小鳥「一度死んだプロデューサーさん」(275)

ガチャリ

P「あの……」

小鳥「はい。何の御用件でしょうk……え?」

律子「やっぱり、にわかには信じられません」

P「まあそうだよな」

律子「だけど目の前にいるんですよね」

律子「信じざるをえませんね…」

美希「信じる、信じないはどうだっていいの! 律子はリアリストが過ぎると思うの」

律子「そんな言葉どこで覚えてきたのよ、あとさんをつけなさいこのデコ助娘」

伊織「」ビクッ

美希「ミキはデコ助娘じゃないの! どっちかというとでこちゃんがデコ助娘だと思うな、デコだけに」

伊織「でこでこうるさいわよ! それに律子はどちらかと言うとロマンチストよ」

律子「な、何言ってるの伊織!!」

伊織「だって事実でしょ?」

貴音「ろまんちすと……浪漫、血棲…兎? 面妖な」ブルブル

響「夢想家って意味だぞ。ぴよ子みたいなのだな」

貴音「なるほど、響は利口なのですね」

響「えへへ、自分完璧だからな!」

小鳥「だけど本当に憶えてないですか?」

P「はい…、千早とローソンに行ったところまでは、かろうじて分かりますがそれ以降が」

小鳥「私もいまひとつ信じられませんよ…」

P「律子や音無さんたちの気持ちも分かります。同じ立場なら俺だって信じないと思いますから。だって気味が悪いじゃないですか」

小鳥「死んだ人がひょっこり戻ってくる、確かにありえないことですね、ホントにプロデューサーさんですか? 何かが化けてるとかじゃ、ないですよね?」

貴音「あなた様は幽霊なのですか!?」

P「違うよ貴音。ちゃんと記憶もあるし、確かに俺だよ。ほら、足もあるだろ?」

貴音「本当でしょうね? 嘘じゃありませんか?」プルプル

P「本当だよ本当」

響「…………」

響「わっ!!!」バッ

貴音「ひぃっ!? な、な、な何奴!!!」ブルブル

響「じ、自分だけど」

貴音「………響、響!! 何をするのですか!!!」

響「うわっ、ご、ごめん! 貴音、まさかそんな驚くなんて思わなかったぞ……ごめんなさい」

貴音「次はありませんよ?」

響「はい…」

小鳥「…ま、まあ、どうみてもプロデューサーさんですし、本人に違いないですよね」

P「恐らくはそうでしょうね」

美希「だいたい律子はミキに対して厳しすぎだって思うな。この前だっておにぎりの具に悩んでいるミキをシニカルに見つめてたの。エフィシエンシーの悪い愚か者を見つめる視線だったの!」

律子「だからどこで覚えてきたのよそんな言葉、それに」

美希「ごめんなの律子……さん、ミキ凸助にはなりたくないの」

伊織「なんかむかつくわね…」

貴音「しにかる…えふぃしえんしー…?」

響「冷笑的、能率、だな。それが何の意味かは良く分からないけど。…自分国語以外は結構いけるんだぞ?」

貴音「ええ、響は完璧ですから」

響「う、うん。自分以外に言われるとちょっと恥ずかしいよ……」

貴音「完璧な響はまことに完璧ですよ」

響「貴音……さっきのまだ怒ってるのか?」

貴音「怒っていませんよ?」

P「一年越しという実感はないですけど、いつもどおりじゃないですか」

小鳥「え、ええそうですね…」

P「音無さんや社長の危惧したことにはなりそうにないですね。杞憂ですよきっと」

小鳥「でも…」

P「さて、と」スクッ

響「プロデューサーがまたどこかに行こうとしてるぞ、貴音」

貴音「はい、一体どこに行くのでしょう? 今度は戻ってきてくれればよいのですが」

P「え?」

伊織「……」

美希「……」

律子「プロデューサー、どこに行くんですか?」

P「い、いやちょっとそこのローソンまで、な。すぐ戻ってくるよ」

律子「私が行きましょうか? 顔見知りに会うとまずいですし」

P「まあ大丈夫だろう。すぐそこだしな」

律子「…分かりました」

P「お、おう」ガチャ 

ポフ

千早「痛ッ」

P(あ、柔らかい……)

P「あ、ああすまん、…ん、千早か」

千早「いえ、こちらこそすみません、……え?」

千早「え…あ……ああ、あの……プロデューサー?」

小鳥(やば、皆に伝えるの忘れてた)

千早「あれ……なん…で……?」

P「はは、なんでか分からんけど生き返ったみたいなんだ」

千早「夢? 夢ですかこれは?」

P「夢、かもしれないなあ。俺もよく分からん」

千早「そうですか。まあ、なんでもいいですけれど」

P「そっか」

千早「ところで」

P「ん?」

千早「どこかに用事でも?」

P「ああ、ちょっとそこのコンビニまでな」

千早「私もご一緒していいですか?」

P「いいぞ」

千早「ありがとうございます」

小鳥(皆にはメールだけでも送っておこう)

P「気付いたらここの横断歩道の上にいたんだよ」

千早「……」

P「ボーっと突っ立っててな。財布は血まみれ、携帯はぐしゃぐしゃ、だけど怪我は全くない。不思議なもんだ」

千早「……」

P「どうした、千早?」

千早「何も覚えていませんか?」

P「なんか曖昧でなあ、確か直前に千早とローソンに寄ってたんだよな。丁度今みたいに俺が横断歩道の上に立って、少し後ろで俯く千早を見ていた」

千早「……少し目まいがしたんです、疲れていたのかもしれません」

P「そうだったのか」

千早「プロデューサーは横断歩道を少し渡った中ほどのところで気付いたようで、心配そうに私を見ていました」

千早「だから、何ともないことを伝えようと口を開けました」

千早「…………」ブルブル

P「ん?」

千早「……うぅ…すみません、すみません…私が……しっかりしていれば……うぁ…あ…ああ…優………私が……
…プロデューサー……を……」ガタガタ

P「なっ、大丈夫か千早!?」

千早「……もう大丈夫です」

P「だけど今」

千早「プロデューサー、私はなんともないです。早く事務所に戻りましょう。みんなが待っていますよ。プロデューサーが今度こそ帰りつくことを、待っていますよ?」

P「そ、そうだな。戻ろうか」

――

千早「飲酒運転でした。恐らくプロデューサーがいることにさえ気づかなかった」

P「はは、実感がまるで湧かないよ」

千早「私のせいでは決してないとみんなは言ってくれました、あれは不幸な事故だったと」

千早「プロデューサーは私を怨みますか? だって健康管理を怠った私のせいで死んだようなものなんですから」

P「千早は悪くない。あれは俺の不注意だった。それに健康管理ったって自分のアイドルの体調も把握できていなかった俺に落ち度がある。そうだろ?
怨む必要なんてさらさらないよ」

千早「もし死んだままだったら? それが普通なんですよね。人生を私は台無しにしたんですよ? なんで私は怨まれないんですか?」

P「あれは俺の不注意と、飲酒運転した馬鹿のせいだ。それに今は生きてるぞ」

千早「はい、確かに生きてますね、ふふっ♪」ダキッ

P「おわっ!? どうしたんだ?」

千早「やっぱりプロデューサーと一緒だと安心します」

千早「この感覚をしばらく忘れていました」

千早「もういなくなりませんよね?」

P「そのつもりだよ」

千早「ふふっ、分かりました。…プロデューサー、私は小心者なんです」

P「意外だな」

千早「ですから、余り不安がらせないでくださいね?」

P「分かってるよ」

P(千早は弟も交通事故で亡くしたんだったな。トラウマを刺激してしまったのだろうか)

P(不甲斐ない、なんと言えばいいのか分からない。今は時間が傷をいやすのを待とう)

ガチャ

P「あー、あったかい。外すごい寒かったですよ」

小鳥「おかえりなさい、千早ちゃん、プロデューサーさん。あ、響ちゃんと貴音ちゃん、それに美希ちゃんはレッスンに行きましたよ」

千早「私も行ってきます。プロデューサー」

P「おう」

P「俺は、やっぱり営業とかについていっちゃいけないですかね?」

小鳥「ええ、まだ…。大騒ぎになるかもしれませんから顔見知りに会うのは避けてもらいたいです。悪い噂は避けたいですしね」

小鳥「社長が、あまり騒ぎにならないように記者の人たちなどへのツテとかコネでどうにかしようとしてくださっています。近日中には…恐らく大丈夫でしょう」

P「ドッキリってことじゃ駄目ですか?」

小鳥「無理でしょうね。事故が起こってすぐ、あの子たちにそれぞれ休んでもらいました。それも、これまでの功績による信頼に加えて、周りの方の理解が得られたおかげですよ。
そのおかげで、あの子たちもひとまずの区切りをつけられましたから。あれをドッキリと言ってしまったなら顰蹙を買ってしまいますよ」

