セーラ「白糸台高校の三年生になったで」(217)

ID:4ALGeg7o0代行っす

セーラ「白糸台他から推薦の話が来たで」
セーラ「白糸台高校に入学したで」

の続きです

1年生のインハイで優勝、それから2年経ったということで

2年後、初夏、麻雀部、部室


セーラ「(感動のインハイ初制覇から2年が経った)」

セーラ「(俺らは翌年も全ての大会で優勝して、もはや全国に敵はおらんようになった)」

セーラ「(照は個人戦も連覇中で、最強の高校生という称号を手にした)」

セーラ「(全国を連覇した俺ら1軍レギュラーには、専用の部屋が与えられた)」



セーラ「(…そんな、ある初夏のこと)」

セーラ「あいつまた遅刻か」

菫「そのようだな」イライラ

照「……」ペラッ

尭深「淡ちゃん、多分、教室で寝てると思います」

セーラ「相変わらずええ度胸やのぉ、あいつ」

菫「江口、起こして連れて来い」

セーラ「はぁ?なんでいつも俺やねん、尭深行って来い」

尭深「ごめんなさい、私が起こしても淡ちゃんは起きないんです…」

セーラ「ほな、照が行け」

照「やだ…」ペラッ

セーラ「暢気に本読んでる場合か」

照「…あの子、みんなに迷惑かけてばっかり」
  
菫「だな」

尭深「あ、あのどうしますか?」

セーラ「あぁもう、また俺か」

菫「頼んだぞ」

照「…行ってらっしゃい」ペラッ



セーラ「なんで俺が後輩を起こしに行くねん…くそ」

セーラ「(…照のやつ、前はもっと可愛げがあったのに
    去年から無口で冷たい読書マシーンになってしまいよった)」

セーラ「(クールキャラってやつか?そんなん全然似合ってへんわ、アホ)」

淡の教室


セーラ「まーたスヤスヤ寝よってからに」

淡「スー…スー」

セーラ「こら、淡、起きろ」

淡「スー…スー」

セーラ「淡!部活や!」

淡「んっ…セーラ?」

セーラ「せやから呼び捨てやめろっちゅうねんもう」

淡「むにゃむにゃ…起こしにきてくれたの?セーラ、ありがと」ダキッ

セーラ「そ、その抱きつく癖やめーや//」ナデナデ

淡「えへへ、だって、セーラが照れると可愛いんだもん」ギュウ

セーラ「こら、俺は先輩やで?忘れてへん?」

淡「忘れてないよ~、じゃあ行こう?エスコートして欲しいなぁ」

セーラ「…はいはい、ほら」

淡「やったぁ」ウデクミ



セーラ「(今年入った大物新人、大星淡。照を髣髴とさせる圧倒的な力…
     正直、俺も勝つのはちょっと難しい相手…)」

セーラ「(そんな新人はちょっと抜けてて、よく遅刻する。
     そんでなぜか俺にやたらと懐く…なんでや?)」

再び部室


セーラ「アホの1年連れて来たで~」

淡「アホじゃないよ、もうセーラ」

菫「大星、お前は何度遅刻するつもりだ」イライラ

淡「ごめんね菫」

尭深「あ、淡ちゃん弘世先輩にはちゃんとしなきゃ」

セーラ「尭深、それどういう意味や」

尭深「え、別に他意はない…ですけど」オドオド

照「…淡」ペラッ

淡「なに?テル~」

照「淡が遅れるせいでみんなに迷惑がかかる」

淡「う、うん」

照「セーラは甘いから言わないけど、もっとちゃんとしなきゃ」

セーラ「なんやと、俺かてちゃんと怒ってるわ!」

照「ん、セーラは少し黙ってて…淡、わかるよね?
  1軍としては、少し自覚が足りないんじゃないかな」

淡「ごめんなさい」シュン

照「わかればいい、菫も、あんまりきつく叱っても逆効果」ペラッ

菫「…わかったよ」

セーラ「なんやねんもう…(照のやつ偉そうにしよってからに)」

セーラ「(…最近は弘世にも照にもいちいち腹立つわ)」

セーラ「(前みたいな和気藹々とした部活はどこ行ったんや)」

セーラ「(正直楽しくないで、照…)」チラッ

照「…なに?」ペラッ

セーラ「別に、なんもない」プイッ

照「そう…」ペラッ

セーラ「(…勝てば勝つほど照は変わっていったように思う…)」

セーラ「(あいつに敵う相手はもう存在せん…だからそんな気だるそうなんか?)」

セーラ「(それでクールキャラか?厳しい先輩か?…そんなん、照ちゃうやん)」

セーラ「(…はぁ、もう。友達になれて嬉しいって言うてた照はどこに行ったんや)」

淡「セーラ?なんでぼーっとしてるの?」

セーラ「せやから先輩を呼び捨てにすんな…いやもうええわ」

淡「どうしたの?変だよ?」

セーラ「変ちゃうよ、いつもと一緒や」

淡「そうかな~」

セーラ「…なぁ、弘世」

菫「ん、なんだ?」

セーラ「ちょっと今日は帰るわ、なんかやる気出ぇへん」

淡「えぇっ!?なんで?帰っちゃうの?」

菫「どうした?」

照「……」ペラッ

尭深「体調が悪いんですか?あのよかったらお茶でも…」

セーラ「いや、今日はええわ。尭深、ごめんな」

尭深「い、いえ…」

菫「…はぁ、頭が痛い。お前ら二人はなんでこういつもいつも…」ガミガミ

セーラ「ほなまた明日」

淡「待ってよセーラ、私も一緒に帰る!」

菫「待て大星、お前はさっき自覚がないって怒られたばかりじゃないのか」

淡「…だって、セーラがいない部活なんかつまんないんだもん」

尭深「あ、淡ちゃんそれは…」

菫「はぁ?それはどういう意味だ」

淡「そのままの意味でーす」

セーラ「…お好きにどーぞ」

菫「お前らふざけるのもいい加減にしろよ、だいたいお前らは…」ガミガミ

照「……」ペラッ

セーラ「ふんっ…すかしてんちゃうぞ」

ガラッ

菫「お、おい江口!大星!照、止めろよ!」

照「……やる気ない人はいなくていいよ」ペラッ

尭深「あ、あぁ…」オドオド

寮までの帰り道


セーラ「お前よう弘世につまらんとか言えたな~」

淡「だってほんとのことだし」

セーラ「ま、俺も同感やから怒らへんけど」

淡「やっぱりそうだよね?」

セーラ「先輩らがおるころは楽しかったんやで
    照や弘世ともバカやってたし」

淡「私が初めて練習見学に来たときも楽しそうだなぁって
  そう思ったから白糸台を選んだんだよ?」

セーラ「あぁ、そんなこと言うてたな」

淡「なのに、いざ入学してみたらこれだもんなぁ」

