千早「(声が出なくなった……)」(115)
今から真面目に書くけど
書きためないからよかったら支援してくだちい
某日
-水瀬家-
高木「――いやはや、お久しぶりです会長」
水瀬会長「うむ、最近どうだねうちの孫は。テレビでも頻繁に目にするようになったのだが」
高木「ええ、おかげさまで彼女の実力も世間に認められつつありまして」
伊織「言ったでしょ? もともと私には素質があるんだって! にひひっ」
水瀬会長「これですぐ調子に乗る癖が治ればよいのだがね……して、今日はあいさつに来ただけかね?」
高木「もちろん、日頃の感謝とご挨拶がなによりの要件でしたとも。恐縮ですが、今からお頼みしたいのはほんのついでとお考えくださって構いません」
水瀬会長「ふむ。また資金繰りで問題かね」
高木「いやはや、さすがにこれ以上会長のお手を煩わせるわけにはまいりませんので。実は、私どもで新しいプロデューサーを雇い入れたいと思っておりまして……」
水瀬会長「ほう。キミのところは現在ふたりプロデューサーを雇っていたね」
高木「ええ。今のところ大きな問題もなく、アイドル達と苦しいながら頑張ってくれているのですが……」
伊織「アイドルにちょっと問題があるのが一人いてね……如月千早っていうんだけど」
水瀬会長「……何度か耳にしたことのある名だな」
高木「はい、彼女も一応アイドルとしてデビューしたのですが……これが、少々ストイック過ぎるところがありまして」
伊織「今のプロデューサー達じゃちょっと手におえないみたいなのよね。で、よかったらちょっと腕のある人物を紹介してもらいたいんだけれど」
水瀬会長「急な話だな。確かにそういう人材は知り合いの中にいんこともないが、紹介するにも時間が…………ん、待てよ」
高木「いや、急な話なので我々もすぐになどとは……」
水瀬会長「確か、彼が今この日本に帰ってきているな。少々気紛れな男だが、あるいは……」
伊織「ちょっと……まさかアイツに頼むつもり?」
水瀬会長「なに、聞くだけ聞いてみればよい。おい、『彼』をここへ……」
高木「『彼』とは……?」
>>7 ない。今までも即興で書いたことある
???「――お呼びですか、会長」
水瀬会長「うむ。ベテランよ、確かお前は海外の仕事を終えて帰ったばかりだったな」
ベテラン「はい、先日レディー・ゴゴの公演を企画してまいりました」
高木「ゴゴだって!? そんな世界的なアーティストをプロデュースしてきたというのか?」
伊織「久しぶりに顔みたけど変わってないわね……コイツはフリーの芸能プロデューサーみたいなものなの。といっても、今はうちの財閥と仮契約を結んでる途中なんだけど」
ベテラン「お久しぶりですね伊織様。候補生時代の泣き癖は治りましたか」
伊織「ちょ、んなもんとっくに治ってるわよ!」
水瀬会長「実はな、この高木君の経営する事務所の手伝いをしてもらいたいのだ。詳しい契約内容はキミに任せる」
ベテラン「急な話ですね。私に何をしろと?」
高木「うぉほん! えー、実はですね……」
ない。今までも即興で書いたことがある(マアミテロッテドヤアアキリリッ
ベテラン「――なるほど。そのアイドルをプロデュースしてほしいと」
高木「しかし、うちはまだ小さな事務所です。あなたの要求する見返りをお渡しできるかどうかは……」
ベテラン「わかりました。一度そのアイドルを見てみましょう」
伊織「ほ、ほんとにいいの? 私が言うのもアレだけど、うちは本当にボロイ貧乏事務所よ?」
高木「い、伊織くん……」
ベテラン「そのアイドルに確かな素質があれば、引き受けても構いません。ただし才能がないようであれば、即刻海外の仕事に戻らせていただく。よろしいですか?」
高木「わ、わかりました! 会長、この度はありがとうございます」
水瀬会長「はっはっは、やはり物好きだなこの男も。なに、実力は確かだから安心したまえ」
ベテラン「私の仕事は安くありません。そのことばかりはお忘れなきよう願います」
高木「え、ええもちろん!」
伊織「……」
>>10 でもやっぱ時間はかかるから支援はしてもらえたらすごくうれしいなーって
数日後
-事務所-
千早「――それで、私にどんな御用が?」
高木「うむ、実は今回、特別なプロデューサーを雇うことになってね」
千早「はぁ……」
高木「千早くんはまだアイドルとして育ち盛りだ。彼の手腕で、ぜひ君にもトップアイドルになってほしいと思っている」
千早「……まぁ、なんでもいいですけれど」
ガチャ
ベテラン「――初めまして。キミが如月千早だな?」
千早「はい」
ベテラン「……ずいぶん愛想がないな。本当にアイドルなのか?」
高木「!」
千早「……個人的に、アイドルを目指しているわけではありません。私は歌をうたえればそれでいいと思っています」
ベテラン「なるほど。ということは歌には相当の自信があるのか?」
千早「少なくとも、テレビでへらへらと笑っているだけの人よりは実力があると自負しています」
高木「ご、ごほん! まぁ、彼女の実力はこの事務所の者たちも認めているのだ。ここはひとつ、彼女の歌を聴いてみてはくれないかね?」
ベテラン「いいでしょう。では千早、これから君の力をテストさせてもらう。本当に私がプロデュースするだけの価値があるのかどうか」
千早「……! わかりました」
