NightTime 左右田の部屋
弐大「なっはははっ! それはそれでウマそうじゃのう!」
花村「でしょでしょ!? 結局さ、女の子も料理と同じなんだよね」
花村「味覚聴覚視覚触覚そして嗅覚! それら五感を良好に刺激する形に持っていくのが理想なのさ! 料理も女体もね!
ボク童貞だけど」
九頭竜「その理想があの悪臭かぁ……? 信じらんねぇ」
左右田「おいおい、俺たち“日寄子タンにぷちぷち踏まれたいファンクラブ”の総意に、謀反は許さねーぞ!」
九頭竜「うっせぇ! 好きな女が道を踏み外したら、それを正すのが男の役目だろうがっ!
テメェらがそんなんだから、日寄子タンが俺になびかねぇんだよ!」
十神「さりげなく消臭派1VS悪臭派7の構図を決定づけるな」
日向「田中はどうだ?」
田中「我はいいが、その……破壊神暗黒四天王がな……」
日向「あー、そうだよな……」
田中「ただいま臭いに慣れさせる為の飼育を心掛けている」
九頭竜「前向きじゃねーか……!」
狛枝「まぁまぁ、どちらにしても日寄子タンはボクらみんなの希望じゃない」
狛枝「この島に降り注ぐ陽光なんてモノともしない輝きを
ボクは日寄子タンに見い出せたよ この子こそがボクの追い求めた希望なんだってね」
日向・十神・左右田・田中・九頭竜・弐大・花村「それに賛成だ!!!!!!!!」
花村「んはっー、コレって日寄子タンとの思い出とか暴露しちゃう流れ? 僕のピサの斜塔も暴露しちゃおっかなー」
弐大「ワシはこの通り図体がデカいからのう まぁ……何だ、玩具扱いをようされる」
花村「スルーされた……でも玩具扱いというのは気になりますなっー!
性欲に満ちた高校生が発する、玩具という単語から連想される玩具 それはオトナの――」
田中「貴様! それ以上その呪詛の先を紡いでみろ、この部屋ごと灰塵にしてやるからなッ!」
左右田「ここ俺の部屋っ!」
弐大「否っ! 玩具といっても、実に日寄子タンらしい遊びよ!」
弐大「その名も、腕ブランコじゃあああああああああ!」
日向「なっ!」
九頭竜「腕ブランコだとぉおお!」
弐大「応っ! わーいわーいとぶら下がってブラブラしておるわ!」
左右田「おいおい、それじゃあ日寄子タンのユルユルの着物が――」
花村「ちょっとトイレ」
十神「自分の部屋でしろよ またホテルのトイレを詰まらせられたら面倒だからな」
弐大「ゴホン ま、まぁ概ね想像通りじゃな」
九頭竜「羨ましすぎるだろっ……このチビな体が、今ほど恨めしい時は無かったぜ……!」
狛枝「ボクみたいな背が高いだけで、腕っ節がないクズよりはマシだよ……」
弐大「くっ! あの積極的で無防備な姿に、ワシは……! ワシはッ!
うぉおおおおおおおおおお! クソじゃあああああああ!
ク ソ が出るぞぉおおおおおおおおおおお!」
日向「ウソつけ」
十神「しつこいようだが、自分の部屋にあるトイレに行けよ 頼むから」
狛枝「あはは 2人が居なくなったトコで、次はボクから話をさせてもらうよ」
狛枝「とは言っても、弐大くんと似たようなテーマじゃインパクトに欠けるからね
ボクが彼女のドコに惹かれているかを、聞いてもらおうかな」
狛枝「彼女はボクに適度な不幸をくれるから好きなんだ はいおしまい 次、左右田クンね」
左右田「よーしおじちゃん頑張っちゃわねーよっ! もっと噛み砕いて言えよっ!」
狛枝「え? 分かんなかった?」
日向「……不幸に匹敵した幸運を得る、狛枝の才能に関係してるのか?」
狛枝「そうなんだよ そこは以前、日向くんにも教えたよね
ボクを苛む不幸が大きければ大きい程、ボクには必ずその不幸に見合った幸運が訪れる」
九頭竜「なるほどな それで、その才能が日寄子タンにどう関係すんだよ」
狛枝「ボクはさ、前々から考えてたんだよ 大きな不幸をいかに収縮させ、幸運だけ膨張させる方法をね」
田中「等価交換の理を破り、人道を踏み外した者がここにまた一人、か」
狛枝「あははは! 身も蓋もない定型をされるとそうなるかな
でもさ、ボクはもう手に入れちゃったんだよね その手段を
適度な不幸を、定期的に日寄子タンに与えられる事で」
日向(定期的に……?)
日向「まさか、その適度な不幸は……」
閃きアナグラム――開始!
キ チ
ク セ
チ
セ
ク
キ キ
日向「チクセキ、そうか! 蓄積だ!」
日向「一つ一つは小さな不幸でも、蓄積させてみれば大きい幸運に拮抗できる」
日向「狛枝はその小さな不幸を、日寄子を使って稼ぐことで、大きな幸運を得ていたんだ!」
左右田「おいおい、それじゃあコイツは結局 日寄子タンが好きなんじゃなくて――」
十神「自分の幸運が好きなだけ、という事になるな」
狛枝「あはは、バレちゃった?」
九頭竜「テメェ!」
狛枝「そ、そんなに怒んないでよ」
狛枝「そもそも日寄子タンを利用するだけならさ、こんな油くさい部屋でする会合の場に
ボクが参加する意味なんてないよ」
左右田「油くさくて悪うございました! 俺だって出来れば日寄子くさくしてぇよ!」
狛枝「好意かどうかは分からないけどさ ボクも彼女には興味がある」
狛枝「というのもね ボクの力ってノーコンな面があったんだ
不幸を食ったらすぐさま幸運を吐く まるで拒食症みたいなね」
左右田「やな例えすんなよ!」
十神「才能を覆してくれる可能性に興味を、というわけか 魅力とは必ずしも目に見えるモノとは限らんからな」
狛枝「そうなんだよ コレはボクにしか知覚できない彼女の魅力、とも言い換えられるね
どう、羨ましいでしょ」
田中「ふん……我思う故に我有りといった所か」
狛枝「おかげさまでね 自分から不運に飛び込むことで、予期せぬ不運はやってこない事も学ぶ事ができた
今ならボクも――ううん、なんでもない」
狛枝「これで僕の抱く希望が、ファンクラブの主旨に逸脱していない事は、証明できたかな この場にいるみんなのように
僕も彼女に対する理解を深めたいことも」
狛枝「それと、適度な不幸の内容については、アリのモノマネを強いられながら踏みつけられる
なんて、ありきたりな物だから略していいよね」
左右田「ありきたりじゃないだろソレ ていうか、踏まれるだけなら普通にご褒美じゃねーか!」
狛枝「ヒトとして踏まれるだけならまだしもアリだよアリ 奴隷や眷属の方がまだ人間扱いされてるよ
それに、日寄子タンがアリに対してどんな認識を持っているか、みんなはモチロン知ってるよね」
狛枝「そう、圧殺すべき対象だよ! あはははははははははははははははは! ……は……はは……は……」
狛枝「そうなんだ ボクは人生で初めて興味をもった異性相手に毎日死ねと言われてるモノなんだ
初恋は実らないなんて形容がどれだけ不幸なのか、いま身をもって体験してるよ……」
九頭竜「ど、同情してやるよ……まぁ飲めや、オレンジジュースでよけりゃあな」
狛枝「ありがとう、超高校級の極道である九頭竜くんに、ジュースまで注いでもらえるなんて
このジュースは十年かけて飲み干す価値があるね」
九頭竜「やめろや気持ちわりぃ! ……幸運に思うなら日寄子タンのおかげにしとけよ、たく」
日向「あははっ、初恋といえば左右田は修学旅行が始まった当初、ソニアさんソニアさんだったよな」
左右田「や、やっぱそれ聞いちゃう?」
田中「先入観と価値観を照らし合わせた無意識の打算を、恋と定義するのなら
それを越えた貴様の恋は果たして、真実の恋なのか否か 精査する必要があるからな!」
左右田「なんて!?」
十神「恋する対象が変わった経緯を話せ日寄子タンペロペロといっている」
左右田「訳の半分はお前の私情じゃねーかっ!」
日向「お前じゃない、俺たち全員の、だろ?」
十神・狛枝・田中・九頭竜・左右田「それに賛成だ!!!!」
左右田「知っての通りオレは、ソニアさんにネヴァー・ラブで、トゥーユー・マインドだった」
九頭竜「その口上は言う必要あんのかよ」
左右田「あぁ! 今のはプロポーズ用に用意した台詞だったからな!」
十神「とんだ黒歴史だな」
左右田「そんくらい本気だったって事だよっ! 言わせんな恥ずかしいっ」
左右田「それに日寄子タンにくら替えした今でも、ソニアさんには感謝してもしきれねーんだ」
左右田「日寄子タンを好きになった一因は、ソニアさんにあると言っても過言じゃないからな!」
狛枝「それは興味深いね ソニアさんに一体どんな支援をしてもらったのかな」
左右田「当時、ソニアさんにアプローチをしまくってる過程で、よくなじって頂いたんだけどよ」
左右田「その類い希なる調教によって、骨格にも値する新しい境地に目覚めたってわけよ」
日向「そうか! 新しい性癖を満たしてくれる人物の1人に該当するのが、日寄子だったって事なんだな?」
左右田「ドンピシャだぜ親友!」
九頭竜「おいおい、その言い方じゃあ罵倒してくれる女なら誰でもいいように聞こえんぞ」
九頭竜「当然、相違点の一つや2つ用意してんだろうな」
左右田「あー……まぁ、ソニアさんって優しいだろ? 辛辣な言葉にも手心を加えるヒトだからよ、その……
だんだん満足できなくなってきたんだわ」
十神「要するに、好きな女にマンネリしたから、他の女になびいた そういう訳か」
左右田「いやいやいや身も蓋も無さ過ぎだろ! 九頭竜くんはレンチもちながら胸ぐら掴まないで!?」
狛枝「ま、まぁまぁ 日寄子タンの罵り方には一考の余地があるんじゃないかな
毒舌の力量差だけじゃなく 日寄子タンだけが持ち得る特徴にだって、左右田くんは気付いてるさ」
左右田「そ、そうだっつの! 今から言うから耳をかっぽじって良く聞けよ!
あとレンチを床に置いて定位置に座ってくださいお願いします」
九頭竜「チッ」
左右田「ほ、ほら日寄子タンってよ 見た目相応の言動をとるだろ?
小学生のガキみたいなよ 満面の笑みで残酷なことするし」
田中「当人いわく、子供である事そのものが武器 との事だったな」
左右田「でも本当のガキみたいな手当たり次第の暴言じゃなくて
現役高校生ならではの語彙をパーツにした、言葉選びはちゃんとするんだよな」
日向「うん、そうかもしれない」
十神「しかもだ 暴言を吐く相手を基準に情報を類推する所をみると
相手を理解しようと努力する、健気な一面も見受けられる」
狛枝「その健気さは全て、相手を傷つける為だけに使われるんだけどね」
左右田「こうして考えてみっと、やっぱり悪びれもしない点が大きいわ
あの手加減のなさは、やっぱ日寄子タンしか出せない魅力だよなぁ」
九頭竜「手加減が嫌いなら終里のヤローにでも殴られてろや」
左右田「言葉の暴力と終里の暴力は違うだろっ!」
日向「終里の暴力ってカテゴリー化してたのか」
左右田「まぁ日寄子タンの暴力なら普通に大歓迎だけどな
俺にしゃがめを言いつけた後、着物に適さないモーションに戸惑いつつ
あの細身から繰り出されるよたよたしたビンタは最高でした!」
九頭竜「ぐっ、まだだ! 俺の追い込みはこんなもんじゃねぇぞ!」
十神「お前はいったい何と戦ってるんだ」
九頭竜「強いて言うならテメェら全員だコラァ!」
九頭竜「特に左右田 さっきテメーはこう言ったな
態度はガキ染みているが言葉遣いは大人だってよ」
九頭竜「そんな奴がメガネブスとかゲリピーとかバーカとか口走るかボケッ」
左右田「うおぉ!?」
日向「ちょっと待てよ九頭竜 言葉も子供らしい時があるからって、大人らしい言葉を使えないっていうのは早計じゃないか?」
田中「なるほどな……左手には魔剣 右手には聖剣を携えたペルソナ使いという訳か
どちらに比重を置くかによって、使い手の性質が大きく異なる……危ういな
ヒトの心理を乗せた秤(はかり)というのは」
左右田「なんて!?」
狛枝「日寄子タンはその時の気分によって、大人らしい語句と子供らしい語句を使い分けてる可能性がある
って言ってるみたいだね」
左右田「分かりずれーよ! なんなんだよ!」
九頭竜「そ、そりゃあ確かにそうかもしれねーが……」
白夜「この件については保留しかあるまい 貴様ら二人の言い分に、どちらも肯定できる余地がある以上
“使い分け”という真実を前提にした考察と証拠が必要になる」
狛枝「そうだね その“使い分け”自体も、日寄子タンが故意にやってるのかどうかすら、分かってないわけだもんね」
左右田「判断材料が足りてねーって事か……」
十神「だがでかしたぞ貴様ら この事実は俺たちにとっては新しいモノだ
日寄子タンにぷちぷち踏まれたいファンクラブの躍進に、役立つ事は間違いない」
左右田「じゃ、じゃあ次のヤツにバトンタッチして俺はそろそろ――」
九頭竜「ちょっと待てや!」
左右田「またぁ!?」
九頭竜「確かによぉ さっきの結論な納得のいくもんだった
だが逆に言やぁ結論だけなんだよ左右田」
九頭竜「俺がテメーの発言の矛盾を正したからこそ テメーは間違わずに済んだ」
左右田「いやいやいや、お前だって日向がいなけりゃ間違えてただろーが!」
九頭竜「うっせぇ! 間違うだけで終わってたテメーと、間違っても収穫を得たオレとじゃ
格が違うんだよ!」
左右田「な、なんだよその超理論はっ」
日向「……このままじゃ話し合いは平行線だ」
日向「左右田 何か提示できないか、日寄子の言動以外の何かを」
左右田「な、何かって言われても」
日向(左右田が集中力を欠きはじめている その隙を見逃さない眼力は、さすが九頭竜といった所か)
日向(よし、はじめるぞ……!)
ロジカルダイブ――3、2、1……GO!
日向(くっ! 命題が不明瞭なせいか、思考筋道が左右田の歯のように鋭角だ! 落下に気をつけていこう!)
Q1 左右田は日寄子から何をくらった事がある?
パンチ ビンタ ヒップドロップ
日向(ヒップドロップ……尻……いやいや何を考えてるんだ俺は!)
Q2 被虐趣味より他に左右田がもつ性癖とは?
スカトロ 盗撮 骨格フェチ
日向(全部えらびてぇ……駄目ですか、そうですか)
Q3 細身である西園寺のビンタには、変態の左右田にとってどんな利点がある?
痛くない 骨の感触がより伝わる マッサージ
日向(最後のを選んだら弐大のアイデンティティが無くなるな)
1 パンチ
2 骨格フェチ
3 骨の感触がより伝わる
日向「推理は繋がった!」
――コンプリート!
日向「そうだ……! 左右田、日寄子の骨格はどうなんだ?」
左右田「なんで俺の名前を連呼すんだよ! 借金取りかよ!」
日向「いや、そっちの左右田じゃなくて一回目は掛け声――ってそんな事はどうでもいいんだよ!」
日向「気づいたんだ、日寄子ほどの細身だと肉付きも薄い
肉付きも薄ければ当然、骨格の浮き彫りも深くなるんじゃないか」
田中「なるほどな 左右田の性癖とシナジーする可能性がある」
狛枝「でもさ、それを確かめる術はあるの? あの通り日寄子タンは分厚い着物を着込んでるんだよ
骨格のコの字すら探せないんじゃないかな」
日向「いや、わざわざ視覚に頼らなくても、触覚に頼ればなんとかなるかもしれない
そしてそれを証明できるのは、ビンタを喰らった左右田しかいないんだ」
十神「狛枝と弐大も接触はしたが互いに布越し
肌と肌同士での接触を果たした、左右田以上の適任ではあるまい」
左右田「そ、そうだった……思いだしたぜヒャッハァアアアア!」
左右田「あの柔らかい細指に頬を叩かれた時、隠された骨格の存在をより感じられた ほら、こうやって自分で自分にするビンタと比べとみても違いは一目瞭然だぜ!
いや元々さ、骨格を調べ回したい願望は好きな女に対してだけ向けられたモンだったんだけどな トーゼン今は日寄子タンを調べまくりたいし
でもよ肉付きによって骨格の調べ心地が良くなるとか言われて、それに日寄子タンが該当してるとか倍しらべ回したくなったじゃねーか!
あー、そっかぁ、日寄子タンは骨格が目立つのかぁ……なんかもう俺に【整備されるためだけにあの体型でいてくれる】気すらしてきたわイヤッフゥウウ!」
日向「(なんかウィークポイントが見えた気がするけどメンドイからいいや)」
九頭竜「ま、待てよ そんなもんテメーの主観だろうが! テメーしか知り得ねぇ手の感触なんざ証拠になるか!」
十神「ならば発想を逆転させればいい、肉付きが少ない日寄子タンは骨格が目立つ、という事を証明したいならば――」
十神「肉付きがいい人間の骨格は肉で隠れてしまうという事を証明すればいい そうすれば相対的に問題の解となる
さぁ俺で確かめてみるがいい! 左右田!」
九頭竜「左右田よぉ……色々と突っかかって悪かったな 間違った事を言ったつもりはねぇが
私怨が少しあったことは認める」
左右田「良いってことよ 九頭竜がいなけりゃ、ここまで掘り下げらんなかったしな
出来ればこれからも頼むわ」
九頭竜「へっ、手加減は必要ねぇな? マゾ野郎」
左右田「昔っからよ、攻めるばかりの奴は打たれ弱いってのが相場だぜ? サド野郎」
十神「(´・ω・`)」
狛枝「よかった 一件落着だね」
田中「フッ、一人の猛者が長き戦乱を収める時代は終わった!
これからは双方、手を取り合って生きていくだろう……虚数が蔓延る彼の地に取り残された、ジェシーとクレシアのようにな」
左右田「おーい、部屋の天井を遠い目で見つめても、プロペラしか回ってねーぞ」
十神「さて、誰も名乗り出ないのなら俺が立候補しようか」
日向「おっ、次の話か」
十神「といっても、貴様らのように特筆できるイベントはない
ただ“豚足”との蔑称で呼ばれたり、どんな自堕落を送ればそんな人間離れした体になれるのー?
などと言われてるだけだからな」
十神「だがそれがイイのだ 左右田のような被虐的な快楽としての意味ではなく
俺の本質をありのまま言葉にする日寄子タンは、俺を十神白夜以外の人間として定義してくれる特別な存在だからな 以上だ」
狛枝「うん、実に簡潔で分かりやすかったよ さすがは超高校級の御曹――いや、言いっこなしかな あははは」
左右田「おいおい、いま聞き捨てならねーセリフが聞こえた気がすんぞ……!」
九頭竜「空気くらい読めや……! 分からなかったんなら、後で日向にでも聞け」
日向「……いいのか? 十神」
十神「好きにしろ」
日向「……そうか」
小泉「ヤッホー男子諸君 今日もやってるねー……ってなによこの雰囲気
あっ、でも日向くんはスゴく優しい顔してる ハイ、チーズ」
日向「い、いきなり撮るなよ!」
小泉「はいはい で、今は何をしてたの? ファンクラブの活動よね」
田中「記憶の奥に煌めくクオリアの採掘に勤しんでいた所だ!」
左右田「なんて!?」
小泉「思い出話かぁ 良いわね、楽しそう」
左右田「いや何で俺以外はみんな理解できるんだよ! 俺がおかしいみたいじゃねーか!」
九頭竜「それで、テメーは何しに来たんだよ」
小泉「んー、私はいつも通り、あの子が写った収穫を見せに来たんだけど――」
九頭竜「なに!? 日寄子タンの写真だと!?」
狛枝「凄いよ小泉さん! 凄いよ! とにかく凄いよっ!」
日向「俺は決めたぞ! もう逃げない! 小泉が創ってくれた未来と戦う!」
左右田「ソニアさぁあああああああああああああああん!」
十神「ねぇその写真、僕から見せてもらってもいいかな?」
田中「ゆけ! 破壊神暗黒四天王! 我が精神を蝕むチャームを撲滅せよ!」
小泉「あのさぁ、人がする話の腰は折るなって教わらなかった?」
小泉「あと、良い年した男子がガンクビ揃えて詰め寄るな いかがわしい」
日向・十神・狛枝・田中・九頭竜・左右田「はい」
小泉「よろしい まぁ日寄子タンにぷちぷち踏まれたいファンクラブの一員としては、無条件で渡すのが本当なんだろうけど
今までもそうしてきたしね」
小泉「でも今回は、思い出話の質を向上させる為に条件を出します」
小泉「日寄子との思い出話で私を楽しませる事 もう既に話し尽くした人もいるだろうし
まだ話を提示していない人のみでいいわ」
小泉「ただし、全員の話が楽しくなくちゃ駄目だからね」
日向(まだ話をしていない人のみか……確か、残り三人だったはずだ)
九頭竜(おいおい、あと三人も話がマシじゃねぇと駄目なのかよ……!)
田中(三人寄れば文殊の知恵……か)
NightTime 花村のコテージ トイレ
花村「……あれ? いま僕の存在意義が半減したような……?」
花村「気のせいか……うっ……ふぅ……八発目」
NightTime 左右田の部屋
日向(ここは重要な局面だぞ……! 慎重に選ぼう)
1 九頭竜と田中そして俺
2 オワリぃいいいいいいいいいいい! メシの時間だぁあああああああ!
3 九頭竜と田中ときどきオトン
4 破壊神暗黒四天王
>>53まで2レス先取した答えを決定するぞ!
日向「俺と九頭竜、そして田中って事になるはずだ」
小泉「へぇそうなんだ じゃあ最初の人選は私がするね」
小泉「んー、じゃあ九頭竜が最初でお願い」
九頭竜「ちょ、ちょっと待てやコラァア!」
小泉「何か文句あんの? 実質は上から四人目の発表なんでしょ
何の問題があるのよ」
九頭竜「その上から四人目以降全員に、リスクを背負わせといてよくいうぜ……!」
小泉「じゃあお願い 左右田、隣もらうね」
左右田「お、おう」
九頭竜「ぐっ……! おぉ! やってやるよクソがッ!」
九頭竜「ア、アイツとたまたま二人きりで採取する機会があってよ……
森で着物と下駄は危ねーつってんのに、そのまま続けてたら日寄子タンがいきなりコケやがったんだ」
九頭竜「手のひらの擦り傷だけで済んで幸いって訳でもねーが、終わりがけだったからよ
そのまま徒歩で帰ろうとしたら気付いたんだ」
九頭竜「アイツの下駄の鼻緒が千切れた事にな」
小泉「うっわーベタな話」
九頭竜「テメーも話の腰折ってんじゃねーか!」
狛枝「まぁまぁ、それでどうなったの?」
田中「まさか奇跡の二身合体-ライドオン-を果たしたのか!?」
九頭竜「それはアイツの方から釘を刺してきた まぁ俺も背負うなんて真似するつもりはなかったが」
左右田「……ッ!」
日向「泣くな あとでコツを教えてやるから」
九頭竜「なおかつ「もう一歩も歩けないー」なんて言いやがる
でもよ、それは違うと思った」
九頭竜「歩く程度の責任を誰かに背負わしちまったら
日寄子タンは自分の歩幅すら、誰かに合わせる事しか出来ねぇ奴になっちまう
いずれ俺の女になる奴には、そうであって欲しくねぇ だから俺は――」
小泉「俺の女ときたか……で、無理やり歩かせたの?」
九頭竜「……それには違いねぇ 日寄子タンは最後の一歩まで自分の足で【足場】を踏み、ホテルに戻ったからな」
日向「それは違うぞ!」
日向「ちょっと待ってくれ九頭竜! 地面を足場と表現するのは語弊があるんじゃないか?」
九頭竜「っ……!」
十神「仮に、九頭竜のいう足場の定義が足の踏み場ならば、確かに妙だな」
十神「裸足の日寄子タンが、森に足の踏み場を見い出せるとは思えん」
九頭竜「……足場は俺が作った」
狛枝「つまり森には最初、足の踏み場なんて無かったんだ 日寄子タンが転んだ事で初めて九頭竜クンはそれを見咎め、森に足場を作った
いや、作り続けたんだろうね」
日向「作り続けた……?」
狛枝「もちろん森だけじゃないよ 森からホテルへ徒歩する課程で、足場が必要な場所はいくらでもあるからね」
狛枝「森から採取したモノで足場を作った可能性は考慮したけど、二人で得られた素材の数なんてたかが知れてるから不可能
まぁ、花で作られた踏み場なんてモノが実在してたら、少しロマンチックだけどね」
九頭竜「……」
狛枝「モチロン、森と日寄子タンの立ち位置を往復しながらの、素材集めと足場作りを併行した可能性もないね
時間も労力も尋常じゃない マーケットも同じ理由で除外されるね」
左右田「じゃあどーすんだよ 素材や道具なしで足場を作る事なんか、出来ねーじゃねぇか!」
田中「前世で合間見えた宿敵の扱う魔術に、足場を生成するモノがあったが――まさか、その類ではあるまいな」
小泉「ないから」
日向「……いや、一つだけあるかもしれない」
田中「まさか、貴様も魔術師だったのか!」
日向「いやそっちじゃなくてだな」
狛枝「日向クンは気付いたみたいだね」
日向「往復も素材の使用もなし、ならその“足場”は常に
“九頭竜が携帯できたモノ”以外にはない
さらに、地面の凹凸から日寄子の足裏を守る為には、紙のような薄っぺらいモノでは非現実的だ」
日向「ここまで条件が揃えば、もう間違いないはずだ」
答えはCMの後で!
CM
ナエギ マコト「コマエダくんがやられたらしいね……」
エコダ ナマトギ「奴は超高校級の幸運の中でも最弱」
マヨエギ ナトコ「超高校級の絶望ごときにやられるとは、希望の恥さらしよ」
キボーマスターカムクラ! 近日公開予定!
苗木「――っていう夢を見たんだよね」
霧切「朝の一室で共に起床した恋人への第一声がそれ?」
日向「九頭竜 お前は自分の上着を二枚使い、足場を作りだしたんだ!」
九頭竜「ぐっ……!」
小泉「……え? ウソ、本当に……?」
十神「左手にはスーツ、右手にはカッターシャツ それらを日寄子タンから見て縦になるように地面に敷く
この際、ポイ捨て禁止のルールに引っかからないよう、二着の上着は常に掴んでおいたのだろう」
狛枝「あとは、先頭の上着に日寄子タンが両足を乗せた事を確認した後
両足が乗ってない方の上着を、日寄子タンの前に敷く
それを九頭竜クンは両手で交互に繰り返す事で、森からホテルまでの足場を作り出したんだ」
左右田「……マジで? ただでさえクタクタになる採取を終わらした後に、森からホテルまでその足場作りをしたってのか?
考えるだけでもメチャクチャ疲れんだけど……」
九頭竜「……あぁ、疲れ果てたなぁあん時は……チッ、日向にツッコまれるまでは
適当なウソでも捏造してごまかそうとしてたってのによぉ」
九頭竜「俺の話はこれで終いだ ……お気に召したかよ」
小泉「……全然面白くなかった」
九頭竜「なっ……!」
小泉「アンタの話もだけど、それ以上につまらないのは――
私がもってた、アンタに対する猜疑心」
小泉「私、アンタのこと誤解してた 見たくれだとか言葉遣いとかそんなものばかり見て
アンタなんて、日寄子に近付くのすら煩わしいとすら思ってた……ごめん、なさい……!」
九頭竜「お、おい……なに泣いて……!」
小泉「でもさっ きっ、と日寄子にとっては、思う事がある……出来事、だったんだよ
あの子、私には……自分にあった事を包み隠さずに……話してくれるから、さ
なのに、今の話を聞いたのは初めてだ、った……から」
小泉「だか、ら……日寄子の気持ちは、分からない……でも
私は、アンタが日寄子にしてくれた事が……嬉しい……!
