久「大阪来て良かったやろ?」 咲「せやなー」(421)

ID:HNaYw2za0代行

久「大阪へ行きたいかー!」 咲「お、おおーっ///」
久「大阪へ行きたいかー!」 咲「お、おおーっ///」 - SSまとめ速報
(http://www.logsoku.com/r/news4vip/1350752595/)

が終わらなかったので終わらせます

チュンチュン

久「ふわぁー」

洋榎「おはよ」

久「おはよう。……意外。起きるの早いのね」

洋榎「あ、ああ。まぁな」

洋榎(こいつより寝てたら何されるかわからんし)

久「あれー、携帯光ってる」パカッ

久「うげっ」

久(着信52件にメール32件!? 和と照からだ。電源切っといてよかった)

久(なんかあったのかな)

洋榎「絹たち起こしに行ってくるわ」

ガチャ

洋榎「おーいおきr」

洋榎「うっわ、なんでこいつら抱きあって寝てんの」

洋榎「クーラーつけっぱやし……」ピッ

洋榎「あれ、咲、頭が赤黒く――血かこれ」

洋榎「てことは、」ゴロン

絹恵「んん~咲ちゃんー」ムニャムニャ

洋榎「鼻血、出すぎやろ」

咲「ふぇ」

洋榎「お、き、ろ!」

咲「――おはようございます」ボー

絹恵「おはよぅ」

洋榎「二人まとめてシャワーあびてこい」

絹恵「っ、なんやこの血、ってうちの!?」

絹恵「ああ~、咲ちゃんの髪にも……」ゴシゴシ

洋榎「まだ半渇きやし落ちるやろ。シミになる前にいってこい」

久「顔殴られたみたい」ヒョコ

洋榎「こいつ、中学のサッカーで顔面セーブきめてから鼻の血管切れやすいんや」

咲「おおぅ……」

絹恵「咲ちゃんひかんといてーな」

洋榎「はよ、いけ!」



洋榎「あいつら出てきたら、うちらも入るか」

キャアアアア

久「……」

洋榎「またかいな……」

洋榎「ほーい、おまっとさん」

絹恵「あ、あれ……」

洋榎「!!、久、咲、見んな!!」

洋榎(……おかんがすっぽんぽんで風呂場で寝てる)

久「えーどうしt」

洋榎「見んな言うとるやろ!下がれ下がれ!」

洋榎「絹、バスタオル持ってきて。うちは湯船洗っとくから」

絹恵「……おかーちゃん生きとる?」

洋榎「死んでたらいびきかかんやろ。ほれ、持ってこい」

ンゴォ

絹恵「あ、ほんまや」

◇◆◇◆◇◆

洋榎「おはよう、酔っ払いおばさん。気分はええか?」

雅枝「……ええわけないやろ、いてまうぞ」

久「お、おはようございます。私、洋榎さんの友達で竹井って言います」

雅枝「おお、どこかで見たと思ったら清澄さんとこの部長さんか」

雅枝「遠くはるばるこんなきったない街へようこそ。食いもんしかないけど楽しんでってや」

洋榎「今は風呂はいっとるけど、大将の宮永も来てんねん」

雅枝「ああ、あの子か……。決勝可哀想やったなぁ。元気にしとるか?」

久「長野に帰ってから家にとじこもちゃってて、それでようやく連れ出せたんですよ」

雅枝「はぁ、慰安旅行ちゅうわけやな。大阪選ぶとはセンスええで」

洋榎「アンタ今汚い言うとったやろ」

雅枝「ええやん、事実やし。――あたしもどっか旅行したいわー。もう疲れた」

洋榎「子供の手前でんなこと言うのやめーや」

雅枝「……昨日、まぁ、色々言われてな。おかーちゃんちょいとニートになるわ」

洋榎「千里山の監督、……クビ?」

雅枝「一応自主的にな。あんだけ圧かけられて続けられるほど強くあらへんよ」

洋榎「……そっか。おつかれさん」

雅枝「なんや気持ち悪い。いつもならもっといじってくるのに。友達の前だからええ顔しとるんか」

洋榎「なんかそういう気分でもないしな」

雅枝「ほーん。ありがとな」


久「ときに愛宕さん、もし監督復帰するとして名門と無名、どちらを選びます?」

雅枝「え、」

洋榎「おまえ……」

 
雅枝「どっち言われたらそりゃ名門やろなぁ。まだこの子たち食わせなきゃあかんし。お金いっぱい貰えるとこの方がええよ」

雅枝「なんでそんなこと聞くん?」

久「お恥ずかしい話なのですが、清澄には指導者がおらず来年は手続きやらが不安でして……。もしよければなーなんて」ウワメ

洋榎(こいつアタマおかしいんちゃうか。なんでおかんに色目つかっとんねん)

雅枝「……清澄、ええかもね」

久「ほ、ほんとですか? そしたら私、すっごいうれしいです!」

洋榎「……」

雅枝「すぐには決められんし、もし他校から呼ばれたらそっち行くかもわからんよ。可能性があるとしか言えへんね」

久「いえいえ、それだけでも! でも、千里山からうちへなんて質の落差がひどすぎて経歴に傷がついちゃうかも」

雅枝「おいおい、全国ベスト4が言っていい台詞ちゃうで。まぁ、来年はこの愛宕雅枝が率いて頂点間違いなしや」ガッハッハ

久「ですよね!雅枝さんがいてくれれば心強い事この上ないです」ニヤリ

洋榎「おいこら、オマエ今『ちょろいな』おもたやろ」ボソボソ

久「失礼ね。勘ぐりすぎよ」

洋榎(その後は終始、久のペースにもっていかれ、うちが口を出す隙さえなかった)

洋榎(用意周到に持参していた清澄のパンフレットやら、教員規約の説明までしておかんをその気にさせていた)

洋榎「うちはお前に乗せられへんぞ」

久「何いってんの。あ、そろそろね」

ツギハー ヒメマツー オオリノオキャサマハー

咲「……」ボー

絹恵「まだ眠い?」

咲「あ、ごめんなさい。少し考え事を」

絹恵「悩みあんならお姉ちゃんが聞いたるで」

洋榎「いつから咲の血縁になったんや」

絹恵「昨日?」

洋榎(こいつ、まさか手を出しよったんか)

絹恵「ここにいる間だけはうちがお姉ちゃんになる決めたんや」

洋榎「ああそう……」

洋榎(もううちの家族はダメかもしれへんな)

 
洋榎「今日からもう部活始まるからな、久は部員に色目使わんように。つうか声かけんな」

久「なにそれ、それじゃあまるで私がたらしみたいじゃない」

洋榎「自覚ないんかワレ」

久「誰彼かまわずってわけではないのよ」

洋榎「ほんまかいな。ずいぶん色欲多情な気があるように感じるんやけど」

久「例えば大阪(ここ)に来てから、スキンシップをとったのはあなただけ」

洋榎「スキンシップって……、昨日の夜、手相見る言うて手握っただけやん」

久「ああいうの、他人の領域を侵すような感じが嫌であまりやらないの」

洋榎「うちは別にどうでもええんか」

久「洋榎は私のこと受け入れてくれる気がしたから、かな?」

洋榎「涼しい顔してよくそんな事言えるな」

久「洋榎の前だからね」

洋榎(名前連呼すんのほんま勘弁してくれ……)

 
◇◆◇◆◇◆

洋榎「と、言うわけで今日明日この二人に合同練習加わってもらうからな。二人と打ちたいやつは予約しとき」

久・咲「よろしくお願いします」

ヨロシクオネガイシマース

洋榎「来年はこいつらぶっとばすぞ、みたいな意気込でかかれよー」

由子「のよー」

洋榎「というかなんでうちが進行してんねん。これは恭子の仕事やろ」

末原「うちはもう部長やないし、それにたぶんこれ新部長の漫ちゃんの仕事ですよ」

漫「確かに」

洋榎「何が『確かに』や。来年ここも心配やわ」

末原「ほいじゃ、打ち始めますか。最初は宮永さんはうちと由子と漫ちゃんの卓に入って貰いましょう。竹井さんは洋榎と一、二年達と打って指導まわってもらえますか?」

久「ええ、いいわよ」

洋榎「結局、恭子がまとめるんかい。久、さっき言ったこと覚えてるよな」

久「普通に指導するわ。普通に、ね?」

洋榎(あんだけ釘刺しときゃ大丈夫やろ。それよりも恭子や、まさか自分から咲と打つ言い出すとはな。成長したでほんま)ジーン

 
末原(髪の色、どないしたんやろ)

由子(綺麗なのよー)

漫「……髪、どうしたん?昨日は黒かったのに」

咲「染めてたのが落ちちゃって……。白くなったのは長野から帰ってからです」

末原「お、おお、そうなんか」カタカタ

由子(動揺するとこじゃないのよー)

咲「やっぱり変ですかね、この髪色……」

由子「んなことないのよー。綺麗でカワイイよ」

末原「せ、せやで。ちょっとびっくりこいたけど、小悪魔というか神域というか魔族的な感じがして、」カタカタ

由子「恭子、あんた……」

末原「うん、まぁ、あんま気にせんでええと思うから始めるで」ポチ

漫「先輩……」

 
末原(いかんいかん。今ここで退いたら一生もんの傷になってまう。乗り越えるんや、恐怖を!)


起家末原→由子→咲→漫

……

末原(うう、やっぱり対面からえげつないオーラを感じる……)

咲「よろしくお願いします」ペコ

末原「あ、ああよろしくな」

由子「お手柔らかになのよー」

漫「おなしゃす」

咲「今日のルールはどうします?」

恭子「アリアリの赤1でウマが、」

咲「あ、そうじゃなくて、昨日は二位抜けを意識して打て、ということだったので」

洋榎「咲ー、今日はトップ狙えっ!」

恭子「というわけや」

咲「――わかりました」ゴォッ

◇◆◇◆◇◆
東一局

スチャ

末原(配牌――最悪っ。字牌ばっかで対子もあらへん)

末原(ツモで九種九牌、いけるか?)

スッ

末原「……ぐっ」タン

由子「気合入りすぎなのよー」

末原「しゃあないやろ。配牌ごっつ悪いんやもん」

咲「……」ピクッ

漫「うちは逆にめっちゃええですよ」

絹恵「こらー。真面目にやってください」←牌譜係り

 
…………
八順目

末原(なんとまぁ、あんだけ配牌わるかったのにほぼツモ切りってわけわからん)

末原(おっと、由子が真ん中ぶったぎってきた。そろそろあかんな)

末原(ふりこむよりマシや。さっさと危なっかしいのきっとこ)タン ↓⑥筒

咲「ロン。タンヤオのみ1300点です」

末原「」

末原「――はい」ジャラ

咲「……? 大丈夫ですか?」

由子「ほんまや。顔真っ青なのよー」

末原「大丈夫。ちょっとお腹痛かっただけや。もうええよ」


末原(……っ)

末原(なんで、なんで誰もつっこまんのや!)

末原(手出しした⑥筒は三枚目、そんであいつは、)

末原(二順目から――ずっとツモ切りなんやぞ!?)

 
末原(あいつ、うちになんか恨みでもあるんか?)

末原(二順目、宮永は漫ちゃんの手出し⑥筒をスルー)

末原(そして、六順目にまた漫ちゃんから出とる。それも見逃している)

末原(⑥筒周りは死んでいなかった。いや、そもそも東一局の平らな時点で相手を選ぶ意味がわからん)

末原(考えろ、なんでうちを狙ったんや。嫌がらせ?……流石にそこまでの畜生には見えん)

末原(勝つため、か? いやでも、それしか)パシン

末原「いてっ」

洋榎「おいこらなにブツくさっとんのや」

末原「あ、後輩見てて言うたじゃないすか」

洋榎「なんか心配になってな、色々と……」ジー


洋榎「恭子、呑まれるなよ」

末原「?」

◇◆◇◆◇◆

東三局

31000 末原
23900 由子
23200 咲 親
21900 漫


末原(東二の由子の連荘後、満貫ツモ和了りでトップ)

末原(今回も牌牌は悪くない)タン

末原「……」

末原(呑まれるな、か)

末原(あの東一は揺すぶりってことか)

末原(ええ根性しとるで。思い知らせたる)

末原「……」タン

末原(いや、これたぶんフラグになるな。余計なこと考えせんようにしよ)

…………
十三順目

末原(二回鳴いて、索子の清一に見せかけたタンヤオ聴牌。ドラポンしたからそう簡単には勝負できひんやろ)

漫「あかんですよそれー」

末原「何言うてるんや。勝負せんかい」

末原(手代わりして両面待ちにもってきたいなー)

咲「……」タン

末原(宮永も索子と字牌ださんし、ベタオリやな)

由子「ポン」

末原「え?」

由子「ポンよ?なんかおかしい?」

末原「勝負するんかーって」

咲「……」ピク

由子「たった今、『勝負せんかい』って自分言ってたのよー」

末原「まぁそうなんやけど」

末原(由子になんか癖が見抜かれてるんかな。今度自分の顔録画しながら、)

咲「リーチします」タン ↓Ⅲ索

漫「まじか」

末原(こいつ、おりてなかったんか)

末原(つうか、清一に見えへんのかなこれ、びびらなすぎやろ。そもそもどうみても7700以上確定してるんやけど)

漫「これかなぁ」タン ↓二萬

咲「……」

末原(そこ通るんかいっ。端っこの危ないやつやないか)

末原(正直ここは勝負したい。たとえ振り込んでも赤ドラは二枚切られてるし、表ドラはうちが抱えとる)

末原(ツモ、おし安牌)タン

…………
十七順目
末原(手代わりもせんし、どないしよ、あっ)

末原(二萬引いたわ。さっき漫ちゃんが捨てたから安パ――)

末原(……もし、もしやけど、東一みたいに宮永がうちを狙っていたとしたら?)

