男「朝起きたら飼い猫が美少女になってた……」(100)

?「……起きて」

男「ん……もーちょい……」

?「おーきーてー……」

男「う……重い……」



男「………………誰だ?」

?「おはよー!」

男「……寝ぼけるなんて久しぶりだなぁ」

?「寝ぼけてるの?」

男「今幸せだからもうちょっとこのままにしといて……」

?「そっかー幸せなのかー」

?「それはよかった!」

男「……いかん、ムラムラしてきた」

?「むらむら?」

男「とりあえず起きる。俺の上からどいてくれ」

?「らじゃ!」

男「ふあー!良い目覚め!!」

?「良い天気だねー」

男「目は覚めてると思うんだけど俺の前から美少女が消えない!」

?「私美少女?うれしーなぁ」

男「……今さらだけどすごく悪いことをしてる気がしてきた。服を着てくれ」

?「服なんて持ってない」

男「とりあえずそこのGパンとTシャツを着てくれ」

?「なんでさっきからそっぽ向いてるの?怒ってるの?」

男「……着たか?」

?「これでいい?」

男「……Tシャツが前後逆だよ」

?「あー」

男「まぁいい……ところで君は誰?」

?「わかんないかなぁ?」

男「どこかで会ったっけ?」

?「ね子だよ!」

男「はぁ?」

ね子「あのねー私もよくわかんないんだけど」

ね子「さっき起きたらねー」

ね子「人になってた」

男「…………」

ね子「信じてないな?」

男「当然。うちのね子をどこにやった」

ね子「だからそれは私だって」

男「…………」

ね子「じゃあねー質問をして!」

男「は?」

ね子「私と男しか知らないハズの質問をして!」

男「それで俺に信じさせようってのか……猫のくせに知恵が回るな」

ね子「今は人ですから!」

男「えーと……じゃあ俺とお前の出会いは?」

ね子「実家付近のゴミ捨て場」

男「むっ……」

男「じゃあ……俺がね子にエサをやる時間は?」

ね子「私が食べたいとき!」

男「むむっ……」

男「じゃ、じゃあいつも買ってるエサの銘柄は?」

ね子「知らないよ、そんなの」

男「……っ!」

ね子「信じてもらえた?」

男「いや、それは……」

ね子「なんだよー。私の言うことが信じられないのっ!?」

男「だって猫が人間になんて……」

男「無いわー……」

ね子「私だってビックリしてるんだよ?」

男「ま、まぁ……とりあえずは保留ということで」

ね子「えー……まぁいいや。朝御飯ちょーだい」

男「朝御飯って……まさかキャットフード?」

ね子「あったりまえじゃん。早くちょーだい」

男「そ、それはさすがに……」

ね子「早くしてよ。お腹空いた」

男「……まぁ待て。真偽はどうあれお前は人間なんだ」

男「仕方ないからお前の分も朝飯作ってやるからそれを食え」

ね子「!! いいの!!?」

男「いいもなにも仕方ないだろ」

ね子「いっつもつまみ食いしようとすると追っ払うのに……」

ね子「そっかぁ……男と同じものを食べてもいいんだぁ……」

男「…………」

──
───
────

ね子「!! おいしい!!」

男「それはよかった……箸を持てないのか」

ね子「だってこれ難しいよ……あぁ……玉子がおいしい……」

男「ちょっと待ってろ。スプーンとフォーク持ってきてやる」

ね子「……玉子はもらったことあったけどそのときはこんなに美味しくなかったなぁ」

男「……はい。これ使え」

ね子「ありがとう!」

男「……味噌汁、冷めるぞ」

ね子「冷ましてるの」

ね子「うわぁ……お野菜っておいしい……」

男「お前肉食じゃないのか」

ね子「今は人間だし。それにもともと雑食みたいなもんさー」

男「まぁな……」

ね子「男っていつもこんなに美味しいもの食べてたんだねぇ……」

男「……」

ね子「水をこうぐびぐびっと飲めるのもいいねぇ!なんというか、ほら!のどごし?が!」

男「落ち着いて飲めよ……」

──
───
────

ね子「ごちそうさまでした!」

男「……お粗末様でした」

ね子「さてと……」

男「!? ちょっと待て待て!!」

ね子「? どうしたの?」

男「ズボンを脱げ!!……じゃなくて!そこでトイレをするな!!」

ね子「あ……あぁー!男とおんなじところでトイレすればいいんだね!?」

