モバP「うちのトナカイがご迷惑を…」美嘉「…」 (73)

関裕美「プロデューサーさんの日記…?」
関裕美「プロデューサーさんの日記…?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365341652/)

のおまけにしようと思ったが書き方変わりすぎてて諦めたなにか。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366816816

「…トナカイ?」

この人は何を言ってるんだろう。

ふと、隣を見てみると四本足で歩く鼻水を垂らした生き物が居た。

「ブリッツェンって言うんですよ」

ブリッツェンって由緒正しいサンタクロースのトナカイの名前じゃないのか。

酷く名前負けしている気がした。

そんなことはどうでもいい。

今は妹の話だ。

「うちの妹をどうしたいの?」

酷く曖昧な質問だけど、今のアタシの一番聞きたいこと。

「もちろんいずれはトップアイドルにっ……!」

すると、目を輝かせて彼は楽しそうに語りだす。いきなり話が飛びすぎである。

「妹はまだ十二歳なん…」

そこまで言った所で彼がふと真剣な目をする。

最初から分かっていたかの様に妹の学校のことや、アタシの家のことについて話しだす。

正直な話驚いた。

うちの両親の説得にアタシの家にも一度訪ねたことがあったらしい。

……知らなかった。

でも分かった、この人は本気だ。

本気で莉嘉をアイドルにしようとしている。

「プロデューサー、お客さん?」

振り返るとそこには莉嘉を両脇から持ち上げるように抱える女の子。

「も、もうちょっと小さい子じゃないと無理かな……」

腕がプルプルしている。当たり前だ。もう莉嘉は中学生だ。

……莉嘉が小学生の頃はアタシでもまだ持ち上がったのになぁ…。

そんな益体もないことを考える。

「あ、お姉ちゃんっ!」

あ、気づかれた。

「莉嘉、今アタシこの人と真剣な話してるから」

女の子は察してくれたのか、莉嘉を抱えて出て行こうとする。

「うん‥やっぱり重い…」

もはや、若干引きずっている。

「ひどーい!凛ちゃん、女の子に重いとか言っちゃダメなんだよぉーっ!」

なるほど、凛ちゃんって名前らしい。

「莉嘉を宜しくね!凛チャンチャン★」

「チャンチャンってパンダみたいだからやめてよ!」

ボケれば律儀に突っ込んでくれる娘らしい。

凛ちゃんが出て行ったのを見計らってか、彼が口を開く。

「いい娘だろう?うちの凛」

なんか凄く嬉しそう。そして、いつの間にか敬語が崩れてる。

「悪い娘じゃないのは分かるよ★」

だけど気は抜かない。妹を預けるだけの信頼に足る人なのか見極めなくては。

「今はあれだけど、最初は大分俺も手を焼いて…」

彼女の話題になった瞬間に彼は饒舌に語りだす。

初対面、彼女がデビューするまでのレッスンの日々、初めてのLiveバトル。

移籍してきた二人目のアイドルの話。

どのくらい話が続いただろうか。

ふと、思い出したかのように彼は口を止める。

「ごめんな、夢中になって話しちゃったな」

残念もう少し聞きたかった。

なんでアタシは時間を忘れるほどに、彼の話を夢中で聞いていたんだろう。

いずれ莉嘉も彼の話に出てきた、凛ちゃんや話に出てきたアイドル達の様になるのだろうか。

レッスンをして、初めてのLiveバトルをして、きっといずれ莉嘉にもファンが……。

「…アタシ、羨ましいのかな…?」

「なにがだ?」

ふと、口を衝いて出た言葉に自分でも驚いた。

「な、なんでもないよっ!」

「そ、そうか…?」

彼は首をかしげながらも

「まぁ、暗くなる前に莉嘉と一緒に帰れ」

……マズイ。

決めろ。アタシ。

アタシはアイドルに興味を持ってしまっているのか。

「莉嘉〜!そろそろ……」

「ねっ、ねぇっ!」

彼が莉嘉を呼ぶ言葉が終わる前に彼の袖を引く。

「どうした…?」

彼は、不思議そうな顔をしてこちらを向く。

「あ、あのさっ!」

きっと、今言わないと言えないだろうから。

「アタシをプロデュースしてみる気……ないかな…?」

彼の不思議そうな顔が一瞬でにこやかになる。

「ち、違うよっ!莉嘉が心配だからっ!」

「アタシがアナタと莉嘉を見ててあげるよっ!」

そんなこと言わなくてもいいのに、先回りして予防線を張ってしまう自分が嫌になる。

「そっか…でも嬉しいよ」

それでも嬉しそうにする彼に少しの罪悪感を感じる。

