カツオ「このままじゃ殺される」(315)

タラオ「カツオ兄ちゃん、死ねですぅ」

ナイフがカツオの腕をかすめた

カツオ「痛い! やめてタラちゃん!」

タラオ「いやですぅ~」

カツオ「くそ!」

ボコッ

タラオ「うわーんママーカツオ兄ちゃんがいじめるですぅ~」

サザエ「カツオ! アンタはご飯抜きよ!」

波平「カツオ! 後でわしの部屋にこい!」

カツオ「違うよ。タラちゃんが僕を刺そうとして」

タラオ「僕そんなことしてないですぅ~」

サザエ「タラちゃんが嘘言うわけないでしょ!」

波平「こいカツオ!」

また今夜もはじまる

寝られない夜が……

顔が腫れあがっていた。

波平に竹刀で叩かれた後だ。

寝ることは許されない。

寝ているとバケツに顔を突っ込まれる。

カツオ「やめてよ父さん……死んじゃう……」

波平「お前など死んでも構わん」

カツオ「そんな……」

朝日が射してきた。

ようやく寝られない夜が終わる。

波平「飯は抜きだ」

空腹のまま学校にむかった。

父さんは服で隠せる範囲しか殴らないから、誰も虐待されていることには気付かない。

中島「磯野、野球しようぜ!」

カツオ「ごめんな。中島。今日は帰らなくちゃいけないんだ」

帰らなければ確実に殺される

カツオ「全部終わりました……」

家の全ての雑用をこなすのが僕の日課だった。

サザエ「じゃあ次はタラちゃんと遊んでくれる」

カツオ「うん……」

サザエ「タラちゃんなにがいい?」

タラオ「僕ダーツがしたいですぅ」

サザエ「じゃあカツオちゃんと遊んであげるのよ!」
サザエが部屋を閉めた。

部屋にはカツオとタラオの二人。

タラオ「じゃあカツオ兄ちゃんは的を持ってて下さい」

カツオ「えっ」

タラオ「はやくするですぅ」

カツオは的を持って立つ。

タラオが投げる。

タラオのダーツは的ではなく真っ直ぐカツオの頭にむかった。

カツオ「うわあっ」

タラオ「ああっ的が動いちゃ駄目ですよ」

カツオの中でなにかが切れた音がした。

次の瞬間。

カツオの右ストレートがタラオの腹にめり込んでいた。

はずだった。

タラオ「ふふふ、僕に手をあげましたね」

タラオの腹はなにか固いもので覆われた。

タラオ「これが僕の力ですよ」

カツオは部屋を飛び出した。

ここにいたら殺される。

家を飛びだして走る。

日はすでに傾いていた。

マスオ「カツオ君?」

カツオ「マスオ兄さん!?」

マスオはカツオの唯一の味方だった。

いつもカツオをかばおうとしていた。

マスオ「どうしてんだい?」

カツオ「実は……」

カツオは話した。

先程あったこと。もう家に帰る気はないこと。

警察にこのことをリークすること。

マスオ「カツオ君! 僕も君と行くよ! もうあの家には散々なんだ!」

カツオ「マスオ兄さん!」

マスオ「カツオ君、僕達は戦わなくちゃいけない……」

カツオ「僕達だけじゃ無理だよ。警察に……」

マスオ「タラオは“力”の覚醒者なんだ。だから警察でも歯がたたない。覚醒者を倒せるのは血縁者だけなんだよ」

カツオ「ちょっと待ってよ! なんなの覚醒って!?」

マスオ「詳しいことは後で話すよ。今はとりあえず戦力を整えないと……」

マスオ「あっ…タクシーだ! タクスィー!」

カツオとマスオはタクシーに乗った。

運転手「お客さん、どこまで?」

マスオ「とにかく遠くへお願いします!」

カツオ「これでとりあえず安心だね」

マスオ「協力者を集めよう」

……

カツオ「ま、マスオ兄さん、これって家に近づいてるんじゃ……」

マスオ「ちょ、ちょっと! 逆方向に行って下さい!!」

運転手「……」(ニヤリ

カツオ「なんか様子がおかしいよ」

マスオ「あっ、あなたは! イササカ先生!?」

イササカ「ふふふ」

マスオ「くそぅっ!」

マスオは運転席に乗り込みハンドルを強引に回した。

壁にぶつかり車は停止する。

マスオ「カツオ君降りろ!」

