QB(まさか左遷されるとは、夢にも思わなかった)
QB(まさかまどかの契約も無く、ワルプルギスの夜が撃破されるとは)
QB(ワルプルギスの夜を過大評価していたのか、彼女たちを僕があなどっていたのか)
QB(しかしもうちょっと、しっかりと仕事してほしかったんですけどねえ、ワルプルさん)
QB(まあいい、結論から言おう)
QB(僕は有史最高とも言える魔法少女としての潜在能力を秘めた、鹿目まどかとの契約に失敗した)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387942993
QB(そのザマが本部から命令された「教育実習」さ)
QB(なんでも僕が見える人間にコンタクトをとって、レポートにして今後の反省文とともに提出)
QB(学生みたいな事をさせるが、これに失敗すれば僕は本当の本当に左遷)
QB(後任なんて腐るほどいる、上からみれば僕なんて「芥の如し」といったところか)
QB(とりあえず、人の多い街に出ようとしたわけだけれど)
QB(東京へ向かったら、満員電車内で圧死され、人々に何回も轢かれ轢かれ、僕のコピーを何体も失い)
QB(気付けば知らない路頭に迷っていた)
QB(つーかほんとに、ここどこなのマジで)
QB(にしても閑静な住宅地だ)
QB(人もそこそこいる気配もあるしね、希望が無いわけでは無い)
QB(ただ、ここに僕の仲間がいる気配はないのか)
QB(連日、年頃の少女が失踪するニュースが流れても困るからね、僕らの進出も慎重なんだろう)
QB(…八方塞がりに近い状況な気がしてきた)
…1時間後
QB(「おーい」とか、「僕QB、君は?」とか、通行人に片っ端から声をかけてみた)
QB(しかし、反応はない、まるで僕が屍のような反応だ)
QB(マミが友達を作ろうとしてことごとく不発に終わった状況を彷彿とさせるな)
QB(ボッチが厳しい環境にあることを理解できた気がするよ)
QB(あっ人だ、よし)
QB「おーいそこの君、ちょっと反応してみてくれないかい?」
比企谷「!?(今なんかの気配が)」
QB(さっきの人、背筋に反応が、これはいけるか?しかし、藁をもつかむとはこの事だね)
QB「ねえ、ちょっと助けてほしいんだけど」
比企谷「…待て、人形がしゃべるはずが無い。奇跡なんて起こらないとさんざん学んできたじゃないか、人生で」
QB(まあ、予想していた受け答えの範囲内だ。)
QB「その程度で奇跡だなんておめでたいものだね」
比企谷「…マジかよ」
QB「少し話をさせて頂けないかな?」
QB「『比企谷』か、ずいぶんと珍しい名字だね」
比企谷(人形と会話とか、もう残念通り越してかわいそうな人じゃないですか)
比企谷「で、勢いで家にあげたはいいものの、何者なんだ?幽霊か?たたりでも起こしに来たんじゃあるまいな」
QB「僕はただの人形です」
比企谷「ダウト」
QB「強いて言えばロボットです」
比企谷「そうだとしたら、なぜここにいる」
QB(さすがに、宇宙人です人外です調査しに来ました、とは言えまい。まっ嘘も方便さ)
QB「人とのコミュニケーションのテスト試走中です」
QB(この設定でいこう、後は近未来的オカルトでゴリ押しすればいい)
比企谷「雪ノ下さんのいたづら…か」
QB(人は理解不能な事象を前に考察すると、多少の論理の破綻も見えにくくなるものである)
QB「納得していただけたかな?」
比企谷「で、まあ、それでもういいよ、どうすればいい」
QB「簡単さ、君とコミュニケーションを取ればいいんだよ、出来ればここに数日間お世話になってね」
比企谷「明日は学校があるが…」
QB「基本、僕のことが露呈しなければそれで構わない、いやむしろ歓迎したいね」
QB(ここで何人か契約でもさせれば本部も許してくれるだろうか?)
比企谷「そうかよ」
QB「早速だけど、心理テストをさせてもらうよ」
QB(まあ、サンプルとしてだし、ネタ明かししても問題ないだろう)
QB「仮に魔法少女が存在したとする。それはね…」
比企谷「ずいぶんとぶっとんだ例だった」
QB「もっと感想らしい感想を」
比企谷「誰にも頼らないって、至高だと思いました~」
QB「…」
比企谷「パラドックスだろ、それ。一度足を踏み入れたら永遠に負の連鎖じゃないか」
比企谷「それなら関わらないが是とするね」
QB「そうかい、だったらここでいったん話は止めよう」
QB(正直言ってこれから何かが得られるとはとても思わない)
…1時間後
QB「しかし、君はとても家庭的な人材だったんだね」
比企谷「どうも」
QB「しかし、ご家族はみたところ、両親兄妹がいるんだね。まあこの時期だ、さしずめ残業や塾に行かれたのかい」
比企谷「…まあ、そうだ」
QB「しかし、失礼ながら君は本当にひねくれた人間なんだね、机まわり拝見させていただいたよ」
比企谷「あれを見たのか」
QB「1年前の新聞の切り抜き、おまけに今も解決していない問題には線が引いてある」
比企谷「…」
QB「気に病むことはないよ。一昔前だってあったろ、切手収集。あれと似たような物さ。それにそういう変な感性をしている方が僕とも話が合うだろう」
比企谷「…」
QB(それにしても会話こそ支離滅裂だが、雰囲気としては何かなつかしいものを感じるんだよね)
翌日 学校
QB(驚いた、正直言って驚いた。大誤算だ、ダイゴサンだ)
QB「まさか君に話しかけてくる人が誰一人としていないなんてね!」
QB「挙げ句の果てに屋上でぼっち飯だ。こっちとしては人との会話を分析したい所だったのに」
比企谷「多分今日は運が悪かったんだ」
QB「弁当を持って外に出るのに、だれも奇異の眼差しを向けなかったけれども?」
比企谷「集団論くらい知ってるだろう、お前?」
QB「『船から飛び降りる』の話とかは有名だね。豪華客船が頓挫したとき救命具をつけて100メートル程度下の海まで飛び降りさせるとする」
比企谷「船員はアメリカ人には『お前が飛び降りたらヒーローだ』と言い、日本人には『まわりが飛び込んでるよ、さあ早く』と言った」
QB「まあ偏見には満ちてるけれども、日本人は空気を読みすぎだっていう警笛にはなりうるわけだ」
比企谷「だから別に孤高でも問題無いだろう?」
QB「うん、おおありだね!」
昼休み
QB「本当に誰かと話してくれないと困るんだけど」
比企谷「今は睡眠時間だ、あと教室で大声だしていいのか、ロボットさん?」
QB(僕がお釈迦になる時が近づいてきたのかもしれないな)
平塚「おい、比企谷、起きろ奉仕部の仕事だ」
QB(やった人だ、神はまだ僕を見放しちゃいなかった)
QB(でもさすがにこれは少女と呼ぶには…)
QB(いかんせん無理があるだろう…)
比企谷「で、何ですか仕事って」
平塚「前回の中間テストで集団カンニングが行われた可能性があるんだ」ヒソヒソ
比企谷「へーそーですか、すいません他をあたって」
平塚「お前に一番適性があるんだよ」ガシイッッ
比企谷「痛いですやめてください。で、適性って」
平塚「他人に言いふらさない、カンニングに賛同してカンニングを自身が行ってもそれが採点者から分かる程度の成績だ!」ドンッ!
比企谷「う、今、壮絶にけなしましたね」
QB(さすがにこれは不憫すぎるだろう)
比企谷「まず具体的な内容を教えてください」
QB(ここで人が絡んでこい、そうして契約への一歩を)
平塚「その前にとりあえず場所を変えるぞ」
QB(もう比企谷を観察対象から外すべきかな)
比企谷「QB、来るのか」ヒソヒソ
QB「まあ、ついていくとするよ」ヒソヒソ
QB(ただ現時点で僕が見えている人はこの変わり者だけなんだよなぁ)
部室
比企谷「思ったんですが、これ先生が捜査するのが面倒なだけですよね」
QB(何というか華やぎの無い高校生活だよ。よっぽどマミ達の方が青春できてたな)
やばい親帰ってきた
平塚「教師だっていろいろ忙しいんだよ」
比企谷「生徒だって十分忙しいですよ」
QB(魔法少女の戦いをずっと見続けてきたせいかこのやりとりさえ微笑ましくみえるよ)
平塚「第一、私がこのことで大きく動いたりでもしたら、それこそ向こうが警戒して証拠も何も潰されるじゃないか」
比企谷「普通、それ以前に潰せる証拠は潰すと思うんですが」
平塚「そうなんだが、しっぽだけつかんだんだよ」
QB(トカゲの、でない事を祈ろう。正直これはレポートの足しに十分なりうる)
平塚「いちおう、そのしっぽは放課後見せてやるよ」
比企谷「はいはい分かりました。出来る限り手伝います」
平塚「そうか、ではよろしく頼むよ」ガラガラ
比企谷「なあ、お前天下の雪ノ下家のロボットなんだろう?」
QB(と、勘違いされております)
比企谷「なら助けて」
QB「残念ながら、僕にはポケットも無いし、全身が青い訳でも無いんだ」
比企谷「また厄介事・・・」
放課後 教室
QB「君が孤独なのは名実ともに決定的になってしまったね」
比企谷「別にいいよ、何者にも束縛されず常に自分の趣味に没頭できる時間を無制限に与えられるんだ。自由万歳!」
QB「君は本当に自愛心に満ちあふれているね」
比企谷「あいにく他人を愛しても無駄な事を知っているものでして」
QB「痩せ細り池に落ちて死んだのが、自愛の神ナルシスの最期だっただろう?自愛だけで生きていけるかは甚だ怪しいと思うけれどね」
QB(それに僕は自愛だけを信じて生きた赤髪の少女の心変わりを知っているからね)
比企谷「でも今の状況を端から見れば、『人形に独り言をつぶやいてる』ってなるだろう?そんな異常な状況にさえ誰もつっこみを入れないんだ」
QB(実際はボソボソ机の下に話しかけてるように見えるんじゃないかな・・・。さすがにそんな事をしたら人がつっこむ気すら起きないだろうね・・・)
『比企谷、至急職員室まで。くりかえす・・・』
比企谷&QB「やっとお呼び出しだ」
職員室
平塚「ほら、これが例のしっぽだ」
比企谷「これスマホじゃないですか」
平塚「まあ見ろ」
比企谷「これ物理の捨て問じゃないですか。あの3Dゲーム機と目の距離を30㎝とおいて入射角・焦点・反射角・2つの目の位置とか出して、虚像の大きさを求めろとかいう」
平塚「それの回答が一寸の狂い無く示されているメールがだ、比企谷、日付を見ろ」
比企谷「テストの前日・・・」
平塚「つまり問題用紙の方が流出したんだ、そして成績優秀者がグルになって回答速報を前日に回してる」
比企谷「・・・それはスマホの所有者を追及した方がいいのでは」
平塚「そいつは問題発覚後、登校してこない」
比企谷「それじゃあ、打つ手無しということに」
平塚「だからそいつの家に行ってもらう」
比企谷「・・・は?」
平塚「そいつの家に行け」
比企谷「そんなの先生が」
平塚「学校として大事にしたくないんだよ」
QB(保護者の追及やら学校のめんつやら、学校側に好ましい事態では無いにしろ、保身のために生徒をかり出すなんてね)
QB(正直、保身というより落命しないよう頑張ってる僕も誰かをかり出したいよ)
道中
比企谷「何でこんな事に」
QB「同感だね。あの教師はいささか人望が薄いのではないかい?」
比企谷「・・・そういう訳では無いと思う、一応目をかけて奉仕部を紹介してくれたし」
比企谷(しかし、紹介より連行の方がしっくりきちゃうっていうのはね)
QB「で、今から僕達はかわなんとかさんの家に行くのかい?」
比企谷「まさか、あれにメル友がいたなんてな」
比企谷(友達というより仲間にひどく裏切られた気分です)
QB(女の子絶賛募集中だよ~、契約してよ~、と言いたい場面だ)
QB(素質ある子を見つけられるチャンスをスルーするのは、何と口惜しきことか)
玄関前
QB「『川崎』か、しかしどうして、かわなんとかなんて言ったんだい?そんな複雑な名字でもないだろうに」
比企谷「まあ・・・いいじゃないか」
QB(本当に変な人だ)
比企谷「じゃあ、行くぞ。QBはしっかり隠れとけ」
QB「了解」
ピンポーーーン
QB(髪を後で一つに束ねている・・・、顔立ちも悪くない。その上妙齢の女の子か・・・。顔を出して反応から素質を伺いたい、でも、隠れとけと厳命されてるからな)
QB(スキをついて奇襲のように顔を出すしかないか)
川崎「まあ、事情はいわずとも分かるよ。とりあえず入れ」
比企谷(絶対に居留守を使って引きこもるだろうと思ってたんだが・・・。裏目に出やがった。やばい、これからどうするか全く考えてないぞ)
川崎「とりあえず、お茶」
比企谷「あ、お気遣い感謝します」
比企谷(『先生、家から出てきません』シナリオが一瞬にして崩落、さあどうする?)