末原(可能性はある。そしてあの河)

末原(今思えばヤオチュウ牌が明らかに少ない。チャンタがあるかもしれへん)

末原(ラス牌までやりたい、けど、ここで当てられたらメゲちまう)

末原(幸運にも作った頭が宮永の安牌。ここは凌げる)

末原「ちょい待ち」

漫「リスペクト小瀬川白望すか?」

絹恵「上重さん、よう相手の名前覚えてるな……」

由子「海底狙いかもなのよー」

絹恵「ああ、去年の長野の子ですか」

漫「ありゃーマジもんの魔物でしたね。同い年ってのが信じれません」

末原(あかん、こいつらうるさくて集中できひん)

末原(悔しいけど、しゃあないオリやな)タン

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

末原(!?っ なんやこの寒気は、)


 一巡後

末原(ぐぅううっ! 結局当たり牌引くのかよ。クッソ!)タンッ

末原「……ノーテン」

漫「ノーテン」

由子「テンパイ」

咲「テンパイです」バラ…


末原「か、空テン?」

咲「?」

末原(なんで頭にハテナ浮かべるんや!)

漫「ひえー」

 
◇◆◇◆◇◆
南四局一本場 ドラ②筒

36300 末原
26900 由子
22500 咲
13900 漫 親

末原「こ、ここここで終わらしたるからの」カタカタ

洋榎「なんでトップのお前が震えてんのや」

久「絹恵ちゃん、ちょっと牌譜見せてもらっていい?」

絹恵「ほい、これですわ」

久「ありがと」

久「……ふむふむ」ヨミヨミ

久(咲は出和了り二回でどちらとも末原さんだけか)

久(東一の流れなんてモロね。そしてリンシャンは一度もなし。槓もない)

久(パッと見、昨日よりエグイことしてるわこりゃ……)

久(なんとなくわかってたけど、)

久(嶺上開花を失った咲は弱くなっていない。以前のベクトルとは違えど確実に化けている)

訂正

22900 咲

 
…………
三順目

久(咲の手、遅くはないけど打点は高くなりそうにない)

久(このまんまじゃ、満貫手も作れるか怪しいわ)

咲手牌 ④⑥四四四六ⅢⅤⅧⅧⅨⅨ西 ツモ六萬

久(ここは周りの手は早くなさそうだし、安牌用の字牌を抱え込む必要もない)

咲「……くる」ボソ

久(長考――打西じゃないのかしら)

咲「……」タン ↓四萬

久(す、四萬!?っ、 危ない、表情を出さないようにしないと)

久(……この四萬打ち、まさか聴牌気配のブラフ?)

久(今までの聴牌スピードを考えればそう見えなくもない)

久(一巡前の八萬切りが効いてきて……)

咲「……」

 
洋榎(うっわ、ここで四萬きってくんのかー)

洋榎(恭子のやつ、目に見えて警戒しとるな)

末原手牌 ①③⑥⑥⑧七八九ⅠⅡⅡ南北 ツモ発

洋榎(未だ字牌整理……。咲以外はみんな遅そうやし、ここは根性で和了らなあかん)

末原「むぅ」タン ↓北

洋榎(なんとかして南か発を持ってきたいところ)

咲「……」タン ↓④筒

洋榎(けったいやな)

洋榎(降りろ言うてるようにしか見えへん)

末原「……」 ツモⅢ索

洋榎(おっし、手が進んだ。がんばれ恭子!)

 
…………
七順目

末原(逃げんでよかった。これで張った――!)

末原手牌 ①③⑥⑥⑧七八九ⅠⅡⅢ南南 ツモ②筒

末原(いける、⑧筒は通る!)

ゾクッ ゾクゾクゾク

末原(……)ブルッ

末原(こ、こんな威圧、たいしたことないわっ。 名門姫松の元部長なめんなや!)タン ↓⑧筒

咲「……」ピクッ

咲「……」

咲「……」ニコ

末原(なんや、当たりなんか?ちゃうやろ)

由子「……」

末原「由子っ、ツモ」

由子「あ、ごめん。ちょっと意識が飛んでたのよー」チャッ

末原「なっ……、大丈夫か?」

由子「恭子が捨て牌握る瞬間なんか悪寒がして、」

漫「オカン?」

末原「発音ちゃうで、そういうとこは関東準拠でええねん」

漫「お↑か↓ん→?」

末原「ちゃうがな、お→か↓ん→や」

由子「それもなんか違うのよー」

ワイワイ

洋榎「……」プルプル

洋榎「……こらあ、集中せい!」

 
末原「ああ、ずっと後ろおったんですか」

洋榎「気付かんかったんかい。ほんまおどれらは一人が口開けばピーチクパーチクやかましいなー」

由子(洋榎には言われたくないのよー)

末原(この人にだけは言われたくないわ)

漫「先輩にだけは言われたくないです」

洋榎「おお?ええ根性してるなぁ漫ぅ」

漫「あ、声でてました?」

洋榎「ほう、元主将を侮辱とはえらくなったもんや。後でデコ書きな」

由子「そんなことより今誰がツモ番のよー?」

咲「あ、私です。すいません考えてました」

末原・由子・漫・洋榎((((影薄っ))))

咲「リーチです」グゴゴゴォッ

末原・由子・漫・洋榎((((前言撤回))))

 
…………
八順目

末原(いっぱつ!……ならずか。まぁ別にリーチしとらんが) ツモ東

末原(リーチすればシャボでまてる。けど……)チラ

咲「……」

末原(そう誘っとるんか?なぁ、宮永)

末原(……ええい!リーチすんだったら一巡前にカンチャンで待てばよかったんや。今更引き返すな)

末原(南で待つ。これは変えられん)タン ↓東

末原(……通った。というかコレ三枚目やし。なに考えとんのやうちは)

咲「……」タン

末原(一発なしか。よかったー)

末原(宮永はリーチはするけど、ほとんどツモ和了りせんな)

末原(さっき漫ちゃんが言ってた通り、槓もせん)

末原(せんのになんで、こんなこいつのこと怖いんやろ)

 
…………
九順目

由子「リーチなのよー」

末原「……」ビクッ

由子「あ、反応したね。びびってんのよー」

末原「ちゃうわ!」

末原(むふふ。これで生牌の南が出易くなる)

末原(……んん?生牌?そういや宮永のやつ字牌整理早かったな)

末原(いや、まさかな。ハハ……)

宮永「……」タン

末原(南出さんかなー)ソワソワ

 
…………
十順目

漫「こいつだぁっ」タン

洋榎「なんや気合入ってるな」

漫「逆転の一手を製作中ですからねぇ。ウチもいること忘れられたらあかんですよー?」

洋榎「うわーテンション高いなー。追い詰められたら燃えるタイプか。Mやな」

漫「そりゃちょっとおかしいですって」

末原「……」チャッ ツモⅡ索

末原(またしてもツモれんかった。漫ちゃん喋るとツモ運悪い気がする……)

 
末原(宮永のリーチ牌がⅢ索。モロ裏スジや)

末原(せやけどそのスジのⅤ索は既に切られている)

末原(カンチャン待ちかもしれへんけど、それじゃあ大した点にはならん。いってチャンタリーチ。三元牌もない)

末原(しかしドラが一枚しか見えてないから……、いや、四順目に④筒を切ってるから可能性は低いな)

末原(もし南が通れば、次もかわして由子と宮永の防御無しの殴り合いを眺めてればいい)

末原(切りたい……!この南を……)

末原(やけど、正直漫ちゃんの和了りには期待できひん)


末原(女末原、ここは勝負だ!)タン ↓Ⅱ索

咲「……」

 
末原「と、通った……」

由子「のよー」チャッ

由子「……」

由子「一発!じゃないのよー」チキショイッ ↓南

末原「……ああっ、それロ 「ロンです」

末原「……え?」

咲「ロンです。頭ハネ、です」バラ


   四四五五六六ⅦⅦⅧⅧⅨⅨ南


末原「南、え?――単騎?」



咲「リーチ平和リャンペーコーで、裏は二枚乗ったから――

平和じゃなくね?

>>51
ミスッタ
平和ぬきで

◇◆◇◆◇◆
半荘三回終了後

漫「はい、じゃあ休憩とりまーす。終わってる卓から20分間とってください」

洋榎「おー、様になってるやないか。うちらがいなくなっても安心やな」

漫「愛宕先輩にまともに褒められると、鳥肌たってしまいますわ。あ、いい意味でですよ?」

洋榎「悪意しか伝わらんわあほ。……恭子はどした?」

漫「五分ほど前にトイレいったきりです。あの、先輩、」

洋榎「うちが見に行くわ。心配せんでもあいつは折れん。漫は部活のことだけ考えておけ」

洋榎「みんなー、聞いてー。言い忘れとったんやけど、この階の一番近い曲がり角んところのトイレ今清掃中なんや」

洋榎「悪いけど下の階いってくれー。忘れんといてなー」

漫「……」

洋榎「だから心配すんなって!」

 
洋榎「恭子、最初トップとったのにだんだん崩れってたな……」

洋榎「あそこまで精神削られてる恭子を見たのはインハイぶりや」トボトボ

洋榎「咲と、やらせんほうがよかったかな」

洋榎「トラウマの払拭で良かれと思って受け入れたけど、恭子にはマイナスにしかならんかったのか……」

洋榎(でも……、咲を乗り越えにゃ恭子は進むことはできん。手を抜かれても一緒。うちはどうすりゃええんや)

洋榎「きょうこー? おるかー?」


末原「ん?おりますよー。どうしたんですか?」

洋榎「え?あれれ?」

末原「?」

洋榎「もう、休憩入ったからな。それ伝えようと思って」

末原「もしかして、」

末原「心配してきてくれたんですか?」

洋榎「」ドキリ

洋榎「す、すまん! 結構きつそうにしてたし、もしかしたらこの前のインハイみたいに、」

末原「そうですか、心配かけてすいません」

洋榎「……恭子?」

末原「宮永、最初粘ることもせず、簡単に二位和了りを選んだ」

末原「でもその後は全然リンシャンとか槓とかせーへんのにすごい強くて」

末原「最初の半荘だけトップとることができたけど、その他は場の支配力が尋常じゃなかった」

末原「オカルト抜きで化け物。そんなやつ、憧れてしまいますわ」

洋榎「……咲な、長野帰ってきてずっと閉じこもってたらしいんよ。ひたすら牌譜貪って、久が連れ出すまで廃人みたいな状態だったんやって」

洋榎「うちは怖い。そこまでして得るものが正しいのか。そしてあんな打ち方する咲が」

洋榎「思考誘導――あいつの普通じゃない読みと勘。うちはあれがオカルトの塊にしか見えへん」

洋榎「それでもお前は、「あっ、」


咲「ここ、あの、清掃中のとこでしたっけ?あれ?」

洋榎「さ、咲!? どうしたんここまできて」

咲「トイレ探してて、それで私方向音痴だから、」

洋榎「あーそっかそっか。そういやそんな属性あったな、忘れとったわ。丁度今な清掃終わったとこやねん」

末原「せいそう……?」

洋榎「よし、恭子ジュース飲みいこ。ほら休憩終わってまうで」

洋榎「じゃあな咲。戻り方はわかるよな」

咲「それぐらいなら大丈夫です。あと、末原さん」

末原「ん」

 
咲「最初の半荘にトップとられたの、すっごい悔しかったです。あとでもう一戦お願いしますっ」

洋榎(ヒャー)

末原「うん。またトップ取ったるわ。本気で潰すつもりでこい」

咲「ありがとうございます」ニコ


洋榎「……恭子お前、成長したな」

末原「そうですか?」

洋榎「……あと、もううちら引退やから敬語はやめてくれ」

末原「それもそう――やな」

◇◆◇◆◇◆
洋榎「そろそろ戻らんと」

末原「……」

洋榎「どした?」

末原「なんか昔に戻れた感じがして」

洋榎「恭子は色々背負ってたからな。うちは好き勝手やってたからそんなことあらへんけど」

末原「部長になれ言われた日の夜は眠れんかった」

洋榎「恭子らしいわ。そうやって責任を感じるのはええとこや。うちにない素質やな」

末原「うち自身は単なるびびりかと思ってたけど、そう言ってもらえるとうれしい」

洋榎「のびのび打つ麻雀もええやろ」

末原「せやね。ほんま久しぶりやわ」

末原「そういやさっき、なんか言いかけたやろ」

末原「宮永が来て、えーっとなんやったっけ」

洋榎「ああ、――なんやったけなー」

洋榎「うちも忘れたわ。感情のまま口走ってたし、たいしたことじゃないんよ。たぶん」

末原「ふーん」

  
ガヤガヤ

洋榎「なんか部室騒がしいな」ガチャ

洋榎「戻ったで、え、あれ?なんか多くない?」

由子「おかえりのよー」

漫「おかえりです」

郁乃「おかえんさ~い」

久「ああ洋榎、この二人、」

和「初めまして、咲さんと同じ清澄高校一年の原村です」ズイ

照「宮永咲の姉の宮永照です。うちの咲が迷惑をかけてないか心配で、」ズズイ

和「なにいってるんですか!咲さんは他人に迷惑なんてかけません!」

照「原村さん。会って半年もたたないあなたが私の咲についてどうこう言う資格があるのかな」

和「お姉さんだって二年もほったらかしにしといて、いまさら保護者面ですか」

照「……そこに触れるのは人としてどうかと思うよ……?」ギュルルルル!

