士郎「あれは半年前―――いや、一昨年の七夕の日にさかのぼる」
セイバー「シロウ?」
凛「え、なんで陶酔しちゃってるの?」
桜「……あ、突然ですが回想入ります♪」
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2012年7月7日 パシフィコ横浜国立大ホール 楽屋
『あれ? 締めなかった?』
『スミマセン僕たち、気持ちのいいところではけちゃうんで……』
ドッ
士郎「お、セイバーたちの出番終わったか。そろそろ俺もCPの準備しないとな……」
『最後の最後に全国の皆さんに、とある映像をご覧頂きながら、このコーナーは終了とさせて頂きます』
士郎「……ん? 映像? そんなの聞いてないけど。まさか爺さんがまた妙なアドリブとかを……?」
『それではありがとうございました!』『ありがとうございましたー!』
士郎「ううーん、気になる……時間ギリギリだけどこれくらい見てっても大丈夫だよな?」
ワー パチパチパチ
士郎「……」
士郎「あっ……俺が映った。って事はマジで?」
士郎「ufoが……」
士郎「歓声凄いな……」
士郎「うわぁ……映像綺麗だ……アーチャーVSランサーとかすげぇ」
士郎「……会場盛り上がってるなあ」
士郎「あ、終わった」
士郎「…………」
士郎「ufoが……」
ジョージ「ちょ、衛宮さん! もうCP始まりますよ! なにこんな所でボーっとしてるんですか!」
士郎「え、あ、すみません! 今行きます!」
………
……
…
2013年7月13日 深夜
士郎「『ハイセンス』……と。っと、そろそろTwitterもそこそこにして、寝るかな」
士郎「あ、そういえば今日は空の境界3Dの初日だっけか。確か誰かが見に行くとか言ってたっけ」
士郎「3Dって眼鏡かけるんだっけか。疲れないのかな」
士郎「……お、タイムラインに何人かいるな。これだけ確認して寝よう」
『テアトル新宿なう。新作発表あった』
『これはついに来た。来てしまったと言ってもいい』
士郎「空の境界の感想とか全然ないなこれ!」
士郎「って、新作? 未来福音は秋から始まるし。まさかの空の境界完全新作?」
士郎「……もう少し見てみるか。土蔵寒いけど」
『新規映像少しだけあったな』
『エミヤはやっぱ熱い』
士郎「……あれ?」
『Fate/stay night、ufotable制作で再アニメ化決定』
士郎「……はい?」
セイバー「た、大変です!」ガラリ
士郎「セイバー」
セイバー「シロウ、Fate/stay nightが再アニメ化されます!」
士郎「…………」
士郎「なんでさ」
桜「あ、回想ここまでですね。先輩」
凛「……で、どういう集まりなのかしら? これ」
桜「なんでもFateがまたアニメ化するからって。詳しくは私も……」
セイバー「なんでそんなに落ち着いているんですか凛、桜! これは一大事ですよ!」
セイバー「Fate/Zeroで一世を風靡したあのufotableが、Vita版に続いてついに本当のアニメ化です! これが興奮せずにいれますか!」ダン
凛「ま、気持ちは分かるけどね。Zeroの盛り上がりぶりはいつぞやのFate最盛期を思い出すくらいの流行り具合だったし。私も大活躍だったし」
桜「姉さんは活躍してましたよね……ええ」
凛「さ、桜も結構あれで人気上がったみたいじゃない。わ、私が言うのもなんだけど、子供の頃のあなたってなんというか守りたくなるような可愛さがあって」
セイバー「私の活躍についても思うところは色々ありますがこの際は不問です!
