杏子「これが本当の愛と勇気が勝つストーリーって奴だ!」(255)

先ほどVIPで立てたのですが
長くなりそうなので移動してきました。

本作は前作の

杏子「愛と勇気が勝つストーリーってのにしてやろうじゃねーか!」

の続編となります。

新編のネタバレあり
また本作はシリアスSSとなります。


~~~~~~

ほむら『希望を願い、呪いを受け止め、戦い続けるものたちがいる。それが”魔法少女”』

ほむら『奇跡を掴んだ代償として、戦いの運命を重ねた魂、その末路は消滅による救済』

ほむら『この世界から消え去ることで、絶望の因果から解脱する』

ほむら『いつか訪れる終末の日に、円環の理の導きを待ちながら』

ほむら『私たちは戦い続ける』

ほむら『悲しみと憎しみばかりを繰り返す、この救いようのない世界で』

ほむら『あの…懐かしい笑顔と再びめぐり合うことを夢見て…』

~~~~~~~


~見滝原市内~


ゴゴゴゴ…!


ほむら「……」

マミ「さあ、今日はこのくらいにしましょう」

杏子「ああ」


スタスタ…

マミ「あー、そう言えば特製のアップルパイがあったのよね~」

杏子「んなこといちいち言わなくても、お前んとこ行くって」

マミ「べ、別に、うちに来てほしくて言ってるわけじゃないのよっ」

マミ「来ないなら来ないでいいのよ?」

杏子「素直じゃねえ奴だな…」

杏子「ほら、アンタも行くだろ、ほむら」

ほむら「……」

ほむら「え……?」

杏子「いや、だからマミんとこ、寄ってくだろ?」

ほむら「…そうね、お邪魔させてもらうわ…」


その後
~マミの家~


杏子「いっただきま~す!」

マミ「召し上がれ」
モグモグ!

杏子「うお、うめーな!」

マミ「…ふふ、ありがと」

マミ「暁美さんも、遠慮しなくていいのよ?」

ほむら「……」

ほむら「…」

杏子「お、おい、どうしたんだ」


ほむら「…えっ、あっ」

マミ「…大丈夫?暁美さん」

ほむら「…え、ええ」

杏子「なんかアンタおかしいよ、最近」

杏子「ぼーっとしてること多いしさ」

ほむら「……気のせいよ」

マミ「何かあったら相談していいのよ、暁美さん」

マミ「私たちで出来ることなら、なんでもするから」

ほむら「……」



……


マミ「じゃあ、またね」

杏子「またな~」

ほむら「…また」


バタン…


その後
 ~マミの家からの帰り道~


スタスタ…

杏子「なあ、どうしたんだよ」

杏子「…なんかあったのか…?」

ほむら「……」

ほむら「…貴女は、まだ覚えてる?」

杏子「あぁ…?」

ほむら「…忘れてない?」

杏子「……」

杏子「当たり前だろ」

ほむら「…そう」

杏子「もしかして、その事で悩んでんのか」


ほむら「……」

ほむら「私はね、今になって思うの…」

ほむら「…私がしてきたことは正しかったのかなって…」

杏子「……」

杏子「今更そんなこと考えたって仕方ないじゃん…」

ほむら「…私は後悔してるのかしら…」

杏子「かもな…」

ほむら「だって…だって…!」

ほむら「…まどかの出した答えは本当に正しかったの…!?」

ほむら「それで、あの子は私たち以外の記憶から全部消えて…!」


ほむらはついに泣き出してしまった。
乾いたアスファルトを小さな雫が濡らしていく。

ほむら「…ぐすっ…ひくっ…!」

ほむら「私…最近思うの…っ」

ほむら「貴女も、私も…まどかの事忘れちゃって…」

ほむら「あの子の存在自体がなかったことにされて…うぅっ…っ!」

杏子「お、おい…」

杏子「……」

杏子「アンタはさ、アタシが何で魔法少女になったか知ってるだろ…」

杏子「それで、その後どうなっちまったかも…」


杏子「アタシだって…何度も泣いて、何度も後悔した…」

杏子「なんであんな願い、願っちまったんだろうって…」

杏子「でも、いくら泣いても今更何か変わるわけじゃないさ」

杏子「どれだけ後悔したって、それは後悔で終わり、それ以上は何にもならない…」

杏子「だから割り切ってこうって決めてんだ…」

ほむら「…でも、でもっ…!」

杏子「前にも言ったけどさ、アタシはアンタと戻れたこと…後悔してないよ」

杏子「そりゃあ、さやかは救えなかったし、まどかはあの道を選んじまったかもしれない…」

杏子「でも…それでも、アタシはアンタと戻れてよかったと思ってる」

ほむら「ううっ、ひくっ…それは…貴女が…っぐすっ…」


杏子「気にし過ぎだよ…」

杏子「いつもみたいに気取ってたアンタはどこ行っちまったのさ」

杏子「…まどかだって、今のアンタを見たら悲しむだろ」

ほむら「…私が、私が…ううっ…あの子を追い詰めたの…ぐすっ…私のせいで…っ」

杏子「違うよ…まどかは自分の意志であの道を選んだんだ…」

杏子「戦う理由、見つけたんだよ」

杏子「…まどかが信じた道をアタシたちが信じてやらなくてどうすんだ…」

杏子「それに、アンタだって希望を信じてたからアタシと戻れたんだろ」

杏子「だからこそ、今があるんじゃねーか、そうは思わない?」

ほむら「……」


杏子「アタシたちで紡いだ過去すら否定しちまったら」

杏子「そこには、何が残るって言うんだ…」

ほむら「…やっぱり…貴女は強いわね…私と違って…」

杏子「はあ…何言ってんのさ」

杏子「…あーあ、しょうもないこと聞いちまったね」

杏子「んなこと、もう考えんなよ」
ヒョイ


杏子は飴を投げ渡し、去っていった。


ほむら「……杏子…」


その日の夜
 ~ほむらの家~


ほむら「……」


ほむら(まどか…私のしてきたことは正しかったの…)

ほむら(あなたの選んだ答えは正しかったの…)



…スウッ

QB「やあ、今日はもう魔獣退治はいいのかい?」

ほむら「…ええ、ソウルジェムの浄化は間に合ってるわ」

QB「そうか、ならいいんだ、今日は君に少し聞きたいことがあってきたんだよ」

ほむら「…聞きたいこと?」

QB「君がいつか話してくれた『魔女』についてね」


ほむら「…え?」


数日後
 ~見滝原市内~


ゴゴゴゴ…!


…シュイン

杏子「ふう、一仕事終わりっと…」

杏子「ん?」

杏子「お、マミ!」

マミ「!」

マミ「佐倉さん!」

マミ「偶然ね、あなたも魔獣退治に?」

杏子「ああ、見ての通りさ」


その後
 ~マミの家~


杏子「うひょ~!いっただっきまあ~すっ!」
パクッ!パクパク!

マミ「そんなに慌てなくても、ケーキは逃げたりしないわよ」

杏子「だって、うっめえんだもん!」

マミ「もう…喉につまらせないようにね」


ケーキをほおばりながら、杏子は懐かしそうな顔を浮かべていた。
そして、手に取った一切れを食べ終わると思い出したようにマミに聞いた。

杏子「……なあ、マミ」


マミ「ん?」

杏子「マミはさ…『まどか』って…覚えてるか?」

マミ「えっ…佐倉さんまで…?」

マミ「暁美さんもそんなことを言っていたわね、二人の共通の知り合いなの?」

杏子「……」

杏子「…そうだよな、アンタが覚えてるはずないか…」

マミ「?」

マミ「私も、その『まどか』って子と会ったことあるの?」

杏子「…いいや、なんでもねえ、気にすんな」

マミ「……」


杏子「そういや、ほむらは…?」

マミ「暁美さん、ここ最近見ないわね」

マミ「学校でも見かけないような…」

マミ「…どうしちゃったのかしら」


杏子「……」

杏子(アイツ……)


マミ「…暁美さんなら大丈夫よ、弱い子じゃないわ」

杏子「……」

杏子「そうだ、明日、アイツの家に行ってみようぜ」

マミ「えっ?」

マミ「で、でも、いきなり行ったら迷惑じゃ…」

杏子「大丈夫だって、別に」

杏子「マミだって、アイツのこと心配な…」


ピカアン…!
ピカアン…!


その時だった。2人のソウルジェムが輝き、ゆっくりと点滅を始める。
まるで、何かの存在を知らせるかのように。


マミ杏「!!」

マミ「そ、ソウルジェムが…!」

杏子「こ、この反応は…」

マミ「な、何よ、これ…!?魔獣なの…!?」

杏子「い、いや…違う…!これは…ほむらじゃないか?」

マミ「確かに暁美さんの魔力パターンだわ…」

マミ「で、でも明らかに普通の反応じゃないでしょ…!」

杏子「考えてる暇わねぇ、とりあえずアイツ探しに行くぞ」

マミ「ええ」


~見滝原市内~

…ダダダダッ!

マミ「暁美さん、何かあったのかしら?」

杏子「わからねえが、この反応はなんだ…」


杏子(…このソウルジェムの反応…)

杏子(そうだ……魔女にそっくりだ…!)



杏子(でも魔力パターンにゃ、確かにアイツのパターンも感じる…)

杏子(どういうことだ、おい…)

杏子(まさか…)


杏子「おい、マミ」

マミ「なにかしら」

杏子「二手に別れよう、アタシは別の方からあたってみる」

杏子「多分、この反応を辿れば、そこにほむらがいるはずだ」

マミ「……」

マミ「わかったわ」

マミ「…くれぐれも無茶しちゃダメよ」

杏子「ああ」

杏子「てめえも気をつけろよ」


杏子(アタシの予想が正しければ…!)


…ダダダダダッ


翌日
~マミの家~

巴マミの部屋の前にはインターホンを鳴らす一つの影。


…ピンポーン

……
ピンポーン

ピンポーン


杏子「……」

ピンポーン


……
ガチャ…ガチャ…

杏子「っ!」

杏子「おい!マミ!いるのか!?」

杏子「開けるぞ!」


ガチャ!
バキン!


~マミの部屋~


………



杏子「…っ!」


バタン!

…ダダダダダッ!


~見滝原市内~


杏子「くっ…!」

杏子(間違いない…マミもあの結界の中に閉じ込められやがった…!)

杏子(…じゃあ、あれはやっぱり…魔女の結界か…!)



杏子「っ!」

杏子(なんでだよ!どういうことだ!まどかがこの世界を変えたはずなのに!)

杏子(なんでまた魔女なんかが…!)

杏子「これじゃあ…!」


杏子「……」

杏子(…考えてる暇はねえか…とりあえず結界の中に入らねえことには…)


ピカアン…!


