P「アイドルの名前が覚えられない……」(116)
P「どうしましょう、小鳥さん」
小鳥「ど、どうしましょうと言われても……」
P「俺が765プロにきて、もう3ヶ月」
P「あいつらのプロデュースも軌道に乗ってきて」
P「やっと、信頼関係も築けてきたというのに」
P「あいつらの名前が覚えられないんですよ!」
P「いままで、「お前」とか「おい」とかでごまかしてきたんですが、限界です」
小鳥「え、えっと……。ちなみにコレは誰の写真だかわかりますか?」
P「…………いえ」
小鳥(春香ちゃん、ドンマイ……)
P「これってまずいですかね?」
小鳥「ええ、かなりまずいかと……」
P「覚えなきゃだめですか?」
小鳥「覚えてください、でないと大変なことになりますよ?」
P「そうですよね、もしバレたら信頼関係が崩れますよね」
小鳥「そうならないためにも、なんとしてでも皆の名前覚えてもらいます」
P「でも、いままでも頑張ったんですよ?でも、すぐに頭から抜けてしまって……」
小鳥「一度に覚えようとしないで、1人ずつ、1人ずつ覚えていきましょう?」
P「は……、はい」
小鳥「まず、特徴から覚えていきましょう」
小鳥「この写真は、天海春香ちゃんの写真なんですけど……」
P「あ、あー、はい、あの、はい。わかります、わかります……、一致しました」
小鳥「なにか、特徴というか、目につくポイントは?」
P「リボン、ですかね」
小鳥「そうですねえ、やっぱり彼女はリボンが印象的だと思います」
P「リボン、リボン……」
小鳥「そうです、そうです。春香ちゃん=リボン」
小鳥「リボン=春香ちゃんですよ」
P「春香=リボン。リボン=春香。春香=リボン。リボン=春香。春香=リボン。リボン=春香。」
小鳥「……どうです?インプットできましたか?」
P「……はい、なんとかなりそうです、リボンは大丈夫です。リボンは」
小鳥「それはよかった……。明日からは春香ちゃんは大丈夫そうですね?」
P「はい!この調子で、ちょっとずつ皆を覚えていこうかと思います!」
P「あ、じゃあ俺はそろそろ……」
小鳥「はい、お疲れ様です……、また明日」
P「はい、また明日。お疲れ様ですー」
P「春香=リボン。リボン=春香。春香=リボン。リボン=春香。春香=リボン。リボン=春香……」
小鳥「……」
小鳥「……」
プルルル
小鳥「あ、春香ちゃん?ちょっとお願いがあるんだけど、いいかしら?」
次の日
P(どういうことだ……)
P(リボン=春香という式を完全にマスターした)
P(完全に、天海春香は覚えたはずなのに……どうして)
P(みんなリボンをつけてきているんだ……、しかも二個!)
真「あ、プロデューサー。おはようございます!」
P「お、あ、う、うん、おは、よう……」
P(こいつが天海春香だっけ?)
P(あわわわわ……、みんなが春香に見える!)
小鳥(慌ててる、慌ててる……。やっぱり、リボンしか頭に入ってなかったみたいだわ)
千早「ねえ、春香?」
春香「どうしたの?」
千早「どうしていきなり、皆でリボンをつけることになったの?」
春香「私も、昨日小鳥さんから電話で人数分のリボン用意してって言われただけだから……」
千早「いったい何を考えているのかしら……?」
P(……あれ、ちょっとまてよ?)
P(とりあえず、『天海春香』という名前は頭にある)
P(呼んで返事したやつ、それが多分春香だ)
P(……よし)
P「は、春香」
春香「はい、どうしたんですか?」
P「い、いや。なんで今日はみんなしてリボンをしてるのかなーって」
春香「私もよくわからないんですよね、小鳥さんが……」
P「小鳥さんが?」
小鳥「い、いや!?あ、あのですね?」
小鳥「ほら、たまにはそういったオシャレもいいかなーって、思ったりなんかしないでもないわけでして?」
P「……なるほど、確かに。彼女達は女の子ですしね……、リボンのひとつや二つくらいなら……」
小鳥(し、凌げた…・…?今ので……!?)
千早「どう思う、春香?」
春香「うーん、小鳥さんの慌てようからしてプロデューサーさんを困らせようとしたのは分かるんだけどなあ」
千早「でも、皆がリボンをつけることが彼を困らせることになるかしら?」
春香「ならない……、よね」
真「わかった、プロデューサーはリボン恐怖症なんだよ!」
千早「もしそうだとしたら、今頃逃げ出すか腰抜かしてるんじゃないかしら?」
真「そう、だよね……」
春香「小鳥さん、何がしたいんだろ……?」
小鳥「ごめんなさい。私のせいでパニックになってしまって」
P「いやー、でも。なんとか春香はわかった、ような気がしますよ」
小鳥「本当ですか!?」 ガタッ
P「ええ。名前と顔、一致しましたよ」
小鳥「リ、リボンがなくても?」
P「リボンがあったほうがいいですけど……」
P「そんなことより、次ですよ。次」
P「誰を覚えましょうか?」
小鳥「そうですねえ、でしたら……災難関なんてどうです?」
P「最難関、ですか?」
小鳥「ええ、亜美ちゃんと真美ちゃんです」
P「……」
P「あの、クローン人間ですか?」
小鳥「クロッ……?ち、違いますよ、双子です」
P「お、同じに見える、区別がつかない、なんだこの間違い探し」
P「あ、いえ。今のは別に、どちらかが間違いとか、劣ってるとかっていうわけじゃ」
小鳥「誰もそんな風に思ってませんよ。でも、よ~~くみると、違いがありますよ?」
P「……え?」
20分後
P「み、右と左……!?」
P「そうか、髪を縛ってる位置が違うんだ……!」
小鳥「あの、それ以前に髪の長さが……」
P「小鳥さん、どっちが右でどっちが左ですか!?」
小鳥「え、えーっと……」
小鳥「向かって左が亜美ちゃん、右が真美ちゃんですね……」
P「向かって、向かって…」
P「向かってっていい方、ややこしいですよね」
P「実際の方向とは逆ですし……」
小鳥「あの、髪の長さで覚えてください!」
P「ピョイーンが亜美で、だら~んが真美ですか?」
小鳥「そうです……、これで大丈夫ですよね」
P「はい、亜美と真美も、完全に覚えました。髪で!」
小鳥「あの、特徴ばかりに頼ってちゃ、だめですよ?」
P「……ですよね、今朝みたいなことにならないとも限らないですし」
小鳥「ちゃんと、顔も覚えてください。でないと、プロデュース業にも支障が……」
P「い、いままでやってこれたんですけどね」
小鳥「過去は過去ですよ、未来なんて、どうなるかわからないんですし……」
P「で、です、よ、ね……」
なんだ、名前覚えたらアイドルからご褒美が貰えるとか
そういうSSじゃないのか
P「・・・天海春香?」
春香「正解ですよ!正解!」
P「やった!これで春香は完璧だ!」
春香「これはご褒美ですよ!」チュ
みたいなのだと思いこんでた・・・
小鳥「じゃあ、問題です」
小鳥「この写真は亜美ちゃんですか?真美ちゃんですか?」
P「!?」
P「……え、え!?」
P「ちょ、小鳥さん、そんなのって、そんなのってないですよ!」
小鳥「え、どうかしました?」 ニヤニヤ
P(長さは真美なのに、方向は亜美だ)
P(どうしよう、わっかんねえ……)
P「……わ、わかりません」
小鳥「ふふっ、真美ちゃんの画像を反転させただけですよ?」
P「用意がいいですね……」
小鳥「こういうこともあろうかと思いまして」
P「……あ、服の文字も反転してる!?」
小鳥「顔ばっかりみてましたもんねぇ……」
P「くそっ、なんてことだ、なんたる蒙昧……!」
P「……でも、もう大丈夫です」
P「亜美も真美も覚えました」
小鳥「なら、今日はまだまだいけそうですね?」
P「はい、いけます、何人でもどんとこいですよ!」
小鳥「じゃあ、彼女の名前は分かりますか?」
P「…………」
P「ぬ」
P「温水さん……?」
小鳥「おでこだけじゃないですか!?」
小鳥「わからないながらも、答えを導き出そうとする姿勢はご立派ですが」
P「じゃあ、……えっと、ここまで出掛かってるんですよ」
小鳥「そういう人はだいたい出掛かってません……」
P「じゃあ、この温水洋子さんはいったい誰なんですか!」
小鳥「アイドルにそういう呼び名をつけるの止めてあげてください!」
P「温水さんをバカにしないでくださいよ!」
小鳥「いや、もう温水さんはいいですから……、彼女は水瀬伊織ちゃんです」
P「……水!一文字合ってた!」
小鳥「位置が合ってないので、ダメです」
P「とりあえず、彼女はおでこですね」
小鳥「温水さんの名前がでた時点で、おでこっていうほど可愛いイメージじゃなくなっちゃいましたけどね」
P「つまり、ハゲていると……!?」
小鳥「違いますって!いいですか?彼女は……あとは」
P「いつもぬいぐるに抱えてますよね……えっと」
P「オコジョ?」
小鳥「うさちゃんですよ、色しかあってません」
小鳥(もしかして、まともにアイドルを眼にいれてないんじゃ……)
P「……おでこ」
P「うさぎ……」
小鳥「はい、そうですそうです。覚えられましたか?」
小鳥「でも、伊織ちゃんは律子さんの担当ですし、後回しでもよかったかな?」
P「いえ、それでも覚えておくべきですよ。次は──」
小鳥「じゃあ、この娘はどうですか?」
P「……」
P「胸」
小鳥「胸、ですね」
P「胸!」
P「……いくつなんですか?」
小鳥「72ですよ」
P「Oh……」
P「か、彼女は?」
小鳥「如月千早ちゃんですよ」
P「……胸、72。千早」
P「とりあえず、胸がなくて髪が長い、ですかね?」
小鳥「あと、歌がすごく上手なんですよ?」
P「う、うーん、視覚的じゃないものはなぁ……」
小鳥「でしたら、胸ですかね?」
P「胸ですねえ、……小さいな。いいですね!」
小鳥「あれ?小さい方がお好きですか?」
P「はい!起伏なんかいらない、真っ平らでいいんですよ!」
P「ま、大きいのも好きですがね?」
小鳥(その割には、ちゃんと見てない……)
小鳥(年下には興味ないのかしら?)
小鳥「あの……」
P「なんでしょうか?」
小鳥「もしかして、まともにアイドルの顔みたことないんですか?」
P「ま、ま、ま、ま、ま、まさかっ!?」
小鳥「やっぱり、通りで名前も覚えられないわけですね……」
小鳥「顔と一致させられないんじゃ、仕方ないですよ」
P「うぅ……」
小鳥「むしろ、それでここまでプロデュースできているのが凄いですよ?」
P「だ、だって……」
P「眼中に入れると、間違いを起こしそうで……!」
小鳥「!?」
P「だって、アイドルですよ?ブサイクなわけないじゃないですか!」
P「そんな、若くて可愛い子がいたら……」
P「こう、湧き上がるモノがありまして、でも、それを抑えなくちゃいけないじゃないですか?」
P「ですから、こう、できるだけ、顔をみないように、みないように……」
小鳥「……あ」
小鳥(通りで私の名前は)
小鳥(あれ……?)
小鳥「ちょっと待ってください。アイドルを見なかったのは、間違いが起こらないように、ですよね?」
P「はい」
小鳥「つまり」
小鳥(本当に眼中にないのは……)
小鳥「Oh……」
P「ほら、社長は男性だから大丈夫ですし」
P「小鳥さんと、律子はほら、同僚ですし?」
P「だから、大丈夫なんです、ですが……」
P「アイドルは、アイドルだけは……、自粛してしまうんですよ……」
小鳥「あの、プロデューサーさん?」
P「……」
小鳥「大丈夫ですよ、存分にアイドルのことを見てあげてください」
小鳥「もし、間違いが起こりそうになったら、是非私と!」
P「……小鳥さん」
P「俺、コロコロがないからボンボンでいいや、なんていうのはちょっと」
小鳥「!?」
P「あ、今のは小鳥さんを雑誌に例えると廃刊も同然というわけでは……」
P「ボンボンも好きでしたし、ウルトラ忍法帖とか……」
P「その、なんていうか、代替品扱いも失礼でしょうし」
P「……まあ、社内でそういうことになると、皆にも悪い影響ありそうですしね」
小鳥「……そ、そうですよね」
P「でも、ありがとうございます」
P「おかげで、吹っ切れましたよ……、これからは、ちゃんとアイツらの顔見るようにします」
P「ちゃんと、名前も覚えて。もちろん、間違いもないように」
小鳥「それがいいと思います、その方が彼女達も喜びますし」
P「そうと決まれば、明日から頑張ろうかな、と」
小鳥「明日やろうは馬鹿野郎……」 ボソッ
数週間後
美希「ハニィ~~~~♪」
P「こら、美希っ、……離れろっ!」
千早「あの2人、……というか、美希は急にべったりするようになったわね」
春香「うーん、私の気のせいかもしれないけど。プロデューサーさんと最近よく眼があうの」
真「あ、僕も……、前までは全然そんなことなかったのに」
千早「……それでああなったね」
P(臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前。臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前)
P(俺の理性、がんばれ……)
小鳥「…………」
伊織「あら?どうかしたの、小鳥?」
小鳥「伊織ちゃん……、実は……」
小鳥「最近、プロデューサーさんが顔をあわせてくれなくて……」
おわり
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