ほむら「一人のために、全てを滅ぼす」 (44)


「魔法少女まどか☆マギカ」と
「NieR Replicant」のクロスSSです。

このSSを読む前に、「DRAG-ON DRAGOON」の新宿エンディングと、「NieR Replicant」の設定背景を把握しておくことをお薦めします。

決して万人向けのシナリオではない為、あらかじめご了承下さい。

時代背景は、叛逆の物語の後をベースにしています。


不定期更新になる場合もありますが、なんとか完遂させたいと思います。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390537907


Prologue

神と神。悪魔と竜。
二つの力で、物語は始まる。





これは、悲しい王子さまのお話。
遠い世界にあった、ある王国の物語。


闇の軍勢に襲われたその国は、赤い目をした人外の兵と空を覆う黒い竜の大群によって、一夜の内に崩壊してしまいました。

お城の中では、王さまと王妃さまが見るも無惨に黒い竜の爪によってお腹を引き裂かれ、あたり一面は血の海になっていました。

幸運にも、王子さまとその妹のお姫さまは、命からがら逃げる事ができました。

けれども、両親の惨劇を目にした王子さまは、その衝撃で復讐の鬼へとなってしまうのでした。





これは、恐ろしい王子さまのお話。
遠い世界にあった、ある戦いの歴史。


憎き敵を殺す事に執着した王子さまは、日に日に復讐という名の暴力に溺れるようになりました。

逃げ出す敵兵を引きずり倒して容赦無く殺すのは当たり前で、既に死んでいる敵兵を一刻以上も切り刻んでいるのを見た、という兵士も出てくる有様だったそうです。

周囲の人からも避けられて、王子さまは更に過酷な戦場へと送り込まれるのでした。



これは、翻弄された王子さまのお話。
遠い世界にあった、運命の行方。


王子さまは、お姫さまが住むお城を守ります。

次から次へと敵兵を叩き伏せ、腕を切り落とし、足を吹き飛ばし、腹を引き破り、頭を刈り落とし、目をえぐり出し、殺戮を楽しんでいるようでした。

浴びる血と自分の流す血の区別がつかなくなった頃、傷ついた王子さまはとうとう倒れてしまいます。

苦しみにのた打ち回る王子さまが霞む目で見上げると、その先に見えたのはあの憎き竜の姿でした。




これは、狂った王子さまのお話。
遠い世界にあった、ある竜との出会い。


王子さまの目の前に現れたのは、傷ついた紅い竜でした。

両親の仇である竜の一族を目の前に、王子さまは剣を振り上げて殺そうとしました。

その時、紅い竜は王子さまに言葉を投げかけます。

貴様の命を救おう。お互いの心臓と引き換えに力を与えよう、と。

王子さまは考えた挙げ句、紅い竜との契約を決意します。

たとえ何を失おうとも、相手が竜であっても、その復讐の刃をこのまま振り続けることが出来るならば、構わないと思っていたのでしょう。

暗い油のような欲望だけが、王子さまの胸の中に満たされていきました。



ほむら「………………」


窓の外を眺める。

先程まで空は曇っていたけれど、ようやく晴れてきたみたい。

つまらない授業を何度も聞く私の気持ちも、晴れてくれないかしら。


ほむら「…………?」


よく見てみると、雲が割れて陽射しが降っているのではなく、空そのものが歪んでいてそこから光が射している。


ほむら「…………!! あれは……!?」


その時私が見た物。
 
それは、女型の白い巨人と、紅い竜だった。



ほむら「(……、何が起こっているの……!?)」


この世界を統べる私でさえも、全く理解できない。

歪んだ空から突如として現れたのは、この世界には存在するはずの無いモノ、巨人と竜。


さやか「な……何よ、あれ…………」

杏子「……お、おい、何だありゃあ……!」


クラスが騒然とし始めた。

もう授業どころではない。

この様子だと、休校の連絡が来るのもそう遅くはないだろう。


ほむら「…………っ」


とにかく今は、状況を知る必要がある。

それは、他でもなくまどかの為だけ。

あの子にはもう、余計な事に関わらせたくないのよ。




-Keyword-


[巨人と竜]