-レッスンスタジオ-
千早「では、曲は『蒼い鳥』を」
ベテラン「どうぞ。リラックスしてくれて構わない」
高木「(むむ……大丈夫だろうか……)」
泣くこと~なら容易いけ~れど~……♪
もう昨日には 帰れな~い~……♪
高木「(おお……さすがは千早くんだ。やはり765プロで彼女の歌声に勝てるものはいまい)」
千早「――ふぅ。どうでしょうか」
ベテラン「……悪くない」
高木「おお! では――」
ベテラン「一つ、質問がある」
千早「……なんでしょうか」
ベテラン「――君は、その歌を誰のためにうたっている?」
千早「!!」
高木「……?」
ベテラン「君はうたっているとき、どこを見ていた? 私というただ一人の聴衆がいるにもかかわらず、一度も私と目を合わせようとはしなかったね」
>>10
SS作家様の新たな名言やな
千早「そ、それがなにか? うたうことに集中すれば目線など……」
ベテラン「虚空に向かって放たれる歌声に誰が耳を傾ける? 君の声量、テクニック、確かに相応のトレーニングを積んできた賜物だろう。しかし、今の歌は君自身が奏でる意味がない」
千早「なっ……バカにしないでください! 私はっ……!」
ベテラン「今のままでは精々Dランクアイドルが限界だろう。社長、私が今のこの娘をプロデュースしたところで何も変わらない。失礼させていただきます」
高木「ま、まってくれませんか。彼女はまだ成長する素質がある。本当に希望はないのか?」
ベテラン「……。千早」ツカツカ
千早「……っ!」
ベテラン「なぜ私が君を認めないか、今の君ではわからないだろう。本当に君が自身の殻を破りたいのなら、明日ここへ来なさい」ピラッ
高木「き、キミ! 待ってくれ!」
ベテラン「失礼します」バタン……
千早「くっ……」ダッ
高木「ああ、千早くん! ……はぁ、どうしたものか」
ベテランに自己投影しすぎ気持ち悪い
このキャラ出さなきゃいけない必要ある?
>>19 SS作家とかいう分類あるの?
翌日
-某大型スタジオ-
???「――違う、そこではない! 照明の当たる位置を考えろ! スタジオと舞台は違うのだ!」
ベテラン「失礼、久しぶりだねトレーナーさん」
マスタートレーナー「ん? おお、ずいぶん久しぶりだなベテランP。日本に来ていたのか?」
ベテラン「今は特定のプロデューサーはしていない。……今はまだな」
マストレ「? まぁいい、何か用事か?」
ベテラン「なに、馴染みの顔にあいさつをしておこうと思っただけだ。これから用事が出来るかもしれんし、出来ないかもしれん」
マストレ「相変わらずわけのわからん奴だ。一応この収録が終われば私はフリーだが、食事にでも行くか?」
ベテラン「用事が出来なければな。さて……」チラッ
「――あのっ!!」
また自称フリーでベテランぶった奴が
千早をこきおろすパターンか
>>22 気持ち悪いかもしれんがそういう話だからゆるちて
ベテラン「……用事ができてしまったな」
マストレ「? 誰だあの子は」
千早「ハァハァ……ベテランさんですよね」
ベテラン「いかにもそうだが」
千早「……あの、教えていただけませんか。私の歌に……なにが、足りないのか」
マストレ「ほう……また何か爆弾を落としてきたようだな君は」
ベテラン「……私は自分の意志で壁を登ろうと決めたものにしか手を伸ばさない。トレーナーさん、収録が終わったら○○スタジオまできてくれないか」
マストレ「なんだ、その子を指導しろというのか? 仕事上がりだぞ私は」
ベテラン「気にするな。千早、こっちへきなさい」
千早「は、はい……」ペコリ
マストレ「……ふむ。ずいぶん必死な感じの子だったな」
>>24 気に入らんかったら見て見ぬふりしておいてくだちい
数時間後
-○○スタジオ-
マストレ「――で、私に何をしろと?」
ベテラン「この娘は如月千早というアイドルだ。彼女の歌を聴き、感想をいってくれないか」
千早「……よろしくおねがいします」
マストレ「如月千早か、小耳にはさんだことがあるような……まぁ、いいだろう。それでは頼むよ」
………………
千早「――以上、です」
マストレ「ふむ……キミは、今までボイストレーニングばかりやっていたのか?」
千早「あ、は、はい。私はアイドルというより、歌手になりたくて事務所に入ったので」
マストレ「なるほど。では、結論から言わせてもらおう。おそらく今の君では歌手どころかアイドルとしても大成できないだろう」
千早「そ、そんな……どうしてなんですか!?」
マストレ「一つ、キミはとても苦しそうに歌っている。その様を特徴的にとらえて売り出すこともできるだろうが、そういうやり方は長続きはしない」
千早「……」
マストレ「もう一つ。歌手だろうがなんだろうが、大勢の人の前に出るというのはみんなの憧れの的になるということだ。君にはまだその自覚がない」
千早「くっ……」
マストレ「……しかし、だ。私個人は、キミの中に光るものを感じる。歌のテクニックやコネでなく、君自身が成長することでしかそれは磨かれないと思うのだが……ベテランPはどうかね?」
ベテラン「……千早」
千早「……はい」
ベテラン「私のやり方についてくるというのなら、私は最後まで君の面倒をみる。しかしそれは君が思い描くやり方とはかけ離れているかもしれない。それでも、我々と一緒に歩くつもりはあるか?」
