談話室
ロン「おい、いいか豚ども!!」
ネビル「ハニー以外が僕らを豚って呼ぶなよ一人勝ち豚野郎!」
シェーマス「この優柔不断ラブコメ豚野郎!」
ディーン「さっさと才女様とどうにかなっちまえ豚野郎!」
ヒンヒン!
ロン「口悪いなうるさいな! いいか同胞!クィディッチ最終戦が近くなって、あの家畜以下のスリザリンどもがどんな嫌がらせを僕のハニーにしてくるか分からない!」
ジニー「意義あり!私のハニーだわ!」
ネビル「僕らのハニーだよ!!!」
ロン「えぇい異議は後で会議場で申し立ててくれよな!マーリンの髭!ともかく僕らはハニーの護衛をいつでもどこでもつきっきりでやることになる!」
ロン「……」
ロン「あぁ、なんだ!いつも通りじゃないかもちの僕で!」
ヒンヒン!!
ハーマイオニー「……なにあれ」
ハニー「聞いていなかった?クィディッチ最終戦が近くて……」
ハーマイオニー「そういうことじゃなくて……もっと、こう。緊張感ある毎日が始まるんだ、って……そう、いつものことよね、えぇ。期待するだけ無駄だったわ」
ハニー「緊張するのは私に言葉をかけられる可愛い豚の姿だけで十分、そうでしょ?」
ハーマイオニー「そうでしょうとも……けど、ハニー。今は平気な顔しているけど……あなただって」
ハニー「なぁに?今更、試合なんかで緊張するわけないわ」
ハーマイオニー「そうじゃなくて……ダンブルドアとの、あれのこと」
ハニー「……」
ハーマイオニー「あれから、連絡はない、けど……ねぇ、ハニー。本当に……」
ハニー「……当然、着いて行くわ。だってそれが」
ハニー「私と、ダンブルドアの約束なんだもの」
ロン「よーし同胞!その日ハニーを護衛する隊はこのバッジをつけるんだ!黒くて大きな犬が描かれたこのハニーがみただけでとびっきりの笑顔になるようなあぁ僕らがハニーを見たら笑顔になるのはそりゃ生理現象なわけだけども」
ハニー「ロン」
ロン「踏みつける方でお願いします!ヒンヒン!!」
ハーマイオニー「……はーぁ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389510460
ハニー・ポッター「私が、魔法使い?」
ハニー・ポッター「賢者の石、ですって?」
ハニー・ポッター「賢者の石は、どうなったのかしら」
ハニー・ポッター「秘密の部屋?なぁに、それ」
ハニー・ポッター「スリザリンの継承者?なんなの、それ」
ハニー・ポッター「脱獄囚の、シリウス・ブラック?」
ハニー・ポッター「『エクスペクト・パトローナム!』」
ハニー・ポッター「『守護霊よ、来たれ!』」
ハニー・ポッター「勝つのは私、そうでしょ?」
ハニー・ポッター「何がこようと、受けて立つわ」
ハニー・ポッター「いつか必ず、来るものは来るのよ」
ハニー・ポッター「来るものは来る、来た時に受けてたてばいいのよ。勝つのは、私よ」
ハニー・ポッター「騎士団、いいえ。私の豚団ね、そうでしょ?」
ハニー・ポッター「『私は、嘘をついてはいけない』……?」
ハニー・ポッター「誰一人だって、欠けさせないわ」
ハニー・ポッター「進まなきゃ、前に。そうでしょ?」
ハニー・ポッター「プリンス、だなんて。なんなのかしら」
ハニー・ポッター「暴いてみせるわ、マルフォイの企み」
ハニー・ポッター「どうして、スネイプなんかを……」
のつづきやで
数日後
ハーマイオニー「あんなに息巻いていたはいいけど……ロン」
ロン「なんだよハーマイオニー、今ハニーと作戦会議中なんだから、こう……僕ちょっとトイレいいかい?」
ハニー「またなの? この私を教室移動中に足をつかせるなんて、あなたらしくないわね」
ハーマイオニー「今更だけどどうしてあなた運動不足にならないのかしら」
ロン「ご、ごめんよハニー!ヒンヒン!けど、さ。あの、試合の事考えると、ウップ……マー、ウップ」
ハーマイオニー「はいはい、ここは本日の一等星隊なネビルたちに任せて行けばいいじゃない」
ネビル「ヒンヒン!ついでに僕が背負ってもいいよ!」
ロン「ふざけろ! じゃ、じゃあちょっとたの、マー髭!」
ハーマイオニー「捨て台詞どうも……相変わらず、クィディッチに対してのメンタルはボロボロね、ロンって」
ハニー「こればっかりは、私が焚き付けてもロンのためにならないわ……去年双子に言われたことだけれど」
ジニー「当日ロンがクッタクタのヘッボヘボでも、私がクァッフルで得点しまくればいいから平気よ!ね、ハニー!」
ハニー「えぇ、そうねジニー。前の試合での活躍を、今度も見せて頂戴?頼れる私の女豚ちゃん?」
ジニー「ヒンヒン!!!」
ハーマイオニー「……あれ悪口にしか聞こえないのはこれも今更かしら」
ネビル「ご褒美だよ」
ハーマイオニー「今度の試合は、レイブンクローとでしょう?それなのにどうしてスリザリンからの妨害がくるの?」
ジニー「チッチッチ、ハーマイオニー。君はまだクィディッチのクの字も分かっちゃいないね」
ハーマイオニー「お兄さんの真似が巧いわね腹立つくらい」
ジニー「スリザリンって、毎試合であのフォイの代役立てていたでしょう?」
ハニー「……」
ハーマイオニー「……えぇ」
ジニー「それで、チーム体制ボロッボロで毎回大量失点負け。この最終戦時点でビリか三位って確定してるのよ」
ハニー「そう、そういうこと。マルフォイはこの一年!クィディッチの試合を欠場してたのよ。どう?ハーマイオニー?」
ハーマイオニー「言いたいことは分かるけど今は流すわ、あなたの発言でもね。それで?」
ジニー「うん。あいつらはほら、やけくそになって……私たちが百点差で負ければ、グリフィンドールが最下位だから」
ハーマイオニー「呆れた……件のマルフォイはまた、おかしなバッジでも作って煽っているのかしら」
ネビル「一等星隊の最要注意人物だからマークしてルフォイだったんだけど、不思議と大人しいんだ。変なの」
ハーマイオニー「あなたの発言も結構なものよ」
ハニー「ほら!マルフォイは!ほら、ね!」
ハーマイオニー「言いたいことは分かるったら、だからその輝く目を向けるのはやめて否定しづらくなるわ」
放課後
談話室
ロン「うー、ハニーが背中にいるんだこのくらいの吐き気はなんだ僕は誰だ僕ぁそうさハニーの一番の豚、うっぷ」
ハーマイオニー「……ロン、静かにしてくれないかしら」
ハニー「そうよ、私の豚さん。上手く『必要の部屋』に入り込むための文言を考えている途中なのだけれど?」
ハーマイオニー「それもやめてもういい加減……我慢せずに行けばいいじゃない。ナメクジでも吐きそうな顔よ、今のあなた」
ロン「はっは、っはだぜハーマイオニー、冗談が上手くなったじゃないか……うっぷ、ご、ごめんよハニー、ちょっと」
ハニー「えぇ。しっかりしなさい、ロン」
ロン「も、もちの、ウィーズリー家五男さ」
ハニー「サラっとパーシーを除かないの。行ってきなさい、ったら。駆け足!」
ロン「ヒンヒ、うっぷ、君の命令なら僕ぁ、すにジェ、ヒンヒン!」
ハーマイオニー「本当、どうにかならないのかしらね……あなたの方もね、ハニー?」
ハニー「なぁに?私の美貌は崩れようがないと思うわ」
ハーマイオニー「そうでしょうとも未来永劫……試験前でたくさんだされた課題を済ませなさい。マルフォイの事は頭から遠ざけて!」
ハニー「いいわよ。さて、ロンはちゃんと走ってお手洗いに行ってるかしら?確認しないといけないわ、そうでしょ?」
ハーマイオニー「……もう、好きにして」
ハニー「いつだってそうしてるわ。『我、ここに誓う。我、よからぬことをたくらむ者なり』」
ハーマイオニー「……娘さんのためだ、って言えばこの地図聞いてくれないかしら」
ハニー「無駄ね。だって、パパだもの」
ハニー「さて、ロンはどこのお手洗いかしら。じっくり探してあげないといけないわ、じっくりね。私の可愛い豚だもの、当然ね」
ハーマイオニー「えぇ、そうね。私は有意義にルーン文字を解読しておくことにするわ……」
ハニー「そうしてて。さて……」
ハニー「(スリザリンの寮……やっぱり、この時間なのにマルフォイはいないわ)」
ハニー「(それで、取り巻きのクラッブとゴイルもきっと……あら?)」
ハニー「(二人は……いるわ。何を……マルフォイが必要の部屋にいる間、その廊下で見張りを、してるんじゃ……)」
ハニー「……」
ハニー「(思い違い、ね……ここのところずーっと、地図を見る度にマルフォイがいない状況に、馴れすぎていたわ)」
ハニー「(いる、じゃない……ロンとは違う階の、男子トイレ)」
ハニー「……」
ハニー「(マートルと……一緒に?)」
ハニー「…………」
ハーマイオニー「うーん、先生もよくこんな課題を出すわね。だってこれ、まだ改名されていない文字列なのに……ハニー、首尾はどう?ロンはそろそろ全速力で帰ってくるころかしらね」
ハニー「えぇ、そうね……ハーマイオニー?」
ハーマイオニー「なぁに?」
ハニー「……今日はなんだか、寒いわね」
ハーマイオニー「? まあ、この季節にしては、そうね……それが?」
ハニー「……先に、ベッドを暖めておいてくれないかしら」
ハーマイオニー「!? な、なに、あのねぇ!?私がいつだってそういう、フリに応じると思ったら!大間違いで!いい、ハニー……」
ハニー「……」
ハーマイオニー「……あ、ふ、ぁーあ!な、なんでかしら!ルーンの解読がとっても難しかったから、ね!なんだかとっても眠たいわ……えぇ、っと!私、先に寝て居るわね、ハニー!いい!?」
ハニー「えぇ」
ハーマイオニー「その……ま、待ってるわ」
ガチャッ バタンッ
ハニー「……」
ハニー「……罪悪感が半端じゃないわ」
廊下
ハニー「私の可愛い豚達と、とってもステキなバッジの護衛隊は」
ハニー「『この私とあなたたちでかくれんぼをしてあげるけれど、どうかしら?』」
ハニー「で、全員オニにして821秒数えさせている間に、談話室は抜け出せたわ」
ハニー「あとは透明マントをかぶって……ロンとハーマイオニーでなければ、この状態でバレること……」
ルーナ「それでね、先生。あたし思うんだ。きっとあの時の……あれ?今だれかいた?」
ダンブルドア「ほっほっほ、おそらく気のいい友人が散歩をしているのじゃろうなぁ、わしらと同じく」
ハニー「……あの廊下はだめね、えぇ。だめすぎるわ。何してるのあの二人まだ夢遊病するような時間でもないでしょう……」
ハニー「……マルフォイたちがいたのは」
ハニー「……ここね」
ハニー「……」
ハニー「……意味がないことかも、しれないわ。だって、まさかマルフォイがこんなところで何かを企んでいるはずがない」
ハニー「けれど……前に、マートルが言っていたことが、本当なら」
ハニー「……」
ガチャッ……キィィッ
ザァアァァァァァァァァァッ
バシャッ!バシャバシャバシャッ!!!
マートル「ねぇ、ねぇやめて!そんな苦しい真似お止めなさいよ!ねぇ!」
マルフォイ「――ブハッ!っはぁ、はぁ。うるさい……こうすると、スッキリするんだ。余計なことを、考えずに済む」
ハニー「……(洗面台に、溢れ続けても水を溜めて……顔を)」
ハニー「(やっぱり……物凄く、やつれてるわ。この間よりずっと……何をしたら、ここまで)」
マートル「ねぇ、ねぇ!話してよ、困ってることを話して……私、力になってあげるわ!助けてあげる!」
マルフォイ「誰も助けられやしない!!」
マートル「なんで、どうして……こんなに震えてるあなたにどうして、誰も」
マルフォイ「僕がやらなきゃいけないんだ!僕が!そうでないと、あの人は……僕を、殺すって言うんだ――!」
ハニー「っ!」
バシャッ ズリッ
ハニー「!(溢れた水で、マント、が……!)」
パラッ
マルフォイ「だから、僕、は…………!?」
ハニー「……」
マルフォイ「『ステューピファイ』!!!」
ハニー「っ!!」
バチバチッ!!バチッ!!
マートル「キャーーー!キャーーーー!やめてーーー!私のために争わないでぇーーーー!」
バーーンッ!!バーーンッ!!
マルフォイ「どうしてっ!おまえが!!お前が!!!!ここに!!!!っ!!」
ハニー「っ、待って、っ、ちなさい、この!」
バチバチバチッ!バキャッ!!
マルフォイ「止まれ!!止まれ!!!分からせてやる!!!もううんざりだ!!『コンフリンゴ!!』」
バーーーーンッ!!
マートル「キャーーーーッ!私の別荘がぁーーーー!」
ハニー「っはぁ、はぁ、待ち、なさいってば!あなたは、何を……っ、黙らせるしか、ないのね!」
ハニー「(『レビコーパス!!』)」
マルフォイ「っ、『プロテゴ』!」
バチッ!!!
ハニー「っ、話を聞きなさい!!マルフォイ!あんたは……一体」
マルフォイ「黙れ!!!!黙れ黙れ黙れ、ポッター!!!」
バチバチッ、バーーーーン!
マルフォイ「お前のせいだ!!お前のせいだ!!全部全部!!!あの時から!!!僕らはあの時からおかしくなった!!全部、お前が!!!!」
ハニー「あなたは――何を」
マルフォイ「お前があの時――僕らの方に、来なかったから!!!!!『クルーシ――』」
ハニー「っ……『セクタムセンプラ!』」
バーーンッ!!
マルフォイ「」
ドサッ
ハニー「っ、はぁ、っ、何、よ……来なかった、って。あたり前でしょ、あなたみたいな……ちょっと?」
マルフォイ「」
ハニー「大人しくして話を聞くきになったのなら、いいけれど……瓦礫の向こう側にしゃがんだままじゃ、話もできないじゃない。顔を……」
マルフォイ「」
ジワァァァァァァッ
ハニー「……なに、これ……そうね……私、のように、赤い……これ……うそ」
ハニー「嘘、でしょ……マルフォイの、顔……腕……そこらじゅう、から……血……あぁ、こん、な」
マートル「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ハニー「っ、マル、マルフォイ、ちょっと、ねぇ!!!あぁ――」
マートル「トイレで人殺し!!人殺しぃいいいいい!!!」
バターーーーーン!!!
ロン「ハニーの困っている気配がする!!!!」
ハニー「っ、おそ、ロン!これ、あぁ、マル、マルフォイが、」
ロン「…………」
バターーーーーン!
スネイプ「何事だ!我輩はこの間の晩のような奇跡が起こらないかと城の探索に忙しいのであって……これは」
ロン「僕がやりましたっ!!!!!!!!!もちのロンでね!!!」
スネイプ「……ミスター・マルフォイは我輩が適切な処置をし、一命を取り留めた」
ハニー「……」
スネイプ「ミスター・マルフォイを医務室に運ばせたウィーズリーが何か喚いていたが、我輩は、この惨劇を誰が引き起こしたのか。それを正しく認識している」
ハニー「……」
マートル「違うの、全て私がいけないの。没後50年を越えてモテ期を向かえちゃった私の」
スネイプ「消えろ眼鏡をかけてるだけでも貴様は気に食わん」
マートル「……」
スゥゥゥゥッ
スネイプ「……よもや、なんとまあ。ポッター、あの呪文は間違いなく『闇の魔術』だ」
ハニー「……そういう類の呪いだとは、知らなかった、の」
スネイプ「それも間違いなく上位であり、強力であり、その呪文の開発者はとんでもなく優秀極まりない人物に違いないことは明らかなほどの、とてつもない『闇の魔術』の奇跡の産物のような呪文だ」
ハニー「……そういう呪いだとも、知らなかった、わ。知るわけない、けれど」
スネイプ「ポッター、我輩はどうやら君をみくびっていたようだ」
ハニー「……」
スネイプ「君の父親は傲慢で、どこまでも身勝手で、迷惑を省みず自分の好きなようにし」
ハニー「……」
スネイプ「いつでもどこでも威張り、この世の全てが自分のためにあるかのように振る舞い」
ハニー「……」
スネイプ「眼鏡をかけ」
ハニー「……それは割りといるでしょ」
スネイプ「とんでもない卑怯者で臆病者で鼻持ちならない頭でっかちだった。そう、我輩は君がその父親と全く同じだ、そう評価していた」
ハニー「……」
スネイプ「ところが、なんともはや……こんな呪文を用いる、と。どうやら……父親に環をかけたクズだったわけですな?」
ハニー「っ」
スネイプ「草葉の陰で君のお父上も嘆いているだろう。いや、喜んでいるのですかな?娘が、己が小心で手の出せなかった領域に踏み込んだことを――」
ハニー「ふざけ、ないで!パパは、そんなこと!それに、私、わたしはこれを!作ったわけでも!ただ、ちょっと……本、で……」
スネイプ「ほう?なるほど……本」
ハニー「……そう、古い、古くて表紙もほとんど読めない、だからタイトルも分からない、そんな、図書館で……」
スネイプ「ポッター」
ハニー「……」
スネイプ「君の教科書を全て、ここに持ってくるのだ。今、すぐ」
ハニー「…………」
談話室
ギィッ
ハーマイオニー「! ハニー!!ロンから聞いたわ、一体――」
ハニー「後に、して。ロン……ロン!」
ロン「ヒンヒン!これだろハニー、はい僕の教科書一揃い」
ハニー「あり、がとう……できる豚ね」
ハーマイオニー「ちょっと、ハニー!説明をして!ロンの教科書で、なにを……」
ハニー「……スネイプは、気づいてる。どういうことかは分からない、けれど……私のあの『上級魔法薬』の教科書の書き込みに、プリンスの、ことに」
ハーマイオニー「!?」
ハニー「でも……あんな言い方。あんな呪い、あんな……怖い、呪いを。褒める、人に。あれを渡しちゃ、いけないわ」
ロン「そういうこったねハニー。件の教科書の処分場所はさ、僕らで話しあっておくから」
ハニー「……えぇ。ごめん、ごめんなさい……ねぇ、マルフォイは」
ロン「顔面蒼白だったけど、元気なもんさ。うわごとでママを呼んでたよ」
ハーマイオニー「……それって瀬戸際じゃ……あ、ご、ごめんなさい」
ハニー「……戻るわ、スネイプのところ。あとでちゃんと、説明するから」
男子トイレ
スネイプ「……これで全部かね」
ハニー「……えぇ」
スネイプ「……この『上級魔法薬』の教科書も、間違いなく君のものだ、と?」
ハニー「……そうよ」
スネイプ「そうか。ポッター、君はいつから『ローニル・ワズリプ』と名乗るようになった?」
ハニー「……」
スネイプ「ミドルネームはどうしたミドルネームは」
ハニー「それはなんでも、いいけれど……それは、そうね。私のあだ名よ」
スネイプ「……なるほど、あだ名」
ハニー「……親しい豚達が、私のことをそう呼ぶわ」
スネイプ「分かりたくもない事柄ですな。さて、ポッター。我輩は君がとんでもない嘘つきのペテン師であると判断する」
ハニー「……」
スネイプ「で、あれば。今学期一杯、毎週土曜日に罰則を受けるに値する、そう思わんかね?」
ハニー「私は……それは、罰則は、そうでしょうけれど。その、日……まさか、そんな」
スネイプ「そうだ、ポッター。今週の土曜から。夜は課題にあてる時間であろうから、よって朝からみっちりと……おや、おや、おや。なんとまぁ」
