蓮子「山奥に真っ赤なお屋敷?」 (70)

メリー「そうよ。今オカルト趣味の人たちの間で話題になってるみたいなの」

蓮子「へぇ、面白そうね。屋敷の中はどうなってるんだろう」

メリー「それがね、遠目には見えてもその屋敷にたどりつくことはできないみたいなの」

蓮子「屋敷が見えるならそのまま屋敷に向かって進めばいいんじゃないの?」

メリー「そううまくいかないらしいわ。屋敷の手前には森があって、屋敷の方向に進んでいるつもりでも
    森の入り口に戻されてしまうらしいのよ」

蓮子「ミステリースポットにありがちな噂ね」

メリー「ねぇ、今度二人で行ってみない?場所もそんなに遠くないみたいだし」

蓮子「おもしろそうだし、行ってみてもいいかも。しかし、メリーから誘ってくるなんて珍しいわね」

メリー「実はね、この噂の屋敷、以前夢で訪れた場所になぜだか特徴が似ている気がするの……」

蓮子「ああ、いつか話してたやつね」

メリー「ええ。もしもその噂のお屋敷にたどりつけたなら、何か掴める気がするし、確かめたいのよ」

蓮子「そのお屋敷が夢に関連してるとすれば、もしかしたら『入り口』を見つけられるかも……」
   (それに、メリーの見ていた夢の世界を私も見てみたいしね)

メリー「決まりね、今度の休日に行きましょう。遅刻はなしよ」

蓮子「わ、わかってるわよ」

……

メリー「……やっぱり遅れたわね」

蓮子「5分くらい大目に見てよ」

メリー「まぁ、いつものことだからいいけどね」

蓮子「で、そのお屋敷っていうのは?」

メリー「あそこよ」

蓮子「へー、すっごい大きい……」

メリー「夢で見たお屋敷とそっくりすぎて不思議な気分だわ」

蓮子「でも、噂だとどう頑張ってもたどり着けないんでしょ?」

メリー「行ってみなきゃわからないじゃない。さぁ、行くわよ」

蓮子(いつにも増して乗り気だな、メリー)

……

メリー「……やっぱり遅れたわね」

蓮子「5分くらい大目に見てよ」

メリー「まぁ、いつものことだからいいけどね」

蓮子「で、そのお屋敷っていうのは?」

メリー「あそこよ」

蓮子「へー、すっごい大きい……」

メリー「夢で見たお屋敷とそっくりすぎて不思議な気分だわ」

蓮子「でも、噂だとどう頑張ってもたどり着けないんでしょ?」

メリー「行ってみなきゃわからないじゃない。さぁ、行くわよ」

蓮子(いつにも増して乗り気だな、メリー)

