P「……奴が、出た」(103)

P「俺の目の前を横切っていった……間違いない、あれは……」

P「皆にも知らせるべきだろうか?……いや、それではただ混乱させるだけだ」

P「気付かれて騒がれる前に、俺が手を打たないと……」





P「小鳥さん、俺、ちょっと買い物に出てきます」

小鳥「はーい」

真「うーん」

雪歩「どうしたの?真ちゃん」

真「ふと思ったんだけど、ウチの事務所ってさ」

雪歩「うん」

真「汚いよね。かなり」

雪歩「うん」

真「亜美達が食べたお菓子の屑とか、そのまんまだしさ。これって相当じゃない?」

雪歩「……あ、そっちの意味だったんだ」

真「えっ?」

雪歩「確かに、いつも使ってる場所にしては、ちょっと目に余るかも」

真「食べたら食べたままにして仕事に出ちゃって、片付けないんだよなー、あいつら」

雪歩「そう言えばやよいちゃんが昨日、徹底的に掃除しますって言ってたような……」

真「あっ、そうなんだ」

雪歩「うん」

真「ふーん……丁度暇だし、だったらボクも手伝っちゃおうかなー」ガサガサ

雪歩「あ、それじゃ私、ゴミ袋持ってくるね」

真「あぁ、頼むよ雪……」


カサカサ


真「……………」

雪歩「?……どうしたの、真ちゃ」



キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

律子「な、何?」

小鳥「い、今の悲鳴はっ……?」ガタッ

亜美「キャアー、だって!すっごい女の子的悲鳴だねぇ」

真美「少なくともりっちゃんやピヨちゃんでないことは確かだね」

亜美「だね」

律子「…」

小鳥「…」



真「あばばばばば………」ガタガタ

雪歩「ま、真ちゃん……!?」

真「あ、ああ、あ……アイツが……で、でで、で……」ガタガタ

雪歩「あ、アイツって……!?」

亜美「まこちん、完全に腰抜けてるね」

真美「珍しい光景ですなぁ」

律子「さっき叫んだのは、真?……一体何がどうしたのよ?」

真「くく、く、黒くてっ!カッサカサしててっ!う、ううう動いてたんだよぉ!」ガクガク

律子「……はぁ?」

小鳥「も、もしかして……」


カサカサ


雪歩「!?」

律子「っ……!?」

真「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!でで、で、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

