ベルトルト「秘密の」 ユミル「約束」(272)


*妄想・捏造・その他色々あり。sage更新、転載禁止。
 CP無し。「秘密の恋人」と最初だけ被るが別話。


…夜。人気のない宿舎裏。

ユミル「よう、来たな」

ベルトルト「こんなところに呼び出して、なに?」

ユミル「警戒しなさんなって。ま、ムリだろうが」

ベルトルト「……」

ユミル「率直に聞くぞ。お前、アニのこと好きなんだろ?」

ベルトルト「なっ」


ユミル「よく見てるなと思ったら…
 立体機動訓練の時にも獲物譲ってるよな」

ベルトルト「……」

ユミル「分かる奴には分かるんだよ。私だって
 教官にバレないようにクリスタに譲ってるからな」

ベルトルト「……」

ユミル「で、どうなんだ」

ベルトルト「…何が望みなの」


ユミル「ほぅ…話が分かりやすくていい」

ベルトルト「ネタにされて騒がれるのは嫌なんだ。彼女もそうだろうから」

ユミル「そうだな。優等生のベルトルさんの色恋沙汰となりゃ、
 放っておかない連中は多いだろうしな」

ベルトルト「……」

ユミル「ましてや、相手があのアニときたらね。
 ま、私はその辺の話はどうでもいい」


ユミル「クリスタにも獲物を譲ってやって欲しいのさ」

ベルトルト「…え?」

ユミル「アニに譲るくらいならな。私一人では少し荷が重い」

ベルトルト「君はどうしてクリスタに…。
 いや、これは聞かない方がいいかな」

ユミル「ああ。私もベルトルさんの事を聞かなきゃいけなくなる」


ユミル「ついでに他の訓練も教えて欲しいんだ。
 直接でもいいし、私を通して間接的にでもいい」

ベルトルト「…注文多すぎない?」

ユミル「夜の散歩は危険が多いからな。
 こないだ出くわしたフリして話しかけてるのを見かけたが、
 付き合ってるわけでもないのに…守ってやってるんだろ」

ベルトルト「……」

ユミル「ベルトルさんが私と絡めば、クリスタとも接点がうまれる。
 いつも世話になってるライナーに、少しは恩返しになるんじゃないか?
 ま、手出しはさせねぇけどよ」


ベルトルト「…どうして僕なの」

ユミル「ん?」

ベルトルト「ライナーに直接頼めばいいじゃないか。
 クリスタの為なら、彼なら喜んで教えるだろうし」

ユミル「正義感の塊みたいな男が、素直に獲物を譲ると思うか?」

ベルトルト「思わないよ。でもその分丁寧に教えてくれるはずだ」


ユミル「はぁ…ほんっとお前、人と関わるの嫌いなんだな」

ベルトルト「……」

ユミル「ライナーに頼めば、お前はついてこない。けど、
 お前に頼めば、ライナーはついてくる。違うか?」

ベルトルト「…さぁ」

ユミル「暫定2位と3位を同時に獲得ってわけだ」

ベルトルト「……」


ユミル「私らだって上位陣だ。だが…ベルトルさんらにはわからないだろうが、
 10位ギリギリの私らはな、標的にされやすいんだよ」

ベルトルト「……」

ユミル「お前らと一緒にいれば、狙われる確立も少なくなる」

ベルトルト「最初からそう言えばいいのに」

ユミル「言ったらお前は手伝ったか?」

ベルトルト「…彼に任せただろうね」


ユミル「他の奴らに戦力を取られるわけにはいかないんだよ。
 お前が他人に手を貸さない奴だったとしても…リスクは少ない方がいい」

ベルトルト「…で、これからは君らと行動すればいいの?」

ユミル「ああ。それでお前の平和な訓練生活も保障してやるよ」

ベルトルト「…はぁ」

ユミル「嫌そうだな」

ベルトルト「頭が痛いよ。どうして、こんな…」


ユミル「悪いね、こっちも必死なんだ。
 ライナーへの説明はお前から頼む。うまくやれよ」

ベルトルト「…うん」

ユミル「心配すんなって。悪いようにはしない」

ベルトルト「どうだか…」

ユミル「じゃぁ、よろしくな」


…翌日。食堂。

ライナー「…は?」

ベルトルト「だから、今日からクリスタとユミルと行動したいんだ」

ライナー「え…あ、あぁ、それは、構わんが」

ベルトルト「昨日ユミルに頼まれたんだよ。ほら…彼女達、順位的に狙われる立場だから」

ライナー「あぁ…なるほどな」

ベルトルト「ユミルが先に頼んできたことはクリスタには秘密で。
 彼女、守られるってことが嫌いみたいだから」

ライナー「ふむ…しかし、珍しいな。お前が断らないなんて」


ベルトルト「…クリスタは重要人物だから」ヒソッ

ライナー「確かにな」

ベルトルト「接点持っておくのは悪くないと思ったんだけど」

ライナー「…よし! で、俺は何をすればいいんだ?」

ベルトルト「それは…ああ、直接聞けばいいんじゃないかな」

ユミル「悪いな、ここいいか?」

クリスタ「おはよう、ライナー、ベルトルト」


ライナー「おう、おはよう、クリスタ。もちろん、いいぞ」

ベルトルト「…おはよう」

ユミル「そうだ。頼れるライナーさんに頼みたいことがあるんだが」

ライナー「なんだ?」

ユミル「立体機動の扱いだよ。最近伸び悩んでてな、よけりゃ今日教えて欲しいんだが」

クリスタ「ちょっと、ユミル。いきなり迷惑だよ」

ライナー「構わんが…何をすればいいんだ?」


ユミル「一緒に飛んで、悪いところを指摘してもらえれば」

ライナー「お安いご用だな」

ユミル「…ベルトルさんは?」

ベルトルト「…僕は後ろから見させてもらうね」

クリスタ「でも、それじゃ…」


ユミル「悪いと思うなら、1日で覚えりゃいいんだよ」

クリスタ「うん…ごめんね?」

ライナー「いや。なんだったらしばらく見てもいいぞ」

ユミル「さっすが兄貴だ。頼りになるねぇ」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「…そちらさんは」

ベルトルト「…いいよ。僕らもその方が都合がいいし」


ユミル「都合?」

ベルトルト「…君達もあるんじゃない」

ユミル「あぁ。お前らもなのか?」

ベルトルト「全くないとは、言わないよ」

ユミル「へぇ…」

クリスタ「……」

ライナー「よし、そういうことでしばらく頼むわ」

ユミル「こちらこそ」

クリスタ「…ありがとう、2人とも」


ライナー「気にしなくていい。こいつも言ったが、俺達にも利点はある」

クリスタ「うん…」

ユミル「よろしくな」

ライナー「ああ」

ユミル「ベルトルさんも」

ベルトルト「…よろしく」


…次回に続く。

ようやくネットが繋がって投下開始。今年もよろしくお願いします。
秘密の恋人より、こっちのがだいぶ先に大筋出来てたんだ。最初だけ被っててすまない。
ライベルとユミクリって、一緒に行動すること多かったんじゃないか?
ベルトルトとユミルって、どんな会話してたんだろ?
それを妄想してみたのが今作。頑張って書く。

>ライベルとユミクリって、一緒に行動すること多かった んじゃないか?
何で??

>>20
調査兵団勧誘の演説の時、4人で一緒に喋ってたり…まぁ、俺の妄想ですけどね


…廊下。

クリスタ「ねぇ、ユミル」

ユミル「なんだ?」

クリスタ「本当に、良かったのかな…迷惑じゃ、ないかな」

ユミル「あいつらも言ってただろ? お互い都合がいいんだよ」

クリスタ「でも…」


ユミル「いいか、立体機動で他の奴らに目をつけられて
 獲物を取られないようにするには、手出しできない文句のないレベルの
 上位者と行動を共にするのが一番なんだ」

クリスタ「……」

ユミル「現時点で候補に挙がるのは、ミカサ、ライナー、ベルトルト、アニの4人。
 ミカサはエレンやアルミンのことがあるし、アニは自分のことだけだ。
 消去法で考えても、あいつらを取り込むことが生き残る術なんだよ」

クリスタ「…だったら、なおさら2人には悪いじゃない。私達が足を引っ張ることに…」

ユミル「お前が遠慮すると私が困るんだ。ついでに教えて貰うなら、
 1人も2人もかわらねぇだろ。私を助けると思えよ」

クリスタ「……」


ユミル「ずっとってわけじゃない。とりあえずの関係だ。
 あいつらと仲がいいのを見せ付ければ、それだけで効果はある。
 なんたって、みんなの兄貴だからな。何かあればチクられると思うだろ」