千早「わ……私は……」
千早「私はうたわないといけないんです! 私が歌をうたわなかったら……うたってあげられなくなったら!」
マストレ「(ん……?)」
千早「私、ついていきます! 私が生きている意味を証明するために、うたわなくちゃダメなんです!」
ベテラン「……わかった。では、今から私は君の専属プロデューサーだ。必ず君をトップに君臨させてみせよう」
千早「はい! よろしくおねがいします!」
マストレ「(……この子、昔なにかあったのか? いや、詮索は私の専門ではないからな……)」
翌日
-事務所-
千早「――おはようございます」
春香「あ、千早ちゃんおはよー! ねぇねぇ、新しいプロデューサーさんについて貰えたってホント?」
千早「え、ええ」
春香「どんな人なのかなぁ? 頼りになる人って感じだった?」
千早「……そうね。おそらく」
真美「今のにーちゃんみたいな人よりは頼りんなってくれなきゃ流石に困るっしょー」
若P「お、おいおいどういう意味だよそれ」
小鳥「あ、プロデューサーさん。昨日頼んでおいた書類なんですけど……」
若P「え? ……あ! す、すみません! 昨日家で処理したまま持ってくるの忘れた!」
真美「……こういう意味だよ→」
春香「ま、まぁプロデューサーさんも愛嬌があるじゃない!」
若P「や、やべー、すぐに取りに帰りますね!」バタバタ
――ガチャ ドン!
若P「わっ!?」
ベテランP「ん……失礼しました」
若P「え? あ、いや、こちらこそ……」
真美「んん? オッチャンだれー?」
ベテランP「この度、如月千早のプロデューサーになったベテランです。よろしく」ツカツカ
春香「あ……よ、よろしくおねがいします」ペコリ
ベテランP「いくぞ千早」
千早「あ、はい! ……それじゃ、みんな」
バタン……
若P「……」ドキドキ
真美「……にーちゃんいつまでそこにいんの?」
-レッスンスタジオ-
ベテランP「さて、千早には一週間後、大型の歌番組オーディションに出てもらう」
千早「はい……え? い、一週間後ですか?」
ベテランP「そうだ。ゴールデンタイムの生放送だから気を抜かないように」
千早「ちょ、ちょっと待ってください! 自分で言うのもなんですけれど、私はまだデビューしたばかりですし、いきなりそんなオーディションに受かれるとは……」
ベテランP「わきまえはあるようだな。確かに、普通はもっとコツコツと地盤を重ねてから知名度を上げていく戦略が基本だろう」
ベテランP「しかし高木社長が言ったように、千早の歌唱力に関してはプロのそれに匹敵するといってもいい。あくまで歌唱力のみをみた場合だが」
千早「で、でもそれではダメだといったのはプロデューサーじゃ……」
ベテランP「もちろんだ。長期的にお前の能力を評価されると、千早の欠陥はあっという間に視聴者に感づかれるだろう。だからこれは少し荒療治だ」
千早「え?」
ベテランP「新米というのはよくも悪くも甘くみられるものだ。伸びしろが見えない分、最初に見せた鋭いポテンシャルが大きな判断材料になる」
ベテランP「まだ名も知られていないペーペーのアイドルが、意外にも驚異的な歌唱力を持っていた。それだけで世間は一気にお前に注目する。最初は誰もが人の頭角しか目の当たりにできないのだからな」
千早「……!」
ベテランP「だから、最初の一発目は大型のオーディションでも受かることができる。『期待の大型歌手』としてな。問題は……その熱が冷めるまでに、千早自身が成長できるかどうかだ」
千早「私、自身が……」
ベテランP「これからお前には、短い期間の中で本物のアイドルとして一皮むけてもらわなくてはならない。そのためには少し厳しい道を歩く必要があるが……」
千早「やります」
ベテランP「ん……」
千早「それほどでなければ、きっと私は許されないから……そうしなければならないというのなら、変わります」
ベテランP「……わかった。君が心の中でどんな思いをしているか私にはわからない。これはほかでもない君自身の道だからな」
千早「構いません。どんなに孤独でも、やり遂げて見せます」
一週間後
-事務所-
真「――ええっ! 千早、どっとっぷMUSICのオーディションに受かったの!?」
雪歩「す、すごいですぅ。私たちなんかまだ小さな地方テレビにしか出たことがないのに……」
若P「す、すごいなベテランさんは。俺がプロデュースしてた時は全然ダメだったのに……」
千早「……」
春香「あ、あれ? 千早ちゃん、うれしくないの?」
千早「え? いえ、そうではないけど……」
――ガチャ
ベテランP「……おはようございます」
小鳥「あ、ベテランさんおめでとうございます! 千早ちゃんがあんな大型テレビに……」
ベテランP「残念ですが、正念場はこれからです。いくぞ千早」
千早「は、はい」バタン……
真「……な、なんか千早以上に真面目だね、あの人」
雪歩「ち、ちょっとこわいですぅ……」
-○○スタジオ-
マストレ「――相変わらず無茶苦茶なやり方をするな君は」
ベテランP「千早を成長させるにはこれくらいの無理が必要だ。あいつには何か……歌への執念みたいな力がある」
マストレ「……執念か」
千早「――お待たせしました」ガチャ
ベテランP「ん。でははじめてくれ」