P「そうですか、…難しいですね」

小鳥「あと、しばらくは事務所で寝泊まりしてほしいのですが……」

P「はい。…ありがとうございます。迷惑をおかけしてすいません」

小鳥「ふふ、大丈夫ですよ。しばらくは私と事務仕事を頑張ってくださいね。あとは、送り迎えくらいでしょうか」

P「はい」

小鳥「違反とかは絶対にしないでくださいね」

P「もちろんですよ、交通規則は大事だと身に沁みて分かりましたから」

小鳥「……」

P「あれ?」

伊織「笑えない冗談ね」

P「おお伊織、いたのか」

伊織「律子はあずさを迎えに行ったわよ」

P「律子…迷惑をかけたなあ」

伊織「ホント迷惑をかけすぎよ、あんたは」

伊織「まあ、社長がまた誰かにピーンとくるまでは、私たちもレッスン多めでやってるんだけどね。
プロデューサーが律子一人だけじゃきついだろうし」

P「近いうちに俺もプロデューサーに復帰できるよ」

伊織「復帰したら今までの分も含めて頑張りなさいよ?」

P「ああ! 全力を尽くすよ」

伊織「………」

P「どうした? 急に黙って」

伊織「あんたはもっと長生きするかと思ってたわ」

P「まあ、何が起こるか分からんしな。だけど今はこうやって生きてるじゃないか。奇妙なもんだよな」

伊織「大変だったのよ、あんたがいなくなってしばらくは」

P「そうか…すまん」

伊織「美希や千早を筆頭に、雪歩ややよい……それに春香。ホントに大変だったわ」

伊織「千早は大丈夫だった?」

P「大丈夫って、何がだ?」

伊織「絶対に行こうとしなかったのよ、あそこの横断歩道のところに」

伊織「どうだった?」

P「少し動揺していたみたいだった」

伊織「事故の日はね、両手を血まみれにして錯乱しきっていたわ」

伊織「ずっと『プロデューサー』と『優』って繰り返して」

伊織「しばらくは休ませていたのよ。それでも春香を始めとしてみんなで会いに行ったりしてたわ」

伊織「まったく、たくさん千早と話しなさいよ。ただでさえあんたは」

P「分かってる」

伊織「そう、ならいいわ」

律子「ただいま戻りました。は~疲れた。やっと見つけてきましたよ」

あずさ「おはようございます~」

亜美「おっはよう! あ、兄ちゃん久しぶり!」

P「久しぶりだなあ」

亜美「うん……!」

亜美「またたくさんいじったげるからね!」

P「おう! かかってこい」

あずさ「おかえりなさい、プロデューサーさん」

P「はい、ただいま戻りました」

あずさ「ふふふ、ネクタイが曲がっていますよ」

P「あはは、すいません」

伊織「ふんっ!」ゲシ

P「痛い! 何するんだ伊織」

伊織「気に食わなかっただけよ」

律子「それじゃあ竜宮小町の営業行ってきますね」

小鳥「はい。いってらっしゃい」

伊織「ふぅ」

亜美「おやおや~? いおりんずいぶん嬉しそうですな→」

伊織「な、何よ」

あずさ「プロデューサーさんと久々に会えて嬉しいのよね~?」

伊織「そんなことないわよ!」

律子「まあ頑張りなさい」

伊織「なんなのよ…もう」

律子「まったく、プロデューサーはほっとくとどこに行くか分からないわ、まるであずささんですよ」

あずさ「そんなことないですよ~律子さん。私はちゃんと事務所に帰ってくるじゃないですか…」

律子「あはは、そうですね。でも、なんか不安なんですよね」

あずさ「プロデューサーさんがですか?」

律子「はい」

伊織「まあ、しばらくは好きにさせといていいんじゃないの」

亜美「そだね」

亜美「それにしてもいおりん、ずいぶん兄ちゃんにそっけなかったじゃんよ」

律子「一度もプロデューサーって呼んであげなかったわね」

伊織「ふん、まだ事務仕事しかできないじゃないの。しばらくは『あんた』で十分よ!」

伊織「それに…、なんでそれを律子が知っているのかしら?」

律子「プロデューサーがまた何かに巻き込まれたらいやでしょ? だからよ」

伊織「……ふん」

亜美「りっちゃんそれじゃあストーカーっぽいよ?」

律子「害はないわ」

――

P「あ”~今日ってホントに寒いですねぇ。外に出たくなりませんよ」

小鳥「ふふ、そうですね」

P「そういや、今日は真や雪歩にやよい、真美、それに春香はどうしたんですか?」

小鳥「今日はお休みですよ、人出が足りないので、少し休みが多くなりました」

小鳥「それでも事務所の利益は潤沢ですよ、これもプロデューサーさんが一年間頑張ってくれたおかげです!」

P「あはは、皆の頑張りのおかげですよ。後の一年はどうでしたか?」

小鳥「お仕事は結構減らしましたね。それでも、みんな流石有名アイドルって感じで、しっかりと頑張ってくれてましたよ」

P「そうですか! いやあ、俺も嬉しいですよ」

小鳥「……最初に私と社長が言ったこと、ちゃんと頭にとどめておいてくださいね」

P「はい、さっきの一連で、少し違和感を覚えました」

小鳥「ま、何もないとは思いたいです。あの子たち、みんな根は良い子ですから」

P「そうですね」

小鳥「ところで、仕事が終わったら飲みに行きませんか?」

P「おごってもらえるのなら。財布の中少ないし血だらけなんですよ、すいません。後で返しますから」

小鳥「任せてください! 独身の蓄えをなめないでくださいよ……うぅ」

P「そのうち良い人が見つかりますって」

小鳥「無責任なことを言わないで下さいよ、もう」

P「ははは、すいません」

小鳥「………」

P「…すいません」

小鳥「謝らないでください、気にしていませんから」

P「はい……」

小鳥「もうすぐ貴音ちゃんに響ちゃん、それに美希ちゃんが帰ってきますね」

P「そうですね、千早は少し遅くなりますかね?」

小鳥「恐らくは。千早ちゃんは歌に熱心ですからね。この一年は一段と、でしたよ」

P「一年経った千早の歌、是非聞いてみたいですよ」

小鳥「きっと驚きますよ」

美希「今戻ったの! ハニーただいま!」ダキッ

P「お、おう、勢いが良いな」

貴音「ただいま戻りました」

響「……」

P「三人ともお疲れ様」

P「響? どうした?」

響「え? いや何でもないぞ、ボーッとしてただけさー」

P「そうか」

貴音「ではわたくしはお先に失礼します」

響「あ、自分も」

P「お疲れ様」

貴音「ええ、また明日お会いしましょう」

響「それじゃな! また明日」

美希「ねぇハニー?」

P「どうした?」

美希「あはっ☆ 二度目はなかったね、悔しい?」

P「はは、そうだな。好きで轢かれてるわけじゃないんだがなあ」

美希「ミキのときはあんなにケロッとしてたのに」

P「まあ打ちどころが良かったんだろうな」

美希「じゃあ、二度目は打ち所が悪かったの?」

P「そうだろうな」

美希「痛く、なかった?」

P「あっというまだったからな」

美希「実を言うとね、ミキ、あんまり憶えてないの。ハニーが病院運ばれて、それからのこと」

P「そうか、無理に思い出さなくても良いんじゃないか?」

美希「そうだね、ハニーはこうして生きてるの」ギュッ

P「……そうだな」

美希「もう離すつもりはないの」ギュウッ

P「はは…、勘弁してくれ」

美希「あ、そうだ。ミキもう十六だよ?」

P「お、おう」

美希「期待してるからね!」

美希「じゃあねハニー! 小鳥も、また明日」

P「お疲れ様」

P「どうしよう……」

小鳥「大変ですねぇ」

P「あはは…」

――

千早「それでは失礼します」

P「おう、気をつけて帰れよ」

千早「ふふっ、プロデューサーこそ気を付けてくださいね」

バタン

小鳥「それでは、ちゃっちゃと仕事終わらせて飲みに行きましょうか」

小鳥「うへへ、プロデューサーさぁん。おんぶしてくださいよ~」

P「しっかりしてください、音無さん」

小鳥「あ”~、なんかプロデューサーさんがいっぱいいますよぉ? 一人もらっていいですかあ?」

P「音無さん大丈夫ですか?」

小鳥「私は大丈夫ですよ! 何言ってるんですかぁ?」

小鳥「でもなんだか足に力が…、景色がぐるぐる回ってますねぇ~、うぉぇ」

P「まったく、ほら早く立ってください。帰りますよ」

小鳥「おぶってくださいよぉ~、あ! まさか…ここに私を一人置いていくつもりですね!?」

小鳥「私乱暴されちゃいますよぉ~、スマート本みたいなことになっちゃいますよお~」

小鳥「それとも……、私にそんな魅力はないから安心しろってことですか!?」

小鳥「ほぼ三十路の独身なんて需要ねぇよってことですか!? ひどい! この薄情者!!」

P「ほら、おんぶしますから」

小鳥「それでいいんですよ! うへへぇ……うぉぇぇえ」

P「吐かないでくださいね」

小鳥「何言ってるんですか、私はまだまだ大丈夫ですよ!」

P「そうですね…、道案内頼みますよ」

貴音「すまーと、薄いという意味ですね」

響「そうだぞ! 良く知ってたな貴音」

貴音「以前響に教えてもらいましたから」

響「そっか、自分教えるのも完璧だからな!」

貴音「まことに、響は完璧ですよ」

響「そうだな! えへへ」

P「二人とも……こんな時間にどうした?」

貴音「らあめんを少々」

響「貴音の付き添い、少し食べ過ぎたよ…」

響「それにしても偶然だな!」

貴音「まこと、奇妙な縁でございますね」

P「そうだな。俺は小鳥さんを家まで運ぶから、お前らはちゃんと家に帰れよ、今日は寒いから風邪ひくぞ」

貴音「ご心配ありがとうございます」

響「プロデューサーも送り狼になっちゃだめだぞ!」

小鳥「それこそスマート本のごとき展開ですね! 大丈夫よ響ちゃん、私とくんずほぐれつしちゃってもプロデューサーさんは責任取ってくれるらしいから!」

ドンガラガッシャーン

P「ん?」(なんだ今の音…)

