ツンデレメイド「お仕事ですから」 (162)

ご主人「今日もありがとう、ご馳走さまでした」

メイド「私のお仕事ですから」

ご主人「…あ、あれ食べたいな…何ヵ月か前に食べたシチュー」

メイド「それは私のお仕事ではありませんわ」

ご主人「そ、そう…ごめんなさい」

翌日

ご主人「あ、シチュー…」

メイド「ご主人様にお作りしたものの残りが私の賄いになりますから」

メイド「たまたま今日食べたくなっただけです」

ご主人「賄いって…たまには一緒に食べない?」

メイド「いえ、ご主人様と同席するなど恐れ多い事です」

ご主人「その、メイドさんをずっと立たせたまま一人で食べるのはちょっと食べづらいって言うか…」

メイド「…では私は退出させていただきます」バタン

ご主人「…」

ご主人「前は一緒に食べてたのにな」

ご主人「行ってきます」

メイド「ご主人様、お待ちください」

ご主人「どうしたの?」

メイド「マフラーをお忘れですよ」

ご主人「そこまで寒くないから大丈夫だよ」

メイド「そう仰って風邪をお引きになった去年の事をお忘れですか?」

メイド「あの時は大変でしたわ、日曜日なのでどこもお医者様が開いていなくて私が付きっきりでご主人様のお世話をしたのですよ」

メイド「まったく、風邪の手当ては私のお仕事ではないのですよ」

ご主人「きゅ、休日診療所とかあるし…」

メイド「あの時は他の使用人は忙しくて手が空いていなかったのです」

メイド「私にご主人様を引きずっていけと仰るのですか?」

ご主人「…すみません」

メイド「分かればいいのです」

ご主人「…ありがとう、行ってきます…」

メイド「はい、行ってらっしゃいませ」

バタン

ご主人「それにしてもこんなマフラー持ってたっけな?」



使用人「そう言えばあなた、編んでたマフラーどうしたの?」

メイド「…あげました」

使用人「え、誰に!?」

メイド「誰でもいいではないですか」

メイド「…どうぞ」

ご主人「…ありがとう」ズズズ

メイド「ご主人様、紅茶をお飲みになられる時に音を立てるのはマナー違反ですよ」

ご主人「…気を付ける」

ご主人「今日も美味しいね、店開けるレベルなんじゃない」

メイド「ご主人様は私を追い出したいのですか?」

ご主人「そんな事言ってないでしょ…」

ご主人「料理も家事もやってもらってるし、今いなくなられると…実際困る」

メイド「…そうですか」

ご主人「………」ゴクゴク

~♪

ご主人「ん?隣の部屋か…」コソコソ


メイド「~♪」

ご主人(へぇ…メイドさんも鼻歌歌うんだ)

メイド「ぼうぎゃくの~くも」フキフキ

メイド「ひっかりーをおおい」フキフキ

メイド「てーきのあらしは…」ガサガサ

ご主人(ワ、ワルシャワ労働歌…?)

メイド「~♪」

ご主人(しかもやたら上手いし)

メイド「いまやさいーごっの…」ガチャッ

ご主人「あっ」

メイド「………」

メイド「私の歌声をお聞かせすることは仕事内容に含まれないのですが」

ご主人「う、うん…上手かったよ」

ご主人「ふ、不満があるなら言ってね…俺まだ総括されたくないよ」バタン


メイド「…………~ッ!」

メイド「………!」バタバタ

ご主人「あの歌をわざわざ俺の隣で歌ってたという事は…恐らく不満があるに違いない」

ご主人「使用人たちにいろいろ聞いてみるか」

コック「ああ、坊っちゃんの食事を作らなくなって結構経つね…

コック「何年か前にあの子が全部やるって言い出した時は驚いたなぁ」

メイド長「あの子が全然笑わない?そんなはずありませんよ!」

メイド長「あの子坊っちゃんのお部屋から下がる時、いつも笑顔なんですよ…

メイド長「え、お気づきになられていなかったのですか?」

運転手「去年の冬ですか…そう言えばメイドさんに頼まれて隣の町まで…」

運転手「ええ、あの時は失礼しました。ご主人様が風邪をお引きになっていたのに」

園丁「あの子ですかい?可愛いところもありやすぜ、洗濯物を干しているとき…」

園丁「ご主人様が外出される時はいっつも立って見送るんでさ」

自室

ご主人「うーん…?」

ご主人「聞くたびにやたらニヤニヤされたんだけどどうしてだろうな」

バタン

メイド「ご主人様…?」

ご主人「ど、どうしたの」

メイド「どうやら私のことを嗅ぎ回っていらっしゃる方がいるそうですね…」

ご主人「か、勝手にやったのは悪かったけど」

ご主人「俺だってメイドさんの事もっと知りたいし」

メイド「……」ピクッ

メイド「…そうですか、素晴らしい心がけですわ」

ご主人「…なんか上から目線だな」ボソボソ

メイド「ご主人様ぁ…?」

ご主人「な、なんでもないです」


メイド「……………ふふ」ガチャッ

ご主人「映画見るか」

デエエエエエン

ヤロウブラッシャアアアア

ご主人(何か視線を感じる…)サッ

メイド「………」サッ

セツメイショヲヨンダノヨ

ご主人(後ろの壁に隠れてるの絶対メイドさんだよな)