ハニー「……そんな」
スネイプ「哀れなグリフィンドールよ。今年のクィディッチカップは……最下位でしょうなぁ?」
ハニー「…………」
談話室
マクゴナガル「……あなたがあの呪いの効果を理解していなかった、その点は理解しています。当然です」
ハニー「……」
マクゴナガル「ですが、ポッター。退学にならなかったのは幸運だったとお思いなさい」
ロン「そりゃハニーだか、はい先生黙ってます」
マクゴナガル「よろしい。罰則の件ですが、私はスネイプ先生の提案を全面的に支持します。よいですか、ポッター。あなたの行動が軽率だったことには代わりありません」
ハニー「……はい、先生」
マクゴナガル「今晩は夕食に降りない方がよいでしょう。嘆きのマートルが無駄に吹聴し、ミス・パーキンソンがヒステリーになっているところにあなたが現れては、大広間が阿鼻叫喚でしょうから」
ハニー「……」
マクゴナガル「……言わずもがなですが、しかと、反省なさい。いいですね? ミス・グレンジャー」
ハーマイオニー「はい、先生」
マクゴナガル「あまり甘やかさない」
ハーマイオニー「はい、でも、先生……ハニーがその、帰ってきてからずっと、ロンの背中につっぷしていたら、その、抱きしめずには……」
ロン「分かる分かる、僕背中貸してるからできないけどそりゃもうハーマイオニーごと……」
マクゴナガル「真面目に」
ハーマイオニー・ロン「「はい、先生」」
ハニー「ぐすっ……っ」
ハーマイオニー「……ハニー。泣き止んだようだから、そろそろ私も、えぇ。厳しくいくわよ」
ハニー「……」
ロン「おいやめろよ、これ以上……」
ハーマイオニー「私たちが言わずに誰が言うの! いい、ハニー。私は何度も言ったわ、『あのプリンスは絶対に怪しい』って」
ロン「何かあるかも、とかそんなもんだったじゃないか!『闇の呪文が~』なんて一言も!君は魔法薬で一番の成績じゃなくなった事についてばっかり――」
ハーマイオニー「そうよ!私も間違ってたわ!あの本は怪しいどころか!『危険』だったのよ!!」
ジニー「もうやめてよ、ハーマイオニー……それにロン、ハニー。こっちに来て。土曜の試合、ハニーが抜けたから作戦を考えなおさなきゃ」
ハーマイオニー「そんなの、どうだっていいでしょう!?」
ジニー「どうだってよくない。それに、話を聴いたらマルフォイは『許されざる呪文』を使おうとしてたそうじゃない!むしろ、えぇ!ハニーがいい切り札をもっててよかった、ハニーのためを思うならそう考えられない?」
ハーマイオニー「あんなものがなくったってハニーは切り抜けたはずよ!余計な、プリンスなんかの助言がなくっても!」
ロン「魔法薬の授業以外でも、って?」
ハーマイオニー「黙りなさい!それに、そうよ!いい切り札!?結局ハニーはこんな目にあってるじゃない!折角、えぇ、優勝できるチャンスも棒に――」
ジニー「あら、今更クィディッチの事がわかるみたいな言い方しないで。自分が面子を失うだけよ。それに、さっきと言ってることが違ってるの分かってる?あと、棒に振った?冗談やめて!この、私が!ハニーに代わって優勝させてみせるに決まってるでしょ!!」
ハーマイオニー「~~~っ!!」
ハニー「……あの」
ロン「……胃が痛い」
ジニー「ハニーを心配してるんだろうけど、今のしっちゃかめっちゃかな頭じゃ責める言葉になるだけよ。落ち着きなよ」
ハーマイオニー「……ふーっ。それも、えぇ。そうね」
ジニー「本当ならハニーが落ち着かせてくれるんだろうけど、今のハニーじゃ……」
ハニー「……ぐすっ」
ロン「どうぞれないしな、あぁ」
ハーマイオニー「そもそも落ち着くと真逆の行為よあれは……あの、ハニー」
ハニー「……分かってる。ごめんなさい……ずっと、言われてたのに」
ハニー「……この本は、捨てなきゃいけないわ」
ハニー「……」
ハニー「ロン」
ロン「オーケーハニー!よぉし一番豚ロナルドことこのハニーの羊が見事この教科書を全部……ゴクリ」
ハーマイオニー「死ぬわよ今度こそ」
八階の廊下
ジニー「結局、さっきの功労が讃えられて私がみんなと話あった本の処分場所に案内したわけだけどハニーと二人きりとかやったねありがとうパーシーの論破スキル!」
ハニー「色々学んでいたのね、えぇ……ここ……必要の部屋?」
ジニー「うん。ここに……ホグワーツの生徒が隠し事する時に出現させるいい部屋があるんだ、って」
ハニー「そう……」
ジニー「ダンブルドアが」
ハニー「…………あの豚この部屋知らなかったとか前ほざいていたけれど」
ジニー「先生らしいよね、うん。えーっと……『教科書を隠す部屋が必要です――教科書を隠す部屋――隠す――』」
必要の部屋「」スゥゥゥゥゥッ
ハニー「……久しぶりに、ここにちゃんと扉が現れるのを見たわ」
ジニー「そうなの? さ、行こう」
ギィィィィッ
ガチャガチャッ カタカタ
カチャカチャ ピーヒョロロロロ
カチカチカチカチ ピーフォイチチチッ
ハニー「……物で溢れてる、わね」
ジニー「このお城が出来てから千年くらい、ずーっと色んな生徒の都合の悪いものを引き受けてきたんだろうもの……さ、奥に」
ハニー「えぇ……ジニー?」
ジニー「なぁに?」
ハニー「さっき言ってくれたことは、本当かしら。私の代わりに?」
ジニー「代わり、じゃないわ。私『が』優勝したいの。それで、スネイプの奴に地団駄踏ませてやるわ」
ハニー「……ふふっ。ねぇ、ジニー。とっても頼りになる子になったわね」
ジニー「そう?ありがと!でも、ハニーのおかげかな。ねぇ、こことかどうかな……」
ハニー「けれど、あと少しだけ。足りないわ」
スッ
ジニー「えっ?なん――――!!!!!」
ハニー「――っふぅ。勇気の出るおまじない……試合、頑張りなさい、ジニー」
ジニー「……」
ハニー「ジニー?」
ジニー「私、チャーリーを超えるわ」
ちょいメシ
20時には戻る
土曜日 朝
スネイプの研究室
コンコンッ
ハニー「……失礼するわ」
スネイプ「おや、おや。ポッター、どうしましたかな?グリフィンドールは今日は大事な試合では?え?」
ハニー「……そのことなら何も問題ないわ。ご心配どうも、『先生』」
スネイプ「……ふんっ。さて、罰則だが……この古い書類棚の整理をする者を、フィルチさんが前々から探していた」
ハニー「……蜘蛛の巣かかって、見るからに、もう使われていない、っていう風だけれど」
スネイプ「貴重な記録であり、また、忘れてはならぬものであるために整理が必要だそうだ。よいかね、この書類は」
ハニー「……」
スネイプ「君とご同類のホグワーツの悪童どもと、その悪行に関する記録である。古い書類であるからして、インクが薄くなったり鼠によって齧られたりしている。それらを全て書き直すのだ、魔法は使うな」
ハニー「はい、『先生』」
スネイプ「よろしい。千十二番から千五十六番までの棚からはじめたまえ。おそらく見知った名前が見つかることだろう、せいぜい楽しみたまえ」
ハニー「……千十二番から、千五十六番」
スーーッ パラッ、パラパラッ
ハニー「……」
ハニー「『ジェームズ・ポッター……バートラム・オーブリーに対して頭が二倍に膨らむ呪いをかけた廉でつかまる……』パパ……」
スネイプ「死んでも偉業の記録を残す、なんとなんと、君は誇りに思うのでしょうなぁ?えぇ?」
ハニー「……っ、初めて、いいかしら」
スネイプ「あぁ、そうしたまえ。そして……おや?クィディッチも開始の時間のようですな。君抜きの、哀れなグリフィンドールチームの」
ハニー「哀れなのはレイブンクローの方よ、おそらくね」
カリカリカリカリカリ
ハニー「……『ジェームズ・ポッター……廊下をクソ爆弾だらけにした廉で掴まる……「彼が糞でも見つけたような顔をしたものだからね」と言い訳……糞のような罰則』」
・
・
・
ハニー「『ジェームズ・ポッターとシリ――』シリウス!」
スネイプ「黙れポッター罰則中に立ち上がるな資料を握り締めるな五点減点」
・
・
・
ハニー「『ギルデロイ・ロックハート クィディッチ競技場に巨大な自分のサインを書いた廉で掴まる』あぁ……ギルデロイって、そう、元から、そう、アレだったのね……」
・
・
・
ハニー「『ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックとリーマス・ルーピンとピーターなんとか、朝食のチョコレートプティングから大量のナメクジを出させた廉で掴まる』」
ハニー「……『尚、ルーピンは「君たちはオムレツからと言ったはずだ!僕に!!チョコレートを汚させたな!!」と他三人を殴りにかかった廉で二重の罰則』 リーマス……」
・
・
・
・
・
・
カリカリカリカリ
ハニー「……(退屈な作業だわ……えぇ、それは、パパたちの悪行を見せ付けられていやな気分では、あるけれど)」
ハニー「(何時間も、ずーっとこのまま……試合は、どうなったのかしら)」
ハニー「(もう、十二時半……早い試合展開なら、とっくに……)」
スネイプ「……もうよかろう。我輩は君のために昼食の時間を割きたくはないのでね」
ハニー「……こちらこそ、だわ」
スネイプ「どこまで終わったのかを覚えておきたまえ。来週の土曜日はその続き、今学期中ずっと、十時から。遅刻すれば容赦なく減点と思いたまえ」
ハニー「はい『先生』」
スネイプ「帰りたまえ。あぁ、偉大な父から学んだ悪行を試さないようにお願いいたしますぞ?ポッター」
ハニー「……そうしてさしあげるわ」
バタンッ
ハニー「……さぁ、談話室に行かなくっちゃ。優勝杯は……」
ハニー「……ふふっ。結果は分かって、いるけれどね」
談話室
ハニー「『クイッド アジス(なにごとやある)?』」
太った婦人『今に分かるわ!』
パカッ
ワァアアアアアアアアアアアアア!
ヒンヒーーーン!ヒーーーーン!!
ハニー「あら、なぁに?数時間ぶりに私を見つけて、歓喜の叫びをあげるのは当然のことだけれど」
ロン「そりゃそうさハニー!なんたってこれを君に報告できるんだからあぁなくったって僕らはいつだって君のためにヒンヒンヒン!勝ったよ、ハニー!僕らの優勝だ!!」
ハーマイオニー「ジニーは、凄かったわ!えぇ、それはもう!」
ハニー「えぇ、聞かせて」
ハーマイオニー「三百点リードして勝たないといけないからって……見つけたスニッチをある時は箒の先でチョウの鼻先から払いのけて」
ハニー「……えぇ」
ロン「ある時はクィディッチローブで覆って、ある時はビーターのクラブで星になるまでかっ飛ばして」
ハニー「……うん」
ネビル「チェイサーにパスの指示を出しつつチョウにウロンスキー・フェイントを成功させて」
ハニー「……」
ハーマイオニー「最終的に大声で、こう……」
ロン「ヒンヒンって、『ハニーの唇の柔らかさについての語り』を豚一同に聞かせながら、うっとり顔でスニッチ取ったよ」
ハニー「チャーリー、あなたの夢の一つはジニーが叶えてくれそうよ」
ハニー「それで、そのジニーは?」
ロン「あっちさ。なんだかさ、ディーンの奴が指示を出された事が気に入らなかったみたいで……絶賛別れ話中だよ」
ハーマイオニー「というか唇の柔らかさってどういうこと、ねぇ、ハニー、もしかしてあなた……あー、もう」
ハニー「……ジニー!」
ジニー「あっそ、さよなら!精々するわ!これで……あ、ハニー!聞いて!私、やったわ!やった!」
ハニー「えぇ、聞いたわ。よく頑張ったわね」
ジニー「それはもう、だってあなたから勇気をもらったもの!ハニー!」
ハニー「えぇ、そうね……ねぇ、ジニー。何度でも言うわ。とっても、いい女になったわね」
ジニー「そうかな、そうかもね!だって、ハニーと……きゃぁ!?」
ハニー「えぇ、そうね。最後の総仕上げ、かしら……さぁ、ジニー?成長した姿、みせて……?」
ジニー「あっ、ちょ、だめ、ハニー……だ、だって、まだ心の準備、あぁ、ううん、そんなの四年前からずっと、キャノンズの合言葉並みに祈っていた、けど……!」
ロン「つづけて!!!」
ネビル「どうぞ!!!!」
ヒンヒン、ヒーーーーーーーン!!!
ハーマイオニー「……やっぱり」
六月
ジニー「ロミルダ・ベインったら、何度も聞いてくるのよ?『ハニーのおへそのあたりにパフスケインのタトゥーが入れてあるっていうのは本当か』って」
ハーマイオニー「ないわね」
ジニー「うん、だからそれはハーマイオニーの方よ、って言っておいたわ」
ハーマイオニー「余計なことを広めないで!」
ハニー「えぇ、そうね。あるのはもっとステキな印だものね?」
ジニー「ねぇ?」
ハーマイオニー「あぁ、なんだかハニーが二人になったみたいでもう嫌……嫌じゃないけど、もう」
ロン「あぁ、物凄く羨ましい会話をしている。どうして僕は女の子じゃないんだろうか。これもう六年言ってるんだけどさ、いい加減目覚めろ僕の魔法力マーリンの髭」
ハニー「あら、ロン?羨ましいのは誰の立場かしら?」
ジニー「私とハニーのこと?もう一歩手前じゃない、頑張れ」
ロン「無茶言うな!いや、ハハ……何言ってんだろうね全く、なあハーマイオニーさん」
ハーマイオニー「そ、そうねローニル……」
ハニー「それ、一応スネイプの中じゃ私のあだ名ってことになってるわ」
ロン「……ハッ、つまり僕がハニーでハニーが僕で……なんてこった、ありがとう僕の魔法力」
ハーマイオニー「錯乱の呪文なら実現したみたいね、えぇ」
ハーマイオニー「それより、いい?ジニー、あなたはOWL試験が近いでしょ。勉強しないと」
ジニー「今の私に試練と名のつく壁は全て眼下の光景も同然よ」
ハーマイオニー「とてつもなくかっこいい啖呵をどうもありがとう勉強しなさい。それで、ハニー?プリンスのことでお話があるわ」
ロン「また蒸し返すのかい?もういいじゃないか、あの教科書はもうどこともしれないガラクタ山ん中なんだから」
ハーマイオニー「正体は探っておくべきでしょう? ねぇ、これを見て。古い新聞の切り抜きと、その写真」
ハニー「……『アイリーン・プリンス。ホグワーツ・ゴブストーンチームの女性キャプテン』あー……凛々しい眉ね」
ロン「ゲッジゲジのね。こりゃひどいや、注意書きがなきゃ男かと思った」
ジニー「髪もべたべたしてそう」
ハニー「知らない人をあまり悪く言わないの」
ロン「ヒンヒン!」
ジニー「ヒン!」
ハーマイオニー「そこのところは変わらないのね……そこじゃなくて!名前を見て、名前!」
ハニー「……アイリーン・プリンス」
ハーマイオニー「そう!ほら、前に言ったでしょう?プリンスは女の子かもしれない、って!」
ロン「だからなんだってのさ……それに、僕には分かるぜ。あの字の書き方はさ、ありゃ男だよ、うん。男だから分かる」
ハーマイオニー「ふーん、そう!女の子であんなに頭がいい人がいるって認められないってわけ?」
ロン「はぁ?六年間もずーーっと君を見てた僕に言うのかい、それ」
ハーマイオニー「えっ、あっ……そ、そうね、えぇ」
ロン「……いや、そこでそんな反応されても、あー、いや、うん……お、おい!ハニーは、いい!おいジニー!ニヤニヤすんな!マーリンの、髭!」
ハニー「プリンスの正体が女性であろうと男性であろうと、もういいわ。確かに、お世話にはなったけれどね……」
ハーマイオニー「もう少し調べてみれば、仮に彼女が『魔法薬』について受賞の記録でも見つかれば決定的ね……ジニー、手伝ってくれる?」
ジニー「なんで私?」
ハーマイオニー「この一年近くハニーの信頼と関心を集めて仕方なかったくせに最終的に怖い思いをさせた、女がいるかもしれないの」
ジニー「なにそれぶっ殺だわ」
ロン「女の子ってたくましいなぁ。このたくましさが僕が女の子になるには足りないのか……二人で行っちまった」
ハニー「全く、この私のためってなれば当然だけれど……あら?」
ネビル「ヒンヒン!ハニー、よかった、ここにいたんだ!」
ハニー「ハァイ、ネビル。どうしたの?」
ロン「ハニーを一定期間見つめられなかったことによる発作かい?分かる分かる」
ネビル「それもあるけど、これ……!ダンブルドアから、手紙を預かってきたんだ!君にだよ、ハニー!」
ハニー「!」
ロン「こりゃ……」
ネビル「中身を見るなんて無礼なこともちろんしてないけどさ。やっぱりハニーはすごいね!ダンブルドアからの用事だなんて……ねぇ、なんの――」
ロン「へーいネビル、よくやったぜ同胞。さすが漢だね!奴さんは元気だったかい?ダンブルドアはさ!」
ネビル「え? あぁ、うん!相変わらず。それで……そうだ、ハニー!僕来年から、クィディッチ選手になれないか頑張ってみるよ!」
ハニー「そうね……そうし、え?」
ロン「君のほうこそどういう話さ」
ネビル「あ、はは。ほら、僕最初の時があれで、飛行が苦手だろ?その、もう六年だし少しくらい、って練習してる時に、ダンブルドアがやって来て」
ネビル「もう諦めようかと思ってたんだけど……『組分けの時のように、君の自らの可能性を自ら手放すことがないように。しかと励むのじゃぞ』って」
ネビル「ハハハ……僕さ、組分けのとき、ずーっと『僕なんてハッフルパフでいいです!』って言ってたんだ」
ロン「そりゃ、アーニーたちに失礼だなあ」
ネビル「うん。けどさ、僕諦めないよ!選手になって、空から堂々とほら貝吹くんだ! ジニーみたいに、かっこよく!」
ロン「……」
ハニー「……」
ネビル「……うわ、わわわ!ち、ちがうよ!最後のはね!えっと、それじゃ!ハニー、確かに渡したから!ヒンヒーーーン!」
ハニー「……どうなの、ロン?」
ロン「マーリンの髭」
ハニー「いいじゃない。ネビルは可愛い豚だし、それに頼りになるわ」
ロン「いや、ディーンと別れてまだほんの少ししか経ってなにのにまさかそんなことになるとは思わないけどね僕ぁ」
ハニー「むしろ別れたから、じゃないかしらね……それより」
ロン「そうそう、ダンブルドアからの手紙……『今晩、なるべく早く校長室で』 おったまげー!ハニー、これって!」
ハニー「……えぇ、そうね。きっと……見つけたんだわ。なるべく早く……すぐ、行かなきゃ!」
ロン「ヒンヒン!お安いご用さハニー!さぁ、しっかり掴まって!」
ハニー「……いいえ、いいわ。一人で。ロン、ハーマイオニーに伝えておいてくれる?まだ出発かは、分からないけれど」
ロン「……君がそう言うなら。君こそ、ダンブルドアに伝えてくれよ。ハニーに怖い思いさせたら、その821倍僕らでひどい目に合わす、ってね」
八階の廊下
ハニー「誰もいないわね……当然かしら。外出禁止時間まで、あと十五分とないもの」
ハニー「きっと、生徒も先生もほとんど……」
バターーン!
「キィヤァアアアアアアアア!!!ひどい!あんまりですわ!あんまりです!」
ハニー「!? あっちの、廊下の向こうから……誰が……っ!」
タッタッタッタッタ
「わたくしはちょっと、貯蔵しておこうと思っただけで!まったく、この――」
バッ!