セーラ「すまんな」

淡「う、ううん!違うの、セーラは悪くないよ?
  セーラがいなかったらもうとっくに辞めてるもん…」

セーラ「はは、それはウソでも嬉しいで淡」ナデナデ

淡「う、ウソじゃないよ//」

セーラ「先輩らが卒業したら弘世が前にも増してガミガミうるさいし
    照はなんか無口でクールぶっとるし、…はぁ、なんかもう」

淡「…照はなんであんなに殺伐としてるの?
  無口かと思えば今日みたいに怒ってくるし…あの人わけわかんない」

セーラ「先輩をボロクソやなぁ」クスクス

淡「ご、ごめん…でも…正直、あの人は好きになれない」

セーラ「…今のままの照がずっと続くようなんやったら、俺も同じや」

淡「確かに強いよ?圧倒的だし、私でも勝てなかったし…けど……」

セーラ「けどなんや?」

淡「…ただ強くて、あんなに無口じゃ…ちょっと怖いよ。ロボットみたい」

セーラ「そうか…(俺も似たようなこと思ってたわ…)」

淡「私は…セーラや尭深と楽しくわいわい打ちたい…」

セーラ「でも、白糸台には勝利が義務付けられてるんや。
    照や弘世は、俺なんかよりもずっとその重荷と戦ってる…それはわかる」

セーラ「だから、そう楽しいことばっかりってわけには…いかんねんて」

淡「なら、私はあの部にいたくない」

セーラ「期待の新人に辞めてもらうわけにはいかんで~」

淡「わかってるけど…」

セーラ「お前は俺より強い、照には負けるけど
    でも、いい勝負が出来てる…そやから辞めるなんて言うな」

淡「…セーラがいてくれるなら、辞めないよ」

セーラ「ほな、俺が辞めんように頑張るわ」

淡「お願いだよ?辞めないでね」

セーラ「…特待生がそう簡単に退部できるかい」

淡「そ、そっか…それもそうだね」

セーラ「あぁ…(せやから、辛いんやないか)」


セーラ「(俺がいてもいなくても白糸台はあいつ一人で勝てる。
     有望な1年生もいる…なら、俺の存在意義は?)」

セーラ「(弘世は部長で部を上手いことまとめてるやんか、
     じゃあ、俺は何が出来る?何をしてる?)」

セーラ「(自分より才能のある1年生を辞めさせないために
     部にい続ける…それが俺の存在意義か?)」


セーラ「…虚しいな」

淡「え、何か言った?」

セーラ「いや…なんも言ってへん」

淡「ねぇ、せっかくだから遊びに行こうよ?」

セーラ「お、ええな!たこ焼き食べよ」

淡「うん!セーラのおごりね!」

セーラ「えぇっ」

淡「先輩だもんね~?」

セーラ「こんな時だけ先輩かい。まあええ、ほな行くで~」

淡「うんっ!!」


セーラ「(…大阪、帰りたいなぁ)」

セーラ「(なんて竜華や怜に言うたら怒るかな…甘えるなって言うかな…)」

セーラ「(…辛いなぁ)」

数日後


インハイ予選前、レギュラー発表後、虎姫専用部屋


淡「私が大将なんてびっくりだよー」

セーラ「ま、適任やな」

弘世「ようやくお前のやりたかった先鋒じゃないか、照」

照「…ん、だね」ペラッ

淡「セーラは中堅だったよね、希望してたんだって?」

セーラ「おう、ちょっと事情があってな。去年はアカンって言われたけど
    今年は淡が入ったから融通してくれたわ」

菫「愛宕洋榎か?」

セーラ「ま、そんなとこやな」

淡「え、誰?」

セーラ「俺の、まあ、宿命の何とかってやつやな」

淡「なんて人?」

セーラ「姫松高校のエース愛宕洋榎。ここの高校は伝統的にエースが中堅なんや」

淡「ほぉほぉ、それでなんだ~」

尭深「あ、あの、私初めての全国なのに副将は気が重いんですけど…」

菫「何を言うんだ渋谷。お前の実力からして、気が重いなんてことはない」

セーラ「せやで尭深、お前なら大丈夫や!自信持てよー」

尭深「は、はい…」

セーラ「(1年のときにビビってた弘世みたいやな…
     あのメンタル激弱やった弘世が尭深を励ましてるんやな…)」

セーラ「(…みんな、成長…してる)」チラッ

照「……」ペラッ


セーラ「…(照は強くなった、弘世は頼もしくなった)」

セーラ「(じゃあ、俺は?俺は成長してる?)」

セーラ「(自信ないで…そらちょっとは強くなったかも知れん、
     でも何の手ごたえもない)」

セーラ「…はぁ(だってそうやろ?別に俺じゃなくても優勝できたんやから)」

セーラ「(照が一人いて、あとは飛ばされない程度なら誰でもええんや…)」

セーラ「(なんて、卑屈すぎるんかな…俺の居場所は、ここにあるんかな?)」

淡「セーラ、ねぇ、このあとどうする?」

セーラ「ん?なんの話や?」

淡「昨日、明日はデートしようって約束したでしょ~」

セーラ「そうやっけ?」

照「……」ペラッ

セーラ「っちゅうかデートってなんやそれ」

淡「遊ぶのもデートも似たようなもんだからさー」

セーラ「ちゃうわアホ」コツン

淡「もう、痛いよー」ニコニコ

菫「おい、お前はデートもいいが練習をマジメにやれ」

セーラ「やってるやん、俺は練習で手を抜いたことなんかないけど」イラッ

菫「この間、やる気が出ないって言って勝手に帰ったのは誰だよ」

セーラ「しゃーないやん、そういう時くらいあるやろ」

照「…セーラには真剣さが足りない」ペラッ

セーラ「はぁ?どこがや?」イライラ

照「みんな真剣にやってるのに大きな声で笑ったり
  グチグチと文句ばっか言ったり勝手に帰ったり……」ペラッ


セーラ「」カチン

セーラ「はぁ?お前には言われたくないわ、こうやって話してるときも
    そうやって本から顔も上げようとせーへんやないか」

セーラ「それが人に何か言う態度か?お前いつからそんな偉くなってん?」

照「……」パタン

セーラ「あぁ、そうですかそうですか。日本一の高校生はそんなに偉いんですか」

照「……別に、そういうことを言ってるんじゃない」

菫「おい止めろ、くだらないことでケンカするな」

セーラ「ほう、弘世はこれがくだらんって言うんか?」

菫「そんなにイライラするな、江口」

セーラ「イライラさせてんのは誰やねん!」バンッ!!

淡「っ!」ビクッ!

尭深「っ!」ビクッ!

