壁の中の巨人の覚醒、壁の崩壊、巨人の襲来、内戦…地獄と化した壁内。人類の黄昏。しかし一人の女が舞い戻る。ある少女を助けるために…
――中央第一憲兵団某施設地下牢
ジェル・サネス「……あまり我々を舐めない方がいい。巨人の状態なら未だしも人間の状態で警備を突破できると思ったか?」
ユミル「……………(ギシ)」
ユミルはシーナ内部、中央憲兵団の地下牢で拘束されていた。ボロボロの衣服の上から縄がきつく食い込む。
椅子に縛り付けられているのだ。手足が無骨な肘掛と脚にきつく結わえられていた。
ジェル「…何故ここを襲撃した?」
ユミル「……あいつはどこだ?(ドグッ!!)……げは!?っかっ……ハッ!!」
ジェル・サネス…老年の中央憲兵であるその男の拳がみぞおちを捉える。椅子に座らされているせいで受け流せずにまともに喰らい、悶絶するユミル。
ジェル「……………やはりあのガキか。立場がわかってないようだな。例のものを」コト…
トレーの上に置かれたのは裁縫に使うような普通の金属の針だった。ジェルはそれをユミルの右人差し指の爪にあてがう。肉と爪の間に。
ジェル「質問はシンプルだ。座標の在り処はどこだ?」
ユミル「……………………あいつに会わせろ……(ズブ)…っぐううううう!?」
爪の半ば以上に針が食い込んでいた。爪床の肉が引き裂かれ、爪本体が無理やり引き剥がされ、甚大な苦痛で指全体がじんじん痺れた。
ユミル「んぐうッ!?…っぐう…ぎ…!!」
想像よりも更に上の痛み。ユミルの顔がのけぞり脂汗が吹き出る。
ジェル「いいか?お前にできるのはさっさと質問に答えて早くあのお嬢ちゃんを楽にすることだけだ」
ユミル「はあ、はあ、てめえ……ッ!!あいつに何かしたなっ!?」
ジェル「…なあ、壁の中の絶望的な状況を何とかできるのは座標だけだと思わないか?必死で探してる。女の子を拷問にかけるぐらい」
ユミル「ま、まさかあいつにもっ…!!本当にこんなことを…!」
ジェル「もう俺たちにはお前達の口を割る以外に残された道はないのだ。拷問は苛烈になるだろう」
ジェル「わかるだろ?あっちはもう死んだ方がよっぽど幸せだと思うような目に遭ってる。さっさと吐いた方がいい」
ユミル「てめええっっ………!!あいつに、あいつに何を……っ!!」
ジェル「ヒストリア・レイス……レイス家の直系…壁教の裏切り者との接触…。どこまで秘密を知っているのか。まだ吐かないから拷問を続ける。だが…」
ジェル「お前が座標の在り処を喋ればそれでいいんだ。あの少女の命だけは助けてやろう」
ユミル「都合のいい嘘を…どうせ殺す気だろう!?ヒストリアに会わせろ!!」
さらに、針が内部に侵入してきた。切っ先が肉に刺さり、それをえぐり、掘り進む。
ユミル「おぐううっぐうううううううう!!」
――二日前。クリスタはユミルと同じように地下牢で椅子に拘束されていた。平服だった。
クリスタ「ここは?」
ジェル「地下牢とだけ言っておこう。どうやってここへ来たか分るか?お前らは町に来てる間、ずっと監視されていたんだよ。買い出しだったのか?」
ジェル「随分無用心だったな。一人になるとは。バレずに薬で眠らせて拉致するのは造作もなかった」
クリスタは自分の迂闊さに死にたくなった。みんなあれほど手をつくして匿ってくれたのに…
ジェル「さて……まずは名前から聞こうか?」
クリスタ「…………」
自分の名前…本当の名前……もう、決して偽らない。そう約束したあの…もうどんな状況でも偽名は使いたくなかった。たとえそれが愚かなことでも。
クリスタ「わたしはヒストリア、ヒストリア・レイス。それ以外のことは喋らない。」
ジェル「…ふっ、ずいぶん簡単に重要なことを言ってくれたな…他の事は言わんか。まあいい」
手の甲まで縄で肘掛に固定され、満足に動かせない白く澄んだ右手。その人差し指の爪と肉の間に針があてがわれる。
ジェル「まあゆっくり訊くさ。お前がレイスの者であるかぎり座標に必ずつながっている…これはきついぞ?。大の男も泣き叫ぶ」
途端にクリスタ、青ざめる。これから自分にされることを思うと頭がクラクラした。
クリスタ「あ………………(ユミル……!助け……!)…な、なにも…し……しりませ……ん(ズグ)………!?」
クリスタ「きゃああああああ!!!」
ユミル「ぎゃああああああああああああ!!!」ガクガクビク!
椅子を揺らして痛みに悶えるユミル。その指の爪には十本全てに針が突き刺さっている。
ジェル「どうした?もう嫌か、おい…あの少女はここらへんで喋ったぞ」
ユミル「て、てめえええ!!よくも、よくもヒストリアにいいいいいいがああああああああ!!!」グチチ…
ジェルが左手小指に刺さった一本をつまみ、左右にスイングさせた。一本の筋だった傷が扇状に広がり、その分爪が肉から離れる。
あまりの痛みに喉が裂けそうになるほど声を張り上げるユミル。声をあげすぎて血の味がする。思わず涙が目に溜まる。
ジェル「涙を浮かべるか。気が強そうでいて所詮は女だな。嗜虐心をそそる…しかし…」
ジェル「随分耐えるなあ。埒が明かん…それならあっちも今一度拷問してみるか」
ユミル「ま………待て!!んぎいいい!!………っぐ………ヒ、ヒストリアに手を出すんじゃねえ………っ!!」
ジェル「ならお前が喋ってくれるのか?止めたいのなら座標のありかを教えてくれ」
ユミルはもちろんエレンの居場所など知らない。だが知らないとわかれば殺されるだろう。
時間を稼いでクリスタとともに脱出する機会を探るしかなかった。
――ニ日前
爪への拷問の末、クリスタは同期たちの居場所を吐いてしまった。リヴァイ班は移動した後だったが。
ジェル「…無駄足だったか。だがヒストリア・レイスとして知っていることはまだまだ在るはずだ」
クリスタ(い…う…爪が……あ…私がなにか知っていると思ってる?ヒストリアとしての私が…)
ジェル「答えろ。なぜ突然元の名を名乗り始めた?レイス家の秘密をどれだけ知っている?座標が関係しているのだろう?」
クリスタ(言えない…というより知らない。この人達が欲していることを知らないとわかったら殺される…)
クリスタ(耐えるしかないんだ、きっと、誰かが助けに来てくれる…!絶対諦めない、約束したんだ、ユミルと生きるって、生きてユミルと会うんだ!)
クリスタ「し…知りませ(バキ!)うう!?」
思い切り殴られる。右耳の辺だ。耳がキーンと鳴って少しの間使い物にならなくなる。
ジェル「…ニックの接触とレイスの隠し子が元の名を名乗り始めたこと…看過できない。なにかある」
クリスタ(やっぱり私がヒストリアに戻ったせいなんだ。でも平気。このぐらい耐えられなきゃユミルとの約束通り元の名を名乗って生きることなんて…)
ボグ!!
クリスタ「ぐぶ…!?おええ……」ダラリ…
腹に拳が一撃。座ったままの姿勢への暴行は効果的だ。胃を揺さぶられ胃液を少し戻してしまう。
ジェル「上玉であることだし顔はやめたほうがいいな…よしこいつを例の場所へ運べ」
…ザッパーン
クリスタ「がぼ!!…がぼぶ!…ぶぼおお!……」バチャバチャバチャ!
ついさっきまでクリスタは手足を縛られたまま男たちに運ばれていた。抵抗しても当然降ろしてもらえなかった。
そこにいきなりこれである。なんの予告もなく放り投げられたと思ったら水の中にドボンだ。その恐怖たるや想像に難くない。
もがいてももがいても手足が縛られていては満足に体を浮かすことができず、顔が水面に出るタイミングは限られていた。パニックでさらに事態は悪くなる。
衣服が水を吸って重くなる。さらに動きが制限されていく。呼吸器を冷たい水が洗うのを感じる。
ザバアア…
クリスタ「げほッ!!ごぼぉ!!あ…か…けはっ、けはっ…ぅぇ…」
完全な呼吸困難に陥り、いよいよパニックが深まった頃、唐突に引き上げられた。
ジェル「おい、生きてるか?……どうだ?憲兵団式の水遊びは……どう感じた?」
クリスタ「ゲホ……はあ、はあ……」
ジェル「予定ではまだまだ水浴びしてもらうことになっているが…例のことを喋ればキャンセルだ?どうだ?キャンセルするか?」
知っていようがいまいが喋れば死だろう。クリスタは沈黙を守る。
次は水槽の真上に逆さ釣りにされた。滑車を通した縄一本でゆらゆらと吊り下げられる。錘を体に括りつけられたので水に入れば簡単に沈むだろう。
邪魔なスカートは破られて取り除かれ、白い腿と下着があらわだ。美しい金髪が垂れ下がり可愛らしい額が見える。
ジェル「よし、降ろせ」……ギシ…ギリギリギリ
ゆっくりと縄が降り、下がっていくクリスタの体。まず金の髪が水面に着いて広がる。
頭部に冷たい水を感じると逆さのまま水に浸かる恐怖に反射的に腹筋を使って頭を起こす。何もせず上下反対に水に浸かれば窒息は必至だ。
ジャバア!
クリスタ「ぐぶう!?」
縄を掴んでクリスタの体重を支えていた憲兵が手を離す。錘のせいで一気に水の中に突っ込む。膝から上が水面上であとはみんな水の中だ。
今度はなんとかパニックは起こさずに済んだ。それでも完全に水没だ。死の恐怖に平常心ではいられない。それでも必死で息をこらえるクリスタ。
全力で腹筋に力を入れて体をくの字に曲げて頭部が完全には逆さにならないようにする。鼻から水が侵入しないように。必死な様子は水面から覗いても分かった。
筋肉の緊張で酸素はさらに消費される。一分で限界が来る。ごぼお、と大きな気泡がクリスタの口から吐出された。
あまりの苦しみに水中で悲鳴を上げてしまったのだ。それからは地獄だ。冷たい水が体内に流れ込み、肺が焼けるように熱くなる。
水中で体をくねらせ頭を振って苦しみに耐えるクリスタ。美しい金の髪がゆらゆら動くさまは海藻のようにも見える。
最後の気泡が絞り出され、動きが鈍くなる。やっと引き上げられる。気を失っているのか力なく逆さにだらりと垂れ下がる。
なかなか意識が戻らないのでこれはまずいと二三回顔を張られる。げぼお、と水を吐き出すクリスタ。
クリスタ「げほごほがふ!!!…ごほ…がほ…ぐふ…(し…死んじゃうよお…たすけ…ユミ…ル)
ジャポ…
今度は静かにゆっくりと水面下に入れられる。先ほどと同じ姿勢で耐えるクリスタ。眼と唇をぎゅっと結び、先程よりも体力がきつそうだ。
今度はもっと楽な姿勢を模索して、少しでも長く息を維持しようとする。心臓の鼓動が妙に大きく感じる。
しかし結局限界を迎えるまで憲兵達は引き上げてはくれない。耐えたとしても苦しみが長引くようなものだ。
やがて身体全体が痙攣し始める。キーンと耳鳴りが始まったかと思うとだんだん大きくなり、鼓動の音を上回る。
気泡が口から解放されてしまう…水の中で踊る。死の恐怖の中窒息の苦しみに地獄を味わう。
何度そんな責めが繰り返されただろう。それはまるでクリスタの願いを神が聞き入れたかのようだった。
ガンガンガンガン!!