2013年6月に前触れなく群馬県・見滝原に出現した、質量を持たない「巨人」と「紅い竜」。
人々が騒然とする中、壮絶な戦いを繰り広げた両者は、巨人が崩壊を始めたことで紅い竜の勝利に終わる。
その竜を、「航空自衛隊 第6航空団 第303飛行隊:スカーフェイス機」が撃墜。
竜の亡骸は政府に回収され、極秘裏に研究施設へ送られる。




ほむら「……これは………」


あの後学校を抜け出し、超加速で巨人と竜が落下した場所へ向かってビルの屋上に到着した。

ちょうどその時は、空を飛ぶ紅い竜が火を噴いて巨人に攻撃している最中だった。

この世界を蹂躙する存在、すなわち悪魔である私にとって、摩訶不思議な力を使って目的を達成するのは造作も無い。

だが今は、私の力ではどうにもならない事が一つだけ存在する。

それは、あの巨人と紅い竜を、この世界から消せないこと。

少なくともこの世界では、私の思うように事が運ぶようにできているのに、あの巨人と竜だけは、どんな手を使ってでも消す事は出来なかった。

こんな事は今まで一度も無く、正直、驚きを隠せなかった。


ほむら「どうして、こんな事が……」


これからどうすべきか、なかなか考えが思いつかない。

単純に、あの巨人と紅い竜を消す事が出来ればそれで良いのだけれど、その方法がわからない。

……ところで、あの竜の背中に乗っているのは、人間……かしら?