響「え、そうなのか……? ねぇ、冗談だよね?」

貴音「……痴れ者」

P「い、いや、酔っ払いの妄言だよ、気にしないでくれ」

貴音「安心いたしました」

響「そ、そっか、少しびっくりしたぞ。で、送ってからはどうするつもりなんだ?」

P「そのまま帰るよ」

貴音「気をつけてくださいね」

響「そうだぞ!」

P「あ、ああ、分かってるよ。それじゃな」

小鳥「あ~もう家ですかぁ?」

P「そうですよ、鍵貸してください」
 
ガチャ

P「じゃあ温かくして寝てください、俺帰りますね」

ガシ

小鳥「待ってくださいよぉプロデューサーさあん」

P「はあ、どうしたんです……うぉあ!?」バタン

小鳥「あったかいですね~」ギュウウ

P「ちょ、どこにこんな力が余ってたんですか」

小鳥「あったかいなあ~、生きている人の温もりです!」

小鳥「プロデューサーさんは今生きてるんですね、ホントに生きていられるんですね」ギュウウウ

P「……音無さん?」

小鳥「死んだ人というのは冷たいんですよお?」

小鳥「本当に冷たくて、動かない」

小鳥「あの日ですね、警察の人から連絡が来たんですよ」

小鳥「765プロのプロデューサーがはねられて、近くにいるアイドルが恐慌状態に陥っているって」

小鳥「急いで私と社長はそこに向かいました」

小鳥「駆けつけると手を真っ赤にした千早ちゃんが錯乱していて」

小鳥「彼女の足元は血だまり」

小鳥「私と社長は急いで千早ちゃんを保護しました」

小鳥「迂闊でした、興味本位か不安な気配を感じたのか、春香ちゃんもついてきてしまっていて」

小鳥「立ち止まってただ呆然と…、なので春香ちゃんも一緒に事務所に連れて帰りました」

小鳥「それから慌ただしくてですね、悲しむ暇もありませんでしたよ。いまいち実感も湧きませんし」

小鳥「私と社長でお通夜に訪問させて頂いたときにですね、私プロデューサーさんに触れさせてもらう機会を頂いたんですよ!」

小鳥「人の体とはとても思えませんでした。何かもっと無機質なものを触っているかのような、冷たくて硬い、感触でした」

小鳥「そしたらですね、ふと思ったんです」

小鳥「あ~もうプロデューサーさんと飲みに行って何ともない愚痴を言い合ったり、私の妄想を聞いてもらったりするのはお終いなんだなって」

小鳥「そしたら私、なんだか涙が止ま…らなく……なっちゃいまして、…傍から見てきっと不思議な光景でしたよね」

小鳥「故人の同僚でしかない人がお通夜で号泣しているんですから」

P「音無さん……」

小鳥「それから季節も一巡して、一人欠けたもののそれ以外はいつも通りの765プロに戻りつつあったんです」

小鳥「そしたら、プロデューサーさんがひょっこりと事務所を訪ねてきたんですよ!」

小鳥「驚きました、本当にさっきまで実感が湧かなかったんですから!」

小鳥「だけどさっき抱きついてみてですね、あったかいなあって思ったんですよ」

小鳥「温かい……なあって、生きているんだなあって」ギュウッ

小鳥「本当に……生きて…いらしたんです……ね、う……うぅ」グスッ

P「はい……」

小鳥「うぅ……うぇ……うぅぉえ”ぇええぇ」

P「!?」

小鳥「う”ぇ~頭痛いぃ、昨日はすいませんプロデューサーさん」

P「はは…大丈夫ですよ。俺こそすいません。結局あのまま眠ってしまって」

小鳥「二人揃って遅刻ですもんね…」

ガチャ

P「おはよう律子、すまん」

小鳥「すいません律子さん……」

律子「はあ……いい大人が二人揃って遅刻ですか…、まあいいですよ。次からは気を付けてくださいね」

P「はい……」

律子「ところでプロデューサー殿♪」

P「な、なんだ」

律子「ゆうべはおたのしみでしたね」

P「え?」

律子「響と貴音、それに春香が言っていましたよ、昨日小鳥さんと飲みに行ったらしいじゃないですか。まったく、次の日は仕事なんだからそこらへん考えてくださいね?」

律子「それに……私もお酒が飲める年齢なんですよ?」

P「はは、そうだったな。今度あずささんたちも誘って行くか?」

律子「はい! 行きましょうね、約束ですよ?」

P「おう」

小鳥「春香ちゃん……会いましたっけ?」

P「き、きっと遠目に見たとかじゃないですか」

小鳥「そ、そうですね」

やよい「おはようございます! 小鳥さん、プロデューサー」

P「おはようやよい」

小鳥「おはよう、やよいちゃん」

やよい「……」

P「どうした?」

やよい「あ、あの、本当にプロデューサー…なんですよね?」

P「おお、本当に俺だよ」

やよい「うっうー! なら久しぶりにあれをしませんか?」

P「おう」

やよい「いきますよー! ハイ、ターッチ!」

パチン

やよい「いぇい! えへへ、久しぶりにプロデューサーとハイタッチできました!」

P「そうだな!」

やよい「それでですね、あの、いきなりで悪いんですけども」

P「なんだ?」

やよい「今日もやし祭りの日なんです。だからプロデューサーにも来てほしいかなーって、伊織ちゃんも来てくれるって言ってます!」

P「おお分かった、行くよ」

やよい「そうですか! うっうー! ありがとうございます!!」

やよい「それじゃ、レッスン行ってきますね!」

P「行ってらっしゃい」

響「……」クンクン

P「ど、どうした響?」

響「プロデューサー何だか酸っぱいにおいがするぞ」

響「それにぴよ子のにおいも、昨日はあの後ちゃんと家に帰ったのか?」

P「あ、あの後は酔っ払いの介抱してたんだ。そしたら俺もいつのまにか眠ってしまったんだよ」

律子「ま、二人一緒だった時点で何となく予想できましたけどね」

響「うわーん! やっぱり狼だぞ! この変態プロデューサー!」

P「い、いや何もしていない、俺は何もしていない! ですよね音無さん?」

小鳥「はい……」ポッ

P「!?」

響「嘘つきプロデューサー! この送り狼! もう今度からウル蔵、いや、ウル助って呼んでやるぞ!!」

P「ウル助!?」

響「そうさ!! 自分が一生面倒みるぞ、ずっと飼ってやる、もう悪さしないようにな!」

P「じょ、冗談きついぞ響」

響「冗談じゃないよ? ずっと飼う、ずっと、ずっとな」ギュッ

響「野良犬みたいにうろついてどっかでまた轢かれたら嫌だからな、だからずっとそばに置いておくことに決めたんだ」

美希「冗談きついの、ハニーはミキと結婚するんだよ?」

律子「はいはい結婚結婚」

美希「嘘じゃないの! 本当なんだよ律子!………さん」

律子「はいはい」

貴音「響、落ち着きなさい。プロデューサーに迷惑ですよ」

響「あ……ごめんプロデューサー……。ちょっと熱くなりすぎてた」

P「あ、ああ落ち着いたなら良いんだ」

貴音「では、私たちは行くとします」

響「行ってくる」

響「…………………諦めないからな」

P「い、いや驚いた」

律子「あはは、まあ久しぶりに会えましたからね。言いたいことも沢山あるんでしょ。ま、頑張ってくださいプロデューサー殿♪」

P「ああ…そうだな」

律子「それで、いつごろから復帰できそうですか?」

P「近日中には。それまでは一人できついだろうけど、すまん」

律子「あはは、大丈夫ですよ。これまでも、私や小鳥さん、時々社長の頑張りだけでも意外と破綻だけは免れましたから。それに、前向きな姿勢になってくれたあの子たちの頑張りも加わって…本当に助かりましたよ」

P「そうか…」

律子「でも、もしプロデューサーの復帰よりも早く社長が誰かピーンとくる人を連れてきたら、プロデューサーはお役御免になるかもしれませんね」

P「そ、それはまあ仕方ないかもしれないけど……凹む」

律子「大丈夫ですよ! もしそうなっても私があの、や、養ってあげますから!」

P「あはは、もしクビになったらな、是非頼むよ」

律子「え!? は、はい! 任せてください!」

律子「そ、それでですね、あ、あの私、社長に掛け合って765の子会社として事務所設立しようかなって思ってるんですよ。だから、もしよければプロデューサーに」

律子「経営者として引っ張ってほしいかなぁって、あ、あはは、まあ現状の諸々が片付いた後になるんですがね」

美希「そんなことってないの律子! ハニーはミキのものなの!」

律子「落ち着きなさい凸助、まだ、ただの案でしかないわよ」

美希「そうなの?」

律子「そうよ」

美希「ならいいの」

律子「まったく」

美希「でもハニーはミキと結婚するからね、律子、さんもジュウジュウ承知しとくの!」

美希「ハニーは早くミキと一緒になればいいって思うな」

律子「別に婚期が迫っているわけでもないでしょ、なんでそんなに焦る必要があるのよ……」

小鳥「確かに」

美希「なんだかみんな独り占めしようとしてる気がするの、なんとなくだけどそんな気がするよ」

律子「……気のせいでしょ」

美希「不安なの」

律子「…大丈夫よ」

律子「はあ……」

P「大変だな」

律子「また他人ごとみたいに……」

P「あはは」

律子「はあ……、まあ考えておいてくださいね、さっきのこと」

P「ああ、分かった」

P「……」スク

律子「…どこに行くんですか?」

P「え? あ、ああ、ちょっとトイレにな、腹が痛くてうんk「早く行ってください!!」」

P「分かったよ」

ガチャ

律子「……………………どうやったらプロデューサーはクビになるのかしら……はは、無理よねそんなこと……はあ…」

律子「でも……い……」

小鳥「い?」

律子「言えたぁ♪ やっと言うことができましたよ小鳥さん!」

律子「断られるかもしれないのが怖くてずっと延ばし延ばしだったんですよ。そしたらプロデューサー」

律子「死んじゃいましたから。あんなにいきなり、あっさりと」

律子「でも今度こそ言えたんです♪ 言えました。私の新しい夢の出発点、そこにプロデューサーと一緒に立てるかもしれないんですよ?」

律子「嬉しくないわけがないですよね♪」

律子「でもどうしよっかなぁ……悩みますね…」

小鳥「あ、あはは、そうですね」

律子「プロデューサーと他の子を二人きりにするのって危ない気がします。事務所の中ではお互いに注意したりはしますけど、一対一になったらあの子たち正直何をしでかすか分かりませんから」

律子「あの子たちがやっと立ち直れたと思ったのに、そんな時期にプロデューサーがひょっこり戻ってくるんですから。はあ……」

律子「でもまたやり直しができるんですよ、小鳥さん」

小鳥「確かに…そうですね」

律子「プロデューサーに言いたかったこと、何も言えませんでしたから」

律子「この機会も、プロデューサーも、もう逃すわけにはいきませんよね♪」

小鳥「あはは…」(どうしようかしら……)

