あかり「あ、ねこさんだぁ」QB「僕と契約して魔法少女になってよ!」(1000)

京子「というわけで、どうすればあかりの存在感を消せるか考えよう!」

結衣「いやいや、いきなり何言ってるのさ京子」

京子「細かいことはいいの! 最近のあかりは存在感を増しつつある、これは由々しき事態だよ!」

ちなつ「た、確かに……」

あかり「同意しちゃうのちなつちゃん!?」

京子「考えてもみろよあかり。あかりは存在感が増せば増すほど不幸な目にあってるだろ?」

結衣「あー……この前のプールにはかなり遅刻したよね」

ちなつ「髪の毛にいつの間にかお菓子がついてて、鳥に追い掛けられたりもしたんだっけ?」

あかり「う、うぅ……確かに」

京子「でしょ? だからあかりの存在感を何とかしてなくさないと……大変なことになっちゃうよぉおおおおおっ!」

あかり「きゃああああああっ!?」ダッ

結衣「ま、待ってあかり!」

結衣「……おい京子、からかうにも限度ってのがあるだろ。あかりが怯えて逃げちゃったじゃないか」

京子「あはは、ごめんごめん」

ちなつ「まったく……私が探してきますから、京子センパイは反省しててください」

京子「はーい」

あかり(もう、いきなり驚かすなんてひどいよ京子ちゃん)

あかり(それに存在感がないほうがいいだなんて……)

あかり(…………)

あかり(でも、その通りなのかも。最近なんだか運が悪い気がするし)

あかり(うーん、どうすれば存在感なんてなくせるんだろ?)

「ちょっといいかな?」

あかり「へっ!?」

あかり「あれ、誰もいない……。誰かに話しかけられたような気がしたんだけど」

「ここだよ、ここ」

あかり「???」キョロキョロ

「足元を見てごらん」

あかり「あ、ねこさんだぁ。ちょっと変わってるけど可愛いよぉ」ナデナデ

QB「猫じゃないよ。僕はキュゥべえ」

あかり「キュゥべえ? 何だかカッコイイ名前だね」

QB「はは、ありがとう」

あかり「……って、あれ? な、なんでねこさんがしゃべってるのおおおおおお!?」

QB「だから僕は猫じゃないってば」

あかり「うーん、どう見てもねこさんなんだけどなぁ。じゃあわんわん?」

QB「犬でもないよ」

あかり「うーんと、えーっと……」

QB「キリがないなぁ。僕はね、そもそも動物ではないんだ」

あかり「それじゃあ、宇宙人さん?」

QB「……間違ってはないね」

あかり「すっごーい! キュゥべえは宇宙人さんなんだぁ」

QB「まぁね」

あかり「ねぇねぇ、キュゥべえは何のために地球にやってきたの?」

QB「目的かい? それはね、魔女と戦ってくれる人間を探しているのさ」

あかり「魔女?」

QB「魔女は人の弱みに付け込んで命を奪う、とても危険な存在なんだ」

あかり「命をうばうって……こ、ころしちゃうの?」

QB「うん。魔女っていうのはとても狡猾……ずる賢くてね、普段は姿を見せない」

QB「弱り切った人間を殺すときに、その人間を自らの結界に取り込むのさ」

あかり「けっかい?」

QB「あー、まぁ何て言うか……魔女の家みたいなものだよ」

あかり「つ、つまり魔女さんは誘拐犯なの!?」

QB「そうだね……誘拐した上で確実に殺すのさ」

あかり「なんだか、すごく怖いよぉ……」

QB「でもね、そんな魔女に立ち向かえる存在もある。それが魔法少女」

あかり「魔法少女……ミラクるんみたいな?」

QB「ミラクるん? なんだいそれは」

あかり「お友達が好きなアニメだよっ、魔女っ娘ミラクるん」

QB「悪と戦う正義の味方とかそんな感じかな?」

あかり「うん、そんな感じかな」

QB「なるほどね。ねぇ、もし君が魔法少女になれるとしたら……どうする?」

あかり「え?」

QB「魔法少女になって、人々を救うことが出来るとしたら……君は魔法少女になりたいかい?」

あかり「うーん……あかりなんかには無理かなぁ。運動とか苦手だもん」

QB「そんなことはない。君は魔法少女の才能を秘めている」

あかり「えぇっ!? 本当?」

QB「本当さ。だから……僕と契約して、魔法少女になってよ!」

あかり(あかりが、魔法少女に?)

あかり(うーん、なんだかアニメとは違ってとっても危ない気がするよぉ。魔女さんすごく怖そうだし)

あかり(でも、あかりなんかがみんなを助けられるとしたら……それってとってもステキなことだよね)

あかり(うぅ……でもでも、やっぱり怖いよぉ。どうしよう、京子ちゃんや結衣ちゃんに相談してみようかな?)

QB「あぁ、一つ言い忘れてた」

あかり「なに?」

QB「魔法少女になってくれるなら、一つだけ何でも願い事を叶えてあげるよ」

あかり「なんでも!?」

QB「あぁ」

あかり(す、すごい! 何でもお願い聞いてくれるなんて……)

あかり「ポテチのうすしおをたっくさーんちょうだいって言ったら?」

QB「お安いご用さ」

あかり「ブラックコーヒーが飲めるようになりたいっていうのは?」

QB「変わった願いだね……問題ないとは思うけど」

あかり「ごらく部のみんなとずっと一緒に居たいっていうお願いは?」

QB「ごらく部?」

あかり「あ、ごらく部っていうのはね……今あかりが入ってる部活動なんだぁ。京子ちゃんと結衣ちゃんとちなつちゃんが居るの!」

QB「その三人と一生一緒に居たいっていうことかい?」

あかり「うん。だってあかり、みんなのことがだーい好きだもん!」

QB「ふぅん……まぁ、なんとかなると思うよ」

あかり「本当? すっごーい!」

QB(生きた状態とは限らないけどね)

あかり「じゃあじゃあ、あかりの存在感をなくしてっていうのも叶っちゃったりするの?」

QB「ごめん、それは無理だ」

あかり「え、なんで……?」

QB「答えは至ってシンプルさ。君にはもともと存在感が皆無だからだよ」

あかり「」アッカリーン

QB「というか、一体何なんだいその願いは……」

あかり「あかりね……存在感がないはずなのに最近でしゃばっちゃってるから、不幸になっちゃったんだぁ……」

QB「わ、わけがわからないよ」

QB「……なるほど、事情は飲み込めたよ。それなら願いで君の存在感自体を上げればいいんじゃないかな?」

QB「もともと存在感がある人間になれば、そんな理由で不幸なことは起きたりしないよね」

あかり「そっかぁ……すごいねキュゥべえ!」

QB「あ、すまない。どうやらそれも無理みたいだ」

あかり「え」

QB「どうやら君がもつ存在感のなさは、恐ろしく巨大な因果の上に成り立っているようでね……」

あかり「???」

QB「噛み砕いて言えば、君の存在感のなさはどうしようもないってこと」

あかり「えええええええええっ!?」

QB(その後、彼女は意気消沈した面持ちでどこかへと行ってしまった)

QB(予想通りの反応を示してくれよかったよ)

QB(希望と絶望の相転移……っていうほどでもないけれど、これで彼女の精神に付け入る隙が出来ただろう……)

QB(そして魔女に襲われた所で契約を迫ればいい)

あかり(はぁ……あかりの存在感のなさはどうにもできないんだ)

あかり(宇宙人さんにそんなこと言われちゃうなんて……なんだかすごくショックだよぉ)

あかり(それならずっと存在感薄いままがいいかも)

あかり(存在感が増したせいでひどい目にあうのは、もうこりごりだもん)

あかり(そうだよ。いっそ、誰からも見えなくなっちゃえば……)

あかり「……あれ? ここ、どこ? あかり、お家に帰ってる途中なのに……こんな所、見覚えがないよ」

あかり「道を間違えちゃったなんて思えないし……それに、なんでこんなに真っ暗なの?」

あかり「まだ夕方のはずなのに。早くお家に帰らなきゃ……って道が分からないよぉ!」

あかり「うぅ……これも、あかりがでしゃばってるからなのぉ!?」

あかり「お家に帰りたいよぉ。うぅっ、ぐすっ……」

泣きじゃくるあかりの前に、謎の生物が近寄る。
その生物は白く丸い頭をしており、大きなおヒゲを生やしていた。

あかり「な、なに……?」

背後からも物音がしたので振り返ってみると、そこにも同じような生物がいる。
それどころかその生物は、あかりを包囲するような形で大量に出現していた。

生物たちの手から先端に巨大なハサミをもつツタが、あかりに向かってゆっくりと伸びていく。
あんなハサミで切られたらひとたまりもないだろう。

あかり「きゃ、きゃあああああっ!」

恐怖のあまり腰が抜けてしまったあかり。しかしハサミは止まってなどくれない。

あかり「やだよぉ、あかり死にたくないよぉ……」

あかりの身体をハサミが切り刻もうとする瞬間、足元からまばゆい光が放たれた。
その光はあかりの身体を包み込み、襲い来るハサミをすべて弾き落とす。

あかり「え……?」

「危なかったわね。でも、もう大丈夫」

あかりに近づいてくるのは、少し変わった服を来た金髪の少女だった。

「あら、あなたも七森中の生徒なのね。何年生?」

あかり「い、一年の赤座あかりです。あの、あなたは……?」

「そうそう、自己紹介しないとね。でもその前に……ちょっと一仕事、片づけちゃっていいかしら?」

少女が両手を大きく広げると、少女を囲むように大量のマスケット銃が出現。
少女が指を鳴らすと、それらは一斉に白ヒゲの生物たちに向けて弾丸を放つ。
そして弾丸による爆炎が晴れると、白ヒゲの生物たちは跡形もなく消えていた。

謎の生物が消えた途端に景色が歪み、見慣れた景色に戻っていた。

「ケガはないかしら?」

あかり「は、はいっ! 助けてくれてありがとうございますっ!」

「どういたしまして。自己紹介が遅れたわね、私の名前は巴マミ。七森中の三年生よ」

マミが変身を解いて元の姿に戻ると、あかりと同じ七森中の制服を着ていた。
先程までは気づかなかったが、ものすごく大きい。何がとは言わないが。

あかり「巴先輩って呼べばいいですか?」

マミ「そんな堅苦しくなくていいわよ」

あかり「じゃあ……マミさん?」

マミ「うん、そのほうがいいかな」

あかり「マミさん、聞きたいことがあるんです」

マミ「なぁに?」

あかり「さっきのって……もしかして魔女って言う生き物なんですか?」

マミ「!」

あかり「それと、マミさんって魔法少女なんですか?」

マミ「……誰から聞いたの?」

QB「僕が話したんだよ、マミ」

マミ「キュゥべえ! もう、どこへ行ってたのよ」

QB「ごめんごめん。少し用事があってね」

QB(赤座あかりと契約しようとしたんだけど、君が近くにいたから断念したんだよね……ま、いくらでもチャンスはあるさ)

QB(孤独に飢えてるマミなら、きっと赤座あかりを勧誘するだろうし)

マミ「キュゥべえが見えるっていうことは、赤座さんには魔法少女の資質があるっていうことね?」

QB「あぁ。それもかなりのものだよ」

マミ「へぇ……ねぇ、赤座さん。よければ少しだけ、私の家に寄って行かない?」

あかり「マミさんの家ですか?」

マミ「えぇ。魔法少女と魔女について、もう少しお話しておこうかなと思うんだけど」

マミ「あ、無理にとは言わないわ。もう結構遅いしね」

あかり「いえ、私は大丈夫ですっ。魔法少女のこととか、気になるし……」

マミ「分かったわ。それじゃ、行きましょ」

QB「ねぇあかり。ひとつ気になってることがあるんだけど」

あかり「なにかな、キュゥべえ?」

QB「なんであかりは自分のことを私って言う時と、あかりって言う時があるんだい?」

あかり「あ、それはね……目上の人と話してる時に自分のことをあかりって言うのは、ちょっと失礼かなって思って」

マミ「あら、そんなふうに気を使わなくてもいいのよ」

あかり「あはは、たぶん癖になっちゃってるんですよ」

QB「人間っていうのは複雑な生き物だなぁ……」

先程まであかりたちが居た所に黒髪の少女が立っている。
少女は口元に指をあてて、何かについて考え込んでいるようだ。

ほむら(これは一体、どういうことなの……?)

ほむら(本来ならここで襲われるのはまどかと美樹さやかのはず)

ほむら(おかしいのはそれだけじゃない。私の転校先が見滝原中学校ではなく、七森中学校という所だった)

ほむら(しかもその中学校は見滝原中学校と同じ場所にある。見滝原中学校はそもそも存在していないみたい)

ほむら(……見滝原中の男子生徒はどうなったのかしら?)

ほむら(まぁそんな些細なことはどうでもいい。なぜこんなことになってるのか考えないと)

ほむら(私は時間を巻き戻す度に、わずかに異なる世界線へと移動している)

ほむら(時間の巻き戻しのしすぎで、大幅に異なる世界線に移動してしまった……とかかしら)

ほむら(もしそうだとすれば非常に厄介だわ。これから何が起きるか予測がつかない)

ほむら(次に時間を巻き戻したら、更におかしな世界線へ移動する可能性もあるし……)

ほむら(でも考えてみたら、今のところは良い感じで進んでいるのよね)

ほむら(まどかとキュゥべえが接触していないんだもの。このままキュゥべえが、あの赤髪の子の勧誘に夢中になってくれるといいのだけれど)

ほむら(何にせよ、油断は禁物ね。ワルプルギスの夜への対抗策も練らないといけないし)

ほむら(この世界線にワルプルギスの夜がいるとは限らないけれど、ね)

――マミの家

マミ「ここが私の家よ。どうぞ、上がって頂戴」

あかり「お、おじゃましまーす。わぁ、ステキなお部屋だぁ」

マミ「一人暮らしだから遠慮しないで。ろくにおもてなしの準備もないんだけど」

あかり「いえっ、おかまいなく」

マミ「あら、赤座さんは礼儀正しいのね。でもそんなにかしこまらなくてもいいのよ」

マミ「飲み物用意するわね。赤座さんは紅茶とコーヒー、どちらがいいかしら?」

あかり「えっと……紅茶でお願いします」

マミ「はーい、ちょっと待っててね」

あかり「ケ、ケーキまで……いいんですか?」

マミ「いいのいいの。ちょっと買いすぎちゃったから」

あかり「それじゃ、いただきます」

マミ「お味はいかが?」

あかり「すっごくおいしいです!」

マミ「気に入ってもらえて何よりだわ。さて、それじゃあ魔法少女や魔女についてお話するわね」

あかり「はいっ。よろしくお願いします!」

マミ「その前に……キュゥべえからはどこまで聞いてるのかしら?」

あかり「魔女は人を殺しちゃう悪い子っていうこととか、魔法少女だけが魔女と戦えるとか」

あかり「あと、魔法少女になるなら一つだけ願い事が叶うとか」

マミ「なるほどね。とりあえず、これを見てもらえるかしら」

あかり「わぁ、きれいな宝石だぁ」

マミ「これはソウルジェムって言ってね、契約の際に生まれる宝石なの」

マミ「魔法少女の魔力の源であり、キュゥべえと契約した証でもある」

あかり「契約っていうのは、願いごとを叶えてもらうっていうことですか?」

マミ「飲み込みが早いのね、その通りよ」

QB「そしてソウルジェムを持つ者は、魔女と戦う使命を課されるんだ」

あかり「魔女……」

マミ「さっき分かったと思うけれど、魔女との戦いは命がけよ」

マミ「もし、自分の命をかけてまで叶えたい願いがないのなら……魔法少女になる必要なんてないわ」

あかり「あの、マミさんはどんな願い事をしたんですか?」

マミ「……それは」

マミ「秘密、かな」

あかり「えぇ、なんですか?」

マミ「意地悪してる訳じゃないのよ。ごめんなさい」

あかり「うーん、残念。あかりはどんな願い事にしようかなぁ」

マミ「赤座さん……私の話、ちゃんと聞いてた?」

あかり「もちろんですっ」

マミ「やれやれ、飲み込みが早いっていうのは撤回ね……」

マミ「いい? どんな願い事にしよう、なんて言ってる時点で魔法少女になる必要はない」

あかり「あ! 自分の命をかけてまで叶えたい願いがないのなら……」

マミ「そういうこと。だからあなたは、魔法少女になんてならなくていいの」

あかり「でも、これからそんな願いが見つかるかも……」

マミ「そうなったらその時に考えればいいだけよ。もう今日は遅いし、帰ったほうがよさそうね。お家まで送ってくわ」

あかり「えぇっ、大丈夫ですよぉ」

マミ「また魔女の結界にでも入ったらどうするつもり? ほら、行きましょう」

QB(マミが勧誘すると思ったんだけど、目論見が外れてしまったようだ……うーん、どうしようかな)

――赤座家

マミ「へぇ、ここが赤座さんのお家なんだ」

あかり「はいっ、今日はいろいろとありがとうございました」

マミ「どういたしまして。それじゃ、おやすみなさい」

あかり「おやすみなさいっ。あ、マミさん!」

マミ「ん、なぁに?」

あかり「明日一緒に登校したいなー、なんて思ってるんですけど」

マミ「……え?」

あかり「あ、ダメならいいんです」

マミ「ダメなんかじゃない、喜んでお受けするわ」

あかり「よかったぁ、断られたら私どうしようかと思っちゃいました。それじゃ、また明日」

マミ「えぇ、また明日ね」

マミ(また明日……か)

マミ(赤座さんが誘ってくれた時、とても驚いた)

マミ(そして、すごく嬉しかった。顔がニヤケちゃってないか心配なぐらいに)

マミ(魔法少女になってから、魔女退治に時間を割いてるせいでいつも一人ぼっちだったからかしら)

マミ(誰かと登校するっていうだけなのに、明日が楽しみでしょうがない)

マミ(今日は早めに寝よう。寝坊なんてしたら格好がつかないわ)

翌日――

あかり「ふわぁ……まだ眠いなぁ。もうちょっと寝たいなぁ」

あかり「でも今日はマミさんと一緒に登校するんだし、遅刻しちゃったら恥ずかしいよね」

あかり「あ、結衣ちゃんにメールしておかないと。今日は他の人と登校するよ、ごめんね……っと。送信っ」

あかり「さて、着替えて顔洗ってこよっと」ピロリン

あかり「あれ、もう返信来たの? 結衣ちゃん早いなぁ……ってマミさんからだ。えぇっと、内容は……今日の待ち合わせ場所」

あかり「そっか、場所を決めるの忘れてたよぉ。返信しておこっと」

――待ち合わせ場所

マミ「赤座さん、おはよう」

あかり「おはようございますマミさん!」

マミ「それじゃあ、行きましょうか」

あかり「はいっ。京子ちゃんたち以外と学校行くのなんて久しぶりだなぁ」

マミ「お友達?」

あかり「はい、幼馴染なんです」

マミ「そうなの。京子ちゃんたち……っていうことは何人か居るのかしら」

あかり「そうですよ。京子ちゃんと結衣ちゃん……あと幼馴染じゃないけどちなつちゃんの三人です」

マミ「ふふ、仲良し四人組と言ったところかしら」

あかり「マミさんは普段誰と登校してるんですか?」

マミ「私はいつも一人よ」

あかり「ちょっと意外かも……」

マミ「昔はそうでもなかったんだけど、魔法少女になってから忙しくなっちゃって」

あかり「もしあかりが魔法少女になったら、京子ちゃんたちと遊べなくなっちゃうのかなぁ……」

マミ「もう、何言ってるのよ赤座さん。あなたは魔法少女になる理由なんてないでしょ?」

あかり「それはそうなんですけれど……ちょっとだけ、魔法少女に憧れてるんです」

マミ「憧れ……?」

あかり「誰かを守る為に戦うなんて、すごくかっこいいから。魔法を使って魔女を倒すマミさんはステキだったし」

マミ「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、そんなかっこいいものじゃないわよ私」

マミ「あとあれは魔女じゃなくて使い魔ね。魔女には逃げられちゃったわ……また探さないと」

あかり「あ、マミさん」

マミ「何かしら?」

あかり「魔法少女とかのことって、京子ちゃんたちに相談してもいいですか?」

マミ「うーん、あまり他言しない方がいいわね。というか、信じて貰えないと思うわ」

あかり「ですよね……」

放課後――

マミ(さて、昨日の魔女を探しに行かないと……)

QB(マミ)

マミ(あらキュゥべえ。どうしたの?)

QB(あかりのことは放っておいていいのかい)

マミ(いいのよ。彼女にはどうしても叶えたい願いなんてないみたいだし)

QB(一緒に魔女と戦ってくれる仲間を作るチャンスなんだよ?)

マミ(…………)

QB(一人は寂しいって、あれほど言ってたじゃないか)

マミ(でも、私のわがままで赤座さんを巻き込むわけにはいかないわ)

QB(やれやれ、本当に君はお人好しだね)

QB(ま、君のそういう所は嫌いじゃないよ。でも、今からあかりに会いに行ったほうがいいと思う)

マミ(なぜかしら?)

QB(君はまだちゃんと魔法少女や魔女について説明してないだろう?)