「よっし、じゃあ認めて貰えるように頑張らないとな」

でも、言えないよりは言えて良かったと思う。

「あっ、あのさっ!」

このままアナタ呼びでは格好が付かないだろう。

「宜しくねっ、『プロデューサー』★」

プロデューサーは子供みたいな笑顔を見せた後に

「こちらこそ宜しくなっ!『美嘉』!」





初めて名前を呼んでくれた。

一旦切ります。
こんな感じでアイドル達の視点を転々としながら日記を追いかけて書いていこうかと。
日記はプロデューサーの主観なのでこっちで起きた出来事とズレているかもしれませんね。

http://i.imgur.com/myEeezL.jpg
http://i.imgur.com/4u9mp0I.jpg
ブリッツェン&イヴ・サンタクロース(19)

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城ヶ崎莉嘉(12)

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渋谷凛(15)

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城ヶ崎美嘉(17)

———


私がアイドルだなんて夢のようだ。

「はじめまして、プロデューサーさん! 島村卯月、十七歳です。私、精一杯頑張りますから、一緒に夢叶えましょうね♪よろしくお願いしますっ!」

余計なことまで話してしまった気がします。

だけど、嘘偽りない私の本音です。

「私、何だかやれそうな気がしてきたよー!」

私の同期、本田未央ちゃんです。

私たち二人が選ばれたことに意味があるのでしょうか…?

オーディションには沢山の人たちが居たのに…。

そんな考えから私を現実に引き戻したのは

「二人に提案があるんだ」





悪戯を思いついた子供のような表情を浮かべるプロデューサーからの突然の提案だった。

靴の爪先が軽快に床を叩く音が響く。

「ここまでっ!」

「休憩に入ってよしっ!」

トレーナーさんの一言で私たちの動きが止まる。

……プロデューサーさんを含めた。

「なっ、なんで俺まで……!?」

ガクリとその場にへたり込むプロデューサーさん。

肩で息をして相当に辛そうだ。

「二人には、渋谷凛という先輩と仮ユニットを組んで活動して貰うことになる」

いきなりユニットなのかともちろん驚きました。

「もちろん、ユニットに向かないと思えば、個別でプロデュースさせてもらうよ」

続けたその一言に頬が緩む。

私たちがただ、その娘のユニットの一人として選ばれた訳ではないと少し誇らしげな気分になりました。

「だから……」

「今はまだ凛には及ばないでもいい、でも、本人に会う前に少し力をつけて驚かせてやらないか?」

私たちの秘密のレッスンの始まりだった。

「よーし、再開するぞーっ!」

トレーナーさんの両手の掌をパンパンと打ち合わせる音。

「ほら〜、次いくよーっ、プロデューサー、肩貸してあげよっか?」

そう言って未央ちゃんがプロデューサーさんを立ち上がるよう促す。

「歳下の女の子の手を借りて立ち上がるなど男の子としてのプライドが……」

プロデューサーさんは男の子っていう歳でもないような気がします。

「…っ!『ブリッツェン』!」

突然プロデューサーさんが大声を出す。

それに一拍遅れてモフモフした羊みたいな生き物がこちらに走ってくる。

「よく来てくれた」

そう言ってプロデューサーさんは、ブリッツェンと彼が呼んでいる生き物に寄りかかるように乗る。

ブリッツェンはちらりとこちらを向いて会釈をするかのように頭を下げる。

「あっ、ご丁寧にありがとうございます」

条件反射でこちらも挨拶をしてしまう。

「じゃあ二人とも頑張ってくれな!」

そういうと小声でブリッツェンに何かを囁くと、ブリッツェンが走りだす。

トレーナーさんがポカーンとした顔をしている。

「未央ちゃん未央ちゃん!あれ、なんていう動物なんだろうね!」

私も欲しい。

「いやいや、おかしいでしょ、卯月、今絶対こっちに挨拶してたよあれ!?」

きっと親愛度MAXになるときっとあのくらい出来るのかもしれない。

「夢が膨らみますよねっ!」

未央ちゃんが呆れた顔で私を見る。

「卯月って天然……?」

失礼な、きちんとお父さんとお母さんに育てられた養殖物だ。

そう言うと未央ちゃんはため息を吐く。

「いや、ごめん、忘れて……」

……何なんだろう…?