セーラ「…すまん、淡と尭深…お前ら先に帰れ」

淡「あ、で、でも…」

尭深「淡ちゃん、もう帰ろう…ね?」

淡「う、うん…」


ガラッ

バタン

トコトコトコトコ

セーラ「…いい機会やから言いたいこと言わせてもらうわ」

菫「…勝手にしろ」

照「……」

セーラ「俺は…俺は昔みたいに楽しくやりたいだけなんや」

セーラ「こんなギスギスした部活は嫌や、全然面白くないやん」

菫「…全国三連覇がかかっている以上、そんなことは言っていられないだろ」

セーラ「そんなことはわかってる…わかってるけど!」

菫「1年生の頃のように頂点を追いかけていたときとは違うんだよ
  私たちにはやり遂げなければならない多くのことがある」

照「…楽しいとか、面白いとか、そういうのは今の私たちには必要ない」

セーラ「そうか…お前らと俺はもう前みたいに分かり合えへんみたいやな」

照「…かもね」

菫「考えが違ってしまったのは残念だよ」

セーラ「なぁ、照…なんでそんな風になってしもたんや?
    前のお前はもっと笑ってたやん、なんでも楽しそうやったやん!」

セーラ「…ごめん、今のお前は好きになれへん」

照「…そう」

セーラ「これだけ言われてそんだけしか言い返せへんのか?」

照「どうせ…セーラには分からないよ」

セーラ「あぁ、そうか。ほな、そうやって抱え込んで無口になっとけや」

菫「…もうそのへんにしとけよ、お前ら」

セーラ「なぁ、弘世…オーダー提出っていつまで?」

菫「え?あぁ…確か、来週のあたまにある抽選会までだったような」

セーラ「俺を外してくれ」

菫「は?何を言ってるんだ江口」

セーラ「わがままって言うかもしれんけど、俺は自分の意見の合わんやつや
    何か抱え込んだまま他人を閉ざしてるやつとは同じチームで戦いたくない」

セーラ「どうせ、俺やなくても優勝できるやろ」

菫「ふざけたことを言うなよ江口、撤回しろ」

セーラ「嫌や、撤回せん。俺は団体戦から外れる。
    誠子でも入れればええやろ、どうせ誰がいても勝てるんやし」

セーラ「照がいればええねん、俺らはどうでもええんや。
    …俺なんかいてもいんでも一緒や。何も変わらんわ」

照「…それ、本気なの?」

セーラ「あぁ、本気やで。ほんまやったら退部でもしてやりたい気分やけど
    特待やしそういうわけにもいかんから、とりあえずメンバーから外してくれ」

照「ダメ…そんなの、ダメだよ」

セーラ「なんでや?別に俺やなくても」

照「セーラじゃなきゃダメだよ!!」

セーラ「照…?」

照「…ダメだよ…セーラ…ダメ…グス」

セーラ「はぁ、なんで照が泣くねん…」

菫「…とりあえず照に謝れ」

セーラ「………」

菫「江口、お前はホントに何も分かってないんだな…あぁもう」アキレ

セーラ「ん?何のことや?」

照「…菫、今何か言ったら本気で怒るから、グスッ」

菫「あぁ、はいはいわかったよ」

セーラ「え、な、なんやねん?」

照「…菫、申し訳ないけど二人にして」

菫「わかったよ、もう…じゃあまた明日」

セーラ「お、おう…(な、なんやねん???)」


ガラッ

バタン

テクテクテクテク

照「…セーラ、ごめん、ズズッ」

セーラ「何に対してのごめんかわからんで」

照「えっと…いろいろ」

セーラ「はぁ、それでは全然分からん」

照「うん…」

セーラ「まぁ、その、俺もちょっと言いすぎたとこあるし…」

照「…ちょっと悲しかった」

セーラ「ごめん、照…」

照「そりゃ…私だって…楽しくやりたいよ」

セーラ「え?でもお前それは必要ないって言うたやん」

照「…確かに、全国で勝つためには必要ない」

セーラ「そやったら…」

照「けど…勝たなくてもいいなら、楽しい方がいい」

照「一年生のときは、勝ちたかったけど、絶対勝たなきゃいけないっていう
  プレッシャーはそんなになかったから…楽しかったよね」

セーラ「俺らは挑戦者やったからな」

照「…今も、ほんとは楽しくやりたい。でも、そういうわけにはいかない」

セーラ「……」

照「セーラが今の状況をよく思ってないのは気付いていたけど
  でも、それに慣れてもらうしかないと思ってた」

照「後輩達にも、勝つ為にはこれだけのことをしなくちゃいけないんだって
  それを先輩として示さなくちゃいけないって思ってた」

照「菫とはそういう話をよくしていたんだけど、
  セーラとはなかなかそういう機会がなくて…」

セーラ「お前、なんか去年くらいからキャラ変わってたやん
    無口で本ばっかり読んで、喋ったと思ったら小言ばっかり言うて」

照「…ごめん」

セーラ「そやから照とは喋りにくかったんや、
    そんで後輩らとばっかりいるようになったわ」

照「私は…私は…」

セーラ「…なんでそんな閉じこもるんや。もっと話せや」

照「でも…」

セーラ「俺にはわからんことかも知れんけど、でも聞くくらい出来るやん」

セーラ「もっと頼ってもええと思うで?」

照「…話をしたら、団体戦に出てくれる?」

セーラ「そやから、それは別に俺じゃなくも」

照「セーラじゃなきゃ、私が嫌だから」

セーラ「なんでやねん」

照「ていうかセーラは勘違いしてる。私だけで勝てるはずがない」

照「セーラや菫や、先輩達がいたから優勝できたんだよ」

照「私一人では何も出来ない」

セーラ「……」

照「セーラは私に、日本一はそんなに偉いのかって聞いたけど」

セーラ「あぁ…それも言い過ぎやな、すまん」

照「偉いなんて思ったこと一度もないし、
  自分だけの力で勝ったと思ったことも一度もないよ」

照「みんながいて、支えてくれて、応援してくれて、
  だからこそ頑張れたし、だからこそ優勝できた」

照「それに、セーラが和ませてくれて、笑わせてくれたから
  リラックスできたし、…誰でもいいはずない」

セーラ「…照」

照「私が頑張るためにはセーラが必要なんだよ」

照「だから、メンバーから外れるなんて言わないでよ…寂しいよ」

セーラ「…俺はな、自分の存在意義がようわからんかった」

照「存在意義?」

セーラ「弘世は部長をやってて部をまとめて、頼もしい。
    照はめっちゃ強くて日本中に敵なし。
    じゃあ俺は?俺はチームのために何してる?」

セーラ「そう考えたら、何にもないような気がして虚しかった」

セーラ「そんで、部活は全然楽しくないし、照も弘世も変わったし
    …イライラしとったんよ。当たってごめん」

照「セーラはここに、こうしていてくれるだけでいいのに」

セーラ「え、え?」

照「もう一度言うよ。私が頑張るためにはセーラが必要。
  だから、…その、」

セーラ「…ん?」


照「…私のそばから、離れないでよ」


セーラ「…!//」カァァ

照「退部とか、外れるとか、二度と言わないで」

セーラ「…う、うん」コクコク

照「…よかった、頷いてくれた」ニコッ

セーラ「なぁ、照、今のって…」

照「ん?」

セーラ「い、いや何でもないわ…あ、それより!」

照「なに?」

セーラ「お前、さっき誤魔化したけど、クールぶってる理由教えて?」

照「…うん、いいけど」

セーラ「淡がお前のことロボットみたいで怖いって言うてたで」

照「…好かれてないのはわかってたけど、ちょっとショック」

セーラ「今みたいな照のことやったら好きになるんちゃうかな」

照「そうかな?…あ、でね…私は…さっきも言ったけど」

