照「は?お見合い?」菫「そうだ」(122)

立ったら書く

照「いやいや、菫ってまだ高校生でしょ」

菫「何か問題が?」

照「え、なに、ほんとなの?」

菫「そうだな、まあ、そうらしい」

照「ちょ、なんでそんなに落ち着いてるの?お、お見合いだよ?」

菫「私も最初は反対したんだが、家の事情は仕方ないだろう」

照「う、う…まあ…で、でも!やっぱ変だよ、なんでこんな時期に?」

菫「卒業後、すぐに結婚することになるからな」

照「はっ!!??」

菫「まあ、お見合いが上手くいった場合、だがな」

照「上手く、いきそうなの?」

菫「会ってみない事にはなんとも」

照「そうなんだ…」

菫「ん?なんだよ、言いたいことがあるなら言えよ」

照「え、あぁ…なんか、菫が急に大人になっちゃった感じがする」

菫「まあ、お見合いするくらいだからな」

照「その、えっと、家の事情って聞いてもいいの?」

菫「あぁ…うちの祖父がそろそろ危なくてな」

照「そう…」

菫「私の結婚相手を決めるまでは死ねないと言っていて」

菫「それで今回の見合いが決まったんだ、断れるか?」

照「…それは、難しいね」

菫「だろ」

菫「初めは抵抗こそしたが、懇願されてな、折れたよ」

照「…お見合いと菫が結びつかなくて混乱しそう」

菫「ふふ、それは私もだ」

照「それっていつなの?」

菫「あぁ、週末だ」

照「え、そんなにすぐなの?」

菫「さっきも言ったろ、祖父はもう危ないんだよ。早くしないと」

照「そっか」

照「あ、それでその相手の人ってどんな人?何歳?」

菫「あぁ、相手も高校生らしいぞ。えっと、>>9年生だ」

卒業後即なら3年しかあり得ないじゃないですか

照「同い年なんだね」

菫「あぁ、まあな」

照「向こうの人も卒業後すぐ結婚って了承してるの?」

菫「いや、向こうは家がノリ気だが本人はそうでもないようだな」

照「なにそれ、なんかむかつく」

菫「お見合いなんてそんなもんだろ?」

照「18歳なのに、そんなセリフ変」

菫「すまん、家で散々いろんな話を聞かされているから」

照「で、その相手って聞いてもいいの?」

菫「ん?あぁ、いいぞ、>>13さんだ」

照「ん、なんかその名前聞いたことある」

菫「インハイで対戦した阿知賀女子の次鋒の選手だよ」

照「あぁ、私と対戦した子のお姉さんだ。マフラーの」

菫「お前にしてはよく覚えてるじゃないか」

照「むぅ、どういう意味?」

菫「そのままの意味だよ、…祖父が奈良に旅行に行ったときに」

菫「宿泊した旅館のお嬢さんだったらしい」

照「ふーん」

菫「気にいったみたいで、ぜひうちの跡取りとお見合いを、って話だよ」

照「え、待った。菫って跡取りなの?」

菫「そうだぞ、知らなかったか?」

照「し、知らないよ」

照「あれ、…菫の家の家業ってなんだっけ?」

菫「ん?…いや、聞かない方がいい」

照「どうして?」

菫「どうしても」

照「えぇ、教えてよ」

菫「聞いてもいいことないからな」

菫「それより、私は本当に驚いたんだよ。松実さんが相手と知って」

照「話すり替え…」

菫「インハイでは上手くしてやられた相手だったしよく覚えていたんだが」

菫「まさかお見合い相手とはなぁ」

照「(さっきからなんか面白くない、なんでだろ、なんでこんなにもやもやするんだろ)」

照「結婚したら松実さんが東京へ来るの?」

菫「そうなんだが、松実さんが渋っている理由がそこらしい」

照「あぁ、旅館のこともあるから?」

菫「妹さんもいるしな、奈良から離れたくないみたいだ」

照「じゃあ、無理なんじゃないの?そのお見合い」