ジェル「何が起こった!?」
憲兵見張り「巨人だ!この地下牢のある施設の真上に!!7m級!!」
クリスタ(ユミル……!!)
そして地下施設へ侵入するために巨人体を捨てたところで捕まったユミルであった。
ジェル「お前が来てピンときたんだ。ヒストリアのためだろうとね。やはりそうだったわけだ」
ユミル「はあ………はあ…………はあ…………」
十本の指から針を生やした痛々しい姿で荒い息をする。ヒストリアもこんな目にあったというのか…いやこれ以上…?
ジェル「喋ればふたりとも助けてやる。お前が喋らなくてもヒストリア・レイスの口を割らせるための道具として利用価値はあるからいいのだが」
ユミル「………(なんとか………隙を見つけて………この場で巨人化できるだろうか?)
ジェル「ああ、巨人化しようなどと考えるなよ。ここは地下50mだ。生き埋めではあのガキを助けられんぞ?お前が喋れば二人を助けてやると言ってるだろう?」
ユミル(座標のことを喋っても殺されるだけだ……なんとか、なんとかチャンスを………!)
ジェル「さて…このまま責め立てても効果は薄かろう。望み通りあの少女にあわせてやる」
そう言ういながらユミルの指先にうずまった針をグリグリとかき回す。
メリ…メチチメリ
ユミル「ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
爪の根元の方で針先が踊り、円を描くように肉を削った。
次の日、ユミルは台の上に寝かされていた。裸に剥かれて手足は固定されいる。
裸にされようがどう辱められようがもうどうでもよかった。頭にあるのはヒストリア…あの少女のことだけだ。
ユミル(こんなまね…されてないだろうな?)
ユミル「おい、ヒストリアに会わせてくれるんじゃないのか」
ジェル「無論そのつもりだ。だが、我々としても保険がほしいのでね」ズブ
ユミル「(ズチュ…)う…ッ!?」
メスで乱暴に開かれる腹。腹膜まで一気に切開。眉に力をこめて痛みに耐えるユミル。ジェルの手がユミルの開け放たれた腹へと突っ込まれる。
ジェル「いいか?これは貴様の巨人の力を封じる措置だ」
ユミル「な…に!?うぐうう!?」ビク!
ジェルの手が腹を上へと登り、胃をぬるりと撫でた。
ジェル「すでに我々は巨人の力のメカニズムを把握している。こうして重要臓器に処置をすれば…巨人化は不可能だ」
ユミル「ぐむ…な…そんな…ば…んがあああ!!」
既にジェルの手は胸の当たりに達している。強烈な痛みと不快感にブリッジのようにのけぞるユミル。
ぶすっと鋲が打ち込まれた。心臓だった。重要臓器は最優先で再生される。鋲がある限り再生は完了しない、再生中には巨人化できない。そういう理屈だった。
二人の少女が一緒の牢に入れられたのは、その日の夜だった。
――トロスト区奪還作戦より一週間後・調査兵団訓練キャンプ:夜
クリスタ「…うぐっ…ひっく…」
ユミル「泣くくらいなら入るなっつったろうが…」
クリスタ「…ぐす…」
ユミル「…ったく。隣のベッドで毎晩泣き声聞かされる身にもなれってんだ…散歩だ、付き合え」
ユミル「調査兵が怖いか?やっと死ぬのが怖くなったか?……お前、また死に場所をなんて考えてないだろうな?」
クリスタ「……」
ユミル「他のやつらは本気で人類に心臓を捧げるつもりでやってるって言うのに…実際あれには感動したよ、あのジャンまで…」
クリスタ「……なんか……白々しいなぁ……ユミルだってそうじゃないんでしょ!?何で調査兵団に入ったの!?」
ユミル「ッハ!ホントにまっとうな理由で入ったわけじゃないのか」
クリスタ「……っ!そうじゃない、そうじゃないけど………」
ユミル「………正直に言えよ。死にたいのは本当なのか?まだそんなこと思ってんのか?」
クリスタ「……」
ユミル「お前はさあ、ホントはちゃんと考えてるんだよ。今何をするべきかって。ただいざってなるとホントが引っ込んじまう…わざわざ死ぬ方を選んだりな」
クリスタ「そう…なのかな?なんでそんなことがわかるの?」
ユミル「結婚したいからだよ、いとしのクリスタ~♪」
クリスタ「真面目に答えてよッ!…なんか、もう、ここまでくると…ちょっと気持ち悪いなぁ…何考えてるかわからないもん」
クリスタ「そりゃあ、私たち友だちだよ!?でも…ここまでするかなぁ…私が調査兵団に行くからあなたもそうしたんでしょ?なんで…死ぬかもしれないんだよ?」
ユミル(…そりゃそうだろうよ。何も説明していないからな)
クリスタ「は…っ!?あ…っく……ひゅ、ひゅ、ひゅ…」
ユミル「クリスタ!?」
訓練兵時代のことだ。時々こういう時があった。訓練がきつかった日の夜はいつもクリスタは過呼吸の発作を起こした。
ユミル「おい、大丈夫か!?まず息を吐け、ふーって…よしおさまって来たな………ん?なんだって?」
クリスタ「(ブツブツブツ…)お母さん、お母さん、お母さん、お母さん……」
ユミル「クリスタ、もう平気か?………うわ言で言ってたが、母親がそんなに恋しいか?」
クリスタ「え?……わからない。もういないし。覚えてるのは生まれてこなきゃよかったって、そう強く思われてたことだけ…」
ユミル「…………お前っ!?…本当かそれ……ッ!!」
辛い思い出…クリスタの過去にはそれしかなかった。ならばせめて…
ユミル「ホラ、ぶどう酒だってよ。飲んじまえば案外いけるって」ガシ、グイ!
クリスタ「がぶぶ!ごぶぉ!」
サシャ「やめたげてくださいよォ!」
コニー「ギャッハハ!クソ女ひっでーなwwww」
ユミル(なら………せめて…………これからは楽しい思い出を少しずつ………)
ユミル(案外自身の感情は周りに見せねえよな…見せるのは献身的な態度ばかりで…そうしてなきゃいられないのか?)
ユミル(内心かなり危うい均衡で今の状態保ってんだろうな…献身もそのための心理機制ってことか)
ユミル(…………ここまでほっとけねえ状態とはなー……)
ユミル「お前あの芋女に言ってただろ?ありのままでいいって。あれお前のことだよな?」
ユミル「お前、、、自分がありのまま生きてるとでも思ってんのか?そんなのは大間違いだね」
ユミル「いいか、クリスタ、、、お前は運命の奴隷の今の境遇を自分で選んだものだと勘違いしてるんだ」
ユミル「お前は作った自分で生きてく必要なんてないんだよ…」
クリスタ「そう…なのかな…あまりよくわからない…」
クリスタ「……私ね、言われたんだ。お前なんか生まれてこなければよかったって」
ユミル「……………ああ、聞いた」
クリスタ「だれからも…だれからも必要とされなかった。だから、必死だったの。必要とされる人間になりたいって」
ユミル「…そんなのは運命に囚われてるるだけだ、クリスタ…本当にそうしたいわけじゃねえだろ?」
クリスタ「わからない…わたしは本当は別の生き方をしたいと思ってる…のかな?」
ユミル(……私がお前を肯定してやれれば、もっと自分を信じられるようになってくれるか…?)
クリスタ「なんで…私にそこまでするの?」
ユミル「クリスタ…安心してくれよ。私がここにいるのは 全て自分のためなんだ」
ユミル(そう言ったらあいつ、心底安心したように笑って…笑うとこじゃねえだろ)
ユミル(他人も信じられないのか?自分のために誰かが何かをしてくれる、それがそんなに不思議か?)
ユミル(雪山のときもそうだ。考えの外なんだろうな。誰かが自分を助けてくれるなんて言うのは)
ユミル(危なっかしくてほっとけねえよ。それでも、自分を肯定できるなら…)
ユミル(胸張って自分の名前を言えるなら、もう、大丈夫…だよな?)
ユミル(私がいなくても…)
だが、ユミルは戻った。死と悲鳴の溢れる壁の中へ。
死に物狂いであの少女を探す中央地下に捕まっているという情報だけを頼りに無茶な行動を取るしかない。
ユミル「ヒストリアーーーーッ!!」
ユミル「まさか…レイスであること…そのことがここまでやばいものを呼び込んじまうとは…迂闊だった…」
お情けで与えられたボロをまとい、お情けで灯された灯りの下、二人は薄汚れた地下牢で再会を果たした。
ユミル「ヒストリア……!ああ、無事か?何もされなかったか?」
クリスタ「ユミルこそ、大丈夫だった?」
ユミル「バカいえ、私はこの通り何の怪我もしちゃいない」
クリスタ「うそ、ユミルは治るから簡単に隠せるよ…痛いことされたんでしょ?」
クリスタ、手を伸ばしユミルの頬に手を当てる。母のように優しいしぐさで……ユミル、たまらなくなるも、情けない顔はしない。
ユミル「ヒストリア、手を見せろ!(ぐっ)………やっぱり……くそ!」
十本の爪に赤い血の筋が縦に走る。間違い様もない、拷問の後だった。他にも何かされたのはジェルの口ぶりから確実だ。ユミル、クリスタを抱きしめる。
クリスタ「(ぎゅ!)あ…」
やっと安心できる空間が提供された、そんな感覚だった。愛する人の腕の中というのは絶対の居場所なのだ。
ユミル「すまない、ヒストリア……っ!私が来るのが遅かったばっかりに…!」
クリスタ「ううん、遅くなんかない。来てくれて……ありがとう」
申し訳程度の食事を口にし、その夜は手をつないで寝た。明け方、いつの間にかクリスタを抱きしめていたユミル。クリスタは涙でユミルの胸を濡らしていた。
次の日、二人は手錠をはめられ、地下通路を歩かされていた。ユミルが前に出て、クリスタがその後ろを行く。無論周りは憲兵が固める。
唐突に地上に出た。
ユミル「(ボソ…)バカが」
ユミル(巨人の左半身でヒストリアを抱え右半身でこのジジイを殺る…できるか?人殺し…)
自分の前を歩く老憲兵、ジェル・サネスを見る。そして振り返り、クリスタを見る。
強い瞳だ、怯えを必死に隠しているのだ。早く楽にしてやりたかった。前を見る。
ユミル「(いや、やるんだ…)まぬけが。死ね」ガリ!
出血と痛みでユミルは呻いた。それだけだった。
ジェル「お前…さっき何かしたか?」
かなり歩いた後、ようやく口を開いたジェル。ユミルはあの瞬間から狼狽しっぱなしだ。
ユミル「…………………………(なぜ…………………いてえ)」
自傷の痛みを感じるなど何年ぶりだろう。巨人化に失敗する練度のユミルではない。前日の処置は確かに効果を示していた。
クリスタとユミルはそれぞれ別な棟に連れて行かれた。別れる時、クリスタは縋るような目をユミルに向けた。
しかしユミルは巨人化不能という現実を受け止めきれない絶望の表情をクリスタに見せるわけにもいかず、努めて最愛の人を見ないようにした…
女憲兵「自分の身を差し出すか、片割れの身を差し出すか」
クリスタは石壁の牢の中でそう告げられる。
クリスタ「それってどういう………」
女憲兵「貴族の坊ちゃんがあなたたち二人に興味をお持ちです。どちらかと結ばれたいと。ですがどちらかにするかはあなたたちに選ばせると」
クリスタはそれが何を意味するのか、何をされるのかピンとこないウブな少女だ。しかしよくないことが待っているのは分かる。取るべき行動は当然……
クリスタ・ユミル「「私の身を捧げる」」
二人は二人とも自己犠牲を選んだ。そうすればもう一方は助かるという約束で。
坊「いっぶううううううううう」ズダン!ズダン!