……

メリー「意外と深い森ね」

蓮子「でも道はそんなに険しくないし、迷う要素もないと思うんだけど」

メリー「今のところ何か不気味な感じもしないしね」

蓮子「あれ、出口じゃない?」

メリー「なんかあっさり出られそうね」

蓮子「やっぱり出口だ」

メリー「ほんの20分程度で出られたわね」

蓮子「入り口に戻されてたどり着けないなんてやっぱりデマに決まってると思ってたんだよね~」

メリー「きっとお屋敷の中は素敵な場所だから、他の人を近づけまいとして流された噂だったのかもね」

蓮子「メリーの夢の話を聞く限りは素晴らしい場所みたいだしね」

メリー「まだこのお屋敷が夢で訪れたお屋敷とは決まったわけじゃないわ」

蓮子「でも、今のところ特徴は同じみたいだけど」

メリー「とにかく中に入って調べてみましょう」

蓮子「それにしても大きな門ね」

メリー「夢の中では確かこのあたりでお手伝いさんが出てきたはずだけど……」

蓮子「でも、人が住んでる気配なんてないよ」

メリー「庭も手入れされてるようには見えないしね」

蓮子「あっ、あの大きな扉が入り口ね」

メリー「かなり古ぼけてるけど開くのかしら」

蓮子「おじゃましまーす」

・・・

蓮子「……なんて返事が返ってくるわけないか」

メリー「中は荒れ放題ね。完全に廃墟だわ」

蓮子「このエントランスだけみても外見以上に中が広く感じるわね」

メリー「まるで空間が弄られてるみたい……」

蓮子「何か霊的な気配とか感じる?」

メリー「こんな廃墟なら何かあってもおかしくなさそうだけど、特に何も感じないわね」

メリー「それにしても薄暗くて探索するのは難しそうね。動きやすいように昼に来てみたんだけど」

蓮子「ほら、懐中電灯。昼でも廃墟を探索するなら持ってこないとね」

メリー「さすが蓮子は準備がいいわね」

蓮子「しかし暗いわね。窓がほとんどないのが原因か」

メリー「どうして窓が少ないのかしら」

蓮子「さぁ?吸血鬼でも住んでたんじゃない?」

メリー「日本生まれの吸血鬼っていうのは珍しいわね」

蓮子「棺桶のひとつでも見つかったら大スクープよ」

メリー「このままじゃ何も見つからないっていう事実が見つかりそうだけどね」

蓮子「さぁて、どこから散策しようか」

メリー「とりあえず下からかな」

蓮子「いきなり地下にするの?」

メリー「この様子じゃ日が暮れはじめたら地下なんて何も見えなくなりそうよ」

蓮子「それもそうか」

メリー「あそこに地下へと続く階段があるわ」

蓮子「いかにもって感じの階段ね……」

メリー「雰囲気が出てていいじゃない」

蓮子「この階段、途中からなくなっているなんてことないよね」

メリー「しっかり照らしていけば大丈夫よ」

……

メリー「ここが地下ね」

蓮子「あるのは大きな広間に繋がってそうな扉と鍵がかかった小さな扉かぁ」

メリー「とりあえず、入れるのは大きな扉ね」

蓮子「……結構開けにくいな」

メリー「手伝うわよ」

メリー「ふぅ……ようやく開いたわね」

蓮子「あ、明かりがついた」

メリー「自動で電気が付くなんて、古風な外見からは想像できないわ。
    そもそも電気すらとおっているか怪しいのに」

蓮子「見てメリー、本棚がいっぱい」

メリー「まるで図書館のようね」

蓮子「でも本が一冊もないよ」

メリー「これだけ広い空間に本棚がたくさん置かれてるのに、本だけないのはおかしいわね」

……


蓮子「30分歩き回っても果てが見えない……」

メリー「霊的な気配も感じないし、そろそろ出ましょうか」

蓮子「あれ、なんか本が落ちてるよ」

メリー「ほんとね。まるで西洋の魔術書みたい」

蓮子「見たこともない言語で内容がわからないのが残念ね」

メリー「一応中身を見てみましょうよ」

蓮子「メリー!本が!」

メリー「風化しちゃった……」

蓮子「まるで何か魔術でもかかってたみたい。中身見たかったなぁ」

メリー「他に目につくものもないし、ここから出たほうがよさそうね」

……

メリー「なんかこの図書館みたいな広間を回るだけでだいぶ体力そがれたわ」

蓮子「甘いわね、散策は体力使うものなのよ」

メリー「活動通して私もだいぶ体力付いた方だと思ったけど、やっぱり蓮子には敵わないわ」

蓮子「さぁて、こっちの鍵ががっちりかかった扉は空きそうにもないし、1階に戻ろう」

メリー「お、その前にお茶を飲ませて。喉が渇いちゃって」

メリー「で、再びエントランスに戻ってきたわけだけど」

蓮子「そういえば、メリーはここの内部の構造とかわからないの?
   ここが夢で見たお屋敷だとしたらだけどね」

