最初は前に小ネタスレに上げたのをベース書いて行きます。

ブルックの奴じゃないです。

ほむら「まどかぁぁぁぁぁっ！！！」



まどかと二人の空間から、私は改変された世界に落とされた。


その世界で私が最初に見た物は、眩い水色の光を纏い奥へ突っ込んで行く美樹さんだった。

結界らしき物が崩れると、そこは地下鉄のホーム。
美樹さんが魔女化した時は大体ここだった。
場合によってはそれが引鉄となり杏子や巴さんも。


杏子「オイ……さやかはどうした」

マミ「あの一撃に力を使い果たしてしまったのね、美樹さん……」

……

杏子「さやかぁ……」

マミ「……行ってしまったわ、円環の理に導かれて」

　　「条理を捻じ曲げて叶えた希望が、絶望に反転し呪いを振り撒く前に、私達魔法少女は消え去らなければならないの」

杏子「ちっくしょう……折角友達になれたと思ったのに……」


魔女になる前に……消える……。

ふとポケットに手を入れて見る。
何故そんなことをしようと思ったかはわからない。

赤いリボン……

ほむら「……まどか」


マミ「暁美さん……？」

杏子「まどかって……誰だ……？」

第一章


美樹さやか

魔女ノ四重奏、結成

マミ「……美樹さん」

暗い部屋で一人、メールの履歴を漁りながら今は亡き後輩を想う。

マミ「このお茶っぱ、美樹さんが好きだからって買って来たのに……一度しか……」


━━━━━━━━
━━━━

私が美樹さんと出会ったのは二週間前。
病院に居る魔獣を狩りに行った時だった。


マミ「この結界……やけにファンシーね。しかも瘴気が随分濃いわ」

ＱＢ「ここ数日こういう結界が増えてきたね。なんというか女性的な雰囲気が微妙にするんだ」

マミ「あら、女性的なんてものがわかるのね」

ＱＢ「僕達も君達を理解するよう努力しているからね」

やけに小さい魔獣を蹴散らし、銃で撃ち抜きながら結界の奥へ進んで行く。

マミ「……何アレ」

形こそ違えど、やはり小さい魔獣。
高台の上で動かない。まるでぬいぐるみのように。

ＱＢ「相当強い瘴気をアレから感じるよ、気を付けてマミ」

マミ「オーケー、だったら先手必勝で行かせて貰うわよ！」

巨大な大砲を召喚し、狙いを定める。
奇襲に備え一応、もう片方の手でマスケット銃を構えておきながら。

後ろに弱い魔獣の気配がしたので、後ろに一発放ち、新しい銃を生成する。

マミ「こっちにしておいたほうがいいわね」

ＱＢ「その銃……いつ見ても違和感があるよね」

マミ「そう？私のオリジナルデザインだからかしら」

ＱＢ「仕組みを理解しきれていないのも要因の一つだね」

リボルバーを無理矢理ライフルにしたような銃。
佐倉さんのお父さんが仕組みを親身になって教えてくれた物。

佐倉さん曰く、本人もそんなにわかっていないらしく、パソコンで必死に調べて居たとか。

マミ「ウーノ！」

ライフルの一発目を放ち、魔獣を吹き飛ばし、追撃する様に二発、三発と撃ち込む。

ＱＢ「アン・ドゥ・トゥロアじゃなきのかい？」

マミ「アン！って叫ぶのかっこ悪いじゃない……」

五発目を受けた魔獣は壁に叩きつけられ、減り込む。


マミ「トドメと行かせて貰うわよ！」

大砲のトリガーに手をかける。

マミ「ティロ・フィナーレ！！」


放たれた極太の集束リボンは魔獣を貫くと、コック帽の様な軌道を描き残った身体に握り潰さんとばかりに巻きつく。

マミ「あとは残った弱いのを掃除し……」

ＱＢ「マミ！！」


魔獣から巨大な蛇の様な新たな魔獣が生まれ、私を食い殺そうとしている。

マミ「来ない……で！」

リボルバーの最後の一発を放つも、細いリボン弾に怯む様子は全く無く……

マミ「死ぬ……」

目前に迫る死を半ば受け入れ、目を閉じる。

「ギリッギリセーフ？」

「見てるこっちがヒヤヒヤするよ美樹さん……」


予測していた感触が無いので、恐る恐る目を開けてみると、白いマントの軽装の騎士が魔獣の顎をその両手に持ったカットラスでこじ開けていた。


「ほむら、頼んだよ」

「……はぁい」

その場から急いで退いた私は、ほむらと呼ばれた少女の方を見る。

緩いロングヘアー、恐らく普段は髪を結っているのかしら。
死を目の前にして混乱しているのか、どうでもいいことばかり頭に浮かぶ。

ほむら「いち、に、さんで撃ちますね！」

さやか「あいよ、バック宙で逃げるから！」

弓を引き絞り、騎士の方に当たらないように狙いを定める。
この二人、息があっている様に見える。
私と佐倉さんには及ばないと思うけど。

ほむら「イチ、ニ……サン！」

さやか「そい！」


紫色の光の矢が放たれ、宣言通り騎士はムーンジャンプで私の横に飛んでくる。

さやか「大丈夫ですか？」

マミ「かっこ悪いところ見せちゃったわね……」

さやか「いやいやぁ、あたし達なんてもっとしょうもなくて、この間なんて足場踏み外して奈落の底に落ちそうになりましたし……」



光の矢が魔獣を消し飛ばす。
私の砲撃並みの威力だっただろう。
今度は大砲もリボルバー仕様にしておけば……

あとでまた更新するね。

イメージとしては魔獣カラーでディテール削ぎ落とされたシャル

再開します。

さやか「ってことはマミさんはこの街の守護神みたいなもんですね」

マミ「それ、死にかけた人に言うかしら？」

ほむら「……紅茶の香りって比喩表現じゃなかったんですね」

さやか「今まであたし達が飲んでたのってもう薄めたかき氷シロップって感じだね」


私達はすぐに打ち解けた。
美樹さんは幼馴染の腕を治す為に契約したようで、その幼馴染が入院してる病院に魔獣が出たのを知り、結界の魔獣を片っ端から倒しながら来たとか。

