俺「ここが優しい世界か」 (18)
俺「俺の家はどこだろう」
鴉「あそこが君の家だよ」
俺「ああ、ありがとう」
鴉「気にしなくていいよ」
俺「良い奴だな」
鴉「当たり前さ、友達だからね」
俺「そうかい」
俺「さて妹はどこにいるのやら」
妹「おにいちゃんおはよー」
俺「ああ、妹よ会いたかったぞ」
妹「私もだよおにいちゃーん」
俺「うむ」
妹「ねえねえ抱っこしてー」
俺「お前は悪くない」
妹「なにそれ?」
俺「先に言いたかっただけだ」
俺「母上はどこだろうか」
母「俺ーごはんよー」
俺「なるほど」
母「さ、温かいうちに食べなさい」
俺「ああ」
母「どう?おいしい?」
俺「マズい」
母「あらまあ!ひどいわねえ」
俺「すまない、さっきのは嘘だ」
俺「最高にマズい」
俺「俺には姉もいたはずだ」
姉「おっす俺」
俺「おっす」
姉「手あいてんなら買い物付き合ってくれない?」
俺「残念ながらお前が望んでいる手はない」
姉「あーほんとに残念ね」
俺「本当にな」
姉「んー、じゃあ今度暇あるのっていつ?」
俺「その内」
俺「父上殿ー」
父「なに?呼んだ?」
俺「確かに呼んだ」
父「まったく父離れができねえ息子だな」
俺「ちち離れという概念がない」
父「はっ、いうねえ」
俺「あんたもよく言うねえ」
父「あん?反抗期か?」
俺「そうともいう」
父「俺がお前くらいの歳ん時はなあ」
俺「作り話は勘弁してくれ」
俺「幼馴染はいるかな」
幼「あっ!やっと見つけた!」
俺「ほう」
幼「ほう、じゃないよ!!今日遊ぶ約束だったでしょ!!」
俺「俺の脳は小さいからな」
幼「ほお」
俺「真似事はやめたほうがいい」
幼「なんか機嫌悪くない?だいじょうぶ?」
俺「いいや、絶好調さ」
幼「うーん、顔色も悪いけどほんとに大丈夫?」
俺「生まれつきだ」
俺「親友よ」
友「よっ」
俺「登場が早すぎる」
友「細かいことは気にすんな」
俺「シュレッダーにはまだかけていない」
友「前々から思ってたけどお前ってすごい変だよな」
俺「突然現れるお前ほどではない」
友「ちげえねえ」
俺「良き友人だ」
友「俺もお前ほど良い奴はいないと思ってる」
俺「ああそうかい」
俺「さてもういいだろう」
女「うん?どうしたの?」
俺「いやなに、君と話したかっただけだ」
女「さっきからずっと一緒だよ?」
俺「ふむ」
女「まったく俺くんはいつもそうなんだから」
俺「すまんな」
女「全然気にしてないよ!」
俺「ああ、すまないな」
女「うん」
俺「本当にありがとう、嬉しいよ」
俺「優しい世界というのは非常に便利だ」
女「?」
俺「望めば何もかも手に入り、全てが俺に賛同してくれる」
女「そんな世界があるの?」
俺「しかしこれではだめだ」
女「なんで?」
俺「俺が望む言葉を喋れたとしても」
女「普通の世界じゃ喋れないんだよ?俺くんは」
俺「例えこうして望む人が居てもこの世界は俺だけに優しい」
俺「更にこの愛らしすぎる容姿は変えられないときた」
女「可愛くていいとおもうけどなあ」
俺「神様は随分と中途半端な世界を作ったものだな」
女「たぶんそこまで気が回らなかったんじゃないかな?」
俺「きっとどこかにあるはずなんだ」
女「なにが?」
俺「俺を人間にしてくれる世界が」
女「もういっちゃうの?もっとお話しようよ!」
俺「また会おう」
俺「ふむ」
鴉「やあ、戻ったんだね」
俺「優しい世界から逃れても人の言葉は使えるままか」
鴉「??」
俺「言葉を話せるようになったのは大きいな」
鴉「何を言ってるのかさっぱりわからないよ」
俺「これで幸薄そうな人間にちょっとしたサプライズを届けられる」
鴉「うーん、おかしくなっちゃったのかな」
俺「まったくもって本当に有意義な世界だった」
鴉「まあいいか」
俺「さて飛ぼう」
おわり
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