洋榎(うっわ、めんどくせー)

 
久「はいはいストーップ。ここは現責任者の私が保護者も兼ねているので、これ以上の『咲は私のもの議論』は不毛でーす」

洋榎「おいおい、火に油注ぐな」

絹恵「う、うちも大阪にいる間は咲ちゃんの仮のお姉ちゃんやから、」

洋榎「絹も黙っとき」


ギャーギャー


郁乃「末原ちゃ~ん、ほんまこの子らおもろいな~」

末原「代行、楽しんでないであんた唯一の大人なんだからこの状況なんとかしてください」

末原「というか今日は奈良行って知り合いと飲む言ってたじゃないですか」

郁乃「あれは、いろいろあって中止したんよ~。それに団体トップ4と個人チャンプが来るなんて面白そうやん」

 
郁乃「それと、末原ちゃん。あんた今ええ顔しとるな。なんかあったん?」

末原「解放されたん言うのはちょっと違うけど、久しぶり好き勝手麻雀打たせてもらって、その、気持ちよかったです」

郁乃「せやか。元気になってもらえると私もうれしいで~」

末原「そんで……、あの二人は?」

郁乃「高校前でうろうろしてたから連れてきたんよ~。宮永さんが心配で長野からかけつけたらしいで」

末原「へ、へぇ」

ガチャ

咲「もどりましたー。……あ」

 
照・和「「!?」」

照「どうしたんだ、その髪!」

和「綺麗……じゃなくて、誰にやられたんですかっ」

咲「こ、これは、」

照「久を信じて送り出したのに……。咲がグレた」ウウッ

和「だから私もついていけば良かったんです」

照「だからなぜ君は咲をどうにかできると思っている。結局、肉親の私がいかなきゃダメだったのか」

和「お姉さんは期待されてませんよ。それに一緒について行くという選択肢を放棄したのはお姉さんですよね」

照「放棄したわけじゃない。久が『私だけで大丈夫』って、」

和「部長がたらしなの知らないんですか?よく平気で妹さんを預けられたと思いますよ」

久「……」

照「そんなこと言ったって、久があんな目をして言うから安心しちゃったし、それに君だってうまく言いくるめられたんじゃないか。人のこと言えるの?愛があれば押し切れたはず」

和「それは……」

久「よくも好き勝手言ってくれたわねぇ……。ちょっときなさい」ゴゴゴ

照・和「「ひっ」」

◇◆◇◆◇◆

和「ごめんなさい」ペコ

照「すんませんした」ムスッ

久「あらら、教育が足りないみたいねぇ……」

照「!、ごめんなさい許してください」ペコォ

久「謝るのは私じゃなくて咲にだけどね」

和「私としたことが、体の変化に気付けないなんて……。もっと気をつけていれば」サワサワ

照「相談ぐらいしてほしい。私にだったらいくらでも面倒かけてもいいから」サスサス

咲「あ、あはは、とりあえず髪の毛触るのやめてもらえるかな……」

 
洋榎「変態共も大人しくなったし、そろそろ始めよかー」

漫「あのお二方どうします? せっかく全国区レベルが来てくれたんやし、卓入ってもらいましょうか」

洋榎「せやな、あの個人決勝でチャンプにぼこられた借りも返さんとなぁ」ゴゴゴ

漫「そうじゃなくてですね、指導回ってもらうって話ですよ」

洋榎「血が騒ぐわぁ。まさかプロ入り前に一戦交えることができるなんて……」フフフ

漫「こらあかんわ」

 
漫「と、いうわけで、チャンプ――じゃなくて宮永さんと愛宕先輩と原村さんが卓囲むんですが、あと一人、入りたい人~」

シーン

洋榎「新部長!気合みせろや!」

漫「ですよねー。うちしかいないですよねー」

由子「トップとったら焼肉おごるのよー」

漫「はい。がんばります」

洋榎「由子!うちは?」

漫「洋榎は缶ジュース」

和「咲さん!絶対トップになります!そしたらあとで髪触らせてください!」

照「させるわけにはいけないな。それに君は少し発言に気をつけたほうがいい」ゴォッ


久「私達はあっちで打ちましょう」

咲「そうですね」

 
◇◆◇◆◇◆
二時間後

照「ずるい……。よってたかって私を狙い撃ちするなんて」ションボリ

久「まさか照が二回続けてトップをとれないなんてねぇ。明日は槍でも降るのかしら」

洋榎「うち、やりきったで……。たのしかっ、たよ」ガクリ

絹恵「完全燃焼しとるけど、お姉ちゃんもトップとってないやん」

洋榎「なんでこんな子に育ってまったんや。昔はもっと優しかったのに」ブツブツ

和「咲さん!約束です」ワキワキ

咲「うんうん!和ちゃんすごかったよー」

和(ティヒヒ)

漫「由子先輩!」

由子「そのうちね。ちゃんと奢るから、ね。その目怖いのよー」

郁乃「そろそろ締めようや~」

 
漫「今日の部活はここまでですー。今後の日程についてはプリント配布しますんで確認お願いします」

漫「それじゃ赤阪監督より一言お願いします」

郁乃「んー、その前に、久ちゃんと照ちゃんから一言もらいたいな~」

照「……名門だけあってレベルの高い練習が臨めて大変収穫がありました。私はもう引退した身ですが、ここでの経験を東京に帰って後輩たちの糧になるよう生かせたらいいなと思います」

久(流石は二面相の照)

久「私は、そうですねー、やっぱり沢山の女の子たちに囲まれながら打つ麻雀は楽しいです」ニコ

洋榎(ブレんなホンマにこいつは)

和(やっぱりたらしじゃないですか)

咲(今日は何人落としたんだろう)

郁乃「私からは、来月の練習試合までに新主将決めたいから、いろいろアピールしてや~ってだけ。誰にもチャンスあるで~」

漫「以上です。解散」

 
◇◆◇◆◇◆

洋榎「よっしゃ飯食い行こう」

照「お好み焼き!お好み焼き!」ウキウキ

洋榎「キャラ崩壊しとるで。……せっかくやし道頓堀いこか」

久「大阪といったらって感じね」

洋榎「言うほど観光するところやないけどな」

洋榎「恭子たちは?」

由子「いくのよー」

漫「同じく」

末原「……」

洋榎「恭子」

末原「っ、どした?」

洋榎「大丈夫かお前ー。さっきもずっとだんまりやったし。道頓堀行くけどついてく?」

末原「お供させてもらうわ」

洋榎「おうけい。気いしっかりせえよ?」

◇◆◇◆◇◆
鶴橋○月

久「席決めどうする?」

和「咲さんのとなりで」

絹恵「咲ちゃんの横」

照「咲の横か下」

末原「あ、うちも宮永さんの横がいい」

洋榎「なんやて!?」

照「私のとなり?」

洋榎「ちゃうやろ。めんどいからクジな」

由子「それもめんどうなのよー」

洋榎「じゃあ、咲、誰の横がいいか決めて」

漫「残酷やなぁ」

咲「ええ~~、それじゃあ、末原さんと絹恵さんで」

絹恵「っしゃあああ!」ガッツポ

末原「ありがとな」

 
照・和「」チーン

久「オススメってある?」

洋榎「○月焼きっちゅう看板メニューが、まぁハズレなくてええんやないか」

久「じゃあ私はそれ。みんなは適当に頼んで分けましょう」

久「そして支払いは私に任せないさい!」

おおー

久「ホテル代バックと学校からのお小遣いがあるからね。好きなだけ頼むといいわ」

照「好きなだけ……?」

洋榎「なんやチャンプ。食い意地はってんのか」

照「私の胃に限界はない。故に最強」

洋榎「どっちが食えるかやりあうか? さっきのリベンジマッチや」

照「第三回長野焼き芋大食い競争優勝の私にか?」

洋榎「はん、問題あらへん。底なし沼の洋榎言われたうちや。負けるきせえへんわ。地元やし」

照「かかってこい」

 
◇◆◇◆◇◆

末原「ここの⑨筒切りたいんやけどどう思う?うちはペンチャンより良形持っていきたいんやけど」

絹恵「うちもそう思います。だけど咲ちゃんはそのままリーチしてますね」

咲「はい。ここで部長の視線から推測するに既に張ってました。だから私は――」

ジュージュー

久「ねぇ、ここまで麻雀にのめりこんでる咲って珍しくない?」

和「すごい楽しそう……」チュー

久「聞いてる?」

和「……聞いてます。正直怖いぐらいです。それとなんというか」

久「魅力的」

和「それは以前からですけど。正確に言えば、より魅力的になった、です。部長狙ってます?」

久「私は不退転の決意があるの。安心して」

和「咲さん、以前より人を惹きつけるなにかがある……。だからみんな樹液に群がるコガネムシの如く咲さんにまとわりつくんです」ヂュゴゴゴ

久「……ドリンク、持ってこようか?」

和「私が行きます」スッ

 
和「あ、咲さんのグラスも空ですね。持っていきましょうか?」

咲「いいの?ありがとう和ちゃん」ニコ

和「すいませんグラスを、」

照「待て、私が取ってあげよう。それと私のも頼む」スススッ

和(今、明らかに自分のと咲さんのグラスを入れ替えた!?)

和(いや、あの手馴れた手つき、何千何万とくりかえしているはず。入れ替えた動きさえブラフかもしれない)

和(油断していました。もう少し注視していれば判別できたのに……)

和(こっちの思惑がバレているのか……。ならばこれは『牽制』であり『利用』されているッ)

照「咲と私は『オレンジジュース』。二人とも『オレンジジュース』だぞ?いいか、忘れるなよ……」フフフ

和(二人が同じ内容物なら、お姉さんが受け取った時点で、咲さんに渡すほうを選択するのは、お姉さんですね)

和(だったらこの二つのグラスには差異があるはず。お姉さんだけが見抜ける小さな違い)

和(わからない、一体どうすれば気付けるッ)

和(いっそ運否天賦に……いや、)

和(それでは咲さんのグラスを手に入れる確率は二分の一。ここは確実に獲る!)

 
和(結局ドリンクバー前まで来たのに未だに『差異』に気付けていない)

和(グラスの底も)クルッ

和(目に映る証拠は何一つありません……)

和「目に映る?」

和(まさか、)サスサス

  ”!?”

和(彫ってある……。浅く広くだけど、確実に)

和(右腕の回転パワーを指先まで伝え、擦り傷を残さず削り取ったのですね)

和(文字、でしょう。……『て』、『る』、『の』?)

和(『てるの』、グラスの所有権を主張するものでしょうか)

和(そんなことにわざわざ?印ならここまで複雑な文字をつけなくていい)

和(そうこれは、『照のグラス』ではなく、『照の(物の)咲のグラス』の意!)

和(あのにじみ出る変態性と独占欲から、彼女の持ち物全てに印をつけている可能性すらある)

和(きもちわるい! けどこの勝負、私の勝ちです!)

 
照「ふふふ」

洋榎「なにわらっとんのや。はよ食え」ハムハム

照(今頃原村さんは底の文字に気付き、そして理解し、私を出し抜いたと喜んでいるはず)

洋榎「さっきの威勢はどうした」

照(しかし、甘いな。なぜ渡したグラス二つのうち一つに咲のが含まれていると考える?)

洋榎「ほう無視か。ならばこっちにも手はあるで」

照(運否天賦であれば二分の一。そんな可能性にかければ私の敗北もありうる)

洋榎「こんぐらいの大きさでええかな」

 
照(だから、私は用意した。もう一つのグラスを!)

照(店員さんに一つ追加の注文を告げるとき、周りに不審がられないよう注意したおかげで誰も気付いていない)

照(咲のグラスを受け取る瞬間、既にそれは膝元に待機。自分の体で隠しながら取り替える!)

照(そして今、さりげなくバッグにつっこんだ一個こそ、咲の接吻付きグラス!)※犯罪です

照(そして、誰も見てない隙に何食わぬ顔でテーブルの上のと交換し、使用するッッ)

照(会計時に入れ替えたグラスを出せば窃盗にならない。マイブレインイズパァーフェクツ!)


洋榎「おい口開けろ」ガシ

照「は?」

洋榎「あーん」ムリヤリ

照「あががががが」フガフガ

漫「末原先輩、なんだか変わりましたね」

由子「一年坊の頃を思い出すのよー」

漫「じゃあ戻ったって感じですか?」

由子「そうね。強くなるためにひたすら打っていた女だもん。お昼の間もずっと麻雀誌読んでたのよー」

漫「トラウマも乗り越えられたみたいやし、彼女ら招待して正解でしたね」

久「へぇー、うれしいこと言ってくれるじゃないの」ズイ

由子「わっ!びっくりするのよー」

久「あらら、ごめんなさい。ついうれしくなっちゃって」

漫「そういや咲ちゃん、引きこもってらしいけど、そんな風には見えませんね」

久「私が会ったときはずいぶんやつれてたけどね。久しぶりに打って調子もどせたんじゃない?」

漫「でもあれって、インハイで会ったときと全然ちゃいますよ。今の咲ちゃんと打ってるとなんていうか、どす黒いオーラみたいな」

由子「失礼なのよー」

久「……否定できないわ」

 
漫「竹井さんも感じます?心臓つかまれるようなあの感覚」

久「ええ、相手へのプレッシャーが尋常ではないわね。悪魔と打ってるのかと勘ぐっちゃうわ」

漫「でもって卓以外だと普通の女の子なんですよねー」

由子「ギャップ萌え?」

漫・久「あ~」

久「だから余計に人を魅了するのかしら」

 
◇◆◇◆◇◆

 「お会計は12695円です」

久「(ちょwww)……二万からお願いします。領収書は清澄高校名義で」

和「ホテル代から引くんじゃないんですか?」

久「私は議会長の特権を最後までしゃぶりつくすつもりよ」

漫(うちも見習お)


洋榎「苦しい……。こいつほんまもんのアホやで……」

絹恵「まったくもー。子供やないんやから。うち、胃薬持ってるけど飲む?」

照「大阪のどぶ沼は大したことないな」キリッ

咲「お姉ちゃん、未だに大食漢だったんだね……」

 
由子「こっからどうするのよー?」

洋榎「まだ暮れるのまで時間あるから観光やろ」

久「せやせやー」

洋榎「この辺りなら、大阪城とかやな」

漫「華の女子高生がお城見学って」

洋榎「なんやとこら」

久「いいじゃない。大阪城、風情があっていいわ」

照「うん。(咲と)お城見たい」

和「いいですね。私も(咲さんと)見て回りたいです」

久「ポンコツコンビもそう言ってる事だし決定」

――――――

――――

――

 
◇◆◇◆◇◆

雅枝「家で一人酒。思ったよりむなしいな」ポリポリ

雅枝「しても遅いなぁ。もう8時やで。午前練聞いたのに。日本橋でも回ってるんやろか」

雅枝「……暇や。なんかゲーム買ってときゃ良かった」

ガチャ ジャマスルデー

雅枝「おお、おかえり……。なんか増えてるな」

和「お世話になります。原村です」

照「照です。咲の姉の」

洋榎「キャラバンに新メンバーや。宿なしやからうちで預かろう思うてな。ええやろ?」

雅枝「別にええけど……。面子集めて雀荘つぶしに行ってたのかとおもたわ」

雅枝(局地的に雀力集まりすぎやろ。台風くるで)

洋榎「あ、夕飯食ってきたから」

雅枝「わかった。そうだ、今日の牌譜のデータと録画したやつある?」

洋榎「ちょいまち……。これや」

雅枝「ありがと。じゃあおばさんは自室でこもってますわ。みんな自分家みたいに気楽にしてな」

久「熱心ね」

洋榎「あれは趣味みたいなもんや。極々偶に指導やらダメだしされるけど、所詮飯ん時の会話のタネ程度やしな」

絹恵「子供よりも教え子のほうがかわいいみたいやもん」

洋榎「それはちゃうよ。単純に家ん中でも指導者面したくないだけやろ。たぶん」

絹恵「ふーん。そんなもんかなー」

久「絹恵ちゃん、お母さんのこと苦手?」

絹恵「別にそういうわけやないですけど、教えて言うても学校がー監督がー言うてまともにとりあってくれへんから……、千里山の子たちには嫉妬してしまいます」

久「じゃあ、好きなんだね」

絹恵「そうですね。うち、マザコンだと思います」

洋榎「開き直りすぎやろ。こっちが恥ずかしくなってきたわ」


照「洋榎」チョンチョン

洋榎「なんや」

照「あれやりたい」

 
洋榎「64?ソフトだったら、TV台の下にいっぱいあるからそこから選びな」

照「わかった」トテテ

洋榎「……あいつオーラなさすぎぃ!」

久「宮永一族は雀卓以外だと普通だからね」

洋榎「そもそも姉のほうには感情を感じないんやけど、そのへん大丈夫なん?」

久「最強な上、個性豊かでアイドル気質だったら、そんなの神様が許さないわよ」

洋榎「それが強さの秘訣……? お、マリパやんのか。うちも混ぜてーな」

照「泣いて逃げ出すことになるがよいかな?」

洋榎「持ち主にその発言はありえんやろ。ぼこるわ」

照「何か賭けよう」

和「咲さんと一緒にお風呂に入る権利でいかがでしょうか」キリッ

照「なぜ君が出てくる。だがその提案は大いに結構。負けるはずがないからね」

絹恵「うちもやります」

洋榎「なんやこの求心力は。咲はどこぞの教祖か」

 
照「またスター出た」イェ゛エ゛ー

洋榎「な!? おかしいやろ! なんでマス踏んだだけでそんなボーナススター貰えんのや!」

照「全ての事象は私に収束する」ドヤァ

洋榎「意味わからん……。まぁミニゲーム一回も負けとらんからええけど」

和「おかしい……目押しは完璧なのに……、乱数パターンfのはず……」ブツブツ

絹恵「ごめん、おねーちゃん! うちの養分になって!」ゴー!テレサ

洋榎「やめろおおおおお」カチャチャチャチャ


久「楽しそうね」

咲「部長は参加しなくていいんですか?」

久「私、TVゲームって苦手なの」

咲「私と一緒ですね。見てるほうが楽しい」

久「……咲、元気になって良かった」

咲「はい」ニコ

久「……、この前、叩いてごめん」

 
咲「?」

久「あなたの家に行った日」

咲「、あ、あれですか。……悪いのは私です。みんなの気持ちも知らずに、勝手に自己嫌悪に陥ってました」

久「頭にきたのは演技じゃなくて事実、なんだけど、まさか力が……」

咲「嶺上開花使えなくなっちゃったのはしょうがないです。奪われちゃったものをどうこうすることは、たぶん無理です」

久「奪われた?……大星さんに?」

咲「彼女が教えてくれました。『こんな素敵な力をありがとう』って」

久「……」

咲「あれだけ悔しかったのは人生初めてだったな……。自分でも怖いぐらい怒りが膨れて、おかしくなりそうでした」

咲「というかちょっと壊れちゃってましたね」アハハ



咲「私、もう昔みたいに打つことはできないんです――よね」



久「……っ、」ズキッ

 
久「……ごめ、ん」

咲「!っ、 部長、どうしたんですか?」

久「なんで咲が、て。何も悪いことっ、してないのに、」

久「私、本当に何もできなくて、後輩一人守れなっ、くて」

照「咲が……久を泣かした……」

咲「ええ!? いや違っ、――違くはないけど、」オロオロ

洋榎(何したらあの女を泣かせることができるんや)

久「お手洗い、行ってくる」



久「大星、淡……」

久「返してよ、私の後輩を、」

久「前みたいに、心から笑ってくれる咲を……」

 
ガチャ  ドン

雅枝「おおう、悪い。前見てなかったわ。……大丈夫?」

久「あ、いえ。こちらこそごめんなさい。お怪我ありませんか?」

雅枝「そうじゃなくて、今泣いてたやろ。嫌なことでもあった?」

久「……もう、落ち着いたんで、大丈夫です」

雅枝「そうか。久、あ、下の名の呼び捨てでもいい?」

久「はい」

雅枝「――後で、チャンプと一緒にうちの部屋来てくれへんかな。寝る前でええよ」

久「かまいませんが、」

雅枝「ちょっと聞きたいことあってな。なんなら今すぐでもええんやけど、どうする?」

久「照がまだ遊んでるようなので、後でお邪魔させてもらいます」

雅枝「うんわかった。また後で」

久「はい、」

久「……?」

◇◆◇◆◇◆
洋榎の部屋

照「ぶー。咲と寝たかったー」

洋榎「まぁまぁ、ええやないか。お姉ちゃん連合みたいな感じして、な」

久「そう言われてみれば、そうかも。大人の会合ってやつ」

久「……今日は二人を寝かさないわよー」ニヤ

照・洋榎「」

久「冗談よ。いくら私だって二人相手は身が持たないわ」

洋榎「……お前、ほんとは処女やろ……」ボソ

久「そういう属性もありね。実は純情で乙女な私」

洋榎「もう何がほんまかわからんなコレ」



久「ああそうだ、照、今から雅枝さんに呼ばれてるんだけど、一緒に来てくれない?」

照「――ん?ごめん寝てた。今から?」

洋榎「今まで喋ってたやろ! で、なんで? 理由は?」

久「聞かされてないわ。とにかく照を連れてこいって」

 
コンコン

雅枝「入ってええよん」

久「お邪魔します」

照「どうも」

洋榎「邪魔するd」

雅枝「いやいや、あんたは呼んでへんから」

洋榎「なんやとー! やっぱ、絹が言うように教え子のほうがかわいいんか……」

雅枝「こら、イジイジすんな。そういう性質やないやろ。……まぁええわ。本当は、二人だけで決めてほしかったんやけど、ヒロ、あんたは余計な口出ししない、約束せえ」

洋榎「そんな重い話なんか?」

雅枝「約束」

洋榎「わーったって。するする」

雅枝「じゃあ、そのへん適当に座ってな。楽にして聞いてくれ」



雅枝「……――二人で、咲が今後麻雀を続けるかどうか決めてほしい」

照「……は?」

 
照「おっしゃってる意味がよくわからないのですが」

雅枝「端的に説明するとな、あの子の打つ麻雀は人を潰す。だから、被害者が出る前に、」

照「おかしいです。同じ卓で打ってもいないのになぜそんなことがわかるのですか」

雅枝「わかるよーそりゃあ。だってあの子に似た人知ってるもん」

久「!、」

久「まさか……小鍛治、健夜?」

雅枝「そう。あの日本麻雀界の至宝であり、無双の悪鬼、小鍛治プロ。あいつの学生時代そっくりやで」

洋榎「でもでも、小鍛治プロは現役やろ!? おかしいやん、あの人が許されて咲は駄目なんて。それにそんなん本人に、」

雅枝「約束忘れたんか?」

洋榎「うっ、」

雅枝「ヒロ、悪いんやけど、これは保護者二人が考えて結論づけることなんや。部外者が横から口出ししたらあかん」

洋榎「……わかった」

 
雅枝「小鍛治の新人の時、なんて言われてたか知ってるか?」

照「いえ、」

雅枝「『吸血鬼』や。意味わかる? 同じ卓囲ったら最後、生気が抜けて屍人のようになる。そいつが強ければ強いほど、ひどい有様になってまう」

雅枝「奈良の阿知賀の先生な、昔小鍛治にぶっ壊されて長い間牌握れなかったらしいんよ。あんだけの実力あれば今頃プロで結果残してたってのに」

照「咲は違います」

雅枝「何が違うんや」

照「咲は他人に危害を加えるような子じゃありません。純粋で優しい子です」

雅枝「じゃあ質問。小鍛治はなんで地元の独立リーグへ行ったと思う?」

久「強すぎたせいで……飛ばされたってことですか?」

雅枝「おしいな。でも左遷されたってのは合ってる。あいつはな、日本のプロ連中を壊しすぎた」

雅枝「あいつが十九の時に引退したプロの数、ざっと前年の3倍やで」

雅枝「確かに強い。けども層が厚い日本は小鍛治に及ばずともそれに近い連中はぎょうさんおる」

雅枝「それが軒並み引退して、小鍛治が孤高になっちまったら、団体がメインの世界戦でやってけへんやろ」

 
雅枝「小鍛治は強者を求め続け暴れまくった。そして上の連中がプロ界の将来を危惧した結果、ちっぽけなリーグへと放り込まれた」

雅枝「悪意はなく、打つことが楽しくてしょうがなかったんやな」

雅枝「純粋すぎる故に性質が悪い。一応小鍛治の名誉のために言っとくと相手の不幸に喜べるやつではない。これは咲にも言えることやろ」

照「それでも咲は……」

久「っ、先ほど洋榎も言ったように、なぜ咲本人へ聞かないのです?私達は所詮、管理者と姉です。麻雀を離れろと言うのなら本人が決断すべき事柄なはずです」

雅枝「あの子は――辞めろ言われたら辞めるやろ。そんなのフェアやない」

久「矛盾していませんか?雅枝さんは先ほどからおっしゃってることは、咲に麻雀を辞めてほしいようにしか聞こえませんが」

雅枝「……十五の子にその道を絶てだなんて、子供がいる身からしたらホンマは言いたくない」

雅枝「それに、続けるのであればサポートはする。それでも、大会ではどうなるかわからん」

久「それって……」

雅枝「ああ、夏休み明けは清澄の監督を希望する。明日にでも学校のほうに連絡入れるわ」

久「!!、 ありがとうございます」

雅枝「ふふ、悪いなーこんな話のときに。本当はもっとびっくりさせたかったんやけどな」

 
洋榎「今日の朝話したばっかやろ。そんな都合つくもんか?」

雅枝「元プロ・元千里山監督の愛宕雅枝やぞ? 喉から手が出るほどほしいはずや」

洋榎「自分で言うかそれ。家はどうすんのや。うちはプロ行ったら絹の世話は無理やで」

雅枝「ヒロにそんなん期待してるはずないやん。それに再来月あたりパパが帰ってくるよ」

洋榎「げっ、あいつニュージーで牛のケツに顔つっこんで窒息死したんやないのか」

雅枝「嫌うのはわかるけど、あんた、自分の父親をそんな適当な設定で殺すな」

雅枝「で、話は戻すけど、どうする。やめさせるなら私がうまいこと言ってどうにかする。あんたらは誰も傷つかん」

照「私は、咲の意思を尊重したいです……」

久「彼女には打たせます。私の後輩から幸せを奪うのは絶対に嫌です」

雅枝「続けることで誰かが不幸になるかもしれへん。回りまわって咲がそれを被る可能性もある」

久「……――それでも、私は彼女にはまだ部のみんなと麻雀をさせてあげたい」

雅枝「わかったわ。まあまだ完全に力は覚醒しとらん。引き返せる段階にいる。明日一緒に打ってみてその後もう一度聞くわ」

◇◆◇◆◇◆

洋榎「zzz」


照「久、おきてる?」

久「うん」

照「謝らなきゃいけないことがある。久に嘘をついていた」

久「嘘?」

照「咲が嶺上開花を上がれなくなったのは、淡のせい」

久「咲から聞いたわ。それでさっきね。なんだか私のほうが悲しくなっちゃって」

照「そうだったのか……」

久「後輩を庇うのも、先輩の仕事だから。責めはしないわ」

照「……」

照「淡は極度の興奮状態になると相手の精神を取り込み力を奪う」

照「私も一度だけ、やられたことがある」

久「その時はどうしたの?」

照「その半荘が終わったら元に戻ったよ。私には咲が戻らない理由がわからない」

 
久「咲に嫉妬したのかもね」

照「淡が?」

久「大星さん、あなたと仲良くしてたじゃない。カメラの前でしか見てないけど、」

久「先輩後輩は血縁以上の関係にはなれないから……。咲より自分がすごいんだぞってアピールしたかったのかも」

照「そんなくだらないことで……」

久「ええ、くだらないわ。そんなくだらないことで私の後輩は壊された」

照「ひ、久?」

久「自分を慕う女の子がある日、まともに口も聞けなくなり以前の笑顔を失ってしまった。あなたは加害者に対しどう思う?」

照「……悲しい」

久「違う。憎しみが生まれ殺意を覚える、だよ。受身の感想を述べられるほど、被害者に近しい人間は冷静じゃない」

照「……」

照「私には、淡を責めることはできない」

 
照「それに、咲はもう以前と変わらないぐらい元気になったじゃないか。打ち方は変わっちゃったけど、麻雀も強いし、それでも久は淡が許せない?」

久「……」

久(以前と変わらない、か)

久「もうこの話はやめましょう。明日は七時起きだから、そろそろ寝るわ。おやすみ」

照「……うん、おやすみ」

やっと半分いったので、ちょっと休憩します

◇◆◇◆◇◆
次の日

末原「おはようさん」

洋榎「おはよう。珍しいな、駅で会うなんて。いつもはもっと早入りしてんのに」

末原「引退した三年は重役出勤がデフォや。それに下の子たちが意識して、早くこられても困るしな」

洋榎「うちなんて開始ギリギリが普通やのに、恭子は偉いなー」

末原「いや……何回言われても、その姿勢を崩さなかったのは洋榎だけやで」

洋榎「でもな、無遅刻無欠席が自慢や。すごいやろ!」

末原「……」

洋榎「今、バカは風邪ひかん的な吹き出しがちらついたで」

末原「自覚しとるやん」

洋榎「おぉ?朝から挑発的やのー。あとで同卓入れや」

末原「ははは、お手柔らかにな」

 
洋榎「……」


――昨晩――

雅枝「なんやこんな時間に、トイレはここやないで」

洋榎「起きてるよ。さっき、うち、会話入れんかったから、」

雅枝「言いたいことあった?」

洋榎「……咲と打ったら、壊れる言うたやんか。でもうちの元部長、逆に昔に戻ったっていうか、良くなったんよ」

雅枝「うん」

洋榎「だから、咲が麻雀続けることが言うほど悪いもんなのか、ってそれが疑問で」

雅枝「小鍛治の通り名『吸血鬼』、卓についたやつを潰すって他にも意味がある」

雅枝「ほんと稀にらしいけど、あまりの強さゆえに他人を引き込み、魅了するんやて。その上そいつに力を与えてまでな」

洋榎「仲間増やすんか。まんま吸血鬼やないか」

雅枝「ほんまやで。どんだけこの業界はオカルトで溢れてるんかいな。……だから末原さんも咲に惚れてまったのかもな」

 
洋榎「ただ、昔に戻っただけと信じたいわ。恭子にあんなうち方は似合わへん」

雅枝「録画したのを見る限り、まだ咲は未完成品やな。毒が毒を打ち消して、いい方向に転がったのかもしれへんやろ」

洋榎「ああ、バキでもそんなことあったし、うちはそれを信じるわ」

雅枝「せやでー。めんどうなのは全部おかあちゃんに任せとき」

洋榎「隙あらば良母アピールか。うちへじゃなくて、絹が最近さびしがってるからもっと構ってあげて」

雅枝「絹はうちよりあんたのほうが好きなんやで。それに気付かんから咲にべったりやんか。大事な妹、とられちまうぞ」

洋榎「うっ……、それは嫌やわ」

雅枝「ま、あんたは明日、みんなと楽しんできなさい」

洋榎「……おかん、ありがとな」

雅枝「まさかヒロの口からそんな言葉が……さぶいぼ立ったわ」

洋榎「……くそばばあ」ボソ

雅枝「冗談よ。おやすみ」

洋榎「おやすみ」

 
回想終わり~



洋榎(おかんが言う事に間違いがあることはめったにない)

洋榎(流石のうちでも小鍛治の破壊力ぐらいは知ってる。それに引退者の総数も九年前から増えていた)

洋榎(……確かにうちは部外者や。けど、咲が悲しむのは見たくない)

洋榎(……麻雀ぐらい続けさせたってええやろ……っ!)



由子「でなー、昨日の阪神、金本の兄貴が打ってくれてようやく連敗止まったのよー」

照「でも相手、ベイスクリニックでしょ?」

由子「はあああ!? 今チャンプ、あなたは全国六千万の阪神ファンと二万ぐらいの横浜ファンを敵に回したのよー!」

照「関係あらへん。ワイ、ヤクルトファンやし」

由子「その関西弁むかつくのよー。それにミレッジ頼りのヤクルトもAクラス行けるかわかんないのよー」

照「広島ぐらい、潰せるから(震え声)」

久「何いってんの。今年こそはBクラス脱出よ」←広島ファン

 
照「久が物心ついたころから万年Bクラスだからね(ニッコリ)」

久「……」ムカッ

由子「なんだかチャンプ、野球の話になるとキャラがおかしくなるのよー」

漫(誰かF1の話できへんかなー。昨日のマッサのヘアピン前のオーバーテイク最高やったんやけどな)ソワソワ

洋榎「漫、ちょっとええか?」

漫「え?何について語ります?昨日のマッサ対ハミルトンか、それとも最近話題の6気筒と自然吸気のV8の音の違いについてですか?」

洋榎「何の話や。部活や部活。今日の卓決め、うちが全部決めてええか?」

漫「いいですよ。なんだかやる気まんまんですね」

洋榎「珍しいかな?麻雀に対してはいっつも真摯やで」

漫「カワイイ後輩達のためなら、キャラを捨ててまで指導に徹する。先輩の鑑ですわ」

洋榎「せやな」

漫「……」

漫(つっこみないんかーい!)

 
洋榎「――そんで、こいつらんところに由子入れて、」

漫「あれ?それじゃあ、咲ちゃん半荘二回しか入れませんよ」

洋榎「……他の人の打ち筋を生で見せるのもええかなって思って。ほら、清澄って部員少ないから」

漫「『打たなきゃ強くならん。口動かす前に手え動かせ』がモットーの先輩の発言とは思えませんね」

洋榎「人は変わるんやで」

ダカラコトシノハンシンハー 
ソレハオカシイノヨー

洋榎(久も照も、思ってたよりへこんでへんな。部外者のうちが一番気にかけてるってどういうことやねん)

洋榎(お節介焼きかな。らしくないわ)

漫「あ、戒能プロ」

洋榎「え、」

 
戒能「グッモーニン、エブリワン。今日も楽しくレッツ麻雀」

漫「おはようございます。代行に呼ばれて来たんですか?」

戒能「答えはノーです。このあたりから強者の香りがしましてね。つられて私が吸い寄せられてきたわけです」

末原「いやいや、昨日代行が口滑らしてましたよ。『明日はビッグなゲストがカムインするんやでー』って」

戒能「なんと。せっかくサプライズさせようと思ってたのに」ガックシ

戒能「……おや?君達は宮永シスターズ。やはり私の嗅覚は間違っていませんでした」

照「アイラブサキ」

戒能「わざわざ英語でお答えしなくても結構ですよ。それに会話が成立していません」

照「ひさしぶりですね、戒能さん。今日はよろしくお願いします」

戒能「こちらこそよろしく。私の前ではナチャラルでオッケーです。――咲さん?」

咲「は、はい!?」

戒能「そんなに強張らなくても……。髪、白くなったんですね」

咲「あ、これ……――はい」

洋榎(……ん?)

 
◇◆◇◆◇◆

戒能「――若輩ものですが、プロとしてビシビシ指導を当たらせてもらいます。今日は一日よろしくお願いします」

郁乃「というわけで、戒能良子ちゃんでしたー。はい拍手ー」

パチパチパチ

戒能「どもども」


洋榎「久久」チョイチョイ

久「なに?」

洋榎「今日のメンバー表見てもろうた?」

久「ええ。あれで異存はないわ。流石に姫松の子たちが――、いや、まだ咲がそうだとは限らないけど一応保険だし」

洋榎「一応二回半荘の機会はある。……ええんか?久もはいっとるけど」

久「昨日も一昨日も打ってなんてこと無かった。咲が無害だって証明するわ」

久「……それに、照、ああ見えて内心びくびくしてるのよ。たぶん、咲が本当に人を喰う魔物だったら辞めさせると思う。だから私がなんとかしなくちゃ」

洋榎「お前、少し咲に対して入れ込みすぎやないのか?」

久「……かもね」

 
戒能「咲さん、少しよろしいかな?」

咲「私、休憩後まで見学なのでお時間とれますよ」

戒能「お話があります。ちょいとこちらへ」


洋榎(むむむ!)

洋榎(やっぱ怪しい! 戒能プロ、人生五巡はしてそうな経歴持ってるからな。変な人やとおもっとったけど)


戒能「――。――」

咲「――」


洋榎(こっからじゃ何も聞こえん。読唇術読唇術……)

 「先輩、あの、」

洋榎「、ごめんごめん、ちょっと考え事をな」タン

 「ロンです」ジャラ

洋榎「ほげ……」

 
戒能「どうですか?調子は優れましたか?」

咲「はい。竹井先輩や大阪のみなさんのおかげで、なんとか調子戻ってきました」

戒能「それで、大星さんに奪われたものは」

咲「やっぱり戻りませんでした。でも、前とは違ったうち方ができるようになって、これはこれで楽しいです」

咲「長野へ帰った後、小鍛治さんや戒能さんと打ったおかげもあると思います。あのときからなんだか不思議と力が沸いてきて、」

戒能「おっと、その話は他言無用でお願いします」

咲「? 約束通り誰にも言ってませんが……、何か理由があるのですか?」

戒能「……プロが個人的に指導をするというのは、贔屓だのなんだの、うるさく言われますからね。それに親御さんへ知らせず深夜に連れ出したわけですから」

咲「……わかりました」

戒能「それだけ守ってもらえれば、ノープロブレムです」

咲「それじゃあ私、他の方の見学に行ってきますので」トテテ

戒能「……」


戒能(やはり、笑顔に影がちらついた)

戒能(結局同類を作ってしまった。よかれと思ってしたことだけど、罪の意識が無いといえば嘘になる)

戒能(赤阪監督の話ではドラゴンの雛。何のことやらと思いましたが、なるほど、これは覚醒前のモンスターなわけですね)


戒能(小鍛治プロ、あなたの思い通りにはさせませんよ)

 
……二週間前……

戒能「お疲れ様です。小鍛治プロ」

健夜「おつかれー。やっぱり解説って職は私には合わないよー」

戒能「あはは、そんなことありません。見事でしたよ」

健夜「もー。褒めても何も出てこないよ」

戒能「いえいえ、本心です。……そうだ注文、生中を二つでいいですか?」

健夜「うん。食べたいものは適当に選んでね。私が全部払うから」フンス

戒能「了解です。遠慮しません」



三十分後

健夜「そんでー聞いてよー。決勝の実況の後さー、掲示板覗いたら、老害嫉妬すんなだってー。ひどいよねー」ヒック

戒能「所詮はただの落書きです。鵜呑みにせず気になされないほうが良いかと」

 
健夜「恒子ちゃんなんてさ、あんなにめちゃくちゃで私にムチャ振りしまくるくせに、ネットじゃすっごい人気なんだよ……?」

戒能「彼女は人をひきつける何かがあります。あなたもそれに惹かれているわけでしょう」

健夜「そうは言うけどさー。私だってキャラ替えてもっとなんていうかキャピキャピして、……」

戒能「……小鍛治プロ?」

健夜「……zzz」

戒能「寝てる……」

戒能「せっかくですし、この新鮮刺身盛り合わせ5人前を注文しましょう」ピンポーン



戒能「うまうま」モグモグ

健夜「そういえばさー」ガバ

戒能「うぐ!?」ビクゥッ

戒能「起きてるならそう言ってください」ゴホゴホ

健夜「……決勝の、清澄の大将の子、どうしたんだろ」

 
戒能「どうって……」

健夜「あの子このまんまだと、牌握れなくなるよ。最悪自殺するかもね」

戒能「同郷として無関心にはなれませんが、我々がどうにかできるとは……あ、」

健夜「察しいいね。そうだよ。私達が救ってあげよう」

戒能(まずい、本性が、)

戒能「私は反対です。あの子が例え崩壊せず開花させたとしても周りに被害が出ます」

健夜「それはない」

戒能「言い切れますか?私には、 健夜「言い切れるよ」

健夜「現に成功例がいるじゃない。ねえ戒能良子さん?」

 
戒能「私は血筋のおかげです。それに、安定化させるのにずいぶん苦労しました」

健夜「一人死ぬのと幾人もが麻雀をやめるの。どっちがマシかな」

戒能「お言葉ですが、その二つを天秤に乗せる事さえおこがましいです」

健夜「ずいぶんな態度。四年前の約束忘れた?」

戒能「……忘れてないです。だけどっ」

健夜「私は人助けのつもりだよ?元々死ぬ子が『開発』に失敗してまた壊れちゃったところで、結果はほとんど変わらない」

戒能「……目的、他にもありますよね。ただの人助けなら精神病院でも紹介したほうが早いです」

健夜「ま、はっきり言うとね、私の全力を出してもいい相手がほしいの。ぶつかっても壊れない、頑丈な壁が」

戒能「私では不満ですか?」

健夜「そんなことないよ……。ただ、そういう人たちだけで卓囲めたら楽しいなって思って」ニコ

戒能(嘘ではない。けど、おそらくだが復讐も兼ねている。自分を切り離したプロ界に爆弾を送り込む算段か)

健夜「ふふ、楽しみだなぁ」

………………
…………
……

 
戒能(初期段階は終わった。深淵の開発。そこから力のコントロール。私だけで矯正できるのだろうか?)

戒能(小鍛治プロはコントロールはしなくてもいいと思ってる。自分と瓜二つのモンスター、それでプロ界をめちゃくちゃにする気だ)

戒能(そしてまさか、姫松が開発施設になるとは。とは言え竹井さんは純粋に咲さんを助けるためにここへ連れてきたみたいだし)

戒能(誰かが一枚噛んでいる?それとも全ては小鍛治プロの手の内か)


漫「すいません、お暇であれば一局お願いしてよろしいですか?」

戒能「いいですよ。ちょっとウェイトしていてください」


洋榎「……」ジー

◇◆◇◆◇◆
休憩後

洋榎「さてさて、ついに咲が卓につくでー。暇な奴は見物せえ」

咲「……///」テレテレ

照「こら、咲が恥ずかしがってるじゃないか。やめなさい」

洋榎「緊張してようやく本来の実力になるんや。大会慣れしといたほうがええやろ」

戒能「誰が入るか決まっていますか?」

漫「竹井さん、絹ちゃん、そして原村さんです」

戒能「ふむ。では見学させていただきます」

 
久「今日は誰を狙うの?」

咲「ええっ?」ドキリ

久「別に隠さなくていいわ。あなたの打ち方を否定するわけではないし」

咲「……わからないです。感覚通りに体が動くので……」

和「いったいお二人とも何の話をしているのですか?」

久「打ってみればわかる。和、絹恵ちゃん。気楽に打ちましょうね。気楽に」

絹恵「はぁ……。よろしゅうです」

和「……?」

 
久(私の精神に影響が出なかったのは失うものがないから、とも考えられる)

久(1、2戦であればプライドもそうそう傷つかない。『そういう日もあるわ』で済む)

久(だったら賭け物を作ればいい。そうすれば、私はがむしゃらに戦い、自分を追い込むことができる)

久(そこに漬け込まれなければ、咲は潔白)

久(穴だらけの証明だけど、今の自分自身を納得させるにはこれしかないわ)


和(竹井先輩から、鬼気迫るオーラを感じる……。気楽にやれと言ったくせに自分は本気ですか。ならば私も全力でかからせてもらいます)

絹恵(気楽に言われてもなー。咲ちゃんと打つの最後やし、ここは真面目にいかせてもらお。お姉ちゃんもみとるしな)


咲「……」


――――――

――――

――

 
◇◆◇◆◇◆
南三局三本場

久(おかしい……、なんで……?)