さやか「そう言えばさ、ほむらはどうして契約したの？」

ほむら「その……覚えが無くて……でも魔法少女のことは全部知ってるんです」

　　　「二週間くらい前起きた時に突然指輪が……」

　　　「あとそれと、魔法少女に変身した時は無性に髪をほどきたくなったり……」


……思い返せば暁美さんも異質だった。
でもそれ以上に美樹さんの死に至るまでのことは不自然だった。

ＱＢ「ほむらがいつどんな願い契約したという情報はないんだけど、ほむらという魔法少女が存在するという情報はあるんだ。いつからは本当にわからないんだけど」

さやか「へぇ、あんたでもわからないことあるんだ」

マミ「乙女心とかもわからないわよ」

さやか「えっ」

ＱＢ「君は単純すぎるんだよ。現代風に言えば乙女(おつめ)だね」

ほむら「ちょっと言えてるかも……」

杏子「よっ、そこの二人が噂の新人？」


佐倉さんがお菓子を咥えながら部屋に入ってくる。
仄かなチョコの匂いがする。

マミ「噂ってどこで流れた噂かしら？場合によっては私泣いちゃうわよ」

杏子「風見野までそんな噂が流れるわけないだろ。キュゥべえだよ、キュゥべえ」

マミ「キュゥべえも一人契約したとしか教えてくれなかったわ」

杏子「くだらないことでスネるのやめてくんない？」

マミ「冗談よ」

ほむら「始めまして……」

さやか「始めまして、あたしは……」


杏子「キュゥべえから全部聞いてるよ。知らない間に魔法少女になってたほむらと、男の腕治す為に契約したさやかだろ？」

さやか「ちょ、語弊が」

杏子「あたしは佐倉杏子、風見野がホームの魔法少女で、マミと組んでるんだ」


風見野は他の街の魔法少女がやたら来る為、衝突を避ける為に佐倉さんは見滝原をメインテリトリーにしている。
これも佐倉さんのお父さんの方針。

杏子「それにしてもあんたバカだよねぇ……」

美樹さんに顔を近づけ、ニヤニヤして言う。

杏子「男の腕を治すなんて願いで契約するなんてさ」

さやか「なにをっ！！？」

一気に頭に血が昇った美樹さんを暁美さんが抑える。

杏子「男の腕を治せるくらいの治癒魔法が使えるようになりたいって願えば良かったのにさ。そうすればさ……」

さやか「あっ……でもでも、その願いだとRPGの僧侶みたいになっちゃわない？あたしにはやっぱり勇者スタイルの方が合ってると想うんだよね」

ほむら「リペアと剣しか使えないのに勇者って無茶無い……？」


ここの時点では私達は、死ぬなんて考えていなかったんだろう。
死にかけた私でさえ。

杏子「親父がさ、新人の面倒見てやれって言うしさ、今度からあんたら二人も組まないか？」

ほむら「今日みたいな強いのが出たら危ないですしね」

マミ「あんなの始めて見たんだけれど……」

さやか「何々、御鞭撻頂けるの？杏子センパイ」

杏子「蛮勇を本物の勇者にする為にね」

さやか「なにをう！」


かくして私達は四人のチームを組んだ。

さやか「でもチーム組むなら、名前が必要だよね……」

ほむら「見滝原連合とか……？」

杏子「斜太興業の対抗勢力かよ」

さやか「特攻野郎Aチームとか……」

杏子「あんただけだよ、特攻なんてするのは」

さやか「あんたもしそうに見えるけど？」

マミ「あら、佐倉さんは超がつくほどのトリッキータイプよ」

さやか「えぇ！？」

美樹さんが驚いているのを見て佐倉さんは少し自慢げな顔をしていた。

杏子「何より二つとも元の通り名よりダサい。ただでさえ意味わかんねえ二つ名ついてるのに」

さやか「二つ名なんてあんの？」

マミ「……私は『魔弾の舞踏』(ﾀﾞﾝｻﾌﾞﾙﾏｷﾞｶﾊﾞﾚｯﾄ)らしいわ」

杏子「あたしは……『赤い幻霊』(ﾛｯｿﾌｧﾝﾀｽﾞﾏ)とか『紅百鬼夜行』とか……全く誰が付けたんだか」

さやか「わ、わぁ……凄いな、なんか」

そこにひょっこり現れたキュゥべえが口を挟む。

ＱＢ「他の街でほむらの話をしたら、そういうの好きな子が早速通り名を考えていたみたいでね」

　　「確か……『虚数』(ｲﾚｷﾞｭﾗｰﾅﾝﾊﾞｰ)とかいったかな」

ほむら「は、はぁ……」


反応に困っていた。

さやか「じゃあさ、じゃあさ！あたしは！？」

杏子「まだ戦ってるとこ見たことないしなぁ」

マミ「そうね、魔獣の口をこじ開けてるところしか見たこと無いし……」

　　「『女王お抱え』(ｸｲｰﾝｽﾞﾅｲﾄ)とか、『短剣譜の調』(ﾊｰｹﾝﾚｼﾞｰﾅ)とか……見かけだけで言うと……」

ほむら「その……全然合いませんね」

さやか「そんなすぐ否定する！？」

杏子「そういや、知り合いが『マフラーの天使』とか『薬雀蜂』(ﾒﾃﾞｨｶﾙﾎｰﾈｯﾄ)とか呼ばれてたな」

　　「マミみたいなセンスの奴がいっぱい居るんだな……」

ほむら「もはや通り名を考えるのを楽しんでるんじゃないですか？」

佐倉さんと暁美さんが半ば呆れている。
確かに名前を聞く度に通り名が変わっている上に統一感も無い人も居る。


マミ「思い付いたわ、チーム名」

……


杏子「はぁ！？なんだそりゃ！」


さやか「にしし、いいじゃんいいじゃん」


マミ「美樹さん見てて、四人組って言ったら思い付いちゃったのよね」


ほむら「いいんじゃないですか？」


　　　「『魔女四重奏』(ﾏｷﾞｶｶﾙﾃｯﾄ)」

今日はここまでー。

杏子の知り合いは二つともユウリのことです。

なんか魔法少女達にかっこいい通り名や必殺技名付けてあげてください。

杏子「手紙でも書くか……」

こっちもよろしく

赤いリボンとか無限とネタ被らせないように必死だけどマギカカルテットだけは仕方ない

更新再開します

美樹さんの魔法少女としての力はかなり高く、素質だけで言えば私や佐倉さんを凌ぐ程だった。

杏子「自分の力を過信すんなよ、なんのために組んでるんだ？お前の尻拭いのためじゃなくて連携の為だからな？」

ほむら「そうだよ……ラッキーで避けてるだけだからもう少し……」

マミ「美樹さんの戦闘スタイルからして二つ名は『斬り裂き魔』(ｽｸﾜﾙﾀﾄｰﾚ)ね」

さやか「えぇ……もっと華やかな」

マミ「だったらもう少しゆとりを持つこと！」

さやか「うぅ……」

対する暁美さんはあまり素質があるとは言えないけど、立ち回り的には下手したら私以上の経験があるように見える。

ただ弓自体の扱いに関しては並。
まるで元々他の武器を使っていたかのように……


ほむら「巴さん……？」

マミ「何かしら？」

ほむら「私の顔に何かついてますか？」

マミ「いや、避けるのとから上手いのに武器は美樹さん程度にしか扱えないんだなって」

さやか「マミさんひどい！」

杏子「早く上達しろってことだからね」

さやか「ぐぅ」

ほむら「何というか……私の武器って感じがしないんですよね」

この違和感はやはり本人も感じて居たのね。

ほむら「腰を落とした方が落ち着くというか……」

杏子「弓は姿勢が大事だからそんなの話の外だろ」

ほむら「だから困ってて……」

マミ「今度私の銃を使ってみない？」

さやか「確かにそれなら腰を落とせますね」

腰を落とす武器なんて銃や重い槍くらいしか思いつかないし……でもどこで銃を…？

杏子「……やる……ねぇ」

さやか「ほぇ……」

ほむら「えへへ……」


六発の弾で１０匹の僧侶タイプ魔獣を全滅させた。
全部人間で言えば心臓や頭にあたる場所を貫いて。

杏子「マミ」

佐倉さん辞めて、私の肩に手を置かないで。

ほむら「ご、ごめんなさい……」

さやか「謝るなほむら！」

マミ「美樹さん！それは！貴方の！台詞じゃない！」

マミ「ハワイのガンクラブとかで……？」

ほむら「国外旅行なんてしたことないです……」

マミ「田舎の親戚が猟師とか……？」

ほむら「東京です……」

マミ「前世が……」

ほむら「キリスト教徒です……」


……良いわよ、私の武器は銃だけじゃないもの。リボンがメインだもの。

美樹さんの戦いも次第に見ていられる物になっていった。


杏子「さっき雷出なかった？」

さやか「あたしの必殺技、麒麟の……」

マミ「ライトニン……」

杏子「スパークエッジで良いだろ。第一名前なんて付けてどうすんだ？マミみたいに叫ぶか？舌噛むぞ」

