぇっ!?かかってこい!健○先生の敵は俺の敵だっ!」
フレンダ「ゆり○必要、かな?もう真○ちゃんでいいんじゃ?」
上条「……」
絹旗「あ、超黙りましたね」
フレンダ「多分あの話の流れだと、フォルトー○と地球人とのルーツは同じでしたー、ってオチになると思う訳」
滝壺「でもふれんだのイジられ方は、ゆ○かと同じ……?」
フレンダ「必要よねっ、うん!ムードメーカーだものっ!ゆり○っ、ふぁいおーっ!」
上条「……もう面倒だから色々スルーするけど、『一人多い』っていう話知ってる?」
フレンダ「何の話っ何の話っ?」
絹旗「都市伝説、あぁいえ超怪談寄りのお話でしょうか?」
フレンダ「へー。『エイズ・メアリー』とか『スリーピィ・ホロウ』みたいな訳?」
絹旗「どっちかって言えば超前の方ですね。そんなに長い話でもないし、元ネタがある訳じゃないでしょうし」
上条「まず一番有名なのは……例えば、みんなで心霊スポットへ行ったとするよな」
滝壺 ジーッ
上条「ん、どした?俺の顔になんかついてる?」
絹旗「どうしましたか?超オバケでも居ましたか?」
フレンダ「怖っ!?」
滝壺「……?」
上条「幽霊の話をすると寄ってくる、ってのは定番だけどな。で、まぁ心霊スポットで色々あって、帰ってくるんだけど」
絹旗「オバケを超見ちゃったりするパターンもありますし、逆になんにも無かったぜ超大した事ねぇなぁ、的なのもあります」
上条「兎に角、行った面子でここみたいな喫茶店なり、ファミレスへ入ってみると、店員さんはこう言うんだ」
滝壺「『おきゃくさまー、五名様ご案内致しますー』」
フレンダ「えっ、何?四人しか居ないのに、五人って訳?」
上条「つまり——『一人多い』んだよな」
フレンダ「へー、そんな話あるんだ?」
上条「その後もお冷やを一人多く持って来られたり、場合によっては誰か一人の家へついて行っちまったり」
上条「当事者同士には見えないけれど、関係の無い第三者からはまるで一人多いように——って話の体験談があったら、聞かせて欲しいんだけど」
フレンダ「無い無いっ、そんな怖い話とか都市伝説とかって、友達の友達から聞いた話でしょ?」
絹旗「噂——と言う名の超伝言ゲームですね。元を辿るなんて出来ませんし」
滝壺「ふつうは、心霊スポット行かないし……」
上条「だよな——ってどうした?さっきから喋ってないけど」
麦野「いや怪談の話とは関係無いんだけど。ちょっと気になっているのよね」
上条「良かったら聞きたい」
麦野「あー、なんて言うんだろう?こう、喪失感っていうのか、何か心が寂しいってのかな」
麦野「なんだろうな?一人多いんじゃなくて、足りないって感じがね」
フレンダ「あー、でもそれ分かる気がする訳」
絹旗「わたしも超分かる気がします。ぽっかり、って言うのか、大事な約束とかを忘れた感じがして」
滝壺 コクコク
麦野「四人とも、ってのは珍しいわよね」
上条「ま、そのウチ思い出すんじゃないか?大事なモノだったら余計にさ」
麦野「でしょうけどね」
上条「みんなで遊びに行く約束したんだけど、ど忘れしている、とか?」
絹旗「あ、超それかもしれませんね!確かみんなでルームシェアする約束してませんでしたっけ?」
麦野「言われてみれば確かにした、ような?」
滝壺「すこしまえに、した……」
フレンダ「あたしはあんま乗り気じゃなかったけど……何でだっけかな?」
上条「ま、なんにしろ話聞かせてくれてありがとな。んじゃまた」
麦野「えぇ」
絹旗「超さよならー」
フレンダ「ほーい」
滝壺 ヒラヒラ(手を振っている)
麦野・絹旗・フレンダ・滝壺「……」
絹旗「あのー麦野、ちょっと超良いですかね?」
麦野「何よ」
絹旗「今の人、誰です?」
麦野「……アンタの知り合いじゃなかったの?」
絹旗「いえ、恐らく超初対面かと」
フレンダ「え?絹旗の知り合いじゃなかった訳?」
絹旗「超違いますし。滝壺も?」
滝壺 ブンブン
フレンダ「んじゃなんで話してた訳?」
麦野「いや、いつの間にか座ってた」
フレンダ「それだけっ?ナンパじゃないの?」
絹旗「もしそうだったら自己紹介の一つでもする所でしょうし——あ、向こうでセーラー服の娘に超怒られてますね」
佐天『どう見てもナンパじゃないですかっ!?大体自覚が——』
上条『一生カメラ持つつもりはねぇよ——』
絹旗「見ていて超イラっとしますね」
麦野「一体何だったのか、今から聞くのもアレだしね」
店員「お待たせしましたーっ、季節のスイーツ五人分お持ち致しましたー」
麦野・絹旗・フレンダ・滝壺「……」
店員「では、ごゆっくりどうぞー」
麦野「これってもしかして」
絹旗「超タイムリーですが」
フレンダ「結局噂ってのはこんな訳?」
滝壺「さぁ、みなさんごいっしょに……」
麦野・絹旗・フレンダ・滝壺「——『一人多い』」
——路上 19時30分
佐天「いやー、中々『一人多い』の体験談って見つかりませんね。知名度に反して体験談はゼロですなー」
上条「さっきの人達も知ってたけど、体験談はなぁ。普通の人は心霊スポットなんて行かないだろうし」
佐天「ですかねー。ではここは一つ、上条さんに被験体となって貰うと言う事で」
上条「俺が一人で心霊スポット巡るの?やれってんなら行ってくるけど」
佐天「しかしですね、このままだと次の放送に間に合わなくなってしまいます」
上条「スケジュールがタイトすぎるよな。もうちょっと考えて番組作ろうぜ、なっ?」
佐天「あっ、そうだ。では今週の放送は、あたしが体験した怖い話をお送りしましょう」 パチン
上条「え?どうせ佐天さんのネタ話だろ?」
佐天「いーんですよぉっ!どうせこの番組女子中学生がきゃーきゃー騒いでんのを見る番組なんですからっ!」
上条「主旨は間違っちゃいないが、発言内容が誤解を生みそうだなっ!」
佐天「では改めて——こほんっ、『インプリンティング』!」
上条「刷り込み、だっけ?確か鳥の雛が初めて見た動くモノを親だって思うような」
佐天「昔のテレビで『映画館でコーラを飲む映像を映画のコマの間に挿入したら、コーラの売り上げが増えた』って話。あ、それはサブリミナルでしたっけ?」
上条「あれガセじゃなかったか?人間の脳はそこまで細かい情報を認識出来ないってオチで」
上条「結局、受ける影響は視認した時間に比例するとかなんとか」
佐天「えぇでも逆に言えば、今のマスコミの『広告と流行』の境って曖昧ですよね?」
上条「あー……『こんなん流行る訳ねーだろバーカ』ってニュース、たまに来るよな?」
佐天「それは『広告』なんでしょうか?それとも『流行と称した刷り込み』かも?」
佐天「例えば×流ブームなんてもう10年以上続いている——『と、されている』のに、『日本でヒットした映画は、10年前に2、3本しかない』とか」
佐天「逆に『×国と×国が日本で経済を追い抜いたって宣伝されているのに、年間万単位の違法在留者が増え続けている』って矛盾も」
上条「『日本は円安でオシマイです』ってのよく聞くけど、2007年のリーマンショック前は1ドル108円、今よりもずっと安いしな」
佐天「漁師さん達が『円安で漁をしても燃料代で利益が出ない!だから一斉禁漁だ!』にしても、『んじゃお前ら円高の時に増漁キャンペーンしたんだよね?』とか」
上条「……」
佐天「……」
上条「やたら政治的なネタが多いよね?何かあった?」
佐天「○ちゃんで見ましたっ!ニュ○ス極東板っ!蟹さん鶏さん見てるーーっ!?」
上条「コメント出来ねぇよっ!?言ってる事がなまじっか正論だしな!」
佐天「ま、そんな話はあたし達には関係無いとして、『インプリンティング』のお話です」
佐天「『とある科学の超電磁砲S』ってご存じですか?」
上条「いや知ってるけどさ!もうちょっと遠回しに宣伝しなよっ!?」
佐天「あーいえいえ、番組内でのあたし推しがすげーなぁ、とか、OPで金髪さんがやったら目立っているしー、とかそう言う話じゃないですよ」
佐天「っていうか対『アイテム』戦どうするんですかね?」
上条「俺だって心配だよっ!あの流れだと御坂と白衣と俺で絡むじゃん!」
佐天「よっ、『幻想殺し』!『アイテム』と御坂さん白衣さんのフルコンプ目指せやっ!」
上条「しないからね?あとちょいちょい女殺し的な意味を足そうとするの、止めてもらえるかな?」
佐天「アニメから入った金髪さんファン達が、原作読んで膝をつきそうで楽しみです!」
上条「人の不幸を嗤うのは止めよう?取り敢えず笑えないしな?」
佐天「金髪さんが原作でアレになっても、暇人がSS作って脳内補完すればいいですしねー」
上条「……んー……それに関してはコメントし辛いけどもっ」
佐天「でまぁ内容が問題ではなく、あたしは気付いてしまったんですよ——情報がコントロールされている事にっ!」
上条「ノリがM○Rだからな?キバ○シとどっこいどっこいだからね?」
佐天「ではあたしのスマートフォンから、BS11のテレビ欄を見て貰いましょうか。これを見てもまだ同じ事が言えますかねっ?」
上条「こ、これはっ!?」
【BS11 金曜日】
24:00 黒子のバスケ
24:30 とある科学の超電磁砲S
佐天「ねっ?白衣さんがバスケしてる絵が浮かぶでしょうっ!?」
佐天「まさにこれは——『インプリンティング』っ!!!」
上条「あー……うん、そうね。いいんじゃないかな?」
佐天「……」
上条「……」
佐天「(……はやく、突っ込んで下さいよっ)」
上条「小声で指令を与えるなよっ!?つーか気持ちはちょっと理解出来るけどもなっ!」
佐天「——って女の子に何言わせるんですかっ、バカーーーーーっ!」
上条「明らかに君の考えすぎだっ!」
佐天「——はいっ、と言う訳でそろそろお別れの時間と相成りましたっ。如何だったでしょうか?『インプリンティング』怖いですよねー」
上条「待て待て待てっ!?今日はまだ何もしてないよなっ!喫茶店でダベって街頭インタビューで話聞いただけだろ!」
佐天「いやー前回頑張ったし、張り切らなくてもいいんじゃねぇかな、ってご意見が」
上条「頑張っ——たのは、認めるけども!それは君が勝手に独断先行して、怖い目に遭っただけだからな?」
上条「つーか誰よ、んな事言ってんの?ちょっと無責任かもな」
佐天「お母さんです」
上条「すっごく責任ある人ですねっ!つか見せるなよっ!?親御さんにはお見せ出来ないアレやコレとか一杯あるのにっ!?」
佐天「体育倉庫の下りを見た感想が『セーラーじゃなく、体操着の方が良くない?』と」
上条「頭の緩さは遺伝だったんだっ!?つーかあれオンエアされてんのかよっ!?使う必要性皆無じゃねぇかっ!」
佐天「あ、是非一度お話ししたいそうです。やったねっ」
上条「やってねぇよっ!何一つやってねぇからなっ!?俺は潔白だよっ!」
佐天「やっだもう上条さんったら……ねぇ?」 モジモジ
上条「意味ありげに笑うのヤメろよっ!?俺は何一つ悪い事した覚えはねぇしなっ!いいか、絶対だぞ、絶対だからなっ!?」
佐天「とまぁそんな感じでカメラマンさんが色々ピンチになっていますが、元々こんな感じてすよねー。前回が頑張りすぎただけかも?」
上条「……いいの?本当に?こんなんじゃ4回打ち切り確定だぞ?」
佐天「あ、いえそれが、4回目以降も番組続行決定だそうです」
上条「え、マジで?良かった——か、どうかは兎も角としても、凄いなっ」
上条「そんな視聴率取れたの?それともスポンサーさん、『TATARA』さんから誉められたとか?」
佐天「そっちは全然。そうじゃなく、インターネットでアーカイブ配信してるって言いましたよね?」
上条「あー……最初に聞いたなぁ。もしかして?」
佐天「はいっ。同ケーブルテレビ局でダウンロード数一位になりましたっ、いえーいっ!」
上条「あぁうん、前回佐天さん頑張ったもんなぁ」
佐天「どーですかっ!もっと誉めやがれっ」
上条「あーうん、偉い偉い」 ナデナデ
佐天「えへへっ」
上条「ちなみにどのぐらい?何回ぐらいダウンロードしてくれたんだ?」
佐天「それがですねー……アーカイブは未公開とかの部分もプラスしてますけど、基本的には局の宣伝目的なんですね」
佐天「だもんで、一本当り100円と破格のお値段でご提供していますよー」
上条「営業トークだよね?……あの内容に金を払う神経が疑われるけど、まぁいいや」
佐天「例えば一番視聴率が良い場組だって、良くて100回前後でして。でもサイトとサーバの維持費ぐらいには充分だったんですよ」
佐天「がしかぁしっ、今回我々『学園探訪』がその記録を大幅に塗り替えましたっ!」
上条「おおっ」
佐天「なんでもド深夜超低予算番組に抜かれたため、他のディレクターさんが自信喪失状態だそうで」
上条「まぁそれは仕方が無いよなぁ。さっきの話でもあったけど、流行ってのは人為的にどうこうしちゃいけないんだから」
佐天「しかもあたし達にボーナス出るそうです!あ、内容は未定ですが」
上条「クオカードとかだったら嬉しいかも。んで、実数はどんなもんなの?」
佐天「9969回ですっ」
上条「心当たりのありすぎる数だなっ!100%身内で人為的じゃねーかっ!?何やってんだっつーかどっから情報漏れやがった!?」
佐天「えー、いくら上条さんでも一万人弱も友達居ないでしょー?」
上条「数がピッタリなんだよっ!あぁいや違うな。あれ……996、“9”?一人多いな?」
佐天「そうっ、まさに『一人多い』のテーマに相応しいですねっ!!!」
上条「ウルセェよっ!?偶然だからなっ!?そう言う話の流れに持ってったんじゃないよっ!?」
佐天「いやー流石のあたしも、このままシメるのはちょっと気か引けたんですけど、流石は上条さんっ、頼りになりますなぁ」
上条「その『いただきました』って顔もヤメなさいっ!てへぺろ、じゃないっ!あぁもう可愛いのがムカつくなっ!」
佐天「わーい誉められたっ!やっぱあたしの事好きなんでしょう?すーなーおーになぁれよぉっ!」 グリグリッ
上条「君からのプロポーズは断った筈だ——ってもしかしてアレも流れてんのかっ!?」
佐天「いやー怖いですねぇ恐ろしいですねぇ、まさかっ!まっさっかっ!我々が『一人多い』を実体験するとはっ!!!」
上条「おい待て無理矢理締めっぽい流れを作るんじゃないっ!」
佐天「さぁて綺麗にオチもついた所で、今日もお別れのお時間となりましたっ!お相手は弟から『姉ちゃんそろそろ落ち着いたら?』って言われた佐天涙子とおっ」
上条「——あ、分かったぞ。御坂だろ?美琴の方の御坂だろっ!?」
上条「ンな物好きお前ぐらいしか居ないって、俺は分かってんだからなっ!」
佐天「『愛してるぞーーーーーっ!美琴ーーーーーーっ』?」
上条「しねぇよっ!?つーか番宣から続く御坂推しはなんなのっ!?別に言う時は自分で言うしなっ!?」
佐天「——で、お馴染みの上条@イマジンブレイカーさんでお送りしましたっ」
上条「あのさ、一度言おうと思ってたんだけど、君ちょっとアタマ悪いよね?」
佐天「ではではまた来週っ、この時間に佐天さんと逢おうぜっ!それでは最後にっ、君とボクの合言葉っ、せーのっ!」
佐天「うっいっはっるーーーーーーーーーっ!愛してるぞ——」プツッンッ
——常盤台女子寮・深夜28時
御坂「……」
御坂(な、なんなんだろう。この、計画性の欠片も無い番組……)
御坂(あの子達もダウンロードしてたってのは、まぁ……うー、ちょっと複雑だけど)
御坂(それより気になるんだけど)
御坂(佐天さん、いつもよりカメラに寄りすぎじゃない?)
御坂「……」
御坂(物理的に距離が近くなってる、とか?)
御坂「……」
御坂(……ないないないないっ!それは、ちょっとないでしょ!)
御坂(だってまだ、まだよ?中一だし?相手にされる訳が) コテッ
御坂「……」
御坂(……だったら、あたしも似たようなもんって事?) ムクッ
御坂「……はぁ」
上条(妄想)『——あ、分かったぞ。御坂だろ?美琴だろっ?』
上条(妄想)『俺の事想ってくれる物好き、お前ぐらいしか居ないって。俺には分かってんだ!』
御坂「」
上条『俺が美琴に告白する時は自分で言うしなっ!』
御坂 コテッ(幸せすぎて気絶)
——学園都市七大不思議探訪 第三話 『一人多い』 −終−
——学園都市七大不思議探訪 第四話 『ずいずい』
——○○学区××小学校近くの横断歩道 16時16分
「あちゃー、赤に変わっちゃったね」
「だねー。早く帰りたいのに」
『ずいずいずっころばし、ごっまみそっずいっ』
「……ここの横断歩道って赤になるの早くない?おかしいよねー?」
「あー……」
「どしたの?」
「いや、さ。ここじゃないんだけど、噂、知ってる?」
「あー、聞いた、かも?」
「うん。そうそう、歌聞こえるんだって」
『ちゃっつぼにおわれてとんぴんしゃんっ、ぬけたぁらどんどこしょっ』
「歌、ねぇ?歌ってどんなの?」
「わらべ歌?って言うらしいんだけど、『ずいずいずっころばし』」
「あーうん、ずいずいずっころばし——って始まるアレ」
「横断歩道に立っていると聞こえるんだって、うしろっから」
「へー、こわいね」
「うん、こわいよね」
『たっわっらっのねっずっみが、こめくってちゅう』
「それだけ?」
「ううん。あの歌ってさ、幼稚園のおゆうぎでさ、グーあわせたじゃん?」
「やったやった。みんなでグー前に出した」
「歌がおわると、最後に止まった子のグーをぬくよね?」
「うんうん」
「だから、ずいずい終わったときに止まった子はね。うしろから——」
『ちゅうちゅうちゅう』
「うん」
「ドンっ!って。ぬかれちゃうんだって」
「……」
「……」
「……なんで、ドンってされちゃうの?」
「車の事故?かなんかで死んじゃった子がいて、その子はまだちっちゃかったんだって」
『おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも』
「……」
「だから、一人じゃ横断歩道を渡れないから、おうち帰れないんだって」
「……」
「僕たちと違って、おうち帰れないんだって」
「……こわいよね」
「うん、こわい」
『いきっこぉなぁしぃ——よおぉっ』
「……」
「その子がね、ドンってするんだって」
「……なんで?なんでそんなことするの?」
「う、うらやめ?僕たちがウラヤマシイんだって」
「……」
「だから、ドンって」
『いどっのまっわっりでっおっちゃわんかっいったの』
「でさ」
「うん」
「さっきから聞こえるよね、『これ』」
「う、うんっ」
「これってさっ!」
「……っ!」
佐天「うっいはっるーーーーーーっ!愛っしてっるぞーーーーーーーーーーーっ!!!」
子供達「」
佐天「はいどうもっそんな訳でやって来ましたっ!何だかんだで第四回っ!打ち切られるんじゃねぇかって、正直ビクビクでしたがあぁっ!」
上条「待て!君のテンションは、子供が引きつけ起こすからちょっと抑えてあげてっ!」
佐天「なぁんとぉっ!四回以降も続いてしまう事が決定してしまいましたっ!わーパチパチパチパチーっ!」
佐天「タイトルは……学園——何でしたっけ?」
上条「忘れるなよっ!?自分でつけたタイトルだろうがっ!」
佐天「あ、しまったー『学園都市七大不思議探訪』でしたっ!ねー、長くて嫌になりますもんねー?」
上条「だったら変えなよっ!?別に誰も見てないしなっ!身内以外はねっ!」
佐天「第四話目のお話は——『ずいずい』ですっ!知ってるかなー?知らないっかなー?」
男の子「さ、佐天おねーちゃん……?」
佐天「おっすっ、ひっさしぶりだなーっ。元気してたかー?」
上条「知り合い?」
佐天「昔の男ですっ」
上条「なワケねーだろ!」
佐天「どうどうっ妬きました、ねぇ?ねぇってば?」
上条「あーもう佐天さんの押しが強くなっているのはどういう訳——」 ギュッ
女の子「……っ」
上条「……どうした?二人ともあんま顔色良くないな?」
佐天「どうしたの?おねーちゃんに話してみ、ね?」
女の子「う、うん」
——○○学区××小学校近くの横断歩道 16時30分
上条「『ずいずいずっころばし』だから、『ずいずい』な訳ね」
佐天「んー……」
女の子「……」
男の子「……後から、聞こえたんだっ!」
上条「んじゃ今日は俺が家まで送るよ?それで良いよな」
佐天「いや、ちょっと待って下さい。それじゃ根本的な解決になりません」
上条「それは——そうだけどさ。だったら」
佐天「ね、あたし『ずいずい』にドンってされない方法知ってるんだ。教えてあげよっか?」
男の子「ホントにっ!?佐天おねーちゃんすげー!」
女の子「おねーちゃんすげー」
佐天「手、出して?君は右手、君は左手」
佐天「二人の手をね、こうやって、ぎゅっ、って握るの」
佐天「どう、簡単でしょ?」
女の子「こ、これで大丈夫なの?」
佐天「うんっ。そうしていれば、どっちかがドンっ、てされてももう一人が引っ張ってくれるよね?」
男の子「……」
佐天「どうしたー?まだ不安かー?」
男の子「違うよっ!違くてっ、あの、僕一人になったら——」
佐天「あぁうん大丈夫だよ。『ずいずい』は一人になったら出て来ないから」
男の子「そうなのっ!?」
佐天「今まで一人になった時に出て来たって事は無いよね?そう言う“噂”を聞いた事無いでしょ?」
男の子「あ、そっか」
女の子「おねーちゃん、あたまいいー」
佐天「だからこうやってれば、どっちにしろ大丈夫っ。ねっ?」
男の子「うん、佐天おねーちゃんって、やっぱーすげー!」
女の子「うん、うんっ」
佐天「もう大丈夫?それともあたし達が家までついてってあげよっか?」
女の子「ううんっ。こうやってれば、へーきっ」
男の子「うん。こーやってれば」
佐天「そかそか——あ、あとさ。学校でも結構噂って広がってるの?」
女の子「わたしは知らない」
男の子「僕のクラスで、すこしだけ」
佐天「だったら教えてやってくんないかな?あたしがこう言ってたよー、って」
男の子「うんっ」
女の子「……うん」
佐天「んじゃちょっと遅くなっちゃったけど、早く帰りな」
男の子「ありがとー佐天おねーちゃん、あとそっちのおにーちゃんも!」
女の子「ありがとうございましたぁ」 テレテレ
上条「俺は何もしてないけど。あ、車にも気をつけるんだぞー?」
男の子「うん、じゃあねー」
女の子「さようならーおねーちゃんおにーちゃん」
——○○学区××小学校近くの公園 16時40分
上条「……いいの?オリジナルにはそんな噂無かったんだよな」
佐天「いやぁ、オリジナルがどうこうで言ったら、そんなの存在しないかも知れませんし」
上条「まぁそりゃそうだけどさ」
佐天「あの二人、学校の後輩なんですよ」
上条「三人ともあそこの小学校で?」
佐天「はい。あ、あたしは途中からですが」
上条「つーかちょっとビックリした。佐天さん意外と考えてるんだなーって」
佐天「ひっど!?いつものはテンション上げてるだけですってば!……あぁいえ、一概に楽しんでやってる部分が無いとは言えませんけど」
佐天「ありません?こう、お家に帰って『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?なんであんな事言ったんだろっ!?』みたいなの」
上条「分かるっ!すっげーよく分かるっ!」
佐天「ですよねっ。あー良かった、上条さんの中のあたしはどんだけアレだと思われていたんだか」
上条「ごめん、ずっと素だと思ってた」
佐天「いやー……ま、まぁ良いじゃないですか、それはっ」
上条「んー、解決方法としては良かったと思うぞ。うん」
佐天「あー……でも、良くないですよね。こういうのって」
上条「下手に騒いで不安にさせるよりは、ずっときちんとしてると思うけど」
佐天「いえその、そっちじゃなくて『ずいずい』の方ですよ」
上条「いやいや居ないって。少なくともここ数年事故で亡くなった子は、この学区には居なかったんだろ?」
佐天「まぁそうなんですけど。でも、なんか可哀想だなぁって」
佐天「そりゃまぁ関係無い子供を怖がらせたり、傷つけたりするのは論外ですけど、元々は小さな子って事ですよね?」
佐天「怖いっていうよりも可哀想って、思っちゃいました」
上条「……まぁな」
佐天「ぶっちゃけ、上条さんは都市伝説とかオバケとか、あったり居たりすると思います?」
上条「俺は……どっちでもない、かな」
佐天「どっちですかっ!」
上条「見たら信じるし、体験したら認めるって態度かな」
上条「科学の街だからって、信じられないモノを見たり聞いたりするかも知れないし?」
佐天「あたしは……そうですねぇ、居て欲しい、あって欲しい、んじゃないかと」
上条「希望?」
佐天「はい、肩入れしてます」
佐天「何と言いますか、この街ってば才能が絶対って所あるじゃないですか?」
佐天「あ、いえ、今はそんなに思っていませんよ?御坂さんが能力開発や研究に頑張ってるのを見てたんで、大分考えなくはなってきてますね」
佐天「でもねー、どーにもこう、あたしって脇役じゃね?的な感がヒシヒシとですね」
佐天「御坂さんが色んな事件に首突っ込んでも、ぱぱっと解決していくのを見てると、そんな事思ったりします」
佐天「あー、あたしって普通なんだなーって」
佐天「だから、その、『そういうの』があれば——」
佐天「——あたしも主役になれるのかも、なんて思っちゃったり」
上条「なぁ佐天さん、俺前から君の事ちょっと足りないって思ってたんだけど、ヤッバ訂正するわ」
佐天「おっ!今日の活躍で好感度アップだぜ!いぇいっ!」
上条「いやその逆。佐天さんは残念な子だ」
佐天「酷っ!?ここはレベル0同士傷をなめ合う場面じゃないですかっ!?」
上条「あー……っと、真面目な話聞きたくないんだったら、ここまでにするけど?」
佐天「え?えっと——」
上条「——って言っといてなんだけど、我慢出来そうにないし、言うな」
佐天「溜めた意味が無いじゃないですかっ!?」
上条「御坂は多分、能力とか関係無いんじゃないかな?」
佐天「え、いやそんな事は——」
上条「あぁいや能力を否定する訳じゃないよ?」
上条「現実としてアイツが能力使って色々な揉め事解決したり、能力がある事で本人の自信になってるのは間違いないと思うけどさ」
上条「でも逆に、仮の話だけど——能力持ってないからって、御坂が人を助けないなんて有り得ないだろ?」
佐天「それは……うん」
上条「白衣と初春さんだってそうだな。例えば白衣の能力が初春さんのだったとしても、二人はきっと風紀委員になってたよな?」
上条「活躍する専門分野は違うけど、二人がしてた事はそんなに代わらないと思う」
佐天「ですね、きっと」
上条「でもって佐天さんも、同じ」
佐天「あたしも、ですか?」
上条「例えばレベル5だったとしても、人助けに首突っ込んでぎゃーぎゃー騒いでいるんじゃないかな?」
上条「勿論、こうやってクラスメイトの穴埋め企画をノリで受けてた筈だ」
佐天「えっと、もしかして、色々聞いちゃってますか?」
上条「初春さんから愚痴半分で色々と」
佐天「いやーまぁあれはですね——そうっ、不可抗力ですっ」
上条「そんな君が能力持ったら、御坂みたいになるのは当たり前だよな?」
佐天「あー……」
上条「それが一つ目のダメ出し。能力の有る無しでそうそう変わらねぇよ、ってお話」
佐天「ま、まだダメ出しが……?あ、あたし門限があったりしましたっ」
上条「次で最後だから大丈夫だっつの。つーかこないだ8時過ぎただろ!」
上条「愚痴を言おうが言わなくても、幸運だろうが不幸だろうが、結局自分の人生の主役ってのは——自分でしかないって事だな」
佐天「それ、開き直りじゃないですかっ」
上条「テレビとか結構見る方?ドラマ好き?」
佐天「えっと、まぁそれなりに?特撮含めてドラマは好きですけど」
上条「特撮は特撮っていうカテゴリだと思うけど。全部が全部、『特別』な人が主人公かな?」
佐天「そう言うのは多いですけどね。違うのも当然あります」
上条「どんな内容?」
佐天「そうですねー。普通の娘がちょっと変わった恋をしたり、悩んだりとか、ふつーですね」
上条「だったら俺達はそっち側なんだよ。それだけの話」
佐天「あ……っ」
上条「多分さ。俺らの人生をドラマ化したとして、多分それは全っ然視てくれないし、心躍るような冒険もしないんだけど」
上条「それでも、この人生、このお話の主人公は俺達なんだ。それは、絶対」
佐天「——っ!」
上条「他の人からすればちっちゃくてショボイと思う。面白くもないと思う——でも、『それがどうした』って」
上条「誰に評価されなくたって良いだろ、自分が納得して楽しければ、それで充分だ」
佐天「……」
上条「……いや、楽しくなくたって良いんだ。バカみたいに不幸であっても、空元気で笑ってもそれはそれで」
上条「どんな方向にコマが転がっていっても、それを動かしてんのは俺だ、って分かってさえいりゃ」
上条「『学園探訪』と一緒で、誰も見てないようなクソつまらない番組であったとしても、中心で体張っていんのは佐天さんだろ?」
上条「それが『主役』じゃなかったら、何だって言うんだよ」
佐天「……まぁ、そうかも」
上条「佐天さん、今、楽しいかな?佐天さんの物語は、どうだ?」
佐天「……いっやーどうかなー?」
上条「『学園探訪』やってる時はかなりテンション振り切ってたと思うけど」
佐天「結論を出すのはまだ早いかと。まだ折り返し地点ですしねー」
上条「んー……まぁ、それでもいいんじゃないかな?自分が主役の人生なんだし、好きにすれば」
佐天「はいっ、好きになりましたっ!」
上条「うん」
佐天「あぁいえいえいえっ!自分の物語が、ですよっ!?」
上条「いや文脈上それ以外に無いだろ?」
佐天「で、ですよねっ!……はい」
上条「んじゃ取材続ける?今日はお開きにしたって良いと思うけどな」
佐天「上条さん」
上条「ん?」
佐天「あたしこと佐天涙子は、早速やらかそうと思うのでありますっ!」
上条「あーうん……余計な事言ったかも」
佐天「まぁまぁ運が悪いと思って諦めてくださいよ、ねっ?」
——○○学区××小学校近くの公園 17時00分
佐天「——はいっ、と『ずいずい』は手を繋いでいれば防げる事が判明しましたっ!いえーいっ!四連勝っ、やったねっ!」
上条「主旨が違う違う!勝ち負けの問題じゃないっ!それに『一人多い』には何もしなかった筈だ!」
佐天「まーそもそもこっちの学区で事故に遭った子は居ませんしね。存在すら疑われていたわけですけどもっ!」
上条「じゃあなんで来たっ!?どうして取材しようと思ったの?」
佐天「あーでもね、あたし思うんですよっ。『ずいずい』っては可哀想な子なんじゃないかと」
上条「まぁ話だけを聞けばそうだけど。でも基本傷害だからね?」
佐天「だからもしテレビをご覧なっているあなたっ、あなたが可哀想だと思っているなら、その子を連れて行ってやってくれませんか?」
佐天「繋いでない掌をこう軽く握るようにして。途中まででいいですからっ」
上条「いやでもいいの?こういうのってツイテクルー、とか問題になるんじゃ?」
佐天「その子は基本帰りたい訳なんですよね。だったらお家まで送ってって欲しいなー、と」
佐天「帰り道だったら分かるでしょうし、違う道へ入ったら、離れてまた別の人を探すと思います」
上条「適当だよなぁ」
佐天「えっと……『送り狼』って民話があります。あ、えっちな話じゃないですよ?」
佐天「昔々、暗い山道や夜道を歩いていると後から狼がついてきます」
佐天「途中で転んだりすると狼に食べられちゃうけど、逆に倒れなければ家まで無事に送り届けてくれる、ってお話です」
佐天「それと同じなんじゃないかなって、あたしは思います。もしかしたら大本は同じなのかも?」
上条「同じ道関係の怪談と都市伝説って意味か?」
佐天「んー……ほら、出て来るタイミングが一緒じゃないですか?」
佐天「『送り狼』は森や夜道、『ずいずい』は夕方の通学路。当事者——っていうか、体験したり、するんじゃないかなって思っている人は、『帰り道を急ぐ人』ですよね?」
上条「あー……確かに」
佐天「だから『送り狼』の民話と『ずいずい』の都市伝説、どちらとも『不安が生み出した』んじゃないか——あぁもうっ!なんか上手く説明出来ないっ!」
上条「言ってる事は何となく分かる気がする」
上条「昔の人は明かりのない道を歩く時には『送り狼』を見て、今の子供達が夕方歩く時には『ずいずい』を見た、と」
上条「時代も体験者も違うけど、二つの話の核を作っているのは『心細い帰り道』って言う点か」
佐天「あー、それです。そんな感じですけど、でもっ」
佐天「『救い』ってないじゃないですか」
佐天「『送り狼』でも、転ばなければ守ってくれるというメリットもありますし、同系統の都市伝説、『口裂け女』にだって対抗手段はありますよね?」
上条「ま、時代で色々変わっているらしいけど、あるにはあるよな」
佐天「なんて言うんですかねー、近年に現われた都市伝説って酷いの多くありませんか?問答無用で死んじゃったり、不幸になったり」
佐天「だからあたしは——いやっ『学園七大不思議探訪』っとしては、カウンタースキルを作りたいと思いますっ」
上条「どういう意味?」
佐天「『口裂け女』に対して『ポマード』って言ったら逃げていきますね?それの万能版みたいなの」
上条「お経を唱えた方がまだマシだと思うけどなー」
佐天「いえいえっ、そういうのも覚えるの大変じゃないですか?子供には無理ですよねー」
佐天「それにおっきな声出したりすれば、他の人も助けに来てくれるかも知れませんし」
上条「一理ある。確かに『もしもの時これが大丈夫かも』って思ってるだけで、全然心構えは変わるもんな」
佐天「それそこお守りでもお札でも良いとは思うんですが、とっさの時って忘れちゃいますし」
佐天「それにもしそういう大切なものを無くしてしまったら、逆にモチベーションが下がります」
上条「成程、だから誰でも言えるような言葉か。良いんじゃないかな」
佐天「でも『火事だー』とか『泥棒だー』って言葉を使う訳にも行きません。それでは他の方に迷惑になってしまいますので」
上条「そう言う気配りも大事だよな。なんつーか佐天さん、今日はマジで見直したかも」
佐天「いぇいっ!もっと誉めやがれっ!」
上条「あーうん、凄い凄い」 ナデナデ
佐天「どうですかっ!佐天涙子はやれば出来る子だっ!」
上条「うんまぁそれは分かったんだけどさ、結局なんて言うの?まだ決めてないってオチじゃないよね?」
佐天「まっさかそんな事はありませんっ!幾ら何でも考えてないなんて有り得ないですっ」
佐天「むしろあたしはこの言葉しかないと確信していたぐらいですし!」
上条「へー……んじゃ言ってみようか。すっげー嫌な予感しかしないけど」
佐天「では行きます——こほんっ」
佐天「『うっいっはっるーーーーーーーー!愛っしてっるっぞーーーーーーーーーー!!!』
上条「分かってたよ!こんなオチになるんじゃないかって思ってたけどさ!『愛してるぞー、美琴ー!』の実質二択じゃねぇか!」
上条「佐天さん見直せねぇよ!俺の中では外見は良いけど残念な子のままだからねっ!?」
佐天「可愛いって誉められたっ!」
上条「ポジティブにも程があるなっ!?もうちょっと文意酌み取ろう?なぁっ!?」
佐天「さぁて今週もまたお別れのお時間がやって参りましたっ!学園探訪第四話目っ!今日はちょっと真面目なお話しちゃいましたがっ!」
上条「ぶち壊しになってるからね?主に君が自分で積んだ信頼をジェンガしてるんだけどもっ!」
佐天「でももし良かったら『ずいずい』、途中まで送ってやって下さいなっ!」
上条「また軽いなっ!?」
佐天「もしかしたら——新しい家族が出来るかもっ?やったねっ!」
上条「ウルセェよっ!それ結局家までついて来てんだろうがっ!」
佐天「まさに『憑いて来る』ですよねっ!」
上条「上手くないからな?むしろ君は人への迷惑を助長しているからな?」
佐天「まーでもあんま深く考えなくて良いと思うよ?『ずいずい』が居ようか居なかろうが、友達と一緒に仲良く帰れば問題ないって!」
佐天「つーか良い機会だしっ、気になるあの子や疎遠になった友達と、これを切っ掛けに話してみるのもいいんじゃないかな?」
佐天「でももし、一人で寂しくなった時っ、何か居そうで怖い時っ、そんな時はこう叫ぼうぜっ!はいテレビの前もみんなもご一緒にっ!」
佐天「うっいはっるーーーーーーーーっ!あいーしーてーるぞーーーーーーーっ!」 プツンッ
——○○学区××小学校近くの公園 17時15分
上条「……いいのかなぁ、こんなんで」
佐天「まぁ良いんじゃないですかね。誰が困るって訳でもないでしょうし」
上条「いや……まぁ、いいか。怒られたらその時考えよう」
佐天「あ、そうだっ打ち上げしましょう、打ち上げっ!この間ナンパ失敗しやがったお店のケーキ食べたいですっ」
上条「失敗してねぇよっ!?つーか試してすら居ないからなっ!」
佐天「ガトーショコラ……いやいやっベタにショートも捨てがたいっ」
上条「両方食えば?つーか寄るの確定かよ」
佐天「んー……シェアしませんか?半分こって事で」
上条「なぁ佐天さん、こないだそれしたら『間接キス恥ずかしいですっ』つって俺の分まで食ったよなぁ?」
佐天「今日こそはっ、今日なら出来る気がしますっ」
上条「そのフラグどう考えても失敗する前振りでしかないんだが」
佐天「だってあたしが、あーん、ってやったら嫌がるじゃないですか」
上条「そーゆーのは彼氏相手にやんなさい」
佐天「堅い、堅すぎますっ!」
上条「あーもう良いから行こうぜ。何だかんだ言って暗くなるのは早いんだから」
佐天「んじゃ行きましょっか、はいっ」 グッ
上条「手?サイフ寄越せって事?」
佐天「ですから、『ずいずい』にドンってされても良いように、手、繋ぎましょう?」
上条「もうそういう歳じゃないと思うけどなぁ」
佐天「そうですかー、それじゃしょうがないですねー——おっとあんな所に横断歩道がっ!」
上条「待て待て待てっ!?幾らフリでも突っ込もうするんじゃないっ!」
佐天「じゃ、はいっ、手」
上条「ほぼ脅迫じゃねぇかっ!……『ずいずい』送っていく話はどうなったんだよ?」
佐天「あたしは左手が空いてますし、上条さんは右手があるじゃないですか」
佐天「誰かと手を繋いだからって、それ以上駄目って法律はないんですよねー、これが」
上条「まぁたまには、いいか」
佐天「いいですよねー、たまには」 ギュッ
上条「あー……んじゃ。二人とも送ってくよ」 ギュッ
パキィィンッ
佐天「あれ、今音しませんでしたか?」
上条「さぁ?俺には何も聞こえなかったけど」
佐天「です、かねぇ……ま、いっか」
佐天「あ、決めましたっ!オレンジタルトとショートケーキとガトーモンブランと——」
上条「一人で食える量じゃねぇからなっ!?」
佐天「なぁに言ってんですかっ——」
佐天「——二人で食べればいいんですって!」
——常盤台女子寮・深夜28時
御坂「……」
御坂(初春さん推しが凄いのは分かったんだけど)
御坂(まぁ、オバケがホントに居る訳じゃないし、気の持ちようってのは大切よね)
御坂(こ、怖くないわよっ?)
御坂「……」
御坂「(……うっいはるー、あいっしてっるぞー)」 ボソッ
御坂「……」
御坂(何か違う?だったら——)
御坂「(……と、とーまっ、あいして——)」
白衣「あぁんのぉぉっ泥棒猫があぁぁぁぁぁぁっ!?」 ムクッ
御坂 ビクゥッ!?
白衣「お姉様はっ!おねえさ——」
白衣 パタッ
御坂「……」
白衣 スースー
御坂(ね、寝言?寝言、よね。うん)
御坂(呟き拾って対応するなんて、色々と人間離れしてるけど)
御坂「……」
御坂(あ、でも)
御坂(胸の奥、ぽかぽかしてる) コテッ
上条『御坂は能力とか関係無い』
上条『能力使って色々な揉め事解決したり、能力がある事で本人の自信になってるのは間違いないと思うけど』
上条『能力持ってないからって、御坂が人を助けないなんて有り得ない』
御坂「……」
御坂(……マズいなぁ)
御坂(また好きになっちゃったよ、あたし)
御坂「……」 ムクッ
御坂(……佐天さんも、なのよね)
御坂「……」
御坂「……一度、確かめなきゃ、ね」 コテッ
——学園都市七大不思議探訪 第四話 『ずいずい』 −終−
——学園都市七大不思議探訪 第五話 『後ろに立つ少女』
——某駅前の喫茶店 16時15分
佐天「ここのガトーショコラ美味しいんですねー。あ、どうです御坂さんも?」
御坂「う、うん。んじゃあたしも貰おうかしら」
━┯━┯━
│ │
御│机│佐
│ │
└─┘
廊 下
佐天「すいまっせーんっ、注文お願いしまーすっ」
御坂(佐天さん緊張してないわね?用件は検討つきそうなもんだけど)
佐天「あ、はーい。それでお願いします」
御坂(あれだけ番組内であたしとくっつけようとしてたのも、実はネタだったとか?……ありそうで怖い)
佐天「んで、今日のお話ってなんですかね?白衣さんのセクハラに耐えられなくなったと」
御坂「それは正直気持ち悪いけども!そうじゃなくって、ね?その、なんてったらいいんだろ」
佐天「頑張れっ!」
御坂「原因は誰よっ!?」
佐天「へっ?」
御坂「い、いや何でもない、何でもないわっ!」
佐天「はぁそうですか」
店員「お待たせ致しましたー。ガトーショコラとシナモンティーのケーキセット二つお持ちしました」
佐天「ありがとうございますっ」
店員「ではごゆっくりどうぞー」
御坂「確かに美味しそう……」
佐天「食べましょうよっ」
御坂「そうね。お茶も良い香り——」
佐天「——で、御坂さんも片思い、なんですよね?」
御坂 ブッ!?
佐天「あ、やっぱり吹いたっ。お茶を飲んでるタイミングを狙って正解でした」
御坂「けほっ!ふ、普通に酷いんだけど!?」
佐天「いやー、何か緊張してるから和ませようと思いまして」
御坂「和まないからっ!?……いやでも、分かってた、のよね?」
佐天「あーはい。割と初めっから」
佐天「って言うか——ごめんなさいっ!」
御坂「ちょっと!なんて佐天さんが謝るのよ?」
佐天「あたし、散々御坂さん達くっつけようとしてたのにっ、何か、こんな事になっちゃって!」
佐天「本当にごめんなさいっ!」
御坂「……」
御坂「うん。許す」
佐天「……良いんですか、あたし?」
御坂「んー、良いも悪いも無いと思う。あ、アイツとあたしが付き合ってるんだったら、平手の一つでもしてたんでしょうけど」
御坂「ただ、同じスタートラインに立った、って。それだけでしょ?」
佐天「……」
御坂「納得出来ないし、割り切れないと佐天さんだって思ってるわよね?でもそれはあたしも同じ」
佐天「御坂さんも、ですか?」
御坂「アイツの体質見たでしょ?何かもう、色々と嫌になるわよ」
佐天「あー……分かります分かります。先週の放送見ました?」
御坂「子供達出てたわよね」
佐天「女の子の方が、その、お礼をしたいので会いたいって」
御坂「早っ!?殆ど喋ってないし解決したの佐天さんよねぇっ!?」
佐天「あと前の前の回、街頭インタビューと小話で終わった回あったじゃないですか?」
御坂「あーうん、あれは個人的にどうかと思ったけど」
佐天「あれの打ち合わせ、実はこの喫茶店でやってたんですが。その、いつも四人組の常連さんが居るんですね。あ、今日は居ませんけど」
御坂「……オチが読めたわ。続けて?」
佐天「どう見ても『お前らティーンズ誌のモデルだろっ!』って人達のテーブル行って、まるで十年来の友人のように馴染——」
御坂「ごめんやっぱりお腹いっぱいだから、うん。もういいかな」
佐天「『あー御坂さん大変だよなぁ』って割と気軽に考えたんですけどねー。いやー参った参った、あっはっはっはー」
御坂「笑い所じゃないわよね、そこ?」
佐天「でもどうしようもないんですよね、結局。御坂さんってご姉妹います?あ、白衣さん以外でですよ?」
御坂「アレをあたしの身内に含めないでっ!スール的なものはノーサンキューだから!」
佐天「あたしは下に弟が居て、一応お姉ちゃんやってんですね。だからまぁ多少はワガママ聞かなきゃいけないわけで」
佐天「例えば好きなお菓子があったとして、それを弟が食べちゃったりします」
佐天「お菓子なら『ま、仕方がないっかー』で終わる話ですけど、『これ』は違いますよね?」
御坂「……そうね」
佐天「でも逆に——だからって、他の全てを捨てて良いとは思っていません」
御坂「他の全て、って、どういう意味?」
佐天「んー……あたしは御坂さんと白衣さんを友達だと思っています」
御坂「あたしだって思ってるけど」
佐天「それを壊してまで、恋愛ってする価値があると思いますか?」
御坂「それは——」
佐天「あぁいえ、人によってはアリだと思う人も居るでしょうし、あたしも否定しようとは思いません」
佐天「でもあたしは、絶対に、嫌です」
御坂「……じゃ、じゃあさ。もしもあたしが、嫌だって——」
佐天「あたしはきっと付き合わないでしょうね」
御坂「それはっ!?」
佐天「……ただ正直な所、あたしもよく分かってない、と言いますか、戸惑っているんですね」
佐天「口では格好良い事言いながら、結局御坂さんに頭下げている訳ですし」
佐天「立派な決意表明をした所で、ぶっちぎる可能性だって——」
御坂「ねぇ佐天さん。それ以上あたしの友達の悪口は言わないでくれるかな?」
佐天「ごめんなさいっ!やっぱり怒りますよねっ」
御坂「ううん。そうじゃない。あたしの友達の佐天涙子って子は、そんな子じゃないわ」
御坂「あたしに聞かれたってシラを切ればいいのに、認めた上で必要もないのに謝ってくれた」
御坂「きちんと筋を通してくれた、そんな子をもう悪く言わないで」
佐天「御坂さん……」
御坂「ね?」
佐天「白衣さんが惚れる気持ちが分かりましたっ!」
御坂「やめてよねっ!?もうそっちは一杯一杯なんだからっ!」
佐天「いやー、あれは白衣さんのアタックが尋常ではないと言いますが、常軌を逸していると言いますか」
御坂「……兎に角っ!この件に関してはお互い恨みっこ無しで行きましょ?」
御坂「あたしだって、佐天さんと友達止めてまでアイツと付き合いたく——いやー?」
佐天「最後にちょっと考えたっ!?」
御坂「冗談よ。ま、そんな感じで」
佐天「はいっ、ハーレム路線で行きましょう!」
御坂「理解してなかった!何一つ分かってなかったの!?」
佐天「あー……その、ついでに一つ聞きたいんですが。良い機会なので」
御坂「話せる事なら、うん?」
佐天「あたし達、ぶっちゃけ守備範囲外、ですよね?」
御坂「言わないでよっ!?考えないようにしているんだからっ!」
佐天「いやまぁ?確かに高校生から見た中学生ってそんなもんかも、なんですかねー」
御坂「決して興味がない、って訳じゃないのよね」
佐天「あ、さっきの話に戻りますけど、モデル四人さんの一番おっぱい大きい人ガン見してましたっ」
御坂「……でも佐天さんは良いじゃない?『佐天さん巨乳説』が流れるぐらいだし」
佐天「いやいやっ!むしろ中学生でそれは無いでしょう、ってか水着で何回か遊びに行っていますよね?」
御坂「食蜂操折って知ってる?第五位の」
佐天「あー……写真だけ、なら。スッゴイですよねー、あの人」
御坂「……まぁ手元に無い武器を使うわけにも行かないしね」
佐天「ぶっちゃけ子供扱いですけどね」
御坂「ねー?だからって『高校生になるまで待って』とは言えないしなぁ」
佐天「まぁぼちぼちやっていきましょう。こっちから告白してもいい訳ですし」
御坂「ムリムリムリムリっ!?駄目っ、出来ないしっ!」
佐天「あーもう乙女だなぁ。つーか可愛いなー」
御坂「やめてよ?これ以上悪質なストーカーは要らないからね、絶対にね?」
佐天「おっ、フリですかー?だがしかし残ぁ念っ!あたしには初春という恋人が——」
初春「はいっ、皆さん一週間ぶりのご無沙汰でしたー。『学園七大不思議探訪』のお時間になりましたよー」
初春「お相手は佐天涙子が急用につき、私、初春飾利が代理を務めさせて頂きます」
初春「至らない所もあるでしょうが、どうか最後までお付き合い下さいねっ」
上条「佐天さんどうしたの?俺も聞いてないんだけど」
初春「さあ?用事があるのでよろしくー、としか聞いていません」
佐天・御坂「」
━┯━┯━┳━┯━┯━
│ │ ┃ │ │
御│机│佐┃初│机│上
│ │ ┃ │ │
└─┘ ┃ └─┘
廊 下
初春「本当に外せない用件だったんだと思いますよ?ノリと勢いで生きてますけど、無責任じゃないですから」
上条「だよなぁ、ってカメラここに置くんだっけ?」
初春「はい。お二人は動いた絵が多かったので、今日はのんびりしたいと思います」
初春「必要があればモバイルでネットにアクセス出来ますしねー」
上条「……何だろうな。俺達以上によく考えてくれているって言うか、今までの俺達がどんだけ行き当たりばったり、って言うか」
初春「仕方がないと思いますよ。普通番組が始まる前には最初から最後までのスケジュールを抑えた上で、半分ぐらいは溜め撮りしちゃいますし」
初春「一週一本撮り、しかも曜日限定は厳しいですね。お二人はよくやってると思います」
上条「初春さんと話してると癒されるなぁ……」
初春「えへへー。どういたしましてー」
御坂「(何やってんの!?何でここで収録!?)」
佐天「(あちゃー、流石にこりゃ予定外でしたね)」
御坂「(収録放り出して来たのっ!?)」
佐天「(あたしにとっては大事な話です!——が、番組に穴を空けるわけにはいかないので、初春に代理を)」
御坂「(気持ちは分かるけどさっ!)」
初春「ちなみに今日のお話は『後ろに立つ少女』です。地域によって名前が変わるので、大雑把な呼び方をしていますけど」
上条「俺の地元では『メリーさん』だった。知らない女の子から電話がかかってきて」
初春「『もしもし、あたしメリーさん。今、駅に居るの。今からそっちへ行くね』」
上条「イタズラ電話かな?と思っていると、すぐにまた電話が」
初春「『もしもし、あたしメリーさん。今、公園にいるの。今からそっちへ行くね』
上条「んー、子供の声だし警察に相談しようか迷っていると」
初春「『もしもし、あたしメリーさん。今、家の前にいるの。今からそっちへ行くね』
上条「窓から玄関を見ても誰も居ない。気味悪っ、て思っている内に」
初春「『もしもし、あたしメリーさん。今、部屋の前にいるの。今からそっちへ行くね』」
上条「恐る恐るドアを開けると——誰も居ない。ホッと息を吐くが」
初春「『もしもし、あたしメリーさん。今、あなたの後にいるの——』」
上条「ぎぃやぁああぁっ!?——って感じだな」
初春「まぁそういった噂についてのんびり話していこうかと。あ、他に何か興味があったらそっちにしますけどー?」
上条「良いんじゃないかな。メジャーだし視聴者の食いつきも良いと思うけど……身内以外見てないと思うけどもっ!」
佐天「(あたしの回しより上手くやってるよっ!?)」
御坂「(……どうする?暫く黙ってれば終わるでしょ)」
佐天「(イヤイヤっ!ここは攻めていきましょう、攻めで!)」
御坂「(どうしよう意味が分からない)」
御坂「(っていうかさっさとあたし達逃げれば良いだけの話じゃ?『用事終わりましたー』つって合流しても良いんだし)」
佐天「(いえいえ、折角なのでこのハプニングは最大限活用したいと思います)」
初春「そーですねぇ、まず——」
PiPiPi……
初春「っと失礼しました、メールが」
上条「あぁ良いよ別に。風紀委員の呼び出しかもしれないし」
初春「お気遣いありがとうございます。えっと」 パチッ、ピッ
From佐天——『今、あたし後にいるよっ!』
初春「……?」
上条「スパム?」
初春「なんでしょうねぇ、『わたしメリーさん』っぽい気がしますが」
佐天「(うーいーはーるー)」(背後から低い声で)
初春「んきゃっ!?」
佐天「(あたしあたしっ、大きな声出さないでっ!)」
上条「え、メリーさん来ちゃったの?」
初春「え、えぇまぁ、そんな感じかも?」 カチカチカチカチっ
上条(すげーブラインドタッチ早っ!?)