セイバー「何よりアニメーションの美麗さ! シナリオも丁寧で言う事なし!のufoがついに本編のアニメ化を手掛けるんですよ!」
桜「……でも確かにそうですね。Zeroがここまで人気が出たのもufotableさんが素晴らしいアニメを作って下さったからですし」
凛「セイバーほどじゃないけど私たちだってそれなりにテンション上がってるわよ。セイバーとしてはZeroでバッドエンドっだったから、そこらへんが関係してるんじゃないの?」
セイバー「そ、それは原作からですし今さら言いませんよ。それより問題はどのルートをアニメ化するのかです。TLの話題もスレの話題もそれで持ちきりですよ!」
凛「あー、なるほどねー。でも普通に考えたら、ねえ?」チラリ
桜「え、私? ……ああ! そ、そうですよね!」
凛「テレビシリーズでセイバー、劇場版で私のルートをやったんだから、残った桜のルートをやるのが普通でしょ」
セイバー「確かに、そういう声も多いみたいですね。常道ならば桜ルート……まあ一理あります」
桜「い、一理ってどういう事ですかセイバーさん! 私、メインヒロインなのに差が付けれらて幾星霜……ついにヒロインとして輝けるチャンスが来たんですよ! 万年ヒロインのセイバーさんにはこの気持ち……わかりません!」
凛「でもあんたは自分のルートでも割と……」
桜「 は い ? 」
凛「いや何でもないわよホホホ(っていうか桜はCCCとかあったじゃない……別人設定だけど)」
セイバー「一理、一理あるのです。ですが、ですが!」
セイバー「別に私が救われないとかそういうの関係なく、セイバールートなのではないかという憶測がまことしやかに囁かれているのです!」
桜「ちょ、おかしいですよ! セイバーさんは、いの一番にアニメ化したじゃないですか!」
セイバー「」ハァ
桜「なんでヤレヤレみたいな顔してるんですかぁ!」
凛「桜、元気ね……気持ちはわかるけど」
桜「どういう事か説明して下さい!」
セイバー「そんな事をいちいち説明しないとだめですか? 一からですか? 一から説明しないとだめですか?」
桜「……声は静かに、私の影は、世界を―――」
凛「はいはいはい! ストーップ桜! ヒロイン力! ヒロイン力大事、大事よ桜!」
凛「セイバーも少しクールダウンしなさい。そんなに興奮しても仕方ないでしょ」
セイバー「む、その通りですね。すみません桜、凛」
凛「で? なんでセイバールートなのよ。もう何年も前にやったでしょ?」
セイバー「はい。確かにFateルートは既にアニメ化がされています。……ですが凛、桜。あなたたちはあのアニメに満足しているのですか?」
凛「満足?」
桜「満足って……それはもちろんしてますよ。ね? 姉さん」
凛「ええ。キャストもあれで決まったわけだし、TYPE-MOONの全面監修もあったじゃない。私は音楽好きよ?」
桜「そうですよ。ディスクの売り上げだって当時のクールでは上位に食い込んでるんですし。劇場版があったのだってあのアニメが成功したからじゃないですか。……私は出番少なかったですけど」
セイバー「ええ、ええ。わかってます。確かにあのアニメありきの私たちです。……外面では」
凛「外面って……じゃあなに? セイバーはあのアニメに不満があるっていうの?」
セイバー「当然です! というか原作ファンの殆どはあのアニメに不満を持っているのです! Fes.でも映像は一切流されませんでしたし、あれはもはや黒歴史なんですよ!」
桜「確かに……タイナカ彩智さんも樹海さんもFes.では出てなかったですね。タイナカさんはFate楽曲たくさん歌われてるのに」
凛「でもなんでよ。Fes.の件は版権とかいろいろあるんでしょ? キャストは引き継いでるんだし、黒歴史は言い過ぎよセイバー。いったい何が不満なのよ」
セイバー「」ハァ
セイバー「ダメですね二人とも。まるで分かってない。原作ファンは泣いてますよ?」
セイバー「さあ言ってあげて下さいシロウ! DEEN版のFateがいかに不満点だらけだったかを!」
凛「そういえばいたのね士郎。さっきから黙ってたから忘れかけてたわよ」
桜「わ、私は忘れてませんでしたよ、先輩!」
セイバー「そんな事はどうでもいいのです! さあシロウ! この分からず屋姉妹にズバッと!」
士郎「ああ……言ってやるよ」
士郎「セイバー。お前は間違っている」
またキャラに自分の持論を語らせるSSか
>>22 そうです! すみません!