照「後輩達には練習に対する姿勢とかそういうのを
  ちゃんと伝えなくちゃいけないって思って厳しい態度とってきた」

セーラ「ふむ」

照「それも、一つの理由。でも、別の理由の方が大きいんだ」

セーラ「…照は勝つたびに人が変わっていったように思うで」

照「…なんだ、わかってるじゃん」

セーラ「やっぱりそうなんか」

照「勝てば勝つほど自分が孤独に陥っていくのが分かった。
  セーラや菫がそばにいてくれるのは分かってたけど」

照「でもそれでも、…怖かった。独りになるのは怖かったんだ。
  誰も自分を理解してくれないんじゃないかって不安になってった」

照「…誰かにそばにいて欲しいって思ってた。
  でも、それと同じくらい誰もそばにいて欲しくないとも思ってた」

セーラ「そうか…」

照「だから、誰も近づかないように本を読み始めたんだ。
  本を読んでいる間は誰も声をかけないし…そこに、逃げてた」

照「気付いたらどんどん無口になってたし、
  小言ばっかり言う嫌な先輩になってたよ」

セーラ「ま、淡にほんまの意味でガツンと言えるんは照だけな気もするけどな」

セーラ「俺は甘やかしてるって言われてカチンときたけど
    それも、あながち間違ってないわ…俺は結局あいつを甘やかしてるし」

照「…もうちょっと厳しくしてあげるのも優しさかもしれないね」

セーラ「そうかもな、反省する」

照「あ、でもさ、そういう無口な自分は嫌いじゃなかったんだ
  居心地もそう悪くなかったし、だからそれを通そうとしてた」

セーラ「けど、俺にキレられた…と?」

照「そう、はぁもう」

セーラ「無口キャラはもうやめとけ。普通でええやん」

照「キャラのつもりはないんだ、それが自分にとって普通だったし」

セーラ「そうか…ま、自然に、なるようになるやろ」

照「だね」

セーラ「照、俺はお前の孤独を全部理解出来ひんかも知れん。
    けど、こうやって話したらちょっとはラクになるやろ?」

照「…うん、なった」

セーラ「それはよかったわ」

セーラ「あ、弘世はどれくらいわかっとるん?」

照「私がこんな感じになったことに関してはなにも言ってこないよ
  チームの方向性とか、そういう話は頻繁にしてるけどね」

セーラ「…そうか、3人、もうちょっと会話が必要やな」

照「前みたいに、一緒に帰ったりしようよ」

セーラ「そやな、距離縮めとかなあかんな」

照「…それで、今年も、」

セーラ「インハイ優勝?」

照「…3人で、淡と尭深も入れて5人で…絶対優勝したい」

セーラ「うん、頑張ろ」

照「もう自分に存在意義がないなんて思わないでね」

セーラ「自分が誰にも理解されへんなんて思うなよ」

照「うん、ありがと」

セーラ「ん、ありがと」

照「ふふっ」クスクス

セーラ「あははっ」ケラケラ

ガラッ


菫「話は終わったか?」

照「菫!」

セーラ「ひ、弘世?」

菫「申し訳ないが、だいたいは聞かせてもらってた」

セーラ「盗み聞きはお行儀悪いで~」

照「そうだよもう…びっくりした」

菫「だってお前らがまた派手に言い合うんじゃないかって心配で」

セーラ「弘世らしいな。でも、ありがと」

菫「なっ!まさか江口にお礼を言われる日が来るとはな」

セーラ「アホか!礼ぐらい言うわ!」

照「心配かけてごめんね、でも、もう大丈夫」

菫「…私は、照が何か苦しんでることには気付いてたんだ」

照「あ、うん…」

菫「でも怖かった、それを聞くのが怖かった
  理解してあげられないかもしれないと思うのも怖かった」

菫「だから、…気付いてないフリしてたよ。ごめん」

照「謝らないでよ、菫。私も、逃げてたんだから」

菫「う、うむ」

セーラ「なぁ、こないだ思い出したことやねんけど、照覚えてるかな」

照「なに?」

セーラ「1年のときのインハイ決勝のときにな、」


セーラ「『2人と友達になれて嬉しい』って照が言うたんよ」

照「え、そんな恥ずかしいこと言ったのかな//」

菫「ん~…あ、そういえば確かに聞いた」

照「え、えへへ…恥ずかしいな」

セーラ「俺は今、それを2人に言いたい気分なんや」

菫「ふむ、なら私も」

照「わ、私も!」

セーラ「ふはは、やっぱりこういうノリが一番やで?」

菫「…適度に楽しんでやるか」

セーラ「頼むで、部長さん」

照「そうだね、これ以上淡に嫌われるのもごめんだし」

菫「やはり言いたいことはちゃんと言うのが正解ということだな」

セーラ「溜め込むんはよくないっちゅーことや」

照「…うん」

セーラ「ほな、もう遅いし何か食べて帰るか」

照「ん、たこ焼き」

菫「いいな、賛成だ」

セーラ「よっしゃ、ほな行くで~」

照「セーラ、菫」

セーラ・菫「「ん?」」

照「これからも、よろしくね?」

セーラ・菫「「当然や(だ)!」」

セーラ「(このあと、照や弘世のやり方は変わってきた
これまでどことなく漂ってたギスギス感はもう薄れてる)」

セーラ「(淡もあんまり文句を言わへんくなったし、俺も楽しくなってきた)」

セーラ「(弘世はまあすぐ怒るけど、照はあのクールキャラどこいった?
     っちゅうくらい笑うようになった。)」

セーラ「(それでも、キリっとした部分とか麻雀に対して真摯なとこはそのままで
     本も相変わらず手離せへんみたいや)」

セーラ「(そんな照や弘世のことが好きやし、この学校が大好きや。
     なんて、恥ずかしいけど、そんな風に思ってた)」

休憩

釣り人はキャラわかんなくて断念した…

まだ続きます

俺の記憶が確かなら、白糸台編のあとは姫松編を書くんだったっけか

さて、再開

>>75
無茶言うなw

インハイ予選、決勝終了後、控え室


淡「ただいまー」

セーラ「お帰り、淡」ナデナデ

淡「えへへ、頑張ったよ//」

セーラ「ん、よう頑張った」

照「淡、あの8ピン切りは不可解」

淡「いいじゃん、勝ったんだから」

照「そういう問題じゃないから」

セーラ「そこは受け入れとけ、淡」

淡「セーラがそう言うんなら…気をつけます」

照「はい、それでいい」

淡「(照って私にだけ厳しくない?)」コソコソ

セーラ「(それだけ期待しとるっちゅーことやで)」コソコソ

淡「(そうかなぁ…)」ブツブツ


菫「大星と渋谷、ちょっとオレンジジュース買ってきてくれないか」

淡「えっ!?私帰ってきたばっかりなのにー」

菫「頼む」

淡「むぅ、わかりましたぁ」ブツブツ

尭深「行ってきます、ほら、淡ちゃん行くよ」


ガチャ

バタン

セーラ「後輩追い出して何事や?」

菫「照、これを見ろ」

バサッ

照「新聞?……っ!」

セーラ「それなに?」

菫「各県の予選結果が掲載されてる」

セーラ「お、姫松と千里山はどうなっとる?」

菫「どちらも明日決勝だ」

セーラ「そうか、よかったー」

菫「って、そこじゃなくて…」

セーラ「ん?」

照「………」

セーラ「照?どした?」

照「いや…別に」

菫「江口も見てみろ、ここだ」

セーラ「ん、なになに~…長野?あ、照の出身地やっけ」

照「…うん」

セーラ「龍門渕破れる…ってあのチビのとこやん!え、どこが勝ったん?」

セーラ「清澄…?聞いたことないな…大将、宮永咲……ん?宮永?」

菫「…照の親族か?なんとなく、気になってな」

照「いや、違う。知らない」

セーラ「あ、ひょっとして…妹か?前そんなん言うてなかったっけ?」