クリスタ「なんか…嫌だな、そういうの」

ユミル「そう思うなら、笑顔でいろ」

クリスタ「笑顔?」

ユミル「ああ。お前のは天使の笑顔だからな。あいつらにも相当な癒しになるぞ」

クリスタ「もぅっ…」

ユミル「ふくれっ面もわるかねぇが」

クリスタ「ユミルー!」


…一方その頃。

ライナー「ふーむ…」

ベルトルト「どうしたの」

ライナー「いや…あまり乗り気でなかったな、と」

ベルトルト「クリスタが?」

ライナー「うむ…」


ベルトルト「彼女、親切にされることに慣れてないみたいだし」

ライナー「人には優しい子なんだけどな」

ベルトルト「……」

ライナー「育った環境なんだろうが…」

ベルトルト「…どんな環境だったか、なんて。関係ないよ」

ライナー「戦士としてはな。だが、今の俺達はただの訓練兵だ」

ベルトルト「だとしたら尚更だよ。彼女のことは知るはずないのだから
 知っているかのように振舞うのは危険だ」


ライナー「お前なぁ…」

ベルトルト「…悪い子じゃないとは思うよ。
 でも、肩入れしすぎないって決めたよね」

ライナー「まぁな」

ベルトルト「それより…ユミルに気をつけるべきなんじゃない」

ライナー「ああ。あいつは嫌に頭が回るからな。
 今回のことも、クリスタのためを思っての行動だろう。
 俺らが何か知ってる気配を感じたら、警戒してくるに違いない」

ベルトルト「……」


ライナー「何もしらない風を装い、近づく。
 お前はユミルに、無害だと思わせればいい」

ベルトルト「うん…」

ライナー「いままで通りでいればいい。ただ、少し自信を持て。
 俺らは、頼れる同期として声をかけてくれてるんだからな」

ベルトルト「…尽力、するよ」


…短いけど追加、で次回に続く。

>>7でライナーは正義感の固まりで素直に獲物を譲らないってあるけど
原作でアルミンの荷物をばれないように持とうとしたからちょっと違和感ある

>>37 これは人によって捕らえ方が違うと思うんだが、俺はこう考えてます

努力もせず「譲ってくれ」と言われた時は譲らないけど
努力してるけど体力が追いつかなくて脱落しかける人は助ける、って感じ
誰にも甘い奴なら仲間からの信頼は得られない、かな…

今回は単純に「譲ってくれ」なので、ライナーはいくらクリスタのためでも譲らない
だからユミルは臆病者のベルトルトを脅して譲ってもらおうとしてて
かつ、みんなの兄貴を味方につけたいという二重の企みだったりします

アニ「まどろっこしいね!」

アニ「これでも喰らいな!」ビュップーン…

ユミル「くっせえー!」バタッ

ベルトルト「強力な足の…臭い」バタッ

ライナー「クリスタだったらご褒美だったのに…」バタッ

アニ「これで解決☆」


…立体機動訓練後。

ライナー「斬撃なんだが、クリスタは俺に比べて腕力がない」

クリスタ「うん…」

ライナー「俺は加速がなくても力任せに深く削ぐことができる。
 だが力のない者が俺と同じ使い方をしたところで、無理がある」

クリスタ「どうしたらいいのかな…」

ライナー「小柄な体格を生かせばいい」

クリスタ「どう、やって?」


ライナー「目標とアンカーを刺す距離を小さくし、その瞬間はガスを多く吹かす。
 体のバランスが重要になるが、軸をしっかりもっていればぶれることはない」

クリスタ「でもそれだとガスの消費が…」

ライナー「小柄な分、普段の移動に消費するガスは少ないと思うが…
 むしろ現場では一撃で仕留める事のが重要だ。違うか?」

クリスタ「うん、そうだね…私のミスで、他の人が死ぬのは嫌だ」

ライナー「よし。…で、うなじへの到達ルートだが――」


ユミル「ほんと頼れる兄貴だな、お前の幼馴染は」

ベルトルト「…そうだね」

ユミル「それに比べて…」

ベルトルト「…自分でもわかってるよ」

ユミル「変えるつもりはないって感じだな」

ベルトルト「……」


ユミル「だがよ、もう少し自発的に動いたらどうなんだ? 今日の訓練にしても、だが」

ベルトルト「……」

ユミル「お前程の腕があれば、あの2人には
 敵わなくてももっといい成績残せるだろうに」

ベルトルト「必要、ないじゃない。憲兵団目指すだけなら」

ユミル「へぇへぇ、余裕で羨ましいことですよ」

ベルトルト「…君も」

ユミル「ん?」


ベルトルト「君も、本気出してないように見えるんだけど」

ユミル「……」

ベルトルト「彼女にあわせてるように見えたよ、後ろから見てると」

ユミル「…お互い様だな」

ベルトルト「なのかな」


ユミル「…なぁ」

ベルトルト「なに」

ユミル「お前、何考えてんだ?」

ベルトルト「え…」

ユミル「聞き方がまずかった。なんで協力しようと思った」

ベルトルト「なんでって…」


ユミル「いくら平穏な訓練兵生活のためとはいえ、
 少しばかり抵抗してもいいもんだが」

ベルトルト「……」

ユミル「…何故だ」

ベルトルト「深い意味は。君の言うように、彼のためにもいいかなって」

ユミル「押し付けることもできなくはなかったよな。
 もしくは、脅されてることを言うこともできた」

ベルトルト「…3人だと、君、彼が話しかけるのを止めそうだし。
 今だって、僕がいないと間に入ってるよね」


ユミル「へぇ…あくまで、ライナーのためか」

ベルトルト「……」

ユミル「あいつがクリスタに好意を寄せてるのは事実ってわけだ」

ベルトルト「……」

ユミル「尚更、2人きりにはしてやれないな」

ベルトルト「…君、クリスタの何なのさ」


ユミル「それに答えるには、お前と彼女との関係を聞かなきゃならなくなるが?」

ベルトルト「…何もないよ、僕らには」

ユミル「きっかけとか」

ベルトルト「……」

ユミル「ククク…ま、せいぜいそれ以上
 ボロ出さないようにするんだな。脅すネタが増える」

ベルトルト「はぁ…」

クリスタ「ユミルー! 行くよー?」

ユミル「とりあえずお前に免じて、
 2人で話す場くらい用意してやるよ。私の目の届く範囲でな」


…次回に続く。


…数週間経過のとある休日。トロスト区。

サシャ「むむ、あそこにも新店舗が…」

ユミル「お前まだ食う気かよ」

サシャ「私にとって、食べることは生きることですから!」

ユミル「そりゃ食べなきゃ生きられねぇわけだが、
 それはさておき…他に買うものはねぇのか?」

クリスタ「うん、必要なものはもうないんだけど…」


ユミル「何かあるのか」

サシャ「えっと…その…」

ユミル「気になるなら行って来いよ。私らは先に帰るから」

サシャ「うう、しかしですね」

ユミル「で、何が欲しいんだ」

クリスタ「私のものではないの。ただ…最近、お世話になってるから」

ユミル「ああ…」


クリスタ「お礼に何か…何がいいんだろう?」

ユミル「さぁな」

サシャ「お礼、ですか」

ユミル「お前は新店舗とやらに行くんじゃないのか」

サシャ「恩人様が悩んでいるのにそれを見過ごすとは酷いですよ、ユミル」

ユミル「けっ」


サシャ「しかしお世話になっているとは…ライナーとベルトルトに、ですか」

クリスタ「うん…」

ユミル「ほぅ…世話になっているように見えるのか」

サシャ「最近一緒に訓練してますし。ただ教えてもらってるだけですよね?」

ユミル「ああ」

サシャ「ですよね…」

ユミル「どうかしたか」


サシャ「いえ、ちょっと小耳に挟んだだけなんですよ。
 2人がライナー達に取り入ろうとしてるんじゃないかって。
 私は、教えてもらってるだけではと答えたんですけど」