QB「迷った時は厳しめのコースで直球勝負だよ」告げ口
比企谷「それは野球の・・・」
川崎「野球?」
比企谷「いや何でもないです、やー、急にね押しかけて、本当にね、その申し訳ない」
比企谷「それで少し聞きたい話がありまして」
川崎「まさか昼休みにスマホ使ってたら没収されて、最終的にあんなことになるなんてねぇ」
QB(人ごとのように言うね、全く)
飯食ってきます
QB(それにしてもどうしてこの人は会話に華を全く添えようとしないのか)
QB(この状況でも意図的に沈黙を破っていないようにさえ見える)
QB(せめて打開策を練る間に、あたりさわりの無い事でも言えばいいだろうに)
QB(ならせめて確認だけでもすませてしまおうか)
QB「えーっと、書き物と紙が必要だ、出してもらえないかな?」ヒソヒソ
比企谷「・・・」コクリ
川崎「かばんなんかあさって、どうかしたのか?」
比企谷「いや一回状況を書き出してみようと思って」
QB(よし、意識がかばんの中にいった。今が好機だね。しっぽを振ってコンタクトを図ろう)フリフリ
QB「・・・」フリフリ
QB「・・・・・・」フリフリ
QB「・・・・・・・・・」フリフリ
比企谷「馬鹿!隠れとけ」ヒュッ
川崎「?どうした腕をはらって?虫でもいたか?」
比企谷「えっ・・・、まあそうだな、うん、虫がいた」
QB(そうして僕のひとときの希望は潰える)
QB(この瞬間、僕がここにいるアイデンティティは完膚なきまでに崩れ去ってしまいました)
QB(それならこの話を進展させて人間観察に徹するほか致し方ないね)
QB「もう5時半をまわるけど、大丈夫なのかい?」告げ口
比企谷「はあ、じゃあとりあえず平塚先生の話とメールの内容を総合してみます」
比企谷「問題が解かれていた事と、流通していたことから察するにこれは複数犯です。独力で問題が解けるならこんな大冒険をしなくてもいいでしょう」
川崎「へー、ここで推理までやるのか、まあ面白そうだしつきあうよ」
QB(態度に余裕がありすぎだよ、とても引きこもって登校拒否してる人の態度に見えない・・・)
比企谷「まずテストが保管してある理数科教員室に入るためには、職員室で鍵を借りる必要があります」
比企谷「しかし生徒が教員室の鍵を借りるのは、普段は絶対ありえない」
比企谷「なので犯行時刻は既に絞り込まれています」
比企谷「清掃時だ」
比企谷「なので目下の問題は2つに絞られる」
比企谷「まず、『清掃時にどうやってテスト問題を引っ張り出したか』、テスト問題は公平を期すために各教員の机に鍵をかけてしまうそうですし」
QB(鍵の閉め忘れだった、とかではあるまいね)
比企谷「それに問題用紙の原本は鍵をかけた状態で又、机の中においてあったそうです」
QB(まあそんな凡庸な答えだったら、さすがにすぐ見当がつくか)
比企谷「あとまあどうでもいいかもしれませんが、もう一つ」
川崎「前置きはいいからさ、さっさと言いなよ」
比企谷「『なんで成績優秀者は協力したんでしょう』、平均点が上がって、自分の席次も偏差値も下がるのに」
風呂入ってきます
川崎「後者なら簡単じゃん」
比企谷「へ?」
川崎「お前文系だろ」
比企谷「まあ一応は」
川崎「物理真面目にやってるか、お前さ」
比企谷「生物が取れてるんで、それはそれは誰がどう見ても不真面目不謹慎に気持ちよく夢の世界へ・・・」
川崎「・・・分かったもういいよ」
QB(ひねくれた時に饒舌になる人間もいるものだ)メモメモ
川崎「最後に捨て問だしてドヤ顔になるのが、うざいからじゃないのか。冷や水ぶっかけたくなるのもすごく分かる」
比企谷&QB「・・・分かった、もういいよ」
比企谷(明らかにその問題を解けなかった私怨が混じってる気がする)
QB(何とも感情的な回答だね)
川崎「・・・私が言えることはこれくらいだけど」
QB「もう潮時じゃないか?こちらからこれ以上何かを得るにはこちらの情報の持ち札が少なすぎるよ」ヒソヒソ
比企谷「・・・わざわざ忙しい中時間を割いてもらって、何というかすまなかった」
QB(孤独たりとも礼儀ありか、これは参考になるかもね)
QB(言ってしまえば僕も十分孤独なんだよな)
QB(撃たれ踏まれ侮蔑され憎まれ・・・、まあ人間と分かり合える時は多分もう無いだろう
比企谷「まああれだ、あと平塚先生から登校するよう勧告が出ていることだけは伝えておく」
川崎「はいはい、分かったよ」
川崎「相変わらずさ目に覇気が無いっていうか、生命力を全く感じないんだけど」
川崎「それを抜きにしてもやつれてないかい?」
QB(確かに年頃の割にはやつれて見える)
比企谷「そう・・・か?」
川崎「まっ、私が言える事でもないけどさ、元気だしなよ、比企谷!」ニコッ
QB(なぜ彼女がなぐさめる側にまわっているのか)
比企谷(いやこのやつれの半分は少なくともお前らのせいだから)
道中
比企谷「あー、むかつく、しかしどうしてあそこまで窮屈な思いをしなくちゃいけないんだ」
QB(かすかながら感情の吐露を確認、これは見物だね)メモじゅんび
比企谷「はーっ、そういえばQBって雪ノ下さんのロボットなんだよな?」
QB(しかしそのユキノシタさんとやらは一体何者なのか)
比企谷「だったら少し殴ってもいいか?」
QB「へ?」
比企谷「雪ノ下さん、いやどちらかといえば雪ノ下一族には、天よりも高く地よりも深い私怨が蓄積していてだな」
QB「そ、そうなのかい・・・」
QB(これは軽率なミスだ。雪ノ下という名字は軽々騙って良いものでは無かったんだ)
QB(しかし、まさかこうも突然気性が荒れられると厄介だよ。まあこれよりも酷い暴走にも僕は慣れてますけどね)
QB(しかしどうしたものか・・・)
QB(こうなったら少し賭にでるか)
QB「仮にだ、もし僕がロボットだとするならば、どうしてみんな僕に反応しないのかな?」
比企谷「・・・」
QB「それにその私怨とやらは天より高く地よりも深いんだろ?だったら天地の間に存在する僕は対象外だよね」
QB(実際は天よりも高い所が故郷なわけですが)
比企谷「だったらお前は・・・」
QB「何だと思う?」
比企谷「幽霊か何かなのか?」
QB「・・・だったらそういうことにしておこうか」
QB(幽霊、まあ白いしそれっぽいのだろうか、でも正直幽霊みたいなのは向こうもだよね)チラッ
比企谷「なんか馬鹿馬鹿しくなってきた。さっさと帰って宿題して寝よう。どうせ明日もかり出し決定だろうし」
QB(やはり人間の忍耐には限界がある)
QB(しかしレポートの完成度、意外とハイクオリティーになるかもしれない)
深夜 比企谷家
QB(はあ、今動いても怪しまれないだろう)
QB(とりあえず今夜の内に考慮すべきは、『家の探索による調査対象の境遇』と、『明日の契約へのアプローチ』かな)
QB(趣味嗜好はその人の内を表すとも言うからね、まずは例の新聞に目を通そう)
QB(切り抜かれた後・・・か)
QB(スクラップノートでも作っているんだろうか)
QB(しかし、ストックはきっちり1年分・・・)
QB(線を乱雑に引いた形跡もある)
QB(しかし線を引くのを欠かした日は1日もなかった)
QB(スクラップノートだ。とりあえず今必要なのはスクラップノートだ。その記事選別に規則性があれば・・・)
トントン・・・
QB(誰かいるのかい?)
QB(まあ親御さんなんだろうけどね)
QB(足音は2種類、これはもはや決定的だ)
QB(子どもの境遇を考慮する際にあたって親の影響力は欠かせまいさ)
QB(貴重な資料ありがたくちょうだいさせていただきます)
???「明後日・・・なわけだがあいつは・・・」
QB(大人の男性、つまり父親か)
???2「1年後には・・・それでも少しはりりしく・・・」
QB(今、1年って・・・言ったよな?)
QB(そして、さっきのは母親だろう。しかし足下からだと足音にかき消されて・・・)
QB(いってしまったね。しかし、どうも明後日に何かあるっぽいな)
QB(はあ、しかしレポートのためだ。もう少し探索にいそしむことにするよ)
翌日 教室
QB「おはよう、しかし今の今まで安眠できるとは」
比企谷「しかしお前、授業中によく寝てたな」
QB「昨日はあいにく徹夜レポートでね」
QB「ただ面白いことに、僕は君が会話をすればグッドモーニングできるように準備していたはずだよ・・・」
比企谷「ほうじゃあそのシステムが不良品だったんだろう」
QB「ダウト」
比企谷「・・・」
QB「沈黙は是なり、さ。それにさ僕の起床システムは正確だよ、ほら見てみな」
キーンコンカーンコーン
4時限目 物理スタート
比企谷「はあ、今日は自分至上最高の真面目さで物理の講義を受けることになるな」
QB(瞳孔が開いたところで相変わらず彼の眼は濁っている)メモメモ
物理の人「よし、じゃあ今回はテストの解説からな~」
開始5分
物理の人「いいか、公式真面目に覚えるだけで解けるものは解ける。どうしてそれが出来ないのか分からない」
QB(まあ、確かにこの言い回しは人によっては不快に聞こえるかもね。しかし、最近聞いてたのは専ら中学の講義だからなあ。これがものすごく難易度が高い授業に聞こえてしまうよ)
比企谷(どうしてそれが当たり前なのかが分からない)
開始15分
物理の人「ここは問題文すら読めない奴が多すぎだ」
比企谷(専門用語を列挙した問題文作っといて、それで国語力に結びつけるな)
QB(引っかけが巧妙だな。大いに参考になるね)
開始25分
物理の人「これのミソは図式化だ」
比企谷(撃沈)
QB(推理の時、彼が図式化を行えたのは奇跡に近いものだったのかもしれない)
QB(『奇跡』という言葉の濫用にはやはり抵抗を感じるね。これは職業柄と言った所だろう)
物理の人「最終問題。今回は正解者多数。素直にうれしいよ」
QB(ダウト、いやあの人顔に出すぎだろう。滑稽きわまりないよ、真顔で喜ぶってのは)
比企谷(撃沈中)
QB「起きようか。それによくその授業態度で70点も取れたね!」
物理の人「いいかこれのキーは二秒おきに画像が切り替わる、って所だ」
比企谷(20分も3Dゲーム機の光の入反射の説明に費やすとは)
QB(意外と文明的なのか・・・人類っていうのは)メモメモ
物理の人「じゃあ、最後にプリントの回収な」
比企谷「・・・これはまずい」
QB(?)
比企谷「宿題プリント家に置いてきた・・・」
QB(それはそれは平常点が壊滅的被害を被るじゃないか)
職員室
比企谷「はあ、すいません」
物理の人「全くお前は明日ちゃんと提出しろよ」
平塚「おお、比企谷、それに先生も」
平塚「役者はそろったな」ガシッ
比企谷(台風の目に引き込まれていく・・・)
QB(比企谷の眼がよどんでいく・・・)
比企谷(20分も3Dゲーム機の光の入反射の説明に費やすとは)
QB(意外と文明的なのか・・・人類っていうのは)メモメモ
物理の人「じゃあ、最後にプリントの回収な」
比企谷「・・・これはまずい」
QB(?)
比企谷「宿題プリント家に置いてきた・・・」
QB(それはそれは平常点が壊滅的被害を被るじゃないか)
職員室
比企谷「はあ、すいません」
物理の人「全くお前は明日ちゃんと提出しろよ」
平塚「おお、比企谷、それに先生も」
平塚「役者はそろったな」ガシッ
比企谷(台風の目に引き込まれていく・・・)
QB(比企谷の眼がよどんでいく・・・)
理科科教員室
比企谷「これが、鍵、それで机がこれと」
平塚「比企谷、この鍵と机の謎のカギ何か思いついたか」
比企谷「なんて問いを一介の生徒に振ってるんですか」
QB(尖った問いを丸投げするなんてね)
QB(丸は頂点のない図形で最高に美しいとされるからね。丸は『完全』の意を有すのさ)
QB(さて僕らは完全解決にたどり着けるかっていうね、瀬戸際にいるわけだ)
QB「視点を変えるべきじゃないか?手詰まりなのは君も薄々感づいているだろう?」告げ口
比企谷「どうするんだ」ヒソヒソ
QB「物理の人に習ったろう?、まずは図式化さ」
QB「まだ見落としている点があるかもしれない」
眠るべきか否か
比企谷「平塚先生、一端整理し直すべきかと」
QB(それにしても窓からの陽光がまぶしい。世界は今日も平和だ。それもこれも僕達の活動の賜物なんだよね)
QB(これじゃあ僕が生死の境だということを忘れてしまいそうだ)
QB(それくらい僕はこの世界の『平和』に蹂躙されているのだろうか・・・)
QB(本来宇宙というものに平和なんて・・・)
比企谷「おい、QB」ヒソヒソ
比企谷「少し見えてきたかもしれない。ここからは平塚先生を介さずに行動するぞ」ニヤッ
QB(はあ、全く本当に君はつくづく孤高の人だと思うよ)
比企谷「先生、皆目見当がつきません」
QB(そっちの方向に丸くなるのか・・・。屈折して逆反射させるコーナーキューブを彷彿とさせるね、まあこれは今日の授業の受け売りなんだけど)
平塚「・・・そうか」
比企谷「では失礼しました」ガラガラ
比企谷「問題はここからなんだよ、むしろ」
比企谷「失礼します、っても普通ここには誰もいないよな」ガラガラ
QB「まあ順当に問題用紙の行方を追っていけば、この部屋も十分可能性の範囲内ではあるね」
比企谷「おそらくみんな動機やら密閉された用紙やらに眼がくらんで気付けなかったんだろうな」
QB「印刷室・・・か、案外狭い部屋だね」
QB「ただ部屋に紙がどうしても多くなるから、一回さっと盗めば隠蔽から回収・増産まで楽々可能ではある」
比企谷「悪い意味で可能性に満ちた部屋ってトコだ」
QB「で、これからどうするのさ?僕達のこれからの行動だって十分可能性に満ちているよ」
QB(しかし、僕の生命の可能性が一刻一刻削られていることを、彼は未だ知らない)
比企谷「ああ、まず裏を取る」
QB「と、言うと?」
物理の人「ああ、ここか」ガラガラ
物理の人「確かに可能性は十分だな」
物理の人「ただね、ここで印刷したときこの部屋には僕以外誰もいなかったんだ」
比企谷「これが第一の関門か」チラッ
QB(ああ、あの眼は救いを求める眼だ。僕はこれまで多くの少女がこの眼をし、朽ち果てていくまでの過程を見てきているんだ)
QB(しかし、その中のどれにもこれほどまで濁った眼は無かったよ!)
物理の人「それにね、こんな印刷室で問題用紙が流失するような事態があるようなら、とっくに全教科の問題が流失しているはずさ」
比企谷「・・・」
QB(やはり人間は一瞬だけ差し込んだ希望に酷くもろい)memo/memo
QB(そういえばマミが間一髪だった時も、マミにはぼっち解消という儚い希望が差し込んでいたんだっけ)
QB「はあ、まずは時間稼ぎだよ」告げ口
比企谷「だったら、念のため実演して確認しましょうか」
比企谷(もし仮に、ここでの犯行だったとする、するとこれは100%物理一本を狙って行った犯行だ)
比企谷(犯人がばれた所ですっきり解決とはいかないだろうよ)はあっ
QB「ため息ついてどうしたんだい」ヒソヒソ
比企谷「例の魔法少女の比喩を思い出してな。規模も事情も違えど、今の自分も絶望しかないなと思っただけさ」胃が痛い
QB(しかしそれだとますますワルプルさん撃沈が皮肉めいてくるね)胃が痛い
ウウィーン・ガジャン・ブー ウウィーン・ガジャン・ブー
比企谷「確かに印刷されてプリンターから落ちた紙は、1か所に集まるように設計されている」
比企谷「なあQB?あれを1枚だけ別の方向に落としたり・・・、できないものだろうか?」ヒソヒソ
比企谷「そうすれば、取り忘れの可能性は格段に上がる」
比企谷「それになんで今日物理の人がテスト解説したか、分かるか?」
QB「わかったら、僕は立派なエスパーだ」
QB(そして真っ先に超能力で鹿目まどかを魔法少女にするね)
比企谷「けっこう大雑把な人なんだよ、物理の人って」ヒソヒソ
QB(どうりで、平塚先生が泡を食って危惧していたわけだ。教師の失態のリスクもありうるぞ、と)
QB(まあ言動も大雑把だったな、成績不振者への配慮も欠けていたし)
ごめんなさい、もう寝ます
明日驚愕の完結へ
カミングスーン (明日早起きしますのでご容赦を)
QB「じゃあ、さっきのテスト解説には、問題の配点と正誤を生徒に再確認させる意図もあったというわけかい」ヒソヒソ
QB(確かになかなかの数の生徒が点数の改正を行っていたか)
QB(だったら例の70点も、何かの間違いだったのかもしれないね)
物理の人「・・・来週分のプリント一式刷り終わったが」
比企谷「・・・」
比企谷(印刷室にあるのは、コピー機2台・印刷用紙数千枚に大量のインク)
比企谷(部屋もドアと窓が両端にあるだけで、別に複雑さも微塵もない)
比企谷(だったら一端別のアングルから外堀を埋めるしかない)
比企谷「先生、そういえば用紙はいつ印刷されたんですか?」
物理の人「放課後」
比企谷(放課後・・・なら)
比企谷「先生は何部の顧問を?」
比企谷(この学校の教師は大体何かしらの部の顧問をしている。まあそれにも関わらず顧問が部をほぼ放置している奉仕部の現状があるわけですが)
物理の人「陸上部だよ。運営はほとんど部長の方がしているけれど」
比企谷(平塚先生。世界って広いですね。あなたと同類がいらっしゃいましたよ)
QB(また変な情報が増えた。なんだか『アキレスと亀』のパラドックスの話みたいになりつつあるね」
5時限目 体育
QB(・・・昨日の夜、考えに考え抜いた策として)
QB(契約活動はこの男女別離で行う体育の授業間に絞ることにした)
QB(体育の時間が始まるまでは教室で待機、その後移動し比企谷にばれないよう女子に対し反応を呼びかける)
QB(僕のことが見える子に不審な動きをされても困るからね、なんだかんだ言っても神経をすり減らして行動することになりそうだ)
QB(訪れた契約のまたとないチャンス!ボーナスステージと洒落込ませてもらおうか!」とつげーき
QB(男子が体育館でバスケ、女子が外でバレーか)
QB(外なら茂みにもさっと隠れられるしね、なおのこと好都合だ)
QB(よくよく考えると、端から見れば不審者じみた行動を僕はしているのかもしれないな)
QB(あいにく体裁を気にする程、感情も命の余裕も持ち合わせていないものでして)
QB(女子中学生を見慣れていた僕からの視点だと仮定すれば)
QB(女子高校生の体育に対して、一種のなまめかしさを感じるのはある意味当然かもしれない)
QB(しかし、今、僕は結局静かにバレーを見学する有様となっている)
QB(まずバレーコートを縦横無尽に駆け回ったが)
QB(誰も反応が無かった。彼女達は僕が見えない世界でも充足した日常を送っている)
QB(比企谷と徒党を組む僕の絵がありありと浮かんできて、哀れだった)
QB(次に最後の望みをかけてセンターネットによじ登ってみてアピールを試みた)
QB(が、撃墜された。磁石に引き寄せられるようにボールが顔面へ向かってきた)
QB(そして行き着いた先が、動かずが吉、というもの。おみくじの凶に書いてありそうな文面だよ)
キーーンコーーン
QB(体育が終わった。本当に憂鬱な時間だったよ)はあっ
教室
比企谷「おい、QB」ヒソヒソ
QB「?」
比企谷「印刷室から紙を奪う方法が分かったよ」
QB「君の『分かった』は信用ならないことを僕は学習したからねぇ」
比企谷「裏も取った。あと、ボッチの行動フリースキルなめるな」
QB「どうだか。ただ矛盾を指摘してくれる人が近くにいないだけじゃないのかい?」
QB「まあただ今回は僕がつきあってあげるよ」
印刷室
QB「まあねそりゃあ、窓を開ければ紙はとぶでしょうよ」
QB「でも換気扇もある・対カビ用の乾燥機もある、その中で窓を開ける必要性が分からないね」
比企谷「ただ普通の天気の日に窓を開ければ、紙が数枚がとんで格段に見つけにくくなることは検証できた」
QB「いつの間にそんなことを」
比企谷「体育なんて調子悪いとでも言えば、簡単に抜けられるさ」
QB(僕に至っては無言で授業を抜けれることが判明したよ・・・)
QB(素質がある子の偏在の可能性もレポートに追記しておくか)メモりっと
比企谷「やはり孤高はすばらしいな」ハハハ
QB(やはり人間の幸不幸なんて内輪のものなのだろうか)
QB(結局同じ事が起こっても、それを幸とするか不幸とするかはその人次第ってことなのか)
QB(だとしたら今の僕は幸せなのか・・・)
QB(まあこれに答えるには、僕がこの瞬間突然変異でも起こして、感情を発生させなければならない訳ですが)
少し数学チャート解いてから又書きます
比企谷「だから考えてみたんだよ、最も現実味のある可能性を」
QB「窓を開ける可能性をかい?」
比企谷「窓を開けたら、何が見える?」
QB「そりゃあグラウンドさ。何せここは一階だしね。奥の景色を見るには無理がある」
比企谷「放課後・グラウンド」
QB「・・・陸上部の活動か」
比企谷「このことを物理の人に聞いたんだ、そしたら『あ、ああ、そうかもね』だとさ」
QB「だったらもう」
比企谷「放課後には片がつくよ」
教室 放課後
QB(まさかここでつまづくなんてね・・・、予想もしてなかったよ)
QB(陸上部関係の話を聞ける相手が皆無だという、致命的問題が発生しました)
QB(孤高の弱点をピンポイントで突いた形です)
比企谷「どうする?とりあえず下調べは必要だろうが・・・」
平塚「HR始めるぞ~」ガラガラ
比企谷「そうか・・・、神はまだ僕を見捨てちゃいなかった」
QB(この一連の出来事の元凶が紙なのが皮肉に思えるよ)
比企谷「先生、陸上部の生徒って分かりますか?」
平塚「ならこの名簿読んで調べろ」ほれっ
比企谷「川崎、陸上部・・・とある」
QB「つながったね」
比企谷「よっしゃっっ!」ガッツポーズ
教室「・・・」ナニアイツ トツゼンネー キモッ
QB(いかなる者も集団のしがらみから逃れることは敵わない)メモッ
比企谷「これが現実って奴だ・・・」悟る
QB「ただこの川崎さんのページに、何というか違和感を覚えるんだけど」
QB(僕には感情がない。つまりこれが意味するのは何かの矛盾だ。僕の認識のどこかが間違っているんだ・・・)
比企谷「ああ、それは欠席の斜線がとぎれてるからじゃないか?」
QB「えっ?」
川崎「・・・」
比企谷「登校してくれたんだよ、全くうれしいかぎりだ」
QB(と、死んだ眼で言ったのだった)
QB(やはり眼に色がないと感情の変化を認識するのは難しい)
HR終了後
比企谷「陸上部に単身で乗り込むしかないな、もう」
QB(今、おそらく脳内で孤高の騎士みたいな脚色が加わってるはずだ)
QB(しかし、マミからそういう経路の思考を学習していなければ、僕はこの人を宇宙人のように思ったんだろうなあ)チラッ
QB(まあ実際、周りにいるのはみんな宇宙人。僕は単身で地球へ乗り込んだのさ)
比企谷「いや単身でもないか」
QB「?」
比企谷「一人+一匹だよ」
QB(やはり意外性というものは、他者から関心を引き起こす)me/mo
午後からは予定が変速です・・・
書ける時に書きます
(それ以前に読者様はいらっしゃるのだろうか)
廊下
QB(奉仕部ねえ。奉り、仕える。日本式封建文化そのものを形容する言葉だよね)
QB(しかしその部員がこの有様だなんて、何とも逆説めいた話だよ)
QB(要約すりゃ『上下関係の縦社会推進・空気読みます』のレッテルはって、ひねくれボッチやってるんだからなあ)
比企谷「なあQB」
QB「ここで喋っても大丈夫なのかい?下手したら君はボソボソと独り言を言って歩く不審者予備軍になるよ」
比企谷「眼が合わない理想の角度・独り言がとどかない最適な声量を知っているからな」
QB(・・・一体それを習得するためにどれほどの研鑽と失敗を重ねてきたんだろうか)
比企谷「しかし、部活、か」
QB「部活、だ」
比企谷「果たして集団で何かに打ち込む事は楽しいのか」
QB(どうも畑違いの人材でも、意外と適応できる人間はいるらしい)
QB(しかし君はお似合いの部活に入ったよ。完全個人プレーじゃないか)
比企谷(この件は物理の人の過失と決着してくれ・・・)
比企谷(そうすれば誰も傷つかずに済む・・・)
比企谷(もし、そうならなかったら・・・打つ手は・・・)
グラウンド
比企谷「少し集団論の話をしようか」
QB「僕をお地蔵さんだとでも思って何でも話せばいいさ」
比企谷「今回は体育会系の部活というテーマに焦点を絞ろうと思う」
QB(それが君流の気付けなのかい?本当に君は風変わりな人だね)
比企谷「部活という集団でまず考慮すべきは、能力主義と年功序列の混在だ」
QB(先輩後輩が大事か、選手としての強さが大事か、二つの価値基準が同居している、と言おうよ)
QB(その言い方じゃあ部活は立派な小社会みたいじゃないか)
比企谷「そして、弱者、まあつまり後輩だったり出来ない奴だったりに対して」
比企谷「『指導』なのか『攻撃』なのかが曖昧すぎる」
QB(国家の生活保護みたいな弱者救済制度は、部活には無いだろうしね)
QB(選手としての能力が低いとかだったら、それを他力でどうこうするのは不可能だろう)
比企谷「結論!部活の集団運営は繊細で難しい」
QB(結論!そんな社会に比企谷をおとしいれたら確実に淘汰される)
QB(しかし奉仕部に比企谷を連れ込んだ平塚先生は意外と有能な方ではなかろうか)
比企谷「よし、じゃあケリをつけるか」
QB(君は本当に、感情の起伏が全く読めないね)
ランチタイムです
少し遅れます
比企谷「あれが部長だな」
QB(集団のリーダーが誰か一瞬で見抜ける嗅覚には、素直に敬意を表します)
比企谷「練習中のところ、すいません。物理の人からことづてを預かった者なんですが」
部長「ん、俺にか?」
比企谷「いえ、先輩ではなく同学年の部員になんですが」
部長「だったらあそこで固まって筋トレしてるよ」
比企谷「あの、ちょっといいですか」
A「何か用?」
比企谷「いや物理の人から伝言をいただいてまして」
B・C・D「・・・」
川崎「・・・」
比企谷(川崎もいるのか・・・、より一層言い回しには注意しないと)
QB(なるほどね、僕が感じていた違和感というのは・・・)
QB(いやあ理解とは爽快感を生むものだね、これでなんのわだかまりもなく先のことを考えられる)
QB(ここで第一声に何を発するか)
QB(これは大きな山場になるよ)
QB(奉仕部の活動においても、今そこで呆然としている彼らにも、真相解明においても)
QB(そして何より僕の感情の解析においても、ね)
比企谷「・・・」
~回想~
6時限目 漢文
比企谷「作戦会議をしようか」ヒソヒソ
QB「授業の方はいいのかい?」
比企谷「要点だけ逃さなければ、漢文に至っては特に問題ない」
QB「はあ、全く。それでどうするのさ」
比企谷「これから想定される最悪のケースは」
QB「陸上部員が私怨を持って物理の人の問題を盗難した、場合か」
比企谷「だからこれからは最も悲観的に考え、対策を行う」
QB(君がネガティブになるのか・・・。真性のシャドーマンが完成してしまうよ・・・)
比企谷「だから関係者の利害関係を整理してみよう」
比企谷「まず一括りで教師陣」
QB「話を大きくしてほしくない、まあ端的に言うなら保身ってトコだろう」
比企谷「ああ、だから交渉が決裂したら、即、教師陣と連携してもみ消しを図ろう」
比企谷「続いて陸上部員が犯人だった場合の部員さんの利害」
QB「これは愉快犯か、怨みからの犯行によって異なるにせよ」
QB「教師への悪意・恐怖、犯行後の爽快感あたりは、少なくとも持っているだろうね」
比企谷「そして最後に自分個人としての利害、というより意見だが」
比企谷「こんな厄介事、二度と起こしてたまるものか」ニャッ
QB(やはり人間は決意を前にその表情を変える)
・・・・・・
比企谷(落ち着け、言ってのけろ!)
ごめんなさい 親にパソコンが~
遅れます
比企谷「だがその伝言を伝える前に・・・」
比企谷「契約をしないか?」
QB(鏡を・・・、みている気分だ)
QB(鏡はその内面の心情をも見透かすというからね、今の僕にもぴったりの形容さ)
QB(それに鏡は・・・)
QB(『自己愛』なんて意味も有している)
QB(しかしこれは自分のこれまでの行為の本質を見透かされるようで・・・)
QB(人間は独力で奇跡にはたどりつけないけれども、)
QB(時に人間は、偶然を折り重ね神秘にたどりつく)メモメモ
A「契約?」
B「つーかお前突然現れて・・・何様?」
QB(あれのことだ。どうせ『俺様』と答えますよ)
比企谷(C・D・川崎は黙って泡を食ってる)
比企谷(となると、この集団の序列上位は、AとBか)
比企谷(しかし川崎以外クラスメートかすら分からない)
比企谷(正直、向こうの成績の善し悪しぐらいこちらがわかっていれば、解答制作者の特定が楽だったんだが)
QB「ねえあんまり騒ぎすぎると、グラウンドをランニング中の先輩方に聞こえるよ。実際向こうはこちらに怪訝そうな視線を送っている」告げ口
比企谷「・・・そう、分かった」
比企谷「なら言います。物理の人から『お前達は例の件についてどこまで知っている』という伝言をいただきました」
QB「さすがに嘘は後々に響くんじゃ」ボソボソ
比企谷「そんな解釈ができる発言なら、物理の人に陸上部の話を聞いた時に言わせたよ」ボソッ
QB(だったら問題ない。むしろ上等だ。『例の件』なんて解釈の広げようで、どうにとも言い逃れできるしね)
QB(やはり類は友を呼ぶ)
QB(裁判で例えるなら今、高々と令状が掲げられたってところか)
QB(しかしあまり恐怖を与えすぎるのも良くないよ、逆上でもされたらそれこそ大事だ)
QB(しかしこちらは常に精神的に優位に立たなければならない)
QB(微調整の器量が問われるよ)
QB(しかしこれは本当に魔法少女を絶望させる一連の作業を思い出させるね)
QB(魔女化のノルマもあるが、必要以上に絶望させすぎるのもダメ)
QB(考えてもみなよ、君が魔法少女の素質を有していたとして)
QB(肝心の先輩方が、精神的負荷を負いすぎてなかばおかしくでもなっていたら)
QB(君は契約にとまどうだろう?)
QB「そうだ、つまりものは程度さ、慎重にね」チュウイ
比企谷「そして今もう一個受けている依頼があるんだ」
A「・・・何だよそれは」
比企谷「『奉仕部』の一員としての依頼さ」
B「『奉仕部』?んなもの知るかよ」
比企谷(相変わらずC・D・川崎に動き無し・・・か)
比企谷「奉仕部の顧問はね、生活指導の平塚先生だ」
比企谷「今回は先生から直接命令されて動いている」
一同「!!!!」
比企谷(・・・平塚先生、あなたは実はすごきお人でありましたか)
QB「い、言った側から、爆弾発言してどうするんだい!」
QB(や、やはり意外性というものは、他者から心配も引き起こす)メモ
QB(いやでもさすがにこれは僕でも心配だよ!)
QB「まずいよ、必要以上にみんな動揺してる」アセアセ
QB「これは一端引き上げた方が・・・」
比企谷「・・・」フルフル
比企谷「これはお前が受けた依頼じゃないだろう?」
比企谷「あくまでこちら側の問題さ」
QB(やはり比企谷という人間を突き動かす、大きな感情は存在しているんだ)
QB(そしてそれを僕が理解できる時は来ない)
QB(全く僕達は似ても通じ合ってもないじゃないか)
QB(でも、それでも、やはりこれから君がとる行動は非常に興味深そうだよ)
比企谷(はあ、あとは言う時機の問題だけだ。これで厄介事も片付くな)はあっ
比企谷「・・・」
QB(やたら間を置くね)
比企谷「・・・」ふう
比企谷「正直、お前らが愉快犯にしろ、計画犯にしろ、卑劣な手を使ったにしろ、過失につけこんだにしろ、別にどうだっていいんだ」
QB(きっとそう断定できるのは、絶え間なき調査のおかげだろうね)
比企谷「だから、今からさっさと出頭しに行けよ」
一同「・・・!!!!」
比企谷「だってさお前らのこと正直言って」
比企谷「これっぽっちも興味ないんだよね」ニヤッ
A「お前、お前な・・・。調子乗るのもいいかげんにしろよッッッ」ブワッッッ
ガンッッッ
夕飯食ってきます
保健室
QB「いやあ本当に君は最低の人間だね」アハハ
比企谷「Aの気性が荒くて助かったよ。まさか一回煽っただけで殴っていただけるとは、本当に」
QB「Aの気性が荒いのも分かっていただろう?それにこれは君の予定通りの結末だったんじゃないのかい?じゃなきゃ、あんなに表情に嫌みも乗るまいさ」
比企谷「まあ本当は殴ってくれるまでもっと挑発する算段だったんだが・・・、手間が省けた」
QB「君の使った卑劣な手、ちゃんとお名前があるのさ、知ってるかい?」
比企谷「へえ、名前が。教えろよ」
QB「別件逮捕、さ」
QB「まあ、念のため簡単に説明しようか。例えば『おそらく』麻薬密売組織に通じている人物がいたとする」
QB「警察は『おそらく』彼がクロだとふんでいる。ただ彼が狡猾なのか、はたまた実はシロだからなのか、証拠が何一つない」
QB「そうしたら警察は彼を尾行し続けるんだ。で、何でもいいんだ、飲酒運転なり軽い暴行なり、適当な罪がもし見つかれば」
QB「即、逮捕。そして後は余罪追及をする」
QB「ただこれの小さい方の逮捕の理由が平手打ちとかいう罪に満たないものだったり、シロなのに逮捕される事例やらが続出してね」
QB「冤罪を生みやすい、として国際的に問題視されている、悪名高き逮捕方法さ」
QB「規模は違えど今回だって似たような状況だったろう?」
比企谷「ああそうさ、消去法で犯人も奴ら以外見当たらなかった。追及時のあの態度から意図的犯行だとも気付いたよ」
QB・比企谷「だけど、証拠がない」
比企谷「だからいっそ殴られて、問題をすりかえてやろうと思ったのさ」
QB「いいや、君の卑劣さはもっと下だね。で、結局傷だってほおの裏を切っただけで済んだんだろ?」
比企谷「いや・・・これけっこう深く切れて痛いんだよ。口の中は血の味しかしない。正直話すだけで痛い」イテテ
QB「どうりでさっきの僕の説明につっこみ1つなかったわけだ。それにしても君、挑発の際にやたら間をとったね。なぜだい?」
比企谷「勇気がなくて・・・」
QB「はあ・・・、ダウト」
QB「文脈を読んでくれよ。国語はお得意なんだろう?」
QB「なぜ殴り倒された君は追撃を受けなかったんだい?」
比企谷「・・・」
QB「全くね。僕はレポートのために確認をとりたいだけだ。別に僕は警察のお巡りさんでも何でもないんだよ」
比企谷「はあ、多分、陸上部の先輩方が助けてくれたんだろうな」
QB「ご明察。その通りだよ」
QB「だって君はトラックをランニングして練習している先輩方の一群が、再接近するタイミングを狙って挑発をしたんだからね」
QB「それで君を助けなかったら、彼らの人格を僕は疑うよ」
QB「結論から言えば、君は殴られても被害は最小限になるよう工夫しつつ、殴られても仕方のない程に、えげつない挑発をしようとした訳だ」
QB(ただ、あの程度で手が出たA君はやはり器が小さい)
QB「しかしまだまだ底を知らないね、君のえげつなさは」
比企谷「もういいだろ、これ以上厄介事に付き合いきれなかったんだ」
QB「そうかな?本当にそれだけの理由なのかい?」
QB(それだけの理由だったら、それこそ竜頭蛇尾のレポートになってしまうじゃないか)
QB(レポートの真髄は結論にあり、というのにね)
QB「だって君は先生方の隠蔽計画をことごとく潰すような暴動事件を起こし」
QB「A君だって人を殴ったんだ、少なくとも停学は免れないよ」
QB「それに部活内の騒動だったんだ。仮に学校にA君が復帰できても、部活には・・・」
比企谷「黙れ!そんなこととっくに分かってるさ!」
QB(やはり弱さを持たない人間など存在しない・・・んだね)
QB「ねえ、君の本心を教えてよ。話せば気分も落ち着くさ・・・」
平塚「おい、比企谷」ガラガラ
平塚「来い、話がある」
風呂入ってきます
しかし今日で終わるかなコレ・・・
貴重な冬休みが・・・
自分のタイプ力のなさを思い知って愕然としていただけです
愚痴のようなコメントを書いたことを謝罪します
平塚「まあ、今回はお前に負担をかけすぎたよ、そこは素直に謝ろう」ガシッ
比企谷「と言いつつ、けが人をどこへ連行するつもりですかね」ヒリヒリする
平塚「・・・自分のほおを見ろ」
平塚「・・・痛々しいんだ。無理して愚痴を言うくらいなら喋るな」
比企谷「・・・」
平塚「だからこれから言うことは全部、私の独り言だとでも思ってくれ」
奉仕部部室
平塚「・・・印刷室という可能性は頭に無かったよ」
平塚「それに気づけなかった私は甘かった」
平塚「ただな、事件以前に私はこの問題に気づきうる立場だったと思うんだ」
平塚「私は生徒を指導する教員だ」
平塚「本当に私はその本分を果たせていたか?」
比企谷「先生、・・・痛々しいです。無理して愚痴なんか言わないで下さい」
QB(これが感情、か)
QB(やっぱり僕は宇宙人なんだね。ひどく疎外感を感じるよ)
平塚「残っている気力をふりしぼって、あいつらに事情をきいたさ」
平塚「そしたらあらいざらい全部話してくれたよ」
QB(こうして別件逮捕が成立したのでした、とはとても言える空気ではなさそうだね)
QB(紙の謎の経緯がやっと分かるのか、ずっと引っかかってたんだよね)メモじゅんびっ!
QB(しかし感情のある人間様からすれば、今の僕の行為はとても不遜きわまりなくみえることだろうよ)
平塚「あいつらは陸上部やら物理の講義やらで、物理の人に嫌悪感を持っていた」
平塚「だから嫌がらせのつもりだったらしいんだ」
平塚「テスト問題のコピー中にいたずらをしかけた」
平塚「別の厚い紙をコピー機につっこんだらしいんだ」
平塚「それでコピー機がぶっ壊れるのを狙った嫌がらせ、いや犯行だったらしい」
比企谷「でも『人はいなかった』って」
平塚「複数犯なら一人が気を引く事も簡単だろう?」
比企谷「・・・」コクリ
QB(いつも物理の人は、印刷するとき外のグラウンドを見るため窓を開ける)
QB(そして窓ごしに、陸上部の数人で物理の人に適当に話をふる)
QB(そのスキに残りのメンバーが別の紙をつっこみ撤収)
QB(まあ可能だね、『物理的にも』)
平塚「そしたらそれに印刷されて出てきたんだとよ」
平塚「紙質が違うから、物理の人はまさかその厚紙に問題が印刷されているとは気付かず」
平塚「それをゴミ箱に突っ込んだらしい」
比企谷「で、それが流失したわけですか」
平塚「ああ」
平塚「はあ、独り言はここまでだ。今から『生徒指導』をはじめるぞ」
平塚「なあ、比企谷、お前は自分がやったことをどう思っている」
比企谷「・・・」
QB(被告は黙秘権を行使します)
平塚「なあ、比企谷、なんでお前はずっと一人で、自分の価値観だけにしたがって行動するんだ・・・」
比企谷「・・・」
平塚「なあ、比企谷、私はお前が頼ってもいい存在なんだぞ・・・」
比企谷「・・・」
平塚「何でお前はそんなに意地をはるんだ、お前はバカなんじゃないのか・・・、いやお前は本当に・・・」
QB(意地じゃない、たぶんあれはこだわりも越えたさっそうさなんじゃないだろうか)
QB(冷たいプライドが軸にある人間だっているからね)
QB(時を越えて僕らに叛逆した黒髪の少女、彼女にだって間違いなく冷たい意志と意地が貫徹していた)
平塚「・・・あれから1年経ってもお前は変われないのか」
平塚「いや、どうして1年経ってお前はそんなに変わったんだ!」
QB(ここでも・・・、1年)
QB(まだ僕はこの風変わりな人間の境遇を理解していないようだね)
比企谷「先生、落ち着いてください」アセアセ
平塚「お前は問題児なんだ。だから私に更生の義務があるってのに・・・」
比企谷「でも、例えどんな結果を招くにせよ、自分は自分だと思ってます・・・だから自己流の価値観を貫きます」
QB(ほおは腫れ上がり、眼にはよどみをうかべ、まるで死人がごときこの人物に)
QB(生気を与えているものは一体何なのか)
QB(そうやって人間は心のどこかで各々の正義を軸とする)メモだね
平塚「そうか・・・、お前は・・・」
平塚「もう・・・いいよ、生徒『指導』はこれで終わりだ」
平塚「もうすぐ夜だ、もう家に帰れ。後、明日明後日は土日だ。ちゃんと病院にいけよ」
平塚「今から私はタバコを買ってくる」ガラガラ
QB「・・・あれはそうとう精神的にまいってるようだったじゃないか」
比企谷「何で分かってくれないんだよ・・・」
QB(さっきのメモに併記しておこうか)
QB(時に人々の正義は対立する)めも
QB(それは僕らの宇宙存続という正義も例外ではないわけで)
QB(だからQB君はこれほどまでに疎まれた訳でございます)
道中
QB(タバコの吸い殻が落ちている・・・それも火のついた)
QB(あの非衛生面でも十分、師と仰ぐに値するあの教師の仕業じゃあるまいね。まあ誰とは言いませんが)
QB(細々と立ちのぼる火は儚き命がごとく)
QB(そういえば僕は現在死活問題に『絶賛直面中!』だったね。すっかり頭からとんでいたよ)
QB「そろそろあの解決方法を敢えて選択した理由をご教授願えないかな?」
比企谷「ことわる」
QB「だったら僕なりに推理させていただこうか」
QB「まずあの選択のメリットだ。デメリットはさきほどまでに散々言ったからね」
QB「あの選択肢というものは君にとって、デメリットに勝るとも劣らない価値を有している事になるからね」
比企谷「・・・」
QB(ここでどれほどまで内心を話させるか。まあ僕は、例の殴り誘導よりはうまくやってみせるよ)
QB(何せ僕はその道のプロだからね)きゅっぷい
QB(しかしこれ、魔女の目前でも言おうものなら、僕はおいしくいただかれるだろうね)
QB「まず前提として倫理や善悪の基準は、この状況の場合君に起因するものとする」
比企谷(いきなり変な言い回しをするなあ・・・)
比企谷(何というかこれが例のレポートのための質問だということが見え見えだよ・・・)はあ
QB(関心も呼び起こさない話のつかみなんて論外だからね。どういう形であれ気を引く事は重要さ)
QB「じゃあまず教師陣のメリットだ」
QB「これは検討の余地無く皆無である」
比企谷「・・・」コクリ
比企谷(平塚先生、ご心労をおかけして申し訳ありません)
比企谷(おそらく平塚邸には、今週末いっぱい、空き酒ビン山と吸い殻山がそびえたつことだろう)
比企谷(いやでも原因は地殻変動だ。うん、突然平塚邸の地面が隆起して、たまたまその地面の主成分が空き酒ビンと吸い殻だっただけなんだ)
QB(最初に提供するのは、あたりさわりのない話題である)
QB(さてここからが本題でありまして)
QB「では生徒側にメリットは存在するのか」
QB(ここからが正念場さ)
QB「まず君が陸上部生徒に対して何かしらの利益を与える行動を取ったと仮定したとき」
QB「それはどの生徒に対してだろうか?
比企谷「・・・」
QB「そして『自愛』主義の君が、なぜ自らのほおを突き出すような選択肢を選んだのだろうか?」
比企谷「そ・・・れは」
QB(この問いに対して反応を示したことによって)
QB(『ただ単にむかついたから』とか『自己満足のため』とかいう自己完結系の選択肢は考慮外となった)
QB「君を突き動かした思いは一体なんだったのか?」
比企谷「・・・だからさそれは」
QB(人間は答える意欲の有る無しに関わらず、問いを提示されると答えを考えるものである)
QB(これは多くの少女を、絶望の底なし沼へ引きずり込んだ経験から得た教訓さ)
QB(こうして多くの魔法少女は『奇跡とは何か?』という永遠に解けない問とぶつかり)
QB(悩んで悩んで悩んで、破滅していったのさ)
QB「君にはあの人達がどう見えた?」
比企谷「どうって・・・そりゃあ序列みたいな」
QB(言いたいことを言うことを理性が邪魔するというのなら)
QB(理性が変な方向に働く質問をすればいい)
QB(ほら君はもう僕の術中だ)ニコ
QB「最後に平塚先生と同じ事を聞こうか・・・。君は自分がやった一連の解決をどう思っているんだい?」
今夜じゃ終わらなさそうです
体力がもつ分だけ書こうと思っています
比企谷「なあ、QB」
QB「?」
QB(さあて思う存分内面を語るといい。しかし、何を語るか非常に興味深いよ)
比企谷「そういえばお前は幽霊なんだよな」
QB(ペンは握れているからね、やはり実態のない『幽霊』なんて設定は、よくよく考えればほころびを見せ始めている)
QB(ただそこから敢えて語り出すとはね)
比企谷「そして化けて、ここへやってきた」
QB(まあ向こうの視点から見たら、そういう風になるのかもね)
QB「ま、まあそうだね」
比企谷「『幽霊』なら言わなくても分かるはずさ」ニコッ
QB「・・・」
QB(どういうことだい?幽霊、幽霊だよね)
QB(もしかして『幽霊』って言葉にも何か裏の事情があるんじゃ・・・)
QB(まさか2回も自己紹介が鬼門となるなんてね)
QB「しかし僕は君へ解決の際の心理を聞いたはずだ」
比企谷「・・・だからその心理は幽霊さんなら分かるだろう?」
QB(これは話に致命的齟齬が表れ始めてる)
QB(つい先ほどまで意思疎通ができていた比企谷と、なぜ突然齟齬が?)
QB(これはやはり1年前の出来事の話題が出たことが、原因なのかもしれない・・・)
QB(いやはや、つまり僕の手持ちの情報が決定的に足りなかった、って訳か)
QB(最悪だ。たいしたことも聞き出せない内に家に着いてしまったよ)
QB「・・・おや、家に電気がついているね」
比企谷「・・・」
QB(本物の幽霊さんでも出てきたら、一芸あって面白いよ)
QB(しかし比企谷はなぜ幽霊に固執する?)
ピーンポン
トントン・・・
QB(どうせ親御さんかご兄妹だろうさ)
ガチャン!
眠るべきか否か
おやすみ
明日暇があれば又
QB(仮に、そう、仮にだ、例えばゾンビの風格をまとった人がいたとして)
QB(その人が明らかに普段とは違う嫌悪感を持った眼で、にらんできた場合)
QB(その威圧感と恐怖はうなぎ登りで上乗せされるだろう)
QB(やはり意外性というものは、人間に恐怖を植え付ける)memomemo
QB(だとしたら僕は今、恐怖を抱かなければいけないわけか。まあ感情がないものは、もうどうしようもないんですが)
比企谷「・・・」
???「・・・」
比企谷「・・・」
???「おかえり」
QB(もしかしてほおの傷の事が親に露見する事を、恐れているのか)
QB(だとすればさっきドアを乱雑に開けたのも、さっきから黙ってうつむきがちなのも理解できる)
QB(しかし母親とのあいさつがこんなに淡泊だなんて、よっぽど君の方が幽霊に適性がある気がするよ!)
QB「・・・?どうしたんだい?玄関で立ち止まってさ」
比企谷「・・・」サッ
QB「・・・どうしたんだい?運動靴なんか、手に持って」
比企谷「・・・」トン・トン・トン
QB「運動靴を自分の部屋に持ち込んで、一体君は何をするつもりなんだい!?」
比企谷「・・・」
QB(やはり、生きていればいつか理解不能なものに巡り会う)
QB(魔女化寸前の魔法少女の最期の言葉に、この僕が理解できたものがいくつあったか)
QB(僕はどれだけの数の激情の吐露を聞いてきたが)
QB(一体そのどれほどが僕に教訓として残ったか)
QB(もう少し昔から僕は日記をつけるべきじゃなかったか?)
比企谷ルーム
比企谷「おい、QB」
QB「どうかしたのかい?」
比企谷「レポートはほどほどにしとけよ」
QB(君は、もしかして僕がこれから君の事を本格的に調べることを見抜いているのかい?)
比企谷「明日は早くなる。早めに寝とけ。分かったか、じゃあおやすみ」
QB(明日・・・か何があるのかな?)
QB(ただ、君の約束は早々に破らせてもらうよ)
QB(何せ僕は『約束破り』とののしられた回数なら、全生命の中でも群を抜いているだろうからね)
QB(しょせん約束の重さなんて個々それぞれなのさ)
QB(そしてそれは契約も例外ではない)
QB(まあいいよ。抜き取られた記事は1面とかではなく中小記事ばかりだったからね)
QB(ほぼ確実にスクラップノートは存在するはずさ)
親をかわしながら投稿するので
遅れる可能性が高そうです
QB(さて、ノートを探し出すにあたっての話だが)
QB(昨日までに集まった情報を整理してみよう)
QB(まず、1日おきに新聞記事が一つ切り抜かれる)
QB(それは中小記事がほとんどである)
QB(そして、ここ1週間それがとぎれている)
QB(案外これは重要かもしれないね。なぜ、1日欠かさずしていた習慣が最近とぎれたのか)
QB(そして比企谷は『未解決』を忌み嫌う)
QB(これは昼の事件の動機かも、と僕は推測している。まあ皮肉にも、昼の事件の時と同じで証拠はないけれど)
QB(次にノートが存在するなら、どこかを考える)
QB(まず、机の整理状況から比企谷のノート整理の規則を考える)
QB(彼の机はお世辞にもきれいとは言えないけれど、教科別に教科書ノートは分けておいている)
QB(ならノートは『社会』のブースか『趣味』のブースにあるだろう)
QB(そしてノートは分冊、もしくは厚いノートだ、何せ1年分ある)
QB(それならこの妙に分厚いバインダーノートなんて怪しくないか?)しっぽこうげき!
バサッ
QB(ビンゴ!)
比企谷「ん・・・?」
QB(あっ)
比企谷「気の・・・せい・・・か」ドサッ・・・
QB(部活を終え家に帰って宿題せずに布団にダイブ)
QB(そして至福の睡眠タイム、二度寝も然り。しかし行動だけ見れば平凡にしてきらびやかな青春を送っているように見える)
QB(が、実態は、と。まあこれ以上言うのはさすがに酷か)
QB(いかんせん、とりあえずまずはノートチェックをさせていただきますよ)
5分後
QB(記事選択にあまり隔たりはないね)
QB(詐欺に、交通事故に、ゆるキャラの不祥事なんてのもある)
QB(僕の容姿がゆるキャラを意識したものだというのなら、僕は不祥事なんてレベルじゃないね)
QB(しかしこれ、記事を貼り付けただけのものなのかい)
QB(感想もないんじゃ、『スクラップ』じゃなくてただの『記事の寄せ集め』だよ)
QB(最後に1ページだけ白紙があるね。これは・・・)ペラッ
QB(裏に・・・。これは、一体何なんだい?)