佐天「(返信来ましたね。『何やってんですか!?』って)」
御坂「(うん、初春さんが正しいと思うわ)」
佐天「(返信しますね——『キサマ見ているな!』)」
御坂「(DI○ネタっ!?脊髄反射でボケるのは自制してっ!)」
上条「緊急なの?」
初春「あ、ある意味?あ、また来た」
From佐天——『説明はあとでするから、あたしと御坂さんをどう思っているか聞き出して!』
初春「……はい?」
上条「あー、仕事が忙しいんだったら、別に付き合って貰わなくてもいいよ?俺が今から適当に回ってくるから」
初春「い、いえそう言うんじゃ無くってですね。せめて理由ぐらい聞きたいなー、なんて」
From佐天——『御坂さんも聞きたいって』
初春「一緒に居るのっ!?」
上条「誰と?」
初春「い、いえいえ、って何でもないですよ?えぇっ」
初春「そうですね——あぁっ、上条さんはこの『後ろに立つ少女』ってどんな感想でしょうか?」
上条「初めて聞いた時はすっげー怖かった。あと、理不尽かな?何で来ちゃったの、って」
初春「あー、分かります。この都市伝説では主人公に非はないんですよね」
上条「前回佐天さんも言ってたけど、最近のお話ってそう言うの多いんだってな」
初春「それはですね。『民話と噂』の違いですね」
上条「どういう事?」
初春「あくまでも私個人の意見ですが、と言う前置きがつきますけど、『民話』は大体親から子へ、また村や民族などの共同体単位で語り継いできたじゃないですか?」
初春「だから『救いという名の教訓が入る』んです」
上条「……すまん。もうちょっとかみ砕いてくれ」
初春「『かちかち山』って民話はご存じですか?」
上条「タヌキがお婆さん殺して入れ替わって悪さするけど、最後は兎が懲らしめる話だろ?」
上条「オリジナルは確か、『タヌキがお婆さんを殺して鍋にして、お爺さんに食べさせた』って下りがあったよな」
初春「民話は基本的に勧善懲悪ですよね?だから大人達も『悪い事をしたら絶対に報いを受ける民話』として語り継いできました」
初春「そうする事で子供達の情操教育になりますから」
初春「でも『かちかち山』がもしも噂——都市伝説として語られるのであれば、『お爺さんが食べた』で、終わっている筈なんです」
初春「何故なら都市伝説というのは、基本的に『他人の興味を引けば引く程広まる性質を持つ』からです」
上条「つまり、あれか。『民話は教育としても語られているため、寓意的な意味が多く含まれてる』が」
上条「『都市伝説は面白さ優先で削ぎ落とされているから、本来あるべきだった寓意が無い』って事か?」
初春「えぇ、都市伝説は人の口から口へと語りついていく“だけ”のお話ですから、悲惨であればある程むしろ好まれます」
初春「だからそこに『民話であるような救済措置』が入る余地がない、と」
上条「へー……成程なー」
初春「あくまでも私の考えですけど——でも逆に考えれば、『都市伝説は本来あるべきであった部分が欠損している』とも思いませんか?」
上条「例えば?」
初春「『後ろに立つ少女』は酷い男に騙された復讐のお話、とすれば意味合いは全然違いますよね?」
上条「そうなると『勧善懲悪』っていう寓意が入ってくるよな」
PiPiPi……
From佐天——『長い』
初春「……あっれー?そう言う番組じゃ……?」
上条「まぁその欠損部分を考えるのは楽しいかもな。楽しそう——ってか、面白そうだったら、また新しい都市伝説として広がるし」
初春「ですねー。で、なんですけどもっ!」
上条「ん?」
初春「上条さんって、ぶっちゃけ佐天さんと御坂さんの事どう思ってますか?」
佐天「(話題の変え方下手だなっ!?)」
御坂「(……もうちょっと、色々、うん)」
上条「友達だと思ってるけど?」
佐天「(こっちもこっちで深く考えてなかった!?)」
御坂「(いつか絶対に騙されるわよねっ)」
上条「つーかどうしたの急に?」
初春「あーいえいえっ、そのですねっ、『後ろに立つ少女』がもし復讐劇だったとして、少女は酷い事されたってなりますよね?」
上条「だな。あんま想像はしたくないけど」
初春「だ、だから二人を弄んでいる上条さんの視点を知りたくてっ」
上条「弄んでないよっ!?ってかそれ暴言にも程があるよねっ!?」
佐天・御坂「……」
上条「あ、あれ?壁の向こうから不機嫌なオーラが飛んできてるな……?」
初春「まぁまぁ私だって、お二人の友達ですし気になるじゃないですか?」
上条「うーん。分からなくはないけど」
初春「“私からは絶対に言いません”ので、教えて頂ければなーと」
御坂「(まぁ真後ろで聞いてるんだしね)」
佐天「(ってか民話と都市伝説の下り要るかなぁ?)」
御坂「(そういう主旨の番組じゃないっ!?)」
上条「んー今も言ったけど、友達と思ってるだけじゃ駄目なんだよなぁ?」
初春「出来れば具体的にっ。ご本人には面と向かって言えないような事までどうぞっ」
御坂「(なんかヤケになってない、初春さん?)」
佐天「(テンパっててワケ分からなくなってるだけだと思います、はい)」
上条「佐天さんは良い娘だと思うよ。実行力がありすぎるのも困りもんだけど、それだって基本人助けとかにも使ってるし」
佐天「(おーしっ!来たっ!)」
上条「まぁ……危なっかし過ぎるってのもあるけどね。人の話を聞かない。あと初春さんも相当苦労しているよな?」
初春「ま、まぁ現在進行形で色々とありますよ?」
上条「御坂も似たような感じかなぁ。ただこっちはこっちで能力高いから何にでも突っ込んでいくのが、それはそれで不安になるよなぁ」
御坂「(駄目出し?駄目出しかないのっ!?)」
上条「なんつーか、もっと子供らしく楽しんでも良いと思うんだけどなぁ。あんだけ可愛いんだから」
御坂「」
佐天 チッ
初春「か、可愛いですか?」
上条「あと何年かしたら、すっげー美人になりそうだよな?」
御坂 テレテレ
佐天 イライライライラッ
初春「あーんじゃっ佐天さんっ!佐天さんは如何でしょうかっ!?可愛いですよね、ねっ!?」
上条「だな。あれでもうちょっとアレでなきゃ勿体ないな、っては思う時がある」
佐天 フフンッ
御坂 バチバチバチッ
上条「あれ?後のテーブルで放電してないか?」
初春「ピカチュ○っ!来てるんですよね、確かっ!」
上条「マジでっ!?俺ちょっとゲットしてくる!」
初春「あー駄目ですダメっ!あれはニー×という名のポケモンブリーダ○じゃなきゃ出来ませんっ!」
上条「残念。でもアイツらって兵器になるよね?メガテ○の比じゃなく危険な世界だと思うんだ、うん」
PiPiPi……
初春「あ、また」
上条「ねぇもうメールでやりとりするより、話した方が早くないかな?」
初春「で、ですよねー?出来れば『もうこれが最後』にしたいですよね、ほんと!『これで最後』に!えぇ」
From佐天——『中学生は恋愛の対象になるか、聞いてみて(`・ω・´)』
初春「最後のハードル高っ!?」
上条「……?」
初春「え、えっと、ですね。その、聞きにくいんですが」
佐天「(行っけー初春!君なら出来るさっ)」
御坂「(い、いいのかな?こんな試すような真似しちゃって)」
初春「高校生って、中学生からお付き合いしたい、って言われたら、どうでしょうか?」
上条「人それぞれじゃないかな?中三と高一だったら抵抗は少ないけどさ、ってどんな質問だよっ!?」
初春「い、いえっ、そのっ、上条さんはどう、かなって」
御坂「(あ、あれ?)」
佐天「(どうしましたか?)」
御坂「(この話の流れだと、変な方向へ行くんじゃ……?)」
佐天「(変て)」
上条「俺?俺って——俺でいいの?」
初春「は、はいっ!」
上条「……さっきから色々と脱線してるけど、もしかして初春さん」
初春「ご、ごめ——」
上条「俺の事が、好き、とか?」
初春「——えっ!?」
佐天「(えっ!?)」
御坂「(いやこの話の流れなら誰だってそう思うわよっ!)」
上条「そっか、ありがとうな。俺、女の子からそんな事言われたの初めてだから、すっげー嬉しいよ」
初春「い、いえいえいえっ!?違っ!そうじゃなくっ!」
佐天「(なにやってんの初春っ!?何でNTR展開にっ!?)」
御坂「(は、初めてって……今までのは全スルーだったのかっ!?)」
上条「俺、あんまり初春さんの事知らないけど、佐天さんの話とか、御坂が話しているの聞くと、あぁ友達思いの良い娘なんだなぁ、って思う」
上条「この番組にしたって色々とアドバイスしてくれてんだろ?佐天さんがいつも有り難いって言ってた」
初春「え、えぇまぁ、少しだけ、ですけど」
佐天「(う、初春っ!まさかそんな方法で好感度を稼いでいたなんてっ!)」
御坂「(ぐ、偶然よね?この展開って狙ってた訳じゃないわよね?)」
上条「御坂も白衣みたいな特殊な性癖——じゃなかった、えっと——気持ち悪い取り巻きが居ても、普通にしてくれるって」
上条「中々口には出せないけど、みたいな事は言ってたぞ?」
初春「ダメですからっ!?それ以上は私の危険がピンチですしっ!?」
佐天「(言い直したと思ったら、もっと酷い事を言った!?)」
御坂「(計算、なの?もしかして今日あたし達が頼むのも計算に入ってたの?)」
上条「なんて言うのかな、こう、癒されるって言うのかな。側に居たらあったかいって感じ?」
初春「ちょっ!?」
上条「だってのに風紀委員に志願してるってのも、またしっかりしてんなぁ、と」
初春「いやそんな私なんてとんでもないですよっ!?」 ブンブンッ
上条「そんな初春さんに告白されて嬉しくないヤツは、居ないと思うぞ?」
佐天・御坂「……」
初春「してませんからっ!そういうつもりで言ったんじゃないですしっ!?」
上条「TomF○ck事件もいい加減みんな忘れているよ、だろ?」
初春「それは私の話じゃありませんしっ!Fuc○って言ってる時点でまだ許してませんよねっ!?」
上条「初春さんって西葛西出身なんだって?」
初春「それも私の話じゃありませんからねっ!?」
PiPiPi……
初春「ひっ!?」 ビクッ
PiPiPi……
初春「……」
上条「……出ないの?」
初春「ちょ、ちょっと急用が出来ましたんでっ!失礼しますっ!」 ダッ
タッタッタッタッ……
上条「あー……行っちゃったなぁ。慣れない冗談は言うもんじゃないか」
上条「まだちょっと時間あるしなぁ」
フレンダ「『だっれよりも近くーに○たー、そっの声は聞こえなくっ○ー』」
上条「あ、ごめんちょっと良いかな?」
フレンダ「あたし?あ、こないだのツンツン頭」
上条「この間はありがとうな。良かったらまた話聞かせてくれないかな?」
フレンダ「えーナンパって訳?」
上条「ごめん今のは忘れてくれ。あ、もう行っていいよ?」
フレンダ「ちょっとは肯定しなさいよっ!?話を聞く態度じゃない訳だしっ!」
上条「冗談はさておき、15分ぐらい付き合って貰えないかな?」
フレンダ「んー、どうしよっかなー?あたしは高いって訳よ」
上条「サバパフェ奢るから、なっ?」
フレンダ「うーん。仕方がないわねー、食べてる間だけだったら、まぁ?」
上条「そか。ありがとな」
——風紀委員詰め所 17時
初春「……こ、ここまで来れば、なんとかっ」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「佐天さんから……」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「で、出ないとマズい、ですよね?」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「さ、先に謝ればっ!うん、誤解だって分かって貰えるし」 ピッ
初春「『ご、誤解ですから!そんな事実は——』」
佐天『あ、もしもし初春ー?あたし今、喫茶店の前にいるの』
初春「『え?まだそんな所に?もしかして怒って、ないですかね……?』」
佐天『今から二人でそっちに行くね?』 プツンッ
初春「うぇっ!?い、いえ来られてもですね——って切れてるし」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「!?」 ビクッ
初春「ま、また?——『は、はい?もしもし?』」
佐天『あ、もしもし初春—?あたし今、駅にいるの』
初春「『だーかーらーっ別にあれは誤解であってですねっ!』」
佐天『今から三人でそっちに行くね?』 プツンッ
初春「……」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「こ、これってもしかして、『後ろに立つ少女』のパターンじゃ……?」
PiPiPi、PiPiPi……
初春「も、もしも取ったら近づいてくる——だったら、出なきゃいい訳で」
Pi……
初春「き、切れた?良かっ——」
佐天「——あたし今、初春の後にいるの」
初春「ひぃっ!?」
佐天「ちょぉぉっと、話し合おっかなーって」
御坂「思ったんだけどさ。逃げなくても良いじゃない、ねぇ?」
白衣「わたくしは別に構わないんですのよ。誰が類人猿とお付き合いしようが」
初春「い、いやああああああああああぁぁぁぁぁあああっ!?」
——常盤台女子寮・深夜27時29分
御坂「……」 (テレビの前に待機) ソワソワ
御坂(今日はどうせ初春さんのお話で終りでしょうけど)
御坂(……冗談とはいえ、脅かし過ぎちゃったかな?)
御坂(冗談……うんっ、冗談よね?二人がかりで脅した訳じゃないし、うん)
御坂(あ、今回カメラ固定だから、アイツ映るんだっけ)
御坂(し、知らなかったわー。予想すらしてなかったわー)
御坂(た、たまたまテレビモニタを印刷できるプリンタと)
御坂(ラミネート加工出来る小型熱プレスローラー機があるんだけど、偶然よねー。うん)
御坂「……」
御坂 ドキドキ
(TV)【オープニング・テーマ −砂の城 fearless breaker-−】
円周(TV)『……ねぇ、とーまお兄ちゃん』
円周(TV)『私も、“上条”になりたかったよ』
円周(TV)『そして出来れば、“そっち側”に居たかった』
円周(TV)『それは——“木原”じゃない、“円周”はそうしたかったよ!』
上条(TV)『駄目だ円周っ!戻って来いっ、お前には帰れる家があるんだろうっ!?』
上条(TV)『待ってる俺達が居るっ、だからっ!』
円周(TV)『……ううん、駄目なんだよとーまお兄ちゃん。何故なら、それは——』
円周(TV)『“木原”なら、こんな時、こうしなくちゃいけないんだからっ!!!』
上条(TV)『……っ!』
円周(TV)『だから、だからね、お兄ちゃん——』
円周(TV)『——その“右手”で、私を殺して、ね?』
御坂(……あれ?)
御坂(おかしいわよね?あの金髪がリポーターになってまたフラグ立てやがったー、ってオチじゃないの?)
御坂(っていうか、あの子誰?)
数多(TV)『ヒャィィーハァッ!絶望しなぁ、“幻想殺し”さんよおっ!』
数多(TV)『ここにゃテメェに救えるような奴ぁ居ねぇんだよ!』
数多(TV)『テメェらはアレイスターのプランからは逃げられねぇ!クソみてぇな悪夢の中で、ゲ×吐いて死に晒——』
シェリー=クロムウェル(TV)『死ぬのはテメーの方だよド腐れ野郎っ!!!』 ゴグゥンッ
数多(TV)『まだ生きてやがったかクソババアっ!』
シェリー(TV)『オイオイ何言ってんだよ、オォイッ?あの程度で死ぬとか殺すとか、随分ヌルいんだなぁ学園都市ってぇのはよぉ』
数多(TV)『よく言った!もう殺すっ!』
シェリー(TV)『これ以上アタシから奪うんじゃねええぇぇっ!!!』
数多(TV)『何故理解出来ねぇんだっ!?俺をぶっ殺そうが、テメェらは誰も助けられねぇんだよおおぉぉっ!』
上条(TV)『——黙れ。それはお前が決める事じゃねぇ!』
御坂「……」
上条(TV)『俺が誰かを救うんじゃない!俺はただ“助かりたいって足掻いている奴を引っ張り上げるだけ”なんだよっ!』
上条(TV)『——この、右手でなっ!』
御坂「……」
御坂(ま、まぁたまにはね、こういうのもアリなんじゃないかなって) ワクワク
上条(TV)『最先端の科学がどうした?テメェらの身内も守れねぇような連中がっ!』
上条(TV)『大勢の命なんか助けられる訳がねぇだろうがよおおぉぉぉぉっ!』
上条(TV)『俺は、その幻想をぶち殺してやるっ!!!』
御坂(あ、今今っ!印刷しよっと)
ジーガチャガチャ、ジージージー
白衣「……お姉様?朝方から一体何を……?」
御坂 フーン(ヘッドフォン着けているから気付かない)
白衣(深夜特撮?主人公が何故かイラっとしますけど、気のせいですわね)
白衣「……まぁ、程々になさって下さいましね……」
——学園都市七大不思議探訪 第五話 『後ろに立つ少女』 −終−
——学園都市七大不思議探訪 第六話 『総集編』
——某病院個室 16時30分
佐天「うっいはるーーーーーーーーーっ愛しているぞーーーーーーーーーーっ!!!」
上条「……」
佐天「はぁいっどーもっ、そんな訳で二週間ぶりで御座いますっ!みんな大好き中学生の佐天涙子ですっ!」
佐天「先週はごめんなさいっ、ちょっと友達と修羅場ってたもんで!御坂さん、見てるー?」
佐天「さてさて、そんな訳で今日もやって来ました、『学園七大不思議探訪』っ!——って、あれ?」
佐天「どうしましたーカメラマンさんー?元気がないなー?」
上条「……あのさ、俺、入院してるよね?」
上条(って言うか一日ぐらい前にアックアにボコられたんだけど)
佐天「えぇ。トラック跳ねられて今朝までICUに居たって聞きましたよ?」
上条「ぶっちゃけ大声出すと傷が痛いってレベルの重傷なんだけど?あと佐天さんの大声も地味に響くし」
佐天「やだっ、あたしの言葉が心に響くってっ」
上条「うん、今日は早めに言うけど、君やっぱ頭悪いだろ?なぁ?」
佐天「ま、それは兎も角これお見舞いのフルーツですっ。局の皆さんから」
上条「あ、これはご丁寧にすいません」
佐天「って訳で第六話っ!はっじっまっるっよーーーーっ!」
上条「続けるなよっ!?……あたたっ!?」
佐天「ナースコールしましょうか?」
上条「叫ばせてんのは誰だっ!?……のぉぉぉぉっ!?」
佐天「まぁまぁ落ち着いて下さいな。お水でも飲んで飲んで」
上条「するなよ?絶対笑わせようとするなよっ!絶対だからなっ!?」
佐天「えー、それはもうしろと言っているレベルかと」
上条 ゴクコグ
佐天 ウズウズ
上条「……あのさ、申し訳ないけど今日はちょっとアレでさ」
上条「昨日から約束をすっぽかしたのは悪いと思ってるけど、その」
佐天「あーいえ、次回は総集編を流すので問題ありませんよ」
佐天「そもそも七不思議は『全て知ってしまうと何かが起こる』って話もありますし、一話ぐらいはボカしておこうかなー、と」
上条「そっか」
佐天「でもまぁ流石にそれだけでは悪いので、質問コーナーもしちゃいたいと思います」
上条「へー、もしかしてそれもホームページで?」
佐天「はい。番組へ対するご意見ご感想を募った所、結構な数頂きました。ありがとーっ」
上条「ありがとうございます、だろ」
佐天「あたし一人では厳しいので、出来れば上条さんにも手伝って欲しいなぁ、と」
上条「俺じゃなきゃ駄目なの?」
佐天「はい。それは絶対ですっ!他の人では考えられませんよっ」
上条「……分かった、だったらやらせて貰うよ」
佐天「お願いしますっ。では早速、お一人目のメールをご紹介したいと思います」
上条「よし来いっ」
佐天「『カメラマンさんの好みの女性はどのようなミサカですか?とミサカは匿名で質問します』」
上条「匿名じゃねぇなっ!?つーか番組内容とこれっぽっちも関係無いっ!?」
佐天「いえ、言ったじゃないですか、『一人では厳しい』って」
上条「そういう意味だって思わなかったよ!?もっとこう、信頼出来る相方みたいの意味じゃなかったの?」
佐天「いやいやっ信頼はしてますよ、そりゃ」
佐天「でもこう、匿名のミサカさんを名乗る一万人弱の方からメールを頂いた手前、やっとかないとって気分でですね?」
佐天「スタッフさんが引いちゃってもう。100を過ぎた頃までは『わーすごいねー』って感じでしたが、5000を超えたら恐怖で顔が引きつってました」
上条「……ちなみにメール総数は?」
佐天「9969票で半分以上がご覧の有様でした。勿論アドレス、送信ドメインは全員別です」
上条「そりゃ誰だって驚くし怖くもなるよなぁ。つーか見ているお前ら何やってんの?もっと他にする事ねーの?」
佐天「ウチ、9968人が『匿名希望のミサカ』さんなんですよね。これはもう新しい都市伝説として広めるべきかとっ!」
上条「やめとけって!あとそれは『匿名希望』までが名前であって、ミサカは別だからな?」
佐天「ちなみ9969通の中で唯一、普通のハンドルネームだった方はこんな内容です」
佐天「『HN“ゲコ太らぶりー”さん——“両想いになる自販機”のやり方なのですが、自販機を蹴って出たジュースを二人で飲めば——』」
上条「ビリビリの公開処刑はやめてあげてっ!?これ以上身内に恥を晒すのとめてあげてよっ!?」
佐天「いやーどっちつかずの想い人を持つと大変ですよねー?ふぁいっおーっ!」
上条「良く分からないけど俺の心が痛い言葉だよなっ!良く分からないけどもっ!」
上条「つーかさ、別に俺の好みなんか聞いたって嬉しくもないだろ。もうちょっとそれっぽい質問はなかったの?」
上条「こう言う番組なんだから、一つ二つあったって良いと思うんだ」
佐天「あー……ちょい待って下さい。データはスマートフォンに落としてますんで、検索を——」 ピッ
佐天「あ、ないですねー」
上条「ないのかよっ!?」
佐天「大抵の質問の中には『カメラマン』『あの人』『上条』のキーワードが入っていますし」
佐天「中には『リポーターを変えた方がいい』『ミサカの中から無作為に選べ』って言うのも——」
上条「もうちょっと大人になろうな?オリジナルもアレだけども、お前らもどっかおかしいからな?」
上条「——って佐天さん、ちょっといいかな?」
佐天「何ですか、改まって——ってまさかっ!?」
上条「いや君が思ってるようなジャンルの話じゃないと思うよ?」
佐天「ですかねー?意外とあっているかも知れませんよ」
上条「……真面目な話だ」
上条(アックアに指定された時刻からもうすぐ24時間)
上条(天草式は戦ってくれるみたいだけど、黙って見てる訳には行かない!)
上条(でも——アックア相手に帰って来れる保証もないからな)
佐天「はい」
上条「まぁ番組やって色々あったんだけど、楽し——くは無かったけど、まぁそれなりだった」
上条「あんまり佐天さん事知らなかったけど……まぁ今も正直、テンション振り切ってるのと、しょんぼりしてるの」
上条「どっちが素なのかな、って考える時もあるし」
上条「まぁ……なんつーかな、あんまよくまとめられないけど、兎に角佐天さんは、別に卑屈になる事はないって事だよ」
上条「他の人がそうやってるように、堂々としていれば良いと思う」
佐天「上条さん……やだっ、何かお別れみたいじゃないですかっ!?」
上条「あー、いやいやそんなつもりはないよ?今回は総集編だし、良い機会だからって思っただけだから」
上条「そんな事は全然無いからな?」
佐天「……はいっ」
佐天「でも、ですねっ。一つだけっ、一つだけでいいですからっ、あたしと約束して下さいっ!」
上条「俺に出来る事だったら、まぁ大体は」
佐天「無事に帰ってきて下さいっ。あたしの所じゃなくったっていいからっ、それだけ、守ってくれればっ!」
上条「……うん。分かったよ」
佐天「……約束、ですよ?嘘吐いたら承知しませんからっ!」
上条「あぁっ!」
佐天「嘘だったら左手で超電磁砲キャッチですねっ!」
上条「全力で殺す気だなっ!?むしろトドメを刺しに来てるのかっ!?」
佐天「でも、信じているのは本当ですよ?あと一回で最終回ですからね、『学園七大不思議探訪』も」
上条「何だかんだ言ってもう二ヶ月かー。ちょっと寂しいよなー」
佐天「一回お休みしちゃったあたしが言うのも何ですけど、最後までやり遂げたいですもんね」
上条「だなぁ……あぁいや、するつもりだけど」
佐天「んじゃそれでは今日はこの辺で失礼します」 (カメラを回収)
上条「あー……その、佐天さん?」
佐天「はい?」
上条「今晩はさ、取材とかしないで早く帰ってくれないかな?」
佐天「何でですか?」
上条「あぁいや、理由は……言えないんだけど——」
佐天「あぁ電柱持ったオジサンなら、あたしが追っ払っておきましたから」
上条「そうだな。追っ払って——って今、君なんつった?」
佐天「はいっ、と言う訳で今週の『学園探訪』如何でしたでしょうかっ!」
上条「締めじゃねぇよっ!?おい君今、すっげー問題発言かましたぞ、なあっ!?」
佐天「全国9968人の匿名希望のミサカさんっ、残念ながら質問には答えてくれませんでしたっ!んー、残念っ!」
上条「今まさに君が俺の質問に答えてないからね?つーかマジ?どうやったの?」
佐天「あー、でもこないだ喫茶店でおっぱい大きい人ガン見してましたよー?参考になりますかねー?」
上条「俺の趣味を暴露するの——い、いやっそれはこの際、どうでもいいっ!何したのっ!?君はまたどんな危ない橋を全力疾走したのっ!?」
佐天「ではでは来週で最終回と相成りますが、それでもボクはこう言うさっ、君に向かってこの言葉っ!」
上条「おいっ!?ウヤムヤにしていい問題じゃないからなっ!?絶対にオチないからなっ!?」
佐天「うーいーはーるっ!あーいーしーてるーぞーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 プツンッ
——公園 12時間“前”の早朝(4時30分)
アックア「……まだ、早いのであるな」 (懐中時計を見る)
佐天「あ、すいませーん?ちょっと良いですかねー?」
アックア(セーラー服に金属バットとヘルメット?早朝練習にしては奇妙な格好であるな)
佐天「えっと、にほんごー、つうじませんか?……まいったなー」
アックア「いや、通じているのである」
佐天「良かったー。今何時だか教えてくれませんか?」
アックア「4時……30分であるな」
佐天「そうですか。ありがとうございます」
アックア「それよりも、婦女子が出歩くには少々早い時間では——」
佐天「あ、時計につば九○ついてますよ?」
アックア「え、つば○郎?さっきヤクル○飲んだ時についてきたのであるか?」
佐天「取ってあげますから、貸して下さいなっ」 ヒョイッ
アックア「あ、いや自分で取れ——」
佐天「時計、とったどおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」 タッタッタッタッタッ(ダッシュで逃げる)
アックア「」
アックア(物盗りであるか?大して高い物でもないが)
ヴィリアン(回想)『ウィリアム=オルウェル、これを貴方に』
ヴィリアン(回想)『今の私にはこれぐらいしか、貴方に感謝を表す事は出来ません』
ヴィリアン(回想)『ですのでどうか、貴方と共に——』
アックア「……まぁ、盗みは良くないのであるな」 スクッ
——とある交差点 4時35分
アックア(追い掛けてきたはいいものの)
アックア(あの少女の姿は見えず、交差点の中央に私の時計が放置されているのである)
アックア「……」
アックア(学園都市の罠?……いや、あんな素人の刺客は居ないのである。もっと誘導するにしても方法はあるのであるな)
アックア(罠だとしても近づかなければ良いだけの話であるが——さて?)
アックア「……?」
アックア(天使の力?……いや、魔力、であるか?霧のように薄く、這い上がってくる)
アックア(鳥肌が立つような、嫌な感じである)
PiPiPi……
アックア(私の携帯電話に偽装した霊装に着信?猊下であるか?)
アックア「もしもし?」
女の子『もしもし、あたしメリーさん。今、駅前にいるの』
アックア「誰だ?」
女の子『今からそっちに行くね』 プツッ
アックア(霊装に介入してきた所をみると腕のある魔術師。天草式であるか?)
アックア(しかしそれにしては魔力の質も、量も測れないのである)
PiPiPi、PiPiPi……
アックア「……誰であるか?どうしてこのような幼稚な真似を——」
女の子『もしもし、あたしメリーさん。今、学校にいるの』
女の子『今から二人でそっちへ行くね』 プツッ
アックア(……ふむ。来るというのであれば、正面から粉砕するのみであるが——)
アックア(一体“これ”にどのような意味がある?)
アックア(一般的な魔術師は神話を辿り寓意を再構成する。それがセオリーである)
アックア(だが、この行為自体には何の寓意も含まれていない。我々の魔術とは一線を画すのであるな)
アックア「……」
アックア(新大陸に興った旧神系の精神汚染術式。似ているであるか?)
PiPiPi——
女の子『もしもし、あたしメリーさん。今、喫茶店にいるの。今から三人でそっちへ行くね』 プツッ
アックア「……」
アックア(私が人払いの結界を張ったわけでもないのに、どうして誰も通らない?)
アックア(深夜——いや、早朝とは言え、人通りはおろか先程から車の一台も通らぬのである)
アックア(不気味な——攻撃である。幻術の類では無い。無いが——)
アックア(精神を、いや本能の部分から揺さぶられているような、異質な恐怖を感じるのである)
Pi——
アックア「はい」
女の子『もしもし、あたしメリーさん。今、横断歩道にいるの。今から四人で——』
アックア「っ!?」 ガバッ(携帯電話を捨てて振り向く)
アックア(ここの、歩道ではないと言う事であるか)
女の子『もしもし、あたしメリーさん。今——あなたのうしろにいるの』
アックア「ふんっ!」
ズゥンッ!
アックア「妙な術式を使うようであるが、倒してしまえばどうと言う事は——」
『ずいずいずっころばし、ごっまみそっずいっ』
アックア「なんだ……この、歌は?」
『ちゃっつぼにおわれてとんぴんしゃんっ、ぬけたぁらどんどこしょっ』
アックア「呪歌?どこから聞こえてくるのであるかっ」
『たっわっらっのねっずっみが、こめくってちゅう。ちゅうちゅうちゅう』
アックア「姿を見せるのである卑怯者がっ!正々堂々と——」
『おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも』
アックア「後?まだ後に居るのであるか。ならばっ!」
『いきっこぉなぁしぃ——よおぉっ』
アックア「我が魔術を込めた武器であれば、容易く打ち払えるのである!」
『いどっのまっわっりでっおっちゃわんかっいったの』
ズゥンッ!
アックア「……」
アックア「……終わった、のであるか?確かに手応えはあったのであるが」
アックア「——いやっ、気配が『一人多い』っ!?最初から陽動が目的であるかっ!」
『だぁーれっ?』
ドンッ!!!
アックア「くっ!?…………?」
アックア(ダメージが無い?ただ押されただけ?)
アックア(……何かに突き飛ばされて、交差点十字路の中心まで来てしまったのではあるが)
アックア(だからといって何が起る訳でもない)
アックア「……」
アックア(私の時計が足下に——拾うのであるな) カチャッ(拾い上げる)
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
アックア「時計の、秒針の音……?何故急に聞こえるようなったのであるか?」
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
アックア「害は——ないのであるか。ただ、不気味ではある」
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
『ただいま、時刻は、4時、44分、39秒をお知らせしました』
アックア「……?時報サービスである——」
『ちっ、ちっ、ちっ、ぼーん』
アックア「んなっ!?ば、莫大な魔力がっ!テレズマ?いや違うこれはっ!?」
『ぼーん、ぼーん、ぼーん、ちっ』
アックア「空がっ!空が捲れて、目がっ目がっ、鎌のような月の手がっ!?」
『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』
アックア「深淵からこちらを覗くあれはっ、あれはっ!しにが——」 バタッ
——とある交差点 4時46分
佐天「えっと……な、なんだろう?一人でぐるぐる回って倒れちゃったけど……?」
佐天「き、効いちゃったのかな?『午前4時44分44秒の4つ辻の死神』さん?」
佐天「い、いまのウチにっ……!」
佐天 グッ(バットを振り上げる)
佐天「……」
佐天「……で、出来ないよね。そんなこと」 カランコロンッ(バットを捨てる)
アックア「……」 (シーン)
佐天「車道に居たら危ない、よね」
佐天「よいしょっと——って重っ!?うーんっとおぉっ!」
アックア「……」
佐天「あ、あれ?ちょっと軽くなった?どうしてだろ?」
佐天「ま、いいやっ!でも重っ!」 ズズズッ
アックア「……」
佐天「呼吸の間隔は普通だし、心臓も脈も大丈夫」 ピトッ
佐天「でも念のため病院連れて行った方が良いかも」
佐天「……ごめんさない。今、車呼びますからっ」
佐天 タッタッタッタッ(大通りの方へ駆けていく)
アックア「……」
アックア「……人を呼ばれるのは、拙いのであるな」 (メイスを回収)
——近くの公園 5時
アックア(さっきの“アレ”は何だったのであるか?危うく精神を持って行かれる所であったが)
アックア(全ての罪を免罪される私の特性をも無視するとは、な)
アックア(右手の少年の関係者なのであろうが、詰めが甘いのである)
アックア(あそこでバットを振り下ろしていれば——)
アックア「……」
アックア(いや、あの少女の細腕では私が瀕死でもない限り、ダメージは与えられないのであるが)
アックア(相手が油断した後に一撃を加える。それが戦場の礼儀である)
アックア(それが出来なかった時点で私は止められないのであるな)
アックア(……ともあれ、少し喉が渇いたのであるか)
ジュースの自販機『……』
アックア(まさか学園が急遽毒を入れるとは考えにくいが……まぁ良いのである) ピッ
ジュースの自販機(後藤麻○)『有り難う御座いました』 ガチャンッ
パシュッ
アックア「……?」 ゴクゴクッ
アックア(自販機に小さな液晶モニタ?手の込んだ広告であるな)
アックア(何々、速報……?ニュースも流して——)
ジュースの自販機(液晶モニタ)『イギリス第三王女ヴィリアン様、謎の変態に誘拐されるwww』
アックア ブーッ!?
アックア「騎士団長は何をしているのだっ!?」 ピッ(携帯)
アックア「……」 イライラ
女性「『は、はい?』」
アックア「すまないが、騎士団長を出し——」
女性「『いえ、彼から渡されたのですが——その声はウィリアム=オルウェル?オルウェルなのですかっ!?』」
アックア「ヴィリアン様っ!?ご無事なのですかっ!?」
ヴィリアン「『え、えぇ?それなりには』」
アックア「ただ今私が馳せ参じますっ!どうかそれまでは早まった真似などなさらぬように!」
ヴィリアン「『は、はい』」
アックア「ではまた——」 ピッ
アックア(……ヴィリアン様はお気づきではないご様子。しかも騎士団長まで巻き込まれているのであるかっ!)
アックア(今任務を放棄して私が動けば、ローマ正教からは追われる身になるであろうが——)
アックア(それもまた致したが無いのであるな!) ダッ
——ブリテン 同時刻
ヴィリアン「……どういう意味だったのでしょうか、今のお電話は?」
騎士団長「帰ってくる、そう言ったのですか?」
ヴィリアン「えぇ、とても怖い口調でした」
騎士団長「それはきっと——プロポーズではありませんか?」
ヴィリアン「プ、プロッ!?」
騎士団長「ヴィリアン様も色々とご婚約のお話が出てらっしゃいますし、あの男も痺れを切らしたのでは、と」
ヴィリアン「……そう言えば『帰るまで早まるな』とか」
騎士団長「それは……間違いないでしょうね」
騎士団長「実力的には申し分ありませんし、騎士の位を授ければ問題ありますまい」
ヴィリアン「待って下さい!急に、急にそんな事言われましてもっ!」
騎士団長「……こう言う事を言うと不敬と思われるかも知れませんが、どうかお聞き流し下さい」
騎士団長「ヴィリアン様におかれましては、望まぬ政略結婚をされるよりあの男の側にいらした方が良いかと存じます」
ヴィリアン「……ですがっ」
騎士団長「私は陛下にご報告せねばなりませんので、これにて失礼致しますっ!」 パタンッ
ヴィリアン「……」
ヴィリアン(……ウィリアム、漸く私達は——)
ヴィリアン(——両想いに、なれたのですね)
——常盤台女子寮・深夜28時(早朝4時)
御坂(むー……何か匿名で出した意味が皆無だけど、まぁいいわ)
御坂(来週で最終回かぁ、色々あったなぁ……)
御坂「……」
御坂(無い、わよね?)
御坂(あたし的にはあのバカが佐天さんのフラグ立てて、友情が折れる寸前まで行っただけよね?)
御坂「……はぁ。何か眠れないなぁ」 ピッ
(TV)『イギリス王室からの電撃発表には驚きましたねー』
(TV)『ですねぇ。今までにもお相手が何人か上がっていただけに、今回の正式発表は驚きであったと言えます』
御坂(ヴィリアンさん綺麗よねー。相手の男の人、貿易商って言う割にはいかついけど)
御坂(日本人には外人がそれっぽく見えるせいかしらね?)
(TV)『オルウェルさんは一体何と言ってプロポーズしたんでしょうか?』
(TV)『噂によるとですが、警備の制止を振り切って、ヴィリアン様へ近寄り——』
(TV)『あなたを一生お守りします、と』
御坂(い、言われてみたいわねっ!羨ましいなー)
(TV)『前々からお二人は私的な会合で顔を合わせており、それを切っ掛けに愛が育まれたとの事です』
(TV)『いやーでも格好良いですね。確かオルウェルさん、騎士としての称号を得ているとか』
(TV)『えぇ何年か前に叙勲寸前だったそうなんですが、手違いからされなかったんだそうで』
(TV)『今回は時間を遡って授与されるんだそうですよー』
御坂「……」 ピッ
御坂(ちょっとランニングでもしてこようかな)
——某公園 5時
御坂「ちょいさーっ」 ガコンッ
御坂「ポカリげっとー……ってあれ?また液晶モニタバグってるわね」
ジュースの自販機(液晶モニタ)『イギリス第三王女ヴィリアン様、謎の変態に誘拐されるwww』
御坂「ニュースで芝生えるわきゃないでしょーに——よっと!」 ビリビリッ
御坂「直——っては無いか。つーか余計に酷くなったけど、まぁ誰も見ないわよね」
御坂「全く、何が『両想いになれる自販機』だっつーの!もっと仕事しろっての」
御坂「……」 ゴクゴク
御坂「……よっし!あと5キロ走ろっと」 タッタッタッタッタッ
ジッ、ジジジッ
ジュースの自販機(液晶モニタ)『イギリス第三王女ヴィリアン様とウィリアム=オルウェル婚約させたったwww』
——学園都市七大不思議探訪 第六話 『総集編』 −終−
白衣→白井
乙ー!!!
聖人をも倒す七不思議こえーwwwwww
今回の投下分は終了となりました。お付き合い頂いた方に感謝を
>>120
他のSSでも同じ間違いして突っ込まれました。どうしても”衣”ってイメージが
>>121
メリーさんから時計屋は全てフリで、『一息ついて安心した所にガッと来る』を狙っていた、という設定で
ずいずいで
上条さんは何を そげぶしたんだ?
>>123
左手は左天さんの手、では右手は誰の手を握ろうとしたのか?
上条さんは「二人とも送ってくよ」と事前に言っており、『二人目』とは誰なのでしょうか?