菫「まあ、だから会ってみないことにはわからないだろ」

照「無理だと思うなぁ」

菫「なんだよ照、上手くいって欲しくないのか?」

照「…別にそんなんじゃないし」

菫「そうかそうか、やきもちか?もうお前は可愛いなぁ」

照「ち、違う!」

菫「ま、気軽に楽しんでくるよ」

照「…うん」

当日、ホテルのロビー


照「来てしまった」

照「…どこでやるんだろう?料亭って言ってたっけ?」

照「どこだろ…?探さなきゃっ」

キョロキョロ

照「うーん?あれ、ここどこ?」

照「…レストラン?いや、日本料理のお店に…」

キョロキョロ

照「……迷った」

照「どうしよう、もう始まっちゃう…」

同時刻、ホテルのロビー


玄「うぅ、緊張するよー」

宥「クロちゃんが緊張してどうするの」

玄「だって…お姉ちゃんは緊張してる?」

宥「お姉ちゃんも緊張してる」

玄「お見合いだけでも驚くのに相手があの弘世さんだなんてね…」

宥「弘世さんは少し怖いイメージがあるから…」

玄「お姉ちゃん嫌ならやめてもいいんだよ?」

宥「そういうわけにもいかないよ、結婚になれば旅館の借金のことも…」

玄「そ、それはそうかもしれないけど」

宥「このままってわけにはいかないし、大切な旅館を守りたいから」

玄「…お姉ちゃん」

宥「このお見合いにはたくさんの意味があるから、やめたり出来ないよ」

宥「それに、」

玄「なぁに?」

宥「弘世さんは少し怖いけど…悪い人ではないと思うから」

玄「そうかな?」

宥「きっとそうだよ」

玄「だといいね」

宥「でも…東京へ嫁がなきゃいけないのは気が重いかも」

玄「う、うん」

宥「…なんでもそう自分に都合よくは行かないね」

宥「あっ」

玄「どうしたの?」

宥「あれって…チャンピオン…宮永さん?」

玄「あぁ、そう、かも…何してるんだろうね?」

宥「きょろきょろしてる…何か探してるのかな」

玄「あ、確か宮永さんと弘世さんって仲良くなかった?」

宥「じゃあ付き添いとかなのかな」

玄「ちょっと挨拶してくるね」

宥「あ、ちょっとクロちゃん」

宥パパ「宥、そろそろ行くぞ。玄は?」

宥「あぁ、行っちゃった…すぐに戻ってくると思うから先に行く?」

宥パパ「そうだな、玄も場所はわかるだろう…くれぐれも粗相のないようにな」

宥「うん、わかってる」

照「うぅ、どうしよう…」

玄「やっと追いついたー!宮永さん、お久しぶりです」ぺっこりん

照「…??」

玄「え、っとあの」

照「っ!!!」

玄「宮永さん?」

照「ま、松実さん!」

玄「は、はい!」

照「す、菫はどこにいますか!?」

玄「菫?あぁ、弘世さんですか?一緒じゃないんですか?」

照「えっと…うん、菫が心配で来ちゃっただけだから…」

玄「そうなんですか…私も、心配です」

照「…まだ18歳なのにお見合いなんて、ねぇ?」

玄「ですよね…まだ高校生なのに」

照「あ、菫のいるところに連れて行ってもらえない?」

玄「それは構わないですけど、…弘世さんに見つかって大丈夫ですか?」

照「うっ…それは怒られるかも」

玄「ほんとに内緒で来ちゃったんですね」

照「どうしよう?」

玄「あ、って私もそろそろ行かなきゃいけないんです…とりあえず一緒に行きますか?」

照「…うん、お願い」

玄「おまかせあれ!」

玄「こっちなのです」

照「あ、ここで曲がったから迷っちゃったのかー」

玄「宮永さんって意外とお茶目ですね」

照「そ、そんなことないし!ギュルルルルってやっちゃうよ?」

玄「か、勘弁してください」


菫「ふぅ、緊張してしまうな…」

菫「落ち着け落ち着け、別に初対面じゃないんだ…そうだ……ん?」

