ジャン母「アタックNo.1」(91)

※捏造あり
※なぜか昭和のマンガ文化の一部が壁内に伝わってる
※ホモはないけど腐向けかもしれない
※腐ったおばさんたちが愚痴ります


※ ※ 食堂 ※ ※

ザワザワ ガヤガヤ

ジャン「ババァ、なんでここにいんだよ…」

ジャン母「仕事だよ」

ジャン「はぁ?」

ジャン母「食堂のおばちゃんの求人が出てたんだよ」

ジャン「…」

ジャン母「…」

ジャン「…今すぐ帰れ」

ジャン母「やだね。この不景気に珍しく労働条件がいいんだ」

ジャン「…通勤に何時間かける気だ」

ジャン母「住み込みだよ」

ジャン「…冗談だろ?」

ジャン母「冗談なもんか」


ジャン「…オヤジの面倒とかどうすんだよ」

ジャン母「子どもじゃないんだから、放っといても死にやしないよ」

ジャン「…」

ジャン母「あっ、けど週末は帰るから。まとめて洗濯と掃除しに」

ジャン「一生のお願いだ。頼む!帰ってくれ!!」

ジャン母「…見られちゃまずいことでもあるのかい?」

ジャン「…てめぇを見られたくねぇんだよっ」

ジャン母「ひどい子だねぇ。人様に見せられないような恥ずかしい母ちゃんだって言うのかい」

ジャン「ああ、そうだ」

ジャン母「…そうかい」

ジャン「…」

ジャン母「…」

ジャン(…やべぇ、今のは言い過ぎたか…)

ジャン母「…」

ジャン「…あの、な…」


ジャン母「スゥー……みなさーん!!はじめましてー!!ジャンの母でーす!!」ブンブン


ザワザワ ザワザワ
ナンダナンダ?  ジャンノカアチャン?


ジャン「んなっ!?ちょっ…てめぇ黙れ!!」アタフタ

ジャン母「いつも馬鹿な息子が世話になってて悪いわねー!!今日からここで働くからよろしくねー!!」ブンブン


ザワザワ ザワザワ
マジカヨ  ププッ…  ゴウカイナ カァチャンダナ…


ジャン母「ふぅー…。すっきり」

ジャン「…」

ジャン母「なんだい?その目は。そんなに嫌なら他人のふりしといてやるから」

ジャン「もう遅ぇよっ!!」


※ ※ 男子寮 ※ ※

コニー「ぎゃはははは、母ちゃんが来てやんの」ゲラゲラ

ジャン「うっせ」

マルコ「でもジャンのお母さんが来てくれたおかげで、平日は食事当番しなくてすむね」

ライナー「ああ、朝食当番はきつかったからな。馬鹿みてぇに早起きしねぇと間に合わなかった」

ベルトルト「訓練兵は200人以上いるもんね」

アルミン「ジャンのお母さん一人で大丈夫かな…。僕らは毎回10人ぐらいで当番してたけど」

ジャン「大丈夫なんじゃねぇの?うちのババァ手際だけはいいから」

エレン「兵士10人分のババァか。…強そうだな」

ジャン「ああ、ありゃ手強いぜ。………あと人の母親をババァっていうな」

マルコ「ははっ、人に呼ばれたくないんだったら、ジャンも素直にお母さんって言えばいいのに」

ジャン「はっ、うるせぇよ。ババァはババァだ。…そういや、明日もう一人食堂のおばちゃんが来るって言ってたな」

ライナー「また訓練兵の母親か?」

ジャン「さぁな。詳しく聞いてねぇから」


アルミン「僕とエレンは親がいないから…。ライナーとベルトルトもいないし…」

コニー「げっ!やっべぇ、どうしよう。俺の母ちゃん来たら…」アタフタ

ベルトルト「でもコニーには弟と妹がいるんでしょ?放っといて来るとは思えないよ」

コニー「あっ、そうだよな。さすがに弟たちを置いては来ないか」ホッ

エレン「一家全員で移住してきたりしてな」

コニー「…やめてくれ。本当にやりそうだから」

アルミン「マルコのお母さんは?」

マルコ「僕の母さんは来ないよ。専業主婦生活を謳歌してるから。働く気なんてないと思う」

ジャン「わかんねぇぞ。マルコの母親ってどんなかんじだ?」

マルコ「どんなって…、普通だよ」


ライナー「やはりマルコに似て真面目な性格なのか?」

アルミン「うん。マルコって教育熱心なお母さんがいるイメージだね」

マルコ「全然そんなことないよ。……ごく普通だよ。…多分」

コニー「やっぱりそばかすあるのか?」

マルコ「無いよ。はぁ…、もういいだろう?僕の母さんのことは。明日来るのが訓練兵の母親とは限らないんだしさ」

ベルトルト「そうだね。僕らとは関係の無い人が来る可能性のほうが高いよね」

ジャン「チッ、俺だけかよ。ババァ晒して恥をかくのは。なんか納得いかねぇな」

ライナー「…馬鹿野郎。母親がいるだけお前はマシだ」

ジャン「…あ、…すまん。…お前らの気持ちを考えずに…悪かったな…」

エレン「気にすんな。あんな豪快な母さん、俺は欲しいと思わねぇから」ポン

ジャン「…くそっ、腹立つけど、怒るのもなんか癪に障るしよっ。あー、もうっ」ガシガシ


※ ※ 翌日 食堂 ※ ※

ザワザワ ガヤガヤ

マルコ「か、母さん、何でここにいるの…?」

マルコ母「やん、マー君、会いたかったー」ギュッ

マルコ「あの…抱きつかないで。…わざわざこんな所まで来てさ、僕に急用でもあるの?」

マルコ母「うふふ。お仕事にきたの」

マルコ「仕事?」

マルコ母「食堂の調理員の募集が出ててね。面接を受けたら採用されちゃった」

マルコ「…働くの?」

マルコ母「うん」

マルコ「…ここで?」

マルコ母「そう」


マルコ「母さんには無理だよ。今まで働いたことないのに…」

マルコ母「あら、料理ぐらいできるわよ」

マルコ「でも母さんが働かなくても生活には不自由してないじゃないか」

マルコ母「もちろん、お金のために仕事するわけじゃないわ」

マルコ「…暇なの?」

マルコ母「もうっ、毎日マー君の顔が見たいからに決まってるじゃない」

マルコ「…母さん、ここではその呼び方やめてよ」

マルコ母「マー君はマー君でしょ?」

マルコ「…みんなに笑われるから、今すぐやめて」

マルコ母「訓練兵になった途端、急に冷たくなるのね…。お家にいた頃はママって呼んでくれてたのに…」グスッ

マルコ(…面倒くさい)