まぁ左天さんの聞き間違えかもしれませんよ
乙です。
御坂妹は10032だから死んだのは10031人、つまり残ってる妹達は9969人なんだけど?美琴入れたら9970人だね。
何か他のSSでもこのツッコミしてるの見たな。
>>126
やっちまいました。次から注意します
——学園都市七大不思議探訪 第七話 『遊園地のジンクス』
——某喫茶店がある駅前 8時
佐天「おっはようございまーすっ」
上条「あ、うん。おはよう?」
佐天「どうしましたか?何か言いたそうな感じですけどっ」
上条「制服じゃないんだなって」
佐天「どうですっ?」
上条「あー、よく似合ってるよ?」
佐天「どうもですっ。あ、そっちも——行きましょうかっ」
上条「おいコラそんなコメントに困るような服は着てないだろうが!」
佐天「服は着てない、って……ヤダ全裸っ」
上条「駅前に全裸だったら超変態だよね?お巡りさん呼ばれてるよね?」
佐天「ごめんなさい、あたしにはそのウルトラマ○みたいな服はちょっと理解出来そうにないです」
上条「着てないからね?あと一方通行に謝った方が良いからね?」
佐天「ヘアピンで継ぎ接ぎした服なんて痛々しすぎてNGですからっ」
上条「そんな頭悪そうな知り合いはいねぇよっ!」
佐天「え」
上条「え」
佐天「——はいっ、と言う訳でそろそろ電車のお時間ですし、行きましょうか、ねっ?」
上条「……あれ?今スルーしちゃいけないボケを見落とした感が……?」
佐天「居なかったんですよ、きっと。っていうかイギリスからどこをどう間違ったら学園都市に来られるのか、って話になりますよね?」
上条「意味は分からないけど説得力はあるよね!何を言っているのか俺には分からないけどもっ!」
佐天「居て欲しくない時には必ず邪魔するし、助けて欲しい時には居ないってただのゴミですよね?」
上条「ごめんな?俺の立場上その質問には答えられないような気がするんだ、うん」
佐天「外伝デビューのゲストキャラ(予定)だったあたしより低人気ってwww」
上条「よっし行こうかっ!駅前で話しても意味はないしなっ!あと君の場合キャラが立ちすぎたのと神様が暴走しやがったのが原因だからねっ!」
佐天「もう『とある魔術の禁書目録』じゃなくって、『とある魔術と超電磁砲』にしちゃいなよYou?」
上条「聞いてて可哀想になるからそれ以上はっ!それ以上は勘弁してあげてっ!?」
——モノレール内 8時15分
佐天「いやでもオチで使うって構想はあったんですね、一応」
佐天「例えばあたしが上条さんち行って、『おおっ座敷童がっ!』とか『上条さんには見えてないのにあたしには見えてる——自縛霊なのっ!?』とか」
上条「場面切り替わったからその話題は終わったんじゃないのっ!?まだ続けるんだっ!?」
佐天「やっても良かったんですけど、別に誰も喜ばないじゃないですか?」
佐天「例えば御坂さんなんかだと、基本人気あるんで弄っても『あ、リアクションかわええなー』的な話で落ち着くんですが」
佐天「インデック何とかさんだと、人気無くて出番無いのがリアルすぎて、逆に虐めみたいになっちゃう的な?」
佐天「残飯にキャビアかけたって残飯は残飯だろ、ってアクタ○さんが言っていました!」
上条「取り敢えず口を紡ごう?多分佐天さんファンからも色々恨みを買っていると思うし?」
佐天「おーい安心しろー赤髪さーん?お前が心配する程、お前の元カノはモテてなんかねーぞーっ!」
上条「中二なんだからっ!君と同レベルなんだからねっ!?」
佐天「——と言う訳で、不毛な話はここまでにして今日の行き先なんですがっ!」
上条「取り敢えず休日空けとけって言われてたけど、遠出すんの?」
佐天「『TATARAワールドパーク』ってご存じでしょうか?」
上条「あーうん、名前が聞いた事があるなー、と」
佐天「先月オープンになったばかりのテーマパークですねっ」
佐天「実は『学園探訪』が結構視聴率良かったんで、フリーパス券を頂きましたーっ、いえいっ!」
上条「え、クオカードは?図書券でも良いんだけど」
佐天「えーっ!現役女子中学生とデート出来るんですから、お金では買えない価値がありますってば」
佐天「あ、でもクオカードもJCも売ってるって意味では同じですよねっ」
上条「嬉しいなっ!俺、佐天さんみたいなお金では絶対に買ってはいけない買っちゃいけない娘とデート出来るって!!!」
佐天「でっすよねー。分かって頂けて光栄です。それとも制服じゃないと無理ですかね」
上条「浮くからな?テーマパークで制服着てたら、『あれ?RE×突撃隊じゃね?』って思われるからな?」
上条「着てる方も連れている方も罰ゲームだからな?」
佐天「ですかねー?でもたまにレイヤーさん半額みたいな日もあるらしいですよ」
上条「そうなんだ。へー、そういうのは新しい発想だよな」
佐天「あれは見ている方が罰ゲームですよねっ!」
上条「キレイなレイヤーさんだって居るよっ!全部が全部放送禁止じゃねぇからなっ!そもそも好きな事をするのは別に良いじゃん!」
佐天「ちょい前にも言いましたけど、ゴミに特上オリーブオイルかけてもゴミはゴミなんですよねー」
上条「今日は口が悪いなっ!?俺の知っている佐天さんはこんなに内角高めを攻めはしなかった筈だよっ!」
佐天「……いや、すいません。なんか、ちょっと、その緊張しちゃって」
上条「あーうん、こないだ病室で二時間説教したから、あれは悪かったと思ってるけど」
佐天「あれはまぁ、あれはあれで需要があった、と言いましょうか。中々悪くねぇよなっ、て感じでした」
上条「ごめん、君が何を言っているのか分からない——説明しなくていいっ!俺が人間不信になるからっ!」
佐天「ヒント、ドM」
上条「女の子のイメージを崩さないでっ!幻想ぐらい見たっていいじゃねぇかっ!」
佐天「『俺がその幻想をぶっ殺す!』」
上条「冷静になると恥ずかしいから人の決め台詞言うのも勘弁してっ!?」
佐天「いえ、ホントすいません。何か距離感が掴めないって言うか、詰めるべきか離れるべきか迷ってて」
上条「俺に聞かれていもな。つーかさっきから突っ込もうか迷ってるんだけども——」
佐天「あっ、見えましたよっ!『TATARIワールドパーク』っ!」
上条「その間違えは縁起が悪いと言った筈だっ!」
——TATARAテーマパーク ゲート
佐天「うっわー、スッゴイ人ですねー」
上条「ま、出来たてなんだから仕方がないだろ。つーかチケットよく取れたね?テレビのスタッフさん?」
佐天「ま、まぁそれこう蛇の道は蛇苺って奴でして」
上条「惜しい。苺は要らないな」
佐天「チャンピオンRE○苺っ!」
上条「あれに関わるのは止そう?そもそも都条例が持ち上がったのは、アレが発端的な意見もあるし」
佐天「まぁでもあれだけ体張って頑張ったんだから、これぐらいの役得はあっても良いと思いませんか?」
上条「二人で生き恥を晒しまくった気がするんだが……」
佐天「ここのテーマパークでは『TATARA』グループのマスコットキャラクター、『一本タタラ』君が冒険する、って設定ですね」
上条「あー……もしかして、あそこに居る着ぐる——」
佐天「中の人など居ませんっ!チャックついてませんからっ!」
上条「最近のは面ファスナー——マジックテープだから。バイトで着た事あるし」
上条「ああいうのって、中に小型の扇風機があってだな。それで空気をパンパンにして形を整え——」
佐天「タッタッラくーーんっ!あっ、ホラ、見て下さいよっ!一本足で器用に立ってます!」
上条「……一つ目一本足毛むくじゃらで異様にキモい、っつーか怖いよね?子供泣いてるし」
佐天「ちなみに『TATARA』グループは蹈鞴師(たたらし)、つまりは山人系漂白の異能集団の末裔を名乗っていますねー」
上条「どういう事?」
佐天「一本ダタラって言う妖怪知りませんか?」
上条「鬼太○で見たような?山に住むんだよな」
佐天「あれは元々里に住む人々が、森の中で製鉄やら鋳造を生業にして暮らしていた集団を見間違えた“と言う説”があります」
上条「見間違えないだろっ!どんだけ人間離れしてんだっ!?」
佐天「灼けた鉄を叩くときには片目で見たから一つ目、またフイゴを踏んだから一つ足、ってな感じですかね」
佐天「『春来たりて山に降りる神、冬来たれば山へ還る神』との側面もありますが」
佐天「話すと本一冊分以上になりますんで省きますが、まぁ鋳造や山師は里の人間からすればそんなイメージだったー、ぐらいのお話です」
上条「ってか詳しいよね。勉強してるんだ、偉いな」
佐天「パンフに書いてありましたっ」
上条「……うん正直で良いと思うけどもなっ。もうちょっとこう、うんっ」
佐天「あーでもやっぱり混んでますねー。取り敢えず何か乗りたいのありますか?」
上条「佐天さんの好きにしたらいいと思うよ。元々チケット貰ったのだって、代役やろうって言い出さなきゃ無かったんだし」
佐天「ありがとうございますっ!……ではまず、絶叫マシン系からですかねー」
上条「いきなりメンディッシュじゃん!?」
佐天「お昼食べてからの方が色々と惨事を招くんじゃないかな、と」
上条「あー……そこまでして乗りたいの?」
佐天「大人の事情的な問題がちょっと」
上条「ちなみにどれ?」
佐天「あれですね。一番『ぐわんっ』ってしてるヤツ」
上条「……なにアレ?拷問?電流ビリビ○棒よりもウネっとしてるんだけど」
佐天「イヤイヤ大人気ですってば!見て下さい行列がっ!」
上条「ないよね?あまりにもアレ過ぎてお客さんも敬遠しているよね?」
佐天「イヤイヤイヤっあれは『TATARA』テーマパークのシンボルなんですよっ!」
上条「……つまり?」
佐天「尖鋭化しすぎて人がついてこな——」
上条「おぉっと学園都市全体を敵に回すのはやめて貰おうかっ!文字通り色々生きにくくする必要はねぇだろ!」
佐天「でも一度乗っちゃったら、諦めるしかないですよねっ」
上条「良い笑顔でそれっぽい事言うんじゃないっ!いえーい、じゃねぇよ!大喜利かっ!」
佐天「と言う訳で行きましょうかっ。大丈夫ですって。学園都市企業は万全ですから。ほら、パンフのここ読んで下さい」
上条「あ、あぁ技術的には心配ないよって事か」
佐天「実はチケット自体に保険料が含まれてまして、何かあってもご遺族は問題ないですっ!」
上条「学園都市一個も関係ねぇよっ!?ブラック企業並みのブラックさだからなっ!金で遺族を黙らせるってどういう保険だよっ!」
佐天「でも開業以来一度も事故は起きてないんですよ?それが信頼の理由にはなりませんかね?」
上条「オープンしたの先月だよね?」
佐天「……」
上条「……」
佐天「さっ、巻きで行きましょうかっ!」
上条「嫌だよおぉっ!?何でアトラクションまで来て命を賭けなきゃいけないんだっ!」
佐天「あーもうっあんまりしつこいとトイレでセーラーに換装してきますよっ!」
上条「誰も得をしない罰ゲームは止めろよっ!?つーか珍しくリュック背負ってると思ったらそれかよっ!」
佐天「と、まぁ目出度く合意も得られた所で行きましょうかっ、はりーはりーっ!」
上条「言うよ?俺こっちじゃ言わないと思ってた台詞言っちゃうよ?」
佐天「さぁではご一緒にっ」
上条・佐天「不幸、だああああああぁあぁぁぁぁっ!?」
——TATARAテーマパーク フードコート 12時
上条「あっれー……?」
佐天「どうしましたか?さっきから首を捻ってますけど」
上条「俺達9時頃来なかったっけ?」
佐天「ええでもパーク入場で結構かかっちゃったじゃないですか。何言ってるんですか、もうっ」
上条「なーんか違和感がするんだけど?あっれー?」
佐天「さて、お昼ですねっ」
上条「フードコートは混んでるよなぁ」
佐天「大丈夫ですっ、佐天涙子は出来る子なのでお弁当作って来ちゃいましたっ」
上条「マジでっ!?」
佐天「……何かビックリの仕方が失礼すぎやしませんかね、えぇ?」
上条「あー、いやいやそうじゃなくって、こう言う手作りの貰うのって初めてだからさ」
佐天「あー……そうなんですか。嬉しい反面ちょっと複雑ですねー」
上条「悪かったよ!高校生なのに彼女の一人も居ないからなっ!」
佐天「そうゆう意味ではないんですが、まっ、食べましょうか」
上条「あそこのベンチ空いてるな」
佐天「ではそこでっ」
……
上条「……マジ?これ初春さん作ったんじゃないの?」
佐天「全否定から入ってきたっ!?」
佐天「幾ら上条さんが料理得意でもそれは失礼ってもんですよ!」
上条「あーごめんごめん。そう言う意味じゃなくてだな。俺が中学生くらいの頃はこんなに料理出来なかったな、って」
上条「えっと——」 モグモグ
上条「美味い、と思うよ」
佐天「やたっ!……あーでもこれはこれで複雑ですねー」
上条「さっきから言ってるけど、複雑って何?」
佐天「女の友情、ですかね」
——TATARAテーマパーク スリラーパーク内 14時
佐天「はいって言う訳でやって来ましたお化け屋敷っ!テーマパークの定番にして、王道っ!必ず入るべし、です!」
佐天「さてさてっ今回あたし達がやって来ましたこの場所はっ!」
佐天「『——TheDeadEscape』ですっ!!!」
上条「さっきからパンフ片手に誰に語ってるの?宣伝?宣伝なんだよな?」
佐天「このアトラクションの売りはですね、まず敷地の大きさにあるでしょうっ。何と東京ドーム三個分の広大な土地に、巨大な施設を造ってしまいました!」
上条「そりゃまた思い切ったなぁ」
佐天「でもこういうのって二回、三回入ると飽きますよね?」
上条「いや、俺怖いの苦手だから入らないし」
佐天「……」
佐天「でもこういうのって二回——」
上条「もっと会話の選択肢を確保しておこうよっ!」
佐天「言ってしまえばここはお化け屋敷専用のブースでして、古くなってくると新しいギミックやエピソードの追加」
佐天「もしくはアトラクション全てを別の物へリニューアルするんですね」
上条「つまり今日はTheDeadEscapeだけど、次来たら展開が変わってるかも?」
佐天「和風じっとりホラーがテーマだったのに、洋風パニックホラーへ変わっているかもしれませんね」
上条「気合い入ってるなー」
佐天「他にも国内外で発表されたホラー映画を、忠実に再現したアトラクションも予定されています」
佐天「映画と原作を見た後、ここで実際に触れられるってのはすっごいですよねっ!」
上条「……思ってたんだけどさ。朝からちょいちょい不自然な宣伝入るよね?」
佐天「今回はパークオリジナルの『TheDeadEscape』って言う脱出モノホラーですね」
佐天「ちなみに無事脱出できれば記念品が贈呈されますっ!欲しいですよねえぇっ?」
上条「あー、うんキーホルダーとかでしょ?」
佐天「さぁ?それは一応秘密って事になっていますが——ヒントを差し上げましょうっ」
上条「豪華賞品だったらやる気も出るしな。よしっ!」
佐天「ヒント、人体の——」
上条「出ないよっ!?貰っても困るものっ!つーか何配ろうとしているんだっ!」
佐天「一部ですっ」
上条「最後までものっそい良い笑顔で言い切ったけどねっ、『わぁ欲しいなぁっ』っては誰も思えないからなっ!」
佐天「えー、キーアイテムをそのままお持ち帰り出来るって斬新じゃないですかね」
上条「モノにも寄るだろ!人体の一部をデフォルメしたキーホルダーなんか誰が欲しがるかっ!?」
佐天「あ、いや、デフォルメしてないらしいですよ?」
上条「……え、どういう事?」
佐天「ほら、パンフに写真載ってるじゃないですか。ここです、ここ」
上条「なんだ載ってるなら秘密でも何でもねぇじゃ——ってモザイクっ!?モザイク掛けなきゃいけないようなブツをプレゼントしてんのっ!」
佐天「って言うかどういう展開になったら、それをキーアイテムにするのか、気になりませんか?」
上条「一周回って、すっげー気になってくるよ。主にスタッフと企画した人の頭もだがっ」
佐天「完徹してテンション上がってたんでしょうね、きっと」
上条「企画素案が見切り発車過ぎるよねっ」
上条「つーかアトラクションの小道具配って大丈夫なの?補充とか大変なんじゃ?」
佐天「あぁいやパンフの下の方に、『お客様から定期的に補充しております』って」
上条「怖ぇぇよっ!?学園都市そういう無茶好きそうだから余計に怖いよっ!?」
佐天「やだなーホラーハウスなんですから、人を怖がらせるのが商売じゃないですかっ」
上条「……そう、なの?ネタなんだよな?出て来る前と後で大切なパーツが増減してたりしないよな?」
佐天「ちなみに『TheDeadEscape』のあらすじはこうです」
佐天「とある地方都市にウイルス性の病原体が蔓延するんですね」
上条「あぁまぁテンプレだよな。定番つった方が良いのか」
佐天「そのウイルスに感染すると『宿主(キャリア)』と呼ばれ、身体能力や攻撃性が格段に増加してしまいます」
上条「ゾンビとかじゃなくてリアルな人の方が怖いかもなー」
佐天「『宿主』になってしまうと全身から色素が抜け、髪や肌が真っ白になってしまいます」
佐天「これはウイルスが色素もエネルギーとして消費する設定だそうで」
上条「宿主とそうでない人が見分けやすいよな。あーでもそれを利用したギミックとかありそう」
佐天「ですねー。同じく脱出しようとする仲間かと思えば、感染途中で変化しつつある『宿主』だったりとか?」
上条「話を聞いている分には怖そうだ」
佐天「『宿主』の特徴にはまだあって“ん”を“ン”、“ぁぃぅぇぉ”を“ァィゥェォ”と言ってしまうんですよっ」
上条「……あれ?既視感がするよね?俺の知り合いも白くてそんな喋りしてたんだけど」
佐天「そして感染者の最大の特徴は——恥ずっかしい台詞を真顔で言ってしまう事ですっ!」
上条「一方通行じゃねぇかっ!?何それっ!?つーかウイルスの名前聞いてないけどっ、どんな名前なのっ!?」
佐天「中二ウイルスですねっ」
上条「確かになっ!その年代の子達は攻撃性も身体能力も上がるし、変な格好や痛々しい言動したがるけどもっ!」
佐天「後すっげー天才なのに『歌』の解明をど忘れしてロシアもまで行くって言う副作用もっ!」
上条「うん、それは俺も突っ込みたかったんだけどな?忘れてあげようぜ?」
佐天「と言う訳で入りましょうかっ。あ、ちなみに脱出失敗すると、ウイルスに感染してこっ恥ずかしい台詞を言わせられる罰ゲームがっ!」
上条「誰得っ!?」
佐天「それ加工してキーホルダーにしたのを、希望者には出口で販売するんだそうです」
上条「買わないよ?幾らテーマパークでテンション上がってても、無理なものは無理だからね?」
——TheDeadEscape内
上条「……」
キャリアA「ハッハァッ!よく来やがったなァこの絶望のパレードへっ!」 フラフラ
キャリアB「ここから先に逃げ場はねェンだよおォッ!」 ガクガク
キャリアC「精々クソムシらしく足掻ンだなァっ!」 ヘラヘラ
佐天「きゃーいやーこわいっ、白塗りでウルトラ○ンみたいな服を着た人が一杯っ!?」 ギュッ
上条「こらこらっドサクサ紛れに抱きつくなっ!」
佐天「や、やだっあたし怖いっ!」
上条「……うん、君が『学園探訪』始めてから小芝居が上手くなったのは認めるけどもだっ」
上条「確かに怖いけどさっ!?もうこれはイジメだよなぁ!?」
佐天「え、なにがですか?」
上条「なんで全員一方通行のコスプレしてんのっ!?本人見たら死にたくなるからなっ!」
佐天「え、でも中二ウイルスに罹患すると変な服を着続けたり、同じ銘柄のコーヒーを飲み続けたりするって」
上条「それもう完全に特定の個人をDISってるよね?訴えたら勝てるレベルだよな?」
キャリアD「オイオイ、お前はアレだよ、涙が出て来る程に抱きしめたいぜェっ!」
上条「なぁアクターの人さ、なんでこんな仕事選んだの?もっと他にバイトとか無かったの?」
キャリアE「(第一位って格好いいじゃないですかっ)」
上条「お前ら素で中二ウイルスに感染してるからねっ!?……ってアレ?キャリアEって事は五人に囲まれている……?」
上条「佐天さん逃げよう——つて居ないしっ!?」
キャリアF「(あ、先に行くって言ってましたよ?)」
上条「親切だなぁオイっ中の人!つーか見捨てて逃げやがったのかっ!?」
キャリアG「さァここから先はァ——」
キャリア全員「『一方通行だッ!!!』」
上条「意味が何一つ分からないからなっ!?」
——TATARAテーマパーク 16時
佐天 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
上条「……」
佐天 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
上条「……あの、すいません。精神削られるんで、そろそろ再生止めて貰っても構いませんかね?」
佐天「えーっ折角の記念品なんですから、もっと楽しみたいじゃないですかっ?」
上条「楽しくねえよっ!なんで自分の黒歴史を延々リピートで聞かせられるんだ!?」
佐天「あたしの分はあげましたよね?」
上条「……あぁ、うん、これな」 カチッ
佐天(キーホルダー)『うっいはるーーーーーーっ!愛っしてるっぞーーーーーーっ!』
佐天「いやぁ恥ずかしいですね」
上条「今更っ!?番組内で散々叫んでたのにっ!?」
上条「つーかさ、なんかキーホルダー買い込んでなかった?お土産?」
佐天「初春とか御坂さんも喜びそうじゃないですか」
上条「いやー……つーか当事者のウチ、約50%は喜んでないんだけどね」
佐天「他人の不幸は嬉しいですしねっ」
上条「不幸って言うなよっ!?つーかちゃんと俺が嫌がってるって認識はしてたんだなっ!」
佐天「さて、そろそろ暗くなってきましたし、アレ、乗りませんか?」
上条「疲れたから丁度いいっちゃいいけど。地味じゃないかな?」
佐天「アレもある意味定番ですから。王道ってヤツは外せないんですよねー」
——TATARAテーマパーク 観覧車内 17時
佐天「……」
上条「……」
佐天「えっと、そのっ」
佐天「……」
上条「ん、なに?」
佐天「あーいや、ですね。なんか、緊張しますね。二人きりになるって」
上条「そうか?最初からずっと二人で騒いでたけどな」
佐天「最初とは心構えが違う、って言いますか。ちょっとは汲みやがれ、って言いますか」
佐天「今日は一日付き合って下さってありがとうございましたっ!」
上条「俺も楽しかったから、こちらこそありがとうな」
佐天「いえいえっ、それだけじゃなくって『学園探訪』の事もですっ」
佐天「あたしのワガママに、ですね。悪いなぁって——」
佐天「——あー、いや違うな。あたしらしくないですね、こんなの」
上条「んーそうか?誰々らしいとからしくないとか、他人が決めるようなもんじゃないだろ」
佐天「……」
上条「好きなようにすれば良いと思う。他人から、らしくない、って気にするよりも」
佐天「それが、あたしらしい、ですか?」
上条「まぁ俺の感想だけどさ」
佐天「……分かりました。では、じゃあ、それならっ」
佐天「上条さん、あたしとお付き合いして下さいっ!」
上条「……佐天さん」
佐天「色々ありましたよね。基本ダラダラやってましたけど、それでもすっごく楽しかったですもん」
上条「その、さ。一つ聞いて良いかな?凄く、大事な事なんだ」
佐天「んー、なんで好きになったとか、どうして俺なのか、みたいなのだったら、『わかりません』ですね」
佐天「人が人を好きになるのって、理由、要りますかね?」
佐天「毎日通学途中で見かけた人を、『あ、いいなっ』って思うのも」
佐天「こうやって番組一つ撮っていくウチにってのも、似たようなものだとあたしは思います」
上条「……そっか。佐天さんの考えは分かったよ。それは正しいと思う」
佐天「はいっ」
上条「でもな、一つだけ、どうしても確認しておなきゃいけない事があるんだ」
上条「俺はそれを解決しないと、先には進めない」
佐天「……分かりました。あたしで答えられる事であれば、なんだってお答えしますっ」
上条「ありがとう、じゃ聞くけど——」
上条「——佐天さん、君が朝からずっと右手に持ってるハンディカム、それは何なの?」
佐天「……」
上条「……」
佐天「『TATARA』社から発売されているR2D2ってビデオカメラですねっ」
上条「違げええええっての!そうじゃねぇだろっ!?なんで朝からずっとデート風味で撮影してんだよっ!?」
上条「つーかずっと気になってんだけど、“REC”って赤く点滅してるものっ!」
佐天「——はいっ、と言う訳で『学園七大不思議探訪』最終話、『恋人になれる観覧車』はガセでしたねー、いやー残念ですっ!」
上条「ドッキリかっ!?やっぱりそれっぽいフリは全部仕込みだったの、ねぇっ!?」
佐天「つーかあたしもおかしいと思ったんですよー、開店して一ヶ月でもうそんなジングスが出来るなんてあり得ませんよねー」
上条「返せよっ!俺の純情を返してくれよぉっ!ちょっと気になる可愛い後輩の娘からっ、『あれ、もしかして佐天さんルート入っちゃった?』って思ったんだからっ!」
佐天「いやー高校生もチョロいですねっ、いえーいっ!」
上条「悪気の欠片もないなっ!?」
佐天「あ、だったらキスでもします?お詫び的な意味で?んーっ?」
上条「しねぇよっ!これ以上俺に罠を張るのはやめてくれないかっ!」
佐天「まぁそんなこんなで約二ヶ月続いて来た番組も、今日で最終回と相成りましたっ!最後まで見てくれたあなたっありがとうございます!」
上条「……あーもうカメラ貸しなさいっ!最終回だっつーのに、凹んでる俺の姿撮ったって意味無いだろっ」 ヒョイッ
佐天「ちなみに上条さんはどうでしたか?あたしの感想は言いましたけど」
上条「やっぱさっきのは『学園探訪』のコメントだったのかよっ!?」
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
上条「あぁ確かに俺の幻想はぶち殺されたけどなっ!君にっ!」
佐天「『——科学では決して解明出来ない何かが、あなたを待っているかも知れません』って、ナイスにコメントを頂きましたよっ」
上条「だから人の台詞を勝手に盛るなと何度言えばっ!?」
佐天「じょーうねーつのーかなーたからーしんきろー○っ」
上条「学校の怪○のテーマソングを歌うなっ!?あれは別に怖くなかっただろっ!」
佐天「中尾隆○さんのツンデレにはぁはぁする番組ですよねっ!」
上条「中尾さんの良い役って少ないんだよっ!放っておいてやれよっ!」
佐天「あたしが知ってる限りでは闇○さんぐらいしか居ませんしねー」
上条「破妖の○っ!?しかも集英○カセットブック版っ!?あれ出たの1991年だよっ!?」
佐天「お母さんのです」
上条「親子でファンかっ!」
佐天「あ、ちなみに視聴者さん感謝キャンペーンとして、今日作ったキーホルダーをプレゼントしまーすっ」
上条「さっきの黒歴史を配布するのっ!?」
佐天「詳しくは番組ホームページにてご確認下さいねっ」
佐天「ってまぁ最後の最後までグダグダでしたがっ、まぁそんな番組もあったって良いよねっ?」
上条「あーなんか本当にすいませんでした。つーか御坂とミサカ達しか見てないんだろうけどもさ」
佐天「ボクとキミとの冒険はここで終わるけどっ!辛い時には想い出せっ、二人で一緒に旅した事をっ!」
佐天「キミが想い出してくれるならっ、ボクはキミとずっと一緒だぞっ!」
上条「いやそんな冒険はしなかった筈だ。ダラダラやってた以外の記憶はない」
佐天「ではでは名残惜しいけど最後の言葉っ!最後だしごっ一緒にっ!」
上条「最初っから思ってたんだけど、心霊番組で佐天さんみたいなテンション高いリポーターって無理があるよね?」
佐天「うーーいーーはーーるっ!!!愛してっるっぞーーーーーーーーーーーーっ!!!」 プツンッ
——TATARAテーマパーク 観覧車内 17時20分
佐天「あー……もう地上着いちゃいますね」
上条「もう一回乗る?」
佐天「はいっ——あぁいや、それはちょっと。いつまでもグルグルしちゃいそうで止めときましょう」
上条「……そっか」
佐天「なんか最後まで変わりませんでしたよねー、何っにも」
佐天「進歩が無いっていうか、成長しないって言いますか」
上条「いやー、そんな事はないと思うけど」
佐天「いやいやっそんな事ありますってば!早く大人に——もうちょっと大きく、なりたいですもん」
上条「そっかな?俺はそうは思わないけど」
上条「何か最初にここへ来たら、最初から最後まで観覧車で回ってたような気がする。『だって大好きなんですもんっ』とか言って」
佐天「やだなー、あたしだってそのぐらいの分別ありますって」
上条「暇人って言うだけで俺をカメラマンに抜擢したヤツの台詞じゃねぇなっ!?」
佐天「ま、まぁあれは色々と思惑もありましてね、えぇ」
上条「んーでも、何かちょっと大人っぽくなった、って感じがするけど」
佐天「あー……確かに、それはそうかも知れませんね。よく言うアレだと思います」
上条「やっぱり。何かあったの?」
佐天「——恋、しちゃいましたから」
——常盤台女子寮 深夜27時58分
御坂「……」 コテッ
御坂(デートか、羨ましいなぁ)
御坂(正々堂々勝負、つったってあたしにはそんな度胸はないし)
御坂(二人が付き合うようになったら、死ぬ程後悔しそう……だけど)
御坂 グスツ
PiPiPi……
御坂(朝から電話?ええっと……佐天さんから?)
御坂「……もしもし?」
佐天「『あたしメリーさん、今、寮の前にいるのっ!』」
御坂「怖っ!?」
上条「『朝から無意味なボケを挟むなっ!』」
御坂「えっ!?な、なんであの馬鹿の声が入んのよっ!?」
佐天「『あー、すいませんね。ちょっと窓から寮の門見て貰えますか?』」
御坂「は、はいっ?」
佐天「『見た方が早いですって!ねっ』」
御坂「あーうん。ちょっと待って」
御坂(ケータイからハッキングして監視カメラを呼び出して——)
御坂「——って何で二人とも玄関前に居るのよっ!?」
佐天「『いやーなんかですねー、あたしらしくすりゃいいんじゃね?って無責任なアドバイス貰いましてね』」
佐天「『だったらしてやろうじゃねぇかって話なんですよっ!』」
御坂「意味がっ!意味が分からないわっ!」
佐天「『このまま黙って見てるのもアレですし、どうせだったら今からアタックしましょうよっ!』」
御坂「ちょっと待ってよ!そんな無責任な——」
佐天「『責任?そんなの知りませんよ?』」
佐天「『でもだからなんですか?失敗するかも、関係が変わるかも、それだけの理由で諦めきれます?』」
御坂「そりゃ、無理、だけど……」
佐天「『ま、そんなに難しく考える必要はないと思いますよ。今すぐ結論を出さなくっても』」
佐天「『でもまぁあたし達が“そこ”へ立つまでに、完売してるって事もあり得ますよね?』」
佐天「『だったらキープしとこうぜ!ってそれだけのお話しですよー』」
御坂「わ、分からない事はないけどもっ」
佐天「『あたし達中学生が“年上のお兄さんに保護者になって貰う”だけですってば』」
佐天「『子供であっても子供なりの戦い方がある、ってのも武器じゃないですかねー』」
御坂「いやでもあたしは——」
佐天「『あ、今から行く遊園地では“ゲコ太ヒーローショー”をするんですよっ』」
御坂 ピクッ
佐天「『いやー前売り券取るの大変だったんですが、御坂さんが嫌だって言うんなら初春でも誘って——』」
御坂「それは拙いからっ!色々な意味で初春さんも巻き込むと修羅場になるからっ!」
佐天「『よーっし!かかってこぉいっレベル5っ!能力の差が恋愛の決定的な違いじゃないのを教えてやるぜっ!』」
御坂「……やったろうじゃないっ!見せてあげるわよっ!本気のあたしの力ってやつをね!」
佐天「『よく言った!——あ、今日は遠出しますから、準備して出て来てくださいねっ?』」プツンッ
御坂「……」
御坂(こ、このままじゃ終わらないんだからねっ!)
御坂(あたしは本気だしっ!)
御坂「……」
御坂「と、取り敢えずシャワーよね、うん」
御坂 パタン
白井「……」
白井(お姉様……) ムクッ
白井(不本意ではありますけど、わたくしはっ、お姉様を応援いたしますの!)
白井 ガサゴソ(高い下着を取り出す)
白井 ポンッ(御坂のベッドへ放置)
白井(どうか、ご武運を!) キリッ
——常盤台女子寮 早朝4時13分
上条「なぁ君らは一体何の話をしていたんだ?」
佐天「女の友情的な話ですかね。結局はチキンが二羽居るだけですが」
佐天「まぁいいじゃないですか。そんな事よりも今日行く遊園地ってご存じですか?」
上条「有名だから名前ぐらいは、かな?行った事は無いと思う、けど」
佐天「この間行ったのはテーマパークであって、正式な遊園地は初めてですしね」
佐天「実はですねぇ。その遊園地にはジンクスがありましてねー」
上条「また?どうせしょーもない話なんだろ」
佐天「しょーもないって。番組の意義全否定ですか」
上条「と言うか番組の中で検証出来た試しは無かったけどな!」
佐天「でもあたし番組やって気づいたんですけど、そういうのがあるとかないとか関係無いんですよね」
佐天「や、まぁあたしにとっては大事だとは思いますけど、それ“だけ”が大事でもないですし」
佐天「例えばですね、お金って大事じゃないですか。無ければ生きていけません」
佐天「でも逆にどこか“遊び”の部分だって必要だと思うんです。趣味だったり気晴らしだったり」
佐天「ドレッングみたいなものですかね?無ければ無いでも構わないけど、無いと無味無臭で飽きてしまう、って感じで」
佐天「だから科学万歳の学園都市だって、そういう“遊び”があっても良いんじゃないかな、って」
上条「良いと思うよ。能力開発やらカリキュラムだけなら息が詰まるし」
上条「真面目に入れ込みすぎてついて行けなくなった連中の中には、スキルアウトになったバカも居るんだし」
佐天「あたし達——いえ、あたしみたいな無能力者だからこそ言えるかも知れませんけど」
上条「いいんじゃないかな。俺——俺達みたいな無能力者だって、夢は見てもいい筈だろ」
佐天「……はい。ですねっ」
上条「んで、そのジンクスってどういうの?怖い系?」
佐天「いえっ、どっちかと言えば幸せになる系ですね」
上条「どんな話なの?」
佐天「それはですね——」
御坂「おっはよーっ!って何の話?」
佐天「今日行く遊園地のジンクスの話です」
御坂「へー、どんなの?」
佐天「『ツンツン頭の高校生と常盤台の超電磁砲と不思議大好きの女の子が三人で行くと、幸せになれる』って話です」
御坂「対象がピンポイント過ぎるわねっ!?」
上条「明らかに俺達以外は適応されねぇだろっ!?」
佐天「昨日作りましたっ!」
上条「100%嘘じゃねぇかよっ!」
佐天「いーんですよってば!ホントにしちゃえば、嘘にはならないんですから」
御坂「そ、それは論点が違うでしょうっ!」
佐天「あ、上条さん右手失礼しますねー」 ギュッ
御坂「話を聞きなさいよっ!」
佐天「ん?御坂さんもそっち、掴まないんですか?」
御坂「それはっ……」
佐天「前にも言いましたけど——誰かと手を繋いだからって、それ以上駄目って法律はないんですよ」
佐天「好きな人達全員と繋がっていられたら、素敵な事だと思いませんか?」
佐天「そりゃ多分いつまでも、どこまでも続く関係じゃないかも知れませんけど」
佐天「だからって今、あたし達が幸せなのは確かなんですからっ!」
上条「いや、色々と間違っている——って御坂?」
御坂「……行きましょっ、もう色々と覚悟は決めたから」 ギュッ
上条「お前も意外と流されるよなっ!」
佐天「でっすねー。いざ『遊園地のジンクス』を実践にっ!」
佐天「『二人を口説き落としたらハーレムルートに入れる』遊園地へっ!」
上条「さっきと大幅に内容が変わってるぞっ!?」
御坂「しかも教育に悪い事この上無いなっ!?」
佐天「さぁさぁっ、時間は有限ですよっ!気がついたら大人になっちゃってるかもっ!」
——学園都市七大不思議探訪 第七話 『遊園地のジンクス』 −終−
——学園都市七大不思議探訪 キーホルダー応募動画
——常盤台女子寮 18時34分
御坂「ただいまー……って黒子は居ないのか」
御坂「……」
御坂(つっかれたー。まぁ楽しかったけどさ)
御坂(あー……何か気負う必要も無かった、かな)
御坂(……このまま行く所まで行ったら、それはそれで嫌な予感がするんだけど)
御坂「……」
御坂(中二キーホルダー、二人から一個ずつ貰ったけど)
御坂(もう一個ぐらい、あってもいい、わよね?)
御坂「……」 カチャカチャ
御坂「キーホルダー抽選のお知らせ……ここか」 カチッ
佐天(web動画)『うーいはるっ!愛しているぞーっ!』
上条(web動画)『なぁ佐天さん、俺やっぱりそのフレーズ幾らやっても流行らないと思うんだ』
佐天『いやいやっ、あたしの母校じゃ流行ってるみたいですよっ』
上条『タチ悪いなっ!そっとしてあげなよっ!』
佐天『まぁそんな訳でキーホルダー応募の仕方をお教えしちゃいますねっ』
佐天『この動画の下になるメールフォームから、必要事項を書き込んで下さいなっ』
佐天『そうすると抽選で10名様にあたし達の中二台詞入りキーホルダーが当たりますっ』
上条『……なぁ、この一番下の、これ何?』
上条『「誰と誰が何かを取材するの希望」……って?』
佐天『あぁそれは次のスペシャル用のアンケートですね』
上条『へー、スペシャル——スペシャルっ!?まだやんのっ!?』
佐天『今度は一時間番組でもう少し早い時間にするそうですっ。番組改編期なので一回だけですがね』
上条『……はぁ、付き合うけどさ』
佐天『でまぁ視聴者の皆様には「取材に行って欲しいメンバー」と「取材対象」を決めて頂きたいなー、と』
上条『つまり?』
佐天『そうですねぇ、例えば——「佐天と上条が赤マントを取材しに行く」って感じに書いてて頂ければ』
佐天『でも内容はどんな感じになるのかは不明ですよ?』
佐天『「流行○神」や「学校であった怖い○」みたいな救いの無いガチ心霊モノになるかも知れませんし、あたし達のお話みたいに自販機を取り囲んでダラダラするだけかも』
上条『ま、それは取材してみないとどうなるかは分からないしな。でも取材に行って欲しいメンバーってのは何?』
佐天『初春ナビが局内で好評だったんで、行く人間を変えるのも面白いかなーっと』
上条『俺が行かない可能性もあり?』
佐天『はい。あたしと初春だけ、ってなるかも知れません』
上条『それはそれで不安だよなっ』
佐天『ちなみに取材に行く面子は「あたしが泣き落としでどうにかなる範囲」ですね』
佐天『なのでまぁ、あたしの交友関係じゃないと厳しいと思います』
上条『泣き落としを友達に使うつもりなのかっ!?』
佐天『あ、でも匿名希望のミサカさんでしたっけ?あの方達は自薦されているので、候補に挙がっています』
上条『ミサカ×ミサカ×ミサカになったらカオス過ぎるだろ』
佐天『人数はまぁ常識的な範囲でお願いします。何と言っても低予算番組なので、お茶代ぐらいしか出せませんし』
上条『取材対象は?』
佐天『ターボばあちゃん的な都市伝説から、妖怪まで大抵はまぁ、ですかね。出来ればメジャーなもの程有り難くはありますが』
佐天『ただし!コトリバコだけは絶対にNGです!忘れないで下さいねっ』
上条『あー、確か死んだ子供の屍体を遣って呪いを掛ける、だったっけ?』
佐天『あたしの弟のメル友さんが、あれを作中のギミックにするため、大真面目に論文書いてたんですって』
上条『幾つだよそいつ。小学生が繰り込むテーマじゃねぇだろ』
佐天『割と真剣にルーツはどこなのか、効果はどうなのか、寓意はどうなのかってのを検証してたんだそうですか』
佐天『その、死にそうな目に遭ったんだ、との証言が』
上条『……マジで?怖いな』
佐天『……赤玉、って知ってます?』
上条『すっげー言いづらいんだけど。あれも都市伝説だっけか』
佐天『あたしもアレなんで言いませんが、出ちゃったんですって』
佐天『血精○症だかって、突然アレに血が混じっちゃいまして』
佐天『病院行って調べてみても、原因は特定されなかったそうですけど』
上条『死にかけるような病気なのか?』
佐天『それ自体は大した事無かったんですけど、その、お相手の方が居る事なので』
上条『あー……』
佐天『「どこの女から病気貰って来たの?ねぇ、ちょっと詳しく教えて欲しいかな?」って死ぬかと思ったそうです』
上条『大変だったなぁ』
佐天『いえ、その方は叱られるのもイケるクチなので、プレイだと思って大変興奮した、と』
上条『もう死んじゃえばいいと思うんだ。そいつ』
佐天『でも人間関係が壊れるかも知れなかったので、そっちの方はシャレにならなかったそうです』
佐天『病院行って診断書貰って、ついでにお高いバッグを買わされる羽目になったと』
上条『プラセボ効果じゃないの?思いこみで何とか、っての』
佐天『体調が悪い時“にも”起こる病気らしいですから、一概に呪いや祟りって訳じゃないらしいですけどね』
佐天『でも逆にその人曰く、「古戦場や慰霊碑の類は数千枚以上撮ってるのに、一度も心霊写真らしきものが出来た事はない」らしいです』
上条『信じてはないんだ?』
佐天『友人を一人亡くしていて、今も命日やお盆とお彼岸には欠かさずお墓へ行ってるそうですから、むしろウェルカムだそうです』
上条『……コメントに困るな』
佐天『だもんでコトリバコ以外のでお願いしますねー』
佐天『あ、ただしスケジュールとか色々都合もありますから、「決して最多得票が決定ではない」というのもお断わりしておきます』
上条『まぁそれは仕方がないか。視聴者の皆さんごめんなさい』
佐天『新シリーズ、【とある魔術の禁書目録SS・『千年桜郷』】もありますしね?』
上条『……おい、今何つった?ネタだよね?本決まりじゃないよね?』
佐天『今度体験学習で“外”へ実習に行くんですよね?いいなーあたしも行きたいですっ』
上条『待て待て待てっ!そうやって無茶な前ブリを増やすなっ!』
佐天『え?なるほどー、関東某所の山村ですかー。いいですなー風情があってー』
上条『逃げ道を塞がないでっ!?大体学園都市を離れたら需要が無くなるからねっ!?』
佐天『姫神さんメインヒロインで伝奇モノですか?よっ、この「幻想殺し」っ!』
上条『行かないからなっ!?絶対だぞっ!絶対だからなっ!?』
上条『あとキミは「幻想殺し」にエロい意味を付加しようとしているよね?なんで?』
佐天『あ、んじゃもう少し暑くなったらあたしたちと海へ行きませんかっ。引率役兼保護者で』
上条『海水浴、ってこと?“達”って誰と誰?』
佐天『あたし、初春、御坂さん、白井さんですね。二泊三日ぐらいのスケジュールで』
佐天『知り合いの海の家から誘われてるんです。シーズン前で良かったら遊びに来ないかー、って』
上条『へー、確かもう少し経ったら暑くなるし、良いかもな……白井にはゴミみたいな目で見られそうだけど』
佐天『ね?穏やかーな感じでノンビリできますよ、きっと』
上条『だなー。たまにはゆっくりしたいし』
佐天『では新作は【とある魔術の禁書目録SS・『海より帰り来たる 〜触月の夜〜』】と言う事でっ!』
上条『怖いよっ!?そのタイトルだと帰って来ちゃいけないモノが帰ってくるよねっ!?』
佐天『お盆ですしねー』
上条『騙されないぞっ!どうせサイコホラーかクトゥルーもんなんだろっ!?』
佐天『どんだけレベル5が強かろうとも、精神を穢しちゃえばこっちのモンですし?』
佐天『まず御坂さんを恐怖と快楽で堕とした後、白井さん、初春が魔の手にっ!』
佐天『あたしまでレ×られそうになっていると、上条さんが乱入して救出!』
佐天『なんやかんやでそげぶした後は、朝日をバックにあたしとその肩を抱く上条さんっ』
佐天『生き残った二人は目出度く恋人に——って、何言わせるんですか、バカーーーーーーっ!!!』
上条『何だその一昔前のエロゲにありそうな展開。つーか君さらっと友達殺したからね?』
佐天『まー、そんな感じでヨロシクですっ。採用されるかどうかは別ですが、送らなければ採用は絶対にされませんよーっ!』
上条『待って?ここで終わったら空気が凄い事になるよね?』
佐天『んじゃまぁそんな感じでっ。キミの応援次第ではボクと本編で会えるかもなっ!』
上条『おいばかやめろ投げっぱなしで終わるのはマズ——』プツンッ
御坂「……」
御坂「……あ、投票」 カチャカチャ
御坂「『上条さんと御坂(超電磁砲)さんが——』」
御坂(何にしよう?怖いの苦手なのよね……)
御坂 ピッ
御坂「『あ、もしもしー初春さん?今ちょっといいかな?』」
御坂「『別にこれっぽっちも他意はないんだけど、その、恋愛が叶う都市伝説、みたいなの知らないかな?』」
御坂「『うんっ!深い意味は無いのよっ!』」
御坂「『え、縁結び?』」
御坂「『都市伝説じゃないけど、まぁジンクスみたいなもの……うんっ!』」
御坂「『分かったわありがとうっ!お礼はきちんとするからっ!』」
御坂「『……いや、こないだのはね。ノリで——』」
御坂「『……はい、はい。ごめんなさい反省してます。うん』」
御坂「『——じゃまぁ、ちょっと忙しいからこれでっ!』」 ピッ
御坂「……」
御坂「縁結びを検証——よし、送信っと」
御坂「……」
御坂(エラー?おかしいな、つーか異様にサイトが重いわね。マイナーなサイトなのに?)
御坂(現在閲覧している数——9970名っ!?全員かっ!?)
御坂「……」 ピッ
御坂「サーバーにハッキングっと——受信したメールの数10万通って!?」
御坂(あの子達……まさかっ!?) ピッ
Fromミサカ10078——『上条とミサカ10078が恋人になった後、別れさせる公園のジンクスを取材しない』
御坂(攻めすぎでしょうがっ!——ってか最後に『取材しない』って意味がないわよねっ!)
御坂(つーか、こっちはっ?)
Fromミサカ13276——『上条とミサカ13276がマリッジブルーを検証』
御坂(噂関係無いなもうっ!?)
Fromミサカ10666——『100万まで出す!』
御坂(ストレートに買収までっ!?)
御坂「まっ、負けられるかああああぁぁぁぁっ!!!」 カチャカチャッ
——学園都市七大不思議探訪 キーホルダー応募動画 −終−
お疲れ様で御座います。>>1です
一応アフター、と言う形でもう一話書きたいと思いますので、宜しければキーホルダー応募動画であったように書き込んで下さいませ
例−上条さんと御坂(超電磁砲)さんが縁結びの検証(取材)
内容はグダグダになるか、ガチ怖いにものなるかは不明です
御坂さん&ミサカさん達は泥仕合になっていますが、まぁ一人一票程度で宜しくお願いします。どうせ見ている方はそんなにいらっしゃいませんので、倍率も低いでしょうし
応募期間は一〜二週間程度。どうかお気軽にお書き込み下さい
ではまた『学園都市七大不思議探訪 スペシャル版』でお会い出来れば幸いです
いつも通り上条さんと佐天さんが縁結びを検証で…
乙です。
上条さん佐天さん御坂の三人で怪奇ロリコンウルトラマンの検証。
——学園都市七大不思議探訪 失章〜○○○○の鬼神解体〜 『後追い小僧』
——某ケーブルテレビ局編集 0時10分
ジリリリリリリリリリリッ
局員「火事だっ!急いで避難しろ——編集なんて放っとけ!マスターはストレージに保存してあるだろ!」
局員「まだ見てない?別にどうだって良いだろうがっ!急げっ!」 タッタッタッタッ
……
ヒュッン、ストン
結標「えっと……?」
結標「これ、よね?」 カチッ
ドォンッ!
結標「お疲れ様」 ヒュンッ
——路上 0時11分
結標「……」
結標(テレビ局から盗めって言われたけど、映っちゃいけないものでも映っちゃったのかしらね?)
結標(問題あるなら圧力掛ければいいのに、非効率的だと思うけど)
結標(報道系じゃない、しかもローカル系のテレビクルーが何撮ったってのよ)
結標「……」
結標「……ふむ」 カチッ(携帯電話にメモリーカードを差し込む)
結標(ウイルスは……ある訳ないか。動画を合計すると4Gちょい)
結標「うーん……?」
結標(『対抗手段』になるとは思えないけど……まぁいいか) ピッ
——未編集の動画 P2070100 何処かの山道
佐天「あー、迷っちゃいましたね、うん」
御坂妹「どうするのですか?とミサカは責任の有無を問うてみます」
上条「俺じゃねぇだろっ!?オマエラが勝手に『取り敢えずカメラ回しましょっか』って突っ込んだんだからな!」
佐天「いやでも普通の道ですし、歩いていけばどっか着きますって、ねぇ?」
御坂妹「それは迷子になる時の最悪のパターンだな、とミサカは懸念を表明します」
上条「GPSも動かねぇし、つーか動画撮ってる場合じゃねぇよな?」
佐天「ブレアビッ×みたいで燃えるぜっ!」
御坂妹「いえ、その名前だと『売女のブレアさん』と言う意味になるとミサカは指摘します」
上条「燃えないしツッコミも不適当だよっ!?下手すれば身体の危機が迫って居るんだからなっ!」
御坂妹「……?」
上条「どした?」
御坂妹「いえ、今ネットワークに揺らぎが起こったような、とミサカは不安を隠しながら言ってみます」
上条「……おいおい。シャレになってねぇぞ。食べ物なんかチョコとポカ○ぐらいしか持って来てないし」
——路上 0時13分
結標「……?」
結標(普通の動画よね?学園都市内の極秘施設を映したって話でも無いでしょうし)
結標(んー……?)
——未編集の動画 P2070101 何処かの山道
ミーシャ「問一。貴方は甘味を提供する意思はあるのか」
上条「あー、あるけどさ。一応カロリーだから遭難した時のためにとっといた方がいいだろ」
ミーシャ「……」 ジーッ
佐天「あ、大人げないですよー?欲しいって言ってるんだから、ねー?」
ミーシャ「正答。貴方の意見に同意する」
上条「ああもうっ!分かったよ、ちょっとだけだからなっ!」
ミーシャ「貴方に感謝する……銀色?ピリピリする」
上条「噛むな噛むなっ!それは剥いて食べるんだっ」
佐天「やだ、えっちっ!」
御坂妹「卑猥な表現を好む、とミサカはネットワーク内に送信しました」
上条「助けてーっ!?ボケに対してツッコミの数が足りてないよっ!」
ミーシャ「これは……っ!」 モグモグモグッ
上条「一息で全部食うなよっ!大事に食べなさいよっ!」
——路上 0時15分
結標(ただのコント撮影してるだけ?)
結標「……」
結標「……あれ?」
結標(今、一瞬で昼間から真っ暗になった……?)
結標(カメラの故障よね、きっと。露出補正が壊れたのか)
——未編集の動画 P2070102 何処かの山道
ミーシャ「貴方に感謝する」
上条「あーもう口の周りベッタベタにしてさっ!子供かっ」 フキフキ
ミーシャ「解答一。私達は例外なく神の子である」
10031号「そんなにお腹が空いているならこれをどうぞ、とミサカは用意して来たおはぎを差し出します」
上条「お、おぉ?ありがとう」
佐天「あ、おいしそうっ。私も頂いて構いませんかね?」
御坂妹「……?」
10031号「いえいえ感謝には及びませんよ、とミサカは内心ニヤリと笑います」
上条「どういう意味?」
木原数多「食うんじゃねぇよクソガキども。そいつぁ『ヨモツヘグイ』だ」
御坂妹「ネットワークで検索——『死者から饗(きょう)される食べ物』との結果が出て来ました、とミサカは報告します」
数多「能力者がオカルトの研究してんじゃねぇよ」
御坂妹「いえ、これは16666号の私的な報告書ですが、とミサカは答えます」
佐天「『ヨモツヘグイ』って何なんですか?」
数多「『生者は死者の食い物に手を出すな』ってぇ考えだ。要は共同体の外と中の関係を示してんだよ」
数多「いいかぁ?テメェが結婚してそいつんちへ嫁いだとする」
佐天「いぇーいっ!上条(確定)涙子誕生ですねっ!」
上条「しないからね?グイグイ来られても引くだけだからな?」
数多「でも実はソイツんちにゃローカルルールがある。例えば『カレーには納豆』とかな」
御坂妹「流石にそれはミサカもちょっと引きますが、愛のためであれば我慢出来るぜ、とミサカはアピールしてみます」
ミーシャ「問二。ナットウとはなんなのか」
佐天「日本の発酵食品の一つですね。大豆に納豆菌を掛けて発酵させた食べ物です」
上条「入れないよ?そんなローカルルール無いからなっ」
数多「でも一度嫁いじまったからには、黙って納豆カレー食えよ、ってこったな。」
数多「要は『不可分領域』——『自分達以外の共同体にはルールを持ち込ませず、また他へも持ち込むな』ってぇ話だ」
10031号「余計な事を、とミサカは内心毒づきます」
数多「ウルセェよ。麓行きてぇんだろ?さっさとついてこいガキども」
——路上 0時20分
結標(新しい男の声?随分変わった面子で山に登ってんのね)
結標(相変わらず真っ暗でオート補正が効いてない)
結標(何も見えないし)
——未編集の動画 P2070103 何処かの山道
数多「んで?お前らなにやってんだ」
上条「『後追い小僧』ってのを取材しに来たんだよ」
佐天「何となくで突っ込んでみましたっ!」
御坂妹「私は止めたのですがやれやれですね、とミサカは首を振ってみます」
上条「嘘は良くないからね?成長しているのは嬉しいけどもだ!」
数多「あー……『後追い小僧』ってのは、昼間の午後から深夜に掛けて出る、とされている——」
佐天「あ、調べてきました!」
数多「言ってみ?」
佐天「えっと、ですね——タッチ!」
上条「丸投げかっ!?」
御坂妹「山中を歩き回る者の後を追い掛け、時には道に迷った者を先導し、家まで送り届ける、とミサカは説明します」
佐天「あーそれです、それ。だから村の人はお礼に食べ物を置いてくるんですよね」
数多「『行き逢い神』だな」
上条「神様なのか?そんなにほいほい居ないだろ?」
数多「バカが。テメェは本質を見誤ってる」
数多「こう言う連中に対抗する——理解するためにゃ、相手をバラすんだよ」
数多「持っている特性を切り離して、それぞれに既存の事象に当て嵌める」
数多「でもって最後にそいつを組み合わせりゃ、対抗策の一つでも浮かんでくる」
数多「鬼神だろうが別天津神だろうが、所詮は何かの何処かの影響を受けている。ましてやこの国にゃ神を殺す方法が残されてんだろうがよ」
数多「まずこいつの特性は『道』だなぁ」
数多「大抵の日本人は近代になるまで一生一度も遠出する事無く死んだんだ」
数多「そいつらにしちゃ『村落共同体の外』ってぇのは『異界』なんだよ」
佐天「デビルサマナ○でイカイカしましたっ!」
数多「あれもまぁある意味正しい。『人が本来住むスペースの中が変質して悪魔が出る』——まさに、異界の本質だぁな」
佐天「あ、あれ?ボケが肯定されちゃった?」
上条「君は自制しよう、色々な意味で」
数多「なんつーかなぁ、昔の人間にとって『村の外』ってのは『異界』であり、『日常』じゃなかったんだ」
数多「そんな場所を通りゃバケモノの一匹でも出て来るだろうよ」
数多「お前は死んだら魂がどこへ行くと思う?」
上条「さぁ?」
御坂妹「人に魂などありませんよ、とミサカは自虐的に呟きます」
数多「まぁお前らはそうだろうが、昔の連中はそうは思わなかったんだな、これがよ」
数多「海が近ければ海の彼方の常世の国へ、山が近ければ山頂の賽の河原からあの世へ」
ミーシャ「解答二。人が身罷れば、いと高きあのお方の御元へ召される」
数多「テメェの神はそうなんだろう。だがな、『どこを通って行く』んだ?」
数多「天使じゃあるまいし、羽なんざ無ぇ人間様はよぉ。歩いて、もしくは流れてあの世へ行くんだよ」
数多「だから人は墓を町外れに造る。死人が町の外へと行きやすいように」
数多「だから人は墓を海岸に造る。死人が海の彼方へと還りやすいように」
数多「だから人は墓を山に造る。死人が山の中の河原からあの世へ戻るために」
数多「『死んだ人間は道を通ってあの世へ行く』って信仰だぁな」
数多「テメェらもエロヒムが黒い竜を切り離す前までは『大地母神信仰』が一般的だったよな?」
数多「洞窟や海に屍体を埋葬する——つまり『母なる大地へ還す』方がメジャーだったんだよ」
佐天「当然、そこ——つまり『村の外の道』とは『異界との接点であり、普段は有り得ないモノと行き逢う』ですか?」
数多「『道』に関する答えとしてはそれが妥当だろうよ。道に居たりてヒトを惑わす、それ即ち——『行き逢い神』と」
数多「んで、二つ目の特性は『死人』だな。本人の特性プラス『行き逢い神』としても『死人』を持っている状態だ」
上条「つまり『後追い小僧』の場合だと、死んだ人間が村の外に留まっている、って考えるべきなのか?」
数多「そして生きている人間を見守っている、ってぇ概念も含まれている」
数多「が、それはイレギュラーな事だ。だから村の“外”に居るしかないんだよ」
佐天「怪異が起きるのは『異界』、って事は後追い小僧もそこに居なければ出ては来れない、ですか?」
数多「しかもこいつぁ『死人』だ。『死人』ってのは『帰ってくる』特性も持つ」
上条「いやいやいやっ無いだろっ!」
数多「テメェは盆と正月に何やってるクチだよ?正月の方は廃れっちまったが、盆——盂蘭盆(うらぼん)の方は先祖霊を迎える期間だろうが」
数多「この国の信仰の特性として『死人が特定の日に帰ってくる』ってのは珍しくねぇ」
数多「だが逆にだ。『常駐するのは有り得ない』ってのもまた真実なんだよ」
数多「お前らにルールがあるように、俺達にもルールがあるんだ」
数多「よく考えろ。『後追い小僧はどうして特定の場所に出現する』のか」
数多「幾ら当時の深山が異界だっつっても、限度ってぇのがあるだろうがよ」
上条「……そこから、出られない?」
数多「もっと突き詰めろ。出られない、移動出来ないのは『何故』だ?」
佐天「うーん……お父さんお母さん、ですかねぇ。あたしだったら弟とかも見守っててあげたいですし」
数多「大正解。商品に木原印のレベルアッパーをやろう」
佐天「ありがとうございますっ!」
上条「無茶すんなっ!つーか何で持ってる!?」 パキイィンッ
数多「『後追い小僧』を『その場に留めたのは誰』だ?そりゃつまり——」
数多「——『子供を失って悲観している両親』に他ならねぇだろうが」
——路上 0時34分
結標(小難しい話してんのね。つまり、まとめると)
1.当時は一生村から出ない人間が殆ど
2.当時の宗教観では『村の外=異界』
3.従って当時の人間にとっては、山道は何が起きてもおかしくなかった
結標(でもおかしいわよね?だったら『後追い小僧を自分の子と思う理由がない』筈よ)
——未編集の動画 P2070104 何処かの山道
数多「最後の特性は『子供』だ。要は『早く死んだ』って事の抽象化であり、だ」
上条「待ってくれよ。確かに子を亡くした親は悲しいだろうけど、それは他の身内が死んでも同じだろ?」
数多「あぁだから『盆と正月に帰ってくる』事にして、俺達は正気を保ってきたんだ……いや、正気かどうかは怪しいがな?」
数多「『アイツは死んだが、その内また帰ってくる』って信仰は結構ある」
上条「だったらその親だって、特定の時期に迎えてやれば良かったんじゃないのか?」
上条「先祖へ対して迎え火をして家を招くように、村の“中”でさっ!」
数多「出来ねぇからだよ、そりゃ」
上条「どういう意味だ?」
数多「『とうりゃんせ』ってぇ唄知ってるか?」
佐天「とーりゃんせー、とー——」
数多「唄うなバカっ!雨降に引っ張られんぞ!」
佐天「ご、ごめんなさい?」
上条「何で今怒ったんだよ」
数多「その歌詞の中に『この子の七つのお祝いに』ってぇ言葉が入る。それは『七つ子サマ』信仰の名残だと言う説がある」
数多「昔のガキってぇのは兎に角死にやすかった」
数多「病気や流行病もそうだが、それ以上に栄養状態が宜しくねぇんだよ。尤も、大の大人ですら飢饉でバタバタ死んでった時代だが」
数多「だから当時の人間はこう考えたのさ——『子供が七つになるまでは、カミサマからの預りモノである』ってな」
上条「安定して育つまでは大事に扱うって事か?」
数多「だけじゃねぇよ。『人じゃないからいつお帰りになってもおかしくない』ってぇ、死んじまっても、大した事ぁ無ぇように振る舞ってたんだ」
数多「死んでも葬式を上げられないし、供養もしてやれない」
数多「そして人じゃねぇからあの世にも行けない——だから、当然盂蘭盆に帰っても来ない」
佐天「そんなっ!?酷いです!」
数多「そうだな。『だから連中は行き逢い神の中に自分達の子供を見た』んだよ」
佐天「……あ」
数多「ガキがおっ死んだ馬鹿な親は、『後追い小僧』にテメェらのガキの姿を重ねたんだよ」
数多「あの世にも行けねぇウチの子は、きっと自分達を見守っている筈だ、ってな」
数多「そういった意味で、そっちのチンチクリンは本質を突いている」
上条「……悲しい、話だよな」
数多「そしてお前は何一つ理解しちゃいねぇ」
上条「何だよ」
数多「そいつぁ『救い』なんだよ。『供養も許されなかった自分達の子供が、姿を変えても自分達を見守っていてくれてる』ってな」
数多「カミサマやホトケサマだってそうだろうが?存在すらしない連中に縋り付いて、今日の現実を乗り切る」
ミーシャ「提言一。暴言は看過出来ません」
数多「前だけ向いて生きて行かなきゃならない、なんて誰が決めた?」
数多「過去にしがみつき、囚われて生きる事の何が悪い?」
数多「テメェはそんな親どもの『幻想』も砕こうってのか?——自惚れんなよ『幻想殺し』」
上条「それはっ!」
数多「ってな訳で今までの特性から『後追い小僧』を再構成してみろ」
佐天「はい、まずは『行き逢い神』ですね。異界である道でばったり出くわす、ヒトではない存在」
上条「次は『死人』か。死んでいるにも関わらず、元居た生活圏から離れられない」
御坂妹「……最後は『子供』てすね、とミサカは姉妹を見て頷きます」
数多「それを時系列順に並べる——っつっても無理か。面倒臭ぇな」
上条「どうすれば分かるんだ?」
数多「フィルタリングだな」
数多「リンゴがあったとする。持っている特性は『赤い』・『甘い』・『果物』だ」
数多「その三つを『広範な特性順から並べて』みろ」
佐天「まずは『果物』でしょうね。種族というか種別というか。似たような果物はいっぱいありますし」
佐天「次は『赤い』でしょうか。『赤い果物』は結構あります、し?」
佐天「最後は『甘い』ですかね。酸っぱい品種もあるって聞きますから」
数多「なんつーかなぁ、住所も同じだ。国・県・町・番地ってぇ感じに『大きい所から捜す』ってのが基本だ」
上条「番地から捜しても見つからないよな」
数多「『後追い小僧』の特性を『広く知られている順』」でやってみろ」
上条「『行き逢い神』は、最初だよな?神って言われているぐらいだし」
佐天「『子供』と『死人』はどちらが先でしょうかね?」
上条「『死人』は子供だけとは限らないだろう。だから」
佐天「『行き逢い神』・『死人』・『子供』の順ですかね」
上条「つーか最初から並んでたんだよな?」
数多「どうせ死人の戯言だ。別に気にするような奴ぁ居ねぇよ」
数多「恐らく最初にあったのは『行き逢い神』としての存在だな」
数多「『送り狼』やら『ヤマイヌ』と同系統の『食べ物を饗せば助けになる』神性だ」
数多「それが『守ってくれている』と言う特性が特筆され、次第に『ならばあれは死んだ身内ではないのか?』ってぇ認識が広まり」
数多「斯くして『幼くして死んだ我が子』と言う現在の姿になっちまった、ぐらいの話だ」
佐天「つまり『後追い小僧』とは『自分の子を亡くした両親が、普段は通らないような道で見る幻覚』って事ですか?」
数多「概念で言えばそれ“も”あるだろう。ただしそれは『現在の姿』であって、『過去全てがそれであった』ってぇ保証は無ぇよ」
上条「……時代と共に、道で行き逢う神も変化するのか?」
数多「大正解。ケータイ寄越せ、円周のメールアドレス打ち込んでやっから」
上条「その名前は嫌な予感がするからノーサンキューでっ!」
数多「つーか『連中が絶対に普遍的なモノである』なんて考えるから、見誤るんだよ」
数多「神話だろうが伝承だろうが、人から人へ伝えていく内に徐々に本質とはかけ離れるもんだわな」
数多「今でこそ都市伝説だ何だと騒がれちゃいるが、何代か後になれば『民話』として、『後追い小僧』のように残るかもしれねぇな」
——路上 0時51分
結標(……論文みたい)
結標(山道でするような話じゃないけど、しっくりとは来る、か)
結標「……」
結標(でもオカルト分野の話がどうして禁忌とされるのよ?)