クリスタ「そんな…」

ユミル「誰に聞いた?」

サシャ「えっと…誰だったかな、茶髪で…」

ユミル「…まぁ、それは帰ってから部屋で詳しく聞こう」

サシャ「ですです。それでクリスタは、何を贈るんですか」


クリスタ「えっと…男の人って、何を貰うと喜ぶんだろう」

サシャ「うーん…」

ユミル「まず、手元に残るものか残らないものか、どっちがいいんだ」

クリスタ「…残らないもの、かな」

サシャ「となると食べ物!食べ物しかないでしょう!」

ユミル「お前が食べたいだけなんじゃないのか」

サシャ「そんな、まさか」


クリスタ「サシャは、何がいいと思う?」

サシャ「そうですね…寝る前に小腹が空いてしまった時の
 空腹感を紛らわすものとかどうでしょう」

クリスタ「寝る前、かぁ…」

サシャ「日持ちするお菓子とか…」

クリスタ「お菓子?」

サシャ「ええ。よければ案内しますよ?」

クリスタ「お願いしてもいい?」

サシャ「もちろんですよ。ささ、はやく行きましょう」


ユミル「お前のために行くんじゃないからな」

サシャ「わ、わかってますよ…」

ユミル「…しかし」

クリスタ「どうかしたの?」

ユミル「渡すのは私に任せてもらってもいいか?」

クリスタ「え、どうして?」


ユミル「人前で渡したら、取り入ろうとしてるとさらに思われるだろ」

クリスタ「でも…」

ユミル「お前の感謝の気持ちだとしっかり伝えといてやる。
 今日の夜、お前はサシャと一緒に部屋にいろ」

クリスタ「ユミルは?」

ユミル「少し話したいこともあるしな」

クリスタ「話したいこと?」


ユミル「ああ。今回の件に関して話しておきたい」

クリスタ「……」

ユミル「心配するな。あいつらに迷惑かけないようにするため、だ」

クリスタ「なんだか、ユミルにまかせっきりな気がする」

ユミル「元は私が言い出したことだからな」

クリスタ「でも私だって…」

ユミル「いいから、お前は笑顔でいればいいんだよ。
 人も騙せません、私はいい子ですって振舞えばいい」


クリスタ「振舞うだなんて」

ユミル「悪いな、根っからそう思ってるんだったな」

クリスタ「…違うよ、私は」

ユミル「何でもいいんだよ。お前は、そのままでいてりゃ」

クリスタ「……」


サシャ「? 行かないんですか?」

クリスタ「ううん。ごめんなさい。いこっか」

ユミル「ま、食に関してはお前の舌を信用してやるよ、芋女」

サシャ「任せてください! でもその芋女ってのは…」

ユミル「なんだ、芋女」

クリスタ「…ユミル」

ユミル「…わーったよ。案内しろよ、サシャ」


…夜。某所。

ユミル「よぅ。…誰にもつけられてなさそうだな」

ベルトルト「こういう呼び出し、やめてほしいんだけど」

ユミル「仕方ねぇだろ。…ほらよ」

ベルトルト「なにこれ」

ユミル「クリスタからお前らに。日ごろのお礼だとよ」

ベルトルト「そ、そう」


ユミル「…人前で渡すわけにはいかなくてな」

ベルトルト「……」

ユミル「察しがよくて助かるよ」

ベルトルト「…はぁ」

ユミル「安心しろ。こちらはその手の話題に振り回されたくない」

ベルトルト「……」


ユミル「恋の話はネタにされやすいからなぁ?」

ベルトルト「……」

ユミル「ククク。ま、"仲良く"なったようには見えるようだし
 そろそろ一緒の行動も控えようと思ってな」

ベルトルト「…そう」

ユミル「ライナーにもそう伝えといてくれ」

ベルトルト「…ガッカリさせちゃうね」


ユミル「機会がありゃまた教えてもらうさ」

ベルトルト「まぁ…クリスタにありがとうって伝えといて」

ユミル「一応、私も半額出してるんだが」

ベルトルト「…ありがと」

ユミル「どういたしまして。…で、本題だ」

ベルトルト「……」


ユミル「そう嫌な顔するなよ」

ベルトルト「何かあると思ったよ。渡すだけなら人前でも構わないし」

ユミル「ほぅ…」

ベルトルト「あえて人のいるところで、これからは自分達で
 頑張るとでも言った方が、周りに与える印象はむしろ良い」

ユミル「意外に頭回るんだな。さすが上位様と言うべきか」

ベルトルト「……」

ユミル「…常に人の目を気にしてるせいか」

ベルトルト「…何でもいいよ」


ユミル「話を進めるぞ。1ヶ月後の山岳訓練なんだが、同じ班で行動したいんだ」

ベルトルト「それこそ一緒じゃない方がいいんじゃない。
 確か野営も含んでの訓練だったはずだけど」

ユミル「ああ。でも…私はともかく、クリスタの体力が心配でな」

ベルトルト「……」

ユミル「半年後の雪山訓練までには今以上の体力をつけさせるが…
 元々体は強い方じゃない。なのに人に頼ろうとしない」


ユミル「ただ、最近のあいつは私に対して反抗期でなぁ…
 私が道と歩度考えても、もっと頑張れるって言い張るに違いねぇんだ。
 ライナーならうまいこと管理してくれるだろ?」