マスオとカツオは車を降りる。

イササカ「逃がしませんよ」

イササカがカツオとマスオの前に立ち塞がる。

イササカの手から放たれたツルの鞭がカツオの身体を拘束した。

カツオ「うわあああ」

マスオ「くそっ! こいつも“覚醒者”だ!」

イササカ「ふふふ。私の“力”は植物を操る能力!」

カツオの身体は植物にからめとられ、カツオの視界は暗くなっていった。

しかし、突然視界が開けた。

カツオ「熱い!」

炎がカツオの身体に絡めついていた植物を焼き付くしていた。

マスオ「……」

カツオ「マスオ兄さん!」
イササカ「ふふふ、ようやく“炎のマスオ”のお目見えですか」

カツオ「マスオ兄さん!」

マスオ「カツオ君逃げろ! こいつは僕が倒す!」

カツオ「“覚醒者”は血縁者じゃないと殺せないんじゃ……」

マスオ「“覚醒者”同士の場合はその限りじゃない!」

カツオ「!」

再びイササカのツルがカツオに延びる。

マスオは炎でそれを焼き付くした。

マスオ「カツオ君! アナゴ君の所へ行け! 君も“覚醒者”の素質はある! アナゴ君に“力”の使い方を教わるんだ!」

カツオは走りだした。

マスオ「君の相手は僕だ!」

イササカ「フハハハハハ」
マスオ「なにがおかしい!?」

イササカ「ふふふ、“炎のマスオ”まさか私相手に相性が良いと思ってませんか?」

マスオ「……」

イササカ「あなたは“炎”。私は“植物”。確かにこのままでは私に勝ち目はないでしょう」

イササカ「ですが」

イササカは左の掌から大量の水を噴射した。

マスオの炎がかき消される。

マスオ「まさか“二重覚醒者”!?」

イササカ「ふふふふ。あなたの炎など恐るに足りません」

カツオ「ハアハア、アナゴさんの家は確か……」

カツオは単身アナゴの家を目指していた。

カツオ「ここだ!」

カツオはインターホンを押す。

すぐにアナゴが出て来た。

アナゴ「あれ? フグ田くぅんの……」

カツオ「ハアハア実は……」

カツオはアナゴに全てを話した。

カツオ「マスオ兄さんが戦ってまし! まずは助けに行って下さい!」

アナゴ「カツオくぅん、その必要はないよ」

カツオ「でもマスオ兄さんが!」

アナゴ「フグ田くぅんは強い」

カツオ「でも……」

アナゴ「それよりも今は君の“覚醒”の方が先決だよ」

カツオ「……分かりました」

カツオ「でも“覚醒”ってどれぐらいの時間がかかるんですか?」

アナゴ「う~ん天才的な人で一年。素質がない人は二十年たっても無理なこともあるね~」

カツオ「そんなぁ」

アナゴ「でも僕に教わった場合は別だよ」

カツオ「えっ?」

アナゴ「僕は“覚醒者”であり“教育者”だからね。今のは独学の話だよ」

カツオ「どれぐらいでできるの?」

アナゴ「まあ三日あれば……」

カツオ「すごいや! それなら……」

アナゴ「でもそれでもタラオくぅんに敵うかどうかは分からないよ」

カツオ「え?」

アナゴ「タラオくぅんはSランクの“覚醒者”だからね」

カツオ「なんなのそのランクって?」

アナゴ「毎年更新される裏社会で付けられる“覚醒者”なランクだよ。タラオくぅんは最年少のSランクの“覚醒者”だよ」

カツオとアナゴの修業がはじまった。

アナゴ「カツオくぅん、筋がいいよ」

カツオ「あ、ありがとうございます」

……

そして三日目。

アナゴ「大分形になってきたよ。あと少し……」

そのとき、突然の轟音がなり響いた。

アナゴの家の壁が崩落する。

カツオ「なっ、なに!?」
甚六「ヒャッハー、随分探したよ! カツオ君!」

カツオ「じ、甚六さん!?」

甚六「ヒャッハー! カツオ君お迎えだよ!」

アナゴ「敵か……あいつは……“疾風の甚六”!?」

カツオ「どうかしたの?」

アナゴ「“疾風の甚六”と言えば僕らの業界では知らない者はいないよ。なにより恐ろしいのは……」

甚六「ヒャッハー!」

アナゴ「理性が崩落し、躊躇なく人を殺せることさ……!」

甚六の、霊圧が、消えた?