——未編集の動画 P2070105 何処かの山道
数多「加えて言えば、『後追い小僧』の目撃例として14歳ぐらいってぇ話もある」
数多「この時点で矛盾している——つまり変質してんだよな」
上条「14歳ぐらいなら、まだ小僧って言われてもおかしくないような?」
数多「昔は15で元服する時代だぞ?今なら18、9歳だろうがよ」
佐天「それは、近年になって付け加えられた特性、って訳ですねっ」
数多「まぁ『死んだ子供を見たい親』だったら、そう見える事もあるかも知れねぇがな」
数多「とまぁ『後追い小僧』ってぇのはそんな感じだな。俺の推測だし、手持ちのデータから現在出せる結論としちゃこんなもんだ」
上条「ここの山は修験者?の霊山だって言われているけど。そっちの絡みは無いのか?」
数多「……あのなぁ。霊山ってぇのはよぉ、どんな山だ?」
御坂妹「神仏を奉った山、もしくは山そのものが信仰対象となる、とミサカは16666号のレポートを音読します」
数多「そいつぁまさに『異界』じゃねぇのか?」
数多「人の住みかよりも一歩踏み込めば、そりゃ何だって出て来そうなもんだけどな」
上条「でも説としては山伏が正体だった、って話もあるけど」
数多「仮にだ。過去の『後追い小僧』が山伏だったとしてだ」
数多「そうすると『テメェの子だと思いこんで、食いモン置いてった親はどう思う』よ?」
佐天「無駄、だったって事ですか」
数多「俺ぁ真相は分から無ぇし興味も無ぇ」
数多「今までダラダラ考察を並べたが、俺自身は無神論者だ。だから全部か全部無駄とは思うぜ」
数多「だが逆に『後追い小僧』だなんだのと、テメェのガキを死んでまで大事に抱えるバカどもにすれば、だ」
数多「そんな親の用意した供物を、山岳マニアが勝手に食っちまうよりか」
数多「テメェのガキが食って少しでも喜んでくれてる、って思った方が救われるんじゃねぇのかよ?」
上条「そう……だな。その通りだ」
数多「まぁアレだ。お前らも不用意に山ん中には入らねぇ方が良いぜ」
数多「『後追い小僧』だけじゃねぇ。他にも成仏しそこなかった連中に囲まれて食われるぞ」
数多「何せ山ん中ってのは地元の人間に『異界』——つまり『あの世』だと信じられている場合が多い」
数多「地獄から戻った連中と鉢合わせするかもなぁ?」
上条「そっか。ありがとうな」
数多「けっ、言ってやがれ」
数多「……そぉいや、白モヤシの野郎元気にしてんのかよ?」
上条「あんたの言ってる白モヤシが誰かは知らないけど、俺の知ってる奴はそこそこ元気にやってるみたいだな」
数多「そぉかよ。クソはクソになりに足掻いてやがんのか」
上条「あの子の保護者になってから、随分丸くなったような気がする」
数多「まぁなってみねぇと分からねぇ、ってのはあるよなぁ」
数多「クソだまりの中だと思っていても、そいつぁ管理された檻の中でのヌルい生き方だったり」
数多「ナイフ重火器人質と、何でもアリアリの殺し合いん中に、ボクシングのチャンピオンが乗り込んだってぇ、一番になれる訳がねぇんだよ」
上条「何の話だ?」
数多「闘犬なんてのはまさにそれなんだわな。ガキの頃から手負いのウサギやトリを狩らせて闘争本能を鍛える」
数多「体が出来てくりゃ似たようなレベル相手と戦わせて、殺しに慣れさせる」
数多「歪んじゃいるが、飼い主からすりゃ立派な愛情だと思うがね?」
上条「本気で訳分からねぇよ」
数多「愚痴だよ。俺の講義代としちゃ破格だぜ」
10031号「あの、お姉様はどうでしょうか、とミサカは控えめに手を上げます」
上条「相変わらずだよ、つーか会っていけば良いじゃねぇか」
10031号「いえ、でも私は帰ってくる資格があるのかどうか分からないのです、とミサカは内心を吐露してみます」
上条「関係無ぇよ。姉妹が会うってのに誰の断りも必要あるかっ!」
10031号「ですが——」
上条「文句言う奴は神様だって俺がぶん殴る。だから、堂々と会えばいいって、な?」
10031号「……はい。ではちゃんとした時期に、とミサカは言葉を濁します」
御坂妹「私達も待っていますから、とミサカは姉妹へ優しい言葉をかけます」
ミーシャ「問三。甘露はまだあるのか」
佐天「えっと……良いですよね?」
上条「良いと思うよ」
佐天「だって!ほら、あのお兄ちゃんフラグ立てようとしているからね?」
ミーシャ「正答。貴方達に感謝する」 モグモグ
上条「してないからねっ!?」
ミーシャ「宣言。次は御元へ必ず還す」
上条「……言葉の意味は良く分からないが、兎に角不吉なモノしか感じられないなっ」
10031号「どうせならばこのミサカのフラグをどうぞ、とミサカは懲りずにおはぎを勧めてみます」
数多「してんじゃねぇよクソガキが。ほれ、あそこが森の出口だ」
上条「おーっ!帰って来れたっ!」
佐天「良かったー、てっきり二度と帰れないのかと思いました」
御坂妹「まぁその時は仲良くサバイバルをすればいいかと、とミサカは前向きな家族計画を提案します」
上条「時間は……あれ、まだ一時間も経ってないのか」
佐天「そうでしたっけ?なんか半日ぐらい居たような感じでしたけど」
御坂妹「気のせいでしょう、とミサカは素知らぬフリをして話を逸らします」
上条「どういう意味?」
御坂妹「取り敢えず一度お世話になる民宿の方へ行きましょうか、とミサカは提案をしてみます」
佐天「ですかねー。あたしお腹空いちゃったかも!」
上条「今から帰って少し早い夕ご飯になるけど」
御坂妹「ではその後は三人で露天風呂に入りましょう、とミサカはナイスな方向へ誘導をします」
佐天「いいですねっ、家族みたいで!」
上条「お前らもうちょっと人としての恥じらいを持ちなさいっ!」
佐天「今夜は寝かさないぜっ?」
上条「使い方が違うっ!……あぁいや、正しいのか?」
御坂妹「折角予約失敗したフリをして三人一部屋にしたのですから、ここは攻めるべきでしょうか、とミサカは葛藤します」
上条「お前何やってんのっ!?つーか不自然だったのはお前の仕業かよっ!?」
佐天「ナイスですっ、ミサカ妹さんっ」 ハイタッチ?
御坂妹「ふっ、ミサカの成長を舐めてはいけません、とミサカは勝ち誇ります」 ハイタッチ!
上条「お前らもうちょっと大人になりなさいよっ!巫山戯るにも程があるからねっ!」
佐天「なぁに言っているんですかぁ」
御坂妹「わたし達を大人にするのはあなたの肉ぼ——」
上条「言わせねぇよっ!これ以上局の人に心労は掛けられな——」 プツンッ
——路上 1時
結標(最後まで見たけど。特に怪しい所はなかったわ)
結標(麓に着いた瞬間また明るくなったけど。それぐらい?測光がおかしくなっただけなのかも?)
結標(と言うかこれ、そもそもロケとして失敗してるわよね。殆ど真っ暗だったし)
結標(別に壊す程の価値も無い——暗号化されているとか、そういう話なのかしら?)
海原「どうも、こんばんは」
結標「あんたが引き取り役だったの?随分遅かったけど」
海原「すいません、ちょっと聖地巡礼をしていまして」
結標「ふーん?これメモリーカードだけど、何もあやしい物は映ってなかったわよ」
海原「そうでしょうね、それは。『何も映っている訳がない』んですから」
結標「何を言ってるの?」
海原「戯言を少し。では——はぁっ!」 パイキィンッ
結標「別に壊すんだったら、あんたを待つ必要は無かったんだけど。余計な手間じゃない?」
海原「念のため、ですよ。下手をすれば手間がかかってしまうかもしれませんし」
結標「しかしあんたも思い切った事するわよね」
海原「いえいえ、プロとしては当然の事をしたまでで——」
結標「御坂さんの出ている動画を壊すなんて、ね?」
海原「」
結標「あ、ストレージの方はクソメガネが物理的に壊す、って言ったから。もう終わってるでしょうけど」
海原「うそおおおおおおおおおおおぉおおおんっ!?」
結標「じゃ、良い夜を」 ヒュンッ
海原「何故先に言わなかったんですかっそれを!?」
海原「?」 キョロキョロ
海原「逃げやがった!?あんのババアっ!」
海原(いけませんね!これは一度直接乗り込まないと)
——学園都市七大不思議探訪 失章〜木原数多の鬼神解体〜 『後追い小僧』 −終−
インターミッション 〜キーホルダー争奪戦〜
※『学訪』放送終了後のお話
——学園都市通学バス停 7時30
上条(今日は問題なくバスに乗れそうだな。何事もなくこのまま登校出来そうだ)
上条(やっぱり平和が一番良いよなー。つーか科学の街にいてなんで魔術に関係するんだ、と小一時間)
海原「おはようございます、海原です」
上条「朝から変態来やがったよ!?」
海原「誰が変態ですかっ!『中学生のために命を賭ける男!』と呼んで頂きたい!」
上条「うん、お前は恥ずかしくないかもないけど、お前の外側の人は色々と迷惑だと思うよ?」
海原「まぁ良いじゃないですか。ここで会ったのも何かの縁ですし」
上条「明らかに待ってましたー、みたいなタイミングなんだけど?」
海原「立ち話する程度であれば問題はないかと。いえ、ご心配なく。約束を守り続ける限り、あなたをどうこうしようとは思いません」
上条「いや俺じゃなくてお前の方だよ。勝手な事やって叱られたりはしなかったか、って」
海原「自分の事はお気になさらず。こう見えても人の顔色を伺うのは慣れていますし。まぁそれなりに充実していますよ」
上条「そうか……あーっと、今良いかな?」
海原「『学園探訪』の事ですね?自分もその件でお話があってきました」
上条「そっか、お前も同じか」
海原「はい!中学生大好きですっ!」
上条「ごめんやっぱお前とは違うわ。あと、ちょっと距離取ってくれないかな?知り合いだと思われたくないっ!」
海原「と言うかどうして誘ってくださらなかったのですかっ!?アドバイザーとしてプロの魔術師は必要でしょうにっ!」
上条「朝混雑してるんのにトチ狂った事を叫ぶんじゃねぇよっ!?」
海原「あぁいえ『立ち話であれば問題ない』と言ったでしょう?認識阻害の結界が張ってあるので、誰も気にしません」
上条「あー……まぁ確かに俺達二人しかいない、よな。さっきから不自然だなーとは思ってたんだけど」
海原「『ここにバス停がある』とは思わない以上、人が集まりはしませんからね」
上条「んで?何か用事でもあったのか」
海原「『番組キーホルダー』が欲しいな、と」
上条「……それだけ?」
海原「はいっ!」
上条「お前は本当にダメなんだなっ!」
海原「——と、言うのは流石に冗談でして、今日は警告を一つしようかと」
上条「あ、なんだ真面目な話なのね。あービックリした」
海原「プロのアドバイス料はキーホルダー一つで結構ですよ?」
上条「真面目じゃなくなったなぁっ!」
海原「相場では二つだったんですが、お友達価格で」
上条「安いなっプロの相談料!?高校生の時給に負けてるしっ!」
海原「自分達が使ってる魔術、それは神話や民話を模してしまいすよね。霊装なんかは最たるモノですが」
上条「え?マジ話に今更移るの?移れるの?この空気を立て直そうとするのはすげーと思うけど」
海原「ではこう思いませんか?『我々が模したオリジナル——神や悪魔は実在するのか』と」
上条「……そりゃつまり、俺達がダラダラやってたのも良くなかったのか」
海原「世界にはテレズマと呼ばれる天使の力があります。でもそれは天使の力なんかではあり得ません」
上条「どういう意味だ?」
海原「あくまでも便宜上『方向性の無い力』をそう呼んでいるだけの話です。他の地域へ行けば龍脈やらレイライン、マナと呼ばれるモノになります」
海原「日本であれば『気(ケ)』、最近では霊力と呼んだ方が早いかも知れません」
海原「従って『彼ら』が存在するのかどうか、自分には分かりませんが」
海原「暗い夜道で見た光の影かも知れませんし、異文化を見た人間の感想であったかも知れません」
海原「だが現実には我々が居るように、『彼ら』もまた居る可能性があります」
上条「プロの見解?」
海原「ただし『可能性がある』だけで、『限りなくゼロに近い』とも言っておきます」
海原「何せそのような知的生命体、もしくは魔力生命体が存在するのであれば、我々がもっと早くにコンタクトを取っていてもおかしくないですので」
上条「って事は、お前らは知らないのか?」
海原「と、言う事になっています。仮に居たとしても、それを公開するのは有り得ないでしょうし」
上条「……まさにオカルトってやつだよなぁ」
上条(姫神と吸血鬼の話もあれだけどさ、全体で共有はされてないのか)
海原「まぁ『自分の知っている範囲では確認されていない』としておきましょうか」
海原「ですが、その——この間『学探』聖地巡礼ツアーをしていた時の話です」
上条「するなよっ!?何やってんだお前はっ!?」
海原「妙な魔力の流れを感じたもので」
上条「脅かすなよ」
海原「冗談でわざわざ会いに来たりはしませんよ」
上条「……マズい、のか?」
海原「良く分からない、と言うのが本音ですね」
海原「薄い霧、のような。触ると冷たいのですが、中へ入るといつの間にか汗だくになっているような、と言いましょうか」
海原「名状しがたいですね。浅いと思って踏み込みと足が届かなくなるような、何とも不気味な魔力でした」
海原「普通はある程度消費されるんですよ。例えば神仏を奉る事で制御したり、時には奉りや願掛けをして適度に発散したり」
海原「自分の見立てではそれをしていないがために、ある種の飽和状態になってしまっているのでは、と」
上条「学園都市だとお守りを買うより、開運アプリをダウンロードするのが一般的だしな」
海原「即座にマズいとは言いませんし、上層部が危険性に気づかないとも思えませんが、気をつけるに越した事はないでしょう」
上条「俺達がやってたみたいに深夜に騒ぐのって危険なのか?」
海原「それはまぁ都市伝説が何たるものなのか、から話せねばいけませんね」
海原「あぁこれは『自分の見解』ですよ?他の魔術師や結社が同じ考えではありませんし、統一見解が出されている訳ではありませんから」
上条「分かった」
海原「魔術は大抵神話や伝承の寓意を辿り、模す事で発現させている。ここまでは分かりますね?」
上条「あぁ。ルーンとかも『神話に出て来る力ある言葉を再現する』事で、魔術を使うんだろ?」
海原「では逆に『都市伝説とはそれ自体が寓意であり、魔術儀式を兼ねている』のではないでしょうか?」
上条「……すまん。意味が分からない」
海原「例えば『ジュースを買うと両想いになれる自販機』があるとしましょう」
上条「うん、その例えだと危機感の欠片も伝わらねぇけどな」
海原「とある術式では『炎よ、来たれ』とキリル語で唱え、自らの魔力を消費すれば炎が出せます。まぁ魔力の精製やら寓意の理解に10年単位でかかるでしょうが」
海原「ですが『ジュースを買う』行為が『炎よ、来たれ』に該当するとすれば?」
上条「俺達が都市伝説をなぞる事で、『都市伝説と言う広範な魔術が発動する』ってのか!?」
海原「勿論、魔力やシチュエーションなど、再現の具合によっては違うでしょう。ただ、そう考えるとあり得る話ではないかな、と」
上条「大問題じゃないのか、それ?」
海原「そうですね。問題と言えば問題だと思いますが——えっと、なんでしたっけ?」
海原「山奥で迷ってしまうと『コノ先ハ日本国憲法通ジズ!』と書かれた村があり、それへ入ると酷い目に遭うという都市伝説」
上条「んー、聞いた事あるな。杉……ナントカ村、なんだっけかな?」
海原「『女装山脈』?」
上条「村の名前じゃねぇっ!しかもそれキワモノのエ×ゲじゃねぇかよっ!」
海原「いやでも酷い目に遭うのは同じですし」
上条「酷いの意味が違うけど、本人か幸せなら放ってといてあげよう、なっ?」
海原「他にも山人、マヨイガ、イーハトヴ、落人の隠れ里。杉沢村以外にも『人里離れた所には我々の知らぬ誰かが住む』と言う話はあったんですね」
海原「古来から伝わる願掛けやらおまじないも同じです。歴とした魔術行為には違いありません」
上条「都市伝説自体も昔から言われてる、って事か?」
海原「危険があるのか、という先程の質問には『弾数が分からない、もしかしたら弾が一発も入っていない拳銃でロシアンルーレット』と答えておきましょう」
上条「全部入ってたらどうすんだよ、それ」
海原「恐らく新しい都市伝説が出来るだけでしょうね」
上条「うっわー……」
海原「——と、まぁ嘘の話はここまでにしましょうか」
上条「」
海原「どうしましたか?随分と驚かれ——」
上条「嘘かよっ!?何で嘘言ったのっ!?」
海原「いやー、怪談をテーマしていたんだから、怖いジョークの一つでもご披露しようと思いまして、つい」
上条「笑い事じゃねぇよ!本気で怖かったもの!」
海原「まぁ都市伝説に力があるのであれば、自分達の業界で利用しているでしょうし、あまり深く考えないでも宜しいかと」
海原「なんでしたら自分の作ったお守りでも差し上げましょうか?騙したお詫びに」
上条「……また騙すんだろ?ドッキリ仕込んでんだろ?」
海原「いえ、効果は本当にありますよ?なんでしたら小さいシスターさんに聞かれても良いですし」 ガサゴソ
海原「どうです?」
上条「綺麗な石と、白い骨のブレスレット……か?」
海原「あ、右手では触らないで下さいね?ガーネットです」
上条「ってかこれ高いんじゃ」
海原「安くはありませんが、まぁ宜しければ差し上げますよ」
上条「いや、ありがたいのはありがたいんだけどさ」
海原「何か疑問でも?」
上条「これ、何の骨?」
海原「この霊装はですね、『速く駆ける足』と言いまして、悪運から逃れられる効果を持っています」
上条「へー」
海原「ですから、この骨も脚——もとい、後ろ足なんですよ」
上条「うん。だから何の骨?」
海原「動物、ですかね」
海原「あぁでも自分が修行の一環として、駆け出しの時に作った物ですから、それほど大したものではないんですね」
海原「ですからあまり高いって程のものでも——」
上条「何類?」
海原「そういえば、この間可愛らしい制服の喫茶店を見つけたんですが、良かったらご一緒しませんか?」
上条「……マジで?期待して良いの?」
海原「えぇもうそれはこの世の楽園かと思う程に」
上条「いや、その話は後でするとして、何類?」
海原「……れ、霊長類?」
上条「人の骨じゃねぇかっ!?お前もホンっとに嫌がらせに来たんじゃないのかよっ!?」
海原「いえでも一家に一つ、これを置いておけば悪夢に悩まされる事もありませんっ!」
上条「こっちの方が怖いわっ!持って帰れっ!」
海原「いえですがどこの馬の骨って訳でもないんですよ?敵対する氏族の立派な戦士——」
上条「馬の骨の方が良かったよ!だってそれ人骨だしさぁっ!」
海原「——を、生きたまま皮を剥がし——」
上条「アステカ怖っ!?ってか聞いてないからなっ!?」
海原「……残念です。折角善意で持ってきたというのに」
上条「なぁお前やっぱ怒ってるよな?」
海原「いえ、全く?御坂さんと言う方が居ながら、他のJCとイチャイチャしてるのが、すっげームカついたとかそんな事はありませんよ?」
上条「して、ねぇからなっ!?明らかに俺が弄られまくってたじゃん!」
海原「自分だったらその場で求婚してましたねっ」 グッ
上条「帰れっ!もうお前に付き合ってる暇はねぇんだよっ!」
海原「……まぁ、お元気そうで何よりでした。では失礼します」
上条「海原っ」 (ヒュンッ)
海原「っと、はい。これは——」 (カチャッ)
上条「『学園探訪』のキーホルダーだ。持ってけ、つーかもう二度と来るな」
海原「……これは。ありがとうございます」
上条「おー、またな」
海原「……えぇ」
……
上条「……」
上条(バス、来ねぇな……)
上条(魔術、魔術なぁ……)
上条(ま、良く分からなかったけど)
上条(何かあったらぶっ飛ばせばいいか……)
上条(しかしバス、来ない——まさか!?)
海原『ここにバス停があるとは思わない』
上条「……」
上条(つまり、アレか)
上条(誰もバス停があるとは思わない、従って運転手もスルーする)
上条「俺が何時まで待ってても、バスは素通り、する……」
上条「遅刻っ!?遅刻するじゃねぇかっ!つーかあの野郎結界放置したまま帰りやがったっ!?」 ダッ
——とても暗い場所
海原「ふーんふふーんっ」 (鼻歌)
一方通行「……オイ」
土御門「知らん。俺に聞くな」
結標「あたしも知らないわよ」
一方通行「あの『早く聞いて下さいねっ!』ってェツッコみ待ちの姿勢が気に食わねェンだが」
土御門「俺だって関わり合いになりたくない。結標」
結標「ふざけんなバーカっ」
土御門「……よし多数決だ。いっせーので指を差そう、いっせーのっ!」 ピシッ
結標 ピシッ
一方通行「……俺?つーかお前らその指ヘシ折ンぞ」
結標「さっさと聞いてきなさいよ」
一方通行「人に物ォ頼む態度じゃねェだろうが!つーか俺別に興味はねェよ!」
土御門「俺だってない」
結標「あたしだって——あ、なんだ。これなら聞かなくたっていい——」
海原「よくぞ聞いてくれましたあぁっ!!!」
一方通行「テメェから来やがったっ!?」
土御門「鬱陶しいにゃー……」
結標「なにこの強引な押し売り?」
海原「これはですねっ!あの、あのっ『学園探訪』のオリジナルキーホルダーなんですよっ!」
結標「……誰か知ってる?」
一方通行「ニュースサイトぐらいしか見ねェぞ」
土御門「あー……上や——中学生の女の子がリポーターやっている、ド深夜番組だ」
結標「やだ変態」
海原「JCいぃやっほほほほほほほううぅっ!!!」
一方通行「……なァ敵の精神攻撃食らっているとか、そンなンじゃねェの?」
土御門「なぁ海原。それがどうしたって?」
海原「つまりですねっ、このっ!このキーホルダーを使えばっ!いつでも佐天さんに会えるんですよっ!」
一方通行「(目がイってンなァ)」
結標「(暗部の仕事は辛いから。可哀想……じゃないけど)」
土御門「(妹以外に興味ないにゃー)」
海原「ほらっ、こんな風に——」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
一方通行・土御門・結標「」
海原「……」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
海原「……」 スタスタ
海原 ポイッ(ゴミ箱に捨てる)
海原「——さっ、ボヤボヤしてないで仕事に行きましょうかっ!」 ダッ
結標「無理がありすぎるでしょっ!?絶対に消化出来ない異物があったわよねぇっ!」
土御門「……いやー、でも今のは俺達も何も見なかった方がいいんじゃ、って」
一方通行「……」
土御門「どうした?」
一方通行「別に」
結標「……バカのせいで余計な時間くっちゃったわー」 ダッ
土御門「まぁ、色々と誤解があったのは想像つくぜぃ。つーか何やってんだ」 ダッ
一方通行「……」
一方通行 キョロキョロ
一方通行「……」
一方通行 ガサゴソ
一方通行「……」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
一方通行「……」
一方通行(これ確か、あのガキが欲しいっつってたヤツ、だよなァ)
打ち止め『他のミサカが欲しがっているんだから、ミサカもミサカも何となく欲しがってみたり!』
一方通行「……」
一方通行(まァ仕掛けの類はされてねェみたいだから、一応見せてみっか)
一方通行「……」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
一方通行「……」 ジーッ
一方通行(……やっぱなァンかムカつくから、俺は何も見なかった。うン) ポイッ、ダッ
……
垣根「ヒャッハアァッ!どうした第一位さんよぉっ!」
垣根「……あれ?」
心理定規「いない、みたいね。またカゼだったのかしら」
垣根「えー……テンション全開で突っ込んできたのに」
心理定規「と言うかテンション上げる意味が分からないわ、っとこれ、落ちてたけど」
垣根「キーホルダー?」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
垣根・心理定規「……」
垣根「痛々しい、よな?」
心理定規「なんでこんなのが存在するのか、制作過程には興味があるけど」
垣根「つーか誰向けだよ、これ」
心理定規「さぁ?」
垣根「……まぁいいか、帰ろうぜ」
心理定規「襲撃は?しなくていいの?」
垣根「なーんかそれ聞いたらやる気が無くなった、つー感じ」
心理定規「あー、分かるわね」
垣根「メシでも食って帰ろうぜ」
心理定規「ごめんなさい。今から仕事が入ってるもんだから」 ダッ
垣根「ねぇいつもそれ使うよなぁ?もしかして俺、嫌われてる?」 ポイッ、ダッ
……
フレンダ「しっつれいしまーす……?」
絹旗「あー、超逃げちゃった後ですね」
フレンダ「おっかしい訳、あたし建物入るの見たのに」
絹旗「第二位も超急いでいたとか?罠だったら死んでますしね、わたし達」
フレンダ「んー……?」 ヒョイッ
絹旗「どうしました?何か超気になる証拠でもありましたか?」
フレンダ「キーホルダー」 カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
絹旗「超痛々しいですねっ!!!」
フレンダ「食いつき良いなっ!?」
絹旗「ってかそれもしかして『学園探訪』の抽選プレゼントじゃっ!?」 パシッ
フレンダ「あ、こらっ!爆弾かも知れない訳!」
絹旗「今、超あっさりスイッチ押してませんでしたか?」
フレンダ「……」
絹旗「……」
フレンダ「ふぅっ、やっぱりあたしの見立て通り罠じゃなかった訳よ!」
絹旗「超嘘臭っ!?」
フレンダ「爆発物のエキスパのあたしが、そんな不用意に行動しないって訳。うん」
絹旗「明らかに今、『あ、超やっちまった』的な空気がしましたが」
フレンダ「それは良いとして、それって結局レアものなの?」
絹旗「ですね、ある意味しょーもないモノマニアにとっては超垂涎の一品と言えるでしょうっ!」
フレンダ「珍しく力入ってる。B級映画の販促物?」
絹旗「あ、帰ったらムービー超見せます。これはまたすっごいんですって」
フレンダ「へー面白いんだ」
絹旗「いえ、超全っ然面白くないです」
フレンダ「それを人に勧めるのっ!?」
絹旗「でもダラダラ感が斬新で超良い感じなんですよ——ってこれ、どうしましょう?」
フレンダ「貰っちゃえば?発信器とかは……ちょっと待ってね——ん、大丈夫みたいだし」 ピピッ
絹旗「まぁここに捨ててあるぐらいですし、超良いんですかね?」
フレンダ「気になるんだったらアンチスキルへ持って行かせればいい訳。三ヶ月ぐらい待って落とし主が来なければ貰えるんでしょ」
絹旗「ですかね、んじゃ超そっちの方向で。ではわたし達も麦野と超合流しましょうか」
フレンダ「それにしても上条ってそんな番組作ってた訳ねー」
絹旗 ガシッ
フレンダ「ちょっ!首締まってるし!」
絹旗「上、条?超お知り合いで?」
フレンダ「う、うん。『取材』って言われてちょっと話しただけ、だけど」
フレンダ「ちょい前にあたしらのテーブル来て話してった、ツンツン頭の高校生居たじゃない?あいつ」
絹旗「あー、超ありましたね。そんな事」
フレンダ「言われてみればそのキーホルダーの声、似てる訳よねって」
絹旗「……連絡先は?」
フレンダ「局の名刺貰ったっけ……?あーでも、捨てちゃったかも」
絹旗「……フレンダ。いえ、超フレンダ!」 ガシッ
フレンダ「なんであたしの名前に超をつけたの?あと、両手が肩に食い込んで痛い訳」
絹旗「今から超大事な事を言います。そしてあなたがわたしの要望に超答えられない場合、最悪“死”が待っています」
フレンダ「ペナルティ重っ!?ってか前フリだけでお腹いっぱいなんだけどっ!」
絹旗「実は今その番組が超特番をするそうなんですよ、はい」
フレンダ「へー、結局視聴率良かった訳か」
絹旗「で、HPには『リポーター希望者・他薦可』と言う項目が超ありましてね?」
フレンダ「つまり絹旗は出たい、と?」
絹旗「ですが何故かサーバーが超重くてメールを送っても弾かれる始末。ですのでここは直接交渉に行くしかないでしょうっ!」
フレンダ「うん、意気込みは分かるんだけど、真剣すぎて怖いって訳」
絹旗「超駄目ですかね?」 ウルッ
フレンダ「いや同性から媚びられても別に——って肩痛い痛いっ!?協力するからっ!」
絹旗「流石はフレンダっ!いえっ、超フレンダですよねっ!」
フレンダ「……誉めてくれるのは嬉しいんだけど、名前に“超”つけてもバカにされているようにしか感じられない訳……?」
絹旗「さっ、早速帰って名刺を超捜しましょうか」
フレンダ「いや、あのあたしら仕事中だし?麦野に怒られるの怖いし?」
絹旗「いやいやっ!仕事よりも超大事な事は——」
麦野「へー、あるんだぁ?聞かせて欲しいにゃーーんっ?」
絹旗・フレンダ「」
麦野「突入してから結構経って心配して見に来たんだけど……堂々とサボタージュってのは、ちょおぉぉっっと許せないわよね?」
滝壺 コクコク
フレンダ「違うのっ!これはちょっと、これっ!」
絹旗「あっ」
麦野「キーホルダー?これがどうかしたの?」
フレンダ「うんっ!これが置いてあったから、罠なんじゃないかなって確認してた訳よ!」
麦野「で、どうだったのよ?」
絹旗「超違う、みたいですけど」
麦野「……あのねぇ、アタシらは遊びでやってる訳じゃ——」
滝壺「むぎの、人、来るみたい……」
麦野「……まぁ良いわ。行くわよ」 ポイッ
絹旗「あっ、それっ」
麦野「あんなのアタシが買ったげるから。つーか時限式の追跡装置かも知れないでしょ?」
絹旗「いえでもっ!」
フレンダ「(あたしが麦野の気を引くから!)」
絹旗「(超フレンダっ!?)」
フレンダ「(いや、だからその超はやめて欲しいんだけど)」
フレンダ「ままー、あれ買ってー」
麦野「ふんっ!」 バスッ
フレンダ「そげぶっ!?」
絹旗「(あ、今のウチに超回収。超ナイスパスですフレンダ!)」
滝壺「(事情は良く分からないけど、ふれんだの犠牲をむだにはしない……!)」
麦野「さっ、急ぐわよ」
絹旗「超了解でーす。ほらフレンダ、自分で歩いてくださいな」 ズルズル
滝壺「がんばろ、ふれんだ。よいしょ、っと……」 ズルズル
フレンダ「……あ、扱いが、酷くない、わけ……?」
インターミッション 〜キーホルダー争奪戦〜 −終−
※あと一週間程>>162の募集していますので、どうぞお気軽にお書き込み下さいませ
つーか上佐琴は分かるんですが、フレンダあってビックリしました
上フレンダフレメアの
本当に出ると噂のお化け屋敷探索(某富士急)
佐天・上条・浜面・滝壺で鶯浄土の検証
——キーホルダー募集〆切りのお知らせ
佐天『うーーいっはるーーーっ!愛してーーるぞーーーーーーっ!』
上条『うん、前にも言ったけど、そのテンションの張り方は色々と間違ってると思うんだよ』
佐天『——はい、と言う訳で未だに方向性が分からないローカル番組からのお知らせです』
上条『終わったんだけどね、一回は』
佐天『まぁそんなこんなでキーホルダー及び取材要請に、沢山のご応募頂きありがとうございました』
上条『ありがとうございました。あ、受付は終了したんで』
佐天『匿名希望のミサカさんとPN.ゲコ子らぶりーさん、あと鈴木エツァリさん一杯メールありがとうねーっ!』
上条『アイツも応募しやがってたのか!?つーか全員本名が検討つくんだけど!』
佐天『スタッフの人がサーバー置いてる会社の人から、「何やってんの?何でウチの会社ハッキングまでされてんの?」って怒られたそうですねっ!』
上条『うん。お前らちょっとは反省しろよ。特に誰とは言わないがビリビリ!ハッキングはやり過ぎだからな!』
佐天『そんなにそげぶキーホルダー欲しかったんですかねー。あ、んじゃ番組HPからwaveデータダウンロード出来るようにしますか?』
上条『何でカメラマンの一発ギャグがネット拡散されてんだよっ!?』
佐天『ま、それはご要望があったらすると言う事で。キーホルダーはこちらからメールで当選をお知らせしましたんで』
上条『欲しい人は配達先の住所と名前を書いて返信宜しく。あ、二週間以内に返信がない場合には無効になるから気をつけて』
佐天『番組からのお知らせは以上です——さて、時間が余ったのでちょっと怖い話を』
上条『なに?マッ○フライドポテトホルダーがどうしたの?』
佐天『あー、あれウチの弟のメル友が言ってたらしいんですけどね。五月の頭ぐらいに行ったんですよ、マ○ク』
上条『佐天さん振ったネタ全てを拾うってどうなの?明らかに無茶振りだったよね、今の』
佐天『その時にLサイズのセット頼めば貰えますよ、って店員さんに言われて、テイクアウトで頼んだそうです』
佐天『車に戻ってから開けてみると、フライドポテトホルダーってドリンクホルダーの上へ差し込んで使うみたいなんですね』
佐天『ちょっとガッカリしたんですけど、つけてみました!おおっ、凄いなってホルダーセットしてポテトを置いたんですって!』
佐天『でもその後大変な事に気付いたんですよぉっ!』
上条『ど、どんな?』
佐天『——って違いますよっ!その話じゃありませんってば!』
上条『マッ○のオチはっ!?ノリツッコミにしても溜めすぎだろうっ!』
佐天『いや実はあの後、番組で神奈川県某所へ取材に行ったんですね』
上条『うっわすっげーマッ○のオチ聞きたい!どうせくっだらない事なんだろうけども!』
佐天『「後追い小僧」って民話の下調べに上条さんとあたし、あとスケジュールが合った御坂さんと一泊二日で』
上条『え、流すの?本当にスルーするの?』
佐天『まあいつものようにダラダラっとその場の勢いで、何となく撮って来たんですが——局のスタッフさんがマスターテープ紛失したそうです』
上条『マジ?俺も初めて聞いたんだけど』
佐天『はい。しかもバックアップ用にオンラインストレージに取ってあったデータも破損、音声データが跳んでしまっているとか』
上条『……そうなんだ?あれ、何にも拙いモノって映ってなかった気がするけど?』
佐天『確認しなかったんですか?』
上条『見る時間があればそうしているけどさ。この間のはちょっと、あったじゃないか?』
佐天『あー、一晩中寝かせてくれませんでしたよねっ』
上条『君らがだよっ!?間違ったフリして三人部屋取って、油性ペン握って俺が寝るの待ってたの誰っ!?』
佐天『いやーまさか男女三人で泊ったのに完徹するとはっ!』
上条『別に普通じゃないか?友達同士で遊びに行く事だってあるだろ』
佐天『くっくっく、既成事実を積み上げられているとは気づかずに……』
上条『待って?ねぇ今中学生には相応しくない言葉聞いたけど、誰が入れ知恵したの?白井?』
佐天『お母さんですっ』
上条『親子仲良くて結構ですねっ!つーかどこまで話してんだよっ!?』
佐天『「パパと出会った頃を思い出すわー」と』
上条『遺伝なのっ!?どっかで突っ込んだ記憶があるけど、俺もっかい言うよ!ユルいのは遺伝なんだなっ!?』
佐天『無くなっちゃったテープは仕方がないですしねー。まぁ展開次第ではもう一回行くって事で一つ』
上条『いや、いいけどもだっ!』
佐天『そんな訳で近い内に特番をしますんで、よろしくー』
上条『……もう御坂妹と一緒に行くのは、色々と危険を感じるし』
佐天『あたしと御坂さん連れて行ったのが間違いですね』
上条『……』
佐天『どーしたんですか?』
上条『……あのさ、こないださ。その、三人で遊びに行きましょう、つったよね?』
佐天『えぇ宣言しましたよね』
上条『でもこないだ来たのって御坂妹じゃん?あれ、なんだったの?』
佐天『あれ、御坂さんじゃないんですか?』
上条『……あれ、もしかして御坂妹誘ったのって佐天さん?』
佐天『えぇ、はい。御坂さんと連絡取ろうと思っていたら、道でばったり会ったので、直接伝えましたよ?』
上条『あー……だからね。勘違いしちゃったのか』
佐天『あれ御坂さんのコスプレじゃないんですかっ!?てっきり「御坂妹」ってキャラなのかと』
上条『それで納得する方もどうかと思うけど。あーうん。妹らしいぜ』
佐天『え、でも「下克上のチャンスだぜ!とミサカはお姉様に成り代わって返事をします」って言ってましたし』
上条『その時点で気づけよっ!?つか何やってんのよ御坂妹!』
佐天『やっだぁもう上条さんったら!そんなバレバレの嘘、冗談でもない限り言う訳無いじゃないですかっ!』
上条『……うん、珍しく君の言う事が正しいんだけど、今回はちょっとね』
上条『まぁ兎に角、あの子は美琴さんご本人じゃないから』
佐天『おっかしいなー?でも常盤台の制服着てたから、双子なんですかねー?』
上条『あんまり突っ込まないであげて!機密性ゼロとか隠す気ないよねとか言わないで!』
佐天『そんな感じでよろしくです』
佐天『あ、ちなみにさっきのオチは「普通クルマにドリンクホルダー一個しか着けないから、ポテトホルダーつけたらドリンク置く所ないよね?」って話でしたー』
上条『今更かよっ!?そんなに面白くもない!』
佐天『それではみんなっ、今度は特番か「木原一族の鬼神解体」で遭おうぜっ!立場的にゲストだけどなぁ!』
上条『やらないよっ!?俺聞いてないものっ!?』
佐天『それじゃ最後にこの言葉っ!さぁ皆さんご一緒に!』
佐天『うっいっはっるーーーーーーっ!あいっしてっるっぞーーーーーーっ!』 プツンッ
——常盤台女子寮
御坂「……」
御坂(つまり、あれ?妹に外泊一回分取られた、って事よね?)
御坂「あんの子はホントっに!どうしてそうなるのよっ!?」
御坂(気がついたら倍率1万倍弱って有り得ないでしょ?つーか譲るって展開じゃないの!?)
御坂(あーもう、何かイライラする……そりゃまぁ、あたしだってあの娘達が幸せになれば良いと思うけどさ)
御坂(率先してNTRに持ち込もうするのって、問題あるわよね?)
御坂「……はぁ」
御坂(……あれ、まだ続きがある。何々……?)
御坂(『番組ディレクターの>>240が、既に投稿された書き込みの中から、好きなのをアンカーで指定する』?)
御坂(つまり募集はもう終わってるから、>>240取った人が上から好きなのを一つ選ぶ、と)
御坂「……」
御坂(分かってるわよね?誰がメインヒロインって事をよ!)
御坂(最後なのよ?特番なのよ?空気読むわよね?)
御坂(今までは短くても8,000語、原稿用紙換算20枚の短編なのに、次は時間的にも16,000語の中編になるのよ?)
御坂(超変化球はやめてよね?絶対よ、絶対だからね!?)
——キーホルダー募集〆切りのお知らせ −終−
※>>240さんお好きなのをどうぞ
乙ー!!
>>240
と言う訳で一つ選んでアンカーでご指定下さいませ
つちのこの名前は宝満さんで
>>245
川端さん乙
>>242
みこっちゃんが涙目でお前を見ているぞw
作者のお情けで出してやって!
>>248
んじゃスペシャルですし、二本立てと言う事で
アンカーで指定宜しくです
>>222
が良いな
>>250
あの、御坂いないんですけど…
>>168
じゃあこれ
>>253
了解です
>>254
いえ>>248さんのご要望があったんで、追加しよっかなと
別にハブったらハブったでそれはそれでオイシイと思います
『最後なのに伏線ぶっちぎって呼ばれてないの!?』的な感じで
と言う訳で>>259
>>218、>>222、>>168
三つの中から改めて選ぶんだ!ハブるのもアリだ!
了解しました…が、>>218さんの趣旨に反するので追加キャラは無しで一つ
(いえない>>218は俺だなんて言えない)
>>269
若い内はよくある事。ってか流れ的に『最後なのにメインヒロイン+サブヒロイン置いてけぼり』もオイシイです
∧__∧
( ´・ω・)∧∧
/⌒ ,つ⌒ヽ)
(___ ( __)
"'゙''` '゙ ゙゚' ''' '' ''' ゚` ゙
——学園都市七大不思議探訪 特番前編 『つちのこ』
——某駅前の喫茶店 16時
佐天「——って言う訳でぇっ!やって来ました特番っ!いえーい全国の初春見てるーーーっ!?」
上条「全国に初春さんは居ないな。多分学園都市と西葛西だけだと思うよ?」
佐天「いやー、長かったですねー!苦節数ヶ月っ!あたしがっ、どんだけ溜めてきたんだとっ!」
上条「の、割には神奈川で弾けてたよね?御坂妹と無双プレイしてたよね?」
佐天「でもアレ真っ暗で使い物になりませんでしたしねー」
上条「露出間違ったのかな?なんで月のない夜空みたいになっちまったんだか」
上条「まるで『天使堕とし』の事件みたい——あれ?」
佐天「どーしましたかっ?」テンション上げて下さいってば」
上条「『後追い小僧』の話って、誰から聞いたんだっけ——いや、まぁ、いいか」
佐天「んじゃ編集点ここで、ちょっきんです」 チョッキン(カニのポーズ)
佐天「——ってな訳でやって参りました延長戦っ!今回は一時間スペシャルだから前後編の二回ですよーーーーーっ!参ったかっ!」
上条「うん、もう色々な意味でギブアップしたいよな?多分逃げても二人で追い掛けてくるんだろうけど」
佐天「あ、じゃそれにします?あたし達は構いませんよ?」
上条「学園中のヤローどもに狙われるよっ!?あと君のファン兼御坂のストーカーに刺されるっ!」
佐天「ってな訳で『学園探訪』の特番前編では『UMA』を取り上げたいと思います」
佐天「UMAってご存じですかね?」
上条「未確認動物、だっけ?生物?」
佐天「動物、ですね。『Unidentified Mysterious Animal』って言う和製英語です」
佐天「ちなみに日本での呼び名だから、海外のファン相手にはMystery animalかHidden animalって言わないと通じませんので」
上条「へー、きちんと調べてるんだ。偉い偉い」
佐天「やったね初春っ!初春の好感度が鰻登りだよっ!」 ギリギリッ
上条「また人任せなのっ!?あと笑顔で奥歯を噛み締めないでっ!」
佐天「ちなみにUMAって聞くとどんなの思い浮かべますかー?」
上条「ネッシーとか雪男とか。あ、モスマンってのも居たっけ?」
佐天「あと『ダンディ坂○』とか『ゴー☆ジャ○』とかですねっ」
上条「一発屋芸人だからっ!動物じゃないよっ!生きてる人だものっ!」
佐天「でも一度隠れると、皆さんUMAよりも発見するのが困難ですよねっ」
上条「笑顔で毒を吐くなっ!その人達だって精一杯生きて居るんだからっ!」
佐天「あ、そういえばですね。弟のメル友の話なんですが」
上条「おいその前振りロクな予感がしねぇんだけど。つーかメル友ロクな人間じゃないよね?」
佐天「実家に帰った時、母親から『知り合いの息子さんが芸人さんやってるんだけど、知ってる?』って聞かれたんですね」
上条「もう何か切ないモノっ!嫌な雰囲気がぷんぷんするしっ!」
佐天「『ゴー☆ジ○スって言うんだけど』って言われたんですが、その時はもうUMA状態になっていたので——」
佐天「『あ、ごめん。テレビ見ないからちょっと……』って言葉を濁すのが精一杯だったそうです」
上条「……優しさだよね、うん」
佐天「その後何が辛かったかって、『んじゃその子が出てるテレビ番組とか雑誌とか、見かけてたらでいいから教えてくれる?』って言われて——」
佐天「あれから四年ぐらい経つのに、未だに教えてやれない事、だとか」
上条「頑張れゴー☆○ャス!俺は応援して居るぞっ!パチンコの営業で来てくれてトモヒ○(本名)コールされたとか知ってるからっ!」
佐天「んで、まぁ人間じゃない方のUMAへ話を戻しますね」
上条「うん、人間の方はUMAのタグを外そう?UMAは人類を舐めているけど、その人達は人類から舐められているだけだからね?」
佐天「それがですね——学園都市で見つかったそうです、UMA」
上条「……マジで?」
佐天「と言う訳で、今回の依頼者さん、いらっしゃーいっ!」
食蜂「長い、話が長いわぁっ!」
上条「うっわー……面倒臭そー」
食蜂「ていうか30分前から待機力している意味があったのぉ?」
佐天「まぁ仕様ですし?」
上条「なにそのメーカーの言い訳。スクエ○か」
食蜂「仕様力なら仕方がないわねぇ」
上条「ヤバいぞっ!?この子佐天さんと気が合っちゃう人だっ!?」
食蜂「はっじめましてー!食蜂操折でっす☆」 キラッ(横ピース)
上条「あー、うん。常盤台って事は絶対中二なんだよな?」
佐天「御坂さんのお友達だそうです」
食蜂「えぇ、御坂さんとはいつも楽しくケンカしてるわあ」
上条「あいつ同年代の友達居たいんだ。良かったー」
佐天「食蜂さんが今回ご依頼頂いた件なんですが」
食蜂「『つちのこ』、見たのよお」
上条「あー……」
佐天「補足しますと『つちのこ』ってのは蛇のUMAですね。頭と尻尾は普通の蛇の大きさなんですけど、胴体が太いって言う」
上条「UMAっていうか、妖怪のカテゴリじゃないの?」
佐天「時代が変われば定義も変わる、でしたっけ?今一誰から教わったか覚えていませんが、そういう事ですよ」
上条「まぁ良いけど。それで?食蜂さんは『つちのこ』見たからって?」
食蜂「そお。これよお」 ピッ
佐天「おおっと!?これは確かに」
上条「ブレブレだから、よく分からないけど。胴体太くて頭短い蛇、に見える、か?」
食蜂「ね?目撃力だわぁ」
上条「食蜂さんが撮ったの?」
食蜂「お友達が撮ったんだけどお、気になっちゃってぇ」
佐天「それでまぁ暇人に任せてみる、って事ですね」
上条「ふーん。あ、これもしかして学園内で撮ったんだ?」
佐天「え、暇人のボケはスルーですか?」
食蜂「そうだけどお?脅威力?」
上条「いや、学園内だったら逆に珍しくないんじゃないかな、って」
佐天「あー、聞いた事あります。学園の研究施設ではキメラ?的な研究をしているって」
上条「でもこれ、どっかの路地裏?ビルの谷間?後ろにあるコーヒー缶からすると、えっと……デカいな。30cmはある感じ」
食蜂「二人には調査力でどうにかして欲しいわぁ」
佐天「はいっ、承りました」
上条「また君はそうやって二つ返事で」
食蜂「私も情報収集力で手伝うからっ☆」 キラッ
上条「……えっと、もし俺がイヤだっつって放り出したりした場合には……?」
佐天「とーぜんっ二人で行きますよねっ!」
食蜂「UMAハンター出撃力っ☆」 キラキラッ
上条「あーもう!この二人の組み合わせはトラブルしか起こさねぇよっ!」
——某学区 16時30分
佐天「ってな訳でやって来ました××学区!」
佐天「はてさて『怪奇ツチノコ男!』はあたし達の前に姿を現わすのでしょうかっ!?それともいつものようにグダグダで終わってしまうのかっ!」
上条「80年代のような○○男は、今時ライダ○でも使わないからな?」
佐天「今回は特別ゲストとして常盤台中学の『女帝』さん?」
食蜂「『女王』で」
佐天「んのっ、ぶっちゃけ巨乳の方をお迎えしていますっ!」
上条「中学生に対する紹介の仕方じゃねぇっ」
食蜂「えぇー、でもお御坂さんが『孤高の貧乳派』って呼ばれてるからぁ、私はどうしたってそう言われちゃってぇ」
上条(この子本当に中学生なの?なにこのワガママな体。神裂ぐらいはある……?)