ベルトルト「まぁ…するだろうね。でも」

ユミル「…なんだ」

ベルトルト「ほんと、クリスタのことが大事なんだね」

ユミル「ああ。私の天使様だからな」

ベルトルト「自分のことより大事なの?」


ユミル「…やけに探るな」

ベルトルト「こちらだけ弱みを握られてるってのもね」

ユミル「…へぇ。逆に脅そうってことか」

ベルトルト「そんなことするつもりはないよ」


ユミル「裏で脅してるなんてバレたら、ライナーが黙ってなさそうだが」

ベルトルト「それは君も同じなんじゃない」

ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「…ククク」

ベルトルト「…なに」


ユミル「ベルトルさんよ、お前、この程度のことで対等になれるとでも思ったか?」

ベルトルト「…思わないけど」

ユミル「クリスタに何かしてみろ。お前は私だけでなく、相方にも嫌われる立場だ」

ユミル「対して、私がお前を脅してるのがバレたところで…そうだな、
 お前に興味があったと言えばクリスタは許してくれるだろうな」

ユミル「表向き付き合ってるとでも噂が流れれば
 否定したけりゃお前は好きな相手を話さなきゃならない」

ベルトルト「…君は、彼女の為なら自ら話のネタになろうっていうの?」

ユミル「ああ。下手に逆らうと痛手を見るのはお前のほうだと覚えておいたほうがいい」


ベルトルト「……」

ユミル「本題2つ目だ。立体機動訓練で、
 偶然ルートが被ったら、獲物を譲ってくれるとありがたいんだが」

ベルトルト「…偶然、ね」

ユミル「そうだ」

ベルトルト「難題な上に、拒否権はないと」

ユミル「お前ならできるだろ」

ベルトルト「買いかぶりすぎじゃない」

ユミル「この数週間、一緒に行動したからこそわかる。
 お前…いや、お前らにはまだまだ余裕がある」


ユミル「加えて、お前は目立たないようにするのが得意だ。
 このくらい、朝飯前だと思うが」

ベルトルト「…そうかな」

ユミル「私の見立てではな」

ベルトルト「見当違いじゃないの」

ユミル「目には自信があるんだが」

ベルトルト「…そう」


ユミル「無理にとは言わないさ」

ベルトルト「…でも、協力はしろ、と」

ユミル「…好きに捕らえてもらって構わない」

ベルトルト「…クリスタにはありがとうと伝えておいて」

ユミル「クリスタには、か」

ベルトルト「……」

ユミル「…いい性格してるな」

ベルトルト「君ほどじゃないよ」

ユミル「ククッ、まぁ…1ヶ月後は頼んだぜ」


…次回は多分月曜日。>>1に書き忘れたが、一応ユミルが主人公。
中盤~ケツと書き出しだけ決めて、前半考えてなかったから躓いて投下遅れた。


…1ヶ月後、山岳訓練。行進中。

ユミル「頼りになるねぇ」

ベルトルト「……」

ユミル「誰かさんと違ってよ」

ベルトルト「喋ってると危ないよ。体力も消耗する」

ユミル「私はそれほどやわじゃないんでね」

ベルトルト「そう。でも…そこ、」


ユミル「ん…? おわっ」

ベルトルト「…滑るから」

ユミル「そういうことは早めに言えよ」

ベルトルト「危ないって言ったよ」

ユミル「ああそうかい」

ベルトルト「……」


ユミル「先頭はライナーに任せて、お前はしんがり担当とはね」

ベルトルト「10人いるんだ。それにしんがり担当は君も同じなはずだよ」

ユミル「ああ。上位陣のみで組むのはよくないから、
 下位の奴らを誘ったんだろ。それならクリスタも無理はできない」

ベルトルト「……」

ユミル「考えたのはお前か?」

ベルトルト「…ライナーだよ。僕は2人が一緒に組めるようにして欲しいと言っただけ」

ユミル「私の意図を汲み取りつつ、下位の奴らを見捨てない。ほんとにできた男だことだ」


ベルトルト「…そうだね」

ユミル「できすぎてる、気もするが」

ベルトルト「…そう?」

ユミル「あいつを見てるとな。どこか必死になってる気がしてくんだよ」

ベルトルト「……」

ユミル「やらなきゃ自分を許せない、ってな」


ユミル「思い当たる節は」

ベルトルト「…さぁ」

ユミル「…マリア出身者は、どうも癖がある」

ユミル「巨人を憎む奴、人に依存する奴、自分の無力を嘆く奴、自分以外信じない奴」

ユミル「…生き残ったことに罪悪感を抱く奴」

ベルトルト「……」


ユミル「原動力が何にせよ、それが糧になってるならいい。
 だが…無理をしすぎると、いつかしっぺ返しを食らうぞ」

ベルトルト「彼が、そうだと言うの」

ユミル「さぁな。それは付き合いの長いお前のがわかるんじゃないか」

ベルトルト「……」

ユミル「ま、私はクリスタさえ無事ならなんだっていいが」

ベルトルト「……」


ユミル「おや、聞かないんだな」

ベルトルト「君がクリスタをどう大事に思ってるか、なんてどうでもいいけど」

ユミル「脅しネタにも使えないしな」

ベルトルト「…右手5歩、崩れやすいから。
 それに、今の言い分を聞いてると、彼女が君の糧になってるってことだけはわかる」


ユミル「……」

ベルトルト「君がどこ出身かは知らないし、何があったか知らない。
 ただ君の言うマリア出身者のように過去に何かあって、何かを抱えて訓練所に来た」

ベルトルト「そしてここに来て、彼女から何かを感じた、とかね」

ユミル「……」

ベルトルト「…ま、なんだっていいけど」


ユミル「…そうだな。お互い腹の探りあいはやめだ」

ユミル「お互い大切な、譲れないものがある。それだけでいい」

ベルトルト「……」

ユミル「それを守る為に、私はお前らを利用する」

ベルトルト「利用、ね…」


ユミル「ライナーのことを思えばお前にも利点はあるだろ」

ベルトルト「譲る気もないのに」

ユミル「まぁな」

ベルトルト「利用というより騙しに近いよね」

ユミル「お前の保身の為にな」

ベルトルト「……」


ユミル「ま、嫌いじゃねぇよ。お前のこと」

ベルトルト「え…」

ユミル「誰だって自分が大事だ。
 誰かの為に自らを犠牲にするって考えを持つ方が不自然ってもんだ」

ベルトルト「……」

ユミル「…そうしなきゃならねぇ時もあるんだろうが」ボソッ

ベルトルト「? 何か言った?」


ユミル「いんや。前方4歩、躓き注意っと」

ベルトルト「…3歩だけどね」

ユミル「うっせ。お前がでかすぎるんだよ」

ベルトルト「好きでこうなってるわけじゃ…」

ユミル「だったらそれ以上でかくならねぇ方法でも調べてろ」


…夜。

ライナー「寝たか」

ユミル「ああ。よりによってお前と火の番とはな」

ライナー「……」

ユミル「……」

ライナー「…聞きたいことがあるんだが」

ユミル「なんだ」


ライナー「今回のことはベルトルトから聞いてる。
 クリスタの為に、俺に導いて欲しいと」

ユミル「…そうだが」

ライナー「前回の時もそうだが…何故、俺に直接言わなかった」

ユミル「……」

ライナー「周りから信頼されてるつもりだが」

ユミル「……」

ライナー「…お前からは信頼されてないのか」


ユミル「さぁな」

ライナー「それとも、ベルトルトの方が信頼できるか?」

ユミル「そうだな」

ライナー「ほぅ」

ユミル「クリスタに関してはな」

ライナー「なんだそれは」


ユミル「私は他の奴らにクリスタを任せるつもりはない。
 特に好意を持って接してくる奴らにはな」

ライナー「……」

ユミル「お前がクリスタのことをどう思ってようがあまり関係ない。
 ただ、お前の腕だけは買っている」

ライナー「ふむ…」

ユミル「あいつ…ベルトルさんは、クリスタには何とも思ってないだろ」

ライナー「どうしてそう言いきれる」


ユミル「それはお前が一番知ってるんじゃないか? ライナーさんよ」

ライナー「……」

ユミル「ベルトルさんが好きな奴は他にいる。それが理由じゃ不満か」

ライナー「…なるほど」

ユミル「他に守りたい相手がいるなら、守る為に生きようとする。
 離れてたら無事を確認する為、死に物狂いで生き抜こうとする」

ライナー「……」

ユミル「危険であれば尚更。この訓練はなかなかに危険だしな」


ライナー「自分がそうだから、か」

ユミル「……」

ライナー「だが、その原理だと何かあった時に俺達を見捨てるかもしれんぞ」

ユミル「それはない」

ライナー「どうしてだ」

ユミル「お前がいる」


ライナー「……」

ユミル「ベルトルさんにとって、お前も大事な存在みたいだからな」

ライナー「そう見えるのか」

ユミル「ああ。だから人を見捨てられないお前の意見を尊重する。
 結果、ベルトルさんは私らを助けなきゃならないわけだ」

ライナー「……」

ユミル「違うか?」


ライナー「いや…」

ユミル「にしても、だ。お前は甘すぎるんじゃないか」

ライナー「ん?」

ユミル「あの消極的な性格。あれ、ほとんどお前のせいだろ」

ライナー「そう、か…?」

ユミル「お前が全てやっちまうから、頼って前に出ねぇんだよ」

ライナー「……」


ユミル「思い当たる節あるだろ」

ライナー「…色々あったからな」

ユミル「ま、私には今のままでいてもらった方がありがたいが」

ライナー「どうしてだ」

ユミル「あいつが意思を持ってみろ。根っこが暗いから
 キレた時に全てをめちゃくちゃにしてかかってもおかしくないぞ」

ライナー「…そうだな」

ユミル「そうなった時にお前は止められるか?」


ライナー「…自信はない」

ユミル「んだよ、頼りねぇな」

ライナー「俺だって出来ないことくらいあるさ」

ユミル「でも、止めてやれよ」

ライナー「……」

ユミル「守ってやれ。一緒に生き残ったならな」

ライナー「ああ」


ユミル「あー、なんからしくないことした」

ライナー「…お前、案外いい奴だな」

ユミル「当たり前だ。今更気づいたか」

ライナー「あいつのこともよく分かってくれてる」

ユミル「あまり分かりあいたくはねぇが」


ライナー「そう言うな。あいつは、アレ以来人と距離を置く癖があってな」

ユミル「……」

ライナー「また甘やかすと言われそうだが、時々話しかけてやってくれ」

ユミル「…甘やかしじゃねぇ、過保護に訂正する」

ライナー「過保護、か」

ユミル「ああ」


ライナー「クリスタに対するお前の行動は過保護じゃないのか」

ユミル「私のは愛情だ。それに、厳しくしなきゃならん時は厳しくしてる」

ライナー「ほぅ」

ユミル「私を信用させようといいとこ見せたって、逆効果だからな」

ライナー「これは手厳しいな」

ユミル「当たり前だ。どれだけ魔の手が多いと思ってる」


ライナー「逆に言えば、お前が守ってる限りクリスタは大丈夫ということか」

ユミル「…まぁ、そうだな」

ライナー「…難攻だが致し方ない」

ユミル「ククッ、せいぜい頑張ることだな」


…次回に続く。
毎回上げてくださってる方がいるけども、ゆっくりひっそり更新したいし
他のSSに迷惑かけたくないので、できることならsageでお願いします。


…山岳訓練終了。宿舎前。

「っしゃー!今年もなんとかクリアできたぞ!」

「おいおい、半年後に最後の雪山訓練があるんだぞ…」

「言うなって。しっかし今回は楽に感じたなぁ」

「そりゃ、俺らの兄貴が導いてくれたからな!」

「ありがとな、ライナー。声かけてくれなきゃ、今年こそ開拓地行きだったかもしれねぇ」


ユミル「去年脱落ギリギリだった連中が、今年は余裕の帰還か。
 選んだコースもペースも、完璧だったな」

クリスタ「遅れてる人の荷物持ってくれたり、
 疲れた人の火の番変わってくれたり…ライナーって、すごいね」

ユミル「ああ」

クリスタ「ベルトルトも、ありがとう」

ベルトルト「うん…?」


クリスタ「ユミルとサポート、してくれてたんでしょ?
 2人とも一番後ろから迷子が出ないようにって」

ベルトルト「…結局、何も起きなかったよ」

ユミル「そうそう。私らはなーんもしてねぇ」

クリスタ「それでも、2人が後ろにいてくれるって安心感はあったよ。
 崖を登る時とか…怖かったから」

ユミル「そうかいそうかい。お前も体力つけて、後ろから見張れるくらいになっておくれよ。
 でかいのと一緒なんてこりごりだからな」

クリスタ「ユミル!」


ユミル「怒るな怒るなって………ッ!」

ベルトルト「……」

クリスタ「? ユミル?」

ユミル「…いや、なんでもねぇ。
 にしても早く帰って熱い風呂にでも入ろうぜ」

クリスタ「そうだね、野営だったからタオルで拭くくらいしかできなかったし…」


ユミル「つーわけでお別れだ、ベルトルさん」

ベルトルト「うん、じゃぁ…また」

クリスタ「また?」

ユミル「…対人格闘で組む約束しててな」

クリスタ「…ユミル、また甘えるつもり?」


ユミル「いいだろ。背の高い私とやれる女子は少ねぇし、こいつなら実力も申し分ない」

クリスタ「ごめんね、ベルトルト…いつもユミルがわがまま言って」

ベルトルト「いや…いいよ。僕も相手探す手間が省けるし…」

ユミル「じゃぁな、ベルトルさん」


………

クリスタ「仲、いいんだね、ベルトルトと」

ユミル「は? 何言ってんだ」

クリスタ「最近楽しそうに2人で話してるじゃない」

ユミル「あいつからかうの面白くてな。
 なんだ嫉妬か? 私が好きなのはお前だけだから安心しろよ?」

クリスタ「もう、そうやっていっつも…」

ユミル「本心なんだからしょうがないだろ。あー、風呂入りてぇ、急ぐぞ」


ユミル「……」

ユミル(宿舎近くにいた商人風の男…こっちを見てたが、
 クリスタの無事を確かめにきたのか? …暇な奴らだ)


…半年後、トロスト区。

ユミル(あれからも、監視は時々行われていた。もちろん、あの雪山訓練の後にも
 奴らは気づかれないようにこっそり確認しにきていた。私にはバレバレだったが…)

ユミル(クリスタの順位は、順調に上がっている。
 このまま頑張れば、10位内も夢じゃないだろう)

ユミル(…アイツが、ほんとうまいこと獲物を譲ってくれるからなんだが)


ユミル「…今日は何買うんだ」

クリスタ「んっと…もうすぐ冬だから、手袋とクリームが欲しいかな」

ユミル「お前すぐに荒れるからなぁ」

クリスタ「うん…でも、ユミルは全然荒れないよね。
 お手入れあまりしてないように見えるけど、実は何かやってる?」

ユミル「なーんも。…丈夫なんだよ、単純に」

クリスタ「いいなぁ…」


ユミル(修復した覚えはないが…自然治癒力も高いんだろうな、この身体は)

ユミル(しかし今後は気をつけなきゃならんか?
 肌荒れ程度で疑われることはないと思うが…)


クリスタ「ねぇ、ユミル…あれ、」

ユミル「ん?」


「貴族だかなんだか知らないけどねぇ!
 お代払ってもらわなきゃ困るんだよ!」

「何よ、お金ならパパにって言ってるでしょ!」

「どこの誰かも証明できるものがないのに、
 どうやって支払いをお願いするんだい!」


ユミル「貴族のお嬢様の無銭飲食か?
 大方、パパの仕事についてきてこっそり抜け出してきたんだろうさ」

クリスタ「うん…」

ユミル「ま、子供のうちに痛い目見といた方がいいだろ」

クリスタ「でも…」

ユミル「でもじゃねぇ、悪いのはあのガキだ。または躾のなってない親だな」


クリスタ「……」

ユミル「…行くぞ」

クリスタ「あっ」

ユミル「あいつ…逃げやがった」

クリスタ「追いかけよう!」

ユミル「おい!待て、クリスタ!!」

…次回に続く。姉さん、事件です。


…路地裏。

クリスタ「ちょっと、あなた!」

「な、何よあなたは…」

クリスタ「逃げちゃだめでしょう?」

「しかたないでしょう! あのおばさん、うるさいんだもの」

クリスタ「…あなた、お家の人は」

「……」


ユミル「ふぅ~、追いついたぜ…ったく、足ははえぇんだからな」

クリスタ「…名前は?」

「……」

ユミル「…おいガキ、わかってねぇようだから言ってやる」

「な、なに…」

ユミル「憲兵に突き出されたくなけりゃ、さっさと言うんだな」


「!…アルマ」

ユミル「姓もだ」

アルマ「…ハイマン」

ユミル「ハイマン…聞いたことねぇな」

クリスタ「…貴族と言っても、たくさんあるから」

ユミル「ま、本名かどうかも怪しいが、ひとまず信じてやる」


アルマ「……」

ユミル「…逃げるぞ」

クリスタ「えっ?」

ユミル「そのガキに追っ手がかかってる。身代金目的の誘拐だろうが」

アルマ「そんな…」

ユミル「この辺は治安がわりぃんだよ…よりによって、こんなとこで騒ぎ起こしやがって」


「いたぞ!こっちだ!」

ユミル「ちっ…いいから、来い!」ガシッ

アルマ「うわっ」

ユミル「クリスタ、お前もだ。助けるんだろ」

クリスタ「もちろん!」

ユミル「走れ!」


ユミル「……」

「待て!お前ら!」

「大人しくしろ!」

ユミル(やべぇな、増えてきやがった…)