玄「宮永さん、ここです」

菫「っ!!?」

照「す、菫!」

玄「あわわわ!」

菫「お前、何してるんだ!」

照「しょ、食事に」

菫「うそつけ、私をからかいに来たんだろ」

照「だから食事に…」

菫「うそつくなよ、あ、妹さんだな?」

玄「あ、はい」

菫「先に入ったほうがいい、お父様が探しておられた」

玄「すいません!では失礼しますのです」

照「ありがとね」

玄「いえいえ!」


菫「で、お前はここで一体何を?」

照「…別に」

菫「この年でお見合いなんかする私を笑いものにしたいのか?」

照「そんなんじゃないよ!…ただ、心配で」

菫「…そうか、すまない」

照「私こそ、勝手に来てごめん…帰るよ、頑張ってね」

菫「まあ、そう言うな。一緒に来い」

照「え?」

菫「付き添いをしてくれないか?どうにも緊張してな…」

照「そんな、妹さんとかはともかく赤の他人の私はダメでしょ」

菫「頼むよ、隣にいるだけでいい」

照「ほんとにいいの?」

菫「あぁ、多分」

照「なんだかんだいって、菫って私のこと好きだよね」

菫「うるさい、黙ってついて来い…あ、少し驚くかもしれないが無視しろよ」

照「え?どういう意味?」

菫「見ればわかる」

菫「こっちだ、少しだけ歩くぞ」

照「ねぇ、菫」

菫「なんだ?」

照「それ、振袖…似合うね」

菫「ん?あぁ…着ろってうるさいんだ」

照「髪も…上げてるの久しぶりに見たかも」

菫「ちょっと恥ずかしいけどまあ、ありがとう」

照「……」

菫「な、なんだよ、そんなじっと見るなっ//」

照「…ごめん、見惚れちゃった」

菫「は、恥ずかしいことを言うな//」

照「…(こんなに美人な菫が、私の親友が…お見合いなんだよね…)」

照「っ…!?」

菫「お前は無視しろ」

照「え、でも…」ビクビク

男A「お嬢、みなさんお待ちです」

菫「あぁ」

男B「お嬢は今日もお美しい」

菫「殺されたくなかったら黙ってろ」

男B「申し訳ありません、そのお方は?」

菫「お前には関係ない」

男B「へいっ」

照「(え、なにこれ…?)」

照「(明らかに目つきのヤバイ男の人が二人…超怖いんだけど)」

照「(菫のことをお嬢って呼んでる…どういうこと!?)」

照「…ねぇ、菫のおじいさんって…」

菫「祖父がどうかしたか?」

照「ひょっとして…あれなの?」

菫「あれってなんだよ」

照「あ、それに跡取りってまさか…」

菫「まあ、そういうことだな。言いたくなかったんだが、でもまあいい」

照「…そう」

菫「すまない、じゃあ、そろそろ入るぞ」

照「うん、…(どうしよう、男の人めっちゃ見てくるし…目つき怖いし…うぅ)」ナミダメ

菫「いいか、毅然としていろよ」

照「努力します…」

ガラッ

菫「すいません、遅くなりました」

菫父「遅れるとは何事だ、今日をなんだと思っている」

菫「申し訳ありません」

菫母「早くこちらへ来なさい、お待たせしているのよ」

菫「はい、ですがその前に。学校での同級生を同席させていただきたい」

照「ど、どうも…(うわ、明らかに場違いなんだけど大丈夫なのかな…)」

照「(てか菫のお父さんの顔怖すぎる…うぅ、来るんじゃなかったかも…)」

菫父「そうか、なら入ってもらえ」

照「(え?いいの?あっさりしてる…)」

菫「はい、松実さん、すいません」

宥「わ、私は構いません…」ブルブル

玄「は、はい」ブルブル

照「すいません…(松実さんおびえちゃってる…)」


いろいろ大人の挨拶が終わって…


菫「宥さん、今日はわざわざありがとうございます」

宥「い、いえ…」