真「まっこまっこりーん♪」キャピッ

P「」

真「どうですか!? プロデューサー! いやーこの一年でボクのセンスもずいぶんいいかんじになりましたよね?」

雪歩「ま、真ちゃんプロデューサー困惑しちゃってるよぉ」

P「あ、ああ」

真「プロデューサーが生き返ったって聞いて一段と気合入れてきたんですよ!」

雪歩「だ、だから…プロデューサー、何とかしてくださいぃ」

真「どうですか? ボクかわいいですか、プロデューサー?」

P「ああ、真、とてもかわいいよ。いやホントに驚いた。お姫様役だってできるかもしれないな」

真「やーりぃ! どう雪歩? ついにボク、プロデューサーに認められたよ! プロデューサーのお姫様はボクなんだってさ!」

雪歩「あ、うん、そうだね…」

雪歩「でも、プロデューサー……、うぅ、良かったですぅ。あんな、何も言えないうちにお別れなんてホントに悲しかったんですよぉ」

真「そうですよ、プロデューサー」

P「そうだな、ごめん」

雪歩「だけどどうして生き返ることができたんでしょうね?」

P「不思議だよなあ」

雪歩「なんででしょうねぇ」

P「いきなり土くれになっちゃったりしてな、こう風に吹かれてさらさらーって塵になったり」

雪歩「え……いや…そんなのいやです! なんでまた別れないといけないんですか…せっかく会えたのにぃ………」

P「ほ、ほらただの冗談だよ。すまん雪歩」

真「考えすぎだよ雪歩。ほら、プロデューサーはもうどこにも行ったりしないよ! ですよね? ずっとボクたちと一緒にいますよね?」

P「そ、そうだぞ! 大丈夫だ、大丈夫」

雪歩「うぅ……ごめんなさいぃ……、どうしても不安なんです……」

雪歩「だっておかしいじゃないですか! 確かに私たちはプロデューサーとお別れしたんですよ!?」

雪歩「なのにこうやってプロデューサーは生きている。おかしいじゃないですか」

雪歩「みんな特に疑問を持たずに受け入れているんですよ!?」

雪歩「こうやって目の前にいるプロデューサーが、またいなくなったりしないのか誰も不安にならないのかなぁ? 真ちゃんも不安にならない?」

真「……うーん、まあなるけどさ」

雪歩「私はそんなの嫌ですよ。絶対に嫌です。そんなこと絶対にさせません!!」

雪歩「うぅ……ふぇ…」

P「雪歩落ち着け。俺はどこにも行ったりしないから。お前らのプロデューサーとして責任持って一緒にいるからな」

真「ホントですか! ずっとですか?」

P「ああ!」

真「へへっ、やーりぃ!! ほら雪歩、プロデューサーもずっといてくれるって言ってるよ、落ち着きなって」

雪歩「ごめんなさいぃ……私またパニックになって…うぅ、穴掘って埋まってますぅ!」

P「雪歩! 落ち着けって」

雪歩「あ……そうだプロデューサー」

P「なんだ?」

雪歩「穴の中には車は来ませんよ?」

P「そ、そうだな」

雪歩「轢かれたりすることはないですぅ」

P「まあ、た、確かにな」

雪歩「魅力的じゃないですかぁ?」

P「なんか寒そうかなーって」

雪歩「そうですかぁ…すいません変なことを聞いて」

P「い、いや気にしなくていいよ」

――

真「土葬でもするつもり? 雪歩」

雪歩「そんなことないよ、真ちゃん。ただどこにいれば私のプロデューサーは安全かなあって思って」

真「765プロに決まってるじゃないか! ここは安全だよ。車だって突っ込んで来ないだろうし、通り魔なんかもいないよ。プロデューサーはここにずっといたらいいんだ」

雪歩「うーん……そうかなあ」

真「そうだよ」

――

P「でもみんな元気そうで良かったですよ、ただ雪歩がちょっと心配しすぎのように思えますね」

小鳥「あはは……そうですね。千早ちゃんや雪歩ちゃんはひどくショックを受けていたように思えましたから」

P「他はみんないつも通りで、響…はあいつなりの冗談だったんでしょうか?」

小鳥「うーん、私にはちょっと……」

ガチャ

春香「ただいま戻りましたー!」

P「お疲れ様、みんな」

千早「お疲れ様ですプロデューサー」

真美「あー! 兄ちゃん久しぶり! 生き返ったってホントーだったんだね!」

真美「もーメッチャ泣いたんだよ? 真美も亜美もさー」

真美「こんなプリチーなアイドル泣かせるとか兄ちゃんも罪な男ですなー」

P「あはは、悪い。でもこの通り、生き返ったぞ!」

真美「うん……!」

真美「こりゃ兄ちゃんは責任とって真美と亜美をお嫁さんにしなきゃね!」

P「あはは…捕まっちゃうよ」

真美「真美はいつまでも待てるよ? 兄ちゃんがまたいなくなったりしなきゃいいだけっしょ?」

真美「真美と亜美で半分こ、だよ!」

P「そ、そうだな」

春香「ほら真美、プロデューサーさんが困ってるよ。駄目だよ、もう」

真美「むーはるるん…分かったよ」

春香「プロデューサーさん! 私クッキー焼いてきたんですよ、クッキー」

春香「甘いものってご無沙汰じゃなかったですか?」

春香「ぜひ食べてください! あ、この一枚なんか私の自信作ですよ、どうぞ」

P「おお! ありがとう春香」モソッ

P「この赤いのはいちご味なのか。うまいな!」

春香「はい」

P(……あれ? ちょっと鉄っぽい? まあいいか)

春香「それでですね、昨日小鳥さんと何してたんですか?」

P「あ、き、昨日はちょっと音無さんと飲みに行ってたんだよ」