アナゴ「カツオくぅん、とにかく君は逃げるんだ!」
カツオ「い、いやだ! もう逃げるのはいやだ! 僕も戦うよ!」

アナゴ「カツオくぅんはまだ“覚醒”しきれてない……このままじゃ足手まといにしかならないよ」

カツオ「そんなぁ」

甚六「ヒャッハー! 死ぬい!」

甚六が大風を起こした。

アナゴの家が吹き飛ばされる。

アナゴ「僕は確信したんだ。タラオくぅんを倒せるとしたらカツオくぅん君だけだ! だからここは逃げるんだ!」

カツオ「……」

アナゴ「それに僕も“覚醒者”だよ。必ず甚六くぅんを倒して君と合流する」

カツオは背を向けて走りだした。

アナゴは分かっていた。

Eランクの自分にはCランクの甚六を倒せないことを。

磯野の者よ

カツオ「くそっ! 僕は助けてもらってばかりだ!」

カツオは涙を拭いながら夜の町を駆け抜けていた。

ノリスケ「あれ!? カツオ君! カツオ君じゃないか!」

カツオ「ノリスケおじさん!」

ノリスケ「良かった。君を探していたんだよ。マスオさんに頼まれてね」

カツオ「マスオ兄さんに!? マスオ兄さんは生きてるの!?」

ノリスケ「ごめん。それは分からないんだ。マスオさんから式神がきて僕は事件を知っただけだから……」
カツオ「そうなんだ……」

マスオは戦闘中に僕を気付かって式神を飛ばしたに違いない。

涙が出て来た。

ノリスケ「とにかくカツオ君に協力するよ! ここから逃げよう!」

波平「誰から逃げるんじゃ? ノリスケ?」

ノリスケの身体を一本が刀が貫いた。

ノリスケ「ぐあっ」

ノリスケの腹から血が吹き出す。

カツオ「ノリスケおじさん!」

波平「カツオ、お前を処刑しにきた」

ノリスケから刀を引き抜くと波平は構えた。

波平「マスオ君も馬鹿よのお。よりにもよってGランクのノリスケに助けを頼むとは……」

ノリスケ「た……助けて……」

波平「まだ息があるのか」

ノリスケ「私を……おじさんの味方に……して下さい」

波平「カツオを裏切るのか?」

ノリスケ「はい……こんな糞刈り上げの味方をした私が愚かでした……」

ノリスケの傷が塞がっていく。

ノリスケの能力は治癒。

しかし、直せるのは自分だけだ。

カツオ「そんなぁ」

波平「ふふふ、まあええじゃろう」

ノリスケ「ありがとうございます」

カツオは背を向け走りだした。

だがすぐに波平が回りこむ。

カツオ「速い……」

波平「わしの能力は肉体強化。速さ、力ともにもはや人の領域ではない!」

カツオ「くっ……」

波平「死ねカツオ!」

波平の刀が振り下ろされる。

カツオは死を覚悟し、目を閉じた。

だがいつまでたっても刀は下りてこない。

中島「磯野! これが片付いたら野球しようぜ!」

中島ぁぁぁぁ!

カツオ「中島!?」

中島がバットで波平の刀を受け止めていた。

波平「儂の刀を見切ったじゃと!?」

波平が距離をとる。

カツオ「中島お前……」

中島「今まで黙ってて悪かったな磯野。実は僕も能力者なんだ」

カツオ「!」

中島「そしてどうやらあいつと同じタイプらしい!」
中島はポケットから球を取り出すと、波平にむかって投げた。

球は空気を切り裂きながら、波平に一直線にむかう。

波平は直前で球を刀で両断した。

波平「どうやら君も肉体活性タイプの能力者のようじゃな……」

中島「磯野、下がっていてくれ……」

中島「こいつは僕が倒す!」

波平「“鬼人中島”こんなところで会えるとはのう……」

中島「僕もこんなところで“鬼の波平”に会えるとは思ってませんでした」

波平「ふふふ、鬼は一人いれば十分じゃ!」

中島と波平の戦いがはじまった。

接近戦。

戦いはほぼ互角のまま進んだ。

カツオ「すごいや……中島……」

能力は同じ。

しかし、二人の間には絶望的な差があった。

殺してきた人の数。

そして戦闘経験。

波平「足元がお留守になっておるぞ!」

波平が中島の足を払う。中島が尻餅をついた。

波平はすぐさま中島の身体を抑えつけ、喉元に刀を向けた。

ズドッ 
波平「まだ息があるはずだ。蘇生して我が貴下に加えるぞ」

くぅ~選挙に疲れましたw これにて政権与党完結です!
実は、国民が騙されてチェンジしてしまったのが始まりでした
本当は与党やるはずじゃなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので日本ぶち壊してみた所存ですw
以下、大敗を喫したゆかいな仲間たちのみんなへのメッセジをどぞ

管「みんな、今まで民主と友達でいてくれてありがとう
ちょっと売国なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

前原「いやーありがと!
ミンスのキモさは十二分に伝わったかな?」

仙谷「こんなのが与党だったなんてちょっと恥ずかしいよね・・・」

枝野「こんな政党を選んでてくれてありがとな!
正直、に言った私のただちに影響はないって気持ちは本当だよ!」

鳩山「・・・クルッポゥ」フリフリ

では、

管、前原、仙石、枝野、鳩山、野田「皆さんありがとうございました!」



管、前原、仙石、枝野、鳩山「って、野田君まだ死んでなかったの!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