メリー「今のところよくわからないわね。夢でここに来たときはこのエントランスと上の階にある調理場と応接間くらいだったから」

蓮子「それならそこでお昼にしようよ!」

メリー「名案ね。とりあえずこの階段を上ってみましょうか」

……

蓮子「ねぇ~まだ着かないの?」

メリー「そろそろだと思うけど」

蓮子「もしかしてあれ?何かパーティ会場みたいな扉があるけど」

メリー「あれよ。調理場は多分少し歩いたところにあるわ」

蓮子「ここが応接間……」

メリー「扉は驚くほど簡単に開いたわね」

蓮子「中は真っ暗で何も見えないよ」

メリー「ねえ、あれってカーテンじゃない?」

蓮子「どれ?照らしてみてよ」

メリー「ほら、あそこ」

蓮子「だいぶ大きなカーテンみたい。あれを開ければ明るくなりそうだね」

メリー「どうやら中には大きなテーブルもあるみたいね」

蓮子「私、カーテン開けてくるよ。メリーはカーテンの場所を照らしておいて」

メリー「床に穴とか開いてるかもしれないから気を付けてね」

蓮子「大丈夫大丈夫。足元は自分の懐中電灯でしっかり照らすから」

……

メリー「どう、蓮子?」

蓮子「今のところ床が崩れてたりっていうのはないわね。むしろ廃墟にしては綺麗すぎるくらい……」

メリー「もうすぐだわ」

蓮子「よし、着いた。じゃあ開けるね」

メリー「カーテン開けてもあんまり明るくならないわね……」

蓮子「見て、カーテンの奥にテラスがあるよ」

メリー「お茶するならこっちの方がいいわね」

蓮子「メリーも早く来てよ」

メリー「今行くわ」

蓮子「ふぅ、これでようやく一息がつけるね」

メリー「ええ、ここまでずっと歩き通しだったし……」

蓮子「ここまで来たけど、何か夢のことがわかったりとか、結界の境目が見えたりした?」

メリー「全然。このお屋敷自体は夢で見た通りなのに」

蓮子「そっかぁ。とりあえず、午後の探索に向けてお昼食べようよ」

メリー「そうね」

……

蓮子「……ちょっとお弁当作り過ぎちゃったかも」

メリー「蓮子ったら、散策のお弁当にしては量が多すぎよ。私まで食べる羽目になったじゃない」

蓮子「ごめんごめん。でもね、私今回メリーからこのお屋敷のこと教えてもらった時、今まで行ったどこよりも楽しそうだと思ったから
   張り切っちゃったんだ」

メリー「張り切るにしても限度っていうものがあるでしょ」

蓮子「私ね、メリーから夢の話を聞いた時に同じ風景を私も見たいってずっと思ってたんだ。
   そんな素敵な世界で食べるお弁当ならきっと格別だと思って作り過ぎたってわけ」

メリー「もう、私たちはここにお弁当を食べる為に来たわけじゃないのよ」

蓮子「分かってるわよ。でも私はね、お昼も含めてメリーの体験してる世界を思う存分共有したいと思ってのよ」

メリー「蓮子……」

蓮子「さて、午後の探索の前に食後のお茶にしない?」

メリー「え?ああ、しましょうか」

蓮子「よーし、じゃあ水筒を……ってあれ?」

メリー「どうかしたの?」

蓮子「入れたはずの水筒が入ってないんだ」

メリー「もう、また急いできたから忘れたんでしょ」

蓮子「えへへ、そうかもね」

メリー「しょうがないわね、私の持ってきたお茶あげるわ」

蓮子「ありがとう!」

メリー「……あれ、私の水筒がない」

蓮子「メリーも?なんだ、人のこと言えないじゃない」

メリー「違うわよ、私はさっき地下で飲んだのよ、覚えてないの?」

蓮子「あ、忘れてた。じゃあどこかで落としたんじゃない?」

メリー「カバンの中に入れたままだから落とすわけないわ」

蓮子「不思議なこともあるものだね」

メリー「!」ガタッ

蓮子「どうしたの?」

メリー「ちょっと胸騒ぎがして……行かなきゃ」

蓮子「メリー!?どこ行くの?」

メリー「蓮子はそこで待ってて!」

メリー(このお屋敷の調理場……そこで何かが私のことを読んでる気配が確かにした)

メリー(でも勢いで飛び出してきちゃって、蓮子には悪いことしちゃったな……)

メリー「ここね……あの夢で私がクッキーを作った調理場と同じ」

ガタンッ

メリー「誰かいるの?」

メリー(あの倉庫みたいなところから音が聞こえたような)

メリー「そこにいるの?誰?」

メリー(この中に何かある……!?)ガチャ

メリー「これは……血?」

メリー「まるで屠殺場ね……ここで家畜でも捌いていたのかしら」

ドンッ

メリー「あっ……意識が……」

……

蓮子「遅いなメリー……急に出ていっちゃって、これじゃ午後の探索ができないよ」

蓮子(探しに行きたいけど、下手に動いたらそれはそれでまずそうだし……)