ご主人「………」サッ

メイド「………」バッ

メイド「………」ソワソワ

ヤロウブラッシャアアアア

ご主人「…一緒に見る?」

メイド「!」

メイド「ご…ごほんっ」

メイド「わた、わたしは…別に、見たくなど…第一それは私のお仕事ではありませんし…」

ご主人「わかったわかった、じゃあ仕事をあげよう」

メイド「…ありがとう、ございます」シュン

ご主人「実はデッキの調子が悪くてね、今試しにDVDを再生してるからちゃんと出来ているかちょっと見ていてくれ」

メイド「そ、それは本来私のお仕事ではないのですが…し、仕方ありませんね」

ご主人「……ふっ」

メイド「む……」

ご主人「いやー面白かった、シュワちゃんはいつ見てもいいな」

メイド「…再生に異常はありませんでした」

ご主人「それはよかった、次はロシア版にするか」

メイド「えっ!?何ですかそれ!」バッ

メイド「…ん"ん"っ…」

メイド「…それはどのような作品なのでしょうか」

ご主人「悪役がロン毛の日本軍将校と一緒に漬物と家庭料理食べる話」

メイド「お、面白そうですわ」

ご主人「…ごちそうさま」

ご主人「ロールキャベツ美味しかったよ」

メイド「もちろんです、プロですから」

メイド「…はっ」

ご主人「ハマったのか…」

メイド「余計なことを言うと口を縫い合わすぞ」

ご主人「はい」

メイド「あ、いえ、その…今のは…」

ご主人「こ、来いよ…銃なんて捨ててかかってこい」

メイド「…もう止めませんか」

ご主人「…そうだな」

メイド「ご主人様、朝ですわ」

ご主人「…起こさないでくれ、死ぬほど疲れているんだ…」

メイド「あ、さ、で、す、わ」

ご主人「はいすみませんおきますただちに」

ご主人(おかしい、いつもは何だかんだで乗ってくれるのに)

ご主人「あの、俺何かした…?」

メイド「いいえ。それより朝食の用意ができております」ツーン

ご主人「何があったんだ…」


ご主人「さあ今日は休みだし!俺の秘蔵のコレクションを…」ガサガサ

ご主人「コレクションを…」ガサガサ

ご主人「…ん…おかしいな、俺の秘蔵のコレクションが…」ガサガサ


メイド「探し物はこちらですか?」

ご主人「あっはいそれです」

メイド「歴史群像の中にメモリースティックとは考えましたね」

ご主人(なんかバカにされてるみたいだな…)

メイド「ですが私は歴史群像も読むのですわ」

メイド「ご主人様が特に読まれているのは…これと、これと、これと…」

ご主人「なんで知ってるの…!?」

メイド「お仕事ですから」クスクス

ご主人(えっ怖い)

メイド「それより何ですか、この中身は」

メイド「背がちっちゃい娘に胸が小さい娘が描かれた漫画ばかりではありませんか」

メイド「ひょっとしてご主人様は…」

ご主人「いやそうじゃない、それだけじゃないからね、他にもあ…あっ」

メイド「他にも?他にも何ですか?」ズイッ


ご主人「ああ…がんばって集めたのに…」

ご主人「メイドさんの目を盗んでスキャンするの大変だったんだよ…」

メイド「私には関係のないことですわ。それでは失礼します」バタンッ!

ご主人「…もっと優しく閉めてほしいな」

ご主人「………」ガサゴソ

ご主人「ふっ…本命はこっちだ」

ご主人「本当は身長が高い方が好きなんだよな」

ご主人「胸も大きい方がいい」

ご主人「そして服はスーツかメイド服がいい」

ご主人「メイドさんに言ったら絶対に冷たい目で見られそうだな…はぁ」



(廊下)

メイド(え、ええっ…!!)

メイド(ご主人様の事ですから本命があるかと思って聞き耳を立てていたら…)

メイド(まさか…そうだっただなんて…)

メイド(身長が高くて…む、胸が大きくて…メイド服って…)

メイド(い、いや、そんなはずないわ!そんなはず…)

メイド(………あったらいいな)