佐天「あーこらこらカメラマンさん?明らかにレンズが食蜂さんのおっぱいに集中してますよー」
上条「してないよっ!借り物のカメラで撮るかっ!」
佐天「んじゃ私用だったら?」
上条「……」
佐天「……」
上条「ここへ来たのは『ずいずい』以来だよな?」
佐天「ですねー」
食蜂「今の不自然な間はなぁにっ!?」
佐天「あぁいや、『多分追求しても二人とも大怪我するから、なぁなぁで済ませとこうぜ』って言う政治的判断ですね」
食蜂「さすがに二ヶ月以上コンビ結成力じゃないわねぇ」
上条「あ、見てくれたんだ?」
食蜂「って話を聞いただけだけどぉ」
上条「でっすよねー?」
佐天「ともあれ、食蜂さんのお友達が見たのは、っと……あー、あそこですかね」
上条「あー確かに。背景と同じだな。あ、ごめん、佐天さんカメラ宜しく」
佐天「わっかりましたっ!」 ピシッ
上条「写真と同じように、携帯カメラで構図を絞ってみると……あぁ、やっぱりだ」
食蜂「何が分かったのぉ?」
上条「よくある合成とかイタズラ写真みたいに、遠近法使って撮ったかも知れないだろ?」
食蜂「失礼ねぇ。私のお友達はそんな事しないわぁ」
上条「怒るなって。大体の大きさを測りたかっただけだから。食蜂さん、そこ立って貰えるか?あー、もうちょい前」
上条「写真がこれで、食蜂さんの位置があれだから……デカいな。4、50cmはあるって」
食蜂「蛇だったらそのぐらいあるんじゃないのぉ?」
上条「普通だったらな。でも普通の蛇がウロウロしてたら大騒ぎになるだろ」
食蜂「確かにねぇ……突進力だけの人じゃない、って事かぁ☆」
上条「何?……って、あれ?」
食蜂「どおしたのぉ?」
上条「佐天さんは撮ってないのかよっ!?つーか何してんだっ」
佐天「おー、ひっさしぶりだなーっ!元気していたかー」
男の子「うっいはーる?」
女の子「あいして、るーぞー?」
佐天「お、なんだぁ?声が小さいなあ、さぁみんなでご一緒にっ!」
三人「うっいっはるーーーっ!あいしてーるぞーーーーっ!」
上条「……」
食蜂「……あれ、何かの悪霊払い力?」
上条「あぁ、見ていないんだっけ放送」
上条「何話か忘れたんだけど、『ずいずい』って都市伝説扱ったんだけど、その時にあの言葉唱えれば助かる、みたいなネタを流したんだ」
食蜂「『ずいずい』?」
上条「うん。信号で子供達が待っていると、唄が聞こえてきて——」
食蜂「あぁ聞いた事あるわぁ。終わったら後からドンって押される、って悪質な都市伝説よねぇ」
上条「そうなの?初春さん——ネット得意な人に調べて貰ったけど、一年前の書き込みしか無かったけどな」
食蜂「私はぁ、子供の頃にお兄ちゃんから教えて貰ったけどぉ」
上条「もしかしてその人が発端かぁ?あぁ、再現VTR撮らないとな。ミニ三脚用意して、っと」 ゴソゴソ
食蜂「あ、カメラあるんじゃなぁい」
上条「型落ち品のトイカメラだけどな。『学園探訪』のギャラで買ったんだよ」
上条「セットして、と。食蜂さん、そのままで宜しく」
食蜂「はぁい」
上条「……よし。で、コーヒーの缶、でもって俺はこっちへ立ってっと」
上条「んでカメラのリモコンで、セルフ撮影っと」 パシャッ
食蜂「何をしたのぉ?」
上条「君のお友達の撮ってくれた写真、ここにホラ、影が写ってるだろ?」
食蜂「あー、伸びてるわねぇ」
上条「見切れてて分からなかったけど、もしかしたら枠の外に誰か立ってたんじゃないかな、って」
上条「でも見てみ?俺の影だと大きすぎる」
食蜂「写真を撮影力したのは一週間前、時刻も大体同じって事はぁ」
上条「この『つちのこ』の写真を撮った時、撮影者以外にも周囲に人が居た、って事だな」
食蜂「……へぇ」
食蜂(頭は意外と悪くないみたいねぇ。御坂さんのイイヒトって聞いたんだけどぉ)
食蜂(わざわざ一人で乗り込んできた甲斐力があったわねぇ)
上条「時間帯と場所を考えりゃ、ここの近くの小学校の子じゃねぇかな」
食蜂「……あらぁ、そのリモコン素敵ねぇ?」
上条「そ、そっかな?バーゲン品だけど、セルフフォトも出来るし結構気に入ってるんだよ」
食蜂「お友達がいないのねぇ?」
上条「うっさいよっ!」
食蜂「実はねぇ、私もリモコン持っているのよぉ?」 スチャッ
上条「へー、何のリモコン?」
食蜂「改めて自己紹介、学園第五位にして『心理掌握』の食蜂操折ですっ☆」 ピッ
上条「っ?」
食蜂「あ、ゴメンナサイね?御坂さんがあなたに幻滅したら解放力するからぁ」
上条「あー、ごめんな?よく分からないけど終わったら付き合うから、先に番組撮っちゃっていいかな?」
食蜂「——えっ?」
佐天「やりましたよっ上条@イマジンブレイカーさんっ!手がかりを掴みましたっ」
上条「俺の名前じゃねぇよそれっ!ってかアットマークっていつの流行りだっ」
食蜂「……?」 ピッ
上条「どうしたんだ?」
食蜂「んー?不思議力?」
佐天「聞いて下さいよっ!見つけましたよっ!」
上条「マジでっ!?すっげーお手柄だよ!」
佐天「見直しましたかっ!誉めても良いんだぜ?」
上条「おー偉い偉い」 ナデナデ
佐天「あ、見てますかー御坂さーん?ねぇ今どんな気持ちどんな気持ち?」
上条「うん。で?」
佐天「見つけました——カブトムシっ!」
上条「捜してねぇよ!それじゃねぇし!カブトムシで喜ぶなんて子供かっ!?」
上条「つーか確かに珍しいけどもだっ」
佐天「いえ、でも似てません?あそこにいる、あれ」 ピシッ
上条「……なにあれデカっ!?30cmはあるって!」
佐天「ピンボケと角度から推測するに、この写真の『つちのこ』はアレで間違いないかと」
上条「あー確かにずんぐりむっくりのフォルムは似てない事は、ない、か?」
上条「ツノの所が蛇の首で、って見えなくもない」
佐天「食蜂さんはどう思いま——食蜂さん?」
食蜂「え、えぇ何かしらぁ?」
佐天「あの白いカブトムシ、写真と似てませんかって」
食蜂「えっと……まぁシルエットからすればぁ、同じかもねぇ?」 ピッ
佐天「ですよねぇっ!んじゃツチノコ改めカブトムシの追加調査しましょうかっ!」
佐天『んー、どうなんだろー?11月にカブトムシが居る訳ないし、新種の都市伝説かもっ!』
食蜂「……聞こえる、わよねぇ。あれぇ?」
上条「つーかさっきの子供達も見てるんだよなぁ、あのカブトムシ」
佐天「はい。少し前ぐらいから現われたんですが、捕まえようとするともの凄い勢いで逃げるそうです」
上条「放っといていいもんかなぁ、これ?通学路の方じっと見ているけど」
食蜂 ピッ
上条『』
食蜂(こっちは、聞こえないわぁ。じゃあもう一度) ピッ
佐天「一応先生方が各種機関に問い合わせたんですが、ちくわ大明神」
上条「え、今なんて?」
佐天「危険な生物や兵器、工業製品の逃走は確認されていませんでした、って言ったんですけど?」
上条「いや、ちくわがどうのって聞こえたような?」
佐天「いやいやっ、どんな脈絡でちくわが出るんですかっ!」
食蜂 ピッ
上条「んー……まぁいいか。んでどうしよっか?」
佐天「そりゃ勿論続けるに決まってますよねっ!ねっ!!!」
上条「こらこら、迫るな迫るな。食蜂さん?」
食蜂「……そうね。気になるんだったら、調査力が必要じゃない?」
上条「よっし。んじゃちょっと捕まえてくる」
佐天「逃がさないで下さいよっ!絶対ですからねっ!?」
上条「フリっぽく聞こえるから自制しなよっ!?——っと」
白いカブトムシ「……」
上条(こっちを見てない?通学路の方をじっと眺めてる……つーか何やってんだろ?)
上条(まぁ、いいか。そーっと近寄って——)
上条「捕まえたっ!」
パキイインッ
白いカブトムシ『ぐぬあああああああぁぁぁぁっ!?』 サラサラサラサラッ
佐天・食蜂「」
上条「……」
佐天「ナムアミダブツ……」
上条「俺かっ!?つーか何今の断末魔の悲鳴はっ!?」
食蜂「男の人の声よねぇ、うん」
佐天「わっけ分からないですねー。上条さんがトドメを刺してしまったがために!」
上条「……あー、はい。すいませんでした」
食蜂「あなたってレベル0って聞いてるんだけどぉ?『昆虫破壊』とかそんな能力なのぉ?」
上条「あー、よく分からないらしい、ってか俺もよく分かっていないんだけど。何でも異能ってヤツをキャンセルする力とかって」
佐天「って事は白カブトも誰かの異能って事になりますか。でもなんだかなぁ、ですよねー」
食蜂「産業スパイとかぁ?そう言うのはどう?」
上条「意味が分からないよな。何で普通の路上に居るんだ?」
佐天「確かにまぁアリっちゃアリだと思いますけど——悪目立ちしません?」
食蜂「真っ白、よねぇ。大きいしぃ」
上条「あー、取り敢えず場所移さないか?」
佐天「え、だって聞き込みもしなくちゃですし、もしかしたら白カブト二号機も見つかるかも知れませんよ?」
上条「もう日も落ちるし、目撃者だって子供達も通らなくなるだろうし」
食蜂「今日は終了力?」
上条「した方が良いかもな」
佐天「えーっ、もうちょっとボケ倒したいですっ」
上条「そう言う番組じゃないからなっ!?」
佐天「違うんですか?」
上条「……そんな、『今更何言ってんだろう?』的な、とてつもなく澄んだ瞳で聞かれても……」
食蜂「……」
食蜂(異能の力をキャンセルする、ねぇ?それは珍獣力って話だけどぉ)
食蜂(御坂さんに好かれるような人じゃない、わよねぇ)
食蜂(……ま、今日だけじゃ終わらないだろうし、観察力だわぁ)
『ずいずいずっころばし、ごっまみそっずいっ』
食蜂「あれぇ、子供……?」
食蜂「ねぇあなた達ぃ、ちょっとお話聞かせて——」
『ちゃっつぼにおわれてとんぴんしゃんっ、ぬけたぁらどんどこしょっ』
上条「——食蜂さんっ!」
食蜂「っ!?」
食蜂「ど、どうしたのよぉ。大声出してぇ」
上条「いや、一人で横断歩道へ近寄って行ったみたいだから。心配になって、つい」
食蜂「あのねぇ。私はあそこにいる子供に聞こうと思ってぇ」
佐天「あそこってどこです?」
食蜂「ほら——あ、あらぁ?」
上条「居ないよな?」
食蜂「あっるぇ?……いやぁ、失敗失敗?」
佐天「んじゃ帰りましょうか。明日は半ドンですし。いつものあそこで」
上条「あぁ。食蜂さんも駅まで一緒か?だったら送るけど」
食蜂「ううん、友達に迎えに来て貰えるから、安心力よ?」
上条「え、ここまで来るのか。凄いなぁ」
佐天「さっすが常盤台のお嬢様ですねっ」
食蜂「まぁねぇ?その代わり規則とかも厳正力なんだけど」
上条「そっか。んじゃまた明日、あの喫茶店で」
佐天「ですね、お疲れ様でしたっ」
食蜂「はぁい——」
食蜂「……」
食蜂「……はぁ」
派閥メンバー「女王、お車のご用意が出来ました」 スタッ
食蜂「疲れちゃったわぁ、ほんっと」
派閥メンバー「当然でしょう。女王がわざわざ出向く理由はありませんし」
食蜂「まぁ、好奇心力ってのもあったんだけどぉ」
派閥メンバー「お探しであるのならば、私どもにお任せ下されば宜しいのに」
食蜂「たまには気紛れも良いと思うわぁ……あ、そうそう。一つ聞きたいんだけどぉ」
派閥メンバー「何なりと」
食蜂「さっきから聞こえる、この『唄』。一体何なのぉ?」
派閥メンバー「……私の耳には、何も聞こえませんが……?」
食蜂「……?」
派閥メンバー「ですから、今ここで聞こえるのは風の音ぐらいで——」
ピッ
派閥メンバー「いえ、聞こえますね。これは」
食蜂「……」
『いどっのまっわっりでっおっちゃわんかっいったの』
派閥メンバー「ずいずいずっころばし……?」
——翌日 駅前の喫茶店 12時半
食蜂「……」
上条「おー、お疲れー」
食蜂「ごきげんよう、って言うのがいいかしらぁ」
上条「お嬢様っぽいよな」
食蜂「あらあ、お嬢様だゾっ☆」 キラッ
上条「明らかにアレだよね、芸人がウケ狙いでやっている匂いがするよね?」
食蜂「あなたも随分とツッコミ慣れているようだけどぉ?」
上条「俺の周囲が全員ボケだから仕方がなくだっ!」
食蜂「って言うボケかしらぁ?」
上条「割と切実なんだよっ!——って、あぁそうだ。昨日持ってたリモコンの話」
食蜂「んー、イイのよぉべつに。効かないって分かったしぃ」
上条「ふーん?まぁ良いけど。バッテリー、まだ大丈夫だよな」 ピッ
食蜂「昨日のトイカメラねぇ?」
上条「つっても外の最新式よりスペック高いからなー。安いからってバカには出来ねぇよ」
食蜂「リモコンも付いてる——あらぁ?」
上条「どしたん?」
食蜂「昔持ってたリモコンと似てるわねぇ」
上条「ふーん」
食蜂「……聞かないのぉ?気を利かせて聞く所じゃないのかしらぁ?」
上条「俺は君じゃない。だから、君が望んでいる事を理解するなんて出来る訳ねーって」
食蜂「……随分な口の利き方じゃなぁい?」
上条「でも誰だって、誰かに分かって欲しい、知って欲しい、って思うから。話したり聞いたり、語ったりするんだと思う」
上条「食蜂さんが聞いて欲しいってんなら、俺は聞くし出来る限り協力もするよ?」
上条「でも自分から踏み出さずに、手を伸ばして来いってのは無理じゃないかな」
食蜂「私はぁ、あなたより繊細で気の付く人に囲まれてるしっ☆」 キラッ
上条「そっか、んじゃ良かったな。親兄弟でも今時いねぇよ、そんな人達」
上条「大事にしないと、罰が当たるぞ」
食蜂「……えぇ、本当にねぇ」
佐天「おっはようございまーーーーーすっ!」
上条「うっす」
食蜂「おっつー☆」 (横ピース)
佐天「ってか食蜂さんのそれ可愛いですよねっ。いいなー、あたしも真似して良いですかねー」
食蜂「難しいわよぉ?」
佐天「この佐天涙子っ、上っ面の可愛さだけには自信がありますっ!」
上条「自分で言う事じゃないからね?あと食蜂さんも、この子はアレなんだから、あんまり焚きつけないであげて?」
——昼食後
佐天「で、あの後色々調べてきましたっ」
上条「……普通、先に調べようね?どうしてまた行き当たりばったりなの?」
佐天「テンションで乗り切った方が視聴者ウケ良いんですっ!」
上条「おい、テレビの前のお前らっ!段々キャラが崩壊していくのはお前らの責任だからなっ!」
食蜂「脱線力はいいんだけどぉ。調べてきたってのは何ぃ?」
佐天「『つちのこ』と『白いカブトムシの出現マップ』ですね」
食蜂「白カブだけでいいんじゃなぁい?だって『つちのこ』とは違うんでしょお?」
佐天「イヤイヤそうじゃないんですってば。こう言うセオリーには変化ってのがあるらしくてですね」
佐天「『ノヅチ』って知ってます?蛇、っていうか、蛇のオバケっていうか」
上条「ゲームで見た事ある。茶色い太鼓っぽいの」
食蜂「『野槌』よねぇ。仏教の説話集に出て来るわぁ」
食蜂「徳の低いお坊様が死ぬと転生力するってぇ」
上条「何でお坊さんが蛇になるんだ?」
食蜂「口ばっかり達者でぇ、その他がダメダメだからぁ、口と胴体しかない蛇になるわよ」
上条「あー」
食蜂「あなたもなりそうよねぇ?」
上条「ウルセェよっ!確かに大した力は無いけどなっ!」
佐天「でも実は元々『野つ霊(ノヅチ)』って書いていたらしいんですね」
佐天「つまりは『野の力』って意味なんですな、これが」
上条「あー、言われてみれば確かに。昔は槌なんて一般的じゃなかったろうし」
佐天「そこら辺は製鉄技術の伝播と関係あるそうなんですが、超長いので跳ばします」
佐天「そもそも『ノヅチ』は古事記や日本書紀に出て来る『カヤノヒメ』の異称の一つなんです」
上条「カヤ?」
食蜂「茅葺き屋根って聞いた事ないかしらぁ?白川郷とかとかにあるわねぇ」
佐天「要は茅の神、つまり草全ての神様でもあるそうです」
上条「んー……でもおかしくないかな?『ノヅチ』は神様、ってか女神様だったんだろ?」
佐天「ですね」
上条「どうしてそれが『野槌』なんて蛇になっちまうんだ?」
食蜂「それは別の言葉が浸透したからよぉ」
佐天「——って事を言おうとしていたのにっ!?」
食蜂「ごめんさいねっ☆」 キラッ
佐天「お、おおっ!キラキラ感半端ねぇぜ!」
上条「脱線すんな。つーか俺をぼっちにしないで下さいお願いします」
佐天「えっとまず『ノヅチ』って言葉があるじゃないですか。でも実際に見た者は居ません」
佐天「でも、暫く時代が過ぎてから『槌(ツチ)』って単語が浸透しますね?すると——」
食蜂「『野つ霊』だったのが『野槌』って理解されてしまう?」
佐天「大正解ですっ!いつの間にかメル友になった円周ちゃんってアドレスをプレゼントしますねっ!」
上条「オイ馬鹿止めろっ!その名前は不吉すぎる予感がするわっ!」
上条「……いやいや待てって。じゃ何?『槌』を使い出したから、神様がずんぐりむっくりな蛇になったってのか?」
食蜂「当時字を読める人はごく少数よねぇ。だから他の人は『つ霊(ち)』を『槌』って勘違いするのも当然だわぁ」
上条「なんつーかいい加減つーかなぁ」
佐天「それ以後、『ノヅチ』は『野槌』として姿を現わし、時代が下がって『つちのこ』って言われるようになった、って推測です」
食蜂「確かに描かれた絵を見ているとぉ、おデブの蛇さんよねぇ」 ピッピッ
佐天「他にもものっそい勢いでジャンプしたり、尺取り虫のように移動したり」
佐天「中には自分のシッポを加えて丸まり、タイヤのように転がって移動するという目撃例がっ!」
上条「なにそれ超見たい」
佐天「まぁそれが『つちのこ』に関しての情報です。続きまして『白カブト』ですかね」 ピッ
上条「地図とバツ印が大量に」
食蜂「あらぁ、これって随分一杯あるけどぉ」
佐天「はい。とある筋から得た目撃例まとめです」
上条「職権乱用、つーか初春さんに迷惑がかかるんじゃ?」
佐天「いえ近隣の小学校とかにも配布して居るんで、秘密って訳じゃないらしいです。ただ」
食蜂「取り締まる筈なのに、放置力って訳よねぇ」
佐天「あぁっまた人の台詞をっ!」
上条「……学園側は何かの実験をしていて、見て見ぬフリをしている、と?」
食蜂「そこまで深い闇じゃないと思うわぁ」
上条「と言うと?」
食蜂「完全隠匿するんだったら、昨日の時点で私達、もしくは局に圧力がかかっている筈だもの」
佐天「ですよねー。ディレクターさん、というか復帰したクラスメイトに聞いてみましたが、やっちゃえば?と」
上条「んー……学園側が何かしてる、つーか黙認状態なのは」
食蜂「確定力、よねぇ」
佐天「でも全力で隠すような真似もしていない、と。んー?突っ込んでいいものかどうか、迷いますねぇ」
上条「……あっれー?」
佐天「どうしました?」
上条「白カブトムシの出現パターン、分かったかもっ」
佐天「ホントですかっ!?」
上条「ほら、こことここ。後、ここも」
食蜂「あー……納得力。だから『カブトムシ』なのねぇ」
佐天「えー……そうなんですかぁ?」
食蜂「『受け』は良いじゃない?」
上条「でも、どうしようか?白カブトのパターンが分かっても、追い掛けられないんじゃ意味無いよな」
食蜂「そこは学園第五位の私の出番力——」
上条「あ、すいませーんっ!コーヒーおかわりお願いしまーすっ!」
佐天「あたしはちょっとお花つみにっと」
食蜂「……」
上条「あ、ごめん。続けて?」
食蜂「どぉしてあなた達はぁマイペースなのぉっ!?」
食蜂「第五位なのよぉっ!?もっと、こう、驚くとか敬うとかあるでしょおっ!?」
上条「マジで?すっげーなぁ」
食蜂「分かってないわぁっ!その『お父さんが子供の武勇伝を優しく聞く』みたいなの止めてくれるかしらぁ!?」
食蜂「私はっ、やろうと思えばあなたの人生ぐらい、目茶苦茶に出来るんだからぁっ!」
上条「でも、君はしないよ」
食蜂「……ナメるのもいい加減にしてくれるかしらぁ?」 スチャッ
食蜂「私の能力は『心理掌握』。確かにあなたには効かないけど、あなたのお友達全員をどうにか出来るのよぉ?」
上条「待てよ。何で怒ってんだって」
食蜂「それはっ!あなたが私の能力を認めないからっ!」
上条「いやいや、そう言う事じゃないよ。凄いって言ってるだろ?」
食蜂「だったらどうしてしないとか言えるのよぉっ!?」
上条「だって君——お前、さっき自分で『繊細で気の付く友達が一杯居る』って言ってただろ?」
上条「もしもお前が癇癪で能力使うとか、憂さ晴らしに人をどうにかしていたから——」
上条「そんな『大事にしてくれるような友達が出来るわけ無い』だろ?」
食蜂「……っ!」
上条「つーか大切にしないとな?そう言う友達は」
食蜂「……そう、ねぇ。そう言う友達はねぇ」
佐天「お待たせしましたーっ!って対策は出来たんですかね」
上条「なぁ食蜂さん」
食蜂「……何よぉ」
上条「ちょっと試して欲しいんだけど」
食蜂「いいけどぉ。エッチなのは、後から、ねぇ?」
佐天「あ、いーけないんだーっ」 ジーッ
上条「しねぇよ!そうじゃなくって——」
上条「——あれ、操れると思う?」
——日の届かない、暗い場所
白カブトムシA「……諸君っ!我々の友が一人死んだっ!」
白カブトムシB「おぉ、まさか……」
白カブトムシC「泣くなよ、兄弟。ヤツは志に消えた男だ」
白カブトムシD「俺達がすべき事は何だっ!?泣く事かっ!?」
白カブトムシE「いや違うっ泣いている暇なんて無いんだっ!」
白カブトムシA「我々にはすべき事がある!それを成し遂げる日まで——」
パキインッ、コロコロコロコロッ
白カブトムシB「敵襲かっ!?」
白カブトムシC「慌てるなっ!グレネードぐらいでどうにかなる我らじゃねぇよ!」
白カブトムシD「い、イヤ待て兄弟!この匂いは——」
プシューーーーーーーーッ
白カブトムシE「バルサ○じゃねーかああああああぁぁっ!?」
白カブトムシ全員「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
——30分後
上条「お、すげーなバルサ○。もう動かなくなった」
佐天「良いんですかねぇ。取り敢えずで攻撃して」
白カブトムシK「良い訳ねぇだろうがああぁぁぁっ!」
食蜂「はいはい、そこで必殺ゴキジェッ○」 プシューッ
白カブトムシK「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?」
白カブトムシK「って死なないよっ!?俺らゴキブリじゃねぇもの!」
上条「カブトムシも似てない?」
白カブトムシK「おっとそれ以上のヘイトスピーチは止めて貰えるかなっ!場合によっちゃ法廷で再会する事になるぜ?」
佐天「ヘイトって言う事は、一応自覚はあるんですね」
食蜂「差別差別言い出す人がぁ、一番差別してるんだけどねぇ」
上条「つーかお前ら何よ?」
白カブトムシK「知らねぇよ!気がついたらこうなってたんだよ!つーかお前らこそなんだよっ!」
佐天「あ、名刺どうぞー」
白カブトムシK「あ、ご丁寧にすいません。何々、『不思議バスター佐天涙子』ちゃん?」
上条「そんな名刺いつ作ったっ!?」
佐天「局の経費でっ!ノリと勢いでポチったそうですっ」
食蜂「本当にハンターしてたのねぇ」
上条「しっちゃかめっちゃかにしている、ってのは合ってるけどなっ!」
白カブトムシK「取材?俺らを?」
佐天「はいっ。宜しければ、ですけど」 ジリジリ
白カブトムシK「うん、取り合えず右手のゴキジェ○トは下ろそうや?話を聞く態度じゃねぇし」
佐天「あ、これつまらないものですが」
白カブトムシK「あーまぁまぁ、こんな立派なモノを。黒くて丸くておいしそう——ブラックキャッ○じゃねぇかっ!?」
佐天「遠慮せずに、ささっ?」
白カブトムシ「食べねぇよっ!?」
食蜂「あー……」
上条「どったの?」
食蜂「番組、今度見てみるわぁ。グダグダ感がやみつきに」
上条「まぁそれ以外何もないけどねっ」
——10分後
上条「意思を持ったカブトムシぃ?」
白カブトムシK「だと、思う」
佐天「そりゃまた、すっごいの来ましたねー」
食蜂「アジトまで案内させたのはいいんだけどぉ、意外と大きな話が出たわねぇ」
上条「人間以外の知的生物ってアリなのか?」
食蜂「んー、学園側が放置しているのはどうしてかしらぁ?」
白カブトムシK「知らねぇよ。つーか俺達が接触した事ぁないし」
白カブトムシK「ってかさぁ、お前らちょっと非常識じゃね?取り敢えずバルサ○投げ込んでくるなんざ、そりゃ宣戦布告と同じじゃねぇかなぁ?」
上条「いや面倒だったし」
佐天「あ、節足動物から説教される上条さんっ、素敵っ!」
上条「この頭悪い襲撃を最初に企んだのは俺じゃねぇよっ!?」
白カブトムシK「面倒て!?襲撃って!?お前ら俺達の事なんだと思ってんだよ!」
食蜂「面白実験動物のなれの果てぇ?」
白カブトムシK「まぁ俺達も何となくそんな感じはするんだけどなっ!あっはっはっはっーっ」
佐天「あ、カブトムシも泣くんですね」
上条「涙腺ってあるのか?と言うかカブトムシに悲しいって感情持ってんのかよ」
白カブトムシK「いやいやでもマジな話。お前らから攻撃されるような、そんな後ろ暗い事はしてませんよ、俺達?」
白カブトムシK「むしろアレじゃねぇかな?お前らが見てるのは鏡なんだよ」
白カブトムシK「『相手がこうするに違いない』ってのは、『自分だったらこうする』って事だからね」
白カブトムシK「少しは恥じろよ、なぁ霊長類さんよぉ?」
上条「……だったら聞かせて貰うけど」
白カブトムシK「おう!何でも答えてやんよっ」
上条「お前ら小学生の通学路で、何やってんの?」
白カブトムシK「……」
佐天「ですよねぇ。人を観察するんだったら繁華街とか行きますし」
食蜂「目撃された時間は朝から夕方までだしぃ?明らかに子供目当てよねぇ」
白カブトムシK「じ、自主的な警備行動?」
上条「自宅警備員の最終形態じゃねぇかっ!?しかも一人捕まったら、他の数万人に迷惑かけるタイプのっ!」
白カブトムシK「だって不安だろっ!?こんなご時世、白い変態とか杖ついた変態とかカキクケコ言う変態とかいるかも知れねぇだろうが!!!」
食蜂「でもあなた達は幼虫から変態した変態よねぇ?」
白カブトムシK「イエスッウィィィィアァッ!」
白カブトムシK「——じゃねぇよっ!俺達はジェントルだよっ!」
白カブトムシK「だって誘拐されたりえっちぃ目にあったりしたら可哀想だろっ!?俺達大人が守ってあげなくちゃっ!」
佐天「成虫ですから大人って言えば、まぁ大人だと思いますが」
食蜂「説得力は皆無力よねぇ」
白カブトムシK「いいかっ!世界には変態と変態じゃねぇヤツしかいねぇんだよっ!」
上条「お前今、人類へ対して宣戦布告しているからな?」
佐天「出来ればさっきの鏡の話も思い出して欲しいです」
食蜂「心理学力では『投影』って言うのよぉ」
白カブトムシK「俺が居なかったらもう通学路は大変な事になってるって!」
佐天「えっと……何の事か分かりませんが、ゴーストが囁いているので、呟きますね」
佐天「原作でも裏切ったのは幼女守るためでしたよね、確か」
佐天「つまり『学園都市第一位と二位は幼女のために正義側へ寝返った』で、ファイナルアンサー?」
白カブトムシK「知らないなぁっ!言いがかりは止めて貰おうかっ!」
食蜂「……アタマ痛いわぁ」
上条「……誰か収集つけてくれよ、これ」
——数時間後 夕方
佐天「はいっ、てな訳で妖怪クラッシャー条はまた勝利してしまいましたっ、いぇいっ!」
上条「勝ってないものっ!?何か気持ち悪い生き物未満とコンタクト取っただけだからねっ!あと俺の名字を勝手に拝借しないで!」
佐天「まぁ結論としては『UMAの謎を解き明かそうとして、開き直られた』ですかねっ」
上条「……いいのかぁ?ここで終わっても?」
佐天「白カブトムシさん達曰く、『Yesロリコ×!Noタッチ!』だそうです」
上条「それもう完っ全にいかがわしい目で見てるよね?」
佐天「まぁでも一応暇を持て余して警備っぽい事はやっているんで、無いよりはマシ程度に思っておいた方が良いかもです」
佐天「そんな訳でっ、『学園探訪前編』は『つちのこ』でお送りしましたっ!まぁ全然違ったんですけどねー」
上条「ってかシリーズ通しての話だけど、怖い体験なんて皆無だったんだが、それで良いの?見てる人怒らないかな?」
佐天「別に良いんじゃないですかねー。妖魔夜○シリーズの戦慄のミレニア○に比べれば」
上条「あー……確か最終刊で妖怪ぶっちぎって、当時作者がハマってた『X-me○』が登場してほぼ解決する、って言うヤツね」
佐天「ってかギャラと印税放棄しますし、他人名義でいいですから、書かせてくれませんかね?」
上条「止めよう?ラノベ界の大御所へケンカ売ると色々マズいと思うんだ」
佐天「——とまぁ、お相手は『佐天さん巨乳説』でお馴染みの佐天涙子とぉっその他一人っ」
上条「扱いが悪いし話の転換が急すぎるなっ!?」
佐天「ゲストとしてリアルおっぱい大きいっ、あやかりたい食蜂操折さんでお送りしましたっ!あ、コメントあったらどうぞ?」
食蜂「御坂さーん?見てるかしらぁ☆」 キラッ
佐天「続きまして後半戦っ、チャンネルはそのままでついでに番組商品を買ってくれれば嬉しいなっ!」
上条「佐天さんそれもうステマってレベルじゃないよね?視聴者からガンガン抗議来るレベルだよね?」
佐天「うーーいっはるっーー愛しているぞーーーーーっ!」 (横ピース) ブツッ
——数分後
佐天「ってまぁこんな感じだったんですけど、良いですかね?」
食蜂「なんて言うかぁ、貴重な体験力だったわねぇ」
上条「レアだけど有り難みゼロだと思うな。経験値の低いはぐれメタ○的な」
佐天「食蜂さん、良かったらこの打ち上げしませんか?ってもお昼食べた所でダベるだけですけど」
食蜂「打ち上げぇ?」
佐天「えぇ費用は局が持ってくるそうなので、是非豪遊したいですっ!」
上条「普通のお店のソフトドリンクと普通の食べ物だから、たかが知れてるんだけどね」
食蜂「私は……いいわぁ。お友達と約束してるしぃ」
佐天「えー、いいじゃないですか」
上条「無理に誘わないっ。んじゃ次の機会は空けといてくれよ?」
食蜂「私の予約はお高いわよぉ?」
上条「常盤台のお嬢様が貧乏人に期待しないでくれっ!」
佐天「それじゃまた。お疲れ様でした」
食蜂「じゃあねぇ」
上条「またなー」
食蜂「……」
食蜂(友達)
食蜂(友達、ねぇ)
食蜂(私には、出来そうもないわねぇ)
食蜂(相手の心が何でも分かる。命令出来る)
食蜂(そんな『女王』に対等な友達なんて、ね)
食蜂「……」
男の人?(回想)『出来るよ、絶対に。みさきちゃんが諦めなければ』
食蜂「……そう言えば、居たわねぇ」
食蜂「綺麗事言ってた、お兄ちゃん……」
『ずいずいずっころばし、ごっまみそっずいっ』
食蜂「……あらあ?」
『ちゃっつぼにおわれてとんぴんしゃんっ、ぬけたぁらどんどこしょっ』
食蜂(誰かからの精神攻撃を受けてる訳でもないわねぇ。ってか実害力はゼロなんだけどぉ)
食蜂(嫌がらせだとしたらぁ、気にした方が負けよねぇ——あれぇ?)
食蜂(あそこの横断歩道に居るのは、昨日の小学生、達?)
子供A「……ごめんね?僕、塾があるから帰らないと」
子供B「あたしもー、ママと約束があるからー」
女の子「そっかぁ。それじゃ仕方がないよねぇ」
食蜂(あらぁ、また分かり易くハブられてるわねぇ)
子供A「じゃあね」
子供B「さようならー」
女の子「……うん、さようならぁ」
食蜂(……まぁ?能力が皆無力なら当然よねぇ。私も、そうだったからぁ)
食蜂(アレは私も能力を制御出来ない頃)
子供A(回想)「……ごめんね?僕、塾があるから帰らないと」
子供A(回想『人の心を読むからキモチワルイ』
子供B(回想)「あたしもー、ママと約束があるからー」
子供B(回想)『遊んじゃ駄目だって、ママと約束したもん』
食蜂「……」
食蜂「……嫌な、話よねぇ」
女の子「……ぐすっ」
食蜂(この子はまるで、昔の私、みたいよねぇ) ピッ
女の子『どうしてだろぉ。みんなわたしの事気持ち悪いって言う』
女の子『こんな「能力」欲しくなかったなぁ』
女の子『人の心なんて、知りたくないよぉ』
食蜂「……」
女の子『「能力」なんていらないよぉ。そんなのよりも「友達」が欲しい……』
食蜂「それはぁっ!」
食蜂(要らないわよぉっ!友達なんてっ!)
食蜂(この学園はねぇっ!『能力』さえあれば何だって手に入るのよ!)
食蜂(お金や立場、そうっ!友達だって、幾らでも!)
食蜂(友達、なんてぇ……)
『たっわっらっのねっずっみが、こめくってちゅう。ちゅうちゅうちゅう』
少女『わたしぃ、どうすればいいんだろぉ?病院に行ってお注射すれば治るのかなぁ』
食蜂(認めないわっ!そんなのはぁ!)
『おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも』
女の子『パパとママはケンカばかりしてるしぃ……』
食蜂(私は「女王」なのよぉ!欲しいものは全部持ってる!)
『いきっこぉなぁしぃ——よおぉっ』
女の子『相談出来る人なんて、いないし』
食蜂(「能力」さえあれば何だって出来るわよぉっ!私に思い通りにならない事なんて——)
『いどっのまっわっりでっおっちゃわんかっいったの』
女の子『相談出来る友達、ほしいよぉ』
食蜂(……こんな、こんな惨めな子なんて——)
食蜂(要らないわぁっ!!!)
『だぁ——』
上条「おっ、見つけた見つけた」 ポンッ、パキィィンッ
食蜂「んんっ!?」
上条「どったの?」
食蜂「そ、それはこっちの台詞よぉっ!」
食蜂(私いま——この子を後から押そうと……?)
上条「ってアレ?その子、お前の親戚?」
食蜂「ち、違うわよぉ?」
上条「そか?目の中のキラキラがそっくりなんだが」
女の子「おねぇちゃん達、だれぇ?」
上条「似てるよなー?ってお前、泣いてん——この駄目な子に虐められたのかっ!?」
食蜂「そんな事しないわよぉ!あと駄目な子って何よぉっ!」
女の子「あのね、わたしぃ『声』が聞こえるのぉ」
上条「声?どんなの」
女の子「……他の子が思っていたりする事とかぁ」
上条「あー……精神操作系、テレパスって奴か。それで虐められたと」
上条「要は相手の心が読めなくなればいい、つーか制御出来なきゃいけないのか」
女の子 グスッ
上条「んー、何とかなると思うぞ?」
女の子「本当にぃっ!?」
上条「こっちのお姉ちゃん、スッゴイテレパスなんだよ」
食蜂「わ、私ぃ?」
上条「頼むよ、な?人助けだし」
食蜂「い、いいけどぉ」
食蜂(私はどうだったかしらぁ?制御、制御ねぇ)
食蜂(……あぁ、そういえば『お姉ちゃん』はこう言ってたわねぇ)
食蜂「えっとねぇ、あなたは今自分の能力を調整力出来てないのよぉ」
女の子「調整、って言われても、分かんない」
食蜂「そおねぇ。プールで泳ぐじゃない?その時、何メートルって書いてないと、どのぐらい泳げるようになったか、分からないわよねぇ?」
女の子「うん!わたしぃ、25メートル泳げるようになりたいもん」
食蜂「それはまぁ、今も課題の一つだけどぉ。私はねぇ」 スチャッ
女の子「あ、リモコン」
食蜂「これを使ってイメージしているのよぉ。分かるぅ?」
女の子「……何となくぅ」
食蜂「このボタンを押せばぁ、人の心が読めるようになるとかぁ、こっちのボタンを押せば命令出来るとかぁ」
食蜂「役割を持たせるのよぉ?」
女の子「……聞きたくなかったらぁ、リモコンを使わなければいいのぉ?」
食蜂「そぉよぉ。あなたは賢い子よねぇ」
上条「あー、それでリモコン使ってんのか」
食蜂「えぇ、そうして『能力を限定しない』と、振れ幅が広すぎて制御出来ないのよねぇ」
上条「丁度良かった。んじゃ、さ」ゴソゴソ
上条「良かったらこのリモコンあげるよ」
食蜂「それってぇ——」
女の子「いいのぉ?」
上条「練習用にリモコンだけ買うのもアレだろ?だから丁度良いんじゃないかなって」
女の子「ホントにぃ!ありがとうぉ!」
食蜂「……」
食蜂(まるで私が『お兄ちゃん』と出会った時みたいねぇ)
食蜂(ちょっと安っぽいリモコンも、よく似てるわぁ)
食蜂「……同じぃ……?」
女の子「オモチャのリモコン?」
上条「みたいなもんかな。気に入らない?」」
食蜂「んー……?」
食蜂(ちょっと待ってぇ!?それじゃあの日私が会った相手ってぇ——)
女の子「た、試してもいいかなぁ?」
上条「うん、やってみ?あ、でも人を困らせるようなのはダメだぞ?」
食蜂(だったらぁ、この子がこの後、言う言葉は——)
女の子「うんっ!」 ピッ
女の子・食蜂「「お兄ちゃんはみさきを好きになる」」
上条「あーはいはい。好きになった好きになった」 ナデナデ
女の子「わぁいっ!お兄ちゃんは今日からシモベだねぇっ!」
上条「小学生なのにその言葉のチョイスはおかしいっ!」
食蜂「お兄、ちゃん……」
上条「もう大丈夫かな。あ、でもそのリモコンがあったからって、直ぐに全部上手く行く訳ないからな?」
女の子「そうなの?」
上条「水泳だってそうだろ?すぐに25m泳ぐなんて、普通の人は出来ない」
上条「人との関係もそうじゃないかな?毎日お喋りしたり、ご飯食べたりしたりして、少しずつ仲良くなっていくんだ」
女の子「……わたしでも、できるかなぁ?」
上条「出来るよ、絶対に。みさきちゃんが諦めなければ」
食蜂「——っ!」
女の子「……うん、頑張ってみるぅ」
上条「あぁ、頑張れ」
女の子「でもお兄ちゃん、これ貰ってもいいのぉ?まだ新しいみたいだけどぉ」
上条「あー、お兄ちゃんドジだから本体の方無くしちゃったんだよ」
女の子「くすくすっ、情けないなぁ」
上条「ウルセェよっ!誰だって間違うし!」
女の子「んじゃ、わたし、帰るからぁ」
上条「あー、車と『ずいずい』に気をつけてな」
女の子「何それぇ」
上条「横断歩道の所に出るお化けで、後から押されるんだって。あれ?ここら辺じゃ有名になった筈だけど」
女の子「お兄ちゃん、オバケなんて信じてるのぉ?」
上条「あー、まぁ色々とあってな」
女の子「オバケよりも人の方が怖いよぉ」
上条「重い言葉だなっ!真理だけども!」
女の子「それじゃあね、お兄ちゃんとお姉ちゃん。ありがとうぉっ!」 タッタッタッ
上条「おー、またなー」
食蜂「……」
上条「んで、食蜂さん。さっきの話なんだけど、佐天さんが『連絡先知らなかったですっ』って言ってたんで、俺が聞きに来て——」
食蜂「……嘘吐きぃっ!」
上条「あー、いやこの場合は大目に見て貰えれば——」
食蜂「嘘吐きっ!嘘吐きっ!嘘吐きぃっ!!!」 ペチペチペチペチ
上条「痛っ!?く、はないけど、急にどうしたんだよっ」
食蜂「どれ、だけっ!捜したってぇ、見つからなくってぇ!」
食蜂「分かるわけ無いじゃない!こんなっ、存在しなかったリモコンなんてぇっ!」
上条「食蜂、さん?」
食蜂「『お兄ちゃん』に気づいて貰えるようっ、『女王』なんてっ!なりたくもないのにぃっ!」
上条「……よく、分からないけど」 ナデナデ
食蜂「あ……」
上条「落ち着いて、な?」 ナデナデ
食蜂「……うん」
食蜂(この感じ、やっぱりお兄ちゃんだぁ……)
——10分後 合流前の雑談
上条「いいのか?友達と約束あったんだろ?」
食蜂「いいのよぉ。別にお友達じゃなかったんだしぃ」
上条「……そっか」
食蜂「聞かないのぉ?」
上条「……興味は、まぁ、無いっつったら嘘になるけど」
上条「聞いて欲しい、って言うんだったら、聞くよ?」
食蜂「私にだって意地があるわよぉ。絶対にぃ『聞かせて下さい操折ちゃん』って言わせてやるんだからぁ」
上条「……お前実は言いたくてしょうがないだろ?なぁ?」
食蜂「あなたモテないでしょ?」
上条「心を読まれたっ!?」
食蜂「あと絶対一週間以内に超電磁砲を撃ち込まれるわぁ」
上条「それはつまりお前が何か御坂に吹き込むって事なんだろっ!?そうなんだよなぁっ!?」
食蜂「悪い男には因果力よねぇ」
上条「……良く分からないけど、精神操作系同士、あの子とシンクロしちまったって事か?」
食蜂「あー……じゃあその設定でぇ、うん。少しだけ評価力を上げておくわぁ」
上条「いいけどな。あ、それよりケータイのメアド交換しようぜ」
食蜂「どうしよっかなぁ?私、男の人に教えるのって初めてだしぃ?」
食蜂「本当に好きな人としか、しないんだゾっ☆」 キラッ
上条「あ、そっか。お嬢様だもんな。んじゃいいよ」
食蜂「なんであっさり引くのよぉ!?普通もっと駆け引きするのが常識力でしょおっ」
上条「佐天さんか御坂から連絡取って貰えれば、別に良いかなって」
食蜂「……あーもう、頭痛いわぁ。っていうか御坂さんの気苦労力理解しちゃったわねぇ」 カチャッ
上条「最初から出せよ」 ピッ
食蜂「……色々と大変だわぁ——あらぁ?」
上条「どうした?操作方分からないとか?」
食蜂「あなた、名前なんて言ったかしらぁ?」
上条「そこからっ!?一番大切な事だよなぁっ!?」
食蜂「もう一人の子もなんてったっけぇ?」
上条「……お前は能力以前に、人として色々と問題がありすぎるからなっ!」
食蜂「そりゃぁ、ねぇ?人捜しに特化力しててぇ、余裕も無かったしぃ」
食蜂「まぁでもぉ。見つけちゃったからには、覚悟力が必要よねぇ」
上条(回想)『でも自分から踏み出さずに、手を伸ばして来いってのは無理じゃないかな』
食蜂「……」
食蜂(来ないんだったら、こっちからぁ)
上条「上条当麻だ……てか、初対面の時に言わなかったっけ?」
食蜂「上条、当麻さん」
上条「ん」
上条(回想)『出来るよ、絶対に。みさきちゃんが諦めなければ』
食蜂(俺は、諦めなかったわぁ。だから——)
食蜂(——随分とぉ、居ない『お兄ちゃん』を捜して遠回りをしてきたけどぉ——)
食蜂(——あと、少しだけ踏み込めば。あの日、言えなかった言葉を)
食蜂「おにぃ——上条さん」
上条「何?」
食蜂「私のぉ、お友達になってくれませんかぁ?」
——駅前の喫茶店
佐天(遅いなー、あの二人。どこで道草食ってんだろ)
佐天(まっさかフラグを建設中とかっ!?)
佐天(いやー、ないない。警戒しまくりでしたもんね、食蜂さん)
佐天(……ない、よね?一応覚悟はしておくけど)
佐天(しっかし今回のアレは何だったんだろーなー)
男の声「——結論から言やぁ、そりゃ『ウロボロスの円環』だよ」
佐天(後の席の人、携帯電話かなー?マナー違反だけど)
男の声「語源は『尾を飲み込む蛇』だな、古代西洋から東洋、南アメリカ大陸にまで広がっている概念だ」
男の声「蛇はそれ自体が『永遠』の象徴とされる。まぁ実際にはどちらかと言えば捕食される側なんだが、脱皮を繰り返し永遠に生きると思われた」
男の声「そんな蛇がテメェのシッポを食えば、永久に飢える事ぁねぇ、って事だと思え」
佐天(蛇ですか、ってか何の話してるんだろ?)
男の声「カヤノヒメは『野つ霊(のつち)』から『野槌(のづち)』へ、そして『野槌』は『つちのこ』へと転化した」
男の声「が、姿が変わって役割も代ったとしても、残る性質がある。それは『不死性』だ」
男の声「ウロボロスがテメェのシッポを飲み込んだのも、『つちのこ』がテメェのシッポ咥えるのも同じ概念だなぁ」
佐天(あれ?それってもしかして)
男の声「現時点で原型と言われているカヤノヒメだが、『茅の輪(ちのわ)』ってぇ宗教儀式がある」
男の声「旧暦の六月、または十二月に神域で行われる呪(まじな)いだ」
男の声「人が屈んで潜れる程度の茅(ちがや)、もしくは藁を束ねた輪を作り、そこ通って厄払いをする」
男の声「これも『カヤ』で『円環』だよなぁ?」
佐天(輪っかを抜ければ、厄が落ちるってのもおかしな話ですよね?)
男の声「それを理解するにはまず、『草木の神の不死性』を学べ」
男の声「草木は春に芽吹き、夏に枝葉を張り、秋に実をつけ、冬に枯れる」
男の声「一見、不死性など無縁みてぇだが、『毎年毎年、必ず同じサイクルを続ける』と言う概念で『在り続けて』いる」
男の声「そのサイクルに『一度死んでも蘇る不死性を見いだした』と」
男の声「同様に『茅の輪を潜る事で、通った人間へ対してある種の時間遡航を与えている』と推測出来る」
佐天(カヤや草木が春に生まれ変わるように、人もまた、ですか?)
男の声「ぶっちゃけ簡易タイムマシンで、春——つまり、生命が一番闊達な時へ戻そうって考えだ」
佐天(でもそれと『つちのこ』に何の関係が?)
男の声「カヤノヒメが持ち合わせていた神性、『時間遡航による不死性』。そいつが『つちのこ』にまで波及して居るんじゃねぇかなって話だ」
佐天(いやいやっ!そんなむしろあんな可愛らしい子が大げさなっ!)