ほむら「ちょっとくらいはしゃいでも……舌噛むのは目に見えてるけど」

さやか「舌噛ませたいんだね」

杏子「まぁいっぺん痛い目見た方が良いな」

マミ「美樹さん、必殺技を使うのは良いけど、燃費を気にして頂戴ね？」

　　「『瘴気結晶』(ｸﾞﾘｰﾌｼｰﾄﾞ)だって四人で分け合うんだからね」

杏子「確かに必要は無かったね。普通に複数回切れば良かったんじゃないの？」

さやか「でも、こう……ロマンが…！」

ほむら「この間みたいに大きいのが出た時にしたら？」

さやか「あー、でかいのこい！でかいの」

杏子「返り討ちになるかもな」


……楽しい人だったわね、美樹さんはやっぱり。

マミ「そう言えば……魔法少女になると、魂はソウルジェムにされて……」

杏子「要するにゾンビや、石で動く人形になるわけだけど」

マミ「言い過ぎよ佐倉さん、特にゾンビは……」


これだけ明るく振舞っていると、気になる。
魔法少女の残酷な実態についてどう受け止めているか。

美樹さんはそれを聞くと、少し目を閉じた後に答えた。

さやか「確かに……ソウルジェムさえあれば、しかもあたしは回復魔法持ちだから尚更、どんなに傷付いても治る化け物みたいな身体だけどね」

　　　「ほむらが教えてくれたんだ。人間である、ありたいと思い続ける限り、あたし達は人間を辞めないで済む……ってね」

ほむら「……私はなんで平気なのかな、自然と気にならないんです」


マミ「……そうね、美樹さん。立派な考え方だと思うわ」

単になってしまった物は仕方ないと考える私達とは大違いだ。

次の日から異変は起きた。


今まで、魔獣の危ない攻撃が殆ど当たらないなど、神に愛されているとしか言いようが無い程に『ツイていた』美樹さんが、連続して不運や不幸に襲われるようになったのは。

仁美「あら……」

ほむら「上條君、退院したんだね」

さやか「……聞いてなかったんだけどな、あはは……」

今日はここまで。

次回はさやか視点にしようかな。

二時頃バイト終わって体力残ってたら更新しようと思います。

非常に申し上げにくいんだが、体力はあるものの、どうさやかを突き落としてくかがまだ思いつかなかったから、向こうを更新します。
ごめんなさい。

いや、突き落とされるさやかとそれをフォローするほむらとQBを書きたかったんだがね、バイト中に考えられなくて。
明日には更新します。

マミ「美樹さん大丈夫なの？」

さやか「大丈夫です大丈夫……ハハハ」

杏子「そりゃあんだだから生きてるけど、あたしらだったら死んでたよ？もっと気をつけろって」


美樹さんの太腿に魔獣のレーザーが直撃した。
美樹さんの固有魔法は自動回復、ぽっかり穴の空いた太腿から血が吹き出る前に再生していたんどけど……

ほむら「太腿は第二の心臓って言うから気をつけて……」

さやか「最近調子悪いなぁ……」

杏子「治せるから良いってもんじゃないんだよ？あんたこの間自分が言ったこと覚えてるよね？」

さやか「でも……やっちゃったものはさ……」

マミ「そうよ美樹さん、人間を捨てるような戦い方は感心できないわ」

美樹さんは黙り込んだ。
所詮は中学生、行動と言葉に一貫性など持てないのよね。

さやか「……」


さやかは暗い部屋の中、一人で携帯をいじる。
話の相手はほむらだ。

さやか『……あたしどうしたら良いのかな。あんた達の足引っ張ってる感じばっかりする』

ほむら『そんなことは無いと思うけど、一つ言うとしたらやっぱり、もう少し注意深く動いた方が良いと思うよ』

さやか『今までうまく行ってたのはビギナーズラックなのかな……もう少し気をつける』

ほむら『必殺技より感覚の強化に魔法を使うのはどうかな……？』

さやか『……それいただき』

次の日あたしは学校で感覚強化を試してみた。
ほむらも一緒に練習してくれるらしく、学校でも眼鏡を外して、髪を解いていた。

ほむら曰く、解いて少しふわふわした髪で気配を察知しやすくするんだとか。
中沢がエロいとか言ってデレデレしてたのに恭介が少し呆れてたのを遠くからあたしは聞いてた。


さやか「さ、ほむら。今日は……」

仁美「さやかさん、お話がありますの」

さやか「話って……」

仁美に連れて来られたのは、『ちょっと贅沢の時』に来る喫茶店。

……

仁美「恋のご相談ですわ」

さやか「はぁ……」


店員が置いたジンジャーエールが炭酸で少し飛び散ってあたしの鼻の頭につく。
仁美はブラックコーヒーを少し飲み、話を続けた。

仁美「私、上條恭介君のこと、前からお慕いしておりましたの」



……

さやか「え、恭介？」

仁美「はい」

さやか「あいつも隅におけない奴だなー……まさかクラスのアイドル仁美に惚れられてるなんて、なはは」


……仁美が…恭介を…好き？

仁美「さやかさんは上條くんとは幼馴染でしたわね」

さやか「ま、まぁー…腐れ縁って奴…ってかぁ……」

仁美「本当にそれだけですか……？」

仁美のいつもの垂れ目から気迫を感じる。
気圧されそうだ。

仁美「私、自分の気持ちに嘘はつかないことにしましたの」

　　「さやかさん、貴方はどうですか？本当の自分の気持ちと向き合えますか？」

さやか「な、なんの話？」

仁美にまくし立てられて、とうとう気圧されてしまった。

仁美「ずっと上條くんの隣に居た貴方には先を越す権利があります」

　　「貴方のことは大事な友達だと思っておりますわ」

　　「だから一日待ちます。自分に正直になってくださいまし」


……

どこか今は亡き宇宙のさやかも同様に、仁美に宣戦布告された。

その時は相談できる相手は魔法少女ではない少女一人、しかし今回は魔法少女の仲間三人と、キュゥべえが居る。



マミ「そのお友達……なんというか……」

杏子「強かだな。大方あんたが少し落ち込んでるのもわかってたんじゃない？」

ほむら「……どうするの？」

さやか「……」


居ても結果は変わらないことだってある。

いきなり一日という短い期間を叩きつけられて告白できるのは、それを叩きつけた仁美より太い根性をした人間か、その気の無い人間だけだろう。


次の日の放課後まで、さやかはほむら以外とは一切口を聞かなかった。
つまるところ、告白など当然していない。


ほむら「……でも見るんだね」

さやか「……」

恭介「あれ、志筑さんって家こっちだったっけ？」

仁美「いえ、今日はお話が……」


……


さやか「……」

ＱＢ「何をしてるんだい……ああ」

ほむら「……」

さやか「あたしはさ……人間として恭介の友達で居たかったんだよ」

　　　「恭介のバイオリンを聴ければ、そのためなら半分化け物になったって良い。そう思って契約したんだ」

ほむらが少し歯を食いしばり、キュゥべえも目を閉じる。

さやか「腐れ縁に甘えてたのかな。それとも今まであたしを異性として見てくれなかったから、他の子もそうだろうって……思ってたのかな」

　　　「別に仁美が言うように恋愛感情を持ってるわけじゃないんだ」

さやか「恭介といれば人間で居られる、今までの自分で居られる。そう思ってたんだ」

　　　「それをさ……」


さやかが何に気付いたかを、ほむらが気付いた。

さやか「……どうして仁美は動物みたいなことするのかな」


視線の先には、身を乗り出して恭介と話す仁美の姿。
中沢に言わせてみれば、今のほむらと同じようなエロさがあるだろう。

さやか「……人間らしさって何かな」

今日はここまで。
次あたり回想終わらせたい。

今日は更新はありません。

ほむらの髪型のイメージとしては〜って画像貼ろうとしたけどエロだったしやめとく。

杏子「……避けられる様にはなったみたいだな」

さやか「杏子のおかげでね」

美樹さんは再び紙一重で魔獣の攻撃を避ける様になった。
しかしそれは以前の様なラッキーではなく、当たるところを実力で避けている。

それだけ聞けば喜ばしいことに聞こえるけれど、美樹さんを死に至らしめるような攻撃が連発されているというのは変わっていない。
前は美樹さんを殺さないような攻撃ばかりだったと考えれば……