中島「くっ…」

波平「ふふふ、経験の差が出たな」

波平が刀を振り被る。

刀が振り下ろされれば、中島は死ぬ。

カツオ「やめろ!!!!」

カツオが叫ぶ。

中島は死を覚悟していた。

次の瞬間に響いたのは、中島の断末魔。

ではなく、刀の刃が固い道路に落ちた音だった。

波平「なっ……今のは……?」

ノリスケ「カツオ君の“力”……!?」

中島は油断した波平を見て、身体を起こし今度は中島が波平の身体を抑えた。

中島「いいか? 磯野?」
カツオ「うん……」

中島のバットが波平の命を断った。

カツオはサイコキネシスかな

中島「磯野、さっきのは……」

磯野「僕にも分からない……でも、あれは僕の“力”だったんだと思う……」

中島「で、こいつはどうするんだ?」

中島がノリスケの首を掴みながら言った。

中島「殺しとくか?」

ノリスケ「ちょ、ちょっと待ってよ! おじさんに言ったのは本心じゃない! 僕はカツオ君の味方だよ!」

カツオ「下ろしてあげて……」

ノリスケ「あ、ありがとう。それにしても君は強いね~。あの“鬼の波平”を倒しちゃうなんて……」

中島「……磯野のおかげだよ」

カツオ「あっ……そうだ! アナゴさんが!」

中島「アナゴさん?」

カツオ「僕の師匠だよ! 助けにいかないと!」

見つかった死体は二つ。

アナゴと甚六。

ノリスケ「こっこれは“疾風の甚六”じゃないか!?」

カツオ「アナゴさん……」
カツオは涙を流していた。

中島「磯野……」

周りの状況からすぐに分かった。

格上の相手にとったアナゴの手段。

自爆。

それが“爆弾魔アナゴ”の最期だった。

中島「磯野、これからどうするんだ?」

カツオ「磯野家に乗り込む……」

ノリスケ「そんな無茶だよ。あの家は化け物だらけだよ」

カツオ「それでも僕はやらなくちゃいけない……」

中島「磯野! 僕も協力するよ!」

カツオ「ありがとう。中島」

ノリスケ「ぼ、僕はここでおりさせてもらうよ!」

ノリスケは逃げ出した。

中島「いいのか磯野?」

カツオ「うん。それより味方をしてくれる人を探そう。中島、“覚醒者”で協力してくれそうな人はいるかい?」

中島「それならBランクの“地神花沢”がいいよ」

カツオ「花沢さんのこと!?」

中島「うん。ルーキーの中じゃ花沢さんが一番の実力者だよ」

カツオ「それじゃあ花沢さんの家に行こう!」

中島「そうだな」

カツオ「とこれで中島、お前は何ランクなんだ?」

中島「僕はまだCランクだよ。でもいつかAランクまで上りつめるのが僕の夢なんだ」


ー花沢宅ー

花沢「そんな……私の“力”が通じないですって……」

??「ウフフフフフフフ、“地神花沢”所詮あなたはBランク。私はAランクですもの」

カツオ「ランクの最高はSじゃないのか?」

中島「Sランクは特定の極めて危険な“覚醒者”しか認定されないんだよ。肉体活性の僕じゃ“力”を極めてもAランクが最高なんだ」

カツオ「ふぅん。そうなんだ」

中島「花沢さんの家が見えてきたぜ」

カツオ「ほんとだ! おおーい花沢さーん!」

返答はない。

中島「鍵は開いてるみたいだぞ?」

カツオ「開けるよ花沢さん」

次の瞬間。

カツオと中島の視界に入ってきたのは血の海に倒れた“地神花沢”の姿だった。

カツオ「花沢さん!!」

花沢「……い…その……くん……?」

カツオ「花沢さん! 大丈夫!? いったい誰がこんな……」

花沢「……げ………て……」

カツオ「えっ? 何?」

花沢「……逃…げ……て……」

カツオ「逃げるって誰から?」

サザエ「久しぶりねカツオ」

カツオ「ね、姉さん!?」
中島の足はすでに動いていた。

肉体活性をした速さでサザエに近付き、バットを振りかざす。

中島「……そんな?」

中島のバットは粉々に砕けちった。

中島はすぐさま距離をとり、予備のバットを取り出す。