杏子「また…呼んでやがる…!」

~~~~~~~~~




杏子「はっ!」


杏子「…こ、ここは…!?」


……ガヤガヤ


杏子「…どこだ?」


ドタドタ


??「まだ寝てんの~杏子~っ」

杏子「!」

杏子「こ、この声は…?」

ドタドタ!


バッ!
ふとんが剥ぎ取られる。


??「もう!いつまで寝てんのよ!杏子ったら!」

杏子「…さ、さやか…?」

さやか「そうだよ、どうしたの…?杏子?」

杏子「…あ、ああ」

さやか「何ぽかんとしてんの、学校遅刻するよ?」

杏子「う、うん…」

さやか「あ~!」

杏子「な、なんだよ…」

さやか「無いと思ってたら、あんたに貸したまんまだった!その髪飾り!」

杏子「えっ」



杏子「あ、あれ?なんで、アタシ…これを…」
パチ…
スッ…

さやか「もう~、昨日のナイトメア退治の後、貸してって、取ってったんでしょ~」

さやか「なくしたかと思ってた~」

杏子「あ、ああ…わりぃ」

さやか「はいはい、とりあえず、いいから早く起きてっ」


その後
 ~通学路~


スタスタ…

さやか「どうしたのさ、杏子、さっきから思い悩んでるような顔してさ」

杏子「う、うん…」

杏子「なあ、さやか、アタシ、なんか大事なこと忘れてないか?」

さやか「え?」

杏子「いや、なんかすげー大事なこと忘れてるような気がして…」

杏子「…それが、ずっと引っかかってる…」

さやか「う~ん、疲れてんでしょ、最近ナイトメア退治多いから」

杏子「…そうかな」

さやか「……」

さやか(もしかして…)


??「2人とも~、遅れてごめ~んっ!」

さやか「お、きたきた」

杏子「!」

さやか「まどか、遅い~っ」

まどか「ごめんごめん、おはよう、さやかちゃん」

杏子「まどか…?」

まどか「んん?おはよう、杏子ちゃんもっ」

さやか「お~い、どうしたの?杏子?」

杏子「あ、ああ…悪い、おはよう、まどか」

さやか「なんか杏子、朝からちょっとおかしくってさ~」

まどか「大丈夫?具合でも悪いの?杏子ちゃん」

さやか「杏子に限って、そんなことないって~」

さやか「ナイトメア退治で疲れてんでしょ、最近多いからね~」

杏子「あ、ああ…そうだ、アタシが疲れてれるだけさ…」


その日の夜
 ~マミの家~


さやまど杏「おじゃましまあ~す!」


マミ「いらっしゃい、今日はシフォンケーキを作ったのよ」

まどか「おお~すごいですね~」

さやか「いやっほう!」

べべ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」

マミ「べべのもあるから心配しないで」

杏子「……ん~」

ジー…

べべ「モゲッ!?」


…サササーッ!

マミ「ん?どうしたの、ベベ?」

マミ「あ~、また佐倉さんにいじめられたのね?」

杏子「別に何もしてないって」

杏子「…なんだっけなあ、コイツどっかで見たことあるんだよなあ…」

マミ「また?」

さやか「まだ言ってんの~?べべが何と似てるってのさあ」

まどか「うぇひひ、杏子ちゃんったら、いつもべべ見るたびに言うよね」

杏子「う~ん、なんかと似てるんだよなあ…なんだっけ…」

マミ「もう…そんなこと言うから、佐倉さんはベベに嫌われるのよ、ねえ?べべ?」

ベベ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」(キョウコ、コワイ!キョウコ、コワイ!)

ベベ「マジョマベ!マジョマベ!」(タベラレル!タベラレル!)


杏子「はあ?」

マミ「ふふっ、佐倉さんに食べられる、ですって」

さやか「あははは、杏子の食い意地わかってるじゃん、べべ~」

杏子「んで、アンタなんか食わなきゃなんねえのさ」

まどか「うぇひひ、杏子ちゃんったら」


杏子「……」

杏子(…アタシは何かを忘れている…何を忘れていたんだっけ…)

杏子(いや…どうせ大したことじゃねーだろうな…忘れちまったんだし…)

杏子(今は考えないようにしとくか…)


マミ「今、切り分けるわね」

まどか「おいしそ~」

さやか「おお~」

杏子「相変わらずうまそうだな、マミのケーキは」

ベベ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」

ベベ「モゲゲッ!!」
ガチャン!

マミ「もう~ベベ、あんまりお行儀悪いと…」

ベベ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」(ナイトメアオル!ナイトメアオル!)

マミ「ええ~、こんなときに?」

まどか「もうーっ、ケーキ食べるとこだったのにっ」

さやか「ほんとっ、ナイトメアはどんだけあたしたちの邪魔すりゃ気が済むのよっ」

マミ「仕方ないわね、行くわよ、みんな!」

まさ杏「はいっ!!」


その後
 ~見滝原市内上空~


……キラキラララ


見滝原市内の上空を覆う不思議な壁。
カラフルなフェルトのようなものが上空を覆い、人形達の舞踊が始まる。
その中心には舌を垂らした、顔の大きいぬいぐるみ。



ナイトメア「キュピ、バブ」


ボボボボーン!
ドガーン!

ナイトメアが放ったぬいぐるみのようなものは
ビルを突き破り、建造物を玩具のように破壊していく。
だが、そこにピンクの衣装を身に纏い戦う少女がいた。


スタッ…
まどか「うぇひっ…」


まどか「はあっ!」
ギイッ…
ドシュッ!

まどかの放った弓は上空で炸裂し、雨のように降り注ぐ。
ナイトメアは驚き、低空へと逃げていく。


パラララ!
まどか「うわあっ」

ヒュー!
ザザーッ

ドドド…!

ヒュッ!
さやか「ビンゴだよ、まどか」

ガキキン!
杏子「首尾は上々ッと!」

ガキッ!
シュイーン


低空では、待ち構えていた2人がナイトメアを迎撃する。

ガシャ
ガシャ
ガシャ
ガシャ!

ナイトメアは何枚ものドアを抜けた先の隔離された空間へと
誘導され、不思議そうな顔を浮かべる。


ナイトメア「??」

ヒョイッ
パクッ
ヒョイッ
パクッ
ヒョイッ
パクッ

ボオォォ…


……………


翌日 朝
 ~まどかの家~


まどか「…んん~、もう朝~?」

まどか「おはよう、QB」

QB「ん~きゅ…」



まどか「おはよう、パパ」

知久「おはよう、まどか」

まどか「ママは?」

知久「タツヤが行ってる、手伝ってやって」

まどか「はぁい」



タツヤ「ママ、ママァ、朝、朝~ママ、ママァ~」

バタンッ!

…スタスタ

まどか「おっきろ~!」
バッ!


詢子「どぅぇえぇ~えぇ~…あれ?」


~洗面所~


詢子「で、最近どんなよ」

まどか「仁美ちゃんがちょっと大変、上条君も腕良くなってるみたいだけど」

まどか「リハビリが始まって、あんまり予定が合わないんだって」

詢子「ふ~ん、ま、本当に難儀なのは付き合うようになってからなのさ」

詢子「めげず、焦らず、諦めずだよ~…」

まどか「先生は、ちょっともう急にこの世界の終わりがどうとか言い出すし」

まどか「やっぱり、相当落ち込んでるのかも…」


詢子「あっちゃあ…そろそろ、こっちで何かセッティングしてやるかなあ」

まどか「和子先生、どうしてモテないのかなあ、結構、可愛いとこあるのに」

詢子「あいつは高望みが過ぎるんだよ、昔から」

詢子「ま、良くも悪くも妥協しねえってとこがなあ…」

まどか「…ふーん」

まどか「あ、それからね、今日転校生が来るんだよ」

まどか「…どんな子かなあ」

詢子「へえ、こんな時期に珍しくない?」

まどか「お友達になれるといいなあ」


詢子「だぁっとっ、セーフ…」

詢子「はい、残さないで食べてね」

タツヤ「はあい」

知久「コーヒー、おかわりは?」

詢子「あぁ…いいや」


詢子「おっし、じゃ、行ってくる!」

知久タツヤ「いってらっしゃい~」

知久「さあ、まどかも急がないと」

まどか「え、あ、うん」


まどか「いってきま~す」

知久「いってらっしゃい~」

タツヤ「いってらっしゃい~」


まどか「うぇひっ」


まどかはパンを口に入れ、いつもの通学路を
駆け足で走っていった。


~通学路~


まどか「おっはよ~」

杏子「おっせーぞ、まどか」

さやか「昨日もおつかれー」

さやか「あれからちゃんと眠れた?」

まどか「一応ね」

まどか「でも今日の予習やる暇なかったから、もし当てられたらまずいかも…」

杏子「まだマシじゃねーかよ」

杏子「あたしなんか宿題すっぽかしちまってさあ」

杏子「やっべーわ、まじで」


杏子「あ、そうだ、まどか、後で写させてくれよ、ねっ?」
ブンッ!
ガシッ!

さやか「こら!杏子、そういうズルにまどかを巻き込むんじゃないの!」

杏子「てめえが見せてくれないからだろ~」

杏子「だいたい一人で抜け駆けして、宿題やっちまう、さやかがわりーじゃん」

さやか「なっ」

さやか「あたしはちゃんと帰ってすぐ一緒にやろうって言ったのに」

さやか「テレビ見てたあんたが悪いんでしょ!」


杏子「いいじゃねーかよ、さやかのケチ!」

まどか「ね、ねえ、ちょ、ちょっと2人とも…」

杏子「あーあー、やっぱ魔法少女と学校の両立なんて無理なんだよ~」

杏子「遊んでる暇なんてありゃしねぇ」

さやか「まず遊ぼうって発想がおかしいんだっつの!」
ドタバタドタバタ!



まどか「もう、2人とも~」


 ~見滝原中学 教室~


先生「皆さん、マヤ暦で予言された世界の終わりをやり過ごしたからって」

先生「イイ気になっていませんか?」

先生「いやいや、まだまだこれからですよ~」

先生「とある宗教の祭礼の日に合わせて、日食と月食が6回起っちゃうという話です!」

先生「怖いですね~まずいですね~」

先生「それに、2050年までに何が起るかというと…はい!中沢くん!」

中沢「え…えっと、いや…なんのことだか…」

先生「いけませんね~」

先生「あちらの国では41パーセントの人があと40年もしないうちに神の子が再臨すると信じているんですよ」

先生「…ふふふ、黙示録のラッパが鳴っちゃうかもなんですよ…!


中沢「は、はあ…」

先生「まあでもね…先生、世界が滅んじゃってもいいかなって思うんです」

先生「男女関係とか恋愛とか、もう沢山ですし…」

先生「もうこのまま、四捨五入して40とか言われるくらいなら」

先生「もういっそ、何もかもおしまいにしちゃった方が…」

中沢「あ、あの…ちょ、ちょっと、先生…?」


先生「…あ」

先生「はいはい、そういえば、今日は皆さんに転校生を紹介しないと!」

先生「じゃあ、暁美さん、いらっしゃーい」


スタスタ…

ほむら「暁美ほむらです、よろしくお願いします」

先生「暁美さんは心臓の病気でずっと入院していたの」

先生「久しぶりの学校で、色々戸惑うこともあるでしょう」

先生「みんな、助けてあげてね」

クラス「はあーい」


ほむら「んふっ」ニコッ
チラッ…



まさ杏「!」

まどか(あ、あれって…)

杏子(ソ、ソウルジェム!?)

さやか(え、ええ~!?)


昼休み
 ~学校 屋上~


「ええ~!」


さやか「じゃあ、マミさん知ってたんですか!?」

マミ「ごめんなさいね、つい、みんなをびっくりさせてみたくなっちゃって」

ほむら「本当はゆうべのうちにご挨拶しなきゃいけなかったのに…」

まどか「あ、そういえば昨日の…」

杏子「いたんだろ、ゆうべも」

さやか「ええっ!杏子気付いてたの!?」

杏子「いや、なんとなくな、そんな気がして」

マミ「ご名答、暁美さんに手伝ってもらったのよ」

マミ「すごいのよ、彼女の魔法、コンビネーションで攻撃力を何倍にも圧縮できるんだからっ」

ほむら「わ、私にできるのは、サポートだけで…」

ほむら「攻撃そのものは…からきしですけど…」


さやか「でも頼もしいじゃん」

さやか「ここ、最近はナイトメアも大物ばっかりだったしさ」

杏子「まあ、実力は昨日で証明済みなら、いいんじゃねーの」

ほむら「改めて、暁美ほむらです」

ほむら「これから皆さんと一緒にこの街のナイトメアと戦います、どうかよろしく」



スタスタ…

まどか「うん!こちらこそ!ほむらちゃん!」

まどか「これから一緒に頑張ろうねっ!」
ギュッ…


~見滝原市内公園~


まどか「ほむらちゃんが転校してきて、もう一ヶ月かあ…」

ほむら「…変だよね」

ほむら「なんか、ずっと一緒にいるみたいな気もするし」

ほむら「あっという間だったような気もするし」

まどか「うぇひ、今夜はナイトメアも出ないまま、みんな幸せに眠れるといいな」
ナデナデ

QB「きゅう~っ」


まどか「…なんだか不思議」

まどか「こんな風にね、ほむらちゃんとゆっくりお話がしたいなって、ずっと思ってた気がするの」

まどか「へんだよねっ、何でもないことなのに、また明日になれば、学校で会えるんだから」

ほむら「…そうね」

ほむら「でも、私も一緒…」


ほむら「こうして、まどかと一緒に過ごせる時間をずっと…待ってた気がする」


同時刻
 ~マミの家~


マミ「夢を~叶えて~♪」フンフーン

マミ「一人で探してた星の~♪」

ベベ「…モグモグ」(カタイ、コレカタイ)

マミ「同じ光を~♪」

マミ「べべ、そのヘアピンを貸して」

ベベ「モゲッ!」
ガチャン!

マミ「ん?」

べべ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」(ナイトメアオル!ナイトメアオル!)


マミ「ええ、またなの?」

べべ「チーズニナル!チーズニナル!」

マミ「…まったくもう」

パチ…
シュルルル!


マミ「夜更かしは美容の天敵なんだけどなあ」


バサッ…


~見滝原市内~


ナイトメア「キュピ」

ゴゴゴゴ…!

ビュシュッ!
ドカーン!



杏子「なあ、あれって、志筑仁美のナイトメアなのか?」

さやか「仁美も大変だよね~あんな無神経な奴を彼氏にしたりするからさあ」

杏子「うわ、まさか、アンタがそんなこと言うとは!」

杏子「つうか、本気で言ってんのかよ」

さやか「なわけないじゃん、冗談よ~冗談」


ナイトメア「ジロ…」


杏子「あ、やべ、見つかっちまった!」


ポンポンポン!
ドヒュー!

杏子「うおっ」

さやか「やばっ」

ヒョイッ!


ナイトメアが放ったぬいぐるみの弾丸を間一髪でかわす2人。
代わりにビルへと激突し、ビルは崩れていく。


ドスドス!
グワーン!

…スタッ

マミ「もう、全く、2人ともふざけないで」

マミ「真面目にやらないと危ないんだから」

さやか「はあーい」

杏子「あれ、まどかとほむらは?」


…ダダダダッ!

まどか「ごめん、遅れて」

ほむら「遅れましたっ」

さやか「2人とも、おそーっい」

まどか「うぇひひ、ごめんね」


マミ「これで全員そろったわね」

マミ「…それじゃ、いくわよ、みんな!」


マミの掛け声を合図に全員がソウルジェムを出す。

スッ
スッ
スッ
スッ
スッ

まほさ杏「はいっ!!」

シュイン!
シュイン!
シュイン!
シュイン!
シュイン!


全員「ピュエラ・マギ・ホーリー・クインテッド!」


ナイトメア「!!」


彼女たちの存在に気付いたのか、ナイトメアは
ヴァイオリンを取り出し、自分が踏んでいたビルに叩きつけた。

…スッ!
ゴシャ!


バアーン!!
ズコーン!!


ゴオオオ!


ほむら「まどか!巴さん!」

まどか「うん!」

マミ「オッケー!」

…ダンッ!
シュルルル!
パシッ…!

ほむら「オッケーです!」

マミ「うん!用意はいい?鹿目さん」

まどか「はいっ!」


カシャ…!

シュルルル!

マミまど「ティロ・デュエット!!」


ズギューン!
…ガシン!

シュルル!

ほむら「リリース!」

…カシャ!

ドーン!
スッ…
ピカーン

ナイトメア「?」

ナイトメア「…」
ヒョイ…
ゴシャ!

バアーン!!
ズコーン!!

負けんぞとばかりにもう一撃叩きつけたナイトメアだったが
ビルの屋上をひらりと舞うように動くさやかには意味がない。


さやか「気持ちはわかるけど、ちょっとは落ち着きなよ!仁美!」
ガッ…
スッ


さやか「五名様!リ!リ!ア!ン!」

ヒュヒュヒュヒュヒュッ!


さやか「杏子!」

杏子「ん?」

杏子「へいへーい」

杏子「編み込み結界!!」


ゴオオ…!


ナイトメア「!」

バシッ
バチッ!
ギュルルル!

カカカカカ!

…ドタッ

ミサイルのように正確に追いかけてきた剣に巻きつかれ
抵抗する術もなく、ナイトメアはその場に伏せた。


まどか「動きが止まった!」

マミ「お見事ね!」

マミ「さあ、みんな、仕上げよ!」


縛られ横たわるナイトメアを全員が囲み
真ん中にいたベベの口から大きな蛇のような姿の”もうひとりのベベ”がでてくる。


…ボフン!


ナイトメアは小さなお皿の上に
乗せられ、みんなはそれを囲った円卓に座る。


グルグル…


みんな「けーき、けーき、まあるいけーき」

みんな「まあるいけーきはだあれ?」

ベベ「モジョモジョ、ツベベ?」(ケーキハマミ?)

マミ「ち・が・う」

マミ「わたしはチーズ、まあるいけーきはつめたい」

マミ「けーきは鹿目さん?」

まどか「ち・が・う」

まどか「わたしはアイス、まあるいけーきはとけちゃいますっ」

まどか「けーきはほむらちゃんっ」


ほむら「ちが…っいますっ」

ほむら「わたしは、チョコレートっ、まあるいけーきはあまいです」

ほむら「けーきは佐倉さん?」

杏子「ち・が・う」

杏子「あたしはたいやき、まあるいけーきはで・か・い」

杏子「けーきはさやか?」

さやか「ち・が・う」

さやか「あたしはスイカ、スイカを割ったらあまいゆめ」

みんな「こんやのおゆめはにがいゆめ」

みんな「おさらのうえにはねこのゆめ」

みんな「まるまるふとってめしあがれ~」


みんながテーブルクロスを捲ると大きなけーきが姿を現す。

ボボーン!

ベベ「イタダキー!」
ガプッ!
ドシーン!

ブワッ…
ボフッ!

プワアア…

ダキッ…
さやか「…こんなことで挫けてたらダメだよ、仁美」

さやか(あんたたちには、幸せになってもらわないと……)

ヒラヒラ
…スウゥ


…スタッ

まどほむ「やったね!」

QB「きゅうー」

さやか「まーあたしたちが力を合わせたらチョロいもんよね」

マミ「こらこら、油断は禁物よ、今回だってちょっとひやっとさせられたわ」

杏子「そういうお説教はごめんだね」

杏子「まあ、ケーキと紅茶があれば、別だけど~?」

さやか「杏子!あんた良いこと言う~!!」

マミ「仕方ないわねえ、みんな、うちに寄ってく?」


全員「はあ~い」


その後 朝
 ~見滝原市内~


スタスタ…

ベベ「マジョマブカマンベール!マジョマギカマンベール!」

マミ「朝だから、今日は控えめにね、みんな」

まどさや「はあ~い」

マミ「そういえば、こないだのカモミールティーまだ余ってたわね」

まどか「ああ!あれ、すっごくおいしかったです!」

マミ「あと、こないだ封を切った、エキセアもあるけど…」

杏子「ええ~あたし、酸っぱいのはやだな~」

さやか「杏子の味覚は相変わらずお子ちゃまだなあ~」

杏子「なんだと~っ!」


ほむら「……」

まどか「どうしたの?ほむらちゃん?」

ほむら「え、あ…いや…」

まどか「ほむらちゃんもはやくいこっ?」

ほむら「あっ、うん…」



ほむら「……」

ほむら(…私たちの戦いって…これで…良かったんだっけ…?)

ほむら(私は何かを忘れている…?)

今日はここまでにします
また明日続き書きます。

>>1です
再開します


数日後 放課後
 ~マミの家~


ピンポーン


さやか「お邪魔しまあ~すっ」

ほむら「お、お邪魔します…」


\お、きたきた/


マミ「はあ~いっ」


マミ「2人とも、待ってたのよ」

さやか「いやあ、今日、掃除当番でして…」

ほむら「ごめんなさい」

マミ「さ、さ、入って、鹿目さんと佐倉さんも来てるから」
_____

さやか「遅れてごめ~んっ」

ほむら「ごめんなさいっ」

まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん、お疲れさま~」

杏子「そういや、今日は当番だったな、お前ら」

ベベ「ミンナ、ソロッタ!ミンナ、ソロッタ!」


さやか「だね~ベベ」

ほむら「…こんにちは、ベベ」

マミ「さあ、あなたたちもケーキ食べて」

さやか「それじゃあ、遠慮なくっ!」

さやか「いただきますっ!」
モグモグ!

さやか「おお!マジうまっすよ!」

杏子「だよな~今日のケーキもうまいよな」

マミ「ふふ、ありがと」

ほむら「み、美樹さん…そんないきなり…」

マミ「いいのよ、暁美さんも食べて」


ほむら「え、あ…じゃ、じゃあ、いただきます」
モグモグ…

ほむら「…あ、お、おいしい…」

まどか「うぇひ、マミさんのケーキはいつもおいしいからね」

ベベ「マジョマグカマンベール!マジョマグカマンベール!」(マミツクル、ケーキオイシイ!)

マミ「ありがと、みんな」

マミ「そう言えば、最近ベベ、佐倉さん見ても逃げなくなったわね」

まどか「あっ」

さやか「おお~、そう言えばそうですね!」

杏子「ああ…そういやそうだな」


さやか「なにあんた、どうやってベベ懐かせたのよ、餌付けでもしたの?」

杏子「別になんもしてねーよ」

ほむら「え、ベベって、佐倉さんを怖がってたんですか?」

まどか「そうだよ、いつもベベが何かに似てる~って言ってたの、杏子ちゃん」

さやか「そうそう、もしかして最近は何も言わなくなったからじゃないの?」

杏子「あれは結局アタシもなんかわかんなかったからさ~、もういいかなって」

ほむら「!」

ほむら「え…佐倉さんも、ベベが何かに似てるって思ってたんですか…?」

まさ杏マ「えっ」


マミ「…も、もしかして…?」

まどか「ほむらちゃんも!?」

さやか「嘘でしょ!?」

杏子「…本当か?」

ほむら「…は、はい、私も初めて見た時から思ってたんです…」

ほむら「初めて見たはずなんですけど…なにかに似てるというか…見たことがあるような…」

ベベ「ベベベ?」(ナンノコト?)

さやか「へ、へえ~ほむらもなんだ!」


まどか「ん~?」
ジ-…

ベベ「モゲッ?」

まどか「やっぱり、私は何も…」

マミ「そうよね、いつも一緒にいる私も別になんとも思わないんだから」

ほむら「そ、そうですよね…佐倉さんも勘違いだったみたいですし」

ほむら「多分、私もそうです…」

さやか「……」

杏子「ま、アタシも勘違いだったわけだし、ほむらもそうだろ」

ほむら「はいっ」



マミ「…そんなに何かに似てるのかしら、ベベって」

ベベ「マジョマギカマンベール!」

まどか「何かのぬいぐるみとか…?」

マミ「ふふっ、そうかもね」

ベベ「マジョマギカマンベール!マジョマギカマンベール!」(ベベ、ヌイグルミ、チガウ!チガウ!)

まどか「うぇひひ、わかってるよっ、べべ」



………


まさほ「お邪魔しました~」

杏子「また、明日な、マミ」

マミ「ええ、またみんないらっしゃいね」

ベベ「バイバーイ!」


…バタン


その日の深夜
 ~さやかの家~