久(本当にっ、手も足も出ないなんて……!)

47600 咲 親
21400 絹恵
20500 和
10300 久

咲「ロンです」バララ

咲「3900の三本場は4800」

久「っ、」


戒能(これは、本当に雛なのか?)

戒能(後ろで見てる私でさえ、あまりの邪気でくらくらする)

戒能(竹井さんと言ったか。あの子、そろそろやばい)

 
久「リーチ」ボソ

咲「すいません、ロンです」

咲「チートイドラドラ、6400の四本場は――」

久「トビ……です。ありがとうございました」

ザワザワ

久「トイレ、行ってくるわ」フラフラ



咲「部長……」スタ

戒能「フリーズ。咲さんは次があります。ここは私が行きます」

洋榎「次も久入ってるんよ……。だから、」

戒能「とにかくみなさん、しばしお待ちを」

 
戒能「油断していました。まさかここ二、三日であそこまで化けるとは」スタスタ

戒能「しかも、本人に自覚なし。これはヘヴィーにまずいですよ……」


   ガン!

 「いっ……!」


戒能「!!っ、竹井さ、ん」

戒能「何やってるんですか!それ!」

久「くぅっ……!。意外と、うまくいかないものね」

戒能「かなづちを置きなさい!そんなもの、どこから持ち出したのですか」

久「……賭けをしたんです。自分自身に。負ければ親指を潰す。こうすれば私は『負けることを恐れる』ことができるんです」

戒能「意味がわからない。これは特打ちですよ?練習にそんなもの必要ない!」

久「必要ありますよ。咲が、あの子が純粋であることを証明するために……」

久「それに、賭けは絶対。そうでしょう?」

戒能(この子、とりこまれてはいない。しかし、なぜこんなことを)

戒能「異常ですよあなた……それとも、」

戒能「……気付いてますか?」

久「その言い方、何か知ってるふしがあるみたいですね」

戒能「……っ、それよりも治療を! 早く保健室へ行きましょう」

久「誤魔化さないでほしいわ。朝から少し態度がおかしかった。咲に常に注視していたし、!、
いつつ……」

戒能「わかりました。あなたにお話します。だから保健室へ」

久「ここがいい」

戒能「なぜです!」

久「言い訳を考える時間を与えたくない」

戒能「~~~~~~っ。だったら指見せなさい。やれることはここでやります」

戒能「まったく、自分の体を人質にするなんて」ブツブツ

久「少し、楽になりました。ありがとう」

戒能「溜血を抜いただけです。しかし折れていなくて安心しました。それでもちゃんと治療を受けなくちゃ駄目ですよ」

久「治療具を持ち歩くプロってのも珍しいわね。週刊誌に書かれた経歴も嘘じゃないのかしら」

戒能「あれはほぼ偽の情報です。そんなパーフェクトな人間は存在しません。はいこれで終わり」マキマキ

久「それじゃあ、お話してもらっていいですか?」

戒能「……」

戒能「私は、彼女に能力の開発を施しました」

久「……やっぱりあなたが、」グッ

戒能「落ち着いて話を聞いてください。それに私に暴力は通用しません」

戒能「咲さん、インハイでパワーを失われ、誰から見ても廃人の状態でした」

戒能「あの状態は大変危険で、自暴自棄に陥り自傷、最悪命を絶つ危険性もあった」

戒能「だから……開発に関して言えば、しょうがないといえばしょうがないのです」

久「まさかあなたが関わらなければ死んでいたとでも?」

戒能「無いという話ではありません。開発による精神崩壊の可能性もありましたが」

久「だったら病院でもなんでも入れさせればいいじゃないですか!」

戒能「……それについては、」

久「黒幕、いますよね。こんな人をおちょくったことをする人間。少なくともあなたではない」



戒能「……」

戒能「いえ、全て私の独断です」

 
久「なんですって……」

戒能「冷静に考えてみてください。彼女の実力は超高校生級。そんな宝石をみすみす放棄するなんておかしいでしょう?」

久「おかしいのはあなたの頭よ。人のかわいい後輩をいじって遊んで、そんなこと人間のやることじゃないわ」

戒能「いいですか?彼女は復活し、楽しそうに牌を握っている。それもたった一週間ほどで。ただの精神科医にここまでの結果は期待できません」

戒能「私は絶対に成功すると確信し、実行しました。この現状に不満があるのですか?」

久「……咲は、もしかしたら将来他人を壊すかもしれないと言われた」

久「あの、小鍛治プロにそっくりだって」

久「確かに、また一緒に麻雀が打ててうれしい。だけど、」

久「彼女も小鍛治プロと同じレッテルを貼られるかもしれない。そんなの嫌」

戒能「……そのための私です。彼女は私の身を引き換えてでも『安定化』させます」

戒能(予想外のモンスターですが、責任の一端は私にある。……『身を引き換えてでも』、冗談じゃすまなそうですね)

 
◇◆◇◆◇◆

戒能「お待たせしました」

洋榎「……久はどうしました?」

戒能「彼女は廊下で転んで……、親指に怪我を。今は保健室のほうへ」

洋榎「は!? 怪我!?」

戒能「ええ。ですが、大したことはなく、本人も心配しないでほしい、とのことです」

洋榎「……せやか」

照「気分とか、その、」

戒能「心配無用です。彼女は強いから」

咲「……」ホッ

 
戒能「それでは最終戦です。竹井さんの代わりに私が入ります」

漫「え、指導は?」

戒能「すいません。咲さんと打ってみたいので、我侭いいですか?」

郁乃「うちはええで~」

漫「いえ、私も異論ありませんが、」

戒能「ではこの戒能良子、一戦お相手願います」


戒能「そんじゃ、竹井ちゃんの様子見てくるから楽しんでってな~」バタン

 
◇◆◇◆◇◆
東一局

起家:咲→洋榎→照→戒能


照(久、大丈夫かなほんとに)ソワソワ

照(さっきの咲のオーラ、卓外でもすごかった……。あれに久が喰われたんだ)


  『あの子の麻雀は人を潰す』


照(愛宕さんの言うとおり、やめさせたほうがいいのかな)

照「……」チラ

咲「……」カチャカチャ

照(どうしたらいいんだよう)


照「咲」

咲「ん?なに?」

>>231
 訂正 

戒能「そんじゃ、竹井ちゃんの様子見てくるから楽しんでってな~」バタン

郁乃「そんじゃ、竹井ちゃんの様子見てくるから楽しんでってな~」バタン

 
照「この半荘、本気でやってほしい」

咲「私、いつも本気でやってるよ」

照「『本気で人を潰す』つもりで、てこと」

咲「つ、潰す!? そんなことできないよ」

戒能「……」

照「お願いだ、咲」

咲「そんなこと言われても……」

洋榎「こいつの言いたいことは、絶対に何をしてでも勝つつもりでやれってことや。口下手やからな、言葉誤って暴言しかでてこん」

咲「そういう意味なら……」

 ゴッ

洋榎(おぉーう。これが未完成品かぁ。よう言うわうちのおかんも)ブルッ

戒能(小鍛治プロ……、我々はとんでもないものを目覚めさせてしまった)

…………
一巡目

照(セオリー通り、照魔境を、)

  グモモモモ

照「なん、だこれ」

照(黒い煙が気色悪く蠢いている)

 ピシィッ

照(そんな、割れていく……)

咲「効かないよそれ」

照「……」

咲「私には効かない」



咲「本気でいくから」

 
戒能(もしも、殺人級のオーラが出たら私もどうにかなるかもしれない)

戒能(そいつを事前に潰せるように、私もある程度は開放しておかないと)グゴゴ



洋榎(おいおい、全方位からとんでもない圧力感じるで)

洋榎(これが押しつぶされる感じか。確かにいい気分ではないなー)

洋榎(こいつらホンマプロ雀士やなくて呪術師にでもなれるわ)

洋榎(だけどな、ほい)

洋榎「ツモ、白のみ、400・700」

洋榎(うちも負けてられんわ。こんなん楽しすぎるやろ)ニヒヒ



戒能(ヒロエには心配はいらないようですね。ここにきて天然のいいところがきてます。……バカとは言えません)

戒能(照さんも動揺はしていますが、彼女の精神力であれば、汚染は免れる)

戒能(この半荘はチャンスです。一気に能力を開花させ制御下におけるレベルまで持っていってしまいましょう)

 
◇◆◇◆◇◆
東二局

26500 洋榎 親
24600 照 
24600 戒能
24300 咲


洋榎(チャンプはこっからや。あのふざけた連荘を止めん限り、うちにも咲にも勝利は無い)

洋榎(戒能プロ……この人は打ち筋がひねくれとるからようわからん。ま、いつも通りいこうかな)

 
…………
三順目

照「リーチ」タン

洋榎(早い!流石や。点数を考えればこの二順後が最速やろな。一発はない)

戒能「……」タン

咲「ポン」

洋榎(……あかんぞ咲、そないことするとチャンプのやつ、当たり引いてしまうかもしれんぞ)

洋榎「お」

洋榎(うちも結構ええ手牌なんやけどなー。しかしこの局は無理や。0本場のチャンプはきつすぎる)タン

照「……」スチャ

照「ツモ。リーチのみ400・700」

洋榎「ですよねー」

 
戒能(まさかとは思いますが、ヒロエの打点の高さを考慮して、わざと照さんにツモらせたのでは)

戒能(事実今の局、憂慮すべきは照さんの即和了りではなく、ヒロエのワンチャンス高火力)

戒能(投入口へ牌が流れる瞬間、ちらりと見えましたが、ヒロエの手牌は東東①②*④⑥⑦⑧*三*五)

戒能(二向聴、いや、張っていた可能性すらある)

戒能(敵の長所を利用せよ。……アートオブウォーですか、孫子が笑ってますよ)

 
◇◆◇◆◇◆
東三局

26100 照 親
25800 洋榎 
24200 戒能
23900 咲


照「リーチ」タン

洋榎「ダブリーですかい」

戒能(データ通りなら、この局の打点は2000~3900)

戒能(ダブリーのみなら30符か40符。一巡目には一発はない、はず)タン

咲「……」スチャ

咲「……」

咲「……」タン

 ゴッ


戒能(おや)

戒能(私の手牌に陰りが見えます。ということは、)

一巡目には一発はない 

一発はない

 
…………
二順目

照「……」タン

戒能(ここまでは予定通り。そしてここからも)

戒能(たぶん、コレでしょう)タン

咲「チー」タン

洋榎「今回はよう鳴くなー」タン

戒能「ポンです」タン

洋榎「まじかい」

戒能(ツモらせなければ和了れない。なんて単純で困難なのでしょうか。しかし、咲さん、あなたであればノーミスで可能なはず)

咲「……」タン

戒能(ここまで無茶苦茶にしたツモ順であれば、いくら牌に愛されようが、)

照「っ、」タン

戒能(そう、和了ることはハードです)

 
咲「ポン」タン

戒能(これで二副露。聴牌かな)

洋榎「流れごっつ悪いわ」タン

戒能(それも違う)

照「む」タン

戒能(それでもない)

戒能「……」スチャ

戒能(当たりはおよそこの牌。照さんを止めるためにもここで、差込み……、)タン

戒能(何でしょうこの違和感、はっ……、まさか!)

咲「ロンです……。ごめんなさい」

咲「『安く』、ないです」バラ

咲「タンヤオとドラ4つ。8000です」

戒能(!?)

 
戒能(ナイスなボディブローですよ。おかげで目が覚めました)

戒能(『私にアシストはいらない』……そういうことですね)

戒能(それだけ、自信をお持ちであれば、……いいでしょう!その決別宣言!姉妹共々お相手いたします)


洋榎(なんや戒能プロの殺気ただもんやないで)

洋榎(コンビ打ち……とまではいかんが色々補佐してたら、仲間に裏切られて激昂)

洋榎(意外と子供っぽいところあるんやなー)

洋榎(後でいじったろ)グヒヒ


照(なんだか私だけ蚊帳の外)ポツーン

◇◆◇◆◇◆
東四局

31900 咲

26100 照 
25800 洋榎 
16200 戒能 親



戒能(……いい機会なので、咲さんに深淵の一部を見せてあげましょう)

戒能(もちろんこれはさっきやられたお返しというわけではない)

戒能(そう、これから使い手となるための言わば教育です)

戒能(いい大人の私が仕返しなんてノーウェイです。ふふふ、ちょこっとだけ)ニヤ


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


照(ぬわー! なんだこれー!?)

洋榎(あかん、ちょっと吐き気が……)ウッ


咲「……っ」ゾクゾク

…………
五順目

洋榎(三向聴スタートで、全部ツモ切り……)

洋榎(たぶん原因は、)チラ


戒能「……」グゴゴゴ


洋榎(あの人やろうなぁ)


照「……?」タン


洋榎(0本場のチャンプを抑えるなんて、なかなかやるやないか)

洋榎「……」スチャ

洋榎(うーわ、またも他風牌か。これ、いつまでつづくんかいな)

洋榎(しゃあない。手変わり手変わり)タン

…………
十七順目

洋榎(一度鳴いたのに、張ることさえできんかったわ)

洋榎(チャンプも恐ろしいけど、対面の方もなかなかの圧力やで)

洋榎(嫌な予感が、)

戒能「リーチです」

洋榎(っ、)

洋榎(おいおい、一瞬びびって表情出てまったわ)

洋榎(ラス牌は戒能プロ……。ときたらあれしかない)

洋榎(とりあえず、安牌)タン

洋榎(さあてどうなる?)