ハニー「大丈夫!?何が……あ」
トレローニー「俗世の野蛮人はこれだから!あなたにはグリムが憑いていますわ!ケッ!! おや?まぁまぁ」
ハニー「……こんばんは、トレローニー先生。床にのびて、壁に悪態ついてどうしたのかしら」
トレローニー「これはこれは、赤き災厄を纏いし娘――」
ハニー「いい加減それやめてってば」
ハニー「そう、それじゃ先生は……『必要の部屋』を使おうとしたのね」
トレローニー「よもや生徒であの神秘の部屋の存在を知っている人がいるとは、思いませんでしたわ――あぁ、肩をどうもありがとう。わたくし、少し俗世の波動にやられて足がおぼつきませんの」
ハニー「そういうことにしておいてあげるわ。このシェリー酒の臭いはなかったことにしてね」
トレローニー「えぇ、わたくしあの部屋を度々利用しますの。時には思想にふけり、時には貯蔵、あー、個人的なものを置いておくために」
ハニー「どこからこれを仕入れてくるのかはよーく分かったわ」
トレローニー「ところが、先客がいましたの。まったく無礼千万ですわ……歓声をあげていたから『そこにおわすのは現世のうつろいゆく者かしら、それとも未来の波長がもたらす影かしらん――?』と呼びかけただけだというのに」
ハニー「どういう呼びかけなのそれ……歓声?誰かが、あの部屋で、よ、喜んでいたの?」
トレローニー「えぇ、それはもう……ところが杖が空を切る音がしたと思ったら、気がつくと真っ暗になって、あの廊下に吹き飛ばされていたのですわ!まったく、もしやわたくしの内なる眼を狙う刺客……っ!」
ハニー「それじゃ逃がすわけないでしょう……ねぇ、先生!それは男性だった、女性だった!?ここの生徒なの!?それとも、もっと……!」
トレローニー「そ、そういった現世の俗な情報は、ちょっと――あぁ、でも、そうですわ。わたくしの、内なる耳が」
ハニー「新しい単語出たわね」
トレローニー「おかしな音を聴きましてよ――わたくしが、あの扉から投げ出される時に。『バターン!』でなく」
ハニー「……」
トレローニー「『バフォーイ!』と」
ハニー「……とってもとっても有意義な情報をありがとう。先生、一緒に来て……ダンブルドアに今の事を、話しに行きましょう」
トレローニー「わたくし、あまり気が進みませんわ。ダンブルドアに会いますのは」
ハニー「何を言ってるの。伝えなきゃ、今の、あー、あなたの偉大な発見を」
トレローニー「わたくしはいつだって偉大な前兆を発見していますの。ですけど校長は、わたくしのカード占いの結果を聞いてもてんで、鼻をほじるだけですわ!」
ハニー「……やりそうだけれど」
トレローニー「何度も何度も、どんな並べ方をしても……稲妻に撃たれた塔、災難、大惨事、刻一刻と迫っている、と」
ハニー「そうね」
トレローニー「あの駄馬――失礼あそばせ――あのケンタウルスにここまで詳細な占いができまして!?え?あのクソ馬、失礼、駄馬はもう!あぁ、いえ、ケンタウルスは」
ハニー「訂正しないから駄馬で言いと思うけれど」
トレローニー「そう、あの駄馬はおそらくわたくしを分不相応にも見下していますわ!前に言われましたもの!『不思議ちゃんが通用するのは十代まで』……と!!なんのことやら!!!!」
ハニー「……なんのことやら」
トレローニー「わたくしが曾々祖母の才能を継いでいない、とでも思っているのでしょうね、えぇ!そんな嫉妬には長年なれっこですわ! そういった文句を言われた場合、わたくしがどう切り替えしているかお聞きになりたい?」
ハニー「……あなた死にますわ、とかかしら?」
トレローニー「それは最後に。こうですわ……『わたくしの占いの腕は、あのダンブルドアが教員に採用し!そして長年この城に置いているその事実が証明している!』と!」
ハニー「……あー」
トレローニー「わたくしの面接の時のことは、はっきり覚えていますわ。今から、そうですわね。十五年以上前になるかしら」
ハニー「えぇ、そうでしょうね」
トレローニー「わたくしはホッグズ・ヘッドという旅籠に泊まっていましたの。ところであなた、あそこはお勧めしませんわ。ひどいダニに一晩中悩まされ……まぁわたくしは前日から予見していましたけど、あえて試練を、えぇ」
ハニー「そうでしょうね。ねぇ、ちゃんと足を動かしてくれないかしら。早く校長室に行かないと」
トレローニー「そうそう、校長。ダンブルドアは、わたくしが泊まっている部屋までわざわざ来てくだすったのですわ。これはもう合格間違い無し好感触やったねシビル!……と、水晶が」
ハニー「……随分フレンドリーね水晶」
トレローニー「ですが、えぇ、白状いたしますとね。ダンブルドアは面接の始め、あまり『占い学』に気がなさそうでしたわ。何度か質問を受け答えしているうち、わたくし、少し気分が悪くなりましたの。それで……その後」
ハニー「えぇ、それで……あ」
ハニー「(そうよ、これってあの……予言の時の話、ということよね)」
ハニー「(初めて、トレローニーの方からその話を聞けるわ……予想外だけれど、幸運ね)」
ハニー「(それで、ここからトレローニーは……あら?でも、予言をする状態のときの、記憶って……)」
トレローニー「その後、あの!セブルス・スネイプが邪魔しに現れたのです!!」
ハニー「……」
ハニー「……えっ?」
ハニー「今……え?スネ……スネイプ?」
トレローニー「そう!わたくしが、ちょっとこう、その日食事をしていなかったものでボーっとしていましたら、外のほうが騒がしく!」
ハニー「……」
トレローニー「それでもわたくしは、なんだかそうですわね、無意識に何か呟いていたような……その後、急にドアが開いて!わたくしおどろいて、眼をさましましたわ!」
ハニー「……」
トレローニー「バーテンがスネイプを羽交い絞めにして、入ってきましたの!『こいつが扉の外で盗み聞きをしていた』と!」
ハニー「……」
トレローニー「スネイプは、何とか戯言を並べ立てていましたわね。部屋を間違えただの、靴紐を結んでいただけだだの」
ハニー「……」
トレローニー「戯言ですわ!わたくしは知っていましたの。スネイプはあの時職を求めていたんですわ。だから、わたくしの完璧な面接を盗み聞きしてやろうと思ったのだ、と!」
ハニー「……」
トレローニー「その後、ダンブルドアはわたくしを採用しようとする気がぐっとましたようでしたわ。さもありなん。気取らず才能をひけらかさないわたくしと、鍵穴から盗み聞きするようなずうずうしい若い男との明らかな相違がわかったのだと……あ、あら?」
ハニー「……」
トレローニー「は、ハニー?あら?校長室に一緒に行くのでは?歩みを止めて、どう……だ、大丈夫ですの?」
ハニー「あなたは自分の部屋に帰ってもらえるかしら、先生。私、ダンブルドアと二人で、話す事があるの」
トレローニー「でも――」
ハニー「ここに、いなさい!!!いいわね!!!!!」
トレローニー「ひっ!!あ、悪魔!!!め、眼が悪魔のようですわ!!!あぁ!ついに取り憑かれて――!」
ハニー「えぇ、そうね!!そんな気分だわ!!!まったく!!!!!!あの……あの豚、以下!!!!!!!!!!」
校長室
ドンドンッ! バターーン!
ダンブルドア「入って――おぉう!?」
ハニー「失礼するわ!文句ないわよねこの豚!!!」
ダンブルドア「どう、したねハニー……あー、意気込みは買うがのう」
ハニー「意気込み!?えぇ!今なら私、なんだってやってやるわ!!!」
ダンブルドア「……ハニーよ。恐怖を自暴自棄によって紛らわすのは、得策とは――」
ハニー「そんなんじゃないわ!ただ、私は!私は、怒っているの!!!」
ダンブルドア「――なんの」
ハニー「セ ブ ル ス ・ ス ネ イ プ ! ! ! !」
フォークス「フィヒン!?」
ダンブルドア「……」
ハニー「黙っていたわね……隠していたわね!!全部全部私に話すって!!約束したのに!!!約束したのに!!!!」
ダンブルドア「……君の予言や、奴に関することは、言ったはずじゃ」
ハニー「えぇ!!!それで!!!!予言を聞いたあいつは!!!!!ヴォルデモートに!!!!パパとママを殺させた!!!!!!!」
ダンブルドア「……」
ハニー「そんな人をここで教えさせることを!!!!そんな人を信じることを!!!そうね!!!一々私に!!説明する必要なんてないわよね!!!!」
ハニー「冗談じゃないわ!!!!!!!!」
ダンブルドア「……ハニー、わしの言うことをよく聞きなさい」
ハニー「ふーっ、ふーーっ、何よ!!」
ダンブルドア「スネイプ先生は、酷い間違いを――」
ハニー「酷い間違いをおかしただけ、だなんて言わないで!!!言わせないわ!!!その間違いで!!!!!パパと、ママは!!!!」
ダンブルドア「酷い間違いを犯したのじゃ。よく聞きなさい。スネイプ先生は、予言の前半しか聞いておらなんだ。後半は、あの店のバーテンともみ合っておったからのう。そのことは前に違う形で説明したはずじゃ」
ハニー「ふーっ、ふーーっ」
ダンブルドア「その時確かに、スネイプ先生はヴォルデモート卿の配下じゃった。その後すぐに、己が主人の下へ予言のことを報告したのじゃ。じゃが、どうしてスネイプ先生に奴が獲物にする家族のことを知る由があったじゃろう――」
ハニー「どうしてかしらね!どうしてかしら!偶然!!偶然!!!スネイプが心の底から憎んでるパパに関することだったのかしら!!!偶然だったのかしら!本当に!!!」
ダンブルドア「……それは」
ハニー「第一!!!だからなに!?!?!?あいつが、あいつが!!!自分以外の誰かを!!パパとママや私じゃなくっても!!!ヴォルデモート卿に売った!!殺すようそそのかした!!!!その事実が変わるわけじゃない!!!!あいつは、あいつは酷い人よ!!!!!」
ダンブルドア「……あー……それはうん、ぐうの音もでんけども」
ダンブルドア「ヴォルデモート卿が、リ、あー……自分の知る人物を狙っている、標的にしていると気づいた時、スネイプ先生は深い自責の念にかられたのじゃ。いくら、そう……過去に何かあったとしても」
ハニー「……っ」
ダンブルドア「スネイプ先生は激しく後悔した。これは君が想像もできんほどじゃろう。人生最大の後悔をし、そして、それ故にスネイプ先生は戻ってきた……この城へ。わしの陣営にのう」
ハニー「けれど、あいつは!あなたが認めるくらいの、優秀な閉心術士!そうでしょ!?」
ダンブルドア「そうじゃのう」
ハニー「どうして確信できるわけ!?私、私には分かるわ!あいつも、ヴォルデモートもスネイプを自分の腹心だって確信してる!どうして、スネイプがこっちの味方だって言えるの!?だって、あいつは……あいつは!!!」
ダンブルドア「それは、わしがスネイプ先生信用しておるからじゃ」
ハニー「~~っ、私は違うわ!!!あいつは、この城で!そうよ、今も!!ドラコ・マルフォイと一緒に何か企んでる!その企みが、さっき……」
ダンブルドア「ハニー。その問題については、以前話し合ったはずじゃ」
ハニー「分からないの!?今夜、あなたがいないこの城で!!あの二人が何かしようとしていたら!!そんなことも分からない――」
ダンブルドア「ハニー、ハニーよ。わしがこれまでこの城を留守にする間、まったくの無防備で放っておいたと思っておるのかね?」
ハニー「っ、それは……」
ダンブルドア「わしは片時も、この城の生徒の安全について真剣に考えなかったことなどない。ハニー、たとえ君であってもそのような中傷は言うでない。傷つく」
ハニー「……悪かったわ。けれど、スネイプについては」
ダンブルドア「黙っていた事は、謝ろう。しかし、これで分かったじゃろう?この事実を知れば君はとてつもなく怒り、その後スネイプ先生に対して凡そ生徒が教師にとってよい態度ではなくなり」
ハニー「当然よ」
ダンブルドア「そして、スネイプ先生の胃に穴があく」
ハニー「……それは意味がよくわからないけれど、どんどん開けばいいじゃない。潰れちゃえばいいわ」
ダンブルドア「ハニー、君が怒るのももっともじゃ。そう、じゃがその怒りが、君とわしの信用をないがしろにしてしまうのは困る。特に、今夜のような時にのう。よりによって」
ハニー「……今夜」
ダンブルドア「そうじゃ。分霊箱の在り処がようやく突き止められた……その地へ赴こうと言う、今夜にのう」
ハニー「……分かったわ。隠していた、こと以外にあなた本人に非はないもの……認識でまだ、文句はあるけれど」
ダンブルドア「ひとまずは、それでよいじゃろう。ハニー。荒くなった息を整えてもらって、腰掛けていただけるかの?」
ハニー「…………そうして、あげるわ。赤豚の上にね」
赤豚「フィピヒン!」
ダンブルドア「よく燃やされておるのに幸せそうじゃのう」
ハニー「私にかかればどんな現象も幸福なのよ、当然ね」
ダンブルドア「それもそうじゃな。さて、件の在り処じゃが、ここから何キロも離れた海岸の洞窟にどうやらあるようじゃ。周囲で起こる不可解な現象、そしてなにより、ヴォルデモート卿がトム・リドルだった頃、孤児院の遠足でここを訪れておる事実」
ハニー「……どの分霊箱なの?どんな護りが?」
ダンブルドア「それは、実際に行ってみるまで分からぬ。じゃが、一筋縄でいかぬのは明らかじゃ。ハニー……わしは君を連れて行くと約束した」
ハニー「えぇ」
ダンブルドア「無論、その約束は守ろう。他でもない君との大切な約束じゃ。じゃが、ハニー。わしからも、君に約束してほしい」
ハニー「なぁに?一生豚でいさせてあげるとか?いいわよ?」
ダンブルドア「ほっほ、それは結構簡単じゃろうなあとちょいじゃし……約束して欲しい、ハニー」
ダンブルドア「普段の立場とは大きく変わることとなるが、件の洞窟に入った後は……絶対に、わしの与える命令を聞いてほしい。質問すること、なしに」
ハニー「……」
ダンブルドア「『隠れよ』と、『戻れ』と。そして」
ハニー「……」
ダンブルドア「『わしはいいから早く行け。大丈夫じゃ、帰ったらわし、ホッグズ・ヘッドで酒ひっかけてずっと話したかったことを話そうと思うんじゃよ』と言っても」
ハニー「……それは、ちょっと、発言を止めさせたいけれど」
ダンブルドア「約束してくれるかね、ハニー」
ハニー「……いいわ」
ダンブルドア「そう言ってくれるかね?豚としての領分を越えているのは分かっておる。じゃが……」
ハニー「いい、って言ってるの。私に命令しなさい、聞いてあげるわ。質問もしない……だって」
ダンブルドア「……」
ハニー「あなたがそれが最善だと判断したのでしょう?それなら、信じるわ」
ダンブルドア「……ハニー」
ハニー「……えぇ」
ダンブルドア「……じゃぁ何故スネイプ先生に関しても信用してk」
ハニー「それとこれとは話が別よこの豚。それで?いつ行くの?」
ダンブルドア「早い方がいいじゃろう。十五分後、玄関ホールで。よいかね?」
ハニー「……三十分にしなさい。私、一度談話室に戻るわ」
ダンブルドア「そうかね?」
ハニー「えぇ。女の子の気持ちが分からないようね。出かける前だもの、シャワーくらい浴びたいわ」
ダンブルドア「おぉう、それを言われると弱いのう。それでは、ハニー。三十分後に」
ハニー「えぇ、また」
ギィィッ、バタンッ
ハニー「……急がなきゃ、いけないわ」
ハニー「……ロンとハーマイオニーに説明して……マルフォイやスネイプを、見張ってもらわなきゃ。あぁ、三十分で足りる、かしら……!」
談話室
ハニー「――という、わけなの」
ハーマイオニー「まさか、マルフォイが……ほんとに?」
ロン「あー……でもそれ聞いちゃうと……うーん」
ハニー「……あの音が聞こえただけでこの信憑性の増し方はさすがね。いい、二人とも。時間がないから黙って聞いて」
ハニー「ダンブルドアはああ言ったけれど、この城に施された防御措置もスネイプがやっぱりあちら側だとしたら筒抜けだわ。だから、マルフォイとスネイプを見張って。パパの地図を使って頂戴」
ハニー「ハーマイオニー。DAのガリオン金貨の連絡網はまだ使える? それで、メンバーを集めるだけ集めて。もう卒業しちゃった人もいるけれど……できるだけ多いほうが心強いわ」
ハニー「それで……これ、もって行って。みんなが飲むには少ないけれど、効果はばっちりだわ」
ロン「これ、って……フェリックス!?」
ハーマイオニー「っ、だめ、だめよハニー!他のことは、えぇ、杞憂で終わればいいと思うけど分かったわ!でもこの薬は!あなたが持っていって!あなたとダンブルドアが飲むべきよ!」
ハニー「私は大丈夫よ、私だもの。それに、ダンブルドアもいる……それよりね」
ハニー「私、わたし、ここでみんなが無事でいてくれる、そう思えるほうが。そう思えるだけで、ずっとずっと幸せだわ。そんな薬いらない、くらい」
ハーマイオニー「……」
ロン「……」
ハニー「……ニヤニヤしても、いいのよ?」
ハーマイオニー「でき、ないわ。でき、ハニー、本当に。お願いだから、無事で……あぁ、私、こんなことしか言え……」
ハニー「えぇ、そうねハーマイオニー。それじゃ……勇気を頂戴?ね?」
ハーマイオニー「あ……」
ロン「三十分ってあっと言う間だよな、もちのロンで。あ、どうぞつづけて?」
玄関ホール
ハニー「っはぁ、はぁ。待て、は、出来たかしら、ダンブルドア……あら」
ダンブルドア「こんばんは、ハニー。あぁ、ご友人と出くわしてのう。少し話をしていたところじゃ」
アーニー「こ、光栄です校長先生!それに、あぁ!ハニー!ヒンヒン!」
ジャスティン「こんばんはハニー!ヒンヒン!」
ハニー「アーニー、ジャスティン!それじゃ、金貨の……!」
アーニー「あ、うん。それなんです、けどね……えっと」
ジャスティン「……あー」
ハニー「?どうしたの?あぁ、この豚なら気にしなくていいわよ。ねぇ、ダンブルドア。この二人がちょっと今から城の中を出歩く事、見逃してあげて。いいでしょう?」
ダンブルドア「……よいじゃろう。アーニー?ジャスティン?」
アーニー「ヒン、あ、はい!先生!」
ダンブルドア「己の信じるものを、信じるのじゃ。例え何があっても。よいな? そのバッジに誓って」
ジャスティン「!」
ハニー「?なんの話……えぇっと、それじゃあね二人とも!私は、あー……ダンブルドアと」
ダンブルドア「ほっほっほ、ちょいと洒落たお散歩に出向くでのう。さらばじゃ」
アーニー「あ、あぁ!今度の定例会議じゃつるし上げですよ、校長先生!」
ジャスティン「ハニー、また!!」
ハニー「えぇ! みんなと、よろしくね!!」
バタンッ!
アーニー「……僕達の、信じるもの」
ジャスティン「……うん」
アーニー「……金貨が熱くなってるのも、もちろん、分かってる。けど」
ジャスティン「……うん」
アーニー「……」
ジャスティン「……」
アーニー「寮に戻ろう。それで……僕達は」
ジャスティン「あぁ……この、バッジに……」
・
・
・
・
・
・
必要の部屋
マルフォイ「っはぁ、っはぁ、はぁ、はーぁ、はぁ」
マルフォイ「成功だ、これで、これで絶対に……絶対、だ」
マルフォイ「ダンブルドアは、今夜……この城に、いない」
マルフォイ「今夜だ……今夜しか、ない」
マルフォイ「絶対に上手くいく……これで、僕は。僕らは……」
マルフォイ「……っはぁ、はぁ……っ」
ギィィィィッ
マルフォイ「!!」
「よぉ~くやったねぇ、ドーラコ?」
マルフォイ「っ、ふぉ、っ、ハイ。ベラおば、ごフォん!」
「アッハハ、アっハハ、ヒャハハハハハアアアhッハははハはアハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \ !!お懐かしいねぇ、ホグワーツ!!!!」
「遊びはおしまい、ちまちまちまちまマグルやら穢れた血をころすだけのつーまらない仕事はおっしまーい!」
「今夜でぜーんぶ変えてやる!変えてやれるのさ!あぁ、よぉーくやったねぇドラコ?わが君はとてもとても、お喜びだ」
マルフォイ「お待ち、していました……ベラトリックス、様!」
ベラトリックス「さーて、平和ボケしたジャリどもはねんねの時間かな? 永久に」
ベラトリックス「あーんたもそう思うでしょ?え? チャンピオン?っぷ、ッハハ、ヒャァアアッハ八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!!」
「……えぇ」
マルフォイ「……お前、は」
ホグズミード
ハニー「……この近くなの?洞窟というのは」
ダンブルドア「いや、そうではない。しかし今わしがこの近くにおる、と周りの者に印象づけておくのが大事なのじゃ。本来の目的地を隠すためにはのう」
ハニー「敵を騙すにはまず味方から、を地でいくわよね、あなた」
ダンブルドア「自負しておるよ、うん……おやロスメルタ、こんばんは」
マダム・ロスメルタ「あらアルバス、遅いおでかけね……ひ、独り言が多くなったのじゃない?」
ハニー「……(透明マントかぶってる私と堂々と喋っていれば、それはそうよね)」
ダンブルドア「ほっほっほ、なーに、老人の戯言じゃて。今からホッグズ・ヘッドに行こうと思ってのう」
ロスメルタ「あら、私のお店には飽きてしまったのかしら!」
ダンブルドア「そういうわけじゃないのじゃがのう。たまには一人でチビチビと飲みたい夜もあるのじゃよ、うん。長居はせんしの」
ロスメルタ「そう、それじゃ……ハチミツ酒に気をつけて!」
ダンブルドア「ほっほ、そうじゃな。あそこの酒は古いことが多い。それでは、またのう」
ハニー「……これでオーケー、ということね」
ダンブルドア「あぁ、町で一番の情報発信者なマダムじゃ。さて、ハニー。そちらの角を曲がれば人通りもないようじゃ。『姿くらまし』で一気に向かうかのう」
ロスメルタ「…………」
海岸
ザザァァァァ、ザパァァァァァッ
ハニー「……とても子供をつれてくるような場所とは、思えないわね。断崖絶壁だわ」
ダンブルドア「もちろん、トム・リドルとその孤児院を同じくする子供たちはここにつれてこられたわけではない。少し先に小さいが過ごしやすい村と、保養所があってのう」
ダンブルドア「リドル少年はそこを訪れ、そしてどうやら遠足の最中気に入らない子供をここまでつれ出し、震え上がらせる目に合わせたようじゃ」
ハニー「……ほんと、趣味悪いわ」
ダンブルドア「まったくのう。さて、リドルの最終目的地、そして我々の目的地じゃが、この入り口よりもう少し先じゃ。行こうかの」
ハニー「えぇ、そうしてあげる」
ダンブルドア「半分、泳ぐようにして進まねばならぬ箇所があるじゃろう」
ハニー「帰る」
ダンブルドア「……ハニー」
ハニー「……ううん、頑張るわ。えぇ、約束、したもの……」
ダンブルドア「……」
ハニー「……足は着く、のよね?」
ザブッ、ザブッ、ザブッ
ハニー「入り口部分は、随分と開けていた、けれど」
ザブザブッ、ザブッ
ダンブルドア「うむ。進むにつれて、狭くなっておるのう。両壁の間隔は、そうじゃな。もう1メートルとないじゃろうて」
ハニー「……ここ、満潮時には水で埋もれて、見えなくなるようなトンネルよね」
ダンブルドア「そうじゃな。わしが出発を急いだのもそれが原因じゃ……おっと」
ハニー「! 急に、階段が……大きな洞穴の方に延びて……不自然ね」
ダンブルドア「うむ、明らかに人の手が入っておる。ハニー、寒くはないかね?」
ハニー「……水に浸かって、多少は。けれど、平気よ。先を急ぎましょう」
ダンブルドア「その意気じゃ……うむ?」
ハニー「水がなければ、むしろ万々歳だわ……なに?ほら、急ぐのでしょう?どうして止まっているの、洞穴の真ん中で」
ダンブルドア「ハニー、たとえ満潮がやってきてさきほどのトンネルが水でふさがってもわしがなんとかするから落ち着きなさい」
ハニー「あ、焦ってないわよ、えぇ! それで?」
ダンブルドア「露骨すぎじゃ、とな。水から上がる階段が用意され、そしてより通りやすく広い洞穴へと続く……ここらで疑ってかからねばならん。さて……うむ」
ハニー「……」
ダンブルドア「ふーむ……ふむ、ふむ。左様。目的の内奥への入り口は、この岸壁じゃな」
ハニー「……私には他の部分となんら変わらないように見えるけれど、どうして分かるのかしら」
ダンブルドア「魔法を使った形跡がある」
ハニー「……説明になっていない、って、分かっている?」
ダンブルドア「ほっほ、君もあとうん十年魔法の腕を磨けば分かるじゃろうて、ハニー」
ハニー「……反論する気も起きないわ」
ハニー「それで?この岸壁を……ダイアゴン横丁のようにどこかの部分を杖で叩けば、アーチが現れるのかしら」
ダンブルドア「いや、そう簡単にはいかんじゃろう。そうじゃな、うむ……」
ハニー「……」
ダンブルドア「……あぁ、なんとまぁ。なんと幼稚なことじゃ……じゃがそれこそ、奴らしい。まさに、どこまで行ってもプレティーン……」
ハニー「なぁに?あの黒豚は、何を施しているの?」
ダンブルドア「わしの考えでは、どうやら通行料を払え、そういうことのようじゃ」
ハニー「……私の笑顔、とか?」
ダンブルドア「それはそれは世の中の大半のものを買うてもお釣りがわんさかじゃろうな……そうでない。血じゃ」
ハニー「……血?」
ダンブルドア「うむ、実に幼稚じゃろう?ここを通るには自らの力を弱めよ、と。奴は、肉体的損傷よりもはるかに恐ろしいものがあることを把握しそこねておるわけじゃ」
ハニー「……けれど、できるなら避けた方がいいことも確かだわ」
ダンブルドア「最もじゃて。痛いのは嫌じゃものな、うん。さて、君にそんなまねをさせては会議でわしが髭チョンパされるからに、どうやらわしが血をやるのがよさそうじゃな」
ハニー「! 待って!いいわ、私がやる!私の方が……そうね、その……若いわ!」
ダンブルドア「あぁ、ハニー。そうじゃ、その若い力をこの者のようなくだらん仕掛けに注いではならん」
サクッ、ブシャッ!