クリスタ「あ、あの…初めまして…」カタカタカタカタ
クリスタは間違いなく約束を信じていただろう。ユミルは間違いなく約束を信じていなかっただろう。
現実は、順番すら選ぶことができないというものだったのだ。どうすることができただろう。
その肥えた巨漢は生まれつきの障害を傲慢な貴族流の教育によって悪魔的な人格へと発展させていた。
彼の「恋人」はことごとく壊された。彼は上半身裸でよだれを垂らしながら無垢な少女を毒牙にかけんとにじり寄った。
ジェル「…どうやら気に入ってくれたかな、あの池沼」
二人を別々の牢に連れ込んだあと、執務室で書類を整理する。これは職務とは別個のビジネスであった。報酬はジェルの懐だ。
ジェルは素直に情報を得るためだけに捕虜を使うほど職務に忠実でもない。そして混乱の状況下でもこんなことをするくらいには人類の危機を本気で考えてもいないのだった。
クリスタ「お願い、待って、落ち着いて!?じっとして、ね?…お願いだから…(ぶん!)っひ!」
坊「おばあああああああああああ」
まずは殴ってひれ伏させるのが彼の戦法だ。しかしクリスタとて兵士過程を修了し、討伐経験すらある兵士。
並大抵のことでは捕まらない。ましてや相手は素人以下だ。力とスピードだけならかわすのは造作もない。
そのまま何分が経過しただろう。兵士であるクリスタはそう体力がないわけではない。だが彼は疲労困憊していた。目の前の女を好きにできないなど初めてだった。
坊「ひが…ひが、いいいいいいぎゃあああああああ」ドカドカドカドカ
地団駄を踏んで癇癪を起こす。よだれを撒き散らし、太い手足を存分にふるって感情を発散させる。その醜い姿は何処か哀れみすら覚えさせるもので…
クリスタ「あ、あの…」
クリスタの優しさ、献身は豊かな精神からくるものではない。愛情を受けたことに乏しいからこそ、与えることで自分の存在を確認するしかない。
少しでも情けを掛ける余地があればそうせずにはいられのだ。ゆっくり近づいていく。それは隙以外の何物でもなかった。
坊「ままああああああああああああああああああ!!!!」ズドン!
クリスタ「きゃあっ!?」ドガ!
一瞬で組みつかれ、壁に押し付けられたクリスタ。風呂になど入らぬ悪臭の匂い立つ体を押し付けられる。
坊「おっぎゃあああああ、まま、ままあああああああ」ビリビリ!
クリスタ「い、いや、やめ…!!」ジタバタ
捕まってしまえば力の差は絶望的だ。もがくことしかできない。ボロ服は引き裂かれ、クリスタは裸同然となる。
坊「ぶぎゅううう」ベロベロブジュルジュル クリスタ「うぐ………ぶ……や、やめ………ん………」
クリスタの端正で可愛らしい顔が舐めまわされる。粘液まみれの耐えられないほど臭いヒルが顔の上でのたうちまわるのだ。
それでも女神クリスタの心は嫌悪を感じない。彼女は…自分が可愛くないのだ。必死の抵抗も自暴自棄の癖が鈍らせる。
クリスタ「や、やめ………(あたし、ほんきでいやがってない?…はは、何でだろう…)
坊「むむむうううぷうう」ジュバ!チュパ! クリスタ「…ッッ!!!…むぐ…んんぶ‥むううっ!」
ついに紫の舌ベロがクリスタの口に侵入した。ここぞとばかりに美少女の温かな口内を舐め回す。唇の裏から始まり歯を舐り回す。
くすぐったい天井を舐め、小さな可愛らしい舌にナメクジの交尾のように襲いかかってはニュルニュルと絡みつく。
クリスタ「(チュパ…ジュルル、ジュルゥ…ぶちゅちゅ…チュパチュパ)む…んんんん…んぁ…(大丈夫、耐えられる、こんなの…!)」
本気では抵抗できない自分。何をしているのだろう。今まさに乙女の一番大切なものが最悪の形で侵害されているというのに。
だがクリスタは抵抗できない。どんな理不尽も、ただ耐え過ぎ去るのを待つことで対処してきたのだ…だが…
クリスタ(本当に…それでいいの?)
ユミル『何でその殺意が自分に向くんだよ!?その気合がありゃ自分の運命だって変えられるんじゃねぇのか!?』
ユミル『お前…胸張って生きろよ』
瞬間、体が熱くなる。力が湧いてくる。ああ、そうか、こうしちゃいられない…やらなくちゃいけないんだ…
クリスタ「……… ッ!!どいて……!!うんんっ!!」グイ!
坊「おあ?」ネチョオオオオ
クリスタ「離して…!私は、ユミルの対等の友達、ヒストリア!…子供の頃の、何もできないヒストリアじゃない…っ!」
クリスタ「今までの自分を大事にできないクリスタでもない、私はユミルと生きるんだあああ!!」
ズボオ!
坊「ッぎゃいいいいいいいいいいい!!??」
ミカサに教わったのだ、眼球に指を突っ込む暴漢対処法。こうもうまくできると思わなかった。男の体がクリスタから離れる。
クリスタ「ごめんなさい……(今のうちにあの窓からなんとか……)(ガシ!…グイイイイ!)え!?…あああぁぁ!?」ガツっ……
坊「ぶがあああああああああああああああああああああああああああああ」ボカ!ドカ!ドカ
クリスタ「グ……あ………ぎ……(ガツン!!)きゃあッ!!………うっく……ゆ、ゆる……(ドボ!)ッギャ!!」
脱した瞬間、足を掴まれ引き戻された。そして次の瞬間にはマウントでしこたま殴られていた。何度も、何度も。ヒストリアの決意は砕かれた。
バキ!ドカ!ガキ!
クリスタ「いぎ、ぎ…うぐうぅっ!!」
顔面に集中してパウンドが叩き込まれる。ガードも効かない。どれくらい暴力が続いただろう…クリスタの顔に幾つも痣ができた頃、それはやむ。
クリスタ「はあ、はあ、はあぁー……っぐ、かふ……けほ」
口の中の傷から出血し、少量、血を吐く。白痴の男はそれを見て興奮していた。
坊「ぶふぅーっ、ぶふぅーっ(ガバっ)くぷふうううううう」
クリスタ「うぐう!?お、重……い………」
全体重をかけて覆いかぶさる巨体。クリスタは潰れる寸前だ。抵抗も無力で…男は唐突にズボンを脱ぐ。もぞもぞと下腿を動かして不器用に。
ボロっ、と黒くて長いボサボサの陰毛に覆われた肉のホースがこぼれた。ムクムクと硬度を得ていく。
クリスタは腿に硬いものが当たるのを感じた。それが何かはわからなかったが……断片的な知識と本能が最大限の警鐘を鳴らす。
クリスタ「え………あ………なに……?や、やめて…………っ!!」
坊「ぐぼああああああああああああ」がばっ、ぶじゅるじゅる
クリスタ「あああぁ……そんな、そんなっ!舐め……ないで………ひいぃう!」ピクっ
クリスタの秘部、すべすべした腹に走る美しい縦筋の向かう先、真っ白でぷっくら丸みを帯びた下腹部のさらに下、金色の茂みの元。
男は起き上がって無理矢理クリスタのまたを押し開くとそこに顔をうずめた。じゅぼじゅぼと卑猥な音を立てながら唾液をまぶして行く。
ちゅぱ……じゅばば
クリスタ「い、いやあ……んん!?」
坊「ぶひゅ、びゅひゅひゅ」びちゃびちゃベロベロ
15歳のまだまだ開かぬ縦の肉の筋、太いベロが無理矢理割入ってその入り口を夢中で舐め回す。ただただおぞましい。
クリスタ「やっ、やっ、っくううう!?やめて、やめてーーーーーーーっ!」ピク…ピク
抵抗を馬鹿力で抑え込みつつ数分…十分にぬめったようである。
坊「おっっきゃしゃああああああああああああん」ズブブ!
クリスタ「いた……っ!い、いやああああああああああああ」ガクガクガクガク
坊「ひゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおほほほ!」グチュ!ププ!
空気の抜ける音とともに男根が膣にはまる。出血は並以上だった。
坊「おぶ!おぶうぅ!おぶっ!!」パン、パン、パン、パン!
クリスタ「痛い!痛……っ!あああぁ!んんん!………ふ………っくうう!?」ズグッ!ズグッ!
肥大したできものだらけの尻が大きな動きで前後するたび、長大な男根がずるりずるりと引き出され、また突き刺すように少女の体内に消えていく。
坊「ふぉおおおおおっっっっっっっっ!!!!」パンパンパンパンパンパンパンパン!
クリスタ「いやああ!!痛いいいいい!!やめて!!お願い!お願いだから!!ぁあああああ!!」ズボズボグチュチチチ
そのスピードは見る間に増し、ぐちょぐちょという音とともに唾液なのかカウパー腺液なのかわからないものと少女の血の混合をあたりに撒き散らす。
男は上半身を限界まで前に傾けて貪るように少女の口を吸う。両手は白くて小さな腰をしっかりホールドし逃がさない。
白くてまるい尻を鷲掴みにし、揉みしだく。巨体の重みに呻くクリスタ。そんな地獄のような獣のレイプを行うこと十数分、終わりが来る。
坊「(ズム!)おっぷうううううううううう!!」ドプピュピュ…
クリスタ「んむぅぅぅ!?おえ………」ずびゅぴゅ
繋がった上の口からは唾液、繋がった下の口からは精液を注がれながら吐き気に襲われるクリスタ。
ピストンが止み、クリスタを押しつぶしたままぐったりする男。これで終わりか?クリスタはそう思った。
しかしそれはこれから数時間に及ぶ凌辱の序章に過ぎなかったのだ…
――その夜
ユミル「………相手って……こいつかよ」
坊「へきゃっ!」
不自然な待ち時間を訝しみながらユミルは約束の時を迎えた。
奴らの約束―クリスタには手を出さないこと―は本気では信じていないが、まさかいまさっき暴虐が執行されたとは夢にも思っていない。
ともかく、ユミルは努めて相手を満足させようとする。
ユミル「(本気かよ…まあいい、しゃーねえなあ…)ほら、好きにしろよ。私だってそう経験があるわけじゃないが優しく…」
ゴキ!