クリスタ「はぁっ、はぁっ…」

ユミル(とりあえず後続を断たねぇとこいつが持たない、か…)


ユミル「おい、クリスタ」

クリスタ「な、なに?」

ユミル「こいつ抱えてこの先の路地で隠れてろ」

クリスタ「え? ちょっと、ユミル?」

ユミル「いいから!」

クリスタ「…無茶は嫌だからね」

ユミル「ああ…行け!」


「お前…そこをどけ」

ユミル「ツレが助けるって言って聞かねぇんでね。悪いがお断りだ」

「仕方ねぇ、恨むならあの子を恨めよ」

ユミル「……」

ユミル(2人…狭いが、なんとかなるか)


「なんだ、やる気か」

ユミル「……」

「…お前、仲間呼んで来い」

「あ? なんでだよ」

「早く行け」

「ちっ…1人くらい残しておけよ」


ユミル「…へぇ、あんたやり手だね」

「お前…訓練兵か」

ユミル「大当たり。なら、見逃してくれるかい」

「残念だがな。こっちも金が欲しいんでね」

ユミル「金ねぇ…まともに稼ぐって考えはないのかね」


「……」

ユミル「…私が言えたことじゃないか」

「……」

ユミル「…来な」

「はぁぁっ!」


………

クリスタ「ユミル!」

ユミル「おう、無事か」

クリスタ「怪我は?」

ユミル「あるかよ。何のための対人格闘訓練だ」

クリスタ「良かった…」


ユミル「だが1人逃がした。仲間を呼びに行ったから、直にここに来る」

クリスタ「逃げなきゃ…」

ユミル「あぁ、でもどこに行ったもんかな。ちと奥に入りすぎた」

クリスタ「……」


ユミル(アルマを抱えて戦うことはできねぇしな…)

アルマ「足、痛い…」

クリスタ「硬い靴でたくさん走ったからね…ちょっと見せてごらん?」

ユミル(クリスタが抱えて走るのは無理だ、となると人を呼ぶしかねぇが)

ユミル(憲兵…は、避けたいところだな。公に事を起こしたくねぇ)


クリスタ「擦れてマメになっちゃってるね。脱いで走るしかない、かな…」

アルマ「……」

ユミル「…人を呼んでくる」

クリスタ「人を…?」

ユミル「ああ。お前らは隠れてろ」

クリスタ「隠れるって、どこに」


ユミル「そこの倉庫に箱でも何でもあるだろ」

クリスタ「でも…」

ユミル「1時間以内に戻る。絶対に見つかるなよ」

クリスタ「ユミル…」

ユミル「私を信じろ。こないだだってなんとかなったろ」

クリスタ「どうやったか、教えてくれてないけど」

ユミル「それを教えるには条件があったよな」

クリスタ「……」


ユミル「どっちにしろ今は話せねぇ。信じて待っててくれ」

クリスタ「…わかった。でも、約束して」

ユミル「なんだ」

クリスタ「絶対に、皆助かるって」

ユミル「ああ、約束する。だから待ってろ」


…次回に続く。例によってドイツ人の名前一覧から適当にピックアップ。
転職して投下時間も間隔も今年はバラバラにて候。


ユミル(憲兵にはクリスタを戻らせてから後処理だけお願いするとして…)

ユミル(あそこの路地から抜け出すには、2人…いや、1人でいい、腕の立つ奴なら)

ユミル(この時間なら、確かあそこにいるはずだ…!)


…宿舎の庭。

ユミル「はぁっ、はぁ……よぅ」

マルコ「ユ、ユミル? 一体どうしたの、そんなに息切らして」

ユミル「ちょっと、こいつ借りるぞ」

ベルトルト「え、ちょっと…!」

ユミル「いいから来い、お前の力が必要なんだよ」

ベルトルト「待ってよ、ユミル」

マルコ「そうだよ、一体どうしたの」


ユミル「猫を助ける、木に、登って、下りられねぇ、クリスタが、待ってる」

マルコ「ね、猫?」

ユミル「ああ、ベルトルさんなら背が届くから、頼む、よ」

マルコ「そ、そう…」

ベルトルト「えっと…」

マルコ「本は、君の机に置いておくね…?」

ベルトルト「うん…ごめん」

ユミル「すまねぇな……行くぞ」


………

ベルトルト「待って、ユミル。ほんとは…どうしたの」

ユミル「クリスタがやらかした」

ベルトルト「え?」

ユミル「早く行かないとあいつの身が危ない」

ベルトルト「どういう、こと…」

ユミル「いいから! 手伝えよ!」


ベルトルト「…彼女が監視されてることと関係あるの」

ユミル「…何のことだ」

ベルトルト「彼女の近くにいると、たまに視線を感じて。彼女は、何者なの」

ユミル「今は話す時間が惜しい。…頼む」

ベルトルト「面倒な事件に巻き込まれたくない。
 いくら君に脅されているとはいえ、そこまでのリスクを負うつもりはない」

ユミル「……」

ベルトルト「…関係、ある?」


ユミル「ない。ただの厄介事だ」

ベルトルト「そう。1つ貸しにできるかな」

ユミル「…何が望みだ」

ベルトルト「なんだろう。今は思いつかないけど」

ユミル「そうか、なら今度にしな。
 私に出来ることなら何だってしてやるが、今は時間が惜しい」


ベルトルト「僕だけでいいの?」

ユミル「あぁ、ライナーは目立ちすぎる。他もしかり、だ」

ベルトルト「背丈だけなら目立つ方なんだけど…」

ユミル「ベルトルさんは気配を殺すのがうまいからな。どこで覚えたか知らねぇが」

ベルトルト「……」

ユミル「まぁいい。急ごう、あいつは何しでかすかわかったもんじゃない」


…路地裏、倉庫。

クリスタ「大丈夫だよ。ユミルならちゃんと戻ってくるから」

アルマ「……」

クリスタ「…早く帰らないとね。お父さんに心配させちゃう」

アルマ「…どうして」

クリスタ「うん?」

アルマ「どうして、そんなに優しくしてくださるのですか」


クリスタ「どうしてって…」

アルマ「私は、お金も払わずにお店を飛び出しました。
 それを見て、あなたは追いかけてきた」

アルマ「憲兵に突き出すわけでもなく、
 そればかりか誘拐犯からも守ってくださっている」

クリスタ「……」

アルマ「…どうして?」


クリスタ「どうして、だろうね」

アルマ「…訓練兵なんですよね」

クリスタ「うん。見えない、かな…」

アルマ「先ほどの…ユミルさんはそう見えますが」

クリスタ「私は見えないかぁ…」

アルマ「…申し訳ございません」


クリスタ「ねぇ…敬語、やめにしよ?」

アルマ「え…?」

クリスタ「人と話す時はそうするように教えられてる、よね…
 でも、今日は羽根を伸ばしに一人でここにきたんだよね?」

アルマ「それは、まぁ…ですが、」

クリスタ「だったら、やめよ。こんなことになっちゃってるけど」

アルマ「……」

クリスタ「せっかくなんだし、ね?」


アルマ「…変な人」

クリスタ「ひどいなぁ、これでも訓練兵では真面目な方だと思ってるんだけど」

アルマ「…見えないけど」

クリスタ「頑張ってるんだけどなぁ…」

アルマ「ねぇ、訓練兵って何してるの?」

クリスタ「色々だよ。体を鍛えることから、立体機動訓練、馬術、兵法…
 何かあった時の為にって、災害救助訓練だとか山岳訓練だとか」

アルマ「へぇ…大変なんだ」


クリスタ「うん…でも、楽しい、かな…」

アルマ「大変なのに?」

クリスタ「…仲間が、いるから」

アルマ「ユミルさんとか? いじわるそうだけど」

クリスタ「実際いじわるだよ、ユミルは」

アルマ「……」


クリスタ「でも、優しいの」

アルマ「…見えないけど」

クリスタ「くすっ、だよね」

アルマ「ふふ」

「…見つけたぜ、お嬢さんたち」

クリスタ「!」

「そこから出てきてもらおうか」


…路地。

「そうそう、暴れなきゃ手荒な事はしねぇ」

「これは上玉もついてきたな」

「もう1人はどうした?」

「人でも呼びにいってるんじゃないか」

クリスタ(…人が多い。ミカサに教えてもらった技はここじゃ使いにくいし)

アルマ「痛いっ、放して!」

クリスタ「アルマ!」

クリスタ(どうしたらいいの、どうしたら…ユミル!)