男「そうだ!!」



ね子「この白いのに座ってするの?」

男「そうだ……ズボンを脱ぐのを忘れずにな」

ね子「はーい!」

男「じゃあ閉めるぞ……」ガチャ

ね子「すっきりした!」

男「あやうく生スカトロを見るところだった……」



ね子「ごろーんっ」

男「!!」

ね子「……どうしたの?撫でてよ」

男「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」

ね子「?」

男「撫でるってどこを!!?」

ね子「? 頭だよ。あと耳の後ろ掻いてー!」

男「は、は、はい!」

ね子「何緊張してるの?」

男「……」カリカリ

ね子「ふにゃーん」

男「……」カリカリムラムラ

ね子「ふにゅぅ……」

男「…………」

ね子「…………」

男「……飯、トイレからの甘えか」

男「お前もしかして本当に……」

ね子「だから何度も言ってんじゃーん」

男「……」

男「……じゃあ俺ちょっと買い物行ってくるから」

ね子「! 何買うの!?」

男「近くのスーパーへ食材の買い出し」

ね子「私も行きたい!」

男「……じゃあまぁ一緒に行くか」

ね子「やったぁ!!男と一緒におでかけだ!!」

男「……じゃあこのジャケット着て」

ね子「はい!」

男「俺の靴下履いて」

ね子「はい!」

男「じゃあ行きますか」

ね子「はい!」

──
───
────

ね子「あ、プーだ!やっほー!!」

男「この猫……知り合いだったのか?」

ね子「うん。子分!」

男「お前ボスだったの!?」

ね子「私強いんだよ?」

男「はぁ……しかしいつもはふてぶてしいこの猫が寄ってくる……」

ね子「子分だからね!」

男「同族にはわかるものなのか……?」

男「着いた。スーパーだ」

ね子「うわぁ……ここに入れるんだ……」

男「来たことあるの?」

ね子「うん。すぐ追い出されちゃったけど」

男「……店員さんごめんなさい」

ね子「では!いざ出陣!」

男「はいはい」

ね子「わぁ……食べ物だらけ!」

男「食べちゃダメだぞ」

ね子「何買うの!?」

男「まずはもやしと……お前、玉ねぎはどうなんだろう……」

ね子「今私なんでもいける気がする!」

男「まぁ人間だし大丈夫か……」

ね子「じゃんじゃん買っちゃおう!」

男「じゃんじゃんは無理だ」

男「じゃあ次は肉だな……」

ね子「おいしそうなのがいっぱい……」

男「……まぁ豚だろ。お、安い」

ね子「こっちのは!?」

男「それは牛」

ね子「これは!?」

男「それは鶏……落ち着け。今日はとりあえず豚だ」

ね子「これ買って!」

男「ウインナーか……まぁこれくらいなら」

ね子「やったぁ!!」

男「卵も買った……調味料は足りてるし……」

男「じゃああと少しお菓子でも買ってくか」

ね子「お菓子!?お菓子ってあの男がよく食べてる薄いやつ!?」

男「ポテチな。それもお菓子だ」

男「俺がよく食べてる茶色いのもチョコレートというお菓子だ」

ね子「私も食べていいの!?」

男「まぁ今は人間だからな……おっけー!」

ね子「やったぁ!!」

ね子「私これ食べたい!!」

男「プリングルスか……こっちにしといてくれ」

ね子「えー」

男「じゃあ俺はポッキーでも……」

ね子「私それも食べたい!!」

男「分ければいいだろ分ければ」

ね子「あれは?こないだ男が食べてた黄色いのは?」

男「あー……プリンか……じゃあ買ってくか」

ね子「やったぁ!!」

男「さて……じゃあレジへ……」

男「……」

ね子「? どうしたの?」

男「……アイスを食べたくなった」

ね子「!! あの男がよく食べてる冷たいやつ!?」

男「そうだ。しかも今すぐ食べたい」

ね子「私も食べたい!!」

男「帰りながら食べる用に買ってくか!」

ね子「そうしよう!!」

──
───
────

男「うぅーっ寒い!!」

ね子「つめたーい!」

男「しかしアイスが美味い!」

ね子「寒いのに!!」

男「寒いからだ!!」

ね子「寒いから美味い!!」

男「その通り!!」

ね子「おいしーい!」

男「暑いときも美味いけどな!」

──
───
────

男「ふぅー……ただいまー」

妹「おかえりー」

男「!! き、来てたのか!!?」

ね子「ただいまー!」

妹「!!?! そ、その人……」

男「え、えーと……その……」

ね子「あ!妹ちゃんだー!!久しぶりー!!」

妹「え、えーと……どこかでお会いしましたっけ……?」

男「ちょっと黙っとけ!!」

ね子「?」

妹「で……どちら様で……?」

男「えーとだな……こいつはだな……」

男「ズバリ!!俺の彼女だ!!」

妹「ま、まさか!!こんな可愛い人が!!?」

男「そうだ!!恋人だ!!」

ね子「ねーねー。恋人ってつがいのことでしょ?そうだったの?」

男「ちょっと黙っとけ!!」

妹「へぇー……お兄ちゃんにこんな可愛い彼女が……」

男「ま、まぁな」

ね子「妹ちゃん!久しぶり!!」

妹「わっ!!?あ、あのっ!!?」

男「ちょっとこらやめろ!!」

妹「……久しぶりというのは?」

男「写メ!写メで顔を知ってたから既に会ってた気になってたんだよ!」

妹「そ、そうなんだ……」

妹「な、何にせよ、こんな糞兄貴ですが、どうぞ仲良くしてやってください」

ね子「今も仲はすごく良いよ!」

男「そ、そうだな……で、妹?なんでうちに?」

妹「ああ、お母さんが大量に林檎買ってきたからお裾分けにと思って」

男「なんだ。言ってくれれば取りに行ったのに」

妹「嘘。リンゴくらいじゃ帰ってこない」

妹「じゃ、彼女さんもいることだし帰るよ」

男「もう帰るのか?ゆっくりしてけば?」

妹「いいよ。もともと置いたらすぐ帰るつもりだったし」

男「そうか。ありがとな」

妹「じゃ、たまには帰ってきてね」

男「気が向いたらな」

妹「それではお邪魔しましたー」

ね子「またねー!!」

男「……じゃあせっかくだし林檎でも向くか」

ね子「あの硬いやつ!?食べたい!」

男「わかったよ。ちょっと待ってろ」




男「できたぞー」

ね子「待ってました!」

男「……こたつを占領しないでくれないか」

ね子「えー?いつもはそんなこと言わないのに」

男「サイズが違う。サイズが」

ね子「おいしーね!」

男「今年の林檎は美味いなぁ」

ね子「……」シャクシャク

男「……」シャクシャク

男「……映画でも見るか」

ね子「映画?」

男「映画」

ね子「……この人たち何してるの?」

男「……キスだ」

ね子「なんで口合わせてるの?」

男「人間はお互い愛し合ってるとそうするの」

ね子「ふーん……」




ね子「キスしていい?」

男「はぁ!!?」

ね子「だって私男のこと好きだもん!」

男「ちょ、ちょっと待て!!」

ね子「男は私のこと嫌いなの?」

男「いや好きだけど……そういうのとは違うんだ!!」

ね子「違う……?」

──
───
────

男「……もうこんな時間か。晩飯にするか」

ね子「ご飯だ!!」

男「じゃあ俺は飯作ってるからその間にお前風呂入ってこい」

ね子「お、お風呂……」

男「……嫌か」

ね子「……嫌」

男「人間は毎日入るんだ。慣れなさい」

ね子「うー……わかった」

ね子「でも一緒に入ろ?」

男「そ、それはダメだ」

ね子「どーして?いつも洗ってくれるのに」

男「今は人間だからダメなの」

ね子「そーなの……?でもやり方わかんない……」

男「……仕方ないな。使い方を教えてやる」

──
───
────

ね子「お風呂終わったよー!ご飯できた?」

男「!! 体を拭け!!服を着ろ!!」

ね子「え?あぁそっかー」

男「俺のジャージがあるはずだからそれを着とけ!」

ね子「はーい」

男「…………」ドキドキ

ね子「ご飯だー!これは何ていう料理?」

男「もやしと豚肉の炒めものと卵焼き」

ね子「たまご?これたまごなの?」

男「そうだよ」

ね子「朝のと違うよ?」

男「あれは目玉焼き。どっちも玉子を使った料理」

ね子「へぇー……いただきまーす!」

男「召し上がれ」

──
───
────

ね子「これなーに?」

男「それは漫画」

ね子「へぇーどうやって使うの?」

男「こっちからページを捲って……お前字読めるの?」

ね子「馬鹿にしないでもらいたい!」

男「へぇ……賢くなったもんだなぁ」

ね子「男が普段何を見てるかがわかって今すごく楽しいよ!」

男「そっか……」

──
───
────

男「……もうこんな時間か。そろそろ寝るか」

ね子「……なんでそっちの椅子に行くの?」

男「お前は布団を使え。俺はソファーで寝る」

ね子「どーして?私男と一緒に寝たい」

男「……ダメだ」

ね子「どーして?」

男「その姿のお前と一緒に寝るといろいろとまずいんだよ」

ね子「よくわかんない……」

男「とりあえず今日から別々に寝るの。おやすみ」

ね子「おやすみ……」

──
───
────

男「もう一ヶ月経つな……」

ね子「? 何が?」

男「お前が人間になってから」

ね子「もうそんなに経つかな?早いねー」

男「すっかり人間らしくなっちゃってまぁ……」

ね子「今や立派な食事係!」

男「ありがたいっちゃありがたいんだけど……」

ね子「けど?」

男「もう猫には戻らないのかな……」

ね子「…………男は、私に猫に戻ってほしいの?」

男「ん……いや、それは……」

ね子「私は……戻りたくないよ……」

男「…………」

ね子「人間になって、見るものも感じるものも全部が新しくなった」

ね子「男と同じものを、見て、感じることを出来るのが」

ね子「たまらなく嬉しいの……」

男「……そっか」

ね子「だから……私は人間でいたい……」

男「…………」

男「……戸籍とかってどうするんだろう」

ね子「……」

男「人間として生きてくなら問題は山ほどあるよなぁ……」

ね子「……ごめんなさい」

男「ま!お前が人間として生きたいなら!」

男「全部俺がなんとかしてやる!」

男「どーんと任しとけ!!」

ね子「……! ありがとう!!」

男「じゃあ今日は久々に俺が飯を作りますかね!」

ね子「お!久しぶりの男の手料理だ!」

男「もはやお前の方がずっと上手いけどな!」

男「じゃあその間に風呂入ってこいよ!」

ね子「わかった!」





ね子「……覗かないでね?」

男「はいはい」

──
───
────

ね子「ん!いい匂い!」

男「今日は豚と茄子の炒めものと卵焼きだ!」

ね子「炒めものと卵焼きしか作れないんだね……」

男「ほっとけ。他にもカレーとかチャーハンとか作れるわ」

ね子「じゃ、いただきまーす!」

男「召し上がれ」

──
───
────

男「ふぅー!ごちそーさん!」

ね子「ごちそうさまでした」

男「しかし箸の使い方もうまくなったなぁ……」

ね子「むしろ男、少し持ち方間違ってるよ」

男「え!?マジで!?」

ね子「ときにさぁ……」

男「何?」

ね子「男って彼女とかいたりするの?」

男「そんなのお前今まで見たことも聞いたことも無いだろ?いないよ」

ね子「だよねぇ……」

男「なんだ?馬鹿にしてんのか!」

ね子「いやいやそんなことはないですよ」

男「ムカつく口調だな」

──
───
────

ね子「あはははははは!!」

男「さ、もういい時間だ。漫画閉じろ。寝るぞ」

ね子「はーい!」




ね子「別に私がそっちで寝てもいいんだよ?」

男「いいんだよ、俺はこっちで。そのうち布団買う」

ね子「そう……?じゃあおやすみー」

男「おやすみー」

──
───
────

ね子「……」

男「……」

ね子「……男……寝た?」

男「……」zzz…

ね子「あのね……私……男に拾ってもらって本当によかった」

ね子「男が家を出るとき、連れてきてくれて本当に嬉しかった」

ね子「……猫のころは、こんな風にいろいろ考えたこともなかった」

ね子「それでね、ひとつわかったことがあるの」

ね子「私は、あなたのことが……」



ね子「好き」



ね子「……寝てるよね」

ね子「愛し合ってはないから……卑怯かも知れないけれど……」

ね子「ごめんね。我慢できないや」




チュッ




ね子「私は……あなたのお嫁さんになりたい//」

ね子「こんな気持ちを……知れてよかった」

ね子「人間になれて……本当によかった」

ね子「……おやすみっ!また明日!」



男「おやすみ」



ね子「………………っ!!////」


fin

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