ユミル「…ッ!?ぐふう!?」
坊「ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
いきなりの顔面パンチ。彼は決して静まることなどないのだ。組み倒され、裸にされる。
ユミル「ック……ちょ…!?落ち着け……って!!(ガブ、ブチ)ぎや!?」
とっさに出した指を噛まれ、食いちぎられる。彼はこの女は多少乱暴に扱っても問題ないと何度も説明され、なんとかそう理解しているのだ。
それはレイプよりはリンチに近いものだった。いや、巨人の再生能力を持たない者なら死んでしまってもおかしくなかった。
ユミル「や…やめろ!やめてくれえ!!(ブチ)っぎゃああッ!!」
ペンチのような指で摘みちぎられたのは右耳だ。始まって10分もでもう既にユミルはボロボロ。
押し倒された時、石の壁を必死に掴んで抵抗したために爪はいくつも剥がれ、皮膚が破けている。
ユミル「こ、こんな…っ!こんなやり方が…あるかよ!?(ボグ!)ぐああ!」
殴られながら悪態をつくユミル。抵抗するも、女性にしては長身だが痩せ型の体型は彼の巨体の前では頼りない。
彼がユミルの胸にかぶりつく。
坊「むっふうう~~~…」グチッ
ユミル「そんな…まさか…っ…それはやめ(グチグチブチチ)うっぐううううううう!!??」ビクビクビク
噛みちぎられる乳首…ねじ折られる指…ほじくられる眼球…それからの数時間、万事こんな調子であった。
クリスタで満足していた彼は昆虫をもてあそぶようにユミルを扱い、久々に満ち足りた気分で家のものに連れられ帰っていった。
――深夜、再生の終わったユミルはクリスタのいる地下牢に放り込まれた。二人とも裸のままだ。
ユミル「…………………ヒストリア…?」
クリスタ「…………………………………ユ…ミ………る…」
小柄で金髪の美しい少女は無残な姿でそこに横たわっていた。何時間そこで一人でいたのだろう。身動ぎする気力もなく…
ユミル「あ…あ…あ…う、うそだろ…まさか、そんな…あぁ…ヒストリア…ッ!!」グ!
痣だらけの背中を掴んでこちらに向けさせる。…その顔は無残に腫れ上がっていた。体中に痣があった。そしてどうやら…犯されたらしいことにも気付く。
ユミル「~~~ッッ!!あぁ……こんな…!」
クリスタ「ユ…ミル?ユミル…だよね?……あぁ…よかった……私、ちょっと心細…」
ユミル「しゃべるな!じっとしてろ……!!」
クリスタがしゃべるたびに切れた唇から血が滲んだ。敷物すらない冷たい石の牢のなかで横たわっていたので冷えきっている。その体を確かめる。
骨は折れていないようであった。触診するたびにクリスタが呻く。……いたたまれなかった。そして約束を守らなかった憲兵への例え様もない怒り。
しかしそんなものに気を取られている場合ではない。介抱を続ける。手足、無事。指も食われたりしていない。
目も耳も大丈夫。顔も体も痣と腫れが酷いが緊急を要する怪我ではない。問題は……
ユミル「ヒストリア、手、動くか?」
無言で首を横に振るクリスタ。
ユミル「………なら…ここ、触るぞ?」
そこからは血と精液の混ざったピンクの液体が流れ出てきていた。
ピト、クプ…
クリスタ「ぃ!……うぅ……」
ユミル「痛いか!?………ごめんな、でもこのままじゃあ…」
妊娠。それが頭にあった。いまさら粘液を排出して回避できるものでもないだろうが、少しでもその可能性を低めたかった。
そして単純にこのままでは不衛生なのと…おぞましいのとがあった。膣の粘膜は巨大な力のピストンでところどころ裂け、引き伸ばされていた。
ユミル「………指、入れるぞ。掻き出さなきゃいられないだろ、これ…」ヌル…
クリスタ「ぅぁっ!!」ぎゅ…っ!
クリスタがユミルにしがみつく。痛いのだ、焼けるように。ユミルはクリスタを抱き返し、クリスタはユミルにしがみつく。
クリスタ「うっ…うっ…うっぅ…ユミル…いい、いいの、もう…」
涙。自分が可哀想だったり自暴自棄で泣くというよりも、友に自分の陰部の世話をさせる気恥ずかしさ情けなさが大きかった。
ユミル「いいってことはないだろ…自分でできるか?」
クリスタ「……………………………………自分じゃ痛くてできない…お願い………」
ユミル「…………」グプ、ヌプ…ヌチョ
クリスタ「ひぅ!(ビク!)……ひぎ…(ビク!)……うぅ~~…」
順調に汚濁が取り除かれていく。ユミルの気を遣った慎重な手つきでも、膣内の傷を擦られるたびにクリスタの体は痛みに跳ねた。
ヌチ、ヌチチ…ヌプニュ
クリスタ「くぅぅ…うぐう!?」ぎうううう
二人は横になったままきつく抱き合っていた。そうせねば耐えられない。
お互いにお互いの背中に手を回し、力いっぱい相手を引き寄せる。ユミルの右手はクリスタの股間で愛撫するように動く。
クリスタは必死で刺激をこらえる。ユミルの手のひらにクリスタの茂みが触れる。
しかしこれらは同性愛者のセックスではない。生きるための処置なのだ。生き残ったあとを普通に生きていくための…。
ユミルは右手をクリスタから離すと、左手でまとわりついた汚液を取り除く。体内に残った精液は大部分が除去できたが、まだまだ残っている。
ユミル「……ヒストリア、痛いか?」
クリスタ「…………………………少し」
少しでないことは体の震えや強張りから明らかであった。このまま膣内に指を入れてするのは限界だろう。
ユミル、そっとクリスタの体を離し、足の方へと身を向ける。クリスタにはユミルが何をするつもりかわかってしまった。
クリスタ「ユ、ユミル…!何をするつもりなの…!?へ、変なことはやめて…」
ユミル「これしかないんだ、ヒストリア。恥ずかしいかもしれないが我慢してくれ…ほら、四つん這いになれ」
ぴとっと、ユミルの唇がクリスタの陰唇に触れる。ユミルには嫌悪も妙な気持ちもなかった。その証拠に動きにはよどみがない。ただ、クリスタのことを想って。
ジュボボボボ…ぺっ!
四つん這いになったクリスタ。その膣内の精液を口ですすり出し、吐き出して捨てる。鼻がクリスタの肛門に触れるが、全く気にならない。
ジュブ、ズボボ……ペッ!ジュブブボボ…っぺ!
クリスタ「………ふ……!?」ピク…ピク
ユミル「……スー…フゥ………」
クリスタの尿道からのものとは異質な強い小便の臭いもする。膣内で放尿されていたのだ。
ジュルッ!……ジュズズ…ジュズ…っぺ!
クリスタ「………………ぅ」
ジュロロロ…ズズッズ…ッペ!
クリスタ「……………………」
ズピュブズズ…ジュルル…………ちゅるるるる……ちゅる…っぺ!
クリスタ「…~~~~~~ッッ!!もうやめてよ!!」
驚いて顔を上げ、一瞬呆けたユミルの口から汚液が糸を引いて流れた。
ユミル「…ヒストリア?元気、戻ったか?」
クリスタ「………ねえ、何で?何でここまでするの?あなたは…友達だよ?でも…でも…」
力なく崩れるクリスタ。尻だけが高く上がったまま。声を上げずに泣く。ユミルには申し訳ないが、屈辱に限りなく近い恥ずかしさを感じていた。
クリスタ「うっ、うっ、うっ…もう…いや…こんな思いするくらいならいっそ…!」
ユミル「…悪い。焦って…いきなりはさすがに面食らったか」
もうクリスタの膣内はあらかた綺麗になっていた。
クリスタ「うぅ~……うううう……」
クリスタは泣き続けている。ユミルは自分が大変なことをしてしまったのではないかと後悔し始める。
この行為で最悪な事態を完全に防げたとは思わないが、こうすること自体が間違いだとは思えなかった。それでも…
ユミル「…………………大丈夫だ、ヒストリア…こんなもんなんともないんだ」
返事はなかった。
その日は離れて寝た。
――翌日、二人ともとある貴族の牧場に裸のまま連れて来られていた。もう服を着せてもらう機会は来そうにない。
ヒヒィィィィン!
貴族「へえ、こいつらか!さっそくこの馬と交わってもらおう」
ユミル「………は?」 クリスタ「………え?」
馬屋に連れて来られた時は馬に繋がれ引き回されるものだとばかり思っていたが…その若い貴族の希望は予想を超えたものだった。
貴族「何人も交尾させてるんだけどみんなすぐ死んじゃってねえ、巨人なら耐えられるだろ?」
虚ろな目で痣だらけの裸体を隠していたクリスタ、青ざめてユミルを見る。
貴族「君が嫌ならそっちの小さな嬢ちゃんでもいいんだけど…」
ユミル「やる!やらせてくれ!」
その馬は小さめとは言え体重はゆうに400キロ近くあり、普通に考えれば人と交わらせるのは無理があった。
それでも貴族による奴隷の死人を出しながらの試行錯誤により、重症で済むないし即死はしない工夫がなされていた。行為中に死なれては興ざめだからだ。
その未去勢の雄馬は足の蹄鉄が外され、代わりにやわらかい毛皮が何重にも巻かれて保護されている。
体重の乗った踏みつけの威力は軽減できなくとも、ちょっと打ち付けた程度なら相手を簡単に死に至らしめたりはしない。
交合は女側が立ちバックの姿勢で行うが、そのままでは馬が乗っかった時に手足がボッキリ折れるので、女を馬の形をした丸みを帯びた台の上に乗せて行う。
そして肝心の膣の保護・拡張だが…これは巨人の再生復元能力に依拠するということでカットされた。
そしてもうひとつこの獣姦ショーの常とは違う工夫があった。
貴族の下男が持ってきたのは奇妙な鞍だ。華美な装飾が施されたそれは真ん中から男根を模した木製の張り型が生えていて…
貴族「せっかく二人いるんだからね、お馬さんの相手しない方も参加しなきゃ。君は馬の扱いがとっても得意だって聞いてるよ?」
クリスタを見ながら言う。何をされるのかよくわからない風のクリスタ。察したユミルが口を出す。
ユミル「ま…待ってくれ!こいつは昨日の件でその…怪我をしてるんだ、あまり無茶なことはさせないでやってくれるか!?」
聞こえないふりをされた。
――馬屋の中
クリスタ「ね?大丈夫だから…始まっても暴れないでね?…ね?」
クリスタがこれからしばし付き合うことになる件の馬の頭を飽きしめて優しくなだめていた。馬の機嫌如何で友人の苦しみや生死が決定するのだ。
ユミルはうずくまって下を向いている。正直、怖かった。男との経験はないわけではないが、さすがにこれから起こることに恐怖しないわけではない。
クリスタ「大丈夫…」ぎゅ
ユミル「…っ!」
クリスタが落ち込むユミルを抱きしめてくれた。
ユミルはしまったと思った。この受難の間中、自分はずっとクリスタを支えようと思っていたのに…甘えたところを見せてしまって逆に自分が慰められて…
クリスタ「きっと、無事に終われるから。だから、二人で耐えよう?」
牧場の芝生で開かれたパーティ。件の催しがよく見えるよう、それが行われるステージを円形に囲んだ観覧席。
そこに陣取るワイン片手の十数人の貴族たち。みなニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。獣姦ショーの常連達だった。
馬屋の中で準備が進む。下男達に抱えられたクリスタは馬の上に移動させられ、鞍に生えた男根の上に慎重にその身を落とされる。
ズブブブブ…
クリスタ「ひう!?」ビク!
昨日散々えぐられて裂け目の入った膣がまた張り形で擦られ痛みに呻く。油がまぶしてあったので新たな傷はできなかったが…
ユミル「ヒストリア!」
クリスタ「……っくうう…ッ!?」
クリスタは外見は裸で普通に馬にまたがっているだけに見えるが、実際は鞍から垂直に突き立つ棒が体内に入り込んでいるのだ。
下男「さあ、こっちだ。お披露目だ」
馬屋から出ればもう衆目にさらされることになる。二人の裸の少女は拍手に迎えられた…
貴族たちの拍手の中二人と一頭はステージまで歩く。ユミルは裸を衆目に晒されることに抵抗を感じこそすれ開き直ることはできた。
気になるのはもう一人の少女の事ばかりだ。白い体に点々と紫の斑を作ったその可憐な少女は馬が揺れるたびに唇や眉を苦悶に歪めた。
体内で張り型ががたがたと揺れて傷をえぐるのだ。
ガチン!
