【Pの家】
ガララッ
響「……おじゃましまーす」
ソロリソロリ
P「ぐがー……ぐがー……」
響「えへへっ、よく寝てるみたいだぞ……♪」
シュルシュル……
響「おおっ……、意外と良いカラダしてるんだな、プロデューサー」
響「……じゅるるん」
響「それじゃあさっそく……いただきまーす♪」
かぷっ
響「ちうちう」
P「……んっ……?」
響「ごく、ごく……ちゅるちゅる……ぷは」
P「んあ……なんだ……? なんか、痛……」
P「!?」ガバッ
響「あ」
P「ひ、響!? 何やって……」
P「えっ、ていうか俺、裸!?」
響「うぎゃー! どどどうしよう、起きちゃったさー!」
P「……よ、夜這い? ……そんな、ちょっと心の準備が……」モジモジ
響「よばっ……ち、ちち違うもん! このヘンタイプロデューサー!」
P「……なるほど。響はヴァンパイアガールだったんだな」
P(いきなりそんなこと言われても、って感じだが……しかし、この目……)
響「う、うん……ごめんね、今まで黙ってて」
P「それで、夜な夜な見境なく人間の血を吸ってると……」
響「見境なくじゃないさー。どうしても喉がカラカラになったときだけだし、人間の血を吸ったのもこれが初めてだぞ」
P「そうなのか? すまないな、漫画とかのイメージがあって」
響「当たり前でしょっ! 意識に個人差はあるけど、男の子の血を吸っていいのは……――なときだけだもん」
P「え、なんだって?」
響「な、なんでもないさー……あはは」
響(異性の血を吸っていいのは、「きゅんっ!」ってなったことがある相手だけなんて、言えないぞ……)
響「っていうか、プロデューサーは信じてくれるの? こんなお話」
P「……当たり前だろ、俺は響のプロデューサーだぞ」
響「……ぷ、プロデューサー……」
P「アイドルのことを信じてやれないで、何がプロデューサーだ……ちょっとビックリはしたけどな」
響「ううっ、自分……、プロデューサーに着いてきてよかったぞっ!」
ガッ
P「うわっ!?」
グラ
P「ちょ、ちょっと……いきなりガッとやるんじゃない」
響「あ……ごめんね。こうなってるときは、ちょっと理性とんじゃってて……えへへ」
響「……」ジッ
P「……」
P(響の瞳がいつもと違う……ルビーみたいに真っ赤に光って、薄暗い部屋の中だっていうのに、ギラギラ輝いてる)
P(すごい力で押し倒されてるこの状況が、本当は恐ろしい事態のはずなのに……なんだか心惹かれてしまうな)
響「……あう……」
たらー
P「……よだれ、垂れてるぞ」
響「あっ、う、うう!」ゴシゴシ
P「血、吸いたいのか?」
響「べ、別にっ! もう大丈夫さー、さっきもちょっとだけ吸ったし……」チラ
P「……遠慮することないさ、好きなだけ吸えばいいよ」
響「……い、いいのっ?」
P「そうしないと、生きていけないんだろ?」
響(別にそんなことはないけど……)
響「う、うん。実はそうなんだっ」
P「じゃあ、吸っていいさ。俺なんかで、響の力になれるなら……」
響「……っ……」
ぎゅっ
P「……よしよし」ポンポン
響「ごめんね……」
P「謝る必要なんて、ないよ」
響「……自分、一生……プロデューサー以外の血、吸わない……」
P「ははは……それなら俺も、頑張ってレバー食べて鉄分取らないとな」
響「……そ、それじゃ……いただきまーっす」
ちゅっ
P「……っ」
P(首筋に、響の唇の感覚がっ! ゾクゾックするでこれ!)
響「ちうちう……」
P「な、なあ……」
響「んぐっ……なあに?」
P「俺、別に死ぬわけじゃないよな?」
響「だいひょうぶ、しょんなに、いっぱいは……吸わないぞ……」
P(……あ。ちょっと……クラクラするような……)
コク、コク……
響「ぷはっ……ごちそうさま」
P「も、もういいのか?」
響「うんっ! 今日はこれくらい。ありがとねっ、プロデューサー!」
響「血を吸うのも……、子分を作ったり、ただ喉潤すためだったり、いろいろ種類があるんだけどね」
P「そうなのか……」
響「うんっ。でも、今はこれくらいでいいさー。プロデューサーを子分にもしないぞ」
P「思ってたより、大したことないんだな。もっとこう、体ごとバリバリ食ったりはしないのか?」
響「なにそれっ!? 自分、そんなことしないしー! プロデューサーは漫画の見すぎだぞ……」
P「わ、わるい……響はそんな子じゃないよな」
響「そーだよっ! ……それに、自分だけいっぱい吸っちゃったら、不公平だもんねっ」
P「え? それってどういう……」
響「なんでもないっ! えへへ……」
ひびパイア編 おわり
吸血鬼の設定は適当なので多目に見てね
【765プロ事務所】
P「……」カタカタ
P(あの夜、響は意味深なこと言ってたな……。自分だけいっぱい吸ったら不公平、だとかなんとか)
P(もしかして……、身近なところに、他にもヴァンパイアガールがいたりして……)
P「なーんてな。ふわああ……」
P「よし、ひと段落着いたし……休憩がてら、ちょっと仮眠するか」
P「さてと……ソファ、ソファっと……」
P「……って」
美希「……すぅ、すぅ……」
P「美希……、またこんなところで寝てるのか」
P「ほらほら、起きろ起きろ」ペシペシ
美希「んむ……やー……」
P「女の子がこんなところで寝るんじゃない。体痛めるぞー」
美希「……むにゃむにゃ……」
P(このままでは俺が眠れないな。よし、ここは心を鬼にして……)
P「ごほん……ん、ん……」
スゥ……
P「こら美希っ! また寝坊してっ!!」
美希「ふぇっ!?」ビクッ
P「もう遅刻よ、ち・こ・く!! いい加減にしなさいっ!!!」
美希「ごごごめんなさいなのっ、律子……さんっ!」
美希「……あれ? 律子、さん……おっぱいちっちゃくなった?」
P「おはよう、美希」
美希「?? ハニー? 律子さんが、ハニーになっちゃったの?」
P「俺は律子じゃなくて、お前のプロデューサーだよ。ほらほら、立った立った」
美希「え、えっと……はいなの」
スクッ
P「はい。それじゃ、代わりに俺はここで寝るから……おやすみ……」
美希「おやすみなさいなの……」
もぞもぞ……
P「…………ぐがー……ぐがー……」
美希「……? ……えっと……」
美希「……」
美希「!」ピコン
美希「だっ、だまされたの!」
美希「ちょっとハニー、そこはミキの場所だよっ! どーいーてー!」グラグラ
P「……やー……なのー……」
美希「ハニーがそんなこと言っても、ゼンゼン可愛くないって思うなっ!」
P「……zzz……」
美希「もうっ……! ……でもなんか、動いたらもう眠くなくなっちゃった」
美希「レッスンまでまだいーっぱい時間あるし……」
美希(これはもしかしてもしかすると……ハニーとイチャイチャするチャンスかも!)
美希「ハニーがいけないんだよ~……ミキのこと、だましたりするから……♪」
コソコソ……
美希「はーにぃ♪」ピト
P「ん……zzz……」
美希「……でも、なにしたらいいんだろ? 寝てるハニーにくっついても、その先がわかんないの」
美希「いつもはハニーが止めちゃうから……。あれ? ミキがいつも、ハニーにしたいことってなに?」
美希「……」
美希「…………!」ボッ
美希「そ、それはないの! そういうのはやっぱり、起きてるときじゃないと~……やん」モジモジ
美希「……ちら~り」
P「……ふごっ……むにゃむにゃ」
美希「……な、なんかヘンなカンジ。寝てるハニーを見てると、ミキがミキじゃなくなっちゃうみたい……」
ゴクリ
美希「なんだか、ノドもカラカラなの……」
のワの「吸っちゃえよ」
美希「えっ、誰?」
のワの「チウチウシテー」
美希「ちうちう吸う……何を?」
のワの「」スゥ……
美希「消えちゃった……」
美希「……なーんてね! ミキは本当はわかってるの。今こそ、アレを吸うチャンスってカンジ!」
美希「パッと舞って……へんし~ん!」
くるくる パッ
美希「そうなの! スーパーアイドルは世を……えっと、シノビ姿? ニンジャ? ……ま、いっか」
美希「とにかく! ミキの正体は……なんとなんとなんと!」
美希「ヴァンパイアガールだったの! あは☆」
美希「ハニーの血……いただきますなの♪」
ソロソロ……
P「……zzz……」
美希(発見! おいしそうな男の子! な、なんだか良いニオイ……)
美希「じゅるるん……も、もう我慢できないのっ!」
かぷりっ
P「んっ……」パシン
美希「あたっ。もう、ミキは蚊じゃないの……」
美希「……ちう……ちう……」
ドキドキ…
チラ
P「……んおっ……ぐおごごご……」
美希「~♪ ちゅうちゅう……」
美希「ぷはぁっ。……は、ハニー、起きてないよね?」
P「……zzz……」
美希「やったやったやったぁ! 男の子の血、初めて吸っちゃった!」
美希「これでミキも、立派な女吸血鬼なの!」
美希「えへへ♪ それにしても~……ハニーの、血ってばぁ……」
美希「……」
美希「意外とマズイの」
美希「もっともっと、甘~い生クリームみたいなのを想像してたの……」
美希「ハニー、もっとちゃんとしたもの食べないとダメだよ? もう、ハニーひとりの体じゃないんだからね?」
美希「もっといっぱい吸いたいとこだけど……、ミキ的には、もうお腹いっぱいってカンジ」
美希「血を吸うのは、たまにでいいかなぁ……。冷蔵庫でなんか探そーっと。お口直ししなきゃ」トテテ
がちゃ
美希「……なーんにもない! お茶も、おにぎりも、イチゴババロアすらないのっ!」
美希「ちょっとハニーっ!!」グラグラ バシバシ
P「うがっ!? いたた、いた……な、なんだ!?」
美希「ミキがこないだ取っといた、イチゴババロアはどこ!? ケーキは!?」
P「何言って……美希、それ全部、さっき食ってたじゃないか……」
美希「えっ?」
P「ほら、そこら中にゴミが散らかってるだろ」
ゴチャア……
美希「……そうだったの。てへ☆」
P「まったく、そそっかしい奴だな……そんなことで俺の眠りを覚ますとは」
P「っておい!? お前、その格好……!」
美希「あっ」
P「……」
美希「へ、変身解くの忘れてたの……」
P(いつもより青白い肌、真っ赤に燃える瞳……、そして、マイディアヴァンパイア……)
P「……美希、お前も……ヴァンパイアガールだったのか……」
意外と予想外で面白いぞ
意中の人の血がマズイとかなんかリアルを感じる
美希「も? ミキ以外にも、誰か知ってるの?」
P「あっ、いや……まあちょっとな」
P(響と約束したんだった。あまり自分の正体のことは他言しないように、って)
P「ごほん! そ、そんなことより……俺の血、吸ったのか?」
美希「う……。……うん……」
P「やっぱりか……道理で体がだるいと思った。寝てる間に勝手に吸うなんて、もうこれっきりにしてくれよ」
美希「ごめんなさいなの……」
P「……まあ、反省してくれたならいいよ」
美希「はっ、反省してるの! だから、その、キライに……」
P「これくらいのことで、嫌いになるわけないだろう。……正直に言ってくれて、ありがとな」ポンポン
美希「! ハニー……」
P「今度から、ちゃんと言ってから吸うように。気付かないうちに貧血になってたら、体が持たないからな」
美希「はいなの! ……でも、いいの?」
P「しかたないさ。こうでもしないと、生きていけないんだろ?」
美希「? そうなの?」
P「そうなの? って……お前自身のことだろうに。まあ……、それも美希らしいっちゃ美希らしいか」
美希「ハニーがそう言うなら、そうなのかもねっ! あは♪」
P「はは、なんだか適当だな……それで、今日はもう吸わなくてもいいのか?」
美希「うん。ハニーの血、おいしくないんだもん」
P「……そ、そうすか」
美希「もっともっと、いっぱい甘いモノ食べたほうがいいと思うなっ! 血がぜーんぶ、イチゴソースになるくらいっ♪」
P「無茶言うな……」
765プロで飲むプロデューサーの血は苦い
ぐ~
美希「甘いモノの話したら、お腹減っちゃった」
P「ちょっとフリーダムすぎじゃないですかね」
美希「なんかなんか~、今ミキね、すーっごく、甘いモノが食べたいってカンジ!」
P「甘いモノか……例えば?」
美希「えっとね、具体的に言うとぉ~、ケーキとか……、あと、ケーキとか?」
美希「あの赤くて甘酸っぱ~いのが乗ってると、さらにグッドなの♪」
P「わかったわかった、イチゴが乗ったショートケーキな。……まだちょっと時間あるし、買いにいくか!」
美希「うんっ!」
みきパイア編 おわり
【765プロ事務所】
ガチャ
貴音「……はぁ、はぁ……おはようございます、プロデューサー」
P「ああ、おはよう貴音。……ってどうした!? 顔色が悪いぞ」
貴音「……いえ、なんでもありません。私は、至って健康で――」
P「なんでもないってことはないだろう、熱でもあるんじゃ……」
ピト
貴音「っ! ふ、触れないでくださいっ!」
パシッ!
P「っ……!」
貴音「ぁっ……も、申し訳ありません! ああ、私はなんということを……」
P「い、いや……俺の方こそすまない。気安くさわるような真似をしてしまったな」
貴音「……いえ、あなた様は、何もお気になさらずに……手をあげるつもりでは、なかったのです……」
P「具合が悪いなら、今日のスケジュールは無しにするか? 幸い、レッスンだけだし……」
貴音「いいえ! 四条の家の人間として、これしきのことで休むなど許され――」
ふらっ
貴音「っ……!」
P「お、おいおい、大丈夫か!?」ガシッ
貴音「だ、大丈夫、大丈夫ですから……お願いです、これ以上……」
P「これ以上?」
貴音「……なんでも、ありません……」
P「やっぱり病院に行こう。とても普通の様子には見えないぞ」
貴音「……たしかに私は、ある種の病を患っている、と言えるかもしれませんが……」
貴音「一般の病院では、きっと……これを治すことはできないでしょう……」
P「そうは言ってもな……」
貴音「……わ、わたくしはっ……!」
ぐ~ギュルギュルギュル……
P「……」
貴音「あの、その、私は……えっと……」カァァ
P「えー……あの、貴音? もしかして、今こうなってるのって」
貴音「いっ、言わないでくださいませ! 決してそんな、空腹だから、などということだけが理由では……!」
貴音「……う、うう……」
P(両手で真っ赤になった顔を抑えてる。かわいい)
P「……ごほん! つまり、そうなんだな? まったく、無理なダイエットでもしてるのか? 貴音らしくもない」
貴音「だいえっとなど、そのようなつもりはないのですが……」
P「何か食べに行こう。とは言っても、空腹にいきなりラーメンとかは重いか……」
貴音「らーめん……じゅるるんっ」
だらー
P「……ラーメンでいいか」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・) バンバンバンバン゙ン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
バン はよ
バン(∩`・д・) バン はよ
/ ミつ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄\/___/
ドゴォォォォン!!
; ' ;
\,,(' ⌒`;;)
!!,' (;; (´・:;⌒)/
∧_∧(;. (´⌒` ,;) ) ’
Σ(* ・ω・)((´:,(’ ,; ;'),`
⊂ヽ ⊂ ) / ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄ ̄\/___/ ̄ ̄ ̄
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. ∵ ./ ./|
_, ,_゚ ∴\//
(ノ゚Д゚)ノ |/
/ /
ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
ポチ ポチポチポチポチポチポチ
ポチ(∩`・ω・) ポチポチポチポチポチ
_/_ミつ/ ̄/_
/_/
【ラーメン屋さん】
コト……
貴音「……ごちそうさまでした」
P「お、おい、まだ半分も減ってないぞ?」
貴音「申し訳ございません……やはり、食欲が……」
貴音「……調理をしていただいたお店の方にも、なんとお詫びしたらよいか……うぅ」
P(泣いている……そんなにも、ラーメンを完食できなかったことが悔しいんだな)
P「ほ、ほら、店員さんも困ってるから……とにかく、出よう」
貴音「う、うう……はい……」
―――
――
―
P「……落ち着いたか?」
貴音「はい……見苦しいところを、お見せしてしまいましたね……ぐすっ」
P「そんなこと、気にしなくていいさ。……なあ、何があったんだ?」
貴音「……そ、それは……」
P「無理にとは言わないが……俺でよかったら、話して欲しい。少しでも、貴音の力になりたいんだよ」
貴音「プロデューサー……」
P「……まぁ、俺なんかじゃ頼りないかもしれないけど」
貴音「いえ、決してそのようなことは……でしたら、語らせていただきます」
P「……」
貴音「あなた様は……、吸血鬼なる者の存在を、信じますか?」
P「……吸血鬼?」
貴音「お化けや妖怪と呼ばれる……人外、異形の者達のうち、そのひとつ。……その存在を信じますか?」
P「……」
P(……響、美希……あの子たちのことを人外だとは、決して言いたくはないが……)
P「信じるよ。それは、間違いなくいる。俺たちのすぐ近くに……」
貴音「……」
P「……ど、どうした、そんな驚いた顔して」
貴音「いえ……、実に自信ありげに宣言するものですから、私、少々驚いてしまって……ふふっ、ふふふ」
P「わ、笑われるようなことか? そんなにおかしな言い方をしてしまったかな」
貴音「可笑しくなどありません……。私はただ……、あなた様の、真にあなた様らしい、そのお姿に……」
貴音「心から……、安堵してしまったのですよ」
P「……この話をし始めたのも、その体調不良に関係してるんだろ?」
貴音「はい……あなた様は、全てお見通しのようですね」
P「そんな大それたもんじゃないよ。ただ、貴音はお化けが苦手な怖がり屋さんだったからさ」
貴音「あ、ああ、あなた様っ!? なぜいきなり、そのような……!」
P「はは、そう恥ずかしがるなよ」
貴音「は、恥ずかしがるなど……もうっ」
P「そんな貴音が……、なんでもない雑談で、こんな話をするわけがない、と思っただけさ」
貴音「……そのとおりです。あの……あなた様?」
P「どうした?」
貴音「今から見るもの……その全てから、目を逸らさないでいただけますか?」
P「……あ、ああ」
P(な、なんだ? 急に、貴音の雰囲気が変わった)
サァァ……
P(……これは、やっぱり……)
ザァ……
ザザァ……
貴音「……」
P(……空気が冷たい。貴音を中心に、地面に落ちた木の葉が、渦を巻いている……)
バサッ バサバサッ……
キー キーキー!
P(……こうもり? なんでこんなに、たくさん――
ゴォォオオ! ブワッ!
P「!! か、風が……! げほ、ごほ……」
P「お、おい、貴音! そっちは、だいじょう……ぶ……」
P「!?」
貴音「……」
P(……透き通るような蒼い肌、水滴が零れ落ちるほどに、濡れたまつ毛……)
貴音「あなた様……」
ギロリ
P「……っ」
P(ルビーのように、そして炎のように燃える瞳が……怖いくらいに、俺の心を掴んで離さない……)
P(息が出来ない、目が離せない。油断したら、食われてしまう……!)
貴音「……驚きましたか?」
P(そして……、黒と赤を基調にした、ロリータ・ドレス……マイディアヴァンパイア……)
P「……貴音、やっぱり……、お前は……」
貴音「……そう、私は……」
貴音「ヴァンパイアガール、だったのです」
貴音「あの……、あなた様……?」ジッ
P(だが、呑まれてはいけない! 響や美希とは違う、吸血鬼の恐ろしさを感じたって……、そんなもの関係ない!)
P(俺は……この子の、プロデューサーなのだから!)
P「……ああ、信じるよ。貴音は、吸血鬼なんだな」
P「それで……、血が吸いたくて、たまらなくなっていたんだ」
貴音「……ふ、ふふ、ふふふふ……♪」
P「……お、おい……?」
貴音「そのとおりです♪」
ヒュンッ…… ガッ!
P「ゴフッ!」
P(んなっ、なんて力だ……!? 少しガッとやっただけで、地面に叩きつけられ――
貴音「私は、もう辛抱できないのです。あなた様の匂いは……、これでもかと、私の心をかきたてます……じゅるるん」
P「ひぃぃ」
メリメリ……
P「いっ、痛っ……」
貴音「よ、よろしいでしょうか? よろしいですね? も、もう私、はっきょ、発狂寸前なのでしゅ」
P「わ、わかったわかった……わかったから、ちょっと手の力を緩めてくれ」
貴音「こ、これは失礼を……真に申し訳御座いませ――
ぐ~ぎゅるぎゅるぎゅるグゴゴゴゴ……!
P「……」
貴音「……」ぽっ
P「は、はは……また腹の虫が鳴いてるな……」
P(……なぜ、俺はさっきまで、貴音のことを恐れていたんだろう。どんな姿になろうと、正体がなんであろうと……)
P(目の前にいる少女が、あの、心優しい貴音であることに……、違いはないのに)
P「ほら、俺は抵抗しないから……いくらでも吸ってくれ」
貴音「いくらでも?」ピク
P「ああ。とは言っても、もちろん死なない程度に――
ガブリっ!
P「!?」
貴音「」ズゾゾゾゾゾ
P「お、おおっ、おおお……」シワシワ
貴音「」ジュルルルルル
P「……は、はぁあ~ん……」
シュワシュワ……
P「あ、あ……」ピクピク
貴音「~♪ ちうちう……」
P(俺の見える世界が、闇に包まれる)
P(暗転していく、俺の意識が……、かろうじて最後にとらえたものは……)
P(嬉しそうに血を吸う、貴音の最高の笑顔だった)
P(ははは……アイドルの笑顔が、最期に見られるだなんて……、プロデューサー冥利に……尽き……)
―――
――
―
P「ほあっ!」ガバッ
貴音「あ、あなた様! ……ああ、良かった……目が……!」
P「え? こ、ここは……あの世?」
貴音「い、いいえ、ここは間違いなく現世ですよ」
P「現世……ということは、生きてるんだな!? よ、よかった……!」
貴音「あなた様……本当に、申し訳ありませんでした……」
ズサッ……
P「お、おい、いきなり土下座なんて……ちょ、ちょっと説明してくれ。俺はあのあと、どうなったんだ?」
P「……つまり、ミイラ寸前になったが、貴音がなんとかかんとかして蘇らせてくれたんだな?」
貴音「はい……」
P「不思議なもんだな……そんな力まであるのか、ヴァンパイアガール」
貴音「もちろん、個人によって出来ることに差はありますが……この程度のことならば、私ならば出来ると踏んでおりました」
P「ん、ということは、今までやったことはなかったのか?」
貴音「ええ。なにせ、蘇らせるには、たいえ……」
P「?」
貴音「……な、なんでもございません」ぽっ
P「随分、顔色が良くなったじゃないか」
貴音「ええ……、あなた様のおかげです。このご恩は、決して忘れません……」
P「そんなに畏まらなくてもいいさ。こうして今は、俺も元気になったことだしな!」
貴音「……ふふ、ふふふ♪」
P「貴音がそうして、笑顔を取り戻してくれて……本当に嬉しいよ。やっぱりお前には、笑顔が一番よく似合う」
貴音「……」
P「……な、なんか言ってくれ。さすがに臭かったか?」
貴音「いいえ……あなた様はやはり、私にとっての……、銀の弾丸のようだと、思っただけでございます」
P「え? どういう意味だ?」
貴音「ふふっ……私を、ハッピーエンドに導いてくれる存在、ということですよ♪ 真の意味で……」
P「……?」
P「よし、それじゃあそろそろ、帰ろうか。随分暗くなってしまったしな」
貴音「はい……」
ぐ~
貴音「……」
P「……よし、帰りにもう一回、ラーメンでも食べにいくか! 奢るぞ」
貴音「申し訳ございません……」
P「今なら、完食できそうか?」
貴音「はい! それはもう、何杯でもいけそうな気がいたします!」
P「はは……て、手加減してくれよ」
テクテク
貴音「~♪」
P「……」
P(もう貴音は、いつもの元気を取り戻したようだ。見た目も服装も、今ではごく普通の人間そのものだ)
P(……しかし……)
貴音「? どうしたのですか、あなた様? そのように見つめて……」
P(しかし、しゃなりしゃなりと歩くその姿に……、俺は不思議と、いつもよりずっと強く、心が惹きつけられてしまっていた)
P(これも、ヴァンパイアガールが持つ不思議な力のひとつなのだろうか?)
P(……いや、そんなこと言ったら貴音に失礼だな)
P「なんでもないよ。貴音は魅力的だな、と思ってさ」
貴音「まぁ、……あ、ありがとう、ございます……」
貴音「い、いきなりそんなことを言うなんて……おかしな人ですね」
貴音(……ですが、そんなあなた様だからこそ……私は、発狂寸前にまで、心を狂わせてしまったのです……)
貴音(……恋の病……。ヴァンパイアガールは、この病を患ってしまうと……)
貴音(その心の渇きを潤すために、異性の血を激しく求めてしまうのですよ)
P「貴音、なんだか上機嫌みたいだな? ……ああそっか、ラーメン屋が見えてきたからか」
貴音「もうっ……それは、わざと仰られているのですか? あなた様は、本当に……いけずです」
P「ええっ? な、なんで……」
貴音「……それは……」
貴音「とっぷしーくれっとですよ、あなた様」
たかパイア編 おわり
P(世界には、俺の知らないことがまだまだたくさんある。人にしか見えないが、人ではない存在……)
のワの「ナデナデシテー」
P(……この生き物もそうだが、まあ今は関係ないから置いとこう)
のワの「!?」
P(ヴァンパイアガール……暗闇の中で魔性に目覚める、吸血鬼)
P(響、美希、貴音……俺はこの短い間に、三人のヴァンパイアガールに出会った)
P(彼女たちが普段、何を思って生きているのか? なぜ俺の血に、そこまでこだわるのか?)
P(それすらも、俺にはわからない。しかし……間違いなく、彼女たちはここに存在している。それだけは確かだ)
P(もしかしたら……あの子たち以外にも。ひょっとしたら……この事務所の人間の中に、他にもまだ……)
P(そんなことを思いながら、今日もアイドルプロデュースは続く。彼女たちのアイドル活動は続く)
P(人も、そうでない存在も……、みんなまとめて、笑顔にする。そんなアイドルを目指して……)
ガチャ……
あずさ「……あら、プロデューサーさん。おはようございます~」
P「ああ、おはようございます、あずささん」
あずさ「ふふっ、奇遇ですね、こうして事務所で会えるなんて……」
P「そうですね。普段は、竜宮小町とは活動範囲が違いますから……あれ? あずささん」
あずさ「どうしたんですか?」
P「……今日の朝食は、トーストにイチゴジャムでも付けて食べてきたんですか?」
あずさ「えっ……、ど、どうしてですか~?」
P「ははは、その顔を見れば、一発でわかりますよ。だって……」
「口元に……、真っ赤な跡が、残っていますから」
おわり
よかったー。グロスレばかりでここはオアシスだったわー!
良かったら他に書いてたりする?
おわりです。お付き合いありがとうございました
三人が限界だったよ
さあ、みんなも生っすか01を買ってきゅんパイアを聴こう!
>>181
最近書いたのは、アイマスでは
伊織「あわわわ……」
伊織「あわわわわ……」
です。
>>164
生き返るには仲間にするしか…とかじゃないのかな
>>189
このSSの吸血鬼の設定は、全て俺の都合に良くなるように作られています
つまり適当なんですごめんなさい
このSSまとめへのコメント
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