「よぉし、次のレッスンだぁ☆」

ニコニコ笑顔のトレーナーさんの一言。

「が、頑張りますっ!」

改めて気を引き締める。

「プロデューサーを捕まえてこい」

そういえばプロデューサー逃げたまま帰ってきてない。

ニコニコ笑顔のままなのに威圧感が凄い。

「は、はっ!わたくし、本田未央!上官殿のご命令に従いますっ!」

笑顔のトレーナーさんに早くも屈する未央ちゃん。

「卯月、お前はどうだ?」

……。

「わ、わたちも頑張りまひゅっ!」



私たちの一日目のレッスンの時間の殆どは、プロデューサーを捕まえることだけで消費された。

一旦切ります。
本編より長くなりそうな予感。

>>23
△そういうと小声でブリッツェンに何かを囁くと、ブリッツェンが走りだす。
○そう言って今度は、小声でブリッツェンに何かを囁くと、ブリッツェンが走りだす。

>>25
△そういえばプロデューサー逃げたまま帰ってきてない。
○そういえばプロデューサーさん逃げたまま帰ってきてない。

>>26
△プロデューサーを捕まえることだけで消費された。
○プロデューサーさんを捕まえることだけで消費された。

盛大なさんの付け忘れ。

画像さんと日記から見てくれてる人はありがとうね。

関ちゃんが完走SR化したので満足した。

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島村卯月(17)

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http://i.imgur.com/y74JwzN.jpg
本田未央(15)

http://i.imgur.com/1A5pEm8.jpg
http://i.imgur.com/jKtzYGX.jpg
渋谷凛(15)