マルコ母「とにかく住み込みで働くことがもう決まっちゃったから」

マルコ「えっ!?住み込み?」

マルコ母「だって通えないじゃない」

マルコ「そんなの父さんが許すわけないよ」

マルコ母「パパはOKしてくれたわよ」

マルコ「本当に?」

マルコ母「ええ。あなただけの週末ヒロインになってあげるって言ったら許可してくれたわ」

マルコ「…」

マルコ母「…」

マルコ「…週末は帰るんだね」

マルコ母「そう。パパが寂しがるから」


マルコ「好きにすればいいけど…、人様に迷惑をかけるようだったらすぐに辞めてね」

マルコ母「だいじょーぶ。迷惑なんてかけないから」

マルコ「あと、僕は憲兵になるために真剣に訓練してるんだから、必要以上に話しかけないでね」

マルコ母「そんなっ…」

マルコ「頼むよ、母さん。僕が開拓地送りになってもいいの?」

マルコ母「…しょうがないわね。分かったわ。マー君の姿が見れるだけでもママは幸せよ」


※ ※ 男子寮 ※ ※

コニー「マー君って何だよ」ゲラゲラ

マルコ「…放っといてくれよ」

ライナー「お前……マザコンなのか?」

マルコ「違うよ。母親が異常に過保護なだけ。やっと離れられたと思ったのに。はぁ…」

アルミン「けどさ、きれいなお母さんだね」

エレン「ああ、美人だった。まっ、俺の母さんほどじゃねぇけどな」

マルコ「はは、ありがとう」(すっぴん見たらひっくり返ると思うけど…)

ジャン「チッ…、同じババァでも、あんなに違うとはな」

ライナー「そうか?俺はジャンの母親でも十分いけるぞ」

ジャン「…いくな」


ベルトルト「おばさん達って女子寮に泊ってるの?」

マルコ「いいや、教官宿舎の一室を借りてるらしい」

ライナー「…危険だな」

ジャン「なにが?」

ライナー「なにがって…、飢えたおっさん達の中に熟れた年増女を入れてみろ。どうなると思う?」

マルコ「どうって…」

ジャン「はっ、どうもなんねぇよ」

ライナー「今夜は楽しくパーリナイッ♪今宵はあなたとワンダフォーナーイッ♪…だぜ、きっと」

マルコ「ないね。…おやすみ。僕はもう寝るよ」スクッ 

ジャン「馬鹿馬鹿しい。俺も寝る」スクッ


マルコ(…うちの母さん頭のねじ緩いからな…。心配だよ…)スタスタ

ジャン(…けっこう乳でぇしな。大丈夫か…?)スタスタ


※ ※ 翌日 食堂 調理場 ※ ※

ジャン母「ふぁー…、眠いったらありゃしないね。ぼんやりしてないで奥さんも手を動かして下さいな」トントン…

マルコ母「…朝は苦手なの。低血圧だから」ボーッ

ジャン母「のわりに、化粧ばっちりして」トントン…

マルコ母「…これが素顔よ」ボーッ

ジャン母「はいはい。そういうことにしておきましょうかね。ほら、さっさと芋を蒸かしちゃって」トントン

マルコ母「…私ね、昨日一日この訓練所の様子見てがっかりしちゃった」カパッ ゴロゴロ…

ジャン母「訓練所なんてこんなもんでしょ。何を期待してたんだい?」トントン…

マルコ母「…てっきり男女別だと思い込んでたの」ゴロゴロ…

ジャン母「そういや普通に女の子もいたねぇ」カパッ グツグツ

マルコ母「そう。女の子はいらない。10代前半の少年ばかりを集めた寄宿舎生活。それが私の理想だったの」ゴロゴロ…

ジャン母「…奥さん、もしかしてマンガ好き?」ガサッ

マルコ母「あっ、分かるかしら?」カパッ


ジャン母「ここにギムナジウムを求めてきたんでしょ?」

マルコ母「その通りよ。思春期の多感な少年達の危うい友情が見れるって楽しみにしてきたのに…」

ジャン母「ははっ、こんな場所に線の細い美少年なんていやしないさ」

マルコ母「それが昨日見かけたのよっ。金髪の美少年を。まるでジルベールみたいだった」ウットリ

ジャン母「ぷっ、『風と木の詩』かい。じゃあセルジュを探さないとねぇ」クスクス

マルコ母「こげ茶色の髪したきれいな男の子、どこかにいないかしら…」

ジャン母「私としてはギムナジウムもいいんだけどさ、どちらかといえば旧制高校の方が好きだねぇ」

マルコ母「奥さんは…『摩利と新吾』派?」

ジャン母「正解。ほら、うちの馬鹿息子、ちょっとだけ摩利っぽいでしょ?」

マルコ母「ふふふっ、……ど・こ・が?」

ジャン母「そんな冷めた目でみなさんな。そういえばお宅の息子さんって新吾に似てるねぇ」

マルコ母「黒髪ってだけじゃない。…けど奥さん、自分の息子がホモでもいいの?」


ジャン母「プラトニックなら全然構わないさ。変な女に捕まるより、ホモっといてくれたほうがよっぽどか安心だね」

マルコ母「そうね…。私もマー君に彼女ができるより、可愛い男の子を連れてきてくれたほうがいいわ」

ジャン母「…」

マルコ母「…」

ジャン母「…けど自分の息子がモテないっていうのも嫌だよね」

マルコ母「…ええ。そこそこ女の子に人気がありつつ、でも彼女は作らないっていうのがベストね」

ジャン母「30歳前ぐらいにひょっこり彼女連れてきて‘俺、結婚するわ’ってさらっと言ってくれるのが理想だね」

マルコ母「そう。結婚相手はしょうがないとして、それ以外の女は見たくないわ」

ジャン母「どうなんだろうね、息子たち。少しはモテてんのかねぇ」

マルコ母「誰か女の子捕まえて聞いてみます?」

ジャン母「そうだねぇ…。調理補助として女の子を交代で1人寄こすようにキースさんに頼んでみよっか」

マルコ母「いいわね。それだと色んな子から話が聞けるわね」



アルミン「おはようございます。朝早くから食事の用意をして頂き、ありがとうございます」テクテク


マルコ母「きたっ、ほら、あの子よ。さっき話してたジルベール」

ジャン母「確かに可愛い子だね。…けど随分と品行方正そうなジルベールだね」

アルミン「ジルベール?」

マルコ母「ほほほっ、何でもないのよ。えっと…名前は?」

アルミン「アルミン・アルレルトです。はじめまして」ニコッ

マルコ母(やんっ、天使の微笑み)キュン

ジャン母「アルミン君は早起きなんだねぇ。えらいえらい」

アルミン「お二人だけだと大変かなって思いまして。僕でよければお手伝いしますよ」

マルコ母「悪いわねぇ。じゃ、お言葉に甘えてお願いしちゃおうかしら」ルンルン

ジャン母「でも、もう用意はほとんど終わっちまったんだよねぇ」


アルミン「確かにいい匂いがしてますね。僕、お腹が空いてきちゃった。今日の朝ごはんは何ですか?」

ジャン母「蒸したお芋と、具だくさん野菜スープ」

マルコ母「ごめんね。もっと手の込んだもの作りたいんだけど、これだけの大人数だとどうしても大鍋料理になっちゃう」

アルミン「いえいえ、十分です。じゃ、配膳手伝いますね」カタッ

マルコ母(…いい子ねぇ。マー君と同じくらいいい子)ホンワカ

ジャン母(…こんな子ができるって決まってんだったら、もう一人ぐらい産んでもいいんだけどね)