ちょっと昼飯食ってきます
QB(『正』の字が大量に書かれている)
QB(何か、それも多くのものを数えた結果だろうね)
QB(しかし日本では数を記録するときに『正』の字を使う事が多々あるけれど)
QB(これは数が多ければ多いほど『正しさ』が増えるわけだ)
QB(実に皮肉めいているね。これは比企谷の嫌いな数の暴力そのものじゃないか。まさかそんな人の趣味のノートにこんなものが書いてあるなんてね)
QB(しかし、何の数なのか皆目見当がつかない)
QB(しかたない。これは諦めて他をあたるとしようか)
一階リビング
QB(片付いている・・・。不自然すぎるくらいにね)
QB(しかし本当に生活感が希薄な家だ・・・)
二階廊下
QB(家中をさがしたが、めぼしいものは見つからず)
QB(結局、比企谷の部屋のある二階へ戻ってきてしまった)
QB(ん、物置か・・・)
QB(一応目を通す価値はあるかな?)ギイー
QB(これは・・・。ああ、なるほどね。これで全体の半分は理解できた)
QB(レポートの完成にもこれで光明がさした。さて僕ももう寝るとしようか)あくび
翌日 朝7時
比企谷「昨日、今日は朝早いからさっさと寝ろっていったよな?」
QB「はいはい、目が覚めました目が覚めました。しかし、いきなり朝っぱらから氷水かけられるなんて思わなかったよ」
QB(しかし、これで比企谷の濁った眼がますます冷めました)
比企谷「今日は忙しい一日なんだよ」
QB「しかし君の私服は、君の眼に負けず劣らず濁った黒じゃないか」
比企谷「・・・、今はそういう問題じゃないだろう」はあ
QB「に、してもずいぶんな荷物だね、どうしたんだい?」
比企谷「今日必要な荷物だ。それに時間が無い。さっさと出発するぞ」
QB「そういう君こそどうしてベランダにいるんだ・・・、ってそれは昨日の運動靴」
比企谷「しょせんは二階だし、下は庭だ。ここから飛び降りたところでけがはしないよ」
QB「・・・」
比企谷「じゃあ、しっかりつかまっとけよ」
ヒュッ
完結が見えてきました
が、遅れます
読んでいただいている方には本当に申し訳ありません
QB「何でわざわざベランダから飛び降りたんだい?全くもって、真意をつかみかねるよ」
比企谷「うるさい!お前は少しの間、黙ってろ」
比企谷「・・・」ガッ
QB(比企谷はひったくるように今朝の朝刊を手に取ると)
比企谷「・・・」ガチャン
QB(それを自転車のかごへ突っ込み、自分も自転車にまたがった)
比企谷「・・・」ビュン
QB(そして全速力でそれをこぎ始めた)
比企谷「・・・」シャー
QB(こいでいる間、会話一つすることはなかった)
QB(その様子はさながら何かを恐れ、エスケープしているようであった)
QB(やはりここは逃亡とかより、『現実逃避』のニュアンスをふくむエスケープって表現がしっくりくるね)
QB(しかしそんな鬼気迫った表情をされると、僕も命の危機であると言うことを思い出さざるを得なくなるじゃないか)
比企谷「・・・」シャー
QB(やはり人間には心のギアがある)メモしました
QB(そうやって自転車は街をかける)
QB(・・・君は空回りをしていないかい?本当に不安だよ)
橋の上
比企谷「・・・」キッ
QB(なかなか大きい橋だ。それになかなかの大河だね。歩道も広い。ここでなら休憩しても迷惑にはならないだろうね)
QB(しかし土曜の朝だから、道行く人こそ少なかったもの、君を見た人たちはみんな君に対して怪訝そうな顔をしていたよ)
QB「・・・ねえ君はどこへ行くつもりなんだい?」
比企谷「・・・んなもん、最初からあるわけねえよ。・・・完全見切り発車だ」はあはあ
QB(まあね自転車も車だ。そしてそれで歩道を全速力で走った君は、とてもご立派な道交法違反者なのであります)
QB「・・・君に大事なことを訊きたい」
比企谷「・・・分かった。一応耳は通そうか」ぜえぜえ
QB(実は川を横切る橋は生死の境界の象徴だったりする)
QB(まあ三途の川の話はあまりにも有名か)
QB(そんなところで君にこの話をする事を、皮肉に思うよ)
QB「ただその前に話の『枕』をいくつか入れさせていただいても構わないかな?」
比企谷「枕?」
QB「ああ、まずは昨日の件で僕が抱いた『違和感』と、それが『勘違い』になるまでのお話さ」
QB「僕はね、昨日川崎さんの名簿を見たときに違和感を覚えたんだ」
比企谷「そう・・・だったか?」
QB「そうさ、それを君にも言った。そうしたら斜線云々でごまかされたよ」
比企谷「そう・・・だったかもしれないな」
QB「僕が疑問を抱いたのはね、出席欄じゃないよ、それ以前のところさ」
比企谷「じゃあどこに疑問を抱いたんだ」
QB「氏名欄にあった『川崎 大志』って名前さ」
QB「いささか女子の名前らしくないと思ってね。まあ些細な事ではあったんだが」
比企谷「それは」
QB「分かってるよ。あの時、家で対応してくれたのは彼のお姉さんだったんだ」
QB「どうりで家にも上がらせてくれるし、どうにも他人行儀だったわけだよ。実際思い詰めてる張本人は、ずっと部屋にこもっていたのさ」
比企谷「でもそれは陸上部で会った時に気付けたはず」
QB「そう僕も気付いた。で、落胆したわけだ。なんだそういうことか、とね」
QB「そんな思い詰めている張本人が、勇気を振り絞って登校してきてくれたんだ。おまけに部活にまで行った」
QB「そりゃあ彼の努力に免じて、ヒーローさんは最後まで助けてあげないとね」
比企谷「・・・」
QB「これが一つめの枕」
QB「では続いて二つめの枕へいこうか」
QB「まあレポートを書く際に、少し問題が生じてね」
QB「レポートの文体的に君を三人称で書きたいんだが、『彼』とすべきか『彼女』とすべきか分からなかったのさ」
比企谷「・・・」
QB「君は本当に風変わりな人間だよ。制服は男物、口調も男っぽいのに、声に容姿から察すると君は明らかに女の子なんだものね」
QB「僕としては、君のことを記述するのに、『境遇』なんてものまで追加せざるを得なかったわけさ」
QB「実際これは意外とデリケートな問題の可能性もあるからね、今の今まで話題に出せなかったわけさ」
QB(こういう教訓を僕に残してくれた魔法少女もいたのさ・・・)
QB(しかし案外、個性派の魔法少女の事は覚えているものなのか)
QB(しかし話の枕のくせに内容が重くなってしまったよ)
QB「でも、昨日の調査で君の境遇は大体理解できたつもりだよ」
比企谷「もうこれ以上は・・・」
QB「こっちだって時間は差し迫っているんだ。だから話を続けるね」
QB「だから正直、平塚先生の発言を聞いたとき、『変わった』の方にはアウト・オブ・眼中だったよ」
QB「何がどう変わったのかは、日の目を見るより明らかだったからね」
QB「だから、僕の探求心を呼び起こしたのは『1年前』ってフレーズだったのさ」
QB「さて1年前、君に降りかかった事件とは何か」
比企谷「黙れ!!」ほおズキイイン
QB(通行人が一斉にこっちを見た。そうか、彼らに僕は見えていないんだ。彼、ないし彼女の一人芝居に見える)
比企谷「痛っ」ゲホゲホ
QB「まさか傷口が・・・、それに口から血もたれて・・・」
比企谷「もういい、場所を変えるぞ」ポタッ・・・ポタッ・・・
橋の下
比企谷「そこまで分かってるなら、もう全部はなしてやるよ」
QB(君は血を流してまで・・・)
QB(やはり人間は苦痛に歯を食いしばりつつ生きている)メ・モ
夕飯食ってくる
QB「その前に一ついいかい?レポートでは、ヒーローなり彼なり、一応表現的に三人称を使わずを得ない点に関しては、男の方で統一していたんだ」
QB「だから・・・レポートは、ヒロインや彼女、のように女表記で訂正して構わないかい?」
比企谷「・・・」コクッ
比企谷「だったらこちらからも一ついいか?」
QB「なんだい?」
比企谷「このノートを完成させたい」
QB(彼女はかばんから、のりを出す。それで一体何をつなぎとめようとしているのか)
比企谷「これがこのノートの最後の記事だ」
QB(それはそれはそのノートにあってもおかしくないくらいの小さな記事)
QB(しかしこのノートのトリを飾る、それはそれは大きい意味を持つ記事だった)
総武高校前で交通事故 男子生徒一人死亡
QB(やはり人間は過去のしがらみからは逃れられない)
QB「失礼ながらその時、亡くなったのは」
比企谷「・・・比企谷 八幡、・・・大事な大事な、お兄ちゃん」
QB「じゃああの記事の大量の『正』は」
比企谷「交通事故の・・・、死者。毎日毎日線をつけた」
比企谷「多すぎた、多すぎたよ。途中で『正』がノートから氾濫しそうになって」
比企谷「目をつむるような気分で、途中で線をつけるのもやめたさ」
QB(交通事故の死者が出る現実が『正常』であることを)
QB(増え続ける『正』は証明している)
比企谷「このノートは完成したら、この川に流そうと思ってたんだ」
比企谷「この辺で一番大きな川だから。流れに乗って向こうまで届くといいな、と思ってね」
QB(だからあの橋で迷わず停まり、叫んだ後もここに留まったわけか)
QB(ただ君はノートを川に流せても、この事故を水には流せない)
比企谷「それにね、またお兄ちゃんの死因がまたひどいんだよ」
QB(この時、僕は彼女の核心へ近づいたと確信した)
比企谷「1年前のお兄ちゃんは最高の状況にあった。奉仕部という環境はお兄ちゃんに最適だったんだ」
QB(お兄さんも奉仕部員だったのかい)
比企谷「決して万人に愛されるような人ではなかったけれど、近くに真の理解者がいてくれた」
QB(お兄さんは今の君と似ていたのかい?)
比企谷「お兄ちゃんは心をほんのちょっとずつだけれど開いていた、それは近くにいる家族だからなおのことよく分かったよ」
比企谷「お兄ちゃんは変わってた、でもそれでも変えられないものがあった」
比企谷「それは集団的弱者だった、ってこと」
QB(奉仕部の『奉る』は自分を低く言う謙譲表現だ。それで変化したならなおのことそうなんだろう)
比企谷「ここからは、平塚先生からの話。1年前、お兄ちゃんには奉仕部からの依頼があった」
比企谷「それはお兄ちゃんの集団的立場からでは手に負えない依頼だった」
比企谷「だからお兄ちゃんはその時、『能力の上』な当時の部長さんに助けを求めたんだ」
比企谷「お兄ちゃんがその部長さんを見つけたときに、その部長さんは迎えの車に乗り込んでいた」
比企谷「そうしてその車の方へと助けを求めたお兄ちゃんは」
比企谷「・・・急発進した車に轢かれて死ぬの」
QB(だから彼女はもう誰も頼らない)
比企谷「でもそれだけでこの話は終わらなかった」
比企谷「お兄ちゃんの死はね、最後ほとんどなかったことのようになるんだ」
比企谷「それはお兄ちゃんが学校で弱者だったから」
比企谷「そして雪ノ下さんは・・・、この街においての強者だから」
QB(雪ノ下っていう名字の裏の意味って・・・こういうことなのかい)
比企谷「そう、本当になかったことみたいに・・・」
QB(だから彼女は強者のもみ消しを許せない)
比企谷「雪ノ下さんは悪くないかもしれない、でも雪ノ下家は絶対に許せない!!」
QB(君の本質は・・・)
QB「ねえ、今日はお兄さんの命日なんだろう?」
QB「君がベランダから逃げたのは、もしかして1年忌から逃げるためかい?」
比企谷「なんで分かったの・・・」
QB「黒い服、だってそれは喪服じゃないか」
比企谷「・・・」コクッ
比企谷「雪ノ下家の人たちと一緒にお兄ちゃんの死を悲しむなんて絶対に無理だ!」
QB(彼女が叫べば叫ぶほど、口から血が・・・)
QB(君の言葉は言うたびに君の事を傷つけるんだね・・・)
QB(そう、彼女の本質は、私怨なんだろう)
風呂入ってきます
QB「はあ、じゃあ質問してもいいかな?」
比企谷「・・・」コクコク
QB「比企谷八幡っていう人間は、今の君と相違ない人間のような気がするんだ」
QB「君は男物の服を着ているし、いつもの口調だって明らかに男子のものだ、違うかい?」
比企谷「・・・QBはやっぱりこういう時も冷静なんだね」
比企谷「あーあ、なんかお兄ちゃんに向こうで残りの高校生活を楽しんでもらおー、って精一杯マネしてたのに」
QB(口調が突然崩れた!?)