メイド「………~っ!」ブンブンブンッ

使用人「ど、どうしたの」

メイド「い、いえ何でも…ありませんわ」

園丁「ヘッドバンドとか言うんだっけか」

メイド「違います」

園丁「まあいいや、タッパのでかい嬢ちゃんがそれやってるとちょっと怖いな」

使用人「ちょっと!怖いって何よ!」

メイド「………」ニコッ

メイド「園丁さん、お風呂に入られてはいかがですか?少々臭いが…」

園丁「ひでえな嬢ちゃん!」

メイド「いえ当然の事を言ったまでですわ」ニコニコ

使用人「…行きましょ」

園丁「…おう」

メイド「本当に申し訳ありませんでした!」

園丁「い、いやいいよ…」

使用人「まったく、園丁さんはあなたのことよく知ってるから大丈夫だったけれど、これが来客だったら…」

メイド「はい…ごめんなさい…」

園丁「もういい、もういいから…」

園丁「それより俺は理由が聞きたい」

園丁「そんなに取り乱してたってことは何かあったんだろ?」

メイド「そ、それは…その…えっと…」

使用人「話すときは相手の目を見る!」

メイド「はぃ…」

園丁「なるほどねぇ、あの坊っちゃんが…」

使用人「ふふ、面白いこと聞いちゃったかも」

メイド「や、やめて…」

園丁「確かに坊っちゃんは嬢ちゃんにベッタリだったからなぁ」

使用人「あら?私はメイドの方が坊っちゃんにベッタリだと思ってたんだけど」

メイド「そ、そんな事ない…ないです!」

園丁「昔は旦那様と奥様…ああ、坊っちゃんの両親が厳しくてなあ」

使用人「そうそう、坊っちゃんもなかなか親しい友達が出来なくてねえ」

園丁「俺たちも遊んでやりたかったんだけどな、大人にゃ子供の遊びはわかんねぇからな」

園丁「そこで登場したのが年の近い嬢ちゃんってわけだ」

メイド「わ、私そんなついでみたいな印象なんですか?」

使用人「あら、ついでじゃないわよ。坊っちゃんにとってはきっと大切な存在だったはずよ」

コンコン

メイド「…お茶をお持ちしました」

ご主人「ありがとう」

ご主人「………」カキカキ

メイド「……」ジーッ

ご主人「………」カキカキ

メイド「……」ジーッ

ご主人「………ゴホン」

ご主人「あ、後で飲むから下がっていいよ」

メイド「………感想」

ご主人「え?」

メイド「感想を、聞かせて頂きたいのですが」

ご主人「あ、ああ」

ご主人「……」スス…

ご主人「ん…今日も美味しいよ」

メイド「そうですか…」

ご主人「どうかした?」

メイド「………ふんっ!」キッ

ご主人「えぇ!?」

メイド「べ、別に嬉しくなんかありませんわ!」

ご主人「どうすりゃいいんだよ!!」

メイド「…お仕事ですから。それでは」バタン


ご主人「…どうすりゃいいんだよ…」

(○年前)

ご主人「あれ?あの人誰?」

運転手「あの人、と言いますと?」

ご主人「ほら、あそこのベランダに」

運転手「ああ…あの子は本家で働いている執事の娘です」

ご主人「どうしてここにいるの?」

運転手「あの子のご両親が仕事の都合でしばらくここに住まれることになったとか」

ご主人「初めまして!おじいちゃんがいつもお世話になってます」ペコッ

メイド「…初めまして」ペコッ

ご主人「何処から来たの?」

メイド「隣の県からです、坊っちゃん」

ご主人「あはは、坊っちゃんね…僕その呼び方あんまり好きじゃないんだ」

メイド「どうしてですか?」

ご主人「だって国語の授業で夏目漱石やる時いっつも馬鹿にされるんだもん」

メイド「………………ふふ」

メイド「そうですか」

ご主人「君…僕とそんなに年齢変わらないでしょ?敬語じゃなくていいよ」

メイド「そ、そんな事できません」

ご主人「そう…まあ慣れたら追々ね

ご主人「ん…おいおいってこう使うんだっけ…いや、そのうちの方がいいかな…」

メイド「…………」

メイド「強制しないんですね」

ご主人「きょうせい?」

メイド「つまりその…無理矢理という意味です」

ご主人「そんなのダメだよ」

メイド「…………」

ご主人「ダメだよ」

(数ヵ月後)

メイド「坊っちゃんは難しい言葉を知って…ご存知なのですね」

ご主人「本が好きなんだ」

メイド「それはよくありませんね、子供は外で遊ばないと」

ご主人「きみもこどもでしょ」

メイド「…うっ」

ご主人「うんてんしゅさんの言ってることそのまんまじゃん」

メイド「と、とにかく…もっと外でお友達と一緒に」

ご主人「………」

ご主人「ともだちは、あんまりいないかな」

メイド「…そうですか」

ご主人「あなたは将来何になるの?」

メイド「それ、普通は年上の方が聞くものですよね…」

ご主人「いいから!」

メイド「うーん、今は特に考えてない…考えていませんけど…」

メイド「やっぱりおとうさ…父と同じように坊っちゃんの家ではたら…家にお仕えすると思います」

ご主人「そのあとは?」

メイド「ご主人様専属のメイドですかね」クスクス

メイド(専属ってなんか格好いいわね)

ご主人「せんぞく?」

メイド「そうです。坊っちゃんだけに仕えるん…仕えるのですわ」

ご主人「おお、くちょうもなんかそれっぽい」

メイド「本当ですか?ふふふっ」

(数ヵ月後)