サザエ「ウフフフフフフフ、そんなチンケなバットで私の絶対防御を破れるわけないでしょ」

サザエの周りを円形のバリアが包みこんでいた。

中島「噂には聞いていたけど……Aランク“絶対防御のサザエ”そして“雷神のサザエ”……」

サザエ「ウフフフフフフフ、一つ足りないわよ。最近はね。こうも呼ばれてるのよ。“猛毒のサザエ”ともね」

中島の皮膚が紫色に変色しはじめていた。

中島「そんな……“三重覚醒者”だと……?」

すみません
風呂落ち

サザエ「ウフフフフフフフ、中島君、あなたはもう30分もしたら死ぬわね」

カツオ「そんな……」

サザエ「ワカメー! あんたも出て来なさいよ!」

ワカメ「……」

サザエ「ウフフフフフフフ、これで2対2ね」



ー磯野家ー

その頃、ノリスケは磯野家に来ていた。

ノリスケ「タラちゃんを呼んで下さい」

フネ「タラちゃんはお休み中です」

ノリスケ「……なら、あなたでもいいです。僕の話をきいてください」

フネ「なんですか話というのは?」

ノリスケ「タラちゃんの横暴を止めろ!!」

ノリスケは精一杯すごんで言った。

フネを脅すためだ。

ノリスケ「こんなこと許されるわけないだろ! 俺は“覚醒者”だ! のまないならアンタを殺す!」

ノリスケは床を精一杯の力で叩きながら言った。

フネ「Gランク“自己再生のノリスケ”さん、私のランクをご存知ですか?」

ノリスケの背中に悪寒が走った。

ノリスケ「えっ、そのフネ様も“覚醒者”でいらっしゃったんですか?」

フネ「Aランク“重力操者フネ”とは私のことですよ」

フネは笑った。

ノリスケ「あなたが“重力操者フネ”……様!?」

業界人なら普通“重力操者フネ”の名前を知らない者はいない。

それほどフネは実力者であった。

フネ「それで改めてお話というのは?」

ノリスケ「は……えーと……すみませんでした!」

ノリスケは地面に頭をこすりつけ、土下座をした。

フネ「ふふふ、ノリスケさん、磯野家の敷居を跨いで、まさか生きて帰れるとは思ってませんよね?」

ノリスケ「はっ……はひっ」

ノリスケの身体に徐々に重力がかかる。

フネ「ふふふ、ノリスケさんどうかしましたか? 背骨が妙な方向に曲がっていますよ?」

ノリスケ「は……ふ……」
音がする。

ノリスケの全身の骨が折れる音だ。

フネ「ふふふ、まだ1トンぐらいしかかけていませんよ?」

ノリスケ「」

ノリスケは全身の骨を折り、絶命した。

フネは視線を感じた。

フネ「そこにいるのは誰だい!?」

イクラ「バブー」

目が血走ったイクラだった。

イクラ「バブー」

フネ「あっ、イクラちゃん遊びに来たのかい。いやなもの見せちゃったねえ」

見られたからには殺すしかない。

フネはイクラに重力をかけはじめていた。

ノリスケ「あっあれ!? 僕は死んだはずじゃ……」

フネ「ノリスケが生き返った!? まさかこの“力”は“事象否定”!?」

次の瞬間にはフネの存在は、この世から消滅していた。

それをみていた者がいた。

タラオだ。

ー花沢宅ー

サザエ「ウフフフフフフフ、Cランク“氷の女王ワカメ”のお出ましよ」

ワカメ「……」

勝てるわけがない。

カツオの頭をそんな考えがよぎっていた。

カツオ「中島……」

中島「磯野……僕がサザエさんをくいとめる……だから磯野は頑張ってワカメちゃんから逃げてくれ!」

中島の皮膚の変色領域が徐々に広がっていく。

また逃げるのか……。

僕はなんて無力なんだ……。

いやだ。

サザエ「ウフフフフフフフ、中島君、本気で私をとめられると思ってるの?」

サザエが雷速でカツオに接近する。

中島は反応できない。

カツオ「僕はもう逃げるのはいやだ!」

??「よく言った! カツオ君!」

炎の壁によってサザエの電撃が防がれた。

サザエ「あら~まだ生きてたのね」

攻撃を防いだのは“炎のマスオ”

