まどか「すわんそんぐ」 (195)

雪が、降っていた。








ほむら「…おはよう、まどか」

まどか「…」

ほむら「今日は一層寒いね…」

まどか「…」

一週間前くらいに ほむら「まどかを助けることができた世界」というスレを立てたものです
あの時は中途半端に終わってしまったので、その続きとなります
くどいし改行三点リーダー点線傍線がうざいかと思いますが、どうかお付き合いのほどお願いします…
あらかた書き溜めができてるので、厚かましいようですがさるよけ支援頂けると嬉しいです…

今日のまどかもいつもと変わらず呆と窓の外の景色を眺めている。


――ようにも見えるけど、どことなく驚きの色があるようにも見える。


ここしばらくまどかと暮らしていたおかげか、ほんのわずかな機微のようなものを感じとれた。



――私も起きがけに見たその景色は、寝ぼけた頭を一気に覚めさせるくらいの感動があった。

ほむら「…」





銀世界。


言葉通りの景観だった。






ほむら「…外、出てみよっか」

まどか「…」




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ほむら「…」




吐く息は、一層白さを増している。


昨晩も雪が降っていたけれど、まさかこれほど積もるとは思わなかった。

知らない街中の廃工場で魔女を斃した後、帰路を辿るとき。


確かその頃から降り始めていて、街の輪郭をうっすらとぼかしていた。


街中に積もる雪は薄く、どこか心もとなくて。


次の日には何事もなかったかのように、あっけなく消えちゃいそうだな、とか。


そんな風に思っていた。

まどか「…」


ほむら「…」




雪面に踏み出した足は軽く沈んで。


足裏の感覚と靴の埋もれ具合から、結構…それなりに積もっていることが分かる。


庭先の林も綺麗に雪の笠を被っていて、なんだか新鮮だ。

まどか「……」




まどかは私の数歩先を、ゆっくりと…どこか支えてあげたくなるような足取りで歩いていく。


私はそれに付き従う形で足を進める。

まどか「…」


ほむら「…」




少し進んだ先で立ち止まり、ゆっくりとかがみこんだ。



私も少し間を空けて、まどかの隣にかがみ込む。

ほむら「…」


まどか「……ゆき」


ほむら「……」



まどかが、白い息とともに、小さく呟いた。

ほむら「……そうだね」





私としては不意のことで驚いたけど、いちいち大仰に感動してみるのも失礼で間抜けなことだろう。


――内心ではそれでいっぱいなのだけど。


それを表に出さず、多少口角を上げるだけにとどめておく。

まどかの雪の色と見違えるような白い手が、積もった雪をすくい上げる。


まどか「……冷たい…」


ほむら「………そうだね…。それが雪だから……」




胸に、こらえがたい熱さが広がる。

まどか「……」





まどかは両手いっぱいに雪をすくい取って、可愛らしい手つきでそれを丸めていく。


ある程度納得できるようなものになったらそれを置いて、また両手いっぱいに雪をすくい取って形作る――。



そうしてできたのは、小さな雪だるまだった。

ほむら「…」



まどか「……」




なんとなく、私もまどかに倣って同じように雪だるまを作ってみる。





ほむら「…うん」




雪玉を二つこしらえて重ねるだけだけど――まぁなかなか上手くできたんじゃないかしら。


それをまどかの作った雪だるまのとなりに置いた。

まどか「……」



ほむら「……」




気のせいだろうか。


まどかの口元が少し綻んだような…。


そんな気がした。

ほむら「…」


まどか「…」





…そういえば今日はクリスマスだっけ。


朝目が覚めて、枕元に置いてあるプレゼントにはしゃぐ年でもないけれど。


ケーキくらいは買っておけば良かったかな。

そう思えばまだ朝ごはんもとってなかったことを思い出し、私はまどかの手を引いて家へと戻った。


上着を取って、まどかと一緒にダイニングキッチンへ入る。


あまり待たせるのも悪いような気がし、手っ取り早く二人分のフレンチトースト、それとホットミルクを拵えた。




ほむら「――いただきます…」


まどか「…」

軽い朝食をおえて、食後の余韻に浸る前に二人分の食器を下げる。