ハニー「!!」
ダンブルドア「……っ、……っ、っ」
ハニー「……絶対、刺し過ぎたでしょう」
ダンブルドア「っ、んーん、全然、ほんと、ホントジャヨー……さぁ、入り口が出来たようじゃ。傷よー、癒えろ! ほれ元通り」
ハニー「……魔法って便利ね、ほんと」
ハニー「……あの岸壁の向こうに、こんな空間がある、なんて……まるで、ドーム、みたいな」
ダンブルドア「そうじゃのう。恐らく、というか間違いなく作られた空間じゃ。そして……」
ハニー「……中は、黒い湖……なんだかここの暗がり、今までのところよりずっと、濃い気がするわ。そんなことが、ありえるの?」
ダンブルドア「闇にも色々ある。そうじゃな、この空間は禍々しい……光もそもそも、我々の杖灯り二つ。そして」
ハニー「……湖の真ん中?から射している、あの……不思議な、緑色のかすんだ光、ね……あそこに?」
ダンブルドア「うむ、そうじゃろう。少し歩いてみるとしよう。あそこに向かう手立てが、何か見つかるかもしれぬ」
ハニー「……えぇ」
ダンブルドア「水に足をつけんようにの。ここの水は、どうやら今までとは違う」
ハニー「……それくらいは、流石に分かるわよ。ねぇ……馬鹿げているかもしれないけれど、『呼び寄せ呪文』ではだめ、なのかしら」
ダンブルドア「ふむ、試してみる価値はあるかもしれん。ハニー、できるかね?」
ハニー「……誰に聞いているのよ。『アクシオ、ホークラックス!』」
ザッパアアアアアアアア!!
ハニー「これで……キャアア!?」
ダンブルドア「はい無言呪文で超強い盾ピシャーン」
バチッ、バシャァァァァァン!
ハニー「ッハ……ッハ……ッハ……今の、今の青白い、何か。水の底から飛び出た、何か!今の、な、何!?」
ダンブルドア「ふむ、分霊箱を呪文で動かそうとしたものを待ち構える何か、じゃな。これで一つ分かった。わしらは直接、あの緑色の光の場所まで出向かねばならん」
ハニー「……」
ダンブルドア「……散策の前に、どれ、わしも少し座って休憩といこうかの。よいかね、ハニー?うむ、先に座っておいてくれるとは察しのよい子じゃ」
ハニー「……当然よ、私だもの」
ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ
ダンブルドア「楽しい散歩とは、いかんのう。うむ、これがホグワーツの湖畔を歩いているんじゃったら、もっと気楽なものだったんじゃが」
ハニー「何もかも違いすぎて感想も出ないわよ……何か、あるの?もうこの湖、半周はしたんじゃないかしら」
ダンブルドア「今のところ、何も……おう」
ハニー「なぁに?」
ダンブルドア「どうやら然るべき場所を見つけたようじゃ。ハニー、壁際に下がっていてくれんかの。ちょっと派手に動きそうじゃ」
ハニー「……そうしてあげるけれど、さっきから私、何もしていないわ」
ダンブルドア「懸念せんでも、すぐに君の助けがいるじゃろう。それより今は、ひと時わしが頑張る番じゃ……よ、っと」
ジャラッ!
ハニー「! 何もない空間、なのに……あなた今、何を支えにして水面に乗り出せてるの?」
ダンブルドア「なんじゃろうな、見てみるとしよう。そーれ、引き上げい」
ジャラ、ジャラジャラジャラジャラジャラジャラッ!
ボコボコボコボコボコ!
ハニー「! 湖から、緑色の鎖が!これ……何か、先に」
ザパァアアアアア!
ダンブルドア「ふむ、ボートじゃ。当たりじゃのう。どうやらヴォルデモート卿自身がここに訪れる時、奴の配置した先ほどの仕掛けの怒りを買わんよう、これを使って向かうのじゃろう」
ハニー「……本当、どうして見えもしないものが分かる、のよ」
ダンブルドア「見えもしない、ではないのじゃ。ハニー、魔法は常に跡を残す。時に非常に、顕著な跡を。トム・リドルを教えたのはわしじゃ。奴のやりそうなことは分かる」
ハニー「……もう少し前から、それを発揮してほしかったわね」
ダンブルドア「耳が痛いのう。さて、楽しい船旅へと切り替えようぞ、ハニー」
ザパァ、ザザザザッ
ハニー「……さっきの、なんだか分からないものがこのボートを襲う可能性は?」
ダンブルドア「それはおそらく、低いじゃろう。ヴォルデモート卿はおそらくこのボートを発見できるほどの魔法使いが現れるはずがないと確信しておる、ざまぁみろ」
ハニー「……あれは本当に、なんだったのかしら。水の、中から……」
ハニー「……」
ハニー「……っ!? ね、ねぇ……今!今、人の、手の、ようなもの、が!!」
ダンブルドア「……あぁ、見えたことじゃろう」
ハニー「っ!あっち、にも!男の人の、死体……それじゃ、さっきのは……この下、には」
ダンブルドア「ハニー。今はそのことを心配する必要はない」
ハニー「……今は?」
ダンブルドア「そうじゃ。水面の下、静かに漂っているうちは、彼らは尊厳をもって扱うべき骸なのじゃ……それとは程遠い扱いをされておるようじゃがの」
ハニー「……」
ダンブルドア「ハニー、屍を恐れるでない。暗闇を恐れる必要がないのと同じでの。もっとも、そのどちらにもひそかに恐怖を抱いておるヴォルデモート卿などは、この意見に異を唱えるじゃろうが」
ハニー「……恐れてなんか、ないわ。だって……彼らは」
ハニー「っ、ヴォルデモートに、酷い目に合わされた。そういう人たち、なのでしょう?」
ハニー「……っ、待っててね。すぐ、片付けてやるん、だから」
ダンブルドア「……そうじゃのう。さて、そろそろ目的の場所に着くようじゃ」
ハニー「岩場で出来た……小島ね。あの光は……丁度真ん中にある、この水盆から溢れていたみたい」
ダンブルドア「水盆から、うむ、そしてその液体が放つ燐光じゃのう……はてさて、この液体はなんじゃろかい」
ハニー「……分かるの?」
ダンブルドア「まだよくは。ただ、血や死体よりももっと懸念すべきものじゃろう」
ハニー「……」
ダンブルドア「どーれ……こちょこちょーっと」
ハニー「!? そ、そんなものを触ろうとするなんて、やめ……え?」
ダンブルドア「やはりのう……どうやらこの液体は、触ることが出来ぬ。見てみ、ハニー。水面のわずか上で、なにか空気の塊のような層から指を進ませることができぬ。ふむ……」
ハニー「……」
ダンブルドア「ちょいと下がっておいてくれるかの。じゃじゃーん、わしの杖ー」
ハニー「結構チョイチョイ見てるわよ」
ダンブルドア「ちょっとキツめの一撃をかましてみようぞ。オホン。そーれ」
……
ハニー「……何も、起こらないわね」
ダンブルドア「ふむ。消失も、分割も、すくい上げることも、変化させることもできぬ……なるほど、なるほど。そして、手はつけられぬ……と、なれば」
ハニー「……えぇ」
ダンブルドア「……さっきから見てみぬフリをしておったが、そろそろ触れてやろうかの……この、水盆の横にこれ見よがしに置いてある、ゴブレット。これが、答えじゃろう」
ハニー「……飲み、ほせ。って、いうわけ?」
ダンブルドア「そのようじゃな……このゴブレットのみがこの液体に触れることができ、そして恐らく口を付けた場合のみゴブレットから外へ、つまり口を着けた物の中へと出されるのじゃろう。うへぇ」
ハニー「でも、これ。見るからに劇薬だわ!」
ダンブルドア「いや、いや。恐らくは、そうじゃな……麻痺させるか、一時的に力を奪うか。その程度のものじゃろう。死ぬような可能性は少ない」
ハニー「……何、言って……これを仕掛けたのはヴォルデモート卿よ!?そんな甘いことするわけ――」
ダンブルドア「言葉が足りんかったのう。すぐさま、死ぬような可能性は少ない、ということじゃ。ここまでたどり着いた者のその目的を知りたがることじゃろう」
ハニー「……そう、ね。この場所も、分霊箱の存在も、自分しか知らないはず、なんだもの」
ダンブルドア「そういう事じゃ。おそらく奴はこの仕掛けを作った頃は、分霊箱、すなわち自分の魂の一部に危機、もしくは破壊されるとすぐさま自分に伝わるものだ、そう思っておったのじゃろう。日記の例から分かる通り、それは的外れだったわけじゃが……つまり、一応、この液体を飲んでも命はなんとかとりとめるじゃろう、ということが言える」
ハニー「……」
ダンブルドア「麻痺させる、あるいは酷い幻覚を見せる、耐え難い苦しみ、目的を忘れてしまうこともありうる。さて、ハニーよ。命令じゃ」
ハニー「嫌だわ」
ダンブルドア「命令じゃ。わしがどんなに抗っても、この液体をなんとしてもわしの口に流し込み続けるのじゃ」
ハニー「……嫌」
ダンブルドア「命令じゃ、ハニー。わしとの、約束じゃろう」
ハニー「……分かった、わよ……けれど」
ダンブルドア「はいオッケー、そんじゃカンパーイそーれ一杯目ー!」
ハニー「あっ、ちょ、ちょっと……!!」
ガブッ
ダンブルドア「…………」
ハニー「……だ、大丈夫、なの……?」
ダンブルドア「………………超不味いのう」
ハニー「……いや、えぇ。逆に美味しかったら、それはそれで怖いわよ」
ゴクッ
ダンブルドア「っ、ふーっ。あぁ、不味いのう、不味い。こりゃ、うーむ」
ゴクッ
ダンブルドア「……うーむ、これならまだ、ホッグズ・ヘッドで……古い」
ガブッ
ダンブルドア「ホッグズ……ヘッド……アバー……アリ……っ」
ゴクッ
ダンブルドア「…………」
ハニー「……ダンブル、ドア……?」
フラッ ガシッ
ハニー「っ!あぶ……ダンブルドア!ダンブルドア!しっかり、私の声、声が聞こえる!?」
ダンブルドア「あぁ……あぁ」
ハニー「大丈夫な、わけないわ。あなた、足が……」
ダンブルドア「嫌じゃ……やり、たくない」
ハニー「っ、けれど、っ、飲まなきゃ。あなたが、あなたがさっき、そう言ったわ」
ダンブルドア「……そう、じゃった。うむ……さぁ」
ゴクッ
ダンブルドア「……嫌じゃ、やりたくない。こんな……」
ハニー「やめちゃ、やめちゃ、だめ……っ、飲み続けなきゃ……っ、さぁ……私、私、が」
ハニー「っ、っぅ」
ハニー「私が、汲んで、あげるのだから!だから、の、っ、飲み、なさい!」
ダンブルドア「あぁ……そうじゃ、のう。それは……飲まねば、のう。ヒン……」
ゴクッ
ハニー「っ、ぅっ、っ、っ、えぇ、そう。それでいいわ……っ」
ダンブルドア「頼む、やめてくれ……もうやめてくれ」
ハニー「っ、飲んで!飲み、飲みなさい……そう、これでやめさせられるわ。これで、終わり、終わり、だから」
ゴクッ
ダンブルドア「わしにはできん、わしには無理じゃ……もう」
ハニー「えぇ、えぇ、そうね……今度は、っ、これはさっきのじゃないわ。普通の、普通の水、だから……ほら」
ゴクッ
ダンブルドア「わしのせいじゃ……あぁ、わしの、わしのせいじゃ……わしが悪かった、わし、が。やめさせてくれ、もう、二度と……」
ハニー「っ、っぁ、えぇ、えぇ、これで終わりよ、だから、飲んで……」
ゴクッ
・
・
・
ゴクッ
・
・
・
ゴクッ
ダンブルドア「殺してくれ!!!殺してくれ!!わしを、わしなんぞ、殺してくれ!!」
ハニー「ぁぁ、っ、っ、ぅっ、えぇ、これでそうなるわ、そう、飲むの!もう、もう終わりだから!これで、本当の、本当に、っ、最後だから!お願い……、もう、これで」
ゴクッ
カランカランッ
ハニー「っ、終わった……終わったわ。水盆の液体は、空……!やった、わ。ねぇ、ダンブル……」
ドサッ
ハニー「……やめて、よ」
ダンブルドア「」
ハニー「っ、冗談、やめてよ、ねぇ……ここまで、させて……そんなのないわ!ダンブルドア……ダンブルドア!!!」
ハニー「っ、目を覚まして!お願い!だって、死ぬものじゃないって!だから、だから、私、わたし!」
ダンブルドア「」
ハニー「あなたに、飲ませたのに!お願い!あぁ、あぁ……っ、『エネルベート』!『エネルベート』!」
ダンブルドア「」
ハニー「っ、『リナベイト』!お願い、起きて……『リナベイト』!」
ダンブルドア「――っか、っは! っ……」
ハニー「! あぁ!良かった、いいえ!よくないわ……ねぇ、大丈夫――」
ダンブルドア「――水を」
ハニー「水!えぇ、ちょっと、待って……えぇっと!」
ダンブルドア「水、水を」
ハニー「『アグアメンティ、水よ』!」
ダンブルドア「みzガバゴボボボボボボガババババババババ!?」
ハニー「あ、と、とっても喉が渇いてる、みたいだったから!口に直接、ほら、そうすれば……」
ダンブルドア「」シーン
ハニー「だ、ダンブルドアーーー!?」
ハニー「り……『リナベイト』!」
ダンブルドア「……カハッ!――お願い、じゃから――水」
ハニー「えぇ!」スチャッ
ダンブルドア「ゆっくり、一口ずつ……水、を」
ハニー「……!?そ、そうよね!待って、待ってなさい!そうよ、このゴブレット……『アクアメンティ!』」
コポコポコポコポ
ハニー「さぁ、これで……!?なんで!?どうして、今注いだ、ばかりなのに!水が消えて……あぁ!」
ダンブルドア「水……水、を」
ハニー「っ、どんな仕掛けが……魔法で出した、水はだめ!それじゃ……それ、じゃ」
ダンブルドア「水……」
ハニー「……ある、じゃない。まわりに、たっくさん……あいつの、考える事。そういう、ことね」
ハニー「っ、待ってて!すぐに、汲んでくるから!」
ダンブルドア「水――み……火、じゃ……火」
ハニー「えっ!?何を……錯乱してるのね、そうよね!待ってなさい!私の、わたしの可愛い……先生!待ってて!」
タタタタタッ
ダンブルドア「ハ、ニ……火じゃ……奴らは……」
グググッ
ザパッ
ハニー「……やっぱり!このゴブレット……あの液体か、この湖の水しか、汲めないんだわ」
ハニー「っ、この水も、何がされているか分からないけれど……たくさんの死体が、浸かっている水だもの」
ハニー「でも、何もしないよりは!さ、これを……っ!ダンブルドア!」
ブンッ!
ダンブルドア「火……火、がふっ!? ゴクッ、ゴクッ……」
ハニー「っはぁ、良かった、ダンブルドアの口ひげあたりに丁度、引っかかったわね」
ハニー「乱暴だけれど、急いでいたもの。仕方ないわ……なんだか、右袖が岩に引っかかっているようだし」
ハニー「慌てても、さっきからどうしようもない失敗、ばかりだもの……落ち着いて、ほどいて……」
ハニー「……落ち」
ガシッ
ハニー「……ぁ」
ザパァァァァァァァァ
ザパァアアアアアアアアザパァアアアアアアザパァアアアアアアア
ハニー「水面、から……たっくさん……立ち上がって」
ハニー「あぁ……これ、が。『亡者』なのね」
亡者『キシャァアアアアアアアアアアアアアア!!』
ハニー「っ、っ、ごめんなさい! 『レラシオ、放せ』!」
バーンッ!
ハニー「『レラシオ!』 『レラシオ!』」
バシャァァァン!
ザパァァァァ
ズリッ、ズリッ
ハニー「っ、『ペトリフィカス・トタルス!』『インカーセラス!』『インペディメンタ!』」
バシャァァン! バシャバシャッ!
ビシッ、バターン!
ザパァァァァァ! ザパァァァァァ!
ハニー「っ、キリが、ないわ! なんど吹き飛ばしても、足をとめさせても……次から、次に」
ハニー「っ、少し、下が……」
ドンッ
ハニー「えっ? ここに、背中を打つような岩、なん……ぁ、あ」
亡者『キシャァァァッァアアアアア!』
ハニー「あぁ……当たり前、よね……ここ、四方八方が水に、かこまれ……っ」
ボォオオオオオオオオオオオオオッ!!!
バチバチバチバチバチッ!!!
ハニー「!?」
キシャァアアアアア!キィヤァアアアアアアアアアアアアアア!!
バシャバシャ! ジュァアアアアアア!ッ!!!
ハニー「っ、なに……こんな……この空間中、埋め尽くすみたいな……赤と金の、炎……っ!」
ダンブルドア「名付けてグリフィンドール・ファイヤーじゃ。どうじゃね、イカすじゃろ?」
ハニー「っ、っ、えぇ、腹の立つ軽口まで含めて、とっても! 遅いわよ、ダンブルドア!」
ダンブルドア「ヒン、ヒン! さて、ハニー……わしちょっくら本気出すから、全力でしゃがんでなさい。よいかね」
ハニー「っ、はい、先生!」
ダンブルドア「あー、教師やってて良かった」
ボタボタッ、ボタ
パラパラッ……ボォォォォォッ
ハニー「……亡者の弱点が、火。さっき言ってたのは、そのことだったのね」
ダンブルドア「うっすらとしか覚えておらんが、多分そういう意味じゃ、うん……っ、っと」
ハニー「! あなた、まだ身体……当たり前、よね。あんなに弱ってたんだもの……肩、貸すわ。立てる?」
ダンブルドア「うむ、すまんのう……さて、ハニー……あれを取るのじゃ」
ハニー「あれ?……あぁ!すっかり、忘れていたわ……水盆の底の、ロケット!」
ダンブルドア「本末転倒じゃが、わしの安否を優先してくれたことは礼を言おうて……これで……っぐ」
ハニー「っ、えぇ、分霊箱がまた一つ……ゆっくり、歩きましょう?洞窟の外まで。そうしたら、今度は私、わたしが、『姿現し』して、城に戻ればいいわ。心配しないで……」
ダンブルドア「あぁ、ハニー……わしは心配など、しておらぬよ」
ハニー「えぇ、えぇ。だって、あなたがいるものね」
ダンブルドア「あぁ、そうじゃ。それに……」
ダンブルドア「君と一緒じゃからのう」
ザパッ、ザパッ
ダンブルドア「うむ……ぐ、む」
ハニー「ダンブルドア?大丈夫?ほら、歩いて……あぁ、これじゃまた、さっきみたい」
ダンブルドア「うむ、早く出ねば、のう……カナヅチな君の導きで、あのトンネルは、うむ」
ハニー「さっき心配してないって言ってたのは何なのよ黙りなさい」
ダンブルドア「うむ……黙る、黙った、ほうが、よさそうじゃ……わしは」
ハニー「えぇ、たまには……ダンブルドア?」
ダンブルドア「わしは……余計なことをしたのじゃ……一人よがりで、きっと……誰、にも」
ハニー「っ、しっかり、して!足を、動かして!もう、また水が、必要なわけ!?」
ダンブルドア「あぁ……わし、わしは……愚かじゃった……傷つけるのは、傷つくのは、わしだけでよかったのに」
ハニー「っ、なんの、話!? あとで、ゆっくり!聞いてあげるから!」
ダンブルドア「わしは……わしは、間違って、おったのじゃ」
ハニー「っ、間違って、ない!!あなたは間違ってない!!!」
ダンブルドア「……」
ハニー「えぇ、あなたの人生なんて……そういえば私、ほとんど知らないわ!けれど!」
ハニー「今ここに立っているあなたは!私が、わたしが尊敬しているあなたは!」
ハニー「とっても立派で、とっても素晴らしい人よ! だから、あなたは!」
ハニー「あなたは間違ってなんかないわ!前を、向きなさい!ダンブルドア!」
ダンブルドア「……(あぁ、ハニー)」
ダンブルドア「……(わしは、ずっとずっと誰かに)」
ダンブルドア「……(そう言ってもらいたかったのかもしれん)」
ダンブルドア「素晴らしい子じゃ、ハニー……わしは、君のためならなんでも、しよう」
ハニー「えぇ、そんなの当然よ!あなたは私の……豚でしょ!もう!!」
ダンブルドア「ほ、っほ……ヒン、ヒン!」
ホグズミード
バチンッ!
