鳴上「桜が丘高校に転校…ですか?」(367)
律の影「澪が羨ましいんだよなぁ?」
律の影「澪は綺麗で可愛くて優しくて女の子らしくて」
律の影「あたしに無いものを全部持ってる」
律の影「そんな澪が私を頼って縋りついてくるのが快感だったんだろ?」
律の影「本当は自分が澪という光の陰に隠れてる癖にさ!」
律「違う…違う…!お前なんか…お前なんかぁ!」
さわ子「転校生を紹介します」
鳴上「鳴上悠です、宜しく」
澪「なんで女子校に男の人が…」
唯「なんかクールそうな雰囲気だね」
鳴上「番長だからな」
放課後
律「なぁ、鳴上…君だっけ?なんでこんな時期に、しかも女子校に転校してきたんだ?」
鳴上「なんとなく」
律「なんだよそれ…」
澪「律、早く部室に行こう?皆待ってるぞ」
律「わかったよ、今行くって」
鳴上「部活をやってるのか?」
律「うん、軽音部に入ってるんだ」
律「そだ、一緒に部室に来ない?鳴上君も早く皆と打ち解けたいだろ?」
鳴上「良いのか?」
律「良いって良いって!」ツンツン
律(澪?)
澪(り、律…いきなり何言ってるんだよ)
律(皆でお話するだけだろー)
澪(でも…お、男の人だし…)
律(大丈夫だって!なんとなく悪い奴には見えないし)
鳴上「あの」
律「わっとと!ゴメンゴメン、じゃあ行こうぜ」
澪「りつぅー…」
合コン喫茶練習中
唯「んー…この中だったらあずにゃんかな?」
律「おぉ、ちょうど良かったじゃん梓!」
梓「だからそういうんじゃないって言ってるじゃないですか!!!」
部室
律「おーっす」
澪「おーす…」
唯「あ、やっと来たよ~」
紬「待ってたわ~」
梓「遅いですよ、先輩が…た…」
鳴上「こんにちわ」
梓「な、なんで男の人が!?」
唯「あっ、そうか、あずにゃん知らないもんね」
律「今日からここに転校してきた、鳴上悠君だ!」
鳴上「よろしく」
梓「転校って…ここ女子校じゃないですか…」
唯「あずにゃん知らないの?男の人でも女子校は入れるんだよ~」
紬「唯ちゃん以外と物知りなのね」
唯「これだけは何故か知っていたのです!」フンス!
律「転校したばっかで寂しいだろうって思ってさ、連れてきたんだ」
紬「じゃあ今日は鳴上君も一緒にお茶しましょうか?」
お茶…?
梓「練習が先です!」
律「堅いことゆーなよ梓、たまにはいいじゃん」
梓「いつもティータイムばかりじゃないですか!」
梓「澪先輩も何か言ってやって下さい!」
澪「…あ、ああ!そうだなお茶にしようか!!」
梓「へ?」
律「普段、澪が男の人と接する機会なんてお父さんか聡ぐらいだしなー緊張してんだろ」
澪「ななな、ち、違う!」
俺が空気だ…
ん
ティータイム!
紬「今日はプリンを持ってきたの~」
唯「わぁ、カラメルソースがキラキラしてるね!」
律「美味しそうだなー」
紬「鳴上君もどうぞ?」
鳴上「ありがとう」
なんだろう…プリンを見てると何故か罪悪感を感じる…
梓「あの…なんで鳴上…せ、先輩はここに転校してきたんですか?」
鳴上「なんとなく、ここに来なくちゃいけない気がして」
唯「面白い理由だね~」
澪「…な、なぁ練習しないか?」
律「なんだよーお茶し始めたばっかじゃん」
澪「な、なんか落ち着いてお茶飲めなくて」
少し壁を感じる…きまずそうだ
唯「そうだ!鳴上君に私たちの演奏を聞いて貰おうよ!歓迎の印にさ!」
紬「そうね、やりましょう!私、転校生を演奏で歓迎するのが夢だったの~」
この子は少しズレた子なんだろうか
律「そーゆーことならやるしかないな!」
梓「う、上手く出来るか不安ですけど」
皆からの暖かい気遣いを感じる…
演奏終了!
唯「ふぃ~!どうだった!?鳴上君!!」
鳴上「あんまり上手くないですね」
唯「しどい!?」
鳴上「でも、凄く気持ちの良い音だった」
唯「鳴上君…!」
律「んー…まぁでも調子が悪かったのは否めないかなー澪とか」
澪「!?」
律「いい加減慣れろよーこれからクラスメイトなんだからさ」
澪「そ、そんなんじゃない!いや、それもあるけど…」
律「じゃーなんなんだよ」
澪「ひ、昼休みにこ、怖い話を聞いちゃって…」
唯「怖い話?」
梓「もしかして…いま流行のマヨナカテレビですか?」
!? 何故か聞き覚えのある言葉だ…
澪「見えない聞こえない…」
紬「マヨナカテレビなら私も知ってるわ」
紬「確か、雨の降る夜の12時に電源を消したテレビを見てると運命の相手が写るって都市伝説よ」
律「なんだそりゃ、怖いってよりむしろ、澪しゃんの好きそうなメルへ…」
澪「だ、だって真夜中の12時だぞ!?真っ暗な部屋でテレビを付けるなんて…」
唯「そりゃ澪ちゃんには無理だねぇ」
梓「ただの噂なんですから怖がる必要ないですよ」
澪「もし偶然雨の夜中で偶然目が覚めて、偶然12時で偶然テレビが付いてお化けが出たら…!」
紬「不確定要素多過ぎよ澪ちゃん」
律「…じゃあさ」
律「今日の夜、ちょーど雨降るらしいし試してみようぜ」
澪「律!?」
唯「面白そうだね!確かめて見ようよ!」
紬「私、マヨナカテレビを確かめるのが夢だったの~」
澪「も、もう嫌だ!私帰る!」ガラッ
律「あ、澪!あたし追っかけてくる!鳴上君も良かったら試してみてな!じゃ!」ガラッ
律は澪を追いかけていった… 俺も帰ろう
悠は残ったメンバーに礼を言って帰宅した
よく考えたら鳴上じゃなくても良かったね
自宅 番長の自室
外は雨が降っている…もうすぐ12時だ
噂が正しければテレビに運命の相手が映るはず…
……………
テレビには何も映らない…
やはり噂は噂に過ぎないのだろうか…
ガ…ガガ…キュイー…ン
!?
テレビに誰か映っている!
しかし…映像が荒く、特定は出来なさそうだ
…? 良く見るとロングヘアーの女の子に見えないでもない
テレビは何も映さなくなった…
明日、皆に話してみよう
順番通りか
翌日の教室
教室のドアを開けると視線が一斉に集まってくる
やはり女子校に男子がいるのは好奇の対象になるようだ
? 一人の女の子が駆け寄ってくる
唯「おはよう番長君。…聞きたいことあるんだけど」
唯「マヨナカテレビ…見た?」
唯は困ったような顔をして聞いてくる
今日あったことを話してみようか
唯「番長君も見えたの!?しかも私が見たのと同じの…かも」
唯「私もね、やっぱり嘘なんだろなーってあんまり信じないで試してみたんだ」
唯「そしたら、ほんとに映っちゃってびっくりして…もしかしたら夢かもって思ったんだけど」
唯「番長君も見たってことはただの噂じゃないみたいだね…」
唯「でも映ってたの女の子っぽいのはなんでだろ?番長君は分かるけど私は女の子だし」
ふと時計を見るともうすぐ予鈴が鳴りそうな時間だ…
だが、教室を見渡しても律、澪、紬の姿は見えない
ガラッ
紬「皆おはよう、電車が遅れて焦っちゃった」
番長「おはよう」
唯「おはよームギちゃん!」
紬「ねぇねぇ聞いて!私今日ね…」
ガラッ
さわ子「はい席付いてー出席取るわよー」
このまま話を聞けそうな雰囲気では無さそうだ…
昼休みにでも話を聞いてみようか
唯「先生来ちゃったし、またあとでねムギちゃん」
紬「う、うん」
午前中 授業
さわ子「仮面ライダーアギトのOPには一瞬だけクウガが映っていてね…」
唯「うへへ…あずにゃん…こっちの水は甘いよ…」うつらうつら
さわ子「平沢さん!ちゃんと授業聞いてた!?アギトのOPに何が映っていたか言いなさい!」
唯「はっ!ば、番長君!先生はなんて言ってた?」
番長「たしか……」
クウガと教えてみる
唯「く、くうが?です!」
さわ子「なんだ、ちゃんと聞いてたのね」
唯(ありがと、番長君)てへへ…
唯からほのかに感謝の好意が伝わってくる…
!? 頭の中に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『運命』の絆を手にいれん…
番長は『運命』のアルカナを手に入れた
昼休み 屋上
唯「お腹ぺこぺこだよ~」
紬「そうね、でも…今日はりっちゃんと澪ちゃん来ないのかしら」
そういえば朝から姿が見えない
昨日の印象では律という子はともかく澪という子は遅刻やズル休みはしなさそうだが…
唯「心配だね…私たちに連絡くらいあっても良いのに」
紬「うん、なにかあったのかしら…」
沈黙が気まずい…話題を変えてみよう
番長「紬さん、そういえば何か話したいことがあるって…」
紬「そうそう!私、見たのよ!」
唯「見た?」もぐもぐ
紬「うん!マヨナカテレビ!」
!