メイド「…………」

ご主人「あなた、いっつもここにいるね」

メイド「坊っ…ご主人様こそ」

ご主人「ともだちいないの?」

メイド「ご主人様こそ」

ご主人「僕はいないかな」

メイド「…どうしてですか?」

ご主人「なんかゲームとかテレビとか流行ってるんだけどさ、着いていけなくて」

ご主人「それに仲良くなった子をけるなんて僕には無理だよ」

メイド「…でも、みんなそうしてる」

ご主人「でも僕こわくなっちゃったんだ」

メイド「蹴ることがですか?」

ご主人「そうじゃなくてね、昨日まで笑いあってたのに今日は笑いながらけってるんだよ?」

ご主人「きのうはみんな笑ってたのにきょうは一人だけないてるの」

メイド「…ご主人様は優しいんですね」

ご主人「ちがうよ、いくじがないだけだよ」

ご主人「よわむしだってみんないってる」

メイド「…私の話も聞いていただけますか」

ご主人「え?いいよ」

メイド「いままで友達だと思っていた人たちにいきなり裏切られたらどう思いますか?」

ご主人「うらぎり?」

メイド「そ、その…人生ゲームにある、あれです」

ご主人「ああ、あれか」

ご主人「やっぱり悲しいかなあ」

ご主人「だって仲良くなったらひみつとかも話すでしょ?」

ご主人「それをぜーんぶばらされちゃうんだよね?」

メイド「…鋭いですね」

メイド「…私の何処がいけなかったんでしょうか」

ご主人「そうだなぁ…時々うえ、うえ…なんだっけな、えらそうになるところとか」

メイド「えっ!?そ、そんな考えは…」

ご主人「あなたがそのつもりでも他の人は勝手にそう思っちゃうかもしれないでしょ」

ご主人「あと声が全然変わらないところ!」

メイド「落ち着いてる方がいいのではないですか?」

ご主人「えーっとね、高学年の人がよく使ってる」

ご主人「チョーシコイテルだっけ?リア…リクアション…」

メイド「…リアクションですか?」

ご主人「リアクションが薄いとチョーシコイテルとかキドッテルになるらしいよ」

メイド「…なるほど、そうですか…」

メイド「…はぁ、どうすれば元に戻れるのかな」

ご主人「もとって?」

メイド「みんなで笑いあったりとか…」

メイド「…いや、あれは誰かを笑い者にしてたのかも…」

メイド「とにかく、仲直りを…」

ご主人「別によくない?」

メイド「…え?」

ご主人「だってあなたをいじめた人たちなんだよ?そんなのとなかよくできる?」

メイド「そんなの、仲直りすれば…」

ご主人「その人たちは忘れればすむよね?でもあなたはおこったりするのをがまんしなきゃならないんだよ」

メイド「それは、その…」

メイド「………そうですね」

メイド「…ねえ、ご主人様」

ご主人「なに?」

メイド「ご主人様は、裏切りませんよね?」

ご主人「まあね」

メイド「…約束してください」

メイド「私はご主人様を絶対に裏切りません…だから…」

ご主人「うーん、よくわかんないけど…僕もあなたをうらぎらないよ」

メイド「約束して…くれるのですか?」

ご主人「うん、やくそく」

メイド「………」スッ

ご主人「ん?あくしゅ?」スッ

メイド「ゆびきりげんまうそついたら…」

ご主人「あはは、久しぶりにやったなぁ」

(中学)

ご主人「…というわけでお…僕たちはベトコン方式で行こうと思う」

メイド「ベトコン…ですか?」

ご主人「ベトナム戦争時、ベトコンが圧倒的物量を誇る米軍に対抗できたのには色々な理由がある」

メイド「同盟国の支援とジャングルを利用した戦術ですね」

ご主人「それだけじゃない。同盟国がいなかったフランス統治時代や…」

ご主人「そこそこの物資が受け取れた日本による占領時代になぜあそこまでの反乱が起こせなかったのか?」

メイド「周囲を敵に囲まれているから…ですか?」

ご主人「そうだ!つまりベトコンは中立国でアメリカの手出しできないカンボジアやラオスに拠点を持っていたんだ」

ご主人「まあ長々と言ったが…つまり精神的拠点を戦域の外に作るんだ」

メイド「拠点…?」

ご主人「学校の事は戦場だと思え、家で楽しもう、だな」

ご主人「ただいま!今日は三発殴られたぜ!」

メイド「私は二回暴言を吐かれました!」

ご主人「さあ麗しの家だ!」

メイド「今日は何をしましょうか?」

ご主人「ゲームだな!」

ピコピコピコピコ

メイド「まだ時間がありますね!」

ご主人「ボードゲームだな!」

トコトコトコトコ

メイド「まだ余ってますね!」

ご主人「夕飯作ってくれ!」

メイド「はい!!」

(数ヵ月後)

ご主人「いやー夏休みが楽しみでしょうがないな」

ご主人「あんなクソみたいな場所からクソおさらばできるからな!」 

メイド「私も楽しみです」

メイド「もっとご主人様と一緒に居られますから…」

ご主人「そ、そうか………」

メイド「そ、そのですね…えっと…今のは…その…」

メイド「ご、ご主人様…そのっ、わた、私のこと…メイドって呼んでくれませんか」

ご主人「ど、どうして?」

メイド「だってご主人様、最近私のことあなたとも呼んでくれなくなったじゃないですか」

ご主人「色々あるんだよ…」プイッ

ご主人「でもその…せめて名字とか、名前とかじゃないの?」

メイド「いえ、メイドがいいです。だって私は…あなたのメイドですから」

ご主人「まだそうじゃないだろ…」

メイド「いつかはそうなります!」

ご主人「しかしメイドも大きくなったな…」

メイド「言わないでください、結構気にしてるんですから…」

ご主人「僕の身長抜かしてるんじゃないか?」

メイド「じゃあこれからは私がご主人様を見下ろせますね!」

ご主人「くそ………」

ご主人「絶対にメイドより高くなるからな…!」

メイド「その時は…ふふ」

(数ヵ月後)

メイド「とうとう誰も暴言を吐かなくなりました」

ご主人「メイドの同年代って平均150そこらだろ…そりゃ怖いわ」

メイド「先日バレーボール部に勧誘されたのですが」

ご主人「都合のいい奴等だな」

メイド「彼女たちは部活動をしているのですから仕方ありませんよ」

メイド「私に集団行動などできませんから断らせて頂きましたけどね…私には一人で十分です」

ご主人「…そうか」

メイド「口角が上がってますよ」

ご主人「…嬉しいからな」

メイド「……………」

メイド「そ、それより!ご主人様の身長も大分伸びてきたようですが…」

ご主人「こればっかりは親に感謝しないと」

ご主人「これで1930年代にタイムスリップしてもSSに入れるな」

メイド「アジア系は駄目なんじゃないですか?」

ご主人「オ、オストバタリオンなら…」

メイド「それほとんど崩壊目前ですよね…国防軍だし」

ご主人「もういいナチはやめだ!赤軍親衛旅団にするぞ!」

(卒業前)