菫「そう固くならずに。父の顔は怖いですが、根は優しいので」

宥「ふふ」クスッ

菫父「……」

照「(うぅっ!菫のお父さん超睨みつけてる…動じない菫もすごいなぁ)」

照「(…蚊帳の外だし、菫はなんだか別人みたいだし…変な感じ)」

菫「そういえば、あなたの名前を聞いてインターハイを思い出しました」

宥「はい、私もです」

菫「私の的を射るスタイルをあそこまで完璧に破られたのは初めてでした」

照「そ、そうだったね。私も驚いたし(は、初め喋れた…)」

玄「お、お姉ちゃんかっこよかったよね」

宥「そんなこと…先生が弘世さんを研究してくれていたんです」

菫「そうでしたか」

菫母「あなたはほんとうに麻雀の話が好きね」

菫「私に不可欠なものです」

照「(菫はご両親に敬語なんだ…やっぱり違う人みたい)」

菫父「うちの賭場でも打て」

菫「そういう勝負に興味はありません」

菫父「ふんっ、まあそんなこと言っていられるのは卒業までだな」

菫「……」

宥「あの…」

菫「ん?」

宥「はっきりさせておきたいことがあるんです」

宥父「宥、その話は今はやめなさい」

宥「でも、私が今日のお見合いに出席した一番の理由だから」

玄「お姉ちゃん…」

菫「なんでしょうか?」

宥「私が弘世さんのお家へ嫁いだ場合、私の実家への支援は約束されているのでしょうか?」

菫「…私にはなんとも」

宥父「すいません弘世さん」

菫父「はははっ、なんともはっきりおっしゃる娘さんだ」

菫母「お父様のお気に召したのも納得ね」

宥「…」

宥「あの、それで…」

菫父「約束しよう、跡取りの伴侶の実家を潰すような真似はしない」

照「(跡取り、伴侶、実家…遠い世界の言葉だよ…)」

照「(菫がどんどん離れていく感じがする…松実さんも私と同い年なのにすごくしっかりしているし…)」

宥「ありがとうございます、本当に、ありがとうございます」フカブカ

菫父「じゃあ、そろそろ私たちは出るから」

菫「はい」

菫母「じゃあ、宮永さんもこちらへ」

菫「いや!照は、その、ここにいてくれ」

照「でも、」

菫「いいから」

照「…うん」

宥「クロちゃんも、ここにいて」

玄「うん、お姉ちゃん」

菫「外の二人もどこかへやってください」

菫母「そう?護衛と思いなさい」

菫「結構ですので、それに松実さんも照も怖がっています」

菫母「はいはい、あなたの方が恐ろしいけどね」クスクス

菫「…なにか?」

菫母「いえなにも。それじゃ」


菫「ふぅ…あぁ、もう」

照「は、はぁ…やっと普通に呼吸できるかも」

玄「…正直同感です」

宥「…私も」

菫「すいません、堅苦しいのはやめろと言っているんですが」

照「そういう問題でもないような…」

宥「あ、宮永さんどうしてこちらへ?」

照「えあぁ…」

菫「どうにも緊張してしまったので、付き添いを頼みましたすいません」

宥「いえそんな」

菫「…ところで、松実館というのはそんなに逼迫しているのですか?」

宥「はい、正直なところ…母が亡くなってからは右肩下がりで…」

菫「そうですか…私はすぐにでも支援をと言いたいですが」

菫「しかしやはり結婚が決まらなくては現実的には厳しいですね」

照「…それでいいんですか?」

宥「え?」

照「実家を守るために嫁ぐなんて…それってなんか」

菫「照、黙れ。誰だってそんなものは嫌なんだ、でも仕方のないこともある」

菫「物事はそう簡単じゃない。松実さんがそれを望むなら、私は受け入れる」

照「…ごめん」

宥「最初は、お見合いなんて迷惑な話って思っていました」

宥「けれど、金銭的な支援のお話も頂いて…父はすぐにノリ気になって…」