春香「そうだったんですか…、私昨日千早ちゃんの家に泊まってたんですよ。散歩してたら偶然お二人を見かけました」

春香「あはは、二人でどこかのお家に入ってたから、ちょっと驚いちゃって」

春香「で、ずっと抱き合ってたんですか?」

真美「おやおやー、早速真美たちをほっといて浮気ですかー? これはちょっと信じられませんなー……なんで?」

千早「……ふふふ、落ち着きなさい二人とも、ふふっ」

P「い、いや何もしてないぞ! 本当だ。小鳥さんがもどしちゃってその介抱をしてたんだ」

春香「『小鳥さん』? ずいぶん仲よさそうですね、むぅ」

千早「まあ、いいじゃない春香。何もなかったってプロデューサーも言ってるでしょう?」

春香「なんか納得いかないなぁ」

千早「ほら、落ち込まないで。生きているだけで可能性なんてたくさんあるわよ」

春香「うん、そうだね!」

真美「ま、兄ちゃんたらしだから仕方ないかー。今は765プロにいてくれたら、真美はそれでいいよ。もういなくならないでね?」

P「おう、ま、任せてくれ」

千早「ところでプロデューサー」

P「なんだ?」

千早「あの、ちょっと相談したいことが……、今日家に来てくれませんか?」

P「事務所じゃ話せないことなのか?」

千早「はい。今後の方針について何ですが…」

P「そうか。でも今日は他の用事があるんだ。明日で良いか?」

千早「はい、私はいつでも構いませんから」

P「そっか、じゃあ明日な」

千早「はい! ふふっ……よく話し合いましょうね」

千早「私たちの今後を」ボソッ

P(聞こえちゃったよ…、アイドル活動についてだよな)

春香「私お先しますね!」

P「おお、お疲れ様」

春香「はい! お疲れ様ですプロデューサーさん! また明日」

ガチャリ、バタン

さるよけ

P「春香、珍しく早いな。いつもは結構遅くまでいるんだけど」

千早「用事があるそうです」

P「へぇ、どんな用事なんだ?」

千早「リボンを買い占めてくるって言ってましたよ」

P「え? なんで?」

千早「さあ? 私もよく分かりません」

P「不思議なことをするもんだな」

千早「何かシンパシーでも感じるところがあるのかもしれませんね」

P「そんなもんなのか…、ますます不思議だ」

貴音「しんぱしー…」

響「共感、共鳴、だな。春香はリボンと共鳴しているのか?」

貴音「どうでしょうか? 奇特なものですね、春香も」

響「何だかわからなくなってきたぞ…春香って……一体…?」

響「ん?……」クン

響「……」クンクン

P「ど、どうした? 響?」

響「プロデューサー、今度は甘いにおいがする、それに口から春香のにおいがすごくするぞ! まさか……!」

響「またか!? またなのかウル助!?」

P「いや違うって、何もしてない。安心してくれ響」

響「うわーん!! この甲斐性なし!! やっぱり自分が飼うさ、迷惑ばっかりかけるプロデューサーは、自分が一生面倒見てやる!!」

P「響、落ち着け」

貴音「落ち着きなさい響! 今迷惑をかけているのはあなたなのですよ」

響「いやだぞ!!! 自分が飼う、ずっと一緒なんだ!! なんで駄目なんだよ!!!」

P「響!!」

響「」ビクッ

響「え……?」

響「う…うぁ…あ、ご、ごめん…なさいプロデューサー……、また自分…つい…うぅ…うぇぇ…グスッ…」

響「でも……でも…! やっぱり…グスッ……諦めきれないぞ。プロデューサーはあんなにあっさりと死んじゃったんだよ!? 猫みたいに……勝手にいなくなっちゃったんだぞ…」

響「…グスッ…いやだぞ…もうヤだよ! だから、傍に置いて自分が面倒をずっと見るって決めたんだ…決めたんだぞ!! 安全なところにずっと居てもらうんだ……う、うぅ…
…それが……それが! …なんで駄目なんだよぉ……グスッ…」

貴音「響、プロデューサーはもう決してどこかに行ったりはしませんよ。そうですよね、あなた様?」

P「ああ、そうだぞ響。悪かったな怒鳴ったりして」

貴音「響、プロデューサーもわたくしたちと居てくれると仰っていますよ」

P「そして、すまなかったな」ギュウッ

響「!?」

貴音「……」

千早「…ふふっ♪」

真美「……兄ちゃん」

P「辛かったんだな。本当にごめん」

響「う、うぅう…ヒック…そうだぞ! もう勝手にどこかに行ったりしないよね…?」ギュウウウ

P「ああ、行かないよ」

響「……分かった…ごめん、みんな」

響「あ、そうだ、プロデューサー…」チュッ

P「!?」

貴音「!?」

千早「……」

真美「……」ギリッ

響「あの、か、かなさんどー」

響「自分…ずっとこれを言いたかったんだぞ…、プロデューサー、…分かってくれた?」

P「お、おう…分かったよ!」

響「そうか!? 分かってくれたのか!? やった……じぶ、んすごく…うれしい……ぞ…」グスッ

P「ほ、ほら泣かない、泣かない」ギュッ

響「あ、も、もう大丈夫だぞ、…離していいよ」

P「そ、そうか悪い」

P「……」

P(…響、意外とあるんだな…………)

真美「顔、にやけてるよ?」

P「そ、そうか」

真美「……」

P(……その目、すごく怖いかなーって)

千早「……ふふっ♪」

P(千早、笑ってるのか? それもそれで怖いなあ)

――

やよい「うっうー! それではもやし祭り、始めましょー!」

P「そうだな!」

伊織「そうね」

――

みんな健気じゃないか(白目)

