キリスト「二刀流、スキル……?」 (24)
勃ったら書く
アスナ「キリスト君スイッチ!」
キリスト「バーチカル・スクエア!」
ザシュッ
コボルト「グワァァアア」
アスナ「一発で!?キリスト君すごいじゃない!」
キリスト「たまたまいい乱数を引き当てただけだ。俺のレベルじゃまだ届かないさ」
アスナ「そんな事言って、あなたまた隠れてレベリングしてたでしょ」
キリスト(ギクッ)
キリスト「な、なんの事かな」
アスナ「ふ~ん、しらばっくれるんだ。あやしいわね。ここのところキリスト君って人を避けてるように思えるのよね」
キリスト「そ、それはだな。前の階層のラスボス戦でうっかりラストアタックボーナス取っちゃって周りの視線が痛いからだ」
アスナ「確かにそんな事もあったわね。でもそれっていつもの自意識過剰でしょ?みんな言うほど気にしてないと思うけど」
キリスト「ラスボスのドロップしたアイテムがちょっとややこしいもので」
アスナ「その口振りだと、相当すごいものを手に入れたようね。……当然、見せてくれるんでしょうね?」
キリスト「あ、いや……ドロップしたのは素材なんだ」
アスナ「素材……?」
キリスト「どうやら複数のアイテムを合成するクエストがあるらしい。報酬が何かは完成してからのお楽しみって事で。じゃあなっ」ザッ
アスナ「キ、キリスト君⁉︎ 逃げたわね!」
キリスト(アスナにはああ言ったものの……。この先どうすればいいんだ)
キリスト(俺の名前は桐ヶ谷和人。根っからの廃人ゲーマーで訳あってSAOというVRMMOデスゲームで囚われの身となっている)
キリスト(ゲーム開始時、俺はいつも使っているHNのキリトを入力しようとしたところ、謝ってキリストと入力してしまった)
キリスト(すっかりキリストで定着してしまったが、今ではかなりそれを後悔している)
キリスト(後にそれが自分の運命を大きく変える事になるとは、当時の俺もよく分かっていなかった)
キリスト(ゲームが開始されて始めてやってきた12月。明らかに俺を殺そうとしているやつらが多勢いる)
キリスト(連中はどうやらキリストの名を持つ俺を殺せばクリスマスが本当に無くなると思っているらしい)
キリスト(ここ最近はなるべく目立たないように行動をしていたが、階層ボスのレベルが上がってどうも最前線を離れづらくなってしまった)
キリスト(そんな中、遂に先遣隊が全滅するクエストが現れた)
キリスト(俺は気付かぬ内に入手していた二刀流のユニークスキルを完成させようと急ぐものの、
これ以上目立って命の危険に晒される事へ恐怖を感じ、葛藤していた)
シリカ「浮かない顔をしてどうしたんですか?キリストさん」
キリスト「わ、悪い。ちょっと考え事をしていたんだ」
シリカ「いきなり呼び出したのはそれが理由なんでしょうか」
キリスト「あぁ、そうなんだ。聞きたい事があって」
シリカ「何でも聞いてください!キリストさんにはいつも助けられてばかりなので、少しでもお力になりたいです!」
キリスト「そ、そうか。ところでシリカ。クリスマスはどうするんだ?」
シリカ「へっ、そ、それって……//」
いい加減きずけよ
おれはてめーのために演技してるわけじゃねーんだよ。
わかるか?
てめーが演技でねーからのひがみで、声優に慣れねーかのらのひがみにしか聞こえーんだよ。
俺を「ごり押ししても」メリット無いってきづけよ。
俺をごり押しして、何のメリットがあんだよ?答えてみろよ!?
あぁ!_?
むしろ、誰をごり押ししても「売りあげにかんけーし」
「売り上げにかんんけーあるかねーかで」「判断するんなら」「てめーは声優に慣れねーし」「批判する権利もねーよ」
この記事は朝の五時で消すからな。
悔い新ためろ、出来損ない。
「心理を言ったまでだ、よく考えろ」
「意味を」
これは役者全員が考える正論だよ。
今一度意味を考えろ。)
シリカ「わ、わたしっ、全然空いてますよ!フリーですフリー!」
モジモジ
シリカ「男の人からこんな事を聞かれるの始めてでちょっとビックリしましたが、わたし、心の準備は出来てますので!」
キリスト「ほ……本気か!?」
シリカ「はい!も、ももももちろんですよ!わたし……その、はじめてなので不束者ですがよろしくお願いします!」
キリスト「シリカ……、お前も俺を殺すつもりだったのか!」
シリカ「はいー⁉︎ち、違いますよ!キリストさんがわたしを急にデートに誘うって言うからっ」
キリスト「…………」
シリカ「…………」
キリスト「すまん、少し勘違いをさせてしまったようだ。デートのお誘いじゃないんだ」
シリカ「……そうだったんですか……すみません、うれしくてつい舞上がってしまいました」シュン
キリスト「かくかくしかじかこういう訳なんだ」
シリカ「キリストさんを殺してクリスマス中止ですか……。そんな事考えた事もありませんでした」
キリスト「クリスマスはそんなに憎まれるものなのか?それを聞きたかった」
キリスト「シリカ、お前もクリスマスが憎いか?」
シリカ「……わたしはキリストさんを殺そうとはしません。でも、そういう気持ち、分からなくもない……と思います」
キリスト「クリスマスは……、みんなで祝うものじゃなかったのか……?」
シリカ「それはあなたが幸せな人だからです!」
キリスト「……!!」
シリカ「キリストさん。考えてもみてください。クリスマスは一年に一度、必ずやってきます。それは嬉しい事です。楽しい事です」
シリカ「でもそれって……、よく考えたらヘンじゃないですか?クリスマスは機械的にやってきますけど、人間ってそんなに機械的に嬉しい気分になれますかね」
シリカ「嬉しい時に喜び、悲しい時に悲しむのが人間なんです。そんな都合よく……一年に一回決まった日に幸せな気分でいられる訳ないでしょう?」
キリスト「シリカ……」
シリカ「わたしはキリストさん、あなたの事が好きです。グスッ。でもそれと同じくらい眩しくて妬ましいです。わたし、知ってます。あなたがアスナさんと付き合っていることを……!!」
キリスト「……!!」
シリカ「それを知るまではわたしもクリスマスが楽しみで仕方ありませんでした。ずっとキリストさんとの予定をあれこれ考えたり……」
シリカ「でも……、それを知ってからわたしはクリスマスを楽しめなくなりました。クリスマスを祝える人、クリスマスを祝えない人。わたしには世界の半分しか見えていませんでした……!!」
キリスト「俺には……、二刀流スキルを振るえないかもしれない」
シリカ「キリストさん……」
キリスト「俺には何も見えていなかった。SAOプレイヤーはこうしている今も病室のベッドで仰向けになっている。でもそれでいつまでも安泰という訳じゃないんだ」
キリスト「SAOにはタイムリミットがあるんだ。現在の医療技術で俺達の生命維持が追いつかなくなった時、俺達は死ぬ。」
シリカ「そんな事ありません!きっと、きっとキリストさんがSAOを攻略してくれます!」
キリスト「俺ではダメなんだ……!!」
シリカ「どうして……‼︎」
キリスト「SAOプレイヤーの命は攻略組に掛かっている。もっと言えば、窮地に立たされている今、俺の強力な二刀流スキルに全てが掛かっている。
俺は全ての人の為に剣を振るわなければならない。でも……」
キリスト「アスナを愛してしまった日から、俺はアスナしか見えなくなってしまった」
シリカ「最低ですよキリストさん……。ひぐっ。でも、そんなあなただから好きになりました」
クリスマス当日、第X層攻略ラスボスの間
アスナ「キリストくーーーーーーーーーーーーーん‼︎」
キリスト(アスナの絶叫が遠くで聞こえるような気がする。すぐ側にいるのは分かっているのに)
キリスト(X層ボスは強力な麻痺エフェクトを付加するタイプだった。それは到底現在のレイドよりも遥かに巨大なレイドを想定したもの。現在の攻略組ではまるで歯が立たなかった)
キリスト(扉を閉じられて逃げ場を失った俺達は1度の攻撃チャンスを作るたびに仲間を少しずつ犠牲にしていくほかになかった)
キリスト(そして残されたメンバーは俺とアスナ二人のみ。最後の攻撃チャンスで俺は日本の剣を死に物狂いで振るっていた)
キリスト(めまぐるしく鮮血のような赤いダメージエフェクトが俺の視界を埋めつくす。それが敵のものなのか自分のものなのかもはや俺には分からない)
キリスト(ただ狂ったように2本の剣を振るい、敵のHPを削り切るまで感覚を研ぎ澄ます。自分が動く事で敵の鋭い爪や棘が体を引き裂き、もがけばもがくほど受ける傷は増えていく)
キリスト(敵のHPバーは残り数ミリだが気の遠くなるほどの大きさに見える。しかしここで俺は届くと確信し、口元に笑みを浮かべた)
キリスト「……スターバーストストリーム」
キリスト(それは二刀流スキル究極の奥義。生命と引き換えに最後に閃光の一撃を敵に与える。
キリスト(思えば俺は二刀流スキルを知らない内に習得していた訳ではなかった。俺は確かにこのスキルを他人が使うのをこの目で見た)
キリスト(これまで最前線攻略組では幾度となく死線を潜り抜けてきた。しかし代償が何も無かった訳じゃない。攻略組が窮地になる度に誰かが死んだ)
キリスト(俺は何度も死を目の当たりにしている内に気付いた。死に際のプレイヤーが最後に見た事も無いほどの力を発揮する事に)
キリスト(二刀流スキルは一定のパターンでプレイヤーからプレイヤーへ伝染していくスキルだったのだ。そして気が付けば次は俺の番となっていた)
キリスト(二刀流スキルは伝染を繰り返す度に強化されていく。恐らくこのスキルこそがSAO攻略の最大の鍵。プレイヤー間で経験値を受け継ぐシステム)
キリスト(だが強化された俺の二刀流スキルでも全階層をクリアするには心もとなかった。俺には決定的に欠けているものがあったから)
キリスト(二刀流スキルはナーヴギアからプレイヤーの感情を検出し、他者との繋がりの強さをスキルの強化値へ変換していく)
キリスト(他人の気持ちに気付けなかった俺はこのスキルを使いこなす事が出来なかった。二刀流スキルは世界を見渡す広い視野が必要不可欠なのだ)
キリスト(ここで敵を倒し、せめて情報、そして心ばかりの意思を伝えたい。それが全SAOプレイヤーの命運を左右する)
キリスト(この星の光は一瞬のものかもしれない。だが、誰かの心の中で永遠に輝き続けてしまうかもしれないんだ。気が付けば俺は叫んでいた)
キリスト「ーーうぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
キリスト(目も眩むような閃光の中で、俺は確かに敵の断末魔を聞き届けた)
シリカ(キリストさんが戦死してから数ヶ月後、レベリングという修行を終えたわたしは最前線の階層に立っていた)
シリカ(わたしの腰には短剣と長剣が一本ずつ。二刀流スキルは更なる進化を遂げて非対称二刀流スキルへと変化していた)
シリカ(キリストさんが遺していったのは情報だけじゃない。経験値という名の頼りになる戦力。そして強い意志)
シリカ(キリストさんは二刀流スキルをひた隠しにしていたけれどわたしは隠さない。何故ならわたしはキリストさんから託されたこの力を誇りに思っているから)
シリカ(キリストさんは最後にメッセージで二刀流スキルのマニュアルと共にこんな言葉を遺してくれていた)
シリカ(二刀流スキルは人と人との想いを繋ぐ強力なシステム。その広い視野と思いやりのある優しい心を忘れないでほしい)
シリカ(そして最後に彼はこう付け加えました)
『本当にキリストという名の敵がいたら、その時は全力で殺しにいけ』
シリカ(ごめんなさいキリストさん。わたしにはあなたとの約束を全て守ることが出来ません。
だって、あなたの事を好きになったその日からわたしはあなたのことしか見えていないんです。
他の多くの人の為に戦うことなんて、出来ません)
シリカ(偶然か奇跡かは分からないけれど、今日戦う敵はどうやら『キリスト』という名前らしい)
シリカ(それはサンタの服装をしたトナカイのモンスターで、倒すと蘇生アイテムをドロップするという情報が事前に入ってきた
わたしはそのアイテムでキリストさんを蘇生出来ないかと淡い希望を抱きながら戦地に赴く)
シリカ(キリストさん。今日はわたし、あなたの為に戦います。だって、わたしが見たあなたの強さはそういうものだったから)
シリカ(わたしにはキリストさんを殺してクリスマスを終わらせたい人の気持ちが分かります。
でも、それ以上に殺されてでも意志を貫きたかったキリストさんの気持ちが分かる、そんな気がするんです)
シリカ「待っていてください、キリストさん」
終わり
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