エレン「おい、アルミン探したじゃねぇか。先に行くなら声かけろよ」スタスタ


アルミン「ごめん。忘れてた」

マルコ母「いやん、セルジュ発見!奥さん見て、ジルベールとセルジュが揃ったわ」

ジャン母「…随分と目つきの悪いセルジュだね…」


エレン「は?せるじゅ?」

マルコ母「うふふっ、何でもないの。名前は何ていうのかしら?」

エレン「エレン・イェーガー。よろしくな、おばさん」ニッ

マルコ母「こちらこそ、よろしくね」(…おばさん。…でも可愛いから許しちゃう)

ジャン母「エレン君、手伝ってくれたら特別に大盛りにしてあげるよ。もちろんアルミン君は大盛り決定」

エレン「マジ?やるやる。俺手伝うぜ」

アルミン「すみません、気を遣って頂いて」


※ ※ 食堂 ※ ※

ワイワイ ガヤガヤ

エレン「なんかさぁ、マルコの母さんってちょっと変わってるよな」ムシャムシャ

マルコ「…うん。僕から見ても少し変だと思う。君たちに迷惑をかけたなら、代わりに謝るよ」カタッ

アルミン「迷惑ってほどじゃないんだけどさ。僕とエレンがどんな関係か根掘り葉掘り聞かれたよ」モグモグ

エレン「たまにジルベールだのセルジュだの訳の分からねぇ言葉を呟いてたし」ムシャ

ジャン「何だそりゃ?」ズズッ

ミカサ「…どこかで聞いたことがあるような…」ウーン

マルコ「多分マンガの話だと思う。ごめんね、僕の母さん昔の少女マンガが大好きでさ。時々、おかしなことを口走るんだ」

ジャン「お前んとこもか。うちも家の本棚、少女マンガだらけでさ。邪魔だっつーの」モグモグ

マルコ「そうそう。置き場が無くなってさ、父さんが大切にしてる横光三国志を捨てようとしてよく大喧嘩してるよ」

アルミン「あっ、僕の家にもあったよ横光三国志。面白いよね、あれ」

ジャン「俺んちもある」


エレン「ウチにもあったぜ。俺の母さんも何が面白いのか分からないって売り飛ばそうとして、父さんが必死に止めてた」

ミカサ「…すごい普及率ね」モグモグ

アルミン「うん。横光三国志は人口に膾炙してる」

ジャン「ババァ曰く、みんな同じ顔してて誰が誰だか分からねぇんだと」

アルミン「はは、確かにヒゲと服装が頼りだよね」

マルコ「僕の母さんは‘こんなの趙雲じゃない’ってキレてた。趙雲にどんなイメージ持ってるんだか…」

エレン「俺の中の趙雲はまさにあれだけどな。つぶらな瞳のガタイの良いおっさん」

ジャン「あー、また読みたくなってきたぜ。マルコ、家から持って来いよ」

マルコ「だまらっしゃい。何巻あると思ってんだよ。重いから嫌だ」

ジャン「むむむ」


※ ※ 数日後 調理場 ※ ※

ジャン母「何人か女の子に手伝いに来てもらったけどさ…」トントン…

マルコ母「ジャン君もマー君も女の子に人気無いのねぇ…。悲しくなっちゃった…」ジャブジャブ

ジャン母「まぁ、個性的な子が多かったし?一般の感覚とは違うのかもしれないよ」トントン…

マルコ母「そうよね。アニちゃんはほとんどしゃべってくれなかったし。ミカサちゃんも物静かだったし」ジャブジャブ

ジャン母「クリスタちゃんは可愛かったねぇ。料理は苦手そうだったけど」トントン…

マルコ母「お家でちゃんとお手伝いしてたかどうか、見てたらすぐ分かるわよね」ジャー

ジャン母「その点、ユミルって子は手際が良かったねぇ。材料を無駄にしないしさ」トントン…

マルコ母「そうね。けど言葉遣いが悪くて私はちょっと苦手だわ。奥さんとは意気投合してたみたいだけど」キュッ

ジャン母「遠慮なく言いたいこと言ってくるからね。嫁に来るなら、ああいう子がいいねぇ」トントン…

マルコ母「私はサシャちゃんがいいな。明るいし、話し方も丁寧だし」パカッ 

ジャン母「つまみ食いが半端なかったけどね」クスクス


ミーナ「遅くなってすみませーん。お手伝いに来ました」テッテッテ…


マルコ母「あら、ミーナちゃん。また来てくれたの?」

ミーナ「はいっ。他の子が当番だったんですけど、おばさん達とお話したくて代わってもらいました」

ジャン母「嬉しいじゃないか。ミーナちゃんもジャンの嫁候補にしといてあげるよ」

ミーナ「え、遠慮します。…それよりおばさん達が見たいって言ってた本、持ってきました」ジャーン

マルコ母「うふふ、ありがとう。わざわざ悪いわね」

ジャン母「どれどれ、これが最近の若い子たちが読んでるやおい本かい」パラッパラッ 

ミーナ「やだなぁ、おばさん。やおいなんて今時言わないですよ。ボーイズラブですって」クスクス

ジャン母「横文字にすりゃ良いってもんじゃないよ。やおいはやおいだよ」パラッ

マルコ母「私が若い頃は、こんな本はひた隠しにしてたものだけど…。今の子はオープンなのねぇ」パラッ

ジャン母「恥じらいがないんだろうね。それとも、やおいは市民権を得たのかい?」パラッ

ミーナ「そうかも。BL好きがバレても、友達から白い眼で見られることはあんまり無いですね」


マルコ母「…話の内容も過激なのね…。濡れ場シーンばかりじゃない…」パラッ

ジャン母「まぁ、簡単に脱いじまって。世の中みんなホモかっていうの」パラッ

マルコ母「ミーナちゃん。ありがとう」スッ

ミーナ「えっ?もういいんですか?お貸ししますよ?」

マルコ母「うーん、ちょっと私には合わないみたい。せっかく持ってきてもらったのに、ごめんね」

ジャン母「私もダメだわ。おばちゃん達は男同士の絡みがみたいわけじゃないんだよ」

ミーナ「でもBLってそういうものだし…」

ジャン母「おばちゃん達が好きだったやおいは、もっと精神的なもんなんだよ」

マルコ母「そうよ。同性愛という壁をいかに乗り越えて、恋愛を成就させるか。その過程がドキドキするの」

ジャン母「男に告白されてなんの躊躇いもなく、即脱ぎHしちゃうような話じゃ胸がときめかないねぇ」


ミーナ「えー、じゃあおばさん達が若い頃はどんなジャンルが流行ってたんですか?」

マルコ母「…キャプテン翼」

ミーナ「…はい?」

ジャン母「懐かしいねぇ。若林×若島津で滾ったもんだよ」

マルコ母「泣けてくるほど接点が無い組み合わせね…」

ジャン母「いいんだよ。二次創作なんてファンタジーなんだから」

マルコ母「そうよね。最近は接点、接点うるさい子が多いのよ」

ジャン母「人様から金取ってるわけじゃないし、妄想ぐらい好きにさせなってんだ」

マルコ母「それよりミーナちゃんは好きな男の子とかいないの?」

ミーナ「えー、そんなのいませんよー。リアルな恋愛には興味ないですから」

ジャン母「まっ、そうなのかい?若いのにもったいない」