P「今日はごちそうさま、ありがとうなやよい」

やよい「えへへーどういたしまして!」

P「それじゃあ俺はもう帰るよ。伊織は迎えが来るのか?」

伊織「あんた帰る家なんてあったの? 住んでたところはもう引き払われてたって聞いたけど」

P「ああ、事務所に泊まるよ」

伊織「…可哀そう……」

P「い、今まで何度かあったけど、意外と暖かいんだぞ? 伊織」

やよい「あれ? 昨日は小鳥さんの家に泊まったって聞きましたよー」

P「流れでな、そうなっちゃった」

伊織「……変態」

やよい「じゃあ今日は私の家に泊まっていったらいいかなーって」

P「い、いや大丈夫だよ。これ以上迷惑かけるわけにもいかないし、俺は事務所に戻るよ、あはは…」

やよい「……駄目ですかぁ?」

P「ほ、ほらプロデューサー捕まっちゃうかなーって」

伊織「大丈夫よ、どうせあんたいつか捕まるだろうし」

P「い、伊織。そんなことになったら、俺のクビが飛んじゃう」

伊織「………律子が喜ぶわね」ボソ

伊織「それに」

伊織「もう響とキスしたんでしょ? 余罪は多そうね」

やよい「えー! そうなんですか?」

P「そ、そうだな。い、意外と柔らかかったぞ」

伊織「は?」

やよい「ちょっと何言ってるのか分からないかなーって、本当に何を言ってるんですかぁ?」

P「す、すまん。妙なこと言ったな」

やよい「もう、駄目ですよ? お兄ちゃん?」

P「そうだな悪い、あ、あはは…」

伊織「いいじゃないの、クビが飛んでも、捕まっても……死ぬよりましよ」

伊織「それに、もし社会的に終わったら、私が保護するわ。いいでしょ? 可哀そうなプロデューサー、…にひひっ♪」

P「あはは、いや、あまり皆に迷惑をかけられないよ。それに、もう社会的には死人だし」
伊織「そうね。あんたが今更どうなろうが、何も影響はないのよね……」
やよい「私のところでも良いですよ? 一人増えても何とか……なります!」

伊織「無理しないでいいのよ? やよい」

やよい「伊織ちゃん…私は大丈夫だよ!」

やよい「それでプロデューサー…泊まっていきますか?」

伊織「腹をくくりなさい、あんたが何もしなければいいのよ、にひひ♪」

やよい「ぷろでゅうさあ……」

P「ぐ……、分かった。分かった! 俺も暖かい布団で眠りたかったんだ」

やよい「そうですか!! ならすぐ準備しますね!」

P「あ、ああ頼んだ」

P「……ふぅ」

P「もし手なんか出してしまったら、もう首くくるしかないかぁ」ボソ

伊織「あんた……」

P「…今の聞いてた?」

伊織「次にそんなふざけたこと言ったら、通報したうえでどこかの研究機関に検体として送るわよ?」

P「はい…すいませんでした…」

伊織「ふんっ」

長介「じゃあ、姉ちゃんたち、それに義兄ちゃんも、おやすみ!」

かすみ「おやすみなさい」

やよい「おやすみ」

伊織「おやすみ」

P「あれ? 何か…」

やよい「何でもないですよ?」

P「そ、そうか。おやすみ」

――

P(両腕が重い…、金縛り?)

ノソリ

P(! 右腕と左腕に人影が…一つずつ? 動けない……、やべ、怖)

伊織「にひひ♪」ギュッ

P「伊織!?」

伊織「大きな声出さないでよ…やよいが起きちゃうじゃないの…」

P「そ、そうか…すまん」

やよい「大丈夫ですよぉ…起きていませんから……お兄ちゃん…」ギュッ

P「あ、そ、そうなのか。それは良かった…」

伊織「……」スリスリ

P(なんでデコを…猫の真似か?)

伊織「あんたは私のものよ……勝手にいなくなるなんて絶対に許さない…」スリスリ

伊織「響にも分かってもらわなきゃね…、あの子は鼻が良いから…すぐ気付くでしょ」スリスリ

P(伊織…?)

伊織「ねぇあんた?」

P「な、なんだ」

伊織「『何か』あっても、『何も』なかったって言えばいいのよ?」

P「!?」

伊織「やよいも、私も口裏を合わせるわよ? そうすればクビは飛ばないじゃない」

伊織(ま、律子にはばれるでしょうけどね。だけどその時にはもうプロデューサーは私のものよ)

伊織「どう?」

P「悪いが無理だ」

伊織「そう、そこまできっぱり断られると何も言えないわ。にひひ♪」

伊織「どうせ、プロデューサーだからとかなんとか、しょうもないことを言うんでしょ?」

P「ああ、そうだ」

伊織「もとから期待してなかったわよ、あんたには無理だって分かってたわ」

P「からかったのか?」

伊織「さあどうでしょうね、にひひ♪」

伊織「でもね…」

貴音が生き返らせたんだろ(白目)

伊織「あんたが誰と一緒になろうと、あんたは私のものよ…絶対に…そうよ」

伊織「だから…………もう…勝手に…死んだり…しないでよ……どこにも……行かないでよぉ………うぅっ…ふぇ……」グスッ

伊織「私がどんなに……寂しかったか…あんたには分からないでしょ……グスッ」ギュウウッ

伊織「やよいだって……みんなだって……どんなに辛かったか……あんたなんかに……絶対分かるわけないじゃない……グスッ……うぅ…」

やよい「伊織ちゃん……」

P「ああ……すまん。それしか言えないけど、本当にすまん…。俺は馬鹿だ…、迷惑しかかけてない」

伊織「そうね…馬鹿プロデューサー、あんたは迷惑ばっかりかけてるわ」グス

伊織「にひひ♪ でも別にいいわよ。私、たちの前からもういなくならないと約束すればね」

P「約束する」

伊織「ま、今はそれでいいわよ、私のプロデューサー…」

やよい「伊織ちゃん…独り占めは駄目だよ? そうだよね? お兄ちゃん?」

P「プ、プロデューサーは…み、みんなのものかなーって、プロデューサーは思うよっ」

伊織「分かってるわよ、私は、ね」

伊織「納得しないのが何人かいるでしょうけどね」

やよい「…さー、もうひと眠りしましょー」

P「そうだな、お休み」

P「……」

P(腕…痺れるだろうなあ…)

――

千早「………」

P『あ~寒いなあぁ。息が白いよ、まだ昼なのに』

千早『ふふっ、そうですね。あの、だったら……』

P『だったら?』

千早『い、いえ。なんでもないです』

P『そっか』

千早(手をつなぎませんか? って言えたら……、…でもやっぱり恥ずかしい…)

P『…ついさっき言ったことは、千早の本心なんだな?』

千早『はい。活動の場を海外に移したい、これはまぎれもない私の本心です。もっと多くの人に私の歌を聞いてもらいたい、そしてもっといろいろなことを学びたいと思っています』

千早『そして、プロデューサーに、是非ついてきてもらいたいんです』

千早『お願い……です。……私…もうプロデューサーのいない生活なんて…ありえませんから』

P『あはは、そこまで信頼してもらったら、プロデューサー冥利に尽きるよ。これは応えないわけにもいかないな! 今度社長に掛け合ってみるよ』

千早『ホントですか!? ありがとう……ございます…!』

P『ああ、任せろ! プロデューサーとして全力を尽くすよ』

千早『…はい!! プロデューサーがいてくれれば、私はとても心強いです! だって私の全てを分かってくれている方ですから…』

P『あはは、そうだな。頑張ろう、二人で』

千早『はい!』

千早『………っ…』フラッ

千早(っ………。安心したからかしら? 私、相当不安だったのね)

千早(でも……もう…ふふっ)

P『あれ?』クルッ

P『? どうした? 千早』

千早『あっ、い、いえ、ちょっと…でも大丈夫です。なんとも…!?』

千早『なに!? !?…え? え!?』

千早『プロデューサー!? しっかりしてください! プロデューサー!!!』ヌチャッ

千早『あ……あ……あぁ…………うぁ……………ぁ…………』

千早「………」

千早「………?」

千早「……あ、指輪。プロデューサーが買ってくれた…」

スッ

千早「………買って…くれた……」

千早「………」ギュッ

千早「……ふふっ…」

――

お前がこええよ

P「おはよう律子、音無さん」

小鳥「おはようございます」

律子「…おはようございます、プロデューサー」

ガバッ

P「ぬぁ!?」

?「兄ちゃん! だーれだ?」

?「んっふっふ~、今目隠ししてるのは、亜美と真美のどっちでしょーか?」

P(この声は……真美? いや、待てそう思わせて亜美の声真似かも? あれ? この柔らかさは………? よし!)