照「…私に、妹はいない」

菫「そうか、ならいいんだ。ひょっとして、と思って」

セーラ「同じ長野で宮永か、珍しいなぁ~」

照「うん…」

ガチャ


淡「買ってきましたよー!」

尭深「ただいま戻りましたぁ」

菫「ありがとう、ご苦労様」

淡「はい、照」

照「ありがと、淡」

セーラ「照はオレンジジュースが好きやもんなぁ」ニヤニヤ

照「い、いいでしょ別に//」

淡「あー照が照れてる、照だけにー」

菫「…江口、余計なことを教えるな」

セーラ「え、お、俺何も言ってへんで!」アセッ

照「……」プシュ

照「……」ゴクゴク



セーラ「(絶対妹やろ、あの態度)」コソコソ

菫「(間違いないだろうな)」コソコソ

セーラ「(なんで隠すんや?)」コソコソ

菫「(・・・わからん)」コソコソ




セーラ「(妹…。宮永咲……大将ねぇ)」

プルルル、プルルル


セーラ「お、すまん、ちょっと電話や」

セーラ「もしもし?怜か?」

怜『セーラ?今大丈夫?』

セーラ「おう、ええで」

竜華『セーラ、おめでとー』

怜『おめでとー』

セーラ「なんや竜華も一緒かい、ありがとー」

竜華『うちらも絶対勝つから、全国で会おうな』

怜『約束、果たすからな』

セーラ「おう、待ってるで」

怜『私、今やったらセーラに勝てる気がするで』

セーラ「上等やん、楽しみやわ…ところで身体大丈夫か?」

怜『いつも心配してくれてありがとうな、平気やで
  そやないと大会なんか出てられへんやんか』

セーラ「それもそうやな、でも、無理したらあかんよ?」

怜『ほんまありがとう、セーラはいつも優しいなぁ』

セーラ「あ、アホ、照れること言わんといてーや//」

竜華『でもセーラが中堅なんは残念やわ』

怜『そやなあ。春季大会もセーラはなんでか副将やったし
  戦えへんかったよなぁ』

セーラ「ま、それはチームの方針やからなぁ」

怜『でもインハイは例年通りの先鋒やって思っててんけどな、
  そやから私は先鋒なんやし』

セーラ「すまんな、先鋒は照がお相手するで」

怜『宮永さん怖いわぁ』

セーラ「そんな化け物みたいに言うたら怒りよんで」

照「誰が化け物だって?」

セーラ「あわわっ!ちゃうで、そういう意味ちゃうで!」

怜『セーラ?どしたん?』

セーラ「いや、照が隣にな…」

照「いつもの園城寺さん?」

セーラ「そや、先鋒やから照と当たるでーって」

照「そうなんだ」

竜華『おーいセーラ~』

セーラ「す、すまん。ちょっと照と喋ってたわ」

怜『ほな、そろそろ切るな』

セーラ「あぁ、悪いな。今日はありがとう」

怜『明日は私らを応援してや?』

セーラ「当たり前や、そやないと全国で戦えへんしな」

竜華『セーラ、次は全国でな』

セーラ「おう、ほな」

怜『またな、バイバイ』


プツッ

菫「園城寺さんといえば身体の方はもういいのか?」

セーラ「うん、それでインハイも先鋒やって。千里山で言えば、エースやな」

菫「ほう、そうなのか」

照「春の大会はすごかった、あのリーチ一発…」

淡「おんじょーじさんて誰?」

尭深「千里山女子のエースの人だよ、江口先輩の友達なの」

淡「へぇ、可愛い?」

セーラ「なんやその質問はー」

菫「個人的には可愛らしい子だなぁという印象だが」

照「色白さんだよね」

セーラ「まあ、可愛い子やで。ちょっと病弱やけどな」

淡「ふーん、そうなんだ」

菫「そういえば、春の大会でなぜか先鋒をやらされた私としては
  園城寺さんとの試合は本当に悔しい試合だったよ」

セーラ「弘世は思いっきり削られてたからなー」

照「ま、菫も他校を狙い打ちしてたけどね」

菫「苦しい試合だった。まあ照なら大丈夫だとは思うが」

セーラ「俺も戦ってみたかったけどな、しゃーないわ」

照「…ん、頑張るよ」

照「……頑張る、うん」




セーラ「……(やっぱりちょっと様子がおかしいっちゅうかなんちゅうか)」

翌日、練習後、菫の家、菫の部屋


セーラ「ここに来るんは久しぶりやで~」クンクン

菫「こら、勝手に触るな嗅ぐな気持ち悪い」

セーラ「え、最後のめっちゃひどない!?
    …しっかし、相変わらずの整理整頓ぶりやな」

菫「こう、整っていないと落ち着かないんだよ」

セーラ「俺の部屋なんか」

菫「いい、言わなくていい。容易に想像できる」

セーラ「くっ、…まあええわ…そんで、照のことやんな?」

菫「そうだ…あの、長野の清澄高校…」

セーラ「宮永咲、やったっけ。昨日、帰ってからネットで長野大会の
    写真を探してみたんやけど名前どころか顔までそっくりやったで」

菫「あぁ、私も見たよ。あれはどう考えても他人じゃない」

セーラ「そうやんなぁ、昨日のあの態度も明らかに変やったし」

菫「で、お前は何で妹だと?」

セーラ「1年のときやったと思うねんけど、いつも家族で打ってたって
    照が言ってたやん?で、弘世が『両親とサンマか』って聞いたら」

菫「そんなこと聞いたか?」

セーラ「おう、聞いてた。でな、そのときに照が「いも…サンマしてた」
    って言うのを俺すぐ近くで聞いてたんよ」

菫「いかんな、全く覚えがない…」

セーラ「健忘症かいな」

菫「うるさい」バシッ

セーラ「い、痛いなぁ!弘世はでかいねんから手加減せーよ!」

菫「でかいって言うな!これでもそれなりに気にしてるんだよ!」

セーラ「はいはい、すまんすまん。背が高いので手加減してくださ~い」

菫「う、うん…ごめん」シュン

セーラ「…ゴホン、ほんでな、いも…って妹しかおらんやろ?」

菫「いもといえば…芋掘り…いやなんでもない」

セーラ「…よし、スルーでええか」

菫「ぜひそれでお願いします」

セーラ「で、まあ、話の流れとして、妹がおるんちゃうかなぁと」

菫「…うむ、確かに照と妹さんとご両親で麻雀をやっていた、
  という方が自然のような気もするな」

セーラ「でも照は誤魔化してるし聞いて欲しくないんやろなぁって
    そう思ってずっと黙っててんけど…」

菫「その妹さんがインハイに出てくるとはな…照が動揺しなければいいが」

セーラ「昨日の時点で動揺してるように見えたよな…」

菫「そうだな…しかし、なぜ妹の存在を隠す必要があるんだ」

セーラ「それ昨日からずっと考えてるねんけどわからんわ」

菫「あいつの家はお母さんと二人だろ?何か事情があるんだろうな」

セーラ「それを俺らが聞くのもなぁ…うっかり地雷ってこともあるで?」

菫「それは勘弁して欲しいな…放っておくしかないのか」

セーラ「あいつが妹はおらん、関係ないって言う以上はなぁ」

菫「うーん…」

セーラ「ん~…」

菫「まあ、とにかく様子を見るか」

セーラ「せやな、もし照に何かあったらその時に聞けばええんちゃう?」

菫「あぁ、そうしよう。何もわからない以上、下手に動かないほうがいいからな」

セーラ「おう、決まりやな」

菫「よし、じゃあ話も終わったことだし帰れ」

セーラ「えぇ、なんでやのーせっかく二人きりなんやからー」

菫「だからなんだよ」

セーラ「愛の語らいとかどうや?」ドヤァ

菫「断る」

セーラ「つまらんなぁ」

菫「あ、そうだ、千里山どうなった?」

セーラ「お、そうやった…ん、時間的に大将戦始まったとこくらいちゃうかな」

菫「そうか、じゃあもう少しかかるな」

セーラ「ほな、ここで待つー!」

バーン!!