ほむら「まどか、食後に紅茶はどうかしら…」


まどか「…」

湯気立つ紅茶の香りが鼻腔をくすぐる。



ほむら「…粗熱はとったつもりだけど、まだ熱いかもしれないから気をつけて…」


まどか「…」

ほむら「…」


なんの気なしに、窓の外を見やる。



雪はまだしんしんと降り続いていて。


この様子だともうしばらくは続きそうだな。

綺麗に白い笠をかぶった木々。


一面の真っ白な世界に、二人分の足跡。


その先には、二つの小さな雪だるまが仲良さげに並んでいた。

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カラン・・・カラララ・・・




ポタッ・・・ポタッ・・・ピチョン・・・






ほむら「……」







ハッハッハッ……

ほむら「………」




ほむら(追い詰められた……か……)







グルル・・・







魔女『ワォン! ワンワン!』ダラダラ

ほむら(…でも……危険を顧みなきゃ…まだやりようがある………)




ほむら「……」




…美樹さやか。



ほむら(…まさかあなたの戦い方がここらで生きてこようとはね……)

魔女『ゥゥゥゥゥ……』ジィ・・・





ほむら「……」ガサガサ



ほむら(……二つはある………か……)




ほむら(…十分だわ……)スッ・・・

魔女『ハッハッハッ…』ジリッ・・・



ほむら「……ッ」





美樹さやか。あなたはなにかと自分のことを卑下してたけど――。





魔女『ゥワゥンッ! ワンワンッ!』ダッダッダッ



ほむら(……今の私に比べれば…幾分かマシなほうよ……!)ピピンッ






カプッ

ほむら「……ッッッ」




ブチチィ・・・




ほむら「ぁ……があああああああああああ!!!」ブシュゥ・・・




魔女『ワン! ワン!』ムシャムシャ・・・





魔女『…?』






ドッ・・・ドゴォ!!!

――
―――――
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魔女『……ッ……ァ……』ピクピク・・・




ほむら「………私の肉付きパイナップルの味は如何だったかしら…?」




魔女『………』ピク・・・ピク・・・



ほむら「…これに懲りたら暴食も悪食も大概にしておくことね…。もし次、本当に犬に生まれ変われたらちゃんと躾てもらいなさい…」チャキッ



魔女『……』

魔女『…く…ぅーん…』



ほむら「…」



魔女『………』ペロ・・・ペロ・・・



ほむら「………」




ほむら「……」






バンッ


バンバンバン・・・

――肉を切らせて骨を断つ。


要領さえ分かれば――損傷を最低限に、上手く打開することもできる。


丸焦げのイモムシまでにならなくても、腕の一本でも覚悟してくれてやれば。


この戦法は、魔女と真正面から正攻法で立ち会えるような、派手な魔法や魔力を持ち合わせていない私にとっては、この上なく有用なものだった。

ほむら「……でも手首から先の欠損をまるごと再生させるだけでも、相当な魔力を要するわね…」




むき出しになった白っぽい骨、引きちぎられた筋繊維、血管、などなど。


それらがジュクジュクと再生し始め、元の手首の形に成っていく。


いくら自分の手首とはいえ、その光景は正視し難いほどに気味が悪い。




ほむら「…もう、だめか…」




グリーフシードが真っ黒だ。

左手は、表面的には再生した。


だけど、神経とか、そういう内面的なところまではまだ完璧に治りきっていないようだ。


左手は僅かに開閉できる程度しか動かず、握力も赤子ほどにもないだろう。




ほむら「…まあ、いいわ…」ポイ



GS『 』ヒュー・・・


ほむら「…」チャキッ



パパンッ


パリィ・・・ン・・・

ほむら「……」



左手が多少不自由になったけど、取り立てて治す必要もないだろう。


そこに割く魔力がもったいない。


次に魔女と戦わなくてはならなくなる期間が、まどかと平穏に暮らせる時間が伸びるほうが私にとっては大事なことだ。


ほむら(……でも、あんなまるごとくれてやる戦い方じゃコストパフォーマンスが悪いわね…)


ほむら(次からは取られた部分を回収できるようにして、傷口からつなぎ合わせるようにしましょう。きっとその方が魔力を使わないで

済むわ…)






―――
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穏やかな日々が続いた。


まどかが外を眺めているとき、私はそばで読書をし。


外に出たがるような素振りを見せたときは、まどかの散策に連れ立った。


――これは日がな一日窓の外を見続けていることが主だった以前と比べると、良くなったと言える変化だろう。


言葉も少しずつ――断片的ではあるけど、情緒的なものを口にするようになってきた。


人がましさを取り戻してきているようだった。

ほむら「…」



まどか「…」






まどかの進むがままに後を着いていくと、別荘前の林道を抜け、砂浜まで出た。


ここは、ちょうどまどかがいつも窓から眺めていたあたりのところだろう。

ほむら「…」



まどか「…」





遮るものもなく遠慮なしに吹き付ける潮風は、身を切るような冷たさだ。


びゅう、と風が強く吹き付ける度に顔をしかめ、身を縮こませてしまう。


そんな私に対して、まどかはそんなものなど全く気にしていない様子だ。


いつもと変わらない平然とした調子で、渚の方でかがみ込んでいる。





まどか「……」

――キュゥべえの言い草は、まるでまどかの自我は永遠に失われてしまったような、そんな物言いだったけど、案外そんなこともないの

かもしれない。





ほむら「……」




もしかしたら。



いつかまた、まどかと一緒に他愛もないことを話したり。


なんでもないことでも笑い合えるような、そんな日が来るのかもしれない。



私が許される日がくるのかもしれない。

>>67
訂正


――キュゥべえの言い草は、まるでまどかの自我は永遠に失われてしまったような、そんな物言いだったけど、案外そんなこともないのかもしれない。





ほむら「……」




もしかしたら。



いつかまた、まどかと一緒に他愛もないことを話したり。


なんでもないことでも笑い合えるような、そんな日が来るのかもしれない。



私が許される日がくるのかもしれない。

でも……それでいいのだろうか。




まどかから見れば私は、どんな経緯があれ、まどかの意思を無下にし、見滝原の人々を見殺しにした張本人。


そんなヤツを相手に、普段通り話すことができるのか。


あの屈託のない笑顔を向けることができるのか。

それに、まどかが回復したとなれば、あのインキュベーターも放って置かないだろう。


今回のように元も子もなくなる前に、元の木阿弥にならないようにと、どんな手を使ってでもまどかを魔法少女にしたがるのではないのか。





ほむら「……」











……もういっそ、このままの方が………。

ほむら「……」







まどかは絹のようになめらかな、長くなった髪を靡かせて、ただ遠くを見据えている。


どんよりとした雲と、仄暗い海が交じり合う殺風景な水平線を。

まどか「…」



ほむら「…」





冬の海はどこまでも灰色で。


このまま世界が廃れて寂れていってしまうような……。


…そんな見る者を不安にさせるような風情があった。









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シュウゥゥ・・・






ほむら「……ッ」






今回も無様に這いずり回って命を拾ったというのに。






ほむら(グリーフシードはなし……か……)

今回は珍しく五体満足で済んだとはいえ、無傷というわけではない。




ほむら「……」




捨て置けないような流血をしている箇所もある。


まずそういう致命的な箇所から優先的に、貴重な魔力を捻出して回復させていく。


放っておいてもなんとかなりそうな箇所は、そのままにしておく。

ほむら「……」


これくらいなら自然の治癒力でどうとでもなる。


傷跡は残るかもしれないけど。






ほむら「……帰ろう…」

QB「――やぁ、ほむら。久しぶりだね」ヒョコ


ほむら「……キュウべぇ…」


QB「今日も魔女退治お疲れ様だね。いや、君の苦労は察するに余りあるよ」


ほむら「…」


QB「どうやら相当に疲弊しているようだ。以前のように問答無用に銃を突きつける元気もないらしいね」


ほむら「…お望みならいくらでもくれてやるわよ……」チャキッ


QB「…君の言うこと成すことは冗談か判別しづらいね。ともかく遠慮させてもらうよ」

ほむら「…そう。で、今回は私に何のようかしら」


QB「今回は聞きたいことがあってね。君に対して、君に関してのことでね」


ほむら「…私…?」」


QB「そう、君のことだ」


ほむら「…私は唯一の強みだった時間操作の能力を喪失して、普通の魔法少女なら楽々快勝を収めてしまうような魔女相手にも、命からがら辛勝するような最弱の魔法少女」


ほむら「そんなちゃちな私が、あなたにとって有益な情報を持っていると思って?」


QB「ああ、持ってる」


ほむら「…」

QB「じゃあまた回りくどいようだけど、まずはある魔女のことについて話そうか」


ほむら「……魔女?」


QB「なに、君に関係がない話じゃない。むしろ最も密接に関係しているといってもいい」


ほむら「…」

QB「――ワルプルギスの夜」


ほむら「……」


QB「君にとって馴染み深い魔女だろう?」


ほむら「……できればその名とはもう一生無縁でいたかったのだけど…」


ほむら「……まさか」

QB「そう気を張ることはないよ。また来襲するって話じゃないからね」


ほむら「……そう…」


QB「君はあのワルプルギスの夜が消え去る瞬間を目撃したかい?」


ほむら「? いや…見なかったわ…」


QB「僕は見ていたよ。ワルプルギスの夜が消え去る瞬間を」


QB「いや、消滅する瞬間を」


ほむら「……どういうこと? その言い方じゃまるで…」



ほむら「…ワルプルギスの夜が、もう存在しないみたいじゃ…」

QB「全くその通りだよ、ほむら」


QB「ワルプルギスの夜はもうどこにも存在しない。過去にも未来にも。別の時間軸にも、ね」


ほむら「…どうして? ワルプルギスの夜が自滅したとでもいうの?」


QB「いや、むしろ君が攻略したとでも言うべきかな」


ほむら「……わけがわからないわ」


QB「…これはあまり知られていないことなんだけど、実は魔女にはそれぞれ有効で正しい攻略法があるんだ。闇雲にただ攻撃して斃すだけじゃなくてじゃなくてね」


ほむら「…」

QB「それはつまり――魔女によって様々だが、大抵はその魔女の性質、願い等、それらに関する何かしらのアクションを起こすことなんだ」


QB「それによって大きな隙、弱点を晒すものもいれば、果てはそのまま自滅するのもいる。まるで幽霊が思い残すことを無くして成仏するようにね」


ほむら「…」


QB「まぁその攻略法が何かとあれこれ試すよりは、がむしゃらに攻撃して斃す方がよっぽど手っ取り早いのも確かだけどね」


ほむら「…私は知らず知らずのうちにワルプルギスの夜を攻略していたっていうの…?」

QB「あの時、ワルプルギスの夜に対して外的な影響を与え得たのは君以外考えられないからね。そういうことになるんだろう」


ほむら「……」


QB「そこで僕は何が攻略のキーになったのか気になってね。僕なりにあの魔女をそのルーツから改めて調べていたんだ」


QB「魔女とは魔法少女の成れの果て。それは君も既知のことだろう?」


ほむら「…ええ」


OB「だからあの魔女に該当、合致する魔法少女が歴史のいずれかに存在するはずなんだ」


ほむら「…」


QB「――だけど、あの魔女に成った魔法少女のデータがないんだ。原始の時代からのデータを洗ってもね」


QB「もちろんデータの拾い忘れ、見落としなんてのもない」


QB「僕たちインキュベーターを介さなきゃ君たちは魔法少女になれないからね。故にそんな過失は起こりえない」

ほむら「……」


QB「こんなことは今まで前例がない……と思ったのだけど、そうでもなかった。ごく最近に、同じような稀有な事案があった」


ほむら「…………」




QB「そう、暁美ほむら。君だよ」




QB「君とワルプルギスの夜」




QB「――この上なく類似してると思わないかい?」



ほむら「…っ」

QB「能力然り、性質然り。鑑みれば君らは共通点が多々見受けられる」


QB「君たちの無関係さを証明するのが困難な程にね」


QB「以上のことを踏まえ再考、精査し、そこから結論づけると――」