美樹さんは恐らく死神に追いかけられている。

マミ「美樹さん……何やってるの……？」

さやか「あ、出涸らしもらっちゃまずかったですか？」

マミ「いや、それはいいんだけど……確かにお茶っぱを入れるお菓子はあるけれど……」


美樹さんは出涸らしの茶葉をモソモソと食べていた。
ゴミ箱を見るとガムのゴミが大量にあった。
要はガムの代わり……？

さやか「いや、ほら、ほむらも氷食べたりするじゃないですか」

マミ「え、えぇ……」


暁美さんの氷食症は確か貧血のせいだったような……

マミ「ねぇ、美樹さん。ストレス、凄いんじゃないかしら……？」

さやか「……そんなことないですよ」

マミ「そうは思えないんだけど……私達仲間でしょう？なんでも相談して頂戴？」

それを聞いて美樹さんは、顔をしかめて半ば怒鳴る様な声で口を開いた。

さやか「マミさんやほむらは……ッ……」

　　　「……ごめんなさい、なんでもないです」


しかしそれを直ぐに飲み込んでしまった。
……それから美樹さんは一緒にいる時もずっと音楽を聴いていて話しかけられない状態だった。


……無理にでも話しておけば良かった。

美樹さんの願いで腕を治した男の子のバイオリン発表会がある日。


杏子「あたしらのチケットまで貰ったの？」

さやか「いや、上手いって言っても所詮は中学生の発表会だから……いや、実力は凄いんだよ、でもこのイベントは大したもんじゃないってか……」

マミ「色んな人に聴いてもらうために、チケットとかそういうのは無いのよ」

杏子「おー……ホントだ。商店街の人達も居るじゃん」


美樹さんは少し誇らしげ、でも淋しげな顔をしている。

ほむら「……グランドピアノがあるくらいか」

さやか「前の学校にはパイプオルガンあったんだっけ？」

ほむら「うん。あんまり聴いたことなかったけど、低い音が気持ち良かったよ」

さやか「まぁ……今日は高い音を楽しんでってよ」


美樹さんはどこか遠くを見ていて、それは単に遠い目をしているのかと思っていたけど、視線の先には緑色の髪の美人が見えた。


……美樹さんの恋敵って奴ね。
背も美樹さんより高くて……確かに勝てる気がしないわ。

さやか「次の次が恭介だね」

杏子「ちょっとその前にあたしトイレ行って来る。ほむら、行こうぜ」

ほむら「え、あっ、はい」


佐倉さんが暁美さんを連れてホールを出て行く。
これくらいの歳の子ってトイレ一緒に行きたがるのよね……と思っていたら、ソウルジェムが何やら反応している。


魔獣だ。こんな時に限って。
だからあの二人は……

『12番 上條恭介です』


まだ帰って来ない。

さやか「長過ぎない？あの二人……恭介の番来ちゃったじゃん」

マミ「……」


心配だ。
暁美さんは足を引っ張るような子でもないし、佐倉さんもヘマをするような子じゃない。
しかし、遅過ぎる。


……二人より美樹さんが心配かもしれない。
もし美樹さんがソウルジェムに気付いていたら……

どうか早く帰って来て。

恭介「曲目は……ドビュッシー亜麻色の髪の乙女」

前列にウィンクをしたのが見えた。
……あの子だ。



さやか「ごめんマミさん、あたしもトイレ」

マミ「聴いてからに……しない？」

さやか「……血だらけになる前にって」

マミ「……私も行くわ」

駆け付けた瘴気結界は濃くはないものの、中々晴れない。

杏子「来ちゃったのかよ……別に苦にはならないんだけどさ……ッ！」

ほむら「……無限に湧いて来る」


少数の魔獣が倒されては現れを繰り返していた。

マミ「ちゃっちゃと終わらせましょうか」

さやか「はい！」


私達が変身した、その瞬間魔獣の量が何倍にも膨れ上がった。


ほむら「えっ……！？」

杏子「どうなってんだこれ！？」

鳴呼、やっぱりなんだ。

無限に湧いて来たのは美樹さんが来るのを待つため、美樹さんが戦闘体制に入った途端……


杏子「今日はやられんじゃねえぞ」

さやか「わかってるよ！」

ほむら「……」

マミ「無限の魔弾！」


ならば抗うまで！

やっぱりさやか円環まで行けませんでした。
今日はここまでです。

ほむら「……ッ！！」


弓から放たれた矢は全弾魔獣に命中し、仰け反った魔獣を美樹さんと佐倉さんがバラバラにする。

私は一体につき二発撃ち込み排除していくら。

数が多いとしても、こちらも四人、しかも二人はベテラン、優勢だ。


ほむら「まだ居るの……！？」


ジリ貧だったかもしれない。

杏子「クッソ……どうなってんだこれ！」

　　「どこにこんな闇を抱えた人間が居るってんだ！！」


美樹さんが両手のカットラスを逆手に持ち直し、更に加速(ｱﾚｸﾞﾛ)し、魔獣を切り裂く。
佐倉さんに並ぶ程の制圧力に思える。

さやか「なんなんだよ……お前ら！」

　　　「恭介には手出しさせないからな！」


美樹さんが啖呵を切ると、僧侶の様な魔獣は消え、大きな魔獣が複数現れる。

ほむら「……ッ！！」

鎧の人魚騎士の影。


降り注ぐ車輪を私と暁美さんで撃ち落としながら、佐倉さんと美樹さんが本体を叩くが、数が多い上に一体一体がタフ過ぎる……


ＱＢ「……こんな具体的な呪いが大量に……まさか……」

　　「そんな！早すぎる！」

マミ「キュゥべえ、知っているの……？」


私はキュゥべえがこんなに焦っているのを見たことがない。
焦るなんてことをする生き物では無いと思っていたから……それが焦るなんてことは……

マミ「こうなったら……ッ！！」


シロナガスクジラを撃ち出せる程の大きさの大砲を召喚する。
結界ごと吹き飛ばしてやるわ。

杏子「それ撃つのかよ……二人とも下がれ！」

ほむら「グリーフシードは拾い終わりました！」

さやか「あいよ……！」



マミ「行くわよ……」

　　「ボンバルダメントッ！！」


轟音と共に大砲の前すべての物が吹き飛ばされる。
何一つ残らない。

はずだった。


暫くすると、直様また人魚騎士の影が大量に現れる。

マミ「……ッ！！もう一発行くわよ！暁美さん、グリーフシード！」

さやか「……もういいですよ、マミさん」

美樹さんが暁美さんと私の間に割り込む。

さやか「良いんです。あたしより先に気付いてたんでしょ？辛かったですよね」

　　　「この戦いは……あたしが終わらせる」

杏子「おい……何するつもりだ」

さやか「三人ともありがと……短い間だったけど、楽しかったよ」

さやか「風神雷神剣(ｽｸﾜﾙﾀﾄｰﾚ・ﾗｲﾄﾆﾝｸﾞ)」



青い電撃を纏い、右手の剣は普通に、左手の剣を逆手に持ち、魔獣の群れへと突っ込んで行った……

さやか「悪いね、手間かけさせちゃって」

まどか「ううん……こんな結果にしか出来なくてごめんね」


少数の審査員の後ろにあたし達は席を取り、恭介の『アヴェマリア』を聴く。

さやか「あたしはさ……恭介のバイオリンが聴ければそれでよかった」

　　　「本当に、それだけでよかったんだ。それ以上は別に望んじゃいなかった。それだけは言い張れるよ」

舞台袖には仁美の姿。

さやか「でもさ、仁美にゃ勝てないよ。仁美がそれ以上を求めて、その結果がこれならさ」

　　　「恭介が幸せならさ、それでいいよ」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「行こうか、まどか」

さやか編 前編終わり。
深夜にどっちかまた更新します。

小ネタスレに上げた分を手直ししながら載せて行きます。
再遡行なんてあるわけない。

この世界はまどかが居なくなると引き換えに、少し優しくなった。

最初に私を助けてくれたのはまどかと同じなのに何度も切り捨ててきた巴さん。

いつも一定の信頼を無意識的に寄せていたけど、結果的に何度も見捨ててしまった杏子。

魔法少女の活動に専念するあまり関わりを持たなかった志筑さんと、ついでに隣の席の中沢君。

これからは彼女達との日々を大事にしていける。

しかし、たった一人……
まどかの親友の美樹さん。

敵に回すといつまでも冷たい態度を取られたが、仲良くなった時は私のただ通り過ぎる灰色の日常に色付けしてくれたムードメーカー。

繰り返す世界の中、契約すれば魔法少女の残酷な運命に必ず屠られる真っ直ぐ過ぎる子。

そして巴さん曰く、この世界で『私』が意識を上書きするまでは、私と殆どいつも一緒いた人。

彼女だけはもう戻らない。

杏子「あれ？うち知ってたのか？結構遠いのに」

ほむら「……まぁね」

杏子「……なんかあんたも不思議な奴だね」


杏子の家へやってきた。
キュゥべえの考案した言い回しにより、無理心中を免れた佐倉家の教会からは、杏子の妹がオルガンの練習をする音が聞こえる。


杏子「親父に頼んでさ、さやかの墓作ってもらったんだ……」

ほむら「円環の理に導かれてしまえば死体も残らないものね……」

杏子の父親は魔法少女の事情を知っているので、その辺りにも理解があったのだろう。

杏子「ああするしかなかったのかな……」

　　「マミのデカい大砲でもダメで……さやかが死ぬまでずっと沸くってのは本当なのかな」

ほむら「……」

生憎私には記憶はない。
ただ漠然と二度と美樹さんが帰らないことが哀しい。
今更哀しい。何度も何度も何度も何度も見捨てて来たのに今になって哀しい。

杏子「あんなに仲良かったからな……お前も辛いだろ」

ほむら「うん……」


中身のない墓に黙祷を捧げる。
墓標に刻まれた文は恐らく巴さんが考えたのだろう。一歩間違えれば不謹慎だが、美樹さんのことを上手く表しているとは思う。

杏子「あいつの親に会うわけにもいかないからさ、遺影もこんなのしか用意できなくて……」

取り出したスマートフォンに表示されていたのは、プリクラ。
メガネをかけた私、杏子、巴さん、そして美樹さんが写っていてそれぞれG,A,N,Gの文字を手で作っている。
ギャング、要するに仲間と云う意味だ。

杏子「そういえば戦わない時もメガネ外すようになったのか？リボンもそうだけど」

カチューシャの代わりにまどかのリボンを付けていたが、杏子にとって注目すべき変化はメガネの方のようだ。

ほむら「え、えぇ……」

杏子「口調もなんていうか……マミっぽくなったっていうか……いや、少し違うな」

ほむら「そう？……かなぁ」

二枚目以降は変顔をしていたり、一回り大きい為に見切れていたり、ヒゲが描かれていたりして確かに遺影に使えるような物では無かった。

ほむら「彼女を表すには案外しっくり来るかもしれないわね」

……

杏子「ん、オルガン終わったか。じゃ、あたしは妹のところ行くからさ。また後でな」

ほむら「ええ、またあとで」


暫らく祈りを捧げた後、教会を後にした。

そう言えば杏子は学校はどうしているのだろうか。
家はむしろ裕福な部類だと思うが、前例がないのでわからない。

ここまで。
さやか編だけが違った色だとは思ってるってさやか編はプロローグです。

ＱＢ「成る程ね、美樹さやかは運命の引力によって、その『円環の理』、『鹿目まどか』に導かれることを強いられた」

ほむら「巴さんもそう言っていたわ」

ＱＢ「この間の君の話と併せると、美樹さやかのソウルジェムを限界にするようになっていたんだろうね」

　　「ああいうことは前例が無くは無いんだ」

ほむら「無くは無い……？」

ＱＢ「例えばジャンヌダルク、歴史上の人物だね」

　　「彼女は最期こそ処刑だったけれど、大量の魔獣と戦い消耗していたり、有らぬ罪まで着せられるなどの不幸が降り注いだりね」

ほむら「そういう魔法少女は少数なの……？」

ＱＢ「そうだよ、しかもあんな短期間なんてイレギュラー中のイレギュラーさ」

　　「君達二人はとびきりのイレギュラーだね」


イレギュラーを連呼しすぎな気もする。

さやかは運命に屠られてしまったが、まどかが抱きとめてくれた、そう思うと少し心が軽くなった気がする。
戻らない以上、導かれた先に幸せがあらんことを……

ＱＢ「そう言えば、この島国にももう一人居たね。謎の魔獣大量発生で、国諸共滅んだ魔法少女……いや、年齢的に魔女と言うべきか」

ほむら「……まさかとは思うけど、日本史の最初の方に載ってる」

ＱＢ「邪馬台国の女王だね。咒や占いを使って国を治めていたよ」



ほむら「……占いね」

一応一章終わり……？

次はゆま編です。
引きは織莉子だったけどゆまです。

改変後いっぱいあるからやりたいことかいときますね。

四重奏の四人目を補っては離れていく話です。
たまに学年の関係でマミさんが抜けて三人目と四人目が入りますが。

予定としては、順番は決めてませんが

ゆま編　鳴呼、何故なの
織莉キリ編　賢者と吸血鬼
クレア編　宗教と宇宙科学
ほむら編　身体って何？
かずみ編　21g
ひよりこまち編　タイトル未定
恭介編　　タイトル未定

恭介編は……ほむあんマミのどれかとくっつくのは私の趣向や考察体系的にあり得ないとだけ言っておきます。

ほむあんCPを書くとしたらRaven'sとかアリゾナみたいな文体で書けるようになったらかなぁ。
でも高校は女子高の予定だから……

明後日の晩やりましょう。
あっちもマミ死亡以降は、
サクサク進むと思います。

エンディング(ウン十年後の物語)まで実は固まってる。
しかし書く暇が……次に更新するのは手紙の方です。

こっちはゆっくりやってきます。
まだゆま編が固まらん……

美樹さんが導かれてから、私は保健室やスクールカウンセラーの部屋に篭っていた。

どうせループ期間中に大学受験レベルの勉強は終えている。定期試験は主席通過できるし、親に心配をかけることはない。

教室に居ても、志筑さんは上条くんとベタベタしているだけ、中沢くんは最近どうも上の空だ。噂だとネットゲームにハマってしまったとか。

美樹さんが居なくなったのに、何故あの二人は……などという怒りを感じない為に引きこもる。

保健室は大人数の病室に似ていて少し落ち着く。

そんな病室に居たのは確か……最初の病院だったかな。一番期間が長かった。
あの時に初等教育を施してくれた先生は非常にわかりやすい教え方だった。

いつも『本当は授業では教えないもっと大事なことを教えなきゃいけないんだけど、先生が力無いばかりに……ごめんな』とか言っていたけど、ロクに学校に行けなかった私は勉強が出来るだけで嬉しかった。


「……今日もいるのか、暁美」

保健室とカウンセリングルームには住民が居る。

カウンセリングルームは一年の男子。
友達が居ないから休み時間の度に来て、漫画を読む。
一度話しかけられたが、話しにくいタイプだ。

保健室は三年の不良風の男子一人と、よく知っている人物だ。
前者は私と同じクチの人物、日焼けした肌に紺のツンツンヘアーなどそうは見えないが、地頭だけなら私より遥かに良いだろう。