セイバー「聞きましたか二人とも!って、あれ? シロウ?」
凛「…………」
桜「…………」
士郎「…………」
セイバー「あ、あれ? シロウ? どうしてあなたが……主人公であるあなたが同意しないのです!」
士郎「セイバー。別に俺は人の嗜好に口を出すなんて事はしたくない。けど」
士郎「テレビシリーズや劇場版を、その存在を否定するなんて間違ってる」
セイバー「な、何を言っているのですかシロウ! 戦闘シーンはZeroのような迫力も躍動感もなく、話はやたら駆け足で重要なシーンやセリフもたくさんカットされ、劇場版では多少改善されましたが作画も微妙」
セイバー「それに変に他ルートを混ぜようとしたおかげで蛇足のようなエピソードが付く始末! 原作ファンはみな怒ってますよ!」
士郎「……一つずつ答えるよ、セイバー」
士郎「戦闘シーン……か。確かに作画の枚数ではZeroには敵わないし、撮影技術やCGだって今の技術とは比べ物にならないかもしれない」
士郎「けど当時はアニメ飽和期だった。需要が非常に拡大したけど供給は全然追いついてない。その中でファン層が偏っているPCゲーム原作は、アニメ業界的な期待値やバックアップが弱いのは分かるだろ」
セイバー「そんなものは惰弱な言い訳に過ぎません。それが粗悪品を乱造する言い訳になると思ったら大きな間違いです」
凛「粗悪品って……」
桜「乱造……」
セイバー「いいですかシロウ? 同時期には涼宮ハルヒの憂鬱というすばらしいアニメがあったのですよ! 技術や需要などは比べ物になりません!」
凛「コードギアスなんてのもあの時期だったかしら。あれも良作だったらしいわね」
桜「確かに私たちのFateが突出した良作という評価は、Zeroとは違ってほとんど聞きませんね……」
士郎「セイバー。あっちは当時の新興勢力・ライトノベル業界のトップ。こっちは同人上がりのPCゲーム第一作だぞ。それに涼宮ハルヒのは角川書店の強力な後押しがあったし、アニメーション制作の京都アニメーションは元請としてはまだ新興で、逆に言えばそれ故に仕事を丁寧にやる余裕があった」
士郎「スタジオディーンは昭和の頃からアニメ制作をしてる老舗だ。今でも1クールにいくつもの作品を抱えていて、……内部矛盾があったのは認めざるを得ないけど、アニメ放送前のFateの市場での相場ってのがあるんだよ」
セイバー「ですからそれが言い訳だというのです。いい作品を作る! 作り手ならばそれが当然の義務……いえ矜持ではないですか!」
士郎「どうしてわかってくれないんだセイバー……桜だって言ってたじゃないか。ディスクの売り上げは良かったんだぞ」
士郎「続く劇場版のディスクはZeroの平均とほぼ同じ売り上げだぞ。つまらなかったり、出来が悪かったらこんな事にはならないだろ」
セイバー「そんなものは……原作ファンがコレクターズアイテムとしてとりあえず買っていただけかもしれません」
セイバー「そんなことを言ったらあれだけ出来の良かったプリズマ☆イリヤのセールスはステイナイトの半分以下です! 出来よりも潜在ファンの強さなんですよ」
凛「確かにセイバーのいう事にも一理あるわね。プリヤは原作ファンにも好評だったけど、所詮はスピンオフ。SNのファン層と数は比べるべくもないものね。Zeroと違って完全なパラレルワールドだし」
桜「わ、私はあんまりプリズマイリヤは詳しくないですけど……熱心なFateファンでもプリズマイリヤはノータッチっていう方は、結構いらっしゃるみたいです」
セイバー「わかりますかシロウ。ディスクの売り上げなど関係ありません。実際の出来にファンからの評価。これが作品単体の価値の全てです」
士郎「……わかった。セイバーが当時の状況やFateの立場を勘案できないっていうならいい」
セイバー「当然です。技術的に前時代だったのはそうかもしれませんが、それを差し引いてもFateは良くて並。原作ファンからしたら並以下でした」
凛「士郎。残念だけどセイバーを説得しきるには少し弱いわよ。結局言い訳にしか聞こえないし」
桜「えっと……私は先輩のいう事も一理……いえ、全面的に正しいとは思うんですけど」
士郎「けどセイバー。それは他のアニメにだって言える事だ。それだけは忘れないでくれ」
セイバー「…………」
士郎「シナリオの件だけど」