QB(しかし前々からこの子にはなつかしさを覚えてきたけれど)
QB(女口調になると、この子は案外鹿目まどかに似ていないだろうか?・・・しかし皮肉な話だね)
比企谷「ものすごーい肩すかしをくらった気分だよ」
QB「と、突然どうしたんだい君は」
比企谷「だってさ、君の方がよっぽどお兄ちゃんに似てるんだよね」
比企谷「そんな幽霊がさ、お兄ちゃんが死んじゃった1年後に」
比企谷「私にしか見えない形になって私たちの家の前で声をかけてきた」
比企谷「これってすごく小町的にすごくポイント高いと思わない?」
QB(つながった・・・、これが幽霊の真意か)
QB(厄介だね。彼女にとって僕は最愛の兄も同然)
QB(次に僕が何と言うか)
QB(これで僕と彼女の関係が決まるよ)きゅっぷい
QB(昨日だったか、僕は話術を用いて彼女の自白を狙ったね)
QB(今回も、それに準じようか)
QB「ごめんね、僕は君に嘘をついたんだ」
比企谷「!!?」
QB(多少強引でも、話のつかみには関心を引かせるだけのインパクトを)
QB「いつだったか、僕は魔法少女の比喩を君に提示したね」
比企谷「・・・」コク
QB(話題は相手にとってあたりさわりのないものから)
QB(そして昨日、僕は彼女の感情を引き出す誘導尋問をしたね)
QB(しかしそれはもういらない、だって今の彼女はもう誰よりも素直なのだから)
QB(それにこれはもういつかすら忘れたが、僕は彼女にこう助言したね)
QB(『迷ったら厳しめのコースにストレートを』と)
QB(今回は過去の僕の言葉に従わせてもらうよ)
QB「その話は比喩じゃない、実話だ」
比企谷「えっ・・・魔法少女なんているわけ・・・」
QB「その中に宇宙の存続エネルギーを集める『宇宙の使い』がいただろう」
比企谷「・・・いたけど」
QB「それが・・・僕さ。僕は、実のところ君の兄の幽霊でもなんでもない」
比企谷「・・・」
QB「話の枕がたくさん入ったけれど、やっと本題に入れるね」
QB「僕は『幽霊』としてでなく、『宇宙の使い』として君に問おう」
QB「だから君は比企谷八幡のコピーではなく、君自身としての答えを答えるんだ」
QB「比企谷小町」
QB「君は魔法少女という存在の全てのいきさつを知った上で」
QB「なお、全ての不合理、不条理をも覆す『奇跡』を望み」
QB「僕と契約をするかい?」
小町「『奇跡』は本当に全ての願いを?」
QB「・・・」コクリ
小町「理不尽な社会をひっくり返すことも」
QB「ああ可能さ」
小町「怨んだ相手に復讐することも」
QB「ああ可能さ」
小町「・・・せ、生死を覆す事も」
QB「・・・ああ、可能さ」
小町「私は・・・どうすれば」
QB「そうだね、君の心の中にいる比企谷八幡にでも、訊いてみたらどうだい?」
QB(正直さっきの問いにはそうとしか答えようがない)
小町「私は・・・」
小町「私は魔法少女に・・・」
親が年賀状印刷するらしい・・・
ごめんなさい遅れます
いいところなのに・・・
すいません・・・
急いで続き書きます
QB(さて、これはレポートの山場になる事は必至と言ったところか)
QB(しかし全く面識すらない『比企谷八幡』という人間について、ここでは考察しなければならない)
QB(まず彼女は模倣をしていた、となればだ)
QB(彼女にとっての『比企谷八幡的思考』+彼女自身の私怨 があのような行動に結びついたわけだからね)
QB(彼女の私怨がどの程度かも、彼女の返答で推し量ることができようというものさ)
QB(しかし、やはり人間は人とのつながりの中、生きている)
QB(それの生死を問わず・・・ね)
QB(ちなみに現時点での僕の比企谷八幡観に乗っ取って言わせてもらえば)
QB(やはり人間はネットワークという、蜘蛛の巣のようなつながりの中生きている、とでもなるかな)
小町「魔法少女・・・か」
小町「お兄ちゃんはね」
小町「本当に独りだったし、むしろそれを誇ってすらいたよ」
小町「そうして周りを本当に濁って黒くてよどんだ目をしてみるんだ」
QB(そういえば彼女の眼のよどみはもう消えて、もう今ではこちらからでもはっきりと光沢が見てとれる)
QB(君はもしかして・・・、泣いているのかい?)
小町「・・・そうして音も立てずに、現実を見通すんだよ」
小町「・・・そしたらさ本当にお人好しだからさ、他人が傷ついたりたりするとね、人知れず最効にして最悪の手段をとるんだ」
QB(これを聞いて、僕が持ったイメージは『ブラックホール』)
QB(人の眼にも見えない、音一つたてない)
QB(だが、その内面には大きな力を有している)
QB(それに君の眼は十分『黒い穴』という形容が似合うじゃないか)
QB(多分、今、彼女は今は亡き兄の姿をみているんだろう)
QB(ただ、今、現実の中、川の水面で揺らいでいるのは、間違いなく比企谷小町、君の影さ)
QB(まあ、その川が三途の川なら、僕もその水面で同様に揺らいでるんだろうけどね)
小町「やっぱりお兄ちゃんは、バカだ・・・、バカだったよホントに・・・、最期まで」ポロ・・・ポロ・・・
QB(平塚先生もそういえば彼女を『バカ』と評していたね)
QB(その『バカ』にどんな思いが込められているのか・・・、多分僕には理解できないだろう)
QB(不器用って意味か、愚かって意味か、それとも彼の行動に周りが『バカ』と言わざるを得ない何かがあったのか)
QB(やはり、わからないものはわからない)あきらめ
小町「でもね・・・、お兄ちゃんはやっぱり私の事を大切にしてくれてたんだと思う・・・」
小町「だから、質問の答えは・・・、『保留』」
小町「・・・もうちょっとちゃんとこの『今』を生きてみようと思います」
小町「それでも何か叶えたい願いがあるなら、また契約しに・・・、来ますから」ニコッ
QB(まいったね。例として必要ないパートだったから『少女』っていう制限の話をすっかり省いてしまっていたよ)
QB(本来、『成長』されてしまっては魔法少女失格なのさ)
QB(ただワルプルギスの夜を沈めた彼女たちの成長・・・、それは)
QB「まあいい、少し、僕がこれまでに得てきた教訓を総括させていただいてもいいかな」
小町「・・・?」
QB「人間が出会う選択肢には、例え何を選択しても犠牲にしなくてはいけないものがあってね」
QB「今回君が犠牲にするのは、いったんは少しの時間だけだ、それでいいかい?」
QB(実際は彼女は『奇跡』にエスケープする機会を犠牲にする・・・、そしてその機会は永遠に二度と訪れない)
小町「・・・」コクッ
QB(しかしそうして泣き笑いしながらうなずく彼女の姿を見ると、幸せなんて本当内輪のものなんだと思えるね)
QB「そうかい、ならば君のその選択は」
QB「生死の境界をも凌駕し、」
QB「どこかに存在するはずの君の兄の魂に」
QB「・・・きっと伝わったことだろう」
QB(もし、霊魂が存在しているとするならば)
QB(これでご満足いただけたかな?比企谷八幡)
QB(別に比企谷小町自身に素質がさほどあったわけでもない)
QB(それに彼女は独特な精神のもろさを持っているからね、まるで青髪短髪の誰かさんみたいにさ)
QB(やはり彼女が魔法少女になるのは間違っている・・・、と結論づけようか)
QB(あの子達が、友情や自身の幸せのために宇宙エネルギーの生産を犠牲にしたのも)
QB(今ここで、彼女が生きるために奇跡を犠牲にしたのも)
QB(何もとがめることは無い。全て立派な選択さ)
八幡「『常に何かを犠牲にしなければならない』ってんなら」
八幡「『常に何かが犠牲にならなければならない』んだろ?」
八幡「だったら俺はお前の意見に大賛成だぜ」
QB「ん、・・・誰だい?」
QB(気のせい・・・か)
道中 自転車にて
QB「しかし、君はこれから先、全くのノープランだったのかい?」
小町「いやー、法事って明日の朝一杯まであるからねぇ。とりあえず水と食料だけは持ってきてるんだけど」シャー
QB「・・・これからどうするのさ」
小町「あ!名案思いついたよー」
平塚家
ピン・ポンッ♪
平塚「・・・はい」ガチャ
小町「先生やっはろー♪今日も相変わらずお酒とタバコ臭いですなー」
QB(彼女はもう・・・問題ない)
QB(レポートももう完成した)
QB(しかし本当に僕は彼の幽霊みたいだったね)
QB(彼女の成長だけ見届けて去る・・・なんてさ)タンッ
平塚「酔いがまわりすぎておかしくなったのか、私は?だいたいあの比企谷が」
小町「まあいいですからー、先生、家あがってもいいですかー」にひー
平塚「・・・私は酔いざましに少し寝てくるよ」
小町「よし、今夜の寝床ゲットだぜ!」ガッツポーズ
小町「あれ・・・QB?」
小町「ねえ、返事してよ、QB」
小町「きゅう・・・、べえ?」
とある路地
QB「全く、本部から連絡の無い時点で薄々こうなるとは、分かってたんですけどね」
したっぱ×3「・・・」銃ガチャン
QB「簡単な集団論だ」
QB「失敗したときにペナルティーが無いと集団というものは成立しない」
QB「ただそれは低レベルな集団だけの話だから、と信じていたのにね」
QB(まあ確信のない希望を抱いて裏切られるのは、安易に希望を盲信した方が悪いっていうのが)
QB(魔法少女のセオリーってものですが)
QB「最期に本部と話がしたい」
QB「いいだろう?だって僕は現場の中じゃ、ずいぶんの古株だよ?」
QB「その教訓を教えるんだ。そちら側にも利益に十分なりうるよ」
QB(やはり僕は最期の弁論をすることになった、・・・最悪だね)
本部「・・・」
QB「一応感情についてのレポートです。まああなたがたが検閲して、他人名義の論文として僕の仲間に伝達するんでしょうが」
QB「まあ最期に直訴まがいのことをさせていただきます」
QB「今回のワルプルギスの失敗、とでも命名しましょう、それで学んだことは」
QB「もう少し契約・及び契約方法の慎重化を図るべきだ、ということです。やはり感情は僕達の想定よりずっと重かった」
本部「・・・」告げ口
したっぱ「・・・」ダン!!!
QB(どうせこの発言は犯罪者の哀れな最期のセリフ、とでもなるのだろう)
QB(全く意見を言っただけでこれさ。本当に僕は何のために契約に精を出したのか)
QB(しかしどうにもこの世の中は理不尽だ)
QB「全く・・・わけが分からないよ」ドサッ・・・・・・
八幡「そうか?お前がただ現場の末端労働者だった。弱者だった。だから撃たれた。それだけの話じゃないか」
QB「ずいぶんと言ってくれるね。そういう君こそ偉そうに口だしできる立場なのかい?」
八幡「いいや、さっきの射殺までの弁明は潔すぎたね。最後に泥臭く生きれたかもしれなかったじゃないか」
QB「あいにく、僕は仕事柄薄い希望は信じない性分なのさ!」
QB(生きていれば必ず誰かと出会う それは死んだ後も例外でないのだろうか・・・?)
それから時は流れ・・・
こども「ひきがやおばさーん、あそぼー?」
小町「すこし待ってね。お線香立てないといけないから・・・」なでなで
こども「えーやだー。あそぼーよ」
小町「じゃあおもしろい話をしましょうか」
小町「この写真に写ってる人がいるでしょう?」
子ども「うん!このこわそうなひとでしょー」
小町「その人が死んでから1年がたとうかって夜にね」
小町「家に帰ったら、真っ白い幽霊のようなかたちをした、お兄ちゃんそっくりにひねくれた子がいたの」ニコッ
(完)
やっと終わった
初SSご支援感謝します
また冬休みに暇があったら二作目も念頭に入れて・・・(今回空気だったガハマさんをだしてみたい)
あと感想等いただけると幸いです!(今後の参考にさせていただきます)
QB(やはり君たちを突き動かす感情は、『私怨』なのかい?)
QB(しかしこれが敵討ち、というものなのだろうか)
多くの感想、意見、大変ありがたいです。感謝します!
このSSまとめへのコメント
面白かったぜ‼
それにしても、ヒッキーが死んでるとはなぁ。小町の気持ち考えると泣きたくなるわ
SSで初めていい意味で裏切られた
というか完全だまされた
完全にヒッキーかと思ったが小町とは・・・
すごいトリック
これはいい叙述トリック