カサカサカサ

雪歩「あ、あわわわわ……」

亜美「……すっごい足早いよ、アレ」

真美「でも止まる時はピタッと止まるんだね、アレ」

律子「何で冷静に分析してんのよ……小鳥さん、殺虫剤か何かあります?」

小鳥「え、えぇっと……無い、かも」


カサカサカサ


真「こ、こここっちにくるぅぅぅぅぅっ!!」

亜美「んっふっふ~……そんじゃ、ここは亜美達の出番だね!」チャキッ

真美「E・D・F!E・D・F!」チャキッ

律子「……は?」

真美「撃て!撃て!全弾撃ち尽くせ!」パンパンパン

スカッ スカッ スカッ

カサカサカサ

亜美「オォーイェー!フゥーッ!!」タンタンタン

スカッ スカッ


ブチュ


小鳥「うわ……」

雪歩「ひっ……!」

亜美「ッハー!地底に戻りやがれ!」

律子「待たんかコラァ!!」

律子「いきなり何してくれちゃってんの、あんた達は!?」

亜美「何してって、BB弾詰めたエアガンでローカストを……」

律子「飛び散ったアレを誰が掃除すんのよ、誰がっ!!」

小鳥「(最近の子は荒んでるわ……)」


カサカサカサ


真美「あっ!もう一匹いるよ、亜美!」

亜美「っしゃ!飛ばしていこうぜぃ」ジャカッ

律子「ちょっと、人の話を……!」

亜美「真美、そっちに行ったよ!」

真美「亜美、向こうに回って!」


カサカサカサ


亜美「シャイン!アクア!イリュージョン!!」

真美「ティロ!フィナーレ!!」


ガチャッ


伊織「騒々しいわね……一体何騒いd」

ビシッ ビシッ

伊織「」

伊織「グスッ……」ヒリヒリ

「「す、すんませんっしたぁー!」」ドゲザァ



伊織「で?アレが出たって、一体何の話なのよ」

雪歩「えぇっと……」

真「あ……あぁっ……!」ガタガタ

伊織「な、何?」

小鳥「!……い、伊織ちゃん、今動いちゃダメよ!」

律子「……雪歩。そこの新聞紙、取ってくれる?」

雪歩「は、はいっ!」

伊織「な、何よ……ちょっと!説明しなさいよ!」

律子「伊織……絶対に動かないで。分かった?」

伊織「い、一体何する気……!?」

律子「……ていっ!」


バサッ

カサカサカサ


伊織「」

律子「髪にくっ付いてたのよ……アレが」

伊織「い……い、い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

カサカサカサ

小鳥「な、何か叩けるもの……何か叩けるものを……!」

律子「と、とりあえず、トイレットペーパーか何かで、アレの死骸もちゃんと片付けないと」

真美「ま、真美が持ってくるよ……!」タタタ

亜美「……ノリで殺ってしまったとはいえ、流石にグロ過ぎるね」

真「……うっぷ」

雪歩「真ちゃん!?こ、ここで吐いちゃダメだよ!?」



伊織「……てやる……」ワナワナ

小鳥「……い、伊織、ちゃん?」

伊織「……ブッ潰してやるっ!!」バッ

カサカサカサ

伊織「死ねっ!死ねっ死ねっ死ねぇっ!!」バシッバシッバシッ

亜美「い、いおりん?そんなやみくもに狙ってもダメ……」


ブチャ


小鳥「……あっ」

伊織「フン、私から逃げられるとでも思った!?」

雪歩「す、すごい……」

カサカサカサ

伊織「もう一匹ィ……!」

バシッ バシッ バシッ

カサカサカサ

雪歩「あっ……律子さん、避けて!」

律子「へっ!?」


ブーン


亜美「と、飛んだぁっ!?」

小鳥「か、顔に向かって……!」

律子「ふぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

律子「破ッ!」

亜美「気合いだけで」

真美「バラバラに……」

カサカサカサ

律子「」バタリ

亜美「り……律っちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

真美「律っちゃんが、律っちゃんがやられたのっ!?」


ガチャッ


P「ただ今帰り……うおっ!ど、どうしたんだ律子!」

真「ぷ、ぷろでゅうさぁぁぁぁ!!」ダキッ

P「お、おい、真!?」

ピローン

小鳥「もうっ!こんな時にどこ行ってたんですか、プロデューサーさん!!」

P「この状況は……そうか、遅かったか」

雪歩「黒くって、カサカサしたのが、色んなトコからっ……!」

P「分かってる。そのために買い出しに行ってたんだ」ドサッ

小鳥「こ、これは……!」

P「ホイホイ系にスプレー系、煙が出る奴まで一通り揃えてきました」

真美「おぉー!これがあれば百人力だよ!さっすが兄ちゃん!」

亜美「亜美は凍らすタイプがいい!」