カツオ「マスオさん!」

マスオ「待たせたね。カツオ君」

サザエ「ウフフフフフフフ、雑魚が何人集まろうが一緒よ」

マスオ「中島君、僕がサザエの相手をする。君は悪いがワカメちゃんを頼む」

中島「いやです」

マスオ「えーっ!? どうしてだい? その方が勝率が上がるんだよ!?」

中島「Aランク……僕の夢なんです」

マスオ「……」

中島「どのみち僕はもう死にます。それなら最後にAランクのサザエを倒して死にたいんです!」

マスオ「しかし……」

中島はおもむろにポケットから瓶を取り出した。

中には大量の錠剤。

中島「中島家、秘伝の肉体活性剤です……。飲めば一定時間大幅に肉体が活性化されます」

中島は瓶の錠剤を一気に飲み干した。

カツオも中島から一粒もらっていた。

しかし、そのとき中島は言っていた。

肉体活性剤は、一日に一粒まで。

それ以上の服用は命の危険がある、と。

中島の筋肉が肥大化しはじめる。

マスオ「分かった……そこまで言うならサザエの相手は君だ。でも約束だよ。絶対に勝つんだ!」

中島「はい……!」

中島はサザエに飛びかかっていった。

マスオ「ワカメちゃん、君の相手は僕だ……。カツオ君は……中島君を見守ってあげなさい」

カツオ「うん……!」

カツオの目からは熱いものが溢れだしていた。

中島「うおおお!!!」

サザエ「ウフフフフフフフ、いくら肉体を活性化させようと同じよ!!」

中島はサザエの絶対防御壁にバットで殴りかかった。

だが、すぐにバットは折れてしまう。

中島は折れたバットを捨てると、今度は拳で絶対防御壁を殴りはじめた。

サザエ「無駄よ!!」

サザエが至近距離で中島に電撃を与える。

中島の皮膚が黒くやけこげた。

だが、中島は拳を振るうのをやめない。

サザエ「なんなのよこいつ!」

中島の拳は血だらけだった。

カツオ「中島……」

カツオは何度も目を背けようとした。

だが、それは許せれない。

カツオには中島の生き様を見届ける義務があった。

中島「うおおおああああ!!!!」

中島は絶えず拳をふるう。

何度電撃を受けても、毒をくらっても拳をふるい続けた。

なにかが割れる音がした。

サザエの絶対防御壁にひびが入っていた。

カツオ「中島!!」

中島「うおああああ!!!!」

中島もひびが入ったのに気が付いのだろう。

ひびの部分を集中的に殴りはじめた。

中島の拳はもはや砕けていた。

それでも気持ちだけで中島は拳をふるい続けた。

全ては友を守るためだった。

中島「うおああああああああああ!!!」

大きな音をたててサザエの絶対防御壁が崩れた。

カツオ「いけええええええ!!!!!」

中島「うおああああああああああああああ!!!!!」

中島の渾身の一撃がサザエの身を襲う。

はずだった。

だが実際に中島が殴ったのは、サザエの絶対防御壁。

サザエ「ウフフフフフフフ、長い間ごくろうさま。これを破ったのはアンタがはじめてよ」

サザエ「まあ何度でも張替えれるんだけどね」

次の瞬間。

中島の膝は折れていた。

カツオ「中島……!」

中島は死んでいた。

いや、本当は拳をふるっているときにすでに限界はとうに越えていたのだろう。

サザエ「ごくろうさま!」

サザエは中島の死体に電撃を加えはじめた。

カツオ「……やめろ」

何度も何度もいたずらに中島の身体に電撃がはしる。

カツオ「もう……やめてくれ……」

カツオの悲痛な叫びも届かず、中島の身体には電撃が流れ続けた。

サザエ「ウフフフフフフフ、まあこんなもんでいいでしょう」

中島の身体はもはや原形を留めていなかった。

サザエがゆっくりとカツオに近付く。

用心しているのか。

絶対防御壁は張ったままだ。

サザエ「ウフフフフフフフ、次はアンタの番よ。カツオ」

カツオ「……」

サザエ「あの眼鏡のように、ボロ雑巾にしてあげるわ」

カツオ「中島のことか……?」

サザエ「ん? 何?」

カツオ「中島のことかあああああああああああああああああ!!!!!!!」

刹那。

サザエの身体は真っ二つになっていた。

サザエ「なん……でよ……」

サザエの身体が崩れ落ちる。

サザエの絶対防御壁と身体は同じ平面で引き裂かれていた。

次の瞬間。

約10mの距離があったはずのカツオの身体はサザエの顔の数cm先にあった。

高速移動ではなかった。

サザエ「これは……“空間干渉”!?」

カツオが手をかざした次の瞬間。

サザエの身体は微塵となった。

マスオ「これは……」

ワカメを苦戦を強いられながらも片付けたマスオの目に入った光景は目を疑うものだった。

中島と思われる黒焦げの肉塊。

綺麗な真っ二つになって転がっているサザエの絶対防御壁。

目から涙を流しながら、たたずむカツオ。

