P「……どうぞ」
はやくしろ!!!!!!
真「それじゃ失礼します」
P「なんで俺のパンツに手をかけるんだ」
真「脱がさないとちゅーできないじゃないですか。あ、パンツ越しにした方が好みですか?」
真(え、えい!)チュッ
P「…ん……、真……?」ムク
真「わ、わわわ、プロデューサー!?」
P「今………キス、したのか?」
真「ぼ、僕はほんの出来心で…」
P「これじゃ浮気になってしまう」
真「へ?」
P「俺には伊織がいるのに」
真「」
違うか
真「え……」
真(いま、どうぞって聞こえたような……)
P「……Zzz……」
真「……」
真(……やっぱり寝てるよね)
真(そもそも、プロデューサーがボクにキスをさせてくれるわけ……)
真(って、ててて、ていうか! なな、なんでボクはあんなことを……!!)
P「……うぅん……」
真(……)
ゴクリ
真「……っ……ほ、ほ……」
真「……ほ、ほんとに……しちゃいます……よ?」
P「……」コクン
真「!!?」
真(い、いい、いま! うな、うなづい……え!?)
真(ふわぁぁああ! え、うそ、そんな!)
真(どどどどうしよう! あ、いや、でも……そんなことしたら今後、プロデューサーに合わせる顔が……!)
チラ
P「……すぅ……すぅ……」
真「……やっぱり、寝てる……うん、そうだよ、さっきのは寝言で……」
P「……」ボソボソ
真「え……?」
P「……――ょう……」
真「な、なんだろ? プロデューサーがまた寝言を……」
P「……女は、度胸……乙女は……度胸……」
真「!!!!」
P(いけるか……?)
真(――女は度胸)
真(プロデューサー……やっぱり、なんて凄い人なんだ)
真(寝ながらも、ボクに乙女としてのあり方を伝授してくれるなんて……!)
真「……」ゴクリ
P「……Zzz……」
真(……ボクは、少し勘違いしていたみたいだ)
真(女の子はもっとこう、奥ゆかしいというか、受け身というか……)
真(ガツーンと行くのは男の子で……そういうのがいいんだって思ってた。漫画でもそういうのが多いし)
真(でも……)
真「乙女は……度胸……!! そうなんですね、プロデューサー……!」
P「そうだよ」
真「!?」
P「……じゃなくて……Zzz……」
真「…………」ドキドキ
真「……ね、寝てる……」
真「そうだ、間違いなく、プロデューサーは寝てる……うん」
P「うん」
真(ホラ、プロデューサーも言うとおり、やっぱり寝てる)
真(だから今は何をしたって……、わからないよね)
真(それなら……こんな絶好のチャンスに度胸を見せられないで、何が乙女だ! 菊地真ぉ!!)
真「……よーっし! それじゃあ、行きますよ!」
P「……」
真「……っ」
ソー……
真(うわああああ近い近い近い)
真(顔が近い!!)
ハァ……ハァ……
真(ぷ、プロデューサーの息遣いまで、こんなにはっきりと聞こえる)
真(……よ、よぉし……ほ、ほんとに……行くぞぉ……!!)