ご主人「あのあとうまい感じでクラスから存在を消し去れたな」

メイド「好きの反対は無関心って言いますけど、嫌われるよりは無視された方がいいですね」

ご主人「まったくだ…さて」

メイド「ゴクリ」

ご主人「最後に一発かましたくないか?」

メイド「何を…ですか?」


ご主人「先週の日曜日に二つ隣の県まで行って買ってきた一斗缶だ」

ご主人「今は冬だから手袋をしても怪しまれなかった」

ご主人「さてここにぃ…?おおっと植物油とパンとビールがぁ…!」

メイド「小芝居はいいですから」

ご主人「…はい」

メイド「つまりこの一斗缶にGを大量に集めて放すと!」

ご主人「そうだ!ガキ臭い嫌がらせにはガキ臭い嫌がらせでやり返さないとな!!!!」

メイド「ご主人様………」

ご主人「もちろんやりたくないならやらなくてもいい…復讐は何も生まないって格好いい台詞があるし」

メイド「すっごくいいですねそれ!!!是非ともやりましょう!!!」キラキラ

ご主人「か、輝いてるね…」

(卒業式後)

メイド「あはは!あははは!」

ご主人「いやあ楽しかった」

ご主人「今後部活練は一週間閉鎖で薬品焚くから私物化してた奴等は大変だろうなぁ」

メイド「ププッ…ククッ…学校汚しちゃいましたね」

ご主人「俺の親は高額納税者だ、構うもんか」

メイド「そ、そうですか…」

ご主人「い、いや冗談だからね」

メイド「…でも、凄くすっきりしました!」

ご主人「…そうか、それは良かった」

ご主人「何はともあれ…卒業おめでとう、メイド」

(数ヵ月後)

トントントン

バタッ…シャッ…ガラガラガラ…

ご主人「んん…」

メイド「おはようございます、ご主人様!」

ご主人「…どうしてメイド服着てるの」

メイド「中学卒業後から働けるんですよ」

ご主人「いや、でも、高校とかあるじゃん」

メイド「このあと着替えて登校するから大丈夫です」

ご主人「そうか…」

ご主人「えっと…その、似合ってるよ」

メイド「………ふふ」

(高校時代)

ご主人「さー栄光の始まりだ」

メイド「中学は栄光ではなかったのですか?」

ご主人「あ、あれは公立で地元の奴が来るのがいけなかったんだよ…」

ご主人「それとね、もう無駄に頑張るのはやめることにした」

ご主人「どうせなくなるならわざわざ作りに行く事もない」

ご主人「…次の戦場は高校だ」

メイド「わーかっこいい」

ご主人「ん"ん"っ…国家斉唱!」

ご主人「さゆーすねるしー」

メイド「ゆーばあーれすどいちゅーらぁあんと」

メイド「うーん、届かない…」

ご主人「高いな…」

メイド「どうして棚をあんなに高い所に作ったんでしょうか」

ご主人「さあな…」

メイド「あと少しなんですが…」

ご主人「どれどれ…」

フッ

メイド(あ、高い…)

ご主人「よし、取れたぞ」

メイド「…………」

ご主人「メイド?」

メイド「…はっ!?あっ、あ…ありがとう、ございます!」パッ

タッタッタッタ…

ご主人「…?」


メイド(顔、見られてないですよね…)

(二年後、現在)

運転手「…で、今に至ると」

ご主人「そうなんだよ…なんか段々離れていったと言うか」

ご主人「避けられてたからとりあえず一人にして欲しいのかなと思ってしばらく話しかけなかったら…」

運転手「更に疎遠になったと」

ご主人「一緒に居ることはいるんだけどね…」

運転手「フフ…やはりご主人様は面白い方ですね」

運転手「いえ…ご主人様があの子と一緒にいるととても楽しいと言いますか」

ご主人「どういう意味の面白いなんだ…」

運転手「ふふ、少なくとも悪い意味ではございませんよ」

運転手「さて、到着致しました」

主人「雨とはいえごめんね、車出して貰っちゃって」

運転手「いえいえ。お体にお気をつけてお戻りください」

主人「ありがとう。それじゃ」

メイド「本棚には…歴史関連の本がずらり」

メイド「ご主人様と見に行った戦争映画のパンフレットもありますわ」

メイド「無理矢理合わせているのではありません…すべて自分の意思です」

メイド「ご主人様はこれだけ私に影響を与えていらっしゃいます」

メイド「でも…私から避けていてはいけませんよね」


メイド「ですが…ご主人様も…裏切ってしまうのではないでしょうか?」

メイド「ふとしたきっかけで変わってしまうのなどよくある話ですわ」

メイド「だから私は信じてはいけないのです…信じたらご主人様を縛ってしまうかもしれないから…」

ご主人「縛りたくないのか信用したくないのかどっちなんだ」

メイド「ご、ご主人様!?」

メイド「………」キッ

メイド「何の、ご用件ですか」

メイド(こうすればご主人様は折れてくださる)

ご主人「俺は引かないぞ」

ご主人「頭の中に南軍歌を流してるからな」

メイド「はぁ…何を仰っているかわからないのですが」

ご主人「いや俺メイドさんが独白始めたあたりから聞いてたから」

メイド「どうも独り言が多くなっていけませんね…」

メイド「…しかたっ…仕方…ないじゃないですか…!」

メイド「いまっ…いままでっ…っあっ…私のことを…裏切って…去っていった人達の顔…全部覚えてるんですよ…」ポロポロ

ご主人「でも、それは多分誰しもが経験することだ」

メイド「いや…そんなの嫌です…っ!ぁぁ…そんなのもう疲れた…もう沢山です…だからわたし…わた、し、は…裏切りたくない…裏切られたくないっ…!」ポロポロ

ご主人「…指切りげんまん」

メイド「…へっ?」ポロポロ

ご主人様「しただろ、指切りげんまん」

ご主人「そうだ。裏切りは死を意味するんだ」

ご主人「俺はまだ督戦隊に撃ち殺されたくないからな、裏切りなんてできない」

メイド「じゃ、じゃあ…死を覚悟したら…っ!私のこと、裏切るんですか…?」

ご主人「可愛いから裏切れない」

メイド「えっ…ええっ…?」

ご主人「どうして俺が今までを切り抜けられたか考えてみたんだ」

ご主人「でかくなったお陰で暴力振るわれなくなったのも勿論あるだろうけどな、一番重要だったのは」

ご主人「やっぱメイドさんだよ。かわいいし何でもやってくれるし趣味合うしかわいいしかわいいし」

メイド「あっ…ぁ…」

メイド「…ばっ…馬鹿じゃないですか…?」

ご主人「そう思うなら手を離してくれ」

メイド「嫌です!」

メイド「折角私が…ご主人様離れしようと頑張ったのにっ…!それをご主人様は…ご主人様は…!」ギュウウ

ご主人「いたいいたい手が痛い」

メイド「大きな手…図体ばっかり大きくなって…中身は…中身は…変わったんでしょうか?」スリスリ

ご主人(あっ頬擦りヤバい肌超スベスベ)

ご主人「人間そう簡単には変わらないよ」

メイド「…そうですか、では私も変わっていないのでしょうね」

メイド「…抱きついても良いですか」

ご主人「…お、おおいいぞ」

がしっ

メイド「ご主人様…」ギュウウ

メイド「…ふーっ、ふーっ」

メイド「……」スンスン

ご主人「おい嗅ぐな」

メイド「…ふふ、覚えました、これがご主人様の匂いですね」

ご主人「…風呂入っておけば良かったかな」

メイド「私の大好きな匂いですよ」クスクス

メイド「ご主人様、腕を私の背中に回してください…そうそこです」

メイド「うふふ、ご主人様の中にすっぽり収まっちゃった」

ご主人「…台詞練習してきたの?」

メイド「いいえ?私の正直な気持ちですが」

ご主人「…メイドさんに友達いない訳がわかった」

メイド「どうしてですか?」

ご主人「ギャップがありすぎて猫を被ってるように見えるのと顔が可愛いからだ」

メイド「………ん」

ご主人「どうした、上向いて」

メイド「………」ジーッ

ご主人「…あんまり見るなよ」フィッ

メイド「ふふ、外見しか誉めてくれないのですか?」クスクス

ご主人「内面はさっき誉めただろ…」

メイド「ご主人様なのですからもっと誉めてくださいますよね?」

ご主人「日常的に接してると逆に駄目だな…逆に有り難みがわからないのか」

メイド「では、一ヶ月くらい私なしで生活してみますか?」

ご主人「それは無理かな」

メイド「どうしてですか?」

ご主人「…寂しい」

メイド「私もです」

ご主人「じゃあ言うなよ!」

ご主人「そうだな…あー、あれだ、髪が凄く綺麗だ」

ご主人「………」フッ

メイド「ひゃぁっ!」

ご主人「…フーッ」

メイド「ぁ…なんだか…ひんっ…あたま…あたまがっ…変な感じが…しますっ…んぁっ!」

メイド「…む」

メイド「なんですかそのしまりのない顔は」

ご主人「言わなくても分かるだろ」

メイド「…ご主人様」

ご主人「…ん?」

メイド「…好きです」

ご主人「よし結婚するか」

メイド「い、いや、まだ早いですよ」

ご主人「…好き」

メイド「…はい」

ご主人「あー後で恥ずかしい思い出になりそうだな」

メイド「いいじゃないですか、私たちまだ若いんですから」

ご主人「…そうだな」

メイド「私たちなら何でも乗り越えられますよ…きっと」

ご主人「…何でもじゃなくて大抵はでもいいか?」

メイド「もう…」

メイド「今まで、すっごくいい人生でしたよ」

ご主人「俺も最高の人生だった」

ご主人「好きなことやって嫌なことから逃げて…最後にこんな可愛い嫁さん貰ってね」

メイド「嫁じゃないです!」

ご主人「…こんなかわいいメイドさんに恵まれてね」

メイド「ご主人様ちょっとガタイいいですし大きいですし…王子様ではないかもしれませんが」

ご主人「君を守る兵士だからな」

メイド「精神的な事だけでなく肉体的な事でも守ってほしいですわ」

ご主人「…頑張る」

ご主人「それじゃ、精神的にも肉体的にも…メイドさん、これからもよろしくね」

メイド「はい…!」

ご主人「俺たちはたった二人の部隊だ…栄光に向かって旗を振り回して前進すチュッ

ご主人「…不意打ちはやめてくれ」

メイド「えへへ」

ご主人「改めて…これからもよろしくね、メイドさん」

メイド「はい!お仕事ですから!」

ご主人「本心は?」

メイド「………好き」

ご主人「ありがとう、俺に毎朝ボルシチを作ってサモワールで紅茶沸かしてくれあと俺のつけたサーロを黒パンに乗っけてだなそれでそれチュッ

メイド「…ふふっ」ギュッ


おわり

長々とありがとう
徹夜してしまった

ぼっちでも自分を軍人だと思い込んで胸張って生き延びた的なスレが今年の春ぐらいに建ってて、創作の中では完璧に理解してくれる人が存在することで報われて欲しいなあとか思い立って書いた
軍歌歌うのとか二人の行軍とか色々考えてたけど忘れてた

インターネットライティングマンとしてはメイドssが少ないのは悲しいので次こそミリオタメイド書く
メイド万歳

まだ残ってたか
なんか考えよう

ご主人「アニメを見よう」

メイド「アニメですか…私は映画の方が」

ご主人「いいじゃん一話20分ちょいだし録画してあるから一気に見れるし」

メイド「それは私のお仕事ではありま「一人で見るの寂しいんだよ!」

メイド「はぁ…まあ今日のお仕事は終わりましたから…ご主人様のご命令とあれば」

ピロピロピロピロ

ご主人「おーかっこいい」

ゴーウィゴーウィヒカリッヘーwwwwww

メイド「スーツのデザインがすごいですね」

ご主人「元は成人向けだし」

メイド「ご主人様…そんなものを私と一緒に見ようとしているのですか?」ジトッ

ご主人「戦争映画よりは潤いがあるんじゃないかな…ミリタリーラブコメらしいし」

メイド「…ラブコメの方がキツいのではありませんか?」

ご主人「…二話まで行ったぞよし衝撃的だな」

メイド「…とりあえず見ましょうか」

オマエニモニッポンジンノチガ

メイド「…クッ…」

ニホンジンノセンサイサガナイト

ご主人「………ウッ……」

メイド「我が国の拷問技術はかなりのものである」

ご主人「ブブォ…やめろ…やめてくれ…」


ご主人「うん…面白かったよ…特にソ連軍の描写が」

メイド「これは…日本に置き換えるとオーストラリアあたりが作った映画で味方に自衛隊が出てくると思ったら真珠湾に騙し討ちを仕掛けてくるような感じですね」

ご主人「とりあえずハラキリとカミカゼやらせるんでしょ?あとバンザイ突撃も」

ご主人「もういい…アニメはしばらくやめよう」

ご主人「いらんことで時間を浪費してしまったが」

メイド「今日は何をしましょうか?」

ご主人「妄想の話でもするか」

メイド「ちなみにご主人様はいつもどんな事をお考えなのですか?」

ご主人「メイドさんが可愛いということかなHAHAHA」

メイド「あ、あの、お気持ちは嬉しいのですが…どう返せばいいのか反応に困ります」

ご主人「冗談だよ」

メイド「では私の事は考えてくださらないのですか!?」ガタッ

ご主人「いや、その…」

メイド「冗談です」ニコニコ

ご主人(なんか面倒臭くなってないか…?)

ご主人「俺には沢山の部下がいてな、こう…前進してるんだ」

ご主人「部下の名前はプライドとか社交力とか、まあそんな感じだ」

ご主人「進まない限りは死あるのみだからずっと前進していくわけだ」

ご主人「手元には古びたマスケット銃…横にいる読者モデルみたいなイケメンの部隊は最新式のアサルトライフルだ」

メイド「しかもボディーアーマーも着けてるんですね」

ご主人「俺たちはひらひらとか返しとかがついた布の服だ…テルシオだな」

メイド「格好いいじゃないですか、テルシオ」

ご主人「…確かにそこに俺の自愛が現れてるのかもしれないな」

ご主人「そして開戦!ほら貝やらドラムやらがなって部隊は前進を始めていくわけだ」

ご主人「いや、俺たちが戦場に来るずっと前から始まってたのかもな」

メイド「敵は何ですか?」

ご主人「学校とか人間関係とか…とにかくそういうものだ」

ご主人「時々戦争狂がいてそういうのに進んで飛び込んでいく奴がいる…最初が一番多い」

メイド「ご主人様はそうなれなかったのですね、よよよ」

ご主人「メイドさんも似たようなもんでしょうが」

メイド「古傷をえぐりあうのは止めませんか?」

ご主人「…そうだな、やめよう」

パンツ脱いだ方が良い?

ご主人「生まれた赤ん坊がまず…ハイハイとか言葉とかを抜いたとして、最初に他人と衝突するのはいつだと思う?」

メイド「幼稚園ですか?」

ご主人「いいや、近所の公園だ」

ご主人「ここですでに戦争社会が勃発してるんだよなぁ…」

ザッザッザッザッ…

メイド「玩具の取り合いなどですね」

エーイム、ファイアッ!!