QB(例えば、ソウルジェムやグリーフシードのこととか。もしも彼女が何らかの事情で魔法少女になるかもしれない)

QB(その時に君が生きているとは限らないじゃないか。だから今の内にしっかり教えておくべきだと思うよ)

マミ(確かに……分かった、赤座さんに会いに行ってくる)

マミ(と思ったのだけれど、どこに居るのかしら……?)

QB(あかりならさっき校舎外れの建物に入っていくのを見たよ。そこに行ってみよう)

――ごらく部

京子「さぁ、あかり君。そろそろ白状したまえよ」

ちなつ「そうだよあかりちゃん。一体、今朝は誰と登校してたの?」

結衣「私も気になるんだよね。昨日会ったばかりの先輩と一緒に登校だなんてさ」

あかり「えっと、えっと……」

あかり(そんなこと言えないよぉ! だって魔法少女や魔女のことは秘密なんだもん!)

京子「白状しないとー、くすぐっちゃうぞ!」コチョコチョ

あかり「あっ、あはっ! ダ、ダメだよ京子ちゃんっ! そこ弱いの……あはははっ!」

京子「全部吐くまでやめないぞぉ! うりうり!」

ちなつ(私もあかりちゃんくすぐっちゃおうかな……いや、考えるのよチーナ。これはチャンス!)

ちなつ「結衣せんぱーい!」

結衣「うわっ!? 急に抱きついてきてどうしたの、ちなつちゃん」

ちなつちゃん「結衣先輩、ごめんなさーい!」コチョコチョ

結衣「わっ! あはは……ちょっと、くすぐったいってちなつちゃん。だ、だめだってば……!」

ちなつ「あかりちゃんが教えてくれないなら、結衣先輩をずっとくすぐり続けちゃうよ!」

ちなつ(我ながらナイスアイデアだわ!)

――ごらく部扉前

マミ(ものすごく盛り上がってるわね……なんだか入りづらいわ)

マミ(今日は帰っちゃおうかしら?)

QB(やれやれ、ここまで来てそれはないだろう)

マミ(で、でも……)

QB(もう、仕方ないなぁ。僕が扉を開けてあげよう)

マミ(ちょっとキュゥべえ!? やめなさい!)

QB(やめないよ)ガラッ

あかり「マ、マミさん!?」

マミ「こ、こんにちは赤座さん」

京子「おっぱいでかっ!」

結衣「ちょ、第一声がそれかよ! しかも相手先輩だぞ? すみません、失礼なことを言ってしまって……」

マミ「別に気にしてないわよ」

京子「おぉ、大人の余裕って奴ですかー。結衣も見習いなよ」

結衣「それはこっちの台詞だっての」

マミ(うーん、こんなに人が居たら魔法少女の話なんて出来ないわね。どうしましょう……)

ちなつ「この可愛い猫ですね。先輩の猫ですか?」

マミ「……えっ?」

京子「何か変わった猫だなぁ」

結衣「うーん、これ猫なのかな?」

マミ(三人ともキュゥべえが見えてるなんて……一体どういうことなの!?)

QB(どうやら三人とも魔法少女の素質があるようだね。今まで気づかなかったのが不思議だよ)

マミ(ふぅ……どうやら全員に説明する必要があるみたいね)

十分後――

京子「魔法少女! 魔法少女だよ、魔法少女! 実在したんだぁ!」

ちなつ「京子先輩テンション上がってますね」

結衣「まぁ京子は昔からそういうのに憧れてたしな……」

京子「ちなつちゃん! キュゥべえと契約して、ミラクるんになってよ!」

ちなつ「お断りします」

京子「ちぇー」

結衣「ちぇー、じゃないでしょ。魔女との戦いは命がけなんだ。そんなくだらない願いで魔法少女になるとか論外だろう」

京子「冗談だよ、冗談」

結衣「京子が言うと冗談に聞こえないんだよ」

あかり「そうだよねぇ。京子ちゃん、ミラクるん大好きだもん」

マミ(赤座さんって歳納さんや船見さんにはタメ口聞くのね。まぁ幼馴染だし、そんなものよね)

マミ(でもこの中だと私にだけ敬語使うから……なんだか少し疎外感があるわ)

QB(まぁ、君は昨日会ったばかりだしね)

マミ(うるさいわねぇ。分かってるわよ、そんなこと)

マミ「ねぇ赤座さん」

あかり「何ですかマミさん?」

マミ「私にもタメ口使ってていいのよ? 私にだけ敬語使われると、何だか違和感あるし……」

あかり「え、でも失礼じゃ……」

マミ「いいのいいの」

あかり「えっと……分かったぜ!」

結衣「ぷっ!」

京子「語尾に"ぜ"なんてつけるあかり、初めて見たよ……あははっ!」

あかり「もう、からかわないでよぉ! 今まで意識してやったことないから難しいなぁ」

マミ「ふふ、徐々に変えてくれればいいわよ」

あかり「あっかわいい猫さん!」

QB「ん?なにか声がしたような気がしたけど…気のせいか」ヒュン

あかり「あぁ~すごい速さでいっちゃったよぉ~…」

こうなるはずだろ

京子「ねぇマミさん。私、マミさんが実際に戦ってる所が見てみたい!」

結衣「おいこら、何言ってるんだよお前は。魔女との戦いってのは命を落とすかもしれないんだぞ」

ちなつ「結衣先輩の言う通りですよ。まったく、京子先輩ったら……」

京子「そりゃそうなんだけどさ、私たちには魔法少女の素質があるんだよね?」

京子「それなら魔女との戦いがどういうものなのか、自分の目で確かめるべきだと思うな」

ちなつ「あ……なるほど」

結衣「お前は本当に口が達者だなぁ。でも、巴先輩の負担もかなりのもんじゃないのか?」

マミ「確かに四人もいるとちょっとフォローがキツイわね。でも、二人ぐらいなら大丈夫よ」

京子「じゃあ二人ずつ魔女退治に行こう! 私は今日行くからね!」

結衣「やれやれ……こういう時のお前は止めても聞かないからなぁ。仕方ない、私も行くよ」

京子「とか言っちゃってー、結衣も興味津々でしょ?」

結衣「べ、別にそんなことは……」

マミ「じゃあ今日は歳納さんと船見さんの二人でいいのね」

京子「よろしくお願いしまーす!」

ちなつ「結衣先輩、気をつけてくださいね?」

結衣「うん。ありがとう、ちなつちゃん」

京子「ちなつちゃーん、私の心配もしてよぉ」

ちなつ「あー、京子先輩もきをつけてくださいねー」

京子「なんか棒読みになってるよ!?」

――街中

京子「暇だなぁ……結衣ー、ラムレーズン食べたい」

結衣「持ってないから。持ち歩いてたら溶けてるっての」

マミ「魔女探しって意外と地味でしょ? 期待にそぐえなくてごめんなさいね」

結衣「いえ……元々こっちが無理言ってついてきてるわけだし」

マミ「そう言ってくれると助かるわ、ってこれは……」

京子「おぉ、ソウルジェムが光ってる!」

結衣「この近くに魔女の結界があるんですか?」

マミ「えぇ、気を引き締めてね」

マミ「……どうやら結界はここの建物の中にあるみたいね」

京子「マミさん、あんなところに人が!」

京子が指差す先には、建物の屋上から飛び降りようとする女性の姿があった。

結衣「飛び降り!?」

マミ「――ッ!」

マミはとっさに変身をして女性の元へと走った。
女性の方へと手をかざし、女性の身体にリボンを巻きつけゆっくりと地上に降ろす。

マミ(首元に魔女の口づけがあるわね……)

結衣「だ、大丈夫なんですかこの人?」

マミ「えぇ、気を失っているだけ。時期に目を覚ますわ」

京子「マミさんすごいなぁ……」

マミ「さて、それじゃあ結界へ突入するわよ。絶対に私の傍を離れないで」

――魔女の結界

結衣「ここが、魔女の結界……」

京子「なんか変な所だなぁ」

結界内を進んでいく三人の前に、大量の使い魔が現れた。

京子「う、うわぁああああっ!」

結衣「京子!? おい、抱きつくなって!」

京子「だ、だって、だってさぁ……」

結衣「大丈夫。私たちには巴先輩がついてるだろ」

京子「う、うん……」

マミ「そうよ、これでもベテランなんだから。使い魔なんかに遅れを取ったりはしないわ!

マミは召喚したマスケット銃で敵を撃ちぬいていく。
その弾丸は百発百中で、ものの数分で敵は全滅した。

結衣「すごい……」

京子「マジカルぅな感じの魔法もいいけど、銃を召喚する魔法ってのもかっこいいなぁ」

マミ「ありがとう。さ、進みましょう」

京子「はーい!」




「あの二人は一体……?」

マミ「ここが最深部……あのでかいのが魔女ね」

京子「何か気持ち悪いなぁ」

結衣「あんなのと戦うんですか……?」

マミ「大丈夫、負けるもんですか」

マミが指を鳴らすと、結衣と京子を包むように黄色の結界が現れた。

マミ「そこから出ちゃダメよ。いいわね?」

結衣「わ、分かりました」

マミは今までとは比べ物にならない程のマスケット銃を召喚し、次々と撃っていく。
魔女はその巨体からは想像できないスピードで空を飛んでおり、思うように命中しない。

マミ(早い。それなら……って何!?)

いつの間にかマミの足元に小さな使い魔が大勢いた。
使い魔たちの体は融合して一本のムチとなり、マミの身体を拘束する。

マミ「くっ……」

京子「マミさん!?」

マミはムチで拘束されている状態で銃を撃ち続ける。
だがその狙いは大きく外れてしまい、すべての弾丸は床へとめり込んでしまった。

結衣「そんな……」

マミはムチによって何度も何度も壁に叩きつけられ、どんどんダメージを受けていく。

マミ「かはっ……! ぐ、うぅっ……」

京子「どうしよう結衣! このままじゃ、マミさんが……」

結衣「くっ……」

その時、突如マミを拘束していたムチが切断された。

マミ「……えっ?」

マミはムチが切断された辺りに目をやると、そこには日本刀を持つ黒髪の少女が居た。

「…………」

その少女は魔女の方をじっと見ている……かと思ったら無防備にも魔女に背を向けた。
そしてその瞬間、魔女の身体は大きな爆発に包まれた。

マミ「なっ!? 一体何が……」

「大丈夫?」

マミ「あなたも、魔法少女なの?」

「えぇ、私は暁美ほむら。見滝原……じゃなくて、七森中の二年生よ」

マミ「そう……助かったわ、ありがとう」

ほむら「お礼なんていいわよ。あの程度の魔女、あなた一人でも十分だったでしょうし」

ほむら「さっき床に撃った弾丸……あれには拘束系の魔法が込められていたんでしょう?」

マミ「っ! そんなことまで分かるなんて……」

ほむら「グリーフシードはあなたにあげるわ、巴マミ」

マミ「私のこと、知ってるの?」

ほむら「えぇ。あなた、有名人だし」

マミ「そう……グリーフシード、本当にいいの?」

ほむら「えぇ。私はグリーフシードのために戦ってるわけではないから」

マミ「そうなの? 何だかあなたとは仲良くなれそうだわ」

結衣(なんか入りづらい雰囲気なんだけど)

京子(だな。しかし今度は爆発系魔法少女か、西垣ちゃんが喜びそうだなぁ)

マミ「あ、二人共。もうこっちに来ていいわよ」

京子「はーい」

ほむら「……彼女たちは?」

マミ「魔法少女の素質がある子たちよ。他にも二人いるの」

ほむら「へぇ……不思議な事もあるのね」

京子「ってあれ、よく見たらほむらじゃん! そっかぁ、ほむらは魔法少女だったのかー」

ほむら「どちら様だったかしら」

京子「ひどっ! クラスメートの顔ぐらい覚えてほしいなぁ」

マミ「暁美さんは歳納さんのクラスメートなんだ。なんというか、偶然ってすごいわね」

ほむら(魔女の結界を出た後は、喫茶店で少しお話をして別れた)

ほむら(戦闘の援護とグリーフシードを受け取らなかったことで、巴マミには好印象を与えられたようだ)

ほむら(今回は彼女がまどかを勧誘してる訳ではないし、友好的にいかないとね)

ほむら(しかし気になるのは、赤座あかり……)

ほむら(キュゥべえがまどかを無視して勧誘してるということは、膨大な因果を持っているに違いない)

ほむら(さらに、魔法少女候補が赤座あかりを覗いて三人も追加……か)

ほむら(魔法少女が増えれば、ワルプルギスの夜に対する戦力になるからありがたいのだけれど)

ほむら(でも美樹さやかみたいに魔女化されても困るわ。どうしたものかしら……)

次の日――

京子「あ、ほむらだ。おーっす!」

結衣「おはよう、暁美さん」

ほむら「おはよう。そちらの二人は、もしかして……」

マミ「そう。残りの魔法少女候補よ」

ちなつ「おはようございます」

あかり「おはようございます。えーっと、暁美先輩って呼べばいいですか?」

ほむら「ほむらでいいわよ。敬語も使わなくていいわ」

あかり「じゃあ、ほむらさん!」

ちなつ「私はほむら先輩って呼びますね」

ほむら「……なんだか変な気分ね。初めてそんな風に呼ばれたわ」

京子「とか言ってまんざらでもないんでしょ」

ほむら「まぁね」

ほむら「…………」

ほむら(どうしてこうなった!?)

ほむら(私はキュゥべえからまどかを守るために、こっそりとまどかの後をつけようと思っていたのに)

ほむら(昨日、喫茶店で話していたら一緒に登校しないかと誘われた)

ほむら(もちろん最初は断るつもりだったんだけど、歳納京子の押しが強くて……承諾してしまった)

ほむら(キュゥべえがこっちにいるからよかったものの……)

ほむら(それに、これじゃあまどかの顔が見られないじゃない!)

ほむら(朝のまどかは見逃すわけにはいかないのよ!)

ほむら(しっかりと目が冷めてる時もあれば、寝不足でぼけっとしてる時もある)

ほむら(どのまどかもそれぞれによさがあって……私に生きる活力を与えてくれる)

ほむら(あぁ、朝のまどかのほっぺをぷにぷにしたい……)

ほむら(って私ったら何を考えるのよ! まどかは命の恩人であり、親友なの!)

ほむら(ふしだらなことを考えたりしては駄目だわ)

ほむら(今のところ特に問題がないから、浮かれてたのかしら……反省しないと)

京子「ほむらって面白いね」

ほむら「え?」

マミ「そうねぇ。ニヤニヤしてたと思えば、いきなり真面目な顔になったり」

ちなつ「なんだか意外かも……」

ほむら「な、ななななっ!? 何のことかさっぱりね」ファサァ…

結衣「そんな風に髪をなびかせてクールぶっても、ちょっと遅かったかも……」

ほむら「べ、別にクールぶってなんかないわ! さっさと学校行くわよ」ダッ

京子「あ、待ってよほむらー」

ほむら(うう、一生の不覚だわ……!)

――二年生教室

ほむら(死にたい……)グテー

京子「どうしたのほむら。うつむいたりしてさ」

結衣「京子、今はそっとしておこうよ」

京子「えぇー」

結衣「黙って言うことを聞け」グイッ

京子「痛い、痛いって。分かったから耳を引っ張らないでよぉ」


ほむら(はぁ……ニヤニヤしてる所を見られるなんて)

ほむら(しかもニヤニヤしてた理由はまどか……私、最低ね)

まどか「あの、暁美さん……?」

ほむら「っ!?」ガバッ

まどか「あ、お休みの所邪魔しちゃってごめんなさい」

ほむら「気にしないで。私に何か用かしら? それと、私のことはほむらでいいわ」

まどか「じゃあ、ほむらちゃん。私とほむらちゃんって……どこかで会ったことない?」

ほむら「…………」

まどか「ご、ごめんね。いきなり変なことを聞いて」

ほむら「別に謝らなくてもいいわ」

ほむら(キュゥべえは今まどかに興味を持っていない。なら私が必要以上にまどかに近づかないほうがいいんじゃ……)

ほむら(でもある程度交友を持ったほうが、身近で守ることができる……どうしたものか)

ほむら(ん? まどかの顔を見てたら、なんだか緊張してきた……)

まどか「あれ、ほむらちゃん……顔真っ赤だよ? 大丈夫?」

ほむら「え、えぇ……」

ほむら(一体何が起きてるの? 全身が熱い……駄目、我慢できない!)

ほむら「まどかっ!」

ほむらはそう言った途端、まどかの身体に抱きついた。

まどか「ほ、ほむらちゃん……?」

ほむら(わ、わわわ私は何をやってるの!? は、はやく離れないと……)

ほむら「ご、ごめんなさい鹿目さん!」

まどか「う、ううん。だ、大丈夫だから……」

まどか「なんでか分からないけど、ほむらちゃんに抱きつかれた時……すごく懐かしい感じがしたの」

まどか「まるで、前にもこんなことがあったような……って何言ってるんだろ。私とほむらちゃんは会ったばかりなのに」

ほむら(もしかして、別の世界線での記憶があるの……?)

さやか「ちょっと転校生! 私の嫁になんてことをしてくれるんだぁ!」

ほむら(む、お邪魔虫……じゃなくて美樹さやか!)

さやか「まどかは渡さないぞー!」

京子「さやか、それはこっちの台詞だよ!」

さやか「京子、あんたもまどかを取ろうっていうの?」

ほむら(美樹さやかがキョーコっていうと、あの子とかぶって紛らわしいわね……っていうか何やってるのよ歳納京子)

京子「いや、私の狙いはまどかじゃなくてほむらだ! あ、でもまどかもいいなぁ……ライバるんと声が似てるし」

まどか「それよく言われるんだぁ。ミラクるん大好きだから、ちょっと嬉しいかも」

京子「え、まどかミラクるん大好きなの? うれしい!」

京子は嬉しさを表現するべく、まどかにおもいっきり抱きついた。

ほむら「なっ、まどかから離れなさい!」

まどか「は、恥ずかしいよ京子ちゃん」

京子「もっと早く言っ欲しかったなぁ。今度遊びに行ってもいい?」

まどか「う、うん。いいけど……恥ずかしいから離れて欲しいなって」

結衣「やれやれ……」

京子「よし、まどかは頂いた!」

さやか「くぅっ、やられたぁ!」

京子「次はほむらだ。ほむらは我がごらく部期待の新人だからね、譲れない!」

京子は誇らしげにそんなことを言うと、ほむらに抱きついた。

ほむら「きゃあっ! は、離れなさい歳納京子! というか私はごらく部に入った覚えなんて……」

京子「よいではないか、よいではないかー」

結衣「よくねーよ」ゴンッ

京子「ちょ、結衣さんや……教科書の背表紙で叩くのは反則ですぜ」

結衣「ごめんね暁美さん。こいつホントお調子者でさ……ほら、行くぞ京子」

ほむら「ちゃんとしつけておいてちょうだい」

結衣「了解」

さやか「い、今のは何だったんだろ」

まどか「さぁ……」

さやか「ねぇ転校生、本当にごらく部入ったの?」

ほむら(ごらく部に魔法少女候補が四人もいるなら、入ったほうがいいとは思ってるけど……うーん)

ほむら「考え中よ」

さやか「へぇ……ごらく部ってどんなことやってるの?」

ほむら「さぁ」

さやか「え、何やってるか知らないのに考え中ってどういうことなのさ」

京子「なになに、さやかもごらく部に興味あるの?」

さやか「ううん、全然ない」

京子「即答ですか……ひどいやつだぜ」

さやか「ま、あたしはこう見えて忙しいしね」

結衣「幼馴染のお見舞いだっけ」

さやか「うん」

ほむら「幼馴染って……上条恭介!?」

ほむら(この世界線では存在しないと思ってたのに……これは注意が必要ね)

さやか「え、何で転校生が知ってるの?」

ほむら「え、えっと……それは、その」

さやか「ま、まさか恭介と付き合ってたりするの!?」

ほむら「そんなわけないじゃない」

さやか「じゃあ、何で知ってるのさ」

ほむら(めんどくさい女ね……適当に嘘つきましょう)

ほむら(私も彼と同じ病院に居たのよ。あなたがお見舞いに行くところを何度か見かけたの)

さやか「なんだぁ、早く言ってよね」ホッ


―― 一年生教室

あかり(あれ? なんだかあかりの存在感がなくなりかけてる気がするよ)

あかり(っていうことは、これで不幸な目に合わなくて済むのかな?)

櫻子「あかりちゃん、何か考え事してるの?」

あかり「きゅ、キュゥべえ!?」

櫻子「久兵衛? 誰それ」

あかり「ごめんごめん、間違えちゃった」

あかり(なんだか櫻子ちゃんとキュゥべえって声が似てるなぁ)

――三年生教室

マミ(暇だわ……早くホームルーム始まらないかしら)

QB(ほむらや京子はなんだか教室で盛り上がってるみたいだよ)

マミ(そう……それはよかったわ)

マミ(魔法少女候補に一人ぐらい三年生が居ても、バチは当たらないと思うの……)

昼休み――

マミ(とうとう待ちに待ったお昼休みね。赤座さんを昼食に誘いましょう♪)

マミ(身体が軽い……こんな幸せな気持ちでの昼食なんてはじめて!)