そして、後者、先程声をかけて来たのは……


キリカ「……やぁ」

呉先輩だ。
未契約、故に性格は暗い。
住民三人が揃った時に保健室のベッドが埋まってしまう為に、呉先輩と背中合わせに寝ることなっている。

先輩は単なるサボり。
勉強はとっくに取り残されているようで、たまに保健室の机で溜まった課題を消化している。

キリカ「……」

先輩はイヤホンで閉ざした世界に引きこもってしまう。
だから私も自分の世界に引きこもってしまうしかない。


鳴呼、早くチャイムよ響け。

ＱＢ「奨学金で通ってるからとはいえ、この学校生活はもったいないんじゃないかな？」

ほむら「マトモにでても勿体無いわ。保健室で携帯電話を弄って居た方がマシね」

昼休みは屋上で巴さんと過ごす。
うるさいのが一匹居るが。

マミ「来年度はどうするの？私は居ないし……」

ほむら「杏子の通ってる中学に転入するわ」

マミ「でもお金が……」

入院していた見滝原の病院に入院していた場合、この学校に通う為に奨学金が出る。
それで私は学校に行けているような物だ。

ほむら「特待を取るわ。こう見えても私、クリスチャンなの」

今、信じているかどうかは別として、前の学校で洗礼を受けている。
実はロザリオも持っている。杏子のように持ち歩いては居ないが。

マミ「ミッション系ね。私も高校は東京のそういう私立に行こうと思ってるの」

ほむら「……またどうして？」


マミ「寮があって、高校から入れるところを探していたの」

　　「こっちの家は一人じゃ広いし、貸家にした方がいいと思ってね。それは親戚の方がやってくれるみたい」


寮があって、高校から入れるミッション系の私立……変な予感がする。


ほむら「……もしかして、そこは女子校？」

マミ「そうよ。最近初等部も出来たらしいけど、初等部は男の子も入れるのかしら？」

ほむら「……」

確定だ。最後に私が居た学校、なんとか女学院。
学部は極端に限られるが、大学まである女子校。

ほむら「その学校なら、よく知っているわ」


例の如く、入退院の繰り返しで籍を置いていただけであまり通ってはいないし、友達も殆ど居なかったけれど、よく知っている。

ほむら「……魔法少女にとっては最適なんじゃないかしら」

マミ「？」


交流のある男子校、共学が無い。
寮と通学があり、更に放課後はパチンコ屋の景品交換場の如く存在する予備校にも通える。

教員にも男が居ない。
完全に女傑の世界。

ほむら「……しっかり調べた上でなら反対しないわ」

私の親はそれを見越して入れたとか。

マミ「そうね……もう少し調べてみるわ。ところでキュゥべえ」

ＱＢ「なんだい？」

マミ「……この辺りに魔法少女、魔法少女候補は居るのかしら？」

巴さんは美樹さんを失った穴を埋めようとしているのか。
その逆なのか。
いや、魔法少女なのか候補かで分かれるだろう。

ＱＢ「……候補は二人、魔法少女は見滝原と風見野は今まで通りだよ」

恐らく美国織莉子と呉先輩だろう。

ＱＢ「ただ一人は幼過ぎてね、何故候補になっているかもわからないんだ」


……

ほむら「えっ」

幼い魔法少女と言えば、一人しか居ない。
千歳ゆま。

美国織莉子と呉先輩が契約した世界で契約する小学生。
虐待を受けていて、若干栄養失調のケがあり、実年齢より更に幼く見える。


願いでも変わるけれど、治癒と衝撃波を扱う。
精神面でも、本当に何故候補になっているかもわからない程に強く……見えた。


ＱＢ「僕としてもあまり気が進まないんだけどね、彼女との契約は」

ほむら「呉先輩は……候補に入っていないの？」

ＱＢ「呉キリカかい？彼女は希望や絶望を否定している。魔法少女とは程遠い存在さ」


……そうか、美国織莉子と出会っていない彼女は……

マミ「……その小さい子、契約が必要にならないと良いんだけど」


……魔女の居ない世界は、それはそれで苦労がある。

今回はここまで。

次回候補と魔獣の関係に入るかな。
その場の思いつきで書いてるんだけど。

なんとか女学院の名前募集してます。

ちなみに学院ってつくのは殆ど確かミッション系

魔女と魔獣は似ているようで全く異なる。


魔女はあくまでも魂であり、発生源ははっきりしている。
いきなり湧いてくることなどない。
誰かが新規に魔女化するもしくはグリーフシードを撒かない限りは一軒家で魔女が現れるなどまずありえない。


一方魔獣は人々の負の感情が作り出す瘴気から生み出される現象のようなもの。
湧いてきてしまうのだ。
特に、日常的に虐待が行われる場所などには。

マミ「ねえ、キュゥべえ、その子のこともう少し教えてくれない？」

ＱＢ「ああ、彼女は風見野と見滝原の境あたりにある住宅街に住む小学五年生だ」

マミ「……私の契約当時より歳下ね」

ＱＢ「彼女は母親に虐待を受けていてね、額に根性焼き？だったかな、その痕があるよ」

マミ「……気分の良い話ではないわね」

ＱＢ「どうやら再婚した父親が家に帰ってくるのが少なくてね、それを彼女のせいだと母親は」

ほむら「完全な八つ当たりね」

マミ「家の瘴気の濃さは？」

ＱＢ「他の瘴気に引き寄せられければ早くて明日の朝には魔獣が現れるね」


他の大きい瘴気に引き寄せられればそこには魔獣は現れない。
代わりに路地裏などに結界を作り、人が迷い込むのを待つ。

基本的な魔獣の攻撃は三パターン。
レーザー攻撃、直接攻撃、そして魂を吸い取ることだ。
魔女化によるエネルギー回収が行われていないのに、魂の結晶化がこの世界で行われているのは、魂を吸われないようにするためでもある。

結界に迷い込んだ一般人の魂を吸い取る。
魔獣は基本的に完全に魂を吸わず、21g中の1g程度を残し、廃人となった被害者は自[ﾋﾟｰｰｰ]る。

マミ「暁美さん、今夜から張り込みましょう」

ほむら「……牛乳はお腹を壊すから辞めなさいよ」

勉強するからここまで。

結果から言うと、千歳ゆま自体の確保は成功した。


確保の成功、即ちそれは親の死亡を指す。


ほむら「母親の負の感情が強過ぎたのね」

マミ「……父親の方も息をしていないわ」


ここまで酷いパターンはなかなか無い。

マミ「母親はヒステリーか何かかしら？」


ゆま「…さん……」


むしろこの子を助けられたのが奇跡に近い。

ＱＢ「スタンバイはしてたんだけどね」

ほむら「親御さんのことはお悔やみ申し上げるわ」

マミ「暁美さん……」

若干青い顔で巴さんが私を止めようとするが、魔獣がでなければ遅かれ早かれこの子は死んでいた。父親に関してはとばっちりのフシもあるが。何より毎回千歳夫妻は惨殺されていたらしいので何も思うところが無い。


マミ「……どうするの」

ほむら「まずは必要な知識を詰め込むわ。それまでは杏子の家で預かって貰いましょう」


ゆま「……」

モモ「ゆまちゃん……？よろしく」

ゆま「よろしく……」


同じくらいに見えるが、千歳ゆまの方が歳上だ。
恐怖などに震えて縮こまっているため小さく見えるのか。


マミ「なので……暫く預かってくれませんか？佐倉さん」

杏子父「……わかった」


魔法少女を細やかながら支えてくれている杏子の父親は巴さんに頭が全く上がらない。
キュゥべえの入れ知恵とは言え、キュゥべえは少女と魔法少女にしか見えない。

杏子に聞いた話だと、胸倉を掴んで声を荒げて説教したそうだ。私の記憶では声を荒げたことは無かったと思う。人の為に怒る余裕ができたからだろうか。

試験勉強するんで一旦ここまで。

ほむら「……そういえばこの教会って破門されたんじゃあ」

杏子「あぁ、あたしが契約する前にね」

ほむら「じゃあ……」


杏子は肩の力を抜いて溜め息をついた。
変なことを言っただろうか？

杏子「……あたしの言った『みんな』には本部の連中のことも含まれてたんだ。だから……」

嫌そうな顔をして続ける。

杏子「言いくるめたんだ。あれが親父が魔法を悪用した最初で最後さ」


なるほど、唯一の汚点には触れられたくなかったのだろうか。

キュゥべえ曰く、この間の美樹さん程極端な物でなくとも、魔法少女候補や魔法少女は多少瘴気と引き合うことがあるらしい。

つまり事前に知識を叩き込んでおかないといけない。


杏子「ったく、てめえでやれって話だよ」

ＱＢ「何故か話を聞いてくれないからね」

ほむら「お前が人の感情を理解していない対応をするからよ」

杏子「そうだよ、スカートはいた女に足元から近付くとかお前はもう少し……」


教育はこの教会に住む杏子の仕事。
それが終わってからはどうするかは決めていない。
しかし、この教会にいつまでも置いておく訳にはいかないことだけは確かだ。

……


ゆま「この黒いのがグリーフ……」

杏子「グリーフボックス。ソウルジェムの穢れを吸える。吸い切ったボックスをキュゥべえは集めてるんだ」

ゆま「だから契約…？」

杏子「さぁね。キュゥべえは胡散臭いからどこまでが言葉通りなのか」

杏子は私をチラリと見て言う。


キュゥべえ、正式名称インキュベーター。
和訳すると孵卵器。
元は魔女の卵を孵すといった由来だったのだろう。古代エジプトなどではどう呼ばれていたのかは知らないが。

しかしこの世界に孵す卵など無いはずだ。
別の卵でも孵すのか。それとも勘違いされがちだった九兵衞や久兵衛なのだろうか。

神父「良かったら暁美さんも食べて行くといい」

ほむら「ありがとうございます、では遠慮なく……」


運び込まれてきた料理は、案外一般食卓の料理。
特別質素だったり高級だったりするわけでもない。


杏子母「……あんまり上手ではないけど、今日は杏子の好物なんです。お気に召すと良いけど」

修道女と見まごう雰囲気の杏子の母親が、香ばしい匂いの揚げ物を運んでくる。

半端だけど中断。
ごめんなさい。近いうちまた更新します。

半端だけど中断。
ごめんなさい。近いうちまた更新します。

ゆま「からあげ？」

モモ「違うよう」


鳴呼、見覚えがある。
テーブルに置かれたこれは唐翌揚げよりふわふわしたアレだ……。
いつだか早乙女先生が唐翌揚げと竜田揚げどちらがいいかを中沢くんに聞いた時に、彼が答えた……

モモ「クリッター！」

神父「フリッターだ」

杏子「アレは食えないな……」


あとでクリスピーなフリッターを作って、クリッターと名付け一人でニヤニヤしようとくだらないことを心に誓う。


杏子母「では、食前の祈りを」

神父「御在天の父なる神よ、今日も━━━━」


謂わば外国のいただきますの代わりだ。
日本人がこれをやる以上、祈りのあとにさらにワンテンポおいていただきますだろう。

神父「この小さき祈りと感謝を、主イエスキリストの御名によって御前にお捧げいたします」

杏子「アーメン」
ほむら「アーメン」
杏子母「アーメン」
モモ「アーメン！」
ゆま「ァォーメン…？」


馴染みの無い言葉だから、無理もない。
ただラーメンだのオーメンだの言ってしまうと空気が悪くなるから、わからないなら黙っておくのが吉だろう。

神父「お待たせ、では……」

杏子「いただきます！」


ふわふわした衣、そしてジューシーな肉。
これがフリッターの魅力らしい。
実は私も食べるのは始めてで、入院中にテレビで見た程度。
杏子の好物ということもあって、非常に気になる。

杏子母「人数が多いからまだいっぱいありますよ、お肉じゃないのもありますけど」


……ズバリ豆腐だろう。
病院食では常連だった。

杏子「ん……コロッケ擬きか」


豆腐だけではなかった。

ゆま「豆腐のもお肉の味する！」

杏子母「ちょっとね……」

何かを入れるジェスチャーをしている。
きっとハンバーグの中にマヨネーズをいれるように何かいれたのだろう。

上手じゃないなんて遜りもいいところだ。
肉も異様にジューシーになっているし、まどかのお父さんとは違う方向で料理が上手い。

神父「……ケチャップを付けるのか？」

ゆま「えっ……」

モモ「付けちゃうの……？」


ベルモントのケチャップがデカデカと置いてあるが、どうも使うことは好まれないらしい。
あくまでも肉の味を楽しめ、もったいないじゃないかと言わんばかりに見つめる二人。