セイバー「次ですか。まあいいでしょう。そちらに関しても譲る事は何一つありません」
士郎「遠坂が言ってたように、あのシナリオには原案として原作者がクレジットされてるのは当然知ってるよな?」
セイバー「当然です。ですが原作サイドの介入など、細かいところまで及ぶものではありません。最終的には制作サイドが勝手に舵を切ればそこまででしょう」
凛「ちょっと待ってセイバー。それはちょっと言い過ぎじゃないかしら」
セイバー「なんです凛。あなたはシロウに味方するというのですか」
凛「別に? 私は自分が正しいと思った方の肩を担ぐだけだから。セイバー、あなたは具体的にどのシーンが気に食わないっていうの?」
セイバー「よくぞ聞いてくれました。言えば積もりますが、敢えてここは厳選しましょう」
セイバー「テレビシリーズの方ですね」
セイバー「何と言ってもキャスターとの決戦です。なんですかあれは。変なオリジナルの展開に、無理やり桜ルートを混ぜ込んだような……ボンテージ桜は制作サイドの暴走としか言えません!」
桜「ひ、ひどいですセイバーさん……」
士郎「セイバー、それは」
凛「士郎、少し」
セイバー「それから劇場版です! 原作ではイリヤスフィールを最後までバーサーカーが守りながら逝くあの名シーンが、無様に背中から倒れるシーンに改悪!」
セイバー「それにシロウ対アーチャーのシーンです! アーチャーの台詞口上! 台詞口上といえばシロウの名台詞『武器の貯蔵は~』も改悪です!」
凛「それだけ?」
セイバー「そ、それにですね! UBWの中ボスであるキャスター戦はダイジェスト染みていてマスターである葛木はうめき声しかセリフなし!」
セイバー「それに凛、あなただって貴重な逢い引きのシーンを丸々カットされてるじゃないですか! あれなくしてどうして凛のルートと言えましょうか!」
凛「以上?」
セイバー「……まあ、とりあえずは」
凛「はい士郎」
士郎「え、あ。はい」コホン
士郎「セイバー、これは割と有名な話だけどさ。あのキャスター編のあたりは原案・菌糸類、デザイン・社長で立派な公式なんだぞ」
セイバー「え?」
凛「具体的には桜のエロボンテージ設定ね」
桜「え、エロとか言わないでください!」
士郎「監修してるんだから当然だろ。セイバー」
セイバー「う……し、しかしですね。オリジナルは……まあそうかもしれませんが、原作を無視した作りはファンは許せないはずです!」
士郎「セイバー。俺たちが出演したのはテキストゲームじゃないんだ。アニメーション作品なんだぞ。表現する媒体が違えば、自然と演出だって変わってくる」
セイバー「そんな事分かってます! けどだからといって原作を蔑ろにしていいわけじゃあありません!」
士郎「劇場版はいずれも、短い尺の中でテンポを落とさないための演出だろ? あれは確かに少しせっかちだったけど、でもセイバールートの話をしっかり知っていればわからない描写でもなかっただろ。セイバーは原作を前提に考えてしまうから、そこで引っかかるんだ」
セイバー「話が分かりにくいとかそういう問題ではありません! 中身がスカスカだったのですよ!」
士郎「俺は映像を見ててスピード感もあってよかったと思うよ。……まあこれは俺の個人的な感想に過ぎないけどさ」
士郎「じゃあアニメは原作の奴隷なのか? 違うだろセイバー。アニメにはアニメの世界の杓子があるんだよ。つまらなかったならともかく、そうやって否定するのはどうなんだよ」
セイバー「逆ですシロウ。アニメが原作を蹂躙する権利なんてないのです」
士郎「セイバーは原作に囚われ過ぎてるんだ。改悪って言うけどなんでそう決めつけられるのさ。思考停止してるんだよ。真剣になぜ変えたのか考えてないだろ。脚本家や監督、監修した原作サイドの思惑なんてさ」
士郎「……セイバー。原作を尊重する気持ちは分かる。俺だって原作は大事だ。けど、それはアニメスタッフだって同じ気持ちのはずだ。だからこそこうやって原作チームが制作に深くかかわっているんじゃないか」
セイバー「そ、それは……!」
凛「気持ちの問題じゃない、なんて言えないわね。だってこれは気持ちの問題だから」
桜「そうですよね……原作に対するリスペクトがなければ、そもそも制作にはあまり関われませんよね。モードレッドさんの設定やオーバーエッジ干将莫邪の設定も起こされなかったわけですし……」