ドサドサッ!
ハニー「ハ、ッハ、やった、わ!一人でも、あんまり成功していなかったのに!立てる?ホグズミードまで戻ってきたわ!城まで、すぐそこよ!」
ダンブルドア「あぁ、そのようじゃ。しかし、うむ……わしは少し、休む必要があるようじゃ」
ハニー「っ、そうね。どこか旅籠に……ロスメルタのところ!」
ダンブルドア「それは、いい提案じゃのう……あぁ、ハニー。城まで行き……」
ハニー「えぇ、マダム・ポンフリーを……」
ダンブルドア「スネイプ先生じゃ……ハニー、スネイプ先生を、つれてくるのじゃ」
ハニー「えっ? だ、だって……」
ダンブルドア「セブルスじゃ……セブルスが、必要なのじゃ。今、この瞬間……この状態のわしには」
ハニー「……分かったわよ、分かった!誰かに、あなたを預けてから、それで、スネイプを……あ!」
パッ! パタパタ、パタンッ!
ハニー「誰か、気づいてくれたわ!こっちに……あぁ、よかった。マダム!マダム・ロスメルタ!」
ロスメルタ「びっくりしたわ!寝ようと思ったら、あんな騒ぎだし!それに、あなた達が急に通りの真ん中に……アルバス!?何かあったの!?」
ハニー「怪我、怪我をしているの!マダム、しばらく休ませてあげて!私はその間に、城に戻って、えーっと、必要な人を……」
ロスメルタ「城!?城に!?だめよ!!わからないの!?!?見てないの!?あれを!!!」
ハニー「なにを……?」
ダンブルドア「――何があったのか、ロスメルタ」
ロスメルタ「あぁ、アルバス!あなたがいないときに、なんて――『闇の印』よ!ホグワーツの、真上に!!!!」
ダンブルドア「……その、ようじゃな」
ハニー「……嘘」
すまん、小休止
7時に再開
じゃあの
ビュゥウウウウウ
ハニー「ロスメルタが、箒を貸してくれてよかった……急いで、急いで行かなきゃ」
ハニー「あぁ、誰が……間違いであって、お願い。誰も……」
ハニー「私のせいで……お願い」
ダンブルドア「……ハニーよ。城壁にかけられておる保護魔法はわしと君を例外にしておいた。このまま境界を飛び越え、北塔のてっぺんに向かう。よいな?」
ハニー「えぇ……急に動きも、意識もはっきりしたようで、助かるわ」
ダンブルドア「あんなものを見せられてはのう、ボケておる暇もないじゃろう」
ハニー「……そう、ね。間もなく、お城だわ」
ダンブルドア「……」
バーン! バチバチッ!
ハニー「……こんな時間、なのに……あちこち、灯りが……点いてる、いいえ……起きては消えてる。あれ……呪いの閃光……そんな」
ダンブルドア「……急ぐのじゃ、ハニー。事態を、見極めねばならん」
北塔
ハニー「……何も、ないわ。ここには」
ダンブルドア「そのようじゃな。闇の印が打ち上げられたのは、確かにここからのようじゃが……争った形跡も、死体の影もない」
ハニー「どういう、こと……?けれど、下の階では確かに何かの騒ぎが起きていたわ!そっちに、行かなくちゃ!ねぇ!?」
ダンブルドア「……」
ハニー「っ!あなた、やっぱり無理を……!ここで、休んで!急いで誰か……」
ダンブルドア「うむ、すまぬ……そうじゃ、セブルスを起こしてくるのじゃ。何があったかを話し、ここに。他にはなにも、するでないぞ?よいな……ハニー、行くのじゃ。透明マントをしっかり、かぶってのう」
ハニー「えぇ、そうしてあげるわよ!待ってなさい!」
タタタタタッ
バタバタバタバタ!
ハニー「……!?螺旋階段から、誰か……っ!!!」
パキッ
ハニー「(な……うご、けない……誰が……だって、誰もまだ、現れて……石化の呪いを放つ人なん、て)」
ハニー「(誰も、ここには……私、と)」
ハニー「(わたし、と……)」
パタッ
ハニー「(ダン……ブル……)」
ダンブルドア「……ハニー。わしの、最後の意地悪じゃ」
ハニー「(何を……何を、してるのよ!!!)」
バフォーーーーイ!
マルフォイ「っはぁ、はぁ、っ!『エクスペリアームス!』」
バーン!
ダンブルドア「おぉっと……おっと?うん、これは……よっしゃっ!よぉやったドラコ!でかした!!」
マルフォイ「!?い、いきなり褒めてきてなんだ、この老害!」
ハニー「(……マルフォイ)」
ダンブルドア「いや、うむ。実に鋭く見事な武装解除じゃったからのう。こんばんは、ドラコ。素敵な宵じゃな?」
マルフォイ「ふ、ふん、僕、僕らにとってはな!そしてお前にとっては、最悪の夜だ!」
ダンブルドア「僕ら、と。なるほど……?どうやらこの城へ、君の援軍を。こっ恥ずかしい一団……オホン、死喰い人たちを招き入れることに成功した、そういうことかのう」
マルフォイ「そうだ!お前は、校長のくせに!目と鼻の先で行われてた僕の企みに、気づけなかっただろう!」
ダンブルドア「そうじゃのう。して、その援軍はどこにおるのじゃね?見たところ、君は今一人のようじゃが。このわしと同じく」
ハニー「(一人、じゃないわ!解除しなさい!!私を、私だって、杖無しの、あなたよりは!!!)」
マルフォイ「下の階で戦ってる!お前が用意した護衛に見つかった……くそっ、あんなのがいるなんて聞いてない……イタチは懲り懲りだ」
ダンブルドア「あの時のアラスターは本人ではないがのう」
マルフォイ「黙れ! 追っ付けここに来るだろう。僕は先に行かされたんだ。僕には――僕には、やるべきことがある」
ダンブルドア「おぉう、それなら。速やかにそれに取り掛からねばならんのでは?こんな老人に、いつまでもかまっていられないじゃろう」
マルフォイ「黙れ!黙れ、黙れ!!そうだ、やってやる!!そうだ……お前、なんて……もう、杖もない」
ダンブルドア「……ほっほ。ドラコ……君に、人は殺せぬよ」
マルフォイ「っ、分かるもんか!!!あんたなんかに!!!あんたなんかに僕に何が出来るかなんて!!分かるものか!!!分かられてたまるか!!!!!」
ハニー「……」
ダンブルドア「うむ、そうじゃのう。わしはとんと君と親交を結べなんだ。生徒は全員マブダチを自称するわしとしては残念なことじゃが……どうじゃね、ドラコ。このレモンキャンデーでも食べるがよい。美味しいよ?」
スッ、ポイッ
マルフォイ「……なんだ、こんな子供だましを!」
パシッ……スッ
ハニー「……(でも受け取るのね)」
マルフォイ「僕がこの一年何をしてきたかも知らないあなたに、僕が何をできないかなんて!語られる、筋合いは……」
ダンブルドア「いいや、いや。ドラコ、実を言えば殆どのことは把握しておる。この一年、君は、誰あろうこのわしを殺そうと躍起になっておった」
ハニー「……」
ダンブルドア「その際、まったく無関係な者二人も巻き込んでのう。半ば自暴自棄だったじゃろう。そして、失礼じゃがドラコ、あまりに中途半端じゃ……わしは君が本気でないものとして、見逃しておったのじゃよ」
マルフォイ「僕は本気だった!!本気で、準備してきたんだ!そして、今夜――」
ギャァアアアアアアアアアアアアア!
死ねぇええええ!! マッド-アーーイ!!ストーーーップ!!ストーーーーップ!生け捕り!任務生け捕りだしあなたなるべく殺さない信条だったよね確かー!?
ダンブルドア「誰か、といより。アラスターが善戦しておるようじゃの。そう、この城には今夜、何人もの豚団が来ておる」
マルフォイ「……なんだそのふざけた名称」
ダンブルドア「君んとこの方も大概じゃよ。それで、うむ。君の援軍は、ここにはたどり着けぬかもしれぬのう。どうするね、ドラコ?一人でやらねばならんぞ?」
マルフォイ「……っ」
ダンブルドア「最も、そうじゃ。事は簡単じゃ。相手は杖を持たぬ年寄り一人、自衛の術もない。君も言ったとおりにのう」
マルフォイ「……」
ダンブルドア「……ドラコ、怖いのかね」
マルフォイ「っ、怖くない!!!怖くなんて、ない!!!!黙れ!!!!!!」
ダンブルドア「何故じゃね?君の正直な気持ちを代弁したまでじゃ……みんなが来るまで、怖くて行動できぬのじゃろう?」
マルフォイ「っ、怖いのは、そっちのはずだ!」
ダンブルドア「それがちっとも怖くないのう。何故なら、ドラコよ。わしには分かる。君には人は殺せない。君のような無垢な者にとって、殺人など。恐怖を感じて当然のことだからじゃ」
マルフォイ「黙れ!黙れ、黙れ!僕が、無垢!?僕は、僕は闇の魔法使いだ!!」
ダンブルドア「闇、のう……ふーむ、さて。それではドラコよ。未だ事をおこすつもりがないのならば、少しお喋りしようかのう。どうやって、連中をこの城に引き入れたね?こればかりは、わしも予想外じゃったよ」
マルフォイ「……去年、モンタギューがあの赤毛ノッポ貧乏ウィーズリー双子に閉じ込められた、あの『姿をくらますキャビネット』だ」
ハニー「……」
ダンブルドア「なんと……ほぉー……あれは、対になるキャビネットが存在する。そういう噂を聞いたことが、あるがのう」
マルフォイ「モンタギューは、閉じ込められている間、ホグワーツでの出来事と、それにある店での声が聞こえていたんだ。『まるで棚が二箇所を何度も往復しているようだった』そう言っていた」
ハニー「(ある、店……あぁ)」
マルフォイ「みんなはモンタギューが錯乱しているんだと鼻で笑った。でも、僕は違う。すぐにその店が、どこか分かった。父上の行きつけだ、僕も何度も行っている。夏休みにそこへ足を運び、モンタギューが聞いていた客とのやり取りが正しかったことを確かめる……それで、見つけた!」
ダンブルドア「……どこの店じゃね?」
マルフォイ「ボージン・アンド・バンクス!」
ハニー「(なんて、こと……)
マルフォイ「あのキャビネットを直す事ができれば、あんたの目を盗んでいくらでも応援を呼べる!」
マルフォイ「僕は一年かけて、ホグワーツ側にあるそれを修理した……出来上がったのは、ついさっきのことだ」
ダンブルドア「そしてその計画の途中、何度か修復が不可能なのでは、と思い当たったのじゃろう。じゃから、あんなにも粗雑な暗殺計画をたてた」
マルフォイ「っ、粗雑なもんか!現にあんたは、誰が仕組んでいるのかを見破れなかった!」
ダンブルドア「さっきも言うたじゃろう、分かっておったよ。君がそうすることを、止めてやりたかった。スネイプ先生に監視を頼んでのう……」
マルフォイ「……ッハッハ、ハッハハハ!!あんたは、まだ!!あの男を信じてるんだ!!」
ハニー「……」
マルフォイ「あいつは、僕に何度も『協力する』と言ってきたぞ!あんたに疑われてる、だから自分の言うことを聞いて『もっと上手くやれ』って!!あいつはあんたの命令に従ってたんじゃない!あの方と、母上の!」
ダンブルドア「もちろん、君にはそう言うじゃろう。しかし……」
マルフォイ「あいつは二重スパイだ!あんなにも分かりやすい奴を見破れないなんて、ダンブルドア!あんたも老いぼれたんだな!」
ダンブルドア「何を言う、ピッチピチじゃよ。それに、この件については見解の相違じゃのう。わしはスネイプ先生を信用しておる」
ハニー「(なんで……どうして、よ……)」
マルフォイ「明日、あいつが目を覚ました時にはもう全て終わってる!あいつはあの方のお気に入りじゃなくなって、僕が、僕達がそうなるんだ!」
ダンブルドア「そうじゃのう。誰でも、一生懸命やったことを褒めてもらいたいものじゃろう。しかし、君は必ずしも一人で全てやり遂げたわけじゃなかろう。共犯者――あぁ、そうか」
ハニー「……」
ダンブルドア「……『ハチミツ酒に気をつけて!』……ロスメルタの必死の抵抗とメッセージに、気づいてやれなんだ……彼女を、『服従』させておったのじゃな?」
マルフォイ「……どうだかな」
ダンブルドア「そうなのじゃろう。ケイティ・ベルに女子トイレでネックレスが渡されたことも、ホラスがロスメルタの店から仕入れた酒に毒が入っていたのも、それで説明がつく。そして、今夜」
ハニー「……」
ダンブルドア「ここにこの『闇の印』が打ち上げられておるのも。ロスメルタからの連絡で、わしが外出するのがそう長くないと知り、ここにおびきだすことで優位に立とうとしたのじゃな?遠目でもわかる、この恥ずかしいマークを使って」
マルフォイ「僕が出したんだ、恥ずかしいものか!」
ダンブルドア「肯定と受け取ろうかのう。それでは、今夜はこれは犠牲者の存在をしらしめるために打ち上げられたわけではない、そう考えてよいのかの?」
マルフォイ「――一人は、死んだ!」
ハニー「」
マルフォイ「死んだ、ように思う。僕が跨いだとき、動きもしなかった!そうだ……あれは、死んで」
ダンブルドア「……気づいておるかね、ドラコ?今君は、そのことを悲しんでおる」
マルフォイ「っ、うるさい!!!」
ダンブルドア「自分が引きおこした騒動で犠牲になった者がいることに、責任を感じておる」
マルフォイ「うるさい!!!うるさい、うるさい!!!黙れ!!!」
ダンブルドア「ドラコよ……君は闇の魔法使いになるには、あまりに繊細すぎる」
マルフォイ「黙れ!!!!!!!!」
バーーーンッ!!バキャッ!!
ダンブルドア「……」
マルフォイ「ハーーーッ、ハーーーーーッ、ハーーーーーーッ……」
ダンブルドア「ここまで来ても、感情の高ぶりに合わせ杖を振るっても、わしがもたれておった防壁を崩すだけじゃということからも、一目瞭然じゃろうな。おぉう、高いのう」
ダンブルドア「ドラコ、こけおどしはもう終いじゃ。君の選択肢を話し合おうぞ」
マルフォイ「選択肢だって……選択肢だって!?僕には、そんなものはない!!!!!」
ダンブルドア「……うむ」
マルフォイ「僕はやるしかないんだ!!!僕がやらなければならない!そうでないと、あの人が僕を殺す!!僕を――僕の、家族を殺す!そう言うんだ!!!」
ダンブルドア「……奴の考えそうなことじゃのう。そう、奴ならそうやって君を脅すと知っておった。じゃから、わしは今まで、君を見逃しておったのじゃ」
マルフォイ「なに、を……?」
ダンブルドア「わしが君のことを疑っていると、もしもヴォルデモート卿に知られれば」
マルフォイ「っ」
ダンブルドア「君はおそらく任務の失敗のツケを払わされ、やはり殺されるじゃろう。わしには分かっておったのじゃ、君の境遇も、辛さも、難しい立場も。さて」
ダンブルドア「いまようやく、君とお互いに率直な話ができる。ドラコ、我々の側に来るのじゃ。わしが助けてしんぜよう」
マルフォイ「……できっこない!あの人は!!」
ダンブルドア「わしは奴が恐れた唯一の魔法使いじゃ。厳密にはもうちょいおるがの」
ハニー「……」
ダンブルドア「母上はすぐにこちらで保護しよう。お父上は、アズカバンでちょいと動いてもらえば問題ない。正しい方につくのじゃ、ドラコ。君は殺人者ではない……」
マルフォイ「……でも、でも!僕はここまで、うまくやったじゃないか!!あんたの、上手くいくかどうかわからない、っ、そんな、むしのいい話!信じられるか!!そうだ、あんたは、あんたは今、僕の情けで生きてるような、もので……」
ダンブルドア「そうかね。いいや、ドラコ。今大切なのは、君の情けではない。わしの情けじゃ」
マルフォイ「……」
ダンブルドア「……」
マルフォイ「ほん……とうに……」
バタバタバタバッ!
マルフォイ「っ!!」
ダンブルドア「……あーぁ、せっかく少し杖を下げてくれておったのにのう」
バターーーン!
「! いた!いたぞ!! ダンブルドアだ!ドラコが追い詰めてる!!」
ダンブルドア「こんばんは、アミカス。はて、追い詰められておるのはわしなのかのう」
「軽口を叩けば見逃してもらうと思うなよ?」
ダンブルドア「これはこれはアレクトも。軽口?挨拶のようなものじゃよ、うむ。そして……あぁ。フェンリール・グレイバックとお見受けする」
グレイバック「そうだ、ダンブルドア。会えて嬉しいか?」
ダンブルドア「けちょんけちょんに毛皮を刈ってやりたいくらいにのう」
ベラトリックス「ハァ~~イ、ダンビー。ちょい老けた?いったいどうしたね、そーの無様な姿はさーぁ?」
ハニー「(!!ベラトリックス!!!! また、あんたが!!!っ、動いて、よ、私!!!)」
ダンブルドア「ベラトリックス、久しいのう。なぁに、ちょっとした反射神経の鈍り、抵抗力の弱り、つまり老いじゃよ。君にも幸運ならば、いつか来るはずじゃ」
ベラトリックス「分かりたくもないねぇ。さてさて、さて……ドーラコぉ?」
マルフォイ「っ」
ベラトリックス「大手柄だ、すんごいねぇさすがシシーの息子。さ……殺っちまえ」
マルフォイ「……っ、あぁ、はい……っ」
アミカス「どうした……やれ!殺せ!」
グレイバック「俺が喉笛喰っちまってもいいんだぜ? 有名人様の、ダンブルドアよう。あんたの肉は美味ぇのか?え?」
ダンブルドア「フェンリール。君はここのところ、変身せずとも人の血肉を貪るようになったのかね……堕ちたものじゃな」
アレクト「やれ、ドラコ!やらないなら、私が……」
ベラトリックス「お黙り!我が君はドラコに殺らせろとのご命令だ! さぁ、早く殺りな、ドラコ。階段の障壁も、そう長くもたない」
ハニー「(っ、じゃあ、こいつらがみんなを全滅させたわけじゃ、ないのね……!戦いから逃れて、来ただけ……でも、それじゃ味方も……)」
アミカス「やれ!ドラコ!早く!!」
マルフォイ「っ、ぁっ、っっ」
アレクト「震えるんじゃない!早くやれ!!!やってしまえ!!!」
マルフォイ「ぅぅ、ぼ、僕、が」
グレイバック「ガキが早く殺せ。お前から喰い殺すぞ」
マルフォイ「ぅぁ、っ、っ」
カタカタカタカタガタガタガタ
ハニー「(マルフォイは、躊躇してる!それは、そうだわ。あんな風に脅されちゃ、あんな場面に立たされちゃ)」
ハニー「(あいつは……本当に臆病な卑怯者だった。ずっと。それは、変わらなかった)」
ハニー「(なのに、あんなことをさせられて……平気なはずがない。それが普通なのよ、普通の、十六歳の子供なのに)」
ハニー「(っ、動いて、よ!私!ダンブルドアを、助けて!それで……癪だけれど、ダンブルドアの提案も、受け入れてやれば……)」
ビューーッ、サラッ
ハニー「!(マントが、頭から!!)」
ハニー「(ど、どうし、ど……い、今はあちらは、マルフォイに気をとられている、けれど!)」
ハニー「(い、いつ、こっちを向くか……だ、ダンブル……)」
ダンブルドア「……………!?!?!?あ、あーー、それじゃどうかね!ベラトリックス、君のドラコとの思い出話でもしてやって!ドラコをこう、落ち着かせてみるというのは!聞きたいのう!聞きたい!なるべく長いやつ!!」
ベラトリックス「はぁーーー?」
ハニー「(凄く焦ってる!!!)」
ベラトリックス「……」
マルフォイ「……」
ベラトリックス「……あんたが生まれた日はねぇ」
ハニー「(話すのね!?!?!?)」
ハニー「(どうしましょう……たとえ無事に、ことがすんでも……この、螺旋階段の扉近くにいる私は、どうやっても連中の目に止まるわ)」
ハニー「(あぁ、なんでこんな真似を……ダンブルドア、本当に……!)」
キィィッ
ハニー「!(誰か、階段から!敵かしら、味方!?……あぁ)」
スネイプ「……」
ハニー「(……スネイプ……また、どっちつかずな)」
スネイプ「……」
ハニー「……」
グググググッ
ハニー「(っちょ、なに……瞼を押さえて、なに……石化してるから、動かないわ、よ!)」
スネイプ「…………チッ」
ハニー「(舌打ち!すっごく小さく舌打ち!!あったまくるわ!!!頭……あ)」
パサッ
ハニー「(マントを、かけなおして……)」
スネイプ「大人しくしていることは関心ですな。すぐに、終わる。そこにいたまえ」
ハニー「(……助けてくれた?)」
ハニー「(どういうこと……やっぱり、この人は)」
スネイプ「ベラトリックス、どうなっている。何事で……君が涙目になるというのも、物凄く珍しい光景ですがな後にしてもらいたいなんだこの雰囲気」
ハニー「(味方……なの?)」
アミカス「スネイプ……問題が起きた」
スネイプ「君たちのやることだ、どうせそうなると思っていた」
アレクト「……追い詰めるところまでは、上手くいったのだが」
スネイプ「まるで自分の手柄でという様な言い方はやめればどうですかな?君はどうせおこぼれを貰いに着いてきただけだろうに」
グレイバック「なんだてめぇは、あぁ?喰い殺すぞ」
スネイプ「やってみろ狼人間ごときが我輩に指一本触れてみろ長年作り上げてきた対貴様ら用のありとあらゆる呪いと薬を薄汚い毛穴の奥まで流し込んでやろう」
ベラトリックス「おいクソッタレ、いきなり出てきて喚くんじゃないよ」
スネイプ「ベラトリックス、君たちが不甲斐ないから我輩まで出張ることになるのだ。状況はどうなっている、と聞いている」
ベラトリックス「ドラコがやった。あたしらをここまで招いて、ダンビーもこの通り。ただ、ちょーいとね。生来の臆病ウンコたれルシウスの性根が、ここに来て出ちまった」
マルフォイ「……」
スネイプ「……」
ベラトリックス「さぁて、さぁてさてさて、すねーいぷぅ?あんたは夏に誓ったねぇ?あたしの前で、シシーと、手を組んで、あたしが見届けてやったっけねぇ~え?」
スネイプ「いかにも」
ベラトリックス「どぉ~せハッタリだろう!どうせダンビーの小細工で反故にしたんだろ!わかってるさ、あたしにはね!あんたはやらない!どうせあんたは、裏切り者だ!!!」
スネイプ「……
ハニー「(……)」
ダンブルドア「……セブルス」
ハニー「(あ……あ……)」
ハニー「(だめ……だめ……!ダンブルドア、駄目!そんな、声……)」
ハニー「(懇願、なんて……!!!どうし、どうし、て……!)」
ダンブルドア「……これまで、あまりにも」
ハニー「(待って……待って!!やめて!!動いて、動いてよ、私の、わたしの腕!!)」
ダンブルドア「我々は、都合よく生きすぎておった」
ハニー「(動きなさい!あいつの服従だって、跳ね除けたじゃない!動いて、わたしの身体!)」
ダンブルドア「あまりに上手く、行き過ぎておった。そうじゃろう」
ハニー「(もう、喋らせちゃだめ……あぁ、あぁ!!)」
ダンブルドア「我々にあの手は届かない」
ハニー「(嫌!! 嫌!!!)」
ダンブルドア「我々は身をもって、教えねばならぬ」
ハニー「(わたし!!わたし!!!まだ、あなたに!!!!)」
ダンブルドア「それが我々の犯した罪の罰と、そして償いなのじゃ」
ハニー「(あなたに!!!してもらったこと!!!たくさん、助けてもらった、こと!!!)」
ハニー「(何も……何も!!!)」
ハニー「(あなたを、名前も……ちゃんと、ちゃんと、アルバスって、一度も!!)」
――君をあまりにも、愛おしく――
ハニー「(っ、愛してる、って!一度も!!!!言って、ないのに!!!返せてあげて、ないのに!!!!!)」
ベラトリックス「……こいつは何を言っている?スネイプ、こりゃなんのお話しだい?」
スネイプ「……さぁ。見たところ、何か魔法損傷を受けているようだ。幻覚でも、見ているのだろう。透明な」
ダンブルドア「セブルス」
ハニー「(いやぁあああああああああああああああああああああああああ!!!)