真(……)
ドックン ドックン
真(いま、ボク、どんな顔してるんだろう……)
真(今日は随分冷え込んでたのに……顔も身体も、ポッカポカだ)
真「…………」
ソー……
真(……あと……3センチ……)
バクバクバク……
真(あーもう、心臓がうるさすぎて、もう何も考えられない――)
小鳥「そう……あと、ちょっと……がんばって、真ちゃん……!」
真「!?」
――ちゅっ
真「!!!!!!」
真「……!!」バッ
小鳥「あー」
真「ここ、小鳥さん、いつからそこに……!!」
小鳥「え? ……あ、あは、あはは……」
真「あ、あの、その……!」
小鳥「大丈夫、大丈夫だから! ね!?」
真「何が大丈夫だって言うんですかぁー!!」
小鳥「あぁ、真ちゃん、そんなに大声出したらプロデューサーさんが……」
P「……うぅん?」モゾリ
真「!!!!」
P「ふわぁ~……あー、ね、寝てたのかー。いやあ参ったなぁーあはは」
真「……あ、う……」
P「ま、真じゃないか! おお、おは、おはよう!」
真「…………おはよう……ございます……」
真「……くぅ~…………!」カァァ
P「ど、どうしたんだ? 顔が赤いぞ、もしかして熱でもあるんじゃ」
真「なな、なんでもないですっ! だから……、み」
P「み?」
真「……見ないで、ください……!!」
P「……あ、あは……」
真「ぼ、ボクっ! 今日はもうやること終わったし、帰りますね! 早く帰らないと父さんに怒られちゃうので!」
真「じじ、事務所に寄ったのはプロデューサーにレッスンが終わったって報告しにきただけで、それで!」
P「あ、ああ! うん、わかった、了解だ!」
真「……お、お、お……」
真「お疲れさまでしたぁーーーー!!!」ダダ
ガチャガチャ
バキィッ
タッタッタ……
P「……」
小鳥「……まさか、本当にキスされるとは思っていませんでしたか?」
P「……はい……」
小鳥「ならどうして、寝たふりしてあんなことを……」
P「それは……ギリギリで起きてやって、そのときの真のリアクションが見たくて、それで……」
小鳥「ふふっ♪ でも、残念でしたね」
P「べ、別にそんなこと! ……そんなこと、ないですよ、うん」
P「……」
サスサス……
P「ほっぺにちゅ、か……」
小鳥「すみません、私が邪魔しなければもしかしたら……」
P「だから、残念だなんて思っていませんって!」
小鳥「その割には、そんな顔してますけど♪」
P「……仕事しましょう、仕事!」
小鳥(プロデューサーさんったら、意外と小心者なのね)
タッタッタ……
真「うわぁぁぁぁああああああああああ」
通行人「!?」ビクッ
真「あああああぁぁぁぁぁぁ……――!!」
通行人「なんだ今の……」
真(きき、気付かれてなかったよね!?)
真(うわ、うわうわ、ボク、ほんとになんてことを……!!)
真(見られた見られたあんな顔を見られちゃったよぉ!!)
真(うわぁああああああああ恥ずかしいぃぃぃぃ!!!!)
真「……はぁ……、はぁ……」
――ピタッ
真「……っ」
ドックン ドックン
真(……たった2、3キロしか走ってないのに……息切れがする……)
真(さっきから心臓が爆発しそうだ……!)
真(今なら、穴掘って埋まりたいっていう、雪歩の気持ちがわかるかもしれないなぁ……)
真「……へへっ……えへへー……」
真「――ハッ! だ、ダメダメ! こんな気の抜けた顔してちゃダメだ!」
パシーン!
真「いつつ……で、でも、気合い入ったぞ……」
真「……気合い入ったところで……今日はもう帰るだけだけど……」
テクテク……
真「……」
真「……へへ……♪」
【その夜、真ちゃん部屋】
真「だから今のは、空手の新しい型なんかじゃないから!」
真「な、何かって言われると説明できないけど……もう出てってくれよー!」グイグイ
バタン!
真「…………」
真「……はぁ」
ポフン
真(思い出してジタバタしてたら、父さんに勘違いされちゃったよ)
真(ダメだな、ボク……女は度胸。これくらいのこと、どうってことないって思わないと)
真(……思わ……ない、と……)
真「……――~~!!」
ジタバタ
真「……はぁ……」
チラ
のワの「……」
真「……へへっ、こっちおいで」ギュッ
真(そういえば、このぬいぐるみも……)
真(ぬいぐるみ集めが好きなんだって知られた次の日に、プロデューサーが買ってきてくれたんだよね)
真(……あんまり、可愛くないけど……嬉しかったな)
真「……プロ、デューサー……」
ギュゥゥ
のワの「ウッ」
真「……」
真(……ボク、やっぱり……)
真(プロデューサーに、信頼以上の感情を……、持っちゃってるのかも……)
のワの「ウッ、ふぅ……」
真(い、いやいや……ダメだダメだ!)
真(ボクはアイドルで、プロデューサーはプロデューサーなんだから……)
真(たとえもし仮に万が一、ボクがそうだとしても……、真面目なプロデューサーが許してくれるわけ……)
真(さっきあんなこと言ったのも、アレはただの寝言であって……)
真「――ああぁぁもうっ!!」
バタン
真「……なぁ……、どう思う……?」ジー
のワの「……」
真「……」
真「……ま、まぁなんていうか、うん」
真「ボクは立派な女だし、乙女オーラはもうバリッバリに出てるけど」
真「い、いつかはわからないけど……来たるべきそのときの為に、練習することも必要、かもね! うん!」
真「さっきはうまく出来なかったし……その、きき、キスの練習、を……」
のワの「…どうぞ」
真「……」
のワの「……」
真「……よ、よし」
ソー……
『ハァ……ハァ……』
真(……うう、思い出しちゃうよ……さっきのプロデューサーの、息遣い)
真(初めてあんなに近くで見た、プロデューサーの顔……)
真(い、いやいやいや! 今はそんなこと、全然関係ない――!!)
