桃子「就活って辛いっすね……」(152)

桃子「グループディスカッションでは私抜きで話が進んでちゃうし、集団面接では何も聞かれずに終わってしまうっす。そもそも私のマイナスの気配が履歴書まで巻き込んでしまうこともあったっす」

桃子「そんなこんなで就職浪人になってしまったっす」

桃子「はぁ、こんなんじゃ先輩に顔向け出来ないっすよ……」

桃子「親にハローワーク行くって言って、雀荘通うのにも心が痛まなくなってきたっす」

桃子「まぁ、お陰でお金には苦労しないんすけどね。バカツキさんが来なければまず負けないですし、例え負けたとしても気配消して逃げてしまえばいいんすから」

桃子「……どうしてこんなことになっちゃったんすかね……?」

桃子「ロン。5200っす」

「おいおい、姉ちゃん。リーチ宣言はしっかりしようや」

桃子「ちゃんとしたっすよ?」

「チッ……これで何度目だよ!」

「やってられるか!俺ァ帰るぞ!」

桃子「ふふん、ちょろいっすね」


「その卓、空いてる……?」

桃子「空いてるっすよ~ってもしかして清澄の嶺上さんっすか……?」

咲「あ、やっぱり東横さんだったんだぁ。久し振りだね」

桃子(この時間に来てスーツ姿ってことは……働いてるってことすか……麻雀も上手くて職に就いてるとか世の中不公平っすね)

桃子(ちょうどいいっす。今夜はこの人を毟ってストレス発散させるっすよ)

咲「………」

桃子(大学時代ずっとぼっちだった私は以前と比べ物にならない影の薄さを手に入れたっす。今ならオッパイさんにも私の捨て牌を見ることは出来ないはずっす!)

桃子(……自分で言っててちょっとヘコんでしまいそうっす)

咲「あ、カモ(お客さん)が来たみたいだね」

桃子「いつかの個人戦では不覚をとってしまったっすけど、今夜は負けないっすよ!」

咲「うんっ!」

桃子「ロン。12000っす!」

咲「……はい」

桃子(ふふ、ちょろいっすね。河から拾い放題の私に死角はないっすよ)


咲「あらら、負けちゃったかぁ。東横さん強いんだね」

桃子「今は麻雀で食ってるようなもんすからね。このくらい強くないとやっていけないっす」

咲「へぇ……ねぇ、レート上げない?負けた分取り返さないと今月キツいの」

桃子(大負けして熱くなってきたようっすね。これはいいカモ見つけたっす)

桃子「いいっすよ。受けて立つっす!」

咲「………」

咲「槓。もいっこ槓。嶺上ツモ、8000・16000」

咲「それ、槓。もいっこ槓。もいっこ槓。12000」

咲「槓。もいっこ槓。もいっこ槓。もいっこ槓!16000オールです」

桃子(なんなんすか……この化物は……?)

咲「どうする?もっとレート上げちゃう?東横さん、麻雀で食ってるなら勝たないといけないんでしょ?」

桃子(ここは逃げるしかないっすね……)

咲「逃がすと思う?」ガシッ

桃子(ひぃ~~~っす)

咲「んー今日も運よく勝てちゃったよ~」

桃子「………」

桃子(今までの稼ぎが全部パァっす……)

咲「東横さん、この後暇?」

桃子「私はいつでも暇っすけど……」

咲「じゃあ飲みに行かない?もちろん私の奢りで、ね」

桃子(断ることも出来ずについてきてしまったっす)

咲「はい、カンパ~イ」

桃子「……カンパイっす」


桃子(せっかくのタダ酒なんだからせめて毟られた分を少しでも多く取り返すっすよ)ゴクゴクゴク

咲「いい飲みっぷりだね、東横さん」コクコク

咲「へぇ、就職失敗しちゃったんだぁ……それはなかなかのなかなかだね」

桃子「これほどまでこの体質を呪いたいのは初めてだったっすよ」ゴクゴクゴク

咲「苦労してるんだねぇ……」

桃子「親から見放され気味でちょっと辛いっすね」ゴクゴクゴク

咲「ふぅ~む、なるほどなるほど……なるほど~」

咲「就活浪人wハロワ池よw」ブフォッ

桃子「先輩はね、モモはもう頑張らなくれてもいいんらよ~って言ってくれてるんすけどね、そんなんじゃ先輩に釣り合わないじゃないれすかぁ」ゴクゴクゴク

桃子「私は先輩と対等に付き合いたいんすよ?れもれも、先輩はバリバリのキャリアウーマンれぇ……」ゴクゴクゴク

桃子「そんな先輩と私の関係じゃあ、先輩に捨てられちゃうかも知れないじゃないれすかぁ」ゴクゴクゴク

咲(面倒臭い拾い物しちゃったかな……?)

桃子「ぷはっ……おかわりっす!」

咲「ねぇ、東横さん」

桃子「なんれすか……?」ゴクゴクゴク

咲「女の子にはね、就職する以外にも職に就く裏技があるんだよ」

桃子「へっ……?」ゴクゴクゴク

咲「それはね、永久就職ってこと」

桃子「つまり結婚すか……それは考えてもいなかったすね」ゴクゴクゴク

桃子「れもれも、私、家事とか苦手っすよ?ずっと放棄してましたっすからね……」ゴクゴクゴク

咲「だったら私の家に来ない?花嫁修業に」

桃子「……え?ええええええええっ!?」

桃子「なんれすか・・・・・・?(^p^)」ゴクゴクビチャビチャ

桃子「何で私がそんなこと……っ」

咲「東横さんの有り金じゃあ、今日の負け分足りないはずだよ?だからね、その分の代わりに私の家で家事とかしてみないかってこと」

桃子「あう……」

咲「ねっ!」

桃子「………」

桃子「分かったっす……」

咲「今日からよろしくね、東横さん」

桃子「そろそろ親の目も痛くなってきたところっすからね……その提案、飲んでやるっす」ゴクゴクゴク

咲「それはちょうど良かったね」

桃子「でもいいんすか?親御さんたちの許可もなくて」

咲「お父さんとお母さんは仲良く海外行っちゃってるからね……今はお姉ちゃんしか家にいないの」

桃子「嶺上さんのお姉さんって……あの人っすか」

咲「そうだよ。でも、お姉ちゃんね、仕事が不定期で家でしょっちゅうゴロゴロしてるのに家事とかしてくれないから困ってたんだぁ」

桃子「そうなんすか……」

咲「だからね、東横さんが来て家事とかしてくれたら私、助かっちゃう」

咲「ただいま~」

桃子「お邪魔しますっす~」

咲「今は東横さんの家でもあるんだから……お邪魔しますじゃなくて、ただいまだよ」

桃子「……ただいまっす。なんだか照れくさいっすね」

咲「ふふっ」

桃子「これからしばらくお世話になるっす」

咲「こちらこそよろしくね!」

照「くぅ……くぅ……」

咲「お姉ちゃんったら……また帰ってくるなり服を脱ぎ散らかして、そのまま寝ちゃってるよ。もう……」

桃子「ってことはそのすっぽんぽんの人が嶺上さんのお姉さんすか……」

咲「恥ずかしながら……」

桃子「麻雀打ってる時と全然印象が違うっすね~」

咲「あはは」

咲「あっ、そうだ……」

桃子「なんすか……?」

咲「知らない女の子を家に連れ込んだら、お姉ちゃん何しでかすか分からないんだよね」

桃子「えっ……?」

咲「もしかしたら東横さん……ごめんなさい、何でもないや」

桃子「えっ?ちょっと……」ガクガク

咲「だからね、お姉ちゃんに見つからないように頑張ってね」

桃子「マジすか……」

桃子(あまり私を嘗めない方がいいっすよ)

桃子(私の影の薄さは既に常識の遥か外にあるっす……)

桃子(大学4年間、ずっとトイレの個室で誰にも気付かれずにお昼ご飯食べてきたほどの影の薄さ、見せてやるっす)

桃子(ここからはステルスモモの独壇場っすよ!)

咲「東横さんはこの部屋を好きに使ってくれていいからね」

桃子「物置っすか……」

咲「やっぱり嫌かな?だったらお姉ちゃんと相部屋に……」

桃子「いや、ここでいいっす!ここがいいっす!」アセアセ

咲「ふふっ」

桃子(やだこれもー)

桃子(なんでこんなことになってしまったっすかね……)

桃子(先輩……私、頑張るっすよ)

桃子(だから……)

桃子(………)スースー



咲「東横さん……東横さん……」ペチペチ

桃子「ん……?なんすか……?まだ5時じゃないすか……こんな夜中になんすか……」

咲「もう……そんなこと言ってないで、そろそろ起きる時間だよ?」

桃子「え……?」

桃子「………」ウトウト

咲「今までどんな生活してたのか容易に想像がつくね」

桃子「………」ネムネム

咲「ほら、朝ご飯作るから手伝って」

桃子「ふあい……」

照「咲ちゃん、おはよう……」

咲「おはよう、お姉ちゃん」

咲「私、今日も仕事だけどお姉ちゃんは今日は対局あったっけ?」

照「んーん……」

桃子(いきなり初日からお姉さんと二人きりっすか……)

咲(やっておいて欲しいことはメモに書いておくから頑張ってね)

桃子(はいっす……)

照「いただきます」

咲「はい、召し上がれ」

照「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!」パクパク

照「咲ちゃん、味付け変えたの?」

桃子(まさかもうバレた!?)

咲「美味しくない……?」

照「いや、咲ちゃんの料理が美味しくないわけないよ」

咲「ふふ、そっか」

咲「それじゃあそろそろ行ってくるね~」

照「咲ちゃんいってらっしゃい」

桃子(いってらっしゃいっす~)フリフリ

照「さてと」

桃子(さてとパパっと家事でもやるっすかね……ん?)

桃子(まっすぐ嶺上さんの部屋に向かってったっすね。何が始まるんすかね?)

照「ふんふんふーん」ガサゴソ

桃子(ごみ箱をひっくり返して何やってるんすかね?お姉さんは……)

照「あれれー?咲ちゃん、最近してないのかなぁ?」

桃子(してないって一体なんの話っすかぁ~?)

照「まぁいいや……本来の目的はこっちだし」

桃子(今度は衣装棚を漁ってるんすかね……?)

照「あったあった~咲ちゃんのおパンツ~」

桃子(……は!?)

照「いや、パンツなんてなかった。ズボンだよズボン」

照「これがないと読書捗らないんだよね」

桃子(………)


桃子(私は何も見てないっす。私は何も見てないっす)ガタガタ

桃子(さてとアレは放っておくとして、家事を頑張らないとっすね)

桃子(とりあえずメモ通りやればいいんすから簡単っすよ)

桃子(まずは……)ピラッ


『お姉ちゃんの部屋から歯ブラシや衣類、その他諸々を回収』


桃子(……は!?)

桃子(それって本当に家事の一環すか!?)

桃子(絶対間違ってるすよね……そんなの花嫁修業じゃないっすよね)

桃子(ないない!そんなの……っ!!)

桃子(でも……)ピラッ


『全項目を守れなかったら麻雀楽しませるから』


桃子(はぁ……先輩、私辛いっす)

桃子(まぁ、これはお姉さんが部屋を離れている時にすればいいんすから、先に他のことを片付けるっすかね……)

桃子(ここからはステルスモモの独壇場っすよ!)


照「……あれ?私、寝ちゃってた……?」

照「掃除とか洗濯物が済んでる……」

照「すごいぞ私!寝てる間に家事とか出来るようになったのか!」

桃子(疲れたっすー)

咲「ただいまー」

照「咲ちゃん、おかえり~」

桃子(おかえりなさいっす!)フリフリ

照「咲ちゃん、咲ちゃん」

咲「ん?どうしたの?お姉ちゃん」

照「私、寝ながら家事とか出来るようになった!」ドヤァ

咲「あはは……そっか」

桃子(ちゃんと言いつけは守ったっすよ)

咲(偉い偉い)ナデナデ

1ヶ月後――


咲「そろそろ東横さんが来てから一月経つのかぁ~」

桃子「大分家事も様になってきたっすよ!」ムフー

咲「そうだね……東横さん、覚えが早くてホント助かってるよ」

桃子「て、照れるっすよ」


咲(さて、そろそろ頃合いかな……?)

桃子(先輩ともう一月会ってないんすか……きっと心配してるっすかね……)

桃子(はぁ……先輩と会いたいっすー)

桃子(でも、今先輩と会ったらきっと甘えちゃうっすね……)

桃子(先輩、私は頑張ってるっすよー)

桃子(………)グーグー


咲「もしもし……あっ、お久し振りです――」

桃子(よしっ!今日も頑張るっすよ~)

咲「東横さん、ちょっといいかな……?」

桃子(……?)

咲「東横さんは加治木さんと会いたい?」

桃子(勿論っす!)

咲「だったら花嫁修業もこれでおしまい」

桃子(えっ……?)

咲「一月程度の努力で主婦が勤まるかって言えばそれは無理があるけど、東横さんはずっと必死で頑張ってきたんだもん」

桃子(麻雀楽しませるって脅されてたっすからね……それは必死にもなるっすよ)

咲「この1ヶ月で努力してきたこと、誇っていいと思うよ」

桃子(嶺上さん……)

咲「あの東横さんが大好きな先輩に連絡もせずにずっと頑張ってきたんだもん。だからきっともう大丈夫」

咲「あとこれは一月分の給料ね」

桃子(これって……あの夜負けた金額じゃないっすか……こんなに受け取れないっす!)

咲「二人暮らしするならきっとお金が必要になるよ?だから、ね」

桃子(嶺上さん……お世話になったっす!)

咲「ふふ、頑張ってね」

桃子(はいっす!)


「モモ……っ!」

桃子「せ、先輩!?」

ゆみ「心配したぞ?この一ヶ月、家に帰ってないし、連絡も取れなくて……」

桃子「先輩……どうしてここに……?」

咲「後は東横さん次第、だよ!」

桃子(嶺上さん……もしかして……)

桃子「先輩……!」


桃子「私を先輩のお嫁さんにして下さいっす――」

咲「お姉ちゃん、最近家事してくれてないよね?」

照「咲ちゃん、ごめんね……お姉ちゃん、ちょっと調子悪いみたいで……」

咲「まったくもう……」


槓!

かじゅ声で「即・結・納!」とか聞いた覚えがあるんだが、咲でそんな話あったっけ?

完結のカン?

>>138
にゃんこいじゃね?

>>142
今日から仕事だからここで完結ということで

でもロングヘアーのスーツ姿の咲さんprprしたいからまた何か書きたいな。スレが落ちるまでネタ提供してもらえると助かります

>>144
それだ!

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