男の声「はっきり言うが『時間遡航』なんてぇのは珍しくもねぇよ。浦島太郎だったり、西洋にはそのものズバリの『フェアリーリング』がある」
佐天(ミステリーサークルの昔の呼び名でしたっけ?)
男の声「“だけ”じゃねぇ。『ソイツを踏んだり落ちたりしたら異界へ跳ばされる』って話が多い」
男の声「大抵は戻って来ない場合が殆どだかよ。たまに戻ってくるんだ——『子供のままの姿』でな」
佐天「それって——」
男の声「悲惨な想像は幾らでも出来るが、それは置いておく。だが洋の東西を問わず、妙な『円環』に『時間』が関わっているのは確かだって話だ」
男の声「……まぁ、確かに漠然とし過ぎてて、強引にも程がある結論だがな」
男の声「西洋で円環を踏んで過去や未来、異世界へ跳ばされた連中が居るとして——」
男の声「——東洋でも『ツチノコ』の円環を潜るなり、踏むなりして時間旅行した、って例もあるかもしれねぇよな?」
佐天(どちらも原型(アーキタイプ)は『永遠』を表すウロボロスの蛇ですしねぇ)
佐天(そのシッポを踏んだ……というか、概念として『乗った』とすれば、暴れて振り落とされるでしょうし)
佐天(『過去・現在・未来全てに存在する』彼らの背中から弾き飛ばされれば、どこへ落ちるかなんて検討もつきませんしね)
男の声「浦島太郎の話にしても南は沖縄から、北は東北南部まで数多く残されている」
男の声「それは果たして『浦島太郎と言う一つの説話が広まった』のか?」
男の声「それとも——『時間漂流した伝説があちこちに現存していて、浦島太郎の名で集約した』のか?」
男の声「まぁ?当然この世界に魔術やバケモノがいない限り、机上の空論でしか過ぎねぇがな」
男の声「ともあれ、どっかのバカどもがツチノコ探しに行って知らす知らずに尾を踏んで」
男の声「タイムスリップしました、ってぇ話があったら面白いよなぁ」
佐天「でっすねー?わー、会ってみたいな昔の自分っ!」
男の声「ちなみに『つちのこ』も『ずいずい』も同じ『行き逢い神』だ」
佐天「『後追い小僧』と同じですねー」
男の声「都市伝説の一つに『わらべ歌を聴いていたら、数時間経過していた』と言う系統がある」
男の声「まぁ『南斗星君と北斗星君の将棋』みたいに、『体験したら時間が過ぎている』系の話だ」
男の声「テメェらは『つちのこ』が最新形態だと思っているみてぇだが、どうなんだろうなぁ?」
佐天「って言いますと?」
男の声「『つちのこ』ってぇ出られる場所は限られているんだよ。それこそ山の中か里山か。都会のど真ん中には出て来られねぇだろ」
男の声「だが逆に考えろ。そう言った『時間移動を可能とする怪異』が街中に出るとすれば、だ」
男の声「『姿のないわらべ歌』みたいな形にならざるを得ないだろうよ」
佐天「そう言えばvipやオカ板に『平行世界』や『パラレルワールド』とかの体験談が増えてきているような……?」
男の声「確かに『つちのこ』は姿を見せなくなった。が、それは消えたのか?姿を変えて居るだけじゃねぇのか?」
男の声「『ずいずい』だってそうだ。ありゃ今じゃただの殺人未遂になっちまってるが——」
男の声「『元々は本来居るべき時空から、別の時間軸へと移動させる怪異』だったんじゃねぇか?」
佐天「『つちのこ』は『ずいずい』だったと!?」
男の声「尤も、なんで移動させる必要があったか、って疑問も残るがな」
佐天「そりゃ簡単ですよ。変えたいからに決まってるじゃないですか」
男の声「あ?」
佐天「過去に行ってやり直したり、自分や誰かにアドバイスして現在を変えたい、って思いますもんね」
佐天「学園都市、ドラ○○○作ってくれませんかねぇ」
男の声「あー……成程なぁ、チンチクリンのお嬢ちゃん。物事の本質を突くのが上手いぜ」
男の声「だぁな。望まれなきゃ現われない、だ」
佐天「『ずいずい』は子供達を怖がらせる都市伝説じゃないですか?」
男の声「あー、そいつぁ『戻りたかった』のかも知れねぇな」
男の声「カーチャンに手を引かれて通った幼稚園、とかな?」
佐天「現状に対する不安が——」
男の声「——連中を呼ぶ、と」
男の声「余談だが、北欧神話にも尻尾を咥えた蛇、ヨルムンガンドが登場する」
男の声「そいつぁ中つ国ってぇ世界をぐるっと囲む程にデカい蛇なんだが——」
男の声「人が少なくて、世界が狭い時はいいだろう。んなバケモンと出くわすわきゃねぇだろうし」
男の声「だが人口が増えて未開の地が殆ど無くなった今」
男の声「もしかして何人かは、下手すれば国一つがヨルムンガンドの尻尾の上へ、立っちまってるかもなぁ?」
佐天「あー」
男の声「そういやぁ船一つから客と船員全部が消えたり、絶対に居なくなる訳がねぇ所から人が消えるって話も増えてる」
男の声「俺達が立っていると思うのは、本当に大地なのかねぇ?もしかしたらデカい蛇のせな——」
佐天「……あのー、すいません?そのお話良かったら詳しく聞かせて貰っても、って」 ピッ
佐天「誰も、居ない……?半分水の入った、コップ……」
食蜂「おつかれさまー☆」 キラッ
上条「……おー」
佐天「えぇお疲れ様です——って!何ですかそれっ!」
佐天「何で二人で恋人繋ぎしているんですかっ!?」
上条「俺に聞くなよっ!つーか俺も教えて欲しいぐらいだっ!」
食蜂「まぁまぁいいじゃなぁい?佐天さんもぉ、繋いだらぁ?」
佐天「よっしゃあっ!初めて名前呼んでくれましたっ」
上条「君は変わり身が早すぎるっ!?ってか喫茶店で同じテーブルに三人掛けは辛いっ」
佐天「ってか食蜂さん、何でデレたんですか?命でも助けられました?」
食蜂「内緒よぉ。上条さんが『教えて下さいマイハニー☆』って言うまで、教えてあげないゾ☆」 キラッ
上条「意味がっ!意味が分からなすぎるっ!?」
佐天「あ、さては初恋ですねっ」
食蜂「エスパー力っ!?」
上条「意外に噛み合うなこの二人」
佐天「ふっ、この佐天涙子のゴシップ力を侮って貰っちゃあ困ります☆」キラッ(横ピース)
上条「残念な子に駄目な子のが感染った!?」
佐天「ってかリアクション等々が御坂さんと丸かぶりで、本人以外気づいているよ、つーか気づけよバーカって感じてすかね?」
上条「あれ?今俺もしかしてバカって遠回しに言われた?」
食蜂「むしろストレートだと思うわよぉ」
上条「あぁもうっ、どうしてこんなグダグダが続く——って、佐天さん?」
佐天「はい?」
上条「どうして、カメラ、回っているの?しかも俺を撮っているの?」
佐天「えぇ、ちょい前に電話で誰かと話していたオジサンが居ましてね。タイムリーな事に『つちのこ』のお話だったんですよぉ」
食蜂「普段から『つちのこ』の話しているオジサマなんて、敬遠力したいわぁ」
佐天「だもんでお話を聞こうとしている所に、お二人が帰ってきて」
上条「……流さないよね、これ?今のシーン使わないよね?」
食蜂「あらぁ、照れているのかしらぁ?」
佐天「さぁ?編集するのはあたしじゃないですし、そりゃ局側の意向じゃないですかねー」
上条「……特番の放送時間て何時?」
佐天「土曜8時ですね」
上条「昨日も言ったけど学園中のヤローどもに狙われる!?あと君のファン兼御坂のストーカーにもだ!」
佐天「——はい、って言うわけで特番前半戦はどうでしたかぁっ!?え、あたしですか?あたしは殴ってやろうかな、って思ってますよー」
上条「待て!締めをもう一度するのはどういう意図があるっ!?」
食蜂「そりゃ『この人ってば酷い人なんですよー』とゴールデン放送力するのよぉ」
上条「」
佐天「よーしっ!次は後半で会おうなっ!もしかしたらカメラマンの人が居なくなってるかも知れないけどねっ!」
佐天「それでは最後の言葉、勇気を持って言おうぜ!さぁみなさんご一緒にっ!」
佐天「うーいっはるーーーーっ!愛してるーぞーーーーーっ☆」 キラッ
食蜂「流石の学習力よねぇ。あ、まったねぇ☆」 キラッ
上条「言ってる場合かっ!?俺の命がかかっ——」 プツンッ
——常盤台女子寮 8時28分
御坂「……」
御坂「……また、なの?」
御坂(何回目?つーか何人目、なの?)
御坂(そろそろ一万人の大台へ乗ったんじゃない?)
御坂(……昨日、黒子から『食蜂派は解散した』って話を聞いたのよね)
御坂(その時はあのド腐れ女の冗談かと思ったんだけど)
御坂(あの自己顕示欲の塊が、自分達の『兵隊』やら『盾』を無くしたって事はよ?)
御坂(つまり何らかの目的を達成したか、するために絞った訳ね。うん)
御坂「……」
御坂(……もしかして、あの『自己顕示欲』も『手段』だったの?)
御坂(誰か、何かへ私はここに居ますよ、って事をアピールするのが目的だったんじゃ……?)
御坂「……」
御坂(取り敢えず、放送終わったらあのバカへ撃ち込みに行くしかないわねっ!)
——学園都市七大不思議探訪 特番前編 『つちのこ』 −終−
※特番後編は来週となります。つーか他のも合わせて一週間に原稿用紙100枚以上、疲れました (´;ω;`)
ちなみに上司(添削頼んでいる人)の感想は
「番外編でみさきちメインでラヴコメってどうなの?バカなの?」
「ってか番外編じゃなくって上条×みさきちでスレ立てるべきだよね?」
私には何一つ理解出来ませんでしたが
乙です。いい上司だなwww
>>314
約二年前、ウチの地域が避難準備地域に指定された時、「逃げ出す時の荷造りするから手伝って><」と請われたんですね
ヤツの避難用リュックを確認してたら、中から『打ち止めの抱きマクラ(画:なかじまゆ○さん)』が出てきた際のガックリ感ときたら、えぇ
せめて携帯用ゲーム機ぐらいにしとけよ、と
上司の人気に嫉妬。多分スレ見てるので更に晒します
同じく震災直後、近くの学校に避難者が生活していたので、二人でボランティアへ良く事に
専門的なスキルが無かったので、お年を召された方や子供達の遊び相手ぐらいしか出来ません
で、まぁ遊ぶ物が無いため、上司はプリンタでトランプを印刷していったんですね。それ自体は良かったんですが、
よりにもよって『天空のユミ○の絵入りトランプ(メーカーがHPで公開している)』のを持ってきやがりました
子供と遊ぶのにエ×ゲのトランプって。いや私は大好きなんですが、もう少し考えろと
少し経って落ち着いた後、音楽室が開放されたんです。帰国子女スキル(自称)でオルガンが弾けるとか
子供たちがアンパンマンのテーマ弾いてくれっつーのに、一曲やったのが、
『僕達の物○』(同じくエ×ゲの歌)という伝説を。いや名曲ですけども
余談ですがその上司からの依頼でフォルス×シーダ×フローテ(サモン5)で夏コミ用に一本書いてくれ、と言われています
どうせ落とすんだから書くだけ無駄な気がするんですよね…
乙です。
>>325是非とも書いてくれ、しかしその組み合わせに行き着くとは、上司とは話しが合うかもしれん。
しかし木原くンは何してんだ?
>>326
作中でも書きましたが、別に『時をかける怪異』が『つちのこ』で終わりじゃないように、
『徘徊する死人』もまた『都市にあっては姿の見えぬ隣のテーブルの人』へ変質しているのかもしれません
むしろ過去より現代の方が生きている人間と死人の境って曖昧ですよね
都会のアパートでは孤独死を遂げられた方が発見されますが、中には自分が死んだと自覚してない方も混ざっていたり?
昔と違って村落共同体が解体された今、『外と中』の境界線はありませんしねぇ
乙。妖魔○行戦慄の○レニアムネタ吹いた懐かしいつか歳がばれr
>>328
あれ酷かったですよねー……摩耶ちゃんの下りは賛否両論あるでしょうけども、X-MENはないわー
イブラリンとか異人とかすっごい怖かったのに、どうしてあんなギャグ小説にorz
いやまぁ私も少なからず影響を受けてはいるんですが、いるだけに辛いです
——学園都市七大不思議探訪 特番後編 『本当に出ると噂のお化け屋敷』
——喫茶店 回想
佐天「——で、一条さんは何人のフラグを立てたのかと、あたしは問い詰めたい!」
上条「上条です、上条。一条さんって誰?」
佐天「『一体上条さんはまったく、全くもう!』の略ですっ」
上条「違うよね?多分キミ噛んだだけだよね?あとちょっとナ○お嬢様入ってるよね?」
佐天「ぶっちゃけヒナギ○さんヒロインでいいですよね?」
上条「人によるよっ!?西○さん好きな人だって中には居るんだからねっ!」
佐天「あ、『穀潰しで主人公の足を引っ張るヒロイン』って、どこで聞いたような……デジャブかな?」
上条「気のせいじゃないかな?三千○さんはニートじゃないし、一応夢に向かって努力しているんだし!」
佐天「いやー、オチが『娘復活させるために孫を生け贄にしました』的な、花右京メイド○的な悲惨な話になるような?」
佐天「ってか主人公が不幸不幸言いつつも、手を伸ばせば幾らでも幸せが待っている、って設定も」
上条「ああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!聞こえないなぁぁぁぁぁぁっ!」
佐天「で、あたし反省したんですよ」
上条「やっと!?」
佐天「……おかしくないですかね?そのリアクション」
上条「佐天さんでも反省する事あるんだ……」
佐天「何でちょっと落ち込むんですかっ?」
上条「あぁまぁ、確かにちょっと落ち着いた方がいい歳ではあるし」
佐天「初春に『愛してるよっ』って言うの忘れた日とか!」
上条「許してあげよう?君ら只でさえ誤解されやすい人物が身内に居るんだからね?」
佐天「白井さんの悪口言うなんてっ!?」
上条「あれ、第一回も似たような流れになったよね?あと俺は『誤解されやすい』としか言ってないからなっ!」
佐天「じゃ、なくってですよ。御坂さんです」
上条「御坂……ケンカでもしたとか?」
佐天「いや、ほら、あっちの話ですよ」
上条「あっち?……あぁ、はいはい。うん」
佐天「上条さんが女子中学生二人を弄んでいる件です」
上条「過去最悪レベルに人聞きが悪い!?つーかそこまで言われる覚えはないよっ!?」
佐天「こないだの特番前編最後の方、『妖怪クラッシャー条』って『クラッシャージョ○』とかけたのに、拾ってくれませんでしたっ」
上条「根に持つ程の事じゃねぇだろっ!俺も名前でしか原作知らないし!」
佐天「なので今回はペナルティですっ!」
上条「100%私怨だよな?絶対理由も違うだろうし」
佐天「JC二人、あ、いや、三人騙してるの謝って!」
上条「ごめんなさい御坂さん!あと佐天さんもっ!……三人?なんで一人水増ししてんの?」
佐天「食蜂さんまで毒牙にかけて……」
上条「してねぇよっ!漫画と小説で『記憶失う前に面識ありましたー』的な話になっただけじゃねぇかっ!」
佐天「謝って!絶対本編には絡んで来ないと思ってたバードウェイさんに謝って!」
上条「そいつは俺の意思じゃないっ!バードウェイはちょくちょく出てたし、そんな気はしてたっ!」
佐天「まぁそんなこんなで行ってきて下さいなっ、遊園地!」
上条「……遊園地ぃ?」
佐天「わー、羨ましいなー。あたしも行きたいなー」
上条「いや、行こうよ?カメラマンだけ行ったってしょうがないだろ」
佐天「ですからそれも含めての罰ゲームだと」
上条「はい?」
佐天「言ったでしょう。反省したと」
上条「君の反省と俺がぼっちで遊園地行くのとどう関係が?」
佐天「上条さんには現実の厳しさを知って貰おうかと、はい」
上条「……あっれー?それいつも、俺が佐天さんに思っている事なんだけど?」
佐天「あ、気が合いますね。結婚しましょっか?」
上条「あぁうん——ってしないよっ!?何言い出したっ」
佐天「——はい、と言う訳で特番後編も終りますがっ!いやー、最後はリポーターとカメラマンが結ばれると言う、実に感動的なオチでしたねーっ」
上条「終わらせねぇよっ!過去最速のスピードで締めようとすんなっ!」
佐天「何とっ!番組HPから抽選で十名様を披露宴へご招待します!よっ、経費流用っ!」
上条「待て待て待てっ確実に修羅場になるから!つかマジで?本当にこんなオチなの?」
佐天「でわでわっ!最後にこの言葉っ、うっ——」プツンッ
——常盤台 20時35分
〜CM中〜
御坂「……」
御坂「……あ、あれ……?」
御坂(終わらないわよね?まだ時間残ってるし)
御坂「……」
御坂(ってか凄い所で切られてたけど、いいの?)
——某日 某遊園地
上条「……」
上条(……あれ?)
上条(俺何で遊園地に来てるの?)
——前日 喫茶店収録 回想
佐天「えー、いいじゃないですかー。しましょうよー?」
佐天「一回だけですからっ!一回!ダメならやめればいいんですってば、ね?」
上条「押し強っ!?ってか場面変わったからその話は終わったんじゃなかったの!?」
佐天「いやー良い機会なので、つい?」
上条「そんな機会は無いっ!つーかカメラ回しながら言う事じゃねぇよっ!」
佐天「ちぇー」
上条「いやだから御坂がどったの?またトラブルでも抱えてんの?」
佐天「って訳じゃないんですけど。なんか、こう最近ちょっと可愛くありませんか?」
上条「あー……まあ、うん。良いんじゃないかな?」
佐天「……何か勘違いをしてませんか?割と致命的なの」
上条「まさか佐天さんが御坂Loveになるとはちょっと予想外——でも、ないな。薄い本ではよくあるし」
上条「うん、百合厨にはご褒美じゃないかな?」
佐天「誤解です!ってかもしかして上条さんの性癖って!?」
上条「性癖言うなっ!あー納得、じゃねぇよっ!」
佐天「あぁそう言うんじゃ無くってですね。一回ぐらいはさせて上げたいなって」
上条「あ、ごめん。流石に今のは編集しないと」
佐天「だからそう言う意味じゃないですって!何ちょっと嬉しそうなんですか!?」
佐天「『学園探訪』ですよっ。あたしばっかりレポーターだと公平じゃないですよねって」
上条「……君が友達の代わりに番組作る、って主旨じゃなかったっけ?」
佐天「あー、ありましたねーそんな設定。うんうん」
上条「なんで忘れるっ!?」
佐天「いやでも真面目な話、御坂さんと行ってみたいと思いませんか?相方あたしだけ、ってのもアレですし」
上条「いや別に」
佐天「それってやっぱりパートナーはあたししか居ないって事ですね!」
上条「『メリーさん』ん時、初春さんと組んだじゃん?」
佐天「……」
上条「後ホラ、えっと……フレ……フレンド?だかって金髪さんにMC手伝って貰った事もあるし」
上条「まぁそもそも別にカメラマンは俺じゃ無くっても良いんだし——」
佐天「——上条、さん?」
上条「はい?って、どったの?無表情ですっげー怖いんだけど」
佐天「御坂さんと行かないと——キスしますよ?」
上条「どっからその発想湧いて出たっ!?おかしいモノ考え方がっ!」
佐天「仕方がないですねぇ、いやぁ仕方がないなぁ……んー?」
上条「ごめんなさいっ!行くっ!行くから落ち着けってぇっ!?」
佐天「ちっ」
上条「大切にしようぜ?まだ君らは早いんだからっ、色々となっ!」
佐天「いやでももしかしたら中一の女の子から罠に嵌められて、つい?」
上条「しないよ!する訳がねぇものっ!」
佐天「と、まぁ二つ返事で了解も得られた事ですし、詳しい日程は追って説明しますね」
上条「日程つってもなぁ。編集の手間考えると明日か明後日か、って話になると思うけど」
佐天「いーじゃないですか。丁度週末ですし、デート日和ですよぉ」
上条「デートて。あ、そだ。俺はどんな取材すりゃいいの?」
佐天「おっと忘れていましたっ。この佐天涙子ともある者が!」
上条「いや、割と珍しくはないけどな?うっかりも失敗も暴走も恒例行事だからね」
佐天「今度のお題は——『本当に出ると噂のお化け屋敷』ですよーっ」
上条「厳しかないかな?」
佐天「どうして?苦手ですかね?」
上条「俺も得意ではないけどさ。御坂も苦手そうじゃね?」
佐天「むー、理解しているんですね」
上条「って訳じゃないけども。嫌なの無理矢理やらせる、ってのも」
佐天「あ、すいません。ちょっとこっちへ身を乗り出して貰えませんかね?」
上条「こう?」 ググッ
佐天「あ、はいおっけです」
上条「つか何?」
佐天「んっ」 チュッ
上条「」
佐天「へっ、今日はほっぺで我慢しといてやるぜ!」
上条「何やってんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
上条「脈絡ねぇだろっ!?必要性すらねぇし!?」
佐天「……」
上条「ネタだとっ!視聴者の皆さんは『どうせ口だけだろ?』って思ってるのに!」
佐天「ですから、口ですよねっ!」
上条「ウルセェよっ!大して上手くもねぇよっ!」
佐天「えぇまぁ、ある意味ごちそうさまでしたですが!」
上条「……あー、もう、どうせ流すな、つったって使うんだろうなぁ、これ」
佐天「……」
上条「……なに?どうしたの?」
佐天「い、今頃になって名状しがたい恥ずかしさがっ!?うっわぁっ、ヤバいって!尋常じゃないプルプル感がっ!」
上条「当たり前だよっ!?普通する前に考えるモノっ!恥ずかしさで腕プルプルするぐらいなら自制しなって!」」
佐天「いやいやムリムリムリっ!?するとか今日は無理ですってば!」
上条「要求してねぇさっ!つーか段階踏まずに勢いだけで行動するなと!」
佐天「ですので西葛西出身の初春で我慢してくださいっ!」
上条「ねぇ佐天さん俺たまに思うんだけど、初春さんの事本当は嫌いじゃないの?」
佐天「——と、言う事なので後からメールでお知らせしますねっ!」 ダッ
上条「あ、おい——って、行っちゃったか」
上条「……」
上条(嬉しい、けどさ。そりゃ)
上条(でも勢いとか、その場のノリでってのは、なんか違うよな。うん)
上条「……」
上条(——なんて考えるのも、俺が佐天さんを大事に思っているからなんだよなぁ)
——常盤台 20時40分
〜CM中〜
御坂「」
御坂(裏切るの早っ!?速攻で抜け駆けしてるし!)
御坂(……あぁでもおかしいわよね?収録になんて呼ばれてない、し?)
御坂(まさかそんな嘘を吐くような子じゃないから——まさかっ!)
御坂 ピッ
From佐天——『おめでとうございます、貴方は栄えある100人目のデート候補者に選ばれました』 五日前
From佐天——『あのー見てます、よね?ネタじゃないですから』 四日前
From佐天——『良かったら何か返信欲しいなー、って』 三日前
御坂「嘘おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
白井「ど、どうされましたかお姉様?急に大声を出されて」
御坂「ねぇ黒子っ」 スチャ(ヘッドフォン外す)
白井「はい?」
御坂「あたし10日って何してたっけ!?」
白井「10日、3日前ですか。そうですわね……これと言って、何も?」
御坂「そんな訳ないじゃないっ!なんであたしに来てたメール見落として——」
白井「あぁそう言えばお姉様、ゲコ太モデルの携帯電話がどう、と仰っていませんでしたか?」
白井「うろ覚えですが、初期ロットには特典が付くとかで、販売店を回ってらした記憶が」
御坂「ああぁぁぁぁっ!?それよ、それっ!あーもうっ!」
御坂(って事は何?あたしデートほっぽり出したって話なの?うっわー……)
白井「佐天さんからですの?……あぁ、初春もわたくしも、白カブトムシの駆除でこの数日忙しかったですし」
白井「事情を話せば分かってくれますわよ、えぇ」
御坂(放送終わったら謝りに行かないと!——って、アレ?)
御坂「」
白井「あ、テレビから類人猿の声が聞こえますわね」
御坂「いやいやいやいやっ!?誰とっ!?誰と行ったのよっ!」
白井「おや、この方は——」
——某遊園地 14時
上条「……」
上条(……罰ゲーム、だよなぁ)
上条(御坂は来ないし、佐天さんに電話しても繋がらないし。一人で行ってこい、ってのか?)
上条(……まぁ?悪いのはハッキリしない俺なんだけども)
上条「……はぁ」
上条(こうなったらお化け屋敷に一人で入るしかないかー)
上条(カメラ持ってりゃ取材だと……いやいや、ナレーターっつーか、リアクションしながら?)
上条(無理、だよなぁ。今更ながら佐天さんがどんだけ気合い入れてやってたか理解出来る)
フレンダ「……あっるぇー?」
上条(素でやっていたらとしたら、実は佐天さんって“そういう”才能あるのかも?)
フレンダ「……もっしー?」
上条(アイドルとか、そっちの方で『特別』になれると思うんだけど……言ったら調子に乗るの目に見えてるから、言わないけど)
フレンダ「あ、やっぱこないだの学園ナントカの人っ!」
上条(いやでも中学生は……うん、ない、よね?俺の判断間違ってないよね?)
フレンダ「すいませーん、中学生を騙しているひとー?」
上条「俺じゃねぇよっ!?なんでその結論出やがった!?」
フレンダ「お、はろはろー」
上条「ってフレンドさん」
フレンダ「フレンダね?」
上条「どうしてここに?」
フレンダ「遊園地に遊び以外で来るって訳?」
上条「助けてくれっ!なっ!?」
……
フレンダ「あー、はいはい。あのグダグダな深夜番組の特番ね」
上条「良かったー。身内以外にも視聴者居たんだ」
フレンダ「安心するポイント間違えてると思う訳だけど、まぁいいや」
上条「お願いしますっ!メシ一回分ぐらいは奢るからっ!」
フレンダ「そうねー……うん、ウチの友達が番組特製、ってか遊園地のお土産キーホルダーコンプしたいって言ってたけど」
上条「ちょい待ち。ってごめん、俺の方しかないわ」 ゴソゴソ
フレンダ「え、ゴミはちょっと……」
上条「人の声をゴミ呼ばわりっ!?」
フレンダ「んー、まぁそれプラス今日の晩ご飯で手を打つって訳」
上条「あ、佐天さんから貰った名刺もあるや」
フレンダ「どれどれ『妖怪バスター佐天涙子』。どんだけ悪ふざけしたって、このレベルにはまず行かないわよね」
上条「あー、リポーターの子のクラスメイト兼友達がディレクターやってる局だから、察してね?」
フレンダ「あんたの名刺は無いの?」
上条「……ない、よ?」
フレンダ「よっし、んじゃこの話は結局ご縁が無かったって訳で!」
上条「あった!そうだ俺忘れてたっ!この前貰ったんだった!」
フレンダ「最初っから素直に出す訳。どうせ局の番号なんでしょ」
上条「俺のは何故か私用のケータイなんだよっ!意味の分からない嫌がらせだよなっ!」
フレンダ「ふーん?なになに……『妖怪クラッシャー条当麻』?」
上条「どうして本名とイタイ二つ名が一緒になってんだよ!おかしいよなあっ」
フレンダ「へー、『クラッシャー・ジョー・当麻』って言う訳ね」
上条「あれ?もしかしてこの子もアタマ残念な子なの?俺一回自己紹介した筈なんだけど」
フレメア「にゃあ?お姉ちゃんがナンパされてるのだ」
上条「ちっこいのが増えたっ!?」
フレンダ「幼女にビデオカメラ向けて——まさかっ!?」
上条「んな分かり易い業者はいねぇし、そもそもああいうのは全部仕込みだっ!」
フレメア「あーゆーの、って何?」
上条「……」
フレンダ「……」
フレンダ「にゃあ?」
上条「よっし行こうか!お化け屋敷!」
フレンダ「そうねっ!時間の無駄だしねっ!」
フレメア「……オバケ?」 ブルッ
上条「妹さん?には厳しいかなー」
フレンダ「年齢制限とか無い訳?」
上条「えっとな。あー……12歳未満入場不可ってパンフに」
上条「君——お前も大丈夫?」
フレンダ「なんで今お前って言い直したの?一応そっちが下手に出る場面じゃない訳?」
フレメア「にゃあ!大体ーオバケなんて怖くないのだ!」
フレンダ「あんたもお泊まりに来た時には、人のベッドへ潜り込んで来る訳よね?豆球つけろっで目で訴えてるわよね?」
上条「申告制つっても、無理矢理連れて行くのは可哀想だしなぁ」
フレンダ「見せて?あーでも入り口の所に『スタッフ常駐型の保育所』ってある訳か」
フレメア「ね、年齢制限があるなら仕方がないのだぬっ!」
フレンダ「いやもう絶対噛まないような噛み方してるんだけども。だぬって」
上条「ごめんなー、妹さん。少しだけお姉さん借りるからな」
フレンダ「返してくれるなら、にゃあ」
フレンダ「……あたしの頭越しに話が進められてるのが、なんか納得いかない訳だけど」
上条「むしろ要らないから」
フレンダ「ねぇどういう立場か分かってる訳?だってのにどうして要らないとか言うの?」
上条「じゃあ、こほんっ……『俺にはお前しか居ないんだ!』」
フレンダ「なんのスイッチ入れた訳よっ!?」
上条「『世界がお前を敵に回したとしても、俺はお前の味方で居たい!』」
フレンダ「何?つーか結局遊園地のど真ん中でどんだけ目立つとか考える訳?ねぇ?」
上条「じゃ、『お前が大切だ!』」
フレンダ「『じゃ』って何よっ!?方向転換する意味がっ、どっちに行こうとしているのか分からないしっ!?」
上条「『お前が助けて欲しい時には、俺を呼んで欲しい。世界にどこに居たって俺はかけつけるから』」
フレンダ「上条……」
上条「『な、フレンド?』」
フレンダ「フレン『ダ』ね?名前ネタで弄られるけど、イン何とかさんと同じカテゴリは嫌だからね?」
——真・最恐戦慄のミレニア○迷宮 『エントランス』
上条「名前おかしくないかな?なんで一部伏せ字になっているの?」
フレンダ「え、伏せ字じゃなくってマルって読むみたいだけど」
上条「あっれー?俺が聞いていたのと違うなぁ」
フレンダ「どんな感じ、つーかなんの取材に来た訳?」
上条「『本物が出るお化け屋敷』」
フレンダ「一人で?あのリポーターの子は?」
上条「……色々あったんだよ、うん」
フレンダ「……キス迫ったから、とか?」
上条「むしろ逆だなっ!……ってオイオイ引くな引くなっ、距離取らないでくださいっ、カメラに映り難くなるからっ!」
フレンダ「どんな状況?彼女居るのにほっぽり出して何やってる訳よ?」
上条「違うし。そもそも相手、中一だぜ?」
フレンダ「だから?つーかあんた幾つよ、高校生ぐらいなら15、6よね?」
フレンダ「10年経てば25と21、別に気にする事っちゃないと思う訳」
上条「いや、そりゃそうかも知れないけど」
フレンダ「ってか結局『逃げ』よね?」
上条「……すいません。本当に謝りますから、今は取材お願いします」
フレンダ「ちっ、あたしの友達が居たらボッコボコにされてる訳よ?えー、っと『真・最恐戦慄のミレニア○迷宮』の話よね」
上条「みれにあまる、って読むのか」
フレンダ「元々ジオン病院ってのがあった訳、でもそこではもう30年前以上前に閉鎖されちゃったんだけど」
フレンダ「最近、そこからビデオテープが見つかった、と。その内容は——」
フレンダ「人体実践を繰り返すっ!悪魔の実験が行われていた訳っ!」
上条「学園都市も変わらなくないか?」
フレンダ「……」
上条「……」
フレンダ「——そのぉっ!犠牲者達が生者への恨みで廃病院を彷徨っているのよっ!」
上条「……うんごめん。今は確かに俺が空気読まなかったのが悪い」
フレンダ「ってのがメインストーリーになってて、ペンライト一つ持ってあたしらは回るって設定よ」
上条「設定言うな。一応これ運営さんから撮影許可貰ってんだから」
フレンダ「番組見てて思ったんだけど、どうしていっつも最低限の編集すらしてない訳?」
上条「知らねぇよっ!?俺は公私ともに被害食らいまくってる方だものっ!」
フレンダ「いいけどね」
上条「まぁ主旨は分かった。けどどうして『戦慄のミレニア○』?病院だろ?」
フレンダ「超キチガ×を集めた病棟がミレニア○って呼ぶって訳」
上条「へー。なんか納得出来ないけど、しといた方が良いんだろなぁ」
フレンダ「決してバ×の暴走でシェアード・ワールド一つ台無しにしたとか、そう言う事じゃない訳ね?」
上条「俺は大好きだなっ!『サーラの冒○』とかワクワクしながら読んでたし!」
係員「あ、ペンライトどうぞー」
フレンダ「ありがとー」
上条「ございます」
係員「途中でギブアップしたい場合には『非常口』から外に出られますからねー」
係員「では気をつけて下さいね——中には、ホンモノもいるかも知れませんが?」
フレンダ「あー……これ実は、運営側がステマで流してる噂じゃ?」
上条「しっ!佐天さんもアレだけど、お前も黙れ、な?」
————真・最恐戦慄のミレニア○ 『第一病棟』
フレンダ「うっわー、本格的ねー」
上条「真っ暗な中、ペンライト二つと暗視モードのカメラで進むのって、キツいなぁ……」
フレンダ「ってかどうしてあたしが先行する訳よ?結局こういうのは男の見せ場じゃないの?」
上条「か、代わる?後ってのも、結構キツいんだけど」
フレンダ「あー、後から誰かついてきそうよね」
上条「お前っ思ってんの全部口に出すのやめろよっ!?」
フレンダ「やーい、キチンキチンーっ!」
上条「あぁ怖いさっ!それが何かっ!?」
フレンダ「うっわーダサっ!情けなっ!ニッポン男児はどこ行ったって訳よ?」
上条「余裕っすね、フレンダさん」
フレンダ「まっかせて?つーかね、あたしに言わせれば作り物の修羅場なんて、別にどうって事ぁ無い訳よね?」
上条「へー、そうなんだー?」
フレンダ「まぁプロってね。慌てず騒がず、冷静沈着に、只々冷酷に——」
上条 フッ(フレンダの首筋に息)
フレンダ「んぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ごめんさない!ごめんさない!ごめんさない!ごめんさない!」
上条「……」
フレンダ「もう麦野を弄りませんっ!絹旗のとっといたパン食べたのもあたしですっ!滝壺にジャージ以外を着せようともしませんっ!」
上条「あー……」
フレンダ「だから助けて下さ——」
上条「……うん——ごめん?」
フレンダ「——って、騒ぐのが素人よね?」
上条「無理だよっ!?あっからリカバリなんてどんなプロだって無理だからなっ!?」
上条「立て直しようがないものっ!どう考えても超ビビってたし!」
上条「つーかお前よくよく聞けばさっき、チキンじゃなく『キチン』つってたよなぁっ!?」
フレンダ「えぇ、そうよっ!?テンパってるけどそれが何って訳!?」
上条「開き直りやがった!あー、つか偉そうに語ったのはどこのだれだっつー話だよ!」
フレンダ「怖いものは怖いじゃないっ!?てかね、言わせて貰うけどもこんなのに慣れてるなんて、アタマおかしい人でしょおぉっ!?」
上条「まぁそうだけどもだっ!俺の知人で慣れている人はアレな人ばかりだけども!」
フレンダ「あんたがうじうじオドオドしているからっ!あたしがテンション上げなきゃいけなくなっただけでしょうが!違うっ!?」
上条「俺っ!?俺のせいにすんのかっ!?それって卑怯じゃねぇかなぁっ!?」
フレンダ「ちょっ!?あたし?あたしが悪いって言う訳っ!」
上条「言ってねぇよっ!つーかなんでン話になったっ!?」
オバケA「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
フレンダ「あーあー、言う訳ね?男のクセに言っちゃう訳ね?いいのかなー、自尊心的なものがボロッボロじゃないワケー?」
上条「言ってませんー、そんな事は言ってませんー」
フレンダ「言いましたー、あたしの耳でガッツリ聞きましたー。つーかカメラ回ってんのよ、そっち見りゃいいじゃない」
オバケA「……あれ?」
上条「んな真っ暗な中で巻き戻して見られる訳ねぇだろっ!常識考えろ、常識っ!」
フレンダ「常識云々考えるんだったら、遊園地にぼっちってどうなのよっ?つーかあたしはねぇ、あんたに頼まれたんであって——」
オバケA「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
上条・フレンダ「うるさいっ!!!」 ゲシッ
オバケA「痛ぁぁっ!?」
上条「……あ」
フレンダ「あっちゃー」
オバケA「……」
上条「……事故、だよなぁ?」
フレンダ「そう、よね。事故よね、かんっぺきに」
上条・フレンダ「よし、逃げよう」
フレンダ「おっけ。こう見えて逃げ足には定評があるワ——」
係員「——ってぇ、お客様ー?ちょっとこっち来やがれ?」
上条・フレンダ「……はい」
——真・最恐戦慄のミレニア○ 『第二病棟』
フレンダ「……いやー、この歳になって本気で怒られるとは思わなかった訳よねー」
上条「俺確実にスタッフの人に怒られると思うんだ」
フレンダ「でもアクターさんもさ、『す、すいませんテレビ局の取材が入ると思ったら気合い入って!』って言ってくれたし」
上条「いやもう庇ってくれなかったら放り出されてた。オンエア見てるかどうか分からないけど、本当に有り難う御座います。中の人さん」
フレンダ「外見怖い人ほど、中身は優しいって訳よね。うんうん」
上条「お仕事だからね?ボロボロの入院服着て顔の半分崩れてたけど、あれはそう言う仕様だからな?」
フレンダ「あっるぇ?そう考えると麦野って外見は良いわよね」
上条「良く分からないけど、多分その人がキレるから、深くは考えない方が良いと思うんだ」
上条「まぁいいか。んで?ここはどういうアトラクションなんだ?」
フレンダ「こっちの病棟はミュータントが収容されてるって訳よ」
上条「……ミュータント?嫌な響きだな」
フレンダ「ジオン公国で秘密裏に作られた生物、でも出来損ないの烙印を押された生き物未満が、毎晩毎晩うめき声を開けている……」
上条「ジオン公国じゃねぇからな?病院だからな?実用性皆無の肩パッド装着したドズ○中将を連想して、怖くなくなってるからね?」
フレンダ「リアルでいたら怖い訳よねっ」
上条「ウルセェよっ!なんか、既視感があるやりとりだけども!」
フレンダ「病室の一つ一つは塞がれてるけど、中が監視出来るように小窓がついてるんだって。あ、ほらほら」
上条「あー、小窓ってより、軽自動車のフロントガラスって大きさだな。鉄格子が嵌ってる……」
フレンダ「その中を見ながら進んでいく訳よ」
上条「……うっわー、室内ドロッドロだな。血?鉄錆?」
フレンダ「SilentHil○の裏世界見てるみたい……」
上条「あれ、人、か?」
フレンダ「お腹からツタが生えてる人は、ちょっとのーさんきゅーよね」
上条「こっちの病室は……」
フレンダ「く、首がない……?」
首無し「オォォォォォオオオォォゥッ!!!」 バンバンバンッ
上条・フレンダ「ひぃっ!?」 ギュッ
首無し「……オオ、ォォォォォォォォォゥ……」 ガチヤガチャ
フレンダ「出て来ないわよねぇっ!?つーか人形だけじゃなかったのっ!?」 ギュッ
上条「……すげーな。俺絶対作りもんだと思ってた……」 ギュッ
フレンダ「そ、そうよねっ!?作り物よねっ!?」
上条「だ、だよなぁっ!?作り物だよなぁっ!?」
上条・フレンダ「あは、あはははははっ……」
首無し「……ぉぉぉぉおおおぉぉっ……」 ギシギシギシッ
上条・フレンダ「……」
フレンダ「で、でも、ほら、フレメア待たせちゃってるし?急いで回りたいなー、なんて?」 ギュッ
上条「そ、そうだよなぁ?待たせるのは悪いよなぁっ、巻きで行こう!巻きでっ!」 ギュッ
フレンダ「……あれ?」
上条「どうしたんだ?」
フレンダ「あたしら、手繋いで、たっけ?」
上条「あー……暗いし?」
フレンダ「危ないし、ね?うん」
……
上条「——って次の扉見えてきた」
フレンダ「えっと……『このドアのカギは病室の何処かにある』……?」
フレンダ「嘘おおおおおぉぉっ!?戻るのっ?今からっ!?」
上条「落ち着け!いくらアクターさんつっても、物理的に襲っては来ねぇよ、なっ!?」
フレンダ「疑問系っ!?……あぁうんそうよね。所詮遊園地のアトラクションって訳よね」
上条「マニュアルとかもあるだろうし、客の体に触れたら大問題だろ」
フレンダ「おけおけ。だよねっ?いやー、びっくりしちゃった訳よ、うん」
上条「だからまぁ心配はしてない。つーかする必要はないんだが」
フレンダ「あー、でもさ。ふと思ったんだけど」
上条「何?まだなんかあんの?」
フレンダ「『本物』が混ざってたら、それはこっちの都合お構いなしって訳よね?」
上条「あー……」
フレンダ「……うん?」
上条「やっだなぁフレンダさん、オバケなんて居ませんって」
フレンダ「番組の企画はっ!?主旨は全否定って訳っ!?」
上条「うん、じゃ行こうか?」
フレンダ「ちょっと待って!?恐怖のあまりにSAN値下がってるっ!?」
上条「あ、ほら、容貌を『名状しがたい』にしちゃったから」
フレンダ「ガープ○の方っ!?遥かなるクトゥルフの呼び○じゃなくって、妖魔夜○の方なのっ!?」
上条「ってか、ちゃっちゃと行くぞ」 ググッ
フレンダ「くっ!?手を繋いでフラグを立てやがったと思ったら、まさかの逃がさないフラグって訳よね!?」
上条「……本気でアレだってなら、リタイヤしてもいいけど?」
フレンダ「……」
上条「嫌がってるのを引っ張って行く訳にも行かないからな」
フレンダ「……ふっ、アマチュアが粋がるんじゃない訳よ」
上条「はい?」
フレンダ「報酬は貰ったのに仕事はリタイアします、なんつったらオバケより怖い人に消し炭にされるって訳!」
上条「オバケより怖い、ねぇ」
フレンダ「……いやもうホント勘弁してっ!?オシオキはっ!?オシオキだけはっ!?」
上条「トラウマが蘇ってるっ!?しっかりしろっ!」
フレンダ「——見たか、あたしらの団結力をっ!!!」
上条「ぶっちゃければ『ここにいない誰かさんがオバケよりも怖いから開き直った』でおーけ?」
フレンダ「大体合ってるわね、うん」
上条「いや、まぁ良いけども」
フレンダ「ま、その程度って訳よ。あたしにとっちゃもっと怖いモノはある訳だし」
上条「自慢にならないからな?お前がどんだけ過酷な日常送ってるか知らないけど」
フレンダ「でもまぁ?」 ギュッ
上条「ん?」
フレンダ「あんたが守りたい、ってなら、まぁ?守らせても良い訳?」
上条「……なんつーかなぁ」
フレンダ「返事は?」
上条「……まぁ、出来る限りは頑張ってみるよ」
フレンダ「えー、『命の限り』って言う所じゃないのー?」
上条「フレンダ如きにはちょっと……」
フレンダ「『ゴトキ』って何っ!?今そう言う場面じゃないでしょっ!?」
フレンダ「『ま、フレンダでいっか』的な流れになるんじゃない訳っ!?」
上条「よーし、行くぞー」
フレンダ「早速信頼関係にヒビが入ろうとしてるんだけどっ!」
————真・最恐戦慄のミレニア○ 『第二病棟』 ???分後
上条「……無かったなぁ」
フレンダ「どういう訳?出さないつもりとか?」
上条「まっさか。調べてない病室があるにはあるんだけども」
フレンダ「よっしリタイアする訳よね。時間も結構経っちゃったし——って冗談よっ。そんなに引っ張らなくてもっ」
上条「俺だって帰りたいけどなっ!一人で帰る訳には行かねぇだろっ!」
フレンダ「そりゃまぁそうなんだけども。ってか残ってるのって、結局アレよね?『首無し』の病室」
上条「しか無ぇよなぁ」
フレンダ「アクターさん叩きのめすとか」
上条「それ前やって叱られたし!」
フレンダ「そうよねー。じゃんけんでも勝ったらー、とかそういうのだったら分かり易いんだけど」
上条「他のお化け屋敷だとペンライトの光当てると怯む所もあんだぞ」
フレンダ「そうなの?」
上条「ってかバイトでやったんだ。昼の部はそうなんだけど、夜の部は——って、あれ?」
フレンダ「……変、よね?」
上条「あぁ、居ない、よなぁ」
フレンダ「あ、でもチャンスって訳じゃない?居ないんだったら、今のウチに」
上条「だなっ!」
フレンダ「……」
上条「……」
フレンダ「ど、どうぞ?」
上条「うん、多分そうなるとは思ったんだけど。良いのか?」
フレンダ「良いって、何がよ」
上条「廊下に一人取り残されるのと——」
フレンダ「どっちも嫌!……なんつってる訳にもいかない訳よね、うん」
上条「……おー……って臭っ!?」
フレンダ「魚の腐ったような、後、血のニオイって訳?随分と手の凝った作りって訳」
首無し『……おおおおおおおお……おおおおおおぉぉぉんっ!!!』
上条・フレンダ「っ!?」
フレンダ「廊下からっ!?」
上条「拙いっ!隠れよう!」
フレンダ「え、いや別にそこまでする必要はないんじゃない?」
上条「いいからっ!」 ガバッ
フレンダ「んぐっ!?」
首無し『……おおぉ……お……おぉぉぉぉぉ』 ズル、ズル
上条「……」
フレンダ(ベッドの下に隠れなくっても良いのに。つーか向こう、顔無いんだから分からないわよね?)
首無し『……おおぉぉ……』 ズル、ズル
フレンダ(むー……密着、してる訳だし?もしかしてあたしピンチ?性的な意味で?)
首無し『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ……』 ズル、ズル
フレンダ(ナイナイ、ってか流石に監視カメラがあるって訳よ)
フレンダ(つーか『首無し』、なんか引き摺ってるわねー)
首無し『……おおぉぉぉぉぅ……』 ズル、ズル
フレンダ(人、の屍体……?ちっちゃいわよね、あたしと同年代ぐらい……?)
首無し『…………おぉ……ぅ…………』
フレンダ「……」
上条「……」
フレンダ「もぐもが?」
上条「あぁごめん」 パッ
フレンダ「行ったみたい?」
上条「だな。今のウチにカギを捜そう」
フレンダ「——って、あれっ!」
上条「ベッドの足の下……あった!」
フレンダ「またいやーな所にあった訳ね」
上条「……つーか疲れたよ。さっさと出よう。ここ抜けたら終りだし」
フレンダ「そうよねー。って、もうっ!手汚れちゃったし」
上条「俺のせいかよ」
フレンダ「血糊だから直ぐに落ち——んー?」 クンクン
フレンダ「……ね、上条。悪いお知らせがあるんだけど」
上条「漏らしたのかっ!?どうして俺に知らせなかったっ!?」
フレンダ「いや、全力で食いつかれても困るんだけども。そうじゃない訳よ」
上条「腰抜けた?」
フレンダ「んー、そんなには怖くなかった。そうじゃなくって、これよ、これ」
上条「血糊がどうかしたって?」
フレンダ「じゃくって、これ結局、本物の血って訳よ」
——真・最恐戦慄のミレニア○ 『第二病棟出口付近』 ???分後
上条「……マジで?」
フレンダ「信用しないの?」
上条「いやでもなぁ。信用するしないじゃなくって、仮に本物だとしてもギミックって可能性もあるし」
フレンダ「そりゃあたしも考えた訳。でも人の血液って高い訳よ?」
上条「んじゃ本物だったとして、問題は?」
フレンダ「あっちも本物だったんじゃないの、『首無し』」
上条「……」
フレンダ「あたしは信じてないけど、そうでもないとテーマパークのど真ん中、監視カメラでギッチギチに監視している中で」
フレンダ「人間の血液が無造作に飛び散ってる訳がないのよ」
上条「あー、折衷案」
フレンダ「どんなの?」
上条「さっき拭いたハンカチに着いていると思うから、係員の人に相談してみる」
フレンダ「んー……分かった訳。納得はしてないけど」
上条「良かった。んじゃさっさと帰ろうぜ」
ギギギィッ
フレンダ「開いた開いたー、フレメア待ってるわよねー」
フレンダ?「あなたはっ!?」
フレンダ「——へっ!?」
フレンダ(あ、あたしぃっ?どうしてあたしがもう一人居る訳?)
上条「おいっ!なんで君がここに居るんだっ!?」
フレンダ「……かみ、じょう?」
フレンダ?「私だけ待ってる訳にはいかないでしょうっ!?」
フレンダ「……よいしょっと!」 ガッ
上条「ぐっ!?」
フレンダ?「上条さん!」
フレンダ「あー、うん。良く分からないけど、分かった訳。あんたらは敵って訳ね?」
上条「違うっ!俺達はお前を助けたくって来たんだよっ!」
フレンダ「あー、なんかテンション下がるなー。折角『友達になれるかも?』って期待しちゃった訳よね」
フレンダ「ウチの情報が欲しいとか、結局そういう話って訳かー。いやー失敗失敗」
上条「『アイテム』は関係無いっ!」
フレンダ「んじゃその組織名はどっか聞いた訳?そっちのあたしモドキさんから?」
フレンダ「ってな訳、さようなら——って、あれ?」
フレンダ(仕込んであった爆弾が無いっ!?)
上条「待ってくれフレンダ!俺達の話を聞い——」
フレンダ「——なーんて、ね?」
ガゴォッ
上条「うぐっ……!?」
フレンダ「小石ぐらい拾っておくのがマナーじゃない?」
上条「……待て、行くな……」
フレンダ「よいしょっ、っと」
ガッ
上条「……」
フレンダ「ありゃりゃー、あっぶない角度で倒れた訳ね。そっちのあたしー?介抱しなくていいのー?」
フレンダ(外見操作系の能力って訳だから、まぁ銃でもない限り不意打ちは喰らわないけど)
フレンダ(に、してもどうしたもんかしらねー。フレメアは多分捕まってるし、あたし一人じゃ逃げるのが精一杯だし)
フレンダ「……」
フレンダ(フレメアを助けるために『アイテム』を裏切る……?いやー、結局麦野に粛正ENDって訳で)
フレンダ(こいつらを人質にとっても意味は無い、つーか大事な人間だったら前へ出て来る訳が無いわよね)
フレンダ(なら一旦逃げてみんなに連絡を——)
フレンダ?「もうやめてよ——お姉ちゃん!」
フレンダ「……はぃい?」
フレンダ?「もう良いじゃないっ!もういい加減気づいたって!」
フレンダ「よっこいせっと」 ガッ
フレンダ?「くっ!?」
フレンダ「んー、銃もナイフも持ってない訳かー。二人とも丸腰で何やってんの、って訳よね」 ガソゴソ
フレンダ「まぁ、暫く隠れるけど。ゆっくり置いてかけて、き・て・ね?」 ダッ
フレンダ?「待っ——」
ギギイッ、バタン
——真・最恐戦慄のミレニア○ 『閉ざされた病棟』 ???分後
フレンダ(ってまぁ戻って来たけど)
ツーッ、ツーッ、ツーッ
フレンダ(二人から奪ったケータイからは通じない、と)
フレンダ(麦野達だけじゃなくって、『アイテム』用の伝言サービスもダメって訳)
フレンダ(結局その程度には、上条達の組織は有能って事かぁ)
フレンダ「……」
フレンダ「あーぁ、ケガ大丈夫かなー」
フレンダ(って何言ってんのよっ!?人の心配している場合じゃない訳よ!)
フレンダ(てか敵よ、敵?あたしを嵌めてフレメア攫った連中だってのに、なんで心配する必要があるのよ)
フレンダ「……」
フレンダ(本当、に?)
フレンダ「始まりは——『学園探訪』よね」
フレンダ(あんなふざけた深夜番組のレポーターが来なくて、一人で困ってた上条をあたしが助けた、と)
フレンダ(目的はあたしとフレメアを引き離すため。あたしのそっくりさんがいれば、難しくは無い訳だし)
フレンダ「……」
フレンダ(……でも、意味は、無いか)
フレンダ(別に穏便に誘拐する必要性すらない訳。それこそ下校途中のフレメアを狙った方が確実)
フレンダ(ならあたしを味方に引き込む、って線はどうだろう?)
フレンダ「……」
フレンダ(薄い、わね。動機としては。確実性にも欠けるし)
フレンダ「……分からない。何をしたいのかが、分からない」
フレンダ(廃墟みたいなお化け屋敷に、アイツらやアイツらの仲間が乗り込んでこないのも、分からない訳)
フレンダ(じゃあ逆に、分かっている事は——)
フレンダ「……上条の手、温かかったなぁ……」
フレンダ ハッ
フレンダ「違う違う違うっ!そう言う事じゃない訳よ!」
フレンダ「決して甘やかされるのが暫くぶりだとか、結構ドキドキしてたとか、そーゆーこっちゃない訳!そうじゃなくって!」
フレンダ「……あれ?」
フレンダ(上条もあたしも、ペンライトを持っていた訳よね?入り口で説教されたときまでは、絶対に)
フレンダ(でも上条は右手にハンディカムを持っていた——)
フレンダ(なら『絶対にペンライトを持ったまま、あたしと手は繋げない』わよね?)
フレンダ「……って事は?」
フレンダ「一体上条はいつからカメラを持ってなかった訳……?」
——真・最恐戦慄のミレニア○ 『閉ざされた病棟』 ???日後
フレンダ「……」
フレンダ(……分からない訳。辻褄の合わない話も、上条のカメラも)
フレンダ(結局意味はある筈。何かの、意味が)
フレンダ(けどそれが分からない。納得出来るだけの仮説すら思い浮かばない……)
フレンダ「……はぁ。お腹空いたなぁ……」
フレンダ(食べ物、とは言わないけど飲み物ぐらいあったっていい訳だし)
フレンダ(つーか上条達、あたしを捜してるの?その割にはもう何時間、何日も、ここに居るような気がする……)
フレンダ(真っ暗闇だし?ペンライトも切れるから、まぁ精々数時間って所でしょうけど)
フレンダ(……あー、でも長期戦は覚悟しといた方がいいのかしらねー)
フレンダ(あ、よく、こういうのって『正』って文字を書いて日数を数えるじゃない?)
フレンダ(だったらあたしも——『一』と) カリカリ
フレンダ(なーんか意味無いような気がする訳だけど、まぁいい訳よね——ん?)
フレンダ「……ん?こっちの壁にも、何か書いてあ——」
正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
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正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
フレンダ「ちょっ!?これって——」
フレンダ(お化け屋敷、だから……よね?)
『……おおぉ……』 ズル、ズル
フレンダ「『首無し』っ!?」
フレンダ(そうだコイツも不確定要因だった訳よ!オバケなんて居ないんだから、結局あいつらの仕込みって話か!)
首無し『……おおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
フレンダ「しつこいの、よ……?」
フレンダ(ありゃ?おかしいわね?)
フレンダ(『首無し』の持ってる、つーか引き摺ってるのって——)
フレンダ(——あたしの『体』じゃないかな?)
フレンダ「って事は、つまり——」
フレンダ「——あぁ、なんだ。あたし死んじゃってた訳よね、うん」
——病院廃墟 『閉ざされた病棟』
フレンダ「そっかー、そう言えば。何となくしか覚えてないけど」
首無し『……おおおぉぉっ!おおおおぉぉぉっ!』
フレンダ「上条達はあたしに知らせてくれようとした、って訳?まぁそんな所かしらねー」
フレンダ「あー、殴っちゃって悪かったなー。許してくれるかなー?」
首無し『おおお……おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
フレンダ「まぁでも?あんたに捕まれば、きっと死ぬとかするんでしょ?」
フレンダ「なら、いっその事やっちゃってくれる訳。そうした方がモヤモヤしないって——」
PiPiPi……
フレンダ「ありゃケータイが?……神、裂ける、さん?なんて読むの?」 ピッ
フレンダ「あ、もっしー?ごめんねー、今上条は忙しいから——」
上条『フレンダっ!聞こえるかっ!?』
フレンダ「かみ、じょう?」
上条『俺を呼べ!呼んでくれっ!じゃないと、行けないんだっ!』
フレンダ「ごめんね、殴っちゃって?あたしにそっくりの女の子にも、ごめんって言っておいて?」
上条『ダメだっ!ソイツは「違う」んだ!ソレに融けたら戻れなくなるだけだ!』
フレンダ「んー、何となく分かってる訳。『これ』は『よくないモノ』でしょ?」
首無し『おおおぅおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
フレンダ「でももう無理っぽいし、あんた一人が来たってどうしようも無いみたいだし、だから」
上条『俺にっ!俺に約束を守らせてくれっ!』
フレンダ「約束?そんなんしたっけ——」
上条『あの日、フレンダを守るって言ったんだよっ!』
フレンダ「あー、あれは生きてるあたしとの約束だった訳か」
上条『俺は守れなかったんだ!フレンダが助けて欲しい時、駆けつける事が出来なかった!』
上条『だからっ!だから今度こそは——』
上条『——俺に約束を守らせてくれよっ!』
フレンダ「……はぁ。バーカ、知らないわよ、どうなっても」
上条『ウルセェよっ!さっさと呼べよっ!』
フレンダ「あー、なにその言い方?普通はもうちょっと、ムードってモノが必要って訳」
上条『文句なら後から幾らでも聞くからっ!早く!』
フレンダ「まぁ、来たいなら来てもいいって訳よ——上条」
首無し『うおおおぉ——』
上条「——ってさっきから、ウルセェんだよおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
パキイイィンッ!!!
——病院廃墟 『閉ざされた病棟出口』
フレンダ「んで?最後のアレなんだった訳?」
上条「神裂——って俺の知り合いからはルイカン何とかって言ってたな」
上条「ほら、噂をすると近寄ってくるとか、本人が来るとか、そう言った話」
フレンダ「ふーん?」
上条「この『場』自体が魔力の塊みたいなもんだから、そうでもしないと永遠に迷い続けるんだって」
フレンダ「怖っ!?つーか、あたし死んでから何年経って——」
ギギイッ
フレンダ?「……」
フレンダ「……結構経つみたい、よね」
フレンダ「おいで、フレメア」
フレメア(フレンダ?)「お姉ちゃんっ!」 ガシッ
フレンダ「あー、もうあんたって子はいつまで経っても泣き虫なんだから」
フレメア「だって、お姉ちゃんだもんっ!」
フレンダ「殴ってごめんね」
フレメア「いいよっ」
フレンダ「……あと、先に死んじゃってごめん」
フレメア「許さないっ!……けど、いいよ」
フレンダ「……良い子ね、うん」
フレンダ「——結局、あたしはどうしてたの?」
上条「死んでから、ずっとここに居たらしい」
フレンダ「うっわー、それ周りの人ドン引きしなかった訳?」
上条「してたから、俺達が駆けつけられた。結果としちゃまぁまぁだけど」
フレンダ「……そのポジティブシンキングもおかしいと思う訳よ」
上条「でもその、こう言った場所には『溜まりやすい』んだそうだ。フレンダがそうだったみたいに、他のも」
上条「だから俺やフレメアが説得しようにも、フレンダと出会えたのは今日が初めてでさ
フレンダ「あぁんじゃ『首無し』ってのは」
上条「死んでも死にきれなかったとか、気づいていない人間の集まりだそうだ」
上条「レギオンとかコープスとか、『軍団』って言われてる……まぁ、集まりってか集団」
上条「フレンダを無理矢理どうにかしないためには、『自覚した上で出口まで来なきゃ』いけなかったんだよ」
上条(ただ、『無へ還す』んだったら、右手で触れれば終りだったんだけど)
フレンダ「そっか、大変だったわねー、あっはっはー」
上条「ノリが軽すぎだろっ!?」
フレンダ「んー、まぁ色々あったんだろうけど、結果オーライじゃない?」
フレンダ「フレメアの育った姿も見れたし、あたしとしちゃラッキーって訳よね」
上条「……お前ホンットにぶん殴るぞ?フレメアがどんだけ心配したのかって——」
フレメア「上条さん。もう、いいですから」
上条「でもさっ」
フレメア「お姉ちゃんを虐めちゃダメです」
フレンダ「へっへー、フレメアはあたしの味方って訳よね?」
上条「卑怯だぞぉっ!?」
フレンダ「——と、まぁなんか名残惜しいけど、あたし、行くわね?」
フレメア「……お姉ちゃん」
フレンダ「色々ありがとう。おっきくなったあんたに会えて心配はなくなった訳よ」
フレンダ「寂しくっても、あたしはフレメアの事を愛している訳だから、ね?」
フレメア「……うん、私も」
上条「……」
フレンダ「上条……」
上条「あぁ」
フレンダ「——は、まぁいいか」
上条「最後なのにっ!?」
フレンダ「ってかね、あんた。あたしを守るつった約束破った訳よね?」
上条「不可抗力だろ、殆どが!一応最終的には助けに来たし!」
フレンダ「色々してくれたのは、感謝してるけど……ってそうよ!」
フレンダ「ねね、ちょっと屈んで?」
上条「……それ一回やったから、嫌だ」
フレンダ「酷っ!?」
上条(下手に触ったら成仏させちまいそうだし)
フレンダ「しないわよっ絶対!もう怒った!あんたなんて一生童×なんだからね!」
上条「関係ねぇだろっ!?つーか変な呪いかけるんじゃねぇよ!」
フレンダ「呪ってやる訳、上条は一生童×、一生×貞……」
上条「お前もう最後の最後で嫌がらせってなんだよっ!?悪霊かっ!」
フレメア「……お姉ちゃんも上条さんも、もうちょっと大人になろ?」
フレンダ「いやいやっ、このバカがケンカ売ってきたのか先って訳だし?」
上条「フザケンな!俺はなんつーか、んなオチは嫌だって——」
フレメア「……そろそろ泣くもん、にゃあ」
フレンダ「——って、お芝居はね?ヤメにしましょう?」
上条「だよなー?俺らもつい調子に乗っちゃったけど、仲良しだもんなっ、なっ!」
フレメア ジーッ
上条「(おい、超疑われてんぞ?)」 ヒソヒソ
フレンダ「(そりゃあんたに人望がないだけって訳)」 ヒソヒソ
上条「(いや、死んでからも迷惑をかけまくった実の姉も相当なもんだと思うが)」
フレンダ「……」
上条「(……フレンダ?)」 ヒソヒソ
フレンダ「……ん」 チュッ
上条「んんっ!?」
フレンダ「バーカバーカバーーーカっ!油断してるからそうなる訳よ!」
上条「お前っ!」
フレンダ「んじゃまぁそんな訳で——ばーいっ!おつかれー——」
ギギィィィィィィンッ……
——常盤台女子寮 8時54分
御坂 グスッ
御坂「……えぐっ……良かったー、フレンダさんきちんとあの世に行けたのねー」
白井「……いえあの、お姉様?」
御坂「何よ?まさか結末が良くなかったとでも言うのっ!?」
白井「いえ、確かに切ないお話ではありますけれど、その」
佐天(TV)『よーしっ!それじゃNG特集でお別れだー』
御坂「……へ?」
白井「ですからフィクションと言う言葉がありまして」
上条(TV)『俺が約束を守らせてくれよっ!』
フレンダ(TV)『あ、ダメー。もう一回って訳』
上条(TV)『どこがだよっ!?完璧だったじゃねぇか!』
フレメア(TV)『お兄ちゃん台本、「俺に」ってなってる』
上条(TV)『あーごめん』
フレンダ(TV)『ラストなんだから気を抜いちゃダメって訳よ!もう少し反省!』
首無し(TV)『いやぁあんまり責めるのも逆効果ですしねぇ』
御坂「普通に喋ったっ!?オバケがカンペ持ってるっ!?」
白井「そのですね。つまりは『本物が出るお化け屋敷があったら、こんな感じじゃないかな?』と言う再現ドラマですわね」
御坂「」
白井「まぁでも最初は普通の撮影っぽくしてらしたようですし」
白井「急遽園側の許可を得て、即興劇をしたというのが真相ですわね、えぇ」
白井「——ってお姉様?聞いてらっしゃいますか?」
御坂「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
御坂「嘘でしょっ!?オチってこれなのっ!?最後なのよ、最後だってのにあたしの出番これだけぇっ!?」
白井「まぁ、企画自体がオマケですしねぇ。構想では全七話で終わる筈だったようですし」
白井「とは言え流石にこれ以上ズルズル引き延ばすのも、世界観がガタガタになってしまいますので」
御坂「……有り得ないでしょっ!?最後の最後で佐天さんやあたし完全無視って!?しかも誰よ金髪姉妹っ!」
白井「佐天さんは最初の方、不必要に出まくってた気も致しますの」
御坂「足細くて綺麗じゃないのよ、ねぇっ!?」
白井「……完全に私怨ですのね」
佐天(TV)『ってまぁ色々ありましたけど、まぁたまにはこんなグダグダなお話もいいんじゃないかなっ、つーかいいよね?』
御坂「リベンジを!リベンジを要求するわっ!もう一回だけ、ねっ!?」
白井「それは局側の都合ですし、おそらくは次の番組改変期までは無理かと思いますわ」
佐天(TV)『サヨナラは言わないけれど、それじゃ最後にこの言葉っ!ボクとキミのまた会おうって合言葉さっ!』
御坂「えっと、取り敢えず佐天さんに謝って、あのバカに超電磁砲撃ち込んで」
白井「死にますからっ!?あ、いえ、黒子としては願ったりですけど」
佐天(TV)『うーーーーーいーーーーーーはーーーーーーるっ!愛してーーーーーーる、ぞーーーーーーーっ!!!』 プツンッ
——学園都市七大不思議探訪 特番後編 『本当に出ると噂のお化け屋敷』 −終−
——『夢幻泡影』
※上司(添削屋)から「これはない」とNG出されたver。泣いたら負け
——学園都市 安いアパートの前 8月中頃
カナカナカナカナカナカナ……
上条 カチッ、カチッ……
上条「んー?」
上条 シュッポッ……ジジジジジ……モクモクモク
上条「……けほっ」
フレンダ「慣れない事するもんじゃない、って訳よね」
上条「……お前さ、久しぶりだってのにその挨拶はどうなの?」
フレンダ「おっはろー?」
上条「夕方だよっ」
フレンダ「おっつかれー?」
上条「確かに疲れたよ!誰かさんのお陰でなっ!」
フレンダ「まぁまぁイイって訳よ。あ、中入っても良いの?」
上条「あ、ちょい待ち。鍵はかかってないけど」
トントントン、ガチャッ
上条「どうぞ……お帰り」
フレンダ「……うん、ただいま」
——アパート内 夜
フレンダ「いやーもうつっかれたー訳よ。結局死ぬかと」
上条「死なない死なない」
フレンダ「帰省ラッシュって話よねー。みんな一遍に帰ってくるから、もう大混雑でさぁ」
上条「大変だったなぁ。あ、お茶のお代わりどう?」
フレンダ「ありがとー。そっちはどうだったの?」
上条「フレメアから聞いてないの?」
フレンダ「あー、うん。まぁ色々と大人の事情があるって訳よ」
上条「……大人になれば、そりゃあんま話さなくなるよなぁ」
フレンダ「おねーちゃんとしてはもう、心配で心配でさぁ……」
上条「大変だな。俺もたまには連絡取ってるけど」
フレンダ「そっちはそっちで別の心配がある訳よねっ!」
上条「いや、流石に手は出さないよ?つーか俺別に出した事一回も無いからね?」
フレンダ「童×の呪い、かかっちゃった訳?」
上条「かけたのは誰だよっ!?」
フレンダ「もしかしてあたしの能力って呪いのデー○的なのだったのかな?」
上条「把握しとけ!……いやいや、フレメアとは打ち止めと付き合いがあるから、一方通行経由で話聞いてるだけだし!」
フレンダ「第一位だっけ?結局面識無かったのよねー。すっごい美白だって聞いた気がするけど」
上条「まぁ大分日焼けしたけど、白いっちゃ白いか」
フレンダ「あのセロリってセロリなの?」
上条「言葉選ぼうぜ?一応俺の友達なんだからな?」
フレンダ「『Yesロリコ×!Goタッチ!』?」
上条「選んでその程度か!?ってか俺の知ってる言葉と一文字違うだけで、内容が真逆っ!」
フレンダ「でも結局更正した訳よね?」
上条「この言い方もどうかと思うけど、少なくともセロリ呼ばわりはされてない」
フレンダ「へー?じゃなんて呼ばれてんの?」
上条「ひ、光源氏……?」
フレンダ「……突っ込んで良いのかな?出来ればなんでそう呼ばれたのか、追求したくないんだけど」
上条「——あぁそうだサバ缶の新作あるんだけど。『カレー風味』?」
フレンダ「食べるっ!!!」
上条「おはぎもあるけど」
フレンダ「その食い合わせはノーサンキューって訳で!」
——アパート内 深夜
レポーター(TV)『——はいっ!っな感じでやってきましたが!そろそろお別れのお時間と相成ります!』
レポーター(TV)『お相手はワタクシっ!ビッグ・ザ・ブド○ことぉっ、ネプチューンキン○の異名を持つ——』
上条 ピッ
フレンダ「あーーーっ!見てたのに!」 ピッ
上条「色々と教育に良くないっ。特にネタバレを堂々と放送する所がな!」
フレンダ「いやぁ誰だって知ってるネタじゃ……?」
上条「つーか寝なさい。子供が起きてて良い時間じゃありません」
フレンダ「えーっ?……あ、上条ってば待ちきれなかった?もうっ!エッチなんだからっ!」
上条「おやすみー。先寝るけど、見終わったら電気消しといてー」
フレンダ「全く興味無しかっ!?分かってたけどもう少し引っ張ったっていい訳よねっ!」
上条「ベッドは使って良いから」 ゴロッ
フレンダ「え、なに?ネタじゃない訳?マジ寝に入るの?」
上条「……」
フレンダ「……?」
上条「……」 スースー
フレンダ「ねつ——(寝付きはいい訳よね、うん)」
フレンダ ピッ(テレビを消す)
フレンダ カチッ(電気を消す)
フレンダ「……」 ソーッ
フレンダ ツンツン
上条「ダメだ一方通行!浜面は幼女じゃないぞ!?」
フレンダ(どんな夢っ!?なんか犯罪臭の寝言っ!?)
上条「……いや、いいさ。お前達に愛があるなら、俺にだってその幻想はぶっ殺せない!」
フレンダ(まだこの歳で幻想うんちゃら言ってる訳!?てかどういう展開なのっ!?)
上条「浜面、幸せにな?」
フレンダ(いっやー、無理じゃないかな?台詞から察するに、第一位が浜面をアッー!しようとしている絵面しか浮かばない訳だし)
上条「……」 スースー
フレンダ(本当に、寝てる、訳よね……?)
フレンダ チュッ
フレンダ「(……おやすみ)」
——縁日の夜
フレンダ「……」
上条「いやー、混んでるなー」
フレンダ「……」
上条「お、かき氷だって。ちょっと食べないか?」
フレンダ「……」
上条「どした?食欲無いのか?」
フレンダ「……いやぁ、そう言うんじゃないけど。人混みは、うん。苦手な訳よ」
上条「そか。だったら、何か買って静かな所行こうぜ」
フレンダ「……ん」
上条「すいませーん。かき氷二つ下さーい」
浜面「うーす、って大将?」
上条「おー、しばらくー」
浜面「いや、こないだの飲み会であったばっかじゃねぇか」
上条「だっけか?」
浜面「いや、いーんだけどさ。何にする?」
上条「イチゴとブルーハワイで」
女の子「ありがとうございまーす」
上条「お、偉いなー。親父さんの手伝いか?」
女の子「うん、お母さんが『見てないとすぐサボるから』って」
上条「そっか。浜面んとこは嫁さんと娘さんがしっかりしてんのな」
浜面「……肩身が狭いのなんのって、大将、こいつ貰ってくんねぇかな?」
女の子「ちょっ、おとーさんっ!?やめてよねっ!」
上条「だな。年頃の娘さんなんだから、あんま変な冗談は言うもんじゃないって」
浜面「いや、満更でも無いとは思うんだがな……出来たっと、おまちー」
上条「二つで600円なー。うい、千円札」
浜面「あぁ別にいらねぇって」
上条「んじゃ娘さんにお小遣いだな。お手伝いしてるんだし」
女の子「いいのっ!?」
浜面「ダメだって」
女の子「うるさい浜面」
浜面「おまっ!?俺の扱い軽すぎじゃねぇかなっ!?」
上条「んじゃ、またなー」
女の子「はーいっ、ありがとうございましたーっ」
浜面「……何だろうな、こう。屈辱感がハンパねえんだけどさ」
女の子「……あれ?」
浜面「ん、あぁ?」
女の子「二つって、当麻さん彼女と一緒なの?」
浜面「あー……違う、けどまぁ、似たようなもんか」
女「?」
——神社裏手の誰も居ない広場
上条「お待たせー。イチゴとブルーハワイどっちがいい?」
フレンダ「サバっぽい方!」
上条「……ブルーハワイって言えよ。何か生臭そうだな」
フレンダ「浜面、相変わらずバカ面だったわねー。滝壺も元気なの?」
上条「あぁ、最近じゃパートにも出てるらしい。ちょっと疲れやすいみたいだけど」
フレンダ「そっかー、って、娘さんも食べちゃった訳?」
上条「冤罪だっ!つーか友達の娘さんに手を出せるかっ!」
フレンダ「そう?割と懐いてるような感じだったけど」
上条「年上に懐くようなもんだろ?俺だって分かってるって」
フレンダ「……」
上条「つーかあの歳の子に手ェ出したら犯罪だからね?一方通×って呼ばれちゃうんだよ?」
フレンダ「……あの、さ?」
上条「ん?」
フレンダ「結局、あたしが言うようなこっちゃないと思うんだけど、さ?」
フレンダ「彼女とか作ったらいいのに、って」
上条「それは」
フレンダ「あー、うん。わかってる、つーかスッゴイ感謝はしてる訳よ、うん!」
フレンダ「あたしなんかに毎年毎年付き合って貰っちゃって、あたしは全然有り難いんだけどさ」
フレンダ「でも多分——じゃなく、この先には『何もない』じゃない?」
フレンダ「何をどうしたって、あたしは上条にどうして上げる事も出来ない訳だし」
フレンダ「だから、どんだけあたし達がアレであっても、誰も、何も得しないって訳」
上条「……」
フレンダ「だからホラ?超電磁砲とか、インザクローゼット?とか、居る訳だし?」
フレンダ「あたしは別に一人でもやってけるから、ね?」
上条「……なぁ、フレンダ」
フレンダ「……うん」
上条「二度と言わないから……いや、何度だって言うから、聞いてくれないか?」
フレンダ(え、もしかしてこれって——)
フレンダ(告白っ!?告白よねっ!?この流れだとっ!?)
上条「お前——バカだろ?」
フレンダ「……うん、あたしも前からずっと——って台詞違っ!?間違って無い訳っ!?」
上条「お前、俺が恋人居ないとでも思ってんのか?」
フレンダ「居るのっ!?聞いてないんだけどっ!?」
上条「あぁ、とっかえひっかえでな!」
フレンダ「むぎのーっ!女の敵がここにいるわよーーっ!?」
上条「いやでも流石に疲れるじゃん?だからお盆だけはお前に付き合ってやってんだよ」
フレンダ「何その超上から目線はっ!?」
上条「——でも、まぁ、これは一般論だけど」
上条「過去を大切にして何が悪い?過去に囚われて生きるのが、そんなに悪い事なのか?」
フレンダ「それは……良くない訳よ。誰だって生きてるんだから、前へ進まないとね」
上条「んー、まぁ俺は別にいいやって」
フレンダ「生きる意思薄っぺらっ!」
上条「生き方なんてのは色々あるだろうし、俺が好きでやってんだから、別にいいんじゃねえかな、って」
上条「それよりも俺はさっさと振り切ったり、割り切る方がどうかしてると思うけど?」
上条「『お前の思いってのはそんなに簡単に忘れられるモンだったの?』って」
フレンダ「でも、さ?あたしは何もしてやれない訳——」
上条「でもねぇよ」
フレンダ「……えっ?」
上条「生きてれば辛い事の一つや二つ、当然あるに決まってる」
上条「でも、だからっつって逃げたりはしない、何故なら知ってるから」
上条「楽しい思い出があれば、幾らだって戦えるんだよ」
フレンダ「……逃避、じゃないの?」
上条「そうだよ」
フレンダ「そうだ、って。上条」
上条「でも逃避をしてない人間なんて居ないんじゃないか?小さかった頃の思い出、両親と過ごした時間、友達と遊んだ一時」
上条「しんどい時にはそう言うのを思い出すんじゃないのか?」
フレンダ「……」
上条「俺は昔さ、不幸だ不幸だって口癖になってたけど」
上条「でも、不幸か幸せかを決めるのは誰でもない、自分自身だろ?」
上条「不幸だって言われても、俺が幸せなら他の連中が口出すような事じゃねぇんだよ」
フレンダ「……バーカ」
ヒューーーーーーーーーーゥ、ドォンッ、パチパチパチパチッ
上条「お、花火始まった。見ようぜ」
フレンダ「……はぁ、ホンットにバカなんだから」
上条「バカバカ言うなっ!俺だって気にしてんだからな」
フレンダ「いっぺん刺されればいい訳よ」
上条「だからお前っ!?ホスト役に言う言葉じゃねぇしな!」
フレンダ「あー、あとね?」
上条「なんだよ。またなんかあんのか?」
フレンダ「いやあの、あたしってば最近ずっと上条と一緒に居るみたいなのよ」
上条「……え?」
フレンダ「あんたがどんだけ寂しい人生送ってるか、ってマルっとお見通しなのよ!」
上条「……」
フレンダ「……」 ワクワク
上条「俺のプライバシーはどこ行ったっ!?」
フレンダ「違うでしょぉぉぉっ!?そこは『ずっと一緒で嬉しいな』(キリッ)ってする所な訳だしぃっ!?」
上条「おまわりさーーんっ、ここに悪質なストーカーがっ!」
フレンダ「何でよおぉっ!こんな永遠の美少女捕まえて言う事はそれ——」
ヒューーーーーーーーーーゥ、ドドォンッ
上条「……」
フレンダ「……」
上条「……おいで?」
フレンダ「……んっ」
——学園都市 安いアパートの前 夕方
カナカナカナカナカナカナ……
上条 カチッ、カチッ……
上条 シュッポッ……ジジジジジ……モクモクモク
上条「……着いた」
フレンダ「あー、なんかもう終わっちゃう訳ね。もっと遊びたかったなー」
上条「残る、って訳にはいかないんだよな」
フレンダ「どうだろ?試した事は無いけど。碌な事にはならないと思う」
上条「……だよなぁ」
フレンダ「あー……んじゃ、さ。あんたも来る?」
上条「俺も?」
フレンダ「多分、なんだけど連れて行ってあげられそうな感じな訳よ」
上条「んー、俺はいいよ。まだこっちでしなくちゃいけない事があるし」
フレンダ「……そか。ごめんね、変な事言っちゃって」
上条「フレンダがおかしいのはいつのも事だし?」
フレンダ「だっよねー?あたしがおかしいのは——って、本当に呪い殺すわよ!」
上条「おっと、俺の『幻想殺し』には通用しないぜ!」
フレンダ「イタタタタっ!おかーさーんっ、ここにいい歳して中二病の人が居る訳よー」
上条「ウルセェなっ!さっさと行ってこい!」
フレンダ「……あーもう。結局最後までシリアスになれない訳よね」
上条「最後じゃない」
フレンダ「えっ?」
上条「また、来年だ」
フレンダ「……うん。また、お盆に帰って来——」
フッ
上条「……」
上条「……送り火、もう消えちまったな……」
カナカナカナカナカナカナ……
上条「帰った——いや、一緒に居るんだっけか?」
カナカナ——
シーン……
上条「……帰ろっか、家へ」
——『夢幻泡影』 −終−
乙ー
フィクションオチじゃなくてフレンダマジ死にルートってわけかNG版
乙
さぁ上司について聞かせてくれないかな?
>>406
幾らオマケつってもこれはないだろう、と。でも日本人の死生観としてはこんな人もいます
>>407
上司の話……こないだ、政治の話をしていたら、
上司「あいつ嫌いだ!ペドが出そう!」
とやらかしているのに、誰も周囲は訂正しようとしません
誰か、誰かウチの上司を助けてやって下さい!1!
私はもう見ているだけで笑いを堪えるのが辛くて……
堪えなくていい…
笑えばいいと思うよ
>>409-410
「笑って見てないで突っ込んでやれよ」が正解だと思います
後、これでラストにするのもキツいんで、もっかいお話を書かせて頂こうかと
既出のお題にアンカーつけて貰えれば『最多得票』の話でシメます。あ、一日一回ぐらいでよろしくです
>>165で
美琴派だったオレがアニメの動く喋る表情がコロコロ変わるフレンダをみて一撃でkoされフレンダ派になったので
上司には笑顔で親指立ててGJとやればいいよ
単純にSS位フレンダは死なさないで欲しかったから上司指示
フレンダ
投票ありがとうございました。皆さんがスレタイを思い出してくれてよかったです
多分来週は>>163となりと思います……よかった、脱線したのが元へ戻って本当によかった……
そしてまたハブられる御坂は超オイシイです
——学園都市 安いアパートの前 夕暮れ
カナカナカナカナカナカナ……
上条(っと、そういやタバコ買うの忘れてたっけか)
上条(フレンダが帰省してた時は、うるさいから止めてたんだけど)
上条「……」
上条(一人分のご飯作るのも物足りないし、コンビニで買って来よっと)
……
店員「ありぁっしたー」
上条(ショートホープとサンドイッチ……食欲無いわなぁ)
チッカッチッカッ
上条(信号機……あー間に合わなかったか。不幸だ)
男「チッ、ついてねぇな」
上条(隣のオジサンもそう思いますよね?)
ブルゥゥゥンッ、ブゥゥゥンッ
上条(お盆最終日だから結構車多いよなー。俺も明日から仕事だけど)
上条(帰っても一人なんだよなぁ……いや、一応二人なんだっけ?俺には分からないけど)
上条「……」
上条(何が、悪かったんだろうな。あの時、『暗部』抗争の時、俺は何もしてやれなかった)
上条(……麦野さんは今でも充分すぎる程に悔やんでる、って浜面は言ってたけど)
上条「もしも、あの時。あの場所に俺が居たら——」
上条「『俺は、やり直したい』」
『——ずいずいずっころばし、ごっまみそっずいっ』
上条(コレって確か——!)
男「例えばの話だ。過去と現在の連続性について」
『ちゃっつぼにおわれてとんぴんしゃんっ、ぬけたぁらどんどこしょっ』
上条(佐天さんや食蜂さんと一緒に捜した『つちのこ——ウロボロスの蛇』か!)
男「ド○と一緒にタイムスリップする話が有名だが、果たして過去を変えていいもんかよ?」
『たっわっらっのねっずっみが、こめくってちゅう』
上条(確か、その尻尾を踏めば……いや、関われば過去へ飛べる『かも』しれない)
男「だが、生憎と歴史には『未来から来ました』ってぇ話は滅多にない。何故だか知っているか?」
『ちゅうちゅうちゅう』
上条「……どういう意味だよ……?」
男「未来の改竄に成功すれば、改竄した当人は消えっちまうからだろ」
『おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも』
上条「……」
男「テメェは昨日へ戻って宝クジを買ったとする。それが当たるかどうか以前に、『過去へ戻ったお前は確実に消える』んだ」
『いきっこぉなぁしぃ——よおぉっ』
上条「……」
男「物事には因果律がある。原因があってこそ結果がある。逆に言えば原因がなけりゃ結果はない」
男「過去を弄るんだから——要は『今のテメェへと繋がる出来事をぶった切る』訳だな」
男「宝クジを買わせた時点で、『過去の買わなかったお前』が消失し、結果として『現在の買わなかったお前』が消える」
『いどっのまっわっりでっおっちゃわんかっいったの』
男「それでも、まだ行くかい?」
上条「——当然っ!」
『だぁれっ?』
ドンッ!!!
——暗い、暗い場所
ドゥンッ!
フレンダ「ま、待ってよっ!?あたしは別に裏切ったって訳じゃないし!」
麦野「……へぇ?こっちのアジトの情報漏らして、五体満足で動いているアンタがねぇ?」
麦野「ンなわきゃねぇだろクソビ××がよおおおぉぉっ!」 ゴゥンッ!
フレンダ「んきゃっ!?」
麦野「それともあれかぁ?アンタが第二位の×××、×えこんで来たってのかよ、あぁっ!?」
フレンダ「だからっそれは相手の能力なんだってば!」
麦野「……あぁもう面倒臭ぇ。あのク×ホストぶっ殺すってのに、どうしてフレンダ如き相手にしなきゃいけないのよ」
フレンダ「ゴトキ、って。どっかで聞いたような話な訳」
フレンダ(ダメ。麦野がハイになりすぎてる……こうなったら、攻撃してでも動きを止めないとっ!)
麦野「さっさと滝壺引きずり回さなっきゃいけないんだから、余計な手間取らせんじゃねぇぞっ!」
グォンッ!
フレンダ「くぅっ!?」
フレンダ「ちょ、ちょっと待ってよ麦野!?滝壺はもう、限界って訳だし!」
麦野「あー、後一回ぐらいは使えんだろ?」
フレンダ「……仲間を使い潰すのっ!?」
麦野「アタシもアンタも、ンなヌルい関係じゃないでしょうよ。ただ、群れてた方が都合がいいってだけのチームよね?」
麦野「つーか、さっさと裏切ったアンタが仲間とか言ってんじゃねぇぞクラァっ!」
フレンダ(……話が通じない訳。でもどうしたら……)
フレンダ(あたしが、戦う?麦野と?冗談じゃない、瞬殺されるって訳!)
フレンダ(ここは一旦引いて、麦野が正気になるか、挽回するチャンスを待つのが一番よね!)
フレンダ(学園都市から逃げ出すのも……)
フレンダ「……」
フレンダ(……でも、そうしたら滝壺はどうなるの?)
フレンダ「……はぁ」
麦野「お、観念してくれたかぁ?よっしそこ動くなよ、外れたら痛いからね?」
フレンダ「なーんか貧乏クジ引いたっぽいけど、まぁ——」
フレンダ「——あたしだってやる時はやる訳よ!」
麦野「へぇ?」
フレンダ「……あ、あれ?」 ガサゴソ
フレンダ「ご、こめんっ。ちょ、ちょっとタイム、ね?」
フレンダ「……?」 ガサガサ
フレンダ(あ、そう言えば、武装解除されたんだっけ)
フレンダ「うそでしょおおおおぉぉぉぉっ!?」
麦野「よっし、もういいわよね?」
フレンダ「待って!今奥の手出すからっ!?」
麦野「おいまだ何にもしてねぇだろ。アンタ、アタシを舐めるのもいい加減に——」
フレンダ(あ、何かあった。よっし!)
フレンダ「動くなっ!」 スチャッ
麦野「……あん?」
フレンダ「動くとここら辺に仕掛けた爆弾がどっかーんよ!」
麦野「また古い擬音を。ってかそれ、ただのキーホルダーよね?」
フレンダ(あ、これこないだの深夜番組手伝って貰ったやつだっけ?絹旗にあげるの忘れてた)
麦野「つーかなぁ?アンタはアタシの能力を見てきた訳だし、通じるか通じないか分かるわよね?」
フレンダ「っ!」
麦野「どーぞどーぞ?出来るならやってみれば?」
麦野「抵抗らしい抵抗もしてくれないと、弱いものイジメしているみたいで気分悪いのよね」
フレンダ「お、押すわよ!?本当に!」
麦野「さっさと押せよハッタリ野郎。つーかここまでひっぱったんだから、むしろ押さないその体にぶち込むわよ」
フレンダ「……」
麦野「押せっ!」
フレンダ カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
麦野「……」
麦野「……ぷっ!」
麦野「ぶははははははははははははっ!いいわー!最っ高よぉぉフレンダ!」
麦野「ね、もう一回聞かせて?ねぇ?」
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
麦野「くくっ、つ、ツボに入った……!ってか最後の最後でどんなオチよ!?もっと他に武器はあったでしょ!?」
フレンダ カチッカチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
麦野「あんたもそうよ?あー、何か笑ったけど、それ何?アンタの男からのプレゼントか何か?」
麦野「無様よね、アンタ。超電磁砲相手には結構頑張ったってのに」
フレンダ カチッ、カチッ
上条(キーホルダー)『俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!』
麦野「そうやって来もしない助けを求めるのって——最高にダサいわね?」
上条「……そうか、なら——俺が、その幻想をぶっ殺すっ!!!」
麦野「いい加減に——って、今のは」
上条「こっちだ、よっ!」 ガッ
麦野「くっ!?」
フレンダ「上条!?なんで、ここに!」
上条「やっと、間に合った……!」
麦野「……そう、時間稼ぎね?また古典的な方法だったわね」
上条「なぁ麦野さん。これはアンタが言ってた事だ」
麦野「あぁ?」
上条「『もしもフレンダが本気で裏切っていたんだったら、どこか遠くへ逃げた筈。私達の近くまで戻って来る訳がない』」
麦野「」
フレンダ「そ、そうよっ麦野!あたしは結局、みんなが心配になって戻ってきた訳!」
麦野「……はっ!そんなのはアタシ達を攻撃するために決まって——」
上条「言っちゃあ何だが、武装しててもあんたに一蹴されるフレンダが?しかも丸腰なんだぜ?」
上条「第二位に手も足も出なかった麦野さんを倒すのに、相手がフレンダを懐柔する訳がない」
麦野「うるさい!アンタに『アイテム』の何が分かるっ!『暗部』すら分からないガキが吠えてんじぇねぇぞ!」
ドォォォンッ!!!
上条「……っ!」
フレンダ「麦野っ、そいつは無関係よ!」
麦野「黙れ!」
ズゥゥゥンッ!
麦野(しまった!崩れたアスファルトの破片で視界が見えない!)
麦野(……いや、『原子崩し』で周囲を覆っていれば攻撃を喰らわないっ)
麦野「……」
麦野(次に声を上げた時が最期よ、フレンダ。あとカミ何とか?)
上条?「俺が、その幻想を——」
麦野「そこだぁぁぁっ!」
ドゥンッ!
麦野「ハッハァッ!ふっれっんっだっちゃーん?アンタの男はぶち殺し——」
上条「残念、ハズレ」
麦野「んなっ!?」
上条(キーホルダー)『おれ、が、おれが、おれが、おれが』
麦野「フレンダぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
上条「ちったぁ頭を冷やしやがれええええぇぇぇぇっ!!!」
パキィィンッ……!!!
——数分後
上条「ナイスフレンダ」 ハイタッチ?
フレンダ「いえーいっ!」 ハイタッチ!
上条「これで、約束は守れた、のか?」
上条(でも俺は消えてない。って事はまだ過去は変えられてない?)
フレンダ「てかあんた!何でここにいる訳よっ!?」
上条「あ、ごめん、今ちょっと考え事してるから」
フレンダ「大事じゃないっ!すっごい大事な話って訳だし!」
上条「あー……浜面の知り合いみたいな感じ?」
フレンダ「あのバカ面作戦漏らしやがった訳!?……両手の爪剥がさないと」
上条「違う違う!お前らが騒いでりゃ目立ちまくりだろうが!だからひぐらすのはヤメテあげてください!」
フレンダ「ふーん?だからっつって首突っ込んでくるバカも珍しいと思う訳」
上条「そりゃまぁ色々あるんだよ——で、だ。これからお前は浜面達と合流して、暫く隠れてろ」
フレンダ「でも第二位に襲撃されるんじゃ?麦野も言ってたけど、内容はそんなに的外れでもない訳だし」
上条「第二位は一方通行——第一位に負ける」
フレンダ「第一位も参加してんだっ!?あっちゃー、それじゃ厳しいってモンじゃないわよね」
上条「垣根の『スクール』もそれで崩壊するだろうし、お前ら『アイテム』がこれ以上外から攻撃される事はない」
上条「依頼自体は失敗だけど仕方がない。相手が悪すぎる」
フレンダ「……そうって訳ね。第二位をどうにかしたって、第一位と連戦じゃあね……」
フレンダ「麦野はどうする訳?ガチガチに縛ったって、結局『原子崩し』を連射されたらどうしようもないし」
上条「取り敢えず起きるまで俺が看てるよ。女の子一人、こんな所に放置するの訳にもいかないしな」
フレンダ「『お前のおっぱいは俺のためにあるんだぜ?』」
上条「するかっ!?100%消されるじゃねぇか!」
フレンダ「って言う割には麦野の倒れて横になったおっぱいに視線が釘付けだし?」
上条「言い訳はしない!大好きだっ!」
フレンダ「開き直りやがった!?」
上条「つーかさっさと行け。麦野さん起きてお前が居たら、また暴走すっから」
フレンダ「——真面目な話、あんた、麦野に何かしたら許さないからね?」
上条「うん?」
フレンダ「麦野は『アイテム』の仲間な訳。どこの誰とも分からない、あんたよりか信頼してるのよ」
上条「殺されそうになっても?」
フレンダ「例え死んでも、よ!」
上条「……そか。フレンダが怖いし、イタズラするのは止めとくよ」
フレンダ「やっぱりするつもりだったのね!?乳かっ!?そんなにオパーイは正義な訳か!」
上条「当たり前だっ!!!」
フレンダ「あ、あれ?どうして逆ギレされてるの?」
上条「フレンダさんは……あー、今回ご縁は無かったと言う事で」
フレンダ「待ってよ!仕方が無いじゃないっ、まだ中二なんだし!?」
上条「またのご来店をお待ちしております」
フレンダ「あーもう頭に来たっ!折角お礼言おうと思ってたのに、もう知らないし!」
フレンダ「あんたなんか、あんたなんか麦野に反撃されて死んじゃえ!バーカバーカバーーーッカっ!!!」
上条「ウルセェっ!一応恩人へ向かって死ねって何だよ!」
フレンダ「……バカは否定しない訳?」
上条「心当たりが、うん。しないわけでもないって言うのか」
フレンダ「……はぁ、あんたと話してると緊張感削がれるわ」
上条「奇遇だな。俺も全く同じ事考えてた」
フレンダ「それじゃあたし行くけど、麦野にエロい事したらぶっ殺すからね?」
上条「剣呑すぎる台詞だと思うが……まぁ、しないよ」
フレンダ「んじゃ——上条!」
上条「ん?」
フレンダ「助けてくれて、ありがとうって訳!」
上条「……おう」
……
ジジジッ、ボウ……
上条(……右手の先から消えてきてる、って事は)
上条(良かった……『フレンダが死ぬ過去』は回避出来た、って事か)
上条(その代わりに『フレンダが死んだ未来』の俺は消えちまう、と)
上条「……」
上条(って言う事は、だ。これからフレンダはどうなるんだろうな?)
上条(順当に考えりゃ浜面が好きになる、んだよな。きっと)
上条(俺達にはもう接点はないだろうし、それが妥当だろうし)
上条「……」
上条(俺がフレンダを独占していた『フレンダが死んだ未来』……)
上条(アレはアレで悪くない——なんて、考えるのは良くないんだろうけど)
上条(フレンダが生きていてくれさえすれば、俺は充分だ)
上条「……本当に?」
麦野「さぁ?」
ドゥンッ!!!
上条「か、は……つ!?」 バタッ
麦野「アタシに聞かれてもなぁ?おっと動くなよ。致命傷じゃないけど、して欲しいんだったら直ぐにぶち込むし」
上条「……麦野、さんっ!」
麦野「心配すんなっつーの。正直に答えればトドメは刺さないから」
麦野「ただし、嘘だって分かったら全身バラバラになるけどね?」
上条(右手がないから、『幻想殺し』が使えない……!?)
麦野「白モヤシと第二位の能力は?」
上条「一方通行は、ベクトル操作……垣根は、『未元物質』って、白い羽根から……」
麦野「……随分詳しく知ってるみたいだし、あのバカにそれっぽい事も言ってたわね」
麦野「浜面みたいに下っ端が持ってる情報としちゃ、逸脱しすぎてるわよね?」
上条「……」
麦野「ま、詮索はしないであげる。アンタがどこの誰だろうと、アタシやフレンダを直接どうにかしようってハラはないみたいだし」
麦野「さっき第一位と第二位がぶつかる、みたいな話をしてたけど、場所は?」
上条「……ダメだ!」
麦野 グチャッ
上条「ぐっ!?」
麦野「次は内蔵引き出すわよ?どこ?」
上条「……死んでも、言わねぇよ……!」
麦野「はぁ?ほんっとにアンタ、ワケ分からないわよね」
麦野「ざっと聞いた感じだとアタシらを引き離したい、って話よね。でもそれで誰が得するか、って話よ」
麦野「んー?あのバカ助けたって、どっこの組織にも有益じゃないしなー」
上条「……したからだよ……」
麦野「あぁ?」
上条「約束、したからだよっ!!!」
麦野「ふぅん?」
上条「友達相手に!『困った時が来たら助ける』って約束したからに決まってんだろうが!」
麦野「……下らないわね。そんなチャチな約束守ろうとして、アンタは年上の綺麗なおねーさんに、ハラワタ引きずり出されてんのよ?」
麦野「テメェの命かかってるのに、ンなちっぽけな理由な訳ねぇだろうがよぉぉっ!」
上条「……麦野、さん。あんたにはどうして分からないんだ!?」 ググッ
麦野(こいつ、立ち上がろうと……?)
上条「フレンダは戻ってきたぞ!?あんたに粛正されるかも知れないのに、逃げ出さず!」
上条「フレンダは倒れたあんたに何もしなかったぞ!自分が殺されそうになったってのにだ!」
上条「それは、仲間だからだっ!あんたは知らないが、フレンダはあんたの事を仲間だと思っているからだろっ!?」
上条「世界には友達のために、約束のために命賭けるバカだって居るんだよ!」
麦野「……」
上条「今なら、今なら戻れるんだ!あんたはまだ何もぶち壊してな——」
バタッ
麦野「……あん?」
上条「……あ、れ……?」
麦野「あっちゃー。動脈やってたみたいね、うん」
上条(これ……死ぬのか?それとも消えるのか?)
麦野「どうしたもんかしらね。トドメを刺すべきか、バラして持ち運びやすいようにするべきか」
上条(……どっちにしろ、殺す気マンマン……じゃねーか。つーか、浜面、麦野さんが……こんな性格だなんて、聞いてねぇぞ……)
麦野「ありがたくって、涙が出そうな説教分はお返ししないとね?」
フレンダ「待ちなさいよ!」
麦野「フレンダ?」
上条「だ、めだ……来る……な」
フレンダ「——ちを」
フレンダ「——友達を見捨てる訳にはいかないって訳よ!」
ジジッ
上条(……クソ!消え——)
ザザーーーーーーーーーー……
——現在 路上
ミーンミーンミーンミーンミーン……
浜面「——おーい、何やってんだー?」
上条「……あ……?」
浜面「どったん?立ちくらみ?熱中症?」
上条「浜面っ!?」
浜面「そうだけど……マジで調子悪いのか?家に連絡すっかい?」
上条(……『今』の浜面だ。俺も消えてない、って事は——)
上条(夢?)
上条「……いや、大丈夫だよ、悪いな」
浜面「いいって別に。今更どうこういう付き合いじゃねぇだろ」
上条「そうだっけ?」
浜面「ヒデぇな!?ロシアで戦った仲じゃない!」
上条「冗談だって。んじゃまた」
浜面「おー。あ、そうそう」
上条「んー?」
浜面「今晩の夏祭りで露店頼まれたから、暇だったら来てくれよ」
上条「おー……おぉ?」
上条(夏祭りって終わった筈じゃ?)
浜面「んじゃなー」
上条「あ、あぁ」
上条 カチャッ
上条(日付が巻き戻ってる?さっきは夕方だったのに、今は日中だし)
上条「……いや」
上条(全部——俺の妄想、なのか?)
上条(寂しい独身男の妄想、そう考えれば全部辻褄が合う、よな)
上条「……」
上条「……帰るか」
——学園都市 安いアパート 自宅前
上条「カギカギ、って開けたまんまか」 ガチャッ
上条「まぁ盗まれるようなもんは別に——」
フレンダ「おーそーいーわーけーっ!どこほっつき歩いてたのよっ!?」
上条「あぁごめんごめん。何か倒れたみたいでさ」
フレンダ「そんな事より、どうっ?新しい浴衣っ?しまむ○で買った訳よ!」
上条「そんな事言うな!大体フレンダは——フレンダっ!?」
フレンダ「な、なに?どったの?」
上条「お前俺の妄想じゃなかったのかっ!?」
フレンダ「バカじゃないの?ねぇバカじゃないの?帰ってきた第一声がそれなの?」
上条「そんなあなたに『幻想殺し』」 パシッ
フレンダ「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
フレンダ「——ってならないわよっ!生身だしねっ、つーかあんたいい加減その中二スピリット卒業しなさいよ!」
上条「え、あれ?どういう事?何でこうなったの?」
フレンダ「いいから——脱げぇぇぇぇぇっ!」
上条「何で脱衣!?」
フレンダ「人が折角お揃いの浴衣用意して待ってたのに、結局コンビニ行ったまま中々帰って来ないし!」
上条「落ち着けよっ!そもそも夏祭りは夕方からだっ!」
フレンダ「江戸っ子の血が騒ぐのよっ!」
上条「嘘吐けっ!1ミリたりとも入ってねぇだろうが!」
フレンダ「『江戸っ子』って、昨今の擬人化ブームにありそうよね?ほら、『○○っ子』みたいな?」
上条「謝って!日本人に謝って!」
フレンダ「残ぁ念!あたしもジャパニーズでした!つーかなった訳だし!」 ピシィッ
上条「原付の免許証……?『上条フレンダ・セイヴェルン』……?」
上条「あれ、お前俺の嫁だったっけ?」
フレンダ「そっからっ!?それ同棲する前まで話戻るんだけど——ってか、ボケはいいから脱げっ!」 ヌガセヌガセ
上条「待てって!なんか頭がぼうっとしてんだよ!」
フレンダ「……あ、ここの傷残っちゃった訳ね」
上条「傷?」
フレンダ「麦野にハラワタ引きずり出された時の」
上条「……あぁ、だっけ?つーかあの後どうなったんだっけ?」
フレンダ「あんたのピンチに颯爽と現われるあたし!あたしが居なければあんたは盲腸全部摘出されて死んでた訳よ?」
上条「盲腸は別に要らないんだけど……」
上条(……そうか。あれは『フレンダの代わりに俺が死ぬ過去』だったのか)
フレンダ「でもっ!あたし最強最終奥義で麦野を撃退したのよ!」
上条「……具体的には?」
フレンダ「ドゲザ?」
上条「卑屈だなぁオォィっ!?」
フレンダ「流石の麦野も『はぁ、馬鹿馬鹿しくてやってられないわ』って敗北宣言よ!」
上条「負けてるのは俺達だからね?手も足も出なかったからね?」
フレンダ「つーかさっさと着替えていくわよ、縁日」
上条「……何でそんなに固執するのか分からない」
上条(いや、生きてるのは嬉しいけど。なんか、違和感があるよな?)
——神社裏手の誰も居ない広場
上条「お待たせー。イチゴとブルーハワイどっちがいい?」
フレンダ「サバっぽい方!」
上条「……ブルーハワイって言えよ。何か生臭そうだな」
フレンダ「一年振りよねー」
上条「だなー……」
上条(記憶が段々と入れ替わってきてる。去年も来た記憶が、生きてるフレンダと『帰って来た』フレンダの二つ……)
上条「もしかして、『過去に戻って改竄した伝承が殆どない』ってのは『改竄した本人の記憶も改竄されるから、残りようがない』のか……?」
フレンダ「何の話?」
上条「……夢の話、かな?」
フレンダ「あーーーーっ!そうそう、あたし変な夢を見た訳よ!」
上条「幽霊になって俺に取り憑いた話?」
フレンダ「それそれっ——ってなんであんた知ってんのよ?あれ、話したっけ?」
上条「……いや、俺も似たような夢を見た気がするから」
フレンダ「へー、ある訳ねーそう言う偶然って。だったら結局もう一つの夢も一緒?」
上条「もう一つ?」
フレンダ「逆。今度はあんたがあたしの守護霊?か何かになるって話」
上条「俺が死ぬんだ?」
上条(あのまま麦野に放置されてれば、そうなっただろうけど)
フレンダ「んで、あたしはそれに気にくわないって、過去を変えに行くお話」
上条「お前もかよっ!?」
フレンダ「なーんだやっぱり同じ夢見てたんじゃない、ねぇ?」
上条(え、何?つーか事は俺もフレンダも過去を変えたって話か?)
フレンダ「や、やっぱりあれかな?結局お互いが好きすぎて、みたいな話な訳よね?」
上条「いや、それはない」
フレンダ「一蹴されたっ!?嫁に向かってその態度は何よっ!?」
上条「俺の方がフレンダを好きに決まってる」
フレンダ「あ、あれ?何でスイッチ入っちゃった訳?もしかして地雷踏んだの?」
上条「……良かった、本当に……!」 ギュッ
フレンダ「あー、もう、なんで今日は泣き虫な訳よ……もうっ」 ナデナデ
上条「……」
フレンダ「あの、さ?」
フレンダ「人には幸せの形って色々ある訳よ。それが幽霊みたいに、ただ相手の事を見つめるしか出来なくっても、幸せって」
フレンダ「それを否定するつもりはないし、やっぱり死んだ後も付き合ってくれるのは、凄く、すっっっっっっごく嬉しい訳だけど」
フレンダ「——結局、同じぐらい悲しいのよね」
上条「……フレンダ?」
フレンダ「確かにあんたは幸せかも知れない。あたしもそれなりに幸せだったと思う——でも、でもね?残された方はどうなの?」
フレンダ「突然ちゃぶ台ひっくり返されたら、さ?」
上条「お前、まさか」
フレンダ「『冗談じゃない!』って思った訳。『あんたの身代わりになって生きろって、どんな罰ゲームよ!』って」
フレンダ「……ホント、反省しなさいよね?」
上条「……ごめん」
フレンダ「次やったら……そうね、別れるのを真剣に検討する方向で調整するのも視野に入れるんだからね?」
上条「別れる気ねぇなっ!?つーか日本語の使い方が巧みだっ!」
フレンダ「……バーカ。お互いにどんだけ付き合ったと思ってんのよ」
上条「えっと俺の方で13年、そっちで?」
フレンダ「あたしの方は9年、かな?もう、殆ど思い出せなくなってきてる訳」
上条「ここじゃ何年だろ」
フレンダ「あたしの原付免許が先月取得、つまり16になって直ぐ取ったみたい?」
上条「って事は俺まだ学生かよ!?……あー、何か通ってるイメージが?」
フレンダ「あたしもガッコで『学生結婚しました!』ってカミングアウトして、大騒ぎになった記憶が」
ヒューーーーーーーーーーゥ、ドォンッ、パチパチパチパチッ
上条「お、花火始まった。見ようぜ」
フレンダ「……はぁ、ホンットにバカなんだから」
上条「バカバカ言うなっ!俺だって気にしてんだからな」
フレンダ「あれ?」
上条「なに?」
フレンダ「どうしてあんた、泣いてる訳?」
上条「泣いて……?あ、あれ?」
フレンダ「うっわー、この歳で暗くて怖くて泣くとか子供かっ!」
上条「そう言うお前だって、ほら」
フレンダ「んー……ホントだ。あっるぇー?」
上条「何か大事な話をしてたような……?」
フレンダ「忘れるぐらいなら大事じゃなくない?」
上条「まぁ確かに」
フレンダ「あたし達がここに居る、って事よりも、大事な話なんて無い訳だし」
上条「だな」
ヒューーーーーーーーーーゥ、ドドォンッ
上条「……」
フレンダ「……」
上条「……おいで?」
フレンダ「……んっ」
——安いアパート 自宅にて
フレンダ「たっだいまーっ!」
上条「元気だなお前は」
フレンダ「そりゃ滝壺が元気な所を見れればね?あー、でも浜面とくっついたのは未だに納得いかない訳ー」
上条「良い奴じゃん。調子に乗りやすくて女癖が悪いぐらいだし」
フレンダ「あんたもちょっとは自覚しなさいよ?」
上条「あれあれ?どうして俺が責められているの?」
フレンダ「全くもうこれだから……って、これコンビニの袋?あ、さっき買い物に行ったっけ?」
上条「しまった……!サンドイッチ入れっぱなしだった」
フレンダ「ううん。これ」
上条「あれこれ……もしかしてあん時のキーホルダーかっ!?」
フレンダ「懐かしー。捜しても見つからなかった訳」
上条「でもなんで今頃になってこんなのが出て来たんだ?」
フレンダ「あ、これあたしのよね?貰っちゃってもいい訳よね」
上条「壊れているけど、いいの?」
フレンダ「お守りだしねー?これがなかったら、あたしフレ/ンダされてただろうし」
上条「いいけど……でもなんで今頃になって?」
フレンダ「拘るとハゲる訳よ」
上条「ハゲませんし!フサフサですー」
フレンダ「いやぁ、うん。あたしは見捨てない訳よ」
上条「素に戻るのやめてっ!?」
フレンダ「まぁいいじゃないなんだって。どんな道を通ってきたとしても、結果良ければ」
上条「またアバウトな」
フレンダ「で、なんだけどね?」
上条「うん?」
フレンダ「浴衣、着替えた方が良いかなー、なんて思ったりする訳?」
上条「いや、着替えればいいんじゃ?」
フレンダ「そうじゃなくって、ほらっ!金髪美脚少女の浴衣姿って、超レアじゃないかな、って」
上条「あー……うん。だったら、そのままでお願いします。あと自分で美脚言うな」
フレンダ「ん、それじゃ」 グッ
上条「……なんか、照れるな」
フレンダ「ね?あたしも初めってぽいのよね。服のせいかな?」
上条「まぁ色々あったし、これからもあるだろうけど、さ」
フレンダ「……死が二人を分かつまで、的な?」
上条「いや、多分浮かんで消える泡みたいな、もしかしたら夢かも知れないけど」
上条「それでも、手の中の重さは」
フレンダ「首に掛かる吐息は」
上条「俺達が過ごした日々は」
フレンダ「あたし達には夢なんかじゃない、訳よね。それは、絶対に」
上条「例えばそれが泡になって弾けてしまっても、それでも」
フレンダ「また泡になる所から始めればいい?」
上条「諦めなければ、きっと」
フレンダ「飽きなければ、ずっと、ね」 チュッ
——『夢幻泡影 〜泡沫の夢〜』 −終−
※「バカじゃねぇの?冗談抜きで別スレ立てないと、このスレタイじゃフレンダ好きは見つけられないよ?」と上司(添削屋)に言われましたが、気にしない方向で
『学園探訪』ベースの話なので、前提知らないと(話として)無責任なんですよね
——と、言うような事を懇切丁寧にバカ(上司)へ説明した所、
「あーんじゃ原作も終わったし、リクオ×ゆらだったらいいんじゃね?何か知らないけど、メインヒロインのゆらの出番少なかったし?」
「繰り返すけどメインヒロインのゆらの尺短かったよね?メインヒロインなのに、おかしいよねっ!」
お前私の話聞いてねぇだろう、と。あとぬらりひょんの○のヒロインはカナちゃんだったんだよ……いつの間にか鴆兄さんが総取りしたけど
あ、あれ?いつのまにか禁書スレがぬら孫スレになってる
——学園都市七大不思議探訪 最終話 『縁結び』
——喫茶店
佐天「かんぱーーーーいっ!」
上条「乾杯ーっ」 カチャッ
佐天「いやぁ終わりましたねー、漸く、どうにか、何となくっ!」
上条「何となく、ってのは……まぁツッコむのも疲れてきたからいいや」
佐天「スタッフの皆さんにはホンッッットにお疲れ様でしたねー」
上条「『学園探訪』のスタッフは二人だからね?ぶっちゃけこのテーブルには二名しか居ないからな?」
佐天「そんな事無いですよねー?、ねー、トモちゃん?」
上条「誰も居ないからなっ!?虚空に向かって話しかけるのは怖いっ!」
上条「……つーか佐天さん言おうと思ってたんだけど」
佐天「はい?なんでしょうか」
上条「どうしてこないだから俺と視線を合わせようとしないの?」
佐天「やっだなー自意識過剰じゃないですかねー?あいたたーっ、ですよ」
上条「うん、だから明らかに今も目線が別の方向いてるんだけど」
佐天「……」
上条「……」
佐天「こ、こないだのアレが未だに恥ずかしすぎてっ!」
上条「だからその場のノリで行動するの止めなさい。あぁホラまだ腕プルプルするぐらい恥ずかしいんだからっ」
佐天「でもですね、あの時はああしろってあたしのゴーストが囁いて」
上条「空耳だよ?学園都市でも電脳化はまだしてないからね?多分研究はしていると思うけど」
佐天「義体ってなんであんなにエロいんですかね?ってか全員ガト○さんの方が効率良いですし」
上条「神様の趣味だよっ!あと○トーさんはア・バオ・アク○に居たんだからね?電脳化はしてないよ?」
佐天「ビームライフ○量産出来てなくて、初期生産型ゲルグ○はキャノン背負ってたってのに、大出力ビームライ○ル()て」
上条「……ねぇ、佐天さんはガンヲタを敵に回して何がしたいの?出来れば俺もそっちの方なんだけど」
佐天「まぁ色々ありましたねー」
上条「え、なんで回想の話になってるの?基本今大塚明○さんの話ししかしてないよね?」
佐天「上条さんはどのお話が印象に残ってますかー?」
上条「そうなー……楽で言えば『一人多い』と『メリーさん』かな?」
佐天「喫茶店でダベってただけですか」
上条「いや、心労が少なかったって言うのか。つーか『一人多い』に関してはあんなしょーもないオチで良かったのかと。未だに夢に出るし」
佐天「まぁ基本ノリと勢いで突っ走ってますからなぁ、いぇいっ!」
上条「直そう?危なっかしいにも程があるから、いい加減改善する方向で検討しようぜ?」
佐天「直感力って必要じゃないですかね?時としては考えるより、わーって行った方が」
上条「……世の中にはね、もう絶対に取り返しがつかない事だってあるんだよ?」
佐天「例えば?」
上条「そうだなぁ……風評とか?地方ケーブルとはいえ、電波に乗って『俺が酷いヤツ』って何度も何度も流された事とかなっ!」
佐天「ないすじょーく!」
上条「笑えないよ?こないだどっからか見た親から、『一度リポーターの娘さん連れてきなさいよ』って電話来たんだからね?」
佐天「(まぁあたしとしては願ったり叶ったりですけど)」 ボソッ
店員「ご注文のフルーツタルトとガトーショコラお持ちしましたー」
上条「あ、ども」
佐天「『わたしは帰ってきた!』」
上条「うん、なんでさっきからアナベル・ガト○ネタが続くの?ガトー・ショコラも見越して注文してたの?」
佐天「デンドロビウ○()」
上条「いいじゃねぇかっ!あれは男のロマンなんだよおぉっ!」
佐天「だったらGメ○を無かった事にしなくたって良いと思うんですよね」
上条「何?今日の主旨はガンダ○ファン凹まそうって企画か?」
店員「ごゆっくりどうぞー」 チッ
上条「……頭痛い会話ですいません」
佐天「まぁまぁいいじゃないですか、ってか普段からこんな感じですよね?」
上条「そうだけども——って、そういや番組の方はどうなったの?」
佐天「あ、聞いて下さいよっ!それがですね、『匿名希望のミサカさん』と『ゲコ太らぶりー』さん、あと『鈴木エツァリ』さん以外にも投稿が!」
上条「マジでっ!?良かったー、一般の人も見てくれてんだな」
佐天「確か『黒瓜アレイスター』さんだっけかな……?」
上条「隠せよっ!?もうちょっと頑張ろうぜ色々となっ!俺には誰だか分からないけど!」
佐天「その他にも結構ご感想を頂きましたけど……まぁ、アレでしてね」
上条「え、ちょっと凹むような内容だったの?」
佐天「ちょっと待ってて下さい」 ピッ
上条「あー、メールの内容ダウンロードしてんのな」
佐天「『上条×みさきちで撮るべきだと思う』」
上条「食蜂さんってそんなに人気だったの?」
佐天「『美琴派だったオレが動く喋る表情がコロコロ変わるフレンダをみて一撃でkoされフレンダ派になった』」
上条「あー……」
佐天「……あたしは?あたしって要らない娘ですかね?」
上条「うん」
佐天「うんって!?どういう意味ですかっ!?」
上条「あぁいやごめんっ今は相づちだからなっ!いや佐天さんも頑張ってたよ!つーか佐天さんがいなかったら番組成立しないものっ!」
佐天「……ですかねー?」
上条「だって始まりは友達を助けるんだろ?だって普通は番組撮ろうだなんて思わないし、なっ?」
佐天「まぁ……そこら辺はそれなりの打算もあったんですけど、はい」
上条「あぁほらっ、佐天さんとしてはどの話が印象に残ってる?」
佐天「そりゃあ勿論全部、って答えた方かいいんでしょうけど、そうですねー……」
佐天「遊園地っ、遊園地で遊んだの楽しかったです!」
上条「取材な?確かに遊び回っていた記憶が結構あるけども」
佐天「いやーまさかあんな結末になるとは……」
上条「どんな結末?それっぽく言う意味ってあるの?」
佐天「初春ファンがある時を境にガッツリ減っちゃって」
上条「初春さんには何一つ責任はないよね?あと多分、君ら、つーか仲良しグループ四人組が仲良すぎるのにも問題あると思うんだよ」
佐天「薄い本が一杯出そうな予感が——あたし、予知能力覚醒したかもっ!?」
上条「ごめん。俺も何となくそんな気はしてる。君らに加えて、金髪自称美脚が酷い目に遭う話が大人気だと思うよ」
佐天「やっぱり『みんな大好き中学生』ってのは真理だった、と」
上条「例外だよ!?特定の時期、特定の地域に集まる人達が特別なだけだから!」
佐天「いやでもただ単に自分の欲望に正直なだけかも?」
上条「否定は出来ない、よなぁ」
佐天「後は……そうですねぇ、やっぱり『両想いになれる自販機』でしょうか」
上条「あのダラッダラとした話が?」
佐天「ヒドっ!?告白したのにっ!」
上条「ネタじゃねぇか!?あんな勢いで来られたらマジ告白でも断るわっ」
佐天「ですかねー。よっし反省反省——あぁでもあの回は、鈴木エツァリさんから『神回』と」
佐天「JKに告白されてるみたいで、と一部で大人気らしいですよ」
上条「……いやぁ、うん。その人達も何だかんだで、碌な事には使ってない気がするなぁ」
佐天「アイドルのイメージビデオみたいな感じです?」
上条「ノーコメントで」
佐天「そう言えば局の方から『水着で接客するお仕事をすればタレントになれる』ってお誘いが!」
上条「明らかにヤバい系の話じゃねぇかっ!?絶対真に受けるなよっ!」
佐天「実はレポーターする際、ちょっと『アイドルとしてデビューしてみないくわっ!?』的な展開を期待してたんですが」
上条「あぁ、アイマ○的な?」
佐天「現実はそんな感じですよねー、はい」
上条(いやぁ多分過保護な第三位さんと、凄腕のスーパーハカーさんが何かしてるんじゃないかなー?)
佐天「でも何か番組を通して色々と勉強出来た、って感じがします」
上条「ふーん?」
佐天「あ、その顔は信じてませんね。『またなんか変なボケ挟むんだろー』って顔ですし」
上条「大体合ってるけどさ。どんなの?」
佐天「いやもう初春達遊ぶ時間が減っちゃいまして、えぇ」
上条「俺の期待を裏切ってないよね?」
佐天「あーいえいえ、多分上条さんの思ってるのとは意味が違うと思います」
上条「違う、ってどんな風に。友達と遊ぶのに代わりはないよな?」
佐天「そですねー……子供の時の優先度ってどんな感じでしたか?」
上条「うん?」
上条(いや、覚えてないけども)
佐天「小学生のあたしだと、『お父さん、お母さん、弟、友達、学校』ぐらいの世界だったんですよね」
佐天「それが中学に上がって『学園都市、初春、御坂さん』って具合に広がりまして」
上条「白井さんは?」
佐天「あたしの『世界』はそのぐらいの広さであって、当然一つ一つの比率も高いです」
上条「あー……つまり、佐天さんにとっては、『友達との時間』ってのは大事だと?」
佐天「むしろ大事じゃない人が居るのかとっ」
上条「だよなぁ」
佐天「あ、すいません……!」
上条「居るからね?流石に俺でも同性の友達ぐらいはな!」
佐天「んで、局で編集のお手伝いとかさせて貰ってる時、本物のタレントさん?なんかの仕事を見ました」
佐天「いやもう、ほんっとに凄かったですよ。あたしと同じぐらいだってのに」
佐天「多分、色々なものを支払って『その場所』に居るんじゃないかなー、と」
上条「……確かになー。売れれば売れる程、私生活だって減っていくだろうし。歌やお芝居とかの練習もするんだろうし」
佐天「まぁ実力だけでのし上がっていく裏では、出来なかった人達で死屍累々かなって」
上条「華やかな世界だけどね、外から見る分には」
佐天「ってな事を再実感しただけ、あたしは成長したと思います」
上条「まぁなー」
上条(死にそうな目に遭ってまで、こっちの大事な世界に帰ってきたいと思うのは理解出来る——いや、共感出来るし)
佐天「前は、って言ったら矛盾するかもですけど、あたし異能とか超能力に憧れている、って言いましたよね?」
上条「聞いた聞いた。それの延長で都市伝説とかのオカルトに興味が、って所までは」
佐天「はい、それの続きです」
佐天「御坂さんスッゲ!って思ってた時期もありますし、今も尊敬してますよ?勿論、白井さんのような熱すぎる親愛の情ではないですけど」
上条「白井のアレは……うん、まぁいいや」
佐天「でも近くに居て一緒に遊んでたりしてるとですね、やっぱり『何かを犠牲』にしてるんですよね」
上条「能力開発、か」
佐天「勿論それもありますけど、他にも何かやってるような気がします。ちょい前まで酷かったですけど」
上条(うっわー。やっぱこの子直感で動いている分、そういう所は勘が鋭いか)
佐天「まぁ片っっっ端から見つけ次第、首を突っ込むつもりですが!」 グッ
上条「ヤメテあげような?確実に嫌がるから」
佐天「でもまぁ結局の所、あたしも御坂さんも、同じ高校生に騙される程度の人間じゃないですか?」
上条「人聞き悪っ!?つーかそのネタノルマのようにぶち込むの止めてくれるかなっ!?」
佐天「友達大事だし、力の有る無し関係なくでも突っ込んじゃう、って所も一緒ですし。まぁアレですね、つまり」
佐天「根っこは一緒なんだな、って」
上条「そりゃそうだろうな。人はいっぱい居るけど、行動原理自体はそんなに変わりようがないよ」
佐天「都市伝説も——と言うか神話やら伝承の部分も結構、根っこの部分は似てません?」
上条「ねっこ?」
佐天「蝋で出来た翼で空を飛んだり、ケンカで勝ちたいとか、長生きしたいとか。昔っから人類は中二病を罹患していますよね?」
上条「中二じゃねぇよ!ばっさり切るにも程がある上、当時の人は大真面目だっ!」
佐天「えぇ、はいそれはその通りだと思います。でもやっぱり、突き詰めていくと同じ所へ行きません?」
上条「動機がって話か」
佐天「はいです。自分に無いものを欲しがるのって、誰かに認められたいとか、助けになりたいとか」
上条「例外もあるだろうけど、昔から人の思いなんて変わらないだろうしな」
佐天「この間読んだ本、ゲーテの『ファウスト』ってご存じですか?」
上条「悪魔が出て来てファウスト博士を連れ回す話だっけ?」
佐天「あれは元々ドイツの民間伝承だったそうですね。『ドクトル・ファウスト』だかって言う」
上条「そう、なのか?オペラかなんかの創作だとばっかり」
佐天「んー、歌舞伎とか能でも、伝説から時事の事件を取り上げていますし?洋の東西に関わらず似たようなものじゃないかと」
佐天「スウィフトの『ガリバー旅行記』も政治的な揶揄や皮肉たっぷりのお話らしいですね」
上条(きちんと勉強してるんだな。ジャンルは偏っているけど)
佐天「日本でも……か、かごつるべ?なんかは、当時の事件を取り扱ったものですしねー」
上条「あぁ村雨の話だっけ?」
佐天「知ってるんですか?」
上条「刀身に水が溜まらないぐらいよく斬れる、まるで籠で釣瓶を掬っているみたいだ、とか」
佐天「へー」
上条「建宮——知り合いから吉原100人斬りの怪談を聞かされたんだよ」
佐天「まぁその事件も突き詰めれば片思いですしね?『ファウスト』でも博士は若返って女の子を口説いたりします」
上条「……そう考えると小説や映画も恋愛要素は鉄板だしなぁ」
佐天「むしろ今じゃ、選ばれなかった子が他の子とくっつくだけで猛抗議を受ける時代です」
上条「うん、それは一部だからね?例外を全体の例として挙げるのは不適切だと思うんだ」
佐天「え、白井さんのバスケが大変な事に、って話を聞きましたけど?」
上条「黒子違いだ!脅迫はまごう事なき犯罪だしね!」
佐天「それは——タダの絵だっ!」
上条「やめよう?存在意義の全否定になるから、うん」
佐天「何の話でしたっけ?……あ、最後の最後でヒナ○ちゃんがヒロイン昇格したって」
上条「ネ○にぃさああぁぁぁぁぁんっ!?あそこはサス○ェ君の出番じゃないのっ!?」
佐天「ってか第七班にサク○シュトラッセときどきエロ春野お天気雨ビッ×ちゃんじゃなく、ヒ○タちゃんが配属されれば分裂しませんでしたよね?」
上条「君がサ○ラちゃん嫌いなのは分かったけど、許してあげよう?海外のファンサイト覗いたら、未だにwo×とかビッ×って書き込みで溢れていたけど」
佐天「ごめんなさい、あたしその人知らないです」
上条「うん……まぁ確かにあの子はナル○に斬りつけた後、同じ言葉の刃物でサ○ケ君もザクザクいってたからね」
佐天「っていうか、皆さん誤解しているんですけど。最初にナ○ト君がぶち切れたのって、○ナタちゃんがネ○にいさんにボコられた時なんですよねー」
佐天「つまりメインヒロインはヒナ○ちゃんだったんですよ!」
上条「少年時代のナ○トには、イル○先生ぐらいしか理解者は居なかったし。あそこで優しい言葉の一つでもかけてあげてたのか、分かれ道っていうか」
佐天「でもなんだかんだでオビ○さんは片思いだけど、それなりに優しくしてくれた女の子も居ましたし?全周囲敵ばかりの○ルト君に比べたらまだまだヌルゲーかと」
上条「うん、そろそろ収拾がつかなくなるから話戻そう?」
佐天「じゃリク○君のカップリングについて」
上条「もっと荒れるよっ!?てか原作ではつら○が下克上かましたじゃないっ」
佐天「んー、あたし的にはリ○オ×馬頭○ですよねっ」
上条「ウルセェよっ!そういう需要が一定数あるのは認めるけどもっ!」
上条「あと言わせて貰えるならヒロイン下克上の件に関しては、夜○さんをぶっちぎった肉々しい星○さんは言っちゃダメだからな?」
佐天「何の話でしたっけ……そうですそうです!」
上条「よかったー、分かってくれたかっ」
佐天「デビルサバイバー○の主人公がダイ○・ヤマ○・憂う○の四角関係のド修羅場に!」
上条「俺のオト○さんはぁぁぁぁっ!?フ○さんとアイ○もリタイアしちゃってるし!」
佐天「——と言う訳で、人間の行動原理って変わってないぜ、って話なんですが」
上条「あ、あれ?こっから立て直すの?パワープレイもいい加減にしないと」
佐天「でも結局、そういったしょーもない、もしくは夢物語から人は進んでいくもんだな、って思いますよ」
佐天「ライト兄弟が『夢のつば○』に憧れて空を飛んだように」 キリッ
上条「時系列が狂ってるよね?なんで日本製のギャルゲーに憧れて空飛ぼうとしてんの?兄弟で変態こじらせてるから」
佐天「オカルトだって『何が出来るか』んじゃなくって、『何がしたいか』がスタートですし、そこを辿っていけば結構ありがちな動機だったり」
上条「まぁ、人間の精神性はそんなに変わらないしな。だから数百年前の古典文学でも、現代語訳して共感とかされてんだし」
佐天「オカルトだから、科学では解明出来ないからってさじを投げるより、あたしは『じゃ、なんでそれが出来たんだろ?』ってしたいかなー、なんて」
佐天「噂が出来たとして、出来るだけの訳や理由があるかも知れませんし?」
上条「民俗学とか、文化人類学?の方面かな?」
佐天「まぁ取り敢えずは日々の勉強と初春を愛でるのに集中したいかとぉっ!」
上条「そろそろ初春さんは解放してあげても良いと思うんだけど……まぁ、目標が見つかったんなら何よりだ」
佐天「漠然と過ごすよりかは、まだいいかなーと」
上条「友達と過ごす時間も大切だと思うけどな」
佐天「ですねー、はい」
佐天「あー、そうだ上条さん、ちょっといいですかね?」
上条「ん、何?」
佐天「あたしと結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」
上条「あぁうん、いいよ」
佐天「じゃ取り敢えず、次の長いお休みに実家の両親へ挨拶に来て貰う方向で」
上条「丁度良かった。俺も佐天さんのご両親には言いたい事か山ほどあるっ!主に子供の教育方針でな!」
佐天「えっと……?」
上条「うん……?」
佐天「……いいんですか?あたしはフツーですけど?」
上条「嘘吐くなっ!?悪い意味でアクティブ過ぎる面白人材がそこら辺に落ちてる訳ねぇだろっ!?」
佐天「イヤイヤイヤイヤっ!ここは『嫌です!』って断る流れじゃないですかっ!っていうか『イヤ』と『嫌』って被っているよって言いますか!」
上条「落ち着け?」
佐天「でも他にも居ますしっ!?イギリスとロシアに現地妻がっ!」
上条「いな——いよっ!」
佐天「今ちょっと『あれ?どうだったっけ?』みたいな顔しませんでした?」
上条「日本にも本妻は居ないし!……いや、あのマジ話な?」
佐天「かかってこぉいっ!」
上条「告白の返事待ちでそのリアクションもどうかと思うけど……まぁ、その、三ヶ月ちょい付き合ってだな、妙にしっくり来るって言うか」
佐天「あー、ありますあります。打てば響くって言うのか」
上条「こうやってダベってても、ダラダラしてて楽しいって言うのかな」
佐天「でもっ!」
上条「佐天さんが前言ってくれたように、別に人が人を好きになる理由は、そんなに要らないって」
上条「今なら、俺もそう思うよ」
佐天「……はい」
上条「だからその、結婚を前提とかってのはまだ早いと思うけど、俺は佐天さんと付き合いたい」
上条「一緒に遊んだり、思い出を作ったりしていきたい——好きな子と、一緒に」
佐天「はいっ!」
上条「……まぁ?正直『目を離したらこの子大丈夫?』的な思惑がない訳でもない」
佐天「よっしゃっ!」
上条「リアクション違っ!?そこは抗議する所じゃないのっ!?」
佐天「いいじゃないですかー、勝ったもん勝ちですし?」
佐天「ま、それはさておきですねっ。実は問題がありまして」
上条「早速?つーか出来ればもっと早く言って欲しかった……」
佐天「まぁ、そこはそれ大人の事情的なものがありますが——『学園探訪』の続編っ、決定しましたーーーーーーーーっ!いえーーーーーーいっ!」
上条「おめ、でとう?」
佐天「思ったよりもリアクション悪いっ!?もっと喜ぶ場面ですし!」
上条「いや、あの地獄のスケジュールと突っ込みすぎて喉を枯らす日が帰ってくるかと思うと……」
佐天「でも楽しかったですよね?ねっ?」
上条「あぁまぁ否定はしないよ」
佐天「エロ可愛い彼女もゲット出来ましたし?」
上条「いや可愛くはあるんだけど、エロは全然?」
佐天「まー、それは追々。時間はたっぷりあります、よね?」
上条「まぁそうだけども。でも問題ってそれだけ?」
佐天「いえいえ今の話に繋がるんですが、よっと」 ガサゴソ
佐天「はいっ」
看板『ドッキリ大成功!!!』
上条「……看板?立て札?これがなに?」
佐天「シムラうしろ、うしろー」
上条「はい?」 クルッ
カメラマン ジジーッ
上条「」
佐天「って訳で夏から始まる新番組っ、『新・学園都市七大不思議探訪』の番宣は以上でーすっ!」
上条「またっ!?またこっそり中継しやがってたのかっ!?」
佐天「おおっと!テレビの前のみんな、ボクは大切な事を忘れていたぜっ!君に届ける合言葉っ!」
上条「何っ!?じゃ今の告白とかアナベル・ガ○—さんの話とか学園内に中継されてんのっ!?完全に公開処刑じゃねぇかっ!?」
佐天「辛い時っ!悲しい時っ!困った時にはこの言葉っ!大声で叫んでみようぜ何となくっ!」
上条「待てよ!?流していい話じゃねぇからなっ!絶対にこれは誰も得しないってば!」
佐天「すっきりすれば儲けもんだしっ、しなくったってボクは知らないけれど!それでも言うさっ君に届くまで!」
上条「おぉいっ!佐天さん実はさっきから耳真っ赤だよねっ!?実はテンパってて自分がなにしてるか分かってないだけじゃないのっ!?」
佐天「うーーーーーーいーーーーーーーっはるーーーーーーっ!愛してるぞおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぅいっ!!!」 プツンッ
——学園都市七大不思議探訪 最終話 『縁結び』 −終−
——佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!はっじっまっるっよーーー!」 −完−
※最後までお付き合い下さいまして、心からお礼申し上げます
総量は本編80851語、それ以外は86333語、トータルで167184語(400字詰め原稿用紙で約417枚)
軽い気持ち(「短編連作なら簡単だよね?」的な)で書き始めましたが、まぁ終わってみれば結構な量でした
しかし怖さの欠片も無いグッダグダのSSになってしまいました。超ハイテンション且つボケ倒すリポーターの人選を誤った感が今更ながらに、えぇ
……加えてフレンダ編、読み返してみれば浮いてますねー……本当にちゃんと設定揃えて別スレ立てた方が良かったです。上司がボツにした判断は正解でした
ちなみに佐天さんと上条さんの戦い(ロケ風コント)は終りではなく、>>1は↓の企画へお二人の短編新作で参加したいと思っております
■ コミケにSS速報で何か作って出してみない? 2
■ コミケにSS速報で何か作って出してみない? 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368282039/)
(10月のサンシャインクリエイション61に出展される予定なので、行かれる方は是非お買い求め頂ければ幸いです)
更に余談ですが、このスレのお客様の中に「フレンダ好きすぎて生きるのが辛い」方いらっしゃいましたら、>>1は『上条×アイテム』で長編書いてますので、宜しければそちらもご覧下さいませ(宣伝)
「もしも『アイテム』に浜面さんじゃなく、上条さんが入ってたらフレンダ死ななくね?」と言うIFで続いていくハーレムSSです
上条「今日からアイテムの一員になった上条です!」
上条「今日からアイテムの一員になった上条です!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364862586/)
ともあれ最後まで書き上げる事が出来たのも、応援して下さった方のお陰です。本当に有り難う御座いました
では、またいつか
乙ー!!!!
いい最終回だった!!!
佐天さんと上条さんが付き合う事になったのはマジなんだよな?
ドッキリじゃないよな?
>>478
ありがとうございます
>>479
『番組企画で告白→上条断る→佐天「ドッキリでしたー」』をしようとしたいんですけど、
OKされたので、
佐天(……ま、このまま付き合っちゃってもいいかな?らっきー!)
という流れだと思います。そもそもウソ告白に紛れての100%マジ告白だったのかもしれませんが
凄く面白かった!次回作の予定はありませんか?
皆さんありがとうございます。つーか『アイテム』が転載されまくってて腕が恥ずかしくてプルプル震えます
次回作は来週ぐらいにお披露目出来ると思います
html化は三週間ぐらいしたら依頼しますのでご心配なく
あと『アイテム』の方のご要望がありましたので、ほんの少しだけあの後の話を
これ以上は続きませんのでご了承くださいませ
すいません。投稿しようとしたら、その後数時間ぐらいSS速報さんに繋がらず、落ちてしまいました
30分ぐらい書いた思いつきの話なので、こっそり投下する筈が……あまり期待しないで下さい
——どこにでもあるようなありふれた朝の風景、そんな話
——自宅 6時 寝室
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……
沈麻「……」 ムクッ、カチッ
沈麻「……うん?」 バサッ
妃后「……ぐーすかぴー」
沈麻「タヌキ寝入り止めなさい。って言うか口でそれを言ったヤツを俺は知らない」
妃后「……りこうかあさん?」
沈麻「あー……言うな、うん」
妃后「ごはんできたら起こして……」 モゾモゾ
沈麻「いや、お前も手伝えよ。つーか人のベッドで二度寝すんな潜り込むくんかくんか止めなさい」
妃后「……低血圧、うん」
沈麻「だっけ?お前の場合、人の能力受信してるだけじゃなかったっけ……まぁいいか」
——キッチン
沈麻「おはよー」
絶愛「超おはようです、沈麻」
沈麻「お前また呼び捨てで」
絶愛「超いいじゃないですか。今更兄妹って呼んだらどんなプレイかと思われますね」
沈麻「いいけどなー。当利姉さんは?」
絶愛「昨日遅くまでフレイアと何か超話してましたよ?週末がどうの、って」
沈麻「嫌な予感しかしねぇなぁっ!あの二人の組み合わせってヤバいだろ」
絶愛「まぁ能力関係で色々とあるんでしょうねー。危なくなったら超守ってあげますってば」
沈麻「……見返りは?」
絶愛「そうですねー……あぁ新しい映画が封切りになるので、超付き合ってくれれば」
沈麻「またB級映画?」
絶愛「『バイオハザー○� 〜アリスvs巨乳ドラゴ○〜』」
沈麻「世界的にも有名なゾンビ映画と、日本ですら三家○先生のファンしか知らないVシネ未満がコラボするのかっ!?」
絶愛「ジョボヴィッ○と蒼井そ○が殴り合うシーンは超圧巻かと」
沈麻「うっわそれすっげー見たい……か?つーかどう考えても洋物パロAVになる予感がする」
沈麻「B級つっても限度があるよね?普通見ないよね?」
絶愛「最愛お母さんに超似たんでしょうかね。ってな訳で週末超宜しくです」
沈麻「あー、はいはい。んじゃフレイア起こしてきてくれ」
絶愛「超りょーかいです」
——当利の部屋
当利「……」
沈麻「おっはよー姉さん。起き——」 ガバッ
当利 ギュッ
沈麻「……」
当利「……」
沈麻「……なに?」
当利「……つまんないわねー」
沈麻「実の姉に抱きつかれてもなぁ」
当利「フレイアだったら肋骨何本か持っていくところだけど」
沈利「許してあげてっ!?」
当利「ん……」
沈麻「沈利母さんの真似すんなっ!」
当利「あれは父さんが悪いわよねー、うん」
沈麻「親父は絞め殺したいと思う時があるけど」
当利「まぁまぁ姉妹フェチにはたまらないでしょ?」
沈麻「俺にそんな属性はないわっ!」
——リビング
妃后「おっはー、とうりー」
絶愛「ですです」
フレイア「……」
当利「おはよう。ってなんでレア、朝から魂抜けてんのよ?」
絶愛「起き抜けに沈麻と勘違いして超抱きつきやがって来たので、超腹パンを」
当利「じゃ、仕方がないわよね」
沈麻「うーし、んじゃ全員揃った所で」
フレイア「待ってよ!?あたしスルーって大体おかしくないっ!?」
沈麻「いただきます」
当利・絶愛・妃后「いただきます」
フレイア「沈麻までスルーっ!?」
沈麻「早く食え。俺も待ち合わせがあんだっつーの」
絶愛「余所に女を超囲うだなんてっ」
妃后「わたし達だけじゃ、たりない?」 ヌギヌギ
沈麻「囲ってない足りなくない必要性すらない、つーかメシ時に脱ぎ出すな妃后。御坂先生と通行止めだよ」
当利「あのア×××ども、懲りずにちょっかいかけてんのかよ」 バチバチッ
沈麻「暴走させんな!?友達とその叔母だろっ!」
フレイア「いやでも結局アレじゃないの?超電磁砲の方はちょっと怖い訳」
絶愛「まぁ親の因果が子に、と言う超パターンですがね」
妃后「もう一枠、あったって良かったのに」
沈麻「いやぁ流石に親父そこまで人でなしじゃないと思うけど?」
当利「ダメよ、沈麻。義父さんの悪口言っちゃ」
沈麻「今なんかおかしな表現無かったか?あと別に俺達が結婚しても、親父は親父だし、そもそも結婚出来ないからね?」
絶愛「そこはそれ『アイテム』の超介入でなんとかしそうな気がしますし?」
沈麻「俺も流石にお前らの面倒を一生見る気は無ぇよ!」
妃后「……でも、なんだかんだで助けに来てくれる」
フレイア「沈麻はツンデレって訳よねー」
当利「っていうか父さんの場合、母さん達にハメられて逃げ場を失ったのが正解よね」
絶愛「歴史は超繰り返しますかねー、はい」
沈麻「違うっての!あぁもういいからさっさと食え!」
当利・絶愛・フレイア・妃后「はーい」
——どこにでもあるようなありふれた朝の風景、そんな話 −終−
>>500
次回作は伝奇ホラーものになる予定です
ってか思ったんですが、告知用にツイッターでもやった方が良いんでしょうかね?
>>515
それはやめた方が良いと思う
Twitterやるなら普通にTwitterやれ 告知のためーとかでやるとめちゃくちゃ叩かれるぞ
>>516
ありがとうございます。では一期一会という事で
乙ー!!
妃后(きこう?)
絶愛(ぜつあい?たえあい?)
フレイア
当利(とうり?)
沈麻(しずま)
——とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』(予告編)
※こっそり告知をしてみたり
>>519、上から○・ぜつあい・○・○・○・○……多分使う事はないでしょうが
——学園都市『外』の某駅のホーム
アナウンス『4番線に列車が入りまぁす。お客様は白線の内側にまでお下がりくだぁさい』
上条「……」
五和「うっわー人多いですねー。あ、見て下さい上条さん、ゴスロリ着てる人が」
上条「学園都市のメイド中学を見慣れてると有り難みが……いやいやっ、そう言う事じゃなくってだ」
上条「つーか俺はどうして巻き込まれているの?ナチュラルに関係無いよね?」
五和「それがですねぇ。学園都市の生徒さんが“外”で失踪したらしくって、我々はその調査に行くんですから!」
上条「気合い入りすぎ……ってか、学園都市の話なのにどうして五和、つーか天草式の出番になるんだ?」
五和「あるぇ?説明しませんでしたっけ?」
上条「朝一で襲撃された上、事情も聞かされずに荷物ごと連行されたからなっ!」
五和「はい、インデックスさんもこちらでお預かりしてますし」
上条「いやまぁ学園都市側の都合に付き合わせないのは理解出来るけど、何で俺!?俺も学生だよなぁっ!?」
五和「今回の失踪事件、どうやらオカルトが関わっている可能性がありまして」
五和「学園側が学外で動くのは……憶測だけでは問題があるそうで。ですからオカルトにはオカルトのプロである私達の出番です!」
上条「下請けの下請けなんだろ?つーか駅のホームでオカルト連呼するのはどうかと思う」
五和「仕方が無いじゃないですか!イギリス清教の方々が日本で隠密行動なんて出来ないでしょうっ!?」
上条「シスター服の集団がウロウロと。そう言う映画あったよね」
五和「とにかくっ!そんな訳で付き合って下さいお願いしますっ!」
上条「やめろって!ホームで付き合うとか言うなっ!」
五和「え、ダメなんですか?」
上条「待てよっ!?周りの皆さんが『あのウニ頭、あんな可愛い子をフりやがって何様?』的な目で見てるからねっ!?」
上条「違うから!そーゆー話じゃないでしょおっ!」
五和「一生面倒見ます!」
上条「そーゆー話になってた!?あれ、おかしいのは俺の方なのかな?」
五和「話が失踪ですからねぇ。意外とどこかで遊び回っている可能性もありますし、勘違いでしたー、で済む話ならそれに越した事はありませんけど」
上条「まぁ、分かったよ。俺も付き合う——けど、オカルトってどんな話?三沢塾みたいなカルトじゃないんだよな?」
五和「あ、それは電車の中でお話しします」
上条「あぁ——っと?」 ピピッ
五和「メールですか?あぁインデックスさんから」
上条「いや、インデックスは使えない。一応携帯も持たせてんだけどなぁ」 ピッ
上条「……スパムみたい。何か変な質問か書かれている」
五和「質問ですか?こういうのって『貴方は100人に一人の幸運を手にしました!』って感じじゃ?」
上条「えっとなー……『母狼、兄狼、弟狼がいます。ある時、兄弟狼は川に流されてしまいました』」
五和「のっけからヘビーな展開ですね」
上条「『母狼はどちらを助けるでしょうか?』だって」
五和「スパムというよりは心理学テストっぽいですかね。私だったらどっちも、って答えますけど、それは多分ハズレかもです」
上条「心情的に考えれば弟の方なんだろうけど、だったら俺は兄狼の方かな?」
ジジッ
円周「うん、うんっ。科学的な見解からすれば正しい結論だよね、当麻お兄ちゃん」
円周「例えば兄狼は泳げたとしたって、助かる確率が高い方を選ぶのは当然なんだよ」
上条「……はい?」
円周「どうしたの当麻お兄ちゃん?……あ、エッチなのは後で、ね?」
上条「思ってもねぇよっ!?つーか小学生相手にどうこうする趣味はねぇしな!そうじゃなくって、今五和と話を——」
円周「逸話?だぁれ?」
上条「え、いやだって俺と話してたのは」
円周「失踪した学園生を探しに行く、って説明したよね?」
上条「した、けど。それは」
円周「うん、なーに?」
上条「……いや、なんでもない」
円周「これは独り言だけど、世界には色々な選択肢があるんだよっ」
円周「当麻お兄ちゃんがシスターさんを拾わなかったセカイ、第一位に負けたセカイとかね?」
円周「そういった『様々なセカイがごちゃ混ぜになって世界を構成している』んだ」
上条「明らかに俺に話しかけてると思うけど……それが?」
円周「能力開発でも教わったよね——自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」
上条「俺には出来なかったけどな」
円周「超能力者が力を発現するためには、『重なり合っている現実を認識し、そこから自分だけの現実を構築する』」
円周「つまり、学生都市の能力者は様々なセカイから、『自分に都合の良いセカイ』を引き寄せてるんだね、ふっしぎーっ!」
上条「……良く分からないんだが」
円周「そうだねぇ——あ、お兄ちゃん。やっぱり正義ヒーロー側としては、弟狼を選ぶのがベターだと思うよ。好感度的にも」
上条「そんなもんは考慮してねぇ!……いや、まぁ確かに弟の方を助けたくなるけどさ」
ジジジッ
五和「やっぱり若い方が好みなんですかっ!?」
上条「やっぱりって言うなよ!俺は別に年下好きをこじらせて、る訳じゃ……」
五和「で、ですよねっ。年上系姉さん女房が至高だと思います!」
上条(俺は今、誰と喋ってたんだっけ……?)
上条「……あのさぁ五和さん?」
五和「どうしました、改まって」
上条「えっと、なんで学園都市を離れているのか、って話はしたよね?」
五和「はい、させて頂きました」
上条「狼の家族の話は……どっちを選んだんだ?」
五和「私が『どっちも助けられたいいのに』って言ったら、上条さんが『兄の方を……いや弟の方を助けたくなるよな』って」
上条(『自分だけの現実』の話が無くなってる……?)
上条「……あっれー……?」
五和「無理矢理連れ出しといて言うのも何なんですけど、体調良くないんでしたら、戻りましょうか?」
上条「いや、大丈夫。何も問題はないよ」
アナウンス『3番線に列車が入りまぁす。お客様は白線の内側にまでお下がりくだぁさい』
五和「って来ましたねー。じゃあ行きましょうかっ」
上条「……テンション上げられてもなー」
——とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』(予告編)−終−
※ちなみに最初の構想では上条さん×ねーちん・美琴さんのダブルヒロインのつもりでしたが、上司の要望により五和さん・円周さんへと変更致しました
,, ,,_ ,lヽヘ/ヽ、 .ィ/~~~' 、 _ く|_,.ヘ_|〉
i´ヽヘヘヽノ < / /  ̄`ヽ} '´ ヽイ从,从)) , ^@ ̄@^、
(l |ノノ^^ノ)) / ノlノ^^ノノリ,@ i(从_从))' ̄ `ヘ i iノリ)))〉!゚ ワ゚ノミ!j !iノ从ノ))))
£lc○ヮ○l)ヽ ヾcリ口 _ 口ヽ||*゚ -゚ノ||Jθ。9じ ヽ!l|.゚ ー゚ソ!⊂])《 ノ从∂-゚ 从
`/ll~~~l)ヽ (ヾY^iこ〈iミ''介ミi〉つ、支ノ (iつθー'と) ( (とt,,,ξtつ)
.ツ〉| ヮ|、6 | ヾ_つ_ノ,ノ∪ヽヽ〈,.∞,〉 // ハ〉 ) )(,,ζ,,,,)( (
L`三'」 .|._ハ_.| `‐ニニニ-' U^U ~/7)~! ( ( ( U U ) ) )
!ち!ち !ち !ち ゝ'ゝ' (((((⊂ニニ⊃)))))
、 |
,,'´'`´ ゙ヾ ‐──┼.=r.r=、ヽ ロ ー ゼ ン メ イ デ ン r 、_ィi _lニ!_ _,-,
ル,,ノハト从ド. | .|:.| }:.:) _ ___ __ ーレ'に|:/ィュ:ト, ⊂iヾ、 ∩且つ/
ヾリ、´ -`リ | .|:Κ:<´ .,ィ'''''ト, |_r ァ:./,イr_、:YT:T"「ヽ __ ヽ,=<_ \ .( ・x・)/
,-j^H^i‐、 __|:.| \:ヽ__l:.:l l:.:l /∠イ !:ヽニr;._|:.:|_ |:.:|_"|:.:| <こ〈 ヽ i' |,へ
/ i/ χ~ ̄~κ └—‐〈 ゙ー '`''_-_''└—__-! `ー '',r:‐、 ‐┘|:.:| lフト- )人i 、ゝ
|ゝ|<'i ((从从))ゝ _/:て、 ト:ヽ /:.:.| _..--.、 >=< ,..--|:.:| ,.-.ト, _...-i_...-、 / / ヽi
ヾ.つ从゚ ー$ノ()ヽ .、ィr:ニヽ_ ,.、__|:.ト、ヽ/:/!:.| 〉=!:.| T:.| f:.f"`|:.:| /:'三:.YT:.:r'''l:.:| // ゚∴
|ノ(((,i`Y´i)))ヘ ゞツン-レK( |:.|. ヽ:./ |:.:!.{:.゙ーLァ._|:.:|_ヽ.ニイ:ァヘ.゙ー:.ア_|:.:.!__|:.:| (/ ∵+
( 从くノ人,>从 ) ソ ー' `,ー|:.|.., ' ,...!:.:!.,  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ∵+
ζ |__ll_しブ´ ζ  ̄ ̄  ̄ ̄ |
_ _ 祝!新アニメ放送開始!! ___
.'´,ヘ ヘヽ ,'´r==ミ、 , -、 _ / _ _;ヽ
.___, !〈 ((゙ "))〉卯,iリノ)))〉 〃/´ `ヽ, '⌒⌒ヽ ___ ┌─—┐ rl>o, 、o<h
|__ il!!|.゚ ヮ゚ノ!|__|l〉l.、"-ノlノ\ ルミiレリ^リノ)iリノヽ、卯),i ∠/彡三ミゝヽニニニニフ `l、 r_-'ヽrl’∩
||\.__ ,ノl(つ^ )l.__|!/'i)卯iヽVヽ! ヾ||*(´フワ从^ヮ^リ9ツ |l(ノノイハ )X(ハト、) `i \.▽/ //
||\\ - 〜'´  ̄ `〜'´ ̄ `\ リ(lつノO[ミ{.iとi_}ミ |l.从゚ ヮ゚ノイ 从゚ー ゚リww' /`M´~_ノ.
\\ _ _,.-、 _,-、 _,.-、 _-\ _ /ノハヽととヾ)′ ノLl (」ニi」つ⊂《ニL) |_」 |
\\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| Li_i_i_」 ~ {ミノ`ヽノへ彡 〈__i__〉 ∪|.==|
\|| || !う!う ξく二二二〉そ !_ハ_! .| ∩ |
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| .(ニlニ)
次回作書きました(宣伝)
とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』
とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373334420/l50)
アンチがどうたらと書き込みがありますが、常識的に考えてみましょう
『アイテム』の方は『アイテム』が主人公の話、従ってインデックスが活躍する余地はありません
またこちらのスレは佐天さんが主人公のお話。従って御坂が活躍は見込めないでしょう
それはアンチではなく『当然』の話です
またSSに文句があるのでしたら、ご自分で書けば宜しいかと存じます
このSSまとめへのコメント
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