「暴れるなって言ってるだろうが!」

クリスタ「ッ! やめて!」

「お前もだ、暴れるようなら…ぐあっ!」

ユミル「注意力散漫だねぇ。もっとも、屋根からの飛び蹴り食らうのは初めてか?」

クリスタ「ユミ…んぐっ」

ユミル「……」

クリスタ「ちょっと、何す「助けにきたつもりかもしれんが」

「こっちはこの人数で、人質はこちらにあるわけだが」


ユミル「そうだな」

「加えてそっちは逃げ場がないぞ」

ユミル「…お前らもな」

「は…? グッ」

ユミル「ひゅー、おっかねぇ…」

クリスタ「え…」


ベルトルト「君は後ろにいて」

アルマ「え、あ…はい」

クリスタ「え、ベル 「じゃぁ先生、やっちまってください!」

クリスタ「…先生?」

ユミル「こいつらに名前教えるわけにいかんだろうが…」

クリスタ「あ…」


「なんだこいつは!」

「いつの間に…!」

「数はこっちのが多いんだ!」

「やれ!!」

ユミル「っしゃー、暴れるか!」

クリスタ「ちょっと、ユ…「姐さん」

ユミル「姐さんと呼びな」

クリスタ「……」


ユミル「女神様はアルマを守ってろ。あんま見せたもんじゃねぇし」

クリスタ「う、うん…」

ユミル「あっ、先生に先越されてるじゃねぇか! 負けた方が飯奢ることになってんのに!」

クリスタ「えと…アルマ、見ちゃだめ、だからね?」

アルマ「あ、はい…」

ユミル「ああっ! そいつは私の獲物だぁっ!」


………

ユミル「ひゃー、助かった助かった。流石にこの数を私1人でってのは無理だったからな」

ベルトルト「…そう」

ユミル「先生には後でお礼するとして、女神様とアルマは
 先生と安全なところに行ってくれ」

クリスタ「ユ…姐さん、は?」

ユミル「そろそろ呼んでおいた憲兵が来る頃だと思うんでな…物陰でこっそり見てから行く」

クリスタ「そう…また、任せっきり、だね…」

ユミル「…気にするなら2人の相手してろ」


アルマ「えっと…ありがとう、ございます」

ユミル「おう。じゃぁ、後でな」

クリスタ「うん…」

ユミル「…やることあるだろ、1つ」

クリスタ「! そうだね」


…飲食店前。

アルマ「本当に、申し訳ございませんでした」

「…いいんだよ。お代さえ払ってくれりゃ」

アルマ「…すみませんでした!」


ベルトルト「…で、君が払ってあげるの?」

クリスタ「しょうがないじゃない。あの子、お金持ってないんだもの」

ベルトルト「……」

クリスタ「今は謝ることのが大事だよ」


アルマ「お待たせしました! あの…本当に、ありがとうございます」

クリスタ「ううん。よく謝れたね。偉いよ」

アルマ「…ありがとう、ほんとに」

クリスタ「ユミル遅いね」

ベルトルト「見つからないように遠回りして来るんじゃないかな」


アルマ「あの、ベルトルトさんも、ありがとうございます」

ベルトルト「いや…僕は、頼まれただけだから」

クリスタ「でもびっくりしたな、人を呼んでくるとは言ってたけど」

ベルトルト「ユミルとは対人格闘何度かやってるしね…それで候補にあがったんじゃない」

クリスタ「そういえば。ごめんね、いつもいつも迷惑ばかりかけて…」

ベルトルト「…まぁ」


ユミル「おー、待たせたな」

クリスタ「ユミル!」

ユミル「無事に終わったぞ。訓練兵と思われる奴らに
 やられたとは言ってたが、名前はバレちゃいねぇ」

クリスタ「そう、良かった…」

ユミル「念のため、教官には報告しておいた方がよさそうだが」

クリスタ「それは私がやるよ。本当に、ありがとう」


「アルマ様!」

アルマ「爺…!」

「探ししましたぞ、お一人で出かけられるなど…」

アルマ「ごめんなさい…その…」

「…あなた方は」

ユミル「なぁに、通りすがりの正義の味方ってヤツですよ。な?」

アルマ「…はい! ありがとうございました、女神様、姐さん、先生」


ユミル「おうおう、順応性が良いことで」

アルマ「…秘密、なんですよね?」ヒソッ

ユミル「もち。私達だけのな」

「…どなたか存じ上げませんが、ありがとうございました」

ユミル「いいっていいって、んじゃ戻ろうぜ、女神様」

クリスタ「うん…」


ユミル「先生も行くぞー、腹減ったんだ」

ベルトルト「…お金なら持ってないからね」

ユミル「はぁっ?」

ベルトルト「あの状態で、どう持ってこれるのさ…」

ユミル「ちっ、役にたたねぇやつだ」

ベルトルト「それに賭けなら僕の勝ちだと思うけど」

ユミル「それはそれ、これはこれだ」


アルマ「…姐さんと先生って、仲いいんですね。付き合ってるんですか?」

クリスタ「だよねぇ。でも、違うって否定されちゃった」

アルマ「…喧嘩仲間、ってやつですか」

クリスタ「くすっ、そうかも」

「…お嬢様」

アルマ「うん。行こう」

クリスタ「じゃぁ…」

アルマ「…ありがとう、本当に」

クリスタ「元気で、ね」


…次回に続く。変な展開とオリキャラをお許しあれ。

訂正:>>125の「もうすぐ冬だから」を削除。雪山訓練後でござった。


…訓練後の食堂。

ユミル(あれから1ヶ月…
 あいつは何事もなかったかのように今まで通りに接してきてるが…)

ユミル(監視に気づいていながら、何故一緒に行動していた?
 それをネタにこっちを脅しにかかってもいいもんだが)

ユミル(そればかりか、今も獲物を譲ることをやめない…
 一体、何を企んでるんだ。全く読めねぇ)

ユミル(ちっ…考えても仕方ねぇ、呼び出して話をするしかねぇか…)


「だからオレは調査兵団に入って」

「巨人の餌になりに行くのか?」

「お前…毎回毎回、何なんだよ!」

「なんだ、ヤルか?」



ユミル「おーおー、まーた始まりそうだな」

クリスタ「ほんと、仲が良いんだか悪いんだか」






「いい加減にしてくれ!!」





ユミル「…ん?」

クリスタ「え…今の…」


ライナー「…落ち着け、ベルトルト」

ベルトルト「……」

ライナー「座れ。話はまだ終わってない」

ベルトルト「…兵士の君の説教は聞き飽きたよ」

ライナー「なんだと…おいっ」

ベルトルト「……」


ユミル「おいおい…なんだ、何が起こった」

クリスタ「え…今の、ベルトルト?」

ユミル「あぁ…あいつが大声出して怒るのは初めてじゃないか。
 しかもライナー無視して出て行きやがったぞ…」

クリスタ「何があったんだろ…」

ユミル「さぁな…ただ、由々しき事態だ。
 見てみろ、エレンとジャンが呆けてやがる」


クリスタ「だって、こんなの初めてだもの…」

ユミル「ライナーとベルトルさんの喧嘩か…やれやれ、誰が解決すんだ、これ」

クリスタ「他人事みたいに言うんじゃないのっ! ほら、聞きに行くよ」

ユミル「へいへい、言うと思いましたよ」


ユミル「よぅ、何か物騒じゃないか」

ライナー「ユミルか。気にしないでくれ、これは俺ら2人の問題だ」

クリスタ「そういうわけにはいかないよ。
 2人にはいつもお世話になってるし…ねぇ、何があったの?」

ライナー「うむ…」


マルコ「僕も聞いていいかな」

ユミル「へぇ、お前も首を突っ込むつもりか、マルコ」

マルコ「多分、ここにいる皆が気になってると思うけど…ね?」

「まぁ…そりゃ、な…」

「2人には世話になってるし…」

「つか、あいつ怒るとこ初めて見たぞ」

「ライナー、何言ったんだ」


マルコ「…ほら。場所、変えようか」

ライナー「…そうだな」

マルコ「そういうことで。この場は僕らに任せて、ね」

「マルコが言うならしゃーねぇな」

「頼んだぜ、マルコ」

マルコ「ささ、空き教室にでも行こうか」


…空き教室。

マルコ「で、何があったの?」

ライナー「…あいつを鍛えようと思ってな」

マルコ「鍛える…?」

ライナー「ああ。あの消極的な性格をどうにかしてやろうと」

ユミル「……」


ライナー「それにな、あいつ…いつも本気出してなくてな。
 訓練だからこそ失敗を恐れず、何事にもチャレンジすべきだと思うんだが」

マルコ「え…本気、出してないの? あれで?」

ライナー「ああ…本気出せば、俺を抜かすことも出来ると思うんだが」

マルコ「ま、まぁ…えと、それで、説教を?」

ライナー「ここんとこな。つか、最近あいつが何考えてるかわからん事も増えてな」

ユミル「…へぇ」


ライナー「悩みがあるのか聞いても答えんし、
 訓練も身が入ってない。それで話をしてたってわけだ」

クリスタ「…でも、ベルトルトは怒ってたよね?」

ライナー「あぁ。さっぱりわからん」

マルコ「うーん…僕から聞いてみようか」

ライナー「そうしてくれるとありがたい」


マルコ「わかった。任せて」

ライナー「すまんな」

ユミル「…しかし、いきなりだな」

ライナー「ん?」

ユミル「最近まではベルトルさんの態度を容認してたように思うんだが」

ライナー「あー…」


ユミル「急に言ったなら戸惑いもあるんじゃないか」

ライナー「まぁ…そろそろ卒業だしな」

マルコ「ひょっとして、ライナーは」

ライナー「…迷ってる」

マルコ「やっぱり…」

ユミル「ん?」


マルコ「…調査兵団」

ユミル「な、マジか」

クリスタ「調査兵団に、行くの?」

ライナー「いや、まだ決めかねてる。だが…もし行くとしたら、
 あいつを連れて行くわけにはいかんだろ」

マルコ「彼、憲兵団志望だったよね」

ライナー「うむ。人に判断を委ねる癖があるからな。
 現場でそれをしてたら命を失いかねん」


マルコ「だから、もしついてきても大丈夫なように、
 ベルトルトに意思を持って欲しかったの?」

ライナー「…いつ死ぬかわからん立場になるわけだ。
 いつまでも俺に頼ってばかりってわけにもいかん」

ユミル「……」

ユミル(なんだ、この違和感は…)