メリー「おまたせ」

蓮子「メリー!どこに行ってたの?」

メリー「調理場よ」

蓮子「手に持ってるそれって……」

メリー「今焼いたクッキーよ」

蓮子「どうして作れたの?」

メリー「材料が一式置いてあったの。オーブンもしっかりつかえたわ」

蓮子「さっきの地下といい、妙なお屋敷ね。もう何があっても驚かないよ」

メリー「お茶、アイスティーしかなかったけどいいかしら?」

蓮子「え?お茶もあったの?」

メリー「お客様におもてなしするのは当然でしょ?」

蓮子「お客様って、貴女いつからここの主人になったのよ」

メリー「ほらどうぞ、早くお茶にしましょう」

蓮子(メリー……なんか様子がおかしいような)

蓮子「いただきまーす」

メリー「お味はどうかしら」

蓮子「美味しいよ。このクッキーも、夢の中から持ってきたって言ってた奴とよく似てる」

メリー「たくさんあるからどんどん食べて頂戴」

蓮子「メリーは食べないの?」

メリー「私はもてなす側だからいいのよ」

蓮子「わかった、これってドッキリでしょ!最初からメリーはここのお屋敷を知ってて……」

メリー「なんのことかしら」

蓮子「えっ、違うの?」

メリー「ほら、どんどん食べて飲んで」

蓮子「う、うん」

……

蓮子「なんだかのんびりしすぎちゃった。さぁ、午後の散策に行くわよ」

メリー「……」

蓮子「メリー?」

メリー「お楽しみはこれからね」

蓮子「そうよ、だから早く……あれ、なんだか眠くなって……」

……

蓮子(ん?ここは……?)

メリー「はぁ……はぁ……」チュパ チュン ピチュン ピチュ

蓮子(メリー……?)

メリー「美味しそう……」

蓮子「メリー!?何やってるの?」

メリー「気付かれちゃったか」

蓮子「こんなことして、何する気?」

メリー「暴れないで!暴れないでよ……!」

蓮子「ちょっと、貴女おかしいわよ?」

メリー「いいでしょ?ねぇ……」

蓮子「やめてよメリー!放して!」

メリー「暴れないでよ、ねぇ?」

蓮子「ちょっと!聞いてるの!?」

メリー「ちょっとこれを咥えていて頂戴」

蓮子「猿轡なんてどこから、んぐっ……」

メリー「ふふっ、気持ちよく眠っているうちにすべてを終わらせたかったんだけど」

蓮子(メリー、まるで何かに憑りつかれてるみたい……)

メリー「綺麗ね。私、あなたのことが好きよ」

蓮子(えっ……)

メリー「私ね、人間を生きている状態で見たなんてなかなか無かったのよ」

蓮子(どういうこと……?)

メリー「もうそれだけであなたのことが好きになっちゃった」

蓮子(何を言ってるの……?)

メリー「貴女の血を啜って、早く食べちゃいたいくらい」

メリー「でも、久しぶりに人間に会ったんだもん、それじゃもったいないでしょ?」

蓮子(もしかして……)

メリー「だからお話しましょうよ。ねぇ」

蓮子(このお屋敷に残っていた思念に囚われているの?)

メリー「おとなしくなったみたいね。今外してあげるわ」

メリー「さぁ、お話しましょ?」

蓮子「どうしてこんなことしたの?」

メリー「決まってるじゃない。今から私は食事をするんだから」

蓮子「食事って、貴女何者なの?」

メリー「今から食べられるんだから、そんなこと教えても意味ないじゃない」

蓮子(血を啜る……っていうことはまさか)