マルコ母「でも、ここで話した女の子たちは全員、恋愛には関心が無かったわ。今の子ってそうなのかしら?」


ミーナ「んー、みんな忙しいですから。自分のことで精一杯で、男の子を気にする余裕なんてないですよ」

ジャン母「まずいわね…。これじゃあモテてる息子の姿が見れない」

マルコ母「無理やりにでも、お互いに意識し合う状況を作ればいいのかしら」

ジャン母「みんなで仲良くスポーツするとか?女の子にかっこいい所、見せれるでしょ」

マルコ母「いいわね、それ。そうなると団体競技ね…。今の若者ってどんなスポーツが好きなの?」

ミーナ「運動とかあんまり興味ないかなぁ。疲れるし…」

ジャン母「あれまぁ、夏にはハイレグ着て川で泳いだりしないのかい?」

ミーナ「ハ、ハイレグ?」

マルコ母「冬になったら、深夜馬車でみんなでわいわいスキーに行ったりしないの?」

ミーナ「好きこのんで冬山に出かけませんよ。お家の中が一番です」

ジャン母「なんだろうね、このやる気のなさは。ゲレンデが溶けるような恋がしたいと思わないのかい」

ミーナ「だから、恋とか面倒なんです。自分の時間を大切にしたいっていうか、邪魔されたくないっていうか…」

マルコ母「はぁ…、ダメね。そんなんじゃ全然ダメ。もっと青春しなさい」


ジャン母「本当に今の子は冷めてんだね。…よし、バレーボールするよ」

ミーナ「バレーボール…ですか?」

ジャン母「そう。何を隠そうおばさんは『トロストクィーンズ』のエースだよ。ママさんバレー歴10年以上さ」

マルコ母「あら、奇遇ね。私も『ジエナエンジェルズ』でセッターやってるのよ」

ミーナ「けどここにはネットもボールも無いですよ」

ジャン母「大丈夫。ウチのチームの古いやつもらってくるから」

マルコ母「うふふ。私たちは監督ね。バレーボールってやってみると意外と燃えるんだから」

ジャン母「そうそう。少しは熱くなりなさいな」

マルコ母「演習場の一角にコートとらせてもらえるかしら?キースさんに相談しないと」

ジャン母「それに選手も集めないとね。…食事で釣る?」

マルコ母「そうね。バレーやったら特別にデザートつけるとか」

ミーナ「あっ、それなら私もバレーやります」

マルコ母「本当?嬉しいわ。これなら人数は集まりそうね。ふふっ、わくわくしてきたわ」

ジャン母「目指せ!アタックNo.1」

すげぇおもろい
期待

あとジャンてトロスト区出身だからババア住み込みじゃなくても通えるんじゃないか?w


※ ※ 数日後 演習場 バレーコート ※ ※

ザワザワ ガヤガヤ

コニー「やっぱりサシャもバレーやんのか」

サシャ「当然です。晩御飯に特別にデザートがつくんですよ?そんなチャンス見逃せません」

コニー「だよな。適当に遊んでればいいんだしな」

マルコ「…甘いよ、コニー。本気のママさんバレーは半端ないから…」

ジャン「俺も昔ババァに無理やり練習に参加させられたことがあるんだが、あまりのキツさにゲロ吐いた」

コニー「マジかよ?そんなにハードなのか?」

ジャン「ああ…。妖怪みてぇなババァが集まっててな。地獄の入口かと思ったぜ」

サシャ「それでも練習に参加するんですね。ジャンもやっぱりデザート目当てですか?」

ジャン「いいや、俺はデザートなんかどうでもいい。ババァの暴走を止めに来ただけだ」

マルコ「僕もだよ。おかしな事を言い出したら止めないと…」



ミーナ「わっ、めずらしい。アニもバレーやるのね」

アニ「…教官命令」

ミーナ「えっ?なにそれ」

ベルトルト「おばさん達がキース教官に、運動神経がいい訓練兵を参加させるよう頼んだみたいなんだ」

ライナー「おかげで成績上位陣は強制参加だ。ったく迷惑な話だぜ」

エレン「そういうなよ。バレーなんてやったこと無ぇけど、結構楽しそうじゃねぇ?」

アルミン「団体競技は仲間の結束力を高めるのにもってこいだしね」

ライナー「アルミンは自主的に参加してるのか?」

アルミン「うん。エレンもミカサも参加するし。それに僕は体を鍛えなきゃいけないしね」


ミカサ「クリスタも体力作り?」

クリスタ「うん。それにおばさん達が一生懸命誘うから…」

ユミル「クリスタは頼まれると断れないからね。あっ、ちなみに私はただの見学」

ミカサ「他にもデザートに釣られた訓練兵が数人…」

エレン「なぁ、バレーって何人でやるんだ?」

アルミン「確か6人だったと思うよ」

ミカサ「…これだけ人数がいれば紅白戦もできそうね」


ジャン母「はい!みんな集合!!」パンッパンッ


ザッザッザッ…


ジャン母「みんな集まってくれてありがとうね。私が訓練所バレーチームの監督をさせてもらうジャンの母親だ」

マルコ母「私はコーチ。よろしくね」

ジャン母「最初に言っとくけど、おばちゃんたちはダラダラ練習するのが嫌いなんだ」

マルコ母「本気でやらないと楽しくないからね」

ジャン母「そこでみんなのモチベーションを上げるために、目標を決めたよ」

ジャン「は?目標って?」

ジャン母「3ヵ月後に開催されるトロスト区民バレー大会に出場する。そこで優勝するのが目標だよ」


ザワザワ ザワザワ


ジャン「ババァ、無茶言うな」

マルコ「初心者ばかりなのに…。急に試合とか絶対に無理だよ」

マルコ母「みんな若いんだし。3ヵ月もあれば大丈夫よ」

ジャン母「それに優勝すれば副賞として、塩漬け肉100Kgがもらえるんだ」

マルコ母「どうかな?お腹いっぱいお肉を食べたいと思わない?」

サシャ「食べたいですっ!」ハーイ

コニー「俺も食いてぇ!」

エレン「大会か…。おもしろそうだな」

ミカサ「…エレンと一緒なら出てもいい」

アルミン「目的意識があったほうが上達するしね」

アニ「…くだらない」

ライナー「けど、教官命令には逆らえねぇ」

ベルトルト「仕方ないね…」


ジャン母「えっと…ヒィ、フゥ、ミィ……、18人いるね。これなら、ぎりぎり2チームに分けて試合形式で練習できるよ」

ユミル「おばさん、ストップ。今、私も含めて数えただろ?」

ジャン母「当然だよ。ここにいるんだから」

ユミル「私はただの見学人。悪いけどバレーなんてする気ないから」

マルコ母「困ったわ。ユミルちゃんが抜けたら2チーム作れなくなっちゃう」

アルミン「あの、バレーって6人でやるんじゃないんですか?」

ジャン母「ママさんバレーは9人制だよ。出場する大会も9人制ルール」

マルコ母「だから、ユミルちゃんもやりましょうよ。ねっ、お願い」

ユミル「そんなこと言われてもね…」

