レイ「碇君にぶたれた・・・」(56)
シンジ「綾波はエヴァに乗るのが怖くないの?」
レイ「あなたは怖いの」
シンジ「うん・・・」
レイ「信じられないの、お父さんの仕事が」
シンジ「信じられるわけないよ!あんな父親なんて・・・!」
レイ「・・・」ズイッ
シンジ「あ・・・」ビクッ
パァン!
シンジ「!・・・」
シンジ「・・・な」
シンジ「何するんだよ!!!」
バチィン!!
レイ「!?・・・!?」
シンジ「なんなんだよ!!ちょっと父さんと仲良いからって調子に乗ってんの!?僕のこと嗤ってんだろ!!」
レイ「」
シンジ「あーいいよなあ君は父さんと仲良くて!どうせ僕は父さんになんとも思われちゃいないよ!!でもさぁ!!」
レイ「」
シンジ「他人の君が人様の親子の間に入らないでくれる!?君には関係ないじゃん!!」
レイ「」
シンジ「もういいよ、先行くから。テストがんばってよね」ズカズカ
レイ「」
レイ「・・・」ジンジン
レイ(碇君にぶたれた・・・初めて人にぶたれた)
レイ(あの人にもぶたれたことなかったのに)
レイ(なに?この気持ち・・・いやじゃない・・・)
シンジ(・・・女の子に手をあげちゃった・・・最低だ、僕って・・・)
シンジ(でも綾波が先に手を出したんじゃないか。おあいこだ・・・)
シンジ(でも・・・暴力って、やっぱ嫌だな・・・)
シンジ(それにどうしよう、零号機の再起動実験に影響あったら・・・どうしよう・・・)
マヤ「・・・絶対境界線突破!零号機、起動しました」
シンジ「ふぅーっ・・・」
シンジ(よかった・・・綾波なら僕にひっぱたかれたくらい、気にしないかな・・・)
ミサト「あらシンちゃん、レイのことそんなに心配だった?」
シンジ「そ、そんなんじゃありませんよ!誰があんな子・・・」
ミサト「またまたぁ、ずーっと青い顔で心配そうに見てたくせにィ」
ビーッ ビーッ
冬月「碇・・・おそらく第五の使徒だ」
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シンジ「綾波は・・・何故これに乗るの」
レイ「・・・絆だから」
シンジ「・・・父さんとの・・・?」
レイ「・・・私には・・・他に何もないもの」
シンジ「・・・」
シンジ「ごめん・・・昼間、君のこと叩いたりして・・・」
レイ「・・・何故謝るの」
シンジ「だって・・・綾波にとっては父さんは大切なひとなんだろ・・・?」
シンジ「君の方が僕よりずっと・・・なのに僕は君に嫉妬して、暴力まで・・・本当に、ごめん・・・」
レイ「・・・嫉妬・・・?」
シンジ「そう、君がうらやましかったんだ・・・僕よりずっと父さんに近い君が・・・」
レイ「・・・」
レイ「あなたにとっても大切なのね、碇司令は」
シンジ「そう、なのかな・・・わからないよ」
シンジ「僕はずっと父さんのこと憎んでたから・・・母さんを死なせて、僕を捨てた父さんを・・・」
シンジ「でも心のどこかで、父さんに認めてほしかったのかも・・・ここに来たのも、エヴァに乗るのも、だから・・・」
レイ「・・・」
レイ「時間よ、行きましょ」
シンジ「あ・・・うん」
レイ「碇君、あなたは死なないわ・・・私が守るもの」
シンジ「えっ・・・」
レイ「さよなら」
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シンジ「綾波っ!」
レイ「うっ・・・ ・・・」
シンジ「よかった・・・綾波・・・」ポロポロ
レイ「・・・何故泣いてるの・・・?」
シンジ「綾波が助かったからに決まってるだろ・・・」
レイ「・・・私が嫌いだから・・・その私が助かったから・・・?」
シンジ「バカ・・・そんなはずないだろ・・・僕がいつ君のこと嫌いって言ったんだよ・・・」
レイ「だって・・・昼間・・・」
シンジ「あれは、本当に悪かったけど・・・でも君のことは嫌いじゃあないよ、本当・・・」
レイ「・・・?」
シンジ「君が無事で、嬉しいから・・・」
レイ「・・・嬉しくて・・・?嬉しいときにも涙が出るのね」
レイ(ぶたれたとき、嫌な気持ちがしなかったのと似てる・・・感情って不思議・・・)
リツコ「レイ、もう退院していいわよ」
レイ「はい・・・あの、赤木博士。お聞きしたいことが」
リツコ「・・・?なあに?」
レイ「人は誰かにぶたれたとき、どんな気持ちになりますか」
リツコ「ぶたれたとき・・・?あなた、誰かにぶたれたの?」
レイ「・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リツコ「なるほどね、そんなことが・・・」
レイ「・・・」
リツコ(シンジ君が暴力に訴えるなんて、予想外ね・・・それにその件を気にしてるレイも)
リツコ「シンジ君が怒るのも無理はないわね、彼の心は人一倍デリケートなようだし」
リツコ「あなたの物言いは配慮に欠けるし・・・ね」
レイ「・・・はい・・・」
リツコ「それから最初の質問だけど・・・状況にもよるけど普通、誰かにぶたれたら大概は怒りを覚えるか、悲しくなるわね」
レイ「怒り・・・悲しみ・・・」
リツコ「前者は、不当な暴力を振るわれたことに対する感情。後者は・・・そうね、親しい人に暴力を振るわれたときかしら」
レイ「私は・・・どちらの感情も湧きませんでした」
リツコ「じゃあ、シンジ君にぶたれたときどう思ったの?」
レイ「・・・わかりません。うまく言葉にできません・・・でも」
リツコ「でも・・・?」
レイ「いやじゃ・・・・ありませんでした」
リツコ(この子・・・まさか)
リツコ「そう・・・人の感情はロジックじゃないものね。そういうときもあるわ」
レイ「・・・碇君も、先日作戦終了後に泣いていました」
レイ「私が無事で・・・嬉しかったから、と」
リツコ「そう・・・ヒトの心ってそういうものよ。自分自身でもわからない、どうにもできないときがあるのよ」
レイ「・・・」
レイ(知りたい・・・私の心)
シンジ「あ、綾波!退院できたんだ、良かった・・・」
レイ「ええ・・・」
レイ「・・・碇君、お願いしたいことがあるの」
シンジ「え、お願い?何かな・・・」
レイ「私を・・・もう一度、ぶってほしいの」
シンジ「・・・え?」
レイ「・・・」
シンジ「・・・ごめん、もう一度言って」
レイ「私を、ぶってほしいの」
シンジ「」
自分から求めるのは違う、、、違うだろ!
嫌だ嫌だ言いながら内心喜びにアソコを濡らすのは良いけど
自分から求めたらあかん!
シンジ「な、なんでさ!?」
レイ「・・・」
シンジ(綾波、ひょっとして気に病んでるのかな・・・でも・・・)
シンジ「あ、あのときのことならもう気にしないでよ。むしろ悪いのは僕の方だったんだし」
レイ「だめ・・・お願い、ぶって」
シンジ「そ、そんな・・・できないよ」
レイ「お願い・・・碇君」ギュッ
シンジ「う、うう・・・」
シンジ(綾波、こんな真剣に・・・し、仕方ない・・・)
シンジ「わ、わかったよ・・・ただし条件があるよ」
レイ「なに?」
シンジ「ぼ、僕のことも叩いてよ・・・それでおあいこ、いいだろ?」
レイ「・・・わかった。じゃあ・・・ぶって」
シンジ「う、うん・・・い、いくよ?」スッ
レイ「・・・」
シンジ「・・・」ペチ
レイ「・・・碇君?」
シンジ「え・・・」
レイ「なに、今の・・・」
シンジ「え、ぶ、ぶったん・・・だけど・・・」
レイ「だめ・・・全然、だめ」
シンジ「えっ」
レイ「そんな触れた程度じゃ全然だめ・・・もっとちゃんとやって」
シンジ「ちゃ、ちゃんとって・・・・でも・・・痛いよ」
レイ「痛いくらいやってくれなきゃ意味がないわ」
シンジ「そ、そうかもしれないけど・・・でも・・・」
レイ「やって」ズイッ
シンジ「わ、わかった!わかったってば!やるよ!」
レイ「・・・」
シンジ「・・・くっ」パチッ
レイ「・・・」ジロッ
レイ「パンチって言うのはこうやるんだよ!」ズドゴォォォン
シンジ「グッハァァッッ!」メキボキグキャボキャ
シンジ「え、えっと・・・だ、だめ・・・かな・・・」
レイ「まだ足りない。ちゃんと力を込めて」
シンジ「う、ううう・・・でも・・・」
レイ「お願い!ぶって!」
シンジ「」
シンジ「ああああああもうっ!わかったよ!!」
バチン!
レイ「!」
シンジ「う~・・・ごめん、綾波・・・」
レイ「・・・」ジンジン
シンジ「あ、綾波?」
レイ(碇君がくれた痛み・・・いやじゃない・・・不思議)
レイ「ありがとう、碇君」
シンジ「う、うん・・・なんかヘンだな、ぶってお礼言われるなんて」
レイ「そう・・・そうかもしれない」
レイ(ありがとう・・・感謝の言葉・・・初めての言葉・・・あの人にも言ったことなかったのに)
レイ「じゃあ・・・次は碇君の番」
シンジ「あ、う、うん・・・」
レイ「いくわ」グワッ
シンジ「ひっ・・・」
ズバチィン!!!
ミサト(・・・えらいもの見ちゃったわ・・・)
終
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