マルコ「なるほどね…よし、君のその気持ちも踏まえて、
 一度僕の方から話をしてみるよ」

クリスタ「マルコ、お願いね」

ライナー「すまん…」

マルコ「班員を纏めるのも班長の勤めだしね」

ユミル「さすが偉大なる19班班長様だこって」

マルコ「よしてよ…」

ユミル(とりあえず、ここはマルコに任せるとするか)


…1週間経過。

ユミル「よぅ、相変わらずやりにくそうだな」

マルコ「はは…話はしてみたんだけど、ね…」

ユミル「表向き素直に取り組んでるから、ライナーも何も言わなくなったか」

マルコ「うん…でも、」

ユミル「ベルトルさんは納得してねぇと」


マルコ「みたいだね。益々口数減っちゃったよ」

ユミル「やれやれ、反抗期ってやつか?」

マルコ「だといいんだけど…何か、引っかかるんだ」

ユミル「なんだ、お前もか」

マルコ「うん…ベルトルトもだけど、ライナーも何かおかしいよね?」

ユミル「あぁ…そうだな」


マルコ「あと…最近、心配なんだ」

ユミル「心配?」

マルコ「ベルトルトがね。彼の寝相占いの話は知ってるでしょ?」

ユミル「そりゃ有名な話だからな。それがどうした」

マルコ「…彼、最近自分で起きてるんだ」

ユミル「…ん?」


マルコ「正確には、誰よりも早く起きてる。
 ひょっとしたら、あまり寝てないのかも」

ユミル「…不眠症か?」

マルコ「わからない。でも聞くわけにいかなくて…
 ライナーは、体調管理も兵士の務めだって言うしね」

ユミル「はぁ…えらく厳しくなったもんだ」

マルコ「だね…。ねぇユミル、君からも聞いてみてよ」

ユミル「私がか」


マルコ「うん、何か…ただ話をしてみるだけでも、変わるかもしれないし」

ユミル「マルコの頼みならしゃーねぇな…今度飯でも奢れよ」

マルコ「ふふ、成功報酬でいいかな」

ユミル「へっ、言ったな」

マルコ「よろしく、ユミル」

ユミル「残金確認しとけよ」


ユミル(…とは言うものの、声かけてもろくに話そうとしねぇし、困ったもんだ)

ユミル(それに…マルコの言った通りだな。
 あいつ、ろくに寝てないのか目の下にクマが出始めてやがる)

ユミル(やれやれ、お守りは1人で十分なんだがな…)


…対人格闘訓練。

ユミル「よぅベルトルさん。久々に組もうぜ」

ベルトルト「…他の人と組んでよ。君とやると疲れる」

ユミル「訓練で手を抜くと怒られるんじゃねぇのか」

ベルトルト「…仕方ない、やろう」


ユミル「…なぁ」

ベルトルト「…なに」

ユミル「聞きたいんだが」

ベルトルト「ライナーとのことなら話さないよ」

ユミル「じゃぁクリスタのことだ」

ベルトルト「……」


ユミル「お前、いつから知ってたんだ、監視されてること」

ベルトルト「…さぁ。君達と組むようになってからだから、1年程前かなっ!」

ユミル「おっとと、相変わらずこぇぇ腕だぜ」

ベルトルト「……」


ユミル「知ってたなら何故言わなかった。何故今も獲物を譲る?」

ベルトルト「…別に。何も考えてないよ、ただの暇つぶし」

ユミル「へぇ…真面目にやってるんじゃなかったのか」

ベルトルト「……」

ユミル「お前らに何があったのかは聞くつもりはない。ただ…」

ベルトルト「ただ…?」

ユミル「調子狂うんだよっ!!」

ベルトルト「ッ!?」


ユミル「…避けれたよな、いつもなら」

ベルトルト「……」

ユミル「寝てないんだってな」

ベルトルト「…誰から」

ユミル「マルコ。あいつ以外も心配してる」

ベルトルト「……」


ユミル「立てよ。医務室行くぞ」

ベルトルト「いい、1人で行けるから」

ユミル「いいから、立てって」

ベルトルト「ちょっ…」

ユミル「………お前」

ベルトルト「……」


ユミル「熱もあるな。何維持張ってんだ」

ベルトルト「……」

ユミル「…医務室行くぞ」

ベルトルト「…手は放して」

ユミル「ちっ…面倒くさいやつだ」


…医務室。

ユミル「38度5分…立派な風邪だな」

ベルトルト「……」

ユミル「なぁ、何があったんだよ」

ベルトルト「……」

ユミル「言いたくないのか、言えないのか」

ベルトルト「…言ったところで、君に何がわかるのさ」


ユミル「言ってみなきゃわかんねぇだろ」

ベルトルト「わかるわけないよ、僕らのことなんて」

ユミル「僕ら?」

ベルトルト「……」

ユミル「まただんまりか」

ベルトルト「……」


ユミル「これだからマリア出身者は嫌なんだ。秘密主義者が多くてよ」

ベルトルト「……」

ユミル「そういや、お前の想い人も秘密主義者だったな。いや、あれは孤独主義者か」

ベルトルト「…君に彼女の何がわかるの」

ユミル「ほぅ…まるで自分はわかるとでも言いたげだなぁ?」

ベルトルト「……」


ユミル「興味深いね、お前らがどんなこと話してるのか」

ベルトルト「…何も」

ユミル「だったら何もわかるわけないよな?」

ベルトルト「放っておいてくれ! 君は、いつもいつも、何だってんだ!」


ユミル「ククク、やっと本性が表れてきたな」

ベルトルト「なんなんだ、君は、何がしたいんだ」

ユミル「さぁな。私は気ままに素直に生きてるだけだ、お前と違って」

ベルトルト「……」


ユミル「なぁ、ベルトルさんよ」

ベルトルト「…なに」

ユミル「寝ろよ。今はさ」

ベルトルト「……」


ユミル「そんななるまで、辛かったんだろうが」

ベルトルト「……」

ユミル「寝ろ。話がしたくなったら起きてから聞いてやる」

ベルトルト「……っ、…っく」

ユミル「…やれやれ、でかいお子様もいたもんだ」


…次回に続く。なんとなく19班にライベルアニを突っ込んでみたよ。


ユミル(…ようやく寝たか)

ユミル(いきなり泣き出したのはびびったが…)

ユミル(だいぶ、溜まってたんだろうな)

ユミル(……)

ユミル(何があったか知らねぇが、話くらい後で聞いてやるか)


ガラッ…

ユミル「……」

アニ「……」

ユミル「…先生ならいないぞ」

アニ「…そう」

ユミル「……」

アニ「……」


ユミル「…何だよ」

アニ「別に。対人格闘なら終わったから」

ユミル「わざわざそれを言いに?」

アニ「エレンを投げ飛ばして手を傷めた。湿布取りに来ただけ」

ユミル「…へぇ」


アニ「なに」

ユミル「お前が怪我するなんて珍しいな」

アニ「私だって怪我の一つくらいする。それにエレンも上達した」

ユミル「確かに最近のあいつは腕を上げてるみたいだが…」

アニ「あんたこそ何やってんだ。クリスタ以外の看病なんて珍しいね」

ユミル「よーやく寝付いてくれたとこなんだよ。
 無理して訓練出るくらい追い込まれてたみたいだからな、見張ってたんだ」

アニ「…そう」


ユミル「さて行くかね、次は座学だったな」

アニ「……」

ユミル「…湿布ならその棚の中だぜ」

アニ「あぁ」

ユミル「……」

ガラッ


ユミル「……」コツコツコツコツ

ユミル「……」コツコツ

ユミル「……」コツ…

ユミル(なーんてな、こんな面白い展開を見逃すわけにいかねぇだろ)

ユミル(靴は脱ぐか、あいつ敏感だしな)

ユミル(引き戸でよかったぜ、少し開けてきたが…どれどれ)


ユミル「……」

ユミル(額のタオルをかえてやってるのか)

ユミル「……」

ユミル(…なぁアニ、お前なんて顔してんだよ)

ユミル(そいつとどんな関係なら、そんな顔ができる?)

ユミル(恋人を想ってじゃねぇ、ただの同期ってわけでもねぇ)

ユミル(なんでそんな顔してんだ…)

ユミル(お前らは、一体何なんだよ)


ユミル「……」

ユミル(離れよう、見つかると何言われるかわかったもんじゃない)

ユミル(しかし…)

ユミル(優しさと、苦しさの混じった表情、とでも言うかね…)

ユミル(あの2人、昔に何かあったんだろうが)

ユミル(アニには、ベルトルさんの苦しみがわかる、のか…?)


ユミル(同じように、ベルトルさんはアニのことがわかる)

ユミル(でも、だからこそ近づかない。自分達の傷を舐めあう関係にはなりたくない)

ユミル(こんなところか? いや、何か違うな…とりあえず靴を履くか)

ユミル(うーん、わからん。こりゃ、マルコの勝ちか…?)

