インデックス「アルバイトをするんだよ!」上条「なん…だと…!?」 (15)


※とある魔術の禁書目録の二次創作です。

※時系列はアニメ一期終了前後です。

※オリジナルキャラ及びオリジナルの設定が多々あります。

※カップリング要素はほぼありません。


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タイトルからして上インと思ったのに
カップリングなしとは、思い切ったな
とりあえず期待してる

【零】


自覚はある。
理解はしている。
予測もしている。

そして、未来は決して変わらない。

私にあの子は救えない。
私をあの子は求めない。

けれども、それでも、私はあの子を―――。

仮初の青布を被る女は、願い続けた。



(―――天よ、罪の許しを与えたまえ)


【一】

九月二日 早朝


「……はい?」

唐突に放たれたインデックスの宣言に、上条当麻の反応はワンテンポ遅れた。

「だからね。わたし、アルバイト、というものをする事にしたんだよ!」
「……へぇ」

テーブルの上を占領している大量の夏休みの宿題を前に、
さして頭がいいとは言えない脳みそをフル回転させていたのも一要素ではあるが、
少女にはこれっぽっちも似つかわしくない、というか、縁もゆかりも無さすぎるに発言内容に驚愕し、
上手く言葉が思い浮かばなかったのが上条の反応が鈍くなった要因だろう。
やれどもやれども終わぬ宿題地獄に追われ過ぎて、
自分でも気づかないうちに現実逃避の空耳でも聞いてしまったのだろうか、とも思ってしまったのはご愛敬。

何とも言えない微妙な雰囲気が漂う室内に、一人、インデックスだけが納得がいかないと眉間に皺を寄せた。

「反応が薄すぎだよ、とうま」

むすぅ、と頬を膨らませ、想像していた反応じゃない、とインデックスは物言いたげな視線を上条へと送る。

「いや、だって。なあ?」
 
乾いた笑いが浮かぶ。仮に先ほどの彼女の発言に咄嗟に返せる人物がいるならば、
それは反射神経に特化した超人間か、インデックスの性格を十のうち小数点以下すらも理解していない初対面の相手ぐらいのものだろう。


「その反応。実に失礼なんだよ。何がそんなにおかしいのかなー?」
「おかしくはない。ただ、インデックスさんから『アルバイト』というワードが聞ける日が来るとは、
 まったくもって思っていなかったと申しますか……」
「本当に失礼かも! 
 確かにとうまから見れば私は労働していないようにも見えるかもしれないけれど、
 私はちゃんとシスターという職に就いているんだから!」

日々のお祈りを忘れたことだってないもん、にーととか言う不名誉な地位の住人じゃないもん、と。
無い胸を主張するかのように仰け反らせるインデックス。

はたして彼女は気づいているのだろうか。
上条家における料理掃除洗濯といった家事労働の分担比が、家主と居候で九対一である現実を。

インデックスとの同居をはじめて二か月以上が経過した現在、上条はインデックスに対して家事労働を求めることは諦めつつあった。
分担比の一にあたる、飼い猫スフィンクスの世話さえしてくれれば御の字である―――というのが、今の上条のスタンスなのである。

sageが入ってるよ


(突然、何を言い出すかと思えば……。アルバイト、か)

神への祈り等シスターとしての労働以外の大部分を能動的に行わない少女が、
行き成り「とうま、わたし、アルバイトをするんだよ!」と言い出したのだ。
それが、突拍子のない思いつきからの行動だと、上条にはどうしても思えなかった。

(……インデックスはインデックスなりに、寂しさを紛らわそうとしてるんだろう)

「スフィンクスは賛成してくれるよねー?」と
少女の胸元を定位置と決め込んだ飼い猫に楽しげに話しかけるインデックスを眺めながら、上条は内心だけで彼女の今の心中を想像する。
 
昨日、インデックスには一人のおともだちが出来た。
風斬氷華と名乗り、霧ヶ丘女学院の制服を身につけた女の子とインデックスは出会ってすぐに意気投合した。
上条も仲良くなった二人と一緒にゲームセンターへと繰り出し、楽しい時間を過ごしたのは、たったの一日前の話である。
二十四時間も経ていない、つい先ほどの、話なのだ。


結論から言うと、風斬氷華は人間ではなかった。

能力者が集まる学園都市の目に見える虚像、力の相互集約がもたらした奇跡の片鱗。
能力者達が無自覚に発する微弱な力のフィールド、AIM拡散力場が人の形に成ったもの。

それが、風斬氷華の正体だった。

イギリス清教、必要悪の教会所属の魔術師シェリー=クロムウェルによる学園都市襲来に発する一連の騒ぎの末、
インデックスとの会話を最後に、風斬は夕日とともにその姿を消し去った。

たった一日のおともだち。交わした会話も、交わした感情も、多くはない。
それでも、インデックスにとって彼女の存在は計り知れないのだ。
まだまだ顔見知りのの少ない学園都市で、インデックスが正直に素顔を晒しだせた時間は、どれだけ煌いめいて見えたことだろう。

(どれだけ笑ってようが、こたえちまうよな)

ひょうかとは笑顔で別れたから、とインデックスは言っていた。

だから、インデックスはさびしいと泣かないし―――さびしいと、泣けない。


「アルバイト、いいと思うぞ」

上条は改めて首を縦に振ってインデックスの宣言に賛同する。
何かに無我夢中になりたい気持ちを上条には痛いほどわかってしまう。
上条が途中放棄の状態で放置していた夏休みの宿題を今更になって片づけているのも、
結局は、似たり寄ったりの衝動に駆られたからにすぎないのだから。

人との―――取り分け、親しい人物との別れは、何歳になっても慣れないもので。

多少なりとも、大切な人との別離故の寂しさが紛れるのなら、それもいいだろうと、上条は思うのだ。

「そうでしょう? いいでしょう?」

少し拗ね気味であったインデックスは、上条の言葉を聞き、すぐさま気分を上昇させる。
居候という立場にほんのわずかな自覚があったのか、上条の許可なくアルバイトが出来ないと思っていた様で、
家主兼実質的な保護者からのGOサインがもたらされたことに、インデックスはほほを緩ませた。

「んでさ、アルバイトってのは、具体的には何をするんだ?」

会話と同時進行で膨大な宿題をバッサバッサと切り倒すことは出来ないと判断し、
上条は小休憩とばかりにカリカリと忙しなく動かしていた手を止め、インデックスとの会話に集中することにした。


「えっとね、学校のお手伝いでね!」

嬉しそうに話し始めたインデックスが言うには、十字教の教えを元に子供たちの教育を行う学園都市内の学校のお手伝い……、らしい。
土御門舞夏の実習先の一つで、宗教の知識が豊富な人材がいないかと探している学校があり、
それならば、曲がりなりにも十字教のシスターであるインデックスはどうだろうか、と土御門舞夏から話が持ちこまれたようだ。

「学校っていうと、神学校か?」
「そうそう。えーっとね、確か第十一学区にあるって言ってた」
「なるほどなー。第十一学区はミッション系が多いもんな」

学園都市は大きく第一学区から第二十三学区までの二十三の区分があり、上条とインデックスが暮らす学生寮は第七学区に位置している。

上条が話題に挙げた第十一学区は最も神学系の学校が多く集まっている地区である。
古今東西、あらゆる宗教・宗派に連なる学校が乱立しているそこは、多国籍な雰囲気を醸し出しており、
ちょっぷり不思議な街並みが楽しめるスポットとしても密かな観光人気がある街だったりする。

科学の街に神学系の学校、というと違和感を持つ人間もいるかもしれないが、
第十一学区の神学系学校は宗教を科学的にアプローチすることを目的としている為、一応、理に適った体はなしていた。

「『あと数日で記念行事が行われるから、準備をする人出は多いほうがいい』って、まいかが」
「記念行事って、クリスマスは随分と先だぞ? もしかして、大覇星祭関係の手伝いか?」

学園都市の二代イベントのひとつ、学校対抗大運動会である大覇星祭は今月の中旬に、全日程が一週間かけて行われる予定だ。
外部からの来客や報道が許される大規模な公式行事の為、関連するボランティアやアルバイトの人材募集がこの時期大々的に行われるのも、
学園都市内の隠れた夏から秋にかけての風物詩とも言えた。

「違うよ。その『たいはせーさい』っいうてのは、まだ先なんだよね?」

昨日の朝、まいかはそう言っていたけど、とインデックスは続けた。

「じゃあ、何の行事の手伝いに行くんだ?」

十字教の行事といえばクリスマスぐらいしか思い浮かべられない上条は、
素直な疑問を、真っ白なシスター服を纏うその道の本職である少女へと向けた。

インデックスは彼女が極当たり前のように知っている知識を、もったいぶらずに披露した。




「聖マリアの誕生を記念する行事、だよ」




今日より約一週間後の九月八日。

その日、聖ヨキアムと聖アンナの間に一人の女児、後のマリアが誕生した。
彼女の誕生をもって、旧約の時代から長きにわたる時間で準備されてきたメシアの到来が近づいたのである。

【零】【一】の部分は以上で終了です。
【二】部分の投下は26日予定です。ありがとうございました。

マイナー言語の翻訳家でもやらせりゃいいのに

【二】

九月二日 午前八時頃

夏休みが終わろうと、茹だる暑さはいまだ夏のままだった。
残暑が厳しい朝の登校時間、熱気は上昇していくばかり。
住人の七割が学生という学園都市は丁度今頃が通勤ラッシュならぬ通学ラッシュがピークを迎える。
始業チャイムが鳴るまでおおよそ三十分だ。
何が何でも遅刻を免れようと誰も彼もが必至な形相で校門を目指し急いでいる。

形振り構わず満員電車に乗り込んだり、通学用自転車のペダルを全力でこいで通学する生徒が多いなか、
悠々と道を闊歩する数人の女子生徒達は汗一つ流さずに、溢れんばかりの気品やらオーラやらを放っていた。

丸襟に幼さを残す半袖のブラウスにノースリーブ型のサマーセーター、灰色のプリーツスカートを身に纏う彼女らは、
学園都市屈指のお嬢様校として有名な常盤台中学に所属している生徒達である。

彼女らは皆、学舎の園の敷地外にある学生寮に部屋を割り振られている者で、
最寄りの停留所まではバスを利用し、降車後は徒歩で母校へ向かうのが、常だった。
所属する派閥や部活動、委員会によって登校時刻はばらつくが、
派閥にも部活にも縁もゆかりもない数人の生徒は、
大抵、この時間帯―――つまり、遅刻にならない、ギリギリの時間に合わせて登校することが多い。

常盤台を代表する生徒である、超能力者の序列第三位の御坂美琴も、その中の一人であった。


顔見知りのクラスメイトと雑談しながら御坂は校舎へ向かう。
御坂の軽快な足取りに呼応するように、革鞄の淵に括りつけたカエルのストラップが楽しそうに左右に揺れる。

「では、御坂様は明日からアメリカのほうへ?」

御坂美琴の隣を並んで歩く顔見知りの黒髪の少女が広域社会見学の行き先を訪ねた。

「うん。学芸都市ってとこ」
「広域社会見学、私も行きたいです。羨ましいです」
「こればっかりは、ね。いける人はランダムに決められるし」

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