福路「いよいよ大将戦ね……華菜、頑張って」
久保「行ってこい、池田ァ!」
池田「任せてください! 私には、必勝の策があるし!」
吉留(華菜ちゃん……本当にやる気なの、あれ)
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吉留「厨二病のふりをするって……どういうこと?」
池田「天江衣の言動はまさに厨二病そのものっしょ! 去年はあれでペースを乱された……」
池田「だから今年は私も一緒に厨二病を演じて、逆にペースを乱してやるし!」
吉留「そんなうまくいくのかなぁ……」
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咲「よろしくお願いします」
加治木「よろしく」
衣「お前たちが、今宵の衣の相手か」
池田(来たな、天江衣……調子に乗っていられるのも、ここまでだし!)
池田「一年ぶりだな、龍門渕よ」
衣「去年の衣と戦ったのか? 忘れてくれ、あれは本調子ではなかった」
衣「あの時はまだ……お前たちと同じヒトの土俵に立っていたよ」
池田「ふ……お前も、ヒトであることをやめたというのか?」
衣「む、どういう意味だ?」
池田「私も去年、ヒトであることをやめた……自ら、ヒトを放棄した」
池田「何せ、こちらの方が本業が捗るからな」
衣「本業……?」
池田「聞いたことはないか……『カノッサ機関』の名を」
咲(……へ?)
加治木(何を言ってるんだこいつは)
衣「カノッサ機関……何だ、それは」
池田「……まぁ、表の世界に住む者は知らなくても無理はないか」
池田「世界を裏から支配する闇の機関……それがカノッサ機関だ」
衣「せ、世界を支配だと!?」
池田「教えてやろう……風越女子麻雀部の池田華菜とは、世を忍ぶ仮の姿」
池田「私の正体は……カノッサ機関の誇るエージェント『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』さ」
衣「なっ……!」
加治木(エージェントが軽々しく正体バラしてどうする)
衣「そ、そんな奴がなんでここに……」
池田「この長野に来たのは、もちろん任務さ……機関に噛み付く、身の程知らず達がいたものでね」
池田「もう、何人も何人も……殺して、しまったよ」
衣「こ、ころ……」
池田「だが、敵も手練れが多かったものでね……私はヒトを捨て、力を手に入れた」
池田「見な、私の腕を……この、刻印を」
衣「そ、それは一体……」
池田「これを刻まれた者は、魔の力を得、ヒトを遥か凌駕する……だが同時に、もう普通の生活には戻れぬがな」
池田「今でも、力が暴走し……お前たちを食い殺してしまわないか、心配だよ」
衣「!?」
加治木(刻印って、どう見てもマジックで書いただけだろ)
久保「もううちの部から出ていけよ」
咲「四槓子(リングオブニーベルング)!!!!」
衣「」バチバチバチィィィィィ
こういうことですね
池田「さて、ずいぶん時間を取らせてしまったな……始めようか」
加治木「う、うむ……」
池田「貴様らは幸福だ……私と対峙するのが、戦闘ではなく麻雀だからな。命を落とすことはあるまい」
咲(…………)
衣(ど、どうしよう……とんでもない奴と同卓してしまったぞ……)
池田(よくわからないが、効いてるっぽいから成功なのかな?)
加治木(なんだこれ……なんだこれ……)
加治木「リーチ」
衣(か、風越はやばい……やばすぎる……)
咲「……カン」
池田(来た、清澄の大将のカン。確か嶺上の和了率が非常に高い……)
咲「ツモ、嶺上開花」
池田(やはりか、直前に牌譜見ておいてよかったし……あまり動揺せずに済んだ)
池田(てかコーチもキャプテンも教えてほしいし……肝心なところで役に立たないなぁ)
咲「……ツモ、嶺上開花」
加治木(に、二連続嶺上だと!?)
衣(き、気にするな……一人リアル化け物がいたところで、どうってことはない……)
咲「……こうして会うのは初めてだね」
池田「?」
咲「この嶺上開花で、気付くことがあるんじゃない? 池田華菜さん」
咲「いや……『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』と呼ぶべきかな」
咲「まさか貴方まで、長野に送り込まれているとはね……」
衣「!?」
池田「……! ま、まさか、お前……」
咲「初めまして、私はカノッサ機関のエージェント。専門は暗殺、殲滅」
咲「コードネーム……『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』」
加治木(……は?)
衣(こ、こいつもカノッサ機関の!?)
池田(何か知らんが、清澄が乗ってきたし)
この咲さんなら神満くらい余裕だろうな
咲「地獄の番犬」(対々三暗刻三カンツ)
池田「そ、そうか、お前があの噂の……」
池田「いや、お会いできて光栄だ……あんたがいれば、こっちの仕事も楽になっただろうに」
咲「ごめんね、私はその頃ロサンゼルスの闇組織を潰し回っていた頃だったから」
咲「ふふ……あの死体と共に咲き乱れる血の花々、綺麗だったなぁ……」
池田「クク……噂通りの切れっぷりだな、『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』よ」
衣「…………」ガタガタ
池田(や、やるなぁ、清澄……)
咲(高校からは封印してたけど、やっぱり脳内設定を演じるのって楽しい! みんなでやれば怖くないし!)
加治木(これ、麻雀大会だよな……)
咲「……ねぇ、龍門渕さん」
衣「は、はいぃ!」
咲「ツモだよ。点棒」
衣「ご、ごめんなさい!」ジャラジャラ
池田「……龍門渕よ、ここが卓上でよかったな」
咲「麻雀なら、失うのは点棒だけ……命までは、失うことはないからね」
衣(ひぃぃぃ……)
衣は発光したり火出したりするし、神代は神様降ろしちゃうし、
超能力者が暗躍しててもおかしくないわな
池田「今後も、生き長らえるといいな……『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』よ」
咲「お互いにね……『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』」
池田・咲「「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」」
衣「…………」ガクガクブルブル
加治木(龍門渕の動揺が激しいな……まさか私も乗っかった方がいいのか、これ?)
咲「……カン」
加治木「その嶺上、取る必要なし……搶槓だ、そのカン成立せず」
咲「なっ……」
衣(こ、こうなったら鶴賀だけが頼りだ……こいつだけは、衣と同じ……)
加治木「ふ……まさかこのような場で、お前たちと会うことになるとはな」
加治木「『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』に『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』」
加治木「カノッサ機関の……犬どもめ」
衣「え……」
咲「!?」
池田(鶴賀まで乗ってきたし……)
さすがです
咲「あ、貴方は……」
加治木「カノッサ機関……ずいぶんと勢力を広げているようだが、調子に乗っていられるのも今のうちだ」
加治木「貴様らは我々……『ラインヴァイス』が潰す、必ずな」
咲「ラインヴァイス……こんなところで、最大の宿敵組織と相まみえるとはね」
衣「え? え? え?」
池田「そして先ほどの搶槓……槍……まさか、お前は……」
咲「ラインヴァイス十三将が九……雷槍ハルバトスを操る魔人……」
加治木「知っているようだな……『奇禍灰燼(デッドコラプション)』の名を」
衣(と……とーかぁ……たすけてぇ……)
神代・衣・宥「ユクゾッ!九蓮宝燈(シベリアンエクスプレス)!!!!」
咲「で……『奇禍灰燼(デッドコラプション)』……」
池田「はは……こ、こいつぁ、とんだ大物が身近にいたもんだな……」
加治木「ローマでは貴様らの仲間に、ずいぶん手を焼かされたよ……みんな仲良く、あの世に送ってやったがな」
咲「へぇ……じゃあこの後、私たちとも一緒に遊んでみる?」
加治木「『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』に『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』か……」
加治木「ちょうどいい、二人まとめてハルバトスの餌にしてやってもよいが……今はまだ、お互いその時ではなかろう」
池田「ふ……賢明な判断だと誉めてやろう」
咲「次に会うのは『第七黙示録』の夜……その時こそ、あなたを血で染めてあげるよ」
加治木(こんな感じでいいのだろうか……しかし恥ずかしいな、これは……)
池田(予想外の展開になったし……まぁいいけど)
咲(妄想って楽しいよね!)
衣(け……けーさつ……)ガタガタ
アナ「前半戦終了! 上位三校は僅差ですが、龍門渕は大きく遅れをとっております!」
アナ「天江選手は去年の力をまるで発揮できていません。そういえば、なぜ対局中涙目だったのでしょうか」
藤田「私に聞くな」
透華「ちょっと衣、どういうことですの衣!」
純「ボコボコにやられてるじゃねーか。らしくもねぇ」
衣「うわぁぁぁぁん! 怖かったよおおおおおお!」
一「え、え? 何があったの?」
衣「か、カノッサ機関がぁ! ラインヴァイスがぁ!」エグエグ
純「……はぁ!? お前、そんなん信じたってのか!?」
智紀「意味がわからない……」
透華「そんなの嘘に決まってるでしょう!」
衣「う、嘘なのか……?」
一「大丈夫だから気にしないで、いつもの調子でぶっ飛ばしてきてよ」
衣「そ、そうか! なんだ、嘘だとわかれば怖いものはないぞ!」
久保「やるじゃねえか池田ァ!」
福路「この調子で後半戦も頼むわね」
池田「任せてください!」
文堂「そういえば、天江衣対策があるって言ってましたよね。何をしたんですか?」
池田「ふっふっふ、それは勝ってからのお楽しみだし!」
吉留「あ、あはは……」
久「お疲れ様、咲」
咲「……京ちゃん、ちょっと来てくれない?」
京太郎「?」
京太郎「どうしたんだ、こんなところに呼び出して」
咲「京ちゃん、もう一回確認するけど中学の頃の私の話、誰にもしてないよね!?」
京太郎「中学の頃? あの突然眼帯をつけたり、包帯を巻いたりして登校したりとか……」
咲「言わないで! とにかく、絶対みんなに喋っちゃ駄目だからね!」
京太郎「わ、わかったわかった……」
加治木「……なぁ、みんな」
モモ「何すか?」
加治木「正直、帰りたい」
蒲原「ワハハ、何があったんだー?」
加治木「さて、後半戦か……」
衣「ふっふっふ……もうお前らには騙されないぞ!」
池田「よろしくな……『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』」
咲「今度は仕事でもご一緒できるといいね……『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』」
池田・咲「「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」」
衣「……だ、騙されないぞ!」プルプル
加治木(足が震えてるぞ、龍門渕)
咲「……ツモ、嶺上開花」
加治木「ふ……相変わらず『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』は、戦場に花を咲かせるのが得意と見える」
咲「今一番見たいのは『奇禍灰燼(デッドコラプション)』……あなたの血で染まった花なんだけどね」
衣「も、もうやめたらどうだ! 貴様らの芝居は底が見えた!」
加治木「……む?」
衣「知っているぞ、カノッサ機関だの何だのは、本当は……」
池田「嘘だ……と言われたのだろう。おおかた、仲間にでも」
衣「な、なぜそれを!?」
加治木(まぁ、そのくらいしか考えられないからな)
池田「哀れなものだ、仲間に遊ばれているとも知らずにな……」
衣「ど、どういう意味だ!?」
池田「知れたことよ……あいつらもまた、カノッサ機関のエージェント」
衣「ば、馬鹿な!」
池田「わかりやすいのが、あの国広一という娘……あの両腕の鎖、不自然だと思わないか?」
池田「あれは……カノッサ機関で与えられし魔の力を、封印している……」
衣「い、いや、あれは確かイカサマを封じるためって聞いたが……」
池田「それなら、何も鎖をつけたりまではしなくともよいだろう?」
衣「た……確かに……!」
池田「副将も、あの触覚の動きはおかしいと思わないか……あれは機関で生み出した、別生命体を宿しているのだ」
衣「なんだって!」
池田「先鋒も、どう見ても男なのに女なのはおかしいと思わないか……あれは機関の性転換技術の被験者だ」
衣「な、なんだってー!」
池田「次鋒も、高二にしては胸が大きすぎると思わないか……あれは機関の豊胸手術の被験者だ」
衣「な、な、な、なんだってー!」
加治木(だんだん適当になってるな……)
咲「ふふ……全てはカノッサ機関の手のうちで遊ばれているんだよ」
加治木「案ずるな、彼女たちはラインヴァイスの抹殺対象に入っていない……運が良かったな」
池田「さて、遊戯を続けよう……この時だけは私も、死の色を忘れられる……」
衣(こ、ころされる……衣は、ころされる……)
咲「ロン」
衣「ひぃ!?」
咲「……ねぇ、龍門渕さん」
咲「麻雀って楽しい……いや、"愉しい"よね……」ニタァ・・
衣「」ブクブク
純「衣の奴、気絶しやがった……」
透華「控えを出すしかないですわね……」
メイド「まさか出番があるとは思いませんでした」
アナ「試合終了! 上位三校の大接戦となりましたが、優勝は名門、風越女子に決まりました!」
加治木「ふぅ、届かなかったか……」
メイド「対局、ありがとうございました」
咲「負けちゃったか……さすがだね、『殲滅執行官(ジェノサイド・ワルツ)』」
池田「お前もなかなかだったぞ……『百華繚爛(フラワリング・フェアリー)』」
咲「次に会う時は」
池田「戦場で」
池田・咲「「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」」
加治木「いや、もういいんだって」
久保「よくやったぞ池田ァ!」
吉留「凄いよ、華菜ちゃん!」
池田「へへ、華菜ちゃん開発の天江衣対策が功を奏したし!」
福路「いったい、どんな方法を使ったの?」
池田「ふっふっふ……それはぁ……」
池田「……と、いうわけだし!」
深堀「そ……そんな方法で……」
福路「ま、まぁ……結果オーライってとこかしら……」
吉留「で、ですよね、コーチ?」
久保「……………………」
福路「コーチ?」
久保「……ぐわああああああああああああああああああああああ!」
池田「こ、コーチ、どーしたし!? 突然ソファーに顔をうずめて手足をバタバタさせて!?」
久保「やめてくれえええええええ! 若さゆえの過ちだったんだあああああああああああ!」
文堂「何か思い当たるフシがあったみたいですね……」
END
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