~~~~~~~~~~~~

廃墟となった街。希望で溢れるはずだった瞬間。
そこには倒れた”誰か”を囲むように4人の影。
自分はその中で横たわっている”誰か”を抱え、泣いていた。


杏子『で、っ…できるわけ…っ…ねーだろ…っ!…っ』

『杏子…ダメよ…後悔するわ…くっ…だから…だから今のうちに…っ!』

『ううっ…ひくっ…!』

『いやだよぉっ…こんなのって…ひっ…っ…!』


泣き声と嗚咽。聞こえるのはそれだけ。
それでも自分だけは、涙を零すわけにはいかなかった。


杏子『っ…で、できるわけねーだろおぉっ!!』

『…そ、そっか…やっぱ杏子先輩は…ほんとに優しいや…っ』

『ごめん…杏子先輩…ごめん、まどか…ごめん…マミさん、ごめん、ほむら…』

『…みんな…ほんとにごめん…っ』

『うっ…ううっ…っ!!』


パキッ…パキキ…キン…!

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


自分にはそんなとこ、見たことも、聞いたこともないはずなのに…。
それを夢と呼ぶには現実的過ぎる。


さやか『大丈夫、きっと大丈夫、奇跡も魔法もあるんだよっ!杏子先輩っ』

杏子『さやかあぁぁぁッ!!』



~~~~~~~

…バッ!

杏子「はッ!!」


布団から飛び起き、我に返った。


杏子「はあ…はあ…はあ…」

杏子「…なんだったんだ…今の…」

杏子「……」



さやか「…zzz」

杏子「…さやか…」


数日後 昼休み
 ~学校 屋上~


さやか「お弁当タ~イム!」

マミ「さあ、いただきましょ」

さやか「いえーいっ!」

まほさ杏マ「いっただっきまーす!」

ベベ「マジョマギカマンベール!」

マミ「はいはい、ベベの分もちゃんとあるわよ」

ベベ「マスカルポーネ!マスカルポーネ!」

まどか「うわ~っ、ほむらちゃんのお弁当可愛いっ~!」

ほむら「え、そ、そんなことないよっ」

まどか「自分で作ったの?」

ほむら「う、うん…」


まどか「すごいね!」

マミ「あら、暁美さんすごいのね」

ほむら「そ、そんな!巴さんに比べたら…私なんて…」

さやか「あたしも今日は自分で作ったんだ~」

さやか「じゃじゃ~んっ!」

まどか「さやかちゃんのお弁当も可愛いねっ」

さやか「でしょ、でしょ~?」

杏子「へえ~すごいじゃん、朝から何してんのかと思ってたら、弁当作ってたのか」

杏子「んじゃ、これ、も~らいっ!」
ヒョイッ

さやか「あ、ちょ、ちょっと、あんたねえ~」

杏子「さやかのソウルジェムいっただっき~」

QB「ぱくっ」

杏子「あっ」


モグモグ
QB「きゅっぷい」

杏子「っ~!」

さやか「あははは、QBに食べられてやんの~」

マミ「ふふっ」

まどか「うぇひひっ、杏子ちゃんったら」

ほむら「…ふふっ」

杏子「ったく、売店のパンだけじゃ腹溜まらないから、もらおうと思ってたのに~」

さやか「あはは、あんたが食い意地張るから、その罰よ」

まどか「お腹空いてるなら、私のから揚げ食べる?杏子ちゃん」


杏子「え!い、いいのか!?」

まどか「うん、パパ作りすぎちゃったみたいで」

杏子「ありがと!まどか!くれっ!」

さやか「まどか~甘やかしちゃダメだぞ~」

マミ「仕方ないわね、私も何かあげるわ、佐倉さん」

杏子「おお!ありがてー!」

さやか「ええ~っ、マミさんまで~」

さやか「あたしはもう何もあげないからね~っ!」

杏子「へへ~んっ!マミとまどかからもらったから、もういらないし~」

さやか「くっ~!」


さやか「あ、マミさん、あたしもいいですか?」

マミ「ええ、もちろんよ、好きなの選んで」

さやか「ひゃっほ~、どれにしようかな~」

杏子「なんでさやかまでもらうんだよ~、オメーは弁当あんだろーが」モグモグ

さやか「何を~!自分はもらったくせに、あたしには文句あるってーの!」

マミ「まあまあ、2人とも…」

まどか「この2人いつもこうなっちゃうんですよね」

まどか「あ、ねえ、ほむらちゃんもから揚げどう?」

ほむら「あ、う、うん…ありがとう」


ほむら「……」


その日の放課後
 ~マミの家~



………


さやか「あははは!」

まどか「うぇひひっ、杏子ちゃんって面白いね」

杏子「んだよ、アタシばっかり、てめーらも同じだっつの」

マミ「ふふ、佐倉さんもそういうお年頃なのよねっ」

ほむら「ふふっ」


………


その後
 ~マミの家からの帰り~


スタスタ…

杏子「ったく、アイツら人のこと馬鹿にしやがって」

ほむら「……」

杏子「…どうかしたのかい?黙りこんで」

ほむら「え、あ、いえ…別に…」

ほむら「…ただ、考えてて…」

杏子「?」

杏子「考える?何を?」

ほむら「…このままずっと、こうしてたいなって…」

杏子「…はあ?」

杏子「どういう意味?」


ほむら「…こうしてる”今”がずっと続けばいいなって…」

杏子「ああ…」

ほむら「でも多分…無理なんでしょうけど…それでも…」

杏子「…無理なんかじゃねーよ」

ほむら「え?」

杏子「今がいいなら、それでいいじゃねえか」

ほむら「でも…」

杏子「もし、この先アタシたちに何かがあって」

杏子「アンタの好きな”今”って奴が壊れそうになったとしたら」

杏子「アンタは黙って見てるだけなのかい?」

ほむら「…!」


杏子「アタシなら、それを守るために戦うよ」

杏子「仮にそれで守れなかったとしてもアタシは戦うよ…」

ほむら「……」

ほむら「…やっぱり、佐倉さんは…強いですね」

杏子「んでそうなるんだよ…」

杏子「つか、んなくっだらねえこと考えんなよなあ」

ほむら「…そうですね、私の…悪い癖です…」

杏子「あーあ、なんかこっちまで、気分悪くなっちまったじゃねーか」

ほむら「…ご、ごめんなさい」

杏子「許してやるから、代わりにそこのコンビニで、うんまい棒な」


杏子は先に見えてきたコンビニを指しながらほむらに提案した。


ほむら「はいっ」


その後
 ~さやかの家~


杏子「……」

杏子(何だったんだろ…さっきのほむらの言葉…)

杏子(…なんか前に聞いたことがあるような…)

杏子(アタシも自分で……)

杏子(いや…気のせいか)



さやか「…ちょっと、杏子」

杏子「え、あ、ああ、わりい」

さやか「何ぼーっとしてんの、そろそろ寝るよ」

杏子「…ああ」

…パチ



さやか「ふぁああ~、おやすみ~杏子」

杏子「あ、ああ…おやすみ、さやか…」


杏子「……」

杏子「な、なあ…さやか…起きてるか…?」

さやか「…んん?」

杏子「…最近な、変な夢見るんだ…」

さやか「変な夢?どんな夢よ?」


杏子「アンタが…怪物になっちまう夢…」

さやか「!」

杏子「…そんな事、考えたことも、見たこともねえはずなのに…」

杏子「…夢のはずなのに…そっちが現実みたいな不思議な感じなんだ…」

さやか「……」

さやか「な、なによそれ、あはははっ…なんであたしが怪物になっちゃうのよ」

杏子「……」

さやか「そんなの夢の話でしょ?杏子のくせに、しょーもないこと気にしてるね」

杏子「…だよな…そうだよな…」

杏子「でも…」


杏子「でも…!」

杏子「…ううっ…ひくっ…!」

さやか「え…?杏子…?」


杏子「…でも…ひくっ…なんで…アタシ…涙が止まらねえんだ…っ!」

さやか「え、きょ、杏子!?」

杏子「…だ、だって、幸せ過ぎて、なんかおかしいんだよ…なんだよ、これ…!」

さやか「杏子……」
ダキ…!


杏子「っ…さや…か…?」


さやか「そっか…あんたはまだ…覚えてるんだね…」

さやか「そっか…そういやそうだったね…」

杏子「…ううっ…っ」

さやか「みんなが幸せじゃなきゃダメなんだ…ここは」

さやか「…だって、だってね…ここは…」

さやか「終わりの始まる世界だから…」


杏子「……」

杏子「終わりの…始まる世界…?」


杏子「…はっ!」

杏子(そ、そうだ!思い出した!あ、アタシは…!)


杏子「っ…!」

杏子「…ありがと…さやか…アンタのお陰で、またアタシは救われたよ…」

さやか「…ううん、救われたのは、あたしの方だよ…」

杏子「…ううっ…ひくっ…っ」

さやか「…大丈夫、ここはそんなに悲しい世界じゃないよ…」

さやか「そうするためにあたしたちがいるんだから…」

さやか「…だからさ、少しでも後悔しないように”今”を楽しもうよ…」


さやか「ねっ?」

杏子「……」

さやか「もう寝ちゃったか」


数日後
 ~見滝原市内某所~


杏子「で、話ってなにさ?」

ほむら「…佐倉さん、前に言ったこと覚えてますか?」

杏子「は、はあ…?」

ほむら「…もし、私たちに何かがあって、”今”が終わってしまったらって…」

杏子「!」

杏子「そ、そんな話したっけ?」

ほむら「……」

ほむら「覚えてないなら、仕方ないです…」

杏子「わ、わるいね…」

ほむら「…ところで、最近、おかしいと思いませんか?」


杏子「おかしいって?何が?」

ほむら「…何かが…いえ、何もかも…」

杏子「お、おい、大丈夫か?」

ほむら「誰よりも先に、まず佐倉さんに相談したのは…」

ほむら「貴女だけは…特別って言うか…」

ほむら「貴女なら気づいてくれるんじゃないかって、思ったからです…」

杏子「……」

ほむら「…思いあたること、何かありませんか?」

杏子「思いあたること…?」

ほむら「いえ…ただ…」

ほむら「佐倉さんも、巴さんのとこにいるベベを見て、つい最近まで…何かに似てるって…」

杏子「!」


ほむら「この前も言いましたが…それ、私も同じなんです」

ほむら「私もベベを初めて見たはずなのに、何かと似てると感じました…」

ほむら「これって……」

杏子「それで…?」

杏子「ベベの違和感に何か心当たりがあるのかい…?」

ほむら「…はっきりとは…私も…」

ほむら「でも…何かが記憶の中で引っかかってるんです…」

ほむら「…それに、本当は貴女も…」

杏子「はあっ?」

ほむら「…そう、やっぱり忘れているんですね…」

ほむら「…不確かな記憶なんですけど…何かがおかしいと思いませんか…?」

杏子「……」

杏子「どうしちまったんだよ、大丈夫か、本当に」


ほむら「……」

ほむら「…そういえば、いつから見滝原中に?」

杏子「アンタが転校してくる前さ」

ほむら「…じゃあ、今はどこに住んでるんですか?」

杏子「さやかの家に居候してんのさ、それも知ってるはずだろ?」

ほむら「こっちに来る前はどこに?」

杏子「隣の風見野だよ、なんなんだよ一体、全部知ってることだろ」

杏子「アタシがニセモノにでもなったと思ったのか?」

ほむら「じゃあ…今から私と一緒に、風見野市に行きましょう」

杏子「何しに行くんだよ?」

ほむら「…あなたの記憶を思い出させに」

杏子「…私が何か忘れてるってのか…?」


ほむら「ええ、あなたは…忘れている…」

杏子「何をさ?」

ほむら「…それは…大事なことです…私たちの大事な記憶…」


杏子「……」

杏子(確かに…大事なことだ、だがアタシは忘れてねーよ…思い出せたからな…)

杏子(ほむら…アンタも自分で気付くんだ…いや、気づかなきゃならねえことなんだ…)


杏子「…アタシをからかってるって様子でもねえな、アンタ…マジなんだな」

ほむら「……ええ」

杏子「地元でアタシが通ってたうまいラーメン屋があるんだ、そこで晩飯奢ってよ」

杏子「…それが条件」

ほむら「わかりました」


杏子「……」


~見滝原市内外れ~



ほむら(そして、私たちは、隣の風見野市に出向くことになった)

ほむら(しかし、私の予想通り、何度繰り返しても、風見野には辿り着けなかった)

ほむら(やはり…ここは…)




杏子「…ど、どうなってんだ、こりゃ…幻覚か何かか…!?」
シュイン…

スッ…!
杏子「!」


ほむら「…今は迂闊に手を出さないほうがいい、これはそういう類の罠だから」

ほむら「もがけば、もがくほど、深みに嵌まって抜け出せなくなる」

ほむら「あなたも本当は覚えているはず…」

ほむら「本当に…何も思い出さない?」

杏子「…っ」

杏子「…悪い、記憶におかしいと思うところはあるが…何も思いあたるとこがない…」

杏子(ホントに悪いが、今は…そういうことにしとくよ…)


ほむら「やはり…あなたの記憶も…!」

杏子「もし本当にアンタが正しいんなら…そうなんだろうな…」

ほむら「…仕方ないわ、二人でこれ以上目立つより、後は私一人で動く…」

ほむら「もし何か思い出すことがあったら連絡して」

杏子「…ああ、悪いな…力になれそうになくて…」


スタスタ…

去ろうとした杏子だったが立ち止まり、躊躇うようにほむらに言った。


杏子「…なあ、てめえは、この違和感の正体を知ったときに…どうするつもりなんだ…」

ほむら「…えっ?」

杏子「…いや…なんでもねえ…気にすんな」


そう言うと杏子はほむらに板チョコを投げ渡し、その場を後にした。


ほむら「……」

ほむら(覚えているのは、私だけなの…?)

ほむら(そう…私はこの手口を知っている)

ほむら(迷い込んだ獲物の記憶を操作し、閉鎖された幻の空間に閉じ込める)

ほむら(…間違いない、これは…魔女の結界だ…!)


その後
 ~さやかの家~



杏子「…ただいま」

さやか「あ、杏子~どこ行ってたのさ~」

杏子「ああ、ちょっと地元の方にな」

さやか「…ふうん、まあいいけどさ」

さやか「さ、晩御飯できてるよ」

杏子「…あ、ああ」


____


~さやかの部屋~


杏子「……」

さやか「ん~?どうしたの、杏子、さっきから辛そうな顔してさ」

杏子「…なあ、話があるんだ、さやか」

さやか「え?話?」


杏子「…ほむらが気付き始めた…」

さやか「…!」