戒能「……」スチャ

戒能「……」タン

洋榎「は?」

戒能「テンパイです」ドヤッ

洋榎「ファッ!?」

洋榎「いやいや、そこは『ハイテイのみです!ドーン』やろ!」

戒能「グッドなつっこみです。サンキュー」

照「ぷぷぷ」

洋榎「おい今笑ったか」

照「――笑ってなどいない。そんなことより私もテンパイだ。早く点棒をよこせ」ホレホレ

洋榎「……くっそムクツクわー」ジャラジャラ

照「……ふ、ぐっ」ピクピク

洋榎「何がつぼったんや。口元ひくひくしてるぞ」

照「うるしゃい」

戒能「冗談はさておき」

洋榎「冗談?」

戒能「ええ、ここからはマジです。……咲さん、長野の天江さんを覚えてますか?」

咲「はい、――忘れることはないと思います」

戒能「決勝戦、あなたは彼女にどのように勝利をおさめましたか?」

咲「確か、明槓から清一対々三暗刻三槓子赤と嶺上開花で数え役満の直撃を」

洋榎「ぶは!」

戒能「そう、それ、嶺上開花。今のあなたは使えない」

戒能「ならば、天江衣をコピーした私を止めるにはどうしたらいいと思います?」

咲「……」

戒能「答えは簡単。私だけに集中し、私の息の根を止める」

咲「でもこれ、たぶん……」

戒能「私のことなど気にしないでください。そして、あなたがそれを使いこなせないのであれば――その程度だったわけです」

咲「わかりました」

 
◇◆◇◆◇◆
東四局一本場

30400 咲

27600 照 
24300 洋榎 
17700 戒能 親



戒能(正直コピーは言い過ぎでした。よくて贋作止まり)

戒能(贋作程度、彼女らを止めることなどできない。だからそれにプラスで私自身の力を上乗せする)

戒能(それだけで、照さんとヒロエへの牽制は十分すぎる)

戒能(意識配分は3:3:4ぐらいでいいでしょう)

戒能(これやると、私の寿命がガリガリ削れていくのがわかりますね)

戒能(……また髪の色薄くなっちゃうな)

…………
十順目

洋榎(メゲるわー。なんやのもうこのツモ)タン

洋榎(どうにうかして、この状況から脱したいわ)

洋榎(戒能プロが咲を挑発しとったけど、意識するべきはチャンプのほうやないのか?)

洋榎(まさか、うちらのツモ運をにぎりつぶしつつ、咲と殴り合う気か)

洋榎(場の支配は、目に見えて戒能プロが優勢やな)


照(テンパイから七順経過した)

照(くる牌くる牌全てがかすりもしない)

照(手変わりすれば、裏目ってしまう)

照(これがプロの洗礼ってやつか)

照(高校生だけでは味わえない恐怖。だけど……楽しい!)ニヤ

 
洋榎(うわっ、チャンプの笑顔怖っ!)

洋榎(普段笑わないやつが、笑うとめっちゃ似合わんわー)

洋榎(やけど、ちょっとだけ空気が変わった気がする)

洋榎(……今だけは戒能プロを集中攻撃。これしかあらへんか)

洋榎(共闘してやろうやないか)ギロ


照(よくわからないが、なぜか洋榎が私を睨んできている)

照(昨日のテレサで集中狙いしたのまだ怒っているのかな)

照(しょうがないな、少しだけ洋榎にツモ運を譲ってあげよう)

…………
十三順

照「……」タン

戒能「チーです」タン

洋榎(これでハイテイコースか。宣言どおりやな)

洋榎(思い通りいってると勘違いしとるんやろなぁ。だけどな、戒能プロ、)

洋榎(あと五順、何もできず指咥えて和了りを見過ごすなど)

洋榎(この愛宕洋榎が許すほかなかろう!)

照「……」タン

洋榎「そいつじゃ!ロン」

洋榎「どうや!戒能プロ!うちがこのまま引き下がると、……おも、たか?」

戒能「……残念、頭ハネです」バララ

洋榎「あの、ハイテイは?」

戒能「ソーリー、出和了りも『可能』なのです。もちろんラス牌は」スッ

戒能「……これ。どちらにしろ和了れたわけです」ニッコリ

 
洋榎「」ポワワーン

絹恵「お姉ちゃん、おーい」ユサユサ

洋榎「はっ、今、おとんが川の向こうで手ぇ振ってたわ」

絹恵「おとんはまだ絶賛存命中やろ。……大丈夫?」

洋榎「ああ、……絹」

絹恵「なに?」

洋榎「ちょっとおっぱいもませて」ムンズ

絹恵「な、なにすんの!///」

洋榎「しゃおら、補給完了! 勝負はこっからや」

照(いいなぁ、私も咲に)

咲「……」ゴゴゴ

照(やめとこう)

絹恵「お姉ちゃんが……壊れてもうた」

◇◆◇◆◇◆
東四局二本場

30400 咲
24300 洋榎 
23200 戒能 親
21100 照

…………
四順目

洋榎「お、ツモええで」スチャ

戒能「む」

戒能(……そろそろ維持が限界かもです。照さんとヒロエは、やはり並のプロ雀士よりも格上)

戒能(ここまでの雀力はなかなかお目にかかりませんからね。ここいらで――)ゾク

戒能「ッ!」ビク

咲「……」タン

戒能(いや、萎縮はまずい。確実に咲さんにつけこまれる)

戒能(もう少し、無理させてもらいましょうか)

…………
六順目

戒能「カンします」

洋榎「ぬおっ」

洋榎(三萬潰された~~ッ! 手元の一二萬がまるでゴミに……)

洋榎(二萬捨てとんのに、まさかのカン材用と割り切ってたんか)

戒能「……もう一個カン」

洋榎「おいおい」

洋榎(そいつ、見たことあるで。アカンやつや)

戒能「……」タン

洋榎(嶺上開花ならずか)

洋榎(……あれ、どうみても咲への挑発やろな)タン ↓一萬

戒能「カン」

 
洋榎「え」

戒能「嶺上開花です。三槓子リンシャンで満貫、12600」

戒能「責任払い、願います」

洋榎(……)

洋榎(落ち着け、相手は戒能プロ、通り名は『The Spook』。打ち筋は変幻自在)

洋榎(今のは完全にしてやられた。甘いうちがアホなだけやった)

洋榎「……よし」

戒能(顔色ひとつ変えないのは流石ですね)

戒能(愛宕の血のいいところ。日本の名馬です)

戒能(……)ブルッ

戒能(――壊したい)

戒能(壊したい壊したい壊したい壊したいっ)

戒能(……、)

戒能(……落ち着け。いったいここに何をしに来たんだ)

戒能(私が呑まれてどうする。――だけど、こんな状況滅多にn)


         『いいんじゃないかな一人ぐらい』ズルッ



戒能「でスヨね」


洋榎(お?戒能プロの殺気がおさまった)

洋榎(なんやもうガス欠か~。気合入れ損やわ)


咲「……」

 
◇◆◇◆◇◆
東四局三本場

35800 戒能 親
30400 咲
21100 照
11700 洋榎

末原(……チャンプも洋榎も配牌よーなっとる)

末原(さっきまでの圧倒的な支配力になすがままのようやったけど、やっぱりそれも長続きはせんか)

末原(……咲大人しいな。チャンプと戒能プロにあんだけ言われて、何も手えだしてこんな)

末原(爆発力は、南入してからのほうが高いけど、そのままおっとり待ってたんじゃあ喰われちまうぞ)

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2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
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10. Dies irae
11. WAR OF GENESIS シヴァンシミター、クリムゾンクルセイド
12. アイドルマスターブレイク高木裕太郎
13. バトルアスリーテス 大運動会
14. 伝説の勇者ダ・ガーン
15. 魔動王グランゾート
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって

…………
二順目

末原(チャンプ、当たり前のように張ったわ)

照手牌 ③④⑤⑦⑧二二二四西発発発 ツモ西

末原(もちろんダマ。洋榎は気付いてるようやけど、戒能プロはどうなんや)

戒能「……」タン ↓東

末原(生牌の東切り、こっちもなかなかのスピードや)

末原(次のツモ、チャンプは安和了りの可能性濃厚。せやから、勝負放棄はありえんな)


照(……このツモで、)スチャ

照「……」 ツモ七萬

照(こういう日も、)

戒能「こういう日もある。麻雀は絶対じゃない。……そうですかね?」

照「……」 ↓七萬

戒能「カンします」

 
照(なぜだ……? 盤面支配は既に終わっ、)

 グサリッ

照(なにこれ……右腕に違和感が)

戒能「お気づきになられましたか? ひどく細く鋭く、なおかつフェイタルな支配です。『真髄の針』とでも言っておきましょうか……」

戒能「あなたのツモ運はここで終わる」

照(場の支配は無くなってはいなかった。ただ単に絞っただけ。私達が気付けない程度に)

照(そして腕に何かが突き刺さっている。邪悪な影が)

洋榎「なんの話しとるん?」

戒能「力は伸縮自在ということです。……」タン ↓八萬

洋榎「うち、物理わからんからな。何言ってんのかさっぱりや」

絹恵「お姉ちゃんは全部さっぱりやろ」

洋榎「なぁ!? うち数学だけは赤点とったことないで!」


戒能「……」

 
…………
八順目

照(恐ろしいな。まるで呪いだ。イタコとは聞いたがそれを麻雀に応用できるのか)

照(これで外せないかな)ギュルルル!

 モワモワ

照(む、駄目か)

照(……しょうがない、こいつは貸しだぞ。洋榎)ギロリ

洋榎(おお? チャンプの殺し屋のような目つきがうちに突き刺さる)

洋榎(うちを殺しに、ていうわけやないみたいやな)

洋榎(……)スチャ 

洋榎(きたっ。テンパイ。サンキューチャンプ)

洋榎手牌 ①①①ⅡⅡⅡⅢⅣⅤⅥⅧⅨⅨ ツモⅦ索

洋榎(ダマかな。でも裏ドラ期待できるし……)


戒能(――スキあり、です)ズルリ

 
  『リーチやろ洋榎』

洋榎(せやかな~)

  『四面待ちやぞ。自分のツモ信じられんのか』

洋榎(だって怖いんやもん。対面とか上家とか……)

  『自分自身に言うのもなんやけど、ほんまなっさけないわー』

洋榎(なんやと)

  『嫌な予感なんかそうそう当たらん』

洋榎(でも、)

  『自信持てや、な?』

洋榎(そこまで言うなら……やったるよ)

洋榎「……リーチ」タン ↓Ⅸ索

  『大丈夫大丈夫、ほんま気にせんでええ――って普通は思いますよ』

洋榎「あ?」

戒能「どうかしましたか?」ニコッ

洋榎「お前、まさか」ガクガク

末原「年上、それもプロにお前はまずいやろ洋榎……、洋榎?」

洋榎(頭ん中入られた)

洋榎(汚され、――あ)

洋榎(駄目――中見られ――、思考の操――て過)

洋榎(なん――この声)



『言うほどやないなぁ』   『これがあの愛宕?』   『親の七光やしゃあない』   『弱っ』    『口だけかいな』

   『元主将がこれって……』   『何が後ひっかけの洋榎や』   『からあげラーメンなんて食えるわけないやろ!』



洋榎(心の声……?みんな、そんなこと思ってるんか……?)

由子「洋榎……、すごい汗かいてるのよー?」

洋榎「あ……ああ、大丈夫や。気にせんといて」カタカタ

絹恵「ちょっと止め「ええからっ!」

洋榎「大丈夫やから。うちはこんなんじゃどうにもならへん」カタカタ

洋榎「早く牌、切ってくれ」グッ

 
照「う、うん」タン ↓八萬

戒能「ポンです」タン

洋榎「八萬をポン? さっき自分で捨てて……ポン」

洋榎「おか……しいやろ、そんなの――!」

戒能「現状で必要なのは、誰に、いつ、当たり牌を掴ませられるか」

戒能「どんなに読みが鋭くとも、リーチはまるでその意味をなくす」

戒能「握ったら最後、捨てるしかない。つまるところ凡俗に成り下がるわけです。……次、槓したら嶺上開花で和了ります」

洋榎「んなこと……!」スチャ

洋榎(Ⅴ索……一枚も見えてへん)

洋榎(まさか、ほんまに)ポロ

戒能「……カン」

戒能「リンシャンを、」パシ

咲「それ、ロンです。聞こえませんでしたか?」

戒能「……ロン?」

咲「洋榎さんのⅤ索で、白のみ2100」

戒能(何を言っている?)

洋榎「お、おう。すまん。ぼーっとしてた」ジャラ

洋榎(なんや?急に気が楽になったわ)

咲「戒能さん、『これ』すごいですね。みんなの気持ちが透けて見えてくる」

戒能(完全に使役しているのか……? そんな、いくらなんでも早すぎる)

咲「ほら、戒能さんの『それ』も、」ズイ

照「……咲?」

戒能(この子、わざと私――、まずい、汚染が始――止め、)


  『さようなら』


    「た、たすけ、――」




       咲『駄目』

 
◇◆◇◆◇◆

久「あの、そろそろ……」

郁乃「ええ~、もうちっとお話しようよ~。大会とか長野とか話してないこと盛りだくさんやん~」

久「そうはいっても……。ほら血は止まりましたし、もう大丈夫です」

郁乃「んなこと言うて、また自傷されても困るしな~」

久「――気付いてたんですか?」

郁乃「竹井ちゃん、ちょ~っと嘘下手なんやもん」

久「初めて言われました。……すいません、このことは、」

郁乃「ああ、誰にも言わんよ~。だからもうちっと、」

プルルル

久「あ、雅枝さんからだ。すいません、失礼します」

ガチャ

郁乃「……も~。せや、そろそろうちも健夜ちゃんにお電話しとこ」

 
久「どうしました?」

雅枝『絹もヒロも出えへんからな。ちょっと戒能に代わってもらえへん?」

久「なぜ、その名前を……」

雅枝『あれ?おるやろ?』

久「き、来てますよ。そうじゃなくて、」

雅枝『……ここらでプロの会合あってな。うちも関係者やし、ついでやから乗っけていこうと思って』

久「咲の原因、あの人です」

雅枝『……その話、あとで本人から聞いとく』

 
久「戻りました」ガチャ

久「あれ?」

洋榎「おーおかえりー。指大丈夫かー?」

咲「あ、部長、おかえりなさい」

久(思ってたよりほんわかしてるわね。もっと殺し合いのような雰囲気を予想していたのだけれど)

照「ロン」

戒能「はい」ジャラ

久「戒能プロ、今いいですか?……お電話です」スッ

戒能「お借りします」スカッ

久「?」

戒能「ごめんなさい、少し疲れが……。ここですね」スッ

久(『ここ』……? まさかね)

戒能「お電話代わりました、戒能です――」

 
洋榎「はぁーつかれたわー」

久「あら、今のオーラス?」

洋榎「ああ、チャンプがチャンプ通りチャンプしてくれたわ」

久「意味わからないわよ」

洋榎「点数見ろって」

42100 照
22200 戒能
20700 洋榎
15000 咲

久「あーなるほど……え? 咲がラス!?」

咲「一歩及びませんでした……」タハハ

和「咲さん……」

咲「和ちゃん、私、もっと強くなるから!」

和「――そうですよね。咲さんはこれからももっといけるはずです! 一緒に頑張りましょう」

 
戒能「ソーリーです。みなさん、少し早いのですが、急用ができたのでここいらでお暇させてもらいます」

由子「プロは忙しいのよー」

漫「ありがとうございました」

ゴザイマシター

洋榎「来年まっとれい!」

末原「こらこら」

戒能「ふふ、あ、咲さん」

咲「はい」

戒能「さきほどの一撃、覚えておきますよ」

咲「……はい」ニコ

戒能「」ゾクッ

◇◆◇◆◇◆

戒能「ようやく校外……ですよね」フラフラ

 「おーい」

戒能「愛宕さんですか?」

雅枝「なにフラフラしとんのや。ほら、車こっち」

戒能「……すいません」フラ

雅枝「お前、もしかして、目が」

戒能「やられました。完全に失明してます」

雅枝「っ、とにかく車乗り」


雅枝「目の他は?」

戒能「親指以外の指先の感覚がほとんどナッシングです」

雅枝「……わかった。『あれ』が起こしたストレス性の一時的なショックや。安心せえ。じき治る」

戒能「ごめんなさい」

雅枝「なんでお前があやまんのや」

戒能「私、ヒロエを壊そうとした……」

雅枝「……ヒロはどなった」

戒能「寸でに咲さんに助けられました」

雅枝「……今うちは、はらわた煮えくり返ってる。やけど、お前が抵抗できなかったということも分かってる」

戒能「私は酔っていました。完全確実に支配していると思って、解放し続けてしまいました」

雅枝「だから甘いんよお前は。どうせ、咲のために自分を犠牲にしようとでも思ってたんやろ」

戒能「……はい」

 
雅枝「その結果が、両目と指や。やっぱりあの子は、」

戒能「いえ、咲さんは麻雀を続けるべきです」

雅枝「小鍛治の意志やろ。騙されんな」

戒能「……潰そうと思えば、やれたのに、それでも彼女は私をこの程度で許してくれた。あれは善良な人間です」

雅枝「……」

戒能「そして、彼女からまた麻雀を奪えば崩壊するでしょう。異常なまでにのめりこんでますよ」

戒能「それでも?」

雅枝「……お前の言いたいことはわかった」

戒能「……」

 
雅枝「なにがお前をそこまでにさせるんや」

戒能「昔の自分を見てるようでしてね。……個人的に応援してあげたいんです」

雅枝「咲はええ子やと思う。小鍛治のように他人を蟻ん子みたいにいじくらんやろう。やけどな」

雅枝「……人は無意識に負の感情を持ち歩いてる。咲がいつそれを爆発させるかわからんぞ」

戒能「その時はその時です。相手が悪い。なぜなら咲さんを怒らせたのだから。人を怒らせたら報いをうけるべきです」

雅枝「つくづくお前のそういうところは好きになれんわ。白か黒で生きられる人間はおらんぞ」

戒能「それでも私は、あの子がよければいいと思います」

雅枝「自分勝手やな」

戒能「そうですかね」

雅枝「……ほんま、馬鹿ばっかやわ」

 
◇◆◇◆◇◆
――大阪駅――

久「照、打ってる間咲はどうだった?」

照「別段目立っていなかったな。南入前に、変な雰囲気はあったけど」

久「変な……」

照「それよりも、その怪我、本当に転んでできたの?」

久「ええ、そうよ? 私よく頭ぶつけたりするし、ぬけているところあるから」

照「自分でそれ言うの。……それ、咲が原因だと思ったんだ」

久「心やられて、転んで怪我したみたいな?」

照「そんな感じ」

久「何言ってるの私、ピンピンしてるじゃない。……まぁ、本音を言えばあそこまでボコボコにされてちょっと心折れそうだったけどね」

照「!、」

久「でもそんなの普通じゃない? 相当メンタル硬くなきゃ堪えることもあるわ」

 
久「私は彼女にこれまでどおり打ってもらう。なにより清澄の大事な戦力よ」

照「……嘘。そうやって自己利益で動く女のふりをする」

久「そうね。いまさらキャラを作ってもしょうがないわ」

照「なんでそんなに咲にこだわるの?」

久「いったでしょう?私の可愛い後輩なの。それが理由じゃだめ?」

照「久は重い」

久「それ、本人にも言われたわ。馬鹿さ加減は照も一緒よ」

照「そうかな」

久「まさか、自覚なかったの?」

照「うーん」

絹恵「なー咲ちゃん。最後に一緒に写真とろ!」

咲「はい、じゃあ、」

絹恵「こんなふうにな」ギュー

咲「あの、頭に、胸がっ」

絹恵「ええやんええやん。姉妹(仮)なんやし」

照「は?」

和「あ?」

洋榎「え?」

久「ほら、携帯貸して、……はい、これでいい?」

絹恵「ありがとー♪」



洋榎「元お姉ちゃん同士で撮ろうか……」

照「やだ」

洋榎「ひどい……」

◇◆◇◆◇◆
ダー シエイリヤス

久「また来るわー。それまで独り身でいてねー」

洋榎「うっさいわー! 窓から顔出すなー!」


洋榎「……いってもうた」

絹恵「お姉ちゃん、ホンマ好かれとるなぁ」

洋榎「モテる女はつらいで~。そう言う絹も咲からべったりくっつかれたやんか」

絹恵「せやねー。おしいわー」

洋榎「絹……おかんと一緒に、清澄行く?」

絹恵「考えたんやけど、それはないわ。やっぱり地元で勝ちたいもん。それに清澄とは戦いたいし。お姉ちゃんは? どこでプロなるん?」

洋榎「せやな、絹のことほっとけんし、できるだけここにいられるようにしとくよ」

絹恵「……ありがと、お姉ちゃん」

洋榎「お、おうよ」テレテレ





一年後、夏のインハイ
清澄高校は決勝まで駒を進めることができず、おしくも準決勝で敗退。
その年の団体戦優勝は四連覇を成し遂げた白糸台高校だった。
宮永照の引退は戦力を大きく削ぐものだったが、それでも破竹の勢いは止まらず、最強を名乗り続けた。
そして、個人優勝は白糸台高校二年、大星淡。
「嶺上開花使いの大星淡」。小鍛治の再来ともてはやされたが、淡が満足することはなかった。

その一年後、インハイ団体戦決勝にて、淡は真の化け物を知ることになる。

 
団体戦決勝 大将戦前半

淡(すごい! すごいよサキ! こんなすごい力を持っていたなんて)

淡(点差が七万点あったのに、みるみるうちに縮まっていっちゃった!)

淡(すごすぎて……ほんとムカツク)

淡(ムカツクムカツクムカツク!)

淡(テルの興味の先はいっつもサキだった)

淡(私がどんなに頑張ってどんなに結果を残しても)

淡(サキ、サキサキサキ、サキばっか!)

淡(なんでそんなに邪魔するかなぁ)

淡(……殺してあげるよ。サキ)

『ここで前半戦終了ー! そしてまさかの展開ですっ!』

『一位白糸台がなんとラス転ーーーっ。オーラス、清澄高校へと跳満を振り込んでしまいました!』


淡「う、そ……そんな……」

咲「二年ぶりだね。去年はうち、決勝これなかったから」

淡「壊したのに……」

咲「んーん、私壊れてなんかないよ。逆に淡ちゃんはこの二年間何してきたのかな?」

淡「わ、たしは、」

咲「あんなに期待してたのに」 ズズ

淡「やめて」

咲「それで白糸台の大将を名乗るはちょっと恥ずかしいんじゃないかな」 ズズズ

淡「やめてっ、こないで」

咲「ねぇ、」 ズズ…


咲「ポンコツさん」


槓!

あとちょっとおまけがあります

おまけ

……四年前……

  『大将戦終了!! 愛媛県大会優勝は――に決定☆!』

  『大生院女子、おしくも敗退です。最後の振込みさえなければ……』


戒能「」フラッ

 「おつかれ、戒能さん」

 「一年にしてはよく頑張ったと思うよ」

 「……だから言ったじゃん。順当に三年を大将に据えていればこんなことには」

 「バカっ。声でかい」

 「いいよ。このぐらいで。私達もう引退なんだから」

 「だよねー。監督も何考えてんだか」

戒能「ご、ごめんなs」

 「あーあ、あんな振り込みさえなければー」

戒能「――あ」

戒能「……失礼します」

 
はやり「もーう、すこやんたら、こんなになるまで飲んじゃって」

健夜「ひえー、にゃって、解説つかれるんらもおおおおん」

はやり「はやりなんて実況だよお? アナウンサーにやらせればいいのにー」プンプン

健夜「はやりちゃんはさー、声かわうぃからにゃー☆」

はやり「こらー、言葉の最後に『☆』をつけていいのは、はやりだけなんだぞー☆」

健夜「嫌だにゃー☆」

はやり(アカンなこれ)

はやり「……おやや?」



戒能「……」トボトボ

戒能「生きてても……」チラ

キーン ガタンゴトン ガタンゴトン

戒能「電車って楽に死ねるのかな」ノリコエ

はやり「ちょいまち」ガシッ

戒能「うわわ」グラ

ドシーン

はやり「何しとるやアンタ」

戒能「……」

はやり「そげなおぞいことしで、母ちゃん泣かすきか?」

戒能「……うるさい」ボソ

はやり「なんづったか、」ピク

はやり「……こんのだらくそがっ!」バチーン

戒能「」ヒリヒリ

戒能「……うぐ」ポロポロ

はやり「じなくそせんで、嫌なことあーたなら、お姉ちゃん聞くとよ? ……ん?」

はやり「あれ……君――」

健夜「はやりちゃーん」ヨタヨタ

 
健夜「急に走り出すから、私も走っ、おえっ」

オロロロロロロ ゲェ

はやり「うへぇ……」

健夜「ふぅ。すっきり」

はやり(これじゃあ当分結婚できないね☆)

健夜「そこの子、さっきの決勝の大生院女子の大将さん、だよね?」

はやり「みたい☆」

戒能「そうです……。もしかして小鍛治プロと瑞原プロ?」

健夜「そうだよー。……最後おしかったね」

戒能「!!っ」

戒能「――わたし、みんなの大会、めちゃくちゃにして、」ヒッグヒッグ

戒能「わあああああっ」ポロポロ

健夜「……ふむ」

 
健夜「悔しい?」

戒能「……ぐやぢぃ」グシグシ

健夜「じゃあ強くならなきゃ」

戒能「でも、もう部活出れない……」

健夜「見返してやろーよ。君、才能あるから」

はやり「……! すこやん? いちおー聞いちゃうけど、アレやるんじゃないよね?」

健夜「え? やるつもりだけど、なんで?」

はやり「はやり、あれすごーくすごーく嫌いなの☆」

健夜「別にはやりちゃんに手伝ってもらう必要は無いよ。一人で十分」

はやり「すこやん、……そろそろ諦めよう」

健夜「心配するほど、失敗する確率は高くない。それにね、この子、綺麗な血筋もらってるっぽいから」

はやり「ずいぶん詳しいね」

 
健夜「それじゃあ行こうか」

戒能「こ、この時間からですか?」

健夜「うん、近くに知り合いの雀荘があるから、そこで特打ち。親御さんには私の名前を出せば大丈夫じゃない?」

戒能「本当にいいんですか? プロの方が私なんかを、その、個人練習なんかして」

健夜「転がってる原石を見捨てるほど、私はマヌケじゃないよ。それにね、君」

健夜「同類の匂いがするの。私を脅かすほどの」

戒能「??」

はやり「本当に、やる?」

健夜「加減が効くからだ大丈夫。この子は壊さないから……。それに、この子で最後。約束する」

はやり「りょーかい」

健夜「じゃあ、私達行くから」

はやり「……ばいばい☆」

健夜「これから、指導するにあたって、一つだけ守ってほしい約束があるの」

戒能「なんでしょうか」

健夜「私とあなたは先生と生徒、ではなくて、師匠と弟子と思ってほしい」

戒能「はぁ」

健夜「つまりは絶対に言う事を聞くこと。これ、私の人に教えるときのスタンスなの。理解してもらえるかな?」

戒能「……強くしてもらえるならっ」

健夜「そう、ありがとう。約束だよ」ニコ



健夜「ふふ、今日は月が綺麗だね」



おまけ完

これで終わりです。
長いこと読んでくれてありがとうございました。
元々決勝の後が本編でこれが前日譚のつもりですが思ったより長くなっちゃいました
だから多分続きは書かないです

最初の構想がこれの7年後だったので、書くとしても多分ソレです
あと鬱々&鬱になる
じゃあ寝ます

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