番長「現実は甘くなかった」(88)
>みんなで事件を解決したあの頃から十数年…もう俺も二十後半になった。
>ブラックとはいえなんとか事務員として生きながらえているが、やはり精神的にはギリギリだ…。
>…久々にみんなに会いたい。三か月ぶりにとれた今度の休みを使って、稲羽市を訪れてみよう。
某日 稲羽市
>…この町もだいぶ変わったな。
>まずはジュネスにでもいってみよう。
ジュネス八十稲羽店
>ジュネスにやってきた。ここは昔と変わらない…。
>陽介は元気でやっているだろうか。あそこのパートのおばさんに聞いてみよう。
おばさん「花村陽介…ああ、前の前くらいにここの店長だった人の息子さんかしら?」
番長「ま、前の前…?」
おばさん「そうよ、花村店長は転勤で違う場所に移ったみたいね。どこ行ったのかは知らないけど」
おばさん「しょうがないでしょ、雇われ店長なんて全国を転々とするのが宿命なんだから」
番長「……」
>…そうだ、他のみんなのところもあたってみよう。
>近場では…巽屋だな。
巽屋
>……。
>引き戸が閉まっている…それに張り紙もある。
『不況のため閉店』
>……。
>完二……。
>…そ、そうだ。巽屋は天城屋に染物を卸していたはずだ。
>天城屋に行ってみよう…。
天城屋旅館
>……またしても張り紙だ。
『不況のため閉店』
>……。
>雪子……。
>得意先の閉店に伴い、巽屋もやむなく店を閉じたのだろうか…。
>……。
>他には…そうだ、マル久に行ってみよう。
マル久豆腐店
>…またしても閉まっている。
住民「あら、そんなとこ立ってやってるの」
番長「ここは…この豆腐屋は閉店したんですか?」
住民「そうよ。店番のお婆ちゃんが何年か前に亡くなられて…お孫さんがいるらしいけど、お葬式にも来なかったみたいね」
>りせ…。
>くそ…!他には…。
>そうだ、千枝は警官志望だとか聞いたような気が…。
>稲羽署に行ってみよう。
稲羽署
番長「すみません、ここに里中千枝さんという方は勤務していらっしゃいますか」
受付「…!」
>な、なんだ…ものすごい形相で睨まれた…。
受付「…里中巡査は、数年前に自主退職なされました」
番長「えっ?」
受付「失礼ですが…里中巡査のお知り合いの方ですか?」
番長「は、はい…まあ昔の同級というか」
堂島「おい、お前…番長じゃないか。こっちに来てたのか」
番長「叔父さん!」
堂島「ハハ、お前もいっちょ前にヒゲでおしゃれするようになったか」
番長「…叔父さん」
堂島「な、なんだ…急にあらたまって」
番長「千枝は…里中千枝は、ここに努めてるんですか?」
堂島「……!」
番長「…お願いです、教えてください」
堂島「…里中は…」
>叔父さんはバツが悪そうに下を向いた…。
堂島「…里中は、数年前に自主退職したよ」
番長「それは受付の方に聞きました。…ハッキリ言います、何か俺に隠してませんか」
堂島「うっ…それは…」
堂島「…仕方ない。昔の友達だったお前には話さなければならんかな」
堂島「里中は…上司からのセクハラでうつ病になってしまったんだ。それで退職して、精神科に通っているらしい」
番長「!!」
堂島「まあなんだ…言っておくがその上司ってのは俺じゃないぞ」
番長「それは分かってます」
堂島「…里中が入ってきてすぐに目をつけた先輩がいてな。俺も何度も怒鳴って聞かせたんだが…見えないところでセクハラされていたらしい」
堂島「一応だいぶ前に明るみに出て、そいつらは捕まったんだが…少し前にニュースでやってなかったか?カラオケ店で下着姿にさせたり、キスを強要したりだとか…」
番長「…そういえばそんなニュースもあったような」
堂島「ともかく…そういうわけだ。すまんな、こっち来てくれたのに早々にこんな話で…」
番長「いえ…」
>…そうだ、警察といえば…。
番長「叔父さん、直斗は…あの白鐘は今も探偵を続けてるんですか?」
堂島「白鐘は…」
>またしても叔父さんの表情が…。
堂島「白鐘は…お前らと一緒にいた頃を境に、自分が女であることを周りにカミングアウトしていった」
堂島「あいつ自身の服装も女のそれになって、むしろ今までより覇気に満ちていて頼もしかったんだが…」
堂島「なんというか…ご多聞に漏れず、白鐘の奴もセクハラ被害で精神を病んだらしい」
番長「直斗も…ですか」
堂島「ああ。…こういう言い方はあんまり好きじゃないが、なんというか…」
堂島「白鐘の奴が女の服装をするようになってから、男どもの視線が白鐘の胸元に集中してしまってな…仕事もろくに進まなくなってしまった」
番長「……」
堂島「それでそのうち男どもがエスカレートしてしまって…」
番長「…その先は、もういいです」
堂島「…ああ…分かった」
>…もうこの際だ。全員がどうなったのか聞いてみよう。
堂島「…いいのか、本当に話して。多分お前には…かなり辛い内容になると思うが」
番長「はい」
堂島「…分かった。それじゃ話そう…」
俺のシャドウが暴走し始めたどうしてくれる
>>20
IDが女子中学生995年とかなかなかやるな…
だいだらだけは潰れてないような気がする
堂島「まず天城雪子だが…お前も見てきたんなら分かると思うが、天城屋は閉店した」
堂島「あの2011年以降、日本経済も悪化の一途だからな…もう旅行すら満足にできない家庭が多く、天城屋はその煽りを食った」
堂島「そして巽完二…実家の染物屋を継いだはいいが、大得意先の天城屋が閉店したことで経営が回らなくなったようだ」
堂島「あとは…久慈川りせだな。あいつはまた芸能界に戻ったらしい。それで、これはあくまで噂なんだが…
堂島「久慈川は芸能界に戻ったあと、悪名高いプロデューサーに引っかかったらしい。そいつにシャブ中にされてしまって、今はもうひどい有様だとか…」
や、やめるんだぁ…
堂島「実家が潰れた天城と巽はどこぞでアルバイトをしているらしいが…特に巽なんかは厳しいだろうな、男があの歳で就職は…」
番長「……」
堂島「…本当にすまない。聞きたくなんかなかったよな…」
番長「いえ…叔父さんが謝ることじゃありません」
堂島「…そうだ、せっかくだから菜々子に会っていけ」
番長「菜々子!!!??」
堂島「…声がでかい」
番長「…すみません」
堂島「まあいい…菜々子ももう高校生だ。昔のお前と同じくらいだな」
番長「……」
堂島「そんな顔するな、菜々子は昔のままだから」
番長「本当ですか!?」
堂島「ああ。菜々子とは未だにお前の話で盛り上がれるんだ、会ったらきっと喜ぶぞ」
>菜々子…菜々子…!
堂島宅
堂島「おーい菜々子ー、帰ったぞー」
やめろください
菜々子「あっ、おとうさん! お帰りなさーい!」
堂島(おい番長、俺の後ろに隠れてろ)
番長(…?は、はい)
堂島「菜々子、今日はすごいお客さんを連れてきたぞ」
菜々子「すごいお客さん?」
堂島「ああそうだ。そのすごいお客さんとは…」
バッ
堂島「なんと……番長だっ!どうだ菜々子、驚いただろう!」
菜々子「…………」
番長「私だ」
菜々子「お前だったのか」
番長「また騙されたな」
菜々子「全然気が付かなかったぞ」
菜々子「……おにい……ちゃん……?」
菜々子「お兄ちゃん……お兄ちゃんだよね!?」
番長「菜々子……」
番長「ただいま」
菜々子「うん……お帰り、お兄ちゃん……!」
>菜々子が……抱きついてきた。
>そっと抱きしめ返す……。
これは… ヤンデレ化かッ!!
番長「大きくなったな、菜々子。昔とは見違えるようだ」
菜々子「うん、だって約束したから…お兄ちゃんのおよめさんになるって…///」
番長「……」ナデナデ
>菜々子だけは……菜々子だけは……。
>菜々子だけは……やはり……正義だった……。
堂島「どうだ、言った通りだろう」
番長「はい。昔とほとんど変わらない…雰囲気だけが大人びましたね」
堂島「俺の自慢の娘だ、当然さ」
番長「…よかったです。こうしてまた昔の面影がある人と会えて…」
堂島「そんな湿っぽい顔をするな。…さ、今日は久々にすき焼きにでもするか、菜々子」
菜々子「うん!」
堂島「よし、それじゃ久々に三人でジュネスに買い出しに行くか!」
番長「はい!」
ジュネスに向かう車の中
菜々子「ねえお兄ちゃん…お兄ちゃんは今日泊まっていくの?」
番長「…そうだな」
菜々子「お兄ちゃん…また菜々子と一緒に寝てくれる…?」
番長「いいぞ、いつまでだって一緒にいてやる」
菜々子「えへへ……///」
堂島「こらこら、父親がすぐ前にいるんだ。そういう話は避けてくれ」
>……そう言いつつ、叔父さんの口調は明るい。
>ジュネスですき焼きの材料を買って、家に戻った…。
菜々子「すき焼きできたよー!」
堂島「お、やっとできたか」
>三人でコタツを囲んだ…。
>…なんだか涙が…。
>そうだ…みんなで食べるご飯は…こんなにも美味しかったんだ…。
菜々子「ごちそう様でした!それじゃお兄ちゃん、お風呂入ったらお兄ちゃんの部屋に行くね!」
番長「ちょ、その言い方は…!」
堂島「…ったく菜々子のやつ、いちいち俺の心臓に負担をかけやがる。お前も…手ぇ出したら許さんぞ」
番長「はい…」
>みんなの行方は分からないが…こうして菜々子が昔のままでいてくれたのが何よりの救いだ。
>久々の休日…無駄ではなかったようだ…。
終?
番長が何股もしてあんなことや
こんなことされる
SSだと思ってたのは
俺だけじゃないはず
菜々子「あっ・・・はっ♡気持ちいいよぉ!お兄ちゃん!」
番長「くっ・・・!離れてても平気なように今日はいっぱい愛してやるからな!」
みたいな展開は誰も望んでないよね
その同じ頃…
陽介「ハァ…なんでこんなことやってんだろーな俺…」
陽介「シフト表の作成、見切り品の整理、商品の発注、レジの清算…もう飽きてきたな、この仕事も…」
陽介「番長…久々に会いてーな、あいつに…それでまたバカ言い合って、メシでも買い食いして…」
陽介「ハハ…なんで泣いてんだろーな、俺…」
千枝「それじゃお母さん、おやすみ」
バタン
千枝「さてと…カッターカッター」
シュパッ シュパッ シュパッ シュパッ
千枝「…………いつからだっけ…リスカしないと平常心が保てなくなったの…」
千枝「…なんかもう、それすらどうでもいいや…とにかく血を…」
シュパッ シュパッ シュパッ シュパッ
千枝「番長くん…こんなときに番長くんがいてくれたら…」
千枝「はは…なんで泣いてんだろ、あたし…」
雪子「178円…298円…398円…以上合計874円になります…」
客「…あぁ!?おい姉ちゃん、このパン半額って書いてあんだろーがよ!」
雪子「あっ…す、すみません!」
客「ったくよぉ、しっかりしてくれよ!」
雪子「すみません、すみません!」
客「…ちっ、頭きたからもういらねーよこんな商品!」
バタン!
雪子「なんで…私ばっかりこんな目に…」
雪子「…番長くん…久しぶりに番長くんに会いたいな…それでまた、励ましてもらいたい…」
雪子「ふふ…なんで泣いてるんだろ、私…」
完二「へいこちら、特盛牛丼になりやす…」
客「…おい兄ちゃん、店員が客にガンくれるってなぁどういう了見だ?」
完二「いえ…そんなつもりは…」
客「そんなつもりはだと…?その人相でよく言えたもんだな、あぁ!?」
完二「……」ブチッ
客「おい店員さんよぉ、なんとか言ったらどうなんだ!?え!?」
完二「…うるせえんだよクソがああああああああああァァァァァァァァ!!」
ボコッ ドカッ バキッ
数時間後
店長「巽くん、今日限りでクビね」
完二「…はい」
完二「はぁ…またバイトクビになっちまった…」
完二「ハロワ行っても俺が入れそうな求人ねえし…どうすっかな…マジで…」
完二「こんな時こそ番長先輩に相談できたらなぁ…どれだけ頼もしいことか…」
完二「…チッ、なんで泣いてんだよ俺は…!」
りせ「んほおおおおおおおおおおおおおお!!お××ぽきぼちいいいいいいいいいいいいっ!!」
スタッフ「りせちゃんいいよー、そのアヘ顔最高!もうワンシーンお願いね!」
ディレクター「元トップアイドルのAVデビュー…こりゃいい作品が仕上がりそうだ、グヘヘ…」
りせ(ああ……頭の中だけは妙に意識がはっきりする……)
りせ(先輩……ごめんね……りせ、汚れちゃったみたい……)
りせ(会いたいよ……先輩……)
りせ(あはは……なんだかもう……泣きたいな……)
コンコン
直斗祖父「直斗や…いい加減に出てきてくれんか…」
直斗「…………」
直斗祖父「わしは男だからお前の苦しみを理解してやれんが…お前が心配なのは本当じゃ」
直斗祖父「……とりあえず、今日の夕飯は扉の前に置いておくよ……」
直斗「…………もう……嫌だ……」
直斗「男なんてみんな同じ…僕を気持ち悪い目でばっかり見やがって…!」
直斗「でも…番長先輩だけは違う…よね…」
直斗「優しくて…なんでも相談に乗ってくれた先輩…また会いたい…会って話を聞いてもらいたい…」
直斗「ふっ…なんで泣いているんだろう、僕…」
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