イアン「ん?いや…現に建造しただろ」
刹那「違う、これだ」
イアン「…お前が雑誌を見るとは珍しいな、どれどれ…」
刹那「106ページのホビー特集の部分だ」
イアン「……MS少女?…これは…フィギュアか、ふむ…フラッグの装甲のようなパーツを装着しているな」
刹那「次のページにはティエレンやイナクトも載っている」
イアン「………」
刹那「もう一度言う、ソレスタルビーイングならば創れるはずだ、ガンダムを」
イアン「……あのな刹那」
刹那「創れるはずだ」
イアン「………」
刹那「……創れるはずなんだ」
イアン「…わかった、作ってみるとしよう」
刹那「っ!!」
イアン「そんな懇願するような眼をされたらやらん訳にもいかんさ…ま、良い息抜きにもなるだろう」
刹那「感謝する」
イアン「…さて、材料は…大したものではないから大丈夫か、問題はモデルだな」
刹那「……モデル?」
イアン「流石にキャラクターのディテールを考えるのは専門外だからな、機械的な部分なら元のガンダムのデザインがあるから大丈夫だが」
刹那「誰でも構わない」
イアン「ならトレミーのクルー辺りから適当に選んでも構わんか?」
刹那「問題ない」
イアン「…ふむ…ならフェルト辺りの写真を撮って来てくれ刹那、参考になる物がないと造形が崩れかねん」
刹那「了解した、刹那・F・セイエイ、目標を撮影する」
イアン「バレないようにな、念のために」
刹那「…了解した、刹那・F・セイエイ、目標を盗撮する」
イアン「……………………ああ…うん、ほどほどにな?」
………
刹那「資料の調達に成功した」
イアン「早いな、まだ30分も経っておらんぞ?」
刹那「丁度自室で睡眠中だったのが幸いした」
イアン「……よく部屋のロック外せたな」
刹那「俺達はガンダムマイスターだ」
イアン「……トレミーの個室のロックナンバーはマイスターでも知らんだろ」
刹那「ティエリアならトレミーの全システムを把握している」
イアン「…どうやってまるめ込んだんだあいつを!?」
刹那「最近のティエリアは人間の感情とそれから来る行動に興味を示しているらしい」
ティエリア「その通りだ」
イアン「いたのかお前」
ティエリア「刹那がフェルト・グレイスの部屋に侵入したいと聞かされた時は正直迷ったが協力すると決断した」
イアン「なんでだ?」
ティエリア「夜這いという行為を観測するチャンスだと思ったからだ、実際はそんな事は起こらなかったがな」
イアン「……………」
刹那「夜這いとはなんだ?」
ティエリア「男女の逢い引きの事だ」
刹那「……?モデルの撮影が何故それに繋がる?」
イアン「……こいつらはまったく」
ティエリア「とにかくだ、刹那のやろうとする事にも興味があるからこうして同行している」
イアン「…そ、そうか」
刹那「それより資料の確認を頼む」
イアン「あ、ああそうだな…見てみない事には使えるかどうかわからんからな」
ティエリア「使えなければもう一度強行盗撮を敢行するまでだ」
イアン「…トレミーのクルー内の不和に繋がるからやめてくれ」
刹那「それで、どうなんだ」
イアン「…ちょっと待ってろ…えーと…………ぶふぉっ!?」
ティエリア「どうした?」
イアン「…なんで裸なんだ!!しかも見る限り無理矢理脱がしただろこれは!?」
刹那「ああ」
イアン「あっさり認めるな!!ちょっとは罪悪感とかないのか…いや起こさないでよく脱がせたなお前!?」
刹那「先代ロックオンから対象を起こさずに衣服のみを脱がす技術を指導されていた、もしもの時に役に立つだろうから、と」
ティエリア「実際この技術を行使するシチュエーションではなかったのだろうが有益であったのは確かだ」
イアン「何に使うんだその技術は…」
刹那「そんな事は今はどうでも良い、資料が使えるのかどうかの判定を貰いたい」
イアン「……使えるよ、身体のラインなんかはっきり…いやもうデッサン用のヌード資料レベルだし」
刹那「そうか」
ティエリア「やはり全身像を撮影したのは正解だったようだ」
イアン「むしろやり過ぎだ」
刹那「次のミッションは?」
イアン「自室待機だ、出来上がるまで待ってて良いぞ」
ティエリア「それだけで足りるのか?」
イアン「問題ないな、後は作るだけだし素人に下手に手を出されたくない」
刹那「以前にも製作した事があるのか?」
イアン「十代の頃にな、そういうのにハマッていた時期もあるってだけだ」
ティエリア「ならば経験者に任せるのがこの場は最適か…了解した」
刹那「頼む」
イアン「任せておけ、すぐに完成する」
…………
イアン「刹那、完成したぞ」
刹那「っ!!」ガタタッ!
ティエリア「早いな…作業に取り掛かったのは昨日だと言うのに」
イアン「まあな、徹夜を覚悟さえすればこれくらいは当たり前だ」
刹那「見せてくれ、あるのは格納庫か?」
イアン「いや持って来てる、これだ」コト
ティエリア「……ほう、OOか」
イアン「間接は内蔵式で不自然な継ぎ目を除去、素材も最新の技術で作られた特殊シリコンで質感もより柔らかで装甲部分をパージすると出る胸の部分も色彩済みついでに縞も脱がせられてその中も一応造形してある」
刹那「………」
ティエリア「随分と細かい…これを一晩で完成させるとは流石だ」
イアン「こういうもんは妥協が一番の敵だからな」
ティエリア「刹那、君の感想は?」
イアン「とりあえずはお前の注目通りのはずだ」
刹那「…………違う」
ティエリア「刹那?」
刹那「違う!!これは…ただの玩具でしかない!!」
イアン「え、あ…まあそうだな?」
刹那「俺が望んだのは…ガンダムだ」
ティエリア「……つまり、サイズに不満がある、と?」
刹那「………」コクリ
イアン「………初めから言ってくれよそれを」
ティエリア「刹那、イアンに説明した際にただホビー雑誌を見せただけでは確かにこうなる…対話は必要だと悟ったのだろう?」
刹那「……すまない…ティエリア・アーデ」
イアン「…はあ…やれやれだ」
…………
フェルト「………え?」キョトン
イアン「…もう一度説明するぞフェルト、刹那がちゃんとした恋愛を経験するチャンスだ」
フェルト「はぁ…それで、私はどうすれば?」
イアン「現在OOの装甲部分を模した軽量カーボンをお前のサイズに合うように調整している、完成したらそれを来てくれ」
フェルト「あの…なんでそんなコスプレみたいな事…」
イアン「…刹那が望むからだ」
フェルト「……それは」
イアン「…あいつの人生は戦いしかなかった、そしてそれはこれからも続く、それがソレスタルビーイングであり…ガンダムマイスターであるって事ではあるがな」
フェルト「………」
イアン「だが…そんな刹那が初めて女体に興味を持ったんだ、MS少女だがな。
戦いに明け暮れるだけが人生ではないと知るまたとない機会があいつに来たんだ…なら、出来る事をしてやりたいんだよ」
フェルト「………そんな役目を私なんかで」
イアン「フェルトだからだよ、お前が刹那を悪く思っていないって知った上で頼んでいるのだからな」
フェルト「…………」
イアン「付け入るような事だと非難されるのは承知の上で、それでも刹那の為に出来る事をしてやって欲しいとお願いしている…頼む、フェルト」
フェルト「………わかった」コクリ
…………
イアン「刹那、今度こそ完成だ」
刹那「…っ!!」ガタタッ!
ティエリア「今度こそ大丈夫なのだな?」
イアン「ああ、完璧だ」
刹那「では格納庫へ…!!」
イアン「大丈夫だ刹那、ちゃんと連れて来ている」
刹那「……なに?」
フェルト「……じゃ、じゃきーん…!!」ブンブン
ティエリア「…フェルト・グレイス、何をしている?」
フェルト「…えっ…と…び、ビームサーベル」ブンブン
刹那「…………」
フェルト「…う…うぅ…///////」ブンブン
ティエリア「…………」
イアン「かわいいだろう?恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているのにきちんとやろうとする所がかなりポイント高い」
刹那「…………」
ティエリア「…ふむ、物事には未熟で拙いものが逆に需要があるという現象を追求したのか、深いと言わざる負えない」
フェルト「…恥ずかしい…うぅ」ブンブン
刹那「………ぅ」
ティエリア「……ん?」
刹那「…違う!!」
フェルト「……え?」ブンブン
イアン「………今度はなんだ」
刹那「フェルト・グレイス!!お前はガンダムか!?」
フェルト「…え…う、うん今はそのつもり」ブンブン
刹那「違う!!お前はガンダムではない!!」
フェルト「あの…刹那?」ブンブン
刹那「お前は……人間だ!!ガンダムでもMSでもない…!!」
イアン「…刹那?お前がMS少女を…ガンダムっぽい女の子を望んだんだぞ、それを…」
刹那「っぽいじゃない、ガンダムだ」
フェルト「…………」
イアン「……ガンダムじゃ抱き合えも愛を育む事も出来ないぞ刹那、」
刹那「そんな事はない」
イアン「………」
刹那「ガンダムはMSだ、そしてMSは人間ではない」
ティエリア「…つまり、ただの人間のコスプレには用は無いと?」
刹那「ああ」
フェルト「」ガーン
イアン「……すまないフェルト」
フェルト「……うぅ」
刹那「フェルト・グレイス、その格好は常識的に奇抜な部類に入る、早く着替えた方が良い」
フェルト「………」ジワッ
ティエリア「刹那・F・セイエイ、君はもう少し女性の扱いを学ぶべきだ」
刹那「…そうか、すまないティエリア・アーデ」
ティエリア「僕に謝ってどうする!!」
…………
ロックオン「……そんな事あったのか?」
アレルヤ「通りでフェルトが塞ぎ込んでるはずだよ…」
イアン「ミスとは言えフェルトには悪い事をした…」
アレルヤ「悪いのは刹那だけどね」
ロックオン「しかし刹那の頼みとは言え…新たにガンダムは作れるねないだろ?」
イアン「太陽炉も現存の機体だけの分しか無いからな…まあやろうと思えばGNパックで動力はなんとかなるが…」
アレルヤ「……イアン、もしかして作りたい?」
イアン「本音を言えば作ってみたいとは思う」
ロックオン「………マジかよ」
イアン「だが独断で建造出来るほどの権限もないからな…刹那にはなんとか諦めて貰うしかないだろ」
刹那「なら今ある機体を改装すれば良い」
イアン「刹那!?」
ロックオン「なんだ聞いてたのか?」
刹那「ああ」
アレルヤ「盗み聞きは感心しないよ?」
刹那「偶然だ」
イアン「…刹那、さっきのは本気か?」
刹那「ああ」
ロックオン「…どんだけ執着してんだよお前」
刹那「可能なはずだ」
イアン「……難しいな、フレームから設計しないと機体のバランスがめちゃくちゃになるぞ」
刹那「…………」
ロックオン「無茶言わないで諦めろって、別にガンダムに拘る必要無いだろ?同じサイズの人間で我慢しとけって」
アレルヤ「これ以上はイアンが困るだろ?」
刹那「………わかった」
イアン「……そうか」
刹那「なら頭だけで良い」
イアン「………」
ロックオン「………」
アレルヤ「………」
刹那「頼む」ペコリ
イアン「………」
ロックオン「…刹那…お前…」
アレルヤ「なんでそんなに必死なの…」
刹那「………俺にはガンダムしかないからだ」
ロックオン「だからってMSに欲情すんなよ…」
アレルヤ「以前からまさかとは思ってたけどここまでとはね…」
刹那「………イアン」
イアン「………予備の交換部位として製作するだけだ、常時その部分を着けたりはしないからな刹那」
刹那「っ!!」
ロックオン「……まじかよ」
アレルヤ「イアン…」
……そして
ブシドー『頂くぞガンダム!!』ブンッ
刹那「……くっ!?」バチバチバチ!!
ブシドー『手応えは無しか!!だがメインカメラは潰させて貰った!!』
ロックオン「させるか!!刹那、一旦後退しろ!!」キュインキュイン!!
ティエリア「僕達が抑える間に応急処置をしろ!!」
刹那「了解した、イアン!!」
イアン「…わかっている!!早くトレミーに戻れ!!メインカメラとオーライザーを出す!!」
沙慈「刹那!!」
イアン「OOのメインカメラは即座にパージ出来るように改造してある!!やれ!!」
ブシドー『っ!!ドッキングするつもりか!!それでこそだガンダム!!』
刹那「沙慈!!」
沙慈「了解!!ドッキングと同時にメインカメラの換装を行う」
ハロ「ダブルオーライザードッキングオーケー!!ドッキングオーケー!!」
刹那「ダブルオーライザァァァァァァ!!!!」
ブシドー「……なんと」
OOライザー(フェルト顔)「じゃきーん」
フェルト「」
スメラギ「なにあれ」
ミレイナ「おっきいグレイスさんになったですぅ」
ラッセ「…じゃきーんて…フェルトの声だったな」
フェルト「」
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