さやか「な、何の話をしてるのさ」

さやか「気付くって、何に?」

杏子「……」

杏子「…アンタが本当のさやかじゃないってのは…わかってる」

杏子「でも…アンタのお陰で、アタシは思い出したんだ…」

さやか「!」

さやか「え…?」

さやか「ちょ、ちょっと、きょ…」

杏子「アタシはほむらを助けたい…助けてやりたいんだ…!」

杏子「できるかどうかはわかんねえ…でも確かめもせずに諦めたくねえんだ」


さやか「!!」

杏子「…さやか、手伝ってくれないか、一緒にアイツを助けてくれ」

さやか「っ……!」

杏子「頼むっ!」

さやか「杏子…」

さやか「……」

さやか「…そっか…思い出しちゃったんだ…」

さやか「あーあ…」

さやか「じゃあ仕方ないね、あたしのせいだって言うんなら…」

さやか「あたしが責任取らないとね、あたしたちもそのために来たんだから」

杏子「は…?」

杏子「ど、どういうことだ…」


さやか「へへーんっ、さやかちゃんは偽者じゃないってことさっ~」

さやか「正真正銘、本物ってこと~」

杏子「!」

杏子「な、何言ってんだ…だって…だって、さやかは…もう…っ!」

杏子「て、てめえはこの結界が…作り出した…!」

さやか「もうっ~疑り深いなあ~」

さやか「あんたが、ほむらに無理言って、できるかもわかんないことまでして」

さやか「助けにきてくれた、あ・た・し・だよっ?杏子先輩っ」

杏子「な…!」

杏子「そ、その呼び方は…!ほ、本当に…さ、さやかなのか…!?」

さやか「あたしは本物だよ…杏子先輩っ」


杏子「…う、ううっ…!」

杏子「…うわああぁぁぁんっ!」
ダキッ!

さやか「も、もう~なんでいきなり、こうなるかなあ」
ナデナデ

さやか「でも良かった…杏子先輩…何も変わってないね」

杏子「…ぐすっ!もうっ…もうっ…会えないって…思ってた…!ひくっ…」

さやか「言ったじゃん…奇跡も魔法もあるんだよって」

杏子「うぅ…うんっ…さやか…っ!さやか…!」

さやか「んも~、杏子先輩のそういうとこ見ると調子狂うなあ~」

さやか「もっと先輩らしく、しゃきっとしなよ」

杏子「だって…だって…っ!」


さやか「ほーら、本題はなんだっけ、ほむらを助けたいんでしょ」

杏子「あ、ああ…そうだった」

杏子「じゃ、じゃあ…ここはやっぱり…アイツの結界なのか…」

さやか「まーそういうことになるかな」

杏子「でも、どうして…さやかが…ここにいるんだ…?」

杏子「そ、それに魔女はもう…まどかが…」

さやか「それはね…ふふっ~んっ」


………


杏子「…そ、そうだったのか!」

さやか「しいぃぃ~っ!」

さやか「あんまり大きな声だすなってのっ!」


さやか「あいつにばれたらどうすんのさっ」

杏子「わ、わりぃ…」

杏子「…そっか、てめえらはそのために…」

さやか「…でも、杏子先輩はほむらを助けたいんでしょ…?」

杏子「あ、ああ…」

杏子「アイツにはアンタん時の借りがある…」

杏子「それに…なんかアイツ見てると…昔のアタシを見てるようでさ…」

杏子「ほっとけないんだ」


さやか「そっか…」

さやか「…う~ん、でもあたしたちに任せちゃったら…」


杏子「いや…それなら、アタシにも考えがある」

さやか「おお~、さすがは杏子先輩~」

さやか「どうするつもり?」

杏子「…ああ」


………


さやか「…へえ、そんなことまで考えてたんだ~、杏子先輩らしくないよ」

杏子「う、うるせえっ」

さやか「でもそれじゃあ、あたしらの出番はなしってこと?」

杏子「いや、手伝ってもらうさ、あたしだけじゃ無理だろうからな…」

さやか「ふふっ…りょーかい」


杏子「…ありがとな…さやか…また、てめえに助けられちまったよ」

さやか「なーに言ってんのさあっ」
トンッ

さやか「…あんたらにはあたしの方が世話になってるって!」

杏子「……」

杏子「なあ…もし…そん時がきたら、この世界は…」

さやか「さあって~!」

さやか「じゃあ、あたしもそろそろ動きますかね~」

さやか「ん?なんか言った?」


杏子「…いいや、今はそのこと考えないようにしとくよ…」

杏子「……」


~見滝原市内~


スタスタ…

ほむら「……」

ほむら(魔女…それは絶望を撒き散らす厄災の使い)

ほむら(絶望に沈んだ魔法少女達が、最期に成り果てる呪われた姿)

ほむら(かつて私は、幾度となく同じ時間を繰り返し、その残酷な運命に抗おうと戦った)

ほむら(その繰り返しの果てに、私は杏子と共に過去へと干渉し、ワルプルギスの夜には勝利したものの)

ほむら(美樹さやかが魔力の大量消費により、魔女化…その後は思い出したくもないような結果になった)

ほむら(でも、最期は一人の少女の犠牲によって、希望と絶望を巡る残酷な連鎖は絶ち切られ)

ほむら(世界は新しい理へと導かれたはず……なのに…)


ほむら(私たちは忘れている、いや、忘れさせられていたのだ)

ほむら(誰かが、私たちの記憶を欺き、陥れようとしている)

ほむら(この偽りの見滝原の街で…)


その夜
 ~マミの家~

ピンポーン


マミ「あら、いらっしゃい、二人とも」

まどか「お邪魔しま~す」

ほむら「…お邪魔します」

マミ「座って待ってて、今、お茶とケーキ用意するから」

まどか「あ、いつも、ごめんなさい」

マミ「いいのよ」

…スタスタ


まどか「あ、こんばんわ、べべ」

ベベ「マジョマギ!マジョマギ!」(マドカ、マドカ)

まどか「うぇひひ、ベベは相変わらずだね~」

ほむら「こんばんわ、ベベ」

ベベ「ベベベ?」(ダレ?)

まどか「うぇひ、ほむらちゃんだよ、ベベ」

ベベ「ベベジョボ?」(ホムラ?)

まどか「そうだよ、ベベ、ほむらちゃんだよ!」

ベベ「マジョマギカマンベール!マジョマグカマンベール!」(ホムラ、カワッタ!ホムラ、カワッタ!)

まどか「ねっ、可愛いよね?ベベ」

ベベ「モゲッモゲッ!」(カワイイ!)

ほむら「…まどか…」


スタスタ…

マミ「お待たせ~」

まどか「うわあ、今日もおいしそうですね~」

マミ「特製のチーズケーキよ」

ベベ「マスカルポーネ!マスカルポーネ!」(チーズ!チーズ!)

マミ「遠慮せずに食べて」

マミ「はいはい、ベベの分もちゃんと切り分けてあげるから」

まどか「いただきま~す」

ほむら「…いただきます」

モグモグ…

まどか「ん~っ、おいしいです!」

ほむら「…ええ、とっても…」


ベベ「モグモグモグ!」

マミ「そういえば、暁美さん、コンタクトにしたの?」

ほむら「…はい、夜はメガネを外してることが多いので」

まどか「それに今日は髪も解いてるんですよ、ほむらちゃん」

マミ「あら、素敵ね」

ほむら「ちょうど、シャワーを浴びた後だったから…」

マミ「でも、そっちが似合うわよ、暁美さん」

まどか「うんっ、私もそう思うよ、とっても可愛いよ!ほむらちゃん!」

ほむら「…巴さんまで…」


べべ「マジョマギカマンベール!マジョマギカマンベール!」(モットタベル!モットタベル!)

マミ「はいはい、もう一切れだけよ、べべ」

ベベ「モゲーッ!」

ベベ「モグモグ!」

ベベ「アチッ!」
ガチャン!
パリン!

マミ「もう、べべったら、あんまりお行儀が悪いと、チーズになっちゃうわよ」

べべ「マドマギカマンベール!マジョマギカマンベール!」

べべ「モゲッ!」

まどか「うぇひひ、本当に仲いいですね、ベベとマミさん」


マミ「ええ、べべは昔からの友達ですもの、鹿目さんや美樹さんよりも付き合いは長いのよ」

ほむら「…そういえば、ベベはいつから、巴さんと…?」


マミ「ん?」

ベベ「…ホムラ、ナゼ、キク?」

ほむら「なんとなく…気になって…」

マミ「そうね…あれは忘れもしないわ、あの頃はね、見滝原には私一人しか魔法少女がいなかったの」

マミ「ひとりぼっちで戦う私の側で、ベベはいつも支えてくれた…」

マミ「この子がいなきゃ、私はとっくにダメになっていたと思うわ…」


ほむら「…巴さんはもっと、強くて頼りがいがある人です…」

ほむら「私たちの…リーダーなんですから…」


マミ「ありがと、確かにそうやって、みんなのリーダーぶってたときもあったわね…」

マミ「でも、今は、鹿目さんと美樹さんも成長して、暁美さんと佐倉さんも一緒に戦ってくれて」

マミ「みんなが側にいてくれて……もう、無理に背伸びする必要はないんだなって…」

ベベ「マージョマジョマジョ、マジョポペプト」(マミ、ホントハナキムシ、マミ、ホントハナキムシ)

マミ「こーら」

まどか「うぇひひ」

まどか「ナイトメアも強くなっていくけど、私たちもみんなで力を合わせて戦って」

まどか「こういうのって、なんかいいですよねっ」

マミ「もうーっ、ナイトメア退治は遊びじゃないのよ、鹿目さん」

まどか「うぇひっ」


マミ「でも、そうね…今にして思うと、こんな毎日って私が夢に見ていた毎日なのかもしれないわね…」

マミ「魔法少女の運命を受け入れた人生が、こんなにも幸せで充実した人生だなんて、思ってもみなかったから…」

まどか「マミさん…」


ほむら「……」

…コト

ほむら「…お茶のおかわり、いいかしら、巴さん」

マミ「あ、ちょっと待ってて、今お湯を沸かしてくるわ」

スタスタ…


ほむら「……」
シュイン!


まどか「ほ、ほむらちゃん!?」

ほむら「ごめんなさい、まどか…」

カシャッ…!

スタスタ…

ボフッ!

ベベ「モゲッ!?」

ググッ…!

ベベ「ホ、ホムラ、クルシイ」

ほむら「白状しなさい、こんな周りくどい手口を使って、一体何が目的なの?」

べべ「ナ、ナンノコト、ベベ、シラナイ」

ほむら「私はあなたの正体を覚えてる」

べべ「…ベベ、シラナイ、クルシイ…ホムラ」

ほむら「……」

…ポチ
ウィーン…


~見滝原市内~


ビョオオォォ…!


ほむら「……」

ほむら(…記憶って厄介なものね、一つ思い出すと、いらない記憶まで甦ってくる)

ほむら(巴マミ…そう、私は貴女が苦手だった…強がって…無理し過ぎて…)

ほむら(そのくせ、一番の繊細な心の持ち主で…)

ほむら(だから、貴女に真実を告げるのは、いつも残酷だった)

ほむら(…思い出したわ)

ほむら(私が自らの目的の為に、一体何人の心を踏みにじったのか、一体何人を犠牲にしたのか…)


…スタッ


ベベを壁へと叩きつけ、ほむらは高圧的になる。

…ガッ!

ベベ「…ホ、ホムラ…ク、クルシイ…!」

ほむら「いい加減、白状しなさい…!!」

ほむら「私はあなたの正体を知っている、本当はあなたが何者なのかも」

ほむら「こんな結界の中に私たちを閉じ込めて、一体何が目的なの!」

ベベ「ク、クルシイ…ホムラ…!」


…シュルル…!

ほむら「!!」
スッ!

ほむら「きゃっ!」

…ガシッ


??「どういう事情で、こんなことをしたのか聞くつもりだったけど…」

??「これ以上べべがいじめられるのを黙ってみているわけにもいかないわ…」

ほむら「!!」

ほむら「…まさか、最初から…?」

マミ「どういう事情で、こんなことをしたか、説明してもらえるかしら」

マミ「その子が一体、何をしたっていうの?」

ほむら「ここはニセモノの世界よ、みんな記憶を操作させられてる!!」

ほむら「巴さん、どうして気付かないの!?コイツはみんなを騙してるのよ!!」

マミ「え、あ、暁美さん?だ、大丈夫?」

ほむら「……」


ほむら「っ…」
ガチャ…
バーン!

…シュルル!

マミ「ベベ、逃げて」

ベベ「モゲッ!」

ほむら「っ!」

ガチャ…
バーン!

…シュルル!

ほむら「ッ!」

マミ「追いかけようなんて思わないことね、さもなくば私と戦うはめになるわ…」

ほむら「……」


ほむら「っ!」
スタッ!

マミ「っ!」
スタッ!


ガチャガチャ…
ドガガガガガガガガ!

バババババババ!

一斉に放たれた弾丸は飛行機雲のように空中に広がっていく。

…カシャ!


ガキン!キン!ガキン!キン!
キキキン!キキキン!ガキン!キン!
キキキン!ガキン!キン!キキキン!


凄まじい衝突音と甲高い空切音。
それと同時に周りの構造物が抉られるように形を変えていく。


マミ「お互いに動きの読み合いね!」

マミ「でも、同じ条件で私に勝てる?」

ほむら「根競べなら、負けない…!」


ドガガガガガガ!
ババババババ!


…………


後、数センチでも横か縦にずれていたら
彼女らの身体を掠っていたであろう弾丸が全て衝突し、炸裂した。
辺りが静かになると、未だ、お互いの銃口を覗きあう2人の姿。


マミ「はあ、はあ、はあ…!」

ほむら「はあ…!はあ…!はあ…!」

マミ「ほら、埒があかないわよ」

ほむら「……」

ほむら「……っ」

…スッ

ほむら「…くっ…」
カシャ…!

マミ「!」

ほむら「っ…!」
ググ…!

マミ「ダメよっ!!」

マミ「暁美さ…!」

…バーン!

ブチッ!

…カシャッ!


ほむら「…はあ、はあ…はあ…」
ガチャ…

ほむら「……」
スッ…

バーン…!

…カシャ!


シュルルルル!!

ほむら「!!」

シュルル!
パン!
パン!

ほむら「…っ!」

シュルル!
…ガシッ!


マミ「あなたの魔法は確かにすごいけど、自分がいつも相手より優位に立っていると思い込むことは禁物よ…」

ほむら「ど、どうして…!」

マミ「急所を狙わないところを見ると、まだ私の身を案じてくれる気持ちはあるようね…」

ほむら「巴さん!どうして気付かないの!?今の自分に何の違和感もないの!?」

マミ「それとこれとは、話が別でしょ、どうしてベベを襲ったりしたの?」

ほむら「アイツは魔女よ!思い出して!!」

マミ「魔女なんて知らないわ、私たちの敵は…」


マミ「魔獣でしょ…」


ほむら「!」

マミ「!」

マミ「そう…確かに私たちは魔獣と戦っていたはず…」

マミ「…じゃあ、ナイトメアって…一体…」



ヒュルヒュルル!

マミほむ「!!」


その時だった。
回転しながら飛んできた消火器に槍が刺さり、破裂する。


ガンッ!
ザシュッ!

…プシュー!

モクモク…


マミ「っ!」
ブン!

辺りが煙に包まれたが、マミはすぐにそれを掃ってみせる。
だがもう、拘束していたはずのほむらはいなかった。


マミ「い、一体、どういうこと…!?」

…スッ
??「それは、私から説明するのです」

マミ「!」


マミ「あ、あなたは!?」

マミ「も、もしかして…ベベ!?」

なぎさ「今まで、黙っててごめんなさい」

なぎさ「でも、落ち着いて話を聞いてほしいのです」


スッ…
杏子「…コイツの言う通りだぜ、マミ、今から話すことは事実だ」

マミ「佐倉さんまで…」

杏子「それと…それを聞いたうえで、頼みたいことがある、マミ」

マミ「…え?」


~見滝原市内某所~


ビョオオオォ…!


??「はあっ!」
ザシュッ!
ガキン!


…スタッ
…スタッ


ほむら「…あなたは、一体…?」


さやか「全く…絶好調のマミさん相手に、ホントに勝てると思ってたの?」

さやか「ほんっと、あんたは複雑そうに見えて単純だわ」

ほむら「……」

ほむら「巴マミとの衝突は仕方なかったわ、それに、私が狙ってたのは…」

さやか「『べべ』…でしょ?」

ほむら「!」

さやか「確かにあの子は昔、魔女だったけど、いくらなんでも先走り過ぎだよ」

ほむら「…!」

ほむら「あなた…!覚えてるの…!?」

さやか「…それがあたしの役目だからね」

さやか「だいたいさ、おかしいとは思わなかったの?」

さやか「見滝原市まるごと再現できるほど強力な結界を張った魔女が、あたしたちを閉じ込めただけで」

さやか「誰も殺さず、生かしておいたこと」

ほむら「!」


さやか「よく考えれば、すぐにわかるはずだよ、この結界は餌集めの為の結界じゃない…」

さやか「この結界の目的は現状を維持すること、あんたの知ってるお菓子の魔女はそんなことするような奴だった?」

ほむら「……」

さやか「つまり、この結界の主はこの現状を気に入ってて、”今”を維持しようとしている…」

さやか「そこから推理していけば……」

ほむら「……」
スッ…

ガキンン!!


ほむら「!!」

さやか「また自分だけの時間に逃げ込むつもり?」

さやか「あんたの悪い癖よね、その魔法に頼り過ぎる事…」


ほむら「…この状況を望んだ誰かが…私たちの中にいるってこと…」

さやか「不思議がるほどのことじゃないでしょ、現にマミさんだって、そう言ってたじゃない」

さやか「…今が一番幸せだって」

さやか「どう…?マミさんが魔女だと思う?」

さやか「それとも…」

さやか「あんたと同じように、記憶を持ち越してる杏子が魔女だと思う…?」

ほむら「…魔女は魔法少女がいきつく、呪われた姿…」

ほむら「そうね…その可能性もあるわ…」

さやか「…ふうん、あんたらしい答えだね」

さやか「それなら、もう一つ聞かせて」

さやか「この結界を作り上げた魔女を探し出して、それであんたはどうするつもり…?」

ほむら「そ、そんなのは…当然…」

さやか「…始末するの…?」


ほむら「…!」

さやか「ただ、魔女だからってだけで…?」

ほむら「何が言いたいの?」


スタタッ…
向き返ったさやかは水溜りの水を蹴り上げ、言った。


さやか「ねえ、これってそんなに悪いことなのかなあ?」

さやか「誰とも争わず、みんなで力を合わせて生きていく」

さやか「それを願った心は、裁きを受けなければならないほど…罪深いものなのかなあ」

ほむら「!」

ほむら「あ、あなた、魔女の味方をするつもり…!?」

さやか「あたしたちがいき着く姿だもん、同情だってしたくなるわよ…」

ほむら「……」


ほむら「私もついさっき、一番肝心なことを思い出したわ…」

ほむら「杏子は覚えていたはずだった、でも、おそらくこの結界のせいで彼女は忘れてしまってる」

ほむら「…もちろん、彼女が私に嘘をついていなければの話だけど…」

ほむら「巴さんが思い出した記憶は…魔女との戦いではなく、魔獣たちとの戦い…」

ほむら「巴さんはそもそも覚えているはずがない、私たちの敵は魔獣であって、魔女じゃないんだから」

ほむら「当然よ…もうこの宇宙に魔女なんて存在しない」

ほむら「全ての魔法少女の魂は魔女になる前に”円環の理”に回収される…」

ほむら「そうなるように、あの子が世界を創り変えたから…彼女自身を犠牲にしてね」

さやか「…そっか、あんたも覚えてるんだっけね」


ほむら「そうよ…覚えているのは私と杏子だけだったはず…」

ほむら「…ここにはそもそも、ありえないはずの存在が三ついる」

ほむら「一つは、この結界を作り上げた魔女」

ほむら「もう一つは、魔女のままの姿をしたベベ」

ほむら「そして、もう一つは魔女のことを知っている…あなた…」

ほむら「あなたは本当に”美樹さやか”なの…?」

さやか「…ご挨拶だね」

さやか「あたしはあんたが知ってる通りのあたしだよ…」

さやか「…転校生?」

シュ…

ほむら「!!」
…ドシュ!


ガキンッ!
ヒュルル!

さやか「!」

ほむら「っ!」
バサッ!
カシャ…!

ほむら「はあ、はあ、はあ…!」
…バサッ!


ほむら「逃げ足が早すぎるわね、もっと不器用な子だったはずよ…」

さやか『あんただって、あたしの質問に答えてないよ』

ほむら「!」

さやか『…この見滝原を壊して、本当にいいのか…?』

さやか『もうちょっとじっくり考えてみることだね…』

さやか『悔いを…残さないように…』

ほむら「……」

…スタスタ


その後
 ~見滝原市内川 船上~



ほむら「…ここは偽りの街、誰かが夢に見た偽りの世界」

ほむら「巴マミも美樹さやかも佐倉杏子も…皆が満足している…この世界で」

ほむら「けれど…皆を巻き込んで、こんな世界に逃げ込んだ臆病者がいる」

ほむら「…魔獣と戦うことから逃げて、現実から逃げて…」

ほむら「そんな弱さ、許されていいはずがない」

ほむら「魔法少女は戦い続けなければならない…それが奇跡を望んだ…対価」

ほむら「そんな私たちだからこそ、あの子は身を挺して救ってくれた…」

ほむら「こんな茶番劇、まどかの犠牲を無駄にしているだけよ、許せない…!」


スタスタ…
??「ああ、ほむらちゃん!」

ほむら「!」
ゴシゴシ…


ヒョイ!

ほむら「うあっ」

まどか「あ、ああっ」

ドタ…


まどか「わあは、良かった、探してたんだよ」

まどか「…どこいってたの、マミさんがすごく心配してたよ」

ほむら「わ、私は…」


~見滝原市内公園~


まどか「…ほむらちゃん、一人ぼっちになったら、ダメだよ…」

まどか「私なんかでも、話を聞くことぐらいなら…」

まどか「何の役にも立てないかも知れないけれど…」

まどか「それでも、一人で悩んでるよりは…ずっといいと思うの…」

まどか「ほむらちゃんが苦しんでるときに、何もできないなんて…私だって…辛いよ…」


ほむら「……」


ほむら「私ね…とても怖い夢をみたの…」

まどか「…夢…?」

ほむら「あなたが…もう二度と会えないくらい、遠いところにいっちゃって」

ほむら「…なのに、世界中の誰もかもが、そのことを忘れちゃって」

ほむら「私だけが、まどかのことを覚えてるたった一人の人間として、取り残されて…!」

ほむら「でも私も、まどかのこと…いつか忘れてしまうんじゃないかって…毎日、怖くて…!」

ほむら「…ううっ…!…ひくっ…ぐすっ…」

ほむら「そのうちに、まどかとの思い出は、私が勝手に作り出した絵空事じゃないかって…!」

ほむら「自分自身さえ信じられなくなって…!」

ほむら「ううっ…!」


…ダキッ

ほむら「は…!」

まどか「…うん、それはとってもイヤな夢だね…」

ほむら「ううっ…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…まどかぁっ…ひくっ…!」

ほむら「…私はっ…私がっ…あなたをっ…ひくっ…ぐすっ…!」

まどか「ほむらちゃん」

まどか「大丈夫だよ、私だけが、誰にも会えないくらい遠いところに一人でいっちゃうなんて」

まどか「そんなこと、ありっこないよ…」

ほむら「…どうして、なぜ…!そう言い切れるの…?」

まどか「だって、私だよ…ほむらちゃんですら泣いちゃうような辛いこと」

まどか「私が我慢できるわけないじゃない…」

ほむら「!」


ギュッ…
まどかはほむらの髪を結うのをやめ、ほむらを強く抱きしめた。


まどか「だからね、ほむらちゃん、泣かないで…私はどこにもいったりしないから…」

ほむら「…ぐすっ…う、うん…ひくっ…」

まどか「…私ね…ほむらちゃんが見た怖い夢みたいに、遠くにいっちゃって、誰にも会えなくなるのも嫌だけど…」

まどか「大事なお友達がこんな風に苦しんでるときに、何もしてあげられないのも、私は同じくらい嫌だよ…」

ほむら「!」

ほむら「そ、そんな…っ!ど、どうして…!」

まどか「どうしてって……」

まどか「ほむらちゃんだって…大事な人が泣いてるのは嫌でしょ…?」

まどか「…ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさんに杏子ちゃん、パパやママやタツヤ、それに仁美ちゃんやクラスのみんな」

まどか「みんな大事で…誰にも泣いててほしくない…」

ほむら「…ううっ…ぐすっ…あなたは…!あなたは…!」


まどか「…それに、もしそうなっちゃったとしても、ほむらちゃんは覚えててくれるんでしょ…」

まどか「世界中の誰もかもが覚えてなくても、それでも…ほむらちゃんだけは忘れずにいてくれるんでしょ…?」

まどか「その覚えててくれる人が、ほむらちゃんで私はうれしいよ…」


ほむら「…ひくっ…ぐすっ…ううっ…!」

ほむら「そんなっ…!」

ほむら「…それが、それが…!あなたの答えなのっ…!」

ほむら「ううっ…!ぐすっ…ひっく…!」

ほむら「うっ…うわあぁぁぁんっ…っ!」


ほむらは泣いた。まどかの胸で泣きじゃくった。


ほむら「ひくっ……まどか…ぐすっ…」

ほむら「まどか…あなたにはね…どれほど辛いことだとわかっていても、それを選択できてしまう勇気があるの…」

ほむら「あなたが、あなたにしかできないことがあると知ったとき…」

ほむら「あなたは自分でも気付いていないほど、優しすぎて、強すぎる…」

ほむら「…私ね、知ってるんだよ」

まどか「…ほむらちゃん?」

ほむら「……そっか」

ほむら「…やっぱり、まどかも何も覚えてないんだね…」

ほむら「もしかしたら、あなたは幻かもしれない、誰かが用意した偽者かもしれないって思ってた」

ほむら「でなければ、こうしてまた会えるなんて、どう考えてもおかしいもんね…」


ほむら「…でもわかる…あなたは本当のまどかだわ…」

ほむら「こんな風に一緒に話しができて、もう一度また優しくしてくれる…」

ほむら「…本当に嬉しい!」

ほむら「ありがとう、それだけで十分に私は幸せだった…」


ほむら「…もう行くわ、私、確認したいことがあるから…」

まどか「ほむらちゃん?」

スタスタ…


まどか「…どうしちゃったんだろう、ほむらちゃん…」

QB「きゅう~?」


QB「…」


その後
 ~見滝原市内某ゲームセンター~


prrrrr!

杏子「!」
ピッ


杏子「ほむらか?」

ほむら「ええ、杏子、あなた…鹿目まどかを覚えてる?」

杏子(…こいつ…ようやく…)

杏子「…はあ、当たり前だろ…」

ほむら「そう…正解よ、貴女は覚えていなければおかしい…」

杏子「……」

ほむら「…じゃあ…魔女はあなたなの…?」

杏子「は…」

杏子(こ、こいつ…!)


ほむら「…私は重要なことに気付いたわ…」

ほむら「こんな簡単な事、少し考えればわかったはず…」

ほむら「まどかがいる世界を捏造できるとすれば、それは、まどかのことを知っているものだけ…」

ほむら「そして…まどかのことを覚えているのは、私と貴女しかいない……」

杏子「!!」

ほむら「これではっきりするわ、私たちの記憶を書き変え、偽りの見滝原に閉じ込めた張本人が…」

ほむら「…私か、あなたか…」

杏子「お、おい!てめえ!大丈夫か!今どこにいるんだ!」

ほむら「最後に一つだけ…確認したいことがあるの」

ほむら「それで、全てに決着をつけるわ…」

ほむら「どっちにしても…あなたの手は煩わせない…」


杏子「おい!ほむら!!」

ほむら「…巻き込んでしまって、ごめんなさい…」

ほむら「今までありがとう…」


ほむら「」

…ガチャ
ツー
ツー


杏子「あ、アイツ!」

…ダダダダッ!


杏子「っ!」

杏子(…始まっちまったのか…!!)


…ゴゴゴゴ!


同時刻
 ~見滝原市内 バス客席~


…ピッ
スッ…
ヒラヒラ…


…ブロロロ!

ゴー…!


ほむら「……」

ほむら(ソウルジェムを手放しても私の身体が動くとしたら、せいぜい100mが限度のはず…)

ほむら(もちろん…私が魔法少女であればの話…)

ほむら「……」


ほむら「…っ」


梟たちは何かの合図のように”彼女”の隣へやってくる。
気付くと大きな古時計は12時の時報を鳴らしていた。


バスアナウンス「次は見滝原二丁目」
ポーン!
ポーン!
ポーン!
ポーン!
バスアナウンス「次止まります」


…ドガーン!
ゴゴゴゴゴ…!


ほむら魔女手下「キャハハハハ」


ほむら「やっぱり…もう…魔法少女ですらないって…わけ…!」

パーン
パキッ…
パン!パーン!
パキキンッ!



ほむら「どうしてよ…ねえ…どうして…私が…こんな…」


ほむら「一体…いつの間に…私は…」


ほむら「魔女になっていたの!」


~~~~~~~~~~

ズズ…
ドゴ…


”彼女”は自らの姿に気付き、我に返る。
偽りの楽園から目を覚ます。



トコトコ…

QB「真実なんて知りたくもないはずなのに、それでも追い求めずにはいられないなんて」

QB「つくづく、人間の好奇心というものは…理不尽だね」


ほむら魔女「……」


QB「まあ、君ならいずれきっと、答えにたどりつくだろうとは思っていたよ、暁美ほむら」

ほむら魔女「インキュベーター…」

ほむら魔女「やっぱり、何もかもあなたの仕業だったのね」

QB「残る疑問は、君の命と魂が、今どこにあるのか、だよね」

QB「その答えは僕が教えてあげる」


ジジ…!

QB「これがこのニセモノの見滝原市の外側、現実世界の君の姿だよ」

ほむら魔女「!」

ほむら魔女「そ、そんな…!」


QB「僕たちの作り出した、干渉遮断フィールドが君のソウルジェムを包んで」

QB「既に限界まで濁りきっていたソウルジェムを外からの影響力が一切及ばない環境に閉じ込めたとき」

QB「何が起こるのか」

ほむら魔女「…実験…」

QB「魔法少女を浄化し、消滅させる力、君たちが”円環の理”と呼んでいる現象から隔離されたとき」

QB「ソウルジェムはどうなるのか」

QB「確かに興味深い結果を観察させてもらったよ」

QB「独自の法則に支配された閉鎖空間の形成と、外部の犠牲者の誘導、捕獲」

QB「これこそ、まさしくいつか君が説明してくれた魔女の能力そのものだよね」

QB「遮断フィールドに保護されたソウルジェムが、まだ砕けていない以上」

QB「君は完全な形で魔女に変化できたわけではない」

QB「卵を割ることができなかった雛が、殻の中で成長してしまったようなものだね」


QB「だから君は自らの内側に結界を作りだすことになった」

QB「まさか、街一つを模倣して、まるごと再現できるとは、驚きだ」

QB「ここはね、君のソウルジェムの中にある世界なんだよ」


ほむら魔女「…その理屈は変よ…」

ほむら魔女「外部と遮断されているなら、この結界に誰かが迷いこむことだってなかったはずでしょ…!」


QB「そこは僕たちが」


QB「「「「「調整してるのさ!」」」」」」


QB「フィールドの遮断力はあくまで一方通行だ」

QB「外からの干渉は弾くけれど、内側からの誘導で、犠牲者を連れ込むことはできる」

QB「魔女としての君が、無意識のうちに求めた標的だけが、この世界に入り込めるんだ」

QB「そして、僕たちがこの世界で危惧していた、この実験を妨害する危険性があった存在がいる」

QB「君と同じように世界が創り変わる前の記憶を持っている佐倉杏子だ」

ほむら魔女「!」

QB「君が話してくれた通りなら、佐倉杏子も『魔女』や”円環の理”の正体を覚えているんだったね」

QB「だから僕たちは今回の実験において、被検対象は君達2人だった」

QB「だが君たち2人のソウルジェムを同時に隔離すれば、僕たちにもマイナスが生じるし」

QB「実験の結果次第ではどうなるか予想もつかなかったから危険過ぎた」

QB「それに現実世界でも2人もの魔法少女の消失は何らかの形で、影響を及ぼしかねない」

QB「それで僕たちは慎重に議論を重ね、君を被験体第一号に選んだんだ」


QB「理由は色々あるよ、まず君はこの世界の僕達と契約の記録が一切ないところ」

QB「佐倉杏子と比較して、『円環の理』との関係が深いと予測されたところ」

QB「もちろん一番の理由としては、君から『魔女』の話を聞いたことから今回の実験は始まったんだから」

QB「君が被検体第一号になるのは、当然だよね」

ほむら魔女「……」

QB「まあ、結果として君を選んだことで、佐倉杏子は僕たちの妨害をしなかったから良かったけど」

QB「彼女はこの世界に違和感なく犠牲者として入り込んできてくれたし」

QB「君の結界の記憶操作のおかげで、魔女の記憶や”円環の理”のこともすっかり忘れていたようだったから、僕達には好都合だったよ」

QB「これで僕たちの実験の不確定要素は完全に排除されたわけだ」

QB「ここまで条件を限定した上で、尚も”円環の理”なる存在が、あくまで暁美ほむらに接触しようとするならば」

QB「その時は、君の結界に招き入れられた、”犠牲者”という形で具現化するしかない」


QB「そうなれば、僕たちインキュベーターは、これまで謎だった、魔法少女消滅の原因をようやく特定し観測することができる」

QB「実際、君の作った結界には現実世界には既に存在しないキャラクターが奇妙な形で参加している」

QB「とりわけ興味深いのは、過去の存在にも、未来の可能性にも存在しない、一人の少女だ」

QB「この宇宙と一切の因果関係のない人間なのに、彼女は何の違和感もなく、君の世界に紛れこんできた」

QB「そもそも最初から探す必要もなかったんだ」

QB「手間を省いてくれたのは、君自身なんだよ、暁美ほむら」

QB「君は以前から”円環の理”のことを『鹿目まどか』という名前で呼んでいたからね」

ほむら魔女「…じゃあ、あの子はやっぱり…」

QB「唯一、厄介だったのは、鹿目まどかが未知の力を発揮する素振りを全く見せなかったことだ」

QB「結界の主である君の記憶操作は、その強力さ故に、まどかに対しても作用してしまったみたいだね」

QB「彼女は君を救済するという目的だけでなく、自分自身の力と正体さえ見失っていたようだ」

QB「これでは手の出しようがない」


QB「『鹿目まどか』は神であることを忘れ、『暁美ほむら』は魔女であることを忘れ」

QB「おかげで僕らはこんな無意味などうどう巡りに付き合わされることになった」

QB「まあ、気長に待つつもりでいたけれど、君が真相にたどりついたことでようやく均衡も崩れるだろう」

QB「さあ、暁美ほむら、『まどか』に助けを求めるといい」

QB「それで彼女も思い出す、自分が何者なのか、何のためにここに来たのかを…」

ほむら魔女「…インキュベーター…あなたたちの狙いは何…?」

QB「もちろん、今まで仮説に過ぎなかった”円環の理”をこの目で見届けることだよ」

ほむら魔女「…何のために?」

ほむら魔女「…好奇心なんて理不尽だって言ってたくせに…!」

ほむら魔女「まどかの存在をただ確認するために…こんな大げさな段取り用意するはずがない…!」


ほむら魔女「まどかを…」

ほむら魔女「支配するつもりね!!」

…ゴゴゴ!


QB「最終的な目的としては否定しないよ、まあ、道のりは困難だろう」

QB「この現象は、僕たちにとって全くの謎だった」

QB「存在すら確認できないものは、手の出しようがないからね」

ほむら魔女「それで諦めるあなたたちじゃないわ……」

QB「そうだね、観測さえできれば干渉できる、干渉できるならば制御もできる」

QB「いずれ僕たちの研究は”円環の理”を完全に克服するだろう」

QB「そうなれば、魔法少女は魔女となり、更なるエネルギーの回収が期待できるようになる」

QB「希望と絶望の相転移、その感情から変換されるエネルギーの総量は、予想以上のものだったよ」

QB「やっぱり魔法少女は無限の可能性を秘めている」

QB「君たちは魔女へと変化することで、その存在を全うするべきだよ」


ほむら魔女「くっ…!」

ゴゴゴゴゴ…!


QB「なぜ怒るんだい?」

QB「君にはもう関わりのない話だろ、『暁美ほむら』の存在は完結した」

QB「君は過酷だった運命の果てに、待ち望んでいた存在と、再会の約束を果たす」

QB「これは幸福なことなんだろう?」


ほむら魔女「…いいえ」

ほむら魔女「そんな幸福は求めてない」


ゴゴゴゴゴゴ…!!


QB「そんな!自ら呪いを募らせるなんて、何を考えているんだ、浄化が間に合わなくなるよ!」

ほむら魔女「今のあなたが知るはずもないけど、私はね…」

ほむら魔女「まどかを救う、ただそれだけの祈りで魔法少女になったのよ」

ほむら魔女「だから今度も同じことを…!」

ほむら魔女「まどかの秘密が暴かれるくらいなら、私はこのまま…魔女になってやる…!」

ほむら魔女「もう二度と、インキュベーターにあの子は触らせない」

QB「君はそんな理由で救済を拒むのかい?」


ドロドロドロロ…!
ベチャベチャ…!


QB「このまま永遠の刻を呪いと共に過ごすつもりなのか?」

ほむら魔女「大丈夫、きっとこの結界が私の死に場所になるでしょう…」

ほむら魔女「ここには佐倉杏子も巴マミもいる、彼女たちを信じるわ」

QB「馬鹿な、この遮断フィールドの内側で死ぬことが、何を意味するのかわかっているのかい」

QB「殻を破ることすら拒んで、卵の中で魔女として完成してしまったら」

QB「君は”円環の理”に感知されることすらなく、破滅する」

QB「もう誰も君の魂を絶望から救えない、君は再び”鹿目まどか”とめぐり会うチャンスを永久に失うんだよ」

ほむら魔女「だまりなさい…!!」


ゴゴゴゴ!

ほむら魔女手下「キャハハハ」


QB「君にとっても、最悪の結末だろうに…」

QB「全く、どうして人間の思考はこんなにも理不尽なんだい」


ゴゴゴゴ…


………

~ルミナス空間~


ほむら『!』

ほむら『まどか…』

まどか『』
…スウ

ほむら『ああっ…あっああっ…!!』

ベチャチャ…!

ほむら『ううっ!うっ…!!』
ダンッ!
ダンッ!


………


ゴゴゴゴゴ…!


ほむら魔女「これが…魔女…」


ほむら魔女「私の感情が…追いかけてくる…」


ほむら魔女「『輝き』と…『後悔』だけしか…もう…思い出せない…」



ほむら魔女「…ああ…これが…私の…絶望…」




偽りの楽園は終わりを告げ、”彼女”がその身を絶望に委ねようとした、その瞬間だった。



??『違うだろ?思い出せ、自分が何のために魔法少女になって』

??『誰の為に頑張ってきたのかを』


ほむら魔女「はっ!!」

ほむら魔女「だ、誰…!?」



~~~~~


ほむら『はっ!』

ほむら『…こ、ここは…?』



~ほむらの家~


ほむら『…私の家…?』

ほむら『どうして…』


??『よう』

ほむら『あ、あなたは…』

ほむら『杏子…!!』

杏子『…気分はどうだ』

ほむら『…どうして、あなたがここに』

杏子『おいおい、忘れちまったのか、この部屋での約束』

ほむら『…えっ』

杏子『ったく…言っただろ?』


杏子『「2人で愛と勇気が勝つストーリーにしてやろうじゃねーか」って…』

ほむら『……!』


杏子『どんな困難が待ってようと、何が邪魔しようと、何度時間を繰り返そうと』

杏子『諦めず、最後まで希望を信じて戦ってたてめえはどこにいっちまったんだよ』

ほむら『…ああ…ああ…!』

ほむら『…わ、私は…!』

杏子『よく思い出せ、てめえは…そんな簡単に絶望するほど弱い奴だったか…?』

杏子『その力に敵わないとわかったからって、進むのを止めてしまうような奴だったか…?』

杏子『それに、この結界の中は魔女にならなきゃならないほど、絶望に満ち溢れた世界だったか…?』

ほむら『…うううぅ…!…っ!』

ほむら『…で、でも、私は…!も、もう…!』


~~~~~


~~~~~~

映写機のカウントが始まる。





______

ビイイィィー…!


上映開始の音と共に最期の行進は始まる。今まで進むのを止めていた時計の針のように。
そして幕が上がる。それは、この交響曲の終局を意味するのか。
”彼女”は腕に枷をつけられ、思い出の場所にある断頭台へと進む。涙を流しながら。


…ゴゴゴゴゴ!
ズズウン…!


”彼女”を見下ろせる廃墟となった街の高台に4つの小さな影があった。



杏子「…そろそろか」

さやか「どう?打ち合わせ通りにいきそう?」

杏子「ああ…だが、よほどアイツは前を向きたくないらしい…」

杏子「コイツは少しばかし、やっかいなことになりそうだ…」

さやか「へへ~んっ、じゃ、やっぱりあたしたちの出番ってことですかな」

QB「待ってくれ」

QB「あれは『暁美ほむら』なんだ、君達は仲間と戦うつもりかい?」

まどか「QB…」



杏子「…やっと本性を現しやがったか」

マミ「残念だわ、QB…これでもう、ベベと佐倉さんの話を信じるしかないみたいね」

QB「まどか、君ならほむらを救えるはずだ」

QB「君が持っている本当の力に気付きさえすれば…!」

まどか「はっ…」

さやか「そいつはほっときな、まどか」

さやか「大丈夫、さっき私が教えた通りにやればいい」

まどか「…う、うん」


ベベ「パパパパパルミジャーノ・レッジャーノ!!」

ヒュー
ガガガ…!
キラー!
シュイン!


さやか「慌てなさんな、あんたを外に出そうってわけじゃあ…ないっ!」
…グサッ!


ゴポゴポ…!

オクタヴィア「……」


胸に突き刺された剣から現れたのは人魚の魔女。
だが、その姿はかつての『恋慕』に沈んだ姿ではなく
希望を運ぶ者の姿で”彼女”の腕に付けられた枷を外そうとする。



QB「…君たちは一体…?」


なぎさ「私たちはかつて希望を運び、いつか呪いを振り撒いた者達…」

さやか「そして今は、円環に導かれ、この世の因果を外れた者達」


ボオォォン…!
蓄音機からかつての魔女たちが”彼女”の処刑を阻止するために現れる。


さやか「こうすれば、あんたの目を盗んで立ち廻れると思ったのさあ、インキュベーター」

さやか「まどかだけに狙いを定めて、まんまと引っかかってくれたわね」

QB「…そんな」

QB「じゃあ君たちもまた、円環の理…」

さやか「まあ、要するに鞄持ちみたいなもんですわ」

さやか「まどかが置いていった、記憶と力を誰かが運んでやらなきゃならないからね」

さやか「でも、杏子先輩の作戦にはこっちも驚かされたけどね、こんなこと考えてたとは」

杏子「ふん、敵を騙す前にまずは味方からって言うだろっ」

なぎさ「いざとなったら、私かさやかか、どっちか無事な方が預かっていた本当の記憶をまどかに返す手筈だったのです」

なぎさ「でも杏子さんの作戦で、その必要もなくなったみたいです!」

杏子「いや、けど、てめえらも来て正解だったぜ…」

杏子「だって、こんなにも大勢の仲間を連れてきてくれたんだからなっ!」


杏子がそう言うと、かつての魔女たちが奮起したかのように”彼女”の手下を一掃した。
ドドーン!
ゴゴゴ!


QB「…佐倉杏子…君は…まさか…」

杏子「ふん…遅せえんだよ、インキュベーター」


…パチン!

フワッ…

QB「!」

まどか「うわっ、マミさん!」


杏子が指を鳴らすと、そこに立っていたはずのマミは煙のように姿を消した。


QB「…これは…幻覚…?」

杏子「そうさ、マミなら今、この結界の外にいるぜ」

杏子「てめえらの玩具を壊すためにな」

QB「…君は、最初から記憶を…」

杏子「ああ、そうさ」

杏子「全てはアタシの筋書き通りってことだ」


QB「君が記憶を持ち越していることは知っていた、でも僕たちは暁美ほむらを実験対象に選んだ」

QB「彼女は『鹿目まどか』の名前を何度も叫んでいたからね、君を対象にするよりは手間をかけずに『円環の理』に辿り着けると判断したんだ」

QB「それに彼女は僕たちがこの世界で契約した記録のない魔法少女だったから、実験の対象としては十分だった」

QB「もちろん君のことは危惧していたよ、でも結界を構築し、君を犠牲者として、この結界に招き入れてからも」

QB「君は僕たちを邪魔する素振りを一切見せなかったじゃないか」


QB「それは、君にもこの結界での記憶操作が行われていたからだろう?」

QB「事実、暁美ほむらがこの世界の違和感に気付きだした時も、魔女の話や円環の理のことを君は忘れていたしね」

QB「鹿目まどかですら、自分の役割と力を忘れてしまうほどの強力な記憶操作だ、君が覚えてるほうが不自然だよ」

杏子「…へえ」

杏子「それでアタシが素直にここで、てめえらのくっだらねえお遊びに付き合ってたってのか?」

QB「…違うのかい?」

杏子「…アタシはマミと一緒に結界ができたことに気付いたんだ」

杏子「魔女そっくりの結界ができちまったことにな…まさかとは思ってたけど」

杏子「ホントにアンタらがこんな段取りまで用意してたとはね…」

杏子「ま、なんとなく予想はしてたんだけど…」


杏子「アタシもここに来てからは、そのことすっかり忘れちまっててな」

杏子「…ったく、本当に厄介な結界だぜ…危なくアタシも忘れちまうとこだった」

杏子「でもな」


…スタッ
さやかが杏子の隣へ舞い降りる。


杏子「さやかのお陰でアタシは大事なことを忘れずに済んだんだ」

杏子「…コイツが思い出させてくれたんだ」

さやか「ふふ~んっ!感謝しなよっ、杏子先輩っ」

杏子「ああ、さやか」

杏子「アタシたちで紡いだ過去を忘れかけてたなんて、どうかしてた」

QB「君は最初から…この時を狙って…」

さやか「あはは、残念だったねえ~QB~」

QB「……」



杏子「…そういうことだ」

杏子「悪いが、てめえらの実験は失敗だ」

QB「……」

QB「君が何を考えてるかわからないけど、過去の事を覚えていたのなら」

QB「なぜ暁美ほむらがこうなる前に結界を破壊しなかったんだい?」

QB「僕たちの実験に気付いていたなら、それができたはずだ」

QB「…わけがわからないよ」

杏子「…ふん」

杏子「ま、説明したとこで、てめえらには、どうせわかりゃしねーだろ」


まどか「…杏子ちゃん」

…スタスタ
ギュッ…
杏子はまどかへと歩みより、手を握る。


杏子「まどか…やっぱ、アイツに希望を与えれるのは、アンタしかいないみたいだ…」

杏子「アイツを救ってやってくれ…」

杏子「…もう一度、アイツに奇跡って奴を、信じさせてやってくれ…」

まどか「…う、うん!」


杏子「さあ、アタシたちも行こうぜ!まどか」


杏子「これが本当の愛と勇気が勝つストーリーって奴だ!」


今日はここまでにしたいと思います。
夜に時間があれば続き投下します。

>>1です。
今日時間がありそうなので
最後まで投下します。


まどか「はっ!」
ギイ…
ドシュッ!
バキィッ!


まどかが上空の壁目掛けて弓を射る。




ほむら魔女「…やめて…もうやめて…!」


ほむら魔女「私はこの世界で死ななきゃならないの…!!」


ほむら魔女「…もう遅いのよ…!何もかも…!」


ガキンッ!
ザシュッ!

さやか「だ・か・ら!」

ザシュッ!
ガキン!
さやか「一人で背負い込もうとするなあってーのっ!」

さやか「あんたにはこんなにも頼もしい仲間がいるでしょっ!」


ヒュルルル!
ザシュッ!


使い魔に襲われたさやかを間一髪で杏子が助ける。


杏子「おっと」
…スタッ

さやか「さんきゅ、てかいいとこ取り過ぎだよ、杏子先輩」

杏子「でも…これで、この世界も終わっちまうんだよな…さやか…」

杏子「もう、あんな風に遊んだり、一緒に学校行ったり…できなくなるのか…」

さやか「…なーに、辛気臭くなってんのさ、自分で用意した舞台でしょーが」

さやか「…でも、あたし嬉しいよ…」

さやか「何の未練もないつもりでいたけど、結局…こんな役目を引き受けて戻ってきちゃうなんて…」

さやか「…やっぱり、あたし心残りだったんだ…杏子先輩を置き去りにしちゃったことが…」

なぎさ「なぎさは、もう一度チーズが食べたかっただけなのです!」

さやか「おいこら、空気読めって~のっ!」

杏子「…っ」


顔を上げ、涙が溢れないようにした杏子だったが一滴の雫が槍の柄へと落ちた。
そんな杏子の隣で、さやかは言った。



さやか「今度こそ、愛と勇気が勝つストーリーにするんでしょ?杏子先輩…泣いてていいの…?」

杏子「べ、別に、泣いてなんかねーよ…」

さやか「ふふ、でもね…杏子先輩…愛と勇気が勝つストーリーに…涙はつきものでしょ?」

杏子「……さやか…」

杏子「…ばっかやろう!」

ザシュッ!
ヒュッ!
ガキン!
ガキキン!


背中合わせの2人に”彼女”の手下が立ちはだかる。
だが、彼女たちに敵うものは存在しなかった。


プー!
プ~!
なぎさ「やっぱりマミがいないと力が出ないのです!」

杏子「なーにー、てめえ食っちまうぞ!」

なぎさ「ひいい~、じょ、冗談ですよ~っ」

杏子「おい、マミ、聞こえるか」

なぎさ「おお!マミなのです!」



~結界外~

ダダダダッ


マミ「ええ、聞こえるわ」

マミ「べべも頑張ってるようね」


~~~


なぎさ「もちろんですっ!」

なぎさ「マミがいればどんどん頑張っちゃいますよ~!」

プー!!
ドドドドド!


杏子「ったく、現金な奴だぜ」

杏子「マミ、準備はできてるか?」

~~~

マミ「ええ、オッケーよ!」

~~~

杏子「よし、じゃあ頼むぜ!」


マミ「ええ!」


マミ「鹿目さん、聞こえる?」

まどか「え、あっ、マミさん!」

マミ「私たちで結界の壁を壊すわよ!」

まどか「え、は、はいっ!」



マミ「用意はいい?」

シュルルル…!
キュイーン…


マミ「大丈夫…緊張しないで、いつも通りに」


まどか「はい!」


キュイーン…!


マミまど(せーのっ)


マミまど「ティロ・デュエット!!」


ドシュッ!
キーン!
ドカーン!
ヒュー!
ドーン!

バキバキキ!


結界の外と内から放たれた一撃は寸分の差も無く同時に撃ち込まれ
覆っていた絶望の壁に大きな亀裂を作り出す。


なぎさ「2人とも、ナイスコンビネーションなのです!」


杏子「さすがだな」

さやか「あたしたちも負けてられないよ!杏子先輩!」

杏子「ああ!」


人魚の魔女は大きな赤い節昆の槍を持って
絶望の壁を破壊するため、亀裂をめがけて突き進む。


さや杏「うおおおお~いっけええ~~!!」


ガキキン!!

バギキッ!


覆っていた絶望の壁は、その一部が剥がれ落ちた。


なぎさ「…見えた!」

なぎさ「インキュベーターの封印なのです!」

さやか「あれを壊せば、あんたは自由になれるんだ、ほむら!」




まどか「…ほむらちゃん…」

ほむら魔女『…やめて、もう…』

ほむら魔女『まどか…!』




ほむら魔女「はっ!」


~~~~~

まどか『…ダメだよ、ほむらちゃん、一人ぼっちにならないでって言ったじゃない…』


ほむら『…まどか』


まどか『何があっても、ほむらちゃんはほむらちゃんだよ、私は絶対に見捨てたりしない…』


まどか『それに、ほむらちゃんにはこんなにも頼れる友達がいるんだよ…私だけじゃない』


まどか『みんなが、ほむらちゃんの為に頑張ってくれてるんだよ』


まどか『だから、諦めないで…!』


ほむら『う…ううっ…ぐすっ…!うううっ…!』


ほむら『…ごめんなさいっ…私がいくじなしだったっ…ひくっ…ぐすっ…!』



ほむら『もう一度…あなたと会いたいって…ぐすっ…自分勝手なことばっかり考えてた…!』


ほむら『…あなたが守った世界で戦い続けるって…約束したのに…っ!』


ほむら『希望をなくさないって…決めたのに…っ!』


まどか『うん…ほむらちゃん…』


まどか『だから…私を信じて…』


ほむら『……うん…まどか…』


~~~~~~~~~~



暖かい光に包まれた”彼女”のソウルジェムは
その穢れが嘘であるかのように元の輝きへと近付こうとしている。


QB「どういうことだい、これは」

QB「魔女を発生させれるほど濁っていたはずのソウルジェムの穢れが消えていく…!」

QB「絶望から希望へ逆転移している、こんな現象ありえない…」

さやか「あんた、さっき自分で言ってたでしょ、魔法少女は無限の可能性を秘めているって」

さやか「これだって、そうなんじゃないの」

さやか「魔法少女は希望を信じて戦うんだ!」



さやか「あたしたちは絶望するために魔法少女になったんじゃない」

杏子「ああ、そうさ!」

さや杏「あたしたちは!」


さや杏「夢と希望を叶えるために魔法少女になったんだ!!」



キラーー!
2人の声とともに絶望に浸る暗い世界に大きな光が射し込む。





QB「常識の範疇を超えているよ」

QB「こんな現象…!」


~~~~~~~~~

まどか『さあ、ほむらちゃん、一緒に…』


ほむら『…ええ』


2人で弓を構える。
…キュイーン


まどか『ほむらちゃん、怖くない?』

ほむら『…うん、大丈夫…もう私は迷ったりしない』

キューン…!
ドシュッ!

…ピッ!


ヒュー
ザザー!


神々しく放たれたその一撃は天高くへと上昇し
それらしい形となって、地上に降り注いだ。



ドカーン!


QB「「「「「「「「「「「「わけがわからないよ」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ブチュッブチュチュブチュ!!






…ブオォォン




包み込んでいた結界は、その姿を消し、巻き込まれていた犠牲者が外へと運ばれた。
外は今までの騒動が嘘のように穏やかで明けの明星が輝いていた。


_______________



杏子「…いっちまったのか…さやかも、アンタのべべも…」


マミ「……いいえ」



マミ「彼女たちならいつも一緒にいるわ、私たちと…」


杏子「…ああ、そうだな」


ギュッ…
杏子が握り締めた拳を開くと何か輝くものが舞い落ちてくるのが見えた。



杏子「ん…?」


ヒラヒラ…


杏子の掌へと舞い落ちたそれは、音楽記号のような髪飾りだった。



杏子「…結局、アタシのとこに戻ってきちまったわけか…」


杏子「…さやか…」




スッ…
マミ「さあ、これを、暁美さんに…」



マミは準備していたグリーフシードを杏子に見せ、ほむらの元へと駆け寄った。


ほむら「」


スッ…
シュルルル…
シュルルル…




ほむら「…っ」


ほむら「あ…こ、ここは…?」


杏子「…ようやく、お目覚めかい」

ほむら「杏子…巴さん…」

マミ「今まで大変だったのよ、暁美さん」

杏子「…いいよ、マミ、言わなくて」

ほむら「え…」

ほむら「わ、私は、一体…?」

マミ杏「!」

マミ「え…暁美さん?」

杏子「もしかして…覚えてないのか?」

ほむら「…いや…なんだか…」

ほむら「不思議な感じ…夢でも見てたような…」

マミ杏「……」


マミ「そう…どんな夢だったの?」

ほむら「……」

ほむら「大事な友達と再会して、みんなで一緒に楽しく過ごしてる夢…」


ほむら「でも、最期は一番の友達がまた遠くにいってしまった…」

マミ「…それは…寂しいわね…」

ほむら「いえ…」

マミ「え?」

ほむら「私、その子と約束したから」

ほむら「…もう二度と希望を見失わないって…」


ほむら「それに…」

ほむら「大事な仲間がいるから…」


杏子「て、てめえっ、本当は覚えてんじゃねーか」

ほむら「なんのことかしら」

ほむら「私は覚えてないとは言ってないわ…」

ほむら「それに……さっきのお返しよ、杏子」

杏子「て、てめえなぁっ!」

マミ「ふふっ、暁美さんったら」



笑いあう三人の元には眩しいくらいの朝日が差し込んでいた。



Epiloge________



~見滝原市内~


ほむら「……」


ほむら(あれから、私たちは夢から覚めたように元の生活に戻った…)

ほむら(私は今も、この街に立っている…)


ほむら「…まどか」

ほむら(あの世界は偽りだったのかも知れない、いえ…仮に偽りだったとしても…)

ほむら(あの時、私に言ってくれた言葉があなたの本当の気持ちだと信じているわ)

ほむら(あなたはやっぱり、本当に優しくて、本当に強くて…私の最高の友達)



ほむら(…でも)

ほむら(あなたに逢えるのは、まだ先になりそうね…)

ほむら(だって、私たちには…)

ほむら(あなたが自らの魂と引き換えに救った世界を)

ほむら(さやかが自らの運命と引き換えに叶えた祈りを)

ほむら(そして…)

ほむら(なぎさ達、過去全ての魔法少女が信じた希望を)

ほむら(見守り続ける義務がある)


ほむら「……」


??「お!ほむらじゃねえか」

ほむら「!」

ほむら「杏子、巴さん」

杏子「何してんだ、こんなとこで」

ほむら「…ちょっと考え事を」

杏子「ふうん、思い出話なら、マミんとこでしようぜ」

杏子「ちょうど今からいくとこだったんだ」

マミ「偶然ね、暁美さんもぜひいらっしゃい」



ほむら「ええ、じゃあ…遠慮なく」

杏子「っしゃ、じゃあ、ロッキー追加で買わないとなっ」

マミ「そんなお金、ありません」

杏子「ええ~なんだよ~マミ~」

マミ「もう~佐倉さんったら子どもみたいね、ふふっ」

ほむら「ふふっ」

杏子「んだよ~ほむらまで~」




ほむら(この世界は悲しみと憎しみばかりを繰り返す救いようのない世界かも知れない)


ほむら(でも…それでも、私たちは見つけることができた、信じることができた)




ほむら(大丈夫、私たちは決して忘れたりしない)

ほむら(大丈夫、私たちは決して希望を見失わない)





ほむら(だって、魔法少女は夢と希望を叶えるんだから)


本編はこれで終わりとなります。
読んでくださった方ありがとうございました。


また、エピローグまで公開したのですが
それとは別にエピローグ後の後日談を用意していますので
需要があれば明日投下します。

>>1です。
少ないですが要望がありましたので
後日談まで投下します。


~~~後日談~~~

エピローグ直後のマミさん家でのお茶会です。
おまけ感覚で見てもらえれば幸いです。



~マミの家~


杏子「ひゃっほ~チーズケーキだぜ!」
モグモグパクパク!

マミ「佐倉さん、行儀良く食べなさいよ」

ほむら「ふふっ」

ほむら「私も…いただきます」

杏子「大丈夫、大丈夫、あのチーズ好きにゃ勝てないからさ」

マミ「ふふふっ、そうね、なぎさちゃんには流石の佐倉さんでも勝てないわ」

ほむら「…あの子たちも元気にやってるかしら」

杏子「そりゃそうさ」

マミ「今頃、彼女たちもお茶会してるかもしれないわね」


同じころ
~円環の理~


なぎさ「…くちゅんっ!」

さやか「ん、どうしたの?なぎさ、風邪?」

さやか「って、こんなとこで風邪なんて引くわけないか」

なぎさ「誰かに噂されてるのですっ」

まどか「うぇひっ、今、ほむらちゃんたちもお茶会してるみたい」

さやか「おお~、それはナイスタイミングだね」

まどか「はい、マミさんのには敵わないけど、チーズケーキだよ~」

なぎさ「おお~これはおいしそうなのです!」

さやか「まどか、チーズケーキなんて焼けたんだ!」

まどか「ほむらちゃんたちの見てたら食べたくなっちゃってっ」

なぎさ「いただきますなのですっ!」
モグモグ!


なぎさ「おいしいのです!まどか!」

まどか「うぇひひ、ありがとっ、なぎさちゃん」

さやか「あたしもいっただきま~す」
パクッ

なぎさ「おかわりなのですっ!」

さやか「え!?もう!?」

さやか「ちょっと、なぎさ、がっつき過ぎでしょ!」

さやか「杏子じゃないんだからさ」

なぎさ「いえいえ、杏子さんの食い意地には私でも勝てないですよっ」

さやか「ああ~…ま、確かにそれもそっか!」

まどか「うぇひひ」

~マミの家~


杏子「…くっしゅん!」

ほむら「こんな時に風邪?杏子」

杏子「いや、風邪なんかひくかよ」

マミ「大丈夫?冷えちゃったのかしら」

杏子「いや、大丈夫だって、別に」

ほむら「…もしかしたら、なぎさに噂でもされてるんじゃないかしら?」

マミ「ふふっ、そうね、きっとそうだわ」

杏子「はあ?」

杏子「アイツのチーズ好きにゃ勝てないって言ったから怒ってんのかな」

ほむら「そうかも知れないわね」

マミ「あの子も結構意地っ張りなとこあるものね」

マミ「ふふっ、佐倉さんとなぎさちゃん意外と似たもの同士ね」

杏子「勘弁してくれよ、アタシはアイツみたいに食い意地張ってねーぞ」

ほむら「ふふっ」


モグモグ…
ほむら「そう言えば、一つ気になったのだけど…」

杏子「ん?」

ほむら「私がインキュベーターの実験台にされていた時に」

ほむら「貴女は本当は記憶を取り戻して、気づいていたのよね?」

杏子「ああ、そうさ」

ほむら「なら、どうして途中で結界を破壊しなかったの?」

ほむら「巴さんもいたんだし、二人でならすぐに…」

杏子「ああ、そのことか…」

マミ「私もそれは気になってたのよね」

マミ「でも、理由を聞いたら納得しちゃったわ」

ほむら「…それで、その理由は…?」

杏子「アンタも鈍いんだなあ…意外と」

ほむら「…いいから、教えなさい」


杏子「じゃあ、この先、もしアイツが似たような実験をしようとしたらどうする?」

ほむら「そのときは、もちろん…!」

杏子「でもさ、もしアンタがあん時、自分が魔女になっちまったことに」

杏子「自分で気付かなかったら、そんなこと思わないだろう?」

ほむら「…!」

杏子「つまり、そういうことだよ」

杏子「もしアイツらがまた、くだらねえことしようとしても」

杏子「一回経験してりゃ、防ぎようがあるってもんだろ?」


ほむら「貴女、そんなことまで考えていたのね」

ほむら「本当に…あなたらしくないわ」

杏子「…それ、もう聞き飽きたって」


杏子「ま、でも、もしまたアタシたちに何かあった時には」

杏子「アイツらが助けにきてくれるだろ!」

ほむら「そうね、でも頼り過ぎはよくないわ」

マミ「ええ、彼女たちがいつ来ても恥ずかしくないように」

マミ「しっかりしとかないとね!」

杏子「ああ、わかってるさ」

杏子「大丈夫だよ」


杏子「だって、魔法少女は夢と希望を叶えるんだからな!」


~円環の理~


モグモグ
さやか「あ、ねえねえ、まどか、ひとつ気になんだけど…」

まどか「ん?何?さやかちゃん」

さやか「QBたち、本当に大丈夫なの?」

さやか「このまんまじゃ、また何かしてくるんじゃないの?」

まどか「…うん、そうかもしれない…」

まどか「でも、大丈夫だよ、この先に何が待ってても」

まどか「今のほむらちゃんたちなら、乗り越えてくれる」

まどか「そんな気がするんだ…」

さやか「ふふ…まどからしい答えだね…」


さやか「でも、まあ、言われてみたら確かにそうだね」

さやか「今のあの三人なら、あたしも、なんか大丈夫って感じするし」

まどか「うぇひひっ、でしょ?」

さやか「うん!」

さやか「ま、また何かあった時は、あたしたちが手伝ってやればいいからねっ」

なぎさ「そのときは、なぎさも行くのですっ!」

なぎさ「マミのチーズケーキを食べにいくのですっ!」

さやか「わかってるって~」

さやか「そして…いつか必ず、またみんなでお茶会しよーよ」

なぎさ「もちろんなのです!」


なぎさ「マミも杏子さんもほむらもまどかもさやかも私も」

なぎさ「み~んなで、お茶会すればチーズももっとおいしくなるのです!」

さやか「あんたはただマミさんのチーズケーキ食べたいだけでしょ?」

なぎさ「えへへ、バレちゃいましたか」

さやか「まったく、あんたは、杏子そっくりなんだから」

さやか「ねえ、まどかもお茶会したいでしょ?」

まどか「うん、もちろんだよ」

さやか「いつかできるかなあ、できるといいなあ」

まどか「大丈夫だよ、さやかちゃん、きっと大丈夫」


まどか「だって、魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから」


以上で、本当の本当に終わりです。



前作含めて、相当長くなってしまって申し訳ありません。


前作から読んでいただいた方
また、前作含め支援等してくださった方
本当にありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月01日 (木) 11:50:21   ID: iNWs5FWE

新編のセリフよく調べたなあ
作者の杏子好きがヒシヒシと伝わってくる
つか新編はどうしてこうならなかった

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