だったらケチャップは出さなくても良いような……日本の最大手のファストフード店のポテトでは塩一択だ。


杏子「まぁ付けさせてやんなよ、そんな顔で見ないでさ」

少し下品な音を立てながら皿にケチャップを出す。

ゆま「ん〜、このケチャップも美味しい！」


確かに普通のより美味しいかもしれないけど、それは言わなくてもいいと思った。

ほむら「ご馳走様でした」
ゆま「ごちそうさまー」

杏子母「お粗末様」

ガラにも無く沢山食べてしまった。
少食は方であったけれど、美味しいものはいくらでも食べられるのかもしれない。


杏子「ふぅ、美味かった」

杏子のジャンキーな物好きなのは元々だったのか。
私がジャンキーな物が好きだとしたら、それの理由は味などではなく、一緒に食べる人が居るからだろう。
病院食でそんなものは決して出ない。

杏子「ゆまー、二段ベッド上と下どっちがいい？」

モモ「上！上！」

ゆま「上…かな……」

モモ「ぶぅぅ……」


千歳ゆまを住まわせる間、杏子が大きくなってからはしまいこんでいた二段ベッドを使うことにしたようだ。
日本人に作られた、英語を話しアラブ人の顔をしてユダヤ人の如くコインを拾うイタリア人の配管工兄弟も二段ベッドだ。

杏子「モモはどうせ夜中にあたしか母さんのところに来て甘えるだろ」

モモ「えへへ……」


私には甘える人なんていなかった。
一人寂しく病室のベッドか和室の布団、振り子刃の部屋のソファーに寝るほか無かった。

……私の人生、そして私の人格は何かけつらくしているのだろう。

……ここまでにしておこう。
欠落は変換ミスです。ひらがななのはわざとじゃないです。

かずみ編はやっぱりほむらとかが介入するのもおかしいんで、小ネタスレに落としました。

次回更新もそんな遅くならないようにします。

春休みなんて嫌いだよ
落とした単位の勉強を教えておくれ

再開します。寝落ちしたらご愛嬌ってことで。

千歳ゆまへの教育は最終段階を残すのみとなった。



マミ「……一歩でも動くと当たるわよ」

ゆま「う、うん…！」


銃を彼女の足元の斜め前に向け、引鉄を引く。
飛び出した弾は巴さんの髪のように巻いたリボン。
見かけ通りバネの如く狭い部屋を跳ね回る。
跳弾する際には花のエフェクトを撒き散らしているが、当たればそれなりには痛そうだ。

ゆま「〜〜ッ！！」

めちゃくちゃに跳ねてるようで、ギリギリを飛ぶように計算されている。
目の前を、頭の後ろを、首の横を飛んで行く。

マミ「あと二発増やすわよ」

ゆま「えー……」

マミ「変わらないわよ。当たらなければなんてこともないし」

ほむら「一個決めて目で追うと良いかもしれないわね」

ゆま「はぁい……」




私達がここまで厳しい教育をするのは理由がある。

巴さんはああ言ったものの、怖がるなというのは難しい。
ましてや自分に当たりそうな弾など尚更。

その恐怖を植え付けられることで、戦うことを拒んで欲しい。
事前に恐怖し、戦わないことを選んで欲しい。

……まだ二人は美樹さんがあそこまで死に捕らわれたかは知らない。
だから二人は美樹さんには無かった恐怖を知って欲しいと思ったようだ。



ほむら「お疲れ様」

ゆま「……怖かった」

マミ「お疲れ様、アップルパイとチーズケーキどっちがいい？」

ゆま「アップルパイ！」

跳ね続けていた弾は光となって消え、私達は部屋を後にした。

ほむら「揚げアップルパイも乙ね」

マミ「リンゴの酸味は足りてる？」

ゆま「うん、ばっちぐー」



別にコーヒー派というわけでも無いけれど、なんとなくカフェラテを淹れ一緒に頂く。
二人には紅茶を。


マミ「チーズケーキはベイクドとレアどっちが好きかしら？」

ほむら「どちらかといえば……ベイクド。レアよりケーキって感じがするから」

　　　「ティータイムを楽しんでる、そういう実感が持てるし」

マミ「変わった切り口だけど……なんとなく同意できるわね」

眠いのでここまで

生存報告
スランプというか頭の中に全く思い浮かばない
仕事ラッシュ終わったらどうにかなるかも
もうしばしお待ちを

こっちも生存報告しときますね

こっちは織莉キリ編とかのアイデアはあるので、ゆま編を書ききれば更新速度が上がるかと思います

待たせたな

マミ「施設見つかったんだって？」

杏子「ああ、県央の方の同じくキリスト教系のね」


予想に反して何事も無く事は進んだ。
あいつが邪魔さえしなければ大抵上手く行くものなのか。
それともこの世界が本当に少し優しくなったのか、それとも気のせいなのか。


杏子「だから明後日、その施設に送りに行くけど……来る？」

マミ「……県央の方って言うと……」

ほむら「正直見滝原以上の物は望めないんじゃない？遊びに行くなら」

　　　「……でも行くけれど」

ゆま「見つかったの？」

マミ「うん、ここと同じようなところ……みたい」

ゆま「そっかぁ……」


依存されても困る旨を杏子の父親に話したところ、杏子の母親がメインで世話をすることとなっていた。
漠然とシスターとして見て貰えればと思ったとか。
正確にはシスターでは無いが。

ゆま「ちょっと楽しみかな……？」

マミ「そうね、あっちでは同じくらいの歳の友達も出来るんじゃないかしら」


大丈夫そうだ。

二日後、私達は電車で県央に向かった。
プラットホームに立つカメラ小僧に、ゆまがピースサインを出して物凄い形相で睨まれていた。
私がまだ時間停止を出来たならなんらかの報復をしていただろう。


ゆま「今日でお別れなの？」

マミ「そうね……私は会えてもあと一回とかかしら。もうすぐ東京の方に行くから」

ゆま「そっかぁ……」

杏子「ま、あたしらはたまに会いに行くよ。一年はまだこっちに居るし」

着いたのは杏子の家の物より現代的な佇まいの教会。
杏子の教会は正直言って異常に近未来的な見滝原からは浮いていて、東京で言えば町田の様な場所。神奈川寄りの雰囲気だ。もちろんここでの神奈川は風見野を指す。


杏子「風車は無いんだな……」

マミ「必要ないからね。佐倉さんのところも本来の目的では使ってないでしょ？」

気まぐれ風力発電。
技術の発展で昔ながらの外見の風車でも効率的な発電ができるようになったとか。
それでも風自体が不安定なため気まぐれ発電なのだ。

ほむら「児童保護のセクションの人にご挨拶に伺いましょうか」

マミ「そうね」

マミ「……特に当たり障りの無い感じね」

杏子「父さんの知り合いだしね、まぁ知り合うのは当たり前だけど」

別に問題はなさそう、しかし特別良いところも思い当たらない無難な感じであった。
宇宙や呪いの手が加わっていない現実なんてそんなもんだろうか。



ゆま「それじゃゆま、荷物置いてくるね」

ほむら「私も手伝うわ」

ゆま「ん、ありがと」

杏子「おーおー、結構居るじゃん」

マミ「溶け込めるかしら？」

杏子「……あのデブ坊主さえ大丈夫ならいけるんじゃない？」

マミ「不良じゃないんだから……」

杏子「ボクシングと柔道を少し齧らせといたから喧嘩拳法には勝てるはずだよ」

マミ「あの子が苛めっ子前提で話さないで！？」

杏子「冗談だよ……」



ＱＢ「……おや？」

ゆま「ここが新しい部屋？」

ほむら「狭いけどなかなか良い感じね」


無駄に広くて何も無い私の病室とは大違い。
ベッドと一体型の机、少し古いパソコンやら色々揃っている。
私は本を読むにもタブレット端末にデータを入れるのにラウンジに一々向かっていたのに。
少し目を離した隙に官能小説を入れられたのは今でも腹立たしい。

ゆま「ご飯は美味しいかな？」

ほむら「少しランクは落ちるとおもったほうがいいかも……ね」

一つ言えるのは病院食よりマシだということだろう。

ゆま「今でも少しね、魔法少女に憧れてたりするんだ」

ほむら「……そう」

ゆま「でもね、それはなんていうのかな。きらーっぱーっていうのになんとなく憧れてるだけでね、怖いのもあるんだ」

ほむら「……わからないでもないわね」

ゆま「だから願い事を軽く見ることなんて絶対にしない。でももしいつかゆまが契約したら……その願いを認めて欲しいなって」


……一瞬、まどかが頭をよぎる。
やめろ、そんなに構えるな。
それこそ『いつかは今じゃない』

ほむら「うん、約束する…よ」

ゆま「ほむほ…む？」

涙こそ出ないにしても、子供は少しの変化にも敏感なのか。

ほむら「なんでもないわ……もし貴方が考え抜いて契約をしたなら私にそれを責めることはできないわ。あくまでも、今までのは」

ゆま「簡単に契約しても良いことないってことだよね」

ほむら「……そんなところね」

ゆま「でも、今は幸せだからいいかな……」

ほむら「嬉しい限りね……羨ましいわ、貴方には考える時間があって」

……

実はほんの少し後悔していた。


二回目の時、巴さんが一回目と違って死体も残さず消し飛ばされてしまった。
今思えばまどかのソウルジェムが異常に濁った原因の一つだろう。
酷い死に方だった。その時私は自分の未来を少し危惧した。

三回目の時、人間関係が最悪になり、板挟みになった巴さんとまどかの本来の性格が見えてしまい、私の中の像が崩れかけていた時。
キュゥべえを敵として見ていたことで私はギリギリ耐えていたのかもしれない。

だからなるべく後悔してほしくない。
美樹さんのようになるかもしれないと思ってしまうからそもそも契約しないで欲しいというのも多いにあるが……


ゆま「その時は……ほむほむにも電話とかで相談していいかな？」

ほむら「……勿論よ、私にできることならなんで……」


頭の中に声が聞こえる。
杏子と巴さんの声だ。

マミ『暁美さん……魔獣が出たわ、正直最悪な状況よ』

杏子『日曜日のアニメじゃないんだし、人前で変身なんて出来ねぇよ……』


マミ『だから……私達はここで避け続けるから……』

杏子『あんたが遠くから全部仕留めてくれ』


ほむら『……了解したわ』


やはり悪い運命に愛されているのか……
こんなところに魔獣が出るなど普通ではない。
誰かに美樹さんの時のように不自然な引力が働いたりしているのか。
私達の誰かを殺す運命か、ゆまを契約させる運命か。

正直どうでもいい、運命になど中指を突き立ててやろう。


ほむら「いい？、ゆま」

ゆま「なに？」

ほむら「いつかは今じゃないわよ」

ゆま「わかってるよ……いってらっしゃい」


変身を済ませ、教会の最も高い場所へと登る為、部屋を建物を抜ける。

杏子「マミ、そんな竹一本で大丈夫か？」

マミ「佐倉さんの指導の為に棒術、槍術、薙刀道は一通り齧ってるのよ？」


薄汚れた黄色の結界に包まれた世界に戸惑い、泣き叫ぶ子供達。
魔獣は七体程、形は獣タイプで、幸い光線は吐かない。
謂わば倒せはしないが、子供達に危害が及ぶ確率は他の魔獣に比べて少ない物だろう。


マミ「佐倉さんこそ、シャベルなんかで大丈夫？」

杏子「日用品ならこれが一番……馴染む！」

ドラマの孫悟空の如く竹の棒を振り回す。
ジャグリング系統も一通り齧っているのは言うまでもない。

杏子「変身控えてる意味なんいんじゃないかそれ」

マミ「モチベ……いや、威嚇よ」

杏子「そうか……」


マミ「さぁ……来るなら来なさい、うちの流星が来るまで避け続けてやるわ」

ほむら「……」


風が強く吹き付ける、私の軽い体は変身していなければ直ぐに突き落とされてしまうだろう。

現在私が立っているのは中央の塔。
ここからは真下以外は殆ど見渡せる。
なんでこんな高い屋根にしたのかは理解に苦しむ。雪が積もるのを避けるにしても傾斜角が急すぎるだろう。

ほむら「……まぁ役に立ってるから良いんだけど」

屋根を股に挟み、ターゲットを確認する。
目標は七体、味方は二人……


ほむら「フレンドリーファイヤが怖いわね……」

恐る恐る弓を引き、狙いを定める。
狙いを定めると言っても、そもそもこの武器はこんな遠距離で戦う物ではない。
零距離射撃どころか酷い場合には接射するくらいなのに……

杏子「切れないってのも新感覚だな……！」


いつものパルチザンを扱うが如く、シャベルを振るも強い打撃を与えるだけに終わる。
技術は足りている、武器の威力が足りなさすぎるのだ。


マミ「硬いというかなんというか……早く暁美さん来て頂戴……！」


無人島サバイバルで棒で動物を狩る方法というものを読んだりしていたが、そう簡単に呪いの使者は狩れないようだ。

一発目、外れ。
目標地に届かず失速。


ほむら「……」

弓を強くし……重くするというと弓道の方面から怒られてしまう。

二発目、外れ。
狙いが大幅にブレ、全く違う場所に命中。


ほむら「これじゃ話にならない……！」


思考を張り巡らす。
今までの武器では目標地にすら当てることができない。

……


杏子『おい！ほむら、まだか！？』

ほむら『弓の狙いがつかないのよ……』

マミ『なんでよ、私の銃を使った時は百発百中だったじゃない……』

ほむら『えっ……そうなの？』

マミ『もう！』



……

ほむら『安心して、もう大丈夫』


私は弓に私の記憶の一部を注ぐ。
弓は姿を変える。
まどかの象徴から、あの世界で自分が使っていた武器へと……

スナイパーライフル。


体内に弾を残すことを目的とした拳銃の弾と違い、尖っており貫通する弾が用いられていて、その貫通力は硬いと思われる鎧の魔女や芸術家の魔女にも穴を空ける程。


三発目 魔獣撃破


ほむら「……行けるわ」

マミ「……来たわね！」

杏子「っしゃ、行けるなこれで！」


……

五分もしないうちに残りの魔獣も殲滅された。

……


ゆま「ほむほむ……」


屋根の上のほむらが構えるスナイパーライフルを見つめ、ゆまは少し何かを考える。
契約のことではない、そもそも考えているのは本当にゆまなのか。

ゆま「じゃあ、三人とも元気でね」

マミ「好き嫌いしちゃダメよ？」

杏子「ああ、元気してなよ」

ほむら「……気軽にメールでも頂戴」



……


ゆまと別れ、見滝原への電車に乗り込む。
私達はともかく巴さんが次にゆまと会う日は訪れるかはわからない。
どちらかというと低い部類だろう。

しかし恐れることは無い。
彼女は彼女なりの道を見つけるだろう。
少し無責任かな……？

ゆま編 終

次回より織莉子andキリカ編をお送りします。
四重奏ゆえにマミさんは東京に行くので、マミさんファンはごめんなさい。

マミ『暁美さん、貴方が言っていること、よく理解はできないけど……多分私はその私より、ずっ……と強いわ』

　　『だから心配しないで』

ＱＢ『マミの進学先が決まってからは、その辺りで揉め事が起こらない様に調整してあるしね』



巴さんが東京の高校に進学した。
マンションは貸し家にして、その金を学費などに充てるとか。

杏子「マンション暮らしが寮なんかに馴れるもんかな……あ、荷物はそこに置いといて」

ほむら「少なくとも孤独は感じないから大丈夫じゃない？」

杏子「あんたのマミに対する過小評価はなんなんだよ……銃の扱いはあんたの方が上だけどさ」

ほむら「心配してるだけよ」


それに伴い、私は杏子と共に風見野との掛け持ちをすることにした。
杏子の教会に住み込ませていただいてだ。
アパートの家賃と同じ分を下宿賃として渡して。

それと杏子と同じ風見野の神学校に転入した。

……美樹さん、そしてまどかの日常を奪ってしまった、守れなかったことが心を締め付けるから。

更に言うと上条恭介や志筑さんと顔を合わせたくないから。
理不尽な話ではあるけど、もし美国織莉子と呉キリカが己の正義の為にまどかを殺す存在だったなら、彼らはさやかを間接的に殺しているから。

それも美国織莉子達と違い、一回では済んでいない。
それにもうやり直しが利かない状態で、美樹さんが亡くなっている。
もう一年彼らの近くにいることが、とてもではないが耐えられないのだ。

杏子「たまに人間じゃない形の魔獣が出てくるけどなんでなんだろうね」

ＱＢ「普通の瘴気は様々か負の感情のごった煮になっていて漠然の人の感情ということで人の形を取るけどね、同じ傾向の負の感情が集まれば、その傾向が魔獣の形に現れるんだ」

杏子「それでこの間のところでは、子供の負の感情でも集まって……子供は動物に近いっての？」

ＱＢ「そうなるんじゃないかな、僕の知り及ぶところでは無いけど」

ほむら「……それであのビルから鳥の様な魔獣が大量に出てるのね」

ＱＢ「君の狙撃でもなきゃ倒せないよねアレは」

杏子「あたしだって鎖で吊ればできるよ？ガラス拭きの仕事みたいに」

恐らくあのビルの中の会社は繁忙期なのだろう。
「鳥になりたい」などの逃避願望が具現化したと予測できる。

この間から引き続きスナイパーライフルを具現化し、遠くから確実に仕留める。
試したところ、弓に形状を近づける程、威力というか『魔力伝導率』が上がるようだ。

逆に慣れた銃の形にすれば命中率は上がる。
要は狙撃でもなければボウガンが最良の選択肢だろう。

ほむら「……終わったわね」

杏子「お疲れ様、グリーフシード拾いにいかないとね」

向かいの高層ビルデパートの屋上を後にし、本屋でも寄ろうかと考える。
二、三巻で終わる漫画でも買って読みたい気分だ。


ＱＢ「いや、グリーフシード拾いは実は新しい魔法少女に任せてあるんだ。」


杏子「は？」

ほむら「……美国織莉子かしら？」

前に候補にあると言っていた。
杏子の父親曰く、彼女の父親は汚職で自殺したとか。
それが白なのか黒なのか、自発性なのか魔獣の仕業なのかはわからない。

ＱＢ「いや、彼女はまだ契約には至ってないよ」


……ならば、やはり。

ＱＢ「君が前に言っていた呉キリカ、彼女が急に強く望むことを見つけてね。素質が跳ね上がった……いや、何かのタガが外れた感じだったね。僕の予測だと彼女は……」

ほむら「天才」


あの世界で、初見殺しや奇襲などの手札があったとは言え、契約してまもなく数々の魔法少女を葬り、巴さん相手に善戦。
正直言って、美樹さんを上回る逸材だろう。

杏子「なるほどね、新人だから手柄は譲れってことか」

ＱＢ「取り立てれば返して貰えるだろうね」

杏子「しないよ、んなこと」

ＱＢ「顔通しは美国織莉子と一緒に来るそうだよ、よくわからないけど彼女が鍵だそうで、彼女がもうすぐ契約すると伝えたらそう言っていた」

杏子「その…織莉子って奴は契約するなんて言い切って良かったのか？」

ＱＢ「別に何かを煽るわけでも無いしいいんじゃないかとね、気に入らないことでもあるのかな？」

杏子「いや、別に」


……あの二人が契約。
まどかが居なければ、単に正義に基づいて戦う魔法少女。
そのはず……少し割り切れないところもあるけれど、別に無自覚に煽る要素があるとも思えない、大丈夫。

……


見滝原工業高校 デザイン科


工業高校相応に、他の科の男子にオアシス扱いされているクラスだ。
クラスメイトの殆どは他の科に彼氏が居る。
全く……不潔だ、自分を欲してくれる男なら、自分のどこを見ているかなどどうでもいいんだろう。