———


この事務所に入ってからの最初の悩みが「呼び方」だった。

私と同期で入った彼女は、私より年上だった。

私はまだまだ十五歳、よくよく考えれば義務教育が終わったばかりのひよっこが、いきなり社会に放り出されたようなものなのだ。

「し、島村さん……」

年齢が離れているとはいえ、同期にしては距離の遠い呼び方っぽい。

「卯月さん…?」

いきなり名前で呼んでいいものなのだろうか。

うーん、うーんと頭を悩ませる私。

そんな私のスケールの小さな悩みは彼女にとって、そもそも悩むようなことでもなかったみたいだけど。

「未央ちゃん未央ちゃん!あれ、なんていう動物なんだろうね!」

キラキラした目でこっちを見てくる卯月。

「いやいや、おかしいでしょ、卯月、今絶対こっちに挨拶してたよあれ!?」

年上っぽさを感じさせない彼女のお陰で今日も私は自然体で振舞えている。

……よく考えたら、私はまだ、事務所の先輩達にすら会ってない。

もしも、私たち二人だけが先に引きあわせたのが、

お互い同士を慣れさせるためだったならプロデューサーもただの変な人じゃないのかもしれない。

本人が聞いたら泣きそうだけど。

———


「プロデューサーってトレーナーさんが苦手なのかな?」

レッスンの合間の休憩中に本田と島村のそんな内緒話が聞こえてくる。

聞こえてるぞ、失礼な話だ。そんな訳がないだろうが。

「そんな訳ないだろうが」

つい、普通に口に出してしまった。

「ト、トレーナーさん…!?す、すみませんっ!」

まぁ、実際そんなに気にしてはいない。

初めて、私たちのやりとりを見たのなら、きっと誰でもそう思うだろう。

逃げる彼と、追う私。

正直な話、私は彼が気に入っている。

ついつい、彼に過剰に構ってしまうのもその顕れかもしれない。

「まぁ、あれを見ていれば、そう思うのも仕方ないだろうな」

えへへ、と笑う島村。実際やつを追いかけた実行犯はお前だろうが。

指示したのは私だけれども。

全く、こいつには毒気を抜かれる。

「少し、昔話をしようか」

キョトンとした顔をする島村と本田。



「私がトレーナーという仕事にうんざりとしていた頃の話だよ」

苦笑いと共に溢れ出してくる記憶。

今までの人生で一番笑ったかもしれないな。

そう、前置きして。

「お前たちにはどんな夢がある?」

いきなりの質問に面食らった顔をする二人。

……普通の反応だろうな。

「若いんだ。夢の一つや二つ持ってた方が健全だろう。まして…‥」

そんな私の言葉を遮って

「わ、私たち、デビューもまだだしっ、まだまだアイドルらしくないかもですけどっ!」

「今はっ、一人前のアイドルになるのが夢ですっ!」

こらこら島村、まだ私が話してる最中だろうが。

「夢はおっきく!トップアイドルかなっ!」

お前もか本田、まぁ、大変結構、夢は大きくなくちゃな。

「そうだ。お前らのそういう芯の強さを私は買っている」

今の私は、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべているかもしれない。

「私が昔鍛えていたやつらにはそういうのが無かったんだ」

「……無かったっていうのも失礼な話かもしれないな。無くなってしまった…か?」

「無くなったって……夢が?」

キョトンとした顔をする本田。

まだ彼女たちにはまだ分からないかもしれない。それが分かった時、どうするかきっと彼女たちの命運を分けるのだろう。

「プロデューサーのやつの事務所は残念ながらまだ小さい方だ」

「そうかもしれないですね!」

自信満々に断言する島村。そこ威張るところじゃないだろ。

「私の前居た所はそこそこ大きかったんだ」

何の話なんだかと、不思議そうな顔をする二人。

「お前らアイドルの夢ってやつは大体最終的にはトップアイドルだ」

難しい顔をするな、島村、お前が控え気味だからって別に責めてる訳じゃない。


「昔、私が育てたやつらも、皆最終的にはトップアイドルを目指してたよ」

「だけどな、なんだろうな…夢に潰されてしまったといえばいいのか…」

「同じ事務所の中でも壁があるんだ。それは技術的なものだったり、恐ろしく優秀な同じ事務所のアイドルたちだったりな」

「きっとそこで諦めちゃったんだろうな」

「あぁ、私じゃ彼女に勝てないんだろうなって…」

「結局殆どダメだったよ」

苦笑いを共に肺に溜まった空気と共に吐き出す。

「日に日に彼女たちの夢が小さくまとまっていって最後に私に頭を下げて言うんだ」

「『今までありがとうございました』なんてな…」


二人の笑顔が引っ込む。いかんいかん、こんな重い話がしたい訳でもなかった。

「そんな時に出会ったのがプロデューサーだったんだよ」

「友人とファミレスで食事してた時だったな」

そんなに驚くな。失礼な。私にだって友人くらい居る。

「まぁ、女二人だ、仕事の愚痴になる訳だ。多分それで私がアイドルのトレーナーだって分かったんだろうな」

「こちらの会話が聞こえたのか隣の席の男が話しかけてきたんだよ」

「…それって相当怪しい人じゃないかな?」

…お前の言う怪しい人がプロデューサーなんだがな。

そう言うと、本田はそれより続きを!と私に催促する。誤魔化したな。

「私だって怪しいと思って逃げようと思ったんだがな」

「そいつがいきなり名刺を…とかいいながら手をポケットに突っ込もうとしたんだろうな。手を自分のハンバーグのホットプレートに突っ込んだ」

「その後あぢぢぢぢとか言いながらトイレに駆け込んで行ってな…」

「そいつがトボトボと帰ってくるのを見たら警察に通報する気も無くなってたよ」

「なんでですか?」

頭にはてなマークを浮かべている島村。

「凄くアホっぽかったからだ」

凄く単純だろう?