菫「お、おい!人のベッドに寝転ぶな!」

セーラ「お前と俺の仲やろ?」

菫「誰かが聞いたら勘違いするようなことを言うな」

セーラ「ええやんかーええやんかー」

ゴロゴロ

菫「早くそこをどきなさい」グイッ

セーラ「嫌やー」

菫「はぁもう…向こうの試合が終わる頃ってもう寮の門限だろ」

セーラ「ん、そやな」

菫「じゃあ、自分の部屋で待ってろよ」

セーラ「弘世は俺のこと好きなくせにそうやって冷たくするよなー」

菫「なっ!誰がいつお前を好きだと言ったんだよ!」

セーラ「あれ?いつやっけ?」

菫「存在しない記憶を辿っても意味ないぞ」

セーラ「まぁまぁええやろ~…ちょっと眠いねん…」

菫「ならせめてベッドの下で寝ろ…っておい江口」ユサユサ

セーラ「…スー…スー」zzz



菫「どうしてこうなった…?」ハァ

しばらくして…


セーラ「ふわぁ~よく寝た~」

菫「人のベッドの上でな」

セーラ「寮のベッドより柔らかくて快眠やったで、ありがと」

菫「どういたしまして、全くもう」

セーラ「…ほな、マジで門限ヤバイし帰るわー」

菫「はいはい」

セーラ「弘世…俺の顔に悪戯とかしてへんやろな?」

菫「す、するわけないだろ!お前とは違うんだよ!」アセッ

セーラ「鏡、鏡っと…よし、大丈夫や」

菫「するわけないって言ってるだろ」

セーラ「ほな、今日はありがと。照のことやけど、」

菫「放っておくんだろ?」

セーラ「あぁ、うん…ほな、また明日」

菫「また明日」


ガチャリ

バタン

菫「……はぁ、あいつはいつも自由というかなんというか」

菫「そういえばあいつの寝顔なんて久しぶりに見たな…」

菫「寝てれば静かなんだがなぁ」

菫「…寝顔も、まあ、結構かわい…い、いや私は一体なにを考えて…」


菫「ダメだ、…今日はちょっとおかしい、それだけだ…」

インターハイ、2回戦終了後、ホテル、照とセーラの部屋


セーラ「おーし!次は千里山やで~!」

淡「セーラ燃えてるねぇ」

セーラ「あったりまえやろ~」

菫「わかったから落ち着け」

照「ふふ、セーラ、私からも言うけど、落ち着こうよ?」クスクス

セーラ「お、おうすまん」


セーラ「(照はあれから何の変化もない。いつも通りの、照)」

セーラ「(清澄と聞いてもなんの反応もせーへんし、
     気にしてないというか気にもしてないというか)」

セーラ「(せやから弘世と、ほんまに家族じゃないんちゃうかって
     話をしてたくらい…やけど、俺はどうしても気になる)」

セーラ「(…その清澄と当たるのは決勝までお預けや…。
     それに姫松もあっちのブロックやしな…揃って決勝に出てこいや)」

尭深「でも、中堅は先輩のお友達じゃないんですよね?」

セーラ「せやねん、中堅は荒川っちゅう…まあヤバイやつや」

菫「ミドルで江口が凹られた相手な」

セーラ「くぅ、うっさいなぁ」

照「あぁ、そういえば昨日言ってたっけ。昔は手も足も出なかったんでしょ?」

セーラ「照まで…ま、まあな…」

淡「大丈夫だよ、セーラ。セーラは強いもん!」

セーラ「ん、頑張るでー…弘世、牌譜見してー」

菫「ほら、これだ」バサッ

セーラ「ふむ…」ペラッ

淡「ね、セーラ、私の相手はどんな子?」

セーラ「竜華か?竜華は、最高状態やとちと厄介やで」

照「なにそれかっこいい」

セーラ「最高状態っちゅーんは…」






セーラ「わかったか?」

淡「ほぉ~すんごい人がいるもんだね」

セーラ「ここぞってところでしか使わへんし、厄介なんや」

菫「よし、じゃあ各校のまとめに入るか」

尭深「はい」ズズッ

淡「はーい」

照「じゃ、先鋒からね。まず今日戦った新道寺は…」

セーラ「(和やかな雰囲気やけど、ピリっと引き締まった緊張感もある)」

セーラ「(これが、俺の目指してた形や…)」


セーラ「(よっしゃ、気合入れよか~!!)」

インハイ準決勝、先鋒戦終了後


セーラ「怜ぃ!」ダッ


バタバタ

タッタッタッタ


菫「おい江口!相手校のお前が行ってどうす…無駄か」

淡「セーラの友達だもん仕方ないよー」

尭深「江口先輩ずっと辛そうな顔してました」

菫「親友二人が死闘を繰り広げてたら…な」

淡「照は容赦ないからね~。ま、そんなことしたら失礼だし」

菫「しかし阿知賀には驚かされる」

尭深「ドラ切り…ですよね」

淡「照の顔見た?超びっくりしてたよねー」

菫「ギリギリ驚いてるってわかる程度の変化しかなかったがな、あいつの表情」

尭深「…さすがに、ちょっとはわかりました」

菫「まあ、これだけ稼いでもらえればあとはある程度余裕が持てる」

淡「残り1000点でも私が何とかするよ~」

尭深「淡ちゃんはホントに何とかしてくれそう…」ズズッ

淡「えっへん!」

菫「…たくましいな、お前は」

インハイ会場、ロビー


セーラ「怜っ!!」

竜華「セーラ…!」

怜「はは、大丈夫、大げさなだけやで?」

セーラ「…そうか、ほなよかった」ホッ

怜「でも、ちょっと病院行ってくるわ」

セーラ「おう…」

タンカ ゴロゴロゴロゴロ

竜華「セーラ、…今は敵同士なんやしはよ控え室戻ったほうがええよ」

セーラ「…ん、わかってる」

竜華「試合が終わるまでは怜のことは忘れた方が」

セーラ「わかった、わかった…竜華は一緒に病院やろ?」

竜華「うん」

セーラ「じゃあ、またな」

竜華「ん、また」

タッタッタッタ

竜華「うち病院付いて行きますー!!」

照「…セーラ」

セーラ「照…お疲れ。大勝利やな」

照「うん、でも…」

セーラ「怜はちょっと無理してしもたんや」

照「…なんか、ごめん」

セーラ「照が謝るんはおかしい。謝らんでええ、怜も望んでないと思うで」

照「うん…」

セーラ「白糸台は好調な滑り出し、照は頑張った、それでええ」

照「う、うん…。でも最後に阿知賀に直撃受けちゃった」

セーラ「まあそうこともあるやろ、そのほうが人間らしいで?」ニヤッ

照「ロボットか、なんか淡が言ってたね」クスクス

セーラ「せやせや、よし、ほな弘世の応援に戻るかー」

照「ん、戻ろう…あ、お菓子でも買って行こう」

セーラ「おーええなぁ~。で、オレンジジュースか?」

照「そ、そうだよ、い、いいでしょ//」

セーラ「照は可愛いなぁ」ニヤニヤ

照「もう、セーラ~!//」



セーラ「(怜は大丈夫、大丈夫や…俺はチームのことを考えへんとな。
     こんな辛気臭い顔してたらあかん…!)」

ふう、書き込めたー

すぐさるさんになっちゃうので寝ます
スレが残ってれば明日お昼頃に来ます


支援ありがとうございました、おやすみなさい

おはよー

あんま時間ないからサクサクいくよー

準決勝次鋒戦、対局中


シャープシュート!!!