マミ「あれ、赤座さんの教室ってここよね……いないわ」

マミ(そ、そんな……せっかく久々に誰かと昼食が取れると思ったのに)

マミ(早起きして気合を入れてお弁当作ったのに)

マミ(私って、ほんとバカ)

マミの手に握られていた巨大な弁当箱が、大きな音を立てて床に落ちた。

ほむら「ここに居たのね巴マミ。探したわよ」

マミ「…………」

ほむら「……巴マミ? ちょっと、何よこれ!?」

ほむら「何でこんなにソウルジェムが濁ってるの……グリーフシードは? 昨日あげたわよね!?」

マミ「持ってきてないわ……」

ほむら「チッ……私のを使いなさい」

ほむらはポケットに入れておいたグリーフシードを取り出すと、マミの指に嵌めてあるソウルジェムにかざす。
ソウルジェムの汚れは吸収され、濁りが消えた。

ほむら(もうこのグリーフシードは使いものにならないわね……あとでキュゥべえに処分させましょう)

マミ「……ごめんなさい、暁美さん」

ほむら「一体何があったのよ」

マミ「私ね、赤座さんとお弁当を食べようと思ったんだけど、赤座さんが教室にいなくて……」

ほむら「まさかそんなことで、ソウルジェムが濁っただなんて言わないでしょうね」

マミ「…………」

ほむら「はぁ……呆れて怒る気にもなれないじゃない」

マミ「返す言葉もないわ……」

ほむら「赤座あかりは二年生の教室に来たの、お昼の誘いにね」

ほむら「その後、三年生の教室に行ったんだけど……あなたがいないから、私が探しに来たのよ」

マミ「そうだったの……私ったら早とちりしちゃったのね」

ほむら(早とちりなんかで魔女になられたら、たまったものではないのだけれど……)

――屋上

ほむら「待たせたわね」

あかり「あ、ほむらさんにマミさん!」

京子「やっと来たか、もうお腹ペコペコだよ」

結衣「お前は少しだけ早弁してただろ」

京子「いやー、そのせいで逆にお腹が減っちゃってさ」

ちなつ「まったく、京子先輩には困ったものです」

さやか「でもその気持ちは分かるよ。少しだけ食べたりすると、妙にお腹が空くんだよねぇ」

まどか「もう、さやかちゃんまで……」

ほむら(え……?)

ほむら「な、なんでまどかと美樹さやかが居るの……?」

さやか「ちょ、いきなり何を言い出すのさ転校生。私とまどかが居ちゃいけないっての?」

まどか「おじゃま、だったかな……?」

ほむら「そ、そうじゃないわ。まどかは大歓迎よ!」

さやか「まどかだけかーい!」

ほむら「み、美樹さやかも別に構わないわ」

さやか「何かまどかと扱いが露骨に違うんですけどー」

京子「まぁまどかの方が可愛いもんねぇ」

さやか「はいはいどーせ私は可愛くないですよーだ」

ちなつ「唯一カレシがいる美樹先輩が何言ってるんですかぁ、もう」

さやか「べ、別に恭介はカレシとかじゃないし!」

京子「照れるな照れるな」

ほむら(ここは落ち着かないと。このメンツで集まったから、つい魔法少女関連を意識しちゃったけど、そうとは限らない)

ほむら(今朝、まどかやさやかと京子が話してたからこのメンツで集まった……それだけの話かもしれないし)

QB「すまない、少し遅れちゃったよ」

ほむら(キュゥべえ!?)

QB「鹿目まどか、美樹さやか……どうやら君達も魔法少女の素質があるようだね。こんにちは、僕はキュゥべえ。よろしくね」

さやか「ね、猫がしゃべったぁ!?」

まどか「え、え……?」

マミ「驚きだわ……まさか六人も魔法少女候補がいるなんてね」

ほむら(くっ、とうとうキュゥべえとまどかが接触してしまった)

ほむら(この状況でキュゥべえをどうにかなんてできないし……)

京子「では、まどかとさやかに魔法少女の先輩である私がレクチャーしてあげよう!」

結衣「魔法少女じゃないだろ」

ほむら(くっ、何とかしないと……!)

ほむら「待って!」

京子「ん? どしたのほむら。さっきから何か変だぞ」

ほむら「まどかには、魔法少女の話をしないでほしいの」

マミ「え……なぜかしら?」

ほむら「そ、それは……その……」

ほむら(話しても、きっと信じてもらえない。せめて、もう少し時間をかけて交流を深めていかないと)

ほむら(くっ、結局こうなるのね……良い感じで来てると思ったのに)

マミ「……分かった」

ほむら「え?」

マミ「どんな事情があるかは分からないけど、暁美さんがそこまで言うなら……そうしましょう」

ほむら「巴マミ……」

マミ「私はあなたに命を二度も救われているわ。そんなあなたが、何かよからぬことを企んでるとは思えない」

QB「僕としては君は非常に気になる存在なんだけどね。なんせ僕は君と契約した覚えがないから」

ほむら「それも言えないわ」

京子「まぁマミさんがいいって言うならいいよー」

結衣「そうだね」

結衣(京子はこういう時は空気読めるんだよな。普段から読んでくれると助かる)

さやか「うーん、私としては色々と気になるんだけど……」

マミ「ねぇ暁美さん。美樹さんには話してもいいのかしら?」

ほむら「……話さないでほしいわね、できれば」

さやか「えー」

ほむら(さやかが魔法少女になったら、高確率で魔女になってしまうし……)

マミ「はい、とりあえずこの話はここまでにしましょ」

京子「うんうん。私のお腹はもう限界だー!」

結衣「え? もうお腹いっぱい?」

ちなつ「じゃあ京子先輩のご飯は私が頂いちゃいますね」

京子「ちがうってばー、もう。あ、代わりにちなつちゃんのお弁当くれるなら大歓迎だよ!」

ちなつ「遠慮させていただきます」

京子「ちぇー」

マミ「今日はたっぷり作ってきたから……どんどん食べてね」

さやか「さっきから気になってたけど、マミさんの弁当箱でかいっすね!」

あかり「楽しみだなぁ、マミさんのお料理」

マミ「じゃーん、どうかしら?」

全員「…………」

マミ「え、なんで黙っちゃうの……?」

みんなの反応に首を傾げるマミ。弁当箱の中を見てみると、中身はぐちゃぐちゃになっていた。

マミ(あ! さっきお弁当箱落としちゃったんだ……うぅ、今日は踏んだり蹴ったりね。こんなものを食べさせるわけにはいかないわ……)

あかり「あかり、この卵焼きもらうねっ! いただきまーす」パクッ

マミ「そんな、無理しなくていいのよ赤座さん」

あかり「おいしーい! マミさんお料理上手だなぁ。あ、こっちのきんぴらも貰っちゃおうかな」

さやか「ちょ、先輩を差し置いて食べるとは何事だぁ! 私は唐揚げもらっちゃうもんね!」

京子「ふっ、ならば私はこのラムレーズンを……」

結衣「入ってるわけないだろ!」

ちなつ「じゃあ、私はポテトサラダいただきますね」

ほむら「私は……そうね、野菜炒めでも頂くわ」

マミ「みんな……」グスッ

さやか「ど、どうしたんですかマミさん!?」

あかり「マミさん、ハンカチどうぞ」

マミ「あ、ありがとう……あはは、なんだか恥ずかしい所を見られちゃったわね」

ほむら(私はあなたよりも、まどかの恥ずかしい所が見たい……変な意味じゃないわよ?)

京子「ぷはぁー! 食った食った!」

さやか「いやぁ、マミさんの料理は最高でした!」

マミ「ふふ、ありがとう。毎日この量はちょっと無理だけれど、また今度作ってくるわ」

まどか「本当ですかマミさん!」

あかり「わぁい、とっても楽しみ!」

結衣「私ももっと料理してみるかな……」

ちなつ「結衣先輩の手料理!? 食べに行っちゃってもいいですか?」

結衣「うん。ちなつちゃんなら大歓迎だよ」

京子「私はー?」

さやか「あたしはー?」

結衣「もちろん歓迎だよ、さやかは」

さやか「やったー!」

京子「さやかだけっ!? そんな殺生な……」

ほむら「やれやれ……」

まどか「あ、そろそろ教室に戻らないと……」

さやか「そうだね」

京子「あとは睡眠タイムかー」

まどか「寝ちゃダメだよ京子ちゃん……」

ちなつ「まどか先輩、京子先輩には何を言っても無駄ですよ」

結衣「うんうん」

さやか「まぁこんなに食べたなら寝ちゃってもしょうがないって。たはは」

マミ「そう……なら今度は、美樹さんと歳納さんの分は作るのやめておくわね」

さやか・京子「!?」

さやか「や、やだなぁ……私は寝たりしないですよ? しっかり授業受けますって」

京子「マミさん、私が授業中に寝るような人間に見える?」

結衣(京子はしょっちゅう寝てるよな……)

まどか(うんうん。さやかちゃんも結構寝てるよね)

さやか・京子「何か言った?」

まどか・結衣(なんという地獄耳……)

ほむら「あ、マミ。ちょっとキュゥべえと二人で話がしたいのだけれど……いいかしら?」

マミ「別にいいけど……あ、キュゥべえの意見も聞かないと」

QB「僕は構わないよ」

マミ「そう。暁美さん、ちゃんと授業には出るのよ?」

ほむら「分かってるわ」

マミ「それじゃ、放課後に会いましょう」

QB「さて……話とは何だい?」

ほむら「キュゥべえ……あなた、妙にすんなりとまどかやさやかのこと諦めたわよね」

ほむら「本当に二人に勧誘はしないの?」

QB「勧誘はしたいけどさ、他に四人も候補がいるからね。まずはそちらを優先するよ」

ほむら「まどかやさやかの魔法少女としての素質は、ごらく部四人に劣るの?」

QB「そうだね……というより、あかりの素質がずば抜けてるのさ」

QB「他の五人には多少の差はあるけど、似たり寄ったりだしね」

ほむら(え? 一体どういうことなの……)

ほむら(まどかの素質はずば抜けてるはず……世界線の移動によって何かが起きたのかしら)

ほむら(まぁありえない話じゃないわね。この世界線は最初からおかしなことばかりだったし)

ほむら(もしかして、まどかを見ると妙にドキドキするのも、この世界線が異常だから?)

ほむら(それとも単なる欲求不満かしら……だとしたら情けないわね)

QB「もう話はいいかな、ほむら」

ほむら「えぇ。時間をとらせたわね」

QB「それじゃ、僕はこれで……」

QB「やぁ、遅くなってすまない。思った以上に話し込んでしまってね」

「構いませんわ。最近、魔法少女の候補が大勢見つかったそうですわね」

QB「うん。君の知り合いも居るよ」

「はぁ……困ったものですわ。これ以上魔法少女について知る者が増えてほしくはないのですけれど」

QB「確かに君にとっては不都合だね。何せ君は……」

「それ以上言うなら、たとえあなたでも容赦はしませんわよ?」

QB「おっと、ごめんごめん。それで、どうするつもりだい?」

「……さて、どうしましょう」

ほむら(あれからおよそ二ヶ月が経った)

ほむら(本来なら一ヶ月前にワルプルギスの夜が現れてるはずなんだけど、この世界線では現れなかった)

ほむら(マミも死なず、候補者の誰も魔法少女にならずにここまで来れたなんて……感無量ね)

ほむら(そう言えば佐倉杏子も現れなかったわね。まぁ、きっとマミの死がトリガーになってたんでしょうけど)

ほむら(キュゥべえはあかりを熱心に勧誘してるけど、あかりには願いが特にないので難航しているみたい)

ほむら(しかし、問題点がひとつある)

ほむら(私の能力は、七森中転校直前からワルプルギスの夜との戦いまでの時間を操ること)

ほむら(ワルプルギスの夜との戦いは本来ならおよそ一ヶ月前……つまり、今の私には時間の操作の能力がないも同然)

ほむら(正直な所、かなりの戦力ダウンなのよね。マミがフォローしてくれて助かるわ)

ほむら(このまま、何事もなければいいのだけれど……)

ごめん
ちょっと休憩

仁美な訳はないから向日葵だよな

――お菓子の魔女の結界、最深部

何かを噛み砕くような音が聞こえる。
ばりばりぐしゃぐしゃ。ばきぼきごきべきっ。

魔女は巴マミの身体をおいしそうに食べている。
最初は首から上を食いちぎり、その次は腰から上。そして最後に残った部分。

あかり「いやぁあああああっ! マミさん、マミさぁあああああんっ!」

ほむら「そんな、嘘でしょ……」

あかりは大声で泣きじゃくり、ほむらは呆然としながらその光景を眺めていた。

ほむらはこの魔女と何度も戦ったことがあった。
だが今回の魔女は、そのいずれよりも遥かに強かった。その上ほむらは時間操作が出来ないというハンデがある。
マミは油断などまったくしていなかったが、それでも歯が立たなかった。

魔女はマミを食べ終えると、ほむらに狙いを定める。

ほむら「ひぃっ……!」

ほむら(やっと、やっと私が求めていたものを手に入れたのに……こんな所で死ぬわけにはいかない!)

ほむら(なのに、恐怖で身体が動かない……なんて情けないの、私は!)

ほむら(私がここで死んだら、あかりも死ぬ!)

ほむら(動いて、動きなさいよ私の身体! 今動かなくて、どうするのよ!)

ほむらの願いもむなしく、身体はまったく動いてくれなかった。

ほむら「逃げてっ! あかり、逃げなさい!」

逃げられないなんていう事は分かっている。
魔法少女である自分が身動きできないのに、一般人のまどかが動けるはずがない。
それでも、ほむらには叫ぶことしか出来なかった。

魔女がほむらの身体に向かって来る。だがどうしようもない。
もし身体が動いたとしても、勝てる気がしない。
ほむらはすべてを諦め、目を閉じた。

ほむら「マミさん、あかり……」

ほむら「守ってあげられなくて、ごめんね」

だがいつまで経っても魔女がほむらを食べることはなかった。
ほむらがそっと目を開けてみると、そこには身体を真っ二つにされている魔女の姿があった。

ほむら「一体、誰が……?」

辺りを見回してみると、そこには巨大な斧を持つ、青髪の魔法少女の背中があった。
その少女がこちらを向くが、仮面をつけているため素顔は分からない。

「…………」

ほむら「助けてくれて、ありがとう」

仮面の魔法少女はこくりと頷くと、どこかへ去っていった。

あかり「ほむらさんっ!」

ほむら「あかり、無事だったのね……よかった」

あかり「でも、マミさんが……」

ほむら「私が弱いから……マミを、死なせてしまった」

QB「あかり、マミを助けたいかい?」

あかり「キュゥべえ!?」

あかり「助けたいに決まってるよ!」

QB「そうか……なら僕と契約するんだ。マミを蘇らせたいと願ってね」

あかり「うん。あかり……キュゥべえと契約するよ」

ほむら(私は止めるべきなの? どうすればいいのか、分からない……)

QB「分かった。赤座あかり……君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」

あかり「あかりの願いは……巴マミさんを蘇らせること!」

QB「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した。さぁ、解き放ってごらん……その新しい力を!」

マミ「あれ、私……?」

あかり「マミさん! よかった……」

マミ「きゃっ! いきなり抱きついてどうしたの……って赤座さん、泣いてるの?」

ほむら「マミ……」グスッ

マミ「暁美さんまで泣いてるし……」

ほむら「何があったか覚えてないの?」

マミ「…………」

マミ「あれ、私……死んだはずじゃ」

ほむら「あかりが契約したの。あなたを蘇らせるために」

マミ「……本当なの、赤座さん?」

あかり「はい」

あかりがそう答えた瞬間、マミはあかりの身体を抱きしめ返した。

あかり「マミさん……?」

マミ「ありがとう、ありがとう赤座さん……!」

あかり「やっと、恩返しができたなぁ」

マミ「恩返し?」

あかり「あかりがマミさんと出会った時のこと、覚えてる?」

マミ「えぇ。使い魔に襲われるあなたを、私が助けたのよね」

あかり「うん。マミさんはあかりの命を救ってくれたから、何とかマミさんに恩返しがしたかったんだぁ」

マミ「赤座さん……」

マミ「でもあなたは、これから命をかけた戦いをすることになるのよ」

マミ「私のせいであなたをこんな危険な世界に巻き込んでしまうなんて……本当に、ごめんなさい」

あかり「謝っちゃダメだよ。これはあかりが決めたことなんだから」

あかり「あかりは、マミさんに生きてて欲しかったんだもん。だって……あかりはマミさんのことが大好きだから」

マミ「……っ!」

マミ「うっ、ううっ、うわあああああああああんっ!」

マミは大声で泣き続けた。自分の感情すべてを爆発させるかのように。
あかりはそんなマミの背中を、あやすように撫で続けた。

ほむら(結界も解けたし、おじゃま虫は退散するとしましょう……)

――マミの家

マミ「うぅ、何だか思い出すだけで恥ずかしくなってくるわ」

あかり「あ、あかりも恥ずかしいよぉ」

マミ「あら、そうなの? さっきはあんなに大人っぽかったのに」

あかり「あはは……」

マミ「さて、それじゃあ今後について考えて行かないとね。本当は暁美さんにも居て欲しいんだけど、どこか行っちゃったし」

マミ「メールしたら、二人でごゆっくり……なんて言われちゃうし。もう!」

マミ「ねぇ、赤座さん……」

あかり「なぁに?」

マミ「さっき言った、大好きっていうのは……その、友達とか親友とか以上の意味だったりするのかしら」

あかり「う、うん。あかりは……マミさんのことすっごく、すっごく好きだよ。その……恋愛的な意味でも」

あかり「女の子が女の子を好きになるなんて、ちょっとヘンかもしれないけど……好きなものは好きだからしょうがないよね」

マミ「私も赤座さんのこと好きよ、そういう意味で」

あかり「っていうことは、今日から恋人同士っていうことなのかなぁ」

マミ「そうね。ねぇ……キス、してもいいかしら」

あかり「キ、キス!? だ、だめだめ! ま、まだそういうのは早いよぉ!」

マミ「あら、そうなの?」

あかり「そう、そうなの! それよりもマミさんは、赤座さんっていう呼び方を変えて欲しいなぁ」

マミ「そうね、ちょっと堅苦しいわ……。じゃあ、あかりちゃん……でいいかしら?」

あかり「うん。あかりはマミさん、でいいのかな?」

マミ「マミ……って呼んで欲しいかな」

あかり「マ、マミ……さん。あ、さん付けちゃった」

マミ「ふふ、まぁすぐに変えられるものでもないわよね」

あかり「前にもこんな会話があったねぇ」

マミ「あったわね。あかりが語尾に"ぜ"をつけたりしてた」

あかり「もう、そこは忘れてよぉ」

マミ「あかりちゃんが私と出会った時、私が何を願って魔法少女になったのかを聞いたの……覚えてる?」

あかり「うん。答えは教えてくれなかったね」

マミ「そうね。でも、もっと早く話しておいたほうがよかったと思ってる」

マミ「私はね……生きたい、と願ったの」

マミ「二年前、私は家族で旅行へ出かけたの。でも、車に乗ってる時に交通事故に遭ってしまった」

マミ「両親は即死。私もいつ死んでもおかしくない状態だった」

マミ「そんな時にキュゥべえが現れたの。そして、生きたいと願った……」

あかり「そんなことが……」

ライバるん「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい・・・!」

マミ「明日、他のみんなにも話そうと思ってる」

マミ「本当にどうしようもない時にこそ契約するべき、っていう言葉の説得力が増すでしょうし」

あかり「そうだね……あかりも、本当にどうしようもないと思ったから契約したんだし」

あかり「ポテチ食べ放題とか、ブラックコーヒー飲めるようになるとか……そんな願いで契約しなくてよかったよぉ」

マミ「なんというか、あかりちゃんらしいわねぇ……うふふ」

あかり「あ、今子供扱いしたでしょー」

マミ「そりゃあ子供だし……あかりも私も、ね」

マミ「ねぇ、もしよければなんだけど……今日、泊まって行かない?」

あかり「お泊り? うん、いいよぉ。マミさんとたくさんお話ししたいし。家に電話してくるね」

マミ「うん。さてと……私は夕飯の支度でもするかな」

マミ(こ、これって初夜っていう奴よね? な、何だかドキドキしてきたわ!)

マミ(それに……おとまり会なんて、何年ぶりかしら。ワクワクもしてきたわ!)