P「亜美だな! 当たりだろ? 今目隠ししているのは亜美だ!」

亜美「残念だったね→」

真美「あちゃーミスっちゃったね。正解は→」

春香「天海でした!!」

P「そ、そうか…。ずるくないか?」

春香「ずるくなんかないですよ! プロデューサーさん」

亜美「そうそうずるじゃないよー」

真美「じゃあ次の問題いくね!」

P「え? まだあるのか?」

亜美「昨日やよいっちの家に行って」

真美「いおりんとやよいっちを抱きしめて一晩を明かした」

春香「不届きなプロデューサーさんは一体どこの誰でしょうか!! 答えてくださいね?」

私だ

P「…俺だけど、それがどうかしたのか?」

亜美「うあうあ~! 開き直っちゃったよ、どうしよう真美?」

真美「…どうしよっか亜美?」

P「だってお前らの思っているようなことはしていないからな、ただ添い寝しただけだ」

亜美「うーん、どうやって反省させよっか?」

P「そもそも反省しないといけないのか?」

真美「兄ちゃんは黙ってて」

P「あ、はい…」

亜美「兄ちゃんは亜美のものなんだよ? それを分かってないと駄目っしょ」

真美「え?」

亜美「あ、間違えた。亜美と真美のものなんだよ?」

春香「違いますね! 天海のものですよ!」

亜美「はるるんは黙っててよ」

春香「えー……私とプロデューサーさんは一緒にトップに立とうと約束した仲なのにぃ」

美希「それ美希もなの!」

お前だったのか

亜美「…とにかく、節操なしは駄目っしょー」

真美「駄目だよ?」

P「だから節操ないとk「駄目だよ?」」

P「…そうだな」

真美「まったくもー」

亜美「あんまりうろちょろするとね」ダキッ

P「おぁ!?」

春香「あー!」

真美「ちょっと亜美!?」

亜美「首輪つけちゃうよ? カイゴロシってやつ?」

律子「んー、ちょっと違うんじゃないの? プロデューサーは今の職場で能力を活かし切れてると思うわ、適職よ」

亜美「ま、いいや。とにかく」

響「ウル助に首輪つけるのは自分の役目だぞ!!」

亜美「ひびきんは黙ってて」

亜美「兄ちゃんは亜美のものってこと」

P「……」

美希「聞き捨てならないの! ハニーはミキと結婚するって言ったの」

律子「いつよ? 言質は取ったの?」

響「ゲンチ?」

貴音「口頭での証拠、約束事のことですよ、この場合は婚約の言葉、でしょうか」

響「そっかー、それは信じたくないなー」

貴音「ええ、そうですね。ふふ」

美希「だ、だいぶまえに言ったの! 間違いないんだよ律子!!」

律子「デコ助の言ったことは本当ですか? プロデューサー」

美希「言ったよね? ハニー!!」

P「あ、え、何て? 伊織? 伊織が俺になんか言ったのか? さあ?」

伊織「にひひっ♪」ゲシッ

P「痛いって!!」

美希「ラチがあかねぇの!!!」

真美「違うよ!!!!」

亜美「んーどうしたの真美? そんな大声出しちゃって」

真美「兄ちゃんは真美のものだよ」

亜美「あれー? 亜美のものだよ?」

真美「違うよ亜美」

亜美「半分こにしようって言ったのは真美じゃんか」

真美「独り占めしようとしたのは亜美だよ」

亜美「仕方ないっしょー、半分にしたら、兄ちゃんと楽しめるのも半分になるじゃんか」

真美「んーそうだね。じゃ真美が独り占めするね」

亜美「このままじゃ、亜美と真美は喧嘩になるよ?」

真美「それだけは避けたいんだけどね」

亜美「亜美も」

真美「はー、やっぱ半分こにする?」

亜美「そだね、仕方ないね」

真美「やっぱ亜美と真美はいつもいっしょじゃないとね!」

亜美「うん!」

真美「そういうことで兄ちゃんはもう」

亜美「亜美と真美のものだよ?」

真美「観念しよ? おとなしく真美と一緒にいよーよ!」

亜美「真美?」

真美「あ、やば」

美希「そんなことはどうだっていいの!! どっちにしろ亜美と真美にハニーは渡さないよ?」

春香「まあまあ、皆落ち着きなよ」

春香「ここで争っても何も良いことないよ?」

春香「そんな焦らなくてもプロデューサーさんはもう突然死んじゃったりしないんだから」

春香「そうですよね? プロデューサーさん?」

P「あ、ああそうだな。体にも何の不調もないし、時間が経てばプロデューサーにもまた復帰できそうだ。また前のようにお前らのプロデューサーに戻れるよ」

春香「そうですよね! ほら、みんな、仲直りしよ? 私のプロデューサーさんはものじゃないんだからね!」

亜美「そだね」

春香「だって私たち」

亜美「みんな」

春香、亜美「仲間だもんね!」

春香「あれ? みんなのってくれないよぉ亜美ぃ」

亜美「そういうこともあるよ……元気だしなってはるるん」

律子「はあ~、まあいいわ」

美希「ハニーはミキのなの……絶対そうなの…春香や千早さんたちにとられるなんてやなの……ゼッタイやなの……!」

律子「ほら美希、落ち着きなさい」

美希「分かったの律子さん、あはっ☆」

律子(えらく素直ね……)

真美「兄ちゃん……」

小鳥(これ相当危ない気がするわ…どうしましょう)

――

P「今日は俺千早に呼ばれてるんですよ」

小鳥「そうですか、何かの相談で?」

P「そうです。たぶんアイドル活動についてでしょうね」

小鳥「…連絡用の携帯はちゃんと持ってますよね?」

P「もちろんですよ」

小鳥「しっかり話し合ってくださいね」

P「はい。ま、仕事は終わってますし、俺はお先しますね」

小鳥「はい、お疲れ様です」

ダキッ

P「ぬぅお!?」バタン

美希「駄目なの」

P「美希、どうした? それに、動けないからどいてほしいな」

P「明日にまた会えるだろ、ほら、離して。もう暗くなるぞ。風邪ひくから早く家にかえりなさい」

美希「むー、分からず屋! そんなハニーは、こうなの!!」ガバッ

P「んむぁ!?」

美希「んっ……むぅっ……」

雪歩「あぁあぁぁ、美希ちゃん、それはちょっと大胆すぎるよぉ」

真美「……っ……っ!!」ギリギリ

P(舌が…喋れない…)

美希「ぷはぁっ……どうだったプロデューサーさん?」

P(ん?)

美希「小鳥!」

小鳥「え?」(私?)

美希「目の前の人が死んじゃったときね…」

美希「ミキびっくりしちゃった」

美希「びっくりしすぎて、涙が全然出てこなかったの…」

美希「この一年ね…気付いたら経ってたの、ほんとあっという間ってカンジ」

美希「そしたらそこの人があっさり帰ってきたの」

美希「だからミキまたびっくりしちゃった、一体なんなの?」

小鳥(呼び方がころころ変わって、記憶…混濁してるのかしら?)

美希「ねぇハニー?」

P「何だ?」

美希「もういなくなったりしない?」

P「しないよ」

美希「信用できない言葉だって思うな」

雪歩「わ、私もあんまり信用できません…、あ! うぅ…すいません私また生意気なことを……こんな私は…穴掘ってプロデューサーと埋まってますぅ!!」

真美「……真美だって」

P「そうだな、ははは……」

美希「決めたの」

P「何を?」

美希「一年前の経験を活かそうって思うな。あのときはあっという間だったから、ミキびっくりして何もできなかったけど」

小鳥(あれ? なんか危ない気がする)

美希「今度はそうはいかないの」

美希「閉じ込めたりはしないよ? 春香や響じゃないし」

美希「その代わり、ハニーにどこまでもついて行くの」

美希「ハニーとミキはイチレンタクショウってカンジ!」

美希「でしょっ? ハニー?」ギュウウ

美希「今度またハニーがしにそうになったら、ミキもしぬの。病気のときだって、元気なときだって、ずっと一緒だよ?」

小鳥(ブライダルな言葉ね…)