クリスタ「ユミル、人助けだと思ってやろうよ。…私もユミルが一緒のほうが心強いし、ね」ニコ

ユミル「はぁ…、しょうがないね。クリスタがそう言うんなら、ちょっとだけ付き合ってやるよ」

ジャン母「はい!決定。じゃ早速練習はじめるよ」パンパンッ


【step.1 オーバーハンドパス】


ワァーワァー ガヤガヤ…
ポンッ… ポンッ… イッテェ ツキユビシター 

ジャン母「基本のフォームを教えてみたものの…」

マルコ母「みんな自己流ね。まぁ、最初はこんなもんでしょ」

ジャン母「マルコ君はけっこう上手いねぇ」

マルコ母「小さい頃からパス練習に付き合わせてたから。ジャン君もなかなか上手じゃない」

ジャン母「うちもおんなじ。子どもの頃は喜んで相手してくれてたんだけどねぇ。…今じゃ、話し掛けただけでキレる」

マルコ母「ふふっ、思春期ね。可愛いじゃない」

ジャン母「おやおや、ミカサちゃんって本当に初心者なのかい?」

マルコ母「あらー、上手いもんねぇ。柔らかい球がちゃんと上がってる。手首と指のスナップの使い方が分かってるわね」

ジャン母「生まれ持ったセンスだろうねぇ」

マルコ母「成績もトップらしいし。何をやらせてもできちゃう子なのよ、きっと」


ジャン母「ぷっ…、コニー君ってば手の間をボールがすり抜けて顔面で受けてるし」クスクス

マルコ母「うふふ、まるで石崎君みたいね。坊主だし」クスクス

ジャン母「石崎君ねぇ。一時期、森崎×石崎にも傾いてたねぇ」

マルコ母「あら、奥さんも石崎受なのね。でも私はロベルト本郷×石崎押しだったわ」

ジャン母「まぁ、コニー君は石崎君より男前だけどさ」

マルコ母「そうよね。結構かわいい顔してるもの」

ジャン母「けどさ『キャプテン』のモブに混じってても違和感ない感じだね」

マルコ母「あはは、ちばあきおね。マー君が『キャプテン』大好きなんだけど、私ってばみんな同じ顔に見えちゃうの」

ジャン母「あら、奥さんも?私もなのよ。35過ぎた辺りから極端に顔面認識能力が下がっちまってね」

マルコ母「そうそう。パパが若い女の子がみんな同じに見えるって言ってたのが、すごく分かるようになっちゃった」


ジャン母「へぇー、旦那のことをパパって呼ぶのかい。仲が良いんだねぇ」

マルコ母「ええ。ここに来るまでは、いまだに中3日で登板してたわ」ウフフ

ジャン母「あれまぁ、きつきつのローテーションじゃないか。現役バリバリなんだね」

マルコ母「奥さんのところは?」

ジャン母「…今思えば、3年前のあの日が引退試合だったんだろうね」フゥ…

マルコ母「やん、まだまだ若いんだからがんばらなきゃダメ。きっと今は二軍落ちしてるだけよ」


キャッキャッ… アハハ…
モウ オクサンッテバ… ウフフ…


マルコ(…母さん、大声でそんな生々しい話やめてよ。みんな微妙な表情になってるじゃないか)ウンザリ

ジャン(…聞きたくネェ聞きたくネェ聞きたくネェ聞きたくネェ…)ブツブツ…


ジャン母「けど、せっかく人より上手にできるスポーツをやらせてやってんのにさ…。バカ息子どもときたら…」

マルコ母「ええ…。二人ペアになれって言って、なんで男同士で組んじゃうの…」

ジャン母「他の子たちもそうだよ。これだけ男女が集まって異性ペアが一組だけってどういうことなのさ」

マルコ母「ハンナちゃんとフランツ君ね。あそこは付き合ってるらしいから、特別ね」

ジャン母「後は…、ジャン×コニー、マルコ×ダズ、ライナー×ベルトルト、エレン×アルミン、トーマス×サムエル…」

マルコ母「ミカサ×サシャ、アニ×ミーナ、ユミル×クリスタ…」

ジャン母「…×ってしないほうが良かったね…」

マルコ母「ええ…、マルコ×ダズには絶望したわ…」

ジャン母「…みんな奥手なのかねぇ。こんなんじゃ見ててもちっとも楽しくないよ」

マルコ母「まぁ、まだ始まったばかりだし。とりあえずアルミン君とエレン君が目の保養ね」ウフフ


【step.2 アンダーハンドパス】


ボンッ ボンッ…
ウワッ ドコトバシテンダヨ  ゴメンゴメン 
 
ジャン母「基本フォームを教えてやったのに…」

マルコ母「またもや完全無視…」

ジャン母「パスしてる時間よりボールを拾いに行ってる時間のほうが長いって…」

マルコ母「最初はこんなものよ。焦らない焦らない」

ジャン母「…けど、少しづつ誰が誰を気にしてるのか見えてきたね」

マルコ母「ええ。時々チラ見してるから何となく分かっちゃう」

ジャン母「ライナー君はあからさまだけどね。クリスタちゃんのこと気にかけすぎだよ」

マルコ母「クリスタちゃんが後ろに取りこぼしたボール、全部拾いに行ってあげてるし」

ジャン母「まったく、自分の練習にならないじゃないの」


マルコ母「ベルトルト君は…アニちゃんを見てるのかしら?」

ジャン母「そうだね。10秒に1回はチラ見してるね。あれは見過ぎでしょうよ」

マルコ母「ミカサちゃんはエレン君ね。すごく心配そうな顔で見てる」

ジャン母「けどあれは…、お姉ちゃんがデキの悪い弟にハラハラしてるって感じだよねぇ」

マルコ母「ふふっ、そしてジャン君は…」

ジャン母「…ミカサちゃんだね。あのバカも一丁前に好きな子がいるとかさ。複雑な気分だよ、まったく」

マルコ母「あら、いいじゃない。青春、青春。マー君なんてちっともそんな素振りが無いからうらやましいわ」

ジャン母「やたらダズ君に親切に教えてるしね。…本当にマルコ×ダズだったりしてさ」アハハ

マルコ母「……」グスッ

ジャン母「じょ、冗談だよ。なにも泣くことないでしょうが」アセアセ

>>1です。レスありがとう。荒れなくてマジでほっとしてる

>>32 やっぱり訓練所ってトロスト区?そのあたりよく分かってなくて。すまん


【step.3 スパイク】

ジャン母「9人制バレーはローテーションしないんだ。だからアタッカーは固定になる」

マルコ母「逆を言えば、レシーバーも固定。つまり背が低い子でも十分活躍できるのよ」

ジャン母「というわけで、とりあえずみんな跳んでみよっか。ネットからどれだけ手が出るのか見せてよ」


エレン「じゃ、俺から行くぜ。助走つけてもいいのか?」

ジャン母「ダメだよ。ネットの前で垂直跳びしておくれ。けどネットに触るのは禁止だよ」

エレン「分かった。いくぜ」セーノ… ピョーン 

マルコ母「あら、ジャンプ力あるのね。すごいすごい」パチパチ

ジャン母(ネットの高さは2m25cm。今度の大会の規定と同じ高さに揃えてある。エレン君が手を伸ばした高さもほぼ同じ)