……しかし、私にも他の科に気になる人が居る。
電気科に居る、銀髪の背の高い……『織莉子』

彼女にお近付きする為に私は……あの毒杯を飲むことを決めた。

■まさかの工業高校！

今回はここまで。
工業高校はデザイン科と自動車工学科以外何があるか知りません。

私は彼女に惚れたと言ってもいい。
私が男性的な感情を持ったのか、彼女に男性的な魅力を感じたのか。
はたまたこれは勘違いで、単に恩や憧れを感じているのか。

正直どうでもいい。
走り出した衝動は止まらない、私は言わば暴走機関車。

……とはいったものの、周りの連中みたいに暴走して自滅するのはゴメンだ。
自滅といっても、カンパの紙袋を回す羽目になるとかそういうものではないけど。
暴走機関車を止めるなんてとんでも線路トラブルだね……

出会いは簡単だった。
購買で小銭を落とした私の手助けをしてくれた。
それは荒み切ったこの学校で、私の脳裏に焼き付くには十分な優しさだった。
その上、発していた気品や髪の香りが一層私をその気にさせるものだから、その日の放課後から私は彼女のことを探るようになった。


……最初は教員かと思っていた。
未だに彼女が何故電気科などに居るのかもわからない。
大学の電電学科に居るならまだわからないでもないけれど。

トドメを刺されたのは、なんとも出来の悪いドラマのような出来事。
本当にこの高校はクズしか居ない。


自動車の猿共に……鳴呼、思い出すだけでも不快だ。
まぁ……彼女のおかげで汚れずに済んだけれど。


私に集る五人もの暴漢を、何らかの格闘技でノックダウンした。
まるで仕組まれたみたいなような出来事、もちろんそんなことはありえないけれど、それで私は……時代錯誤だけどメロメロになってしまった。


ちなみにあり得ないと言い切る理由は一つ、あまりにも容赦が無かったからだ。

ＱＢ「君の言ってた……いや、他の魔法少女からも聞いてたけどね、織莉子が契約するそうだよ」

キリカ「へぇ……彼女にも人であることを捨ててまで叶えたい願いがあるのかい？」

ＱＢ「人聞き悪いこと言わないでくれよほむらみたいな」

キリカ「イレギュラーナンバーのことかい？」

ＱＢ「君もマミ(そっち)側なんだね」

　　「ともあれ彼女は……あまりプライベートを話すのは良くないね、でも彼女の苗字、そしてこんな学校にいる理由を考えれば自ずとわかるんじゃないのかい？契約の内容はともかく」

キリカ「ふぅん……まぁ私も『呉キリカは契約で性格を変えた』なんて言いふらされたら怒るもんね」

半端だけど今日はここまで。

杏子「わっけわかんねぇ……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359865382

原作杏子とSS杏子のものをば。
題材の割には暗いのでご注意を。

春休みはどうも筆が進まなくて……

所謂高2病と言うものを拗らせてしまったのか、私は高校に入ってやってみたかったことが一つある。

楽器だ。
雑誌のアンケートで上位に君臨する「モテたい」が理由であるわけではないけど、私は楽器、それもエレキギターやエレキベースがやってみたい、そう思っていた。


そしてそれは先日、確固たる想いへと変わった。

エレキギターなどにはエフェクターを噛ませる。
そして電気科があれば電子工作部が当然存在するんだろう。
だから軽音楽部と電子工作部は提携することが多い、事実電子工作部のポスターにそう書いてあった。


……彼女がその電子工作部に居た。
理由は……多分学んだことをリアルタイムで活かしたいとかそんなところだろう。


ならば軽音楽部に入らざるを得ない。
幸い、軽音楽部までは不良の手は及んでおらず……不良は楽器などやらなくても男女の需給が成り立っているからか、とにかくそこで私は彼女とのエルドラドを……


キリカ「……魔法少女なんて他にも居るからね」

ほむら「パイプオルガンではないのね」

杏子「まぁね。バグパイプならあるよ」

ほむら「パイプが欲しいわけじゃないから……」


杏子の教会でオルガンを弾く。
実を云うと私は入院中に色々手を出していて、鍵盤とギターを習っていた。
……教えてくれた人は亡くなってしまったが。
他にも絵や小説にも手を出した気もするがどれも中途半端だからループ中は特に思い出すことも無かった。

杏子「なんだその……凄い哀しいメロディは。聞いたこともない」

ほむら「これは……」


人魚の魔女お抱え、バイオリンだけの歪な楽団が奏でるあの哀しい旋律。
気付けばそれを弾いていた。
覚える程にあの旋律を聴いていたのだろうか。
時間停止を使わずにあの魔女と向き合っていたのか。


杏子「時々心配になるんだ、さやかが居なくなってからあんた……別人みたいになっちゃってさ。なんかちょっと大人びて見えたりするけど、今の曲みたいなのが本音だと思うとさ……」


……

ほむら「……心配かけてごめんなさい、杏子。別にこれはどこかで聴いただけの音楽よ。ポップスの耳コピをしてるのと変わらないわ」

杏子に心配をかけてしまったようだ。
巴さんには話したけれど、杏子には未だ何も。
きっと伝えれば巴さん以上に混乱するだろう。
巴さんと違って強ち否定しきれない状態だったこともあるし、更に非行に及んでいた。


ほむら「ねぇ、杏子……髪をお下げにしてくれないかしら？」

杏子「あ、あぁ」

だったら妹分のままでいよう。
きっと……三周目(あのとき)の彼女もそれを望んでいただろう。

杏子「ほい、出来たよ」

ほむら「……三つ編みはしないの？」

杏子「……なんだろうな、今はそっちの方がしっくりくるよ」


ハコの魔女のような髪型。
これもおさげと呼ぶのだろうか。
片方を紫のリボン、もう片方をまどかの赤いリボンで結んでいる。


杏子「あとで、前につけてたカチューシャつけなよ」

ほむら「……そうするわ」

杏子「赤と紫であたしとあんたの色ってね……」


……少し違うけど、悪くはない。

大した進展もないけど今日はここまで。

まどかが黄色のリボンも持ってた話は回収できないから困る。

生存報告
今書いたらただのカプ物になる

一通り読んだけどさやか行方不明後にいちゃつく仁美と恭介で微妙に不愉快な気分になった
もうちょい冷静に3人の関係を考えて欲しかったな
世間の叩きネタにそのまま乗っかってる感じで不自然

>>249
書いたの随分前なんで記憶が確かじゃないですけど、確か伏線だったかな。

大変遅れましたが、再開します。

キリカ「君は天才だよ、中身もガワも市販品に劣らない、いやそれ以上だ」

織莉子「ふふっ、褒めても何も出ないわよ」


彼女も契約したようだ。
なのに私は電子部と軽音部のやり取りしかできない。
魔法少女としての話を振れば良い物を、学外で会う約束を取り付けるのが恥ずかしくて、イマイチ言い出せない。

このままでは顔通しの時に始めてマトモに話すくらいしか……
そんなのダメだ、最悪先輩連中に彼女を取られてしまう……


織莉子「呉さん、ちょっと……」

キリカ「あ、うん、なんだい？」

織莉子「この後、晩御飯でも行かないかしら？」

キリカ「えっ」


指輪をチラつかせ、再び私の目を見る。
うぅ……情けない話だ。
折角命懸けて変わったと言うのに、この体たらく。

キリカ「喜んでご一緒するよ」

織莉子「嬉しいわ、良い店を見つけたから一緒に行く人を探してたの」


……話すその様が少し可愛らしく思えた。
それにしてもどんな店だろうか。

キリカ「ラ、ラーメン屋？」

織莉子「中学時代はこういう処、来れなかったから」


成る程そう来たか。
でもゆっくり話すのにラーメン屋はあんまり適さない気もするけど……


織莉子「二名、ソファー席良いですか？」


……私の知ってるようなラーメン屋では無いみたいだ。
通された席はそれなりに長居ができそうな雰囲気で、心配していたことは吹き飛んだ。

でもラーメンが伸びてしまうのは嫌なので、ゆっくり話すとしても食べ終わった後だ。

それにしてもこの時間でラーメン屋がこんなゆったりした雰囲気で大丈夫なんだろうか。
味の方も心配だ。

織莉子「呉さん、知ってる？辛ネギは豚骨ラーメンに入れると唇が腫れるほど辛くなるのよ」

キリカ「へ、へぇ……私は辛いのが苦手だな」


そんなことを嬉しそうに語るもんだから、私は返答に困ってしまう。
全肯定してしまうのも良いけれど、それでは自分が無い。
『彼女こそが全て』なんていうのは相手からの理解あってのこと、そうでなきゃただの……


織莉子「豚骨ラーメン二つ、片方は辛ネギ追加の麺多めで……呉さんは何か乗せる？」

キリカ「角煮と煮玉子追加の麺少なめで」

キリカ「随分沢山食べるんだね……」

馬鹿な質問だ、女の子相手にこんなこと普通聞くか。
むしろ下手なことを言わない前の自分の方が良かったんじゃと思う程でもある。

織莉子「私、下手な男の子より大きいでしょう？だから動かす為には多めにエネルギーが必要なのよ」

キリカ「なる程ね……」


動かす、つまり魔法少女としての活動か。
彼女の魔法はどんな物なんだろうか。

織莉子「呉さんもそのトッピングは……」

キリカ「単に甘い物が好きなだけだよ、エネルギーのことは考えてなかったよ」

織莉子「甘党なのね、私もジャムとか好きよ」

……正直美味しくない。
麺はまるでインスタントのようで、元から乗ってるチャーシューはまるでハムだ。
玉子は半分冷えていて、角煮は私に「甘いの好きだろ？美味しいだろ？」と言わんばかりで腹が立つ。

彼女はこれに喜ぶ程、こういう物から離れた生活をしてたのか。


織莉子「美味しくないわね」

　　　「ただちょっと店の雰囲気を外から見て気にいっただけだったの」


……そう来たか。


キリカ「今度私がもう少し美味しいのを作ってあげるよ、スーパーで買った物を組み合わせてもこれよりは遥かにマシなものができる」

織莉子「ふふっ、期待してるわ」

辛うじてマシな味……だったけど角煮のつゆで危ない味になったスープを流し込み、水でリフレッシュした後、私は話を切り出す。


キリカ「本題に入って良いかい……？」

今回はここまで。
もう一つの方もよろしく。