宥「私も正直なことを言います」

菫「あぁ、その方が嬉しい」

宥「おいしい話だと思いました、結婚で支援を受けられるなら、と」

菫「まあ、当然の感想ですね」

照「(なんか、なんか変だよ…わかるけど、わかるけど変だよ!)」

照「(これでいいの?…いいのかなぁ…)」

玄「これでいいの?お姉ちゃん」

照「(ドラローさん!)」

玄「いいのかなぁ、なんだかなぁ」

宥「クロちゃん…」

菫「君のお姉さんは実家を守るためにここまでしている」

玄「…はい、わかってます」

菫「それはお姉さんにしか出来ないことだからだ。

菫「じゃあ、実家を守るために君に出来ることは?」

玄「私に出来ること…?」

菫「別に支援をしてくれる人を探す?それとも、何かいい案がある?」

玄「……」

菫「君が姉思いなのは十分すぎるほど伝わってくるし、私も心苦しい」

菫「だが、ただ単純にお姉ちゃんが可哀想だからとか言う理由で、」

菫「それでいいのか?と言うのはお姉さん自身を否定することになる」

玄「でも、…でも!こんなのって!」

菫「落ち着いて」

照「菫は落ち着きすぎでしょ。いつもと違う」

菫「私はいつも落ち着いている」

照「違う、違うよ」

宥「いいんです、私は覚悟を決めてここに来ています」

宥「だから、いいんです…」

照「松実さん…」

玄「お姉ちゃん…」

宥「奈良を離れるのも、妹を置いていくのも抵抗があります」

宥「でも、それで実家の旅館が、母が愛した旅館を守られるなら」

宥「私は、この結婚受け入れます…弘世さんがそれでいいと言うなら」

照「……(言いたいことがあるはずなのに何も言えない)」

菫「私は、松実さんがいいなら受け入れます」

宥「ありがとうございます」ニコッ

菫「い、いやぁ//」

照「(…菫。私はこれでいいの?松実さんが、菫が、じゃない。)」

照「(私はいいの?…納得できるの?)」

菫「うちの家はまあ、少し特殊ですが、すぐに慣れると思います」

宥「正直怖いですけど…大丈夫でしょうか」

菫「…何かあれば、私があなたを守ります」

宥「ふふ、弘世さんはかっこいいですね」

菫「「そんな//…どうも」

菫「それで、松実さんは」

宥「宥でいいです、クロちゃんも松実なので」

菫「あ、じゃあ…宥さんはうちの祖父を覚えていらっしゃるんですか?」

宥「いえ、実はあまり…だから本当に驚いたんです」

菫「そうでしたか…」

宥「けれど渡りに船とはまさにこのことですね」

菫「…政略結婚とか、お金のためだとか、きっといろいろ言われると思いますが」

菫「結婚する以上は、私はあなたを大切にします、安心してください」

照「(ドラローさんもずっと黙ったままだし、なんか仲良くなってるし…)」

照「(もう帰りたい…)」

宥「はい、…少し、ほっとしました」

菫「それはよかった…ですが、実は私も」

菫「…照、隣にいてくれてありがとう」

照「へ?」

菫「なんだその間抜けな声は」

照「いや、私何もしてないし…」

菫「隣にいてくるだけでいいって言っただろ」

照「でも」

菫「助かったよ、お前が隣にいるだけで、それだけでリラックスできた」

照「…(喜んでいいのかわからないよ…菫…私は、私はっ)」

菫「ありがとな、照」

照「うん…(どうする?これでいい?これで終わりなの?私はこれでいいの?)」

宥「クロちゃんもだよ?ありがとう」ギュウ

玄「お姉ちゃぁん」グスッ

宥「クロちゃん暖かいよ」

玄「私は暖かくないっ」

宥「玄ちゃん、ありがとう」

玄「お姉ちゃん、グス、お姉ちゃん」

帰り道

照「…車で帰らなくてよかったの?」

菫「いいんだ、お前と歩いて帰りたかったから」