真「……ごくり」
――ちゅっ
のワの「……///」
真「……――!!」ジタバタ
真(――関係ない、はずなのに……うぅ、なんでこんな、こんな……!)
真「うわああああ恥ずかしいぃいぃぃ!!」
ブンッ
ヒュルルル……バキッ
のワの「ウッ」
真「あぁ! ご、ごめんね!」
真「……はぁ」
真(なんか……ほんと、ボクらしくないな)
真(こんな苦しい気持ちになるなんて……今までなかったよ)
真(明日どんな顔して、プロデューサーに会えばいいんだろう……)
真「……も、もう、寝ちゃおう……うん」
真「寝て起きれば、きっと全部忘れちゃってるはずだよね」
真「……おやすみなさい」モゾモゾ
おなか減ったのでコンビニ行って来る
30分くらい席外します
自分ルールか
保守すみませんでした
食べ終わったので再開する
【翌日、765プロ事務所】
ガチャ
真「おはようございまーっす!」キラッ
P「お、おあひょう真!」
真「!!! ぷ、プロデューサー!?」
P「じゃ、じゃなくて……おはよう、真」
真「…………は、はい……」
真(ボクとしたことが、なんてことだ!)
真(目が覚めてから事務所に顔出すこの瞬間まで、本当に昨日のこと忘れてるなんて……)
真(覚えていれば、ちょっとは心構えも出来たっていうのに……!)
???「アイドルの家に不法侵入ニダ!」
真「zzz・・・」
???「まことちゃんが寝てるニダ・・・レイプするニダ!」
真「……あ、あの……」
P「ど、どうした? ああ、スケジュールの確認か? えーと、今日はだな」
真「ち、ちがいます!」
P「え……」
真「……プロデューサー、昨日のこと……その、覚えてますか?」
P「……」
P「…………な、何かあったかな?」
P「起きたら目の前に可愛い顔があったってことくらいしか、記憶にないんだけど」
真「そそ、そうですか! あははっ、あ、いや、それならいいんです!」
P「な、何があったんだい?」
真「う、ううん! まこりん何も知らない見てない、だから何もなかったナリよ☆」
P「そっかー! あは、あははは!」
真(なんでこんなときに乙女モードになっちゃうんだよぉ!)
真(って……あれ?)
真「――プロデューサー、いまなんて言いました?」
P「へ?」
真「……起きたら、何があったって……?」
P「えっと……起きたら目の前に、真の可愛い顔があったって……」
真「か、かわ……!!?」
P「う、うん」
真「……ボクが、ですか?」
P「他に誰がいるんだ……」
真「…………」
P「ま、真? 俺、また何かへんなこと言ったか?」
真「え!? あ、い、いいえ! べつにそういうわけじゃなくて……!」
真「…………」
真(……そうだよね。プロデューサーは、いつだってこうやって……)
真(それなのにボクがこんなんじゃ……、ダメだ!)
真「……へへっ! よーっし! なんだか、やる気がドカーンと出てきましたよ!!」パンッ
P「おお、そっか!」
真「プロデューサー! 今日もガツーンと、バリバリ頑張っていきましょう!!」
P「ああ!」
真(……ボクは、この人にプロデュースしてもらっている……アイドルなんだから!)
真(ボクの気持ちはどうあれ、プロデューサーの期待に全力で応えないと!!)
【テレビ局】
P「今日は音楽番組のゲストだ。トークも少し入ると思うけど……」
真「落ち着いて質問に答えて、それでなおかつ自分をアピールするんですよね!」
P「うん、頼もしいな! ソロでの仕事は慣れないかもしれないが、頑張れよ!」
真「まっかせといてください! ……あ、そうだ!」
P「ん? どうした」
真「プロデューサー! ちょっと拳、出してもらっていいですか?」
P「拳? ……あ、なるほどな」
スッ
真「へへっ、じゃあ行きますよーっ!」スッ
P・真「「……だーんっ!」」
コツン
真「これで気合いはバッチリです! それじゃ、行ってきますねーっ!!」タタッ
P「ああ!」
P「……ふぅ」
P(……あぶないあぶない、あやうくボロが出るところだった)
P(真がいつもの調子になってくれたから、なんとかこっちも合わせられたけど……)
P(今朝の俺は、完全に動揺してたもんな……情けない)
P(プロデューサーがいつもこんな調子じゃ、真も本気を出せないだろうし……)
P「……お、収録、始まったみたいだな……」
P「よし、俺もスタジオの様子を見に行くとするか!」
* * *
司会『それでは、続きまして……久しぶりの登場です菊地真ちゃんどうぞ!』
パチパチパチ……
真『ご紹介ありがとうございまーす! 皆さんっ、こんにちは! 菊地真です!』キラッ
キャー!
司会『おぉ、相変わらずお嬢さん達の黄色い声援が……』
真『あはは……みんな、ありがとー!』
司会『そういえばソロでの登場は初めてだったねぇ。お、髪切った?』
真『あ、やだなぁ、伸びたくらいですよ』
アハハ……
* * *
P(うんうん、いい感じだ)
P(司会の人は大御所だけど、それに怖気ずに、いつも通りの真でいられてるな)
* * *
司会『新曲、ということだけど……』
真『はい! 来週水曜日、コ○ンビアから発売される……』
司会『あっはっは、さっそく宣伝かい』
真『ああ! すみません、つい……えへへ』
アハハハ……
司会『真ちゃんらしい、爽やかな曲だね。これを歌うのに、どんなところを気を付けたの?』
真『そうですね~……いっつもボクを応援してくれる、大切な人のことを思い浮かべながら』
司会『ん? 大切な人?』
ドヨ……
真『あぁっ! えーっと、つまり……ファンの皆さんのことですよ!』
司会『あっはっは、まぁそういうことにしておこうか』
真『あは、は……』
* * *
P「……う、うん……大丈夫だな……うん」
司会『それじゃあ、そろそろ準備してもらおっか』
真『は、はい!』
女子アナ『それでは……菊地真さんで、来週水曜日発売される新曲』
女子アナ『チアリングレターです、どうぞ……』
―――
真『…………』
真(ボクのことを応援してくれる、大切な人……か)
真(ボクは、誰のことを想像したんだろう)
真(事務所のみんな? 小鳥さん? 社長? やっぱり……、ファンのみんな?)
真(……それとも……)
――♪ ――♪
真『……』
スゥ……
……―― 元気にしていますか 相変わらず突っ走ってますか ――……
―――
――
―
真「……あっ、プロデューサー!」
タタッ
P「おお! お疲れさん、真! 大御所さんに、挨拶は済んだか?」
真「はいっ! あ、でも……」
P「どうした、何か心配事でも……」
真「! す、すみません! いやぁ、すっごいいい人で、驚いちゃったってだけですよ!」
真(収録中に言った『大切な人』ってことに、楽屋で聞かれちゃったんだよね)
真(なんとか誤魔化したら、冗談だよって言って笑ってくれたけど……)
真(……これからは、気をつけないとな。ボクは、アイドルなんだから)
P「よし、それじゃあ帰ろうか」
真「は、はい……」
* * *
――ガチャ
バタン
P「うしろ、乗ったな? さて、と……まずは事務所に寄って」
真「……あの、プロデューサー!」
P「ん?」
真「その……どうでしたか、今日のボク」
P「……そうだな」
P「すごく良かったと思うよ。トークも歌もバッチリだったし、言うことない」
真「う、嘘です!」
P「嘘、って……そんなことないぞ。どうしてそんな……」
真「……だ、だって……」
P「……」
真「……ボク、アイドルなのに……ちょっと、へんなこと言っちゃったから」
真「いつものプロデューサーなら、美希にするように……慌てて注意するところでしょう?」
P「……そうかもな」
――ガチャッ
ブロロロ……
真「……」
真(そうかもな、って言って……そのまま黙って、プロデューサーは車を発進させた)
真(やっぱりちょっと、怒ってるのかな……)
ブロロロ……
P「……なぁ、真」
真「は、はい! あの、ボク、どんなお説教でも……!」
P「あーいや、そうじゃないよ。真……ちょっと変わったなって思ってさ」
真「え? 変わった?」
P「ああ」
真「……そうでしょうか」
P「そうだよ。前までだったら、さっきみたいなこと、気にしなかったというか……気付かなかっただろ?」
真「…………」
P「俺がどんなことを注意するかとか、自分のミスが、とかさ」
P「細かいところに気付くようになった……、それは成長だと思う」
真「成長……ですか。そうかなぁ……あんまり自分じゃよく、実感沸かないというか」
P「あはは、ずっと真を見てきた俺が言うだから、間違いないよ。自信を持っていい」
P「……それにさ、俺は嬉しいんだ」
真「え……?」
P「さっきの発言。大切な人、って言ったときさ」
真「!! そ、それって……」
P「あのとき――」
真「や、やっぱり、気付いちゃいましたか!?」
P「へ?」
真「あのっ、ボクっ! やっぱそうかなーって、薄々思ってはいたんですけど!」
真「プロデューサーが言うんだから、間違いないですよね! うん!」
P「え、ちょ、どうした? 俺が言いたいのは……えっと、とにかく落ち着――」
真「やっぱり、そうなんです! ボクが思い浮かべた、大切な人っていうのは……!」
真「プロデューサーのことなんですよ!!」
P「!?」
グラッ……
真「うわぁっ!!?」
――キキッ
プップー
P「……っ。あ、あぶな……大丈夫か、真!?」
真「あ、はい……いつつ」
P「ご、ごめんな! ちょっとビックリしちゃって……」
P(え? え? 一体何がどうして、真はこんなこと……!?)
真「っしょ、っと……こっちはもう大丈夫です!」
P「あ、ああ……」
ブロロロ……
P「……」
真「……」
真(あれ? いま、ボク、何を……?)
『ボクが思い浮かべた、大切な人っていうのは……! プロデューサーのことなんですよ!!』
真(……大切な人)
真(いやぁ、そりゃプロデューサーは大切な人だけど……)
真(でもこの場合、前後の話の流れを考えて……それってただの大切な人、じゃなくて……)
真「うぅん……?」
ポクポクポク……
ティーン
真「!!!!」
真「…………!!!!」
真「あのっ、プロデューサー!!」
P「あ、はい……」
真「そ、その……ちがいますから! 今のはナシです!!」
P「な、なにが?」
真「あぁもう……本当はもっとこう、乙女チックで、ロマンチックなシチュエーションで……」
真「――そうだ、海!!」
P「はぁ!?」
真「今から、海行きましょう、海! 港の見える丘公園!!」
P「え、でも……」
真「いいからいいから! この菊地真、いっしょぉぉ~~……のお願いです!!」
P「わわ、わかったわかった! わかったから……揺らさないでくれ!」
ブロロロロ……
【港の見える丘公園】
ザザァ……
ザザァ……
P「……つ、着きましたよ」
真「そ、そそ、そうですね」
P「……」
真「……」
P・真(気まずい……)
真(どど、どうしよう! え、うそだろう!?)
真(まさか本当にこんなことになるなんて……!)
真「あ、ああ、あの、その……」
P「う、うん」
真「……誰も、いませんね! あはは!」
P「そ、そうだな! まぁ、こんなに寒い夜中にわざわざここに来る人も、そうそういないだろう!」
真「え、えーっと、知らないんですか、プロデューサー?」
P「え? 何がだい?」
真「ここ、夜中はいい感じでライトアップされてるから、デートスポットとして有名なんですよ!」
P「へ、へぇ~。そうなんだ~」
真「まぁボクも、雑誌で知ったってだけですけどね! あは、あははは……」
真(自分で自分の首を絞めている気がする……!)
真「……うぅ……」
P「……ま、まこ……」
真「くぅー……なんでボクは……いざというときに、こう……!」
P「…………」
P(真の方が、小さく震えて……いつもより随分小さくなっているように見える)
P(普段は、あんな調子だけど……やっぱりこの子は、女の子なんだよな)
P「……あのさ、真」
真「……え?」
P「さっき俺が言おうとしたことだけど……もう一回、改めて言うな」
真「さっき、って……」
P「真が大切な人、って言ったとき……なんで俺が嬉しくなったか、ってこと」
真「……はい」
P「あのときの、真の表情。あれを見れたことが嬉しかったんだ」
真「ど、どういうことですか? ボク、司会の人の前で、そんなにへんな顔……」
P「……逆だよ。今まで見たことないくらい、そのな……」
P「女の子らしい顔、してたって思ってさ」
真「っ!」
P「……ずっと真は言ってたよな、もっと女の子っぽい仕事がしたいってさ」
真「は、はい……」
P「でも、俺はあんまり、そういう仕事を与えられなかった」
真「……それは、しょうがないですよ。入ってくる仕事が、そういうのばっかりだったんですし」
真「あ、でもボク、カッコいい系の仕事も嫌いじゃないし――」
P「でも、これからはきっと、変わっていくよ」
真「……なんでですか?」
P「……さっきの表情を、全国のファン達に届けられたからさ」
P「今までの、王子様な真にもファンはたくさんいた」
P「でもきっと、今日の放送のあとには……お姫様な真のファンが増えるはずだよ」
真「お姫様……?」
P「ああ、なんていうか、うまく言えないけどさ……あの表情は、恋に焦がれる女の子の顔だった」
P「いつもお前のそばにいる俺でも、その恋がどんなものか気になっちゃうくらいにな!」
真「……!」
P「……新しい真が見れたこと、それがとっても魅力的だったこと」
P「これからはもっと真が本当にしたい仕事をして、もっと楽しくアイドル活動が出来るって思ったら……」
P「それが、嬉しくてさ」
真「……そ、そう……ですか」
P「ああ。それがさっき、俺が本当に言いたいことだったんだよ」
真「…………」
真(プロデューサー……)
真(いつだって、ボクを一番近くで応援してくれて……一番に、ボクのことを考えてくれて)
真「……っ」
ジワッ
P「!? ま、真……?」
真「……えへへ、す、すみません!」
ゴシゴシ……
真「……ありがとうございますっ、プロデューサー!」
真(――まだ、泣かない)
真(泣くのは……もっと、ずっとずーっと、あとでいい)
真「……プロデューサー」
P「ん?」
真「へへっ、ボク、またあなたに力も貰っちゃいました!」
真「……だから、今からお返しに……ボクの気持ちを、あなたに伝えます!」
P「真の、気持ち?」
真「はいっ! よーく、聞いてくださいね! 聞こえなかったフリ、ダメですよ!」
P「あ、ああ……」
真「…………」
――スゥ
真(たとえ、届かなくてもいい)
真(それでも、全力で……精一杯の気持ちを伝えよう)
真(だってそれが、ずっと、これまで一緒に頑張ってきた……)
真(ボクとプロデューサーの、たった一つのやり方だから!)
真「プロデューサーーー!!!」
ザザァ……
ザザァ……
真「……好きだぁぁぁぁあああ!!!!」
真(――ボクの叫びは、ボクの気持ちは)
真(静かに揺れる、暗い海へと消えていった)
P「なっ……ま、真……!?」
真「っし! へへっ、聞こえましたか?」
P「あ、ああ……えっと、でも」
真「それじゃっ、帰りましょう! もうさすがに寒くなってきちゃいましたよ」
P「……うん」
ブロロロ……
P「……なぁ、真。俺は――」
真「返事は、ダメですよ」
P「……」
真「……どんな返事が返ってきても……もうボク、耐えられそうにありませんから」
P「……いいのか?」
真「はいっ! 返事は、いつか……」
真(……いつか)
真(それがいつになるかは、今のボクには、まだわからない)
真(明日かもしれないし、来年かもしれないし……、もっともっと先かもしれない)
真(でも、その日まで……。一途な想いで 真っ直ぐ歩いていこう)
真(そうすれば、今までの様に……どんなことでも、乗り越えて行けるから)
【その夜、真ちゃん部屋】
真「……」
――ポフン
真「……――~~!!」
ジタバタ
真「うわぁぁぁああ!!!」
真「うわっ、うわわぁあああ!!! 告白しちゃったよぉぉぉぉぉお!!!」
真「……返事は、いらないって……言ったけど……」
真「…………やっぱ聞いとけばよかったかなぁ……」
真「いや、でもでも……どうせ、フられるし……」
真「……」
真「…………」
ギュゥゥゥ
のワの「……」
真「……プロデューサーがね、ボクの頭をさ……、撫でてくれたんだ」
真「今日の、帰り際に……感極まっちゃって、泣きそうになってたら……さ」
真「……へへっ……」
のワの「……良かったな」
真「うん……!」
真「!?」
真「え……? いま……」
のワの「……」
真「気のせい、か……」
真「……それにしても」
真(まさかこんなことになるなんて、思ってもなかったな……)
真(数日前までは、いつも通りのボク達だったのに)
真(……でも、素敵な時間だった)
真(今まで考えなかった、いろんなことを考えた)
真(プロデューサーが言ってくれたように……ボクも少しは、成長できたのかな)
真(きっかけ、は……)
真「……へへっ」
真「きっかけは、本当にくだらない、ささいなイタズラ……」
真「……でも忘れちゃいけないよね」
真「だって、あのときボクは……初めて、自分の気持ちに正直になれたんだから」
真「…………」
真(……いつまでも、覚えておこう)
真(数年経って思い返せば、きっと恥ずかしいと思い出になっているけど……)
真(今日この日に感じた、この気持ちは……絶対に忘れちゃいけない)
真(でも……、どうしたらいいかな?)
真「……そうだ! 確かアレが~……」
ガソゴソ
真「……あったあった!」
真「まだ使ってない、真っ白な便箋……」
真(手紙に、書こう)
真(そして、いつか大人になったときに……読み返そう)
真(そのときボクが、今夢見ているような、立派なレディになれているかはわからないけど)
真(でも……今この瞬間のボクを、少しでも形に残しておくために)
真「……書き出しは、そうだなぁ」
真「――うん、これがいい! っていうか、これしかないよね」
真「…………」
カキカキ……
……―― 元気にしていますか 相変わらず突っ走ってますか ――……
―――
――
―
「……ふふ」
「あれ? 何を読んでいるんですか?」
「あ、いや……掃除してたら、こんなのが出てきてさ」
「え、それ、って……」
「いや、懐かしいなぁ……確かに、こんなこともあったっけ」
「だ、だだ、だダメです返してくださいっ!!!」
「そうそう……起きないとキスしますよ、なんて言い出して」
「……! や、やっぱり! あのとき、起きてたんですね!!?」
「あ」
「くぅ~……! おかしいと思ったんだよなぁ! だってアレから、すっかり態度変わっちゃって」
「……あ、あはは。その……すまん」
「知りませんっ! もう……それで、あの頃のボクがどれだけ……」
「……ボク?」
「あ……う……その、昔を思い出しちゃっただけですっ!」
「おーい、機嫌直してくれよ……」
「……知りません。もうボクは、先に寝ますから! おやすみなさいっ!」
「……」
「……Zzz……Zzz……」
「……ふふ」
「な、なにを笑って……じゃなくて……Zzz……」
「いや、何もかも懐かしいって思っただけ」
「……」
「あの時の真は、ただただ真っ直ぐで……まるで、男の子みたいな子だったよな」
「……むぅ」
「……おーい、真」
「……Zzz……Zzz……」
「……起きないと、キスしちゃうぞ」
「っ!!!」
「……」
「……Zzz……」
「あれ? 効かないか……」
「……――すか?」
「へ?」
「……だから、その…………」
「寝てないと、キス……してくれないんですか?」
「……」
「……な、なんでもないです! 今のはねご――」
――ちゅっ
「…………っ」
「……そんなこと、あるわけないだろ」
「……へへっ……♪」
「……あなた」
「ん?」
「ボクは……なりたい自分に、なれたでしょうか」
「……」
「いつか夢見てた、かっこいいレディに……」
「……大丈夫だよ」
「……本当?」
「ずっと真を見てきた俺が言うんだから、間違いないよ。自信を持っていい」
「……そうですね! えへへ……」
―――――――――――――――――――――――――――
元気にしていますか?
相変わらず突っ走ってますか?
えっと……
色々と、言いたいことはあるけど……
まず一個、一番大事なこれだけを、最初に書いておきます。
これから、何が起こるかなんて、ボクにはわからない。
今のボクでは想像もできないような苦しいこともあるかもしれません。
泣きそうになるくらい、つらいことがあるかもしれません。
でも、そのとき……、あなたの隣を見て欲しい。
涙を流す前に、これを書いてたあの頃の自分を思い出して欲しい。
一途な想いで、真っ直ぐ歩いていれば
今までの様に乗り越えて行けるから……。
いつも夢見ていた、かっこいいレディに
気付かないうちになっている、自分へ
―――――――――――――――――――――――――――
終わり
終わりですマッコマッコリーン
もっとキスのことを書けばよかったかもしれない
方向変わってすみませんでした
このSSまとめへのコメント
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