淡「必殺技……?」(294)
照「そう……淡は知らないかもだけど、この白糸台の1軍には各々必殺技を持たなければならないという掟があるの」
淡「必殺技ねぇ……」
照「必殺技と言ったら語弊になるかも……観る者に衝撃を与える和了って言えば正しいかな?」
淡「むむむ……何でそんな決まり事があるんですか?」
照「私たちの麻雀はただ勝てば良いってものじゃない……魅せる為の麻雀を打たないといけないの。それが全国2連覇した私たちの務め」
菫「おい、照!」
照「……ん?」
菫(どうして淡にそんな嘘をつくんだ?)ヒソヒソ
照(面白い方向に転ぶと確信したから……淡ならきっと邪気眼的なものを見せてくれるはず。淡が将来、その映像を見たら恥ずかしさのあまり穴に入りたい……否、穴に入れてもらいたくなるような恥ずかしいものを!)ヒソヒソ
淡「……?」
照「淡、何かかっこいいの思いつきそう?」
淡「まったくもって!」
照「そう……なら明日から頑張らないとな。インハイまでもう時間がない」
淡「はいっ!」
照「私も全面的に淡を手伝うよ。人がいて恥ずかしいようなら練習後の部室を使うといい……人払いくらいなら菫がしてくれるから」
淡「ありがとうテルー!」ダキッ
照「ふふ、頑張ってね」ナデナデ
菫「………」
淡「淡、頑張るからね!それでは先輩方、また明日」ペッコリン
照「誠子……いるか?」
誠子「御前に……」シュタッ
菫(どこから沸いたんだ……?)
照「頼みがある……明日までに部室の至るところに隠しカメラの設置を」
誠子「はっ!」シュンッ
照「ふふ、ふふふ……」
菫「不安だ……」
翌日――
淡「先輩方のを参考にしたいけど、練習じゃ普通に打ってるんだねぇ……」
照「私たちの必殺技は体力をかなり使うからね……ココイチバンーって時じゃないと使わないよ」
淡(体力をかなり使う……?)
淡「ふぅ~む、なるほどなるほど……なるほど~」
照「今日の活動はここまでにしようか……」
菫「そうだな……一応、人払いの方は部員に呼び掛けておいたが」
照「流石、菫……なんだかんだ言ってノリノリ」
菫「う、うるさいな!」
照「淡、部室は好きに使うといい。私たちは自分の教室にいるから必要があれば呼んでね」
淡「はいっ!」
照「淡の練習が終わるまで待ってるから今日は一緒に帰ろうか」
照「……というわけで誠子が一晩でやってくれました~」
菫「このパソコンで部室の様子が分かるというわけか……最近のパソコンはハイテクだな」
誠子「特注のカメラでミリ単位の動きだろうが、暗中だろうかバッチリですよ!」
照「ふふ、私もいい後輩をもったものだ」
尭深「………」ズズズ
菫「おっ、映った映った!」
照「どれどれ~」
『必殺技かぁ……』
『衝撃を与えるってことは五感に訴えかけるってことだよね……?』
『味覚、嗅覚は想像も出来ないから視覚か聴覚辺りが無難なのかな……?』
菫「ずいぶん真面目に考え込んでるんだな」
照「淡はああ見えて頑張り屋さんだからな」
『かっこいい台詞とか言えばいいそれらしくなるかな……?』
菫「ぷぷっ」
照「あわあわ可愛い」
尭深「淡が牌を並べ始めた……」ズズズ
誠子「なにが始まるんです?」
菫「……あれは字一色の七対子だな」
尭深「大七星……」ズズズ
『すーはーすーはー……』
『7つの星に裁かれよ』キリリッ
尭深「……ブフォ!」
照「淡ならやってくれるって信じてた」
菫「ぷぷっ……お、お腹痛い……」
誠子「これは予想以上ですね」
照「尭深ー尭深ー」チョイチョイ
尭深「……?」ズズズ
照「『7つの星に裁かれよ』」キリッ
尭深「ブフォ!」
誠子「ちょ、尭深汚いな」
尭深「ゲホッゲホッ……だ、だって照先輩が……」