小鳥「プロデューサーさん……!」

P「えぇ……ここから、反撃開始ですよ!」


ブシュウウウウウウウ


P「えっ」

ブシュウウウウウウウ

小鳥「も、ものすごい勢いで煙が……」

P「ちょっ……伊織、お前何して……」

伊織「何って、もったいぶらずに一番強力な奴を使えばいいじゃない」

P「ば、バカッ!それは完全に閉め切ってから使う最終兵器なんだよ!」

雪歩「ど、どうしましょう!?」

P「と、とりあえずお前ら、外に出ろ!早く!」

亜美「律っちゃんはどうすんの!?」

P「俺が何とかする!」

千早「本当にあの事務所の掃除、やる気なの?」

やよい「はい、今日こそ徹底的にやりますよー」

春香「洗剤も買ったし、これだけあれば十分ね」

千早「……何も高槻さんが率先してやる必要は、ないと思うのだけれど」

春香「そりゃまぁ、主に汚くしてるのは真美達だけどさ……」

やよい「でも私達だって事務所使ってますし、お互い様かなーって」

千早「高槻さん……」



春香「!……ち、千早ちゃん!あれ……!!」

千早「?どうしたの、春……」


モクモクモクモク


千早「」

やよい「じ、事務所が……火事……!?」

千早「う、嘘でしょう!?……まさか、そんな……!」

春香「……ミネラルウォーター買ってたよね、千早ちゃん」ガサガサ

千早「え、ええ……確か2リットル分の……」


キュポッ

ジャバジャバジャバジャバ


春香「………」ビチョビチョ

やよい「は、春香さん!?」

千早「あ、あなた、何をして……!?」

春香「これなら炎に巻かれても多少は大丈夫だから!行ってくるね!!」ダッ

千早「ちょ……ま、待ちなさい、春香っ!」

モクモクモクモク

亜美「何かすっごいね、煙……中から漏れ出してるよ」

小鳥「えっと……窓は、確か……」

雪歩「ぜ、全開だったと思います……」

真美「……今頃外は大騒ぎだよね、これ」

P「……ご近所さんにも事前に説明しとかなきゃならんもんなのに……」

伊織「あ、あんたがあんなもん買ってくるからいけないんじゃない!」

律子「んっ……」

P「……お、気が付いたか」

律子「あ、あれ……私、何で……」

P「よぉ」

律子「ぷ、プロデューサー!?」

P「大丈夫か?」

律子「だ、大丈夫ですから!は、はは早く降ろしてくださいっ!!」





春香「プロデューサーさーん!」ビチャビチャ

P「春香!?」

春香「はぁ、はぁ……ぶ、無事だったんですね!」ビチャビチャ

P「……お、お前、何でびしょ濡れなんだ?」

春香「それはもちろん、皆を助けに……あれ?」ビチャビチャ

春香「……っくしょんっ!!」

春香「うー……」ブルブル

雪歩「はい、お茶……熱いから、気をつけてね」

春香「あ、ありがと……」ズズー



千早「まったく……この時期に水を頭からかぶるなんて流石に無茶よ、春香」

春香「だ、だって、事務所が火事だと思って……っくしゅんっ!」

真「……そういえば、プロデューサーは?」

亜美「兄ちゃんは外でピヨちゃんと律っちゃん二人と一緒に平謝りの最中だよ」

真美「消防車も来てたっぽいしね……」

やよい「やっぱりお掃除って、大事ですねー」

真「まったくだよ、もう……」

伊織「そう言えばメチャクチャビビってたわね、あんたって」

亜美「兄ちゃんにも泣いて抱きついてましたなぁ……そうだろう、真美隊員?」

真「なっ……!」

真美「んっふっふ~……ブァッチリ撮っておきましたぜ、亜美隊員」

真「な、何勝手に撮ってるんだよっ!!」

雪歩「あ、後でメールで送ってね、真美ちゃん」

真「だ、ダメだからなぁ!絶対ダーメー!!」

千早「……ちょっと、いいかしら」

春香「どうしたの?千早ちゃん」ズズー

千早「私物のファイルが見つからなくて……」

やよい「何処においてたんですか?」

千早「プロデューサーのデスクの上、だったと思うのだけれど」

雪歩「それなら確か、伊織ちゃんがアレを叩くのに持ちだして……」

千早「そう、アレを叩くのに持ち出……えぇっ!?」

伊織「こ、これ……あんたのだったの?」

千早「か、返してっ!それは楽譜を綴じてるファイルなのよ!」バッ

伊織「あっ!ちょっと……!」

真美「ね、ねぇ亜美、あれって確か……」


ヌ チ ャ ァ ...


千早「」

亜美「うん。ブァッチリ叩き潰してたね」

千早「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」





おわり

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