面白くは、なかったけど、さ 嬉しいんだよ……!」
九頭竜「……俺がしたのはタダの自己満足だ
実際、ホテルに着いた日寄子タンは、俺に何も言わずそのままホテルに入ったしな」
九頭竜「だから、部外者のテメーにいまさら労いをもらったって、俺に得なんてねー
でもよ――」
九頭竜「日寄子タンが、俺との事を特別に思ってる可能性がある
それを伝えてくれた事は感謝するぜ」
小泉「……そっか なんかさ、私の方こそ変な雰囲気にしちゃってゴメンね、みんな
お詫びに写真は貸しておくから、後はみんなで楽しんで」
左右田「おぉおお! 何か知らんけど棚からぼた餅キタァアア!」
九頭竜「オ、オイ! もうちょっと、ゆっくりしてってもイイんじゃねぇのか……?」
小泉「ううん、今日はいいや」
日向「また来いよ、小泉」
小泉「……うん――あ、言い忘れてた、九頭竜」
九頭竜「あんだよ」
小泉「私、日寄子に宣戦布告しちゃうから」
小泉「日寄子の気持ちはまだ固まってないみたいだから、取り合いになるかは分からないけど
誰かさんを巡ってね」
九頭竜「回りくでー言い方じゃ伝わんねーぞ 気持ちとか誰かさんとか抽象的なんだよボケッ!」
小泉「あっそーですか! ……まぁ、楽しみにしててよ
次はなにも回さずに伝えに来るからさ……またね」
日向「はぁ……」
九頭竜「な、なんだよ人の顔みて溜め息ついてんじゃねーぞ!」
田中「仕方あるまい 人の道を外れた修羅が持ちえる弊害は常に、色恋沙汰には疎くなるというモノ」
九頭竜「あぁ?」
日向「頑張れよ、九頭竜」
九頭竜「いや、だからよ……もういい面倒くせぇ」
狛枝「凄いよ! ポニーテールの日寄子タンが凄いよ!」
左右田「日寄子タンのモミアゲすげぇえええええ! 形状記憶モミアゲ解体してぇええ!」
十神「このお風呂上がりのストレートヘアー日寄子タンは、僕が持って帰ってもいいのかな?」
左右田「あ、ちょっとトイレ」
十神「おい、ここはお前の部屋だぞ なぜ外に行こうとする」
左右田「急にキャラ直すんじゃねーよちくしょう!」
ここは深夜営業が主体の、日寄子タンにぷちぷち踏まれたいファンクラブの本拠地
時にペロペロをして時には悲しみまたはペロペロして日寄子タンを愛でる変態どもの集いだ
日向「おーい、俺達にも見せろよう!」
それでも俺達は生きていく
日寄子タンにぷちぷち踏まれたいファンクラブとして生きていく
俺達の未来はここにある――Fin
二十三日目 MorningTime ジャバウォック公園
ウサミ「おはようございまちゅ 今日も張り切って……アレ!?
あ、あのー、男子のミナサンが見当たらないのでちゅが……」
西園寺「クソビッチが言うには、夜更かしのしすぎで全員欠席だってー
私ご贔屓の虫タンたちの方がまだ自己管理できてるよねー」
辺古山「あまりそう言ってやるな……仲間内で語り合いたい時くらいあろう」
西園寺「……ふんっ」
罪木「あ、あのぅ西園寺さん? あまり心配しなくても、皆さんなら仲良く点滴で栄養をとって――」
西園寺「うっさい近寄るなゲロブタ!」
罪木「ひぇええすいませぇえん!」
西園寺「……」
西園寺「……」
西園寺「……アイツらみんな、私の奴隷のクセに自覚が足りない……!」
西園寺「うぅー!」
西園寺「でもいいもん……! 治ってきたらたくさんイジめてやるもん……!」
西園寺「あ、良いこと思いついたー クスクス……アレをこうしてコレをあーして……クスクス、クスクス」
本当におしまい
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