ユミル「…っ!」
ステージについた後、ユミルは台に手足を拘束される。木の臼を抱えるような格好でその上にうつ伏せになる。
台を抱えるように、立ちバックで挿入されるのを待つわけだ。ユミルの尻側の貴族たちがヒソヒソと陰部の品評を始める。さすがに感じる屈辱。
ユミル(このくらいヒストリアが感じている恥辱に比べれば…)
クリスタも相方のことばかり心配していた。馬の首の影に裸の背中が見えた。
クリスタ「ユミル…(こんな大きな子が乗ったらユミル死んじゃうよ…こんなのって…)」
裸を見られてニヤニヤされることなどもう気にもならない。
クリスタ(せめて…ユミルが無事に済むように、精一杯この子をなだめて…!)
かねてからの段取り通りにそれは始まった。
下男によりユミルの膣に油が塗られる。入り口の周りにまぶした後、念入りに内部にも。
恥ずかしさよりもこれからされることを思って心臓がバクバクと大きく鳴る。
ユミル(大丈夫、大丈夫だ…ヒストリアが御してるんだから…)
クリスタは手綱を握ることが許されているも、交尾中の馬を何とか出来る自信はない。
下男は油が十分馴染んだことを確認すると膣に両手の指を三本ずつ突っ込んでぐいっと左右に割り開く。
ユミル「…っぐ!?」
貴族「ふーん、もっと使い込んでるかと思ったのになあ。これじゃあ裂けるかも。っま、巨人だから死にはしないか。じゃ、やっちゃって」
下男が馬を引っ張る。ユミルの体の匂いがわかるほど近づいた馬。ユミルに塗られた油には雌馬の汗と膣液が混入されているのだ。
ダメ押しに下男がついさっき雌馬の体を拭いた布を馬にかがせる。むくむくっと長大なペニスが硬くなった。
それは太さは人間の腕くらい、長さはまるで槍だ。この馬、何人もの人間の女と交わったが、半数をこの槍で内蔵損傷させ突き殺しているのだ。
クリスタ「あ…!(なにこれ、普通の時と全然違……ああ!だめ、お願い、おとなしく…)っきゃあ!」
ブルルッ!ドカッ!
ユミル「んぎ…ッ!!」ギウウウ
ユミルの乗る台に乗りかかる馬、台と馬の巨体の間で潰れかけるユミル。馬は既に腰を振っているが狙いが定まらない。
目標になかなか収まることのできないペニスを下男がむんずと掴んでユミルの中心へと導いた。
ズムッ!ズムムズブブブブブブブブブブ!!
ユミル「ぐっ……っは!!」ビクビク!
貴族たち「おお~~~~~~っ!」パチパチパチ
その肉の槍はユミルの心臓よりビクビクと激しく脈打っていて信じられない程熱かった。大きさは言わずもがな、大人の拳がめり込んでくるようだ。
一センチ一センチ入ってくるたびにめりめりとユミルの肉をかき分け、押し広げ、蹂躙していく。異物感が腹部全体に広がる。
ユミル「ごっ…ふ…お、おぐえええ……」ピク、ピク、ピク
亀頭が押し入ってきてから、ユミルは動けなかった。少しでも動けば股が裂けると思った。何かが聞こえる。
クリスタ「ユミルーっ!!!ユミルーーーっっ!!!!」
ユミル「ヒ…スト……リ…(ズン!!!!!)ぎゃふっ!!!???」
次の瞬間、馬が腰を突き上げた。衝撃で台が少し動いた。ユミルの体重と合わせて100キロのそれが動くほどの衝撃をユミルの膣は受けたのだ。
ユミルの体は受け入れられる限界まで巨大な肉の槍をおさめてしまっていた。この殺人的な一撃で肉体的な損傷が生じなかったのは奇跡と言っていい。
ユミルは飛びそうな意識の中、酒瓶を連想した。それが何本か一列になって一気に突っ込まれたような圧迫感だった。
次の瞬間、酒瓶が一気に引き抜かれる…
ズボボボボボ…ズズンッ!!!!!
ユミル「んごああああああ!!!!」
また一突き。引きぬかれていく時の圧迫感の消失に一瞬気が緩み、全身の力を抜いてしまうユミル。そこへ繰り出される人間には不可能な力の一突き。
ズン!!
ユミル「ぎいいいいいいいいい!!!!………っくうう……!!」プルプル
押し込まれると陰唇は巻き込まれて内側へねじ込まれ、引き抜かれると膣壁の一部とともに外側へめくれる。
ズン!!!
ユミル「ひぎっひいいい!!??」
突かれるたびにへその裏を超えて侵入してくるのがはっきりわかる。肉の槍は子宮口を超えて膣の最奥を捉え、さらに奥の内蔵にまで衝撃を轟かせる。
クリスタ「ユミルゥ!ユミルゥ!!お願い、いうことを聞いて…優しくしてあげ…(ズン!!)ううう!!」
苦しみ呻くのはユミルだけではない。クリスタもだ。跨る馬が腰をふるたびに鞍から生える張り型がクリスタの中をかき回す。
馬の動きに合わせて動く張り型、それにつられて揺れるクリスタの体。馬の強大な力が張り型を通してクリスタの膣を引き裂く。
ヒヒィィィィィィィィイン!!!ズン!!ズン!!ズン!!
ユミル「あああああああああああああああああああああああああああああああ」
クリスタ「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
馬は完全に自らのペースで動き始めた。ユミルは肉槍で内蔵を殴られ、クリスタはまるでロデオのように揺れる馬の躍動を膣で受け止める。
宴は始まったばかりだ。
ズン!!ズン!!ズン!!
ユミル「ひゅぅ‥ひゅう…(ズン!!)ぎゃあああああああ!!!……ひゅ…(ズン!!)ぎあああああああ!!!」
ユミルは殺人的ピストンに耐え切れず、突かれるたびに大声を上げ、しがみついている台を力いっぱい抱きしめる。
ガクン!ガクン!ガクン!
クリスタ「(メリリ)いっ…つつ!?(ガクガク、ミリ)いううううう!!…(ガクン!)っきゃああああ!!」
クリスタは必死で腰を動かして馬の動きに追従する。少しでもずれれば最悪張り型が膣を突き破るだろう。
馬のペニスにさらに血液が集中する。
ユミル「(ムクムク)う!?…うごおおおおお!!!うああああ!!!(ズン!!…プチ)あああああぎゃあああああああああああああああ!!!!」
ついに裂けるユミルの膣。それでも構わず馬は暴力のストロークを続ける。
ズン!!ズン!!ズン!!
クリスタ「いやあああ!!ユミル!!ユミルううう!!!あああああああ!!!」
ユミルの異変を察知したのかクリスタがユミルの名を呼ぶがユミル、返事をすることもできない。クリスタも他人の心配をしてられる状況ではない。
ベキベキ、っとユミルの乗る台が悲鳴を上げ始める。ユミルは体内を行き来する拳大の亀頭がさらに膨らむのを感じた。
ユミル「(ズン!)あ…ぐあ…(ズン!!)…が…(ズピュ!!)…ううううう!!!」
ホースからほとばしるような射精であった。
ブヒヒィィィイイイイイイイイイイイイイン!!!!
ドス!!ぶびゅううるるるっるるるるるるるるる!!!!ドクドク
ユミル「が…っく…うお…」プルプルプル
ユミルの温かい膣内で、膨らんでトランペットのようになったペニスからドボドボと蛇口を捻ったかのような勢いの液が飛び出る。
ブププ、という音とともにユミルのまんこから屁のように空気が抜けていく。尋常でない量の精液に押し出されているのだ。
交尾は、終わった。
ユミルは台にしがみつきすぎてすべての指の爪を剥がし、ぐったりと体を馬と台の間で挟まれるままにしている。
クリスタは途中で手綱を持つのをやめ、鞍の端を両手で掴んで必死に膣に押し付け、内部の張り型がズレないようにするほか無かった。
クリスタ「ユミル、ユミル、ごめんなさい…」
呆けたように空を見上げ泣きながらぶつぶつと呟く。馬の下にいるユミルの姿は確認できない。
長い射精を終えた馬が体重をユミルと台に預けるのをやめて、後ろに下がり始める。そのペニスが簡単にズルズル抜けるかといえば、そうでもない。
グブ…
ユミル「…!?…ひいっ!!」
ズグ…ヌプププププ…
ユミル「いぎ…ぎいいいい!!!」ビクビク!
ユミルの体が苦痛にうごめく。
クリスタ「……ユミル…!あ…もう……やめてあげて…」
馬がおとなしくなり、クリスタはもうそれほど苦しむことはない。しかしユミルは違った。まだ苦しみが残っているのだ。
ヌポポポポポ…
ユミル「ぐあああああああ!!!」
馬が後退し、ゆっくりペニスが引き抜かれるたびに強い刺激を感じるユミル。馬のペニスは射精時にさらに膨らみ、入る時以上の抵抗を抜くときにもたらす。
馬同士の交尾でも普通はペニスが萎えてから引き抜くものだが、この馬は勃起が維持されたまま抜こうとしているのだ。
ユミル「(ヌブ…ヌプププ)うぎいいいあああああ!!!」
まるで出産のような苦しみだ。裂けた膣壁がさらに押し広げられ出血する。拳よりも大きくなった亀頭が産道を下っていく。
それは十数秒に凝縮された出産だった。
ズル…ニュッポ!!
ユミル「ぐっはああああああああああああああああ!!!」…がくっ
気絶するユミル。負圧で子宮がめくれ、膣口から飛び出しそうであった。
――その夜 中央第一憲兵団の地下牢へ帰還後。無論、二人は裸のまま。
クリスタ「痛い…痛い…痛いよう……ううううう…」
ユミル「ヒストリア…」ぎゅ
クリスタは股の激痛を隠せず、ユミルの前で痛がる様を見せることになった。そのことがとても情けなく、悔しかった。
同じ年の少女なら泣き叫ぶであろう痛みでも、ユミルの前でなら頑張れる、強がってみせると心に決めていたのだったが…
歳相応に泣いて痛がっていた。それを抱きしめるユミル。
クリスタ「(ぎゅ)………やめてよ!!!」ばっ
はねのけてユミルから離れるクリスタ。
ユミル「………ヒストリア…」
クリスタ「ユミルはいいよね、治るから」
ユミルは怪我に苦しむことはない。ユミルは前日からヒストリア以上に受傷しているが、夜までには完全回復だ。
ユミル「……ヒストリア、頼む、今は休むことに集中してくれ」
その日も離れて寝た。バカなまねをしたと、自己嫌悪と痛みに苦しむクリスタだった。
ユミル(………)
ユミル(私のほうがひどいことされてるのに削れていくのはこいつの方ばかりかよ…)
――翌日。
ユミルはクリスタの傷を改めていた。膣を覗いて。四つん這いでそこをともに晒すクリスタはもう恥ずかしくもなかった。
クリスタ「…………ねえ、私達、友達だよね?」
ユミル「ハア!?今更なに言ってんだ………まあ、確かに相手の股啜ったり覗いたりする友達はいねーだろうけど」
クリスタにはユミルの献身を受け止めきれなかった。
ユミル「よし、傷は塞がってる。今日は無茶されなきゃいいが…」
中はかさぶたの作る斑点でざくろのようで酷い有り様だが、致命的な損傷はない。
クリスタ「…私がヒストリアを名乗ることにしたからこんなことに…?」
ユミル「…………………いいか、ヒストリア。私はずっと前から自分の名前を名乗ってきた。こんなもん障害さえ跳ね除けりゃなんてこと…」
そこまで言って、この拷問が果たして跳ね除けられるものだろうかと思う。クリスタのままならこうはならなかっただろう。
ユミルは自分の無二の大切な人をあまりにも過酷な運命に引き摺り込んだのでしまったのではないかと改めて実感し、後悔すら覚え始める。
ジェル「今日はこれをアソコにねじ込もうか?どちらがやる?」
それは角材だった。
ユミル「やる!やらせてくれ!」
ただの角材。断面は真四角で、その一辺の幅は数センチ。膣にも難なく受け入れられそうだったが、さすがに今のクリスタにそんなことはさせられない。
クリスタ「ユミル…っ!私に、私にやって下さい!!」
ユミル「ばか…!ヒストリア!!」
ジェル「どっちでもいいんだが…ヒストリア・レイスとしての情報がほしい現状と、おそらくヒストリアは自分の不幸より友人の不幸を痛がるタイプで…」
クリスタ「……~っ!!」
ユミル(…ホッ)
ジェル「巨人サマが相手ならもっと礼を尽くさなきゃな。ヒストリア・レイスにならこのままでもよかったんだが」
そう言うと革手袋をしてグルグルと角材に有刺鉄線を巻き付けていく…
ユミル「……は?」
ユミル「うッ……!?」グッ
憲兵団員の大の男四人に手足を掴まれ床に押さえつけられるユミル。手も足もそれぞれ両手でがっちり掴まれ自由にできない。
足はM字に広げられ、女陰は丸出しだ。その眼前に鉄の刺だらけの凶器がスタンバイされる。
芯となる角材の太さは昨日の馬のペニスの半分ほどだ。しかし巻きつけてある鉄線から出る太い鉄の針がもたらす効果はペニスなどとは比べ物に…
クリスタ「ユミルううううううううう!!やめてええええ!!!」
ジェル「やめて欲しいか?ならレイスとして知っていることを吐け。そうすれば座標の場所もわかるはずだ」
クリスタ「(…知らないとわかったら私もユミルも助からない…!)い、言えません…!(ごめんなさい、ユミル…!!)」
ジェル「そうか…おい、やれ」
角材を持っていた大男に目配せする。大男はグッと力を込めると、ハリネズミのような棒をユミルの真ん中の穴へと近づけていく…
プツ、プツツ
ユミル「うぐう!?」ビクっ!
トゲが陰唇に刺さり始める。体がびくっと反応するが押さえつけている男たちをはねのけられる訳もない。
先端部には特に念入りに有刺鉄線が巻きつけられていて、全方向にイガグリ状にトゲが飛び出ている。前方に向かって生える何本かが陰唇を突き刺したのだ。
ユミル「ぎぐううっふ!?…うぐううう…そ、そんなの……はいるわけ……」ガクガクブルブル
押さえつけられながら痛みに震えるユミル。そう、入るわけがない。それほど太くはないとはいえトゲだらけでは抵抗が強すぎる。
だがそのためにこの男は選ばれたのだ。中央憲兵一の馬鹿力を誇る巨漢だ。豪腕でこれをねじ込む手はずずだった。
大男「いきます……ふんっ!」グググ…ギュム、メチ…
ユミル「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
尿道と膣道の境の肉ひだを引き裂きながら、それはユミルへの侵入を開始する。
ジェル「なあ、本当に黙っているべきだと思うか?お前の大事な大事な恋人があんなに苦しんでるんだぜ?」
クリスタ(…とにかく黙ってるしかない………ああ、でも……こんなの……)
クリスタは自分が大切な友人を見捨てて無碍に苦しませているだけなのではないかと思い始める。だが他にどうすればいいというのだろう?
ジェル「おい…なんとか言え」
クリスタ「…」
ユミル「うぎゃああああああああああああああああああああああ」ブチブチブチ
大男「ふう、ふう、うおおおおおおおおお」ギュムウウウウウブチブチミチミチ
めくれた小陰唇が糸を引きながら幾つもの筋に分解して処女膜のひだのようにちぎれていく。肉片と血があたりに飛び散った。
トゲ付き角材は当然なかなか入っていかない。行きつ戻りつ、グリグリと回して肉を引き裂く。
グリグリ、メリメリグチチ
ユミル「ひあああああああああ!!!!しぬしぬしぬううううううああああああああ!!!!」ガン!ガン!
狂乱して唯一自由な頭を床に打ち付ける。ユミルは獣のように叫び、大の男四人がかりで抑えていてもはねのけそうなほど暴れている。
首をブンブン振って涙とよだれをまき散らす。女の部分をこれ以上ない方法で破壊される苦痛たるや筆舌に尽くしがたい。
友のあまりの狂態に青ざめていくクリスタだった。
ジェル「…っち、黙ったままかよ、クソガキ」
クリスタ「……」
ユミルの血がほとばしるような断末魔の如き絶叫をバックミュージックにジェルはその少女を問い詰める。
ジェル「クリスタ・レンズのままならわざわざ捕まえる必要もなかったんだ。仕事増やしやがって。レイス家に生まれちまったお前はいらないガキなんだよ!」
クリスタ(この人達は…)
ジェル「まあいい。じきに吐くか」
クリスタ(この人達は本当は何がしたいの?これじゃあただいたずらに痛めつけてるだけじゃあ…ユミルが…あんまりだよ)
もしかして本気では尋問してない?拷問が趣味?
彼らには自覚がなかった。ほとんど八つ当たりで拷問しているのに、それは仕事なんだと思い込んでいた。
情報が取れようが取れまいが拷問して殺すことが半分以上目的だった。そうすることしか知らなかったから。
憲兵団は履き違えていた。拷問の本質を。情報を取るためではなく「いつもやってる仕事だから」拷問をしているのだった。
実際の効果よりもいかに凄惨であるかが目標であった。それがこの混乱の状況下でも悠長に無駄な拷問をさせる理由だった。
その犠牲となる方からすればたまったものではない。
ユミル「うぎいいいいいいいこ、ころし…ぐううううああああああああああああ!!!」
クリスタの前では絶対に吐きたくないそんな言葉をつい口走りそうになるくらいに。
それはもう10センチ以上ユミルの体内に侵入していた。グルグルとドリルのように回され、小さくピストン運動しながら。
少しずつ後退と前進を繰り返しながら押し込まれ、引き出されるたびにちぎった肉片が膨大な量の血とともにあふれた。
ユミル「(ギュウ!ギュウ!)うぎいぃぃぃぃ…ぐぎぃぃぃぃぃぃぃ」
もう騒ぐ体力もない。膣に加えられる力と痛みは変わりなく甚大なままだったが、反応はどんどん鈍くなる。その股間から蒸気が上がり始める。
ジェル「限界か」
クリスタ「ユミル…うぐ……ひっぐ……うううう~~~」
見ているだけであってもあまりにも辛い。泣いてしまう。
ボキ!!!
突然、角材が折れてしまった。しまった、という顔の大男。有刺鉄線が巻かれた部分がそっくりそのままユミルの体内に残されたのだ。
ジェル「あーあ。どーすんだ、それ」
クリスタ「…!」タッ
大男「あ、おい!?」
思わず駆け寄るクリスタ。しかし止められることはなかった。ユミルを抱き起こす。ひゅう、ひゅうとか細い息。股間からは蒸気が上がる。再生しているようだ。
クリスタ「こんなこと、いくら何でもひどすぎます!第一に無意味です!私達は耐えられます!おねがい、もうやめて!!」
ジェル「何立場無視したわけわかんねえこと言ってんだこいつ…まあいい、今日はあとひとつで許してやるよ」
ユミル「(グッ)(ズキイイ!!)うぐうううう!!??」ガクガクガク
クリスタ「ユ、ユミル……!」
二人が今日の拷問を終えるために提示された条件。それはユミルが膣にトゲ角材の先端を入れたままこの地下牢を十周することであった。
クリスタをおぶって…
ユミル「ぐ…ぎ…っはあ、はあ、はあ」
憲兵A「ぎゃっはは!いいぞ~歩け歩け、ほら、あと9周半!」
憲兵B「がにまたwwwww女のくせにみっともねえぞwwwww」
女憲兵「はいはい、張った張った~今は『三周で倒れる』予想が最有力だよ~」
一歩一歩踏みしめるたびに激痛が走る。内股の筋肉がぴくりともすればもう地獄だ。自然とがにまたになる。見た目などどうでもいい。
ジェル「まあ余興にはちょうどいいんじゃねえか?」
憲兵A「最高っす先輩wwwwww」
もうこれに至っては拷問でも何でもない。面白半分の捕虜虐待である。しかしこれが憲兵の日常であった。二人の、貴族への提供もそう、腐敗の極地。
もはやクソのような「通常の職務」=拷問すら満足に履行できない組織なのだ。
歩くたびに股から血を流す。生理どころではない大量の出血。再生能力は失った質量すら補填するとはいえ限界があった。
…ユミルは4週目で前のめりに倒れた。そうでなくても責めの続行は既定路線だったが。
ユミル「ぐうううううぎいいいいい!!!!」ガクガク!
大男「ダメだ。抜けやしねえ」
ユミルの体内に残されたものを抜こうとする努力がなされた。やっとこを膣に差し込み挟んで引っぱり無理やり抜こうとする。
進行方向からの圧力でトゲが寝てしまいカエシになっているのだ。このままではなかなか抜けはすまい。
ユミルは痛みで気絶したり覚醒したりを散々繰り返し、意識のない間に中途半端になされた再生はトゲ角材を膣内に完全に癒着させていた。
にっちもさっちもいかないので、憲兵達は休憩となり、クリスタにやっとこを与えて抜かせることになる。クリスタはユミルの膣にそれを差し込んで角材の尻をつかむ。
クリスタ「大丈夫だよ、ユミル。すぐに楽にしてあげる(グッ)(こんなの抜けるわけない…ユミル、どうしたら…)」
ユミル「ば、ばか!やめ…ぐぎ…っつうう!!ちょ、い、一旦休ませてくれ…ハァ…ハァ」
お互いもはや精神的に限界が近い。早く終わらせたかった。このまま傷を放置してもいいなどとは考えもしない。ユミルはそれでもいいだろうがクリスタが許さない。
出血は再生しても止まらなかったのだ。早急に異物を取り除いて傷を塞がせるべきだった。
ユミル「いい、いいんだヒストリア。自分でやる…」
クリスタ「こんなに痛いこと自分でできるわけないじゃない…(こ、心を鬼にして早く取り出したほうが…ごめんね…ごめんね…)」グイ!