「ユミル」

ユミル「……」


ライナー「こんなところで何してる」

ユミル「それはこっちの台詞だな。私は靴の中に石が入ってたから取ってただけだ」

ライナー「…ベルトルトが医務室に行ったと聞いたんでな」

ユミル「あぁ、熱出して寝込んでるよ」

ライナー「熱…?」

ユミル「なぁ、ライナーさんよ」


ライナー「なんだ」

ユミル「お前、あいつのこと大事なんだよな?」

ライナー「…なんだ、いきなり」

ユミル「だったら、何故急に突き放した」

ライナー「……」

ユミル「それがあいつの為になると思ってやったのか」


ライナー「ああ。お前も言っていただろう、甘いと」

ユミル「っ…違うな、お前のそれは、厳しくしてるわけじゃねぇ」

ライナー「…何が言いたい」

ユミル「お前は、自分にも甘いんだ。ようはあいつが邪魔なんだろ」

ライナー「邪魔…?」

ユミル「あぁ、自分がやりたいことの為に、邪魔になったから切捨てようとしてる」


ライナー「なんだと」

ユミル「守るって言ったじゃねぇか、なんで今更、こんな時に見捨てる真似すんだよ」

ライナー「俺は…!」

ユミル「違う? 見捨てるんじゃない?
 だったら、何故気づいてやらない、何故倒れるまで放っておいた!」

ライナー「……」

ユミル「見ないようにしてるだけだ、自分の都合のいいようにな」


ライナー「…お前に、何が」

ユミル「同じ事を言われたよ。ベルトルさんにも」

ライナー「……」

ユミル「ああ、私にはわからない。わかりたくもない。
 この身に背負えるのはあいつだけだ、お前らなんて構ってる暇はねぇんだよ!」

ライナー「……」

ユミル「しっかりしろよ。前を見ろ。ベルトルさんを救えるのはお前だけなんだ」


ライナー「……」

ユミル「一緒に…故郷に帰るんだろ」

ライナー「…っ!」

ユミル「…おい」

ライナー「ああ…そうだったな」

ユミル「どうし、た?」

ライナー「ん?」


ユミル「いや…何でも」

ライナー「すまんな、迷惑かけた」

ユミル「あ、ああ…」

ライナー「座学は休むと教官に伝えといてくれ」

ユミル「それは構わねぇが…」

ライナー「俺はあいつと話さなきゃならん」


ユミル「……」

ライナー「…なんだ」

ユミル「いや…」

ライナー「じゃあな、頼んだぞ」

ユミル「あ」

ライナー「今度はなんだ」


ユミル「アニが中にいる」

ライナー「…ほぅ」

ユミル「…邪魔してやるなよ」

ライナー「…さぁな」

ユミル「お前なぁ…」

ライナー「どうせ自分の気持ちを伝えられんのだ、
 起きてるなら間に入って話くらいさせてやる」

ユミル「…ははっ」


ライナー「何がおかしい」

ユミル「いや、いつものお前だと思ってな」

ライナー「……」

ユミル「すまねぇ、お前はお前で何かを抱えてたんだろうに」

ライナー「…いや」

ユミル「ま、今度飯でも奢れや」


ライナー「なんで俺がお前に」

ユミル「クリスタとマルコの分もな」

ライナー「クリスタはともかく、なんでマルコが出てくる」

ユミル「お前今回の件でどんだけ迷惑かけたと」

ライナー「…あぁ」

ユミル「給金無駄遣いすんなよ?」

ライナー「ふん」


ユミル「じゃあな」

ライナー「ああ」








ユミル「……」

ユミル「…はぁ、なんか疲れたな。愛しのクリスタに会いにいくかー!」


まさかの本日3回目更新。今作はユミルに治してもらいました。
アニは仲間として心配してるんだよ。恋心は全くないよ。今作は…!
なおこの後ライナーはアニに殴られました。

次回最終回。気が向いたら明日、遅くて月曜日。


ユミル(あれから数ヶ月。解散式を終え、
 無事にクリスタを10位内に滑り込ませることには成功したが)

ユミル(翌日のあの悪夢の日から状況は一変した)

ユミル(いや、元からクリスタはそのつもりだったのかもしれないが)

ユミル(あの日の経験があいつらを変えたのか…)

ユミル(力のある者…成績優秀者は、調査兵団に入団した)

ユミル(…ただ1人を除いて)

ユミル(…てっきり、ここでお別れかと思ったんだが、
 あいつとの関係はまだしばらく続くらしい)


…調査兵団 宿舎。

ユミル「またこんなとこで一人黄昏てんのか」

ベルトルト「ユミル…」

ユミル「明日は壁外調査なんだぞ。お前朝弱いんだからもう寝ろよ」

ベルトルト「うん…」


ユミル「はぁ…眠れませんって感じだな」

ベルトルト「まぁ…ね」

ユミル「…後悔してんのか、調査兵団入ったこと」

ベルトルト「…いいや」

ユミル「ほぅ…もういいのか、あいつのことは」


ベルトルト「……」

ユミル「未練たらたらだな、おい」

ベルトルト「…何度か聞かれたよね、僕らの関係」

ユミル「ん…あ、あぁ」

ベルトルト「実はね、開拓地でも一緒だったんだ」


ユミル「は? そんな気配全くさせてなかったじゃないか」

ベルトルト「…向こうは覚えてないのかも」

ユミル「で、そこで惚れたのか」

ベルトルト「どうだろう。ただ、成長期で辛かった僕に、彼女はパンをくれたんだ」

ユミル「……」


ベルトルト「自分は体が小さいからってね。断ったんだけど、口に押し込まれてさ」

ユミル「なんだ、ひどく単純な出会いだな。
 もっとこう…ドラマチックなもんかと期待したんだが」

ベルトルト「この話はほんの一部。出会いは秘密」

ユミル「はっ、この秘密主義者め」


ベルトルト「……」

ユミル「…あのさ」

ベルトルト「うん?」

ユミル「覚えてんじゃねぇかな、あいつ」

ベルトルト「え…?」


ユミル「実はな、お前熱出して医務室連れてった時あったろ。
 お前が寝た後、アニがやってきてな」

ベルトルト「……」

ユミル「私と入れ違いになったんだが、こっそり覗かせてもらったわけだ」

ベルトルト「…ひどい趣味してるね」


ユミル「まぁまぁ。…でな、あいつ、
 タオル冷やしてまたお前の額に乗せてやってたわけだ」

ベルトルト「……」

ユミル「ま、ただの同期にはしてやらんだろ」

ベルトルト「…そっか」


ユミル「…へぇ」

ベルトルト「…なに」

ユミル「お前も笑うんだな」

ベルトルト「……」

ユミル「ライナーの前ですらほとんど無表情のお前が、
 あいつの事で笑うってことは、お前にとってそんだけ大きな存在なんだろうな」

ベルトルト「…だから?」


ユミル「不思議なんだよ。私は、クリスタにだけは心を許してるつもりだが
 それは向こうが分け与えてくれるからだ」

ベルトルト「……」

ユミル「ただ見てるだけってのは、私にはできない」

ベルトルト「……」


ユミル「お前は、それで幸せなのか?」

ベルトルト「…僕には、そんな資格ないから」

ユミル「資格なんて! クソみてぇな私ですらあいつに出会えたんだぞ」

ベルトルト「…無理だよ」

ユミル「なんで…なんでそこまで諦めてんだよ。誰だって幸せになる権利くらい」

ベルトルト「ないよ、僕には」


ユミル「……」

ベルトルト「…ないんだよ」

ユミル「過去に何があったかは知らねぇ。でもな、お前にはお前の事を
 大事に思ってくれてる奴が少なくとも2人はいるってことは覚えとけ」

ベルトルト「2人…?」


ユミル「ライナーと、アニな」

ベルトルト「アニ?」

ユミル「ああ」

ベルトルト「…君じゃないんだ」


ユミル「なんで私なんだ。私が大事なのはクリスタだけだ」

ベルトルト「はは、違いない」

ユミル「大事に思って欲しかったか?」

ベルトルト「いや、いらない。僕には2人がいてくれれば十分だから」

ユミル「そうか」


ベルトルト「君、意外と優しいんだね」

ユミル「は?」

ベルトルト「クリスタ以外にも。大事じゃなくても話をしてくれてる」

ユミル「…寂しがってる奴を放っておけないだけさ」

ベルトルト「お節介なんだ」

ユミル「そうかもな」


ベルトルト「……」

ユミル「…寝ろよ。明日に差し支えるぞ」

ベルトルト「ん…」

ユミル「私は行くぞ」

ベルトルト「うん…」

ユミル「早めに戻れよ」

ベルトルト「…うん」


ユミル「なぁ」

ベルトルト「なに?」

ユミル「お前、幸せになれよ。いつか、必ず」

ベルトルト「…なれるのかな」

ユミル「なろうとすればな」

ベルトルト「……」


ユミル「そういや、まだ貸し返してなかったな」

ベルトルト「あぁ…」

ユミル「何か約束でもするか」

ベルトルト「約束?」

ユミル「お前に何かあった時、一度だけ助けてやる」

ベルトルト「…あるかな」

ユミル「さぁな」














.


ユミル「女神様もそんなに悪い気分じゃないね」

ベルトルト「……」

ユミル「…なんだよ」

ベルトルト「…何でも」

ユミル「けっ」

ベルトルト「……」


ユミル「…約束したろ」

ベルトルト「……」

ユミル「あそこで死なれちゃ、返しそびれるからな」

ベルトルト「…君って人は」

ユミル「いかした奴だろ?」

ベルトルト「……」

ユミル「…なぁ」

ベルトルト「…なに」







ユミル「ひとつ、約束しねぇか」






<完>


お互いの大事な人を想いながら、でも助け合って生きてる話。
が、読みたいんじゃー!と思ったがあまりなかったので書いた。
最後の約束は、想像にお任せします…ということで、転載禁止。

さて次の話は…まだ考えてない。
書けるかどうかはわからないけど、お題があるなら下にどうぞだ。

コニーと誰か…コニーと誰か…コニーと……教官?
ほのぼのでチャレンジしてみようか

ベルアニは思いついたら短編で投下しよう…

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