マスオ「か、カツオ君!? サザエは!?」

カツオ「……塵にした」

マスオ「まさかカツオ君、君といとう……」

カツオ「うん……“覚醒”したみたい」

マスオ「い、いったいどんな“力”なんだい!?」

カツオ「……“空間干渉”とか言ってたよ……」

マスオ「く、“空間干渉”!?」

マスオが驚くのは最もだった。

Sランクに認定されうる能力は三つしかない。

“空間干渉”はその一つだった。

カツオ「マスオ兄さん」

マスオ「ん? なんだい?」

カツオ「決着をつけにいこう」

マスオ「……うん」

マスオは敢えて中島のことについては触れなかった。

マスオ「お父さん、サザエ、ワカメちゃん……今、磯野家にいるのはあとタラちゃんだけだ……。ん? なにか違和感があるな……」

カツオ「それであってるよ。とにかく僕とマスオ兄さん二人で行けば、タラちゃんだって倒せる!!」

マスオ「そうか……アナゴ君は……」

カツオ「……うん、ごめんねマスオ兄さん……」

マスオ「カツオ君が謝ることじゃないさ! 気を引きしめよう! 相手はあのタラちゃんだ!」

カツオ「うん」

カツオはマスオの腕を掴んだ。

次の瞬間には、磯野家の前だった。

マスオ「それにしてもすごい“力”だねえ」

カツオ「……中島のおかげだよ……。中島のためにも僕らは絶対に勝たなくちゃいけない!」

カツオとマスオは二人で磯野家に入った。

用心しながらタラオを探す。

カツオ「いないなあ……あれ? マスオ兄さん? ん? あれはイクラちゃん!?」



ー花沢宅ー

マスオ「カツオ君? いたかい? ってあれここは花沢さんの家じゃ?」

??「フーッ!!!!」

マスオ「タ、タマ!?」

タマ「シャーッ!!!」

タラオ「ふふふ、よく来ましたね。カツオ兄ちゃん」

気がつけば、カツオの後ろにはタラオが立っていた。
手には鋭利なナイフが握られている。

カツオ「いつの間に? マスオ兄さんをどこへやった!?」

タラオ「マスオには少し時間を戻ってもらったですぅ」

カツオ「時間……だと……?」

カツオは不意にタラオのいる空間を切断した。

しかし、タラオは再びカツオの後ろに立つ。

カツオ「!?」

タラオ「まだ話の途中ですぅ。Sランク以外の人はここに立つ資格はないですぅ。だから、マスオは飛ばしたですぅ」

タラオ「多分今頃はタマと戦ってるはずですぅ」

カツオ「タマと? 花沢さんの家にはタマなんていなかったぞ?」

タラオ「マスオとカツオ兄ちゃんが来たのを確認してからタマを向こうに向かわせたですぅ。そして移動時間を僕の能力ですっ飛ばしたですぅ。だから実質、瞬間移動ですぅ」

カツオ「ここに立つ資格があるのはSランクの人間だけと言ったな。じゃあイクラちゃんは……」

タラオ「イクラちゃんは“事象否定”の“覚醒者”ですぅ。はっきり言って三つのSランクの能力の中でも別格ですぅ。
でも安心して下さい。イクラちゃんを使ってカツオ兄ちゃんの存在を否定させるようなことはしないですぅ。カツオ兄ちゃんは僕の“時間干渉”能力でぶっ殺すですぅ。」

カツオ「タラちゃん、君の能力は“時間干渉”だけかい?」

タラオ「そうですよ。これさえあればイクラちゃん以外の“覚醒者”は僕からしたら雑魚ですぅ」

カツオ「じゃああのとき僕がタラちゃんの腹を殴ったとき固かったのは……」

タラオ「あれは時間を巻き戻してフライパンをお腹に仕込んだからですぅ。
だから実際に一回パンチはくらったんですよ。まあ痛みは巻き戻したら消えるですけど」

カツオ「それならいい。勝負だよ。タラちゃん」

タラオ「ふふふ、カツオ兄ちゃん、Sランクの“覚醒者”だからと言って僕と同格になったと思ってませんか?」

カツオ「……」

タラオ「カツオ兄ちゃんの“空間干渉”能力はSランクの中では一番下位の能力なんですよ!?」

刹那。

カツオの喉元にタラオのナイフが迫っていた。

ー花沢宅ー

マスオは苦戦を強いられていた。

マスオ「くそっ! 僕の炎が!」

タマの能力は“万物捕食”。

“力”を放出して攻撃するタイプのマスオとは相性が最悪だった。

そしてこの能力の最も恐ろしい点は、今まで捕食した全てを凝縮して放出できること。

タマ「フアアア!!!」

タマの口から今まで放ったマスオが撃った全ての炎が凝縮され、放出される。

マスオ「炎の僕が……焼かれて……」

マスオ「ごめん……カツオ君、僕は約束を……」

“炎のマスオ”は自ら放った炎によって灰燼と化した。

カツオは喉元のナイフを辛うじて空間をねじまげ、回避した。

すぐさまタラオのいた空間を切り裂く。

しかし、タラオはまたしてもカツオの喉元にナイフを向けていた。

カツオは再び辛うじて回避する。

確実にカツオの身体にはナイフにより切り傷が増えていった。

カツオ(このままじゃジリ貧だ……)