ジャン母(つまりエレン君の指高は225cm。で70cmほどネットから手が出てた。…よく跳ぶねぇ…)


エレン「どうだ?」

ジャン母「合格。エレン君はアタッカー候補だね」

エレン「よっしゃ!」

アルミン「すごいね、エレン。僕なんてネットから手が出るかどうかさえ怪しいのにさ」

ミカサ「さすがエレンね。かっこよかった」

ジャン「チッ…、ババァ、俺も測るのか?」

ジャン母「ああ、一応ね」ニヤニヤ

ジャン「…何だよ、そのきめぇツラは」

ジャン母「まぁ、お前もせいぜいカッコイイとこ見せるんだね」ニヤニヤ

ジャン「くっ…///」


ジャン母「エレン君は70cmぐらい跳んだんだ。お前も負けんじゃないよ」

ジャン「はっ、負けるかよ。じゃ、いくぜ」セーノ… ピョーン

ジャン母(ジャンの指高は235cm。手を挙げるだけでネットから10センチほど指が出る。…70cmぐらい跳んだかねぇ)

ジャン「ババァ、どんな感じだ?」

ジャン母「エレン君と同じぐらいだね。お前もスパイク練習に参加しな」

ジャン「くそっ、同じか…。もっとジャンプ力つけねぇとな…」ブツブツ

マルコ母(…素敵だわ。ライバルがいるってなんて素敵なの。胸がキュンキュンしちゃう…)


――数十分後


マルコ母「みんなありがとう。大体のジャンプ力は分かったわ」

ジャン母「…ミカサちゃん、あんたの体はどうなってんだい?」

ミカサ「どうって…、普通ですが…」

エレン「いや、お前はおかしい。なんでベルトルトよりネットから手が出んだよ」

アルミン「1m以上跳んでたよね…」

ジャン「ああ。ネットから顔が出てた…」

ジャン母「今のを参考にスパイク練習してもらう人を勝手に決めさせてもらったよ」

マルコ母「えっと、ベルトルト君、ライナー君、エレン君、ジャン君、フランツ君、トーマス君、サムエル君」

ジャン母「ミカサちゃん、ユミルちゃん、サシャちゃん」


マルコ母「何日か様子を見させてもらってから、ポジションを決めるね」

ジャン「あれ、マルコは?」

マルコ母「マー君はセッターやってね」

マルコ「いいよ。僕は性格的にアタッカーは向かないから」

ジャン「けど2チーム作りてぇんだったらもう一人セッターがいるんじゃね?」

ジャン母「まぁ、そのうち決めるさ。今のところまともにトスが上げれそうな子が他にいないし」

マルコ母「じゃあ、スパイク打ってみよっか」

ジャン母「さっき名前を呼ばなかった子は、悪いんだけど反対側のコートで球拾いしてね」


「「はーい」」ザッザッザッ…


コニー「くっそ、俺もスパイク打ってみたかったぜ」テクテク

アルミン「しょうがないよ。僕たち跳んでも手のひらぐらいしかネットから出ないんだから」テクテク

クリスタ「…私は跳んでもネットの端にすら手が届かなかったよ」ズーン

ハンナ「気にしないの。私たちは私たちのできることをすればいいのよ」ヨシヨシ

ミーナ「でもクリスタの跳び方すっごい可愛かった」テクテク

コニー「だな。なんでジャンプすると両足が後ろに曲がるんだ?」クククッ

クリスタ「わ、わかんないよ。自分で意識してないし…。勝手にそうなっちゃうの///」テクテク

アルミン「アニも球拾いチームだね」テクテク

アニ「…」テクテク

コニー「俺もアニもジャンプ力はあるのによ。やっぱチビって損するよなぁ」テクテク


アニ「…ダズはチビじゃないよね?」テクテク

ダズ「…」テクテク

コニー「アニ、そっとしといてやれ。こいつ10cmぐらいしか跳べねぇんだから」クックッ…

クリスタ「ダズ、今日もどこか調子が悪いの?それとも足に怪我でもしてるのかな?」

アルミン「ク、クリスタ…」ヒクッ

ダズ「…う、うぅぅぅ…グスッ…俺なんて放っといてくれよ。何をやっても、グスッ、ダメなんだよぉ」ボロボロ

クリスタ「えっ!?あ、あの、ごめんなさいっ。私なにか悪いこと言ったかな…」アセアセ

ミーナ「もー、すぐ泣くんだから。クリスタ、気にしなくていいよ。いつものことだから」

クリスタ「でも…」


ジャン母「とりあえず、お手本見せるから。マルコ君トスあげてくれるかい?」

マルコ「はい。オープントスでいいんですよね?」

ジャン母「ええ、お願い」

マルコ「…よっ、と」ポーン

タンッ  タンッ  タタンッ!!

ジャン母「ふんっっ!」バシッ!!


ダンッッ!!


ハンナ「きゃっ!」バチンッ

ミーナ「大丈夫!?ハンナ」

ハンナ「え、ええ。ワンバウンドしてるのにすごい威力でびっくりしちゃった」

コニー「ひょぇー…。ジャンの母ちゃんおっかねぇな」

アルミン「かなり速いボールが来たね。……あんなのレシーブできないよ」

ダズ「…うぅぅ…俺、やっぱバレーやめるよ…」ブルブル

クリスタ「そ、そんなこと言わないで。私だって恐いんだから…」ブルブル


ジャン母「いいかい、今私がやって見せたようにスパイクの踏み込みには基本のステップがあってね…」

ジャン母「右足→左足→右足、左足っていう足運びで踏み切り位置に入るんだ。タンッ、タンッ、タタンッっていう感じだよ」

タンッ タンッ タタッ…
ケッコーカンタンカモ  オマエ アシギャクダゾ  

マルコ母「左利きの子は左足から出てね。じゃ、打ってみましょうか。マー君、じゃんじゃんトス上げちゃって」

マルコ「はいはい。えっと、コートの左端に順番に一列に並んで……もう少し先頭下がって……、よし、いくよ」ポーン

タンッ  タンッ  タタンッ!!

ジャン「…ふっ!!」バシッ!  ダンッ!!


サシャ「おー、すごいですねぇ。ちゃんと向こうのコートの中に入りましたよ」パチパチ

ユミル「けっこうやるじゃん」

ジャン「どうだ、見たか?俺様の実力を」スタスタ

エレン「…たいしたことねぇな。実は簡単なんじゃねぇの?スパイクって」

ジャン「はっ、できるもんならやってみろよ」スタスタ


マルコ「次はエレンだよ。いくよー」ポーン

エレン「よっしゃ」

タンッ  タンッ  タタンッ!!