マミ(私、今すごく幸せよ……ずっとあかりと一緒に居たいな)

夕食後――

マミ「それじゃ、お風呂に入りましょうか」

あかり「マミさん先にどうぞ?」

マミ「えっ」

あかり「えっ?」

マミ「こ、こういう時は一緒に入るものなのよ! ……たぶん」

あかり「そうなんだ。マミさんは物知りだなぁ」

櫻子「わ、私と契約して、魔法少女になってくださらない?」

ちなつ「!?、な、なんで私ナース服着てるの?」

――お風呂

あかり「わぁ、思ったより広いなぁ」

マミ「でしょ? 二人なら何とか入れるわ。さ、座ってちょうだい……身体洗ってあげるわね」ワシャワシャ

あかり「あっ! くすぐったいよぉマミさん」

マミ「そう? じゃあもうちょっと力を入れるわね」

あかり「いたっ! いたたたっ!」

マミ「あ……ごめんなさい。力加減って難しいわね……」

櫻子「ほ、保守しますから、私と契約してくださらないかしら・・・?」

櫻子「私と契約して魔法少女になれ、おっぱい」

向日葵「結構ですわ」ドゴォ

櫻子「」

なんで櫻子と向日葵入れ替えてたんだ俺寝る

でも櫻子って名前は向日葵みたいな口調が似合うよな…

ライバるん「がんばって・・・!」

保守う

櫻子「巴マミ・・・私と同い年・・・おっぱい・・・お前なんか魔法少女になっちゃえーー」

撫子「なぜか櫻子見てると殺意が」

              ____
          ´         `ヽ
         ,′ く  早 お
           i   だ く 願   i
           |   さ 書 い   |
          l   い .い し   .|
               っ ま  
            ヽ     て す  ノ
             `ー--v--‐ ´
                .-─- 、

               . ´..:.:.:.:.:.: ´:. : .\
          /..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ_

          /..:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト!_
.          / .. .:r==、、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ/! )
         /{.-┴- i i ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:///{'
       .´ 丶'   `ヽヽ.:.:./マァァ77////
.       ,′´   ヽヽ i i/  }廴////
      i       i i | !ヽ  { 廴/
.       ! li | |  li | | ト{_人  ,}_/
       jハ{ | |  !l !リ<¨ __ノ
       ゝミL辷jムノ<¨´


あかり「はぁ……お風呂に入るとぽかぽかして気持ちいいなぁ」

マミ「そうね……二人で一緒に入ると、少しドキドキしちゃうけど」

あかり「マミさんって……やっぱり大きいですよね。洗ってる時に実感しました」

マミ「あかりちゃんもすぐに大きくなるわよ、きっと」

あかり「だといいんだけれど……さっきから大きいものが背中にあたって、ちょっと気持ちいいなぁ」

マミ「もう、あかりちゃんのエッチ」

数十分後――

マミ「それじゃ、電気消すわよ?」

あかり「はぁい」

マミ「ねぇ、あかりちゃん」

あかり「なに?」

マミ「あかりちゃんに抱きついてもいいかしら」

あかり「うん、いいよ。だってあかりはマミさんの恋人……だもん」

マミ「ふふ。それじゃあ遠慮なく……ぎゅー」

あかり「あかりも抱きしめ返しちゃおうかな。えいっ」

マミ(ん? 誰かの視線を感じる……?)

マミ(…………)

マミ(気のせいね)

次の日の昼休み、学校の屋上――

あかり(あかりとマミさん、そしてほむらさんは……昨日何があったかを説明した)

結衣「そんなことが……」

ちなつ「マミ先輩、身体は大丈夫ですか?」

マミ「えぇ。心配してくれてありがと」

京子「あかりが、魔法少女に……」

さやか「でも、みんな生きて帰ってこれてよかったよ」

まどか「魔女を倒してくれたのは誰なんだろう……青い髪なんだよね?」

ほむら「えぇ」チラッ

マミ「青い髪と言うと……」チラッ

あかり「気になるのはやっぱり……」チラッ

みんな「チラッ」

さやか「え、私?」

さやか「さやかちゃんだと思った? 残念、ハズレでしたー」

ほむら「そりゃそうよね」

京子「うんうん」

マミ「美樹さんがあんなに強いとは、ちょっと思えないわね」

さやか「ひどっ! っていうか京子には言われたくないし!」

京子「いてててて! もう、ほっぺ引っ張らないでよー」

放課後、一年生教室――

ちなつ「あかりちゃん、部室行こっ。今日は話すことがたくさんありそうだし」

あかり「うん」

「いい加減にしてちょうだいっ!」

誰かが大声で叫び机を両手で思い切り叩いた。
あかりたちがそちらに視線をやると、櫻子と向日葵がいる。

あかり「またケンカかなぁ」

ちなつ「うん。でも向日葵ちゃん、ものすごく怒ってない?」

あかり「放っておくわけにはいかないよね」

櫻子「何も机を叩くことないだろ……」

向日葵「だまらっしゃい! もう我慢の限界ですわ……櫻子なんて大っ嫌い!」

櫻子「なっ……」

ちなつ「ちょっと二人とも、どうしたの?」

向日葵「お二人には関係ありませんわ!」タタッ

あかり「あ……待ってよ向日葵ちゃん!」

ちなつ「私、向日葵ちゃん追いかけてくる」

あかり「お願い、ちなつちゃん。ねぇ櫻子ちゃん……何があったか教えてくれないかな」

櫻子「いつもみたいにおっぱいおっぱい言ってたら、いきなり向日葵が怒った。それだけ」

あかり「……本当にそれだけ?」

櫻子「…………」

あかり「櫻子ちゃん」

櫻子「あー、もう……分かったわよ。今日は……その、ちょっと強く言い過ぎたかも」

あかり「どんなことを言ったの?」

櫻子「向日葵みたいにでかいおっぱいは大嫌いだ……って言っちゃった」

櫻子「考えてみれば、嫌いだなんて言ったのは初めてな気がする」

あかり「そっか……教えてくれてありがと、櫻子ちゃん」

櫻子「ん。ごめん、私もう帰る……」

あかり「えぇっ、待ってよぉ。今ちなつちゃんが向日葵ちゃんを……」

櫻子「合わせる顔なんて、ないもん」

ちなつ「ごめんあかりちゃん。向日葵ちゃん、見失っちゃった」

あかり「そう……」

櫻子「もういいでしょ? それじゃ、また明日」

櫻子(向日葵のばーか。おっぱいばーか)

櫻子(なんであれぐらいであんなに怒るかな。おっぱいでかいくせに幼稚だなぁ、もう)

櫻子(…………)

櫻子(なんで私ってこう嫌な子なのかな。はぁ……)

櫻子(あの時の向日葵、怒りもしてたけど……泣いてたじゃん)

櫻子(私、向日葵を悲しませちゃったんだ。一番大切な友達のはずなのに)

櫻子(なんだか仲直りできる気がしないよ……)

櫻子(明日、学校行きたくないなぁ)

十日後――

あかり「今日も櫻子ちゃんいないね。これで今週ずっとお休み……心配だよぉ」

ちなつ「お見舞いに行っても櫻子ちゃんは部屋に閉じこもってるし」

あかり「うーん、魔法の力で何とかできないかなぁ。こう、どーんって!」

ちなつ「どーんって何よ、どーんって……」

あかり「なんとなくだよぉ、なんとなく」

あかり(マミさんに相談したけど、こういうのは魔法でなんとかなるものじゃないって言われちゃった……)

あかり(あかりには、何も出来ないのかなぁ?)

ちなつ「あ、向日葵ちゃん。おはよう」

あかり「おはよっ」

向日葵「おはようございます、赤座さんに古谷さん……」

あかり(うわぁ、向日葵ちゃんものすごく落ち込んでるよぉ。最近ずっとこんな感じ……)

魔女化でひまさく破綻しないでくれ

――櫻子の家

櫻子(今、何時だろう。寝てばかりで時間の感覚がなくなってきた)

櫻子(向日葵とケンカした次の日、向日葵に謝ったけど無視された)

櫻子(次の日も、その次の日も謝ったけど……ダメだった)

櫻子(土日は向日葵の家に行ったけど、入れてもらえなかった)

櫻子(そして今週はずっと学校をサボっている)

櫻子(私、何やってんだろ……)

撫子「ただいまー」

花子「おかえり」

撫子「櫻子は?」

花子「絶賛引きこもり中。さっさと仲直りすればいいし」

撫子「それが出来ないから、こんなことになってるんだろうなぁ」

花子「よく分からんし……」

撫子(今日は竹輪の磯辺揚げでも作ってやるか)

花子「あれ、ヒザすりむいてる……何かあったし?」

撫子「あぁ、これ? 帰りに曲がり角で人とぶつかっちゃってさ」

撫子「ぶつかったのが櫻子と同じ七森中の制服着てる子でね。なんでか分からないけど、他人の気がしなかったなぁ」

花子「???」

櫻子「ふわぁ……今何時だろ」

櫻子(最近寝過ぎてるせいか、全然眠れなかった気がする)

櫻子「……って、ここどこ? 私、部屋で寝てたはずじゃ……」

櫻子の居る空間には、色というものが白と黒しかなかった。
櫻子自身の身体は真っ黒になっている

櫻子「な、何これ……もしかして夢?」

櫻子「夢なら早く覚めてほしいなぁ……」

櫻子がそんなことを呟いてると、目の前の地面から太い鞭のようなものが飛び出した。
それは櫻子の方に猛スピードで向かい、彼女の身体をかすめる。

櫻子「いったぁい! な、何なのよこれ!? 夢なのに、なんで痛みが……?」

さっきは一本だけだったが、それとは比べ物にならないほどの数が現れ、櫻子の身体を拘束する。

櫻子「離せ、離せよぉおおおっ!」

櫻子(痛い、痛いよぉ……)

櫻子(これ、夢じゃないんだよね……もしかして、バチが当たったのかな)

櫻子(私が向日葵にひどいこと言ったから……)

櫻子(そっかぁ。それなら……仕方ない、よね)

櫻子(でも、最後にもう一度だけ謝りたかったなぁ)

櫻子「向日葵、ごめんね……」

櫻子「あれ、ここ……私の部屋だ。さっきのは、やっぱり夢だったのかな」

「…………」

櫻子「うわぁ! だ、誰……?」

櫻子の目の前には、青い髪をした仮面の少女が居た。
少女は櫻子の無事を確認すると、立ち去ろうとする。

櫻子「待って!」

「……?」

櫻子「もしかして、私を助けてくれたの?」

「…………」

少女は足を止めて、櫻子に背中を向けたまま頷いた。

櫻子「その……ありがとう!」

櫻子は起き上がって少女の方へ歩こうとするが、足がふらついて体勢を崩してしまった。

櫻子「あ、あれっ……?」

「櫻子っ!?」

仮面の少女はとっさに、倒れかける櫻子の身体を受け止めた。

櫻子「向日葵、なの?」

ごまかしようがないと判断したのか、少女は仮面を外す。

向日葵「十日ぶり、ですわね」

櫻子「向日葵! 向日葵ぃ……!」

櫻子は向日葵の身体を力強く抱きしめ返す。

向日葵「ちょ、ちょっと! 苦しいですわ櫻子」

櫻子「だって、だって……寂しかったんだもん!」

向日葵「もう……櫻子は本当に世話が焼けますわね」

櫻子「向日葵……ひどいこと言って、ごめんね」

向日葵「…………」

向日葵「私もちょっと冷たくしすぎましたわ。ごめんなさい、櫻子」

櫻子「そ、そーだぞ! 私があんなに謝ったっていうのに……」

向日葵「まっ……! 全然反省の色が伺えませんわね!」

櫻子「何をー、そっちこそ!」

櫻子・向日葵「…………」

櫻子「ぷっ、あははははっ!」

向日葵「ふふっ……何だか久しぶりですわね、こういうのも」

櫻子「ねぇ向日葵。さっきのは夢じゃないんだよね?」

向日葵「えぇ」

櫻子「あれは一体何なのさ?」

向日葵「あれは……魔女というものですわ」

櫻子「魔女?」

向日葵「簡単に言えば……心が弱った人間を殺す化物、でしょうか」

櫻子「そ、そんな奴が本当にいるなんて……」

向日葵「そして私は、魔女と戦う魔法少女ですの」

櫻子「ま、魔法少女……ぷっ! あははははっ! ひ、向日葵が魔法少女だって!」

向日葵「私は真面目なお話をしてるのよ?」

櫻子「ご、ごめんごめん」

向日葵「説明、続けますわね」

十分後――

櫻子「一つだけ何でも願いが叶う、かぁ。向日葵は何を願ったの?」

向日葵「絶対に誰にも話したくないですわ」

櫻子「えー、ケチ!」

向日葵「ケチじゃありません。でもこの際、櫻子にだけはお話しておきましょう」

向日葵「今回のようなことが、再び起こっても困りますし……」

櫻子「?」

向日葵「櫻子は覚えていないでしょうけど、小さい頃に櫻子が大きなおっぱいを持つ人に憧れてる時がありましたの」

向日葵「そんな櫻子を見て、私は大きな胸が欲しくなりましたの」

櫻子「……はい?」

向日葵「今考えてみれば、何でそんなことを考えたのかまったく理解できませんけど……」

櫻子「まぁ子どもってのは、時々訳のわからないことするよね」

櫻子「でもさ、今の話と向日葵の願いになんの関係があるのさ? おっぱいでかくしろと願っわけじゃあるまいし」

向日葵「…………」

櫻子「え、まさか……」

向日葵「そのまさかですわ……」

向日葵「大きな胸になりたいなぁと悩んでた私の前に、キュゥべえが現れたましたの」

向日葵「そしてその口車に乗せられて、あっさり契約」

櫻子(こういう時、どんな反応をすればいいんだろ……)

向日葵「しかも櫻子ったら、最初はおっぱいおっぱい喜んでくれましたのに、次第に妬むようになりましたの」

櫻子「あー、それはなんとなく覚えてる」

向日葵「櫻子のために叶えてもらったお願いが、櫻子とのケンカの原因になるなんて……なんだか理不尽ですわ」

櫻子「なんと言うか、ごめん」

向日葵「別に謝らなくてもよくってよ。私が勝手にやっただけのことですし」

櫻子「そう言えば、今日は髪をほどいてるんだね」

向日葵「えぇ。魔法少女になるときはいつもそうしてますわ」

櫻子「なんで? あと、仮面をつけてたのも気になるんだけど」

向日葵「そ、それは……」

櫻子「それは?」

向日葵「恥ずかしいから、ですわ」

櫻子「魔法少女やってることが?」

向日葵「正確に言えば、私の願いを他人に知られるのが……ですわ」

向日葵「魔法少女と言うことが知られれば、何を願ったのか聞かれるかもしれない」

櫻子「あぁ……おっぱいを大きくして! なんて願ったなんて誰にも言えないよね」

向日葵「櫻子、絶対に誰にも言っちゃダメですわよ」

櫻子「分かってるって。これは私と向日葵だけの秘密ね」

向日葵「そ、そうね。私と櫻子だけの秘密にしましょう」

向日葵(なんだか、少しドキッときましたわ)

櫻子「さーて、そろそろご飯でも食べるかな。今日、ウチで食べて行かない?」

向日葵「そうですわね……では、お言葉に甘えるとしましょう」

櫻子「んじゃ、私はそれ伝えてくるから。向日葵は部屋でゆっくりしててよ」

向日葵「……櫻子、待ちなさい!」

櫻子「どうしたのさ、いきなり叫んで」

向日葵「私の後ろに隠れて」

櫻子「?」

向日葵「いいから早く!」

櫻子「わ、分かった……」

向日葵「部屋の外にいる人、入って来なさい」

櫻子「? 撫子か花子じゃないの」

ほむら「さすがね、古谷向日葵」

マミ「あかりちゃんの魔法で気配を消したつもりだったんだけど……」

あかり「うーん、まだまだ未熟ってことかなぁ。勝手にお邪魔してごめんね、櫻子ちゃん」

櫻子「え、あかりちゃんも魔法少女なの……?」

向日葵「盗み聞きとは趣味が悪いですわね」

マミ「ごめんなさい……」

向日葵「笑ったり罵倒したりしても結構ですのよ。胸を大きくするために契約だなんて……」

ほむら「そんなことはしないわ。あなたの気持ちはよく分かるもの」ペターン

向日葵(この絶壁……櫻子といい勝負ですわ。学年が一つ上だというのに)

あかり「そうだよ。向日葵ちゃんは櫻子ちゃんのことが大好きなだけだもんねっ」ペターン

向日葵「そ、そそそそんなことはありませんわ赤座さん!」

マミ「願いなんて人それぞれだわ」ボイーン

向日葵「…………」

マミ「な、なぜ私だけ睨むのかしら……?」

ほむら「そりゃあ、ねぇ」

櫻子「天然ものでその大きさとは……」

あかり「マミさんの胸、すごく柔らかいんだよねぇ」

マミ「あ、あかりちゃん……?」

ほむら「何があったか教えなさい巴マミ! それも詳細に!」

マミ「ちょ、ちょっと落ち着いてよ暁美さん」

櫻子「向日葵のおっぱいも柔らかいけどね」モミモミ

向日葵「こら、やめなさい櫻子!」

数時間後、櫻子の部屋――

あかり「おいしかったなぁ、竹輪の磯辺揚げ」

櫻子「うんうん。もっと食べたいなぁ」

向日葵「食べ過ぎると太りますわよ?」

櫻子「それはこっちの台詞だよ。向日葵も結構食べてたよね」

向日葵「む……」

ほむら「さて、私たちはそろそろお暇させていただくわ」

マミ「そうね。お二人のおじゃまをしちゃいけないし……ふふっ」

櫻子「おじゃま?」

向日葵「な、何を言ってますの巴先輩!?」

マミ「それじゃ、また明日ね」

あかり「バイバーイ」

櫻子「ねぇ向日葵、おじゃまってなんの話?」

向日葵「何でもありませんわよ。さ、ちょっと早いですけれど、寝るとましょう」

櫻子「うん。今日は色々なことがあってかなり疲れたよ……」

向日葵(櫻子と一緒に寝るなんて久しぶりな気がしますわ)

櫻子「向日葵場所とりすぎー。これだからおっぱい魔神は」

向日葵「むっ、あなた……あの話を聞いた後でよくそんなことが言えますわねぇ」

櫻子「いいじゃん。向日葵のおっぱいは私専用なんだから」

向日葵「えっ……? やだ、何を言ってますの櫻子ったら!」

櫻子「だって私のためにおっぱい大きくしたんでしょ?」

向日葵「それは、そうですけれど……」

櫻子「向日葵のおっぱい、柔らかいなぁ」

向日葵「む、胸に顔をうずめたりしてはいけませんわ! あんっ!」

櫻子「Zzz……」

向日葵「寝てるし……もう、自分勝手な子ですわね」

ごはん

次の日の放課後、ごらく部――

ほむら「さて、それじゃあ作戦会議を始めましょう」

京子「いつの間にかごらく部が魔法少女部になってますなぁ」

マミ「それなりの広さがあるし、とても便利な建物よね」

さやか「それを今まで四人で使ってたとは、羨ましいぞこのこのぉ」

向日葵「話を進めていただけますか、暁美先輩」

ほむら「……そうね。まずは、私の能力について教えておきましょう」

ほむら「とは言っても、今の私なんて大したことはできないのだけれど」

ほむら「せいぜいこの盾の中にいろいろなものを収納できるぐらい。主に拳銃や対戦車ライフルなどが入ってるわ」

結衣(どうやって用意したのかは聞かないでおこう……)

まどか「なんだかドラえもんみたいだねぇ」

櫻子「ほむえもーん。何か道具出してよぉ!」

ほむら「サバイバルナイフー」

ちなつ「なんて夢がない道具なのっ!」

マミ「次は私ね。私は主にマスケット銃を出して戦ってるの」

マミ「リボンで敵を拘束したり、身を守るための結界を張ったり……あと、傷の治療もできるわ」

結衣「なんというオールラウンダー……」

あかり「さすがマミさんだねっ。えっと、次はあかりかな」

あかり「あかりは気配を消す魔法を練習中だよ」

京子「まじかるアッカリーンか!」

あかり「それを元に思いついたんだよぉ。気配を消せたりしたら便利かなって……」

結衣「影が薄いのは長所にもなりうるんだなぁ」

ちなつ「まさかアッカリーンがそんなことになってるとは……」

あかり「それとは別にあかりが願いによって得た魔法っていうのがあってね」

まどか「あかりちゃんの願いって言うと……マミさんを生き返らせることだよね」

さやか「も、もしかして死者蘇生の魔法!?」

あかり「そんなすごい魔法は使えないよぉ。うーん、どうやって説明すればいいんだろ」

ほむら「あかりの固有魔法は簡単に言えば、他人の未来を少しだけいい方に導く能力」

櫻子「全然簡単じゃないよ……」

ほむら「そうね、具体例を出しましょう。例えば、私が歩いてる先にバナナの皮があったとするわ」

ほむら「私はそれに気づいていないので、このままではバナナの皮を踏んで転んでしまいます」

ほむら「そこであかりが魔法を使うと、私はバナナの皮を踏まずに済む……ってわけ」

さやか「なんか例えがしょぼいけど、使い方しだいではすごい魔法になりそうだなぁ」

ほむら「でもこの魔法は多用してはいけない」

櫻子「なんでさ?」

ほむら「他人の未来を操るというのは、ものすごい魔力を使うの。本来の結果との違いが大きければ大きいほどね」

ほむら「さっきの例みたいに、バナナの皮を避けるぐらいならいいけど……」

向日葵「他人の生命を左右するような状況で使えば、莫大な魔力を消費する……というわけですわね?」

ほむら「飲み込みが早いわね。さすが大ベテランの魔法少女だわ」

向日葵「では、最後に私ですわね」

向日葵「私の得物は……知ってる方もいらっしゃるでしょうけど、斧ですわ」

京子「おぉ、ミラクるん・ドンキ!」

向日葵「あ、斧といっても叩く方ではなくて、斬り裂く方ですわね」

結衣「へぇ……」

向日葵「固有魔法は自分の身体の治癒および、一時的な肉体強化ですわ」

櫻子「脳筋じゃん」

向日葵「何か言ったかしら」ギロッ

櫻子「な、何も言ってないって!」

ちなつ「そういえば、向日葵ちゃんの願いって何?」

向日葵「そ、それは……」

さやか「?」

向日葵「笑わないって約束してくださいますか?」

まどか「笑ったりなんてしないよ、絶対」

向日葵「そ、それじゃあ教えますわ」

ちなつ「ごくり……」

さやか「なるほどね!」ペターン

ちなつ「なるほど……」ペターン

まどか「向日葵ちゃんは櫻子ちゃんのことが好きなんだねぇ」ペターン

向日葵「そ、そんなんじゃありませんわ……」゙

ほむら「でも、なぜそれが治癒や肉体強化になるのかしら」

マミ「女性の胸というのは赤ちゃんを育てるときに必要でしょ?」

マミ「だからきっと、命を成長させるということから肉体強化に繋がってるのだと思うわ」

ほむら「なるほど。赤ん坊は母乳から栄養をもらってるわけだから、ある意味治癒とも言えるわね」

櫻子「向日葵はいいお母さんになるだろうねぇ」

向日葵「な、何を言ってますの櫻子ったら!」

ほむら(……私たちに子どもを宿すような機能なんて、残ってるのかしら?)

あかり「二つもあるなんていいなぁ」

向日葵「赤座さんのほうが応用がきいてすごいと思いますわ」

向日葵「それと二つあるっていうのも、ちょっと違いますわね」

ほむら「?」

向日葵「肉体強化の際の副作用として、治癒が行われるのですわ」

向日葵「自分以外には使えないという弱点もありますし……」

櫻子「あれ、でも前に私の傷を治したよね?」

向日葵「あれは別の魔法ですわ。あまり大きな傷は治せない……まだまだ未熟ですわね」

さやか「あれ?」

まどか「どうしたの、さやかちゃん」

さやか「あかりってどうやって攻撃するの?」

あかり「あ、いい忘れちゃった。あかりわね、お団子を飛ばして戦うんだぁ」

京子「マジですか……」

あかり「お団子を飛ばして、そこからビームを発射して戦うの!」
   オールレンジ
マミ「全方位攻撃って奴ね……うふふ」
     オール
京子「全自動レンジ攻撃……? なんだかエグそうだなぁ」

数十分後――

マミ「さて、私たちはそろそろ魔女探索に行ってくるわね」

京子「いってらっしゃーい!」

ちなつ「気をつけてくださいね」

あかり「うん、ありがと」

ほむら「申し訳ないのだけれど、今日は魔女探索を休んでもいいかしら?」

マミ「そうね……疲れも溜まってるでしょうし、構わないわよ。古谷さんもいるし」

向日葵「ご期待に添えられるよう、頑張りますわ」

ほむら「ありがとう。それじゃ、また明日……」

ほむら(大ベテランの古谷向日葵が仲間になったことで、魔女退治はそれなりに楽になるだろう)

ほむら(しかし、何が起きるか分からないのが魔女退治)

ほむら(時間操作はできないし、手持ちの兵器にも限りがあるわ)

ほむら(このままでは完全に足手まとい。何とかしなければ……)

そんな事を悩みつつ校舎内を歩いていたら、突如目の前の教室から爆発音が聞こえた。

ほむら「な、何が起きたの!?」

ほむらは猛スピードでその教室に入る。すると、そこには教師と思わしき女性がいた。

西垣「またやってしまったな……ん? なんだ、暁美か」

ほむら「西垣先生……」

ほむら(学校でやたらと爆発を起こしてる謎の教師、西垣奈々……)

西垣「どうしたぼーっとして。もしかして爆友になりにきたのか!?」

ほむら「爆友?」

西垣「なんだ、違うのか。爆友ってのはなぁ、私と一緒に実験したり爆発したりしようぜ的なアレだ」

ほむら「は、はぁ……」

ほむら(爆友、爆弾……そうだわ、西垣先生なら私より遥かに高性能な爆弾を作れるんじゃ!?)

ほむら「あの、西垣先生。これを見てもらえますか?」

西垣「ほほう……これはなかなかいい爆弾じゃあないか。もしかして暁美が?」

ほむら「そうです。インターネットで調べたりして……」

西垣「そうか。なぁ暁美……これ、生物を殺傷する目的で作ったんだろう」

ほむら「……はい」

西垣「私はそういうのは好きじゃない。爆発ってのはあくまで実験の副産物なんだ」

ほむら「…………」

西垣「暁美は何のためにこれを作ったんだ。よければ話してくれないか?」

ほむら「…………」

ほむら「大切な人を、守るためです」

ほむら「でも、今の私じゃ足手まといで……もっと強い武器が必要なんです」

西垣(この爆弾、対人兵器としては十分だと思うが……化物と戦ってるとでもいうのか?)

ほむら「西垣先生、もっと強力な爆弾の作り方を教えていただけませんでしょうか」

西垣「質問するぞ暁美。お前、爆弾を人間に対して使ったりはしてないよな? そして今後も使うつもりはないよな?」

ほむら「もちろんです」

西垣「分かった、それなら教えてやろう。ビシバシ行くからな、覚悟しとけ」

ほむら「はい!」

ほむら(魔法少女に向けて使ったことはあるけど……人間じゃないからセーフよね)

バイトェ・・・22時半過ぎまで書けないごめん
落ちたら同じスレタイで立て直す

向日葵のおっぱいが偽物だなんてこんなの絶対おかしいよ!

\トッモコーン/か

探せばいそうだがね
それよりも京子と同じクラスなのに出てこない綾乃千歳のが…

数日後、ごらく部――

マミ「最近、何か視線のようなものを感じるのよね」

櫻子「まさか、魔女……?」

マミ「ううん、おそらく人間のものだと思う」

さやか「ほほう、これはもしやマミさんのファン!?」

結衣「巴先輩、美人でスタイルもいいからありえるかも」

マミ「もう、おだてても何も出ないわよ」

京子「ストーカーという可能性もあるよね」

ちなつ「ちょっと何言ってるんですか京子先輩」

マミ「ストーカー……そうかもしれないわ」

まどか「えぇっ!?」

マミ「視線を察知した時、何だか悪寒を感じたもの……」

ほむら(まさか、佐倉杏子……?)

ほむら「ねぇマミ。そのストーカー、佐倉杏子という可能性があるんじゃない?」

マミ「佐倉さん……? って何で暁美さんがその名前を知ってるの?」

ほむら「私の能力は時間を動かすものだと以前言ったわよね。そして私は、この能力で何度か時間を巻き戻している」

マミ「つまり、その間に佐倉さんに会ったことがあるということね」

ほむら「えぇ。そしてあなたとの間に何があったかも、あらかた把握してるわ」

マミ「な、何だか恥ずかしいわね……でも確かに、佐倉さんならありえるかも」

京子「ねぇマミさん、その佐倉って人は誰なの?」

マミ「そうね、みんなにも話しておきましょう……」

マミ「佐倉杏子……彼女は魔法少女で以前、協力して魔女と戦ってたの」

マミ「でもいろいろあって敵対することになってしまった」

櫻子「いろいろって?」

向日葵「言えないからいろいろって濁してるんでしょう。察しなさい」

マミ「言えないっていうか、私にもよく分からないの」

マミ「彼女はある日突然、人が変わったようになってしまった」

ほむら(無理もないわね。自分のせいで家族が心中してしまったのだから……)

ほむら(でもそれを私の口から言うわけにもいかない。こういうことは本人の口から聞いてこそ意味がある)

向日葵「もしストーカーの正体がその人だった場合、巴先輩はどうするおつもりですか?」

マミ「私は戦いたくなんてないけれど、そうも言ってられないでしょうね。振りかかる火の粉は払うしかない」

あかり「マミさん、そんな風に考えちゃダメだよ。お話がしたいだけなのかもしれないし……」

マミ「……だったら、いいんだけどね」

まどか「なんで、魔法少女同士で争わなきゃいけないの? 魔法少女は魔女を倒すため戦ってるんでしょ?」

まどか「だったら、ここにいるみんなみたいに協力するのが普通じゃないのかな」

ほむら「まどか。前にグリーフシードの話はしたわよね」

まどか「ソウルジェムの汚れを取るためのものだよね? 魔女が落とすんだっけ」

ほむら「そう。そして魔法少女はそれがなければ……いずれ魔法が使えなくなる」

ほむら「魔法少女にとっては生命線なの。そしてグリーフシードは魔女一匹につき一つしか落とさない」

ほむら「あとは、言わなくても分かるわよね?」

まどか「でも、そんなのって悲しいよ……」

マミ「ありがとう、鹿目さん。でもね、そういう魔法少女が普通なのよ……私たちが異端」

マミ「私は今まで大勢の魔法少女を見てきたけれど、たいていの魔法少女とは敵対することになってしまった」

マミ「だから、今みたいに魔法少女同士で共闘できるのはすごく幸せなことだと思ってるわ」

数時間後――

マミ(私たちはその後話し合って、私を見つめる視線の正体を調べるためにある作戦を行うことにした)

マミ(今、私は一人きりで歩いている)

マミ(そしてあかりちゃんと古谷さんの二人が、私の後ろをこっそりつけている)

マミ(二人に私をストーカーしてる人物の正体を探ってもらおうというわけ)

マミ(さて、うまくいくのかしら……?)

あかり『どう、向日葵ちゃん?』

向日葵『怪しい動きをする人物は今のところナシ……ですわね』

向日葵『もう作戦開始から二十分が経過していますわ。巴先輩の勘違いという可能性も……』

あかり『それはないと思うなぁ』

向日葵『なぜそう言えるのですか?』

あかり『あかりも、その視線を感じたことがあるから』

向日葵『えぇっ!? そうなんですの?』

あかり『うん。だからもう少しだけ、続けてみよ?』

向日葵『分かりましたわ』

十分後――

向日葵『赤座さん、もう……』

あかり『うん……今日は居なかったのかも』

向日葵「では巴先輩に電話をかけていただけます?」

そう言ってテレパシーによる通話をやめて、向日葵があかりの方を向いた瞬間……向日葵は僅かながら何かを感じ取った。

向日葵「っ!? 今のは……」

あかり「どうしたの向日葵ちゃん?」

向日葵「赤座さんは巴先輩を呼んで、そこで待っていて!」

あかり「? う、うん……」

向日葵(ストーカーは巴先輩を狙っていたのではなく、赤座さんを狙っていたのね!)

向日葵(しかし三十分もの間、察知できないとは不覚ですわ……)

向日葵(相手は相当の手練と見るべきかしら)

向日葵はものすごいスピードで街中を移動していき、あっという間にストーカーが居ると思われる場所へたどり着いた。
そしてそこに居たのは……

向日葵「赤座さんの、お姉さん……? なんでこんなところに」

あかね「あなたは向日葵ちゃん、だったかしら」

向日葵「えぇ」

あかね「ものすごいスピードでこっちに来るから驚いたわ。家屋の屋根を伝って走ってくるなんてびっくり」

向日葵「お姉さん……あなた、赤座さんをストーカーしてましたの?」

あかね「ストーカーなんてしてないわ。ただ、あかりが心配だったから遠くから見ていただけよ」

向日葵「それは立派なストーカーですわ……とりあえず、身体を拘束させていただきます」

あかね「うーん、ごめんなさい。ここで捕まるわけにはいかないの」

向日葵「なんて速さ……あなた、本当に人間!?」

あかね「屋根の上を走ったり飛んだりする人が言うことじゃないと思うわ……」

向日葵(まぁ私は魔法少女ですから……しかしこの人からは一切魔力が感じられない!)

向日葵(ただの人間にしてはやりますが、魔法少女の敵ではなくってよ)

向日葵「逃がしませんわ!」ガシッ

あかね「くぅ、すごい力……でも、まだまだね」

向日葵(な、どんな腕力をしてますの!? このままじゃ拘束を解かれる……)

向日葵(仕方ない、少しだけ強化しましょう……はっ!)

向日葵は身体強化魔法を自身にかける。
すると拘束がどんどん強まり、あかねは完全に身体の自由を奪われた。

あかね「嘘……」

向日葵「やれやれ、お騒がせなお姉さんですわ。今から赤座さんの所に連れていきます」

あかね(少しだけ目を開けたのだけれど、それでも敵わないなんて。さすがあかりのお友達だわ)

マミ「私を見ていたのではなく、一緒に居たあかりちゃんを見ていたのね」

あかり「もう、何やってるのお姉ちゃん! あかり、すっごく恥ずかしいんだからね! ぷんぷん!」

あかね「ごめんねあかり。お姉ちゃん、あかりのことが心配で……」

あかね(あぁ、ぷんぷん怒ってるあかりも可愛いわ! 向日葵ちゃんに拘束されてなければ、動画を撮れたのに……)

あかり「もう……次にこんなことがあったら、あかり本当に怒っちゃうからね」

あかね「本当にごめんなさいね、あかり」

あかね(最近、この巴さんっていう人とずっと一緒にいるのよね、あかり……)

あかね(私もいい加減、妹離れしなきゃいけないのかしら)

あかね「巴さん……だったかしら」

マミ「はい」

あかね「これから少しだけ、二人でお話したいのだけれど……いいかしら?」

向日葵『巴先輩、この人は危険ですわ! 身体強化の魔法をかけて、ようやく拘束できたんです……』

マミ『えっ!? この人、魔法少女じゃないわよね……?』

向日葵『身体能力は魔法少女……いや、それ以上と思ってかかるべきかと』

マミ『そんな人がいるのね、忠告ありがとう。でも、あかりちゃんのお姉さんなら一度しっかりお話しておくべきね』

向日葵『分かりましたわ……身の危険を感じたら、すぐに呼んでください』

マミ『えぇ。頼りにしてるわ』

マミ「分かりました。それでは、適当な喫茶店でよろしいですか?」

あかね「えぇ、早速行きましょう。申し訳ないのだけれど、向日葵ちゃんはあかりをお願いできるかしら」パッ

向日葵(あ、あっさり拘束が解かれた!? 私、力を抜いたりしませんわよね……?)

あかね「……向日葵ちゃん? どうかしたかしら」

向日葵「い、いえ……赤座さんは責任をもってお家までお送りいたしますわ」

あかね「ありがとう。それじゃあかり、また後でね」

あかり「うん」

――喫茶店

あかね「単刀直入に聞いていいかしら」

マミ「は、はい」

あかね「巴さん……あなた、あかりとお付き合いしてるの?」

マミ(なんだか、ものすごい殺気を感じるのだけれど……)

あかね「あら、私ったらいつものクセで……ごめんなさい」

マミ「い、いえ……」

マミ(いつものクセで殺気を出すなんて、魔女だったりしないわよね!?)

マミ(早くも古谷さんを呼びたくなってきたわ……)

あかね「巴さん、大丈夫?」

マミ「だ、大丈夫です」

あかね「そう、よかった。それじゃあ、質問に答えてもらえるかしら」

マミ「はい……私は、あかりちゃんとお付き合いさせていただいてます」

あかね「……ッ!!」

マミ(お姉さんの顔から、生気が消えた……?)

マミ「だ、大丈夫ですか!?」

あかね「え、えぇ……少し死の淵をさまよったぐらいよ」

マミ(もう突っ込むのはやめましょう……)

あかね「ねぇ、あかりの写メとかは携帯に入ってたりする?」

マミ「はい。たくさんありますよ」

あかね「見せてちょうだい」

マミ「どうぞ」

あかね(ちゃんとあかり専用フォルダに入ってるわね、感心感心)

あかね(あぁっ! 可愛い、可愛すぎるわ明かり!)

あかね(最高ね……後で全部コピーしてもらわないと)

あかね(……あ)

あかね(あかりが、顔を赤らめてすごく恥ずかしそうにしてる)

あかね(私には、見せたことのない表情)

あかね(そうよね。こんな顔、姉に見せるわけがない……)

あかね(そしてこんな顔を見せるっていうことは、本当に巴さんのことが好きなのね、あかり)

あかね(…………)


あかね「ねぇ、あかりの写メとかは携帯に入ってたりする?」

マミ「はい。たくさんありますよ」

あかね「見せてちょうだい」

マミ「どうぞ」

あかね(ちゃんとあかり専用フォルダに入ってるわね、感心感心)

あかね(あぁっ! 可愛い、可愛すぎるわあかり!)

あかね(最高ね……後で全部コピーしてもらわないと)

あかね(……あ)

あかね(あかりが、顔を赤らめてすごく恥ずかしそうにしてる)

あかね(私には、見せたことのない表情)

あかね(そうよね。こんな顔、姉に見せるわけがない……)

あかね(そしてこんな顔を見せるっていうことは、本当に巴さんのことが好きなのね、あかり)

あかね(…………)

マミ「あの、どうかしましたか……?」

あかね「巴さん、今から私の部屋に行きましょう」

マミ「え?」

あかね「いいから」ガシッ

マミ(腕を掴まれた!? なんていう力なの、ほどけない!)

マミ(これはマズい……古谷さんを呼ばないと!)

あかね「もし、誰かを呼んだりしたら……少し痛い目にあってもらうかもしれないわ」

マミ「っ!?」

あかね「手荒な真似は好きじゃないの。おとなしくついてきてもらえないかしら」

――赤座家

あかり「あっ、お姉ちゃん……お帰りなさい! あれ、マミさんも一緒なの?」

あかね「えぇ。巴さん、すごく良い人だからもう少しお話したいって思って」

あかり「そうなんだぁ、ごゆっくり!」

マミ「えぇ……」

あかね「それじゃ、私の部屋へ行きましょう」

マミ「何、この部屋……!?」

マミ(壁や天井にはあかりちゃんの写真を印刷したであろう紙が大量に貼ってある)

マミ(机の上には……なんだかエッチそうな本)

マミ(棚の上の写真立て、全部あかりちゃんの写真)

マミ(極めつけは、ベッドの上の抱き枕……なぜかあかりちゃんの全身絵がプリントされている)

マミ(しかもあかりちゃんの絵の口周りには、大量のキスマークがある)

マミ(魔女の結界なんて比べ物にならないわ、これ……)

あかね「どうしたの、ぼーっとして」

マミ「は、はいっ! 大丈夫です!」

あかね「……? ごめんなさいね、ちょっと散らかっちゃってて」

マミ(これ、ちょっとなんてレベルじゃないと思うのだけれど)

あかね「巴さん。これを見てちょうだい」

マミ「二枚のパンツ……?」

あかね「一枚はあかりがさっきまではいてたもの。もう一枚はあかりが一週間前にはいてて、さっきまで私がはいてたもの」

あかね「どっちがあかりがはいてたパンツなのか……当ててもらうわ」

マミ「!?」

あかね「ただし、目隠しをしてね。もしあなたが今日あかりのパンツを見てたら……一発でバレちゃうもの」

マミ「な、なぜそんなことを……?」

あかね「これはあなたが本当にあかりのことを愛しているかのテストなのよ」

あかね「この程度のテストを突破できなければ、あなたにあかりを愛する資格なんてないわ」

マミ(それ以前に、なんであかりちゃんのパンツを持ってるのか突っ込みたい……)

マミ(あと、一体あなたはいつパンツを抜いだのかとか、今日あかりちゃんがはいてたパンツをいつ脱がしたのかとか)

あかね「さぁ、受けるの? 受けないの?」

マミ(このテストをクリアしない限り、きっとお姉さんは何らかの妨害をしてくるだろう)

マミ(なら、答えはひとつよね)

マミ「そのテスト……受けて立つわ!」

マミ(目隠しをされて視覚を奪われた。両手も封じられてるから、頼れるのは嗅覚だけ)

マミ(嗅げ、ひたすら臭いを嗅ぐのよ巴マミ……!)

マミ(…………)

マミ(なに、これ?)

マミ(こんな問題、こんな問題……簡単すぎるじゃない!)

マミ(なぜお姉さんはこんな問題を? 分からないわ……)

マミ(とにかく、答えを言うとしましょう)

マミ「あかりちゃんのパンツは、Aのパンツね!」

あかね「…………」

あかね「正解よ、おめでとう」

マミ「やったわ……!」

あかね「目隠しと手錠、外すわね」

マミ「なぜですか?」

あかね「……?」

マミ「なぜ、あんな簡単な問題を?」

あかね「そんなに簡単だった?」

マミ「えぇ。お姉さんでも簡単に答えられますよね、これぐらい」

あかね「自覚がないのね……私と比べてる時点で、あなたはかなりのあかりマイスターなのよ」

あかね「さっきの問題は、幼馴染の二人でも正解するか怪しいレベルなの」

マミ「歳納さんや船見さんでも困難……?」

あかね「でも、私と比べるのは十年早いかな? あの程度の問題は一嗅ぎで十分ね」

マミ「くっ……」

あかね「まぁ、あなたになら……あかりを任せられそうだわ」

マミ「お姉さん……」

あかね「あかりをお願いね。もしケンカなんてしたら……」

マミ「…………」ゴクリ

あかね「ちゃんと仲直りをすること。いい?」

マミ「は、はい!」

マミ(ぶち殺すわよ、とか言われると思ったわ……)

あかね「さて、そろそろあかりの所へ行ってきたら?」

マミ「そうですね」

あかね「あかりが抜いだばかりのパンツはあなたにあげる……大切にしてね」

マミ「もちろんです」

マミはあかりのパンツをぎゅっと握りしめ、あかねの部屋を後にした。

あかり「あ、マミさん! お姉ちゃんとのお話は終わったの?」

マミ「えぇ。とても有意義だったわ」

あかり「そっかぁ、よかった。あれ、何持ってるの?」

マミ(まずい、あかりちゃんのパンツ持ってるなんてことがバレたら……)

マミ「べ、別に何も持ってないわよ」サッ

あかり「じゃあ何で手を後ろに隠すの? 怪しいなぁ……えいっ!」

マミ「だ、だめっ!」

あかり「これ、あかりがさっきまではいてたパンツだ……」

マミ「えっとね? これは、その……」

あかり「マミさん、なんであかりのパンツ……取ったの?」

マミ「違うわ! 落ち着いて聞いて」

あかり「マミさんの、マミさんの……バカぁ! もうマミさんなんて知らないんだから!」

マミ「待って、あかりちゃーん!」

その時、あかねの部屋の扉が開いた。

あかね「巴さん……? ちょっと、お部屋でお話しましょうか……」

マミ「いやぁああああああああっ!」

次の日、マミは学校を休んだ。

数日後、街中――

綾乃「うーん……いい天気ねぇ」

千歳「うんうん、絶好のお散歩日和や。こんな時に歳納さんもおればなぁ」

綾乃「べ、別に歳納京子なんて居なくてもいいわよ! 私には千歳が居るんだから……」

千鶴「!!」スッ

綾乃『私には千歳が居るんだから……』

千歳『綾乃ちゃん……ウチも、綾乃ちゃんが居れば幸せやで』

綾乃『千歳……』

千歳『綾乃ちゃん……』

千鶴「……」ダラー

千歳「千鶴、ヨダレ垂れとるで」

千鶴「……はっ!」フキフキ

千歳「しっかし歳納さん、最近ちょっと付き合い悪い気がするなぁ」

綾乃「ごらく部に人が増えて忙しいんでしょ。仕方ないわ」

千歳「せやけど……」

綾乃「いいのよ。歳納京子がよければ、それでいいの」

千歳「綾乃ちゃん……」

千鶴「……ん?」

千歳「どしたの千鶴」

千鶴「あれ、見て……」

綾乃「暁美さんと西垣先生だわ。休日に教師と生徒が二人きりで……一体何してるのかしら?」

千歳「何だか、あやしいなー」

綾乃「こっそりと後を追ってみましょう!」

千歳「一体どこに行くんやろ。もう町外れやいうのに……」

千鶴「工場みたいな所に入った」

綾乃「あそこの工場、確かもう動いてないわよね」

千歳「ま、まさか人気がない工場で……あかん、教え子とそれはあかんよ!」ダラー

千鶴「姉さん、鼻血でてる」ブスリ

千歳「ふがっ! すまんなぁ千鶴」

綾乃「うーん、建物がたくさんあるわねぇ……」

千歳「一体どれに入ったんやろなぁ」

仁美「あら、あなた方は……」

綾乃「志筑さん? こんな所で会うなんて、何だか不思議ね。もしかして志筑さんも西垣先生達を追ってきたの?」

仁美「西垣先生? ……違いますわ。私たちはこれから素晴らしい所に旅立ちますの」

千歳「私たち……?」

仁美の後ろには大勢の人々がいた。しかしどこか様子がおかしい。
全員が人生に絶望したような表情を浮かべている。

綾乃「ねぇ、この人達何かヘンだわ……」ボソッ

千歳「せやね……西垣先生呼んできた方がええんとちゃう?」ボソッ

綾乃「そうね。でもこのまま放っておくわけにもいかないし、私がこの人達についていくわ」ボソッ

千歳「そんなんダメや。危ないで」ボソッ

綾乃「大丈夫だって。千歳と千鶴は西垣先生を探してきて」ボソッ

千鶴「……分かった」ボソッ

綾乃「おまたせしてごめんなさい志筑さん。私もその素晴らしい所に行きたいんだけど……ダメかな?」

仁美「大歓迎ですわ。さぁ、行きましょう」

綾乃「えぇ……」

綾乃(千歳、千鶴……お願いね)

千歳「ウチはこっちから探すから、千鶴はあっちの方の建物から頼むで!」

千鶴「分かった」

二手に別れて探そうとした途端、大きな爆発が起きた。

千歳「な、なんや今の!? まさか綾乃ちゃん……」

千鶴「違うわ姉さん。爆発音がしたのは、杉浦さんが行った方向と真逆」

千歳「そ、そうなんか……よかった」

千鶴「おそらく爆発がした所に西垣先生がいる。急ぎましょう」

ほむら「すごい威力ね……」

西垣「まぁ爆発のプロだからな、私は」

ほむら「でもこんな所、勝手に使っていいのかしら」

西垣「いいのいいの。私は何度か使ったことあるけど、今のところお咎め無しだ!」

ほむら(いい人なのだけれど、どこかズれてる気がするわね……)

千鶴「西垣先生!」

西垣「ん、池田姉妹じゃないか……どうしてこんな所に?」

千歳「それは後や! 綾乃ちゃんが、綾乃ちゃんが……!」

西垣「落ち着け、杉浦がどうしたんだ」

ほむら「……っ!?」

ほむら(この感覚、魔女の結界だわ!)

西垣「おいおい、何だか景色が歪んでいってないか」

千歳「一体、何が起きてるんや!?」

千鶴「何だか、怖い……」

ほむら「三人とも、私の傍から離れないで!」

ほむらはとっさに変身をする。
一般人に見られているが、そんなことを言ってる状況ではなかった。

西垣「暁美が変身した!? そうだ、魔法少女まじかる☆ほむらんとでも名付けようじゃないか!」

ほむら「ふざけてる場合じゃないんだけど!?」

西垣「あぁ。だからこそ空気を和ませようとだな……」

ほむら「そうだったの……悪かったわ」

ほむら「でも、まじかる☆ほむらんって何よ。もっとカッコイイ名前を所望するわ」

西垣「ふむ……それなら、爆発少女ボンバーほむら」

ほむら「却下」

西垣「む、手厳しいな暁美は」

千歳「二人共すごいなぁ……ウチなんて、さっきから怖くて足が震えとる」

千鶴「私も……」

西垣「私は教師だからな。教え子の前でカッコ悪い所は見せられんよ」

魔女の結界が完成した時、四人の周りは使い魔によって包囲されていた。
そしてその包囲の遥か奥に、魔女の姿がある。

ほむら(魔女を速攻で倒す……っていうのは無理そうね)

ほむら(一般人三人を守りながら戦うなんて、長時間は無理だというのに)

ほむら(せめてもう一人魔法少女が居れば……)

ほむら(って何を弱気になってるのよ! 私しか戰えないんだから、私が何とかしないと!)

西垣「なぁ、暁美。ひとつだけ聞くぞ」

ほむら「こんな時に何よ?」

西垣「あれを倒してしまっても構わないんだな?」

ほむら「えぇ。あいつらは私たちの命を狙う化物だから」

ほむら「……って、あなたが倒せる相手じゃないわ! 変な真似はしないで!」

西垣「やってみなくちゃ分からない。失敗恐れてたら、何も成功しないんだぞ?」

西垣「行くぞ……必殺、ボンバァシュートッ!」

西垣はお手製の爆弾を、使い魔の大群目がけて放り投げた。
そして巨大な爆発が巻き起こり、爆発に巻き込まれた使い魔はすべて破壊されていた。

ほむら「すごい威力だわ……」

西垣「ほら、爆発は成功の元って言うだろ?」

ほむら「言わないから」

西垣「というわけでここは私に任せて、暁美はあの親玉っぽいのを何とかしてくれ」

西垣「こういうのはお約束的に考えると、ボスを倒せば雑魚も死ぬからな」

ほむら「お約束とか言わない。まぁ、その通りなんだけど……」

ほむら「でも、私がここから離れたらみんなが危険に……」

西垣「このままじゃジリ貧だろ。いいから早く行け! この私が信じられないのか?」

ほむら「……分かったわ。爆弾のストックはある?」

西垣「あぁ。なんせ実験用に大量に持ってきたからな」

ほむら「池田さんたちにはこれを渡しておくわ」

千歳「て、鉄砲!?」

ほむら「もし西垣先生が仕留め損ねて、近づいてくる奴がいたら……これで撃って。近距離の相手に爆弾は使えないから」

千鶴「私、こんなもの使ったことない」

ほむら「大丈夫、敵のほうに向けて引き金を引くだけでいい」

ほむら「物凄いスピードで弾を吐く上に、弾は自動的に装填されるから……いっそのこと、つねに引きっぱなしでも構わない」

ほむら「無茶を言ってるのは承知の上よ。でもお願い……協力して!」

千鶴「分かった。やってみる」

千歳「ウチも……頑張ってみるわ。うまくできるか、分からへんけど」

ほむら「ありがとう、みんな……」

数分後――

西垣「クソッ、爆弾が切れた! 暁美、早くしてくれ……!」

爆弾という広範囲に攻撃できる武器がなくなったことにより、一気に押されていく。
三人と使い魔たちの距離はどんどん縮まり、後少しで使い魔の手が届く範囲になっていた。
そして、使い魔の手が千歳の身体に――

西垣「させんよ」

千歳の身体に触れる瞬間、西垣がその使い魔にタックルをかました。
地面に使い魔毎倒れこんだ西垣目がけて、他の使い魔が殺到する。

西垣(あー、これは駄目だな。万事休すって奴だ)

西垣(こんな時、全身に括りつけたダイナマイトに火をつけたりするとカッコイイだろうなー)

西垣(我が人生、爆発に始まり爆発に終わる! うん、実にいい)

西垣(でもそんなものつけてないんだよね……実に残念だ)

西垣が目を閉じかけた瞬間、彼女に群がる使い魔が次々と爆散していった。

西垣(あれ? もしかしてまだストックがあったのか?)

マミ「間に合ってよかった……」

西垣(ん、あれは確か……三年の巴だよな。おいおい、あいつも爆発系魔法少女かよ)

西垣(世の中って狭いんだなぁ。こんな身近に二人も爆友候補者が居るとは)

西垣(あ、二人ってのは暁美と巴のことだぞ。松本は候補者じゃなくて正式な爆友だから、今のカウントには入れてない)

西垣(……って私は誰に言ってるんだ?)

向日葵「西垣先生、池田先輩! ご無事ですか!?」

西垣「古谷……おいおいお前もなのか? これで爆友候補者も三人目かぁ」

向日葵「その様子なら大丈夫そう……ってひどい怪我」

千歳「さっきウチをかばって……」

西垣「フッ、生徒を守るのが教師だからな」

向日葵「これぐらいなら私でも何とかなるはず……」

向日葵は西垣の身体に手をかざし、治癒の魔法を発動した。

西垣「おぉっ、傷がみるみるなく塞がっていくぞ」

千鶴「すごい……」

西垣「そうかぁ……古谷は爆発系魔法少女じゃなくて、癒し系魔法少女だったか」

向日葵「は、はぁ?」

向日葵「さて、私も攻撃に出るとしましょう」

向日葵は一瞬で使い魔が密集する場所へと移動し、得物である両刃の斧を力任せに振るう。
斧の届く範囲に居た使い魔の身体は綺麗に両断されていた。

マミ「私も頑張らないとね」

マミは一般人三人に結界を張った後、ほむらに群がる使い魔を撃ち落としてフォローに回っていた。

ほむら「助かるわ、マミ。そして……追い詰めたわよ魔女! はぁあああっ!」

ほむらは両手にマシンガンを持ち、ありったけの弾丸を魔女に浴びせた。
ものの数秒で魔女の身体は崩れ落ちていった。数千発の弾丸を至近距離で食らったのだから、ひとたまりもないだろう。

ほむら「終わった……」

西垣「お、元の場所に戻ってきたな」

千歳「早く綾乃ちゃんの所にいかんと!」

マミ「杉浦さんは大丈夫よ。あかりちゃんが保護してるはず」

千歳「赤座さんが……?」

マミ「えぇ」

千歳「そっか……ホッとしたら腰が抜けてしもた」

千鶴「杉浦さんにおぶってもらう?」

千歳「そ、そないな恥ずかしいことできへんって!」

あかり「あ、みんなー!」

綾乃「千歳、千鶴ー!」

千歳「綾乃ちゃん! 無事でよかったわぁ。ごめんな助けに行けへんくて」

綾乃「いいのよ。千歳は千歳で大変だったみたいだし」

千歳「せやなぁ……本当に恐ろしかったわ。あ、みんなにお礼言わんとな。助けてくれておおきに!」

綾乃「あ、ありがとうございましたっ!」

千鶴「……」ペコリ

マミ「いいのよ。これが私たちの使命だから」

ほむら「かっこつけちゃって……」

マミ「あら、さっき援護してあげたのは誰だったかしら?」

ほむら「む……なかなか意地悪ね、マミ」

キリもいいし寝る
スレッド保持数すごいことになってるな・・・最終書き込みが昨日の夕方のスレが残ってるとか

今は落ちるぞ
ついでに置いておきますね

http://i.imgur.com/d778K.jpg

「おいおい、一体何なんなのさこれは……」

QB「どうかしたのかい?」

「どうかしたのかい……じゃねーよ。何でこんなに魔法少女がいるんだよ」

QB「僕の勧誘の賜物だね」

「特にあの青髪の奴はやばい。あいつとはサシでやっても勝てる気がしねぇぞ」

「黒髪の奴は大したことがなさそうだが……」

QB「マミは?」

「おいおい、アタシがマミに負けるとでも?」

QB「それはやってみなくちゃ分からないよね、佐倉杏子」

杏子「チッ、お世辞の一つも言えねぇのかお前は」

杏子「まぁいいさ。すぐに分からせてやるよ。どちらが強いのか……そして、どちらが魔法少女として正しいのかをな」

次の日、ごらく部――

さやか「いやぁ、このケーキめちゃウマっすよ!」

京子「うんうん。結衣、コーヒーのおかわりちょうだい!」

結衣「京子の方がコーヒーメーカーに近いだろ」

京子「ちぇ、けちー」

ちなつ「というか、いつの間に部室にコーヒーメーカーが!?」

ほむら「西垣先生が買ってきたのよ。あ、一応彼女が顧問になったから……まぁ基本的に何もしないでしょうけど」

西垣「おいおい、誰が何もしないって? あれだけ暁美の手伝いしてやったっていうのに」

ほむら「あら、居たんですか。あれはあくまで個人的な付き合いでしょう」

まどか「こ、個人的な付き合い……?」

ほむら「違うのよまどか! やましいようなことなんて何一つしていないわ!」

まどか「そっか、最近ほむらちゃんが構ってくれないと思ったら……西垣先生と一緒に居たんだぁ」

ほむら「違うわ、すべてはあなたを助けるためなのよ! あなたより大切なものなんて……この世にあるわけないじゃない!」

みんな「…………」ポカーン

まどか「え、えとっ……すごく嬉しいんだけど、そういうのは二人きりの時に言って欲しいかなぁ……なんて」

ほむら(はっ! 私ったら何を!?)

さやか・京子「にやにや」

ほむら「な、何にやにやしてるのよ!」

さやか「いやぁ、青春っていいものですなぁ京子殿」

京子「その通りですなぁさやか殿」

ほむら「そういうさやか……あなた最近、上条恭介とはどうなのよ?」

さやか「ラブラブだけど?」

ほむら「くっ、平然と言ってのけるなんて……」

さやか「ほむらとは違うのだよ、ほむらとは!」

向日葵「コーヒーメーカーの話から、どうやったらこんな話の流れになるのかしら……」

結衣「あはは……まぁ、私はコーヒー好きだから助かるかも」

ちなつ「ガーン! 結衣先輩、チーナが淹れたお茶はもう飲んでくれないんですかぁ?」

結衣「まさか。ちなつちゃんの淹れるほうじ茶、大好きだし」

ちなつ「えっ……ちなつちゃん大好きだし? キャー! 結衣先輩ったら大胆!」

結衣「いや、全然そんなこと言ってないんだけど……」

マミ「ふふ、にぎやかねぇ」

あかり「そうだねぇ」

向日葵「まったりするのもいいですけど……そろそろ本題に入りません?」

ほむら「そ、そうよ。今日集まったのは昨日の魔女について話し合うため」

マミ「でもまだ肝心の杉浦さんと池田さんたちが来てないわ」

京子「生徒会の仕事があって遅れるって言ってたよ」

結衣「そういうことはもっと早く言ってよ」

京子「めんごめんご」

綾乃「ごめんなさい、遅くなりました」

千歳「わぁ、ぎょーさん人がおるなぁ」

千鶴「お邪魔します」

京子「お、千鶴もいるのか。ちっづるぅー!」

千鶴「…………」

京子「無視!?」

結衣「やっぱお前嫌われてるな」

千歳「もぉ、そんなことしたらあかんで」

綾乃「千鶴さんと歳納京子は相性悪いわねぇ」

千歳「うーん、そんなことないと思うけどなぁ。恥ずかしがり屋さんの綾乃ちゃんみたいなもんやない?」

綾乃「そ、そんなんじゃないわよっ!」

千鶴「!!」スッ

千歳『綾乃ちゃんは恥ずかしがり屋さんやなぁ』

綾乃『そ、そんなんじゃないわよ……もう、千歳のいじわる』

千鶴「……」ダバー

マミ「よだれ、垂れてるわよ……?」

千鶴「垂れてません」

さやか「しっかしすごい人数だなぁ。えーっと……」

マミ「この部屋に居るのは十四人ね。広い部屋とはいえ、少し狭く感じちゃうかも」

ほむら「そうね……全員集まったみたいだし、まずは私たちが昨日何していたかを話すとしましょう」

ほむら「……と、私たちの方はこんな感じね」

京子「魔法少女が新型爆弾のテスト……何だか斬新だなぁ」

西垣「これからは爆発系魔法少女の時代だぞ歳納。そうだろう、巴」

マミ「えっ?」

西垣「お前も暁美と同じ、爆発系魔法少女なんだろう。なぁ、私と爆友にならないか?」

マミ「私、爆弾なんて使いませんけど」

西垣「なん、だと……? 絶望した、爆弾を使わない魔法少女に絶望した!」

向日葵「西垣先生は放っておいて話を進めましょう……」

マミ「それじゃ、次は私たちね」


昨日――

マミ「いいお天気ね」

あかり「そうだねぇ。ポカポカして気持ちいいなぁ」

向日葵「あの……私もご一緒してよかったのですか? 二人のお邪魔じゃ……」

マミ「そんなことないわよ。向日葵さんとはいろいろお話してみたかったし」

向日葵「それなら良いのですが……」

マミ「そういえば櫻子ちゃんはどうしたの?」

向日葵「あー、櫻子はですね……宿題忘れたせいで、山ほど追加の宿題だされまして」

マミ「あら、手伝ってあげなくてもいいの?」

向日葵「たまには自分一人でやらせないと……少しは反省してもらわないと困りますし」

マミ「うふふ、厳しいのね……って、これは」

あかり「魔女の反応だよっ!?」

向日葵「どうやら、楽しい休日という訳にはいかないようですわね」

マミ「急ぎましょう!」

あかり「はいっ!」

――町外れの工場

向日葵「反応があったのはこの辺り……」

「きゃあああああああっ!」

マミ「悲鳴!?」

向日葵「今の声、杉浦先輩ですわ! しかし結界の反応とは真逆の方向ですわね……どうしましょう」

あかり「あかり、悲鳴があった方に行ってみる! 二人は結界の中に入って!」

マミ「でも、あかりちゃん一人じゃ危険だわ」

あかり「大丈夫だよ、魔女の結界に比べたら安全だろうし」

向日葵「巴先輩、私は赤座さんの案に賛成ですわ」

向日葵「まだあまり戦い慣れてないあかりちゃんは、結界に入るよりも現実の問題に対処してもらうべきかと」

マミ「……分かった。無茶はしないでね、あかりちゃん」

あかり「はいっ! 二人とも、気をつけてね……」

あかり(何が起きるか分からないし、気配を消す魔法を使っておこっと)

あかりは魔法をかけたあと、綾乃の悲鳴が聞こえた建物に侵入した。
そこであかりが目にしたものは、大勢の人間がお互いの首を締め合っているという光景だった。

あかり(な、なにこれ……?)

おびえるあかりの視界に、綾乃の姿が入った。綾乃は部屋の隅で、頭を抱えてうずくまっている。

あかり(あ、あかりが何とかしないと。で、でも……どうすればいいの?)

あかり(お団子ビームじゃ殺しちゃうかもしれないし)

あかり(…………)

あかり(そうだ、あれを使えば! ほむらさんは、どうしようもない時にしか使っちゃダメって言ってた)

あかり(……そうだよ、今がその時なんだ)

あかり「魔法さん、お願い……あかりに力を貸してっ!」

あかりが固有魔法を発動すると、あたり一面に赤い光が広がる。

綾乃「なんなの、この光!? 眩しくて何も見えない……!」

光が収まると人々は正気を取り戻し……てはいなかった。
首を締めるのをやめたかと思えば、人々は突如服を脱ぎだし……乳繰り合いを始めてしまった

綾乃(な、何よこれ!? きゃっ!? あの人、下まで脱いでる……)

仁美「杉浦先輩……私と一緒に、めくるめく百合の世界に旅立ちましょう?」

仁美は綾乃の胸に手を当て、そっと撫で回す。

綾乃(ダメ、私には歳納京子が……って別に歳納京子にこんなことされたいわけじゃないけど!)

あかり(もしかして……あかり、とんでもないことしちゃった?)

現在――

あかり「それでその後、他のみんなと合流したって感じかな」

みんな「…………」

あかり「あれ、どうしてみんな黙ってるの?」

ちなつ「何やってるのよあかりちゃん……」

ほむら「使ったことを咎めるつもりはないけど、なんでそんなことになってしまったのかしら」

さやか「あれかな。マミさんと乳繰り合う妄想をしながら、魔法を使ったとか」

マミ「やだ、美樹さんったら何言ってるのよ」

あかり「あ、あかり、そんなことしてないもん!」

あかり(と、とにかく杉浦先輩を助けないと。他の人は楽しそうだし、放っておいてもいいよね……?)

あかり「ダメですよ、杉浦先輩は京子ちゃんが好きなんだから」

綾乃(え、何で知ってるの!? って別に歳納京子なんて好きじゃないんだから!)

仁美「あら、そうですの。残念……」

仁美はがっかりしながら去っていき、他の人と乳繰り合いを始めた。

綾乃「あ、赤座さん? 助けてくれてありがとう……でも、その格好は何?」

あかり「えーっと、これは……とにかく、まずはここから出ませんか?」

綾乃「そうね……こんな所にいたら、どうにかなっちゃいそうだわ」

あかり「みんなを助けるために頑張って魔法使ったのに……ひどいよぉ」

マミ「よしよし、あかりちゃんはよく頑張ったわ」ナデナデ

あかり「うぅ、マミさーん!」

ほむら「はいはい、乳繰り合うのは後にして。あかり、ソウルジェムを見せてみなさい」

あかり「? いいけど……」

ほむら「!」

向日葵「これは……」

マミ「なんでこんなに濁っているの!?」

ほむら「魔法を使った時、どれぐらいの人がいたか覚えてる?」

あかり「うーん……よく覚えてないや」

綾乃「二十人ぐらいは居ました」

ほむら「ありがとう。それだけの人間の運命を変えた……しかも死ぬはずだったという運命を」

ほむら「ソウルジェムが濁りきってもおかしくないレベルの魔法なのよ、あかりがやったことは」

ほむら「よく覚えておきなさい。いいわね?」

あかり「う、うん……」

ほむら(あかりはキュゥべえいわく物凄い素質を秘めている。魔女になったりしたら、とんでもないことになるわ)

ほむら(魔女の正体について話しておくべきかしら? でもそれを聞いたせいで、精神が不安定になるという可能性も……)

ほむら「とりあえず、昨日の魔女が落としたグリーフシードを使いましょう」

あかり「ありがと、ほむらさん」

ほむらはグリーフシードをあかりのソウルジェムに近づけ、濁りを消した。

向日葵「……若干、濁りが残ってません?」

マミ「本当ね……暁美さん、そのグリーフシードはもう使えないの?」

ほむら「限界ギリギリまで汚れを吸収させたわ」

ほむら「グリーフシード一つより、遥かに多い魔力を使ったってことね」

ほむら「あかり、もし魔女と戦うことになっても……単独行動はしないで。いいわね?」

あかり「うん……ごめんね、足引っぱちゃって」

マミ「謝ることなんてないわ。あなたは大勢の人々の命を救ったのだから」

「あっはっはっはっは! こいつは傑作だねぇ」

庭の方から誰かの声が聞こえた。

向日葵「誰!?」

杏子「久しぶりじゃねぇかマミ。随分とお仲間が増えたようだねぇ」

ほむら「佐倉杏子!?」

杏子「しっかし魔法少女が三人も居て、誰一人私に気づかないとは」

向日葵「くっ……」

ほむら(向日葵の察知能力は相当なもののはず。この距離で気づかないとは考えにくい)

ほむら(幻惑魔法による認識阻害かしら? しかし佐倉杏子がアレを使うとは思えないのだけれど)

杏子「おっと、四人だったか。さっきの話を聞く限り、その赤髪の女も魔法少女だったねぇ」

杏子「しかし他人を助けるために、グリーフシード一個分の魔力を使うとは……バカにも程があるよ」

マミ「赤座さんをそれ以上愚弄するなら……その不愉快な事を言う口に、風穴が開くわよ?」

杏子「おぉ怖い怖い……」

マミ「それで、一体この街に何の用かしら。あなたの拠点は風見野でしょう?」

杏子「最近、風見野には魔女があまり現れなくってさ。こっちに拠点を移そうかなって思ってよ」

マミ「悪いけど、お引取り願えない?」

杏子「それは出来ねぇ相談って奴だ。どうしてもというなら、力づくで来なよ」

向日葵「四対一で勝てるとでも?」

杏子「状況が分かってないねぇ。そっちには一般人が大勢いるじゃん」

向日葵「くっ……!」

杏子「まぁ、あたしは進んで一般人に手を出したりはしないさ」

杏子「マミ。今日の夜、あたしとサシで戦いな」

マミ「!」

杏子「あたしが勝てば、この街の魔女はすべてアタシの獲物」

杏子「あんたが勝てば、あたしはおとなしくこの街を去るとするよ」

ほむら「マミ、相手の口車に乗っては駄目!」

マミ「いいわ、その勝負……受けて立とうじゃないの」

杏子「その言葉、忘れるなよ」

ほむら「マミ、本当に一対一でやるつもりなの」

マミ「私が応じなければ、魔法少女以外の人たちに被害が及んだかもしれない……選択肢なんてなかったのよ」

あかり「マミさん……」

マミ「そんな顔しないで、あかりちゃん。私……佐倉さんより強くってよ?」

数時間後、とある橋の上――

マミ「…………」

ほむら「…………」

向日葵「…………」

あかり「…………」

杏子「なぁ、あたしはサシでやるって言ったはずだけど?」

マミ「勘違いしないで、彼女たちに手出しはさせないわ」

杏子「ふん。ならいいけどよ」

マミ「……行くわよ」

マミがソウルジェムをかがけて変身しようとした時、あかりがマミの身体を押し倒した。
そしてマミのソウルジェムを奪い、どこかへ去っていく。

マミ「なっ、あかりちゃん!? 待っ……うっ!」バタリ

向日葵「巴先輩!?」

杏子「おい、マミ!?」

ほむら「私はあかりを追いかける、向日葵はマミをお願い!」

もし埋まったら同じスレタイで立てる

向日葵「巴先輩、巴先輩! しっかりしてくださいませ!」

杏子「ちょっと見せてみろ」

向日葵「……」ギロッ

杏子「何もしやしねーって。ほら、変身解いたから」

向日葵「少しでも変な動きを見せたら、容赦はしませんわ」

杏子「好きにしろよ。とりあえず脈を……」

向日葵「どう、なんですの?」

杏子「嘘だろ……こいつ、死んでるじゃねーか!」


196
杏子「どうせ近くにいるんだろ!? 出てこいキュゥべえ!」

杏子「どうせ近くにいるんだろ!? 出てこいキュゥべえ!」

QB「そんなに叫ばなくても聞こえてるよ」

QB「しかし今のはまずかったなぁ。よりにもよって、大切な友達を持って行っちゃうなんて……」

向日葵「どういうこと、ですの……?」

QB「君達、魔法少女が身体をコントロールできるのは……せいぜい100メートル圏内が限度だ」

杏子「100メートル? 何の事だ……どういう意味だ!?」

QB「君達の魂は今や、肉体の中にはなくてソウルジェムの中にあるのさ」

QB「ただの人間と同じ壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて……とてもお願いできないよ」

QB「魔法少女に取って、肉体っていうのは外付けのハードウェアでしかないんだ」

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね……君達の魂を抜き取って、ソウルジェムに変えることなのさ」

杏子「ふざけんじゃねぇ! それじゃああたしたち……ゾンビにされたようなもんじゃねぇか!」

QB「心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、魔力さえあれば修復できるんだよ」

QB「ソウルジェムさえ砕けなければ、君達は無敵だ。とっても便利だと思うけどなぁ」

向日葵「ひどい、こんなのってあんまりですわ……」

QB「君達はいつもそうだ。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」

QB「わけがわからないよ。どうして人間はそんなに、魂の在り処にこだわるんだい?」

キュゥべえの口から出た衝撃の事実によって、怒りと悲しみに包まれる二人の前に、ほむらとあかりが戻ってきた。

あかり「はぁっ、はぁっ……お願い、間に合って!」

あかりがマミの手にソウルジェムを置くと、マミの顔に生気が宿った。

マミ「あれ、私……?」

――ごらく部

あかり「こんな真夜中にいいのかなぁ……」

ほむら「魔法少女のことを大声出して話せる場所が他の思いつかなかったのよ」

マミ「お茶でも淹れるわね。とにかく落ち着かないと」

向日葵「そうですわね。このままじゃまともにお話できそうにありませんわ」

杏子「あたしコーヒー」

マミ「……はいはい」

あかり「マミさん」

マミ「なぁに?」

あかり「さっきは本当にごめんなさい。あかり、マミさんと佐倉さんにケンカしてほしくなくて、それで……」

マミ「もういいのよ。あかりちゃんの気持ちはよく分かったから」

向日葵「そのおかげと言ってはなんですが、ソウルジェムの正体も分かりましたし」

杏子「知らなかった方が幸せだったかもな……」

マミ「ちょっと佐倉さん! コーヒー抜きにするわよ! あとお菓子も!」

杏子「おいおい勘弁してくれよ。こちとら晩飯食ってねーんだから」

杏子「この饅頭うまいな」モグモグ

向日葵「よくそんなに食べられますわね……」

杏子「ヤケ食いでもしなきゃ、やってられねーっての。キュゥべえの奴は逃げるしよ」

マミ「私たちの魂はソウルジェムになってしまって、この肉体はただの戦いの道具……」

あかり「なんだか、悲しいね……」

ほむら(数日もすればある程度割り切れるでしょう。でも、そこで魔女化の話を知ってしまったら……アウトね)

ほむら(ならいっそ、今すべてを話してしまいましょう)

ほむら「ねぇ、あなた達をさらにどん底に落とすお話があるのだけれど……聞く?」

杏子「おいおい、ゾンビ化より恐ろしい話なんてあってたまるかよ」

向日葵「まったくですわ……」

マミ「聞かせてちょうだい、暁美さん」

杏子「ちょ、マミ……正気かよ!?」

マミ「暁美さんがこんなタイミングで、ただどん底に落とすだけの話を切り出すとは思えない」

マミ「そこには何か、意味があるはずだわ」

あかり「あかりもそう思うなぁ」

向日葵「まぁ、お二人がそうおっしゃるのなら……」

杏子「ちっ……好きにしなよ」

ほむら「分かったわ」

数分後――

杏子「ウソ、だろ?」

向日葵「魔法少女が、魔女に……」

ほむら「…………」

マミ「魔法少女の精神状態が乱れていくことでもソウルジェムは濁る……そう言ったわよね?」

ほむら「えぇ」

マミ「こんな状況で魔女化の話をしたら、私たちが正気を失い、魔女になってしまうとは考えなかったの?」

ほむら「もちろん考えたわ」

ほむら「でもゾンビ化の事実から立ち直ったころに、真実を知ってしまったりしたら……今よりも魔女化する確率が高いと思う」

杏子「そりゃ確かにそうだ。ようやく割り切れたと思ったのに、もっと残酷な真実が口を開けてたりしたら……なぁ」

マミ「それならいっそ、どん底に叩き落された今……話をしたが方がいいと思ったのね」

ほむら「そういうこと。危険な賭けだけれどね」

マミ「私たちが今まで倒してきた魔女も……元は人間だったのね」

ほむら「えぇ、そうよ」

向日葵「なんだかそう考えると、これからは魔女との戦いがやりにくくなりそうですわね」

杏子「魔女の心配なんてやめておけ。殺されちまうぞ?」

向日葵「…………」

ほむら「ねぇ、さっきからあかりが微動だにしないのだけれど」

マミ「ま、まさか今の話のショックで……」

杏子「おいおい、マジかよ!?」

向日葵「そんな……しっかりして、赤座さん!」

あかり「Zzz……」

向日葵「寝てるだけみたいですわ」

杏子「ビビらせやがって……ったく、呑気な奴だぜ」

ほむら「もう十時過ぎてるし、無理もないわね」

マミ「いつもだったら九時には寝てるものね」

杏子「ん? なんでマミはそんなこと知ってんだよ」

ほむら「これよ、これ」ビシッ

ほむらは右手を握り、小指だけ立たせて杏子に見せる。

杏子「えっ、それって……」

マミ「もう、暁美さん! 余計なこと言わないの」

杏子「……」サッ

向日葵「佐倉さん、さりげなく巴先輩から距離を取りましたわね」

杏子「あたしはそっち方面の人間じゃねーからな。勘弁してくれ」

マミ「大丈夫、あかりちゃん以外には手を出さないから!」

マミ「佐倉さん。よければ今日、泊まって行かない?」

杏子「手を出さないとか言った矢先にそれかよ!?」

マミ「へ、変な意味じゃないのよ! ただ、もし泊まる所がなければ……」

杏子「どっちにせよ、遠慮しておく。今日はいろいろあったからこんな所まで付き合っちまったけどよ」

杏子「あたしはあんたたちと仲良しごっこをするつもりはねーんだ」

マミ「そう……残念だわ」

杏子「まぁ、気持ちの整理がつくまでは……手を出さないでおいてやるよ」

杏子「饅頭とコーヒー、ごちそうさん。じゃあな」

ほむら「それじゃ、私たちも帰るとしましょう」

向日葵「そうですわね……赤座さんはどうしましょう?」

マミ「今日は私の家に泊めておくわ」

向日葵「と、巴先輩……?」

ほむら「……あまり激しくしちゃ駄目よ、疲れてるんだから」

マミ「そ、そんなことしません! ……今日は」

ごめん 22時半過ぎまでかけない
落ちたら同じスレタイで立て直す
たぶん今夜で終わる

一箇所訂正

これも置いておきますね

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内


ほむら(みんなが魔女の正体について知ってから、一週間が経った)

ほむら(向日葵が三日ほど学校を休んだり、あかねさんが見えないはずのキュゥべえをタコ殴りにしたなど色々あった)

ほむら(でも今は、それなりにみんな落ち着いている)

ほむら(佐倉杏子はマミの家に居るようだ。仲良しごっこはできないとか言ったのは誰だったかしら)

ほむら(お金がつきかけて盗みを働こうとした所を、マミに取り押さえられたらしい)

ほむら(なんだかカッコ悪いわね……)

gnsk

ほむら(しかし気になるのはインキュベーターね)

ほむら(あかりを魔法少女に出来たのだから、何らかの形で彼女を魔女にするべく、手を打ってくると思ったのに)

ほむら(魔女化という事実を知って心に傷を負ったという、絶好のチャンスを逃すなんて……)

ほむら(一体あいつは何を企んでいるのかしら)

――街中

あかり「ケーキすっごく美味しかったなぁ。マミさんはステキなお店をたくさん知ってるんだね」

マミ「気に入ってくれて何よりだわ」

杏子「マミの食うことにかける情熱は本物だからな」

マミ「何か言ったかしら、年から年中お菓子を食べ歩いてる佐倉さぁん?」

杏子「冗談だって、そんなに怒るなよマミ」

マミ「もう……誰かあなたの面倒を見てあげてるのか分かってる?」

杏子「ま、それには感謝してるさ……おっと、赤信号か」

杏子「あー、早く変わってくんねぇかなぁ。てかさ、車全然こねーし無視しちゃおうよ」

マミ「佐倉さん?」ギロッ

杏子「ちっ、これだからユートーセーは困るんだ」

あかり「あっ、変わったよ」

杏子「よし、行くか……ってストップ!」

あかりたちが横断歩道を渡ろうとした途端、左手からものすごい勢いで車が突っ込んでくる。
杏子はとっさにマミとあかりの腕をつかみ、その歩みを止めさせた。

しかし向かい側からはスーツを着た黒髪の女性が歩き出していた。
いくら魔法少女と言えどもその女性を助けることは叶わないだろう……ひとつの手段を除いては。

あかり「危ないっ!」

あかりは無意識の内に魔法を使い、彼女の運命を変えた。
女性は突然足をすべらせ、後ろ向きにすっ転んだ。
あかりたちはとっさに女性にかけよる。

あかり「大丈夫ですかっ!?」

「あいてて……頭を思いっきり打っちゃったよ。まぁそのおかげで命拾いしたんだけどさ」

マミ『あかりちゃん、使っちゃったのね』

あかり『ご、ごめんなさい!』

マミ『謝らなくてもいいわ。一人の命を助けたぐらいなら、さほど問題はないと思うし』

杏子『あかり、あんたは魔法少女として大したことないと思ってたけどよ……取り消すわ』

杏子『あんたの魔法、すげぇよ』

あかり『えへへ……杏子ちゃんに褒められちゃった。あ、杏子ちゃんと京子ちゃんって紛らわしいなぁ』

杏子『あぁ、あのやたらと元気がある金髪か』

あかり『そうなんだよぉ。京子ちゃんってばこの前……あ、あれ? 何だか目の前が、真っ暗に……』バタッ

杏子「おい、どうしたあかり!」

マミ「あかりちゃん!? ねぇ、しっかりして!」

あかり「……」

QB(僕の思ったとおりだよ。あかりはとても親切で、心優しい少女だ)

QB(たとえ見ず知らずの人間が相手だろうと、その身を助けるために魔法が必要なら……遠慮なく行使する)

QB(僕が何かをするまでもない。ただ、待ち続けるだけでよかった)

――魔女の結界

マミ「なんでなの!? あかりちゃんのソウルジェムは今朝確認したけど、濁っていなかったわ!」

杏子「分からねぇ、分からねぇけど……今はここから逃げねぇと」

杏子「魔女の強さは、生前の魔法少女の素質に比例するんだろ。あたしたちだけじゃ勝ち目なんてねぇ」

杏子「あかりの身体は、あたしが背負う。マミ、自分の身ぐらいは自分でなんとかしろよ」

マミ「私が、おぶっていくわ」

杏子「……そうかい」

――ほむらの部屋

ほむら(魔女の反応……しかもかなりの大物ね。これはまさか……ん、電話?)

ほむら「マミ? 今、魔女の反応が……」

杏子『ほむらか!』

ほむら「佐倉杏子? なぜあなたがマミのケータイを……」

杏子『悪い、今マミはとても話せるような状態じゃねーんだ。あかりが……魔女になった』

ほむら「なっ!?」

杏子『とりあえず魔法少女全員を集めて、これからどうするか考えねーと……』

ほむら「…………」

杏子『……ほむら? おい、聞いてるのか!』

ほむら「ご、ごめんなさい。先に部室に行ってて、私もすぐに行くから」

杏子『分かった。切るぞ』

――ごらく部

ほむら「遅れてごめんなさい。どうやら私が最後みたいね」

ほむら「それじゃ、魔女をどうやって倒すか話しあいましょう」

向日葵「私、赤座さんとなんて戦えませんわ!」

ほむら「……あれはもう赤座あかりではない。人の命を奪う魔女よ」

向日葵「よくもそんな風に言えますわね……あなた、それでも人間なの!?」

ほむら「私は事実を述べただけ。そして人間ではないわ……それはあなたもだけれど」

向日葵「……ッ!」

杏子「おい、言い争ってる場合じゃねーだろ!」

ほむら「なぜかは分からないけれど、今のところ魔女は目立った動きを見せていない」

ほむら「現実に顕現して街一つを吹き飛ばすぐらいの力は持っていると思うんだけど……」

杏子「そういや結界が出来た時も、あたしとマミ以外の人間は取り込まれていなかったな」

ほむら「物理的な破壊などではなく、精神的な攻撃を行うという可能性もあるわね」

杏子「まぁ何にせよ、あたしらがやれることは決まってるんじゃねーか? 結界に殴りこんどぶっ飛ばす……」

ほむら「そうね……」prrrr

杏子「電話鳴ってんぞ」

ほむら「まどか? 何かしら……」ピッ

まどか『あ、ほむらちゃん? ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど』

ほむら(今は雑談をしている場合じゃないわね。まどかには悪いけど、適当にあしらって切りましょう)

まどか『今日ママがね、車に引かれそうになったんだ。運良く後ろに転んで助かったんだけどね……』

ほむら「!」

ほむら(あかりが魔法を使った相手は、まどかの母親?)

まどか『ほんと、死ななくてよかったよ』

ほむら(なるほど、ソウルジェムが突然濁りきった原因が分かったわ)

まどか『ほむらちゃん、聞いてる?』

ほむら「えぇ。とても参考になったわ、ありがとう」ピッ

杏子「なんだったの?」

ほむら「あかりが魔法を使って助けた人間は、まどかの母親みたい」

杏子「ふーん……」

ほむら「そしてあかりのソウルジェムが濁りきった理由が分かった。あくまで仮設だけれども」

向日葵「……話してくださいますか」

ほむら「まどかのママは物凄く優秀なキャリアウーマンなの。役員をよそに飛ばすほどの力を持った……ね」

杏子(なんでこいつはそんなことを知ってるんだ)

ほむら「彼女がもし居なくなったりしたら、大勢の従業員が路頭に迷う可能性が高い」

向日葵「つまり、鹿目先輩のお母様の生死を操作するということは……」

杏子「大勢の従業員の運命を操作するも同然ってことか」

杏子「しっかしそう考えると使いづらい魔法だな。使った相手が重要な人物だったら即アウト」

杏子「見知らぬ人間に使っていい魔法じゃなかった……ってことか」

ほむら「まぁ原因が分かっても仕方ないんだけれども……話を戻しましょう」

杏子「その前に……なぁ、マミ。無理せずに家で休んでてもいいんだぜ?」

杏子「さっきからずっとそうやって俯いてるじゃねぇか」

杏子「ここに居ても、辛くなるだけだぞ」

マミ「…………」

ほむら「そんな状態のあなたが戦力になるとは思えないわ。戦う気がないなら出ていって」

杏子「おい、そんな言い方はねぇだろ」

ほむら「ただでさえ勝ち目の薄い敵と戦うのよ。戦意喪失した人間が居るだけで迷惑なのよ!」

マミ「あかりちゃんとは、もう会えないの?」

マミ「あかりちゃんとお話したり、お買い物に行ったり、ご飯を食べたり」

マミ「一緒に特訓をしたり、お風呂に入ったり、たまにケンカしたり」

マミ「抱きしめ合ったり、キスしたり……」

マミ「もう、できないの?」

マミ「あかりちゃんを元に戻す方法は……ないの?」

マミ「私、あかりちゃんが居ないと……」

ほむら「マミ!?」

杏子「おい落ち着けよマミ!」

向日葵「巴先輩、しっかりしてください!?」

マミ「あ。あかりちゃんと会う、いい方法思いついちゃった」

マミ「私も魔女になればいいじゃない」

QB「うーん、それはちょっとまって欲しいなぁ」

向日葵「キュゥべえ!?」

ほむら「魔女化を阻止しようなんて……どういう風の吹き回しかしら?」

ほむら「それに、あかりの魔女化によってエネルギーは十二分に手に入ったのでしょう。なぜまだこの星に居るの?」

QB「おやおや、君は随分と僕達について詳しいんだね」

QB「まぁそれは置いといて……魔女になった魔法少女を元に戻す方法、あるよ?」

マミ「!」

ほむら「そんな怪しい誘いに乗るとでも?」

マミ「暁美さんは黙ってて! お願いキュゥべえ、その方法を教えて!」

QB「分かった。その方法はね……」

QB「魔女になった魔法少女以上の素質の持ち主が、僕と契約する際にそれを願うことだ」

マミ「あかりちゃん以上の素質……?」

ほむら(そんなの、いるわけないじゃない!)

QB「でも、君達の周りにはそんな素質を秘めた子がいないね……実に残念だ」

マミ「そん、な……」

ほむら「忘れていたわ。淡い希望を抱かせておいて、絶望の淵に落とすのがお前たちのやり方だという事をね」

QB「おいおいちょっと待ってよほむら。魔女化からの開放は今までに全く例がないことなんだ」

QB「それによって得られるデータは僕達にとっても非常に有意義なものなんだよ」

QB「決して君達を落胆させるつもりで言ったわけじゃあない」

向日葵「それなら、今すぐそんな素質を持った人間を連れてきてくださる?」

QB「うーん、そこまでの直接的な介入は許可されてないんだよね」

杏子「チッ、少しでも期待したあたしがバカだったよ」

ほむら(あかり以上の素質……)

ほむら(まどかの因果)

ほむら(私の願い)

ほむら(時間遡行)

ほむら(最強の魔女)

ほむら(…………)

ほむら「おめでとう、インキュベーター。あなたの願いは叶えられそうよ」

QB「へぇ。何か思いついたのかな?」

ほむら「気を強く持ちなさいマミ。あかりは、絶対に助けるから」

マミ「暁美、さん……?」

杏子「本当なのか、ほむら?」

ほむら「えぇ」

ほむら(今だけは感謝してあげる、インキュベーター)

ほむら(あなたが魔女になった人間をもとに戻す方法を教えてくれなかったら……この答えにたどり着かなかったかもしれないわ)

次の日の放課後、魔女の結界――

京子「魔法少女体験コースなんて久しぶりだなぁ」

結衣「確かに」

ほむら「気分はどう?」

京子「いやぁ、魔女の結界って観察してると面白いね」

QGB「京子、君はなかなか度胸があるね」

京子「まぁね」

結衣「ねぇ、ここより遥かに強い結界ができたって聞いたんだけど……そっちはいいの?」

ほむら「私じゃ足手まといになるのよ……悔しいけど」

京子「そうなの? こんなに強いのになぁ」

結衣「京子、危ない!」

京子「……え?」

使い魔が生み出したミサイルのようなものが、京子の方へと向かう

ほむら「まずいっ!」

ほむらが拳銃でミサイルを撃ち落としていくが……一発仕留めそこねてしまった。

結衣「京子ぉおおおおっ!」

京子の身体は上半分が吹き飛んでおり、下半分は力なくその場に崩れ落ちた。

結衣「そんな、なんで……」

結衣「ねぇ、ここより遥かに強い結界ができたって聞いたんだけど……そっちはいいの?」

ほむら「私じゃ足手まといになるのよ……悔しいけど」

京子「そうなの? こんなに強いのになぁ」

結衣「京子、危ない!」

京子「……え?」

使い魔が生み出したミサイルのようなものが、京子の方へと向かう

ほむら「まずいっ!」

ほむらが拳銃でミサイルを撃ち落としていくが……一発仕留めそこねてしまった。

結衣「京子ぉおおおおっ!」

結衣の叫びもむなしく、京子の身体にミサイルが直撃し、爆発を起こした。
爆煙が晴れた時、京子の身体は上半分が吹き飛んでおり、残った下半分は力なくその場に崩れ落ちた。

結衣「そんな、なんで……」

数分後、街中――

ほむら「ごめんなさい。私が、私がミサイルをすべて撃ち落としていれば……!」

結衣「そうだよ……お前が、お前が京子を殺したんだ! 返して……京子を、返してよ!」

QB「結衣、落ち着くんだ」

結衣「落ち着いて居られるわけないだろっ!?」

QB「幸い君には魔法少女としての素質がある。京子の死をなかったことにするんだ」

結衣「なかった、ことに……?」

QB「そうだ。僕と契約すれば一つだけ願いが叶う」

QB「時間を巻き戻して、京子の死を回避するんだ。君にはそれが出来る」

結衣「それなら……京子を蘇らせるっていう願いでもいいの?」

QB「……それはできない」

結衣「なんで?」

QB「京子の肉体は魔女の結界の中に置き去りだ」

QB「そしてもうその結界は完全に消滅している」

結衣「つまり、どういうことなの?」

QB「歳納京子という人間は、そもそも存在してなかったことになるんだ」

QB「彼女のことを覚えてるのは、魔法少女あるいはその素質があるものだけ」

QB「それ以外の人間の記憶からは完全になくなってしまっている」

QB「とんでもない程の素質を秘めている者であれば、何とか出来たかもしれないけど……」

QB「残念ながら、君の素質はその領域には達していないようだ」

結衣「なら、京子を助けるには時間を巻き戻すしかないのか……でも、どこまで戻せばいいんだろう?」

QB「そうだね……今日の朝あたりでいいんじゃないかな。重要なのは、京子を魔女の結界に連れて行かないことだ」

結衣「分かった。キュゥべえ、私と契約して」

QB「いいだろう。さぁ教えてくれ、君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」

結衣「私の願いは……京子を助けるために、今日の朝まで時間を巻き戻すことだ!」

QB「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した。さぁ解き放ってご覧、その新しい力を……!」

今朝――

結衣「はっ! 今のは……夢?」

結衣(いや、現実か。右手の中指に指輪がはめられている……これがソウルジェムってやつか)

結衣(とにかく、京子を魔女の結界に行かせないようにすればいいんだな)

結衣(何が起こるのか分かってれば、そんなに難しいことじゃないはずだ)

ほむら「ねぇ、歳納さんに船見さん。今日の放課後は空いてるかしら?」

京子「ん? 空いてるよん」

ほむら「よかった。それなら……」

結衣「ごめん、今日用事があるから。行こう、京子」

京子「えっ? いきなりどうしたの」

結衣「いいから」ガシッ

京子「ゆ、結衣さんや。そんなに強く腕を掴まれたら痛いです……」

ほむら(明らかに強引に話を遮ったわね。指にソウルジェムがあったし、契約はしたようね)

ほむら(何回目なのかは分からないけど、因果の量を確認するならインキュベーターに聞けばいい)

ほむら(あいつも魔女が元に戻る際のデータが欲しいようだから、それなりに協力してくれてるしね)

京子「そろそろ離してくれよぉ」

結衣「おっと、ごめんごめん」

京子「ものすごく跡がついてるんですけど……もうお嫁にいけない」

結衣「元々いけないから安心しろって」

京子「むぅ、今日の結衣は意地悪だなぁ。こうなったら、結衣にキズモノにされたって言いふらしてやる!」

結衣「おいこら!」

京子「あぁ、なんだかラムレーズン食べたくなってきたなぁ」

結衣「……分かったよ」

京子「うーん、美味しかった!」

結衣「やれやれ……なぁ、今から買い物にでも行かないか?」

京子「いいよん。あれ、今日用事があるんじゃないの?」

結衣「あ、あれはだな……その、今日は京子と一緒に買い物したかったから、ウソついたんだよ」

京子「!」

京子「そっかぁ、結衣はそんなに私と買い物がしたかったのかぁ。ういやつういやつ」

結衣「か、からかうなよ……」

京子「とか言ってるけど顔は真っ赤だぞー」

結衣「……」グリグリ

京子「痛い、痛いってば結衣ぃ!」

結衣(京子との買い物をしばらく楽しんだ後、町中で別れた)

結衣(やっぱり京子と居ると楽しいな……)

結衣が京子との買い物の余韻に浸っていると、少し離れた場所から物凄い爆発音が聞こえた。

結衣(一体何が起きたんだ? とにかく行ってみよう……)

爆発音がした場所につくと、そこは地獄が広がっていた。
燃え盛るタンクローリー、泣きわめく人々、懸命に消火活動を行う消防隊員……。

結衣「なんだよ、これ……」

結衣がタンクローリーに近づいていくと、小さな何かが目に入った。
気になってそれを拾い上げてみると、京子が自作したミラクるんのキーホルダーだった。

結衣「なんでさ」

結衣「なんで、京子がこんな目に遭わないといけないんだよ……!」

結衣(私はあれから何度も時間を巻き戻した。京子の命を救うために)

結衣(でも、何度やっても駄目だった)

結衣(前回の死因に対処しても、別の理由で京子は死んでしまう)

結衣(まるで、世界そのものが京子を殺そうとしてるようだ……)

結衣(…………)

結衣(私はどうすれば京子を助けることが出来るの?)

結衣(誰か、教えて……)

結衣(朝か……また、絶望の始まり)

結衣(学校に行きたくないなぁ。でも、私は京子から目を離すわけにはいかない)

結衣(……行こう)

――二年生教室

QB『ほむら、ほむら!』

ほむら『何か用?』

QB『京子の背負う因果が、あかりの因果を上回っているよ』

ほむら『!』

QB『後は京子に、あかりを人間に戻すように祈らせるだけだ』

ほむら『分かったわ。報告ありがとう』

QB『どういたしまして。僕たちとしても非常に興味深いことだからね、楽しみにしているよ!』

――通学路

結衣(京子を救うための手は必ずあるはず。とりあえず、今までの情報を整理してみよう)

結衣(一度目は、魔女の結界で使い魔に殺された。ほむらがしっかり守れば、京子は死なずに済んだ)

結衣(二度目……タンクローリー事故に巻き込まれた)

結衣(三度目、ひも状のものによる絞殺)

結衣(四度目は……あれ、そう言えば四度目もタンクローリーだぞ)

結衣(あの時はどんな行動を取ったんだっけ……)

結衣(えっと、そうだ。二人で遊んだ後に町中で別れた。三度目はタンクローリーを警戒して自宅まで送っていったのに)

結衣(愚かにも、四度目はそれをしなかった……しかし、これで分かったことがある)

結衣(京子を殺したのは世界なんかじゃない、人間だ。そしてすべて同一犯の仕業)

昼休み、二年生教室――

ほむら「ねぇ、歳納さん。ちょっと相談があるのだけれど、二人だけで話せないかしら?」

京子「ん? いいけど」

結衣「ちょっと待った」

ほむら「船見さん……」

結衣「私も暁美さんと二人だけで話したいことがあるんだけど」

ほむら「うーん、そうね……なら先に私と歳納さんだけでお話してもいいかしら? 船見さんとはその後で」

結衣「ダメ、私との話が先」

京子「修羅場ってやつですなぁ」

ほむら「……分かった」

――とある空き教室

ほむら「それで、話って何かしら?」

結衣「単刀直入に聞くよ。今まで京子を殺してきたのは……お前だな?」

ほむら「は? 一体何を言ってるの……歳納さんは死んだりしてないわ」

結衣「あぁ、そっか……お前の視点で考えればそうなるんだよな」

ほむら(気づいてしまったのね。拳銃や爆弾などの使用を避ければ、大丈夫だと思ったのに)

結衣「お前はこの後、私と京子を魔女の結界に行かないかと誘うつもりなんだろう?」

結衣「でも、そもそもそんな事をするのはおかしいだろ……一般人を二人も連れていくなんて尚更」

ほむら「あなたは何を言っているの。そんなお誘いはしてないわ」

結衣「しらばっくれなくてもいい。話を続けるぞ」

結衣「二つ目の怪しい点。それは……京子がまったく同じ死に方をしたこと」

結衣「二回目と四回目のループでは、京子はタンクローリーによる火災事故に巻き込まれている」

結衣「しかもその時の私は、似たような行動を取っている」

結衣「つまり、だ……犯人は私の行動に合わせて殺害方法を変えている」

結衣「もし神様が京子を殺すのなら、そんな人間臭くて回りくどいようなことはしないだろ」

ほむら「……そこまで言うのなら、証拠はあるのでしょうね?」

結衣「もちろん」

ほむら「へぇ、見せてもらえるかしら」

結衣「あぁ……これが、お前が犯人だという証拠だ!」

ほむら「イ、インキュベーター!?」

QB「すまないほむら、結衣にすべて話してしまったよ」

ほむら「ちょ、ちょっと! 何でそんなことを……」

結衣「キュゥべえはウソをつくことができない。言葉を濁したりはするけどね」

結衣「それなら口を割らせるのは、難しいことじゃない」

ほむら「それなら、さっきまでの茶番はいらないんじゃ……」

結衣「……やれやれ、まだ気づかないの?」

結衣「さっきまで、部屋の外がもっと騒がしかったと思うんだけど」

ほむら「外からまったく音がしない……まさか!」

結衣「一時的にだけれど、この部屋の時間と外の時間を断絶させてもらった」

結衣「これで邪魔は入らない。京子が受けた痛み……その身で味わってもらうから」

ほむら(まずいわね……)

結衣「あぁ、そうだ。お前を殺した後に、あかりはちゃんと助けるから安心してね」

数分後――

結衣「もう限界? 随分とあっけないな……」

ほむら(ダメ、時間を操れない私が敵う相手じゃなかった……)

ほむら(でも、これって自業自得よね)

ほむら(私が歳納さんを何度も殺そうとしたのだから)

ほむら(自分でも信じられない。こんな残虐な方法を行うだなんて)

ほむら(タンクローリーでの火災事故とか、ありえないでしょう)

ほむら(歳納さんを殺すことは避けられないとしても、もっと楽に死なせる方法はいくらでもあるのに)

ほむら(なぜそれを選ばなかった? 何かが引っかかる……)

結衣「もう時間もないし、そろそろトドメを刺すよ。何か言い残すことは?」

ほむら「…………」

結衣「そう……それじゃ、さようなら」

マミ「待ちなさい!」

ほむら「マミ!?」

結衣「巴先輩!? 時間切れか……」

マミ「なぜ二人が争ってるのかは分からないけど、一度頭を冷やしなさい」

杏子「マミの言うとおりだ。落ち着かないとやべぇことになるぞ」

マミ「二人に聞きたいのだけれど……今日、ちょっとしたことで殺意が湧いたり、残虐なことをしたいって思ったりしてない?」

ほむら「……あるわ」

結衣「私は今日を何度も繰り返してるから、なんとも言えない」

杏子「それさ、魔女になったあかりの能力かもしれねぇ」

ほむら「はぁ?」

マミ「暁美さんはテレビを見ない方?」

ほむら「そうね、あまり見ないわ」

杏子「この街一帯、ニュースに取り上げられまくってる」

結衣「こんな普通の街がニュースに?」

マミ「なぜなら、街のそこら中で殴り合いなどの暴動が起きてるから」

杏子「あかりの結界に近ければ近いほど、やべぇことになってるぜ」

ほむら(じゃあ私が歳納京子を残虐に殺そうと思ったのは……)

杏子「あいつ何もしてこねーし、案外大したことないんじゃないかとか思ってたが、そんなこたぁなかった」

マミ「こんな広範囲の人間同士を争わるなんて、危険すぎるわ。数日もあればこの一帯は壊滅するでしょうね」

結衣「じゃあ、暁美さんが京子をあんな風に殺したのは……」

ほむら「どんな理由があったとしても、私がやったことには変わりないわ。あなたが受けた心の傷が癒えるわけでもない」

ほむら「それに殺し方は違えど、歳納京子を何度も殺そうとしていたのは変わらないわ」

結衣「…………」

結衣「とりあえず、あかりを何とかするまでは休戦ってことにしておこう」

結衣「暁美さんをどうするかは、それから考える」

――二年生教室

京子「おっ、戻ったかー」

結衣「おまたせ。それじゃ、行くぞ京子」

京子「へ? 私は今からほむらと……」

ほむら「あぁ、船見さんにも同席してもらうことにしたの」

京子「つまり……私にハーレムを築けということでいいのかな?」

結衣「違うから」

――空き教室

京子「それで、話って何?」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

京子「あれ、キュゥべえもいるの?」

結衣「キュゥべえが居ないと話にならないからな」

ほむら「そうね」

京子「???」

結衣「京子、頼む。キュゥべえと契約してくれ! あかりを救えるのはお前だけなんだ」

京子「え、えぇええええっ! ってあかり?」

結衣「実は、あかりは魔女になってしまったんだ……」

京子「マ、マジで……?」

ほむら「大マジよ」

結衣「お前があかりを人間に戻してと願ってキュゥべえと契約すれ、あかりは元通りになるはずなんだ。頼む……」

京子「分かった!」

結衣「はやっ!」

京子「当然でしょ。あかりは大事な幼馴染んだからね」

結衣「京子……」

京子「それに、このままエターナルアッカリーンとか笑えないしねー」

結衣「やっぱりお前はマイペースだな……」

QB「それじゃあ歳納京子……君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」

京子「私の願いは……私の幼馴染である赤座あかりを人間に戻すことだっ!」

結衣(何気に細かく指定してる。こういう所はしっかりしてるんだよね、京子って)

QB「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した――」

京子(エントロピーってなんだろ?)

ほむら(京子の契約から数日後。街の暴動はすっかり収まっていた)

ほむら(今は、暴動によって壊れてしまった街の修理を大勢で行なっている)

ほむら(復興にはかなりの期間かかるらしい)

ほむら(壊れたといえば、私と船見さんの関係も変な方向に向かってしまった)

結衣「こんにちは、暁美さん」

ほむら「こんにちは」

結衣「今日も特訓お願いね」

ほむら「……えぇ」

ほむら(京子が契約した後、私をどうするか決めるって言ってたけど……なぜか時間を操って戦う際のコツなどを教えることになった)

ほむら(あ。その前に強烈なビンタをかまされたわね。あれは本当に痛かった)

――マミの家

杏子「それじゃ、そろそろ行くわ」

マミ「本当に行っちゃうの?」

杏子「いつまでもマミの世話になるわけにもいかねーしな。それに……」

マミ「それに?」

杏子「あたしが居たらロクに乳繰り合えねーだろ?」

マミ「も、もう! 何を言ってるのよ……」

杏子「まぁ、そのうち遊びに来てやるよ。じゃあな」

あかり「ふわぁ……よく寝たなぁ」

マミ「あら、お寝坊さんね。佐倉さん、行っちゃったわよ」

あかり「えぇええっ!? もう、起こしてよぉ……」

マミ「あかりちゃん、すごく気持ちよさそうに寝てたから……ね」

あかり「もう、あかりプンプンなんだからね!」

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