あはは、と誤魔化す島村。お前も誤魔化すの下手だな。

その時の光景を思い出してしまってつい口元がゆるむ。

「戻ってきた男は言う訳だ、『俺の事務所で働いてみませんかっ!』ってな」

「決めるのはうちのアイドルたちを見てからでいいのでって名刺を押し付けて帰っていったよ」

そんなに前の話でもないのに、自然と懐かしく思える。

「結局見に行ったのは、少しアホの顔を拝みにでも行こうかという気まぐれでだったよ」

「プロデューサーずだぼろだね…」

本当にプロデューサーただの阿呆だったならこの事務所はとっくに潰れているだろうけどな。

そして、そんな歪んだ思いからだったが、ここに来ることを決めた自分を褒めてやりたいくらいだった。

「実際来てみてどうだったと思う…‥?」

「……ははっ、そうだった、お前らはまだ先輩たちに会ってないんだったな?」

「変なやつらばっかだが、みんないい娘たちだ。そこは保証する」

本当に変なやつらばっかだがな、と念を押しておく。

「そっ、そんなになんですかっ!?」

まぁ、キャラが立っているって意味ではそうだろうな。

「あぁ、最初に会ったのが寝泊まりでもしてるのか、パジャマで歯ブラシくわえた自称サンタの女の子だったよ」

「その後会ったのが、ネコミミ、ネコシッポを付けた女の子…」

「ふふ、特に自称サンタのインパクトは凄かったな」

「入ったらいきなり『あ、おはようございましゅ…』ってパジャマのままショボショボさせた目で歯ブラシくわえながら言ってくるんだ」

「お、おはようございましゅって…」

「私をプロデューサーか誰かと勘違いしてたんだろうな」

今思い出しても笑いがこみ上げてくる。

「私がその頃仕事のことで死ぬほど悩んでいたのが馬鹿みたいだったよ」

「ふざけているのかと思えばネコミミ娘は『お仕事はマジメなのっ!』って言ってたしな」

「そんな私を見たプロデューサーの一言がだな……」





『凄いでしょっ!うちの事務所!』

「あはは…確かに凄いですね……」

島村、その凄いのがお前の先輩なんだぞ。

「でもな、彼女たちは輝いて見えた」

「みんな楽しそうで、彼女たちのことを全く知らない私でも、不思議と惹きつけられる魅力があった」

「そして、プロデューサーはお世辞にも敏腕とは言えなかったが、彼は間違いなく彼女たちのプロデューサーだったよ」

「……そしてそれを見た私も彼女たちに混ざってみたいと思った。羨ましかったんだろうな」

「…子供っぽい理由だと思うだろう?でも彼女たちのこれからを見てみたいとも思ったよ」

「結局私はこの事務所の世話になることにした訳だ」

「そのことを伝えた時のプロデューサーの喜びようったらなかったよ」

「プロデューサー変に素直だから…」

十五歳の本田にこんなこと言われてるぞプロデューサー。

「契約書類についての説明を聞いてる時だったかな」

「『今回は紙飛行機にしないので大丈夫ですよ』だったか」

その時はこいつは何を言っているんだと思ったんだがな。

「ネコミミの娘の契約書類は実際に紙飛行機にして投げたらしい」

『何でっ!?』

息ピッタリだな二人共…。

「落ち着きのないやつだからな」

だからほっとけない。

「そこで初めてだ。そこまで来てやっと初めてだ」

『そういえば俺、トレーナーさんのお名前聞いてませんでしたっ!』

「契約の段階になって初めて名前を聞かれたんだぞ?」

「流石に私も今更かっ!と小突いてしまったよ」

「それとこいつは私が見ててやらないと心配だとも思ったよ」

「結局私の名前を聞いた後のプロデューサーの一言は」


『宜しくお願いしますねっ!『トレーナーさん』』

「たった今名前を聞いておいてそれはないと思わないか?」

「でも、プロデューサーさんらしいです!」

「島村、分かってるじゃないか。私もそう思うよ」

「絶対にこいつにいつか私の名前を呼ばせてやるっていうのが今の私の夢なのかもしれないな」

トレーナーをやっててこんなにへんてこな夢を持つとは思わなかった。


「さて、そろそろ再開するぞ!」

「二人共!さっさと隣の部屋でぐったりしてるプロデューサーを連れてこい!」

『は、はいっ!』

どのくらい掛かるか分からない。それにどれだけ掛かってもいいとも思っている。

このへんてこな夢が叶ってもきっと、目の前の彼女たちが私を休ませてくれないだろうから。

トレーナーさん一段落したので一旦切ります。
正直ちょろちょろ変わる視点とか今誰が喋ってるか伝わってるのか不安でしょうがないです。

———


「今日からお前とユニットを組んでもらう予定の二人だ」

プロデューサーの唐突な一言が私を無意識の海から引き起こした。

「……寝てた?」

椅子に座りながら、窓に背中くっつけてたらあったかくてウトウトしてたなんて言えない。

「……寝てないよ」

「…本当だよ?」

凄く胡乱げなプロデューサーの目。

「……まっ、いっか!」

そういうプロデューサーの適当な所嫌いじゃない。

時々少し…いや、結構面倒くさいけど。

……ん?