エレン「…あっ!?」スカッ


ジャン「くくっ、空振りしてやんの」ゲラゲラ

ジャン母「こらっ、笑うんじゃないよ。お前だって最初はタイミング合わなくて空振りばっかしてただろう?」

エレン「くっそぅ…///」スタスタ

ミカサ「エレン…」


マルコ「…次いくよー」ポーン

サシャ「あっ、わたしですね」

タンッ  タンッ  タタンッ!!

サシャ「ぶへっっ!!」ビョーン


ライナー「ぶっ、くくっ…、ネットに突っ込みやがった」ゲラゲラ

ベルトルト「わ、笑っちゃ悪いよ。勢いをつけて踏み込んで、真上に跳ぶのって難しいのかもしれない…」

ユミル「そうだね。ついつい前に跳んじゃうかも。ぷっ…顔にネットの線が入ってるし」ゲラゲラ

サシャ「…痛いです」テクテク

ミカサ「…どんまい」ポンッ


マルコ「はい、次」ポーン

ライナー「おうっ」

タンッ  タンッ  タタンッ!!  

ライナー「むんっ!!」バチッ!! ビョーン!!

ライナー「くっ、ネットに引っ掛かっちまった。案外難しいな。動いているボールにタイミングを合わせるのは」


マルコ「次いくよ」ポーン

スタスタスタ…

ベルトルト「えいっ!」バシッ!  ダンッ!

ベルトルト「やった!ちゃんと打てたよ!ライナー見てた?」クルッ


ライナー「…ジャンプしろや」

ジャン「…なに普通に歩いてってんだよ」

エレン「…卑怯だぞ、ベルトルト」


マルコ「じゃ、次」ポーン

ユミル「…あー、めんどくさい」

タンッ  タンッ  タタンッ!

ユミル「…ほい」パシッ  ポトン トン トン…


ジャン「おいこら。手ぇ抜きすぎだろ」

ライナー「ちったぁ真剣にやりやがれ」


ジャン母(むむっ…、ジャンプした時の姿勢がきれいね。腕の振りもまっすぐで変なクセがない)

マルコ母(落下してくるボールにタイミングはピッタリあってる。この子はセンスあるわ。…やる気がないけど)


マルコ「次はミカサだね。いくよ」ポーン

タンッ  タンッ  タタンッ!!

ミカサ「」バシッ!!  ズバンッ!!!


ジャン「んなっ!?」

ベルトルト「ほぼ垂直に叩きつけたね…」

ライナー「助走つけたらやぱいぐらい跳んだな…」

サシャ「立体機動装置がなくても、4m級ぐらいなら楽に倒せそうですね…」

ユミル「兵士やるよりサーカス団に入ったほうが儲かりそうだね」

エレン「ああ、猛獣としてな」

ユミル「…エレンが悪口言ってたってチクろっかなぁ」

エレン「ごめんなさい。二度と言わない」


【step.4 サーブ】

エレン「くそっ、結局一本もまともに打てなかったぜ」イライラ

ジャン「お前………かっこわる」ププッ

エレン「はぁ?やんのか、コラ」ガシッ!

ジャン「なんだよ。できねぇからって人に八つ当たりすんのか、あぁ?」ガシッ!

ジャン母「こら、バカ息子。サーブ練習すんだから手を離しな」ペチンッ!

ジャン「っつ。…頭叩くんじゃねぇよ。親に虐待されたって憲兵団に通報するぞ」

ジャン母「ばーか、通報したところで動くわけないだろ?ただでさえろくに働かない連中なのにさ」

マルコ母「じゃサーブの打ち方説明するわよ」


――数十分後

ワイワイ ガヤガヤ…
バシッ  バシッ  アーモウ  ネットジャマダゼ


ユミル「ク、クリスタ…。もう一度今のサーブ打ってくれ」フルフル

クリスタ「えっ?いいけど。…いくよ。…えいっ」ポフンッ

ユミル「やっば、めっちゃ可愛い!なにこの生き物。連れて帰りたいっ。いや、連れて帰るんだけどさ」ギュゥ

クリスタ「ちょっ、ユミルそんなにきつく抱きしめたら苦しいよ」ケホッ

ジャン(完全なる下打ち。しかも相手コートに届かないっ。…やっべ、天使だ)ホンワカ

アルミン(ボールが真上に上がってるだけなんて…。君はやっぱり女神だよ)ホンワカ

ライナー(えいっ、て。あの子えいっ、て言ったし。俺、生まれ変わったらボールになろう)ホンワカ


エレン「ヒュー♪すっげぇサーブだな。空中で変化したぞ」

アニ「…どうも」ポン ポン

エレン「なぁ、もっかい見せてくれよ」

アニ「…いいけど」ポーン バシッ!

エレン「うっひゃ、すっげぇ球が揺れるな。まさに魔球だ。どうやって打つんだ?」

アニ「あんたおばさん達の説明聞いてなかったの?」

エレン「いや、聞いてたんだけどさ…、いまいち分かんなくてよ。悪ぃな」ニッ

アニ「……。ボールを回転させないように打つの。無回転だと勝手にボールは変化するから」ポーン バシッ!

エレン「…今度は球の軌道が急に落ちた。…だからさ、どうやったら回転しないボールが打てるんだよ」


アニ「それは」ミカサ「ボールにミートする瞬間に手を止めるの。手を振りぬくと回転がかかってしまう」

エレン「へぇ、そうなのか。教えてくれてサンキュ、ミカサ」ニッ

ミカサ「ど、どういたしまして…」キュン

アニ「…」ポンッ ポンッ ダンッ!!

ミカサ「…アニ、そんなに力いっぱい地面に叩きつけたらボールがかわいそう」

アニ「おや?あんたこそスパイク練習の時、これでもかっていうぐらいボールを虐めてたじゃないか」

ミカサ「…なにか私に文句でもあるの?」

アニ「別に。…ただ人が話してる最中に横入りされるとさ、気分が悪いよね」

ミカサ「あら…、ごめんなさい。アニって無口だからエレンと話すのも面倒なのかと思って、私が代わりに説明したの」

アニ「…それはご丁寧にどうも。……ふんっ!!」ポーン バシッ!!

エレン「うぉっ、またすっげぇボールだぜ!」


ミカサ「チッ…。………ふっ」ポーン タッタッ…ピョン バシィッッ!!!

エレン「げっ!ミカサはジャンプサーブかよ。笑えるぐれぇ速ぇ球だな。めっちゃ恐ぇ」ゲラゲラ

ミカサ「…っ、笑わないで」

アニ「…」クスッ 

ミカサ「…」ムカッ


バシッ!! スッゲェ  バシッ!! ウッヒョー  バシッ!! ウワァァ


マルコ(…ミカサとアニが競うようにサーブ打ってるよ。…エレンってば無意識に煽ってるし)

マルコ(アニの無回転フローターサーブとは対照的にミカサはボールにドライブかけまくってるね)

マルコ(…けど、女の子でもジャンプサーブって打てるんだね。すごいよ、ミカサ…)


ジャン母「あら、もうこんな時間」

マルコ母「まずいわね、夕飯の準備しないと」

ジャン母「後は日が暮れるまで適当に練習しときな。じゃ、おつかれさん」スタスタ…

マルコ母「マー君、後片付けお願いねー」スタスタ…



ユミル「ふぅー、やっとおばさんたち帰ったね。私たちも寮に戻るよ、クリスタ」

クリスタ「…ごめん、先帰ってて。私もう少し練習したいから」

ユミル「マジで?」

クリスタ「うん。みんなの足手まといにはなりたくないし…」

ユミル「分かったよ。じゃ、あんまり頑張りすぎんじゃないよ」スタスタ…

クリスタ(…えっと、どこにいるかな)キョロキョロ

クリスタ(…いた。…やっぱり泣いてる)


ダズ「…うぅ…サーブも一本も入らなかった…。…俺は…何をやってもダメなんだ…」グスッ


クリスタ「はい、ダズにパス」ポンッ

ダズ「ふぇっ?」ポコンッ

クリスタ「もうっ、受けるか避けるかしてよ。頭に当てちゃったし。ごめんね」

ダズ「い、いや。…平気だから」

クリスタ「ねぇ、パス練習に付き合ってくれないかな」

ダズ「お、俺が?」

クリスタ「うん。私すごく下手っぴなの。けど少しでも上手になりたいから。ダズも一緒に練習しようよ、ね」ニコッ

ダズ「……う、うん///」


エレン「なぁ、マルコ」

マルコ「なんだい?」

エレン「スパイクのコツ教えてくれよ」

マルコ「うーん、僕よりジャンに聞いたほうがいいかも。彼のほうがスパイクは得意そうだから…」

エレン「絶対ぇ、ヤダ。あいつ散々俺のことバカにしやがって。こっそり練習して見返してやりてぇんだよ」

マルコ「ははっ、そういうことね。いいよ、僕で良ければ教えてあげるよ」

エレン「サンキュ」

マルコ「そうだね…、壁打ちしてみようか」

エレン「壁打ち?」

マルコ「うん。ボール一個だけ持って壁の前に移動しよう」テクテク

テクテクテクテク…


マルコ「とりあえず、やってみせるね。ジャンプしなくていいから、まずはスパイクを打つ」ポン バシッ! 

エレン「…ワンバンさせて壁に当てる…と」

マルコ「跳ね返ってきたら、また同じ場所を狙って打つ」バシッ!

エレン「…で、また返ってきたところを打つのか…」

マルコ「そう。これの繰り返し。ボールをミートする練習になる」バシッ!

エレン「ミートする?」

マルコ「手首のスナップをきかせてボールを縦回転させるんだ。これができるようになれば大ホームランしなくなるよ」

エレン「…場外ばっかで悪かったな」ガシガシ

マルコ「初めてにしては上手いと思うよ。練習の最後のほうはジャンプのタイミングもかなり合ってきてたし」

エレン「けどよ、ミカサ見てると自分が本当に情けなくなってくる…」


マルコ「人と比べない。エレンにはエレンの良さがあるんだから。ほら、やってごらんよ」ポン

エレン「そうだな。上を見たらキリがねぇし」パシッ

マルコ「うん。小さなことからコツコツと」

エレン「地道にやるしかねぇよなっ、と」バシッ! ダンッ バンッ!!

マルコ「そうそう、その調子」

エレン「うわっ、全然違うところへ跳ね返ってくる」タタタッ バシッ!!

マルコ「ミートができるようになれば、一歩も動かず壁打ちを続けられるよ」

エレン「くっそ…、これめっちゃハードじゃねぇか」タタタッ バシッ!!

マルコ「最初はね。慣れれば楽になるから。じゃあ僕は片付けがあるから、後は自力で頑張って」スタスタ

エレン「おうっ!ありがとな、マルコ」タタタッ バシッ!


マルコ「…ジャンのやつ、さっさと帰っちゃうし。結局、僕が一人で片付けることになるんだよね」スタスタ

マルコ(…あれ?ダズとクリスタがまだ練習してる。…珍しい組み合わせだね)ピタッ

マルコ(…おいおい、なんでダズ泣いてんの。せっかく可愛い女の子と二人で練習してるっていうのに…)

マルコ(…クリスタ困ってるね。ちょっと様子見に行こうか…)スタスタ


ダズ「ヒック…、やっぱり…俺はいくら練習しても、グスッ、できないんだよ…」グスン

クリスタ「そんなことないよ。頑張ればきっと上手くなるよ」

ダズ「グスッ、全然違う方向にばっかボール返してさ、ヒック、クリスタを走らせるばっかりして、ヒック、ごめん…」グスン

クリスタ「やだなぁ。そんなのお互い様だよ。私のほうこそ、まともにボール返せなくてごめんね」

ダズ「うぅぅ……うわぁぁぁぁぁん」ボロボロ

クリスタ「えっ…、わたし、何か悪いこと言ったかな…?ごめんね、そんなに泣かないで」オロオロ


マルコ「こら、ダズ。みっともないよ、人前でそんな大声で泣いてさ」スタスタ

ダズ「うぅ…グスッ」

クリスタ「マルコ…」

マルコ「どうしたの?また自信喪失した?」

ダズ「…俺、ヒック、やっぱりバレーやらねぇ、グスッ…みんなに迷惑かけちまう…」グスン

マルコ「あっそ、ならやめれば」

クリスタ「そんなっ、マルコ冷たいよ」

マルコ「そうやって、たいした努力もしないで、できないできないって泣いてるほうが迷惑なんだよ」

ダズ「うるせぇ…グスッ、優等生のお前にはクズ野郎の気持ちなんか分からねぇんだ」グスッ

マルコ「ダズはクズなんかじゃない。今まで何度も言ってるだろう?」

ダズ「俺はクズだ。お前ら成績上位者と違って、居なくなったって誰も困らない存在価値のないただのゴミだよ」

クリスタ「そんなことないよっ。お願い…、そんな悲しいこと言わないで…」


マルコ「ダズ…、僕も自分の存在価値について悩んだことはあるんだ。ここには個性の強い人が多いから…」

マルコ「僕はずば抜けて何かができるわけじゃないし…、見た目だって平凡だ…」

クリスタ「マルコ…」

マルコ「そう、僕は明訓高校野球部でスタメンに名前はあるくせに、一度も打席描写が無い典型的な脇役みたいなものさ」

クリスタ「えっ………えっ???」

ダズ「…『ドカベン』か。確かにあれは岩鬼と殿馬に全部持っていかれるな」

マルコ「けど、脇役だって必要なんだ。僕らがいないとスコアボードに空欄ができちゃうだろ?」

ダズ「悪いけど…俺はそんなに『ドカベン』は好きじゃねぇんだ」

マルコ「それは残念だよ」


ダズ「俺が敬愛する野球マンガは『アストロ球団』だけだ」

マルコ「大丈夫。………僕も沢村魂は受け継いでいるよ」

ダズ「…っ、マルコ、お前……俺を分かってくれるのか?」

マルコ「ああ。一緒に人間ナイアガラをしようじゃないか」ニコ

ダズ「くっ……マルコっ」ガバッ

マルコ「ダズっ」ヒシッ

クリスタ(……マルコのことをちょっといいなと思った自分をぶん殴りたい気分……)

>>1です レスありがとう
続きは後日です

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