セーラ「おー、弘世は相変わらず凛々しいのぉ」

淡「菫は人気者だよねー」

尭深「ファンクラブあります…」

照「え、私にはないの?」

尭深「…ないですね」

照「うぅ…軽くショック」

セーラ「俺もないから、一緒やで、照」

淡「セーラのはあるよ?」

セーラ「いやいやないって」

淡「私が今作った~。江口セーラファンクラブ!会員番号1番、大星淡です!」

セーラ「…勝手にやっとれ」

照「えーずるい、淡、私のも作って」

淡「やだーセーラだけー」

照「尭深ー」

尭深「…すいません、私弘世先輩の方に入ってるので」ズズッ

尭深「あ、本人には内緒で…」

照「え、そ、そうなの…」

セーラ「マジかい!尭深はあの堅物が好きなんかー」

尭深「…カッコイイから//」

淡「尭深照れてる~可愛い~!」

尭深「や、やめてよ淡ちゃん//」

照「……一気につまらなくなってきた」

セーラ「おいおい、自分が終わったからって飽きるなよー」

淡「そうだよーまだまだ長いよー」

照「うぅ…悔しい」

準決勝中堅戦、開始前、控え室


菫「すまん、ちょっと減らした…」

セーラ「ま、様子見ならあんなもんやろ。気にすんな」

照「そうだよ、気にしないで」

淡「私が何点でも取り返してあげるから!」

セーラ「おお、えらいな淡!でもその前に俺が取り返してくるわ」

尭深「頑張ってください!」

セーラ「ん、気合も十分やし、やったるで~」

淡「セーラ頑張れー!」

照「油断しないでね」

菫「とりあえず阿知賀の鳴きは要注意だからな」

セーラ「おう!ほな、行って来ます!」ダッ

菫「はい、止まれ、ストップ江口」グイッ

照「セーラ、いつものあれのお時間です」

淡「乙女モード~♪」

尭深「急いでくださいね」

セーラ「えぇ…もうええやんかー」

菫「ダメだ、早くしろ」

照「あと2試合しかないんだから我慢してね、セーラ」

セーラ「個人戦もあるやん…」ブツブツ

菫「急げ!!」

セーラ「わ、わかった!!もう!」

ガサガサゴソゴソ

セーラ「詐欺やでこんなんもう…」ブツブツ

菫「3年間同じことばっかり言っててよく飽きないな」

照「でも毎回面白くて和んでるよ」クスクス

セーラ「ほら!着替えたで!」

淡「おーセーラは相変わらず可愛いねぇ~♪」

尭深「あの、似合ってます」

照「ふふ、セーラはその制服似合うんだけどなあ」

菫「ほら、モジモジするな、しゃんとしろ」

セーラ「うぅ…行って来ます!!」


ガチャリ

タッタッタッタッタ


尭深「…照れてて可愛い」

淡「だよねー!照れてるセーラが一番可愛いんだ~♪」

照「うん、セーラは可愛い」



菫「…(セーラは可愛い、ねぇ)」

インハイ準決勝、大将戦、試合開始前、対局室前


竜華「…セーラ?ここで何してるん?」

セーラ「うちのお姫様、いや、大将さんがエスコートしてーって
    言うもんやから一緒に来たとこや」

竜華「そうなん…」

セーラ「んな辛気臭い顔すんな、竜華」

竜華「…わかってるねんけど、難しいわ」

セーラ「俺は、竜華に思いっきりやって欲しいで」

竜華「うちを応援してどうすんの。そのお姫様を応援しぃや」

セーラ「でも1年のときのインハイ、お前ら俺にメールくれたやろ」

竜華「あぁ…そうやったっけ?」

セーラ「対戦相手校やったのに、俺を応援するって書いててくれたやろ?
    あれ見てやっぱり友達ってええなぁって思ったんよ」

竜華「…うん」

セーラ「そやから今度は俺の番や。竜華、お前を応援するで」

竜華「あかんて、それは…」

セーラ「…と、言うと思ったから白糸台の次に応援するわ」

セーラ「怜の時もそうしてたんやで」

竜華「…ありがとう、セーラはいつでも優しいな」

セーラ「勝負の世界ではそんなん甘い考えやと怒られるかもしれん」

セーラ「でも、…俺は怜や竜華の活躍がチームメイトが
    活躍するのと同じくらい嬉しいねん」

セーラ「敵やってわかってても、そう思ってしまうねん
    それはもうしゃーないやろ?俺の気持ちはどうしようもないんや」
    
竜華「…ありがとうな、ほんま」

セーラ「ほな、行って来い」

竜華「ん…一緒に決勝が理想やな」

セーラ「うん」

竜華「行ってくる」


テクテクテク

バタン



セーラ「…頑張れ淡、頑張れ竜華」


準決勝終了後、怜の病室


怜「ごめんな、わざわざありがとう…
  セーラ…あとチャンピオンと弘世さんも」

セーラ「気にすんな、弘世も照も来たがってたんや」

照「あの、えっと…」

怜「謝ったら怒るで?私なにも怒ってへんし」

照「でもっ」

竜華「宮永さん、怜もああ言うてるし」

照「う、うん…じゃあ、あの、今日はお疲れ様」ニコッ

怜「ありがとう、チャンピオン」

菫「思っていたよりも元気そうでよかった」

怜「弘世さんありがと。おしゃべりするんは春の大会以来やな」

菫「あぁ、そうだな」

セーラ「弘世はな、怜のリーチ一発がトラウマやねん」クスクス

菫「う、うるさい江口!」バシッ