「……プロデューサーなんか痩せた?」

一瞬ピクッと反応して後にプロデューサーは私に背中を向けた。

「…健康っていいよな」

ボソッと呟くプロデューサー。

……なんで健康…?

「さぁ。入ってきたまえ!新たな同志よ!」

なんかプロデューサー小悪党みたい。

漫画かなんかだったら『バァーンッ!!』って効果音が付きそうな音を立ててドアが開く。

ドアが歪むから正直勘弁して欲しい。

「本田未央十五歳。高校一年生ですっ!」

驚くほど簡潔な自己紹介。

「初めまして!島村卯月、十七歳です」

おぉ、美嘉と同じ十七歳。

「プロデューサー、プロデューサー」

なるべく表情を動かさないことを意識しながらプロデューサーの裾を引く。

「ん、なんだ?」

うっかり笑ってしまわないように気をつけながら一言。

「チェンジで」

はっきりと聞こえるようにそれなりの声量で。

「未央ちゃん!未央ちゃん!会って一分経ってないうちに私たち振られたよっ!」

その反応が欲しかった。

「私、事務所にもっと歳下が欲しいな」

私の意図に気づいたのかプロデューサーの顔が困惑顔から一瞬で悪い顔になる。

「仕方ないなぁ、凛がそう言うなら今回の話は白紙に……」

鬼が居る。私も人のこと言えないけど。

「こらこら、意地悪しちゃダメですよぉ〜♪」

ヒョコっと奥の部屋からイヴさんが現れて私たちの額を軽く小突く。

「プロデューサーも凛ちゃんのイタズラに乗っちゃダメですよぉ?」

『ご、ごめんなさい…』

二人して怒られてしまった。

「ようこそ、私たちの事務所へ、新たな同志…でしたかぁ?」

チラリとプロデューサーのほうを向くイヴさん。口元で小さく笑顔を浮かべている。

当のプロデューサーは苦笑いだけを浮かべていた。

「あ、改めてっ!宜しくなっ!未央、卯月っ!」

流れを断ち切るように、プロデューサーが少し大きめの声でそう言った。

「うん、宜しくね。未央、卯月」

それに便乗するように挨拶する私。

「それじゃ、歌おっか」

それだけを言って未央と卯月の二人の手を引いてレッスン場まで歩いて行く。

「り、凛ちゃん!?そ、それとも凛先輩!?」

私に引きづられながら私の名前の呼び方で悩んでいる人が一人。

「よーしっ、勝負だ〜!」

やる気満々の人が一人。

…でもそうやすやすとは勝たせてあげないよ?

……まだまだ私のアイドル生活は楽しくなりそうだ。

お茶目凛ちゃんおしまい。
やっとこさ関ちゃん出せそうだけど寝る前までに投下出来るかは不明。

———


「あのっ!だから、私がアイドルってありえないですってばっ!」

「……べ、別に可愛くないし…」

私を熱心に声を掛けてくる彼。

彼は芸能事務所のプロデューサーらしい。

なぜか私を執拗に勧誘してくる。

一体何が彼をそこまで駆り立てるのだろう。

「キミをプロデュースしてみたいんだ!」

そして、私が最も衝撃を受けた彼の一言。

あくまで彼が私をプロデュースしたいだけ。

私はてっきり「キミなら凄いアイドルになれる!」とでも言うのかと思ってました。

「可愛くないなんてありえない!ぜんっぜんありえないからっ!」

目を輝かせて彼は続ける。

無くしてた探しものが見つかった時のように頬を綻ばせる彼。

なんでそんなに嬉しくってしょうがないというような顔が出来るのだろう。

私には不思議で仕方なかった。

「…どのへんがありえなくないの‥?」

隣に居る変な彼に釣られて私の日本語も少しおかしくなる。

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