『これはちょっと恥ずかしいかな』
『なしなし!これはなし!』
菫「ちょっと!?かなりの間違いだろ」
照「次の必殺技に期待だな」
菫「久しぶりに面白いものが見れたな」ククッ
照「なっ、私の言った通りだったろ?」
菫「ふっ、照には敵わんな……」
照「誠子、さっきの淡の黒歴史集の編集を頼むね」
誠子「御意に」
照「ふふ、淡の誕生日プレゼントが決まったな」
菫「おい、あれをプレゼントするのか……?」
尭深「鬼だ……鬼がいる……」ズズズ
照「淡、そろそろ帰ろうか」
淡「あ、テルー!」ダキッ
照「ふふ、こんな時間までよく頑張ったね」ナデナデ
淡「淡、いっぱい頑張ったの!」ニヘヘ
菫「淡のかっこいい必殺技()の練習が始まってそろそろ1週間になるわけだが」
誠子「もう笑いすぎて私の腹筋がヤバいですよ。見てくださいよ6つに割れちゃってます」
尭深「それは元から……」ズズズ
照「全国も近いしそろそろ完成させてもらわないとな……ちょっと淡に必殺技がなんたるか教えてくる」
『淡、ちょっとこっち来て……』チョイチョイ
『あれ?テルーどうしたの?』
『淡が必殺技開発に煮詰まってるようだからね……私の必殺技で良ければ参考にしてもらおうと思って』
『wktk』
『……ここ(部室)は目立つ。外に出ようか』
『……?うんっ!』
菫「おい、照たちが部室から出ていってしまうぞ!追えないのか?」
誠子「無理ですよ……カメラは部室にしか仕掛けてないんですから」
菫「チッ……使えん奴め」
尭深「………」ズズズ
照「……どう?」
淡「………」
照「これで相手はいちころってワケさ。サイコーだろ?」ヒュウッ
淡「す、すごいよテルー!これだよ!これが私の追い求めてたモノだよ!」
照「そ、そうか……」
淡「淡、創作意欲が湧いてきちゃった!これで淡だけの必殺技が完成しそう」
照「淡、頑張ってね」
淡「おまかせあれ!」
照(まさかアレを見て必殺技が完成しそうって言っちゃうとはな……これは全国で恥ずかしい淡が期待出来るな)フフ
菫「おい、照!」
照「菫か……どったの?」
菫「淡が必殺技が完成したらしいぞ」
照「そうか……それはなによりだ」
菫「お前、その意味が分かって言ってるのか?」
照「……?どういうこと?」
菫「淡が必殺技を完成させたということはだな……私たちも恥ずかしい必殺技を披露させなければならないんだぞ!」
照「な、なんだって!?」
菫「気付いてなかったのか……いいか、お前は淡に必殺技の所持が白糸台の1軍の掟とか言ってただろ?」
照「確かそんなこと言ったような……」
菫「淡が先鋒ならまだいい……だが、淡は大将だ。私たちが必殺技を見せなければ淡は疑問に思い、必殺技を見せてくれんかもしれん」
菫「つまりだ……淡の必殺技を見るためには、私たちの恥ずかしツモを全国のお茶の間に見せないといけないというわけだ!」
照「それは盲点……」
菫「で、どうする?」
照「どうするって……?」
菫「行くか、引くかだ」
照「……行くしかないだろ。淡の恥ずかしい必殺技を見たいもん」
菫「ふっ、お前ならそう言うと思ったよ……誠子と尭深には私から伝えておく。お前も淡に負けないくらいかっこいい必殺技()を考えておけよ?」
照「ああ」
全国大会団体戦準決勝――
菫「2回戦では照が普通に他家を飛ばしてくれて助かったよ」
照「誠子と尭深に泣きつかれたからね……決勝までは私だけで終わらせる」
菫「なんだかお前が輝いて見えるよ」
照「照れるぜ」
淡「テルー!」トテテ
照「淡か……」
淡「今度こそ必殺技使ってくれるんだよね?2回戦では普通に打ってたし」
照「あ、ああ……努力してみる……」
照(やっべ……すっかり忘れてた)
照(淡の恥ずかしい必殺技を見るため……背に腹は替えられない)ギュギュギュギュ
照(意地があるの……女の子にはッ!!)ギュルギュルギュル
照(衝撃の――)ギョギョギョギョ
照「ツモ……6200オール」
菫「やりやがった……」
淡「あれ、どうやってるんですかねぇ?」
菫「私に聞くなよ」
「先鋒戦決着~~~ッ!!」
照「ごめん菫……先鋒戦だけで終わらせられなかった……」
菫「気にするな……後は私たちに任せておけ」
照「菫……」
菫「あのツモ……かっこよかったぞ」プクク
照「うるさいな!」
照「ただいま……売店でお菓子買ってきた」
淡「おかえりテルー!」
誠子「お疲れサマです」
尭深「おかえりなさい……」ズズズ
淡「今回はアレ使わなかったんだねぇ」
照(アレ?前に淡に見せたやつのことか……アレを全国のお茶の間に晒す勇気は流石にないかな)
照「ああ、今回の相手は手強くて……使いどころが難しかったから」
淡「テルーの必殺技……淡、また見たかったな……」ショボーン
照「でも決勝ではやってみる」
淡「菫先輩はどんな必殺技を見せてくれるんでしょうか……?」
照「あの菫のことだからな……私たちには想像も出来ないことをやってくれるさ」
誠子「菫先輩、私たちの中で一番気合い入れてましたからね……」
尭深「弓と矢を持ってた……」ズズズ
照「……は?」
菫「ロン!」ドシュ
泉「……は?」
淡「ちょっ、あの人平然と矢を放ちましたよ!?」
照「大丈夫、菫のあまりの気迫でそう見えるだけだから……多分」
淡「千里山の人、矢が刺さったまま続行してますよ!?」
照「全国2位の強豪校だからな……あれくらいは当然」
淡(淡、なんだかとんでもないとこ来ちゃったよぉ~)ガクガク
菫「ロン!」ドシュ
泉「は……!?」
「次鋒戦決着~~~ッ!!白糸台のシャープシューター、弘世菫が宮永照の作った大量リードを守りきりました~~~ッ!!」
菫「済まんな……こんな茶番に付き合わせて」キュポンキュポン
泉「いえ……」キュポンキュポン
照「白糸台のシャープシューターwww」プクク
尭深「ゲホッゲホッ……お茶が気管に……ッ!」
菫「済まない……阿知賀が予想以上に厄介で、次鋒戦でも決着はつけられなかった」
尭深「気にしないで下さいよ……シャープシューター先輩……」ズズズ
菫「おい!」パァン
尭深「痛い……」ヒリヒリ
淡「次は尭深先輩の番か」
照「尭深ーは何を見せてくれるのかな?」
菫「さぁな」
尭深「ロン……」ブシュウー
セーラ「うわっ!目がぁ……目がぁ!」
照「おっと、出ました!尭深ーの毒霧攻撃」
菫「誰かあのバカを止めてこい」
誠子「ロン!」ボカーン
誠子「ロン!」ズドーン
誠子「ツモ!」チュドーン
淡「なんか爆発してますよ!?」
菫「もうやりたい放題だな……」
照「誠子だから仕方ない」
尭深「………」ズズズ
淡「淡、頑張ってくるね!」
照「ああ、頑張ってね」
菫「淡、私は今日ほどお前の対局を楽しみだと思ったことはないぞ」
尭深「期待してる……」ズズズ
誠子「白糸台の名に恥じない必殺技を頼むよ」
淡「はいっ!」
すまん寝てた
おかえりんこ
ご…ごめんなさい、少し寝てました
菫「淡、後半戦のオーラスまで全く動かなかったが大丈夫なのか?」
尭深「2位との点差はまだ充分すぎる程ある……」ズズズ
誠子「必殺技を使うのを躊躇ってるんでしょうか?」
菫「かもな……私もかなり恥ずかしかった」
尭深「割とノリノリに見えたけど……」ズズズ
菫「……少し黙れ」ドシュ
尭深「痛い……」ズズズ
照「恐らく淡は時を待ってるんだと思う……」
穏乃(白糸台の大将……一体どういうつもりなんだ……?)
デビ子(まだ一回も副露も和了も放銃もしていない……)
竜華(それどころか眼ぇ瞑って打っとる……ウチらのことナメとんのか?)
淡「………」パチッ
淡(この手を待っていた……!)
誠子「オーラスの親でいきなりスゴい手が入りましたね……」
尭深「門混混老七対子一向聴……」ズズズ
照「いや、淡はそれだけじゃ済まさないはず……」
菫「……!?淡の奴、手を崩したぞ……?」
淡(ここまでずっとツキを溜め込んできた……いや、小宇宙を高めてきたんだ!ここは跳満倍満程度じゃ物足りない……!)
淡(見せてあげる……淡の全力全開を……ッ!!)
5巡後――
淡「リーチ!」
穏乃(白糸台のリーチ!?)
デビ子(このタイミングで……?)
誠子「オーラスのトップ目でリーチかけましたよ!?」
菫「ツモる確信があるんだろう……それなら周りを脅すのも悪くないが」
照「いや、多分リーチかけた方が派手だから……」
菫「派手だからリーチって……」
照「必殺技というのはそういうファクターも重要なの。菫みたいに矢を乱射すれば良いってもんじゃあない」
菫「くっ……」
誠子「菫先輩、最初は嫌々やってるように見えたのに……」
尭深「小道具を持ち込むあたり、やっぱりノリノリ……」ズズズ
淡「見る?星々の砕ける様を……!!」
穏乃デビ子竜華「……!?」
淡「ギ ャ ラ ク シ ア ン エ ク ス プ ロ ー ジ ョ ン(字一色七対子)!!」
菫「やりやがったwww」
誠子「期待を裏切らないwww」
照「あわあわ可愛い」
尭深「ブフォwww」
大七星wwww
竜華(くっ……必殺技なんてふざけた子や……でもこれでウチらは2位、この借りは決勝で――)
淡「一本場です」
竜華「……ハァ!?」
菫「おい!続行してるぞ?」
照「恐らく癖になったんだろう……この準決勝、どこかが飛ぶまで終わらないかもね」
淡(やだなにこれ気持ちいい……)
デビ子「これが本当の放銃ばい」パァン…
淡「う・・・」バタリ
竜華「ひぃいぃ・・・」ガクガクジョジョー…
穏乃「勝てない・・・」レイプメ
「準決勝大将戦決着~~~ッ!!先鋒、宮永照の作った大量リードを更に増やし、白糸台が決勝進出!そして、残りの3校がまさかの同点により、阿知賀女子が決勝進出を決めたーーーッ!」
淡「テルー!」ダキッ
照「淡、おかえり」
淡「えへへ……淡、頑張ってきたよ」
照「ああ、よく頑張ったね」ナデナデ
照(誠子、また淡の黒歴史集の編集頼むな)
誠子(御意に)
照「ふふっ」
ほ
10年後――
淡「あれ?荷物……?誰からだろ?」
淡「宮永照……テルー!?ふふ、懐かしい……」
淡「先輩、卒業してからプロのお仕事が忙しいらしくてあまり顔出してくれなくなったけど……」
淡「でも何で今になって……」
淡「そっか、今日は淡の誕生日だっけ……覚えててくれたんだぁ……嬉しいな」
淡「あっ、DVDが入ってる……ビデオレターかな?」
淡「なになに?タイトルは――」
淡「必殺技……?」
槓!
ちなみに菫さんの弓は本物。しかしながら矢尻が吸盤のやつ
まさかの黒歴史継続中とか・・・
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