ダンブルドア「頼む」
ハニー「(――目を瞑ることも、許されなかった)」
ハニー「(――声を上げることも、駆け寄る事も、できなかった)」
ハニー「(――わたしは、ただ。無力で)」
ハニー「(――あの人が、憎しみに満ちた顔で、杖をあげるのを)」
スネイプ「『アバダ ケダブラ』」
ハニー「(――わたしの、大好きだった人が)
ダンブルドア「」
バサァァァァァァッ
ハニー「(――力なく、ゆっくりと)」
ハニー「(――夜の闇へと落ちていくのを)」
ベラトリックス「……は、はは。やっちまった。っはは、ヒャアアアアヒャァアアッハ八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!!」
ハニー「(――見ていることしか、出来なかった)」
ベラトリックス「死んだ!!死----んだ!!!ダンブルドーアが死----んだぁあああああああああ!!!」
スネイプ「……すぐに撤退するのだ。ドラコ、来い。お前たちもだ。ふさいだ階段とは別に、通路がある」
ベラトリックス「イィヤッホーーーーォ!スネイプスネイプスネーーーイプぅ!!あんた最っっ高だねぇえぇ!?我が君の次に!!」
スネイプ「お褒めの言葉恐悦至極、早く行け。悪魔が来るぞ……」
アミカス「はっは、なんだそりゃ」
グレイバック「俺のことか?あ?」
アレクト「違いな……っ!?」
バッ
ハニー「セ ブ ル ス ・ ス ネ イ プ ! ! ! ! !」
アレクト「ひっ!?!?なん、うわ、なん……」
スパァアアアアアアアアアアアアン!!
アレクト「」ゴロゴロゴロゴロズザァァァァ……クタッ
ハニー「『ベトリフィカス・トタルス!!』 そこで固まってなさい! 待て!!!待ちなさい!!!スネイプ!!!!!!!スネイプ!!!!!!!」
アミカス「……なにあれおっかない」
グレイバック「あの人みてぇ怖ぇ俺の野生がそう言っている」
スネイプ「だから言ったのだ振り向くな目を見たらおそらく足がすくむぞ、我輩以外」
ベラトリックス「はっはは、ハァアアッハハハハハハ!楽しくなってきた!!!たーのしぃねぇ!?その声、ポッターちゃんかぁい!?愛しのいとこの恋人の!!!」
ハニー「……ベラトリクスゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!」
ベラトリックス「ハッハハハアーーーーッハハハハハ!!!いーぃ女になった!!アッヒャハハハハアハハハハハハハ!!!!」
廊下
バーーーン!
バチバチバチバチ!!バチッ!!!
ハニー「っはぁ、っはぁ、っ、城の中で、戦いが……天井も、半分落ちて、っ」
ハニー「あいつらは、どこに。あいつ、っ、スネイプ……絶対、絶対つかまえ、て」
ハニー「大丈夫、きっと、あの人は……スネイプを、スネイプを捕まえれば、きっと、まだ……」
スネイプ「戦いはやめろ!退くのだ!撤退だ!ダンブルドアは死んだ!!」
ロン「HAHAHAHA!冗談は鼻っつらと髪だけにしろよスネイプこの野郎!」
死喰い人「くそ!!!!!くそっ!!なんでこいつ!!呪いがあたらねぇ!!!」
ロン「何故かって?それは僕が……ハニーの一番の豚だからさぁー!」
死喰い人「ちくしょおおおきめぇええええ!!動きとこんな状況でキラキラした目がきめぇえええよおおおおお!」
トンクス・リーマス「「『ステューピファイ!!!』」」
死喰い人「」バタッ
トンクス「やた!ナイス連携、リーマス!ほーら、私たち息ピッタリじゃない!」
リーマス「トンクス、集中を切らしては駄目だ。ロン、は……問題なさそうだね」
ロン「もちのロナルド・ビリウス・ウィーズリーさ!それでハニーやっほーさっきぶりー!」
ハニー「っ、ロン!それにリーマス、トンクス!スネイプは、どっちに行った!?」
リーマス「ハニー! あぁ、そのあたりを駆けていったのは見た気がする、だが、私も一騎打ちの最中でね」
トンクス「大広間の方、だったかな……あ!ハニー、ちょ……うわぁ!」
ロン「HAHAHAHAHAHAHA、トンクスっていつでも幸運薬の失敗作でも飲んでそうだよなぁ!」
トンクス「うっさいな今日のロナルドすっごいうるさい!は、ハニー!?一人で行っちゃ駄目だ、ハニー!!」
ハニー「いいえ!行かなきゃ!!!絶対、絶対、許さないんだから!!!」
ジニー「なんだか適当に撃っても『コウモリ鼻くそ』の呪いがよくあたる!」
ハーマイオニー「なにこれ本当に反則な薬だわ……まさか」
ゴチャッ
ハーマイオニー「もしかしてと思って試しに抜いてみた外壁の石の一つが、その当たり一体の壁の支えになってて襲ってきた人みんな埋まっちゃうなんて」
ジニー「トンデモだよね、うん……それに」
ルーナ「えーっと……えい!」
死喰い人「や、やめてくれぇえええええええ!猫の砂、それだけは駄目だうわああああああ!」
ルーナ「……そーれ」
死喰い人「う、うわああああキノコ、そのキノコは俺がこんな崩壊面になっちまったあの時の、う、うわああああああ!!」
ジニー「まさかルーナが鞄に溜め込んでたものがことごとく向かってくる死喰い人の、蕁麻疹が出るほど苦手なものだなんて」
ルーナ「……無駄なものなんてないって、このことだったんだ!ダンブルドアの!すごい!」
ハーマイオニー「何か悟ってしまっているし……あ!」
ハニー「ハーマイオニー!ジニー、ルーナ!」
ジニー「あっ、はに――」
ハーマイオニー「ハニー!愛してる!!きゃあ!?」
ハニー「私もよ!!わたしも!!あぁ、生きてた!良かった!!時間がないから、ちょっと手短に、ね……!」
ジニー「……ちくしょうさすが幸運薬!つづけてどうぞ!『コウモリ鼻くそ!!』」
ハニー「ハーマイオニーたちが言っていた、連中の向かった先は、こっちね……」
ハニー「やっぱり、出口に向かってる!本当に逃げるつもりなんだわ!あの、あの卑怯者の、っ」
ネビル「ハニー!!」
ハニー「っ、ネビル!よかった、無事ね!?」
ネビル「うん!サウンド対決をしかけてきたおかしな死喰い人を、僕の魂のほら貝でくだしてやったよ!!」
ハニー「よくわからないわ!!」
ネビル「それより……ハニー!さっき、こっちを走っていくのを見た!あいつだ!!あいつ……ベラトリックス!!!」
ハニー「! そう、あの女よ……!っ、ネビル!一緒に来る!?」
ネビル「もちの、一番豚だよ!あ、多分彼がいまのところ一番戦力になるかもだけどさ、ほんと」
ハニー「ごちゃごちゃ言わない!行くわよ!」
ネビル「ヒンヒン! 待ってろよ、待ってろ!ベラトリックス!!!」
ベラトリックス「あぁ、待ちくたびれたねぇ」
ハニー「っ!!」
ネビル「っ、この――」
ベラトリックス「『インペディメンタ』!」
ハニー「っ、動き、が」
ネビル「っ、この、この……!」
ベラトリックス「っはは、アッハハハハアハ!動きをにぶーくさせる呪いにしてやったのはさーぁ?なにもあんたたちに慈悲かけてやろうってんじゃないのさ」
ベラトリックス「おしゃべりをしようよ!えぇ!?ポッティーちゃん!ローングボートムちゃん!さぁ、さぁあああ!?」
ベラトリックス「あたしが残した悪意は、あーーーんたたちをどう壊したぁ!?えぇ!?聞かせてよ、えぇええ!?」
ハニー「っ、こい、つ……」
ネビル「っ、っっ!」
ベラトリックス「ッハハ、アアアヒャハアアハハハハ!?ポッティーちゃぁん!あたしがさぁ!あの坊ちゃんを、ほーーーんとうにあんたをふっとばすはずの間違いで殺したとおもうーーー!?」
ベラトリックス「ローーングボーーートムちゃぁあん!?あたしらがさぁ!!あたしらがさぁあ!!本当に!!あんたとババアが隠れていた場所を探し当てられてなかったとおもうーーーー!?」
ハニー「あん、た……っ、この」
ベラトリックス「ハッハ、アアアッハハハハ!!いーぃ目だ!!いーーーぃ女になった!!ポッティーちゃん!堕ちろ、そのまま堕ちっちまえ!!憎いかい!?殺したいかい!?!?その意気だよポッティーちゃん!もっともっとおかしくなれ!!あたしを殺しにこいブっ殺し返してやるからさぁああ!それがさぁ!!楽しくて仕方ないよねぇえ!」
ネビル「……僕は、っ、あんたを、パパとママの前にひっぱってって、やるんだ!」
ベラトリックス「うーーん?ローングボートムちゃん、あまーいこと言ってるねぇ?」
ネビル「っ、うる、さい!あんたなんかの、おもう、通りになんて!」
ベラトリックス「ふーん、ふーーーんそう、そうそう。さあっすが気高いローングボートムのご長男。ふーん。そんじゃぁさ、どうすれば壊れる?あんたはどうすりゃ挫ける?どうすりゃ憎む?あたしじゃなくてもいい、どうすりゃあんたは面白くなる?」
ベラトリックス「そもそもあたしらがお前の両親を襲った原因知ってるか、ロングボトム」
ネビル「え……」
ハニー「っ、やめて……!!」
ベラトリックス「知るはずないっかー。ポッティーちゃんもよーうやく教えてもらったんだもんねぇ、あの予言のことは」
ネビル「よ、げん……?それって、あの、時の」
ハニー「やめて!!やめて!!」
ベラトリックス「やめなーーーい。ロングボトム、あんたはこの子になるかもしれなかったんだ」
ネビル「……僕、が、ハニー……?」
ベラトリックス「そーぉ、あんたはこいつと同じ、我が君の敵になる『かもしれない』っていう予言の、該当者だった」
ネビル「意味、が……」
ベラトリックス「あーぁ、そうさ。あんたは違った。こっちのポッティーちゃんが我が君に選ばれた」
ベラトリックス「そんでもさぁー?我が君の敵、になる『かもしれない』っていう、資格はあったわけでしょー?」
ベラトリックス「そーんな両親ならさーぁ……我が君の情報をもってる『かもしれない』じゃん」
ベラトリックス「上手くいきゃ聞きだせる『かもしれない』」
ベラトリックス「ついでにあたしが数年後、ぶっ殺すのを楽しめる『かもしれない』」
ベラトリックス「だーからさぁ」
ベラトリックス「あんたが、アッハハハハハ!!選ばれなかったのが、あんたの両親がぶっ壊れた理由!!」
ネビル「」
ベラトリックス「こっちのポッティーが選ばれっちまったのが!あんたの両親が死ぬ想いをした理由!!!」
ハニー「やめて……もう、やめて!!!!」
ベラトリックス「あんたは『選ばれなかった男の子』なんだよ、ネーーーービルーーー!?」
ネビル「ァ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ベラトリックス「『ステューピファイ』」
ドサッ
ハニー「なんてこと……あん、た……なんてこと」
ベラトリックス「ハァッハハ、ポッティーちゃん、あんたまだ動けないの?ネービルちゃんは自力で解いたのにさぁーぁ。あー、こりゃこいつも面白くなるねぇ」
ベラトリックス「どうなるかなぁ。こいつは色々考える。あんたがこいつの両親のことを知ってたなら尚更だ」
ベラトリックス「なんであんたは黙ってた?なんであんたは教えてくれなかった?一言も」
ベラトリックス「 謝 る 事 さ え し て い な い 」
ハニー「っ」
ベラトリックス「起き上がったネビルちゃんが、誰を恨んでるかな!誰を憎んでるかなぁ!まーた教えてよ、ポッティーちゃん。そんじゃ、あたしはドラコとスネイプを褒めてつかわせにいかなきゃね」
ツカッツカッツカッツカッ
ハニー「……ぁ」
フッ ドサッ
ハニー「っ、やっと……ネビル!ネビル!!」
ネビル「」
ハニー「……あぁ……そうだわ……許されない、ことだった。あなたには……話しておくべきだった、かもしれない」
ハニー「けれど……わたし、わたし、これ以上、あなたに辛い思いなんて、って……」
ハニー「……っ、これ……ダンブルドアと、同じ、じゃない……わたし」
ハニー「どんなこと、でも……ネビルは、正しいことを知りたかったかも、しれないのに……」
ハニー「……ここで、待ってて。ネビル」
スクッ
ハニー「全部、終わらせて……あなたにきちんと、説明するわ」
ネビル「……」
校庭
ハグリッドの小屋
ベラトリックス「ハーーーグリーーーッドーーーー!げーーーんきぃー!?」
ボォオオオオオオオッッ!!
ハニー「! そんな……ハグリッド!ハグリッド!!!」
ベラトリックス「うげっ、もう来たポッティー。なぁんだ、ネビルちゃんの枕元でシクシク泣いてるかと思ったのにさーぁ」
ハニー「っ、舐めんじゃ、ないわよ!『ステューピファイ!』」
ベラトリックス「んー?スネイプとドラコが遅い……城で手間取ってる?ったく腰抜けども」
ベラトリックス「そんじゃもうしばらく遊んであげるよ、ポッティーちゃん。そんで、さっきの何?遊んでんの?」
ハニー「っ、まるで……『ペトリフィカス――」
ベラトリックス「はずれ、はずれ!てんで的はずれ!あーぁあぁ!ポッティーちゃん、てーんで手ごたえがないね!いいのは威勢だけ!」
ベラトリックス「だからさっき見逃してやったんだ。床にでも転がって静かにしてろ。あんたを殺すのは我が君なんだから――そう思うでしょ、チャンピオン?首尾はどうだったい?」
「……えぇ、上々……とは、言えませんでした。ベラトリックス様」
ハニー「っ、まだ、誰か…………え」
ベラトリックス「あぁ!?アクロマンチュラの群れがいる、ってぇー話だったろう。どうなってるのさ、ええ?セードリック!」
セドリック「……」
ハニー「……セ、ド」
ベラトリックス「『インカーセラス、巻け』」
ハニー「っ、ぁっ!」
ドサッ
ベラトリックス「そこで大人しくしてな、ケッ。おんや、そういやチャンピオン、あんたこいつと前になんかあったっけねーぇ?」
セドリック「……えぇ、まあ」
ハニー「っ、セドリック!!セドリック!!操られているんでしょ!?そう、なんでしょう!?」
ベラトリックス「今はどーうだい?え?我が君に仕えて!言ってやりなよ、セドリック!」
セドリック「……凄く、清々しました。我慢なんて、しなくていい。自分の、やりたいようにやっていい」
ハニー「言わされてるんだわ!!そうなんでしょ!!!ねぇ!!!」
セドリック「……ハニー」
ハニー「っ、あぁ、やっぱり」
セドリック「僕の邪魔をしないでくれ。僕は今、とても幸せなんだ」
ハニー「…………」
セドリック「我が君に仕えて、僕は幸せだ。今……僕は、我が君のための王国を作る手伝いをしてる」
ハニー「なに、それ……なによ、それ!!」
セドリック「仲間を集めてるんだ。従う仲間を、従わない奴も、仲間に。そうさ、僕は――ハッフルパフの」
ハニー「そんな、ことに!!そんなことに!!あなたの誇りを口にださないで!セドリック、セドリック!!!目を……さまし……」
セドリック「……行きましょう、ベラトリックス様。この森にはもうめぼしいものは何もいません」
ベラトリックス「ふーん。ケンタウルスに手ぇだすのは野暮だしねぇ。そうするか、はーいはい」
セドリック「えぇ、あと、あるとすれば」
ハニー「っ、セドリック!!!セド、リック!!!!!」
セドリック「……寝息のうるさい、小山くらいですか」
ベラトリックス「なんだいそりゃ。ジョーク?笑えねー。アッハハハハハハヒャハハ!じゃーーーぁね、ポッティーちゃん!」
ハニー「っ、っぅ、くっ」
ハニー「こんなの……こんな、ロープ」
ハニー「っ、すぐ、解いて……そうよ……セドリックの頬、ひっぱたいて」
ハニー「それ、で……ほど、け……!」
ボォオオオオ!ドサ!!ゴロゴロゴロゴロ!
ハニー「きゃぁ!?」
シューーーッ……ガバッ!