セーラ「い、痛いやろー!お前手がでかいねんっ!」

菫「で、でかいって言うなって言っただろ!」

怜「あははっ、ふはは、おもろいなぁ、この二人」クスクス

照「いつも、こういう感じ」クスクス

竜華「セーラが楽しそうで何よりやわ~」ケラケラ

菫「わ、私は楽しくないぞ」

セーラ「こいつはな、いっつもそうやねん。
    俺のこと気になって気になってしゃーないみたいやで」ニヤニヤ

菫「だ、誰がだよ!いい加減にしろ、調子に乗るな!」バシッ

セーラ「あぁまた痛いッ!」

照「もう、そのへんにしときなよー病室なんだからさー」

菫「うっ…す、すみません」シュン

セーラ「おぉ、ごめんな、怜…」シュン

怜「ええねんええねん、おもろいから気にせんとってー」ケラケラ

怜「そやけどよかったわぁ、決勝に行けて」

セーラ「怜、出れるんか?」

怜「大丈夫、今度は負けへんでーチャンピ、いや、宮永さん」

照「万全で望んでくれ、私も万全で迎え撃つ」

怜「おぉ、怖いなぁ」

竜華「怜無理したらあかんよ…」

セーラ「竜華が心配そうに見つめている、って感じやで怜」

怜「大丈夫やって、竜華。明日には退院なんやし」

竜華「でもまた倒れたら…」

怜「せっかくの決勝に出れへんかったら一生悔やむと思うから」

菫「…ま、とにかく身体が一番大切だ」

怜「うん、ありがとうな弘世さん」

セーラ「怜が出てくれたら俺は嬉しいで」

怜「セーラもありがとう」

竜華「…あかんって言うても無駄やんな」

怜「絶対出る」

竜華「わかった…ほな、絶対優勝するで?」

怜「おぉ、当たり前やんかー」

セーラ「そう簡単に優勝させるかい!」

照「楽しみにしてる」

菫「こちらとしても3連覇がかかっているのでな」

怜「…ほな、決勝でな」

セーラ「おう」

照「うん」

菫「あぁ」


竜華「…決勝で、な」

インハイ、Bブロック準決勝、終了後、ホテルの部屋


セーラ「Bブロックは清澄と姫松かー」

セーラ「これであのアホと直接戦えるわ~、やっとや~」

照「念願が叶ったね、私も少し楽しみ」

菫「うむ、愛宕とはミドル以来だからな…江口、私も楽しみだよ」

淡「おぉ、ライバルさんだねぇ~♪セーラ輝いてるねぇ~♪」

セーラ「任せとけよ~俺は準決勝で荒川には稼ぎ負けたけど
    あのアホには絶対勝てる!」

尭深「でも、えっと、江口先輩には申し訳ないですが、
   姫松が1位通過というのは少し意外でした」

淡「うんうん、姫松の大将さんこわー」

照「確かに今までとはちょっと違う感じだったね」

菫「あぁ、それも気になるが…私はやっぱり清澄が…」

セーラ「…なぁ、照…この宮永咲って」

照「私はこの人のことは知らない。名字が一緒なだけだよ」

淡「そうなんだー珍しいこともあるんだねー」

菫「…ゴホン、嶺上開花の責任払いが相当効いてるな、この子は」

淡「こっちも怖いなぁ」

尭深「淡ちゃんも他の学校の人が見たら怖いような…」

セーラ「そうやで淡、お前も大概恐ろしいわー」

淡「えへへ、褒められちゃったー」

菫「褒められてないように思うんだが…まあいいか」

照「…淡、気をつけてね」

淡「うん、セーラみたいに、気合入れて頑張るよー!」

セーラ「よし、それでええ!」

菫「気合もいいが、牌譜もちゃんと頭に入れておけよ」

淡「あぁーそういうのほんと苦手なんだよなぁ」

照「淡、マジメにやらないとまた怒るよ。
  準決勝での小言でも言おうか?」

淡「あ、も、もうそれはいっぱい聞きましたー!
  ちゃんとします!牌譜、菫、牌譜見せて!」

菫「えっと、こっちが姫松でこっちが清澄だ」バサバサ

淡「お、多い…で、でも頑張っちゃうよー!」

照「ん、それでいい」

セーラ「照は淡に対してはきっついなぁ」

照「セーラが少し甘いんだよ」

菫「おっと、そのへんで止めておけ」

照「わかってるよ、冗談だよ」クスクス

セーラ「そやそや、俺も冗談やしなぁ」クスクス

菫「お前らの冗談はいまいちわかりにくいんだよ」

照「ふふ、セーラのノリに合わせるの楽しいよ」

セーラ「俺もやで~」

尭深「あ、あの、それでビデオ見ないんですか?」

照「お、おっとごめん。見よう」

菫「よし、じゃあえっと…」ポチッ

セーラ「(牌譜とビデオと睨めっこしていろいろ話し合いをして、
     俺らは翌日の決勝戦に向けて準備を進めた)」


セーラ「(なんだかんだで去年は先輩が仕切ってくれてたけど
     自分達が主導でやるのは結構難しい。ま、それも今日で終わりやけどな)」


セーラ「(そんで結局照は、やっぱり清澄に関しても宮永咲に関しても
     特に何も言わへんかったし、あくまで知らないと言いつづけてた)」

出掛けるのでとりあえずここまで…
まだもう少しありますのでスレが残ってれば21時くらいに来ます
ただ完結まで書きあがってないので落ちてたら完結させてからスレ立てしまっすね

あと、昨晩は保守ありがとうございました

では

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom