モバP「幸と不幸の交差点」 (60)

モバマスSSです。

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今年最後の投稿になりそうです。

P「お疲れさん」

杏「うおおお…久々の休みだ」

P「いや、そんなことはないと思うけど」

杏「杏は週休8日を要求したのに…」

P「ネタで言ってるんだろ?」

杏「半分くらいは本気だよ」

P「一週間は7日しかないぞ?」

杏「いや、そうだけど…分かってるよね?」

P「分かってるって」

杏「ならいいけどさー」

P「どうする明日は起こすか?」

杏「いや、一日中寝てる予定だから起こさなくていいよ」

P「そうか、それじゃ。ゆっくりしろよ」

杏「ん。それじゃ」

杏「さーてと、何しようと誰も言ってこないし、ゲームやろうかなぁ…」

杏「それとも、新しい飴の味見でも…」

杏「うーん悩むねぇ…ぐぅ」スゥ

P「ふぅ…俺は明日も仕事だなぁ」

P「眠い。えーと、明日の予定は…」

P(撮影に、送迎にえーと…どうしようか)

P「ちひろさんに頼まないとキツいかもなぁ」

P「しかし、よく死なないな俺」

コンコン

P「はい。空いてまーす」

周子「やっほー」

卯月「こんばんはー」

夕美「うわー、こんな時間まで働いてたんだ…」

P「ん?お前らどうしたんだ?」

周子「あたしの部屋で遊んでたんだよねー。その時Pさんの声が聞こえてさ」

P「なるほどな」

周子「細かいことはいいじゃん。ご飯食べる?」

卯月「私達がご飯作りますから」

夕美「アイドルのご飯が食べられるなんてお得だねぇPさんは」

P「いや、帰らなくていいのか?」

夕美「えーとね…その後で送ってくれない?」

P「まぁ…いいけど」

周子「はい、決定。それじゃ作ろうか卯月」

卯月「そうだねっ!頑張ります!」

夕美「あたしはなにしようかなー」

P「一緒にテレビでも見るか?」

夕美「え、いいの? それじゃ、そうしようかな」

夕美「ちなみに何見るの?」

P「そうだなー、それじゃ、これにしようか」

夕美「DVD見るの? 映画だと流石にご飯出来ちゃうけど…」

P「大丈夫だよ。そんなに長い番組観る気ないし」

夕美『こ、こんにちは…』

夕美「え、これって…」

P「夕美が初めてテレビ出た時の番組だな」

夕美「うわー…本当?」

P「本当も何も一番夕美が知ってるだろ?」

夕美「いや、そうだけど…」

夕美『つ、つ、次は…』

夕美「す、ストップ!」ピッ

P「まだご飯出来てないぞ」

夕美「そ、そういう問題じゃないでしょうに」カァァ

卯月(私も一緒にテレビを見たいって言ったらあぁなったのかな…)

周子「流石にあたしのはないだろうけどね…」

P「あるぞ? 楓さんと菜々さんが出てたからな」

周子「うぇ!?」

夕美「あ、それ見たいかな。確かいきなり出演したんだよね」

周子「ちょ、ちょっと本当に!?」

卯月「あ、料理出来たよー」

P「美味しいな」

卯月「本当ですか?」

周子「まぁ、当然よね」

夕美「今度何か作るねPさん」

P「あぁ、楽しみにしてるよ」



卯月「そう言えば、杏ちゃんが隣に住んでるんだっけ?」

P「まぁ、正確にはもう少し離れてるけどな。多分物音が聞こえないから寝てるんだろうな」

周子「寝るの早いね…」



P「それじゃ、二人共送っていくよ」

卯月「ありがとうございまーす!」

夕美「あのDVDは封印してね」

P「あぁ、気が向いたら」

周子(ずっと取っておくんだろうなぁ…)

夜中

杏「……ん?」

杏「うわー、寝ちゃったか」

杏「動くの怠いなぁ…。飴取ってー」

杏(あ、そういや、Pさんいないじゃん)

ヒョイ

杏「お、ありがと」

杏(誰かいたっけ? まぁ、いいや)

「……」

杏「誰かいるの?」

杏(どっちでもいっか)

杏「飴でもあげよっか?」

「……」コクッ

杏「面倒だから投げるね」

「……」

杏「あれ、ミスッた? まぁ、いいか」

「……」ツンツン

杏「うん?」チラッ

「……」ジー

杏「ここ、杏の家なんだけど。と言うか、どこから入ったの?」

杏「まぁ、別にいてもいいけど。飴くらいしか食べるものないけど」

「……」コクッ

杏「あ、いいの?ならどうぞ。杏は寝るから」

杏「……」グー



杏「……うわ。もう昼だ。ちょっと杏の周りだけ時間進むの早くない?」

「……」スー

杏「うわー、夢じゃなかったんだ」

杏(杏が言えた義理じゃないけど、随分小さい子だね)

「……」パチ

杏「あ、起きた」

「……」ジー

杏「な、なに…?」

「……頂戴」

杏「これ?」

「……」コクン

杏「まぁ、杏のお気に入りだけどあげるよ」

「……♪」

杏「なるほど。意外とイケる口なんだね」

「……」

杏「まぁ、杏の家にはそれしかないから嫌いでも食べるしかないんだけどね」

ピンポーン

杏「…ん?」

宅急便「こんちわーす」

杏「あぁ、うん。ハンコね」

宅急便「ありがとうございましたー」

杏「おー、ご飯だ。珍しい」

杏「食べる?」

「……」コクン

杏「なら適当にどうぞー」

杏「杏は寝るから」

「……」

夕方

杏「なんだか、ずっと寝てるのって逆に無駄かもね」

「……」クイクイ

杏「なに…?」

「……」ドヤ

杏「杏より家事出来るね…」

杏「杏も食べていい?」

「……」コクン

杏「…美味いね」

「……」ドヤ

杏「そう言えばさー、話せたりするの?」

「…うん」

杏「普通に喋れるんだ」

「…っぽいから」

杏「ん?」

「…喋らない方がいいかなって」

杏「なに言ってんのさ」

「…なんでも」

杏「ふーん。そう言えばなんでここにいるの?」

「知らない…」

杏「あらま。でも、杏のトコより、隣の人の家の方がいいよー」

「…?」

杏「プロデューサーやってるからさ」

「…ここでいい」

杏「ふーん。それならそれでいいけど」

杏「あっ、杏が何かやると思ったら大間違いだからね」

「……?」

杏「無反応も無反応でつまらないな…。ゲームでもしよっと」

ポチ

「……」

杏「そう言えば、どこから来たのさ」

「…分からない」

杏「ふーん。ま。いいけどね。一緒にやる?」

「……」コクン

杏「それじゃ、コントローラ取って、そこに挿して」

杏「まさか、Pさんと周子とやるように置いてあったのが役に立つとはね」

杏「それじゃ、はじめー」

杏「たまにやると楽しいね。もうしばらくはいいけど…」

杏「うぇ、もう明日は仕事じゃん」

杏「寝よっと…」グー

「……」

杏「あ、そう言えば、どうすんの? 杏は寝るからゲームやっててもいいし、寝ててもいいよ」

「……」コク

杏「んじゃ、おやすみ」

翌日

ジリリリリ

杏「うるさいなぁ!」ガバッ

杏「全く…目覚ましなんて設定したっけ?」

杏「そもそも、目覚まし時計なんてあったっけ?」

「……あ」

杏「ん?あ、まだいたんだ。おはよ。もしかして、目覚ましセットした?」

「…うん」

杏「ふぅん。今度からしないでいいよ」

杏「でも、ま。一応、ありがと」

ガチャ

P「お、珍しく早起きだな」

杏「本当に珍しくね」

P「目覚ましの音が聞こえたんだが、まさか杏が?」

杏「いや、違うって、この子がさー」

P「…ん?何言ってるんだ?」

杏「だーかーらー…って、ん?」

P「どうかしたか?」

杏「いや、杏の部屋には杏しかいない?」

P「禅問答か?」

杏「いや、そういうわけじゃないんだけどさ」

杏(あ、これ、見えてない奴だ…)

杏「いや、なんでもないよ。それより、もう仕事なの?」

P「あぁ、昨日携帯に電話が来てな。打ち合わせが入ったんだ」

杏「ふぅん。行ってらっしゃい。てか、そろそろ閉めてよ。寒いんだけど」

P「あ、悪い悪い」

杏「一つ聞きたいんだけどさ」

P「うん」

杏「わざわざ、ここに来たってことは…」

P「そういうことだ。先方が杏を使いたいってさ」

杏「うぇぇ」

P「だから行くぞ」

杏「飴くれたら考える」

P「ほれ。そう言われると思って準備しておいた」

杏「流石だね。あ、もう一個頂戴」

P「なんだ?珍しい」

杏「まぁ、たまにはね」

P「ほれ」

杏「ん。ありがと。それじゃ行こっか」

P「そうだな」

杏「ちょっと先出てて」

P「何かするのか?」

杏「トイレだよ。デリカシーがないなぁ」

P「おぉ、悪い」バタンッ

杏「ほら、これも美味しいからあげる」

「…ありがと」

杏「別に大したことないよ。そんな浴衣みたいな恰好じゃ寒くない?」

杏「なんだったら炬燵の中にでもいたら?」バタンッ

車内

P「しかし、いきなりこんな仕事が入ってくるなんてな」

杏「杏的には、入ってこなくていいんだけどね」

P「まぁ、そう言うなって」

杏「そういや、周子は?」

P「寝てるんじゃないか?」

杏「あっちは特に起こすとかはしないんだね」

P「まぁな」



杏「そう言えば、今これ、どこに向かってるの?」

P「テレビ局だな。ちょっと打ち合わせをしようかと」

杏「ふぅん。着いたら起こして」

P「分かった」

テレビ局

P「起きろ杏」

杏「…ん」

P「とりあえずこれ喰え」

杏「ん。うわ、はっか飴じゃん」

P「目は覚めただろ?」

杏「まぁね」

P「それじゃ、頑張ろうな」

杏「…ま、ほどほどにね」

会議室
P「えぇ、つまりこういうことで――」

杏(あれ、これ杏要らなかったんじゃない?)

「……♪」

杏(いつの間にか、ここにいるし…)

杏(でも、杏以外には見えてないっぽいんだよね)

P「それで、今回は、そちらの案でうちの双葉を――」

車内

P「お疲れ様」

杏「いや、杏は何もしてないんだけど…」

P「顔見せの意味が強かったからな。寝もしなかったし良かったぞ」

杏「いつでもどこでも寝てるわけじゃないからね」

P「そうだとしてもな」



P「そう言えばさ、一つ聞いていいか?」

杏「どうしたの?」

P「俺が話してる時に隣向いてたけどなんかあったか?」

杏「…よく見てるね」

P「まぁ、ちょっと気になってさ」

杏「いや、大した理由はないかな」

P「ならいいが」

事務所

P「おはようございます」

杏「もう、今日はいいよね?」

P「いや、ダメだろ」

ちひろ「おはようございます」

菜々「おはようございまーす」

蘭子「やみのまー」

P「お、おはよう」

凛「……ん? 新しい子?」

P「何がだ?」

凛「いや、別に」

P「それじゃ、俺は菜々さんと蘭子を送っていきますね」

ちひろ「はーい。それじゃ、行ってらっしゃい」

杏「凛さ、もしかしてさ」

凛「多分Pさんとちひろさん以外全員見えてるっぽいよ」

杏「若いからかな」

凛「どうなんだろう…」

卯月「おはようございまーす。あ、誰の妹ですかこの子」

楓「かみのみ…。今日も寒いですね」

「……♪」

凛「二十歳くらいまでは見えるのかな」

杏「今度、菜々さんに試してみよう」

卯月「なるほど…そうなんですね」

杏「うん。そうなんだよね」

楓「…ここら辺にいるんですか?」

凛「楓さん、もうちょっと左かな」

楓「少し落ち込みますね…」シュン

ちひろ「わ、私も見えませんからっ!」

楓「それはそうでしょうけど…」

ちひろ「え、当たり前なんですか」

ピリリリリ

ちひろ「はい。こちらは――」

ちひろ「あ、はい。お世話になっております。え、あ、はい。島村と、渋谷と、双葉ですか?」

ちひろ「はい。今丁度いますが、えぇ、本当ですか? ありがとうございます」

ちひろ「はい。それでは、失礼します」

凛「なんの電話?」

ちひろ「卯月ちゃんと、凛ちゃんと、杏ちゃんの撮影のオファーが決まりました」

卯月「おー、それはよかったですね」

楓「何だか私だけ寂しいですね…」

ピンポーン

ちひろ「はい。どちらさまでしょうか」

宅急便「宅急便でーす」

ちひろ「あ、わざわざすみません」

宅急便「それじゃ、失礼しまーす」

ちひろ「なんでしょう…えーと、地酒?」

楓「あぁ、私が応募した懸賞ですね」

ちひろ「え、えーと、なんで住所が事務所に?」

楓「前にPさんに住所どうすればいいですかって聞いた時に、事務所のなら使っていいですよと言われまして…」

ちひろ「あぁ、なるほど」

ちひろ(確かに、何かトラブルあったら怖いですからね…)

楓「日本各地のものなんですけど、私も行く時間がなくてですね…」

凛「おめでと楓さん」

楓「飲みますか?」

凛「え、いや…未成年だし」

楓「いえ、なんだか知りませんが、みかんジュースも入ってました」

凛「なんでなんだろう…」

楓「多分、みかんが名産なんでしょうね。未成年の子たちでどうぞ」

卯月「わっ、ビンのジュースってそれだけで美味しそうだよねー。ありがとうございます」

杏「…ねむ」

ちひろ「それじゃ、私も皆を送ってきますんで楓さんお願いします」

楓「はーい」

ちひろ「お酒は飲んじゃダメですよ」

楓「今晩楽しみにしてますね」

ちひろ「え、あ、はい。分かりました」

楓(…暇だなぁ)

P「お疲れ様…あ、楓さんだけですか?」

楓「えぇ。ちひろさんは皆を送っていきました。ぐーるぐる」

P「もう、椅子で回ってる絵面にも馴れてきました」

楓「それは少し悔しいですね」

菜々「そのお酒はなんですか?」

楓「あ、これ、懸賞で当たったんですよ」

菜々「へー。そうなんですね」

楓「飲みますか?」

菜々「えっ」

P「二人共仕事が終わってからにしてください」

楓「Pさんはどうします?」

P「…時間があれば」

菜々「え、えっとナナは…」

楓「そう言えばですね」

P「はい」

楓「小さい子が事務所に来てるらしいですよ?」

P「はい?」

楓「いや、なんか来てるらしいです」

P「らしいってなんですか」

楓「私には見えないですから」

P「要領を得ないんですが…」

菜々「あ、幽霊が来たんじゃないですか?」

P「幽霊ですか? 随分と物好きですね」

菜々「誰かが憑かれちゃってるかもしれないですよ?」

P「冗談でもそういうことは言わないで下さいよ菜々さん」

菜々「はい。すみません…。でも、実際の所どうなんでしょうね」

P「さぁ…分かりませんね」

楓「でも、悪いことをしそうな感じじゃないみたいですけどね」

P「ちなみに見えてるのは誰なんですか?」

楓「私とちひろさん以外は見てましたね」

P「となると…十代だと見えるって感じですかね」

楓「そうかもしれませんね」

菜々「えっ…」

楓「あぁ、ここに十代の方がいました」

P「そうですね」

菜々「な、ナナ的には、その子見えないですけど…」

事務所

ちひろ「ただいま帰りましたー」

凛「お疲れ」

杏「死ぬ…これは死ぬ」

卯月「もう、大袈裟だよー」

P「あ、お帰りなさい」

ちひろ「なんだか新鮮ですね。こういうのも」

P「まぁ、滅多にないですよね」

卯月「あ、そうそうPさんはこの子見えますよね」

P「いや、なんの話してるか全く分からないな」

菜々(ど、どこにいるの?)キョロキョロ

凛「ほら、やっぱり、私達にしか見えないみたいだよ」

杏「座敷童か何かかな」

卯月「あ、それかもね!可愛いし」ナデナデ

「……♪」

ちひろ「なるほど…そうでしたか」

菜々「あぁ!なるほど」

P「それじゃ、帰るぞ杏」

杏「杏、もう無理なんだけど…」

P「そりゃ、今日だけで仕事かなりこなしたからな」

杏「座敷童ってさー、幸運を持ってくるんじゃなかったっけ?」

P「アイドルとしては幸運だな」

杏「…物は言い様だね」

P「俺としては嬉しい限りだな」

杏「なんでさ」

P「杏が世間に評価されてるってことだから」

杏「……ふーん」

P「それじゃあな」

杏「じゃあね」

杏「ふぅ…」

「お疲れ…?」

杏「まぁね。杏は寝るけどどうする?」

「…寝る」

杏「そこらへんで寝ていいよ」

「…飴頂戴」

杏「全く、杏に似たのかね。ほれ」

「ありがとう」

杏「別に。それじゃ、おやすみ」


数日後

P「おはよう」

周子「おはよ。どしたの機嫌いいね」

P「まぁ、ちょっとな」

周子「ふぅん?」

杏「おはよう…」

P「おはよう杏。実はな――」

杏「まさか…」

P「今日も朝から仕事だ」

杏「かれこれ、三日連続なんだけど…」

P「頑張れ」

杏「まぁ、頑張るしかないんだけどね…」

「……♪」

P「それじゃ、お疲れ」

杏「…うん」

「お疲れ…」

杏「あ、うん。おやすみ」

「…ばいばい」

杏「あ、そうだ。飴食べる? あれ…?いないなぁ」

杏(まぁ、いいや)

杏「おやすみ…」

P宅

P「最近杏の仕事は絶好調だな…」

P(でも、そろそろ休ませてやらないと辛そうだ)

P「明後日辺りにでも休みを取るか」

P「しかし、何があったんだろうな」

P「いくらなんでもツキ過ぎな気がする」

P「幸運が憑いてるってか」

P「…不謹慎だったな。それじゃ寝るか」

翌日

杏「……ん?」

杏(今日は目覚ましならなかったな)

杏「ふーん。今日はいないんだ」

杏「どこかに帰ったのかな」

杏「…もう一回寝ようかな」

杏(今日はPさんも来ないし)



P「おーい、杏」

杏「んあ? どうかしたの?」

P「今日は昼から仕事だろ。行くぞ」

杏「あ、そうだっけ」

P「あぁ、と言うか、鍵くらい閉めておけって」

杏「あー、忘れてた」

P「おいおい…」

杏(いなくなったのかな…?)

P「杏?」

杏「いや、なんでもないよ。行くから待ってて」

P「おう。分かった」


杏「…調子狂うなぁ」

車内

杏「……」チラッ

P「後ろに何かあったか?」

杏「いや、ないけどさ」

P「……?」

杏(どこ行ったんだろ…)

事務所

杏「おはよう…」

卯月「あ、おはよー。あれ、あの子は?」

杏「…さぁ」

卯月「そうなんだー」

幸子「何かあったんですか?」

杏「別に。珍しく動いたからちょっと疲れただけだよ」

幸子「…そうですか」



杏「あのさ…」

P「お、どうした杏。今日はもう平気だぞ」

杏「いや、そうじゃなくてさ」

P「あぁ、飴か。ほれ」

杏「ん。いや、それでもなくて」

P「それじゃ、どうした?」

杏「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど…」

P「うん?」

P「なるほど。その子を探して欲しいんだな」

杏「…別に、そんなに訳じゃないんだけどね」

P「ただ、俺にはその子が見えないんだけどな」

杏「そ、それは…」

卯月「私達も手伝いますよっ!」

幸子「な、何か知りませんが手伝いますね」

杏「…ありがと」ボソッ



P「と言う訳でさ、周子は杏の家とか、そこら辺を探して貰っていいか?」

周子『よく分からないけど、了解。今度何か奢ってね』

P「はいはい」

周子『それじゃ、ばいばーい』

P「さて、こっちはこっちで探すか」

卯月「はい!ってPさんは見えないんですよね」

P「まぁな」

幸子「…どうするつもりですか」

P「…どうしよう」

幸子「もう、しょうがないですねぇ!ボクがいないとダメダメなんですからっ!」

卯月「それじゃ、頑張りましょう!」

P「いないみたいだな…」

幸子「ま、まだまだです」

卯月「どこ行っちゃったんだろうね」

杏「…やっぱり、いいや」

P「え?」

杏「いやさ、二人にもPさんにも悪いしさ」

杏「面倒でしょ? これだけやってくれただけでも十分だって」

杏「別に、何かしたかったってわけじゃなかったし」

卯月「杏ちゃん…」

杏「うんうん。キャラじゃなかったね。こういうのは。それじゃ、ありがと」

幸子「ま、まぁ、そういうなら…お疲れ様でした」

卯月「…帰り道で見かけたら教えるからねっ!」

P「杏…」

杏「なにさ?」

P「いいのか?」

杏「うん。眠くなってきたし」

P「そうか…」

杏「…なに?」

P「いや、杏がそれでいいならいいんだ」

杏「そ。ならこれでいいよ。これで」

杏「あー、全くらしくないことしちゃったなぁ」

杏「それじゃ、今日は電車で帰るよ。ばいばい」

屋上

杏「こんな所にいるわけないか…」

P「随分とらしくないな」

杏「げ、尾行してきたの?」

P「そういうわけじゃないけどな。ちょっと俺も探してみようかと思って」

杏「見えないのに?」

P「まぁな」

「……」

杏「あ、いた」

P「なんだいたのか」

杏「いきなり、いなくならないでよ…調子狂うから」

「…ごめん…なさい」

杏「別に、そこまで怒ってないけどさ」

杏「それじゃ、ばいばい」

「…うん」

杏「あ、そうだ。たまに飴食べに来てもいいよ。それじゃ」

「……うん!」

杏「いこ」

P「あ、うん。分かった」

事務所

杏「ふぅ、すっきりした」

P「それは良かった」

杏「これで、目覚ましをセットされることもなくなるし、飴をあげなくても済むしいいことづくめだよ」

P「杏…」

杏「杏の部屋がちょっとだけ綺麗になってたり、ゲームする相手もいなくなったけど、一人はいいよね」

P「杏」

杏「なにさ」

P「俺さ、ちょっとコンビニ行く予定があるんだけど何か欲しいものあるか?」

杏「ポッキーの夕張メロン味」

P「分かった。それじゃあな」



杏「あー、バレてたかも…」

杏「……」グス

コンビニ

P「さて、何を買うか…」

P「あ、先に頼まれてた物でも買うか」

P「あのすみません」

店員「はい?なんでしょう」

P「ポッキーの夕張メロン味って置いてありますか?」

店員「ゆ、夕張メロン味ですか? そうですねぇ…こちらでは取扱いしていない気が…」

P「分かりました。ありがとうございます」

店員「恐らく地域限定商品だと思われますが…」

P「ですよね…」

事務所

P「杏いるか?」

杏「……」グー

P「寝てるのか…」

P「ほら、起きろって」

杏「んあ? 寝てた?」

P「あぁ、悪いな。メロン味はなかった」

杏「だろうね」

P「それじゃ、帰るか」

杏「…うん」

車内

杏「そういや、今何連勤?」

P「さぁ、分からないな。数えてないから」

杏「聞きたいことがあるんだけど…」

P「どうした?」

杏「Pさんは何のためにプロデューサーやってるの?」

P「いきなりどうした?」

杏「ちょっと気になってね。やっぱり、アイドルとかの近くにいたかったとか?」

P「いや、そういうわけじゃないけどな。社長とかちひろさんの影響だよ」

杏「そうなんだ」

P「あぁ」

杏「今のやりがいは?」

P「皆をトップにすることかな」

杏「なんて言うか…凄いよね」

P「そうか?」

杏「杏はね、前に話したと思うけど印税で生活するのが目的だから」

P「言ってたな」

杏「つまり、あれだよね。お金になるからやってるんだよね」

P「そういうことになるな」

杏「あれ? そんなことより大事なことがあるだろって怒ると思ったけど」

P「怒りはしないさ。それも真実だしな」

杏「そうなんだね」

P「金に執着して心まで貧しく、卑しくならなければ問題ないって」

杏「まぁ、杏はそういう感じではないけど」

P「だから、何も言わないよ。それに、金が一番に来たって皆といるのが楽しいからいるんだろ?」

杏「ま、まぁ…否定はしないけど」

P「よく、お金に執着するのを卑しいって言う人がいるかもしれないけど、霞を食べて生きていけるわけじゃないんだからさ」

杏「そうだねー」

P「とにかくそういうことだ」

杏「そういや、なんで杏の所に来たんだろうね」

P「さぁな。杏とだったら仲良くやれそうだと思ったんじゃないか?」

杏「もしくは飴に釣られてきたのかもね」

P「お疲れさん」

杏「…あ」

P「ん?どうした?」

杏「いや、これからもさ」

P「うん」

杏「これからも杏と一緒に仕事してよ」

P「何を今更」

杏「か、勘違いするなよっ! それが一番手っ取り早いからで…」ゴニョゴニョ

P「はいはい。それじゃあおやすみ」

杏「…むぅ」

杏(お金が一番ってことは、その為にずっとプロデュースして欲しいってことなんだけど分かってるのかな…)

楓宅

楓「やっとお酒が飲めますね」

菜々「な、ナナはここにいていいんでしょうか…」

ちひろ「いいんじゃないでしょうか」

P「まさか仕事が終わってから電話が来るなんて思ってもみませんでしたよ」

P(家に着いた瞬間に掛かってくるとはなぁ)

楓「細かいことはいいじゃないですか。ほら、かんぱーい♪」

P「あ、はい」

ちひろ「そう言えば、座敷童でしたっけ?どうなったんですか?」

P「いや、別にどうなってもないですけど」

菜々「でも、いなくなっちゃったら不幸になるってお話ですけど。あ、このお酒美味しい」

P「どうなんでしょうね。不幸って言うかいつも通りに戻るだけの気がしますけどね」

P「それに、何が不幸で何が幸運かは自分達で決めるものだと思いますし」

P「勿論、そういう存在がいてくれれば嬉しいですけどね」

ちひろ「酔ってますか?」

P「ちひろさんほどじゃないですよ」

ちひろ「わ、私は酔ってまひぇん!」

P「ほら」

ちひろ「い、今のは噛んだだけですよもうっ!」

菜々「あははー。仲良いですね二人共」

終わりです。今年一年ありがとうございました。

もう片方も来年には書きたいと思います。

解説です。
座敷童に関してはほぼ説明はいらないでしょうから割愛します。

杏が途中で、お金の話をしましたが、あれは雨月物語の貧富論から引用しています。

抜粋しますと、世間の金銭を卑しいものとする風潮を嘆いた。「千金の子は市にも死せず」「富貴の人は王者のたのしみを同じうす」
とことわざを唱え、清貧な生き方をする賢人は賢いけれど、金の徳を重んじない点で賢明な行為ではない、と断じた。

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