QB「ワルプルギスの夜は、君が魔女化したものだ、ということになる」

ほむら「……まっ……待ちなさいよ……」


QB「なんだい?」


ほむら「それでも矛盾してるしてるじゃない……」


QB「…」


ほむら「…ワルプルギスの夜は、私が魔法少女になる前に存在していたのよ…。おかしいわ…。…矛盾している…」


QB「何もその時間軸が起点となって生まれた魔女とは限らないないだろ?」


ほむら「……」


QB「ワルプルギスの夜が存在しない時間軸。そんな中でも魔女は当たり前に存在している」


QB「別の時間軸の君が、なにかしらの魔女に敗れるまどかを前に同じことを願わないと言い切れるかい?」


ほむら「……」

QB「――暁美ほむら」


QB「君は、何を願って魔法少女になったんだい?」



ほむら「…」


ほむら「…私は……」


ほむら「私の……願いは……」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

まどか「――じゃあ…いってくるね」


ほむら「えっ…そんな……巴さん、死んじゃっ、たのに…」


まどか「だからだよ。もうワルプルギスの夜を止められるのは、私だけしかいないから」


ほむら「無理よ! 一人だけであんなのに勝てっこない! …鹿目さんまで死んじゃうよ…?」


まどか「…それでも、私は魔法少女だから…」


まどか「みんなのこと、守らなきゃいけないから」

ほむら「……ねぇ…逃げようよ……」


まどか「…」


ほむら「だって、仕方ないよ…。誰も、鹿目さんを恨んだりしないよ…」


まどか「…」


まどか「…ほむらちゃん」


ほむら「…」

まどか「私ね、あなたと友達になれて嬉しかった」


ほむら「……」


まどか「あなたが魔女に襲われた時、間に合って。…今でもそれが自慢なの」


まどか「――だから、魔法少女になって…本当によかったって。そう思うんだ」


ほむら「……鹿目さん…」

まどか「さよなら。ほむらちゃん」


まどか「…元気でねっ」




ほむら「いや! 行かないで…っ!」








ほむら「鹿目さぁぁぁぁん!」








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―――――――――――――――――――――――

ほむら「……どうして…?」






まどか「 」





ほむら「死んじゃうって、わかってたのに…」



ほむら「……私なんか助けるよりも…あなたに……生きててほしかったのに…っ」

キュウべえ「…その言葉は本当かい? 暁美ほむら」



ほむら「……」


キュウベぇ「君のその祈りの為に、魂を賭けられるかい?」


キュウべえ「戦いの定めを受け入れてまで、叶えたい望みがあるなら…。僕が力になってあげられるよ」


ほむら「……あなたと契約すれば、どんな願いも叶えられるの…?」


キュウべえ「そうとも。君にはその資格がありそうだ」


キュゥべえ「…教えてごらん。君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」

ほむら「私は……」










ほむら「私は――」










・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほむら「……まどかとの出会いをやり直したい…」





ほむら「…………まどかに守られる私ではなく…まどかを守る…私に……なりたい…」






QB「…」



ほむら「……」





QB「これで全ては合理し、整合した」



ほむら「…」

QB「ワルプルギスの夜は、君の願いがために生まれ、存在した魔女だった。――君のために」


QB「君のために数多の時間を遡り、絶望の淵にある魔法少女を取り込んで、力を蓄えすくすくと育ち。誰も太刀打ちできないほど強大な存在に成った」


QB「すべて君のためにね」


QB「君があの場で、あの選択肢を取れるようにお膳立てをしてくれたんだ。そう仕向けてくれたんだ」


QB「全ては君の望み通り」


QB「まどかは魔法少女になれなくなって」


QB「君はまどかを守らざるを得ない境遇になった」


QB「君は――君たちは願いを果たした」


QB「だからワルプルギスの夜は消滅した。存在意義を喪失したからだ」

ほむら「…………」


QB「おめでとう、ほむら」


QB「君の願いは見事に、完璧に成就したんだよ」


QB「魔法少女は願いにより始まる存在」


QB「つまり君という物語は完結した」


QB「この上なく綺麗な形でね」

ほむら「ふ…ふざけないで!」チャキッ



QB「…おっと」スゥ・・・




パンッ


パンパン

ほむら「だ…誰が…………」


ほむら「……こんな結末を…」


ほむら「私はこんな………こんなの………」


ほむら「望んで………」


ほむら「………」






望んで、ない。

ほむら「………」




そう、言い切って…。


言い切って……しまえるの………?