士郎「いま話題のアポクリファ、それにアンリミテッドコードやエクストラの原点の一つだってここにあるんだ」
セイバー「で、ですが! 設定無視だってあったじゃないですか!」
セイバー「百歩……いえ一万歩譲ってアニメならではの正当な思惑があったとしても、設定の無視は看過できません!」
桜「そんなのあったんですか? 菌糸類先生が監修しているのに……」
士郎「セイバー。細かすぎるのはナシだぞ。設定って言うからにはそれなりにしっかりした話をしてもらわないと」
セイバー「ええ、ありましたとも! 例えば、ギルガメッシュの所持していたカラドボルグです! あのねじくれた形状はアーチャーの改良によるものでしょう。なのに原典を持っているはずのギルガメッシュがねじれた剣を持っているのはおかしいです!」
凛「セイバー。アーチャーのカラドボルグⅡ、漢字でどう書くか知ってる? 偽・螺旋剣って書くのよ?」
桜「あっ。って事は姉さん。本物なら真・螺旋剣ですね」
凛「本物も螺旋剣なのよアレ。文字通りに見ればーだけど」
士郎「そもそもあれは、クー・フーリンであるランサーを仕留めるのにしっかり逸話に関わるカラドボルグを使ったっていう、高評価ポイントだろ。ああいう細かいところはむしろ原作愛を感じるんだけど」
セイバー「な、ならばギルガメッシュ自身です。彼は前回の聖杯戦争で受肉しているので霊体化はできないはず。なのに二度目の邂逅の際、撤退する時に霊体化をしていました。劇場版でもです! これは明らかに設定逸脱でしょう!」
士郎「セイバー落ち着けって。少なくとも遠坂のルートでギルガメッシュは霊体化してなかったか」
凛「そうだったかしら? ちょっと曖昧かも」
士郎「仮に霊体化できなかったとしても、身を隠す宝具くらいあいつなら持ってるだろ」
セイバー「そ、そんなとんちで私を誤魔化さないでほしい! 受肉している以上、霊体化は……」
士郎「このあたりは明確に語られてないんじゃないか? 仮にできないんだとしても劇場版でも同じことを繰り返している以上、むしろ何かあるって考えた方がいいと思う」
士郎「セイバー。気持ちは分からなくもないけどさ、セイバーは最初からDEEN版を低く見ようとしてるようにしか聞こえない」
セイバー「詭弁を……どうしてそこまでして庇うのです! DEEN版にいい点が多少あったとしてもufoの方が優れたアニメだという事はゆるぎないじゃないですか! 原作に対する敬愛も間違いありません。なのに」
士郎「セイバー。俺は別にufoを否定してるわけじゃない」
セイバー「ではなぜ過剰にDEEN版を擁護するのです! どう考えてもDEEN版よりZeroなのは明白です! どうせ『Zero新参うぜー』みたいな安易な考えから昔を美化しているだけではないですか!」
セイバー「結果的にDEEN版はZeroと比べて不評じゃないですか。黒歴史と言っている人だって」
士郎「セイバー!」
セイバー「」ビクッ
士郎「本当に駄作だったら俺だって憤ってる」
士郎「アニメだって芸術の一つだ。好き嫌いはある。ufoの方が好きだとか、優れているとか個人の批評は自由だ」
士郎「DEEN版はZeroみたいにものすごく丁寧に作られたわけではなかったかもしれないし、原作に忠実であろうとするよりも分かりやすさやテンポも重んじてたから、結果的に原作ファンならではっていう感動も少なかったかもしれない」
士郎「けど、黒歴史なんて。なかったことになんて、できるわけないだろ……!」
セイバー「シロウ……」
士郎「なんでだよ? どうして認められないんだ。自分の理想形じゃないから? ならZeroは完璧に理想形だったのか?」
セイバー「い、いえ。Zeroにも不満はありますよ。ランスロットと私のシーンがやたら短かったりとか……。ですがそれ以上に素晴らしい……」
士郎「思い出してくれセイバー。ステイナイトだって、いい所はいっぱいあったじゃないか」
桜「先輩が今まで言ってきたことは、裏を返せばみんなDEEN版の良かったところですよね」
凛「キャスティングや音楽、書き下ろし設定……無下にできない要素はたくさんあるわよね」
士郎「確かにアニメーションとしてのクオリティはZeroには劣るかもしれない。けどDEEN版が好きな人はたくさんいるんだ。アニメからFateに入った人、原作もアニメも漫画版やスピンオフもまとめて好きな人だっている」
士郎「勝手に優劣をつけるなとは言わない。けど、DEEN版を黒歴史なんて悲しいことは言わないでくれ……セイバー……!」
セイバー「…………」
士郎「俺、Fes.のVita版発表の時、みんなが喝采を上げてる中で寂しかったよ」
士郎「みんながDEEN版を否定してるみたいでさ」
士郎「そして空の境界3Dの時、Twitterでの騒ぎを見てさ。本当はかなりイライラしたんだよ」
凛「士郎……」
桜「先輩、いつも言ってましたもんね。Fateシリーズは原作もアニメも漫画版もZeroも、一種の並行世界の物語だって。この自由さが認められるのが、TYPE-MOONの強みだって」
凛「……確かにそのとおりね。だからこそたくさんのスピンオフに恵まれたし、同人業界でも盛んに薄い本が作られたりしたものね」
桜「遠坂先輩、そのいい方はちょっと……」
士郎「けど、俺だって内心思ったよ。ufoの作るステイナイトは、綺麗だった。もっと見てみたいって」
士郎「でもさ。なら思うんだ。DEENのステイナイトも、ufoのステイナイトも、どっちも楽しみたいって」
士郎「もちろん無理はしてる。DEENには最後までステイナイトに関わって欲しかった。劇場版見ればわかるけどさ、作画は十分一級品だろ」
士郎「けど決まっちまったもんは仕方ない。だからせめて、せめてまだ映像化してない桜ルートをさ。それがDEENへの義理だと思うし、それだけの義理を果たすだけの理由が、DEENにはあると思うんだ」
セイバー「……」
士郎「いや、これも個人的な願望に過ぎないよな。……ごめんセイバー。怒鳴ったりしちまった。けどこれだけは、分かって欲しかった。DEEN版が黒歴史なんかじゃないって」
セイバー「……いえ、シロウ。私の方こそ、少し言い過ぎました」
セイバー「そうだった。私は思い上がっていた」
セイバー「Zeroでちやほやされて、相対的にDEEN版を低く見てしまっていたのです。それにZeroからの新規ファンを疎む古参ファンが、Zeroを貶めるためにやたらとDEENを担ぎ上げるのが、気に食わなくて……」
セイバー「もう大丈夫ですシロウ。私はもう間違えない。DEEN版のFateルート、UBWルートは永久のものです。ufo版に期待しているのは変わりませんが、過去のアニメをなかったことに……黒歴史などと、もう口にはしません。それが、原作サイドや制作陣、キャスト……何よりファンに対する礼儀ですから」
セイバー「桜。あなたのルートが実現されるといいですね」
桜「は、はい! ありがとうございますセイバーさん」
凛「やれやれ。セイバーは一度こうと思ったら頑固ね。こういう所は原作の頃から全然変わらないというか」
セイバー「め、面目次第もございません。いかんせんこれはむしろブリテンの王を務めていた頃からこうでして……」
士郎「でもわかってくれたじゃないか。セイバーは十分人の話がわかってるよ」
セイバー「そう言って頂けると助かります。ありがとうシロウ」
………
……
…
凛「ささ。せっかくだしその空の境界3Dで上映されたっていう映像、あっぷろーど?されてるみたいだから見てみましょ」
士郎「そうだな。俺も映画館で一回見たっきりだし、もう一度見てみたかった」
セイバー「何かルートに関するヒントがあるかもしれませんね」
桜「うわあ……緊張します」
セイバー「ん? ufoの公式から『セイバーを軸に』って書いてありますね。これは……!」
桜「ええっ!? いきなりそんな心を折るような発言禁止です! 先に動画を見てからコメントしましょうよ!」
セイバー「む、最初はZeroの映像からですか」
凛「ま、Zeroを作ったチームなわけだし? これはまあ予測できたというか」
士郎「……まるでZeroありきじゃないか。俺はちょっとこういうスタンスは納得できない」
桜「ま、まあまあ先輩。ファンサービス、ファンサービスですよこれは!」
凛「セイバーの出番多いわね。『セイバーを軸に』ってこの事じゃないの?」
セイバー「あ、そうですか……そうですね……」
桜「」ホッ
『―――投影、開始』
セイバー「おお! 士郎は台詞があるじゃないですか!」
士郎「まあ、一応はな」
凛「Zeroも最後は士郎と士郎のお父さんの会話で終わったし、まあ主人公だし? 妥当なチョイスだとは思うけど」
桜「私はてっきり通しで出てるセイバーさんがこういう役割を務めるのかと思ってました。軸、って言ってましたし……」
セイバー「映像は……普通にVita版の映像の使い回しですね」
凛「これはルート共通……あら、私のアーチャーのカットは私のルートのものよね」
桜「私のカットも自分のルートのです……あ、でも他のサーヴァントさんたちのカットも全部私のルートの……」
凛「比重的には桜ルートの映像が多い感じね。やっぱり桜ルートなのかしら」
士郎「いや。これは単純に俺たち全員を移すための演出だろ。桜のルートはサーヴァントが集合してるから都合よく流用したんだと思う」
セイバー「! み、見ましたかシロウ! 今、シロウとバーサーカーが戦うシーンが一瞬!」
士郎「あ、ああ。見た。それに礼装を着たイリヤもいたな。これは……」
凛「いくつもある名場面の中でこれをわざわざ使うって事は……」チラッ
桜「つ、つまり……その。これって、期待しちゃっても……いいんですよね?」
凛「ま、夕焼けの教室のカットと、士郎がアーチャーを見つめてるカットもあったけどね。これは私のルートだわ。……他のと比べると短かったけど」
士郎「一応言うと、雪原のバーサーカーとイリヤもあったな。これも一瞬だったけど」
セイバー「ラストは……見覚えのないカットですね」
士郎「この部分だけ新規映像みたいだ。セイバー、遠坂、桜と三人とも映ってるな」
凛「桜は他のルートではサブキャラみたいなものだし、わざわざ三人目として映ってるって事は。桜、期待していいんじゃない?」
桜「うぅっ……嬉しいんですけど少しだけ引っかかりますぅー!」
………
……
…
士郎「終わったな。どうだった?」
凛「私はやっぱり桜ルートが濃厚と見たわね。桜の存在感はとにかく、結構なネタバレの士郎VSバーサーカーや聖骸布を巻いた士郎があったのは大きいわ」
桜「で、でもDEEN版の前例がありますしオリジナルルートの可能性も。それに分量はともかく姉さんのルートの映像もあったわけですし……」
セイバー「……もしくはやはり全ルートやり直しという可能性もあります。……その、士郎には申し訳ないのですが」
士郎「俺も遠坂と同じで桜ルートだと思う。……そう信じたいって言う気持ちもあるけどさ」
桜「もし……私がメインヒロインのルートだとしたら、私絶対にがんばります!」
士郎「桜ルートだと遠坂やイリヤ、ライダーも活躍するよな。セイバーも……敵役にはなるけどインパクトは大きいし」
セイバー「ま、まあそれは……否定できないのですが」
凛「それにZeroの第四次聖杯戦争について言及されたのも、原作の桜ルートが最初だしね。綺礼や間桐臓硯も続投するし、ダークな雰囲気もZeroに通じるものがあるし?」
桜「キャスターさんやランサーさん、それに佐々木さんとか葛木先生は……出番少なくなりますけどね」
士郎「そのあたりのちょっとしたフォローを入れるのがufoなんじゃないか? Zeroの遠坂回みたいにさ」
凛「ディスク特典でタイガー道場行きっていう可能性もあるわね……恐ろしいことに」
セイバー「何はともあれ、今月末に発売されるタイプムーンエースが楽しみですね!」
士郎「ああ。……不安もあるけどさ、個人的には」
凛「ま、この調子でホロウやエクストラ、アポクリファなんかも新しい展開があるといいわよね」
桜「プリズマ☆イリヤも2期が決定してますし、Fateはまだまだ戦えますね」
セイバー「それに月姫や魔法使いの夜、スタママなど他のシリーズも続報が期待されます」
士郎「ああ―――TYPE-MOONの戦いはまだまだこれからだ!」
《完》
>>1は甘ちゃんなので、どんな作品でも許容してる感じです
昔はセイバーみたいな、今は少し士郎より……みたいな考えをしている感じです。桜ルート希望
ありがとうござました
積もる話とかなさそうでしたら、見計らってHTML依頼出します
あと重複の件は失礼しました
希望持ってもいいじゃないですかぁ……
あとこのSSはフィクションですので(震え声)
このSSまとめへのコメント
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