男「短編小説家」 (16)
最初にネタバレしておくと、男は死ぬ。
そう言う話
昨今の小説家は短編をあまり書かない。
なら、私が短編を専業で書けば、素人みたいな文でもニッチな市場で食べて行けるんじゃないか。
そんな事を男は思っていた
短編小説は長さの規定だ。小説家には色々なジャンルがある。
短編小説の王道は推理小説、シャーロック・ホームズを初めとする数々の探偵物語などだろう。
他には、sf、恋愛などが多いよう思える。
一方で純文学には少ない。人間性は短編で書ききれないのか。短編小説では書ききれるわけないと読者が思っているのか。
彼はニッチな市場を独占しようと頑張ってるわけだ。
ならば、マイナージャンルの短編純文学に手を出スということになる。
彼はありとあらゆる短編小説を読みあさり、それらを類型化し、パターンがした。
あとはそれに従って、純文学を書けばいい。それだけだった。
だから男は、ひたすら純文学をよんだ。寝食を忘れるほど読んだ。
そして筆を走らせたが、書けなかった。
そもそも純文学などという物はそこまで形式があるわけではないのだ。
障子をちんこで破ろうが、純文学と言い切り認められれば純文学になる。
一般的な人間ならここで諦めるか、もっと書きやすい推理小説やSFに乗り換えるが、男にはできなかった。
純文学を読みあさる人間がかかる病気である「純文学以外を下等と見る」と言う症状が発病していたのだ。
それに家族や両親には小説家になって人儲けするとデカイ口を叩いていて、いまさら小説家以外の道に進むことは彼のプライドが許さなかったし、世間も許しはしなかった。
つまり割とマジで詰んでるわけだ。
ここで首を吊ればおろかな男のつまらない話で済むが、この話はそうじゃない。
簡単に言えば
彼は思い余ってオカルトに走り、悪魔を召喚した
これだけだ
彼は悪魔に今の現状を無我夢中で喋り、魂でも何でも持っていっていいから願いを叶えてくれ、と頼んだ。
悪魔はなにを思っているのかわからないほほ笑みでそれを了承した。
願いと言うのは
私をこの世で一番優れた短編純文学の小説の書き手にしてくれ
と言う物
結果、彼は世界で最も優れた純文学の短編小説の書き手になった。
でまぁちょっとした賞に送って絶賛されていくつか小説を出したが、それ以降続編は聞かない
だってそうでしょう?いくら優れてるからって、短編小説しか書けない奴に仕事なんか回ってくるわけがない。
他の連中は長編も短編もかけるんだから
いや、優れた短編小説かけたら仕事まわってくるだろ
そりゃ星新一にも長編中編の著作はあるけどいちばん評価が高いのはやっぱり短編だし
こういった理由で彼は今日も黙々と買い手がない小説を書いてる。
両親に生活費をたかっているが限界に近い。
まともに働こうと思ったが、短編小説の書き手として優れて入るが、それ以外はただの人。そして短編小説家なんて経歴が世間で役に立つことはなかった。
だから、彼はしぬことを決意した。
迷惑がかからない方法を探して、実行しようと思う
そういった訳で、僕は死ぬわけだ。
これを読んでるってことは、もうとっくに死んでるのかな?
○月○日
次のニュースです。
本日未明、○○賞受賞作家の△△さんが自宅で死亡しているのが発見されました。
警察は遺書などから生活苦による自殺と判定し裏付け捜査をすすめています。
△△さんは○○賞受賞後、いくつかの小説を出版し時の人となりましたが初の長編作品「短編小説家」にて
「短編は優れているのに長編はダメすぎる。全く作風が違う」
とゴーストライター疑惑を受け、釈明の理由も悪魔と契約したなどというものだった為、出版社とトラブルが起きており……
おしまい
>>12
(そもそも純文学の短編小説にどれだけ需要があるのかって話だけど)
悪魔と契約したら不幸になるのはお約束ですよ。ってだけだから、深く突っ込まないでくれ
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