照「そのためにわざわざ着替えるって…」

菫「あんなもの来て街中を歩いてたらおかしいだろ」

照「おかしくはないけど目立つよね」

菫「だろ」

照「でも驚いたなぁ、菫の家がああいう家だとは…」

菫「隠しておきたかったがな、仕方ないな」

照「まあそれはわかるけどさ」

菫「あの中で育つとそうもおかしいと思わないんだが、世間の目は冷たいからな」

照「…正直怖いしね」

菫「そうしないと舐められるからな、生きる術だよ」

菫「あと言っていなかったことがもう一つ」

照「なに?」

菫「私は高校3年間だけ麻雀に打ち込むことを許されているんだ」

照「え?」

菫「よくうちの組、えっと、その、父の部下たちと打っていたんだが」

菫「それだけに飽き足らず競技麻雀に挑戦したくなったんだよ」

菫「それで、白糸台に入ったんだ」

照「そうか、それで中学の実績が一切なかったんだね」

菫「まあな、でもそれももうすぐ終わる…卒業したら父の補佐に収まる予定だ」

照「…遠くに行っちゃうね」

菫「話したくなかった反面、今いろいろ話せてよかったと思っているよ」

照「そっか」

菫「お前は大切な友達だから、…卒業しても、付き合いを続けたい」

菫「…照が、そんな仕事をしている私を嫌でなければだが…」

照「(大切な、友達か…そう、友達、だよね、私たち)」

照「嫌なわけない、菫は菫。家とか仕事とか、関係ない」

菫「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」

照「…ねえ、菫、ホントに結婚するの?」

菫「なんだよ唐突に」

照「なんだか、夢なんじゃないかって」

菫「夢じゃないよ、私はあの子と結婚する。事実だ」

照「菫は怒るかもしれないけど聞いてもいい?」

菫「なんだ?」

照「…好きじゃない人と結婚って、ホントにそれでいいの?」

照「いろんな事情は今日話を聞いていてわかったつもりだけど、でも、」

照「でもやっぱり、これが一番正しい結末なんだって思えない」

菫「…そうか」

菫「うーん……」

照「菫?」

菫「私はな、あの子を救いたい。お金で何とかなることならしてあげたい」

菫「それは恋愛感情ではないのかもしれない」

菫「けれどそれが必ずしも不幸な結婚になるとは思わない」

照「……」

菫「照に納得してもらえないのは仕方がないと思う、うちの家は一般家庭とは違うから」

菫「けれど、照もいつかわかってくれると信じているよ」

照「…ずるい」

菫「え?」

照「そんなことを言われたら…納得しなきゃいけないじゃん」

菫「…それはすまない」

照「…もういい、わかった」

菫「ありがとう」

照「うん、でも、もう一つだけ言わなきゃいけないことがあるんだ」

菫「ん?」

照「…きっと、今言わない後悔するから」

照「ていうか、今しか言える気がしないから、言うね」

菫「な、なんだよ」

照「(勇気出せ、私頑張れ…)」

照「菫を引き止めたいとか、結婚をやめて欲しいとかそういうことじゃないからね」

照「そんな気は一切、いやちょっとだけあるけど、でもあんまり関係ないの」

照「ただ、私が後悔しないように言いたいだけだからそう思ってよね」

菫「わかった、言って」

照「…うん」

照「菫、私はね、菫が好きだよ」

菫「…照」

照「お見合いって聞いて面白くなかった、もやもやしてたんだ」

照「今日来たのも、そんな気持ちがよくわからなくてイライラしてたから」

照「…お見合いなんかなくなっちゃえばいいって思った」

照「だからほんとにそれでいいの?って聞きたかったの」

照「でも菫は、この結婚が必ずしも不幸じゃないって言うからさ、」

照「ならもう私は、気持ちをはっきり伝えてふってもらいたいって思った」

照「好きだよ、菫。きっと、ずっと好きだった。今日のことがなければ」

照「自覚しなかったかもしれない、…いつも私を支えてくれてありがとう、大好き」


時が止まったかと思った。
すぐそばの車道では車やバイクが行き交っているのに、
なのに、私と菫の間の時間だけが止まっているかのように感じた。
二人とも固まったまま、言葉も交わさず、ただその場から動けなかった。

恒子「インターハイ3連覇中の白糸台高校!今年は苦しみながらも決勝まで駒を進めてきました!」

健夜「今年の白糸台は宮永さんが抜けて少々小粒になりましたが、」

健夜「その穴を少しでも埋めるべく、と転校生の選手が非常に頑張っていますね」

恒子「さて、決勝戦先鋒戦!その転校生、……こと、



白糸台高校3年、ドラゴンロードの松実玄選手の登場だぁぁぁぁ!!」




照「ドラゴンロードってかっこいいよね」

菫「シャープシューターの方がかっこいいだろ」

宥「どっちもかっこいいですよ」

菫「ていうかお前は解説者なんだからもっといい席にでもいけよ」

照「やだ、菫と宥さんと一緒に見たいんだもん」

宥「照ちゃんは妹みたい」

照「お姉ちゃーん」

菫「さりげなく宥に触るなバカ」

照「(卒業してすぐに、菫と宥さんは本当に結婚した)」

照「(結婚式に呼ばれたけど、すごかった、いろんな意味で)」

照「(私はプロに入団して、麻雀漬けの生活を送っている)」

照「(菫と宥さんはとても相性がよかった、微笑ましい夫婦だ)」

照「(色んな思いがあるのは否定しない。けど、やっぱり二人はお似合いだった)」

照「(妹の玄ちゃんは寂しいということで白糸台へ転校してきた)」

照「(そんな玄ちゃんは…)」


試合終了後

玄「…照さん、負けちゃったよ」グスン

照「うん、見てた」

玄「考えてくれましたか?」

照「勝ったら、OKしようと思ってたのに」

玄「えぇっ」

玄「…」ショボン

照「…ウソだよ、どんな結果でも受け入れるつもりだった」

玄「照さん!」

照「玄ちゃんがいなかったら、私は…私は立ち直れなかった」

玄「…私は何もしていないですよ?」

照「前に誰だかが言ってたでしょ(菫が言ってた)」

玄「なんですか?」

照「ただ、隣にいてくれればいいって」

玄「あっ…//」

玄「うちの旅館に来たのに部屋にこもりっ放しでびっくりしましたよ、あのときは」

照「あのときはありがとう、ボロボロだった私の隣にいてくれてありがとう」

玄「…お姉ちゃんがいなくなって寂しいだけでこっちへ出てきたんじゃないんですよ?」

照「知ってる、知ってた…玄ちゃん、」

玄「…お姉ちゃんたちみたいに、幸せになりましょう?」

照「…あれはちょっと、甘すぎるんじゃない?」

玄「甘いのはだめですか?」

照「ダメじゃないけど…恥ずかしいし」

玄「あ、照さん、一つだけ確認が」

照「なに?」

玄「おもちって大きくなりました?」

照「」

玄「いやね、照さんのことは好きなんですけどちょっとサイズがあれなので、」

玄「あれしてもらえるとあれで…ってあれ?」

照「もういい!お前なんか知らん!」

玄「て、照さん待ってー!!」





カン

終わった…まさか4時になるとは
長丁場でしたがみなさま支援感謝でした

なんか途中で照菫にできなくなって焦ったけどとりあえずまとまってよかった
お見合いSSも3つ目だけど、一番大変だったよー
じゃ、おやすみなさい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom