有浦柑奈「ゆりかごの歌」 (31)



――柑奈ちゃんが本当に、歌で世界を救うというのなら……覚えておいてほしい


※モバマスSS短編、ありうらさんメインです
※二次創作です(いろいろとアイドルの過去なり関係性なりが捏造されています)
※過去作と同じ世界線ですがここから読み始めても差し支えありません
※さくさく投下します

過去作
並木芽衣子「休暇旅行」
高峯のあ「銀河通信」
大原みちる「マイケルという名のパン屋さん」
「空からキラリが」
鷺沢文香「図書館はどこですか」
和久井留美「猫の森には帰れない」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387240723

P「柑奈ー?おーい、柑奈ー?」

ライラ「どうしましたですか?プロデューサー殿?」

P「おお、ライラか。いやな、ちょっと柑奈に話があるんだが……どこにいるんだ?」

ライラ「柑奈さんですか?うーん…………あっ」

P「どうした?」

ライラ「しーっ、ですよ」

P「?」



  るーーるるーるーるーるーるーーーるーるーーー♪


P「おっ……屋上か」

ライラ「柑奈さんはよく屋上でギターを弾いているですよ」

P「ありがと。じゃあ」

ライラ「はーい」

有浦柑奈「るーるりーるりーららー かぜはふき くもをさき♪」

柑奈「るーるりーるりーららー くちぶえはとおーくー♪」


P「それ、柑奈の作った曲か?」

柑奈「あ!Pさん!」

柑奈「この曲ですか!?今作りました!」

P「今?」

柑奈「はい!こうして外の様子を見てると、いてもたってもいられず……」

柑奈「Pさんと出会う前から、いろんなとこで歌ってたんです!」

P「そうか……。いやあ、そんなに即興で歌えるんだとは知らなかった」

P「今度そういう仕事もやってみるか?」

柑奈「それはいいんですけど、何か用があって来たんじゃないんですか、Pさん?」

P「あ、ああ!そうだった。ちょっとこれからのスケジュールを合わせようと思ってね」

P「ちょっと下まで来てくれないか?」

柑奈「はい!じゃあ行きましょ!」



P「それでだな……水曜なんだが…………」

柑奈「…………ああ……そうですね………」

千川ちひろ「Pさん!ちょっといいですか?」

P「はい!どうしました?」

ちひろ「ちょっと事務所の備品が足りないので買い出しに行ってくるんですけど……」

ちひろ「何か要るものでもあります?」

P「いえ、俺は特に……あっ」

ちひろ「何かあります?」

P「あの、応接室の……」

ちひろ「え、応接室ですか……?」



ライラ「……うまうま……和菓子ってほんとうにおいしいのです……」

塩見周子「んー♪ライラちゃん、こっちもどう?」

ライラ「わあ、これが栗まんじゅうなのですか……!」



ちひろ「…………」

柑奈「あら、とっても楽しそうですね!」

P「……お茶請け、追加ですね」

ちひろ「ちょっと余分に買っておこうかしら……」

ちひろ「……わかりました。じゃあ、行ってきますね!」

P「お願いしまーす!」

柑奈「しまーす!」

P「……で、だな……」

柑奈「…はい………ああ、それでしたら……」



周子「んー、おなかいっぱーい♪」

ライラ「たらふくたべましたのです」

周子「ちょっとテレビでも見て休憩しよっか」ピッ

ライラ「はいなのです」


柑奈「でも……こうしたほうが………」

P「ああ…………じゃあ木曜に………」



周子「……この時間はどこもニュース番組かー」

ライラ「あっ、ワタクシここ行ったことありますです」

周子「へー………って、すごい豪邸……ヴィーアイピー?」



P「……うん…うん、よし!こんな感じかな?」

柑奈「はい!これでよか!」

P「じゃあ来週はこんな感じで頼むよ」

柑奈「わかりました!」

P「うーん、と。……お?周子とライラがテレビ見てるな」

柑奈「ええ、そうですね……」




『……続きまして今日のアイドル!のコーナーで……はい?……はい』

『……番組の途中ですが、予定を変更しましてただいま入りましたニュースをお伝えします』



ライラ「……あら、なんでございましょうか」

周子「どうしたんだろ」



『日本時間の午後2時頃、○○国の首都×××におきまして大規模な爆発が起こったと……』


ライラ「…………」


『……爆発に、○○国の大統領が巻き込まれたとの情報も……』


周子「…………」


『…………今のところ死者は13人、怪我人多数ということです…………』


柑奈「…………」


『……反政府勢力が…………陸軍も関与………………』

P「○○国か……ここ最近大統領の圧政に対する民衆のデモが激しいって言われてたんだが……」

柑奈「……力で訴えちゃあ、だめったい……」

P「……柑奈……」

ライラ「……政治家さんに文句を言うのに、どうしていつも無実の人々を巻き込むのでしょう」

ライラ「わたくしはよくわかりませんです……」

周子「なんかさ、自分たちの考えを通すために出る犠牲は必然だー、って思ってるんじゃない?」

周子「あるいは、大統領の酷いやり方に文句言わない人たちはみんな大統領の支持者だ!とかさ」

周子「当人たちからしたらそれが正義なんだろうけど……」

柑奈「………………」

P「………?どうした、柑奈。ギターを構えて……」

柑奈「………………」♪~

P(……Eマイナー……物悲しい雰囲気)




   ”風が吹いてきた 誰もいない朝”

       ”音もなく やさしく ゆれるゆりかご”


P(この曲……。柑奈、知ってたのか)


   ”見えるものは ただ 青く晴れた空”

       ”聞こえてくる 声が どこか遠くから”


ライラ(…………)
周子(柑奈ちゃん………)


   ”人は人を殺せる”

       ”誰もおまえには教えなかった歌を 風が歌うよ”


   ”人は人を殺せる 歌はくり返す”

       ”人は人を殺せる そう作られた”


P「…………」

周子「…………」

ライラ「…………」

柑奈「…………あ、あのね……」

ちひろ「ただいま帰りましたー!!って、あら?」

ちひろ「どうしたんです、みんな……何かあったんですか……?」

周子「………ん、いや、柑奈ちゃんに歌ってもらってたんだ」

周子「あ、ちひろさん。何か新しいお菓子買ってきてくれたー?」

ちひろ「もう何言ってるの周子ちゃん!これはお客様用のお菓子で……」

周子「ほら、ライラちゃんも、ね?」

ライラ「は、はいなのです」トテテテ

周子「………あ、柑奈ちゃん」

柑奈「………?」

周子「すごくいい演奏だったよ」

柑奈「あ……ありがとう……」

周子「さ、れっつらごー」

ちひろ「ああっ周子ちゃん!せめてこの和菓子詰め合わせで勘弁して~!」

P「…………」

柑奈「………あ、あの」

P「『ゆりかごの歌』」

柑奈「!!」

P「ゆりかごの中にいる誰かに……様々なものが『人は人を殺せる』って言う歌だな」

P「もうだいぶ前か……あのテロがきっかけで作られたとかいう話だったな」

柑奈「Pさん……知ってたんですか」

P「個人的に好きなんだよ、曲を作った人が」

P「いや、俺は柑奈が知っていたことに驚いているよ」

P「どこでこの歌を?」

柑奈「父ちゃんの友人が……教えてくれたんです」

柑奈「Pさん、聞いたことなかと?サエキモリヒトって名前……」

P「サエキ……佐伯守人……!もしかして、『世界の子どもたち』の?」

柑奈「わあ!Pさんモッたんの本知っとるん?」

P「ああ。一時期話題になったよな」

P「紛争地帯で生きる子どもたちの写真にエッセイを載せた……あれ、柑奈の知り合いの人だったのか」

柑奈「ええ!そうったい!」

P「……でも、確かその人って………」

柑奈「……つい半年前の話、です……」

P「ニュースで見たよ……。取材中に流れ弾に当たって……」

柑奈「……モッたんは、爺っちゃんをすっごく慕ってたんです」

柑奈「爺っちゃんの思い……ラブ&ピースをもっと広めるんだーって」

柑奈「私の生まれる前にギター片手に日本一周したって話も聞きました」

柑奈「モッたん、私が生まれたくらいからギターをカメラに替えて世界中を飛び回ってたみたいです」

柑奈「たまにふらりと帰ってきては、爺っちゃんとギターを弾きあって……」

柑奈「こんまい私にいろんな歌を教えてくれました」

P「………」

柑奈「初めて『ゆりかごの歌』を聞いて……10くらいだった私は、怖くて泣いちゃって……」

柑奈「ばってん、モッたん会うたびに何度も歌ってくるんです」

柑奈「だからある時、『なしてこげな曲歌うん?』って聞いたんです」

柑奈「そしたら……モッたん、こう言ったんです」




――柑奈ちゃん

――『人は人を殺せる』んだ

――僕らがどんなに平和を愛していても……争いを嫌っても……

――僕らには、僕らの仲間を殺すことのできる力が備わっているんだ

――これは、恐らく人間が人間であり続ける限り無くならないものだ……

――……でもね、柑奈ちゃん

――僕らはそこから目をそむけてはいけないんだ

――うわべだけのラブ&ピースに……人を動かす力はない

――柑奈ちゃんが本当に、歌で世界を救うというのなら……覚えておいてほしい

――『人は人を殺せる』ってこと……


P「…………」

柑奈「……モッたんが、何も言わずに田舎に帰ってきて……」

柑奈「私、すごく悔しかったんです」

柑奈「どうしてモッたんが死ななきゃならんかったのかって……ずーっと泣いていました」

柑奈「でも、ある日……」

柑奈「墓に入ったモッたんに、一人ギター弾いて泣きながらこの曲を歌ってた爺っちゃんを見て……」

柑奈「私、モッたんの言ってたこと……少しだけわかった気がしたんです」

柑奈「…………」

P「…………柑奈……、無理するな」

柑奈「……え?」

P「気付いてないのか?柑奈……その涙……」

柑奈「……え……?………あ、あれ………?どうし、て………?」

P「…………」

柑奈「……ぷろ、でゅーさーさん」

P「ん?」

柑奈「……しばらく、このまま……。一緒に、い、いてください……」

P「…………ああ」

柑奈「…………うっ………ううっ……………」







   ”人は人を殺せる”

       ”誰もおまえには教えなかった歌を 風が歌うよ”


   ”人は人を殺せる 歌はくり返す”

       ”人は人を殺せる そう作られた”



数日後・CGプロ

柑奈「オーリュニーディズラーヴ♪」ジャンジャジャララン

佐久間まゆ「おーりゅにーでぃずらーぶ♪」ジャンジャジャララン


   おーりゅにーでぃずらーぶ♪


P「いやあ、二人ともさすがだなあ」

ちひろ「そうですねえ」

P「こりゃちょっとユニット組ませるのも……」

ちひろ「Pさん」

P「はい?」

ちひろ「……あなたはいつまでそうして休憩してるつもりなんですか?」

ちひろ「もう1時間以上経ってますよね?」

P「ははっ何言ってるんですか……俺は今こうして二人のユニットの可能性を……」

ちひろ「はよ、書類」

P「はい」

柑奈(……………)ジャンジャンジャララン

柑奈(モッたん……、私、今アイドルやっとうよ)

柑奈(都会の人混みはまだこわか……)

柑奈(……ばってん、私、頑張っとる)




柑奈(爺っちゃんと……モッたんから受け継いだラブ&ピースで……皆を笑顔にするったい!)





おわり



SSのモチーフは谷山浩子「ゆりかごの歌」(翼)です
本編の一部に歌詞を引用しています
9.11以後の世界で作られた谷山浩子さんの一曲
谷山浩子の歌の中でも特に怖い曲だと個人的に思っています

作中の人物・出来事は全て架空のものです
現実に起こっている事象について、その如何を問うつもりはまったくありません
あくまで個人の一解釈としてご理解ください

ありうらさんの人気が増えるといいなー祈願のSSでもあります
ちひろさん、柑奈ちゃん再登場はよ

次の予定………(?とはありますがメインのアイドルは確定しています)

前川みく「素晴らしき紅マグロの世界」
?????「犬を捨てに行く」
????「意味なしアリス」
???「人生は一本の長い煙草のようなもの」


では、HTML化します

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