ハグリッド「うぉおお燃え尽きっちまうところだった!あぶねぇあぶねぇ!ファング、平気か!?え!?なーんで火事になっちまったかなぁー!」
ファング「キャインキャイン!」
ハニー「……」
ハグリッド「なんだかベラトリックスみてぇな声が聞こえた気がすんが、悪夢かな……おぉ!?ハニー!?そんなところでなにしちょ……あ、こりゃ最高の夢だ、違いねぇ。じゃねぇとハニーがこんな格好でこんな場所にいるわけねぇやな、うん」
ハニー「……あの騒ぎの中でよく眠れていたわね、ハグリッド。起こしなさいこの豚!あと縄、解いて!どうなってるの、これ!!」
ハグリッド「!?ほ、本物だ!ヒンヒン!」
ハグリッド「ほい、っと。ハニー、この騒ぎはなんだ?え?」
ハニー「ありがとう……えぇ、大変なの。大変、なのよ。とにかく私は……ベラトリックスは逃げたわ。スネイプをなんとしても、捕まえなきゃ」
ハグリッド「は?スネイプ? なんでまた奴さんが……おぉ、噂をすりゃ、あれがそうなんじゃねぇのか?」
ハニー「っ!」
スネイプ「走れ!走るのだ、っ、っはぁ、っ」
マルフォイ「あ、あんたの方が大分息上がってるけど……くっそ、ウィーズリーの奴め」
スネイプ「っ、しつこく、やつが追い掛け回してくれたおかげで、っ、撤退が遅れた。途中、突然糸が切れたように倒れたがあれは……」
ハニー「スネイプ!!!!」
スネイプ「!?」
マルフォイ「!」
ハグリッド「は、ハニー!怪我しとるっちゅうのに、走っちゃなんねぇ!ハニー!?おいファングこら!もう火からは出られただろうが!放せっちゅーに!!」
スネイプ「っ、走れ!校門を抜けるのだ、そこまで行けば『姿くらまし』できる!」
マルフォイ「で、でも僕、まだ許可は!」
スネイプ「今更その程度のことを気にしてどうするのだ!行け!!」
ハニー「行かせる、もんですか!!『ステューピファイ!』」
スネイプ「はずれだ、ポッター!得意の運動神経も、もはやかたなしなのですかな!」
ハニー「っ、待ち、なさい!待て!っ、っ、『クルーシ――ぁぁ!!」
バーーンッ!ドサザザッ
スネイプ「ポッター、貴様には『許されざる呪文』など使えない!貴様にはそんな度胸はない!というより、能力が――」
ハニー「っ、っ、『インカーセ――っあぁ!!」
バーンッ、バタッ
スネイプ「我輩が杖を一振りしただけでいなされる呪詛で、一体なにをしようというのだ!諦めろ!」
ハニー「戦い、戦い、なさいよ!!この、この臆病者!!!」
スネイプ「臆病者!?我輩を臆病者と呼ぶか、ポッター!貴様の父親は我輩に一対一で正面からしかけることはしようとしなかった!これはなんと呼ぶのだ!え!?」
ハニー「今――パパは――関係ないでしょ!!!!!!!!」
ハニー「『ステューピ――っあぁ!」
バーーンッ!ドサッ!
スネイプ「また防がれたな、ポッター!貴様が口を閉じ、心を閉じることを覚えぬうちは何度やっても同じこと!我輩には何の呪いが来るのか筒抜けだ!」
ハニー「うるっ、さい、『インペディメ――っ!!」
バーンッ!ドサッ!
スネイプ「おいもういい加減にしろ!いい加減にしろ!!!胃が痛い!!!せめて倒れる時は目を見開いておくのだ!!!」
ハニー「いつもと言ってること、間逆、じゃない!!っ、っぅ、っ!『セクタム――」
バーンッ!ゴロゴロッ
スネイプ「その呪いを我輩に向けるな!!!絶対に許さん!!絶対に!!!」
ハニー「っ、『レビ――」
バーーーーンッ!!
スネイプ「――やめろと言っている!我輩の呪文を、本人に対してかけるとはどういう神経だ?ポッター!」
ハニー「っ、っはぁ、っ……は、ぁ?」
スネイプ「そういう呪文の全てを考え出したのは、我輩だ。我輩が『半純血のプリンス』だ!!」
ハニー「……嘘、嘘よ!!!」
スネイプ「黙れ!!我輩の発明したものを、汚らわしいお前の父親と同じに我輩に向けることは許さん!!!そんなことはもう、二度と!!!!」
ハニー「っ、じゃぁ、じゃぁ殺しなさいよ!!ダンブルドアを!!殺したように!!!!!!!!この臆病者――」
スネイプ「我輩を!!!!!」
バーーーンッ!!!
ハニー「っ、ぁ……っ」
ドサッ
スネイプ「臆病者と、呼ぶな!!!!その顔でっ!!!!!!」
ハニー「……わ、け、が……っ」
ハニー「」
・
・
・
・
・
・
ハグリッド「ハニー、ハニー!でーじょうぶか、ハニー!」
ハニー「……ゴボッ、ごほっ、ごほっ!!!っはぁ、っ、えっ、えぇ。ごほっ、ハグリッド。今何、飲ませたのよ」
ハグリッド「タンポポジュースだ!お前さん、というかお前さんのほらあれが好きだったろ!」
ハニー「っ、出来る、豚ね。ハグリッド、お城は……お城は、どうなの?」
ハグリッド「あぁ、静かなもんだ。なにがあったのかは、よくわからねーがよ。騒ぎは収まったみてーだ」
ハニー「……そう」
ボォオオオオオオオオッ
ハニー「……ハグリッドの小屋、燃えたままだわ。火を、消さないと」
ハグリッド「あー、そうだな。うん、ホラスにまだいくつかやるもんがあったんだが、もったいなかったなあ……呪文は、なんつったっけ?」
ハニー「『アグアメンティ』よ」
ハグリッド「あぁ、そんなもんだったな。どれ、傘から水が出るってのも変な話しだが……『あぐあめんてぃ!』」
ハニー「……『アグアメンティ』」
ブシャァアアアアアアアア!ブシャアアアアアアアアアアアアア!
ハニー「……随分、焼けてしまったわね」
ハグリッド「あー、そうさな。でも平気だ、うん。心配いらねぇ。こんくらいのこと、俺はしょっちゅう起こしちょる」
ハニー「……」
ハグリッド「この程度なら、ダンブルドア先生がすーぐに直してくれる。だから……お、おぉ?ハニー?」
ハニー「……っはぐ、リッド」
ハグリッド「お、おぉ!?どうした!?な、なんで泣いちょる!?え!?これぁ別にお前さんが燃やしたわけじゃねぇ!違うぞ!そうだろうが!?だから別に、ダンブルドアに怒られることなんてねぇんだ!だから……」
ハニー「違う、違うの……ハグリッド」
ハグリッド「どうした?どーした、ハニー?うん?」
ハニー「ダンブルドアは、死んだの……スネイプが、殺した。あいつが、先生を殺したの……」
ハグリッド「……? あぁ、ハッハッハ!そうか、そうか!つまり、そうだ。ダンブルドア先生は、スネイプに死喰い人といっしょにいけ、そう命令しちょったんだろ?でもなぁ、ハニー。落ち着かなきゃいけねーよ?あの人がダンブルドアを、殺すはずがねーだろう?」
ハニー「っ、はぐ、りっど……っ、っぅ」
ハグリッド「……ほれ、このコートを着て少し休んどれ。お前さんは気が動転しちょるんだ、そうに違いねぇ。落ち着いてから、一緒にダンブルドアにこの話しをしに行こうじゃねぇか?え?お前さんが、とっても……」
ハニー「ぁぁ、ぅぁぁああ、ああああ、ぁ」
ハグリッド「あぁ、とっても泣き虫で、可愛いって言うのをよぉ。ダンブルドア先生様に話して、やろうな?」
ザクッザクッザクッ
ハグリッド「お前さんを背負うことはあんまりなかったなぁ、え?ハニー!」
ハニー「……っ、ぅ」
ハグリッド「まだ泣いちょるんか?それに、震えとる。寒いか?え?……ん?」
ハニー「……ぅぅ」
ハグリッド「ありゃなんだ……?なんでこんな時間に生徒があんなに、外に出ちょるんだ?みんな夢遊病なんか……ん?」
ハグリッド「おいおい、ありゃ……『闇の印』!『例のあの人の』!そんで、その真下の塔の、地面……」
ハグリッド「みんなが、黙って見ちょるのは……うんにゃ、黙ってるだけじゃ、ねぇけど。なんで泣いちょる。なんで……」
ハグリッド「……通してくれ。とおして。ごめんよ。通して……あぁ」
ハニー「っ、ハグ、リッド……降ろして」
ハグリッド「あぁ、あぁ……そんなこと、あるわけねぇ。だって、だって、ダンブルドアは……ダンブル、ドアは」
ハグリッド「なんで……あんなところで、倒れちょるんだ……先生……ダンブルドア、先生が」
ザクッ、ザクッ、ザクッ
ハニー「……」
ダンブルドア「」
ドサッ
ハニー「……わか、ってた。金縛りが、解けたのは……あなたが、死んじゃったからだろう、って」
ハニー「わかって、た、けれど……こんなの、嫌よ。どうして……」
ハニー「あなたみたいな、偉大な人が……どうして」
ハニー「ダンブルドア……ダンブル、ドア!!」
ハニー「ぁ、ぅぁ、あああああああ!!ああぁーーーーーー!!!」
ハグリッド「先生、先生ぇえええええ!!いやだぁああああああああああ!!オォオオオ、ウワァアアアアアアアン!!」
ウワアアアアアアアアアアン!
オーーーイオイオイオイオイオイオイ!
ビーーーーーッ!
ハニー「っ、ぁ……ひっ、っく、……」
ハニー「やっと……役に立てると、思ったの、に」
ハニー「たった、一つ。分霊箱を見つけた、だけなのに」
ハニー「そうよ、これ……ロケ、ット」
ジャラッ
ハニー「ロケット……え」
ハニー「これ……違う。違う、わ……サラザールの、ロケットじゃない」
ハニー「記憶で見たのと、違うわ。大きさも……刻印も、ない、じゃない」
ハニー「……ぁ」
パカッ、パサッ
ハニー「簡単に……これを壊すのはとっても困難だって、言っていたのに。簡単に、開いたわ」
ハニー「なぁに、これ……この、羊皮紙……て、がみ?」
カサカサッ
パラッ
ハニー「……」
『闇の帝王へ
あなたがこれを読む頃には、私はとうに死んでいるでしょう
しかし、私があなたの秘密を発見したことを知ってほしいのです
本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです
しに直面する私が望むのは、あなたが手ごわい相手に見えたその時
もう一度死ぬべき存在になっていることです
R.A.B
p.s デス・イーターは流石にダサいです』
ハニー「そん、な……」
ハニー「これは、分霊箱じゃなかった……なん、で」
ハニー「なんて……余計なことを、した、のよ。それならどうして、仕掛けも元に戻して、しまうのよ」
ハニー「そのせいで、ダンブルドアは……なんて、ことを」
ハニー「R.A.B……シリウスの、弟、さん!!!義弟さん、とはいえ、あんまりよぉ……!」
医務室
ハニー「……」
ギィィッ
モリー「あぁ、ビル……あぁ、なんてこと……私のかわいいこ、ウィリアム、あぁ……」
ハニー「っ……みん、な」
ロン「ハニー!ヒンヒン!元気……じゃ、ないよな。みーんなバテバテさ、もちのロンで」
ハーマイオニー「ハニー、平気?怪我、あるに決まってるわよね!こっちにきて、応急処置ならできるわ……ポンフリーは、ビルの手当てで忙しい、から……」
ハニー「……ビルは、何が」
ジニー「……グレイバックに噛み付かれたの」
ハニー「……満月じゃ、ないなら」
リーマス「あぁ、通常ならばね。問題はないはずだ……だが奴はここのところ、変身してなくても人を襲う危険な状態だった……狼人間と人との境が、おかしくなっていたようだ」
トンクス「ビルがどうなるのか、わからない……とりあえず、ダンブルドアに聞かなきゃ」
ハニー「……ダンブルドアは、死んだわ」
トンクス「うん?」
ハニー「……死んだの。スネイプが殺した。私は、その場にいたわ……何も、何も、でき、なく……っ」
ハーマイオニー「っ、ジニー、そっち!ロンは下、分かってるわね!」
ジニー「もちのハニーの一番の豚よ!ハニー……あなたが悪いわけじゃないわ」
ロン「そうさ。そりゃ、びっくりだけど……あの人は君がそう思うことを嫌がると、僕ぁ思うね」
ハニー「っ、ぐすっ」
リーマス「……セブルス」
トンクス「……うん、リーマス。かっこいいけど、ちょっと拳握って凄むのはもうちょい後にしよっか。ね?空気大事」
リーマス「……ゴミクズ下衆野郎はどれだけ経ってもゴミクズに過ぎないということで」
トンクス「リーマス、口口、口悪い」
リーマス「……我々はダンブルドアが信じていたから、スネイプを信じた。私も、彼の成長を信じていた……愚かだった。せめて、ダンブルドアからはっきり聞いておけばよかったんだ。何故、彼の言うことを信じるのかと」
ハニー「……その原因は、簡単よ。ヴォルデモート卿にあの予言の情報を流したのは、スネイプなの」
リーマス「!」
ハニー「……だから」
リーマス「……いや、もういいよハニー。ありがとう……余計にわけがわからない。セブルスがあの二人を死なせたことで後悔したと?ジェームズを心の底から憎んでいるあの、セブルスが?」
マクゴナガル「……アルバスが私達に説明しなかったのももっともです。そんな理由であれば、騎士団員は断固としてスネイプを招き入れなかったでしょう……何より我々は、ジェームズ・ポッターの味方だったのですから」
ハニー「……それにスネイプは、ママのことを『穢れた血』って呼んだわ。ママのことも、どうでもよかったのね」
ロン「よっしゃ今度あったらあいつ屠殺もんだぜあんにゃろ。おいハーマイオニー、気にするなよな。君はさいっこうの魔女なんだから」
ハーマイオニー「えっ!?べ、別に私は……あ、ありがとう」
モリー「ぐすっ、ビル、ビル、起きて御覧なさい!あなたの末弟がニヤニヤできる展開よ!」
ロン「しなくていいから、ママ!マーリンの髭!」
ロン「僕達がしくじったのも、悪かったんだ……」
ハニー「……あなたたちは、立派に戦ってたように思えたけれど」
トンクス「あー、うん。ほんとほんと。みんないい闇払いになるよ……ルーナなんて、あんな悔しい負け方したんだ一生恨んでやる!みたいなことを言わせるくらいだしね」
ルーナ「鞄、大きいのにしておくもン」
ロン「ドラゴン皮なら提供できるよ兄貴がさ……僕たち、マルフォイたちを必要の部屋の前で待ち構えてただろ?そしたらあいつ、WWWの『インスタント煙幕』を使いやがって」
ハニー「……フレッドとジョージの!?どうしてマルフォイが、あれを……」
ロン「あー、それなんだ一番のしくじりってのは……僕らってか、僕の、だけど……ほら、夏にあいつをノクターンで追っかけた時……伸び耳を出そうとして、何個か包みを落としっちまってたろ」
ハニー「……」
ロン「うん、ごめんよ……ごめんって言っても、言い足りない。でもあの、ほら」
ロン「……僕のこの傷、大半がハーマイオニーさんからの鉄槌だから、それでその、見逃してくんないかな」
ハニー「……どうりで善戦してたはずなのに包帯だらけだと思ったら」
ハーマイオニー「自業自得よ……でも、他にも大勢『死喰い人』がいたんだもの。そんなものに頼らなくても、結局同じだったでしょうね」
ロン「なんだったんだよ僕のこの傷」
ハニー「……ネビルは?」
ジニー「あっちのベッド。外傷は、大したことないんだけど……」
ロン「なんつったっけな……精神的ショックとやらで目覚めないんだろう、ってさ」
ハニー「……そう」
ハーマイオニー「ネビルも、勇敢だったわ。ねぇジニー?どう?」
ジニー「どう、って……そ、そうだったわね、としか」
ロン「おいやめろハーマイオニー。それでさ……外傷といえば、ビルは……」
バターーーーン!!
ハニー「!?」
ポンフリー「だからどうして医務室は毎度毎度その強さで開かれるんですかねぇ!!」
フラー「ふーっ、ふーーっ、ふーーーーっ、ビルが、大怪我したというのは、本当でーすか!?」
ハニー「フラー……!」
モリー「あぁ、えぇ……あなた……こっちに来なさいな」
フラー「っ、ビル……ん~……」
モリー「あぁ……いつでもとってもハンサムで、可愛かった、ビル……あぁ」
フラー「ふんふん、ふん……」
モリー「もうすぐ、もう、結婚する、はずだった、のに」
フラー「ふんふ……んーふん?ウン!?オッオー……結婚する、『はず』!それ、どういう意味でーすか!?」
モリー「え、え……?」
モリー「だって、あなた……」
フラー「ビルは記憶でも、なくしてしまったのでーすか!?それなら、私、もう一度ビルに愛されまーす!それだけでーす!」
モリー「い、いいえ。そういうわけでは、ないけど。でも、でも、ねぇ……?だって」
フラー「ビルはもう起き上がらないんでーす?だったら、わたし、ここで式あげまーす!神父さん呼びまーす!お姫様抱っこしてもらえないのは、ほんのすこーし残念でーす!」
モリー「ちがう、けど……だって」
フラー「狼人間なんかが、ビルがわたーしを愛することを止められるわけないんでーす!むしろ前より求めてきても、さもありなん!」
モリー「ち、ちが、私はきっと……あなたが」
フラー「……わたーしが?」
モリー「……あの」
フラー「わたーしが?ビルを愛さなくなる、そう思ったんでーす?この人の顔が、こんなふうになったからー……」
フラー「ハハは!」
モリー「は、はh」
フラー「冗談じゃねーぞでーーーーす!!!!」
モリー「ひぃいいいっ!?」
ロン「……なんで美人な女の子って怒るとあんなに怖いんだろうな」
ハニー「ハーマイオニ-含めてよね、それは」
フラー「わたーしが、わたーしが!?」
フラー「ビルの顔がこんな風になったから!?こんな噛み傷だらけになったから!?」
フラー「愛さなくなる、お別れしましょうララバイアデュー!」
フラー「そうなってしまーうと!?そう思ってたんでーす!?」
モリー「あ、あの、はい」
フラー「わたーし、ビルの顔がどうであろうと気にしませーーーん!!!この傷は、ビルが勇敢に戦った証拠でーす!っヒューッ!イッカスー!」
フラー「傷がなんでーすか!すこーし顔が崩れて、だからなんでーすか!」
フラー「孤高で至高でどこまでも絶世な私が隣にいれば!!十分ふたーりぶん美しいでーーーーす!!!」
フラー「ウィ!?!?」
モリー「……う、ウィ」
フラー「んーふん。分かればよかろうなのでーす。それで、その軟膏はわたーしが塗りまーす!」
モリー「……」
ハニー「……」
ロン「……」
ハーマイオニー「……」
ジニー「……」
マクゴナガル「……」
リーマス「……(視線がすごく痛い)」 トンクス「……」
アーサー「……(席外してる間にすごいことになってた)」
ルーナ「~~~♪」
モリー「大叔母のミュリエルが……ゴブリン製の、それはそれは綺麗なティアラを持っているわ」
フラー「……」
モリー「あなたの結婚式に、貸してもらえるよう……説得できると思うの。ううん、してみせる。きっと……あなたに似合うと思いますよ」
フラー「それは、それは――とても、綺麗でしょう」
モリー「……ビルを、よろしくね。ふ、フラー……あぁ、フラー!」
フラー「っ、おかあさまーーーあああ!!」
ガシッ!
ロン「……えぇっと。なんだこれ。なんでママとフラー、抱き合って泣いてるんだい?」
アーサー「さぁ……女性の世界は不思議だねぇ……」
バンッ!!
トンクス「ほーーーれ、見たか!!!見たか、リーマス!!!!」
リーマス「……トンクス、ここは病室だから。あとベッドの上に立たない……」
トンクス「細かいことよしゃらくせぇ!よーし!!ふっきれた!!私ふっきれた!!カムバック私!おかえりショッキングピンクヘアーーー!」
リーマス「だから、病室……」
トンクス「フラーはそれでも結婚したいの!分かったでしょう!?噛まれたというのに!そんなことどうでもいいのよ!!」
リーマス「……次元が違う。私は完全な狼人間だ。事情が」
トンクス「でも私も!!私だってまったく気にしないわ!!!!百万回もそう言った!!!あなたを!!!」
リーマス「トンクス、やめ、声、でか」
トンクス「あなたを愛してるって言ってんでしょうがあああああああああああああ!!!」
リーマス「……この甘ったるい空気が……チョコレートになってくれたらいいのに」
アーサー「『エクスペクト・パトローナム!』 マッド-アイとキングズリーのところへ!トンクスが――」
モリー「『エクスペクト・パトローナム!』騎士団本部へ!リーマスと!」
ジニー「『エクスペクト・パトローナム!』チャーリーに!ついにひっついた、って!!」
リーマス「早い早い情報早い前倒しに早い!ちょっと、待ってください……私はトンクスにとっては年を取りすぎているし、貧乏だし……危険で」
トンクス「へーい、リーマス!リーマス!それじゃあなた、私が……きらいなの?」
リーマス「……そんなわけはないだろう」
トンクス「ちゃんと言ってよ!」
リーマス「……っ、愛、して、いる!」
カチッ
フレッド「はいはいどうも。はいよ姐御、伸び耳録音完了!ってねぇ」
ジョージ「いやぁ面白い気配がすると思って隠れてて正解だったなぁ」
トンクス「さんきゅーフレッジョ!」
リーマス「う、うわ、うわ、わ、分かってるのかい!?今君たち、この一年以上の私の苦悩とか葛藤とか、そういうの全部蹴飛ばしてるんだよ!?いいかい、トンクス!私は」
カチッ
『愛、して、いる!』
リーマス「……」ガクッ
モリー「ねぇリーマス?あなたのああいう悩みはばかげていると、私も何十回と言っていますよ……?流石に、百万回は、ふふっ、言ってないけど」
リーマス「微妙な煽りをありがとうばかげてなどいないよ……トンクスには、誰か、若い……」
アーサー「でも、トンクスは君『が』いいんだ。若くて健全な者が、いつまでもそうだとは限らないだろう?」
リーマス「そ、そもそも、これはなんですか……ダンブルドアが、死んだというのに……こんな話しをして」
マクゴナガル「アルバスの友人として。リーマス。世の中に少し、愛が増えたと知ったら。彼はとてもとてもお喜びになったでしょう」
リーマス「……ひどいや、先生……それじゃ、もう」
トンクス「っへへ。観念した?リーマス?」
リーマス「……あぁ。ずっと、分かっていたさ……いつかきっと、この敵に負けてしまう時がくるんだろう、とね……」
トンクス「へ? それって……」
リーマス「……言葉にしたのは、さっきだけだが。トンクス……いや、ニンファドーラ」
トンクス「あ……」
リーマス「私はずっと、君g」
バターーーン!
ポンフリー「扉!」
ハグリッド「ぐすっ、ひっく、マクゴナガル先生様!先生、俺、俺ぁ運んできました。えぇ、ダンブルドアを……あれ……なんだろう……おれすっごくいい仕事してきたのに、このアウェー感。悲しい」
ハグリッド「よがったなぁ、よかったなぁ、え?トンクス、お前さんならぜってぇリーマスとうまくいく、そうおもっちょったんだ」
トンクス「へっへー、ありがとうハグリッド!」
リーマス「……トンクス、つかぬことを聞くけどね。どれくらいの人たちに相談していたんだい?」
トンクス「え?んーと……ハニーたち以外、大体……?ほら、私バカだからこういうの……あれ?リーマス、崩れ落ちてどうしたの、もしもーし」
リーマス「……あぁぁ」
ハニー「ちなみに私たちもとっっっっっくの昔に気づいていたわよ」
ロン「あからさまだよな」
ハーマイオニー「ロンにこれ言われるって、相当よ?」
ジニー「パパたちが話してるの聞いてたわ」
フレッド「僕らは、なぁ?」
ジョージ「笑いながら、な」
リーマス「……あぁぁぁぁ」
トンクス「ま、丸まらないで、リーマス、えーっと、ど、ドンマイ!」
マクゴナガル「さて……大体の事態は把握できました。私は……校長代理としての責務を果たさなければなりません」
ハニー「……そうね。ダンブルドアがいなくなったんだもの……マクゴナガル先生が」
マクゴナガル「えぇ、取り仕切らなければなりません。今後の学校の運営のこと、残りの学期のこと、魔法省への説明……」
ハニー「……先生。ダンブルドアのお葬式は、どうなるかしら」
マクゴナガル「……私は、ダンブルドアがこのホグワーツに眠ることを望んでいたことを知っています。えぇ、葬儀はここで執り行いましょう。そして、ここに立派な墓を作ります……先生の生徒として」
ハグリッド「ぐすっ、でけぇ石運ぶのは俺に任せえくだせぇ、マクゴナガル先生!」
マクゴナガル「えぇ、頼みましょう。それではみなさん、しっかり休むように……ポッター」
ハニー「……はい、先生」
マクゴナガル「……何を言っても、慰めにはならないでしょう。ダンブルドアという存在は、あまりに皆に取って大きい……あなたはそれを目の当たりにしあ」
ハニー「……」
マクゴナガル「ですから、皆で支えあうのです。そう……」
マクゴナガル「あ……愛じゃよ、と」
ハニー「」
ロン「」
ハーマイオニー「」
ジニー「」
リーマス「」
トンクス「」
ハグリッド「」
モリー「」
アーサー「」
ルーナ「わー」
フラー「?」
マクゴナガル「………………」
マクゴナガル「『オブリ――」
フレッド「すとっぷすとーっぷマクゴニャガル先生!大丈夫!笑ったりしませんって!」
ジョージ「ちょーっと驚いてるだけなんですって!大丈夫、ちゃんと録音してますよ!」
マクゴナガル「っ、フレッド、ジョーーージ!!」
フレッド「おぉこわこれこそ我らがにゃんこ女史!」
ジョージ「からかういい種を来年もばらまかにゃ!」
葬儀前日
ロン「試験がなくなるなんてさ、ダンブルドアは最高の贈り物を残してくれたよな」
ハーマイオニー「不謹慎にも程があるでしょ……でも結局、来年からはNEWT試験があるから勉強しなくちゃいけないことには変わりないわ」
ハニー「……そうね。来年の……試験」
ハーマイオニー「……ハニー、平気? って、そんなわけないのは、分かってるけど」
ハニー「……大丈夫よ。座り心地のいいロンもいるし……あなたの髪はフワフワだし」
ハーマイオニー「それなんだけど……私いつまであなたのクッション役なの?ね、ねぇ、これ勉強しにくいでしょう?」
ロン「僕にとっては常にどうぞる気配がするから油断ならないけどね。ネビルいないから不安だなぁ……いつ起きるのやら」
ハニー「……ダンブルドアの葬儀までには、起きて欲しいわ。私……話さなくちゃいけないことが、あるもの」
ハーマイオニー「……予言の、ことね?」
ハニー「ええ……あぁ、それに」
ロン「うん? お、アーニー!ジャスティン!よう!ちょっとどうぞる待機組になってくれないかい?」
ハニー「……アーニーとジャスティンにも……話しておく、べきだわ。彼らは、ずっと信じてるんだもの……セドリックの、こと」
ハーマイオニー「……お話しする間、降りておく?」
ハニー「……こうさせて」
ハーマイオニー「……はいはい」
ロン「アーニーとジャスティン……意外に、こう……冷静だったなぁ」
ハーマイオニー「そうね。『話してくれて、ありがとう!ヒンヒン!僕らのハニーはやっぱり優しい!』……って」
ハニー「少しくらい、取り乱すかと思ったわ……けれど、そうね。あの異様さは、直に会わないと伝わらないかもしれないわ」
ロン「直に会う、ね。あー、そういやあのプリンスの件はどうなったのさ、ハーマイオニー。結局あれはスネイプの糞ったれ下衆野郎だったわけだけど」
ハニー「えぇ、酷い童貞のね」
ハーマイオニー「その使い方凄いわね……えぇっと、アイリーン・プリンスでしょう?それがね……まったく別人、というわけでもなかったのよ。これ、見て」
ロン「結婚報告欄?『アイリーン・プリンス』と……『トビア・スネイプ』!そんじゃ、あれはスネイプの母親だったんだ!どおりで美人じゃないはずだよな!」
ハニー「それで、殺人者を生んだわけね……」
ハーマイオニー「い、言い方……あのね、トビア・スネイプはマグルだったそうよ。だから、『半純血のプリンス』っていうのは、王子ってことじゃなく……」
ハニー「……純血の、自分の母親の血筋の方だけを誇張させたいがための、呼び名だったわけね……あぁ、呆れた。本当にあっちの人たちって趣味が似かよるんだわ……」
ハニー「ヴォルデモート『卿』 半分純血の『プリンス』……次はなぁに?どうせなら徹底しなさいよ、この私のように」
ロン「君の名乗りはいつだってすばらしいもんなぁ」
ハニー「お褒めの言葉は高貴で可憐で儚げで、伝説的で道徳的で家庭的で模範的から受け付けるわ」
ロン「ヒンヒン!」
ハーマイオニー「……同じ穴の狢、って言ったら、怒られるから黙っておきましょう」
ハニー「……」
ハニー「(プリンス)」
ハニー「(あんなに、お世話になった、って思っていた人が……あの、スネイプだった)」
ハニー「(私は、どうしたいのかしら)」
ハニー「(ダンブルドアと、話したわ。ヴォルデモート卿はなんとしても、私が倒すんだ、って)」
ハニー「(それと同じくらい、私はあの人を憎んでるのかしら)」
ハニー「(そう、だとして……)」
ハニー「(ダンブルドアは、もういない……けれど)」
ハニー「(約束は、まだ。残ってる)」
ハニー「(そうよね、ダンブルドア……)」
ハニー「(だから……)」
ハニー「……」
ロン「ハニー、ハニー?聞いてるかい?だからさぁ、この写真見るに男の髪質はさぁ」
ハーマイオニー「一概にそうは言えないって研究がされてるって言ってるでしょ? ハニー、どうしたの?」
ハニー「あぁ……えぇ、なんでもないの。ただ……明日はなにを着て参列すればいいか、って。考えていただけ。それだけよ」
ロン「……」
ハーマイオニー「……」
翌日
パカラパカラッ
ブルヒィイイイン
ガヤガヤガヤガヤガヤ
ザワザワザワザワザワ
ハニー「……凄い人の数ね」
ロン「ほんと、すっげぇや。マーリンの髭。もしかしてクィディッチ・ワールドカップの時くらいいるんじゃないかな……」
ハーマイオニー「それほど、やっぱり偉大な人だったのよ。ダンブルドアは」
ハニー「……なんだか、しっくりこないわ。えぇ、もちろん凄い人だった、けれど……」
ハニー「……いつだっておちゃらけて、いつだって不真面目で、それで……真剣に、私に向き合ってた」
ハニー「……あぁ、ロン?レイブンクローのテーブルは見える?ルーナはいるかしら」
ロン「うん? あれ、いないな。特にそこまでの怪我してなかったはずだけど……」
ハニー「……見えなくなっただけで、すぐそばに。えぇ、ルーナは言ってたわ……こんな形式ばったもの、いらないのよ」
ガタッ
ハニー「行きましょう」
ロン「!ど、どこへさ!どこへでも!ヒンヒン!乗りなよハニー! ほら、ハーマイオニーも急ぐんだから掴まれよ!」
ハーマイオニー「ちょ、ちょっと!?大事な式典よ!?え、い、いいの?それじゃ……は、ハニー!?どこへ!?」
ハニー「……わたしたちが本当に、ダンブルドアを見送れるところ!」
医務室
ジニー「こんにちは。マダム、ネビルは起きた?私、ハニーに頼まれて迎えに……」
ポンフリー「あぁ、よく来てくれたわ!あの、あぁ!わたしも準備で大変だったものだから!ロングボトムが、目を離している間に!どこかへ行って、しまったの!!」
ジニー「えっ……?」
北塔
ロン「ふーっ、ふーーーっ、流石にさ、ハニーを背負ってハーマイオニー引っ張ってこの高さは、ふー、マー、ふー、髭だぜ、っと!あぁハニー、君、重くな痛い! 成長したんだね美しさもそなえて!ヒンヒン!」
ハニー「えぇ、そうね。加速度的に」
ハーマイオニー「あの、ハニー……ここに来て、よかったの?あなた……」
ハニー「……いいのよ。ちゃんと、踏ん切りは……ついていないけれど。つけなきゃ、いけないわ。ロン、扉を開けて」
ロン「君に頼まれたら冥府の扉だって!」
ギィィッ
フォークス「……フィィピー」
ハニー「……やっぱりここにいたのね。赤豚……フォークス」
ハーマイオニー「ダンブルドアの不死鳥、よね?」
ハニー「えぇ。あの日から、校長室からいなくなっていたそうなの……きっと今日、ここにいるって思ってた。主人想いね?フォークス」
フォークス「フィピッ!」
ロン「ヒンヒヒン!」
ハニー「えぇ、あなたもね。知ってるわよ、ロン……いつだって、支えてくれた」
ハーマイオニー「あぁもう、またそうやって……あなたたちらしいわよね、もう」
ハニー「えぇ、ハーマイオニー……あなたも私と一緒にいてくれて。いつだって、力になってくれた」
ハニー「……ねぇ、二人とも」
ハニー「大事な話しがあるの」
ロン「……」
ハーマイオニー「……」
ジャラッ
ハニー「……このロケットは、分霊箱じゃなかったわ」
ロン「……えっ?でも、だって……君とダンブルドアが!」
ハーマイオニー「そ、そうよ!あんな思いまでして!ようやく、手に入れたのに!」
ハニー「……えぇ。自分でも改めてそれを確認することが、怖くて。誰にも、このことは言えなかった」
ハニー「そもそも、分霊箱の事を話すのはあなたたちにだけ、だけれど」
ハニー「……本物の分霊箱は、シリウスの弟さんが持ち出したみたい」
ロン「……マーリンの髭。そんじゃ、あのお屋敷をまーたひっくりかえさなきゃいけなわけか」
ハーマイオニー「気が滅入るわね……夏中かかるかもしれないわ。それに」
ハニー「えぇ、そうね。絶対にまだあそこにある、って確証もないもの……夏だけじゃ、きっと見つからない」
ハニー「……だから」
ハニー「わたし、来年は。学校には戻らない」
ロン「中退かぁ。この場合どうなるんだい、ハーマイオニー」
ハーマイオニー「あなたのタフさならどこでも仕事あるでしょう?あぁ、私の方は大丈夫。何年経っても、また七年生に編入するわ」
ハニー「……え?あの……わたし、結構真剣に」
ロン「おいおい、ハニー。忘れたかい?こんな問答、僕達は一年生の時にやってる。僕は君についていく。どこへでも行く」
ハーマイオニー「私だって。隣でしっかり、立ってみせるわ。そう誓ってる、ずーーっと前から」
ハニー「……っ」
ハニー「……バカみたい」
ロン「あぁ、僕らハニーバカなのさ。しらなか――うぉっと!」
ハーマイオニー「超が付く、でしょ。あぁ、も――きゃ!」
ハニー「……お別れの言葉、考えてたわたしが!バカ、みたいじゃないの!ロン、ハーマイオニー!!!」
ロン「うん、ハニー」
ハーマイオニー「えぇ、ハニー」
ハニー「大好き、なんだから!!!」
ハニー「(そうだった……この人たちは、ずっとずっと、こうだった)」
ハニー「(この人たちがいるから……わたしは強くいられた)」
ハニー「(大切な人が、一人、減ってしまったけれど)」
ハニー「(ここだけは変わらない。ううん、二人だけじゃ、なくて)」
ハニー「(どこか、離れていても。わたしが、信じた人たちが)」
ハニー「(ずっとずっと、わたしの力でいてくれる)」
ハニー「(そう……みんなで)」
ハニー「(みんなが、今も。明日のために、頑張ってる)」
ハッフルパフ寮
アーニー「……そういうことなんだ。セドリックは……あの日、この城に現れた」
パーバティ「本当に、本人なの!?ねぇ、本物のセドリックなの!?」
ジャスティン「ハニーが言うんだ!間違いなんて、あるわけない!」
アーニー「そう、なんだ……セドリックは、森に入っていったらしい」
ジャスティン「……みんな、これでもう、分かったよな」
ギュッ
『ホグワーツのチャンピオン!セドリック・ディゴリーを応援しよう!』
アーニー「僕達の、信じていたものは……」
ジャスティン「……間違って、なかったんだ!!!!」
とある廊下
ルーナ「……わかんないな。なんでママの時より、悲しいんだろ」
ルーナ「あんたは、誰か大切な人が先に逝ったこと、ある?うん、逝っちゃったあなたにこれを聞くの、無礼かもしれないけど。灰色のレディ」
灰色のレディ『……私は、母より先に逝ってしまった。大切な人との出会いも、育めないまま。あなたは幸せよ』
ルーナ「……そ、っかな」
スゥゥゥゥッ
ルーナ「……」
ゴソゴソ
ルーナ「先生にあの解説の時言われて、引っ張り出してきた。去年の、おかしなルーン文字の特集号」
ルーナ「先生、こんなのどうしたかったんだろう。これって、解読したら耳から銀杏が、ってだけの……ただの」
ビュゥウウウウウ!
ルーナ「あっ!あ、付箋代わりにしてた、っ、あの髭!待って……!」
タッタタタタ、タッタッタッタッタ
ルーナ「っはぁ、ふぅ。あった!あー、これってやっぱり、先生の髭なのかな。だってこれくれた時、先生のお髭、少し……」
ルーナ「短く……」
ルーナ「あ……この場所……あ! あっ!!」
パラパラパラパラパラッ!
ルーナ「……!そっか……そっか!そうなんだ、ダンブルドア、先生!」
ルーナ「……無駄なものなんて、ないんだもン。ね!」
マルフォイ家の屋敷
ベラトリックス「どーーーらこーーーーー!おーーーい!ダンビーの葬式にあわせてさぁーあ!シシーの料理で宴会って言っただろーぉ!?」
マルフォイ「っ、気分が、悪いんです!」
ベラトリックス「そーぉかい!?アッハハハ!よーろこびな、我が君には明日にも会える!あんたは我が君から会釈もんの名誉だろうよ!!アッハハ、ハハハアアッハハハアア!」
ツカッツカッツカッツカッ
マルフォイ「~~~っ、っ」
ガバッ!
マルフォイ「もう嫌だ、もう、もうだめだ。もう、僕は……この中じゃ、やっていけない、駄目なんだ」
マルフォイ「でも、駄目だ。にげたら、母上が。父上も、僕も……僕だけじゃ、ないんだ」
マルフォイ「あぁ、あぁ……あのとき、僕に。もう少しでも……」
マルフォイ「っ!!」
バキッ!! コロッ、カラカラカラカラッ
マルフォイ「僕は、っ、何を言おうと……これは」
ツカッ、ツカッ
マルフォイ「……ダンブルドアが寄越した……飴」
マルフォイ「……っ、くだらない。なにが……なにが……」
マルフォイ「……」
ガサガサッ、ガサッ
マルフォイ「……!?なんだ……包み紙の裏に……」
マルフォイ「……あいつ……ぼくに、これを……」
マルフォイ「っ、っ……っ!」
バタンッ!
マルフォイ「ベラおばさん!!!」
ベラトリックス「なんだいドラコ!!嫌な呼び方をして!」
マルフォイ「……ホグワーツ制圧の時は!!!僕を!!最初の隊に入れて、ほしいんだ!!!」
八階の廊下
ジニー「っはぁ、はぁ、ネビルー!ネビル、どこー!ネビルーー!」
ジニー「あー、なんでハニーのところにも葬儀にも行かず、こんなこと……あっ!!」
ネビル「……」
ジニー「ネビル!!探したよ……何してたの?」
ネビル「……考えてたんだ。僕……僕、どうしてグリフィンドールに入れたんだろう、って」
ジニー「えっ……?うーん、それはさ。ネビルがやっぱり勇気がある、って!才能をもってて……」
ネビル「ううん。僕は、勇気なんてないよ。ずっとだ。僕……弱虫だ」
ジニー「えーっと、そうでもないと思うけど」
ネビル「……けどさ……弱虫だからって……グリフィンドールにいちゃいけないなんてこと、なかったんだ」
ネビル「僕は弱虫だ、だから……勇気ある人に、なりたかった」
ネビル「だから……だから」
ネビル「負けるもんか……負ける、もんか!」
ジニー「……」
ネビル「選ばれなかった……だからなんだって言うんだ!!」
ネビル「あの人に選ばれなかった!!それがどうしたって言うんだ!!」
ネビル「僕が選ばれれば幸せか!?ハニーが選ばれなければ幸せか!?」
ネビル「ちがう!!!僕達は、ずっとずっと悲しい目にあってきた!!それで、それで!!」
ネビル「ずっとずっと!!!幸せな想いもできたんだ!!」
ネビル「あいつらなんかに否定させない!!!僕と、ハニーがどうあろうと!!!」
ネビル「僕は、ハニーに選ばれたじゃないか!!!!!」
ネビル「彼女の、友達になれたじゃないか!!!!!」
ネビル「僕の価値を決める、のは!!!!あんな予言なんかじゃない!!!」
ネビル「僕が、僕が!誰の、なんの、ために!!」
ネビル「僕はもっと、っ、パパとママのため!ばあちゃんのため!!ハニーのため!!!みんなの、ために!!!」
ネビル「僕はもっと、もっともっと強く、なるんだ!!!ならなくちゃ、いけないんだ!!!」
ジニー「……」
ネビル「……ついて、来てくれる?」
ジニー「……は、い。ネビル……!」
必要の部屋 スゥゥゥゥゥッ
フォークス「フィ~~~ピィ~~~~♪」
バサッ!
ロン「あ……飛んでっちまった。歌聴くのは、二度めだけどさ」
ハーマイオニー「不思議な調べね……胸の中が、温かくなるみたい」
ハニー「……お別れなのね、フォークスとは。だからここで、待っててくれたんだわ」
ハニー「……勇気をくれる、この歌を餞別に」
ロン「きっとこの夏は大忙しだろうけどさ、ハニー。まずは僕ん家に来てもらわないといけないよ」
ハーマイオニー「ビルとフラーの結婚式、ですって。あれからあっという間に、色々決まったみたい。おばさまったら」
ハニー「……えぇ、そうね」
ハニー「分霊箱を破壊するのも、あいつをくじくのも、だけれど」
ハニー「何より、わたしが……忘れちゃいけない、大事なのは」
ハニー「……愛を、忘れないこと」
ハニー「それが」
ハニー「わたしと、アルバス・ダンブルドアの。約束なんだもの」
完
トンクス「えーっと、先生へ。今までありがとう。ところで、前に言っていた子供が生まれたら後見人はどうするのかね、ということですが。あと十ヶ月ほど先だと思うので、ゆっくり考えようと思い――」
ザワッザワザワッ!?
リーマス「トンクス!!トーーーーーーンクス!!!!違うんですみなさん!彼女はあの、悲しみで、ま、マッド-アイやめてくれ物騒な、杖は……トンクス!お、お座り!!!!」
今度こそ、完
ようやくプリンス編はこれで終い!
あとは最終巻!ここまで書いて投げ出すとかいう選択肢はないで!
時間かかっても完結までもってくんでどうぞ!
おそらく今月中、遅くとも二月の連休には立てるんで!
ラドクリフお大事に
じゃあの!
ハリー・ポッターシリーズ
一巻~七巻
世界的大ヒット発売中!
2014年後半、USJにて
ハリポタアトラクション建設決定!!
ハリー幼少期の物語
演劇版ハリー・ポッター
2014年始動!!
ハリー・ポッター指定教科書 『幻の動物とその生息地』原作スピンオフ映画
2015年上映決定!!!!
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません