月物語 (362)
「問おう。うぬが儂のあるじ様かの?」
阿良々木暦は、文化祭の前々日に、月に招待された
これは、あるはずの無かった物語
Fate /extra と化物語のクロスオーバー
青春は、迷いなくとも、うまくいく
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「それとも、お前が今まで助けた連中に助けでも求めるかにゃ」
戦場ヶ原ひたぎ 蟹に行き遭った少女
「僕は…誰も助けてなんか…いない…」
神原駿河 猿に願った少女
「だって……人は一人で…勝手に助かるだけだから」
千石撫子 蛇に巻きつかれた少女
「だったら、ご主人を助けないお前はここで死ね」
羽川翼 猫に魅せられ、異形の翼
あぁ、やっぱり悲しむだろうな。戦場ヶ原も神原も千石も羽川も妹逹も。僕が死んだら。
……忍も、きっと。
けど、それでも僕は。
「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」
あぁ。ヤバい。意識が…………
「ぐはっ!」
ブラック羽川は限界までエナジードレインをして、僕を投げ捨てた。もう意識を保っているのが精一杯だった。
「とどめにゃ!!」
「ふむ。そちらではなかなか興味深いことが起こってるようだね」
……声が聞こえた。
「彼がこちら側を改変してからというもの、私のやることといえばそちら側を観察することだけ」
「いくら元NPCとはいえ、いい加減することがなく、暇をもてあましていた所だが………なかなかどうして興味深い」
「だが、これからそちらで起こるのは戦争ではなく蹂躙だ」
無機質なのにどこか温かい声が。
「戦争とは違い、蹂躙からは何も産まれない」
頭の中に、響いてきた。
「それでは困るんだ。だから、君にチャンスをあげよう」
チャンス?何を言っているんだ?だって僕は、もう諦めて………
「諦める?何を言っているんだ。人間は最初から諦めている。全能ではないのだから。それに……」
「今の君の人生の終末は、完成(おわり)に足る、美しい模様(アートグラフ)と言えるのかね?」
………そうだ。これじゃ駄目だ。確かに僕は羽川のために死にたいと思っているけど、これは全然羽川のためにならない。これじゃ僕の勝手な自己満足じゃないか!
僕はもう、正確には人間とは言えないけれど、それでも、それでも諦めた先にチャンスがあるのなら
「僕は、それを掴んでみせる!」
「良い答えだ。では君を、特別にこちら側に招待しよう。君には特別なサーヴァントを用意しておく。思う存分戦うといい」
「安心してくれ。彼がこちらを改変したおかげで、彼が言うところの『無意味な殺し合い』もなくなった。君が戦うのはしょせんデータにすぎない」
殺し合い?戦う?その言葉の意味を考る前に意識が途切れた。
これから語るのは、地獄ようでな春休みでも、悪夢のようなゴールデンウィークでもない、パラレルワールドでの物語
プロローグ(完)
『四回戦のイベントは、レースです。各マスターは、別々のスタート地点から同一のゴール地点まで向かってもらい、先にゴールにたどり着いたマスターを勝者とさせていただきます。なお、中間地点にはエネミーを配置しましたので、それを撃破して進んでください』
『では、スタートまで残り1分。カウントダウンを始めます』
「レオくん達とは別々のコースを行くってことか。それじゃあ、ゴールにたどり着くまでに一戦交えるってことはなさそうだな」
「そうじゃな。しかし、油断は禁物じゃぞ、我があるじ様。今までの経験から言って、あやつらがなんらかの形で妨害をしてくることは明白じゃろう」
毒。固有結界。それと同じようなものが今回も用意されている、ということだろう。
「わかってるさ、忍。今回の敵はいつも以上に強敵だ。油断なんてできるわけがない」
『3 2 1 それでは、スタートです』
レースが始まり、少ししたところで僕と忍は走りながら、今回の対戦相手について話し合っていた。
「なあ忍。ガヴェインっていうあのサーヴァントって、いったいどういう奴なんだ?」
「うむ。あやつは『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士の一人であり、アーサー王の甥にあたる人物じゃ。そして、もう一人の聖剣の担い手であり、王の影武者とも言われとったようじゃの」
「ああ、アーサー王なら僕も知ってるぞ。それに、その聖剣ってやつも。たしか、エクスカリバーだっけか?」
「そうじゃな。そして、ガヴェインが持つもう一つの聖剣の名はガラティーン。エクスカリバーの姉妹剣にあたるもので、エクスカリバーが『約束された勝利の剣』と呼ばれてるのに対し、ガラティーンは『転輪する勝利の剣』と呼ばれておる」
「へぇー。…………それにしても、忍。なんでそんなに不機嫌そうなんだ?」
なぜだか分からないけど、忍はガヴェインのことを話し始めてから、微妙に機嫌が悪そうだった。
「ふん、なんのこはない。あやつが『太陽の騎士』と呼ばれていることや、あやつの能力の多くが太陽から恩恵を受けるものじゃからな。それが気にくわないだけじゃ」
「そっか。そういや太陽はお前の敵なんだっけか?」
「うむ。いつか必ず倒す!」
「いや、それは流石に勘弁んしてくれ」
なんて話しをしていると、目の前に桜ちゃんの言ってたエネミーらしきものと、その隣に奇妙な機械が置いてあった。
「ん?あれはなんじゃ?我があるじ様」
「さあ?えっとなになに、『ハーウェイ マネー イズ パワー システム』?」
ネーミングセンスの欠片もないな。金は力って、なんだ?この機械。
ハーウェイの名前から、おそらくレオくんの仕業なんだとは思うけれど、いったいどんな効果があるんだ?
「ふむ。どうやらこの機械に決められた金銭を入れれば、エネミーのレベルがダウンするもののようじゃな」
「おいおい、僕は金なんて持ってないぞ」
「なんじゃ、使えんの。む?お前様よ、あそこに宝箱があるぞ」
「おっラッキー。じゃあ早速…………………って空じゃねぇかよ!!」
「カカッ。随分と簡単な罠に引っ掛かったの」
「くっ。お前、気づいてたのかよ!」
なんて吸血鬼だ。僕のさっきの喜びを返せよ!
「ちゅーかそんなもん、気づかん方が悪いじゃろ。」
「しょうがないだろ。リアルでこのサイズの宝箱を開ける経験なんてめったにないんだし」
つーかそんなもん、ゲームの中でしかないだろう。
「で、お前様よ。どうするのじゃ?」
「いや、どうするって言われてもな」
金なんて持ってないし、このままエネミーを倒すしかないんじゃないか?
「いや、もう少し辺りを探せば当りの宝箱があるかもしれんぞ」
「うーん。エネミーの強さがわかんねーからなんとも言えないけど………………とりあえず、もう少し辺りを探してみよう」
「うむ、了解した」
「くっそー!僕の夢と希望を返せ!」
結局、あの後直ぐに二つの宝箱を見つけたけれど、両方とも空だった。
「じゃから、あの二つで止めておけと言ったじゃろうに」
その後、当初の目的も半ば忘れ、血眼になって宝箱を探したが結局当りの宝箱は無く、弱体化無しでエネミーは倒せたものの大幅にタイムロスをしてしまった。
「だって、あれじゃあまるで、僕のリアルラックが低いみたいじゃないか!」
「いや、低いどころか全くのゼロじゃと思うがの」
「ちくしょー!とにかく急ぐぞ!」
「おや、遅かったですね、ミスター阿良々木」
ゴール地点には、レオくんとガヴェインが立っていた。
「ああ、誰かさんの粋な計らいのおかげでね」
「ふふ、そうですか」
僕の皮肉もどこ吹く風。顔にはあいかわらずの笑顔を浮かべていた。
「それでは、どうしますか?僕としては、このまま帰っても良いのですが」
おそらくは戦って情報の探り合いしようと言っているのだろう。いや、彼からすれば僕にチャンスをくれているのかもしれない。
「いけるか?忍」
「うむ。このまま何の情報も無しにバトルに向かうのは些か危険じゃしの」
「そうですか。では、頼みますよ、ガヴェイン」
「御意に」
場に緊張が走る。
ガヴェインは『転輪する勝利の剣』ガラティーンを忍に向かって構えた。
「カカッ。思えば、ここに来てからまともな接近戦をするのは初めてじゃの」
対する忍は二本の心渡を構えた。
「行くぞ!」
「騎士ガヴェイン、参る!」
「はっ!」
「てい!」
「ふん」
「受けていただく!」
剣と刀のぶつかり合い。
実力はほぼご確認と言ってよかった。
一撃に力を込めるガヴェイン。
手数を活かして攻める忍。
両者一歩も引かない攻防が繰り広げられていた。
ガキン
激しい金属音と共に一度距離をとる忍。その体にはいくつかの傷が出来ていた。
「ちっ、不味いの」
「どうしてだ?僕には互角に戦ってるように見えるけど」
実際、忍は前回の準優勝者相手に一歩も引かない戦いを演じていた。
「ふん。よく見てみろお前様。あやつの体には傷一つついておらんじゃろう」
「えっ!?」
忍の言った通りだった。ガヴェインは、その体はおろか、防具にすら傷一つつけていなかった。
「おい、これどういう事だよ!お前の攻撃だって、何回かはヒットしてただろ!」
「そのはずなのじゃがな。おそらくはあやつの能力じゃろう。これは、ここで戦っておいて正解じゃの!」
そう言うと同時に、忍はガヴェインに向かって行った。
今度は足をも刀に変えて猛攻をかける。
「はぁ!」
しかし、やはり忍の攻撃がヒットしてもガヴェインには傷をつけることが出来ない。
「それでは、こちらからもいかせてもらいます!」
そう言うと、ガヴェインの持つガラティーンに炎、太陽が宿った。
「全て我が王のために!」
「くっ!」
とっさに宙に飛んで足を合わせて四本の刀で攻撃を受ける忍。なんとか吹き飛ばされながらも攻撃を受けきったようだ。
しかし、その体の所々は、おそらくあの攻撃が太陽の炎を宿していたせいだろう、焼きただれていた。
「ちっ、忌々しい太陽めが!」
「闇に生きる者よ。私の太陽の力で滅ぶがいい」
『警告 警告 イベント中の許容戦闘時間を過ぎました。直ちに戦闘を終了してください』
「ここまでですか」
「ふう、大丈夫か?忍」
「うむ。問題無い」
確かに、最後の攻撃以外の傷は既に回復しているようだ。
「では、ミスター阿良々木。僕達はもう帰ります。明日はお互い悔いの残らないよう、全力で戦いましょう」
そう言って、レオくんはガヴェインと共に去っていった。
「儂らも帰るぞ、お前様よ。あやつの対策を早急に練らねばいかん」
「そうだな」
こっちの攻撃が効かないことには、勝つなんて夢のまた夢だ。マイルームで忍と相談するとしよう。
「それで、対策を練るのは良いんだけどさ、まず、ガヴェインの能力ってどんなもんなんだ?」
アリーナから戻ってきた僕達は、早速今回の対戦相手について話し合っていた。
「うむ。まず、あやつが『太陽の騎士』と呼ばれておる由縁から話すとしよう」
「あやつは生前、太陽の出ている間は三倍の力を発揮するという特殊体質を持っていたと伝えられておる」
「太陽の出てる間ずっとか!?」
太陽の力でパワーアップするなんてどんな人間だよ。
「まぁ、正確には午前9時から正午までの3時間と、午後3時から日没までの3時間じゃったらしいがの。
ともかく、その時間帯に日輪の元であれば、何者にも傷つけられず、その桁外れの防御力によって無類の強さを誇っていたようじゃ 」
「おそらく、それが先の戦いで儂があやつを傷つけられなかった理由じゃ」
そうだったのか。そんなとんでもない能力が備わっていたなんて、流石は準優勝者のサーヴァントと言ったところか。
「じゃあ、それを破る方法は無いのか?」
相手の能力に感心している場合じゃない。今回はただでさえ、イベントに勝利できなくて相手の情報が少ないんだ。ここまで来て、相手に傷一つつけられずに負けるなんて笑えない。
「うむ。要は、明かりを無くして一撃でもあやつにみまえば良いんじゃ。あれほどの強力な能力なら、一度破られればもう使えまい」
「けど、それが難しいんじゃないか。だって、僕達がいつも戦うのは、この世界での日中なんだから」
「カカッ。じゃったら、儂自らが場を整えればよい」
「場所を整えるって、もしかして、固有結界でも使うのか?」
「うむ。儂の得意な丑三つ時にでもなれば、あやつの能力を封じる事もでき、儂もいつもよりパワーアップができるからの」
「固有結界って、そんなことも出来るのか?」
つーか、さっきは適当に言ったけど、固有結界ってそもそもどんなものなのか、僕知らないんだよな。
「 うむ。そもそも固有結界というのは、術者の心象風景で現実世界を塗りつぶし、内部の世界そのものを変えてしまう結界のことじゃ。心象風景ゆえ、儂が自由に世界を作れるわけではないが、それでも、儂の天敵である太陽などそこには存在しないじゃろう」
「へぇ、まあ細かいことは良くわかんねぇけど、つまるところ、その固有結果でこっちはどれくらい有利になるんだ?」
「まず、あやつに攻撃が効くようになると同時に、あやつの太陽の力を借りた攻撃の威力が落ちるの。そして、対称的に儂の能力が上がり、少しじゃが本来の儂に近づけるじゃろう」
「すげぇじゃん!けど、それって結構魔力を使うんじゃないのか?」
自身の体を霧にするだけであれだけの魔力を使うんだ。一つの世界を上書きするとなれば、一体どれほどの魔力を使うんだ?
「うむ。今の儂の魔力なら、精々二回、数分維持するだけで精一杯じゃな」
「そうか、それじゃあ実質使えるのは一回だな。霧化する魔力も温存しとかないとだし」
ガヴェインの攻撃は強力だ。宝具を使われた時の為にも回避の分の魔力も残しておかなければならない。
「いや、今回の戦いで儂は霧化を使うつもりはない」
「えっ!?」
どうしたんだ?もしかして、相手が太陽の騎士だからつて意地でも張ってるのか?
「考えてもみろ、お前様よ。霧というのは液体じゃ。あやつの炎を纏った攻撃の前で霧化などすれば、あっという間に蒸発してしまうわ」
「ああ、そっか。けど忍、霧化なしでガヴェインの宝具に耐えれるのかよ?」
忍自身、太陽の炎を纏った攻撃には弱い。忍の耐久値でガヴェインの宝具を受けきれるだろうか?
「そこは、こちらの固有結果の使い所じゃな。霧化の魔力は考えないとして、使えるの二回じゃ」
「だったら、まずはガヴェインに攻撃を通す為に初っぱなで一回だな」
「うむ。そこで、出来る限りあやつの体力を削り、あやつが宝具を使う瞬間に二回目じゃな」
「そうだな、それがベストか」
「じゃがまあ、そう簡単にはいかんじゃろうな」
「うーん。そうだ、お前の魔力が上がってるってことは、僕の魔力供給の負担も減るんだよな?だったら僕にもなにか出来る事は無いのか?」
今回の相手はただでさえ忍と相性が悪い。だから、その分僕は忍の力になりたい。結局、前回の戦いだって僕は一つも役に立ってないのだから。
「そうじゃの。今のお前様ならば、一度くらいならコードキャストを使うことも出来るかもしれんの」
「コードキャスト…………」
確かコードキャストって魔術みたいなものだったかな?
だったら、あれだったら忍の助けになるかもしれない。
「まあ、あまり無理されてもの。またこの前のようにぶっ倒れられても困るしの」
「では、明日に備えて今日はもう休むとするかの」
「おう。明日もよろしく頼むぜ、忍」
「うむ。任せておけ。太陽との戦いの前哨戦じゃ。太陽の騎士なんぞに負けるわけにはいかんからの」
……………………まあ、理由はあれだけど、やる気が出るのは有り難いな。
今日はここまでです
明日はいよいよ阿良々木さんの見せ場?があります
乙
どうみても忍の天敵だよなガウェイン。
ところで今の忍の外見年齢どんなもん?
ガウェインは年下ロリ巨乳が好みだっけ。
>>300
年齢は8歳
ガヴェインはロリコンじゃない!
ちょっと年下の女性が好きなだけだ!
すいません
直前の投下の前にこれが入ります
忍の詠唱が終わると共に、いつのまにか辺りが暗くなっていた。
そこは、造りこそ僕には見覚えの無い西洋のものだったが、それでも、そこに人が住んでいると想像するには十分なほどに、生活感漂う街だった。そして、空には、予想通りの満月が煌々と輝いていた。
でも、なんか………………
「吸血鬼にしては、随分と人間らしい固有結果ですね」
ガヴェインは、僕の思っていることと同じことを口にした。
「別に、不思議な事ではないじゃろう。我ら怪異は人間がいないところでは生きていけんからの」
そう言った忍は、固有結果の効果なのか分からないけど、高校生くらいにまで体が成長していた。
「では、行くぞ!」
「まだまだ!」
そう言って、忍はガヴェインを追撃する。
「一旦下がりなさい、ガヴェイン」
「はっ」
ガキン キン ガキン
忍の連撃を、防御に徹して受けるガヴェイン。しかし、じょじょに忍の手数に圧倒されつつあった。
「カカッ。そんなものか?」
「くっ、主よ!」
「わかりました。貴方に任せます」
「来るぞ、忍!」
「分かっておるわ」
「全て我が王のために!」
そう言うとガヴェインは、イベントの戦いで見せた、太陽の炎を纏った攻撃を繰り出してきた。
「忍!?」
対する忍は、あろうことか自分の左手を差し出し、肉を切らせて骨を断つ戦術で、ガヴェインの斬撃を左手で受けているうちに、右手の刀で力一杯ガヴェインの腹を切りつけた。
「くっ!」
ガヴェインは痛恨の一撃をくらい、たまらず一度距離をとった。
対する忍は、ガヴェインの一撃でもげた左手を固有結果の能力で回復していた。
そして、忍の左手が回復し終わると同時に、忍の固有結果は消え去った。
「みくびっていましたか……」
「立て直しますよ、ガヴェイン」
「はい。午前の光よ、善き営みを守り給え!」
詠唱と共に、ガヴェインの体は淡い光で包まれた。
「ふむ、防御力の強化か」
「今度はこちらから行かせてもらいます!」
同時に、ガヴェインは忍に切りかかってきた。
それを忍は二本の心渡で受けとめ、素早く反撃に転じた。
しばらく、二人の膠着状態は続いた。
防御力強化で、忍の多少の攻撃では致命傷を与えられなくなったガヴェインだったが、おそらく、先程の忍の攻撃が効いているのだろう。戦況はじょじょに、忍に傾きつつあった。
「そらっ!」
「引くがいい!」
「はぁっ!」
「くっ!」
防御力強化が切れたのだろう。忍の容赦ない攻撃に、たまらずガヴェインは距離をとった。
「これが窮地というものですか」
そう呟いたレオくんの顔には、しかし、動揺の色は見られなかった。
「レオ……」
「ええ、あなたの思うままに。ガウェイン」
レオくんの言葉と共に、ガヴェインのガラティーンには、今までとは比べ物にならないほどの力が溜められてた。
「来るぞ、忍!今だ!」
「うむ!」
「この剣は太陽の写し身……もう一振りの星の聖剣!
転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」
「開け、全てを覆う怪異の王(キスショット アセロラオリオン ハートアンダーブレード)!!」
一閃。
凄まじい、まさしく太陽と呼ぶべき炎をガラティーンに乗せた、強力な一撃がガヴェインから放たれた。
「忍!」
「私のガラティーンに……耐えたと!?」
「有り得ない……」
ガラティーンを食らった忍は、全身焼きただれてボロボロになりながらも辛うじて耐えていた。
「大丈夫なのか?忍!」
「カカッ。何をそんなに心配しておるのじゃ、お前様よ」
「だってお前、呪文の詠唱が無かったから、僕はてっきり間に合わなかったんだと………………」
「ふん。あんなもの、その場のノリじゃ」
「そうか、ならいいんだ……………………っておい!」
なんだよ、僕あれにちょっと感心してたのに。
「それでは、一気に蹴りをつけるかの」
「くっ、ガヴェイン!」
忍は一気に勝負をつけにかかった。
二本の心渡と刀の蹴りがガヴェインを次々と襲う。
「っ!その呼吸を乱す」
ガヴェインの体に先程とは違う光が集まってきた。
「ふん。今更幸運上昇など小賢しい」
ガヴェインの宝具に耐えた忍は、完全に流れを掴んでいた。おそらく、ガヴェインに競り勝つのも時間の問題だろう。
「…………………………………」
ガヴェインが押されていくさまを、レオくんは黙ってみつめていた。
その目には諦めの色など微塵もなく、あるのはただ、燃えるような闘志だけだった。
くそ、なんか嫌な予感がする。
レオくんはまだ奥の手を隠しているのか?
「忍、急いで勝負をつけるんだ!」
「言われなくともそうするわ!」
「はぁっ!」
「くっ、まだです!」
その後も忍は順調にガヴェインを押していった。
そして、ついに最後の一撃を与えるところまで追い詰めた。
「カカッ、しぶといやつじゃ。じゃが、これでしまいじゃの」
忍がそう言った瞬間、二回目の固有結果は消えてしまった。しかし、今更問題はない………………
「今です、ガヴェイン!」
「なに!?」
ガヴェインは最後の力を振り絞って忍を突き放し、再度ガラティーンに炎をまとわせ始めた。
「この輝きの前に夜は退け、虚飾を払うは星の聖剣!」
くそ、何故気づかなかったんだ。こっちが固有結果を二度使えるなら、あっちだって宝具を二度使う可能性だってあるんだ。
………………だったら、こっちにだって考えがある!
「忍!ガヴェインに突っ込め!」
「正気か!?お前様!」
「僕を信じろ!!」
忍は僕の言葉を聞くと、躊躇いなくガヴェインに突っ込んでいった。
まったく、お前は頼れるパートナーだよ。
ここで僕がしくじるわけにはいかない。
集中しろ。タイミングを逃すな。やるんだ、阿良々木暦!
「エクスカリバー・ガラティーン!!」
「koyomi vamp!!」
「なに!?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
瞬間、僕の両腕は植物に形を変えて、ガヴェインのガラティーンを受けとめた。
当然、自分の腕でサーヴァントの宝具を受けているので、滅茶苦茶痛い。
けど、こんなもん、今まで忍が負った傷に比べれば何でもない!
大木のごとく成長した僕の両腕は、ガヴェインの攻撃で粗方消失してしまったけれど、それでも時間を稼ぐのには十分で、
「終わりじゃ!」
ガヴェインの体を忍の心渡が貫いた。
「余力はありません……私の……完敗です……」
「終わったーー」
よし、準優勝者に勝ったぞ!これでゴールにまた一歩近づいた!
「申し訳ありません。主よ」
「貴方が謝ることではありませんよ、ガヴェイン。今回は、あちらの想いが僕たちに勝っていたというだけです」
「…………そうですね。今回は完敗です」
「はい。こういう負けかたも、なかなかに気分が良い」
「では、私はこれで。まだあなたに、王命が残っていることを信じて、いつか、また……………」
そう言って、太陽の騎士、ガヴェインは姿を消した。
「おめでとうございます。これでまた、貴方の願いに近づきましたね」
「ああ、ありがとうレオくん」
「それでは、僕もこれで………」
「あっ、待って」
「はい?」
「化物に襲われるのが人間なら、化物を助けちまうよーなやつは、一体なんなんだろうな?」
僕の質問に笑顔でレオくんは、
「さあ、僕にはわかりかねますが、結局は、その人が何者でありたいかなのではないですか?」
「それでは、今度こそ」
そう言うと直ぐに、レオくんも姿を消した。
「帰ろうーぜ、忍。慣れないことしたから、僕は疲れちまったよ」
「うむ。そうじゃな」
願いが叶うまであと二回戦。このまま突っ切るとしよう!
四章(完)
今日はここまでです
レオやガヴェインの口調がおかしいかもしれませんが、気にしないでください
それ以外の意見や感想等があればお願いします
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