両手でやっとこを握って思い切り引っ張る。カエシとなったトゲが肉に食い込み引き裂き始める。
ユミル「(ブチブチミチチ)ぐっぁああああああああああああああああああ!!!」
格闘すること数十分。益はなく、ただユミルが苦痛で発狂寸前に追い詰められただけだった。
ユミル「ふうう…ふうぎゅ……はぁ、はあ、はあ…ひっぐ…」ブルブルブル
クリスタ「ごめんなさい、ごめんなさい、ユミル…ごめんなさい…」ポロポロ
自分の処置がただいたずらに友を苦しめただけなどもう耐えられない。
クリスタ「……ひぐ…あなたを…たすけようと……」
ユミル「い……いい…んだ………でも…ちょ…っと…疲れた……」
ジェル「あ、忘れてた。これで切って取り出せばいいんじゃないのか?再生するし」
からーん、と、ハサミが投げ込まれた。
呆然とする二人。しばらく後に、再び絶叫がひびいて、その後は静かなままだった。
その日以降も拷問は続く。
ジェル「今日は水責めだ。まず一方にこの瓶の水を飲ませる。飲みきれなかった分をもう一方に飲ませる」
ジェル「今日は単純に性欲処理だ。ヒストリア・レイス、君は兵達の間でずいぶん人気なようだぞ」
ジェル「ヒストリア・レイス、君は動物に好かれるそうだな。豚小屋で豚にかわいがってもらえ」
ジェル「今日なんだが…ヒストリア・レイス、貴族の方がご所望だ、こっちに…おい、生きてるのかそれ?」
捕まってからどのくらい経ったかわからなくなった頃。
冷たい牢の中で抱き合って暖を取る。ユミルもクリスタもストレスで限界だ。
そうして抱きあうことで何とか精神的回復を図るのがいつしかの日課だった。ただ抱きあうだけで胸のつかえが取れ、こわばった背中が軽くなった。
時には無言でお互いをさすり合う。まるで恋人同士のペッティングのように。それしかもう心を正気へとつなぎとめられなかった。
精神は限界だった。
クリスタ「ねえ、ユミル。あの巨人の群れの中で私、私たちのために生きようって言ったよね?どんな世界も怖くないって。でも…」
クリスタ「もう…どうでもいい。このまま死んでもいいような気がする…死ぬときは、一緒に…それでいい」
ユミル「またそんな…投げやりなんだよお前。もっと生きることに真剣になれよ。せっかく生きると決めたのに…!」
ユミル(あれ?それってライナーやベルトルトの方へ行ったときの私にも言える…?)
ユミル「…………ごめんな…………本当に」
クリスタ「……………………なぜ…私を置いて向こうへ行っちゃったの?」
ユミル「ヒストリア…私が間違っていたんだ…」
ユミル「お前はもう大丈夫だと思えたんだ…そしてお前のためなら…死ぬのも悪くないかとすら思ってしまった」
クリスタ「…………………(あなたがいないと、私………)
ユミル「なあ、ヒストリア…」
ユミル「あの塔で声を張り上げていたお前は本当に…あれを見て私は安心できたんだ。もう大丈夫だなって」
ユミル「あれは私への言葉というよりも、過去の自分、クリスタとしてのお前への言葉だったんだろう?」
ユミル「それまで屈服して死ぬことを肯定してばかりいたお前が、クリスタという本当のお前らしくない人格にとらわれていたお前がやっと…」
ユミル「真っ当に自分を肯定できたんだって。そう確信できたんだよ」
ユミル「お前は、お前のために生きていいんだぞ?私なんか構わずに…ここからなんとか逃がしてやるから」
本心だった。ユミルはその血の最後の一滴までこの金の髪の美しい少女に捧げるつもりだったのだ。今も昔も変わらず…
しかし…ユミルの自己犠牲はクリスタのためであるようでいてその実クリスタを傷つけるのだ。なぜならクリスタの望みは…
ユミル「……ヒストリア?大丈夫か?」
驚いて腕の中のクリスタを見る。この状況で返事がないことほど不安にさせるものはない。気を失ってしまっているのか?否、それとも…死…
クリスタ「ゅ……み…る」
ユミル「ヒストリア…!!」
クリスタ「ユミルの…ばか」
クリスタ「…ヒストリアって名前…その名前で呼ばれていたころはいいことなんか一つもなかった」
クリスタ「でもあなたに名前を言えた時はうれしかった…これから本当の意味であなたと友情を築けるんだって、そう思ったから…」
クリスタ「あれからずっとあなたとゆっくり話せないままだった…でも、やっと…」
クリスタ「ねえ…ユミル。……あなたに本当の名前を伝えてからも……いいことなんてなかったなあ…」
クリスタ「私……自分がクリスタだったころが懐かしい。幸せだったなあ…訓練はきつかったけど穏やかな日々で…あなたがいて…」
ユミル「……………」
クリスタ「ユミル…ごめんなさい…私もう、ヒストリアをやっていける力がないかも…運命に抗うって、こんなに大変なことだったんだ…」
クリスタ「ユミルはずっとこうして生きてきたんだね、すごいや」
ユミル「ヒ……」
もう、なんと呼んでやればいいか分らなかった。
クリスタ「………あなたは…私を利用してた。」
ユミル「…ッ!?そんなことは…ッ!!」
クリスタ「…あなたは本当はやさしい人なんだと思う。本当の意味で自己犠牲が出来る人」
ユミル「…」
クリスタ「でも、あなたは一度そんな自分の性質の犠牲になった。自分のために生きることが出来ずに…そうなんでしょ?」
ユミル「……っハ!……こんな状況でよくそんな分かった風なことが言えるな…!」
クリスタ「こんな状況で拗ねないでよ。…ねえ、聞いて。あなたは運命を否定したかったんでしょ?」
ユミル「ああ、クソみたいな運命だったよ。他人のための死を強制されて。それから私は必死に自分のために生きるよう努力してるってのにお前は…」
クリスタ「そう…あなたは私を無視できなかった。自分と似ている、自分と同じ道筋で自分の犠牲になろうとしている私を」
クリスタ「でもそれだけではどうして私にここまでつくしてくれるのか、全部は分らないけど…」
クリスタ「あなたはこれからは自分のために生きようと決めたのに…そういう生き方が出来なくなってしまったんだよね、あたしのせいで」
ユミル「…………お前のせいじゃない。私が……そうしたかったから」
クリスタ「あなたは自分をだましてる。本当は最初から最後まで私のためでしょ?自分のためには生きてない」
クリスタ「あなただって、以前の私と同じような破滅的な自己犠牲の心を持ってる。その心のために私を利用してるところがある。違う?」
クリスタ「ねえ、もしここを出られたら、ユミルは私だけのために生きないで。私達、二人のために、生きようよ…」
クリスタ「ねえ、ユミル…」
クリスタ「(ボキッ)っっきゃああああああああああああああああ!!!!」
その日はクリスタの悲鳴から始まった。これまでとは違う、取り返しのつかない破壊をもたらす拷問が始まったのだ。
ユミル「おい…なにして…そいつには再生能力なんて…これまでは気を遣ってただろう?そういうのは私に…」
椅子に縛り付けられた二人。クリスタの右手小指がペンチでねじりおられた。右へ左へとこねくり回され、ぷちぷちと腱の千切れる音が響く。
もうその指は使いものにならないであろう。ユミルの哀願もクリスタの絶叫にかき消された。
クリスタ「いやああああああ!!!!いぎいいい!!!きゃああああああ!!!」
クリスタは自分がどれだけ痛みに弱いかを知った。このくらいはユミルはいくらでも受けてきたのだ。しかし自分はユミルほどにも我慢できない。
情けなかった。申し訳なかった。今の彼女の心にはそれだけだ。憲兵の拷問官がもう一本にとりかかる。
ユミル「やめろ…やめろやめろやめろやめろやめてくれええええええええええ!!!!!!」
ジェル「ならお前が話すか?ムリだろうが。お前が知らないレイスの秘密をあいつは知っているはずだ。もう一週間は遊んでしまったからな」
ジェル「今さらだが焦っているのさ」
勝手な理屈だ。
ユミルは血涙のような熱い涙を流した。目の前で少女の手は無残な形になっていった。もう、なでてはもらえなそうだった。
クリスタ「いぎい…っくうう!?ひっ、っひ…いううううう!!」
ユミル「お、おい大丈夫か!?ヒス…ク…」
なんと呼べばいいのかわからないのは相変わらずだった。
クリスタ「(ブルブルブル)え…へへ……ヒストリアで…いいよ?そう…呼びたいでしょ?」
痛みに震えながら言葉を絞り出す。その手の指は10本すべてが折れ曲がり、ところどころ骨が飛び出している。常に感じる痛みで震えっぱなしだ。
簡単な添え木と包帯が渡されていた。これで自分たちで傷を塞げというのだ。もうユミルには拷問するつもりはなく、ただの介助要員なのかもしれない。
治療をしたとて、指の機能は戻りそうにない。かつての白く美しい指にはもう…。変化は不可逆だった。
ユミル「………………糞野郎どもが…」
次の日は歯だった。
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
クリスタ「いぎいいいいいいいいいいいいああああああああああああああああああああ!!!!」
立体機動装置の回転シャフトからドリルへと出力を取り出し、それでガリガリと削った。
ユミル「もう…………頼む…………やめてやってくれ…」
クリスタの歯は穴だらけだった。食事の際噛むこともままならず、ユミルがかわりにかんで口移しした。
もう助力にいちいち動揺しないクリスタ。
この世界に歯の治療手段などない。このまま放置すれば歯周病で命の問題になるかもしれない。ユミルも絶望的な気分だ。
助かったとして、どうするのか?未来はどんどん重くなる。ただ、いまは、手に血まみれの包帯を巻き、言葉を発する余力もないこの子を抱きしめるだけだった。
それ以降、もうユミルはクリスタとは一緒にされなくなった。別の牢になった。クリスタが何をされているかもわからず独房に放置された。
時折幾人もの憲兵がやってきて犯される以外は変化のない日々が続いた。あいつはどうしている?
きっとまた…取り返しの付かない拷問をされているのだろう。裸の憲兵の体の下にいる時すらクリスタのことを考えた。
その内、ユミルは脱走に成功することになる。ただ生かされているだけの状況は監視をゆるめたのだった。
無論、施設から脱出などせず愛する人の元へ急ぐ。無事でいてくれ…どうか、どうか。
――壁内に動乱の始まる前、新リヴァイ班の隠れ家にて
アルミン「あの二人、ちょっと二人だけの世界に入りすぎるきらいがあったよね」
エレン「なんだよいきなり。クリ…ヒストリアとユミルのことか?」
アルミン「うん。以前…クリスタだった頃はまだよかったよ?ちゃんと話をするのはユミルとだけだったけど、積極的に周りと関わろうとしてた」
アルミン「でも今は…そばにいないユミルをずっと幻視しているかのようだ。反応するのはユミルの話ばかり」
アルミン「離れ離れになってからのほうがより二人だけの世界にいる。それにヒストリアになってからはクリスタと呼ぶと返事すらしなくなったし」
アルミン「…周りとのコミュニケーションに支障をきたすくらいだ…明らかに悪い方向に行ってると思う」
エレン「でも、しかたないんじゃないか?今まで仲良かった奴が急にいなくなれば塞ぎこむもんだし」
アルミン「それだけならそれほど心配はいらないんだけどね…調査兵団である以上、死に別れることなんか日常だし」
アルミン「でもあの二人の場合、心理的にもっとのっぴきならない事情でつながっている気がする。」
クリスタ「………………ユミル」
クリスタ(絶対にユミルに教わった生き方で生きていくんだ…もう私はクリスタじゃない。ヒストリア・レイス…)
……そして今、暗闇の中、少女は思う。
クリスタ『人に言われて生き方変えることないよ!私には私の世界があるんだから』
クリスタ『今だってありのままの私の生き方でしょ?私はそれが好きだよ!』
クリスタ「……………そうだ…そうなのかもしれない。そう言えればよかったんだ、サシャに言ったように…」
クリスタ「…何でヒストリアに戻ろうとしたんだっけ…ああ、そうだ、ユミル…」
クリスタ「ユミルを理解したかったから………対等と呼べる友人になりたかったから」
クリスタ「…………ユミルが運命になんか負けないって、自分を貫く戦いをしてるなら、私も一緒に戦いたかった」
クリスタ「……………なりたかったんだ、戦友に」
クリスタ「………………………………………………でも…………」
クリスタ「……………本当に…これでよかったの?」
クリスタ「ヒストリアを名乗ることがこんなにつらいだなんて思わなかった…」
クリスタ「私…まだまだあなたがいなきゃダメみたい…ユミル、そばにいて…」
ユミル「う………そ…………だろ……………?あ……私が…わかるか?」
そこには変わり果てた姿のクリスタがいた。
クリスタ「だれ…?あ…………ユミル、なの?」
ユミル「ああ、そうだよ、助けに来た。急いでここを出よう。なんとか安全に脱出できるルートを発見したんだ…」
クリスタ「ごめんなさい…頭がぐわんぐわんして、あなたの声もあなたかどうかわからないの…ごめんなさい…」
クリスタ「眼は……こんなんなっちゃったし、あはは…」
ユミル「……~~~~~~ッ!!!くうう…」ポロポロ
ユミルはただ泣くしかなかった。
クリスタ「また、助けられちゃったね」
ユミル「すまない、すまない………私がお前にヒストリアを名乗らせなければ、こんなことには…」
クリス「ううん、いいの。言ったでしょ?あなたとならどんな世界も怖くないって。今、私、怖くないよ?」
ユミル「………行こうか、クリスタ……」
ユミルは膝から下のないその少女を背負って地下を進む。その軽さが悲しかった。再会してから一つだけ、はっきりまとめた考えがあった。
ユミル(あの薬さえあれば…!)