カツオ(タラちゃんは僕のパンチを受けてから時間を戻してフライパンを仕込んだと言った。
つまりタラちゃんはダメージを受けた後に時間を巻き戻して次はそのダメージを被らないように備えている。
僕はタラちゃんの身体をすでに何度も引き裂いている……ただ巻き戻されてるだけだ。
巻き戻されないようにする方法……即死だ……
だけど僕の動体視力じゃナイフをギリギリでかわすのが関の山だ)

カツオ(どうすれば……)

タラオ「ふふふ、どうしたんですか? 口数が減ってるですぅ」

結局、カツオは良い方策が思いうかばずタラオのナイフをギリギリで回避し続けた。

確実に切り傷は増えていく。

気がつけばカツオの身体は血だらけになっていた。

実際にカツオの空間切断によってタラオの身体は何度も両断されていた。

しかし、タラオも急所を避け両断されるたびに時間を巻き戻していた。

よってタラオにはいまだ傷一つついていなかった。

タラオ「ふふふ、カツオ兄ちゃんいい感じになってきたですぅ」

カツオ「……」

カツオは血を流しすぎたためか意識を保つのもやっとだった。

カツオには諦めの気持ちが芽生え始めていた。

カツオ(ごめんな……中島……)

タラオのナイフが迫る。

「避けろ! 磯野!」

カツオ「中島……?」

カツオは再び辛うじてナイフをかわした。

タラオ「諦めが悪いですね。じっとしといれば楽になるのに……」

「頑張れ! 磯野! 僕がついてる!」

カツオ「中島……僕はもう……」

「諦めるな磯野! 諦めたらそこで終わりだ!」

カツオ「……」

「“アレ”を使え! 絶対うまくいく!」

カツオの目に光が戻った。

タラオ「ふふふ、遂にうわごとをいいはじめたですぅ」

カツオ「タラちゃん」

タラオ「ん?」

カツオ「君は強い。僕一人じゃ勝てない」

タラオ「当然ですぅ」

カツオ「でも僕は一人じゃない……! 中島と二人ならタラちゃんに勝てる!!」

タラオ「ほざくですぅ!!!」

カツオはタラオの攻撃を回避し、タラオの空間を切断した。

今までなら、タラオはカツオの後ろにたち、再び刃をむけてきた。

しかし、タラオの刃はいっこうにむかってこない。

それも当然だろう。

タラオは頭を真っ二つに裂かれ地に臥していた。

即死だった。

それを可能にしたのは中島がくれた力。

肉体活性剤だった。

カツオは戦いに勝利した。

しかし、あるのは虚無感のみ。

カツオ「どうして僕達こんなになっちゃったんだろう……」

カツオは泣きはじめた。

いつまでも涙が尽きることはない。

イクラ「バブー」

今まで寝ていたイクラが声をあげた。

その声を聞いたカツオの頭に一つの考えがよぎる。

カツオ「イクラちゃん、お願いがあるんだけど……」

波平「馬っ鹿もーん!!」

居間には波平の怒鳴り声が響いていた。

カツオ「ひいいいい。勘弁してよ。父さん」

そこには平穏。

家族がおかしくなる前の日常があった。

サザエ「あら、カツオが机にむかってるわ!」

カツオ「漫画をかいているんだよ」

サザエ「ちょっと見せてみなさいよ! あら、なによこれ野蛮ねえ」

カツオ「なんかインスピレーションを感じたんだよ」

サザエ「なにによ?」

カツオ「それが、なんかすごく壮大なことだったはずなんだけど、思い出せないんだ」



Fin~

マスオのランクの質問があったのでいちおう最後にまとめときます


S イクラ タラオ カツオ

A サザエ フネ

B マスオ イササカ 花沢 タマ

C 波平 中島 甚六 ワカメ

D

E アナゴ

F

G ノリスケ


深夜までお付きしてもらった方々ありがとうございました。

能力一覧頼む

>>311
イクラ 事象否定
タラオ 時間干渉
カツオ 空間干渉
サザエ 絶対防御、雷、毒
フネ 重力
マスオ 炎
イササカ 植物、水
花沢 地
タマ 万物捕食
波平 肉体活性
中島 肉体活性
甚六 風
ワカメ 氷
アナゴ 爆弾
ノリスケ 自己再生

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