P「心配しなくても、俺はもう765プロからいなくならない、本当だ」

美希「ふーん。ま、いいの」

美希「戻ってこなかったとしても、ミキがどこまでも追いかけるよ」

美希「もう絶対に離れたりしないの」

美希「ミキはハニーが戻ってきてくれて嬉しいんだよ?」

P「そうか…ありがとう。俺もまたみんなに会えたのが嬉しいよ」

美希「でしょっ? やっぱりハニーはミキの知ってるハニーなの! ……戻ってきてくれたんだね」

美希「……嬉しいの」

P「と、とにかく、俺は千早の家に行くよ」

ガシッ

P「ん?」

雪歩「埋まっていかないんですかぁ?」

P「い、いや遠慮するよ」

雪歩「そうですかぁ……やっぱり私がひんそーだから……ちんちくりんだから……うぅ……プロデューサーは……死んじゃうんだぁ……あ…はは……」

雪歩「……こんなダメダメな私に愛想尽かして……またどこかにいっちゃうんですねぇ…」

雪歩「こんな私は……穴掘って埋まってますぅ……」

P「雪歩。俺はまた帰ってくるよ。ちゃんと帰ってくる」バッ

雪歩「そんなこといったってぇ……帰ってこなかったじゃないですかぁ…ぁ……あ…」

雪歩「あ……いやです」ガシッ

P「戻ってくるから、頼む。離してくれ、分かってくれ雪歩」

雪歩「やですぅ…離しません」

P「頼む。お願いだ。もう俺はお前らを残していったりしないから」

雪歩「そうですか……、そうだ。じゃ、じゃあ…」チュッ

P「……」

雪歩「今はこれで良いですよぉ? でも、もう離しませんから」

真美「…………」ギリギリギリギリ

P「じゃ、じゃあ」

小鳥「みんなは私がなだめますよ。大丈夫です」

P「すいませんお願いします」

小鳥「その代わり、また飲みにいきましょうね?」

P「はい」

ガチャ、バタン

真美「兄ちゃん! 浮気は駄目って言ったじゃん?」

真美「何でするの? ねぇ、なんで真美を置いてけぼりにするの?」

真美「信じられない」

真美「……」

――

千早「あ、プロデューサーどうぞ入ってください」

P「お邪魔します」

千早「どうぞ、ふふっ」

ガチャリ

千早「戸締りは大切ですからね」

P「…そうだな」

春香「実は私もいるんですよ!」

P「おお、春香もいたのか」

千早「ええ、ちょっと相談相手になってもらってたんです」

春香「プロデューサーさん、意外と体つきが良いですね?」

ギュッ

P「…春香、なんで俺にリボンを結びつけているんだ?」

春香「プロデューサーさんって赤色似合いますよね、千早ちゃんもそう思うよね?」ギュッ

千早「ええ、思うわ。春香」

春香「事故に合ったプロデューサーさん」ギュッ

春香「びっくりするほど赤色が似合ってましたよ?」

千早「そうね、ふふっ」

春香「あ!」ギュッ

千早「どうしたの? 春香」

春香「千早ちゃん、私のトレードマークってリボンでしょ」

千早「ええ、そうね」

P「そういえば、そんなこと言ってたな」

春香「こうやって結んでると、何だか私とプロデューサーが結びついているようで…なんか恥ずかしいなあって…」

千早「春香はむっつりね」

春香「別にいやらしいことがしたいわけじゃないんですよ?」ギュッ

春香「私そういうの嫌ですから」

P(胸触るとすごく怒ってたからなあ)

春香「プロデューサーさんよく私にセクハラしましたよね?」

P「そうだな。よく怒られたよ」

春香「あはは、悪いのは全部プロデューサーさんじゃないですか」

千早「私にはめったにしなかったのに…くっ」

春香「みんなプロデューサーさんにもう一度あえて嬉しいんですよ? 分かってますか?」ギュッ

千早「まさか、だものね」

春香「そうだね、まさか…また会えるなんて」

春香「そうだっ!」

春香「あのときのこと話そうよ千早ちゃん!」

千早「そうね、話しましょう」

P「あのときのこと?」

春香「鯨幕っていうんでしたっけ? あれがどこまでも続いていたように見えましたね」

千早「みんなにいつもの色鮮やかさはありませんでした」

春香「黒一色ですよ」

千早「それでもみんなさまになってたわ」

春香「流石アイドル! だったよね」

千早「ええ、そうね。ふふっ」

千早「律子と美希は二人で並んで座っていたわね」

春香「美希はずっと呆然としていましたよ」

千早「律子はずっと美希を気にかけていました」

 
――

美希『…うそなの…いや…ハニー……はにぃぃ……』

律子『落ち着きなさい美希。現実を見なさい』ポロポロ

美希『こんなことってありえないって思うな……律子もそう思うでしょ?』

律子『……そうね……だけど夢じゃないのよ……』ポロポロ

律子『ちゃんとハンカチ持ってるの?』

美希『持ってきてないの…』

律子『はあ、これ使いなさい』ポロポロ

美希『ミキはいいの……律子が使った方がいいって思うな』

律子『なんでよ?』

美希『気付いてないの? ずっと泣いてるよ?』

律子『え?……ああ、本当ね』ポロポロ

――

春香「亜美と真美は隣同士だったね」

千早「あの子たちはいつも一緒だからね、ふふっ」

――

亜美『うぅ…兄ちゃん死んじゃったよ真美ぃ…真美?』

真美『そだね……』

亜美『どったの?』

真美『なんでもないよ…』

亜美『……グスッ…』

真美『………』

――

春香「四条さんと響ちゃんも近くだったね」

千早「ええ、そうね」

――

響『………』グスッ

貴音『………現実とは、非情です。まことに』ウルウル

響『……うぅ…』

貴音『響………』

――

春香「伊織はやよいと一緒だった」

千早「高槻さん…見ていて私も悲しくなったわ…」

――

伊織『……』

やよい『グスッ……伊織ちゃん?』ウルウル

伊織『………』キュッ

やよい『………グスッ…』

――

春香「雪歩に真も」

千早「仲良しコンビね、二人で寄りそっていたわ」

――

雪歩『……あ、あぁ……ぁ…』

真『……うぅっ……グスッ…』グッ

――

春香「あずささん、不思議と喪服が似合ってたなあ」

千早「確かに、一番さまになってたように思うわ」

――

あずさ『……』ウルウル

小鳥『………』

社長『……涙は故人を偲ぶものだからね。抑えるものじゃない』

小鳥『そう…ですね…』

社長『私は涙を流すことのできないでいる子たちが心配でならないよ…とてもね…』

小鳥『……はい…』

社長『しばらく休みにしようと思うが、どうだろう?』

小鳥『…そうしましょう』

――

春香「こうやってプロデューサーさんは見送られました」

P「そうか」

春香「なのにひょっこり戻ってきちゃって…」

千早「私は嬉しいわ」

春香「私だって嬉しいよ」

春香「でも少し可哀そうだね…」

千早「……そうね」

千早「春香」

春香「なに?」

千早「今更だけどカーテンを閉めない?」

春香「そうだね。スクープされたら大変だよ!」

春香「あれ? この場合は芸能? オカルト? どっちかなあ?」

千早「さあ? まあ、なんでもいいことよ」

春香「あはは、確かに」

千早「プロデューサー」
春香「プロデューサーさん♪」

千早「ずっと私の」
春香「ずっと私たちから」

千早「そばにいてくださいね?」
春香「離れないでくださいね?」

P「……分かってる…」

千早「さ、カーテンを閉じて」

春香「オッケー」



シャッ




終わり

これで書き溜め終わりです。
読んでいただきありがとうございました。

翌日

P「おはよう、みんな…」

P「みん、な…?」




とか言う感じでアイドル全員が首吊りしてる展開とかオナシャス

んあー

美希「あの人も、プロデューサーも、ハニーも、ずっと一緒なの。ずっと、ずーっと…」

真「人を呪わば」
雪歩「穴ふたつ」

やよい「あーあ、出来てなかったなー。ショックかも」
伊織「じゃあ、もう一回繰り返しましょ?くるくると、ぐるぐると、ね」

真美「──目の前に石ころがあったらさぁ、端に蹴飛ばしても、誰も怒らないよね」
亜美「へ?」

社長「好奇心は猫をも殺す。君はよく知っていると思ったが」
あずさ「うふふ、知っています。とても」

貴音「響、落ち着いて、よく考えるのです」
響「自分は落ち着いてる!よく考えてるさ!!」
貴音「………現実に、死人が生き返るなんてことが、あり得ると思いますか?」

春香「籠の中の鳥って幸せだなぁ。でも、飛び立とうとしたらどうしよう」
千早「そんなの簡単よ。羽をもげばいいわ。なぜならここには…」
春香「永遠があるんだもんね」

律子「プロデューサー殿。あと、ひとつだけ」
P「なんだ?」
律子「気がついた時、血は乾いていましたか?」
P「そりゃまあ、時間が経てば血も…」
律子「どうも」


小鳥「プロデューサーは二度死ぬ」

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