曲がりに曲がって、歪に歪んだ帰結。



それでもこれは、紛れもなく私が望んだ……。





ほむら「……ぅっ………」

「おやおや、どうして泣き出すんだい?」







どこからか、アイツの声が響く。








「君は君の願いを叶えることができたじゃないか」



「君の我欲で、まどかを貶めまでして」



「それとも、悲願を達した故の嬉し涙ってヤツかい?」



「つくづく、人間って奴は度し難いね」

「まぁ、でも…」



「今回ばかりは…」








「ふふっ」








「人間の感情の一端だけでも理解できたかもしれないね」

ほむら「………ぅ………」






「そうあまり悲嘆しないほうがいいと思うよ」



「言われれるまでもないかもしれないけど、ソウルジェムはそういう機微に反応する物なんだから」



「万が一、君が魔女になったら、まどかはどうするんだい?」






ほむら「…………」

「君の願いの願いに付き合って」



「付き合わされて」



「君の願いがために、まるで人形のように成り果ててしまったまどか」



「すべてを無くした――否、すべてを奪われたまどか」

「台無しにされたまどか」



「かわいそうなまどか」



「そんな哀れなまどかをかなぐり捨てて、無責任にも自害とか、魔女になれるんだとしたら――」





「その情の無さは、ある意味僕たちに通じるものがあるかもね」

ほむら「……やめて…」






「……そういえば以前、"君は選択を間違えた"…そう君を謗ったことがあったね」



「その言を撤回させてもらおう。君の選択は誤答では無かった。紛れもなく正答だったんだ」



「……こんな滑稽極まりない話ははじめてだ」



「まぁいいデータが採れたよ。まぁまどかの件と比べれば採算は全然だけど」

「君のこの時間軸は、君の物語の中で完璧に完結している」



「とんだ悲劇…いや、喜劇かな」



「ともあれ、君という物語は見事有終の美を収めることができたんだ」



「…後は野となれ山となれ」



「そんな気持ちで、漫然と行き続けるのもいいんじゃないかな」

ほむら「…………」




ほむら「………」





本当に、滑稽極まりない話。

悲劇でもあり、喜劇でもある。



ワルプルギスの夜は私の願いを依代に…。



私の願いが生んだ魔女だった。

全てはこの時間軸のために存在した魔女。


私の願いを完璧に叶えるために存在した魔女。


曲がりなりにも、私の願いの通りに。


全ては現実になった。

ほむら「…」






魔法少女は希望で始まり、絶望で終わるもの。



そんなことは、痛いほどに――うんざりするほどに分かっていたのに。







ほむら「……」

まどかをこんな目に合わせたのは。





まどかを不幸にしたのは。





――最初から、私だった。










まどかのためではなく、全ては自分のためだった。

ほむら「………ぅ…」








私はもう、まどかに泣きつくことさえ許されない。










ほむら「―――――」

―――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――








ほむら「…」





雨が、降っていた。





ほむら「……」





庭先に並んだ二つの小さな雪だるまは、雨に打たれてぐずぐずになっていた。

――――――
―――――――――――
――――――――――――――――――――




ほむら「……」カチャ・・カチャ・・・