見張りのいないルートを進む。ふたりとも裸のままだが構っていられない。小声でクリスタを励ましつつ走り続ける。
ユミル「クリスタ…今は辛いかもしれないが、きっと事態は好転する。私もそうだった。世界から恨まれた私でも、こうして愛してくれる人ができた」
クリスタ「………私にも、もういるよ。愛してくれる人…」
ジェル「地上に出ても巨人化能力がなければどうしようもないだろうに。拙速だったな」
ユミル「………」
すぐに捕まってしまった。焦っていたのは確かだが、クリスタを放って先に逃げるなどできるはずもなかった。
ジェル「まあ、計算のうちだがな。最後の尋問がこれで実行できる。ああ、お前はもういいんだ。とりあえずそこで見てろ」
シュル…
ユミルは猿轡をされた。そしてそこにクリスタが運び込まれてきた。…自力で歩くなどもう不可能なのだ。
床に置かれる。指のない手で体を支えている。眼は潰されて…改めて見てもあまりにも痛々しい。ここまでされても正気を保ってくれたというのか…。
ジェル「じゃ、始めてくれ」
女拷問官がクリスタの前に歩み出た。ユミルはもう本当にやめてやってくれと心底思った。もういっそ…楽に…そんな考えもよぎる。
だが唯一の可能性、あの薬によるクリスタの治療を諦めるつもりもなかった。
ジェル「おれは…人間の邪悪さが好きさ。こうやってそれが発揮されるのを見ていると、胸がスーッとする。救われるんだ」
ジェル「お前のような男でも生きていていいんだって、神から言われてるような気がするんだよ」
ユミル「………むぐう(こいつ…何言ってんだ?)」
女拷問官「ヒストリア、大丈夫か?」
ユミル「!?」
クリスタ「ユミル…!?捕まったんじゃないの?大丈夫なの?」
腿だけとなった足の切断面を極力床に触れさせないようにずりずりと尻を擦って体の向きを変える。指の無い手で床を押してどうにかこうにか。
ユミル「うぐ…むぐう…」
ユミルはもう泣きそうだ。
グッ、バツン!
ユミル「むぐううううううううう!!!!」ビク!
クリスタ「え!?誰の声!?」
女拷問官「大丈夫だヒストリア、何の音もしていない!」
ユミルの右手が切り落とされた。
切り落とされた腕が女拷問官に渡される。その手のひらの部分をクリスタの頬に当てる。
女拷問官「(ピト…)ほら、これは私の腕だろ?わかるだろ?」
クリスタ「うん、ユミル、ユミルだよね?わかる、わかるよ…」
ユミル「んぐ~~~~~!!!!」ズダン!!ズダン!!
クリスタ「ああ、ユミル…また来てくれたんだね…知ってる…ユミルの手だ…ああ、ユミル…もう会えないかと…もう脱出できたの?」
女拷問官「ああ、ヒストリア…また会えてよかった…でも…あたしはお前を助けに来たんじゃないんだ」
クリスタ「…え?」
ベシイ!!
女拷問官の持ったユミルの腕がクリスタの頬を張った。なるべく自然な感じに、なるべく強く、痛く…
クリスタ「い、いた!?な、なんで…」
女拷問官「寝返ったんだよ…あいつらに…」
クリスタ「い、いやぁ…あなた、ユミルじゃない、ユミルなわけないよぉ…!!」
ユミル「う~~~~~~~~ん~~~~~~~~!!!!!」ガタガタガタ!!
クリスタ「な、なんの音!?」
女拷問官「だから音なんかしてねえよ。だいぶ耳がいかれてるようだな…じゃ、早く秘密喋れ」
クリスタ「そ、そんな!そんなの私知らないってあなたが一番わかってるじゃない!?何で…(言わされてる!?)(ギュ!)…ユ、ユミル!?」
女拷問官がクリスタを抱きしめた。なるべく優しく…五感の半分以上を失った少女を騙すなど造作もない。
女拷問官(すまない…!ヒストリア…!ほんの少し耐えてくれ…!でなきゃ私はこいつらに殺される…!大丈夫、これが終わったら助け出す!)
クリスタ(……………………………………言ったでしょ、私はいつもあなたの味方だって)
変わったつもりのクリスタだったが、世間知らずの騙されやすさはまだまだ拭えない。都合のいい解釈にも違和感を抱けない。
バシ!バシ!
クリスタ「いっ!くっ!…ああぁ!!」
手も足も無残に切り取られ、眼も潰され乳房も焼かれ、女陰も破壊され体中傷だらけの耳のイカれた少女。
それが切断された人間の腕で打ち据えられる…末法的というかなんというかもはや例えようもない無残さだ。
ジェル「くっくっく…あ~気分がいい。胸がすっとするね」
女拷問官「お願いだ!ヒストリア!秘密を喋ってくれ!!それがお前のためなんだあああ!!!」
クリスタ「…………あれ?ヒストリア…って」
クリスタ「ユミル…じゃない?」
女拷問官「え?」
ジェル「あ?」
ブチ
ユミル「うあああああああああああああああああああ!!!」
ユミルは体内に隠し持っていた短剣で縄を切るとそれを自分の心臓に突き刺した。なぜそうしたかはわからない。
だがそれは鋲を押しやり巨人化能力は心臓の再生が終わると取り戻された。
それからのことはよく覚えていない。気が付くと。巨人体で森の中をかけていた。
手のひらにはクリスタの姿があった。無論あの無残な姿のままだ。都合よくあの施設に巨人化の薬などない。ユミルはそれを探すつもりだった。
壁内の混乱はますます激しく、ユミルが巨人体で闊歩してももはや…それはありふれた光景だった。終末はもう来ていたのだった。
ユミル「…限界か」
ユミルはとある巨大樹の森の高い枝の上で巨人化を解除し、虫の息の少女を横たえた。うわ言のようにユミルの名を呼んでいる。
もう、どうしようというんだろう。どうすればいいんだろう。…どうすればよかったんだろう。
ユミル『オイ!?何やってんだ?』
ユミル「……は?」
ユミル『それはクリスタのためにやったのか?お前が得た達成感や昂揚感はその労力に見合ったか?』
ユミル「何言って…」
ユミル『苛つくんだよ。ちゃんと一人で自信を持って生きていけるはずなのに他人を助けることで自信を得ようとする奴はなあ』
ユミル「…」
ユミル『お前は自由な人生を得たあとで結局それを持て余しちまったんだ』
ユミル『人から必要とされていた頃が懐かしいか?自分が何の役にも立たないクズだと思い知るのが怖かったか?』
ユミル「私が…こうしたかったのは…役に立つ人間だと思われたいから…なのか…?」
ユミル『は!?知るかよ…』
ユミル「…他人のために生きなくてもいい人生を手に入れたあとで…その上でそれを捧げたいとまで思える人に出会えて」
ユミル「そしてわたしは実際にこの身を捧げた…でもそれは間違いだった…決してこいつのためには…私は…どうすればよかった…!?」
返答はない。
ユミル『あいつってほんと可哀相だよな、普通の家庭で愛情受けてりゃ過剰な自己否定や破滅願望や歪んだ承認欲求を持たなくて済んだのに』
ユミル『家族から命狙われて名前奪われて追い出されて、その結果「良い子になって死にたい」』
ユミル『一見女神だけどパッと死にたい性格になっちまってるから死線に近づくたび喜ぶし、喜ぶ自分を落ち着かせるのにも一苦労』
ユミル『やっと理解者が現れたと思ったらそいつは他の男のもとへ行っちまって…』
ユミル『あげく王政や壁教ですら背負えない責任を背負わされて秘密を早く手に入れろと期待されて逃げることもできない』
ユミル『おとなしくしてたら何だ今度は?拉致?拷問?死?ダハハハハハハハハ!!笑えてくるほどの悲惨さだなあ!?オイ』
ユミル「黙れ…!口を閉じろてめえ!!!」
ユミル『…このビッチが。そもそもお前があの巨人どもに浮気せずにずっとそばに居てやりゃあこうはならなかったんじゃねーの?』
ユミル「もう……大丈夫だと……私がいなくても…」
愛されたことのないクリスタ。誰かが自分を愛してくれるとは思っていなかった。自分すら自分を愛せないのに…
そんな中ユミルに無償の愛をもらい、そのことはユミルもクリスタ自身も予想しないほどにクリスタを変える。善きにつけ、悪しきにつけ…
だがヒストリアの運命を引き受けてしまうというのはあまりにもうかつな変化だったのではないか。
ユミル「あいつ…ほんとうの意味で自分を信じられなかったんだ…自分が人並みに価値ある人間であることを理解しなかった…」
ユミル「私は教えてやろうとしたんだ、そんなことないって。あいつのそういうところを否定しつつ…でもそれは本当にあいつのためだったか?」
ユミル「私はあいつに苛ついていた。あいつの生き方はまるで以前の私のようで…人がせっかくそれを忘れて自分のために生きようとしてるってのに…」
ユミル「だから私は変えてやりたかった。あいつの破滅的な自己犠牲を。たしかにそれは意味のあることだったかもしれん」
ユミル「だけど…結局私はその過程でもとの『女神様』だもんな…バカみてえな堂々巡りだ」
ユミル「こいつのためを思って行動してるつもりだった。でもそうじゃない。押し付けてたんだな、手前勝手な生き方を…」
ユミル「それともこいつを救えば過去の自分を救うことにもなるとでも?馬鹿だな私…でもだからってこんな結末は…」
ユミル「………………………………………………私の人生なんだったんだろ」
ユミル「………………………………………」
ユミル「……………………………………………………………………」
ユミル「…………………………………………………………………………………………………………………………………さみしい」
ブツッ
終わり
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