メリー「久しぶりに人間に会えてうれしいのよ、私」

蓮子「貴女、もしかして吸血鬼?」

メリー「当たりよ」

蓮子「それで私の血を啜ろうとしてたのね」

メリー「そんなことどうでもいいわ。野暮な話するくらいならすぐ血を啜るわよ」

蓮子「そういえば、貴女人間に久しぶりに会ったって言ってたけど」

メリー「ええ。人間なんて食べ物に加工された形でしか見たことないから」

蓮子「それって……」

メリー「使用人がね、調理場で人間を捌いて料理を作ってくれるのよ」

蓮子「何よそれ……」

メリー「あなたたちだって、牛や豚に同じことしてるじゃない」

蓮子「じゃあさっきクッキーとアイスティーを持ってきたのは?
   わざわざ眠らせなくても力づくでここに連れてくればいいじゃない」

メリー「言ったでしょ?一応あなたもここに来た以上はお客様なのよ。お客様はもてなさなきゃ」

蓮子「食事なのにお客様なんておかしな話ね」

メリー「人間は言葉を話すもの。家畜と一から十まで同じ扱いをしたら失礼だわ」

蓮子「意外と粋なところがあるのね」

メリー「それにね、私寂しかったのよ」

蓮子「こんな広いお屋敷に住んでるのに寂しいの?」

メリー「私はずっとここから出ることを許されてなかったの」

蓮子「そういえばここって……?」

メリー「この屋敷の一番深いところよ」

蓮子「どうして閉じ込められてるの?」

メリー「この屋敷の連中は私のことが怖いのよ」

蓮子「このお屋敷には貴女以外に誰か住んでたの?」

メリー「ええ。でも誰も私に構ってくれなかった」

メリー「私は誰かと話したり、遊んだりしたかった……」

蓮子「そうだったんだ……」

メリー「だからまともに話せる相手、しかも珍しい人間が現れて嬉しかったわ。
    玩具なんか与えられてもすぐ壊れちゃうし」

蓮子「貴女が寂しいことはよくわかったわ。でもね、私とってもいつまでも私の友人の体を勝手に借りられるのは不都合なのよ」

メリー「この体はもう私のものよ。誰にも渡さない」

蓮子「貴女は、人から大切なものを奪ってまで寂しさを満たしたいの?」

メリー「当たり前じゃない。そんなこと」

蓮子「それなら、貴女がここに閉じ込められたのも頷けるわね」

メリー「どういうこと?」

蓮子「そんな我儘な奴、閉じ込めたくもなるわよ」

メリー「あなたもあいつらと同じ考えなのね……私のことが嫌いだから……」

蓮子「ただ嫌な奴だったから閉じ込めたわけじゃないと思うわよ」

メリー「うるさい!もういいわ、殺してあげる!」

蓮子「閉じ込めることは大切な事を自覚させる為だと思うんだけどな」

メリー「そんなことはない!あいつらはただ私のことが嫌いだから閉じ込めたのよ!」

蓮子「貴女、自分以外のものを軽く見てきたでしょ」

メリー「当たり前じゃない。私は私。他のものに煩わせられたくないわ」

蓮子「それが閉じ込められる原因よ。貴女は大切なことがわかってない」

メリー「大切なのは自分自身でしょ?」

蓮子「いい?自分っていうのは他者なしでは存在できないの」

メリー「違う!現に私はここにいる!」

蓮子「でも、貴女『寂しい』って言ったわよね?」

メリー「寂しいわよ。わたしだって、外に出て自由に遊びたいもの」

蓮子「そういう感情があるのに、まだ大切なことに気づかないの?」

メリー「訳が分からないわ」

蓮子「寂しいってことは他者の存在を欲しているのよ」

メリー「ええ、そうよ。私はあなたと話がしたいって理由でもここに連れてきたわけだし」

蓮子「そう、寂しさは他者がいなければ満たされないわ。そして寂しさは自分の存在が失われてきている証拠。
   寂しさを満たすためにはね、他者のことをしっかり考えなくてはならないの」

メリー「なんでそんなことしなければならないの?面倒じゃない」

蓮子「他者もあなたと同じだって、考えたことある?」

メリー「そんなこと考えもしないわ。私は私だもの」

蓮子「貴女が他のものを自分の思い通りにしていたら、どうなるかわかる?」

メリー「知らないわよ」

蓮子「貴女が一方的に振る舞うってことは、相手は存在を無き者にされてるのと変わらない。
   その結果、最終的には関係が壊れたりして寂しい思いをしたり、苛立ったりするのよ。
   今の貴女みたいにね」

メリー「そんなこと、私には関係ないわよ」

蓮子「まだわからないの?そんなこと続けていたらあなたに待っているのは孤独。つまり、寂しさに溢れた毎日よ」

メリー「そんなの、閉じ込められてるのと変わらないじゃない」

蓮子「そう。でも、寂しさが募って耐えきれなくなったらどうなるかしらね」

メリー「どうもしないわよ」

蓮子「さっき言ったわよね、寂しさは自分の存在が失われてきている証拠だって」

メリー「それがどうかしたの?」

蓮子「つまり、自分というものがなくなるのと同じなのよ。さっきから私は私とか言ってるけど、
   傍から見たらいないものに等しいの」

メリー「そんなの……嫌だよ……」

蓮子「そう、誰だって自分の存在が消えて嬉しいはずがない。貴女がそうならないために、他の人たちはあなたを閉じ込めることによって
   貴女が他者の大切さを知ってほしかったのよ」

メリー「そうだったのかしら……」

蓮子「それに気づけただけで貴女は成長してるはずよ。他の人も、外に出ても大丈夫だってきっと思うわよ」

メリー「ほんと?」

蓮子「ええ。それがわかったら、私の友人の体を解放してくれない?この子も私にとって大切な存在なの」

メリー「……」

蓮子(メリーから精神学のことちょっと聞いといてよかったわ。あとは伝わればいいんだけど)

メリー「……ここは?」

蓮子「メリー!気付いたのね!」

メリー「なんで縛られてるの?」

蓮子「知らないわよ!ほら、見てないで助けてよ」

メリー「分かったわ」

蓮子「はぁ、やっと解放された。ねぇメリー、何も覚えてないの?」

メリー「調理場の倉庫みたいなところに入ったところから意識がなくて……」

蓮子「もう!おかげでこっちは大変だったんだからね!」

メリー「何があったの?」

蓮子「あえて教えないでおくわ」

メリー「蓮子の意地悪……」

蓮子「さぁ、ここから出るわよ」

……

蓮子「やっとさっきの図書館のところまで来れた……このお屋敷の地下、どれくらい深かったのよ」

メリー「もしかして、厳重に封じられた扉の先がさっきの最下層だったってこと?」

蓮子「そうなるわね」

メリー「どうして開けられたのかしら?」

蓮子「さぁ?メリーが無意識の内に馬鹿力でこじ開けたんじゃないの?」

メリー「からかわないでよね!」

……

蓮子「エントランスまで来たわ。もう日が暮れかかってるわね」

メリー「結局、結界については何もつかめなかったし、夢との関連も分からなかったわね」

蓮子「いや、もしかしたら関連はあるかもよ?」

メリー「何か分かったの?」

蓮子「勘よ、勘」

メリー「このお屋敷ともお別れね。まだ散策しつくしてないのが惜しいわ」

蓮子「私はもうここは懲り懲りよ」

メリー「ねぇ、今日はここに泊まっていかない?こんなに大きいお屋敷だもの、寝るところだってある筈よ」

蓮子「冗談で言ってるの?泊まるにしても一人で泊まってよね。私は帰るから」

メリー「冗談よ、一人で泊まったってつまらないし」

……

蓮子「ふぅ、久々に外の空気を吸ったわ。」

メリー「本当ね、中は埃くさくてたまらなかったわ」

蓮子「最後に夕日をバックにお屋敷と記念撮影でもしていく?」

メリー「いいわね。じゃあ……あれ、見てよ蓮子!お屋敷が」

蓮子「どうかしたの?」

メリー「お屋敷が跡形もなく消えちゃったわ」

蓮子「信じられない……」

メリー「まるで今までのことは夢だったかのようね」

蓮子「もしかして、本当に夢だったのかもね」

メリー「私ももうわけわかんないわよ」

蓮子「でも、これが夢だとしても、メリーと一緒に夢を共有できたってだけでもうれしいわ」
   それに、何となくメリーが夢から覚めた時の気持ちがわかった気がするかも」

メリー「蓮子……」

蓮子「今日あったことは、一生の思い出になるかもしれないわ」

メリー「今日あったことも、じゃないの?」

蓮子「それもそうか……これからもよろしくね、メリー」

メリー「こちらこそよろしく、蓮子」


おわり

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