まどか「…」モグモグ




ほむら「……」

この世界は、私のただれた欲望で構成された醜いもの。






ほむら「…」


まどか「…」

――それでも、私はこれ以上この現実を壊したくない。



だって、後戻りはできないのだから。

ほむら「…………」


まどか「……」




私はもう、この咎を背負って生きて行くしかない。



それしか、できない。





ほむら「……っ」

――――――
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―――――――――――――――――――――――――








ほむら「……」




眠れない。




何も考えたくないのに、頭は嫌に冴えていた。

ほむら「…」




まどかを起こさないよう注意を払い、ベッドから出る。



ほむら「……」



さっきまではざあざあと、うるさいくらいに心地いい音を鳴らしていたのに。


いつの間にか雨は止んでいた。

窓から差す星明かりが、足元を照らしている。



ほむら「…」



にわか雨が過ぎ去った空は、先ほどの悪天候が嘘だったかのように澄んでいた。


澄み切った空にははっきりと、自分の存在を誇張せんとばかりに、きらきらと満天の星星が輝いている。



ほむら「……」



それはあまりにも綺麗で。





――だから私は目を背けた。

ほむら「……」



まどか「…」








――まどか。

ほむら「…」







私の…大切な友達…。









――私の、まどか。







まどか「…」

ほむら「…」




何もかもが思い通りにはいかず、妥協と取捨選択を繰り返してたどり着いたこの世界。


正しく、融通の利かないこの世界。



――私の願いが導いた、この世界。





この世界は、狂っていた。








end

すみません、ちゃんと今回で終わらせるつもりでしたが、思いのほか時間がかかったのと、さっき急用が入ってしまい、前のように夜を徹して書き続けることができなくなりました…
ここまで僕の自慰に等しいくっさい駄文に付き合って頂きありがとうございます…

厚かましいようですが、よろしければもうオチまであらかた書き終えているので、また改めて後日続編を書かせて頂きたいと思います…
くどくどうぜぇしss速報ででもやれと言う感じかもしれないですが、次で本当に終わりなので、またここで立てさせて頂きたく思います…

次もまた極力一週間以内にと考えています…
多分同じ時間くらいに立てると思うので、どうかよろしくお願いします…
ではまた

スレタイはコロコロ変わって申し訳ないですが多分変えます…
ちなみに今回のスレタイは僕の好きなエロゲーのテーマと雰囲気っぽくしたいなあと考えた時の名残です…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月19日 (木) 01:34:42   ID: sqlBeO7i

前作からさらに救いがねーorz
よかれと思ってやってきたことが、なぜか巡りめぐって最悪に帰結する
全てが悪循環のなかで、時折みせるハッとさせらるような美しい光景
現実に覚えがある、だからたかがアニメ、たかがSSでもほっとけないんだよな、まどマギは

2 :  SS好きの774さん   2015年03月19日 (木) 01:36:50   ID: sqlBeO7i

とりあえず未見の人ようカキコ

つづき
まどか「あの子の名前を」

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