ほむら「……!」


しばらくの間、巨人と竜の戦闘を静観していたけど、ようやく決着がついた。

巨人の体が崩れ落ち、その体躯が白い残骸になって辺りに散らばるのを眺めていたその時、耳をつんざく音が私の真上から聞こえた。


ほむら「っ……!?」


続いて、爆音が私の鼓膜を揺さぶる。

空を見上げると、細い飛行機雲が尾を引いていて、その行く先を辿ってみると、さっきまで飛んでいた紅い竜が消し炭となっているのが見えた。

後方の上空には、戦闘機が飛行している。

どうやらあの紅い竜は、戦闘機の発射したミサイルによって撃墜されたらしい。


ほむら「……私が手を下すまでもなかったわね」


これで、巨人と竜はその活動を停止したけれども、これで全てが終わったとは思えない。

きっと、何か副作用みたいな事象が起こり得るかもしれないし、予断を許さない状況に変わりは無い。

とにかく今は、まどかに危害が加わるような事を防ぎつつ、事態の解明に力を入れるのが先決ね。



ほむら「…………どうだった?」

QB「魔獣は相変わらずだよ。あの一連の騒動で、何か影響を受けている様子は無いね」


見滝原を展望出来るこの丘の上で、椅子に座りながら私は問う。

結局、私でもわからない事は、癪だけれどもコイツに頼るしかないのが現状だということ。

魔獣を狩るのは、魔法少女と私の使い魔の役目だとして、今はこの白い生物にあの巨人と竜について調べさせている。


QB「どうやら、紅い竜の亡骸は政府によって研究施設に搬送されたらしい。巨人の残骸については、白い粉末状の粒子となって空気中を漂っているだろう」

ほむら「…………そう。ご苦労様」

QB「今日はやけに優しいじゃないか」

ほむら「…………お喋りが過ぎるわよ」


手を叩くと、白い生物が爆ぜる。

全く、余計な事を言わなければそうならずに済んだものを。

気晴らしに、魔獣と戦う彼女達の様子でも見に行くとしようかしら。










さやか「……特に変わった様子は無いみたいだよ」

杏子「別に、何が起きても不思議じゃねぇよ。あんな物見ちまった後なら、尚更な……」

マミ「とにかく今は、わからない事だらけよ。いつもより慎重に立ち回る必要があるわ」

なぎさ「……何だか……とても嫌な予感がするのです」


魔獣の発生源に到着した時、4人は既に現場で臨戦態勢に入っていた。

やはり、まだ事態の詳細が掴めないでいるせいか、いつもの活発な雰囲気は完全に失せている。

いつ、どんなイレギュラーが起きてもおかしくないこの状況では、無理もない。

こういう時、ここで美樹さやかが何かしらのフォローをするはずだが、今回ばかりはそんな事をする様子も無いみたいね。


杏子「……来るぞ」

さやか「とにかく今は、目の前の敵に集中するしかない、か……」


聞き慣れたあの呻き声が、次第に迫って来る。


マミ「……、行くわよ!」


巴マミの銃声が鳴り響くと同時に、他の3人が一斉に動き出す。

近接戦を得意とする美樹さやかと佐倉杏子が直進し、巴マミと百江なぎさは後方に回って、あの2人を援護する態勢に入った。


ほむら「……あなた達も、行ってきなさい」


私の後ろに控えていた使い魔達を、魔獣のいる方角へ向かわせる。

これだけの戦力がいて、負けることはまず無いでしょうけど、何か想定外の出来事が起こる確率もゼロではないし、この場を離れる気に
なれない。

少しばかり観戦しつつ、後は魔獣が全滅するのを待つだけね。



>>30の修正



杏子「……来るぞ」

さやか「とにかく今は、目の前の敵に集中するしかない、か……」


聞き慣れたあの呻き声が、次第に迫って来る。


マミ「……、行くわよ!」


巴マミの銃声が鳴り響くと同時に、他の3人が一斉に動き出す。

近接戦を得意とする美樹さやかと佐倉杏子が直進し、巴マミと百江なぎさは後方に回って、あの2人を援護する態勢に入った。


ほむら「……あなた達も、行ってきなさい」


私の後ろに控えていた使い魔達を、魔獣のいる方角へ向かわせる。

これだけの戦力で負けることはまず無いでしょうけど、何か想定外の出来事が起こる確率もゼロではないし、そういう意味ではこの場を離れる気にもなれない。

少しばかり観戦しつつ、後は魔獣が全滅するのを待つだけ。





杏子「……終わったか」

マミ「結局、何とも無かったみたいね」

なぎさ「ふわぁ……。なぎさは疲れたのです」

さやか「…………」


魔獣は全滅、普段と何も変わらない。

けれども、美樹さやかだけが、何か腑に落ちない表情で俯いていた。


マミ「……美樹さん、どうしたの?」

さやか「いや……何か、これで本当に良いのかなーって、そう思っちゃって……」

杏子「何だよ、変な事言うなよ。そりゃまあ、あんな事が起こった後だったら不安にもなるけどさ……」

マミ「美樹さんだけじゃないわ。わたしも、佐倉さんもなぎさちゃんも、みんな不安なの。けど、今はまだ様子見しかできないのよ……」

なぎさ「心配したって、どうしようもない時があるのです」

さやか「……、そうだよね。ごめん、みんな……」


さすが、元・円環の理の一部だっただけあって、妙に勘が鋭い。

でも、美樹さやかの抱いた疑念は、私にもある。

これで良かったのかと言われると、そうでもない気がしてならない。

もしかして、私の知らない所で何かが始まっているのでは?

この世界を支配する存在のくせに、そんな事さえもわからないなんて。


ほむら「…………戻るわよ」


役目を終えた使い魔達を集めて、この場を去る。

考えても仕方が無いし、まどかの所へ行って、あの子を見守り続けましょう。

たとえ何が起ころうとも、あなただけは、必ず私が守るから。



Part2

白き死を呼び寄せし塩の兵士。
その名はレギオン。世界を闇に閉ざす者。




昨日、この見滝原に原因不明の奇病が発生した。

その名も、「白塩化症候群」。

致死率は100%、発病すると全身が徐々に白く塩化し、死に至るという病。

実は、その最初の感染者が見滝原中学の女性教師ということもあって、今は学校そのもが閉鎖されている。

しかもその女性教師というのは、私やまどかのクラス担任だった早乙女和子先生。

目撃者の証言では、先生は生徒が全員帰った後の放課後、職員室で突然倒れ込んでそのまま塩の塊になったという。

この事件はいち早くニュースに取り上げられたけど、感染者は見滝原中学以外の場所でも確認されたとの速報テロップが鳴り響いたおかげで、今も世間は大騒ぎとなっている。

どうやら、悪い予感が見事に的中してくれたみたいね。


ほむら「…………」


「巨人」と「紅い竜」が落ちてきた日から4日が経つ。

あの巨人と竜がどこからやって来たのか、どうして見滝原に出現したのか、一体何をしに来たのか、未だ何一つわかっていない。

巨人の残骸と竜の亡骸の一部を採取して調査しているとアイツは言ってたけど、何の情報も入って来ない。






ほむら「……っ、やっぱりダメね……」


この奇病を何とかこの世界から消滅させようと力を行使していたけど、結果は同じ。

そもそも、この病気がどこから起因するのかもわからないのでは、悪魔の私でも手の打ちようが無い。

奇病の感染者はそれほど多くは無いけど、いつ誰が発症してもおかしくない状況ではある。

それに、この世界からの根絶が不可能なら、奇病の原因となる物質を直接体内に侵入させない施策が要る。

ならば、まどかも含めて家族全員に外部からの干渉を寄せ付けない遮断フィールドを張り巡らして、あらゆる病原菌やウイルスの侵入を防ぐしかない。

この方法は、かつてインキュベーターが私を実験台にしていた際に使っていたのを応用したもの。

まさか、あの忌まわしい技術がこんな時に役立つとは思って無かったわ。


ほむら「……まどか…………」


真っ二つに割れた月の光が、闇夜を照らす。

もう夜中の12時を回っていて、ほとんどの人は眠りについている時間。

あの子も今、部屋でかわいい寝息を立てながらぐっすりと眠っている。


ほむら「………おやすみなさい」


あの子を守る為なら、手段を選んでいる余裕なんて無いものね。




――――翌日



杏子「お、おい…………何なんだこいつらは!?」

さやか「人を……襲っている……!?」

マミ「……こんな………事って…………!!」

なぎさ「こ…………怖いのです……」


魔獣退治を終わらせた彼女達の帰りを待っていた光景。

それは、白い埃が舞い上がり赤い液体がしぶきを上げる、怒号と悲鳴が飛び交う阿鼻叫喚の地獄絵図。


ほむら「…………これは……っ、………」


謎の白い人型の生物が、民間人を虐殺している。

その生き物に襲われた人間の中には、全身が白く変色して塩の柱となる者もいれば、雄叫びをあげながら他の人間を襲い始める者もいる。

ここ最近、魔獣と戦う彼女達の後をつけている日が多く、今日もそのつもりでついて来たのだけれども、まさかこんな事が起こるとは思わなかった。




ほむら「……誰が一体、こんな真似を……」


真っ白な肌に鮮やかな赤のペイントを塗りたくった元・人間が、次々と人々に襲いかかる。

見滝原の中心街にあるこの大通りでは今、赤と白に彩られた殺人ショーが開催されている。

肩を齧り、腕をもぎ取り、足を引きちぎり、腹を穿ち、顔を引き裂く、塩の化け物。

彼らの中には、十数分前まではただの人間だった者もいるんじゃないかしら。


ほむら「…………」


あまりにもむごい惨状を目の当たりにしてもなお、何故か私は冷静でいる。

それはきっと、悪魔だからという理由じゃなくて、もう何が何だかわからなくて、思考が定まってないからでしょうね。





-Keyword-


[白塩化症候群]

見滝原で発生した原因不明の奇病。
発病者の皮膚は白く塩化し、死に至る。
なお、感染者の中には死を免れるものの、凶暴性・残虐性が極度に肥大化する者も出現(凶暴化した者は「レギオン」と呼称される)。
レギオンは、病に感染していない人間を襲うようになる。
種の存亡が危うくなった人類は、この病の根絶と、レギオンの殲滅を余儀なくされる。



[レギオン]

白塩化症候群感染による死を免れた者は、凶暴性・残虐性が肥大し、身体能力が向上。
その代償として知性を失い、未感染の人間を襲う。
レギオンに襲われた人間は、白塩化症候群へと感染して死を迎えるか、新たなレギオンとして生まれ変わる。
こうして病の感染者を増やし続け、世界を崩壊へ導くことが、レギオンの存在意義であると推測される。
レギオンは症状が進むと、外見が人型から逸脱し始め、場合によっては非常に巨大な個体になる者も確認されている。
余談だが、白塩化症候群には「異世界の神の呪い」という裏設定が存在する。
神の呪いに抗しきれず、「人間を滅ぼす契約」を受け入れた者は、契約の証としてレギオン化、契約を拒んだ者は白塩化して死亡する設定になっている。
異世界の神といえば、遥か向こう側の世界で、とある亡国の王子が紅い竜と共に追い詰めようとした敵である『神様』を想像してしまうが……。





なぎさ「いやだ……。もう……見たくないのです……」

マミ「なぎさちゃん……」


涙を浮かべた百江なぎさが、巴マミのお腹に強く抱きつく。

小学生の少女にとっては、いくらなんでも残酷過ぎる光景でしかないものね。


さやか「…………っ、これ以上、黙って見てられないよ!」

杏子「ちょ、待てさやか! …………ったく、何がどうなってやがるんだ……」

マミ「……わからない……けど、このままだと犠牲者は増えるだけよ!」


一方的な殺戮に怒りを露わにした美樹さやかが白い化け物の群れに突っ込み、困惑した佐倉杏子も彼女の後に続こうとする。

巴マミはというと、抱きついて離れようとしない百江なぎさを放っておくわけにもいかないからだろうか、その場から動く様子も無いみたい。


マミ「私が側にいるわ。だから、絶対に離れないでね」

なぎさ「…………ありがとう、なのです……」


白髪の少女の頭を優しく撫でた後、白銀の銃を構える。

前方の2人が戦っているのを注視しながら、あの白い異形達を次々と狙撃し、みるみる数を減らしていくのが見える。


さやか「何なんだ、何なのよこいつらは! なりふり構わず人を襲うなんて……!」

杏子「こっちが聞きてえよ! 普通の人間にも見えてるってことは、少なくとも魔獣じゃねえけどな!」


美樹さやかの斬撃が、佐倉杏子の刺突が、塩の生き物を容赦なくねじ伏せる。


ほむら「……以外とあっけないわね」


塩の生き物は彼女達に反撃するわけでもなく、ひたすら倒されるだけの繰り返し。

魔法少女の手にかかれば、未知の生物といえどもこんなものなのかしら。





ようやく訪れた静寂。

あたり一面は、血と塩が混ざり合ったどろどろとした物で覆われていて、見ているだけで気持ち悪くなる。


杏子「ひでえ有様だな……」

マミ「……どうして………なんで、なんでよ……!」

なぎさ「…………」

さやか「……、わからない。何もかもが……」


あの化け物を一匹残らず駆逐した後、4人は元いた場所へと集まっていた。

彼女達自身に怪我は無いようだけれど、あの様子からして、助かった「人間」は誰もいなかったようね。


さやか「……これからどうする?」

杏子「どうするって言ったってよ……、まだ何もわかんねえんじゃ、どうしようもねえだろ……」

なぎさ「……お家に……帰りたいのです。マミと一緒にいたいのです……」

マミ「なぎさちゃん……。でも、お父さんとお母さん……待ってるんじゃないの?」

なぎさ「…………、パパとママは、もういないのです……」

マミ「え…………?」


百江なぎさ以外の3人が、沈黙する。




なぎさ「パパとママは…………さやかに殺されたのです……」

さやか「………………、え?」

杏子「……! それって、まさか…………」

なぎさ「………見てしまったのです。パパとママが、白いお化けになって、他の人を殺そうとして…………。それで、さやかに殺されるのを……見たのです……」

さやか「……そんな…………っ!!」


百江なぎさの話を聞く限り、どうやら一般人を襲おうとした塩の化け物がこの子の両親で、この2人も襲われる前は普通の人間だった、ということらしい。


マミ「……本当なの? なぎさちゃん……」

なぎさ「……、間違いないのです………」

さやか「…………っ、どうして……どうして言ってくれなかったのよ!!」

なぎさ「……ひっ!」

杏子「やめろ! 落ち着けさやか!!」

さやか「言ってくれれば……、言ってくれればきっと、助けようとできたはずなのに……!!」


美樹さやかの言うこともご尤もだけど、果たしてあれが、本当に助けられる代物かどうかも怪しい所だわ。

あの化け物に呼び掛ける人はたくさんいたけれども、結局その人達は、必死に呼び掛けた相手によって惨殺されていたのよ。

襲われて凶暴化したら最後、元に戻ることは無いんじゃないかしら。

少なくともあの化け物に生まれ変わったら、記憶や知性、言葉も失って人を襲う事しか考えなくなるのかもね。

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