紬「しかも…映ったのが女の子なの///」
紬「荒くて良くは見えなかったけど、とても長い髪だったのが印象深かったわ~」
!? 唯と顔を見合わせる
…驚きすぎたのか唯はお弁当の唐揚げを喉に詰まらせて苦しそうだ
そっとしておこう
番長「もしかしたら…俺や唯ちゃんが見たのと同じ人かもしれない」
紬「えっ!二人も見たの!?」
いざいざなぎなぎ…
紬「そうだったの…ちょっと残念」しゅん
テレビに映った運命の相手が3人とも同じだったことに
ちょっとどころか心底残念そうだ…
唯「ご、ごほっ…で、でも運命の相手が皆同じのはなんでだろうね…」
もっともな疑問だ
紬「本当は運命の相手が映るんのではなく、別の何かっとてことかしら」
別の何か…なにかが頭にひっかかる…なにかを忘れてるような…
ポタッ
何かが頬に当たった …雨だ
唯「ん、雨降ってきちゃった?予報だと晴れだったのに」
紬「もうすぐ昼休みも終わるし、行きましょ?」
空の向こうには雨雲が広がっている…
夜まで長引きそうだ
放課後 部室
ガラッ
唯は勢い良く部室のドアを開ける
だが少し部室の中を見回すとすぐに残念そうな顔をした
唯「やっぱり、りっちゃんと澪ちゃん来てない…」
紬「本当に何かあったのかな…」
軽音部というこの輪の中で二人がいないというのはとても珍しいことらしい
梓「先輩達、部室の前で何をやってるんですか?」
後ろには自分より二回りほど小さい女の子が立っていた
確か…あずにゃんと言っていたはずだ
…確かに猫っぽい 時々エサをあげに来よう
唯「あずにゃあーーーん!」だきっ
梓「ゆ、唯先輩///離れて下さい!」
唯「だってぇ~りっちゃんも澪ちゃんもいなくて寂しいんだもん」
梓「え?律先輩と澪先輩いないんですか?」
紬「そうなの…電話も通じなくて」
梓「お二人が黙っていなくなるのは珍しいですね…」
梓は唯への抵抗を諦め、なされるがままになっている
なんとなく変な気分だ
紬「ベースもドラムもいないと練習にならないし、今日はお休みにしましょうか」
梓「…そうですね」
梓は残念そうだ
唯「…じゃあさ、今日はりっちゃん家と澪ちゃん家に行こうよ!」
唯「もしかしたら連絡するのを忘れちゃうくらい具合が悪いのかもしれないし!」
唯「もしそうならきっと寂しがってるよ二人とも!だからお見舞いに行こう」
唯は屈託の無い笑顔で提案してきた
紬「ええ、そうしましょう!」
梓「風邪を引かれたままですと練習が出来なくて困りますもんね」
…お見舞いに行くことになった
放課後 道中
梓「でもいきなり4人で押し掛けて大丈夫ですかね」
唯「そっか、うるさくなっちゃったら悪いもんね!」
なんとなくうるさくしそうなのは一人だけな気がするが…
そっとしておこう…
紬「じゃあ2:2に分かれてお見舞いに行きましょうか」
唯「じゃあ私はあずにゃんと行くよ!」だきっ
梓「ひあっ///」
紬「じゃあ私は番長君とりっちゃん家に行くわ、澪ちゃん家だと番長君が家に上がれないと思うから」
確かに…昨日の澪の態度を察すると男性が少し苦手そうだった
唯「ではあずにゃんと澪ちゃん家にお見舞いに行ってきます!」びしっ
唯「行くよあずにゃん!」タタタタッ…
梓「ま、待って下さい!」タタタタッ…
二人はあっと言う間に見えなくなった…
紬「私たちも行きましょうか」
紬「一度、二人でお話したいと思ってたの~」
…律の家に向かうことになった
放課後 田井中家への道中
紬「ここに来る前はどんなところにいたの?」
番長「何も無いところだよ、平凡な田舎町」
…だった気がする …本当に何もなかっただろうか?
紬「田舎ってどういうところなの?やっぱりみんな畑を耕したり、~だがやとか言うのかしら?」
この子の田舎のイメージはどんなのだろうか…
だがこの子の眉はなんとなく田舎の代表秋田県の名産のアレっぽい気がする
紬としばらく話し込んだ…
紬「番長君は以外と面白い人なのね~昨日は凄くクールな感じでとっつきにくそうだったけど」
紬「意外な一面が知れて良かったわ~」
紬は楽しそうだ
紬「番長君は私が今まで知っているどんな人とも違う雰囲気を持ってるみたい」
紬「これからもっと知っていきたいと思っちゃった」
紬「…わ、私、な、何を言ってるんだろう///」
紬「…これから卒業まで宜しくね?」
紬からほのかに好意を感じる…
!? 頭の中に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『女教皇』の絆を手にいれん…
番長は『女教皇』のアルカナを手に入れた
放課後 田井中家前
紬「ここがりっちゃん家よ」
到着したようだ
家の外見は一般的な家屋と変わり無い 普通の中流家庭という印象だ
紬はそそくさと玄関に駆け寄るとインターホンを鳴らす
ピンポーン
律『はーい…』
戸の向こうから律の声が聞こえる
声だけだがとても辛そうな雰囲気だ
律「おームギ…番長君も…悪いなわざわざ…」
律はパジャマの上にパーカーを羽織った姿で出てきた
額には冷却シートが貼られ、首筋には汗の滴が垂れている
一目で風邪と分かる姿だった
紬「急に来てごめんなさい…連絡が無かったものだから…」
律「そか…忘れてた」くしゅっ
紬「とりあえず部屋に行きましょう?凄く辛そうよ」
律「うん…ごめん」
…田井中家へとお邪魔することにした
放課後 律の部屋
律はベッドに横たわっている
だいぶ熱があるようだ
紬「りっちゃん昨日はあんなに元気だったのに…」
律「…昨日、澪がいきなり出てったろ?あの後すぐ追っかけたんだけど、すぐに見失っちゃって」
律「あいつすげー足早くてさ、あっと言う間に見えなくなっちゃって」
律「…あたしのせいだから、早く見つけて謝ろうと思ったんだけど」
律「…どこにもいなくて、家に帰ったのかなって行ってみたけどいなくて」
律「こんなこと、初めてだったから、暗くなってもずっと探して、そしたら雨降っちゃって」
律「思いっきりびしょ濡れになって、風邪引いちゃった」
律「本当はすぐにでも探しに行きたいのに、から、だ、うごかな、くて……」ひっく
律「み、おぉ…何処行っちゃったんだよぉ…」ひぐっ ぐすっ
律の目からは涙がこぼれている…
紬「りっちゃん…」
番長「秋山さんは俺達が見つける、だから田井中さんは安心して風邪を直そう」
律「で、でもぉ…」ごほっけほっ
番長「田井中さんが無理をして体を壊したら秋山さんが悲しむ、いや皆悲しむ」
番長「だから、いまは落ち着け…」
律は少し驚いて目を見開くと、すぐに笑顔になった
律「…ありがと、あとごめんな転校早々にこんなことに巻き込んで」
番長「気にするな、それに捜し物は得意なんだ」
…なんとなくそんな気がする
律「ほんとにありがとな…あと…さ…」
律は十中八九風邪のせいだろうとは思うが顔を赤らめている
律「あたしのこと…田井中さんじゃなくて、律って呼んでよ…」
番長「分かった…律」ニコッ
律「へへ…」
律からほのかに好意が伝わってくる…
!? 頭の中に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『太陽』の絆を手にいれん…
番長は『太陽』のアルカナを手に入れた
どうやら律は寝付いたようだ
とても安心した表情で眠っている
紬「私、もう少しりっちゃんを看病していくわ、だから番…」 ウンメイノー♪
紬の携帯がなっている
…なんとなく爆発しそうになった
紬「唯ちゃんからだわ」
唯『もしもし紬ちゃん!?澪ちゃん昨日から家に帰ってないって!!』
こっちにまで電話の声が聞こえる
よほど慌てているようだ
紬「もしもし、落ち着いて唯ちゃん、澪ちゃんが居ないのは知ってるわ」
唯『あ、そ、そうなの?じゃありっちゃんは!?』
紬「りっちゃんはお家に居るわ、昨日一日ずっと澪ちゃん探していて風邪を引いたみたいなの」
唯『そっか…でもお家に居るんだね…良かった』
唯『でも…澪ちゃん…』
唯の悲痛な声が電話口から漏れてくる…
かなり気落ちしてるようだ…
紬「これから澪ちゃんを探しに行きましょう、私はりっちゃんの看病で遅れるけど番長君がそっちに行くから」
唯『分かった…でも番長君は来たばかり地理に疎いと思うから、あずにゃんを置いてくね』
唯『私、先に駅の方を探してみる!』
紬「分かった、気を付けてね唯ちゃん」ピッ
紬は携帯を鞄にしまうと、こちらを向いた
紬「番長君、聞こえてたと思うけど澪ちゃん家に行ってくれる?」
番長「ああ、約束したからな」
律は静かに寝息をたてている…
相変わらず熱はあるが、どこか優しい顔している
紬「これ、澪ちゃん家までの地図ね、そんなに遠くないから」
紬は真剣な表情をしている…
紬「澪ちゃんはとても優しい子なの…皆をしっかりまとめてくれて…」
紬「少し怒りっぽいけど、でもそれは皆への愛情の裏返し…」
紬の目には涙が溜まっている…
紬「澪ちゃんは軽音部の大切な仲間…でも、も、もしいなく、なっちゃ、たら」
そっと地図を受け取り、人差し指で紬の涙を拭った
番長「紬、お前とも約束だ」
番長「必ず秋山さんを見つけてくる」
番長「だから、安心して待っていろ」
紬は驚いた顔をしている
だが同時に顔も赤い…
紬「不思議ね…番長君がそう言ってくれると安心出来る…」
そっと部屋のドアノブに手を掛ける
番長「…行ってくる!」
田井中家を後にした…
放課後 秋山家 道中
…?
道路を挟んだ反対側にだらしなくスーツをきた寝癖だらけの男が佇んでいる
なんとなく気になる…
そっとしておこう…
?「………」
放課後 秋山家前
秋山家の前に女の子が立っている
あのツインテールは…アンズーだったかな?
梓「あ、番長さん」
梓「早くいきましょう」
こちらを見るなりそそくさと歩きだしている
あまり信用されてないのだろうか
番長「心当たりがあるのか?」
梓「無いです、あの律先輩が見つけられない時点で私に探せるとは思えません」
梓はつっけんどんな態度を取っている
梓「…律先輩と澪先輩には深い絆があるから」
梓「その絆を以てしても見つけられないということは私にはもっと無理なんです」
梓はぴたりと足を止めた
梓「でも大切な…先輩だから、探さなきゃってことは分かってるんです」
梓は心の内に何かを抱えてるように見える…
梓「…もう行きましょう」
梓は再び足を動かした
梓の悩みに少しだけ触れた気がする…
!? 頭に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『星』の絆を手にいれん…
番長は『星』のアルカナを手に入れた
夜 田井中家
律の部屋に全員で集まった
律の熱は大分引いたようで無理は出来ないが
少しは動けるようだ
唯「足がアイスの棒になっちゃったよ…」
梓「町をぐるっと回ったあとにもう一度、澪先輩の家に行きましたがやはり居ませんでした」
律「悪い…あたしが動ければもっと細かく探せるのに…」
紬「駄目よりっちゃん無理しちゃ、約束したでしょ?」
律「うん…そうだよな…でも…」
皆の表情が暗い…
心身共に疲れきっているようだ…
…
そうだ!
番長「皆、何も食べてないだろ?律、キッチン借りるぞ」
律「あ、う、うん」
冷蔵庫の食材を見る
オムライスが作れそうだ
無難な醤油…それとも定番のケチャップ…
!
地中海風オムライスなんてどうだ!?
…
ケチャップにすることにした…
20分後… 律の部屋
唯「凄い…ハート型のオムライスだ!」
梓「ほ、星型って…私は子供じゃないです!」
律「あたしのは…太陽…かな?」
紬「私のは…餃子型かしら?」
秋田県の名産型とは言えない…
唯「凄い美味しい!憂のにも負けないよー!」
梓「本当だ…美味しい…」
紬「うん、優しい味…」
律「すげー美味い、番長君ってこんな特技あったのな」
喜んで貰えたみたいだ
律「…でもこんなことしてて良いのかな」
律は押し出すように呟いた
律「もしかしたら、澪は悪い奴かなんかにさらわれて怖い目にあってるかもしれない…!」
律「なのに、あたし、何も出来ないで…!」
律の肩は震えている…
番長「律」
番長「言ったはずだぞ?無理はしちゃいけないって」
番長「心配なのは皆一緒だ、自分だけで背負うな」
番長「律の今の仕事は風邪を早く直すことだ、折角秋山さんを見つけても律が風邪を引いてたら格好悪いぞ」
律はゆっくりと頷いた
律「そうだよな…澪にこんな姿、見せらんないよな」
番長「分かったらオムライスを食べて、力をつけろ」
番長「病は食から。『食』べるという字は『人』が『良』くなると書く」
唯「…ほんとだ!人が良くなるで食べるだ!凄いね番長君!」
俺は凄くないだろう…
律「…なんか元気出た!よっしゃー!早く風邪直して澪を見つけてやる!」
全員「オー!!!」
全員で澪を見つけると約束した… 皆からほのかに友情を感じる…
!? 頭に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『愚者』の絆を手にいれん…
番長は『愚者』のアルカナを手に入れた
深夜 律の部屋
何故か…なんやかんやで皆で泊まることになったが…
紬「う…んん…」
律「すー…すー…」
梓「ふにゅ…」
唯「すぴー…すぴー…」
耐えろ俺の理性
皆の姿が扇情的…というのだろうか
とても落ち着かない!
なんて試練だ…
紬「番長君ッ!」
!!!
紬「スライム状が良いの~…」すやすや
そっとしておいてくれ…
ふと、窓の外を見ると雨が降っていた…
キュ…イー…ン
!?
テレビが付いた
映像がはっきり映し出されている…
この場所は…ドームだろうか…?
唯「んー…?番長君…まだ起きてたの?」
唯が目を擦りながら起きあがっている
大分眠たそうだが…
!?
テレビに秋山澪の姿が映っている!
唯「み、澪ちゃん!?」
律「み、澪!?今、澪って!?」ガバッ
律の声で皆、目が覚めたようだ
テレビの中の澪は黒い衣装を見に纏っていた
だが、どこか様子がおかしい…
澪『はーい!放課後ティータイムのベース兼ボーカルこと、mioちゃんでーす!』
澪『わたしーとっても恥ずかしがり屋でー寂しがり屋でーうさちゃんが無いと眠れない子なんだー』
澪『でもぉ、いつまでもそんなんじゃ駄目だよねぇ』
澪『だからぁ…』
するとテレビの中の澪はスカート中に手を入れると…
!?
パンツを脱ぎ始めた!?
律「みっ、みるな番長!!!」
視界が律の手で真っ暗になる
澪『えへへーライブでパンツ見せるくらいじゃ駄目だよねぇ』
澪『私の恥ずかしいトコ全部見せなきゃ恥ずかしがり屋なんて克服出来ないよねー』
な、生殺し過ぎる…!
こ、声だけって…!
澪『でもぉココじゃ見せらんない♪』
澪『もっとぉ沢山の人に見て貰わなきゃ!』
澪『それじゃあ、もっと お・く・ま・で レッツゴー!』
…プツン
テレビが消えたようだ
唯「な、なに今の…///」
律「み、澪だよ…な///」
紬「」
梓「今のって…マヨナカテレビですよね」
番長「手…もう良いか律?」
律「あっ!ゴッ、ゴメン!」
皆、動揺している…
律「普段の澪じゃ考えられないことしてたな…」
梓「な、なんなんだったんですか」
唯「ねぇ、澪ちゃんが居たところ何かのライブ会場ぽくなかった?…」
ライブ会場…そういえばそんな気も…
律「あいつ…何処まで行ってんだよ」
紬「とても正気の澪ちゃんには見えなかったわね…」
確かに…一度会ったきりだが
人見知りや恐がりの秋山さんがあんなことを言うだろうか?
律「とにかく、場所のヒントは分かったんだ!早く探そう!」
律は着の身着のまま部屋を出ようとしている
梓「待ってください!ここら一帯にあんな大きそうなライブ会場なんてありませんよ!」
梓「宛てもなくいったって駄目です!」
律「そ、そうだけど!」
紬「さ、斉藤!?手当たり次第、国内全てのライブドームを調べて!なるべく急いで!」
唯「ど、どうしよう早くしないと澪ちゃんが…」
皆、冷静さを欠いている…
番長「落ちつ…」
!?
頭の中に声が響く…
手を…伸ばせ…?
自分の手が何かに操られているかのように動いている…
テレビ…? そう…だ…
テレビに…手を…!
唯「番長…君…?」
俺はそっとテレビに手を伸ばした
画面まで20cm…10cm…1cm…
番長「入った…」
テレビの中に腕が入った!
このサイズなら人一人くらいは軽く入れそうだ!
梓「も、もう訳分からないです…」
梓はへなへなとその場にしゃがみこんでしまった
皆、言葉を失っている
少しの沈黙のあと、律が口を開いた
律「も、もしかして…そこから澪の所へ行けるんじゃないか…?」
律がおずおずと聞いてくる
番長「分からない…だが中には空間が広がってるようだ」
番長「マヨナカテレビとこの空間は何か関係があるかもしれない」
番長「確かめてみようと思う」
唯梓律紬「!」
番長「でも、何があるか分からない」
番長「俺一人で行く」
俺はテレビに再び手を入れた
!?
途中で肩を掴まれたようだ
…律だ
律「あたしも行く、澪はあたしの親友だ」
唯「私も行くよ、澪ちゃんきっとみんなを待ってるから」
紬「そうよ!」
梓「わ、私だって!」
番長「けど!中は危険だ、なんとなくだが分かるんだ、そんな所に皆を行かせられない!」
だが、律は手を離さない
律「あんまり、あたし達をなめるなよ!」
律「友達が助けを待っているなら手を差し伸べるのが友達だ!」
律「澪はきっとこのテレビの向こうで助けを待ってる!」
律「だから、澪を助けに行く!皆、澪を失いたくないからだ!」
律「でも失いたくないのはお前もなんだよ!」
!!!
番長「でも、俺は…」
律「友達になるのに時間なんて関係無い」
律「お前も…私たちの大切な仲間なんだ」
律「一人で背負うなよ…」
!!!
唯「そうだよ!番長君も大切な仲間だよ!」
梓「別に…嫌いじゃないです、番長さんみたいな人…」
紬「私、男の子の親友作るのが夢だったの~」
皆…
番長「…そうだな、助けに行こう皆で」
番長「そして…ありがとう」
大丈夫、皆となら…できる
皆とだから…出来る
!? 頭に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『審判』の絆を手にいれん…
番長は『審判』のアルカナを手に入れた
番長「行こう!」
テレビの中
ここは…学校だろうか…?
! み、皆は…!?
律「あたた…高いところから落ちるなんて聞いてないぞ」
紬「ポケットの中の札束がダイレクトに…」ヒリヒリ
唯「あずにゃあん、重い…」
梓「にゃっ!?す、すみません!」
…無事のようだ
律「なんだよココ…学校の校庭…かな?」
番長「そうみたいだが…」
空気が重苦しい
長時間居るのは良くなさそうだ…
唯「あずにゃんひどいよ…私を尻に敷くなんて」
梓「わ、わざとじゃないですー!」
紬「まぁまぁ」
律「お前らなぁ…もっと緊張感っても…のを…」
律が言い淀む
唯「りっちゃん?」
律の目は遠くを見ている
律「み、皆~、あ、あれ」
律の視線の先には…
!?
唯「お、お化け!?」
梓「にゃあああ!?」
紬「く、唇のお化け…」ふらぁ
シャドウだ!!
…
…俺は何故アレがシャドウと呼ばれるものと知っているんだ?
やはりおかしい、大切な何かを…無くしている気がする
虚言のアブルリー「シャアアアアア…」
唯「あああああずにゃん!!」
梓「ゆ、唯先輩ー!!」
!?
まずい、二人を早く助けないと!
『我は汝…汝は我…』
さるさんくらってた
ふと、手を見るとそこには一枚のカードが握られていた
何もかもがあり得なくて、非日常的で、全てが初めてのはずなのに
俺はこれから何を、どうすれば良いのか分かっていた
「ぺ…」
『汝が双貌を見開き…』
「ル…」
『今こそ…』
「ソ…」
『発せよ…!!!』
「ナ…!」
やっぱり無理だったのかな 私たちには
私たちの思いはここで終わるはずじゃないのに
私の大切な仲間は 友達は
きっとこの空の下のどこかで助けを 手を差し伸べられるの待っているはずなのに
私は…… こんなにも無力だ
唯「ごめん澪ちゃん…」
梓「唯先輩…!」
私は異形の化け物を前に動けなかった
でも せめて…梓だけは…
私は数秒先に起こりうる現実を認めたくなくて目を瞑った
こんなことしても何も変わらないのにね
でも…私が予想していた未来は来なかった
来てくれたのは
ヒーロー
番長「イザナギ!!!」
私たちと化け物の間に何かが降り立つ
それは襲い来る理不尽を蹴散らす刃であり
そして何があっても大切なものを守り砕けることの無い盾にように見えた
…私、作詞の才能あるかもね
番長「唯、梓、大丈夫か?」
梓「はわわわ…」
唯「怖がっだ~!!!」
唯は梓ごと俺に抱きついてきた
照れそうになったが、それよりも仲間を守れた喜びが大きかった
そして、まだしぶとく生き残るシャドウへと向き直る
番長「ジオ!」
一瞬、迸る光
もうシャドウはそこに居なかった
番長「もう大丈夫だ」
律「凄いな、今の!ペルソナ…って言ったよな、なんなんだアレ!?」
紬「とても格好良かったわ~」
二人がぱたぱたと駆け寄って来る
唯「あずにゃん、私生きてるよー!」だきっ
梓「私もですー!」だきっ
番長「この力がなんなのかは良く分からない」
番長「だが、きっとこの世界での力になるはずだ」
律「あたしも出せたりすんのかな…」
律は一人で「ペルソナよ~出ろ!」と叫んでいる
そっとしておこう…
紬「それにしても、さっきのお化けはなんだったのかしら」
番長「あれはシャドウだ」
紬「シャドウ?」
番長「この世界に巣くい、生きているものに襲いかかる化け物だ」
番長「この世界ではシャドウが当たり前に出てくる、離れず固まって動こう」
紬「そうなの…でもなんでそんなに詳しいの?」
紬の言葉が突き刺さる
何故、俺はこの世界のことを知っているのだろうか…
番長「すまない、なんとなく分かるとしか言えない」
律「ムギ、今はそんなの後回しだ」
律「あんな化け物が出るんだ、早く澪の所に行かないと」
律は落ち着いたようだ
唯「うん、早く行こう!」
紬「…そうね」
梓「でも…何処へ行けば澪先輩が居るんですかね」
唯「そ、そっかこんな広くちゃどこに行けばいいのやら…」
律「手分けして…は無理だしな、さっきのに出てこられちゃたまんないし」
紬「学校の屋上にいって見ましょうか」
紬の提案に皆が首を傾げる
紬「ほら、テレビの中の澪ちゃん、ドームっぽい所に居たでしょ?」
紬「とても大きそうに見えたから、高い所から見ればドームの場所が分かるんじゃないかしら」
唯「なるほど!逆転の発想だよムギちゃん!」
梓「どこが逆転してるんですか」
律「漫才はそこまでだ」
番長「よし、屋上に行ってみよう」
学校の屋上へ向かうことにした
マヨナカ学校 屋上前階段
律「割とあっさり来れたな」
梓「いつ襲ってくるか気が気でないですよ…」
唯「上手く見つからずに来れたんだよ、きっと!」
ある程度は落ち着きを取り戻せたようだが
完全に不安を拭えてはいないようだ
戦える俺が守らなくては…
紬「よしっ、開けるわね」
紬は屋上への戸を開いた
眠くなってきた
マヨナカ学校 屋上
屋上は閑散としている…
見た目だけなら現実のものと大差なさそうだが…
律「なぁ、アレ!」
律は向こうを指さしている
その指の先、ここからかなり距離は有りそうだがドームと分かる建物があった
紬「きっと、澪ちゃんはあそこね!」
梓「私たちのこと、待ってるはずです!」
律「場所さえ分かればこっちのもんさ!早く行こう!」
?「どこに行こうってんだよ」
さっきまで俺達が居た場所にはあり得ない人物が立っていた
律「な、なんだよ!誰なんだよお前!」
?「あたし?あたしは…」
律の影「お前だよ」
!?
律が二人居る!
唯「り、りっちゃんが増えた!」
紬「何が起こってるの…?」
梓「ど、どういうことですか?」
?「どーもこーもないです。ここで消えちゃうんですから」
!?
後ろにも誰かが居る!
あれは…梓!?
唯「あ、あずにゃんも増えた!?」
番長「落ち着け、何かの罠だ!」
とはいったものの、状況が把握出来ない…
とりあえず、好意的じゃないのは間違いなさそうだ
律の影「お前さぁ、なんで澪を助けるの?」
律「なんでって…親友だからに決まっ」
律の影「違うだろ」
律の影「お前は澪を自分のイメージアップの道具としか見ていないよ」
律の影「人に嫌われんのは嫌だよなぁ、拒絶されんのはもっと怖いよなぁ」
律の影「だからお前は誰にでも優しくするんだ」
律「さっきから、勝手なことばかり言いやがって…!」
律の影「暗くて独りぼっちで泣き虫で甘えんぼな澪」
律の影「お前は澪と初めて出会った時、こう思ったはずだぜ?」
律の影「こいつと仲良くしてやれば皆が私を優しいりっちゃんとして見てくれるんじゃないかってなぁ!」
律「やめろよ…」
律の影「親友だから助けたい?笑わせんなよ!!」
律の影「お前は自分を頼っている澪をダシにしてるだけだよ」
律の影「皆に澪を使って自分の良いイメージを押しつけたいだけだろうが!」
律「やめてくれ…」
まずい…
番長「律!惑わされるな!」
梓「だ、誰です!」
?「私は…」
梓の影「お前ですよ」
こちらもか!?
梓の影「何故、澪先輩を助けるんですか?」
梓「軽音部の大切な仲間だか」
梓の影「違う」
梓の影「澪先輩が好きだから」
梓「!」
梓の影「初めて軽音部に来た時から澪先輩が好きだった」
梓の影「綺麗な黒髪、整った顔立ち、スタイルの良い体」
梓の影「それを全て自分のものにしたくて軽音部に入った、ライブで感動したなんて口実です」
梓の影「でも…現実は非情でした」
梓の影「普段のちょっとした仕草から気づいてしまったんですよね」
梓の影「澪先輩が見ているのは…律先輩」
梓「…」
梓の影「その時から必死で自分を押し殺そうとした」
梓の影「優しい唯先輩に甘えそうになったりもした」
梓「違…う」
梓の影「澪先輩が居なくなった時、お前はどう思ったんですか?」
梓の影「こう思ったはずですよ、澪先輩を私が助ければ振り向いてくれるんじゃないか」
梓の影「澪先輩への歪んだ愛情、澪先輩を泣かせる律先輩への激しい憎悪、これがお前を占めてるものです」
律「なんなんだよ…誰なんだよお前…」
梓「違う、違う!私と同じ顔しやがって、誰なんですか!」
律の影「だーかーらー言ったろ?あたしは…」
梓の影「最初に言ったはずですよ?私は…」
律と梓の影「「お 前 だ よ」」
律「違う…お前なんか…お前なんかぁ!!!」
梓「わた、私は、私は!!!」
この雰囲気は…まずい!
番長「律、梓!駄目だ!」
律「あたしじゃない!!!」
梓「お前なんかじゃ無いです!!!」
律の影「あは、あはは、あはははははは!良いぜ良いぜ、待ってたよその言葉!」
梓の影「どうしても私を認めないんですね…残念です」
二人の影の周りにシャドウが集まっている!
番長「唯、紬!二人を連れて俺の後ろに下がれ!」
紬「わ、分かった!」
唯「うん!あずにゃんこっちだよ!」
律の影「んだよ、邪魔する気か?」
梓の影「なら…」
二人の影はみるみる内に姿を変えていく!
律の影「お前から!!!」
梓の影「ヤッテヤルデス!!!」
!?
紬「もう一人のりっちゃんが…金色の太陽に…!?」
唯「も、もう一人のあずにゃんが…でっかい生首になっちゃった…」
一瞬寝てた
律と梓の影「我は影…真なる我…」
律の影「もうお前なんかいらねぇ、今日からあたしが律だ」
梓の影「さっさと消えるです!」
強大な力を感じる…
だが、後に退くことは出来ない
番長「俺が…お前達を受け止めてやる!」
律の影「やってみろぉ!」『アギ』
梓の影「その虚勢がいつもで持ちますかね!」『ブフ』
番長「イザナギ!」
ドォォォォン!!!
梓の影「大体、たった一人で来ること自体が愚かです」
紬「番長君!」
唯「なにこれ…さっきのシャドウとは比べものになんない…」
アギとブフで蒸気が発生し、番長の姿は見えない!
律の影「へぇ…とっさに防御は出来たみたいだな」
番長「間一髪だな…」『ラクカジャ』
番長「今度はこちらの番だ!」『タルカジャ』
番長「イザナギ!」『スラッシュ』
イザナギは剣先に力を込めると梓の影に斬りかかる!
しかし、梓の影は巨大な見た目に反し、かなり素早い!
かわされてしまった…
律の影「どこ見てんだよ、おらぁ!」『脳天落とし』
くっ! かなり重い一撃だ!
補助が無ければひとたまりも無い!
梓の影はこちらを見ている…『チャージ』
番長「多勢に無勢過ぎる…短期決戦しかない!」『ラクンダ』
律の影「!? あたしに何をしたぁ!!」『アタック』
番長「最初はお前からだ!」『スラッシュ』
律の影は体ごとぶつかって来る気だ!
だが、その勢いを逆に利用すれば…!
番長「イザナギ!」
イザナギは剣を構えるとその場で居合いを構えた!
律の影「なめやがってぇぇぇぇぇ!」
今だ! カッ!
イザナギは律の影の体当たりをすんでで交わし、返しざまに剣を薙払う!
律の影「がぁぁぁぁぁ!」
律の影「ぐぅぅ…!!!」
なんとか一体はやれたか…?
次は…!
梓の影「ちょっと遅かったですね、さよならです」『暴れまくり』
律の影「ただでやられてやるかよぉ…!!!」『デカジャ』
!?
ここに来て、コンビネーション攻撃…!?
四方八方からの波状攻撃!
番長「受けるだけで限界か…!」
イザナギの体にノイズが走る
このままでは…!
律「あ、あたしは…あんなの…じゃ…」
紬「りっちゃん…」
梓「私は…私は…」
唯「…あれが、あの姿が二人の全てじゃないよ!」
唯「私、思ったんだ」
唯「あの二人はきっとりっちゃんとあずにゃんの不器用な部分」
唯「あの二人は確かに二人の心にあるもの」
唯「でも、それが二人の全部な訳がない」
律「唯…」
梓「唯…先輩…」
唯「りっちゃんの全てが影の言うとおりだったら、りっちゃんと澪ちゃんはあんなに楽しく笑いあえないよ」
律「ゆ…い…」
番長「唯の…言う通りだ、あれがお前たちの全てじゃない」
番長「梓の全てが影の言うとおりなら、俺にあんな楽しい演奏は聞かせてくれなかったはずだ」
番長「あの演奏の中にはいびつな愛や憎しみの心なんて一つも無かった」
番長「皆が皆を信頼しているからこそ、生まれた音楽だ」
梓「番長…さ…ん…」
律の影「あたしは…あたしはぁぁぁ!!!」『脳天落とし』
梓の影「今更、何をぉぉぉ!!!」『暴れまくり』
番長「今の律と梓は自分を受け入れ始めている」
番長「次はお前達が受け入れる番だ!」
『愚者』のアルカナに新たな可能性が芽生える…
番長「デカラビア!」
番長「はぁぁぁぁ!!!」『テトラカーン』
律の影「攻撃が弾かれる!?」
梓の影「このくらいで…」
番長「これで最後だ!!!」 カッ! 『メギドラ』
律の影「あああああ…」
梓の影「ちく…しょう…」
二人の影は人の姿に戻り始めた…
もう戦える力は残ってないだろう…
律の影「くそが…」
律「…お前は」
律「…お前はあたし」
律「あたしの心の裏側のきったないあたし」
律の影「…」
律「でも…それを否定したら、それは自分自身を否定することになる」
律「ごめんな、あたし…あたしはお前で、お前はあたしだよ…」
律の影「…ありがと」
自分の弱さを認め、律は新たな強さを得る…
我は汝…汝は我…
律は妖精の騎士『タムリン』を得た
梓の影「ざまぁない…ですね…」
梓「私は…自分の心に嘘をついてた」
梓「澪先輩が好きで、その隣に居る律先輩が羨ましくて…」
梓「澪先輩の心は律先輩に向けられているのを認められなくて」
梓「そんな私だから、あなたを生み出した」
梓の影「…」
梓「でも、あなたを拒絶したらそれは自分で自分を拒絶するのと一緒なんだ」
梓「最初から知ってたのにね…あなたは私、私はあなたってことを」
梓の影「ありがとう…」
自分の弱さを認め、梓は新たな強さを得る…
我は汝…汝は我…
梓は航海の神『ネコショウグン』を得た
唯「りっちゃん!あずにゃん!」ぶい!
律「へへ…ありがとな、唯」
番長「梓も、よく受け入れたな、お前は強いよ」
梓「あ、ありがとうございます/// ば、番長さんのおかげです///」
紬「皆が無事で、本当に良かった…!」ぐすっ
律「今なら…自信を持って澪を親友と言える気がする」
律「…確かに影の言うことは正しい、でも、それ以上に初めて澪に会った時」
律「この子と何でも言い合える友達になれたらって思ってたんだ」
律「影を受け入れなかったら、ずっとこの気持ち、忘れたままだった」
梓「…」
梓「私、決めました!」
梓は何かを決意した目をしている…
梓「私、澪先輩を助けたら…澪先輩に想いを伝えます!」
!
梓「そして、フラれてきます!!!」
紬「あ、梓ちゃん?」
梓「一度どこかでこの気持ちに決着をつけなきゃ、真に自分の影を受け入れたとは思えないんです」
梓「澪先輩にその気が無いのは分かってます」
梓「でも、新しくスタートしたいんです!」
唯「あずにゃん、頑張れ!」
紬「今の梓ちゃん、凄く良い顔をしてるわ~」
律「なんかちょっとフクザツ…でもま、良いか♪」
番長「フラれたら慰めてやる」
梓「そ、それは良いです…///」
メンバーの心の奥底を知り、受け入れたことにより
信頼が深まった気がする…
番長「…よし、改めて秋山さんを助けに行こう!」
唯梓律紬「おー!!!」
マヨナカドーム 道中
屋上で見た時から薄々感じてはいたが、ドームまでかなり遠い…
また、慣れない環境と先の戦闘のダメージのせいか、疲労感が凄い…
律「なぁ番長、凄い汗だぞ…」
唯「うん、少し休憩していこうか」
番長「すまない…」
紬「どこか、休めそうな場所、あるかしら…」
梓「先輩方、あそこに少し開けた所が見えます、そこに行きましょう」
律「おお!梓お手柄だぞ!」
休憩することにした…
マヨナカ公園 ベンチ
やはりここも普通の公園に見える…
空の色とシャドウさえ除けば、普通の世界と遜色無い
唯「疲れたー、昨日と今日だけで一生分歩いた気がするよー」
梓「そんな訳無いじゃないですか」
紬「ずっと休まなかったものね~」
律「あとはこれでムギのお茶とお菓子があればな…」
紬「あるわよ~」さっ
!?
今…どこから…?
ムギはてきぱきとティーセットとお菓子を並べている…
番長「…どこに持っていたんだ?」
紬は頬を少し染めて眉を吊り上げている…
紬「もう!女の子にそういうこと聞いちゃ駄目よ!」
何故か怒られた…
ご飯食べてくる
さすがにHPが足りん
数十分後…
マヨナカ公園 ベンチ
律「あ~美味かったぁ」
唯「私、幸せだよぉ///」
梓「ムギ先輩、ご馳走様でした」
紬「おそまつさまでした~」
さっきまでの疲労感が嘘のように無い
それに皆の表情も柔らかい…
ここでの休憩は正解だったようだ
しかし…
ここにはシャドウの気配がまるでない
…どういうことだろうか?
番長「少し、公園の中を見てくる」
律「ん、トイレか?」
番長「そっとしておけ」
その場を立ち去ることにした…
マヨナカ公園 反対側出入り口
これといって、何かは無い…
シャドウの気配が無いのは偶然だったのだろうか…
戻ることにした…
!?
目の前に青い扉が見える
…入ってみようか
ベルベットルーム
ここは…なぜだかとても懐かしい感覚がする
イゴール「ようこそ」
目の前には鼻の長い老人、その隣には綺麗な女性が座っている
マーガレット「今、お客様の運命は天秤のように揺れています」
マーガレット「どちらを選んでも悔いは残るでしょう…」
マーガレット「ですが、いずれ選択しなければならない時が来ます」
天秤…悔い…選択…
何故か心が重い…
マーガレット「ですが、お客様が何を選択しようとも絆の力は絶対です」
イゴール「…左様」
イゴール「残された時には限りがございます」
イゴール「しかし、紡がれた絆は消えない」
イゴール「この言葉をゆめゆめお忘れ無きように…」
目の前が暗くなる…
マヨナカ公園 反対側出口
…う!
…ちょう!
…番長!
律「番長!」
はっ!
辺りを見回す
どうやらマヨナカテレビの世界に戻ったようだ
律「何ぼけっとしてるんだ?そろそろ出発するぞ」
番長「すまない」
どうも頭がはっきりしない
夢だったのだろうか?
ぱちん!
痛っ!
顔を両手で挟むように叩かれた
律「ほーら、目覚めたか?行くぞー」とととっ
顔、赤くなってないだろうか…
マヨナカドーム 出入口ホール前
番長「ようやくだな…」
目の前には巨大なドームがそびえ立っている
唯「おっきいねー」
紬「私の4番目の別荘くらいあるわ~」
梓「これで4番目って…」
律「ここに…澪が…」
律は真剣な表情でドームを見つめている…
必ず助けなければ…
マヨナカドーム ライブステージ
かなりの広さの会場だ…
ここに澪はいるはずだが…ステージには誰も居ない
!?
会場の照明が落ちたのだろうか
急に何も見えなくなる
唯「わわっ、暗いよ~皆どこ?」
梓「く、暗いですっ!」
紬「なにも見えないわ…」おろおろ
律「おい、ステージ!」
!
ステージに照明が当たっている
あれは…澪だ! だが二人居る…
どっちが本物だろうか…
澪の影「あー!皆来てくれたんだぁ!」
澪の影「澪ちゃんすっごく嬉しい!」
澪「うう…」
あのハイテンションな澪が影のようだ…
律「澪!」
澪「律!?な、なんで此処に!?」
律「助けにきたに決まってるだろ!」
唯「澪ちゃーん!」
紬「澪ちゃん!」
梓「澪先輩!」
澪「み、皆まで…」
澪の影「ふふ♪ギャラリーも集まったことだしー始めちゃおっかなぁ」
澪「な、何をする気だ!」
澪の影「も~ち~ろ~ん~…コレだよっ!」
デッデンデン!
『ご開帳!全部見せます秋山澪の全て♪ポロリしか無いよ』
まるでバラエティ番組のようだが…
しかし…これは俺に対して…毒過ぎる…
梓「」フシュー
ブルータス、お前もか
澪「な、なななな///」
紬「まぁまぁまぁ」
律「み、澪の、全部?///」
唯「澪ちゃん、だ、大胆だねぇ」
皆、動揺を隠せないようだ…
澪の影「じゃあ…上からね?///」
澪の影「んっ…」
これは…もしや…ブラを外そうとしているのだろうか
…
男として見るべきなのか…人間として止めるべきなのか…
俺はどうすれば…
梓「」フシュシュー
ブルータス、またお前か
澪「や、やめろ!」
澪は自分の影の腕を掴んでいる
澪の影「…なんで止めるの?全部澪ちゃんの為なのに」
澪「なんで、ぬ、ぬ、脱ぐのが私の為なんだ!」
澪の影は怪しい笑みを浮かべている…
澪の影「澪ちゃんはとっても恥ずかしがり屋で恐がりの女の子」
澪の影「澪ちゃんは小さい頃からそんな感じでね?」
澪の影「ずっとりっちゃんにべったりなんだ」
澪の影「でも澪ちゃんはふと気づいたんだ」
澪の影「このままで良いのかなって」
澪の影「それから澪ちゃんは自分を変えようと凄い努力したよね」
澪の影「男言葉を使うようになったのもその頃から」
澪の影「なんでそんなことをするようになったと思う?」
澪の影「それはね…」
澪「や、やめろ、言うな!」
澪の影「りっちゃんを好きになってしまったから」
澪の影「でもりっちゃんが根暗で陰気な私を好きになるはずがない」
澪の影「それ以前に女の子なのに女の子が好きなんて気持ち悪がられるに決まってる」
澪の影「でも好かれたいから、強いとこを見せたくて努力するんだ、もしかしたらってね」
澪の影「全部無駄なのに」
澪「!」
澪の影「どうして私は男に生まれなかったんだろうって、何度泣いたっけ?」
澪「もう…やめ…」
澪の影「皆が誉めてくれる綺麗な黒髪」
澪の影「とても大きい胸」
澪の影「整ったラインの体のカタチ」
澪の影「全部、大嫌いだ。自分が女だというどーしようも無い現実を突きつけられるから」
澪の影「もう楽になろうよ?どんなに律を愛しても律は私を愛してくれないんだ」
澪の影「それは私が女だから」
澪の影「何度か夜の町を彷徨いたこともあったよね?」
澪の影「私は女なんだという現実を受け入れたくて」
澪の影「いつも土壇場で怖くなって逃げ出しちゃうけどw」
律「澪…」
澪「やめて…やめてよ…」
澪の影「やめないよ、だってこれがあなたの本性なんだから」
澪の影「陰気で根暗で律を忘れる為だったら簡単に男に抱かれたいとか思っちゃう女」
澪の影「そうよね、私?」
澪「違う…違う…!」
澪の影「じゃあ、この服も脱いじゃうね?男に抱かれるのにこんなのいらないもん」
澪「お前、お前なんか…!」
まずい!
律「澪!!!駄目だ!!!」
澪「お前なんかが、私であってたまるか!!!」
澪の影「律を忘れさえすれば楽になれるのに…残念」
澪の影にシャドウが集まっていく!
澪の影「あははははははははは!!!」
澪「う…」ふらぁ
律「澪!」がしっ
澪は律の腕の中へと倒れ込んだ
心なしか苦しそうな顔をしている…
澪の影はみるみる内に人の形を留めなくなっていく!
あの姿は…?
澪の影「我は影…真なる我…」
梓「醜い…あひるの子…」
律「…唯、ムギ、澪を頼む」
唯「りっちゃん…」
紬「任せて」
律「澪があたしのせいであんなに悩んでたなんて知らなかった…あたしの責任だ」
律「だから、責任取んなきゃな!」
澪の影「責任取ってくれるの?なら死んでよ律」
澪の影「律さえいなければ、私はこんなに悩むことも無いのに!」『ブフダイン』
律「よっと、それは出来ない相談だ!」『マハラクカオート』
梓「援護します!…ネコショウグン!」『マハタルカジャ』
番長「イザナギ!」『ラクンダ』
律「澪と本気の喧嘩は久々だな!」
律「タムリン!」『ジオダイン』
強烈な閃光が目の前を走る!
しかし…あまり効いてなさそうだ
番長「電撃は効果が薄そうだ、物理攻撃に切り替えろ!」
梓「はいです!」『黒点撃』
澪の影「あらぁ、わざわざ来てくれたの?」『ヒートライザ』『アグネヤストラ』
流星が降り注ぐ!
買い物行ってきます
しばらくかかるかも
徹夜で書いてるっぽいし寝オチかな
>>307
なぜバレた…ユーのソウルに震えたぜ
ゆっくりだけど再開します
番長「梓ぁ!」
直感で分かる
あの流星攻撃を受けてはならない
ましてや、戦闘には不慣れな梓ではまともに受けることさえ難しいだろう
もし、あの距離でまともに喰らってしまえば…!
間に合え!!
番長「デカラビア!」『テトラカーン』
番長「ぐあっ…!」
とっさの判断で梓と律に盾を張ることは出来たものの
さすがに自身には間に合わず、その苛烈な流星攻撃をまともに受けてしまう
梓「番長さん!」
律「番長!」
梓「しっかりしてください!」
なんとか防御姿勢はとれたものの、右足が動かない
律「…ひどい怪我だ、折れてるかもしれない」
確かに…不思議と痛みは無いが右足が変な方向へと曲がっている気がする
…痛みがないってまずいんじゃないか?
律「退がっててくれ、番長」
しかし…
梓「ム、ムギ先輩!番長さんの手当を!」
紬「番長君!」
唯「だ、大丈夫!?って大丈夫じゃないよね!?」
二人が駆け寄ってくる
とても心配そうな表情だ
番長「唯、落ち着け」
不安を広がらせてはいけないと感じ、唯を落ち着かせる
紬「唯ちゃん、添え木になりそうなものを探して来て」
紬はどこで覚えたのか、応急処置を的確にこなしている
律「梓、あたしらでやるぞサポート頼む」
梓「はいです!」
二人は澪の影へと向き直す
澪の影「なんだ、生きてるんだぁ…つまらない」
澪の影「さっさと居なくなってよ!」『アタック』
澪の影は翼を広げると律を目がけて振り下ろす
律「体動かすのはあたしの得意分野なの知ってるだろ?」『真・物理見切り』
律は翼をギリギリまで引きつけ、紙一重で避ける
律「行くぜ、澪!」『デスバウンド』
タムリンの構えた槍先から斬撃が放たれる
これなら距離を取りつつダメージを与えられそうだ!
だが、澪の影も黙ってやられる訳ではない
澪の影「お前はぁ!いつもぉ!」『ブフダイン』
巨大な氷の塊が律へと襲いかかる
律「タムリン!」『ガード』
ペルソナを呼び戻し、防御姿勢を取る
しかし、かなりの威力だ
致命傷ではないものの、そう何回も受けてはいられない
梓「律先輩!…ネコショウグン!」『メディラマ』
ダメージを受けた律の体が軽くなる
律「梓のペルソナ、回復も出来るのな」
梓「私の力は軽音部を守るための力ですから」
攻撃はあたし、回復は梓、これならなんとか対抗出来そうだ
紬「これで処置は完了よ」
紬は ふう と額の汗を拭った
番長「ありがとう」
唯「痛々しいね…」
唯は包帯でぐるぐる巻きの俺の右足を見つめている
番長「大丈夫、痛みは無いから…それより、秋山さんを」
澪は客席に横になっている
とても辛そうにうなされているが…
唯「…澪ちゃんがこんなに悩んでたなんて知らなかった」
唯「…いつも楽しそうで怒りんぼでりっちゃんと笑いあってたのに」
紬「澪ちゃんは繊細だから…女の子が好きなんて言えずにため込んじゃったのかな」
…
唯「私、全然駄目だね…友達なのに何も知らなくて」
紬「私だって…誰よりも理解はあるつもりなのに」
二人は今にも泣き出しそうだ…
番長「…友達だからこそ、言えないこともある」
番長「だからこそ、もし悩みを打ち明けてくれたなら…力になってやれば良い」
番長「軽音部の絆の強さは皆を見てれば分かる」
番長「誰かが悩んでいるなら五人で分け合えば良い」
番長「誰かに嬉しいことがあったなら、五人で五倍にして喜べば良い」
番長「だから今は泣いてちゃ駄目だ」
番長「秋山さんの悩みを五人で分け合うんだ」
紬「ありがとう…私、澪ちゃんの力になってあげたい」
唯「うん…!」
二人は笑顔を取り戻した
唯「でもね、五人じゃないよ!番長君も入れて六人なんだからね!」
唯…
皆の優しい想いが伝わってくる
澪の影「く、くそぉ…!」
律「はぁ…はぁ…」
澪の影「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ」
澪の影「どうせ、私の想いは届かない!なのに優しくされても傷つくだけなんだよ!」『コンセントレイト』
澪の影は精神を集中している…
梓「律先輩!何か大きいのが来ます!離れて下さい」
律「…逃げないよ」
律「澪の闇を一緒に背負うって決めたんだ!」
律「全部…全部受け止めてやる!」
澪の影の頭上に冷気が収束している…!
律が危ない!
!?
右足のせいで思うように動けない…!
やめろ…やめろぉぉぉ!!!
唯「りっちゃあん!!!」
紬「りっちゃん!!!」
梓「律先輩!!!」
澪の影「りぃぃぃぃつぅぅぅぅ!!!」『ニブルヘイム』
カッ…!!!
澪「り…つぅ…」
凍てついた冷気が肌を襲う
あまりの威力にステージは粉々に砕け
砕けた破片は全て凍り付き、その時を止めている…
り、律は…!?
澪の影「なんで…」
澪の影「もう、顔なんてみたくないのに…」
澪の影「忘れたいのに…」
澪の影「本気で殺そうとしたのに…」
澪の影「なんで…立ってるんだよぉ…」
澪の影「なんで…助けようとするんだよぉ…」
律「…言っただろ」
律「澪の闇は…」
律「あたしも一緒に背負うって…!」『不屈の闘志』
律「澪、おいで」
澪「律…」
律「自分と向き合わなきゃ、いつまでも進めないよ」
律は優しく語りかけている…
澪「私…は」
澪の影が人の姿へ戻ってゆく…
澪の影「…」
澪「私は…律が好きだった…」
澪「私に無いものを沢山持ってて、いつも格好良くて…」
澪「私は女なのに…律が好きという想いを伝えたら、全てが壊れる気がして…」
澪「だから、男の人を好きになろうとした…諦めたかった…」
澪「で、でもやっ、ぱ、り、律が忘、れられ、なくて」ぽろ…
澪の影「…」
澪「じぶ、ん、を必死に、だまそ、うとして…」
澪「あ、なた、を生み出し、た…」
澪「私、律が、好き…忘れるな、んて出来ない」
澪「あなたも…同じ気持ちの、はずだよ…」
澪「あなたは、私、私は、あなたなんだから…」
澪の影「私も…律が大好き…」
自分の弱さを認め、澪は新たな強さを得る…
我は汝…汝は我…
澪は神々の支配者『セト』を得た
澪「これ…私…?」
律「…醜いあひるの子は、どこまでも羽ばたける竜だったんだ」
律「澪が無理して変わる必要は無いよ…だって澪にはこんな大きな翼があるんだから」
澪「りづぅ…!」
律「澪は…強い子だよ」
二人は強く抱きしめあっている…
この絆が切れることは二度とあり得ないだろう…
唯「りっちゃん!澪ちゃん!」たたたっ
紬「まぁまぁまぁまぁまぁ」とととっ
梓「律先輩!澪先輩!」とてとて
澪「みんな…」
唯「すっごぐ探じだんだよぉ~!」ぽろぽろ
紬「良かった…本当に良かった…」
梓「とても…心配したんですから!」
番長「無事で良かった」
澪「みんな、助けてくれてありがとう…」
澪「あ、あと…」
澪は恥ずかしそうにこちらを見ている
澪「ば、番長さんだよな…番長さんも助けに来てくれて本当にありがとう…」
澪からほのかに感謝の好意を感じる…
!? 頭に声が響く…
我は汝…汝は我…
汝…『月』の絆を手にいれん…
番長は『月』のアルカナを手に入れた
律「番長が居なきゃ澪を助けに来れなかったんだぞ」
梓「テレビの中に居るなんて思うわけないですからね…」
そういえば…
澪はどうやってこの世界に入ったのだろう…
番長「秋山さんは、どうやってココの世界に来たんだ?」
紬「そういえば…どうやって来たの?やっぱりテレビから?」
澪「テレビって…みんなはテレビから来たのか?」
唯「うん、りっちゃん家に皆でお泊まりしたときに、マヨナカテレビが映ってね」
唯「そのマヨナカテレビに澪ちゃんが映ってて驚いたの!」
梓「そしたら、番長さんがテレビの中に腕を突っ込んで…」
紬「りっちゃんがテレビの中に入れるかもって思ったの~」
りっちゃんのテレビってちっちゃそうだけど人入れるのかな
そもそもあの狭くて天井低い部屋で5人も寝られるのか?
あの狭い部屋で
律「澪がテレビに映って、そしてテレビに入れるって分かったとき」
律「テレビの中から澪が助けを求めてる気がしたんだ」
律「あとは、みんなでテレビに入ってこの通りだよ」
澪「そうだったのか…」
>>358
みんな雑魚寝状態です、番長が寝れる訳ないです色んな意味で
テレビは…なんとか入れたってことで
澪「でもゴメンな、どうやって来たのかは覚えてないんだ」
澪「あの時…部室から出てったあと、あちこちふらついてたんだ」
澪「そのうち暗くなって、家に帰ろうとしたけど、パパとママが夜は出かけるって言ってたの思い出して」
澪「ひ、一人でテレビのある部屋に居るのが怖くて…」
律「それで家に行っても誰も居なかったのか」
澪「外に一人で居るのは怖かったけど…家の方がもっと怖かったから…」
澪「しばらくしたら雨が降って…コンビニで雨宿りしてたんだ」
澪「そこで…誰かに声を掛けられた気がする」
番長「どんな奴だった?」
澪「ゴメン…そこから記憶が無いんだ…気がついたらもうココに居たんだ」
澪は申し訳なさそうな顔をしている
唯「謝ることないよ!澪ちゃんが無事だっただけで充分だよ!」
律「そうだぞ、無事だっただけで充分!」
紬「そうよ~」
梓「そうです!」
澪が無事で良かった…
澪がどうやっとこの世界に入ったのは分からないが、今は無事を喜ぼう…
皆で帰ることに…
どうやって帰るんだ…?
番長「なぁ…気づいたんだが、どうやって帰れば良いんだ?」
一同「「「「「え?」」」」」
…
澪「み、皆はテレビから来たんだろ?じゃあ、またテレビに戻れば良いんじゃないのか?」
律「私たちが来た所に…テレビあったか…?」
梓「無かった…かと…」
唯「私たち、空の上から落っこちて来たもんね…あずにゃんに椅子にされたの覚えてるもん」
梓「だから、わざとじゃ無いですー!」
紬「もしかして…入ったが最後…」
それは考えたくない…
そういえば、来る途中に公園があったはずだ
そこで休憩しつつ今後をどうするか考えてみようか…
番長「提案がある」
じらじらいやいや…
公園に行くことにした
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