ガガガガガーン

ご主人「おお、そうこうしているうちに他の部隊から一斉射撃を受けたぞ」

>>147
多分ないから心配すんな

メイド「敵はまず同程度のマスケット銃ですね」

ご主人「中世の銃撃戦はチキンレースだ、最初に撃った方が負ける…」

メイド「じゃあこの勝負はご主人様の勝ちですね!」

ウワアアアア…リトリート!!……

ご主人「あっダメだ!指揮も練度も低すぎて勝手に撤退始めた!」

バーン

ご主人「しかも士官のひとり、『勇気』を撃ち殺して敵前逃亡だ!」

ニゲロー

ご主人「大変だ!しかも経験値目当ての他部隊がわらわら寄ってきたぞ!!」

メイド「ご主人様…私悲しくなってきました」

ご主人「生きることは戦争だな」

ご主人「で、結局何人が生き残れたと思う?」

ご主人「兵士は無理矢理にでも補充されるから、士官の話だな」

メイド「えっと…とりあえず『勇気』と『リーダーシップ』は戦死してそうですね」

ご主人「『プライド』も重傷だな。妄想だから斧で足をぶったぎられる事もないが」

ご主人「まあおよそ人生はこうやって表現できる…部下が一人死に、また一人死に…補充されるのは老兵か子供に毛が生えた程度だ」

ご主人「士官はどんどん臆病になっていくし、つかの間の時間でする教練だって上手く行くとは限らない」

メイド「結局『プライド』さんはいつ戦死されたんですか?」

ご主人「低学年だ。メイドさんと会うちょっと前にね」

ご主人「『プライド』は死んで二階級特進、後任は臆病者だった」

ご主人「臆病者は俺に…同級生の戦列に並ぶのではなく、目立たないように一歩下がって損傷を避けるように戦えと言ったわけだ」

ご主人「メイドさんと会ってからというものの、俺の部隊は真っ向からぶつかることを避けてひたすら逃げ回ることにした」

ご主人「時々他の部隊から銃撃されても反撃を控えてね…ひたすらひたすら…」

メイド「ちょっと待ってください、つまりその部隊の隊長と言うか…その個人の能力が高ければ高いほど近代化されるのですよね?」

メイド「そうなるとどんどん部隊の必要とする兵士が減っていくような…」

ご主人「そうだね、マスケット銃、フュージリア銃、ライフル銃…部隊の構成人数はどんどん減っていく」

ご主人「つまり能力を高くして戦場を突っ走るのには何かを犠牲にしなきゃらならないんだ」

メイド「そんな…それじゃあ顔がかっこよくても全然恵まれないじゃないですか」

ご主人「他の部隊から支援を受けれるというのはでかいな、だが逆にお仲間になりたくない部隊まで寄ってくるわけだ」

ご主人「そういう部隊を銃撃して切り捨てられるか、そういう冷酷さが必要になると思う」

ご主人「しかもいい装備は嫉妬される…メイドさんも知ってるでしょ?」

メイド「………」

ご主人「俺はついてるよ、資金ブーストもあるし制服が派手だから相手をびびらせられる」

ご主人「そして何よりメイドさんがいる…かけがえのない同盟部隊だ」

メイド「…よくわかりませんが、喜んでもいいのでしょうか」

ご主人「戦場には休息や娯楽だって必要なんだよ」

ご主人「君のお陰で俺たちの部下は胸を張って前進できる…歌を歌いながらね」

メイド「つまり…何が仰りたいのですか?」

ご主人「…抱き締めてもいいかな」

ご主人「さっき人生を戦争に例えたけど、今は総力戦は流行らないからあんまり例えにならないかもね」

メイド「小難しい事は忘れて、ご主人様はただ私に抱き締められていればいいのですわ」

ご主人「抱き締めたいって言ったんだけどなぁ…まあいいか」

メイド「…ふふ」ギュッ

メイド「ご主人様、いかがですか?」

ご主人「ああ…エプロンドレスが冷たくていい感じだな…」

メイド「ふふ、何ですかそれ」クスクス

ご主人「…眠くなってきた」

メイド「膝枕して差し上げますわ」

ご主人「いや、それは…」

メイド「歴史の講義はもう沢山、今は寝てくださいませ」

ご主人「…わかったよ、おやすみ」

●原点回帰

ご主人「おはようメイドさん」

メイド「はい、おはようございますご主人様」

ご主人「行ってきます」

メイド「はい、行ってらっしゃいませ」

ご主人「………」

メイド「どうかされましたか?」

ご主人(おかしい…いつもならマフラーを巻くのにかこつけて抱きつきに来るはず!)

ご主人「…いや、そのマフラーを」

メイド「はい、マフラーはここにありますが?」ニコニコ

ご主人「いや、巻いてほしいかなーって…」

メイド「それは私のお仕事ではありませんわ」ニコニコ

ご主人「分かったよ…」スルスル

ご主人「俺何かした?」

メイド「いいえ、何も」ニコニコ

メイド「見ました?あのご主人様のお顔!」

使用人A「寂しそうだったわね」

使用人B「どうしたの?いつもはべったりなのに」

メイド「べ、ベタベタなんかしてません!」

使用人A「はいはい。それで今回はどんなバカな事を考えたの?」

メイド「ドイツの生んだ名将…マンシュタインは背後からの一撃という戦法を創り出しました」

メイド「つまりこっちが引くふりをして、敵が追撃をかけたところを後ろから回り込んで攻撃するんです!」

使用人B「…あの、それとこれとどんな関係が」

メイド「私が引いて、ご主人様が追ってきた所を後ろから攻めるんです!」

使用人A「…背後からの一撃関係なくない?」

メイド「………♪」ニコニコ

使用人A「あの子時々凄く抜けてる気がする」

使用人B「外見はキツめな感じなのにね…だから可愛いんだけど」

ご主人「ただいま」

メイド「お帰りなさいませ」

使用人A「す、すっごい無表情…」



ご主人「メイドさん、あのさ…「紅茶の用意が出来ております」


ご主人「メイドさん…「すみません、いまちょっと取り込み中でして」


ご主人「メイドさ…「消灯時間は過ぎてますよ」


ご主人「うーん、少し最近ベタベタし過ぎてたかな…ちょっと距離を置くか」

メイド「あ、あれ…追撃してこない」コソコソ

使用人B「作戦は失敗ね」

使用人A「いい歳して何やってんのよ…」

メイド「うぅ…どうしてこんな事に」

園丁「ブァッハハハハハ!!!傑作じゃねえか!!!」

メイド「わ、笑わないでください!」

園丁「そんなもん今まで通り嬢ちゃんの方から近づけばいいだろ」

メイド「そんなのダメです!ご主人様の方から近付いていただかないと」

園丁「そりゃどうしてだよ」

メイド「主導権を握らないと…ご主人様…裏切り…浮気…」ゴゴゴゴゴ

園丁「…おい、怖いぞ」

園丁「誓ったならそれごときで離れていったりしないだろ」

園丁「それにいちゃつきが無くなっただけで基本的な家事は嬢ちゃんが遣ってるんだろ?」

園丁「本気で嫌いだったらそれすらもしないって分かってるさ」

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