マストレ「わかったよ。キミが支持するなら私はそれに従うだけだ。よろしく、千早」
………………
-事務所-
千早「……ただいま、もどりました」フゥ
小鳥「あら、遅くまでお疲れ様千早ちゃん。ずいぶん疲れてるみたいだけど大丈夫?」
千早「平気です。ご心配なく」
小鳥「(こんなに疲れてる千早ちゃん初めて見たわ……あの人、いったいどんなことやってるのかしら)」
数日後
-某テレビ局-
ディレクター「――今回の合格者は、7番の『如月千早』さん! おめでとうございます」
千早「!! あ、ありがとうございます」
ディレクター「君みたいな実力ある子が眠ってたなんて驚きだね。本番しっかり頼むよ!」
ベテランP「……」
………………
千早「プロデューサー、私っ……!」
ベテランP「いい調子だ。さぁ、次のオーディションに向けてレッスンに行くぞ」
千早「はいっ」
ベテランP「……自分が誰のためにうたっているのか、答えは出たか?」
千早「っ…………それは」
ベテランP「我々はあんなことをいったが、君の歌には――正直なところ、普通ではない執念がこもっているように思う」
千早「……」
ベテランP「……君はどうしてそこまで歌に固着する? 自分でそれが分からない限り、先は見えているぞ」
千早「…………そんなこと話してる時間がもったいないですから、早くスタジオに行きましょうプロデューサー」
ベテランP「……」
………………
-○○スタジオ-
千早「らーらーらー♪」
マストレ「顔をこわばらせるな! 客を怖がらせる気か? もっと歌う相手のことをよく考えて……」
千早「ーっ……っう……」
マストレ「……? どうした千早?」
千早「っ……はーっ、はーっ……!」
ベテランP「……?」
マストレ「落ち着いて、少し休もう。息が整ったらこのドリンクを飲むのだ」
千早「は、はっ……す、すみません……」ハァハァ
ベテランP「トレーナーさん、千早の喉は? どこか悪いところはないか?」
マストレ「千早、少し口を開けて…………いや、一時的な軽い炎症しか見られん」
千早「すみません、私……やりますから」
マストレ「喉に痛みはないのか? 無理だけは……」
千早「大丈夫です。つっかえただけですから……こんな時に、休んで、いられません。続けましょう」
マストレ「……わかった。では続けよう」チラッ
ベテランP「……」コクン
数週間後
-事務所・社長室-
高木「いやはや……さすがは水瀬会長の認めた手腕だ。デビューから鳴かず飛ばずでくすぶっていた千早君があっというまにBランクアイドルになるとは」
ベテランP「仕事ですので。彼女がトップに君臨するまでは手は抜きません」
伊織「――社長? ちょっといい?」ガチャ
高木「おっと水瀬君か。では、これからも千早君をよろしく頼むよ」
ベテランP「では。失礼します、伊織様」バタン……
伊織「……」
高木「で、水瀬君もなにか御用かね?」
伊織「え? あ、ええ。大した用事ではないんだけど……」
伊織「その……アイツ、千早に無理とかさせてないかしら?」
高木「彼がかね? 無理というと……?」
伊織「そのままの意味よ。……私は候補生の時にアイツの指導を少し受けただけだから、実はアイツのことよく知らないのよね」
高木「ああ、その点は大丈夫だ。彼はスケジュール管理も徹底しているし、千早君自身も特に問題は……」
伊織「あのスーパーストイックな千早よ? 無理してたって隠すに違いないわ」
高木「う、うむ……しかしプロデュース自体は成功しているのだし。なにか懸念でもあるのかね?」
伊織「……ちょっとね。アイツ、昔一度だけ大きな問題を起こしたことがあるって話しなのよ」
高木「問題……?」
伊織「ウワサ程度の話で詳しくは知らないんだけど……」
伊織「――担当していた事務所の子を自殺に追いやった、とかなんとか」
某日
-○○スタジオ-
マストレ「なんだ、今日はレッスンはしなくていいのか?」
ベテランP「今日だけは外せない用があるそうだ……まぁ、一日くらいであれば問題ない」
同日
-某所・墓地-
ミーン ミーン ミーン……
記者「――あーあー、近頃は面白いネタがちっとも転がってねえや。961さんの事務所に売り込むのも潮時かねぇ…………んぁ?」
千早「……」
記者「(あれは……確か最近売れ出してきた765の如月千早とかいう……)」サッ
千早「……私は本当にダメな人間ね。いつまでたっても、自分も他人も許すことができないままで……」
記者「(んん……なんかわかんねえが一応撮っておくか)」ガサ……
千早「プロデューサーがね、『お前は誰のためにうたってるんだ』って……私、本当はあなたにうたってあげたいだけなのに……なにも答えられなくて」
千早「もういない人間だってわかってても……優のためにうたわないと、どうにかなりそうなのよ……そんなんじゃいけないってわかってるのに……」
千種「――千早?」
千早「!!」バッ
記者「(なんだなんだ? こいつぁスクープな予感だぜ……へへへ)」
千種「きてたのね、アナタも……優もきっと喜んでるわ」
千早「……っ」
千種「最近忙しいのよね? テレビでよくあなたを見かけるわ。でも……たまには顔を見せてくれないかしら」
千早「……なぃで」
千種「優がいなくなって、きっとさびしがってると思って……」
千早「私に話しかけないでっ!!!」
千種「!」
千早「優が死んだのは誰のせいだとか勝手に責任を押し付けあって! 勝手に私を独りにして! 今更どうして親気取りでこの子の前に出てくるの!?」
千種「千早、私たちもアナタのこと考えて……」
千早「やめて!! 優が死んだのは私のせいよ! 私が殺したのよ!! それで文句ないでしょう!? もう私の前に現れないでっ!!!」ダッ
千種「千早……うぅ……」
記者「(こ、こいつはとんでもない画が撮れたぜ! へへへ、早速961のおっさんに売り込まにゃ……!)」
翌日
-ベテランP宅-
ベテランP「さて……行くとするか」
prrrrrr
ベテランP「……。もしもし」
ベテランP「ああ……わかってる。その出版社には根回しをしておこう」
ベテランP「落ち着け……そうだ。アレは、私の責任だ。だから私が……」
ベテランP「……もう離婚した身だろう。いざとなれば全部私に押し付ければいい」
ベテランP「…………すまないが、仕事だ。切るぞ」ブツッ
ベテランP「……」ハァ…
-事務所-
ベテランP「――おはようござ」
若P「べ、ベテランさん!!」
ベテランP「? 何をそんなに騒いで……」
高木「大変だ! 千早君が……この雑誌を見たまえ!」
ベテランP「……!!」
小鳥「はい、はい、しかしうちの事務所ではそのような事実は……!」
ベテランP「千早はどこだ……!」ガチャ!
千早「あっ……」
ベテランP「!! 千早、この記事を――」
千早「っ!!」ダッ
ベテランP「待て千早!!」バンッ
千早「は、はなしてくださいっ!」
ベテランP「落ち着け……どこに行っても何も変わらん」
千早「私っ……私は」
ベテランP「……最後まで面倒を見るといったはずだ。必ずお前を危険な目には合わせん。戻ってこい」
千早「……っ」
………………
-事務所・社長室-
高木「『如月千早、弟殺しの歌姫』……なんという悪質な書き方だ。千早君、気にすることはない。我々がすぐに根回しをする」
千早「……すみ、ません」
ベテランP「……」
高木「今日のところはひとまず休みたまえ。ここに君を守る場所があるということを忘れるなよ……頼むよ、彼女を」
ベテランP「……は」
ベテランP「……」
千早「……本当に、すみません」
ベテランP「業界ではよくあることだ。根も葉もない話は耐えればすぐ消え去る」
千早「……事実です」
ベテランP「なに?」
千早「私が、弟を殺したのは、事実……なんですっ……」
千早「私が小さいころに優を連れ出してっ、無責任に放っておいたから……死んだんです」
千早「よく、うたってあげてたんです。優は、優だけが、私の歌をきいて、すごく喜んでくれたのに……彼を殺したのも私なんですよっ……!」
ベテランP「……それがどうした」
千早「……ぇ?」
ベテランP「君は今までその事実を抱えて生きてきた。それが人に知られただけだ。何が違うというんだ?」
千早「わ、私はだって……きっと誰も私を許してくれないものっ……!」
ベテランP「誰かが君を許せば君は救われるのか?」
千早「な、なにをっ……」
ベテランP「千早は……いままで弟のためにうたってきたんだろう。君の歌を唯一喜んで聴いてくれた、弟のためにうたい続けることが、弟を殺した罪滅ぼしになると考えて」
千早「あ……あなたになにがわかるんですかっ!!」
ベテランP「わからんさ。わからんが……」
千早「……!?」
ベテランP「……自分で背負った罪なんてものはな。自分が許すしかないんだ。ほかのだれが許しても許さなくても、自分が許さない限り救われない」
千早「……」
ベテランP「自分を許すためにうたうのなら、うたい続けろ千早。お前が救われるにはそれしかないんだ。誰が何を言っても、うたうのをやめるな。ほかでもない自分自身のために、声を上げ続けろ」
千早「……私は――」
数日後
-事務所-
TV『――先日から、弟殺しという話題で持ちきりの、アイドルの如月千早さん。彼女を批判する声が上がっているにも関わらず、むしろテレビ出演の回数は増えており、その活動は勢いを増し続けています』
若P「ひどいもんだ……」
春香「……千早ちゃん」
美希「千早さんにこんなするなんて、許せないの。ミキも全力で千早さんを助けるの」
律子「あの子も気丈な性格だからね……大丈夫かしら」
伊織「……こんな、こんな状況で千早が無事なはずないじゃない……!」
あずさ「伊織ちゃん……」
ベテランP「――おはようございます」
伊織「! ちょっとアンタ! どういうつもりよ!?」ガッ
小鳥「い、伊織ちゃんおちついて!」
伊織「アンタねェ、千早がどういう気持ちか考えてんの!? こんな時くらい休ませてあげなさいよ!」
ベテランP「伊織様。千早は自分の意志でうたい続けています。私はその手伝いをしているだけです」
伊織「! よくもそんな白々しく……!」
律子「伊織、やめなさい! その人に食って掛かっても……!」
伊織「知ってるんだからね! アンタ前にも担当アイドル自殺させたことあるんでしょ!? 千早を傷つけたら絶対許さないんだから!!」
春香「えっ……」
若P「じ、自殺って……」
ベテランP「……繰り返しますが、私は千早の手伝いをしているだけです。その手をお離しください」
高木「な、なんの騒ぎだね!?」
伊織「はぁはぁ……いいこと、千早を追い詰めるようなことしたらうちの財閥から追放してやるんだから」
ベテランP「結構です。それでは、私は仕事にまいりますので」バタン……
美希「……ねぇ社長、伊織の言ってたことホントなの?」
あずさ「アイドルを自殺に追いやったことがあるって……」
高木「……水瀬君、あまり軽率に根拠のない噂を広げてはいかん。大丈夫、彼は信頼できる人物だ。千早君のことは私もしっかりとみているからね」
伊織「……」
数日後
-某収録スタジオ-
スタッフA「おい、大丈夫なのかよ。如月千早なんか出演させたら評判落ちるんじゃ……」
スタッフB「さぁな……でもさ」
千早『~~~!! ~~~!!』
スタッフB「なんかこう……間近で聞くと、鬼気迫るものがあるよな、彼女の歌」
スタッフA「……確かに、あんな心臓を貫くような歌、誰もうたえねえもんな……なんかすげえよ、あのアイドル」
………………
収録後
ベテランP「この度は尻尾つきのアイドルを起用していただき感謝します」
ディレクター「いや……いいんだ。あんな歌、聴かされたらみんな納得してくれるさ」
千早「……ありがとうございます」
ディレクター「頑張んなよ千早ちゃん。俺は応援してるぜ」
ベテランP「今日はあと特別レッスンで終わりだ。いけそうか?」
千早「はい、大丈夫で――ゴホッ、ゲホ」
ベテランP「……喉が痛いのか?」
千早「いえ、つっかえただけなのd……ゲホッ」
ベテランP「無理は禁物だ。今日はこれで――」
千早「ダメです!!」
ベテランP「!」
千早「うたい続けろと……声を上げ続けろといったのはプロデューサーです! 今休んでしまったら、私が自分を許せません!」
ベテランP「……わかった。だが、トレーナーさんの指示には従いなさい。いいな?」
千早「……わかりました」
-○○スタジオ-
千早「んあ~あ~あ~!!」
マストレ「ストップだ! 千早、何をそんなに焦ってるんだ? 言っているだろう、うたう相手をよく見ろと」
千早「けほっ……見ています、だから、うたうんです」
マストレ「……キミはいったい誰を見ているんだ? 何がキミをそこまで駆り立てているのだ」
千早「私はっ……弟に、天国にもとどくように精一杯うたわなきゃ……っ!」
マストレ「!」
ベテランP「千早、少し……」
千早「ダメなんです!! いまっ、がんばらないと、優をうらぎることになってっ……うぅぅ」
マストレ「……千早、焦らなくていい。本当にキミを見ている者はきっとキミを責めやしない」ギュッ
ベテランP「……今日はこれで終了だ。すまないなトレーナーさん」
マストレ「いや、私はいいんだ……」
千早「うっ、ううぅぅ……」ガタガタ
『――しばらく休め。喉も少し腫れている、今無理をすればそれこそ取り返しのつかないことになる』
-千早宅-
千早「(……休んでなんていられない)」
千早「(たとえ声が出なくなっても、それが私にふさわしい結末なら……仕方ない。それだけのことをしたのだから)」
千早「……トレーニング、しないと」
…………………
数日後
-事務所・社長室-
高木「さて……961の流した噂もようやく収束してきたな」
ベテランP「千早の世論も、完全ではありませんが回復してきています。社長、そろそろ彼女をIUグランプリに出場させたいと思うのですが」
高木「なんと……今の状態で、かね? もう少し事態が落ちついてからでも……」
ベテランP「……千早の今の状態は、長く続くものではありません。時間とともに、今の彼女が持つ執念の力は失われていきます。ここで彼女を救わねば……」
高木「……少し、尋ねたいことがある」
高木「以前、水瀬君が『ウワサ程度』の話だといっていた、アイドルを自殺に追いやったという話……あれは、どこから出た話なんだ?」
ベテランP「……」
高木「私は君を疑うわけではないのだが……事務所の皆が根拠のない話に惑わされてはならない。何があったんだい?」
ベテランP「……伊織様の話は事実です。とはいえ、一口に申し上げるには、少々……込み入った話になるかと」
高木「構わん。話してくれないか――」
………………
prrrrr
千早「!! これは……プロデューサー?」ピッ
千早「も、もしもし」
ベテランP『千早か? 今、大丈夫か』
千早「はい、だいj……ゴホ、大丈夫です」
ベテランP『一週間後、IUグランプリに出ることになった』
千早「え……本当なんですか!?」
ベテランP『そこで、千早がトップアイドルになるかどうかが決まる。今の千早ならば、優勝を狙えると私は思っている』
千早「そんな……でも」
ベテランP『……お前がまだ自分を許せないというなら、トップになって見せろ。頂点に立てば……お前の答えもでるはずだ』
千早「……わかりました。出場します。IUグランプリ……」
ベテランP『それまで、喉を酷使するな。トレーニングは私が指示したスケジュール通りにやるんだ。いいな?』
千早「……わかってます」
ベテランP『それでは、また明日』ピッ
一週間後
-IUグランプリ会場-
ベテランP「……さぁ。準備はいいな千早」
千早「……はい」
ベテランP「お前は私がプロデュースしたアイドルだ。自信をもっていい」
ベテランP「お前が誰のためにうたおうと、何も言わん。うたうべき人のために全力を出してこい」
千早「わかっています」
ベテランP「……いけ」
――ワァァァァァァ!!!
千早「……」
千早「(……こんなに大勢の人の中で、私は……)」
スレ落とした方がいい?
読んでて腹立つ人しかいないならもうここで切るけど……
自分からやり始めたモン投げ出すんじゃねえよ
>>80 んじゃ書くね
こういうサクセスssってなんか俺が一番最初に作った筋道をそのままなぞってるだけだよな
ズブズブの王道いやマンネリ化してる アイマスじゃなければ飽きられてたぞ
(ちなみに俺はブーン系小説などで活躍しているVIPを代表するss作者)
>>79
きめえなお前を支持してる池沼もいるだろ、お前メクラか
つか書くな死ねって言われた所でお前は「やっぱかきます」と今までのように書き始めるだろ 無駄な茶番はやめろ馬鹿
「俺のファンたち!俺の悪口を言うこいつらをやっつけてよ!」ってことか?
お前に守る価値なんてねえよ
千早「……私は、これまで、死んだ弟のためにうたってきました!」
ざわざわ……
千早「私の弟は、私が目を離したばっかりに、車に轢かれて……この世を去りました。私は、それがずっと自分のせいだと思って、自分を責め続けて……」
千早「それを、弟が大好きだった歌をうたうことで、許されようとしていました。今でも……それは変わりません」
千早「歌は、聴いてくれる人たちのためにあります。でも私はこれから、私の大切な人のためにうたいます。それが許されるかどうかわからないけれど」
千早「っ……私にはっ!! もう想いをうたうことしか残されていないから!! うたわせてください!……」
………
泣くことなら容易いけれど
悲しみには流されない
恋したこと
この別れさえ
選んだのは
自分だから――
でもなんだかんだで見てるお前ら、ありがとうね
――あなたを愛してた
でも前だけを見つめてく
千早「――っはぁ、はぁ、はぁ……ありがとう、ございました」スタスタ……
――ワアアアアアアアッ!!
ベテランP「……お疲れ様だな」
千早「はいっ……ゲホ、ゴホッ! エホッ、ゲホッ!」
ベテランP「……千早?」
千早「大丈夫ですから……ゴホ、エッホゲッホ!」
ベテランP「千早? 息を整えろ、千早。おい!」
千早「うっく……! ゲヒッ、ガハッカハッ!!」
ボタッ……
ほら書き出したw
>>1「カキカキφ(..)」
俺ら「つまんね パクりやめろ つまんね」
>>1「これ以上文句言ったら書くのやめるから、知らないよ?(引き留めてくれるかなーワクワクo(^o^)o)」
俺ら「よしやめろ やめろ やめろ」
>>1「…」
>>1「カキカキφ(..)」
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ
まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」
マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」
京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」
ほむら「・・・ありがと」ファサ
では、
まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」
終
まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
千早「……ッ!!」
ベテランP「千早、こっちへこい! おい救急車を呼んでくれ! 早く!!」
千早「ッ……ゲッホ……ゴホォ! うぐぅっ……!!」カタカタ
ベテランP「千早、大丈夫だ! 私の方を見ろ! おい千早! ちh――」
………………
『――それでは、今年度IUグランプリに輝いたアイドルを発表します!』
『その名は――あの蒼い歌姫、如月千早!!! 彼女の歌声はこれからも我々の胸に――』
翌日
-某病院-
千早「…………」
千早「…………」
――タッタッタッタ
春香「――千早ちゃん!?」
律子「千早、大丈夫!?」
千早「! ……」
伊織「千早ァ! アンタっ……」
千早「…………」パサッ トントン
『如月千早、トップアイドルの夢叶うも一日だけ』
春香「……ウソでしょ」
伊織「あ、アンタまさか……」
千早「………」フルフル
春香「う、ウソだよね? また千早ちゃんの声聞けるよね?」
千早「……」スッ カキカキ
律子「あ……」
ごめんなさい
伊織「なんで……なんでアンタが謝んのよ! 悪いのはあのプロデューサーでしょ!?」
千早「……」フルフル
ガラッ
ベテランP「! ……いらしたのですか、伊織様」
伊織「! ァ……アンタねぇ!!」
パァンッ!
ベテランP「……」ヒリヒリ
伊織「アンタが! アンタが千早に無茶苦茶させたから!! アンタのせいでっ……!?」グイッ
千早「…………」フルフル
伊織「なによ……なんでアンタがかばうのよ! アンタ声でなくなっちゃったのに!!」
ベテランP「伊織様。みなさんも、叱咤は後ほどお伺いします……千早」
千早「……」
ベテランP「今、お前は間違いなくトップアイドルだ。君は誰のためにうたっていた?」
伊織「ちょっと……!」
律子「シッ。伊織」
千早「……」カキカキ……
優の ため
ベテランP「……。君は……自分を、許せたかい?」
千早「……」カキカキ……
春香「……千早ちゃん」
ベテランP「……」
千早「……」スッ
わからない
もう 私にできる
ことはありません
ベテランP「……そうか」
春香「う……千早ちゃあん!」ガバッ
千早「! ……」
ベテランP「……以前、伊織様のおっしゃった噂ですが」
伊織「!」
ベテランP「あの話は事実です。私は、自分が指導していた者を……殺したことがあります」
千早「……!?」
伊織「アンタやっぱり……!」
律子「伊織、聞きなさい」
ベテランP「千早にも話していなかったことだ。今後の活動をどうするかを考えるうえで、きいてくれるといい」
千早「……」
ベテランP「――私には娘がいた。ちょうど生きていたときは君たちくらいの年齢だった。もうずいぶん前のことだ」
ベテランP「彼女はしかし、生まれつき『声』が出なかった。もし彼女がうたえたなら千早のような美しい歌をうたってくれたろう」
ベテランP「彼女は、ピアノが好きだった。だから、自然と彼女はピアニストとしての道へ進んだ」
ベテランP「私は、できるだけ生まれつき不自由な娘の希望を叶えたかった。彼女は容姿も美しかったから、声の出せないピアニストタレントとして、芸能事務所に所属することになった」
ベテランP「そこで私は、自分の娘を精一杯プロデュースした。彼女のピアノには誰もが魅了されていたものだ……私はそれが誇らしかった」
ベテランP「周囲に期待され、そして成長していく中で彼女はよく言っていた。『もしピアノが弾けなくなったら終わりだね』と」
ベテランP「……その言葉は、現実になってしまった。彼女は不運な事故で、両腕を失った。それは、彼女が国際コンクールで優勝を果たした直後だった」
ベテランP「皆、希望を失った。娘は何も、何もできなくなった……誰も彼女に別の道を示すことができなかった」
ベテランP「その時、彼女の方針を決めなければならなかったのは私だ。父として、プロデューサーとして彼女を支えてやるべき立場の私は……ピアニストの道を絶たれた彼女に、何もさせてやれなかった」
ベテランP「……それからほどなくして、彼女は自殺した。遺書には、『ごめんなさい』とだけ……」
ベテランP「世間は私を責めた。娘にプレッシャーを与え、自殺に追い込んだ張本人だと……その通りだ」
ベテランP「道を……示してやれなかった! 娘さえ救えない自分が一番許せなかった……!」
ベテランP「……ゆえに私はせめてもの罪滅ぼしと称して、こうして娘ではない誰かの道を示す手助けをしている。だから、私が娘を殺したというのは事実なのです」
伊織「……」
ベテランP「つまらぬ話で申し訳ありません伊織様。今回、私が千早を導くなかでこんなことになったのも、私の責任です。水瀬家との契約は切られても仕方ありません」
伊織「……別に、私は」
千早「……」カキカキ……
春香「千早ちゃん……?」
あなたのせいじゃない
ベテランP「……」
伊織「千早……」
千早「……」カキカキ
ごめんなさい……
彼と二人にしてください
来てくれてありがとう
律子「……行くわよ、二人とも」
伊織「でも! ……わかったわ」
春香「千早ちゃん、またくるからね?」
千早「……」ニコ
バタン……
ベテランP「……」
千早「……」
ベテランP「……どうして、神様はこういう仕打ちばかりするんだろうな」
千早「……」
ベテランP「私がいけないのか……? 本当に私がいけないのか!? 別れた妻はまだ世間の風評に苦しんでる……! 私は精一杯やってきた! なぜ許されない!? なぜっ……」
千早「……」
ベテランP「なぜ……私はこんなにも私を許せないのだろう。すまない千早……お前の声を……奪ってしまったのは」
千早「……」カキカキ
ちがう
きっとあなたは
もう許されてる
ベテランP「しかし……私は」
千早「……」カキカキ
私を救ってくれた
ベテランP「……違う。君を救ったのは君自身だ」
千早「……」フルフル
あなたがいたから
声が出なくても もういい
ベテランP「……千早」
次はあなたが救われる番
千早「……」カキカキ
ベテランP「……?」
私 ピアノが 少し弾けます
次は あなたのために
うたわせてください
ベテランP「……っ!」
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